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特表2024-518643プリン・ヌクレオチドを生産する微生物及びそれを用いたプリン・ヌクレオチドの生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】プリン・ヌクレオチドを生産する微生物及びそれを用いたプリン・ヌクレオチドの生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20240423BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240423BHJP
   C12P 19/32 20060101ALI20240423BHJP
   C07K 14/245 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N15/31
C12P19/32
C07K14/245
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572150
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 KR2022007225
(87)【国際公開番号】W WO2022245176
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065740
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514199250
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ヒ ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,デ ユン
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ヒュン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジ ヒェ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AE49
4B064AE57
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA16
4B065AA24X
4B065AA26Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA16
4B065CA24
4B065CA41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、リン酸流入システム(Pitシステム)の活性が強化されたプリン・ヌクレオチドを生産するコリネバクテリウム・スタチオニス微生物及びそれを用いたプリン・ヌクレオチドの生産方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pit遺伝子によりコードされるリン酸流入システムの活性が強化され、プリン・ヌクレオチド生産能を有する、コリネバクテリウム・スタチオニス微生物。
【請求項2】
前記リン酸流入システムの活性強化は、pitA遺伝子によりコードされるポリペプチドの活性強化である、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記pitA遺伝子は外来pitA遺伝子である、請求項2に記載の微生物。
【請求項4】
前記外来pitA遺伝子は、大腸菌由来である、請求項3に記載の微生物。
【請求項5】
前記pitA遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と99%以上の同一性を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の微生物。
【請求項6】
前記プリン・ヌクレオチドは、5’-イノシン酸、5’-キサンチル酸、及び5’-グアニン酸よりなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項1に記載の微生物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の微生物を培地で培養する段階を含む、プリン・ヌクレオチドの生産方法。
【請求項8】
前記方法は、前記培養による微生物または培地からプリン・ヌクレオチドを回収する段階をさらに含む、請求項7に記載のプリン・ヌクレオチドの生産方法。
【請求項9】
前記プリン・ヌクレオチドは、5’-イノシン酸、5’-キサンチル酸、及び5’-グアニン酸よりなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項7に記載のプリン・ヌクレオチドの生産方法。
【請求項10】
pit遺伝子によりコードされるリン酸流入システムの活性が強化され、プリン・ヌクレオチド生産能を有する、コリネバクテリウム・スタチオニス微生物;それを培養した培地;またはそれらの組み合わせを含むプリン・ヌクレオチド生産用組成物。
【請求項11】
pit遺伝子によりコードされるリン酸流入システムの活性が強化され、プリン・ヌクレオチド生産能を有する、コリネバクテリウム・スタチオニス微生物のプリン・ヌクレオチドの生産への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸流入システム(Pitシステム)の活性が強化されたプリン・ヌクレオチド生産能を有するコリネバクテリウム・スタチオニス微生物及び前記微生物を用いたプリン・ヌクレオチドの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリン・ヌクレオチド、例えば、5’-イノシン酸(5’-inosine monophosphate;以下IMP)、5’-キサンチル酸(5’-xanthosine monophosphate;以下XMP)及び5’-グアニン酸(5’-guanosine monophosphate;以下GMP)は、核酸生合成代謝系の中間物質であり、体内で生理的に重要な役割を遂行し、食品、医薬品などに広く用いられている。具体的には、IMPはそれ自体で牛肉の味を出し、XMPに由来するGMPはキノコの味を出すことが知られており、両物質はいずれもグルタミン酸ナトリウム(MSG)の風味を強化することが知られ、呈味性核酸系調味料として脚光を浴びている。
【0003】
リン酸は、プリン・ヌクレオチドの構成物質であり、微生物の生長に必要なエネルギーを提供し、細胞膜のリン脂質と核酸及びタンパク質の生合成に必須である。また、細胞シグナル伝達過程にも主要な役割をする。
【0004】
リン酸は、主に、無機リン酸(inorganic orthophosphate;以下、Piと表記)の形態で細胞内に吸収される。微生物のPi流入は、細胞膜に存在するインポーター(importer)の機能に依存する。既知のPiインポーターには細胞外部のPi濃度を認知して発現が調節されるハイアフィニティー(high-affinity)Pi流入システムであるPstシステムとPi濃度に関係なく発現して金属イオンとの混合形態でPiを流入するPitシステム、有機リン酸の形態であるグリセロール-3-リン酸及びグルコース-6-リン酸を流入するアンチポーター(antiporter)輸送システムなどが知られている。
【0005】
前記リン酸流入システム中、Pitシステムを調節してアミノ酸の生産に用いる数種類の方法が報告されているが、核酸の生産に及ぼす影響は報告されていない。また、アミノ酸の生産増大においてもPitシステムの発現弱化あるいは強化が微生物及びアミノ酸別に相異した結果を導出することが確認され、アミノ酸の生産の場合、Pi流入システムを特定の方向に調節することが生産量の増大あるいは減少に一律的な影響を及ぼすものではないことを確認することができる(US9506094 B2、US9873898 B2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US9506094 B2
【特許文献2】US9873898 B2
【特許文献3】米国登録特許US7662943 B2
【特許文献4】米国登録特許US10584338 B2
【特許文献5】米国登録特許US10273491 B2
【特許文献6】KR10-1950141 B1
【特許文献7】US2020-0392478 A1
【特許文献8】KR10-1956510 B1
【特許文献9】EP3705572 A1
【特許文献10】KR10-0655902 B1
【特許文献11】大韓民国特許登録番号第10-0620092号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JOURNAL OF BACTERIOLOGY,Sept.2001,p.5008-5014Vol.183,No.17
【非特許文献2】Sambrook et al.,supra、9.50-9.51,11.7-11.8
【非特許文献3】Pearson et al(1988)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA85]:2444
【非特許文献4】Rice et al.、2000,Trends Genet.16:276-277
【非特許文献5】Needleman and Wunsch、1970,J.Mol.Biol.48:443-453
【非特許文献6】Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387(1984)
【非特許文献7】Atschul,S.F.,ET AL,[J MOLEC BIOL 215]:403(1990)
【非特許文献8】Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994
