(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】イナボグリフロジンを含むイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/351 20060101AFI20240423BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K31/351
A61P3/10
A61P43/00 121
A61K38/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572193
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 KR2022007206
(87)【国際公開番号】W WO2022245171
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065733
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513074792
【氏名又は名称】デーウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウ・イム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ス・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ミ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ソク・パク
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084DB34
4C084NA14
4C084ZC35
4C084ZC61
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZC35
4C086ZC61
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、イナボグリフロジンを有効成分として含むイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物に関する。本発明のイナボグリフロジンを有効成分として含むイヌ科動物の糖尿病の予防又は治療用薬学組成物は、優れた血糖調節効果を示すので、イヌ科動物の糖尿病治療に有用に用いられ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イナボグリフロジンを有効成分として含むことを特徴とする、イヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記糖尿病は、第1型糖尿病であることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記イナボグリフロジンは、1日1回0.01~0.1mg/kg用量で投与されることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記イナボグリフロジンは、1日1回0.02~0.05mg/kg用量で投与されることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記イナボグリフロジンは、3日1回0.01~0.1mg/kg用量で投与されることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記イナボグリフロジンは、3日1回0.02~0.05mg/kg用量で投与されることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記薬学組成物は、最小8週間投与されることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記薬学組成物は、最小6ヶ月間投与されることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記薬学組成物は、フルクトサミン、インスリン用量、空腹血糖及び収縮期血圧からなる群より選択される一つ以上の指標を減少させることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項10】
前記糖尿病は、第1型糖尿病であり、前記薬学組成物は、第1型糖尿病治療剤と併用投与されることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項11】
前記薬学組成物は、経口又は非経口で投与されることを特徴とする、請求項1に記載のイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の薬学組成物を治療が必要なイヌ科動物に投与することを特徴とする、イヌ科動物の糖尿病治療方法。
【請求項13】
