(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】組織内在性uPAR+/Nestin+幹細胞の分離培養方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/074 20100101AFI20240423BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20240423BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20240423BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20240423BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240423BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240423BHJP
A61K 38/14 20060101ALI20240423BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240423BHJP
【FI】
C12N5/074
A61P17/02
A61P29/00
A61P37/02
A61P43/00 107
A61L27/54
A61L27/38
A61L27/36 100
A61K35/12
A61K35/28
A61K38/14
A61K38/17
A61K47/64
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571790
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2022007910
(87)【国際公開番号】W WO2022255836
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0072137
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0067722
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523435831
【氏名又は名称】イノステム バイオ
【氏名又は名称原語表記】INNOSTEM BIO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】クワク ミョン ジン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C081
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC17
4B065BB19
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4C084MA01
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZB07
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4C084ZB22
4C087AA01
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4C087BB64
4C087MA01
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB22
(57)【要約】
本発明は、組織内在性uPAR+/Nestin+幹細胞の分離培養方法及びその用途に関するものであって、固形性組織内に存在する組織内在性幹細胞のuPAR-plasmin活性度に基づいて分離する方法を提供する。幹細胞のuPAR-plasmin活性度は、幹細胞の成長、移動能力、生理活性度、そして、分化能と密接な関係が提示されて高力価の幹細胞を分離する方法として活用することができる。本発明の固形性組織から分離したuPAR+幹細胞は、細胞治療剤、組織工学治療剤、エクソソームを含む分泌物を利用したバイオ新薬の生産に適用可能であって、産業的可能性が大きい。また、本発明において、組織内在性幹細胞の細胞分裂、移動、成長、そして、分化に関係する細胞生物学的、分子生物学的基礎研究と新薬開発研究とに適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)創傷修復基質模倣ハイドロゲルを製造する段階と、
(2)分離された組織切片を前記創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に陥入させる段階と、
(3)前記組織切片が陥入された創傷修復基質模倣ハイドロゲルをプラスミノーゲン活性阻害剤(PAI)が添加された培養液で3次元培養する段階と、
を含む、組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の活性化方法。
【請求項2】
前記創傷修復基質模倣ハイドロゲルは、0.25~2.5%濃度のフィブリノーゲン溶液及び0.5~5I.U./mL濃度のトロンビン溶液が混合されたフィブリンハイドロゲル、前記フィブリンハイドロゲルに0.1~0.5%濃度のコラーゲン溶液が混合されたフィブリン/コラーゲン混合ハイドロゲルまたは前記フィブリンハイドロゲルに0.1~0.5%濃度のゼラチン溶液が混合されたフィブリン/ゼラチン混合ハイドロゲルであることを特徴とする請求項1に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の活性化方法。
【請求項3】
前記組織は、脂肪組織、骨髄組織、心筋組織、末梢神経組織、骨格筋組織または滑液膜組織であることを特徴とする請求項1に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の活性化方法。
【請求項4】
前記PAIは、トラネキサム酸またはアミノメチル安息香酸であることを特徴とする請求項1に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の活性化方法。
【請求項5】
前記方法は、組織内細胞のインテグリン-FAK細胞信号伝達を活性化させて、組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の細胞分裂及び細胞成長を誘導することを特徴とする請求項1に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の活性化方法。
【請求項6】
前記方法は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に細胞移動及び細胞成長を誘導することを特徴とする請求項1に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の活性化方法。
【請求項7】
(1)創傷修復基質模倣ハイドロゲルを製造する段階と、
(2)分離された組織切片を前記創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に陥入させる段階と、
(3)前記組織切片が陥入された創傷修復基質模倣ハイドロゲルをPAIが添加された培養液で3次元培養する段階と、
(4)前記3次元培養液を除去し、洗浄してPAIを除去する段階と、
(5)前記PAIが除去された培養物をPAIが含有されていない培養液で再培養して、前記創傷修復基質模倣ハイドロゲルを分解させる段階と、
(6)前記再培養液内に遊離された幹細胞を分離する段階と、
を含む、組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の分離培養方法。
【請求項8】
前記創傷修復基質模倣ハイドロゲルは、0.25~2.5%濃度のフィブリノーゲン溶液及び0.5~5I.U./mL濃度のトロンビン溶液が混合されたフィブリンハイドロゲル、前記フィブリンハイドロゲルに0.1~0.5%濃度のコラーゲン溶液が混合されたフィブリン/コラーゲン混合ハイドロゲルまたは前記フィブリンハイドロゲルに0.1~0.5%濃度のゼラチン溶液が混合されたフィブリン/ゼラチン混合ハイドロゲルであることを特徴とする請求項7に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の分離培養方法。
【請求項9】
前記組織は、脂肪組織、骨髄組織、心筋組織、末梢神経組織、骨格筋組織または滑液膜組織であることを特徴とする請求項7に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の分離培養方法。
【請求項10】
前記PAIは、トラネキサム酸またはアミノメチル安息香酸であることを特徴とする請求項7に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の分離培養方法。
【請求項11】
前記(5)段階は、前記組織内のuPAR発現の増加を誘導し、プラスミン活性度の増加を通じて、前記創傷修復基質模倣ハイドロゲルを分解させることを特徴とする請求項7に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の分離培養方法。
【請求項12】
前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞は、自己複製能、体外成長能、分化能または組織再生誘導能が増進したことを特徴とする請求項7に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の分離培養方法。
【請求項13】
前記(5)段階の再培養液から回収された組織切片は、前記(2)段階ないし(5)段階を1~10回繰り返す過程をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の分離培養方法。
【請求項14】
請求項7から請求項13のうち何れか一項に記載の方法によって分離培養された組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液。
【請求項15】
請求項14に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む、炎症疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項16】
請求項14に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む、自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項17】
請求項14に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む、創傷治療用薬学組成物。
【請求項18】
請求項14に記載の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む、血管再生促進用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形性組織内の組織再生及び組織恒常性に核心的な役割を担当するuPAR+/Nestin+組織内在性幹細胞を分離培養する方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
固形性組織内に存在する幹細胞を分離培養するための通常の方法は、組織分解酵素(protease)処理を通じて組織を分解し、組織を構成する細胞を1つ1つ取り外す組織解離(tissue dissociation)後、単一細胞浮遊液(single cell suspension)を製造する工程が要求される。組織解離過程は、使用した組織分解酵素の種類、力価、反応時間、反応温度、使用した組織の種類によって得られる単一細胞収率は大きな偏差を示し、また、組織解離過程中、細胞損傷は避けることができない問題として提起された。その結果、組織解離過程は、組織類型によって細胞収率と損傷程度は大きな差を示し、標準化しにくい短所が提示された。特に、固形性組織内の幹細胞の頻度は、0.1%未満であって、組織分解酵素を通じて有効な数量の幹細胞を分離することができる収率が極めて低調な限界点は広く知られている。
【0003】
組織から解離された単一細胞浮遊液から組織内在性幹細胞を分離精製する後続工程が要求される。幹細胞を分離精製する過程は、c-KitないしSca-1のような標識子を用いて当該標識子が陽性あるいは陰性である細胞を分離する。しかし、これらの標識子は、組織内在性幹細胞だけではなく、造血系細胞でも発現される標識子であって、所望しない細胞が混在されて分離され、また、これらの標識子が陰性である幹細胞が厳然と存在するので、特定の標識子を利用した組織内在性幹細胞を分離精製する方法は限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、脂肪組織、骨髄組織、心筋組織、末梢神経組織、骨格筋組織または滑液膜組織などの固形性組織内に位置する組織内在性uPAR+/nestin+幹細胞を活性化し、移動成長を誘導し、分離する方法を提供することである。
【0005】
また、本発明の他の目的は、前記方法によって分離培養された組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を提供することである。
【0006】
また、本発明のさらに他の目的は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む炎症疾患または自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0007】