【非特許文献9】[CARILLO ETA/。](1988) SIAM J Applied Math 48:1073
【非特許文献10】Smith and Waterman,Adv. Appl. Math (1981)2:482
【非特許文献11】Schwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353-358(1979)
【非特許文献12】Gribskov et al(1986)Nucl.Acids Res.14:6745
【非特許文献13】J.Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989
【非特許文献14】F.M.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,New York
【非特許文献15】Sitnicka et al. Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology.2010,Vol.2.1-16
【非特許文献16】Sambrook et al.Molecular Cloning 2012
【非特許文献17】“Manual of Methods for General Bacteriology” by the American Society for Bacteriology(Washington D.C.,USA、1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、リン酸流入システム(Pitシステム)の活性が強化されたプリン・ヌクレオチド生産能を有するコリネバクテリウム・スタチオニス微生物及び前記微生物を用いたプリン・ヌクレオチドの生産方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの態様は、リン酸流入システム(Pitシステム)の活性が強化された、ヌクレオチド生産能を有する、コリネバクテリウム・スタチオニス微生物を提供することにある。
【0010】
本発明のもう一つの態様は、前記プリン・ヌクレオチド生産能を有する、コリネバクテリウム・スタチオニス微生物を培地で培養する段階を含むプリン・ヌクレオチドの生産方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の一つの態様は、前記プリン・ヌクレオチド生産能を有する、コリネバクテリウム・スタチオニス微生物;それを培養した培地;またはそれらの組み合わせを含むプリン・ヌクレオチドの生産用組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の一つの態様は、前記プリン・ヌクレオチド生産能を有する、コリネバクテリウム・スタチオニス微生物のプリン・ヌクレオチドの生産への使用を提供することにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によりリン酸インポーターの活性を強化させることにより、プリン・ヌクレオチドの生産に重要な成分であるリン酸の微生物内への流入を円滑にすることができる。これにより、プリン・ヌクレオチド生産能を有する微生物は、プリン・ヌクレオチドを効率よく生産することができ、プリン・ヌクレオチドを産業的規模で生産する場合、原価節減に大きく寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これを具体的に説明すると、次の通りである。本発明で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本発明で開示された多様な要素の全ての組み合わせが、本発明の範囲に属する。また、以下に記載される具体的な記述により本発明のカテゴリが制限されるとは見られない。また、本明細書の全体にわたって多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体として本明細書に参照として組み込まれ、本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【0015】
本発明の一態様はpit遺伝子によりコードされるリン酸流入システム(Pitシステム)の活性が強化され、プリン・ヌクレオチド生産能を有するコリネバクテリウム・スタチオニス微生物を提供することにある。
【0016】
本発明において用語「リン酸流入システム」とは、細胞内にリン酸を流入させる機能を有するポリペプチドまたはそれを含むシステムを意味する。前記リン酸流入システムは、リン酸インポーターを含むことができる。本出願の目的上、前記リン酸流入システムはPitシステムであってもよい。
【0017】
本発明において用語、「リン酸インポーター」とは、細胞内にリン酸を吸収する機能を有するポリペプチドを意味する。リン酸は、主に、無機リン酸(inorganic orthophosphate;以下、Piと表記)の形態で細胞内に吸収され、細胞膜に存在するインポーターの機能に依存する。具体的には、既知のPiインポーターにはPstシステムとPitシステム、及び有機リン酸形態であるグリセロール-3-リン酸及びグルコース-6-リン酸を流入するアンチポーター(antiporter)輸送システムなどが含まれてもよいが、これに制限されない。
【0018】
本発明において用語「Pitシステム」とは、Piと低い親和力を示すリン酸輸送インポーター(phosphate transporter,low-affinity;tellurite importer;以下、pit)を意味する。Pitシステムの発現は、細胞外部のPi濃度に依存せず、Piは金属陽イオン複合体の形態で細胞の内部に流入することが知られている。(JOURNAL OF BACTERIOLOGY,Sept.2001,p.5008-5014 Vol.183,No.17)
【0019】
前記Pitシステムは、pit、pit1、pit2、pit3、pitA、pitB、及びpitCから選択される一つ以上の遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはPit、Pit1、Pit2、Pit3、PitA、PitB、及びPitCポリペプチドを一つ以上含むものであってもよく、本発明の目的上、前記PitシステムはpitA(inorganic phosphate transporter)遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはPitAポリペプチドであってもよいが、これに制限されない。
【0020】
前記Pitシステムは、配列番号1のアミノ酸配列で記載されたポリペプチドを含むものであってもよいが、前記システムまたはポリペプチドは、微生物の種または菌株により前記活性を示す酵素のアミノ酸配列に差が存在する場合があるため、これに制限されない。
【0021】
前記PitAポリペプチドまたはpitA遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列で記載されたポリペプチドからなるものであってもよいが、これに制限されない。
【0022】
前記PitAポリペプチドまたはpitA遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1で記載されたアミノ酸配列を有するか、含むか、からなるか、前記アミノ酸配列で実質的に成る(essentially consisting of)ものであってもよいが、これに制限されない。より具体的には、前記配列番号1は、pitA遺伝子によりコードされるリン酸インポーターの活性を有するポリペプチド配列であってもよい。
【0023】
一具現例として、前記pitA遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性または同一性を有するポリペプチドを含むものであってもよいが、これに制限されない。
【0024】
前記配列番号1のアミノ酸は、公知のデータベースであるNCBIのGenBankなど多様なデータベースからその配列を得ることができるが、これに制限されない。一例として、大腸菌(Escherichia coli)由来であってもよいが、これらに限定されるものではなく、前記アミノ酸と同一の活性を有する配列は、制限なく含まれる。また、本発明におけるリン酸インポーター、Pitシステム、またはPitAの活性を有するポリペプチドは、たとえ配列番号1のアミノ酸を含むポリペプチドで記載したが、配列番号1のアミノ酸配列前後の無意味な配列の追加または自然に発生し得る突然変異、またはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除外することではなく、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドと互いに同一または対応する活性を有する場合であれば、本発明のリン酸インポーター、Pitシステム、またはPitAの活性を有するポリペプチドに該当することは当業者に自明であってもよい。
【0025】
具体的には、例えば、本発明のリン酸インポーターまたはPitシステムの活性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列またはそれと70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであってもよい。
【0026】
本出願のPitAポリペプチドまたはpitA遺伝子によりコードされるポリペプチドの活性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列またはそれと70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであってもよい。
【0027】
また、このような相同性または同一性を有し、前記ポリペプチドに対応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも本出願のポリペプチドの範囲内に含まれることは自明であってもよい。