前記イヌ科動物は、高血糖症、インスリン欠乏及び体重減少からなる群より選択される代謝障害を有していることを特徴とする、請求項12に記載のイヌ科動物の糖尿病治療方法。
【請求項14】
前記方法は、イヌ科動物に請求項1に記載の薬学組成物とインスリンを併用投与することを特徴とする、請求項12に記載のイヌ科動物の糖尿病治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イナボグリフロジンを有効成分として含むイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病(diabetes mellitus、DM)は、高血糖症、糖尿(glycosuria)及びインスリンの絶対的又は相対的欠乏による体重減少を特徴とする中年及び老年のイヌに影響を及ぼす一般的な代謝障害のうち一つである。
【0003】
伴侶犬を飼う人口が急増しながら伴侶犬の健康に関心を持つ家庭が増加している。伴侶犬は、皮膚疾患、湿疹などの発生が頻繁であるが、年を取るほど糖尿病、心臓疾患、腎臓疾患、癌が増加する。特に、伴侶犬が多飲、多尿症状を示して急激に体重が減ると、糖尿病を疑わなければならない。肥満と運動不足によりインスリン非依存性糖尿病(第2型糖尿病)が多いヒトとは異なり、糖尿犬は、ほとんど全てインスリン依存性糖尿病(第1型糖尿病)を患う。
【0004】
糖尿犬の主要治療方法は、相変らずインスリン療法であるが、毎日数回インスリン注射を打たなければならない不便さと低血糖症による制限用量のため糖尿病を厳格に統制することは難しい。結果的に、高血糖症と低血糖症という二つの問題を解決するためにインスリンと補助治療に対する満たされない需要が存在する。
【0005】
一方、SGLT2(Sodium-glucose cotransporter 2)抑制剤は、新しい部類の抗高血糖剤である。SGLT-2抑制剤は、近位ネフロンでブドウ糖の再吸収を減少させてインスリンと関係ないメカニズムを通じてブドウ糖の排泄を増加させ、第2型糖尿病の治療に対するSGLT2抑制剤の安全性と効能が多くの研究から確認された。特に、アメリカ公開特許公報第2015/0152075号は、SGLT2に対する抑制活性を示すジフェニルメタン残基を有する化合物としてイナボグリフロジン(enavogliflozin)を開示しており、前記文献は、イナボグリフロジンがヒトSGLT2活性に対する抑制効果に優れて糖尿病の治療に効果的であることを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、糖尿犬の治療においてインスリン注射以外に適切な治療方法がない問題を解決するために、糖尿犬にイナボグリフロジンを投与した結果、イナボグリフロジンが血糖調節効果に優れていることを確認し、本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、イナボグリフロジンを有効成分として含むイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述したように、イヌ科動物の糖尿病は、高血糖症、インスリン欠乏、体重減少などの代謝障害を特徴とする。これは、ヒトにおいて第1型糖尿病に該当し、主にインスリン注射を通じて治療して来た。
【0009】
糖尿病の臨床的症状は、多飲、多尿、多食である。イヌ科動物の正常的な飲水量が50ml/kgであることに比べ、糖尿病を患うイヌ科動物の場合、飲水量が100ml/kg以上に増加し得る。糖尿を患うイヌ科動物の場合、糖尿性白内障やブドウ膜炎、ケトアシドーシスなどの合併症を伴うことがある。
【0010】
糖尿病の診断は、上のような臨床症状、血糖チェック、尿膜検出、フルクトサミン(fructosamine)数値検査などの結果を総合して判断することになる。
【0011】
下記実施例から確認したように、イナボグリフロジンは、糖尿を病んでいるイヌにおいて血糖を減少させ、フルクトサミン濃度を改善し、必要とする1日インスリンの用量を減らし、収縮期血圧を低める効果を示した。
【0012】
したがって、本発明は、イナボグリフロジンを有効成分として含むイヌ科動物の糖尿病予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0013】
前記イヌ科動物の代表的な例は、イヌである。イヌ以外にも、キツネ、オオカミ、タヌキなどがイヌ科動物に含まれる。
【0014】
本明細書に用いられた用語「予防」は、本発明による薬学組成物の投与により糖尿の発病を抑制させるか遅延させる全ての行為を意味する。
【0015】
また、本明細書に用いられた用語「治療」は、本発明による薬学組成物の投与により糖尿が好転するかよく変更される全ての行為を意味する。より具体的には、血糖管理指標であるフルクトサミン濃度や空腹血糖、又は体脂肪を減少させるなどにより判断し得る。
【0016】