また、本発明のさらに他の目的は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む創傷治療または血管再生促進用薬学組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を果たすために、本発明は、(1)創傷修復基質模倣ハイドロゲルを製造する段階;(2)分離された組織切片を前記創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に陥入させる段階;及び(3)前記組織切片が陥入された創傷修復基質模倣ハイドロゲルをプラスミノーゲン活性阻害剤(plasminogen activator inhibitor;PAI)が添加された培養液で3次元培養する段階;を含む組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の活性化方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、(1)創傷修復基質模倣ハイドロゲルを製造する段階;(2)分離された組織切片を前記創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に陥入させる段階;(3)前記組織切片が陥入された創傷修復基質模倣ハイドロゲルをPAIが添加された培養液で3次元培養する段階;(4)前記3次元培養液を除去し、洗浄してPAIを除去する段階;(5)前記PAIが除去された培養物をPAIが含有されていない培養液で再培養して、前記創傷修復基質模倣ハイドロゲルを分解させる段階;及び(6)前記再培養液内に遊離された幹細胞を分離する段階;を含む組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の分離培養方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記方法によって分離培養された組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む炎症疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む創傷治療用薬学組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む血管再生促進用薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、組織内在性uPAR+/Nestin+幹細胞の分離培養方法及びその用途に関するものであって、固形性組織内に存在する組織内在性幹細胞のuPAR-plasmin活性度に基づいて分離する方法を提供する。幹細胞のuPAR-plasmin活性度は、幹細胞の成長、移動能力、生理活性度、そして、分化能と密接な関係が提示されて高力価の幹細胞を分離する方法として活用することができる。本発明の固形性組織から分離したuPAR+幹細胞は、細胞治療剤、組織工学治療剤、エクソソームを含む分泌物を利用したバイオ新薬の生産に適用可能であって、産業的可能性が大きい。また、本発明において、組織内在性幹細胞の細胞分裂、移動、成長、そして、分化に関係する細胞生物学的、分子生物学的基礎研究と新薬開発研究とに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】体外臓器培養後、臓器内の構成細胞のpFAK、uPAR、nestin、Ki-67発現率を示す。2D、単層臓器培養;3D、3D臓器培養;AT、脂肪組織(adipose tissue);BM、骨髄(bone marrow);Myocar、心筋(myocardium);PN、末梢神経(peripheral nerve);SM、骨格筋(skeletal muscle);Syn、滑液膜(Synovium)。
**、p<0.01に比べて、2D。
【
図2】3D心筋臓器培養による心筋内pFAK+、uPAR+及びNestin+発現細胞が増加する特性を示す。
【
図3】3D臓器培養による心筋内細胞分裂中であるki-67陽性細胞が増加する特性を示す。
【
図4】3D心筋臓器培養期間によって心筋内pFAK、uPAR、nestin、ki-67陽性細胞数が比例して増加することを示す。
**、p<0.01に比べて、0d(培養前)。
【
図5】3D心筋臓器培養後、ハイドロゲルに移動成長した細胞のuPAR、nestin及びBrdU発現を示す。
【
図6】3D臓器培養2週後、ハイドロゲルに移動成長した細胞のuPAR及びnestin発現率を示す。AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
【
図7】臓器培養前及び培養3日後、臓器内uPAR mRNA(A)及びplasmin活性度(B)を示す。AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
*、p<0.05に比べて、pre-culture(培養前);
**、p<0.01に比べて、pre-culture(培養前)。
【
図8】臓器培養後、培養液内のPAI除去及び培養物洗浄を通じてハイドロゲルが分解され、ハイドロゲル内に移動成長した細胞が培養液内に遊離されることを示す。
【
図9】培養液内のPAI除去及び培養物洗浄を通じてハイドロゲル内に移動成長した細胞がハイドロゲルから離れて出て遊離された細胞が収縮され、及び凝集されることを示す(位相差顕微鏡写真)。
【
図10】PAI除去及び培養物洗浄後、ハイドロゲル内のuPAR+細胞が遊離される分離を示す(パラフィン組織切片HE染色及びuPAR免疫組織化学染色)。
【
図11】PAI除去及び培養物洗浄(PAI withdrawn)と外因性Urokinase添加後、ハイドロゲルから分離後、回収した細胞収率と分離回収した細胞のuPAR発現率とを示す。AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
**、p<0.01に比べて、urokinase。
【
図12】PAI除去及び培養物洗浄後、回収した組織切片は、反復的臓器培養を通じてハイドロゲルから繰り返して分離後、回収した細胞収率を示す。AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
【
図13】PAI除去及び培養物洗浄後、回収した細胞を培養容器に播種後、単層培養環境で細胞の付着と成長とを示す。A、PAI除去及び水洗後、ハイドロゲルから遊離された細胞の凝集体。B、ハイドロゲルから回収した細胞凝集体。C-E、回収した細胞を培養容器に播種後、30分(C)、1時間(D)及び2時間(D)目の細胞の付着及び成長(位相差顕微鏡写真)。
【
図14】脂肪組織、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜臓器培養後、PAI除去及び培養物洗浄後、ハイドロゲルに遊離した細胞(上)と回収した細胞とを播種後、培養容器に付着し、成長する形状を見た後、付着し、成長(下)する結果を示す(位相差顕微鏡写真)。
【
図15】神経及び心筋臓器培養後、PAI除去及び培養物洗浄後、ハイドロゲルから遊離された細胞の単層培養環境で付着と成長とを示す。
【
図16】ハイドロゲルから回収した細胞の免疫表現の特性を示す。A、PAI除去及び培養物洗浄後、ハイドロゲルからwithdrawal後、遊離された細胞の免疫表現の特性。B、外因性Urokinase処理後、ハイドロゲルから遊離された細胞の免疫表現の特性。AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
**、p<0.01に比べて、urokinase(B)。
【
図17】ハイドロゲルから回収した細胞の造血細胞及び血管内皮細胞標識子の発現率を示す。A、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞の発現率。B、外因性Urokinase処理後、分離回収した細胞の発現率。AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
**、p<0.01に比べて、urokinase(B)。
【
図18】ハイドロゲルから分離回収した細胞の自己複製能を示す。A;Colony Forming Unit(CFU)の代表的写真。B;組織起源によるハイドロゲルから分離回収した細胞のCFU頻度。Urokinase、外因性urokinase処理後、分離回収した細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
**、p<0.01に比べて、urokinase。
【
図19】ハイドロゲルから分離回収した細胞の体外成長能を示す。A;Population Doubling Time(PDT、細胞倍加時間)。B;Population Doubling Level(PDL、細胞倍加レベル)。Urokinase、外因性urokinase処理後、分離回収した細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
*、p<0.05に比べて、urokinase;
**、p<0.01に比べて、urokinase。
【
図20】ハイドロゲルから分離回収した細胞のKi-67発現率を示す。Urokinase、外因性urokinase処理後、分離回収した細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
**、p<0.01に比べて、urokinase。
【
図21】ハイドロゲルから分離回収した細胞の骨芽細胞(alizarin red)及び脂肪細胞(Oil Red O)への分化能を示す。Urokinase、外因性urokinase処理後、分離回収した細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞。
【
図22】ハイドロゲルから分離回収した細胞の骨芽細胞(alizarin red)及び脂肪細胞(Oil Red O)への分化能の比較を示す。Urokinase、外因性urokinase処理後、分離回収した細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
**、p<0.01に比べて、urokinase。
【
図23】ハイドロゲルから分離回収した細胞の組織再生mRNA発現特性を示す。Urokinase、外因性urokinase処理後、分離回収した細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;CB-MSC、cord blood-derived mesenchymal stem cells;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
*、p<0.05に比べて、urokinase;
**、p<0.01に比べて、urokinase。
【
図24】ハイドロゲルから分離回収した細胞のplasmin活性度及びnestin発現率を示す。uPAR-、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR陰性細胞;uPAR+、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR+細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
【
図25】ハイドロゲルから分離回収した細胞の自己複製(CFU)及び体外成長(Ki-67)能を示す。uPAR-、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR陰性細胞;uPAR+、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR+細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
【
図26】ハイドロゲルから分離回収した細胞の抗炎症能を示す。条件培地のLPSで減作したRAW 264.7細胞のTNFα及びIL-1βの分泌抑制効力。uPAR-、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR陰性細胞;uPAR+、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR+細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
【
図27】ハイドロゲルから分離回収した細胞の血管内皮細胞(HUVEC)及び線維芽細胞(DF)の成長誘導の効力を示す。uPAR-、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR陰性細胞;uPAR+、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR+細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
【
図28】ハイドロゲルから分離回収した細胞の血管内皮細胞(HUVEC)及び線維芽細胞(DF)の細胞保護の効力を示す。uPAR-、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR陰性細胞;uPAR+、外因性urokinase処理後、分離精製したuPAR+細胞;PAI withdrawal、PAI除去及び培養物洗浄後、分離回収した細胞;AT、脂肪組織;BM、骨髄;Myocar、心筋;PN、末梢神経;SM、骨格筋;Syn、滑液膜。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
