(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/46 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G01N29/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572223
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 KR2022008503
(87)【国際公開番号】W WO2022265408
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523439378
【氏名又は名称】キム、チェ ファン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チェ ファン
(72)【発明者】
【氏名】ペン、トン クク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポム ス
(72)【発明者】
【氏名】チン、チャン チュ
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047AA05
2G047AC13
2G047BC04
2G047GD02
2G047GF11
2G047GG12
2G047GG32
(57)【要約】
本発明は、3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置及び方法に関する。複数の音響信号を放出して監視対象空間上に音波間の干渉による3次元アコースティックウェブを形成させ、受信される音響信号の変化を分析して監視対象空間の状況を把握する方案を提示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象空間へ複数の音響信号を放出する音響放出部と、
複数の音波間の干渉を介して前記監視対象空間に3次元アコースティックウェブが形成されるように前記音響発生部の音響信号の放出を制御する音響制御部と、
前記監視対象空間上の音響信号を受信する音響受信部と、
受信された音響信号に基づいて前記監視対象空間の状況を把握する状況判断部と、を含むことを特徴とする、3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置。
【請求項2】
前記状況判断部は、
受信された音響信号を用いて前記監視対象空間の周波数応答を測定し、測定された周波数応答に基づいて前記監視対象空間の状況を判断するか、或いは測定された周波数応答の変化パターンに基づいて前記監視対象空間の状況変化を判断することを特徴とする、請求項1に記載の3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置。
【請求項3】
前記音響制御部は、
時間に応じて周波数が変わらない複数の周波数からなる複合音を放出するか、時間に応じて周波数が変わる単一周波数の単純音を放出するか、或いは時間に応じて周波数が変わる複数の周波数からなる複合音を放出するように複数の音響信号を制御することを特徴とする、請求項1に記載の3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置。
【請求項4】
前記音響制御部は、
前記監視対象空間に対する空間要素又は感知対象に対する感知要素に基づいて、音響信号の放出持続時間、放出時間間隔、放出方向、同時に放出される周波数の個数及び周波数値、放出周波数の変化速度、放出周波数の位相、及び複数の音響放出器間の離隔距離のうちの少なくとも一つを調節することを特徴とする、請求項1に記載の3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置。
【請求項5】
複数の音響信号を監視対象空間へ放出する音響放出ステップと、
複数の音波間の干渉を介して前記監視対象空間に3次元アコースティックウェブを形成させるアコースティックウェブ形成ステップと、
前記監視対象空間上の音響信号を受信する音響受信ステップと、
受信された音響信号に基づいて前記監視対象空間の状況を判断する空間状況判断ステップと、を含むことを特徴とする、3次元アコースティックウェブを用いた空間監視方法。
【請求項6】
前記空間状況判断ステップは、
受信された音響信号を用いて前記監視対象空間の周波数応答を測定し、測定された周波数応答に基づいて前記監視対象空間の状況を判断するか、或いは測定された周波数応答の変化パターンに基づいて前記監視対象空間の状況変化を判断することを特徴とする、請求項5に記載の3次元アコースティックウェブを用いた空間監視方法。
【請求項7】
前記音響放出ステップは、
時間に応じて周波数が変わらない複数の周波数からなる複合音を放出するか、時間に応じて周波数が変わる単一周波数の単純音を放出するか、或いは時間に応じて周波数が変わる複合音を放出するように複数の音響信号を制御して前記監視対象空間へ放出することを特徴とする、請求項5に記載の3次元アコースティックウェブを用いた空間監視方法。
【請求項8】
前記音響放出ステップは、