本発明の一具体例で、前記糖尿病は、インスリン依存性糖尿病、すなわち、第1型糖尿病であってもよい。第1型糖尿病は、膵臓でインスリンが生成されないので発病し、その原因は、膵臓ベータ細胞の破壊や消失である。インスリンを直接注射すること以外には今まで効果的な治療方法がない。一方、糖尿病は、上昇した血糖数値により合併症が発生しやすいので、前記イヌ科動物は、糖尿病以外にこれに制限されるものではないが、糖尿性白内障、ブドウ膜炎、ケトアシドーシスなどの合併症を伴うことがある。
【0017】
イヌ科動物の糖尿病の予防又は治療のために用いられ得るイナボグリフロジンの用量は、特に制限されず、投与の対象であるイヌ科動物の疾患の重症度、体重、年齢、性別、その他合併症の有無などによって適切に調節され得る。
【0018】
これに制限されるものではないが、本発明の一具体例で、前記イナボグリフロジンは、1日1回0.01~0.1mg/kg、例えば、0.01~0.08mg/kg、0.01~0.05mg/kg、0.02~0.05mg/kg用量で投与され得る。本発明の一具体例で、前記イナボグリフロジンは、1日1回0.02~0.03mg/kg用量で投与され得る。また、前記イナボグリフロジンは、3日1回0.01~0.1mg/kg、例えば、0.01~0.08mg/kg、0.01~0.05mg/kg、0.02~0.05mg/kg用量で投与され得る。例えば、イナボグリフロジンは、3日に1回0.02~0.03mg/kg用量で投与され得る。
【0019】
下記実施例で、本発明者らは、糖尿犬にインスリンとともにイナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回又は1日1回ずつ8週間投与した。その結果、イナボグリフロジンを3日に1回投与したときより1日1回投与したとき、糖尿犬の収縮期血圧がさらに減少し(
図1の(b))、フルクトサミン、空腹血糖及びインスリン用量も顕著に減少することを確認した(
図2)。また、同じ用法及び用量で6ヶ月間投与した結果、1日1回投与時に空腹血糖及びインスリン用量が統計的に有意に減少することを確認した(
図3)。この結果を通じて、本発明は、糖尿犬の治療においてイナボグリフロジンの投与回数、すなわち、1日1回の投与が最適の効果を導き出し、長期間イナボグリフロジンを投与しても安全であることを確認した。
【0020】
イナボグリフロジンの投与期間は、イナボグリフロジンの投与によるイヌ科動物の糖尿病の予防又は治療効果に根拠して臨床医が適切に調節可能である。これに制限されるものではないが、イナボグリフロジンを有効成分として含む薬学組成物は、イヌ科動物の糖尿病の予防又は治療のために最小8週間、最小6ヶ月間1日1回投与され得る。また、最小8週~6ヶ月間投与され得る。
【0021】
前記薬学組成物の投与は、フルクトサミン、空腹血糖及び収縮期血圧からなる群より選択される一つ以上の指標を減少させる効果を示す。
【0022】
一具体例で、前記糖尿病は、第1型糖尿病であり、本発明の薬学組成物は、第1型糖尿病治療剤と併用投与され得る。例えば、前記第1型糖尿病治療剤は、インスリンであってもよい。下記実施例で確認できるように、イナボグリフロジンを含む薬学組成物の投与は、糖尿病を患っているイヌ科動物でのインスリン投与量を顕著に減少させる効果を示すので、治療上大きい利点を提供する。
【0023】
一方、本発明によるイナボグリフロジンを含む薬学組成物の投与方法は、これに制限されるものではないが、目的とする方法によって経口又は非経口で投与され得る。経口投与のための製剤は、多様な形態、例えば、シロップ、錠剤、カプセル、クリーム及びロゼンジを選択することができる。シロップ製剤は、一般的に任意的に香味剤又は着色剤を含む、液体担体での化合物の懸濁液又は溶液、又はその塩、例えば、エタノール、ピーナッツオイル、オリーブオイル、グリセリン又は水を含有する。前記組成物が錠剤形態で存在する場合、固体製剤を製造するために一般的に用いられた薬学担体のうち任意の一つが用いられ得る。このような担体の例としては、マグネシウムステアレート、テラアルバ、滑石、ゼラチン、アカシア、ステアリン酸、澱粉、ラクトース及びスクロースを含む。前記組成物がカプセル形態で存在する場合、一般的カプセル化手続きのうち一つが用いられ得るが、例えば、硬質ゼラチンカプセルシェル(shell)内の前記言及された担体を用いる。前記組成物が軟質ゼラチンシェルカプセル形態で製造される場合、分散剤又は懸濁液に一般的に用いられる薬学組成物のうち任意の一つが水性ガム、セルロース、シリケート又はオイルを用いて製造され得る。筋肉内又は皮下投与のための製剤は、液体形態、例えば、水性溶媒、例えば、水、生理食塩水及びリンガー(Ringer)溶液、又は親油性溶媒、例えば、脂肪油、ゴマ油、トウモロコシ油及び合成脂肪酸エステルを含む溶液、懸濁液及びエマルジョンを選択することができる。
【0024】
また、本発明は、前記イナボグリフロジンを有効成分として含む薬学組成物を治療が必要なイヌ科動物に投与することを含むイヌ科動物の糖尿病治療方法を提供する。
【0025】
治療が必要なイヌ科動物は、これに制限されるものではないが、高血糖症、インスリン欠乏及び体重減少からなる群より選択される代謝障害を有していてもよい。
【0026】
本発明の一具体例で、前記治療方法は、糖尿病の予防又は治療用薬学的組成物をインスリンと併用投与することであってもよい。