*、p<0.05に比べて、uPAR-;
**、p<0.01に比べて、uPAR-。
【
図29】既存の技術に比べて、本発明の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、(1)創傷修復基質模倣ハイドロゲルを製造する段階;(2)分離された組織切片を前記創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に陥入させる段階;及び(3)前記組織切片が陥入された創傷修復基質模倣ハイドロゲルをプラスミノーゲン活性阻害剤(PAI)が添加された培養液で3次元培養する段階;を含む組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の活性化方法を提供する。
【0018】
望ましくは、前記創傷修復基質模倣ハイドロゲルは、0.25~2.5%濃度のフィブリノーゲン溶液及び0.5~5I.U./mL濃度のトロンビン溶液が混合されたフィブリンハイドロゲル、前記フィブリンハイドロゲルに0.1~0.5%濃度のコラーゲン溶液が混合されたフィブリン/コラーゲン混合ハイドロゲルまたは前記フィブリンハイドロゲルに0.1~0.5%濃度のゼラチン溶液が混合されたフィブリン/ゼラチン混合ハイドロゲルであるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
望ましくは、前記組織は、脂肪組織、骨髄組織、心筋組織、末梢神経組織、骨格筋組織または滑液膜組織であるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
望ましくは、前記PAIは、トラネキサム酸(tranexamic acid)またはアミノメチル安息香酸(aminomethyl benzoic acid)であるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
望ましくは、前記方法は、組織内細胞のインテグリン(integrin)-FAK細胞信号伝達を活性化させて、組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の細胞分裂及び細胞成長を誘導することができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
望ましくは、前記方法は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に細胞移動及び細胞成長を誘導することができるが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明のuPAR+及びnestin+組織内在性幹細胞を創傷修復基質への移動を誘導するために、組織合わせ創傷修復基質が要求される。組織損傷後、血管から遊離された血漿が凝固されて形成される創傷修復基質成分を模倣して生体高分子を用いて製造することができる。本発明の創傷修復基質は、フィブリン、コラーゲン、ゼラチンを単独あるいは混合して製造することができる。工学的創傷修復基質は、臓器によってuPA-plasmin活性度は差が出て、uPA-plasmin活性に抵抗性を有した創傷修復基質を製造して使用することができる。創傷修復基質は、生体高分子の含量あるいは組成を調節して製造することができる。すなわち、フィブリン-コラーゲン、フィブリン-ゼラチン、コラーゲン-ゼラチンなど2種以上の成分で混合した創傷修復基質を使用することができる。本発明の創傷修復基質は、構成高分子であるフィブリノーゲン、コラーゲン、ゼラチン構成高分子は1.0から20.0mg/mlの含量で構成することができる。創傷修復基質の構造的特性を強化するために、架橋度を調節することができ、Ca++あるいはFactor XIIIaのような架橋剤を用いて創傷修復基質の架橋程度を調節して構造的物性を調節することができる。
【0024】
体外培養を通じて組織内幹細胞の細胞分裂と成長とを誘導するために、細胞信号伝達経路の活性化が要求される。細胞のintegrin ligandと結合して細胞の成長と移動とを誘導することができる信号を創傷修復基質を通じて伝達し、活性化することができる。細胞のintegrinsと直接結合して細胞内に信号を伝達することができる創傷修復基質で組織を支持するにつれて、組織内幹細胞の細胞分裂、成長と移動とを誘導することができる。integrin-β1-FAK信号伝達経路は、創傷修復基質の支持によってインテグリンを通じて組織内在性幹細胞に信号を伝達し、活性化を誘導し、組織内在性幹細胞は、伝達された信号によってuPAR及びnestin発現が増加し、組織内再生幹細胞の分裂、成長と移動とを誘導することができる。本発明は、integrin-FAK細胞信号伝達経路を活性化することができる創傷修復基質はフィブリン、コラーゲン、ゼラチンのようなRGD motifを有した高分子で構成された創傷修復基質模倣ハイドロゲルを製造して、前記目的を果たしうる。
【0025】
本発明は、組織内在性幹細胞の細胞分裂、成長と移動はintegrin-β1-FAK-uPAR信号伝達経路を活性化して誘導する方法を提供する。組織内幹細胞への信号伝達の効率は、integrin ligandと結合することができる受容体の密度と比例する。integrin ligandと結合することができる受容体の密度は、組織と接触面を高めることで果たしうる。2次元よりも3次元環境を提供して、結果として細胞と接合することができる面積を増加することにより、integrin ligandと収容体結合を増加させることができる。その結果、組織内幹細胞に信号伝達の効率を高めうる。本発明は、人工的創傷修復基質を3次元的支持を組織に提供してintegrin-β1-FAK-uPAR信号伝達経路を活性化する方法を提供する。このために、sol-gel相転移できるハイドロゲルを創傷修復基質で組織切片に3次元的結合を提供して信号伝達経路を強化する方法を提供する。
【0026】
uPA-plasmin活性度は、組織、損傷程度と原因とによって変わりうる。脂肪、胎盤、臍帯と比較して神経系組織は、uPA-plasmin活性度が高く、その結果、創傷修復基質の分解程度は、神経系組織が高い。創傷修復基質の分解は、創傷修復基質を構成する構成成分の含量、高分子分子量、架橋程度を調節して制御することができる。本発明は、創傷修復基質構成高分子の含量、分子量、そして、架橋程度を高めて増加させるuPA-plasmin活性度に対する抵抗度を調節する方法を提供する。また、PAI添加を通じてuPA-plasmin活性度を調節して持続的に創傷修復基質で組織内幹細胞の活性、成長と移動とを誘導する方法を提供する。本発明に適用することができるPAIは、アミノカプロン酸(aminocaproid acid)、トラネキサム酸、アプロチニン(aprotinin)及びアミノメチル安息香酸からなる群から選択することができる。本発明に適用されるPAIは、ハイドロゲル容量ml当たり10μg~10mgの濃度を添加して使用することができる。その結果、本発明は、PAI添加と創傷修復基質の構造的安定性を保持して組織内在性幹細胞の成長と移動は臓器培養期間中、誘導支持する方法を提供する。
【0027】
過度な幹細胞のuPAR-uPA-plasminの活性度は、体外培養過程中、創傷修復基質模倣ハイドロゲルの急激な分解結果、組織切片及び細胞周囲の創傷修復基質が分解消失され、その結果、幹細胞が付着し、移動することができる創傷修復基質が消失される結果がもたらされて、組織からハイドロゲル内に細胞移動が消失あるいは減少あるいは消失される結果をもたらしうる。本発明は、過度な創傷修復基質模倣ハイドロゲルの分解及び消失を制御するために、PAIを添加して幹細胞及び組織切片の過度なplasmin活性度を制御して創傷修復基質模倣ハイドロゲルが臓器培養期間中、組織切片を物理的に支持基質として役割を保持し、同時に活性化された組織内在性幹細胞が移動成長することができる基質としての構造機能的役割を保持持続する方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、(1)創傷修復基質模倣ハイドロゲルを製造する段階;(2)分離された組織切片を前記創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に陥入させる段階;(3)前記組織切片が陥入された創傷修復基質模倣ハイドロゲルをPAIが添加された培養液で3次元培養する段階;(4)前記3次元培養液を除去し、洗浄してPAIを除去する段階;(5)前記PAIが除去された培養物をPAIが含有されていない培養液で再培養して、前記創傷修復基質模倣ハイドロゲルを分解させる段階;及び(6)前記再培養液内に遊離された幹細胞を分離する段階;を含む組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の分離培養方法を提供する。
【0029】
望ましくは、前記創傷修復基質模倣ハイドロゲルは、0.25~2.5%濃度のフィブリノーゲン溶液及び0.5~5I.U./mL濃度のトロンビン溶液が混合されたフィブリンハイドロゲル、前記フィブリンハイドロゲルに0.1~0.5%濃度のコラーゲン溶液が混合されたフィブリン/コラーゲン混合ハイドロゲルまたは前記フィブリンハイドロゲルに0.1~0.5%濃度のゼラチン溶液が混合されたフィブリン/ゼラチン混合ハイドロゲルであるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
望ましくは、前記組織は、脂肪組織、骨髄組織、心筋組織、末梢神経組織、骨格筋組織または滑液膜組織であるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
望ましくは、前記PAIは、トラネキサム酸またはアミノメチル安息香酸であるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
望ましくは、前記(5)段階は、前記組織内のuPAR発現の増加を誘導し、プラスミン(plasmin)活性度の増加を通じて、前記創傷修復基質模倣ハイドロゲルを分解させることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
望ましくは、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞は、自己複製能、体外成長能、分化能または組織再生誘導能が増進したものであるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
望ましくは、前記(5)段階の再培養液から回収された組織切片は、前記(2)段階ないし(5)段階を1~10回繰り返す過程をさらに含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明は、創傷修復基質内に移動と成長したuPAR+幹細胞を選択的に分離する方法を提供する。PAI添加を通じて過度なuPAR-plasmin活性によって創傷修復基質が分解されることを制御することができるが、目標とした幹細胞の移動と成長とが達成された後、創傷修復基質から細胞を回収する方法を提供する。PAIを洗浄後、除去するにつれて、幹細胞内在uPAR-plasmin活性特性を用いて創傷修復基質が分解されて基質内移動成長した幹細胞が遊離されて回収する方法を提供する。本発明は、uPAR-plasminによって幹細胞でuPAR発現率及びplasmin活性度によって創傷修復基質が分解され、所定の外因性protease使用なしに、そして、後続精製過程なしに固形性組織からuPAR+幹細胞を分離する方法を提供する。
【0036】
本発明は、所定の外因性組織分解酵素を使用しないことにより、臓器培養に使用した組織切片の構造と機能とが保存された状態で回収する方法を提供する。臓器培養後、回収した組織切片は、その構造が保存されて反復的臓器培養を通じてuPAR+組織内在性幹細胞を創傷修復基質内に移動を誘導して回収する方法を提供する。
【0037】
本発明は、組織によって組織内在性幹細胞のuPAR-uPA-plasmin活性度が差が出て、組織によるuPAR-uPA-plasmin活性度に分解されて消失されない創傷修復基質の組成を提供し、過度な分解を制御することができる組織によるPAI類型と濃度とを提供する。
【0038】
最終創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に移動成長したuPAR+/Nestin+組織内在性幹細胞をPAI水洗及び除去(PAI withdrawal)することにより、後続な精製過程なしに高純度の幹細胞を分離する方法を提供する。uPAR+/Nestin+組織内在性幹細胞は、高い自己複製、体外成長、分化能、組織再生誘導遺伝子発現、血管再生及び創傷修復効力を有した幹細胞治療剤及び幹細胞由来のバイオ医薬品の製造に使われる。
【0039】
また、本発明は、前記方法によって分離培養された組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を提供する。
【0040】