前記監視対象空間に対する空間要素又は感知対象に対する感知要素に基づいて、音響信号の放出持続時間、放出時間間隔、放出方向、同時に放出される周波数の個数及び周波数値、放出周波数の変化速度、放出周波数の位相、及び複数の音響放出器間の離隔距離のうちの少なくとも一つを調節して前記監視対象空間へ複数の音響信号を放出することを特徴とする、請求項5に記載の3次元アコースティックウェブを用いた空間監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置及び方法に関する。複数の音響信号を放出して監視対象空間上に音波間の干渉による3次元アコースティックウェブを形成させ、受信される音響信号の変化を分析して監視対象空間の状況を把握する方案に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空間内への外部人の侵入、火災発生、ガス漏れなどを感知するために多様な感知センサーと装置が使用されている。このような多様な感知技術には、一般的に、CCTV、IRカメラ、振動感知センサー、ガス感知センサーなどが適用されている。従来技術の場合、侵入、火災、ガスなどのそれぞれの状況別にそれによる個別的なセンシング装置が要求されるので、多様な室内空間状況を監視するためには、その分だけ多くのセンシング装置が要求され、それにより設備の構築に多くの費用が消費され、電力消費量も相当であるという問題がある。
【0003】
このような諸問題を解決するために、最近は、音響信号を放出し、受信される音響信号の変化に基づいて室内空間状況を把握する技術が提示されている。このような音響信号を用いた感知技術は、室内空間上で複数の周波数を有する音響信号を放出し、これを受信して、受信される音響の周波数別音圧又は位相の変化を測定する。以下では、便宜上、周波数別音圧の変化を測定する事例について説明する。
【0004】
受信される音響の周波数別音圧は、当該室内空間の物理的特性によって変化する。受信される周波数別音圧に変動があるというのは、当該空間の物理的特徴も変化したことを意味する。したがって、受信される周波数別音圧の変化パターンを解析して当該空間の物理的特徴がどのように変化したかを推論することができる。
【0005】
このような従来技術による音響信号を用いた感知技術は、一般に、一つの音響放出器を用いて、複数の周波数からなる音響信号を放出しながら、受信される音響信号の周波数別音圧の変化を感知する。一つの音響放出器を用いる場合、例えば、侵入者の存否又は侵入者の位置移動による受信音の音圧変化量が相対的に小さく、よって感知能力が落ちるという問題がある。
【0006】
また、複数の音響放出器を用いる技術も提示されているが、これらの技術の場合、音波間の干渉が空間状況感知に逆効果を示すものと見なし、音波間の干渉を除去又は減少させる方向に接近している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、監視対象空間の物理的状況が変動したにも拘らず、受信される音響の周波数別音圧(又は位相)の変化が十分ではないため感知能力が落ちるという問題を解消しようとする。
【0008】
本発明の目的は、上述したものに制限されず、上述していない本発明の他の目的及び利点は、下記の説明によって理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態による3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置の一実施形態は、監視対象空間へ複数の音響信号を放出する音響放出部と、複数の音波間の干渉を介して前記監視対象空間に3次元アコースティックウェブが形成されるように前記音響発生部の音響信号の放出を制御する音響制御部と、前記監視対象空間上の音響信号を受信する音響受信部と、受信された音響信号に基づいて前記監視対象空間の状況を把握する状況判断部と、を含むことができる。
【0010】
好ましくは、前記状況判断部は、受信された音響信号を用いて前記監視対象空間の周波数応答を測定し、測定された周波数応答に基づいて前記監視対象空間の状況を判断するか、或いは測定された周波数応答の変化パターンに基づいて前記監視対象空間の状況変化を判断することができる。
【0011】
一例として、前記音響制御部は、時間に応じて周波数が変わらない複数の周波数からなる複合音を放出するか、時間に応じて周波数が変わる単一周波数の単純音を放出するか、或いは時間に応じて周波数が変わる複数の周波数からなる複合音を放出するように複数の音響信号を制御することができる
【0012】
好ましくは、前記音響制御部は、監視対象空間に対する空間要素又は感知対象に対する感知要素に基づいて、音響信号の放出持続時間、放出時間間隔、放出方向、同時に放出される周波数の個数及び周波数値、放出周波数の変化速度、放出周波数の位相、及び複数の音響放出器間の離隔距離のうちの少なくとも一つを調節することができる。
【0013】
また、本発明による3次元アコースティックウェブを用いた空間監視方法の一実施形態は、複数の音響信号を監視対象空間へ放出する音響放出ステップと、複数の音波間の干渉を介して前記監視対象空間に3次元アコースティックウェブを形成させるアコースティックウェブ形成ステップと、前記監視対象空間上の音響信号を受信する音響受信ステップと、受信された音響信号に基づいて前記監視対象空間の状況を判断する空間状況判断ステップと、を含む。