【0027】
前記糖尿病の治療方法は、糖尿病の予防又は治療用薬学的組成物を用いるので、この二つの間で重複する内容は明細書の過度な記載を避けるために省略する。
【発明の効果】
【0028】
本発明のイナボグリフロジンを有効成分として含むイヌ科動物の糖尿病の予防又は治療用薬学組成物は、優れた血糖調節効果を示すので、イヌ科動物の糖尿病治療に有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1の(a)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを併用投与した後の疾病活性度指標を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
図1の(b)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを併用投与した後の収縮期血圧を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
図1の(c)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを併用投与した後の体重減少程度を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
図1の(d)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを併用投与した後の体重減少程度を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
【
図2】
図2の(a)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを併用投与した後の空腹血糖を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
図2の(b)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを併用投与した後のフルクトサミン濃度を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
図2の(c)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを併用投与した後のインスリン投与量を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
【
図3】
図3の(a)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを6ヶ月の間併用投与した後の空腹血糖を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
図3の(b)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを6ヶ月の間併用投与した後のフルクトサミン濃度を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
図3の(c)は、糖尿犬にインスリンとイナボグリフロジンを6ヶ月の間併用投与した後のインスリン投与量を確認した結果である:TODは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で3日に1回投与した試験群、SIDは、イナボグリフロジンを0.025mg/kg用量で1日1回投与した試験群である。棒グラフは、各変数の平均を示し、誤差棒は、S.Dを示し、0.05未満のp
-値を統計的に有意であるものと見做した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、一つ以上の具体例を実施例を通じてより詳しく説明する。しかし、これら実施例は、一つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるものではない。
【0031】
<実験方法>
1.研究設計
本研究は、前向き、公開ラベル、非無作為、多機関、概念証明(Proof-of concept)研究であって、インスリン依存性糖尿病(第1型糖尿病)のあるイヌにインスリン療法とともにイナボグリフロジンの安全性と効能を評価した。イナボグリフロジンの効能及び安全性は、治療期間の間あらかじめ指定された時間に評価した。
【0032】
2.薬物情報
イナボグリフロジンは、下記化学式1の構造を有し、現在ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium-glucose cotransporter 2)の選択的抑制を通じた糖尿病治療剤として開発中である。
【0033】
【0034】
3.臨床参加イヌ
次の基準を満足する糖尿犬を臨床試験に参加させた:15歳未満の小型イヌ(10kg未満)、13歳未満の中型イヌ(11-22kg)、スクリーニング訪問最小1ヶ月前に安定した基底用量のインスリン治療、インスリン投薬後の最低点(Nadir)血糖数値最小200mg/dl、血中ケトン数値0.6mmol/L未満。