本発明において、「培養液」は、生体外で幹細胞の成長及び生存を支持可能にする培地、前記培地に含まれた培養された幹細胞の分泌物などを含む。培養に使われる培地は、幹細胞の培養に適切な当該分野で使われる通常の培地をいずれも含む。細胞の種類によって培地と培養条件とを選択することができる。培養に使われる培地は、望ましくは、細胞培養最小培地(cell culture minimum medium:CCMM)であって、一般的に炭素源、窒素源及び微量元素成分を含む。このような細胞培養最小培地には、例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、MEM(Minimal essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI1640、F-10、F-12、αMEM(α Minimal essential Medium)、GMEM(Glasgow’s Minimal essential Medium)、Iscove’s Modified Dulbecco’s Mediumなどがあるが、これらに制限されるものではない。
【0041】
一方、本発明は、前記幹細胞、その分泌物、培地成分をいずれも含む形態、分泌物及び培地成分のみを含む形態、分泌物のみを分離して単独で、または幹細胞と共に使用する形態、または幹細胞のみを投与して体内で分泌物を生成する形態で使用することもいずれも可能である。
【0042】
前記幹細胞は、通常の当業者に公知の所定の方法を用いて獲得することができる。
【0043】
また、本発明は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む炎症疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0044】
また、本発明は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0045】
また、本発明は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む創傷治療用薬学組成物を提供する。
【0046】
また、本発明は、前記組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞またはその培養液を有効成分として含む血管再生促進用薬学組成物を提供する。
【0047】
本発明の組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞は、特定疾患の治療のための細胞治療剤として用いられ、前記処理は、前記分子の直接的な処理または前処理である。
【0048】
前記「細胞治療剤」とは、細胞と組織の機能を復元するために、生きている自己(autologous)、同種(allogenic)、異種(xenogenic)細胞を体外で増殖、選別するか、その他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなど一連の行為を通じて治療、診断、予防目的として使われる医薬品を意味する。
【0049】
前記細胞治療剤は、目的組織に到逹することができる限り、所定の一般的な経路を通じて人体に投与される。
【0050】
本発明の薬学組成物は、有効成分の以外に薬剤学的に適し、生理学的に許容される補助剤を使用して製造可能であり、前記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤または香味剤などの可溶化剤を使用することができる。本発明の薬学組成物は、投与のために、有効成分の以外にさらに薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで医薬組成物として望ましく製剤化することができる。液状溶液で製剤化される組成物において、許容可能な薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適したものであって、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち、1成分以上を混合して使用し、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液のような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤で製剤化することができる。
【0051】
本発明の薬学組成物の薬剤の製剤形態は、顆粒剤、散剤、被覆錠、錠剤、カプセル剤、坐剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、点滴剤または注射可能な液剤及び活性化合物の徐放出型製剤などになりうる。本発明の医薬組成物は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、鼻側内、吸入、局所、直腸、経口、眼球内または皮内経路を通じて通常の方式で投与することができる。本発明の医薬組成物の有効成分の有効量は、疾患の予防または治療に要求される量を意味する。したがって、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分及び他の成分の種類及び含量、剤形の種類及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、同時使われる薬物を含めた多様な因子によって調節される。
【0052】
本発明は、固形性組織内在性幹細胞を分離する過程中、所定の外因性組織分解酵素の使用なしに、そして、組織解離過程なしに幹細胞を分離する方法を提供する。外因性組織分解酵素を使用しないので、幹細胞を分離した後、組織は、その機能と構造とを保存することができて繰り返して組織から幹細胞を分離することができる組織源として使用することができる方法を提供する。
【0053】
組織内在性幹細胞は、組織を構成する細胞のうち、占める比率が極少数であり、通常0.01%未満であると知られている。組織損傷後、体細胞数は減少し、これらの細胞を代替あるいは再生するための幹細胞は、活性化されて幹細胞の頻度は損傷前と比較して増加する。損傷後、組織内幹細胞は、細胞分裂を通じて自己複製後、子孫幹細胞(daughter progenitor cells)を生産し、daughter stem cellsは、損傷部位に移動する。本特許は、体外培養を通じて生体内組織恒常性機転を活性化して組織切片内幹細胞を自己複製及び細胞分裂を誘導し、体外で自己複製及び分裂した幹細胞を損傷部位に動員する方法を提供する。
【0054】
組織損傷後、損傷した組織周囲に創傷修復基質(provisional matrix)が形成され、これらの基質を通じてmatrix-cellular integrin pathwayが活性化され、その結果、組織損傷に作用する幹細胞は、細胞分裂後、損傷部位に移住して組織再生機転が始まる。本発明は、創傷修復基質模倣ハイドロゲルを組織切片周囲に3次元的支持を通じてmatrix-cellular integrin相互作用を極大化して組織内幹細胞を活性化し、細胞分裂、成長と創傷修復基質模倣ハイドロゲルへの移住を誘導し、ハイドロゲル内に移住した幹細胞を分離する方法を提供する。
【0055】
組織損傷の反応で組織内在性幹細胞は、活性化され、該活性化された幹細胞は、uPARあるいはnestin発現が増加する特性が報告された。uPAR及びnestin発現は、幹細胞の成長と移住とに重要な役割を担当することが明かになり、uPAR+及びnestin+細胞は、組織再生に中枢的任務を行うと知られた。uPAR及びnestinは、reparative幹細胞で発現が増加するので、uPAR及びnestinは、幹細胞の分離において主要標的標識子として適用することができる。本発明は、体外培養を通じてmatrix-cellular integrin pathway活性化の結果、組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞の細胞分裂、成長及び移住を誘導してuPAR+幹細胞を選択的に分離回収する方法を提供する。
【0056】
また、本発明は、幹細胞の活性化及び刺激に対する生理的反応の結果、uPAR-plasmin-MMP活性度によって3次元培養時に、提供した創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に移動と成長とを誘導した後、ハイドロゲル内に移動成長した幹細胞のuPAR発現及びplasmin活性度の特性によって外因性組織分解酵素なしにハイドロゲルから細胞を分離回収する方法を提供する。
【0057】
本発明は、脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋、滑液膜など代表的固形性組織から組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞を分離する共通の方法を提供する。組織内在性uPAR+及びnestin+幹細胞は、自己複製、高い体外成長、多分化特性、高い組織再生能を有して再生医療治療剤として使用することができる。
【0058】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって、本発明の範囲が、これらの実施例によって制限されないということは当業者にとって自明である。
【0059】
<実施例1>創傷修復基質模倣ハイドロゲルの製造
創傷修復模倣ハイドロゲルは、フィブリノーゲン、コラーゲン、ゼラチンあるいはこれらの高分子を混合して製造する。血漿由来のフィブリノーゲンは、2.5から10mg/ml濃度で10から50mM CaCl2を含むphosphate-buffered saline(PBS)に溶かしてフィブリノーゲン(fibrinogen)溶液を製造する。トロンビン(Thrombin)は、1から10unit/ml濃度でPBSに溶かしてトロンビン溶液を製造する。
【0060】
真皮由来のコラーゲン(Matrix BioScience、Germany)あるいはゼラチン(befMatrix Collagen、Nitta Gelatin、Japan)は、0.1%(wt./vol.)酢酸(acetic acid)に溶かして1.0~20.0mg/ml濃度のコラーゲン溶液を利用する。中性ゼラチンあるいはコラーゲン溶液を製造するための10X緩衝溶液(Reconstitution Buffer)は、50mM NaHCO3、40mM HEPES、0.01N NaOHで製造してコラーゲンあるいはゼラチン溶液と9:1の容量で混合して中性コラーゲンあるいはゼラチン溶液を製造する。
【0061】
創傷修復基質模倣ハイドロゲルは、0.25~2.5%濃度のフィブリノーゲン溶液と0.5~5I.U./mL濃度のトロンビン溶液とでフィブリンハイドロゲルを製造し、0.1~0.5%濃度範囲のコラーゲンあるいはゼラチン溶液をフィブリンハイドロゲルの製造時に、混合してフィブリン/コラーゲンあるいはフィブリン/ゼラチン混合ハイドロゲルを製造する。
【0062】
<実施例2>単層(2-dimension、2D)及び3次元(3-dimension、3D)臓器培養
培養に使用した臓器は、脂肪(adipose tissue、AT)、骨髄(bone marrow、BM)、心筋(Myocardium、Myocar)、神経(peripheral nerve、PN)、筋肉(skeletal muscle、SM)、滑液膜(synovium、Syn)を使用した。機関倫理審査委員から脳死者由来の組織を利用した研究に対する承認を獲得し、脳死者から寄贈されて組織を使用した。組織周辺に貼り付いている血腫、線維性組織ははさみで除去した後、供与された組織は、手術用scalpelを用いて0.2~2mm3サイズに細かく切片を出す。以後、組織切片は、PBSで懸濁し、1,000rpmで遠心分離した後、上澄み液を除去する洗浄過程を3回繰り返す。
【0063】
洗浄後、組織切片は、培養液に懸濁した後、2種の臓器培養法で培養する。第1の方法は、培養液に懸濁した組織切片を培養容器に播種して培養容器の表面で培養する場合を単層(monolayer、2D)臓器培養法と定義した。
【0064】
第2の方法は、フィブリン、フィブリン/コラーゲンあるいはフィブリン/ゼラチン創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に組織切片を陥入した後、3次元(3-dimension、3D)環境で培養する方法を3D臓器培養法と定義した。3次元臓器培養法は、組織切片は0.25~2.5%フィブリノーゲン溶液と混合した後、同量の0.5~5unit/mLトロンビン溶液と1:1の容量で混合した後、37℃で1時間重合過程を経た後、フィブリンハイドロゲル内に組織切片を陥入した。脂肪、骨髄、心臓、筋肉は、最終0.25~1.25%フィブリノーゲン溶液と0.25~2.5unit/mLトロンビン溶液とで創傷修復基質模倣フィブリンハイドロゲル内に組織切片を陥入した。神経及び滑液膜の組織切片は、0.25~2.5%フィブリノーゲンと0.1~0.5%コラーゲンあるいはゼラチン中性溶液、0.25~2.5unit/mLトロンビン溶液で構成された創傷修復基質模倣フィブリン/コラーゲンあるいはゼラチンハイドロゲル内に組織切片を陥入した。
【0065】
創傷修復基質模倣ハイドロゲル溶液と混合した組織切片は、100~150mmの培養容器に移した後、37℃インキュベーターで1時間据え置きして重合過程後、ゲルに転換した。臓器培養液は、45% v/v DMEM、45% v/v Ham’s F12、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum、FBS、Invitrogen)、20ng/ml EGF、2ng/ml bFGF、10ng/ml IGF、10μg/mlゲンタマイシン(gentamicin、Invitrogen)で構成した。培養液は、ゲル容量の2倍に該当する容量を添加し、培養液を添加した後、培養容器は、orbital shaker上に置いた後、30rpm速度で撹拌しながら14日間培養した。培養液は、1週間に2回培養液を取り替えた。
【0066】