【0014】
好ましくは、前記空間状況判断ステップは、受信された音響信号を用いて前記監視対象空間の周波数応答を測定し、測定された周波数応答に基づいて前記監視対象空間の状況を判断するか、或いは測定された周波数応答の変化パターンに基づいて前記監視対象空間の状況変化を判断することができる。
【0015】
一例として、前記音響放出ステップは、時間に応じて周波数が変わらない複数の周波数からなる複合音を放出するか、時間に応じて周波数が変わる単一周波数の単純音を放出するか、或いは時間に応じて周波数が変わる複合音を放出することができる。
【0016】
他の一例として、前記音響放出ステップは、監視対象空間に対する空間要素又は感知対象に対する感知要素に基づいて音響信号の放出持続時間、放出時間間隔、放出方向、同時に放出される周波数の個数及び周波数値、放出周波数の変化速度、放出周波数の位相、及び複数の音響放出器間の離隔距離のうちの少なくとも一つを調節して前記監視対象空間へ複数の音響信号を放出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、監視対象空間の形態、大きさ、模様などの多様な空間要素、及び侵入者、火災発生、ガス漏れ、温度変化などの多様な感知要素を考慮して、状況と目的に応じて音響信号を調節した複数の音響信号を放出することにより、音響信号間の干渉を介して3次元アコースティックウェブを形成させることができる。適切な形態で3次元アコースティックウェブを形成させることにより、監視対象空間上で多様な状況変化が発生するとき、受信される音響信号の変化量が拡大されるようにすることができる。
【0018】
したがって、本発明によれば、単一音響放出器のみを用いる場合に感知性能が落ちるという問題を解決することができる。さらに、多様な要素を考慮して音響信号を調節することにより、状況別に最適の感知効率を図ることができる。
【0019】
一方、複数の音響放出器を用いる従来技術の場合、複数の音響相互間の干渉を最小化したため、監視対象空間での状況発生時に受信音響信号の変化量が微小であるという問題は、単一音響放出器のみを用いる場合と同一であった。本発明では、既存の技術とは逆に、積極的に複数の音響を干渉させることにより、そのような問題を解決することができる。
【0020】
本発明の効果は、上述したものに制限されず、上述していない別の効果は、以降の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置の一実施形態を示す構成図である。
【
図2】本発明による空間監視装置の音響放出手段に対する一実施形態の構成図である。
【
図3】本発明による空間監視装置における複数の音響放出器の配置調節に対する一実施形態を示す図である。
【
図4】本発明による空間監視装置の状況判断手段に対する一実施形態の構成図である。
【
図5】本発明によって音波干渉を介して強化された物体感知概念を示す図である。
【
図6】本発明によって監視対象空間上に音波干渉を用いて3次元アコースティックウェブを形成する一実施形態を示す図である。
【
図7】本発明で二つの音響放出器間の離隔距離の調整による音響信号変化のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】本発明で二つの音響放出器から放出する音響信号の波長調節による音響信号変化のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】本発明における音響放出器の個数による音響信号変化のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】本発明による3次元アコースティックウェブを用いた空間監視方法の一実施形態に対するフローチャートである。
【
図11】本発明による空間監視方法において放出音響信号を調節する一実施形態に対するフローチャートである。
【
図12】本発明による空間監視方法において空間状況を判断する一実施形態に対するフローチャートである。
【
図13】本発明によって監視対象空間上の侵入者を感知する一実施形態を示す図である。
【
図14】本発明によって監視対象空間上の火災状況を感知する一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明では、監視対象空間へ複数の音響信号を放出して、複数の音波間干渉によって当該空間上に3次元アコースティックウェブが形成されるようにする。これにより、空間の状況が変動するとき、それにより受信される音響信号の変化量を極大化することにより、空間監視装置の感知性能を向上させる。このような本発明の原理は、空間の状態を監視するために空間の周波数応答を利用するか或いは反射波を利用する場合の両方ともに同一に適用できる。
【0023】
図1は、本発明による3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置の一実施形態を示す構成図である。
【0024】