【0028】
本発明において「特定の配列番号で記載されたアミノ酸配列を含むポリペプチド」、「特定の配列番号で記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチド」または「特定の配列番号で記載されたアミノ酸配列を有するポリペプチド」と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同一もしくは相当する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、保存的置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも本出願において用いられることは自明である。例えば、前記アミノ酸配列のN末端及び/またはC末端にタンパク質の機能を変更しない配列の追加、自然に発生し得る突然変異、そのサイレント突然変異(silent mutation)または保存的置換を有する場合である。
【0029】
前記「保存的置換(conservative substitution)」とは、あるアミノ酸を類似の構造的及び/又は化学的性質を有する他のアミノ酸で置換させることを意味する。そのようなアミノ酸の置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいて起こり得る。通常、保存的置換はポリペプチドの活性にほとんど影響を及ぼさないか、または影響を及ぼさない。
【0030】
前記Pitシステムは、pit、pit1、pit2、pit3、pitA、pitB、及びpitCから選択されるいずれか一つ以上の遺伝子によりコードされるものであってもよいが、これに制限されない。具体的には、前記Pitシステムは、配列番号2で記載される塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよいが、コドンの縮退性により、これに制限されない。前記Pitシステムは、配列番号2の塩基配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性または同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよいが、これに制限されない。
【0031】
前記PitAポリペプチドまたはpitA遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号2で記載される塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよいが、これに制限されない。前記PitAポリペプチドまたはpitA遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号2の塩基配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性または同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよいが、これに制限されない。
【0032】
本発明において、前記配列番号1のアミノ酸配列は、例えば、配列番号2の塩基配列(nucleic acid sequence)を含むポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよい。
【0033】
本発明において用語、「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)であり、一定の長さ以上のDNAまたはRNA鎖を意味する。本発明において、前記ポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有するリン酸インポーターまたはPitシステムの活性を示すポリペプチドをコードするものであってもよいが、これに制限されない。
【0034】
前記ポリヌクレオチドは、本発明によるリン酸インポーター、Pitシステム、またはPitAの活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであれば、制限なく含まれ得る。本出願においてリン酸インポーターまたはPitシステムのアミノ酸配列をコードする遺伝子は、pit、pit1、pit2、pit3、pitA、pitB、及びpitCから選択されるいずれか一つ以上の遺伝子であり、前記遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)由来であってもよいが、これに制限されない。
【0035】
具体的には、前記リン酸インポーター、Pitシステム、またはPitAの活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、前記配列番号1で記載したアミノ酸をコードする塩基配列を含むことができる。
【0036】
前記ポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)または前記ポリペプチドを発現させようとする生物において好まれるコドンを考慮し、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に多様な変形が行われてもよい。前記ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2の塩基配列を含むことができ、これと相同性または同一性が80%、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、96%以上、97%以上、98%以上またはさらに具体的には99%以上である塩基配列からなることができるが、これに制限されない。
【0037】
また、本発明のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子配列から製造することができるプローブ、例えば、前記塩基配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、配列番号1のアミノ酸配列をコードする配列であれば、制限なく含まれる。前記「ストリンジェントな条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(例えば、J.Sambrook et al.、同上)に具体的に記載されている。例えば、相同性または同一性の高いポリヌクレオチド同士、40%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、さらに具体的には99%以上の相同性または同一性を有するポリヌクレオチド同士ハイブリダイゼーションし、それより相同性または同一性の低いポリヌクレオチド同士ハイブリダイゼーションしない条件、または通常のサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)の洗浄条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、具体的には60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より具体的には68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的には2回~3回洗浄する条件を列挙することができる。
【0038】
ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、二つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語、「相補的」は、互いにハイブリダイゼーション可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに使用される。例えば、DNAに関し、アデニンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本発明のポリヌクレオチドは、また、実質的に類似の核酸配列だけでなく、全体配列に相補的な単離された核酸断片を含み得る。
【0039】
具体的には、相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値でハイブリダイゼーション段階を含むハイブリダイゼーション条件を用い、上述の条件を用いて探知することができる。また、前記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに限定されるものではなく、その目的に応じて当業者が適宜調節することができる。
【0040】
ポリヌクレオチドをハイブリダイズする適切なストリンジェンシーは、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野においてよく知られている(Sambrook et al.,supra、9.50-9.51,11.7-11.8を参照)。
【0041】
本発明において、用語「相同性(homology)」または「同一性(identity)」とは、二つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と関連した程度を意味し、百分率で表すことができる。用語の相同性及び同一性はしばしば互換的に使用することができる。
【0042】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準的な配列アルゴリズムにより決定され、使用されるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティを共に使用することができる。実質的に、相同性を有し(homologous)、または同一の(identical)配列は、一般に、配列の全部または全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%により中程度または高いストリンジェントな条件(stringent conditions)でハイブリダイゼーションすることができる。ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドにおける一般のコドンまたはコドン縮退性を考慮したコドンを含有するポリヌクレオチドも含まれることが自明である。