ハイドロゲル分解を抑制するために、PAIであるトラネキサム酸あるいはアミノメチル安息香酸を10~500μg/mL濃度で培養する期間中、毎日培養液に添加した。脂肪、骨髄、心臓及び骨格筋臓器培養は、100~250μg/mL濃度のトラネキサム酸あるいはアミノメチル安息香酸を培養液に添加して創傷修復基質模倣ハイドロゲル分解を抑制した。末梢神経及び滑液膜の場合、250~500μg/mL濃度のトラネキサム酸あるいはアミノメチル安息香酸を培養液内に添加して培養した。
【0067】
<実施例3>臓器培養による臓器内pFAK、uPAR、nestin、Ki-67発現
2D及び3D臓器培養7日後、培養した脂肪組織、骨髄、心筋、神経、骨格筋、滑液膜の組織切片を培養容器あるいはハイドロゲルから回収した。4%中性ホルマリン溶液を用いて2時間固定した後、パラフィンブロックを製造した。パラフィンブロックから4μm厚さの切片を薄切した後、免疫化学染色を施行した。
【0068】
培養組織内integrin-FAK細胞信号伝達経路の活性程度を評価するために、anti-phospho FAK(3283、Cell Signaling Technology、USA;pFAK)、anti-uPAR(MAB807、R&D Systems、USA)及びKi-67(M7240、DAKO、USA)などの一次抗体を用いて発現を評価した。一次抗体と反応後、3回水洗を経て、HRP-conjugated 2次抗体(ImmPRESS One-Step Polymer Systems、Vector Laboratories、USA)と反応した後、DABを基質として使用して発色した後、Hematoxylin(H-3401-500、Vector Laboratories)で対照染色後、発現率及び陽性細胞の位置を評価した。
【0069】
体外臓器培養によって組織切片内の構成細胞は、活性され、該活性された細胞は、細胞分裂後、増殖して損傷あるいは消失された細胞を代替あるいは再生する組織恒常性機転が作動する。integrin細胞信号伝達経路は、組織再生を誘導する主要機転の1つであり、integrin細胞信号伝達は、細胞リガンドと細胞外基質と受容体の結合によって活性される。本実施例は、組織切片を培養容器に直接播種した後、培養容器の表面で培養した単層培養(2-dimension、2D)とハイドロゲル内に陥入後、3D(3-dimension、3D)環境で培養した組織切片内部構成細胞でintegrin細胞信号の結果、活性化される標的因子であるpFAK、uPAR及びnestinタンパク質発現を分析した。
【0070】
3D臓器培養後、組織切片内pFAK発現率は、2D臓器培養に比べて、有意に高いことを確認することができた。組織類型による臓器培養後、pFAK発現率は、差は確認され、心筋、神経及び骨格筋で3D臓器培養後、pFAK発現が有意に高く発現された(
図1A)。
【0071】
integrin信号伝達経路の下位標的因子であるuPAR発現も、pFAKと類似した傾向で3D臓器培養環境で有意に高く発現され、心筋、神経及び骨格筋で高い発現を確認することができた(
図1B)。
【0072】
integrin信号伝達を通じて臓器内の構成細胞の細胞分裂と成長とを誘導することができる。再生あるいは細胞分裂中である細胞で特徴的に発現されるnestin及びKi-67発現を通じて細胞再生能と細胞成長能とを評価した。3D臓器培養後、組織切片内の構成細胞のnestin発現は、2D臓器培養後、組織内nestin発現と比較する時、有意にその発現率が高かった(
図1C)。細胞分裂標識子であるKi-67発現率も、3D臓器培養後、組織切片で有意に高かった(
図1D)。
【0073】
体外臓器培養を通じて臓器を構成する細胞の細胞分裂及び成長を誘導することができ、インテグリンと結合することができるリガンドを3D培養環境を通じてインテグリン信号伝達を最大化することができ、ダウンストリーム(downstream)標的因子であるpFAK及びuPAR発現を強化することができ、その結果、3D臓器培養は、2D臓器培養と比較して有効に高い組織切片内の構成細胞の細胞分裂と細胞成長とを誘導することを確認した。
【0074】
創傷修復基質模倣ハイドロゲルの3D物理的刺激は、臓器内の構成細胞の信号伝達経路を活性化して細胞の分裂と成長とを有意味に増加させる方法を提供することができる。
【0075】
<実施例4>3D臓器培養後、組織内pFAK+、uPAR+及びnestin+細胞の位置及び特性
3D臓器培養前(0d)あるいは培養3、5、7及び14日後、培養した心筋組織切片をハイドロゲルから回収した。4%中性ホルマリン溶液を用いて2時間固定した後、パラフィンブロックを製造した。パラフィンブロックから4μm厚さの切片を薄切した後、免疫化学染色を施行した。培養後、組織内integrin-FAK細胞信号伝達経路の活性程度を評価するために、anti-phospho FAK(3283、Cell Signaling Technology、USA;pFAK)、anti-uPAR(MAB807、R&D Systems、USA)、nestin(MAB5326、Millipore、USA)及びKi-67(M7240、DAKO、USA)などの一次抗体を用いて発現を評価した。一次抗体と反応後、3回水洗を経て、HRP-conjugated 2次抗体(ImmPRESS One-Step Polymer Systems、Vector Laboratories、USA)と反応した後、DABを基質として使用して発色した後、Hematoxylin(H-3401-500、Vector Laboratories)で対照染色後、発現率及び陽性細胞の位置を評価した。
【0076】
心筋を創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に陥入後、3D臓器培養を施行した後、心筋内pFAK+、uPAR+及びnestin+細胞特性を究明した。培養前、pFAK、uPAR及びnestin発現率は、6%未満であった。しかし、3D臓器培養後、培養期間と比例してpFAK、uPAR及びnestin陽性細胞の数は、有意に増加した。培養2週後、組織切片内pFAK、uPAR及びnestin発現率は、30%以上であった(
図2及び
図3)。pFAK、uPAR及びnestinは、成熟した体細胞の間の癲癇にある細胞から発現され、毛細血管の血管内皮細胞よりも毛細血管周囲の血管周囲細胞でpFAK、uPAR、nestinが発現された。
【0077】
細胞分裂標識子であるKi-67は、成熟した体細胞で発現されず、培養前、1%未満で発現された。しかし、体外3D臓器培養後、Ki-67発現率は、培養期間と比例して増加し、臓器培養2週後、心筋内Ki-67発現率は、45.7%であって、3D臓器培養を通じて心筋内細胞の分裂と成長とを誘導することができるという結果を確認することができ、Ki-67も、血管周囲細胞で主に発現された(
図4)。
【0078】
本実施例は、3D創傷修復基質模倣ハイドロゲルを通じて心筋内細胞分裂と成長とを誘導することができ、臓器培養を通じてpFAK+、uPAR+及びnestin+血管周囲細胞の分裂と成長とを誘導することができることを確認した。
【0079】
<実施例5>3D臓器培養を通じた組織内uPAR+及びnestin+細胞の創傷修復基質模倣ハイドロゲル内に移動及び成長誘導
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、3D臓器培養を施行した。臓器培養液は、ハイドロゲル容量の2倍を添加し、培養容器は、orbital shaker上に置いた後、30rpm速度で撹拌しながら14日間培養した。ハイドロゲル分解を抑制するために、PAIを培養液に添加した。体外培養中、細胞分裂した細胞をラベルするために、5μM bromodeoxyuridine(B5002、Sigma-Aldrich、USA)を培養液に7日間毎日添加した。培養液は、1週間に2回培養液を取り替えて2週間培養した。
【0080】
3D臓器培養3、7及び14日後、培養した組織及びハイドロゲルを同時に回収した。4%中性ホルマリン溶液を用いて2時間固定した後、パラフィンブロックを製造した。パラフィンブロックから4μm厚さの切片を薄切した後、免疫化学染色を施行した。
【0081】
ハイドロゲル内に移動成長した細胞のuPAR、nestin及びBrdU発現を評価するために、anti-uPAR(MAB807、R&D Systems、USA)、-nestin(MAB5326、Millipore、USA)及び-BrdU(347580、BD Biosciences、USA)1次抗体を使用した。一次抗体と反応後、3回水洗過程を経て、HRP-conjugated 2次抗体(ImmPRESS One-Step Polymer Systems、Vector Laboratories、USA)と反応した後、DABを基質として使用して発色し、Hematoxylin(H-3401-500、Vector Laboratories)で対照染色後、発現率を評価した。
【0082】
創傷修復基質模倣ハイドロゲルは、細胞の移動と成長とを支持することができる細胞外基質への役割を担当しており、細胞移動に必須的な細胞付着因子であるfibronectin、collagen、fibrinなどの提供を通じて、これを果たしうる。3D創傷修復基質ハイドロゲルを通じて収容体-リガンド結合を通じてintegrin-pFAK細胞信号伝達経路を活性化して、臓器内uPAR+及びnestin+細胞の細胞分裂と成長とを誘導し、uPAR+及びnestin+細胞を創傷修復基質模倣ハイドロゲルに動員、移動と成長とを誘導することができる。
【0083】
3D心筋臓器培養期間と比例してハイドロゲル内に移動成長する細胞が増加することを確認することができた(
図5)。ハイドロゲル内に移動成長した細胞は、紡錘状にハイドロゲルと結合して細胞質が拡張されることを確認することができる。
【0084】
心筋からハイドロゲル内に移動成長した細胞は、uPAR及びnestin発現率が88.5%及び95.4%以上であって、組織内臓器培養後、細胞分裂及び成長した細胞と同じuPAR+及びnestin+特性を示したことを確認することができる。ハイドロゲル内に移動した細胞89.4%以上でBrdU陽性であって、これは、臓器培養中、添加したBrdUをuptakeしてDNAを合成した細胞であるということを意味するので、ハイドロゲル内の細胞ほとんどは、臓器培養後、組織内細胞が分裂及び成長後、移動した細胞であるということを証明する。臓器培養前、心筋では、BrdU+細胞は検出されず、uPAR+及びnestin+細胞は、2%未満であった。
【0085】
脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片の3D臓器培養2週後、創傷修復基質模倣ハイドロゲル内の細胞は、90%前後uPAR陽性であり、90%以上BrdU陽性であって、臓器培養を通じて組織内在性細胞は、細胞分裂及び成長し、ハイドロゲルに移動した細胞であるということを確認することができ、組織による有意な差は観察されていない(
図6)。
【0086】
<実施例6>3D臓器培養後、ハイドロゲル内に移動成長した細胞の分離
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、3D臓器培養を施行した。臓器培養液は、ハイドロゲル容量の2倍を添加し、培養容器は、orbital shaker上に置いた後、30rpm速度で撹拌しながら14日間培養した。ハイドロゲル分解を抑制するために、PAIを培養期間中、毎日添加してハイドロゲル内に移動成長した細胞のPA活性によって創傷修復基質模倣ハイドロゲル分解を抑制した。
【0087】
3D臓器培養後、回収した組織切片のuPAR mRNA及びplasmin活性度を評価した。10mg組織切片からtissue lysateを製造した後、plasmin活性度は、Plasmin Activity Assay Kit(ab204728、abcam)を用いて分析した。Tissue lyateにfluorescent substrateを添加した後、37℃で20分間反応後、蛍光強度を測定してplasmin活性度を測定した。Plasmin活性度は、次の数式(△RFU360/450nm=(RFU2-RFU2BG)-(RFU1-RFU1BG))で算定した。組織切片内のuPAR mRNA発現率は、10mg組織切片からtotal RNAを抽出した後、逆転写酵素反応後、cDNAを生成し、real time qPCRを通じて分析した。
【0088】
3D臓器培養14日後、培養液を除去した。DMEMを添加した後、30rpm速度で30分間撹拌しながら洗浄し、洗浄液は除去した。この洗浄過程を3回繰り返した。洗浄後、ハイドロゲル内に移動成長した細胞は、次のような2種の方法で分離回収した。第1の方法は、培養液に1,000unit/mL urokinaseを添加した後、培養容器に添加した後、2時間ハイドロゲルを分解し、該分解されたハイドロゲルから遊離された細胞及び組織切片は、tubeに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去し、回収した細胞及び組織切片pelletは、培養液で懸濁した。
【0089】
PAI withdrawal方法でハイドロゲルから細胞を分離及び回収することができる。14日間臓器培養後、培養液を除去した後、DMEMを用いて3回洗浄して培養液及びハイドロゲル内に残っているPAIを除去した。新鮮な培養液を添加した後、30rpm速度で撹拌しながら1時間培養し、培養液内PAIは添加しない。ハイドロゲルから分離されて遊離される細胞は、transfer pipetteを用いて回収した後、tubesに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去し、回収した細胞及び組織切片pelletは、培養液で懸濁した。