本発明による空間監視装置100は、概略的に、音響放出手段200と状況判断手段300を含むことができる。
【0025】
ここで、音響放出手段200と状況判断手段300が一つの空間監視装置100に含まれて構成されてもよく、音響放出手段200と状況判断手段300が離隔位置に分離配置されて空間監視装置100が構成されてもよい。
【0026】
これらの各構成の統合か分離かは、適用される音響信号に応じて選択されるか、或いは監視対象空間の形態、大きさ、模様などの空間要素、侵入者、火災発生、ガス漏れ、温度変化などの感知要素、その他の状況及び目的に応じて適切に選択され得る。
【0027】
音響放出手段200は、音響制御部210と音響放出部230を含むことができる。
【0028】
音響制御部210は、監視対象空間上へ放出する音響信号を調節する。音響制御部210は、複数の音波間の干渉によって監視対象空間に適正な3次元アコースティックウェブが形成されるように放出される音響信号の放出持続時間、放出時間間隔、放出方向、同時に放出される周波数の個数及び周波数値、放出周波数の変化速度、放出周波数の位相などを調節して音響放出部230を介して音響信号を放出させることができる。
【0029】
一例として、監視対象空間の周波数応答を測定するためには、複数の周波数を有する音響信号を放出しなければならないが、音響制御部210は、複数の周波数からなる複合音を放出するように制御することもでき、或いは、特定時間には単一周波数からなっているが、時間に応じて周波数が変わるサイン掃引(sine sweep)などの音響信号を放出するように制御することもでき、ひいては、時間に応じて放出される周波数が直線状又は階段状に変化するように制御することもできる。この他にも、様々な音響合成及び放出方式を混用して適用することもできる。
【0030】
音響放出部230は、監視対象空間に複数の音響信号を放出することができる。このために、音響放出部230は、複数の音響放出器231、232を含むことができる。ここで、音響放出器231、232は、音響信号を放出するスピーカーなどを含むことができる。
【0031】
また、音響放出部230は、監視対象空間上に適切な3次元アコースティックウェブが形成できるように音響制御部210の制御を介して複数の音響放出器231、232の配置間隔、配置角度などを調節することができる。
【0032】
音響制御部210は、人工知能の機械学習を介して音響放出部230を制御することができるが、例えば、監視対象空間の形態、大きさ、模様などの空間要素、及び侵入者、火災発生、ガス漏れ、温度変化などの感知要素を考慮して、状況及び目的に応じて放出される音響信号の放出持続時間、放出時間間隔、放出方向、放出周波数値、放出周波数の変化速度、放出周波数の位相などを調節したり、複数の周波数の成分周波数値又は成分周波数の個数を調節したりするなど、様々な条件を多様に変更調整することができる。
【0033】
状況判断手段300は、状況判断部310及び音響受信部330を含むことができる。
【0034】
音響受信部330は、監視対象空間上の音響信号を受信することができる。このために、音響受信部330は、音響信号を受信するマイクロフォンなどを含むことができる。さらに、音響受信部330は、状況に応じて監視対象空間上の複数の位置に配置された複数のマイクロフォンを含むこともできる。
【0035】
状況判断部310は、音響受信部330で受信した音響信号又は音響信号の変化パターンに基づいて監視対象空間上の空間状況を判断することができる。監視対象空間上で物体移動、温度変化、空気移動などの多様な変化が発生する場合に、これによる音響信号の変化が発生するが、監視対象空間に形成された3次元アコースティックウェブの影響によりさらに大きい幅で音響信号の変化が発生する。状況判断部310は、このような音響信号の変化を把握し、音響信号の変化パターンに応じて監視対象空間上でどんな状況が発生しているかを判断することができる。
【0036】
好ましくは、状況判断部310は、人工知能の機械学習を介して該当監視対象空間で発生する様々な状況別音響信号の変化パターンを学習し、これに基づいて監視対象空間上の状況を判断することができる。
【0037】
[発明の実施のための形態]
【0038】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明するが、本発明は実施形態によって限定又は制限されるものではない。
【0039】
本発明、本発明の動作上の利点、及び本発明の実施によって達成される目的を説明するために、以下では本発明の好適な実施形態を例示し、これを参照して説明する。
【0040】
まず、本出願で使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではなく、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を有しない限り、複数の表現を含むことができる。また、本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0041】
本発明を説明するにあたり、関連する公知の構成又は機能についての具体的な説明が本発明の要旨を不明確にするおそれがあると判断された場合には、その詳細な説明は省略する。