【0035】
ただし、次の基準に該当する糖尿犬は除外した;慢性腎臓疾患があるイヌ(CKD IRIS段階>2)、低血圧評価、利尿剤又は関連薬物投与、妊娠確実、検査開始前14日以内に検査に影響を及ぼす薬物服用。
【0036】
4.研究過程
研究は、8週間進行し、イナボグリフロジンの投与用量によって臨床参加イヌをTOD試験群とSID試験群の二つのグループに分けた。TOD試験群は、3日に1回0.025mg/kgを投与し、SID試験群は、1日に1回0.025mg/kgを投与した。適切な評価のためにイヌに朝食とともに薬物を投与し、投与が完了した後のイヌは、血圧、血液検査及び尿の検査のような身体検査を行った。その後、研究者は、モニタリング中に目標血糖レベルを満たすためにインスリン用量を調整した(Nadirブドウ糖レベル、80-150mg/dl)。
【0037】
1次評価変数は、無作為にグループを分けた後、深刻な低血糖症や糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis、DKA)が発生せず、血中フルクトサミン数値が減少するか否かを評価した。2次評価変数は、基準日から8週まで空腹血糖レベル、体重及びインスリンの平均1日1回(bolus)用量の変化であった。重症低血糖症は、イヌのブドウ糖レベルに関係なく、助けが必要であるか意識を失うか発作を起こす低血糖状態であると定義した。糖尿病性ケトアシドーシスの診断は、他の原因なく過度なケトン生成と係わるアニオンギャップ性の代謝性アシドーシス(anion-gap metabolic acidosis)の存在を基盤として評価した。臨床及び実験値と副作用に対するデータを含む安全性情報は、各試験訪問時に収集した。
【0038】
また、臨床試験に参加した伴侶犬を対象として同じ用法及び用量(SID又はTOD)で6ヶ月まで追加に投薬して長期的な有効性を確認した。
【0039】
5.統計分析
グループ内の薬物投与前後の差は、Student paired t-test又はWilcoxon rank testを用いて比較した。また、混合ANOVAテストを通じて薬物投与後のグループ間の差を確認した。統計分析は、Rプログラミング言語(https://cran.r-project.org/)及びGraphPad Prismバージョン7(GraphPad Software.Inc.、La Jolla、California)で行った。p-値が0.05未満であると、統計的に有意であるものと見做した。
【0040】
<実験結果>
1.臨床参加イヌの特性
臨床参加イヌ18匹をイナボグリフロジンの投与用量によって二つの試験群(TOD及びSID試験群)に分け、各グループに対する参加イヌの性別、年齢、BCS(身体状態点数;body condition score)、収縮期血圧分布は、表1に記載した。表1で、年齢とBCSは、範囲とともに中央値で表示し、収縮期血圧及びインスリン用量値は、平均±SDで記載した。
【0041】
【0042】
2.イナボグリフロジン投与後の副作用の評価
イナボグリフロジンの投与後、食欲、活動及び大便状態を確認して副作用がないかを確認した。表2の疾病活性度指標(disease activity index)を確認した結果、各試験群で投与前と後に差がないことを確認した。
【0043】
【0044】
実験開始時に、TID試験群から2匹、SID試験群から1匹が細菌性膀胱炎を患っていることを確認したが、イナボグリフロジンの投与後、TOD試験群の2匹のうち1匹が膀胱炎が完治し、SID試験群の1匹は、臨床試験終了後にも膀胱炎が好転しなかった。しかし、全ての試験群から細菌性膀胱炎が新規に発病する事例はなかった。
【0045】
全ての試験群から意識喪失又は発作を誘発する深刻な低血糖症は発生しなかった。
【0046】
3.イナボグリフロジン投与後の体重及び血圧の評価
イナボグリフロジンの投与後に体重と血圧の変化も確認した。体重の場合、二つのグループで全て減少する傾向があり、BCSには差がなかった。血圧は、SID試験群で有意に減少した(p=0.033)(
図1B)。
【0047】
4.イナボグリフロジンの投与後の腎臓機能の評価
血液検査と尿の検査を通じてイナボグリフロジンの投与前後の腎臓機能の変化を確認した。血液検査項目は、血液要素窒素(blood urea nitrogen、BUN)、クレアチニン(Creatinine)、対称性ジメチルアルギニン(symmetric di-methyl-arginine、SDMA)、シスタチン-C(Cystatin-C)、ベータ-2-マイクログロブリン(beta-2-microglobulin、B2M)及びNAG(N-acetyl-β-D-glucosaminidase)である。尿の検査項目は、USG(urine specific gravity、尿比重)及びUPC(urine protein to creatinine、小便タンパク質/クレアチン比))である。
【0048】