【0090】
ハイドロゲルから分離回収した細胞は、培養液で懸濁した後、hemocytometerを総細胞数を算定し、回収した細胞は、flow cytometryを用いてuPAR発現率を分析した。
【0091】
3D臓器培養後、組織内細胞分裂後、成長したuPAR+/nestin+細胞は、ハイドロゲル内に移動及び成長を誘導し、ハイドロゲル内に移動成長した細胞を外因性proteaseなしにuPAR+/nestin+細胞自体のplasmin活性度によってハイドロゲルを分解して、uPAR+/nestin+細胞を選択的に分離し、回収する方法を本実施例を通じて提供しようとする。
【0092】
臓器培養前後、組織切片内のuPAR mRNA発現及びplasmin活性度を評価した。体外培養前にも、臓器によってuPAR mRNA発現及びplasmin活性度は差があり、心筋、神経及び骨格筋でuPAR mRNA発現及びplasmin活性度が他の組織よりも高かった(
図7)。臓器培養後、評価したあらゆる組織切片で培養前と比較してuPAR mRNA発現及びplasmin活性度が有意に増加した。特に、心筋、神経及び骨格筋でmRNA発現とplasmin活性度が最も高く測定された。Plasmin活性度は、uPAR発現と比例的関係なので、臓器培養を通じて組織内のuPAR発現の増加を誘導することができ、臓器培養後、uPAR増加を通じて組織内のplasmin活性度を増加させる方法を提供する。
【0093】
3D臓器培養中、培養液内Plasminogen Activator Inhibitor(PAI)を添加し、該添加したPAIは、臓器及び細胞の過度なplasmin及びprotease活性を調節してハイドロゲル分解を抑制することができる。臓器培養を通じて組織内細胞分裂及び成長した細胞をハイドロゲル内に移動と成長とを誘導した後、PAIを培養液及びハイドロゲルから水洗及び洗浄過程を通じて除去(withdrawal)すれば、臓器及び細胞内在性plasmin及びprotease活性のみでもハイドロゲル分解を誘導することができ、その結果、ハイドロゲル内に移動成長した細胞が遊離され、該遊離された細胞を分離及び回収が可能である。
【0094】
PAI withdrawalは、PAIを含有した培養液を除去した後、DMEMで3回洗浄を通じてハイドロゲル及び臓器内に残存するPAIを洗浄過程を通じて除去し、PAIが含まれていない培養液をハイドロゲル容量2倍を添加して培養した。培養30分後、ハイドロゲルは、PAI withdrawal結果、分解され始め、ハイドロゲルが分解されながらハイドロゲル内に移動成長した細胞は、ハイドロゲルから遊離されて細胞-細胞間凝集し、培養2時間後、組織切片及び移動成長した細胞周囲のハイドロゲルは、完全に分解され、その結果、ハイドロゲル内の細胞が解離される結果がもたらされる(
図8)。本実施例を通じて、PAI withdrawalのみで細胞内在性plasmin及びprotease活性で創傷修復基質模倣ハイドロゲルが消失され、ハイドロゲル内の細胞は、培養液内に遊離され、その結果、培養液内に遊離された細胞は、細胞質が収縮され、凝集された形態で分離回収することができる。
【0095】
臓器培養中、PAI添加を通じてハイドロゲル分解を抑制することができ、ハイドロゲル内の細胞は、細胞質拡張の結果、紡錘状を示す。しかし、培養液内のPAI withdrawalを通じて細胞周辺のハイドロゲルから分解され始め、その結果、細胞は、細胞質が収縮し、細胞-細胞間接合の結果、細胞は凝集体が形成され、凝集された細胞は、培養液内に遊離される(
図9)。
【0096】
組織学的方法でPAI withdrawal前、ハイドロゲル内の細胞は、細胞質が拡張された形状を確認することができるが、PAI withdrawal後、ハイドロゲルが分解される始まれば、細胞が付着することができるハイドロゲルが消失されて、細胞-細胞間接合の結果、細胞は凝集され、ハイドロゲルから分離されて遊離されることを検証することができる(
図10)。ハイドロゲルから遊離されて凝集した細胞いずれもuPARを発現する特性を示して、uPAR発現が高いほどplasmin活性度が増加し、PAI withdrawalのみでもハイドロゲル内のuPAR+細胞を分離することができる根拠を確認することができた(
図10)。
【0097】
ハイドロゲル内に移動成長した細胞は、PAI withdrawalあるいはurokinase処理後、分離して回収することができる。本発明は、urokinase処理なしにPAI withdrawalでもハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離する方法の有用性を比較評価した。
【0098】
実施例を通じて、PAI withdrawal方法でも、urokinase処理を通じて細胞数と同等な細胞を分離し、回収することができる結果を確認することができた(
図11A)。組織100mg当たり2週間臓器培養後、2百万個以上の細胞を分離回収することができ、urokinase処理後、回収した細胞数よりも低かったが、有意な差はなかった。
【0099】
しかし、PAI withdrawal後、回収した細胞のuPAR発現率は、urokinase処理後、回収した細胞よりも有意に高かった(
図11B)。特に、uPAR発現率及びplasmin活性度が高い組織でuPAR+細胞を選択的に分離する収率が高かった。これは、uPAR+細胞でハイドロゲル分解活性度が高く、その結果、PAI除去及び洗浄でuPAR+細胞を選択的に分離効率が高い方法であるということを検証することができた。
【0100】
<実施例7>3D臓器培養後、回収した組織切片の反復的臓器培養及び細胞分離
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、3D臓器培養を施行した。臓器培養液は、ハイドロゲル容量の2倍を添加し、培養容器は、orbital shaker上に置いた後、30rpm速度で撹拌しながら14日間培養した。ハイドロゲル分解を抑制するために、PAIを培養期間中、毎日添加してハイドロゲル内に移動成長した細胞のplasmin活性によって創傷修復基質模倣ハイドロゲル分解を抑制した。
【0101】
3D臓器培養14日後、培養液を除去した。DMEMを添加した後、30rpm速度で30分間撹拌しながら洗浄し、洗浄液を除去した。3回洗浄過程を繰り返して培養液及びハイドロゲル内に残っているPAIを除去した。新鮮な培養液を添加した後、30rpm速度で撹拌しながら2時間培養し、培養液内PAIは添加しない。ハイドロゲルから分離されて遊離される細胞及び組織切片をtransfer pipetteを用いて回収した後、tubesに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去した。組織切片が高い比重の結果、細胞よりも早く沈殿されるので、細胞及び組織切片pelletをDMEMで分散させた後、30秒間据え置きしながら組織切片の沈殿を誘導し、上澄み液のみを新たなtubeに移し、この過程を3回繰り返して回収した細胞及び組織切片を分離した。
【0102】
PAI withdrawal方法でハイドロゲルから分離した組織切片は、再びハイドロゲル内に陥入させた後、実施例2で記述した方法で3D臓器培養を行い、2週後、実施例7で記述した方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞及び組織切片を分離回収した。PAI withdrawal後、回収した組織切片は、3回さらに連続した3D臓器培養を通じて過程を繰り返して組織内細胞を移動成長を誘導してハイドロゲル内の細胞を分離回収し、分離回収した総細胞数をhemocytometerを用いて測定した。
【0103】
本実施例は、PAI withdrawal後、構造が保存された組織切片を回収し、該回収した組織切片を反復的な臓器培養を施行して、臓器培養後、ハイドロゲル内に移動後、成長した細胞を分離し、回収する方法を提供する。Urokinaseのような外因性protease処理は、ハイドロゲルと共に陥入された組織切片が分解され、その結果、組織切片の構造機能的微細環境が消失される。
【0104】
本実施例は、PAI withdrawalを通じて外因性protease処理なしに組織内成長後、移動した細胞及び組織切片を分離し、回収し、同時に回収した組織切片も、反復的な臓器培養を施行した。臓器培養後、回収した組織切片を使用して3回の連続した臓器培養を施行し、最初の臓器培養と類似した収率で細胞を回収することができる結果を確認した(
図12)。PAI withdrawal方法は、3D臓器培養後、ハイドロゲル内に移動成長した細胞と共に陥入した組織切片の構造機能的微細環境を保存することができる方法であるということを確認することができ、反復的な臓器培養を通じて組織内在性細胞を高効率、そして、安定して分離する方法であるということを確認することができる。
【0105】
<実施例8>PAI withdrawal及びurokinase処理後、ハイドロゲルから分離した細胞の培養
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、3D臓器培養を施行した。臓器培養液は、ハイドロゲル容量の2倍を添加し、培養容器は、orbital shaker上に置いた後、30rpm速度で撹拌しながら14日間培養した。ハイドロゲル分解を抑制するために、PAIであるトラネキサム酸を培養液に毎日添加した。
【0106】
3D臓器培養14日後、培養液を除去した。DMEMを添加した後、30rpm速度で撹拌しながら30分間洗浄し、この洗浄過程を3回繰り返した。洗浄後、ハイドロゲル内に移動成長した細胞は、実施例6で提示したPAI withdrawalあるいはurokinase方法で細胞を分離後、回収した。14日間臓器培養後、培養液を除去した後、DMEMを用いて3回洗浄して培養液及びハイドロゲル内に残っているPAIを除去した。新鮮な培養液を添加した後、30rpm速度で撹拌しながら1時間培養し、培養液内PAIは添加しない。ハイドロゲルから分離されて遊離される細胞は、transfer pipetteを用いて回収した後、tubesに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去し、回収した細胞及び組織切片pelletは、培養液で懸濁した。
【0107】
Urokinase処理は、3回洗浄後、培養液に1,000unit/mL urokinaseを添加した後、2時間ハイドロゲルを分解し、該分解されたハイドロゲルから遊離された細胞及び組織切片は回収してtubeに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去し、回収した細胞及び組織切片pelletは、培養液で懸濁した。
【0108】
ハイドロゲルから分離回収した細胞は、polystyrene培養容器cm2当たり5,000個の細胞を播種した後、培養液を添加した。単層培養環境でハイドロゲルから分離回収した細胞の付着と成長特性とを顕微鏡を用いて評価した。
【0109】
PAI withdrawal後、ハイドロゲルから遊離されて細胞凝集体が形成されることを確認することができ(
図13A)、回収した細胞は、培養液で懸濁した後、小さな円状の凝集体で構成され(
図13B)、PS培養容器に播種して単層環境で培養した。細胞間凝集された状態で回収した細胞は、播種30分後、培養容器に付着し(
図13C)、播種1時間後、播種した細胞の細胞質は拡張され(
図13D)、培養2時間後、細胞は安定して付着し、細胞凝集体周辺の細胞が成長することを確認することができた(
図13E)。
【0110】
脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋、滑液膜などあらゆる組織切片の臓器培養後、PAI withdrawalを通じて細胞を安定して分離回収することができ、回収した細胞は、培養液と混合後、培養容器に播種すれば、30分以内に回収した細胞いずれも培養容器に付着し、細胞質が安定して拡張することを確認することができ、組織による有意な差はなかった(
図14)。
【0111】
単層環境で播種培養する細胞は、高い成長率を示し、培養2日後、播種された細胞周辺に成長して周辺に拡大され、単層培養環境でも、PAI withdrawalを通じて分離回収した細胞は、単層環境で培養時にも、高い成長率が保持されることを確認することができた(
図15)。
【0112】
<実施例9>PAI withdrawal後、分離した細胞の免疫表現の特性
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、3D臓器培養を施行した。臓器培養液は、ハイドロゲル容量の2倍を添加し、培養容器は、orbital shaker上に置いた後、30rpm速度で撹拌しながら14日間培養した。ハイドロゲル分解を抑制するために、PAIであるトラネキサム酸を濃度で培養液に添加し、培養した。
【0113】
3D臓器培養14日後、培養液を除去した。DMEMを添加した後、30rpm速度で撹拌しながら30分間洗浄し、この洗浄過程を3回繰り返した。洗浄後、ハイドロゲル内に移動成長した細胞は、PAI withdrawal方法で細胞を分離後、回収した。14日間臓器培養後、培養液を除去した後、DMEMを用いて3回洗浄して培養液及びハイドロゲル内に残っているPAIを除去した。新鮮な培養液を添加した後、30rpm速度で撹拌しながら1時間培養し、培養液内PAIは添加しない。ハイドロゲルから分離されて遊離される細胞は、transfer pipetteを用いて回収した後、tubesに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去し、回収した細胞及び組織切片pelletは、培養液で懸濁した。