【0042】
音響センサーは、音を用いて空間の物理的形状又は特性を感知するものであるが、その代表的な例として、SONAR(Sound Navigation Vision And Ranging)がある。SONARは、パルス形態の音を発生させた後、目的物に反射されて戻ってくる音(反射音(reflected sound又はreflection)又は反射波(reflected wave))を測定して事物(objects)の方位と距離を計算する。このようなSONARの代表的な活用例としては、潜水函探知機、魚群探知機、胎児や肝等の臓器の形状を観察する超音波検査装置などがある。
【0043】
SONARとは全く異なる原理を利用して空間の状況を感知する音響センサーとして、周波数応答センサー(Frequency Response Sensor)がある。本発明は、空間監視のためにSONARのように反射波を用いる場合にも適用でき、或いは空間の周波数応答を用いる場合にも適用できる。
【0044】
空間の周波数応答(frequency response)は、次のように説明できる。監視対象空間を一種の閉回路と看做し、ここに入力信号として音響信号を放出した後、出力信号として音響信号を受信する場合、このとき、受信音響信号の周波数別音圧又は周波数別位相差を空間の周波数応答という。空間の周波数応答をグラフで表現すると、横軸は周波数となり、縦軸は音圧又は位相差となる。上記のように空間の周波数応答を測定することについて、従来の一部文献では音場(Sound Field)を測定するという表現を使用することもあるが、この時、音場の測定は、周波数応答測定の一例であるといえる。
【0045】
空間の周波数応答は、空間の物理的特性によって異なるので、空間の周波数応答を用いて空間の物理的状況を推論することができ、ひいては、空間の周波数応答が変化するパターンを用いて空間の物理的特性変化を把握することができる。この時、空間の物理的特性差による空間の周波数応答差が大きいほど、又は空間の物理的特性変化に起因した空間の周波数応答変化量が大きく現れるほど、空間の周波数応答を利用して空間の物理的状況をより精密に感知することができる。
【0046】
本発明による3次元アコースティックウェブを用いた空間監視装置の各構成について、実施形態を介してもう少し詳細に説明する。
【0047】
図2は、本発明による空間監視装置の音響放出手段に対する一実施形態を示す構成図である。
【0048】
音響放出手段200の音響制御部210は、放出する音響信号を生成し、調節する。音響制御部210は、物体移動、温度変化、空気移動などの感知対象による感知要素及び監視対象空間の形態、大きさ、模様などの空間要素を考慮して、状況及び目的に応じて適切な音響信号を生成することができる。
【0049】
音響制御部210は、音響放出部230の複数の音響放出器231、232に対応してそれぞれ異なる音響信号を生成することもでき、或いは同じ音響信号を生成することもできる。また、複数の音響放出器231、232の中から選択された特定の音響放出器が音響信号を出力するように調節するか、或いは全ての音響放出器が同時に音響信号を出力するように調節することができる。
【0050】
音響制御部210は、複数の周波数からなる複合音を生成することもでき、時間に応じて周波数が変化する単純音を生成することもできる。音響制御部210は、周波数の個数、周波数値、位相、周波数の変化速度、音響信号の放出持続時間、放出時間間隔などを調節することができる。
【0051】
また、音響制御部210は、音響放出部230を制御して複数の音響放出器間の離隔距離や音響信号の放出方向などを調節することもできる。
【0052】
このとき、音響制御部210は、感知対象による感知要素、監視対象空間による空間要素、その他の状況及び目的に対する人工知能学習結果に基づいて、音響信号を調節して提供することができる。
【0053】
そして、音響放出手段200の音響放出部230は、複数の音響放出器231、232や配置調節器235などを含むことができる。
【0054】
好ましくは、音響放出部230は、偶数個の音響放出器231、232を含むことができる。例えば、二つの音響放出器を含んで、監視対象空間の地面と平行又は垂直になるように互いに離隔して音響放出器を配置させることができる。或いは、四つの音響放出器を含んで十字状に交差するように互いに離隔して音響放出器を配置させることもできる。
【0055】
このために、配置調節器235は、複数の音響放出器231、232の位置を調節することができる。配置調節器235は、複数の音響放出器231、232間の離隔距離を調節するか或いは音響放出角度を調節して音波間の重畳による干渉を調節することができる。
【0056】
図3は、本発明による空間監視装置における複数の音響放出器の配置調節に対する一実施形態を示す。
【0057】
前記
図3のように音響放出部が二つの音響放出器を含む場合、前記
図3の(a)のように、配置調節器235は音響放出器231a、232a、231b、232b間の離隔距離を調節することができる。
【0058】
一例として、配置調節器235は、音響放出器231a、232aの離隔距離H1が離隔距離H2となるように音響放出器231b、232bを移動させることができる。このために、配置調節器235は、音響放出器を移動させるガイドレール(図示せず)と駆動手段(図示せず)を含むことができる。