【0043】
任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al (1988)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85]:2444でのようなデフォルトパラメータを用いて「FASTA」プログラムなどの既知のコンピュータアルゴリズムを使用して決定することができる。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.、2000,Trends Genet.16:276-277)(バージョン5.0.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch、1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を使用して決定することができる(GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387(1984))、BLASTP,BLASTN,FASTA(Atschul,S.F.,ETAL,[J MOLEC BIOL 215]:403(1990);Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,]Academic Press,San Diego、1994、及び[CARILLO ETA/。](1988) SIAM J Applied Math 48:1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLASTまたはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0044】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math(1981)2:482において公知となっているように、例えば、Needleman et al.(1970)、J Mol Biol.48:443のようなGAPコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列中、より短いものにおける記号の総数であり、類似の配列された記号(即ち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を除した値と定義することができる。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)二進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含む)及びSchwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353-358(1979)により開示されているように、Gribskov et al(1986)Nucl.Acids Res.14:6745の加重比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。
【0045】
また、任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、定義されたストリンジェントな条件下でサザンハイブリダイゼーション実験により配列を比較することにより確認することができ、定義される適切なハイブリダイゼーション条件は当該技術範囲内であり、当業者においてよく知られている方法(例えば、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989;F.M. Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,New York)で決定することができる。
【0046】
一具現例として、前記リン酸流入システムの活性強化は、pitA遺伝子によりコードされるポリペプチドの活性強化であってもよいが、これに制限されない。
【0047】
一具現例として、本発明のpitA遺伝子は外来pitA遺伝子であってもよい。他の一具現例として、本発明の微生物は、外来pitA遺伝子または外来pitポリペプチドが導入されたものであってもよいが、これに制限されない。また、導入された外来遺伝子またはポリペプチドが強化されたものを含む。具体的には、前記外来pitA遺伝子は、エシェリキア属(Escherichia sp.)由来であってもよく、大腸菌(Escherichia coli)由来であってもよいが、これに制限されない。
【0048】
本発明において用語、ポリペプチド活性の「強化」とは、ポリペプチド活性が内在的活性に比べて増加することを意味する。前記強化は、活性化(activation)、上方制御(up-regulation)、過剰発現(overexpression)、増加(increase)などの用語と混用され得る。ここで、活性化、強化、上方制御、過剰発現、増加は、本来有していなかった活性を示すこと、または内在的活性または変形前の活性に比べて向上した活性を示すようになることを全て含むことができる。前記「内在的活性」とは、天然または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化した場合、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性を意味する。これは、「変形前の活性」と混用され得る。ポリペプチドの活性が、内在的活性に比べて「強化」、「上方制御」、「過剰発現」、または「増加」するとは、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性に比べて向上したことを意味する。
【0049】
前記強化は、外来のポリペプチドを導入するか、または内在的なポリペプチドの活性強化及び/又は濃度(発現量)を通じて達成することができる。前記ポリペプチドの活性の強化有無は、当該ポリペプチドの活性度、発現量または当該ポリペプチドから排出される産物の量の増加から確認することができる。
【0050】
前記ポリペプチドの活性の強化は、当該分野においてよく知られた様々な方法の適用が可能であり、目的のポリペプチドの活性を変形前の微生物より強化させることができる限り、制限されない。具体的には、分子生物学の日常的な方法である当業界の通常の技術者によく知られた遺伝子工学及び/又はタンパク質工学を利用したものであってもよいが、これで制限されない(例えば、Sitnicka et al. Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology.2010,Vol.2.1-16,Sambrook et al.Molecular Cloning 2012など)。
【0051】
具体的には、本発明のポリペプチド活性の強化は、
1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数の増加;
2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子発現調節領域を活性が強力な配列で交換;
3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5’-UTR領域をコードする塩基配列の変形;
4)ポリペプチド活性が強化されるように、前記ポリペプチドのアミノ酸配列の変形;
5)ポリペプチド活性が強化されるように、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の変形(例えば、ポリペプチドの活性が強化されるように変形されたポリペプチドをコードするように前記ポリペプチド遺伝子のポリヌクレオチド配列の変形);
6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリペプチドまたはそれをコードする外来ポリヌクレオチドの導入;
7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドン最適化;
8)ポリペプチドの三次構造を分析して露出部位を選択して変形するか、または化学的に修飾;または
9)前記1)~8)から選択された2以上の組み合わせであってもよいが、これに特に制限されるものではない。
【0052】
より具体的には、
前記1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数の増加は、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主とは無関係に複製して機能し得るベクターの宿主細胞内への導入により達成されることであってもよい。または、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、宿主細胞内の染色体内に1コピーまたは2コピー以上の導入により達成されるものであってもよい。前記染色体内への導入は、宿主細胞内の染色体内に前記ポリヌクレオチドを挿入することができるベクターが宿主細胞内に導入されることにより行うことができるが、これに制限されない。前記ベクターは、前述の通りである。
【0053】