【0114】
PAI withdrawal方法あるいはurokinase処理後、分離回収した細胞は、PBSに懸濁した後、flow cytometryを用いて免疫表現の特性を分析した。間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSC)標識子であるCD29、CD44、CD105、CD140bと共にuPAR及びnestin発現率を評価した。造血細胞標識子としてCD34及びCD45、血管内皮細胞標識子としてCD31を用いて当該標識子の発現率を評価した。
【0115】
Urokinase処理あるいはPAI withdrawalの結果、ハイドロゲルから移動成長した細胞を分離後、回収することができる。細胞を回収する方法と関係なく培養したあらゆる組織からハイドロゲル内に移動成長した細胞は、CD29、CD73、CD105及びCD140b発現率が90%以上であって、間葉系幹細胞と同じ免疫表現の特性を示した(
図16A)。ハイドロゲルから分離回収した細胞の間葉系幹細胞標識子の発現率は、分離方法による差はなかった。
【0116】
しかし、本実施例において、あらゆる組織切片の臓器培養後、PAI withdrawal処理で分離回収した細胞でuPAR及びnestin発現率は、90%以上の発現率を示した。一方、urokinase処理後、回収した細胞の場合、30~67%範囲の発現率を示した。ハイドロゲル内のuPAR+及びnestin+細胞の高いplasmin活性度の特性によってPAI withdrawalを通じて選択的に分離し、回収することができる結果を確認することができた。一方、urokinase処理は、ハイドロゲル内の多様な免疫表現の特性を有した細胞が混合されて回収されることを確認することができた(
図16B)。
【0117】
組織内に存在する造血細胞及び血管内皮細胞は、組織から細胞を分離する過程中に混合され、CD31+、CD34+及びCD45+細胞を確認して、これらの細胞の混合程度を確認することができる。PAI withdrawal方法でハイドロゲルから分離回収した細胞の場合、CD31、CD34及びCD45発現率は、1%未満であるが、Urokinase処理後、分離回収した細胞は、2.8~7.0%であって、造血細胞及び血管内皮細胞の混合が高いことを確認することができた(
図17)。
【0118】
本実施例を通じて、PAI withdrawalを通じて組織からハイドロゲル内に移動したuPAR+及びnestin+細胞を選択的に分離し、回収する方法であるということを確認することができ、同時に分離過程中、造血細胞及び血管内皮細胞の混合は最小化することができた。
【0119】
<実施例10>PAI withdrawal後、分離回収したuPAR+/nestin+細胞の自己複製能
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、2週間3D臓器培養を施行した後、実施例6に記述されたPAI withdrawal及びurokinawe方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離回収した。
【0120】
ハイドロゲルから分離回収した細胞は、tubesに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去した。細胞沈殿物は、培養液で浮遊した後、mL当たり1.0E+06細胞密度に合わせた。ハイドロゲルから分離回収した細胞の自己複製能を検証するために、colony forming assay(CFU)を通じて評価した。100mmの培養容器に6,000個の細胞を播種した後、2週間培養し、培養後、1% crystal violetで染色した。洗浄後、2mm以上直径のcolony数を測定した。
【0121】
組織類型によるCFU形成頻度は、差はあったが、あらゆる組織切片でPAI withdrawalを通じてハイドロゲルから分離回収した細胞でurokinase処理後、回収した細胞と比較して有意に高かった(
図18)。特に、心筋、神経及び骨格筋から由来した細胞は、他の組織から由来した細胞と比較して高いcolony形成能を示した。Urokinase処理後、分離した細胞の場合、CFU頻度は、3.1~8.4%であったが、PAI withdrawal方法で分離した細胞は、8.8~37.9%であって、高いCFU頻度を有したと確認された。
【0122】
自己複製能は、幹細胞の主要特性の1つであり、3D臓器培養は、組織内幹細胞を活性化してハイドロゲル内に移動成長を誘導することができ、ハイドロゲル内幹細胞は、PAI withdrawal方法を通じて自己複製力価が高い幹細胞を選択的に分離回収することができ、これは、plasmin活性度が高いuPAR+/nestin+細胞が高い力価の幹細胞であるということを証明する結果である(
図18)。
【0123】
<実施例11>PAI withdrawal後、分離した細胞の体外成長能
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、2週間3D臓器培養を施行した後、実施例6に記述されたPAI withdrawal及びurokinase方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離回収した。
【0124】
ハイドロゲルから分離回収した細胞は、tubesに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去した。細胞沈殿物は、培養液で浮遊した後、mL当たり1.0E+06細胞密度に合わせた。ハイドロゲルから分離回収した細胞の体外成長能を検証するために、細胞倍加時間(population doubling time、PDT)及び細胞倍加レベル(population doubling level、PDL)を分析して評価した。T75 flaskにcm2当たり3,000個の細胞を播種した後、7日間培養した後、trypsin/EDTA処理後、細胞を収集し、hemocytometerを通じて総細胞数を計算した。播種細胞数、回収総細胞数、培養期間を通じてPDT及びPDLを計算して比較した。PDTは、次の公式によって算定した。PDT=[(培養時間)/((logN2-logN1)/log2)]数式を用いて算定し、N1は、播種時の細胞数であり、N2は、培養後の回収した細胞数である。PDLは、次の拱式によって計算した。PDL=[PDL0+3.322(logN2-logN1)]数式を用い、N1は、播種時の細胞数であり、N2は、細胞培養後の回収した細胞数である。
【0125】
体外成長能が高いほど培養中である細胞で細胞周期標識子であるKi-67発現率が高い。体外細胞成長能は、anti-Ki67発現率をflow cytometryで分析して比較分析した。
【0126】
UrokinaseあるいはPAI withdrawal処理後、ハイドロゲルから移動成長した細胞を分離し、回収した細胞の体外成長能を比較分析した。PAI withdrawalを通じて分離回収した細胞でurokinase処理後、確保した細胞と比較してPDTは有意に低く、PDLは有意に高かった。自己複製能と同じ傾向でPAI withdrawalを通じて分離回収した細胞の低いPDT及び高いPDLで優れた体外成長能を有した細胞であるということを確認することができた(
図19)。
【0127】
PAI withdrawal処理後、ハイドロゲルから分離回収した細胞の高い成長能を検証するために、Ki-67発現率をflow cytometryを通じて分析した。Ki-67標識子は、細胞周期中である細胞を意味するので、Ki-67発現率が高いほど細胞成長能が高いということを意味する指標である。PAI withdrawalを通じて確保した細胞は、58.5~75.4%の高いKi-67発現率を示し、これは、urokinase処理後、確保した細胞での33.6~48.7%と比較して有意に高かった(
図20)。
【0128】
以上の結果、PAI withdrawalは、高い体外成長能を有した細胞を選択的に分離する方法であるということを確認することができ、これは、plasmin活性度が高いuPAR+/nestin+細胞が高い成長能を有した細胞であるということを支持する結果である。
【0129】
<実施例12>PAI withdrawal後、分離した細胞の分化能
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、2週間3D臓器培養を施行した後、実施例6に記述されたPAI withdrawal及びurokinawe方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離回収した。
【0130】
ハイドロゲルから分離回収した細胞は、tubesに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去した。細胞沈殿物は、培養液で浮遊した後、mL当たり1.0E+06細胞密度に合わせた。ハイドロゲル内の細胞の脂肪細胞及び骨芽細胞への分化能を評価した。2.0E+05細胞を24-well培養容器に播種した後、90% DMEMに10% CS、0.5mM 3-isobutyl-1-methylxanthine(Sigma)、80μM indomethacin(Sigma)、1μM DEX、5μg/mL insulinが添加された分化培地を添加した後、14日間培養した。幹細胞の脂肪細胞への分化程度は、分化誘導2週後に細胞質内の脂肪蓄積の指標である0.5% Oil Red O(Sigma)溶液を常温で1時間染色して細胞質内のtriglyceride含量をTriglyceride-Glo kit(Promega)を用いて評価した。骨芽細胞への分化能を評価するために、2.0E+05個の細胞を24-well培養容器に播種した後、1μM DEX、50μM Ascorbic Acid、10mM β-glycerol phosphate、10% calf serumを含有したα-MEMを添加した後、2週間培養して分化を誘導した。骨芽細胞への分化有無は、分化誘導2週後、Alizarin Red(Sigma)を添加した後、染色し、ミネラルの沈着程度は、520nmで吸光度を測定してoptical densityで比較分析した。
【0131】
図21は、骨髄から分離回収した細胞を骨芽細胞(左)及び脂肪細胞(右)に分化を誘導した後、calcium phosphate crytal蓄積と沈着とをalizarin red染色を通じて確認することができ、脂肪細胞に分化を誘導した細胞は、細胞質内の脂肪質の蓄積をoil red O染色を通じて確認することができる。あらゆる組織切片から由来した細胞いずれもで骨芽細胞及び脂肪細胞への分化能を有したことを確認することができた。
【0132】
沈着あるいは蓄積されたmineral cryostal及びfat vacuoleを溶解後、測定したOD数値を通じて骨芽細胞及び脂肪細胞への分化能を比較評価した。あらゆる組織切片でPAI withdrawalでハイドロゲルから分離回収した細胞で骨芽細胞及び脂肪細胞への分化能がurokinase処理後、分離回収した細胞よりも有意に高いことを確認することができた(
図22)。骨芽細胞への分化は、骨髄、心筋、骨格筋由来の細胞で高い能力を示し、脂肪細胞への分化は、脂肪、骨格筋及び滑液膜で高い能力を示した。しかし、組織切片由来と関係なくPAI withdrawal方法でハイドロゲルから分離回収した細胞に有意に高い骨芽細胞及び脂肪細胞への分化能を確認するにつれて、plasmin活性度が高いuPAR+/nestin+細胞で多分化能が高い幹細胞であるということを確認することができた。
【0133】
<実施例13>PAI withdrawal後、分離した細胞の組織再生の誘導能
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、2週間3D臓器培養を施行した後、実施例6に記述されたPAI withdrawal及びurokinawe方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離回収した。
【0134】
ハイドロゲルから分離回収した細胞は、tubesに移した後、3,000rpmで10分間遠心分離後、上澄み液を除去した。細胞沈殿物は、培養液で浮遊した後、mL当たり1.0E+06細胞密度に合わせた。T175 flaskに5.0E+06細胞を播種した後、3日間培養した後、TRIzol 1mLを添加した後、cell lysateを回収し、total RNAを分離する前まで-20℃冷凍保管した。PureLink RNAキット(Thermo Fisher)を用いてtotal RNAを抽出精製し、逆転写酵素(Reverse Transcriptase)を用いてcDNAを合成した。組織保護及び再生に主な役割を担当するbasic FGF(bFGF)、HGF、IGF、SDF-1 mRNA発現は、臍帯血由来間葉系幹細胞(cord blodd-derived mesenchymal stem cells、CB-MSC)に比べて、発現率で計算して比較評価した。Target mRNA特異始発体とSYBR Green Real-Time PCR kitを用いてリアルタイム遺伝子増幅を通じてTarget mRNA遺伝子を増幅し、臍帯血由来間葉系幹細胞(CB-MSC)に比べて、mRNA発現率を2-ΔΔCt方法で評価した。
【0135】