【0059】
また、前記
図3の(b)のように、配置調節器245は、音響放出器231c、232c、231d、232dの音響放出角度を調節することができる。例えば、配置調節器235は、音響放出器が同一方向を向くように角度を調節するか、或いは互いに異なる方向を向くように角度を調節することができる。このために、配置調節器235は、音響放出器の音響放出角度を調節するチルト機能の構成(図示せず)を含むことができる。
【0060】
図4は、本発明による空間監視装置の状況判断手段に対する一実施形態を示す構成図である。
【0061】
状況判断部310は、音響信号変化判断部311、空間状況判断部315などを含むことができる。
【0062】
音響信号変化判断部311は、音響受信部330で互いに異なる時間に受信した音響信号を比較するか、或いは受信した音響信号を基準音響信号と比較して変化を把握することができる。或いは、受信した音響信号に基づいて空間の周波数応答を測定し、互いに異なる時間に測定された空間の周波数応答を比較するか、或いは測定された空間の周波数応答を基準周波数応答と比較して変化を把握することができる。受信した音響信号に基づいて空間の周波数応答を測定するとき、フーリエ変換(Fourier Transform)アルゴリズム又は高速フーリエ変換アルゴリズム(Fast Fourier Transform)が利用され得る。
【0063】
空間状況判断部315は、受信された音響信号を用いて監視対象空間の状況を判断することができる。好ましくは、空間状況判断部315は、空間の周波数応答、又は空間の周波数応答の変化パターンを解釈し、これに対応する監視対象空間の状況を判断することができる。
【0064】
ここで、空間状況判断部315は、人工知能の学習結果に基づいて空間の周波数応答、又は空間の周波数応答の変化パターンによる監視対象空間の状況を判断することができる。このために、事前に空間の周波数応答、又は空間の周波数応答の変化パターン別の空間状況に対して機械学習を行い、空間状況判断部315は、人工知能学習結果に基づいて空間の周波数応答、又は空間の周波数応答の変化パターンに対応する監視対象空間の状況を判断することができる。さらに、特定監視対象空間における状況別空間の周波数応答、又は空間の周波数応答の変化パターンに対するデータを持続的に追加取得して学習することにより、当該監視対象空間に最適化された状況判断が行われ得る。
【0065】
音響受信部330は、音響受信器331、配置調節器335などを含むことができる。
【0066】
音響受信器331は、監視対象空間上に配置され、音響放出部230に対応して一つのマイクロフォンを含むか、或いは互いに離隔して配置された複数のマイクロフォンを含むことができる。
【0067】
配置調節器335は、音響放出部230に対応して最適の位置に音響受信器331が位置することができるように配置位置と配置角度などを調節することができる。なお、音響受信器331が複数のマイクロフォンを含む場合、配置調節器335は、複数のマイクロフォン間の離隔距離又は向く方向などを調節することができる。
【0068】
次に、上述した本発明による空間監視装置の作動原理について
図5及び
図6を参照して説明する。
【0069】
図5は、本発明によって音波干渉による強化された物体感知概念を示す図である。
【0070】
一つの音響放出器によって音響信号を特定空間に出力した後、受信された音響信号の変化を測定することにより、特定空間で物体の相対的位置変化を感知することができる。或いは、音響放出器によって複数の周波数からなる音響信号を出力し、これを受信して空間の周波数応答を測定した後、その周波数応答の変化を利用して特定空間で物体の相対的位置変化を感知することができる。
【0071】
ところが、物体の相対的位置変化は、一つの音響放出器から発生する音響信号を用いて感知するよりも二つの音響放出器からそれぞれ放出した音響信号を用いて感知するとき、より精密に感知できる。
【0072】
前記
図5の(a)は、特定空間に音響信号を放出する二つの音響放出器10a、10bと一つの音響受信器30を含む空間監視装置が配置された状況である。このとき、音響放出器10a、10bはスピーカーを含むことができ、音響受信器30はマイクロフォンを含むことができる。
【0073】
音響放出器10a、10bから出力される音響信号間に干渉が起こるが、位置Aと位置Cでは音響信号間の相殺干渉が起こり、位置Bでは音響信号間の補強干渉が起こると仮定すれば、特定空間上で物体M1が位置Aから位置Bを経て位置Cに移動する場合、音波間の重畳による相殺干渉と補強干渉により、音響受信器30で測定される音響信号の変化量は極大化できる。
【0074】
もし、音響放出器が一つの場合であれば、一つの音響放出器から放出する一つの音響信号のみで物体M1を感知することにより、音響受信器で測定する音響信号の変化量は微小であり得る。音響信号の放出出力を高める場合、受信される音響信号の絶対的な大きさは大きくなるが、物体の移動に応じて、受信される音響信号の変化割合が大きくなるものではない。すなわち、信号の絶対的な大きさを増加させることはできるが、信号対雑音比が大きくなるものではない。