前記2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子発現調節領域(または発現調節配列)を活性が強力な配列での交換は、例えば、前記発現調節領域の活性をさらに強化するように欠失、挿入、非保存的若しくは保存的置換またはそれらの組み合わせにより配列上の変異の発生、またはより強い活性を有する配列への交換であってもよい。前記発現調節領域は、特にこれに制限されないが、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写及び解読の終結を調節する配列などを含み得る。一例として、本来のプロモーターを強力なプロモーターと交換させることであってもよいが、これらに制限されない。
【0054】
公知の強力なプロモーターの例としては、CJ1~CJ7プロモーター(米国登録特許US7662943 B2)、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージPRプロモーター、PLプロモーター、tetプロモーター、gapAプロモーター、SPL7プロモーター、SPL13(sm3)プロモーター(米国登録特許US10584338 B2)、O2プロモーター(米国登録特許US10273491 B2)、tktプロモーター、yccAプロモーターなどがあるが、これらに制限されない。
【0055】
前記3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5’-UTR
領域をコードする塩基配列の変形は、例えば、内在的開始コドンに比べてポリペプチド発現率がより高い他の開始コドンをコードする塩基配列で置換することであってもよいが、これらに制限されない。
【0056】
前記4)及び5)のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の変形は、ポリペプチドの活性を強化するように、前記ポリペプチドのアミノ酸配列または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を欠失、挿入、非保存的若しくは保存的置換、またはこれらの組み合わせにより配列上の変異の発生、またはより強い活性を有するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列または活性が増加するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列への交換であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記交換は、具体的には、相同組換えによりポリヌクレオチドを染色体内に挿入することにより行うことができるが、これらに制限されない。このときに使用されるベクターは、染色体の挿入有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。前記選別マーカーは前述の通りである。
【0057】
前記6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリヌクレオチドの導入は、前記ポリペプチドと同一/類似の活性を示すポリペプチドをコードする外来ポリヌクレオチドの宿主細胞内の導入であってもよい。前記外来ポリヌクレオチドは、前記ポリペプチドと同一/類似の活性を示す限りその由来や配列に制限がない。前記導入に用いられる方法は、公知の形質変換方法を当業者が適宜選択して行うことができ、宿主細胞内で前記導入されたポリヌクレオチドが発現されることによりポリペプチドが生成し、その活性が増加され得る。
【0058】
前記7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドン最適化は、内在ポリヌクレオチドが宿主細胞内で転写または翻訳が増加するようにコドン最適化したものであるか、または外来ポリヌクレオチドが宿主細胞内で最適化された転写、翻訳が行われるようにそのコドンを最適化したものであってもよい。
【0059】
前記8)ポリペプチドの三次構造を分析して露出部位を選択して変形または化学的に修飾することは、例えば、分析しようとするポリペプチドの配列情報を既知のタンパク質の配列情報が格納されたデータベースと比較することにより、配列の類似性の程度にしたがって、鋳型タンパク質候補を決定し、それに基づいて構造を確認し、変形または化学的に修飾する露出部位を選択して変形または修飾することであってもよい。
【0060】
このようなポリペプチド活性の強化は、対応するポリペプチドの活性または濃度発現量が野生型や変形前の微生物菌株で発現されたポリペプチドの活性または濃度を基準にして増加するか、または当該ポリペプチドから生産される産物の量が増加されたことであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0061】
本発明の微生物においてポリヌクレオチドの一部または全部の変形は、(a)微生物内の染色体挿入用ベクターを用いた相同組換えまたは遺伝子はさみ(engineered nuclease,e.g.,CRISPR-Cas9)を用いたゲノム編集及び/又は(b)紫外線及び放射線などのような光及び/又は化学物質処理により誘発されてもよいが、これらに制限されない。前記遺伝子の一部または全体の変形方法には、DNA組換え技術による方法を含むことができる。例えば、目的遺伝子と相同性のあるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列またはベクターを前記微生物に注入して相同組換え(homologous recombination)が起こさせるようにして、遺伝子の一部または全体の欠損がなされてもよい。前記注入されるヌクレオチド配列またはベクターは、優性選別マーカーを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0062】
本発明において、前記活性強化の対象となるポリペプチドは、リン酸インポーターであってもよく、具体的には、Pitシステム、pitA遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはPitAポリペプチドであってもよい。本発明の目的上、前記活性強化は、外来Pitシステム、pitA遺伝子によりコードされる外来ポリペプチドまたは外来PitAポリペプチド導入によるものであってもよいが、これに制限されない。
【0063】
本出願の目的上、前記リン酸流入システムの活性強化は、外来pitA遺伝子または外来pitAによりコードされるポリペプチドを導入することであってもよいが、これに制限されない。
【0064】
本発明において「ポリペプチドの導入」とは、微生物が本来有していなかった特定のポリペプチドの活性を示すこと、または当該ポリペプチドの内在的活性または変形前の活性に比べて向上した活性を示すことを意味する。例えば、特定のポリペプチドが導入されるか、特定のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが微生物内の染色体に導入されるか、または特定のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターが微生物内に導入されてその活性が示されることであってもよい。
【0065】
本発明において「外来遺伝子」とは、非自然的(non-native;non-natural)に微生物に含まれる遺伝子を意味する。一例として、(a)微生物において天然に発見され得ない(exogenous)遺伝子、(b)微生物において天然に発見され得る(endogenous)遺伝子であるが、微生物において遺伝子の転写または翻訳の結果が非天然の量(天然に存在する量に比べて大量または少量)の遺伝子、(c)微生物に内在的に存在するポリペプチド配列であるが、それをコードする遺伝子の配列が相異した場合、及び/又は(d)微生物内において前記言及した事項が二つ以上を組み合わせた場合であってもよいが、これに制限されない。
本発明の目的上、コリネバクテリウム・スタチオニス微生物内にPitシステムが存在しないことにより、前記外来遺伝子は外来pitA遺伝子であってもよく、エシェリキア属(Escherichia sp.)由来のpitA遺伝子であってもよく、大腸菌(Escherichia coli)由来のpitA遺伝子であってもよいが、これらに制限されない。
【0066】
本発明において、ベクターは、適切な宿主内で目的ポリペプチドを発現させることができるように、適切な発現調節領域(または発現調節配列)に作動可能に連結された前記目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含むDNA製造物を含んでもよい。前記発現調節領域は、転写を開始し得るプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含み得る。ベクターは、適切な宿主細胞内に形質変換された後、宿主ゲノムとは無関係に複製または機能することができ、ゲノム自体に統合することができる。
【0067】
本発明で使用されるベクターは、特に限定されず、当業界に知られている任意のベクターを利用することができる。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組換え状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージが挙げることができる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを用いることができ、プラスミドベクターとしてpBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系及びpET系などを用いることができる。具体的には、pDZ、pDC、pDCM2、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを用いることができる。
【0068】