TOD試験群で、イナボグリフロジンの投与前後でBUN(21.3±11.7~22.5±11.7、p=0.723)、クレアチニン(0.9±0.2~0.9±0.2、p=0.733)、SDMA(8.8±2.9~9.2±5.5、p=0.943)、シスタチン-C(0.6±0.3~0.5±0.2、p=0.082)、NAG(7.0±8.3~7.6±5.8、p=0.293)、USG(1.032±0.016~1.034±0.011、p=1)及びUPC(1.9±3.0~1.1±1.8、p=0.185)の有意味な変化はなかった。
【0049】
SID試験群では、イナボグリフロジンの投与前後でクレアチニン(0.6±0.1~0.6±0.1、p=0.316)、SDMA(8.9±2.6~7.8±1.4、p=0.124)、シスタチン-C(0.5±0.1~0.5±0.1、p=0.335)、NAG(11.0±7.3~9.0±4.3、p=0.293)、USG(1.035±0.016~1.043±0.008、p=0.16)及びUPC(1.2±2.2~1.1±1.6、p=0.779)の有意味な変化がなかった。しかし、BUNの場合、投与後に有意に増加することを確認することができた(15.2±4.9~21.9±6.8、p=0.003)。ベータ-2-マイクログロブリン(B2M)濃度は、二つの試験群の両方で投与前後に0.16未満であった(表3)。表3で全ての値は、平均±S.Dで表示し、p-値が0.05未満であると、統計的に有意であるものと見做した。
【0050】
【0051】
5.イナボグリフロジンの投与後の代謝性アシドーシスの評価
イナボグリフロジンの投与8週後に血中ケトンの変化が確認され、SID試験群で増加する傾向が観察されたが、有意に増加しなかった。また、乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase、LDH)を測定したとき、投与前と比較して二つの試験群の両方で有意な変化がなかった。静脈血ガス検査を通じて血中pH、重炭酸塩(HCO3)、陰イオン差を確認した結果、投与前後に有意な差はなかった(表4)。その結果、糖尿病性ケトアシドーシスが発生しなかったことを確認した。表4で全ての値は、平均±S.Dで表示し、p-値が0.05未満であると、統計的に有意であるものと見做した。
【0052】
【0053】
6.イナボグリフロジンの投与後の脂質代謝の評価
血中コレステロールを測定してイナボグリフロジンが脂質代謝に及ぼす影響を確認した。トリグリセライドと総コレステロール(total cholesterol、T-Chol)の変化は、統計的に有意ではなかった。リパーゼも投与前後に有意な差がなかった(表5)。表5で全ての値は、平均±S.Dで表示し、p-値が0.05未満であると、統計的に有意であるものと見做した。
【0054】
【0055】
7.イナボグリフロジンの投与後の血糖調節の評価
血液検査(フルクトサミン及び空腹ブドウ糖)とインスリンの1日投与量を通じて投与前後の血糖調節を確認した。TOD試験群では、空腹血糖、1日インスリン投与量は減少したが、統計的に有意な差はなかった。しかし、フルクトサミン濃度は、改善された(p=0.041)。一方、SID試験群で、フルクトサミン数値は、475.3±107.6から393.1±122.9、μmol/L(p=0.034)、空腹血糖は、330.8±118.0から215.5±126.2mg/dL(p=0.0078)、1日インスリン投与量は、2.0±0.8から1.5±0.5units/kg/day(p=0.029)であって、全ての指標が統計的に有意に改善された。また、8週次に試験群間の差を比較した結果、空腹血糖、フルクトサミン、インスリンの減少率に有意な差がなかった。しかし、イナボグリフロジンを3日に1回服用するTOD試験群と比較して1日1回服用するSID試験群で減少する傾向があった(
図2の(a)~
図2の(c))。
【0056】
また、同じ用法及び用量で6ヶ月まで投薬して長期的な有効性を確認した結果、SID/TOD試験群で全て空腹血糖、フルクトサミン及びインスリン減少率が改善された。具体的に、SID投与群は、統計的に有意な空腹血糖減少(p<0.0234)及びインスリン減少率(p<0.0234)を示し(
図3の(a)及び
図3の(c))、TOD試験群は、統計的に有意なフルクトサミン減少を示した(p<0.0313)(
図3の(b))。
【0057】
<結論>
本発明で8週間のイナボグリフロジンとインスリン併用投与は、1型糖尿犬でフルクトサミン濃度を改善し、インスリン用量を減らした。また、イナボグリフロジンを1日1回糖尿犬に投与すれば、収縮期血圧を低める效果があった。6ヶ月間のイナボグリフロジンとインスリン併用投与は、1型糖尿犬で空腹血糖及びインスリン用量を有意に減少させた。
【0058】
前記結果は、SGLT2抑制剤イナボグリフロジンとインスリンの併用療法が糖尿犬においてインスリン単独治療より血糖調節の側面でより効果的であることを示唆する。また、イナボグリフロジンを1日1回服用することが3日に1回服用することよりフルクトサミンとインスリン用量を顕著に減少させることを確認した。
【国際調査報告】