【0075】
このように二つ以上の音響放出器を用いると、複数の音響放出器から放出した音響信号間に補強干渉及び相殺干渉が起こるため、特定空間で物体M1が移動すると、音響受信器30で測定される音響信号の変化パターンが際立った様相を示すので、物体M1の相対的位置変化を敏感に感知することができる。
【0076】
特に、二つの音響放出器から放出した音響信号が多重周波数成分を有する場合、音響信号の変化パターンは周波数別に異なるように現れるので、物体M1の相対的位置変化をより精密に測定することができる。
【0077】
このように、通常の信号処理技術分野でノイズとして役割する信号の相殺干渉と補強干渉が、本発明では、侵入、火災、ガス漏れなどの多様な空間状況に対する感知性能を向上させることができる重要な要素として作用する。
【0078】
一方、二つの音響放出器で発生する音響信号間の相互干渉は、極端な例であるが、前記
図5の(a)に示すように、同じ方向に音響信号を放出するように音響放出器10a、10bを配置するときによく起こるのである。
【0079】
もし、前記
図5の(b)に示すように、二つの音響放出器20a、20bから放出される音響信号間に相互干渉を減らす或いは相互干渉が起こらない方向に配置される場合、音響信号の相殺干渉及び補強干渉が起こらないか微弱なので、状況変化による音響信号の変化量が微小であって感知性能が落ちる。
【0080】
これに加えて、音響放出器の個数を適切に調節する方式で、音響信号の変化量をさらに極大化して、多様な状況に対する感知性能を高めることができる。
【0081】
例えば、四つの音響放出器を十字状に配列するならば、侵入者の移動方向を問わず、四つの音響放出器から放出される音響信号間に交互に起こる相殺干渉と補強干渉を介して音響信号の変化パターンの様相をさらに精密に観察することができる。
【0082】
図6は、本発明によって監視対象空間上に音波干渉を用いて3次元アコースティックウェブを形成する一実施形態を示す図である。
【0083】
例えば、二つの音響放出器で同じ音響が放出されると仮定すると、特定位置から二つの音響放出器までの距離差、すなわち経路差が放出音波長の整数倍の差である場合、その位置では、二つの音響放出器から放出される音響が相互補強干渉を起こす。これに対し、特定位置から二つの音響放出器までの距離差、すなわち経路差が半波長の奇数倍の差である場合、その位置では、二つの音響放出器から放出される音響が相殺干渉を起こす。したがって、空間上で物体が動くと、その物体は、相殺干渉を起こす位置と補強干渉を起こす位置を通過する。よって、受信される音響信号の変化量が極大化される。
【0084】
前記
図6では、平面形態のアコースティックウェブを示したが、実際に音響放出器231、232から放出される音響信号は3次元空間上に広がっていく。したがって、例えば経路差が波長の整数倍となる点、又は経路差が半波長の奇数倍となる点を互いに連結すると、補強又は相殺干渉が起こる領域が3次元空間で面状に網のように形成される。本発明では、これをアコースティックウェブと呼称する。音響放出器の個数と配置方法に応じて、3次元アコースティックウェブの形態はさらに複雑になることができる。
【0085】
次に、本発明で音響信号間の干渉を介して空間状況に対する感知効率を高めるための条件を実施形態によって説明する。
【0086】
図7は、本発明で2つの音響放出器間の離隔距離の調整による音響信号変化のシミュレーション結果を示す。二つの音響放出器から周波数4KHz、波長8.5cmの音響信号を放出し、音響放出器から5mの距離で左右2.5mの範囲に物体を移動させながら音響信号の変化をシミュレーションした。
【0087】
前記
図7の(a)乃至(d)は、二つの音響放出器間の離隔距離を波長の0.5、1、2、4倍に調節した場合、音響信号間の干渉写真と物体位置による音圧グラフを示す。
【0088】
図7の(c)を参照すると、位置による音響信号のピーク間の間隔が約2.6m程度であり、
図7の(d)を参照すると、音響信号のピーク間の間隔が約1.3m程度であることが分かる。
図7のような状況で、人が1.3mを動いたと仮定しよう。
図7の(a)の場合は、人が1.3m動いても、その前後間の音響信号の変化量が大きくなく、(b)の場合も、前後間の音響信号の変化量が大きくない。ところが、(c)の場合は、人が1.3m動いた場合、前と後の音響信号の差が極大化されることが分かる。一方、(d)の場合は、やはり人が1.3m動いた場合、音響信号の差があまり大きくないことが分かる。したがって、例えば
図7のような状況で、もし保安空間内で、5mの距離で人が1m動いた状況を感知することが重要であれば、音響放出器の離隔距離を波長の2倍程度にすることが好ましい。
【0089】
もし、
図7で音響放出器の離隔距離を波長の10倍、20倍に増やすと、音響信号のピーク間の間隔が数十cm単位で減少する。こうなると、監視対象空間内で静止している人が身体の各部位で反射される音響信号は、ある身体部分は補強干渉となり、ある身体部分は相殺干渉となる。静止した人から反射されて受信される音響信号は、身体の各部位の信号の和となるので、結局、平均値に近い信号になるであろう。よって、この場合、人が保安空間内で動いても音響信号の差が小さい。これに対し、もしハムスターのように小さな動物が動くことを効率よく感知しようとすると、音響信号のピーク間の間隔が数十cmとなることがむしろさらに好ましい。