一例として細胞内における染色体挿入用ベクターを通じて染色体内に目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを染色体内に挿入することができる。前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界に知られている任意の方法、例えば、相同組換え(homologous recombination)により行われ得るが、これらに限定されない。前記染色体の挿入有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。選別マーカーは、ベクターで形質変換された細胞を選別、即ち、目的核酸分子の挿入有無を確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面ポリペプチドの発現のような選択可能表現型を付与するマーカーを使用することができる。選択剤(selective agent)が処理された環境では、選別マーカーを発現する細胞のみが生存するか、または他の表現形質を示すため、形質変換された細胞を選別することができる。
【0069】
本発明における用語「形質変換」とは、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞または微生物内に導入し、宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドが発現できるようにすることを意味する。形質変換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現できる限り、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、または染色体外に位置するかに関係なく、それらの全部を含み得る。また、前記ポリヌクレオチドは、目的ポリペプチドをコードするDNA及び/又はRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、如何なる形態でも導入することができる。例えば、前記ポリヌクレオチドは、自体で発現するのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入することができる。前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位、及び翻訳終結信号を含んでもよい。前記発現カセットは、自己複製可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよく、これに制限されない。
【0070】
また、前記において用語「作動可能に連結」されたとは、本発明の目的変異体をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプロモーター配列と前記ポリヌクレオチド配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0071】
本発明において用語、「菌株(または、微生物)」とは、野生型微生物や天然または人為的に遺伝的変形が生じた微生物を全て含み、外部遺伝子が挿入されたり、または内在的遺伝子の活性が強化されたり、不活性化されるなどの原因により、特定の機序が弱化または強化された微生物であり、所望のポリペプチド、タンパク質または産物の生産のために遺伝的変形(modification)を含む微生物であってもよい。
【0072】
本発明において用語、「プリン・ヌクレオチド生産能を有するコリネバクテリウム・スタチオニス微生物」とは、微生物が培地で培養される場合、生物体内で「プリン・ヌクレオチド」を目的産物として生産して蓄積したり、またはこれを培地内に分泌したり蓄積する能力を有する微生物を意味する。一具現例として、前記「プリン・ヌクレオチド生産能を有する」は「プリン・ヌクレオチドを生産する」と混用され得る。当該プリン・ヌクレオチドの生産能力は、コリネバクテリウム・スタチオニス微生物の野生株の性質として有するものであってもよく、遺伝子改良により付与または増進されたものであってもよい。
【0073】
本発明のプリン・ヌクレオチド生産能を有する微生物は、pit遺伝子によりコードされるリン酸流入システム(Pitシステム)の活性が強化され、プリン・ヌクレオチド生産能が増加した組換え菌株であってもよい。前記プリン・ヌクレオチド生産能が増加した組換え菌株は、天然の野生型微生物またはリン酸流入システム非変形微生物(即ち、野生型リン酸流入システムを発現する微生物、リン酸流入システムが強化されていない微生物、またはリン酸流入システムを発現しない微生物)に比べてプリン・ヌクレオチド生産性が増進されたものであってもよいが、これに制限されない。その例として、前記プリン・ヌクレオチド生産能の増加有無を比較する対象菌株である、リン酸流入システム非変形微生物は、CJX1664(KCCM12285P、KR10-1950141 B1、US2020-0392478 A1)、CJX1665 (KCCM12286P、KR10-1950141 B1、US2020-0392478 A1)、CJI2332(KCCM12277P、KR10-1950141 B1,US2020-0392478 A1)、またはCJI2335(KCCM12278P、KR10-1956510 B1、EP3705572 A1)であってもよいが、これに制限されない。
【0074】
一例として、前記生産能が増加した組換え菌株は、変異前の親株または非変形微生物のプリン・ヌクレオチド生産能に比べて約1%以上、具体的には約1%以上、約2.5%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、または13%以上(上限値に特別な制限はなく、例えば、約200%以下、約150%以下、約100%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下であってもよい)が増加されたものであってもよいが、変異前の親株または非変形微生物の生産能に比べて+値の増加量を有する限り、これらに制限されない。他の例として、前記生産能が増加した組換え菌株は、変異前の親株または非変形微生物に比べて、プリン・ヌクレオチド生産能が約1.01倍以上、約1.02倍以上、約1.03倍以上、約1.05倍以上、約1.06倍以上、約1.07倍以上、約1.08倍以上、約1.09倍以上、約1.10倍以上、約1.11倍以上、約1.12倍以上、または約1.13倍以上(上限値に特別な制限はなく、例えば、約10倍以下、約5倍以下、約3倍以下、または約2倍以下であってもよい)が増加されたものであってもよいが、これらに制限されない。前記用語「約(about)」は、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などをすべて含む範囲であり、約という用語に続く数値と同等又は類似の範囲の数値を全て含むが、これに制限されない。
【0075】
本発明のプリン・ヌクレオチド生産能を有する微生物は、前記Pitシステム、PitAポリペプチド;それをコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクターのいずれか一つ以上を含み、目的ポリペプチドまたは前記目的ポリペプチドが生産に関与する目的産物の生産能を有する微生物であってもよいが、これに制限されない。前記微生物は、天然に目的ポリペプチドまたは目的産物の生産能を有している微生物、または目的ポリペプチドまたは目的産物の生産能がない親株に目的ポリペプチドまたは目的産物の生産能が付与された微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0076】
本発明において用語、「非変形微生物」とは、微生物に自然に生じ得る突然変異を含む菌株を除外するものではなく、野生型菌株または天然型菌株自体であるか、自然的または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化する前の菌株を意味する。例えば、前記非変形微生物は、本明細書に記載のリン酸流入システムが強化または導入されていないか、または強化または導入される前の菌株を意味する。前記「非変形微生物」は、「変形前の菌株」、「変形前の微生物」、「非変異菌株」、「非変形菌株」、「非変異微生物」または「基準微生物」と混用され得る。
【0077】
本発明において用語、「プリン・ヌクレオチド」は、5’-イノシン酸(5’-inosine monophosphate,IMP)、5’-キサンチル酸(5’-xanthosine monophosphate,XMP)、及び5’-グアニン酸(5’-guanosine monophosphate,GMP)よりなる群から選択されるいずれか一つ以上のヌクレオチドであってもよい。5’-イノシン酸とは、アデニンが脱アミノされた化合物であり、ヒポキサンチン・リボース・リン酸の各1分子で構成されたヌクレオチドを意味する。5’-イノシン酸は、5’-ホスホリボシル-1-ピロリン酸塩(5-phosphoribosyl-1-pyrophosphate;PRPP)から生合成することができ、具体的には、PRPPの1番の炭素に結合されていたピロリン酸基が窒素原子で置換され、9段階にかけてイミダゾール環とピリミジン環を構成して形成できるが、これに制限されない。5’-キサンチル酸とは、5’-イノシン酸から脱水素化されたヌクレオチドを意味する。前記5’-キサンチル酸は、5’-イノシン酸脱水素酵素(inosine-5’-monophosphate dehydrogenase)により5’-イノシン酸から合成できるが、これに制限されない。5’-グアニン酸は、グアノシン分子内のリボースの部分にリン酸基がエステル結合をなしている構造であり、5’-グアニン酸生合成酵素(GMP synthase)により5’-キサンチル酸にアンモニア分子が追加されて合成できるが、これに制限されない。
【0078】
本発明の他の一態様は、リン酸流入システム(Pitシステム)の活性が強化されたプリン・ヌクレオチド生産能を有するコリネバクテリウム・スタチオニス微生物を培地で培養する段階を含む、プリン・ヌクレオチドの生産方法を提供する。
【0079】
前記リン酸流入システム、Pitシステム、強化、プリン・ヌクレオチド、及びコリネバクテリウム・スタチオニス微生物などは他の様態で記載した通りである。