UrokinaseあるいはPAI withdrawal処理後、ハイドロゲルから移動成長した細胞を分離し、回収した細胞の組織再生の誘導能は、関連mRNA発現を通じて比較分析した。起源した組織によって組織再生を誘導する遺伝子発現が異なり、心筋、神経、そして、骨格筋由来の細胞でこれらの遺伝子発現が高く、HGF及びSDF-1 mRNAは、心筋由来の細胞が高かったが、神経由来の細胞では、IGF mRNA発現が高かった(
図23)。PAI withdrawalで分離回収した細胞でurokinase処理後、分離回収した細胞に比べて、あらゆる組織再生遺伝子発現が有意に高かった。このような結果は、uPAR発現は高い組織再生調節遺伝子発現と比例的関連性を確認することができる。
【0136】
<実施例14>uPAR+細胞のplasmin活性度及びnestin発現率
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、2週間3D臓器培養を施行した後、実施例6に記述されたurokinase方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離回収した。以後、FACSAria(BD Bioscience)を通じてuPAR+(UK+uPAR+)とuPAR-(UK+uPAR-)細胞を分離して7日間単層環境で培養した後、plasmin活性度とnestin発現率とを評価した。PAI withdrawal方法でハイドロゲルから分離回収した細胞は、uPAR発現率が90%以上なので、二次的なuPAR+細胞を分離しなかった。Plasmin活性度は、実施例6で記述した方法によって施行し、nestin発現率は、flow cytometryを用いて評価した。
【0137】
uPAR+細胞で有意に高いplasmin活性度を確認することができた(
図24、左)。Urokinase処理後、分離培養したUK+uPAR+細胞とPAI withdrawal後、分離培養した細胞でUK+uPAR-細胞と比較して有意に高いplasmin活性度を示した。起源した組織によって細胞のplasmin活性度は、差があり、心筋、神経及び骨格筋で高く、組織内在性細胞の起源した組織によってplasmin活性度が決定される特性を示した。
【0138】
以上の結果は、uPAR+細胞でplasmin活性度とnestin発現率と密接な関連性を確認することができた。
【0139】
<実施例15>uPAR+細胞の自己複製及び体外成長能
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、2週間3D臓器培養を施行した後、実施例6に記述されたurokinase方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離回収した。以後、FACSAria(BD Bioscience)を通じてuPAR+(UK+uPAR+)とuPAR-(UK+uPAR-)細胞を分離して7日間単層環境で培養した後、自己複製及び成長能を評価した。PAI withdrawal方法でハイドロゲルから分離回収した細胞は、uPAR発現率が90%以上なので、二次的なuPAR+細胞を分離しなかった。自己複製能は、実施例10に記述した方法によって施行し、成長能は、Ki-67発現率をflow cytometryを用いて評価した。
【0140】
uPAR+細胞で有意に高い自己複製能を確認することができた。UK+uPAR+細胞及びPAI withdrawal細胞でCFU頻度は、12.5~37.5%であったが、UK+uPAR-細胞では、3.1~8.8%頻度であり、uPAR+細胞で有意に高い自己複製能を保有したことを確認することができた(
図25、左)。
【0141】
自己複製能と体外成長能は、密接な関連性を有し、uPAR+細胞にKi-67発現率が40.8~82.4%であって、uPAR-細胞でKi-67発現率28.1~45.7%よりも有意に高い成長能を保有したことを確認することができた(
図25、右)。心筋、神経及び骨格筋由来のuPAR+細胞で他起源組織と比較してCFU形成能とKi-67発現率とが高かった。
【0142】
<実施例16>uPAR+細胞の抗炎症能
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、2週間3D臓器培養を施行した後、実施例6に記述されたurokinase方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離回収した。以後、FACSAria(BD Bioscience)を通じてuPAR+(UK+uPAR+)とuPAR-(UK+uPAR-)細胞を分離して7日間単層環境で培養した後、抗炎症能を評価した。PAI withdrawal方法でハイドロゲルから分離回収した細胞は、uPAR発現率が90%以上なので、二次的なuPAR+細胞を分離しなかった。
【0143】
抗炎症能は、細胞から分泌された因子を含む条件培地(conditioned media)を用いて評価した。条件培地を製造するために、UK+uPAR+、UK+uPAR-及びPAI withdrawal細胞は、T175 flaskにcm2当たり40,000個の細胞を播種したDMEM/F12無血清培地を添加した後、1週間培養した。
【0144】
RAW 264.7細胞は、90% RPMi 1640/10% calf serumに懸濁した後、cm2当たり100,000個の細胞を12-multiwell plateに播種して1日間培養した。100μg/mL LPSを培養液に添加してRAW 264.7細胞を減作させた。LPS減作時に、条件培地を培養液と1:10の比率で添加して抗炎症能を評価した。抗炎症評価指標は、RAW 264.7細胞から分泌されるTNFα及びIL-1β分離レベルをELISA方法で測定して比較評価した。
【0145】
RAW 264.7細胞は、LPS刺激後、TNFα及びIL-1β分泌レベルが5倍増加した。ハイドロゲルから分離回収した組織内在性幹細胞から分泌する物質は、RAW 264.7細胞の炎症性サイトカイン分離を30~70%抑制する能力を確認することができた(
図26)。UK+uPAR+細胞及びPAI withdrawal細胞で製造した条件培地は、UK+uPAR-細胞に比べて、有意に高いTNFα及びIL-1β分泌抑制能を示した。起源した組織と無関係にuPAR+細胞は、uPAR-細胞と比較して高い抗炎症の効力を確認することができた。
【0146】
<実施例17>uPAR+細胞の血管内皮細胞及び線維芽細胞の成長誘導の効力
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、2週間3D臓器培養を施行した後、実施例6に記述されたurokinase方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離回収した。以後、FACSAria(BD Bioscience)を通じてuPAR+(UK+uPAR+)とuPAR-(UK+uPAR-)細胞を分離して7日間単層環境で培養した後、抗炎症能を評価した。PAI withdrawal方法でハイドロゲルから分離回収した細胞は、uPAR発現率が90%以上なので、二次的なuPAR+細胞を分離しなかった。
【0147】
血管内皮細胞は、human umbilical vein endothelial cell(HUVEC)を使用し、ヒト真皮由来の線維芽細胞(dermal fibroblast、DF)を使用した。条件培地の当該細胞の成長誘導の効力を試験した。実施例16で記述された方法で製造した条件培地を製造して効力を試験した。HUVEC細胞及びDFは、99% DMEM/1% calf serum培養液に懸濁した後、cm2当たり4,000個の細胞を24-multiwell plateに播種した。条件培地は、培養液と1:9の比率で添加した後、3日間培養し、培養後、細胞数は、PicoGreen dsDNA quantitation kit(Invitrogen)を用いて測定した。細胞成長の効力は、最初播種した細胞数に比べて、増加する比率(fold)を計算して比較分析した。
【0148】
UK+uPAR+及びPAI withdrawal細胞で製造した条件培地は、HUVEC及びDF成長を促進する効力が確認され、UK+uPAR-細胞で製造した条件培地に比べて、30%以上有意に高い効力を示したが、UK+uPAR+とPAI withdrawal細胞間の効力は、差がなかった(
図27)。特に、心筋、神経及び骨格筋由来の筋細胞から得られた条件培地は、他の組織由来の幹細胞と比較して高い成長誘導の効力を確認することができた。
【0149】
<実施例18>uPAR+細胞の血管内皮細胞及び線維芽細胞の保護効力
フィブリンあるいはフィブリン/コラーゲンハイドロゲル内に脂肪、骨髄、心筋、神経、骨格筋及び滑液膜の組織切片を陥入した後、2週間3D臓器培養を施行した後、実施例6に記述されたurokinase方法でハイドロゲル内に移動成長した細胞を分離回収した。以後、FACSAria(BD Bioscience)を通じてuPAR+(UK+uPAR+)とuPAR-(UK+uPAR-)細胞を分離して7日間単層環境で培養した後、抗炎症能を評価した。PAI withdrawal方法でハイドロゲルから分離回収した細胞は、uPAR発現率が90%以上なので、二次的なuPAR+細胞を分離しなかった。
【0150】
UK+uPAR-細胞、UK+uPAR+細胞及びPAI withdrawal後、分離回収した細胞でそれぞれ製造した条件培地を使用して細胞保護の効力を試験した。HUVEC及びDFを99% DMEM/1% calf serum培養液に懸濁した後、cm2当たり5,000個の細胞を24-multiwell plateに播種した。H2O2媒介細胞損傷誘導1時間前、条件培地は、培養液と1:9の比率で添加した。0.01% H2O2を添加して細胞損傷を誘導し、損傷誘導6時間後、培養液を除去した後、PBSで2回洗浄した。細胞損傷程度は、annexin V発現率で評価し、FITC-conjugated annexin V(BD Biosciences)を細胞と反応させた後、死滅化された細胞をflow cytometryで分析した。
【0151】
UK+uPAR+細胞及びPAI withdrawal処理後、回収細胞で製造した条件培地は、UK+uPAR-細胞由来の条件培地と比較してH
2O
2媒介HUVEC及びDF細胞死を有意に保護することができる結果を確認した(
図28)。起源した組織によって細胞保護の効力の差は観察され、心筋、神経及び骨格筋由来の細胞でHUVEC及びDF細胞保護の効力が高かった。UK+uPAR+細胞条件培地で処理したHUVEC及びDFでannexin V発現率は、28.7~45.1%であって、UK+uPAR-細胞条件培地で処理した細胞の場合、42.1~71.3%よりも有意に高い細胞保護の効力を示したが、PAI withdrawal細胞由来の条件培地とは有意な差は確認することができなかった。このような結果は、uPAR発現は高い細胞保護の効力と関連性を確認することができ、PAI withdrawalのみでも、細胞保護の効力が高い細胞を分離培養することができる根拠を確認した。
【0152】
本発明は、人工創傷修復基質(engineered provisional matrix)支持臓器培養を通じて行われる。組織切片を人工provisional matrix内に陥入し、provisional matrixを通じてintegrin-FAK細胞信号伝達経路を活性化して組織内在性幹細胞の細胞分裂と成長とを誘導する。臓器培養過程を通じて組織内幹細胞がprovisional matrixに移動成長は、uPAR-uPA-plasmin活性度と比例して増加する。過度なuPAR-uPA-plasmin活性によってprovisional matrixが分解消失されて幹細胞の移動が阻害中断される結果を制御するために、PAI添加を通じて過度なprovisional matrix分解を調節することができる。Provisional matrix内に幹細胞の移動と成長とが目標としたレベルに到達された後、PAI添加を中断することにより、uPAR+幹細胞を分離することができる技術を提供する。PAI添加中断によってuPAR-uPA-plasmin及びMMP活性化によってuPAR+幹細胞がprovisional matrixから解離されて培養液内に遊離される結果が導出される。本発明は、uPAR発現によるprovisional matrixの移動と分解特性とを用いて所定の組織分解タンパク質の使用と標識子を利用した幹細胞精製過程なしにuPAR+幹細胞を分離培養することができる技術を提供する。
【0153】
本発明は、骨髄、脂肪、骨格筋、心臓、末梢神経、脊髄、脳、肺、肝、関節膜、臍帯、胎盤、歯周などの固形性組織内に存在するuPAR+幹細胞の分離培養に適用することができる。本発明は、所定の組織分解酵素処理なしに幹細胞を分離することにより、臓器培養に使用した組織切片は、その構造が完全に保存することができて反復的臓器培養を通じて幹細胞を分離培養することができる方法を提供する。
【0154】
本発明は、uPAR陽性組織内在性幹細胞中、uPARと共に通常の幹細胞標識子が陽性で発現する特性を示す。骨髄、脂肪、筋肉、心臓、関節膜、臍帯、胎盤の場合、間葉系幹細胞標識子であるCD29、CD44、CD73、CD90、CD105が陽性で発現されるが、造血母細胞あるいは血管内皮細胞標識子は、陰性である特性を有する。本発明は、末梢神経、脊髄、脳組織から由来したuPAR陽性幹細胞は、nestin、p75、Sox10、Sox2などの標識子が同時に発現される特性を示す。
【0155】
本発明のuPAR陽性幹細胞は、移動、成長因子、抗炎症因子、幹細胞動員因子など組織再生に作用する生理活性因子の分泌能が高い生物学的特性を示す。
【0156】
本発明のuPAR陽性幹細胞は、組織構成細胞への分化能が高い多分化能を有する。
【国際調査報告】