【0080】
本発明において、用語「培養」とは、前記微生物を適切に調節された環境条件で生育させることを意味する。本出願の培養過程は、当業界に知られている適当な培地と培養条件に応じて行うことができる。このような培養過程は、選択される菌株に応じて当業者が容易に調整して使用することができる。具体的には、前記培養は、回分式、連続式及び流加式であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0081】
本発明において、用語「培地」とは、前記微生物を培養するために必要とする栄養物質を主成分として混合した物質を意味し、生存及び発育に不可欠な水をはじめとする栄養物質及び発育因子などを供給する。具体的には、本出願の微生物の培養に用いられる培地及びその他の培養条件は、通常の微生物の培養に使用される培地であれば、特に制限なくいずれも使用できるが、本発明の微生物を適当な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有した通常の培地内で好気性条件下で温度、pHなどを調節して培養することができる。
【0082】
本発明において、前記炭素源としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マルトースなどのような炭水化物;マンニトール、ソルビトールなどのような糖アルコール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などのような有機酸;グルタミン酸、メチオニン、リシンなどのようなアミノ酸などを含むことができる。また、澱粉加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米ぬか、キャッサバ、バガス及びトウモロコシ浸漬液のような天然の有機栄養源を用いることができ、具体的には、グルコース及び殺菌された前処理糖蜜(即ち、還元糖に転換された糖蜜)などのような炭水化物を使用することができ、その他の適量の炭素源を制限なく多様に利用することができる。これらの炭素源は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよく、これに限定されるものではない。
【0083】
前記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのような無機窒素源;グルタミン酸、メチオニン、グルタミンなどのようなアミノ酸、ペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物などのような有機窒素源が使用され得る。これらの窒素源は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよく、これに限定されるものではない。
【0084】
前記リン源としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、またはこれに対応するナトリウム含有塩などが含まれ得る。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどを使用することができ、それ以外にアミノ酸、ビタミン及び/又は適切な前駆体などが含まれ得る。これらの構成成分または前駆体は、培地に回分式または連続式で添加されてもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0085】
また、前記微生物の培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などのような化合物を培地に適切な方式で添加し、培地のpHを調整することができる。また、培養中は脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。また、培地の好気状態を維持するために、培地内に酸素または酸素含有気体を注入したり、嫌気及び微好気状態を維持するために、気体の注入なしに、あるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入することができ、これに限定されるものではない。
【0086】
培地の温度は、27℃~37℃、具体的には30℃~33℃であってもよいが、これに制限されない。培養期間は、有用物質の所望の生成量が得られるまで続けることができ、具体的には20時間~120時間であってもよいが、これに制限されない。
【0087】
具体的には、コリネバクテリウム属菌株に対する培養培地は、文献[“Manual of Methods for General Bacteriology” by the American Society for Bacteriology (Washington D.C.,USA、1981)]で見ることができる。
【0088】
本発明の培養により生産されたプリン・ヌクレオチドは、培地中に分泌されるか、または細胞内に残留する。
【0089】
本発明のプリン・ヌクレオチド生産方法は、本発明のコリネバクテリウム・スタチオニス微生物を準備する段階、前記微生物を培養するための培地を準備する段階、またはこれらの組み合わせ(順は無関係、in any order)を、例えば、前記培養段階の前に、さらに含むことができる。
【0090】
本発明のプリン・ヌクレオチドの生産方法は、前記培養による培地(培養が行われた培地)または微生物(培養が行われた微生物)からプリン・ヌクレオチドを回収する段階をさらに含むことができる。前記回収する段階は、前記培養する段階の後にさらに含むことができる。
【0091】
前記回収は、本発明の微生物の培養方法、例えば、回分式、連続式または流加式培養方法などにより当該技術分野において公知となった適切な方法を用いて所望のプリン・ヌクレオチドを収集(collect)することであってもよい。例えば、遠心分離、濾過、結晶化タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLC及びそれらの方法を組み合わせて使用することができ、当該分野において公知となった適切な方法を用いて培地または微生物から所望のプリン・ヌクレオチドを回収することができる。
【0092】
本発明の生産方法は、さらに精製段階を含んでもよい。前記精製は、当該技術分野において公知となった適切な方法を用いて行うことができる。一例として、本出願のプリン・ヌクレオチド生産方法が回収段階と精製段階の両方を含む場合、前記回収段階及び精製段階は、順序に関係なく連続的または非連続的に行われるか、または同時にまたは一つの段階に統合されて行うことができるが、これに制限されるものではない。
【0093】
具体的には、本発明の5’-グアニン酸(5’-guanosine monophosphate,GMP)の生産方法は、前記培養する段階は、5’-キサンチル酸(5’-xanthosine monophosphate,XMP)を5’-グアニン酸に転換する段階をさらに含むことができる。本発明のGMP生産方法において、前記転換する段階は、前記培養する段階または前記回収する段階の後にさらに含まれてもよい。前記転換する段階は、当該技術分野において公知となった適切な方法を用いて行うことができる。例えば、前記変換は、コリネ型微生物、大腸菌または5’-キサンチル酸アミナーゼを用いて行うことができるが(KR10-0655902 B1)、これに制限されない。
【0094】
本発明のもう一つの態様は、本発明のコリネバクテリウム・スタチオニス微生物;それを培養した培地;またはそれらの組み合わせを含むプリン・ヌクレオチド生産用組成物を提供することである。
【0095】
本発明の組成物は、プリン・ヌクレオチド生産用組成物に通常使用される任意の適切な賦形剤をさらに含むことができ、このような賦形剤は、例えば保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤または等張化剤などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0096】
本発明の組成物において、微生物、培地、及びプリン・ヌクレオチドなどは、前記他の様態で記載した通りである。
【0097】
本発明のもう一つの態様は、本出願のコリネバクテリウム・スタチオニス微生物のプリン・ヌクレオチドの生産への使用を提供することである。
【0098】
本発明のプリン・ヌクレオチドの生産への使用において、微生物、プリン・ヌクレオチドなどは、前記他の様態で記載した通りである。
【0099】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって明白である。
【0100】
実施例1:外来pitA導入菌株の製作及びIMP生産能の評価
1-1:外来pitA遺伝子の導入のための組換えベクターの製作及びIMP生産菌株の製作
コリネバクテリウム・スタチオニスの野生型菌株には、Pitシステムが存在しない。これに対し、コリネバクテリウム・スタチオニスに外来のPitシステムを導入するためのベクターを製作した。また、前記外来pitA遺伝子にコリネバクテリウム属微生物のプロモーター中、強化プロモーターとして公知となったCJ1プロモーター(大韓民国特許登録番号第10-0620092号、配列番号3)を結合した。これをコリネバクテリウム属微生物のペリプラスミック結合タンパク質(periplasmic binding protein)の一つであるfepB遺伝子座に置換するベクターを製作した。
【0101】
具体的には、コリネバクテリウム・スタチオニスのfepB遺伝子を脱落させる挿入用ベクターの製作のために、コリネバクテリウム・スタチオニス野生型であるATCC6872菌株の染色体遺伝子をIntron社のG-spin Total DNA extraction mini kit(Cat. No 17045)を用いてkitに提供されたprotocolにより分離し、これを鋳型としてPCRを進めた。重合酵素は、Maxime PCR PreMix(i-pfu)ハイフィデリティDNAポリメラーゼ(Intron)を用い、PCRは、変性95℃で5分後、変性95℃で30秒、アニーリング54℃で30秒、及び重合反応72℃で1分30秒を24回繰り返した。その結果、二種類の互いに異なるPCR生成物(fepBdel-A、fepBdel-B)を得た。前記fepB-Aは、1038bpの大きさであり、配列番号4及び配列番号5をプライマーにして増幅したものである。前記fepB-Bは、1111bpの大きさであり、配列番号6及び配列番号7をプライマーにして増幅したものである。前記二種類の増幅産物を鋳型としてsewing PCR技法で2次PCRを行った。PCRは、前記PCR条件と同一の条件で行い、その結果、fepB遺伝子が欠損し、SpeIとNotI制限酵素サイトを中央に含む2131bpのPCR生成物を得た。その後に、前記増幅産物を両末端に位置した制限酵素サイト(fepBdel-A:HindIII,fepBdel-B:HindIII)を用いて切り取った後、T4リガーゼの活性を用いてpDZベクターにクローニングし、これを通じてfepB遺伝子欠損のためのpDZ-fepBdelベクターを得た。前記で使用されたプライマーの配列は、それぞれ次の通りである。
【0102】
【表1】
【0103】
前記pDZ-fepBdelベクターから脱落したfepB遺伝子の核酸の部分を外来pitAで置換したベクターを次のような方法で製作した。具体的には、野生型コリネバクテリウム・スタチオニスATCC6782菌株及び大腸菌MG1655の染色体を分離し、これを鋳型として重合酵素はMaxime PCR PreMix(i-pfu)ハイフィデリティDNAポリメラーゼ(Intron)を用い、PCRは変性95℃で5分後、変性95℃で30秒、アニーリング54℃で30秒、及び重合反応72℃で2分30秒を24回繰り返した。PCRの結果、CJ1プロモーターと連結されたpitA遺伝子PCR生成物の二種(pCJ1-pitA-A、pCJ1-pitA-B)を得た。前記pCJ1-pitA-Aは、プロモーター部分のPCR産物として341bpの大きさであり、配列番号8と配列番号9をプライマーにして増幅したものである。前記pCJ1-pitA-Bは、pitA遺伝子のPCR産物として1537bpの大きさであり、配列番号10と配列番号11をプライマーにして増幅したものである。前記二種類の増幅産物を鋳型としてsewing PCR技法で2次PCRを行った。PCRは、前記同一条件で行い、その結果、pDZ-fepBdelベクターと相同性を有する塩基配列を両末端に含むpCJ1プロモーターと結合されたpitA遺伝子を得た。この遺伝子をSpeI及びNotI制限酵素で処理したpDZ-fepBdelベクターに相同組換え酵素(homologous recombinase)を利用した方法でクローニングしてpDZ-△fepB::pCJ1/pitA(Eco)ベクターを得た。前記で使用されたプライマーの配列は、それぞれ次の通りである。
【0104】
【表2】
【0105】
その後、IMP生産菌株であるCJI2332(コリネバクテリウム・スタチオニスATCC6872由来のIMP生産株、KCCM12277P、大韓民国登録特許第10-1950141号、US2020-0392478 A1)及びCJI2335(コリネバクテリウム・スタチオニスATCC6872由来のIMP生産株、KCCM12278P、大韓民国登録特許第10-1956510号、EP3705572 A1)のそれぞれの菌株にエレクトロポレーション法を通じて前記得られたベクターpDZ-△fepB::pCJ1/pitA(Eco)を形質変換し、2次交差過程を経て染色体上の内在的fepB遺伝子中にCJ1プロモーター-pitA遺伝子が含まれる菌株を得た。新たに挿入されたCJ1プロモーター-pitA遺伝子は、挿入された遺伝子の両末端とfepB遺伝子が出会う部分を増幅できる配列番号12と配列番号13をプライマーにして確認した。前記のような方法でCJ1プロモーターを通じて外来導入されたpitAが常に過剰発現される菌株であるCJI2332_pCJ1/pitA及びCJI2335_pCJ1/pitAの両菌株を得た。
【0106】
【表3】
【0107】
1-2. 外来pitA導入菌株のIMP生産能の評価
実施例1-1で製作したCJI2332_pCJ1/pitA、CJI2335_pCJ1/pitA菌株に対し、IMP生産能の向上を確認するために、次の実験を進めた。
【0108】
具体的には、加圧殺菌した直径18mmの試験管種培地5mlにCJI2332_pCJ1/pitA、CJI2332、CJI2335_pCJ1/pitA、及びCJI2335をそれぞれ接種し、30℃の温度で24時間振盪培養して種培養液として用いた。発酵培地29mlを250mlの振盪用三角フラスコに分注し、121℃の温度で15分間加圧殺菌した後、種培養液2mlを接種して3日間培養した。培養の条件は、回転数170rpm、温度30℃、pH7.5に調節した。前記種培地及び発酵培地の組成は、次の通りである。
【0109】
IMP種培地
ブドウ糖1%、ペプトン1%、肉汁1%、酵母エキス1%、塩化ナトリウム0.25%、アデニン100mg/L、グアニン100mg/L、pH7.2(培地1Lを基準)
【0110】
IMPフラスコ発酵培地
グルタミン酸ナトリウム0.1%、アンモニウムクロリド1%、硫酸マグネシウム1.2%、塩化カルシウム0.01%、硫酸鉄20mg/L、硫酸マンガン20mg/L、硫酸亜鉛20mg/L、硫酸銅5mg/L、L-システイン23mg/L、アラニン24mg/L、ニコチン酸8mg/L、ビオチン45μg/L、チアミン塩酸5mg/L、アデニン30mg/L、リン酸(85%)1.9%、ブドウ糖4.2%、原糖2.4%(培地1Lを基準)
【0111】
培養終了後、HPLCを利用した方法によりIMP生産量を測定した結果は、下記表4の通りである。
【0112】
【表4】
【0113】
前記表4で示した通り、同一の条件下でCJI2332_pCJ1/pitA及びCJI2335_pCJ1/pitA菌株で生産されたIMP蓄積量の収率が親株CJI2332及びCJI2335に比べてそれぞれ約13%、約12.5%増加することを確認した。前記CJI2332_pCJ1/pitAは、CJI2630と命名し、ブダペスト条約下の受託機関である韓国微生物保存センターに2021年4月13日付で寄託して受託番号KCCM12974Pの付与を受けた。
【0114】
前記CJI2335_pCJ1/pitAは、CJI2631と命名し、ブダペスト条約下の受託機関である韓国微生物保存センターに2021年4月13日付で寄託し、受託番号KCCM12975Pの付与を受けた。
【0115】
実施例2:外来pitA導入菌株の製作及びXMP生産能の評価
2-1:外来pitA導入菌株の製作
XMP生産菌株であるCJX1664(コリネバクテリウム・スタチオニス由来のXMP生産株、KCCM12285P、大韓民国登録特許第10-1950141号、US2020-0392478 A1)及びCJX1664のpurA(G85S)変異株であるCJX1665(KCCM12286P、大韓民国登録特許第10-1950141号、US2020-0392478 A1)のそれぞれの菌株にエレクトロポレーション法を通じてpDZ-△fepB::pCJ1/pitAA(Eco)を形質変換し、2次交差過程を経て染色体上の内在的fepB遺伝子中にpCJ1-pitA遺伝子を含むCJX1664_pCJ1/pitA菌株及びCJX1665_pCJ1/pitA菌株を得た。新たに挿入されたpCJ1-pitA遺伝子は、挿入された遺伝子の両末端とfepB遺伝子が出会う部分を増幅できる配列番号12及び配列番号13をプライマーにして確認した。
【0116】
2-2. 外来pitA導入菌株のXMP生産能の評価
実施例2-1で製作したCJX1664_pCJ1/pitA菌株及びCJX1665_pCJ1/pitA菌株のXMP生産能を測定するために、フラスコの評価を行った。下記種培地2.5mlを含有する14mlのチューブにCJX1664、CJX1664_pCJ1/pitA、CJX1665、及びCJX1665_pCJ1/pitAをそれぞれ接種し、30℃で24時間170rpmで振盪培養した。下記生産培地32ml(本培地24ml+別途の殺菌培地8ml)を含んでいる250mlのコーナーバッフルフラスコに0.7mlの種培養液を接種し、30℃で75時間170rpmで振盪培養した。前記種培地、本培地及び別途の殺菌培地の組成は、次の通りである。
【0117】
XMPフラスコ種培地
ブドウ糖30g/L、ペプトン15g/L、酵母エキス15g/L、塩化ナトリウム2.5g/L、ウレア3g/L、アデニン150mg/L、グアニン150mg/L、pH7.0(培地1Lを基準)
【0118】
XMPフラスコ生産培地(本培地)
ブドウ糖50g/L、硫酸マグネシウム10g/L、塩化カルシウム100mg/L、硫酸鉄20mg/L、硫酸マンガン10mg/L、硫酸亜鉛10mg/L、硫酸銅0.8mg/L、ヒスチジン20mg/L、シスチン15mg/L、ベータ-アラニン15mg/L、ビオチン100ug/L、チアミン5mg/L、アデニン50mg/L、グアニン25mg/L、ナイアシン15mg/L、pH 7.0(培地1Lを基準)
【0119】
XMPフラスコ生産培地(別途の殺菌培地)
リン酸第一カリウム18g/L、リン酸第二カリウム42g/L、ウレア7g/L、硫酸アンモニウム5g/L(培地1Lを基準)
【0120】
培養終了後、HPLCを利用した方法によりXMPの生産量を測定した結果は、下記表5の通りである。
【0121】
【表5】
【0122】
前記表5で示した通り、大腸菌のpitAを常に発現する菌株であるCJX1664_pCJ1/pitA及びCJX1665_pCJ1/pitAが生産したXMP濃度が親株CJX1664及びCJX1665に比べてそれぞれ6.7%、6.4%増加した。
【0123】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【0124】
【0125】
【配列表】
2024518643000001.app
【国際調査報告】