【0090】
3次元アコースティックウェブの補強干渉と補強干渉との間隔、又は相殺干渉と相殺干渉との間隔、すなわち、網目の間隔は、通常、監視しようとする対象の大きさの3~10倍程度が適当であるといえる。したがって、音響放出器の隔離距離は、監視対象空間内で監視目標をどのように設定するか、そして使用する周波数がどれぐらいであるかによって適正距離が変わる。
図7のような状況で人の動きを監視しようとするならば、音響放出器の離隔距離は波長の1~2倍程度が適当であり、猫の動きを監視しようとするならば、音響放出器の離隔距離は波長の2~4倍程度が適当である。
【0091】
すなわち、監視対象空間に対する空間要素と感知種類に対する感知要素を考慮して、音響放出器の離隔距離が適切に調節できる。
【0092】
このようなシミュレーション結果から、単一の音響放出器を適用する場合よりも、複数の音響放出器で音響信号間の干渉を起こす場合に、さらに明確な音響信号変化が現れることを確認することができる。
【0093】
図8は、本発明で2つの音響放出器から放出する音響信号の波長調節による音響信号変化のシミュレーション結果を示す。二つの音響放出器間の離隔距離を20cmに固定した状態で音響信号の周波数を変化させて放出し、5mの距離で左右2.5mの範囲に物体を移動させながら音圧を測定した。
【0094】
前記
図8の(a)乃至(d)は、音響信号の周波数を4kHz、8kHz、12kHz、16kHzに変更調節した場合に対する音響信号間の干渉写真と物体位置による音圧グラフを示す。
図8の(a)乃至(d)において、周波数に対する音響放出器間の離隔距離の比率は約2.5倍、4.5倍、7倍、9.5倍となる。
【0095】
図9は、本発明における音響放出器の個数による音響信号変化のシミュレーション結果を示す。16kHzの音響信号を放出する複数の音響放出器間の離隔距離を音響信号波長の6倍に固定した状態で音響放出器の個数を変更して音響信号間の干渉を把握した。
【0096】
前記
図9の(a)乃至(d)は、音響放出器の個数が2個、4個、6個、8個である場合の音響信号間の干渉写真を示す。音響放出器の個数変更による実験結果によれば、音響放出器の個数を増加するほど、感知対象空間上の微細変化に対する分解能が向上し得ることが分かる。
【0097】
しかし、監視対象空間上の一定レベル以上の変化、例えば、侵入者などの動きを把握する場合には、2つ乃至4つの音響放出器で十分な感知が可能であることが分かる。すなわち、空間上の微細位置変化に対する分解能を向上させると、小さい物体の微細な動きを感知することができるが、逆に大きい物体の動きを感知するには適切でないことがある。よって、監視対象空間に対する空間要素と感知対象に対する要素を考慮して、音響放出器の個数は適切に調節できる。
【0098】
上述したシミュレーション結果に応じて、監視対象空間の形態、大きさ、模様などの空間要素と侵入者、火災発生、ガス漏れ、温度変化などの感知要素を考慮して、音響信号の波長、複数の音響放出器間の離隔距離、音響放出器の個数などが調節できる。
【0099】
さらに、本発明では、3次元アコースティックウェブを用いた空間監視方法を提示するが、以下では、上記の本発明による空間監視装置の一実施形態を一緒に参照して、本発明による3次元アコースティックウェブを用いた空間監視方法について考察する。
【0100】
図10は、本発明による3次元アコースティックウェブを用いた空間監視方法の一実施形態を示すフローチャートである。監視対象空間の監視のために、音響放出手段200は、複数の音響放出器231、232を介して監視対象空間上に複数の音響信号を放出(S100)する。
【0101】
このとき、監視対象空間の形態、大きさ、模様などの空間要素と侵入者、火災発生、ガス漏れ、温度変化などの感知要素を考慮して、状況及び目的に応じて、音響放出手段200は音響信号の波長、複数の音響放出器間の離隔距離、音響放出器の個数などを調節して音響信号を放出する。
【0102】
音響信号の放出を調節する過程についての一実施形態を
図11を参照して説明する。
【0103】
監視対象空間に対する空間要素と感知対象に対する感知要素を考慮して、例えば、人工知能の学習結果に基づいて、音響制御部210は音響信号を調節する。
【0104】
まず、音響制御部210は、空間要素と感知要素を考慮して放出する音響信号の周波数を選択(S110)し、音響信号を出力する音響放出器の個数を選択(S120)する。
【0105】
そして、音響制御部210は、空間要素、感知要素、音響信号の周波数、音響放出器の個数などの多様な要素を考慮して音響放出器間の離隔距離を判断(S130)して音響放出器間の離隔距離を調節(S140)する。また、音響制御部210は、空間要素、感知要素、音響信号の周波数、音響放出器の個数を考慮して音響放出器の音響信号放出角度を判断し、音響放出器の角度を調節することができる。
【0106】
人工知能の機械学習を介して多様な状況別の最適の感知性能のための音響信号条件が設定されることができ、これに基づいて音響信号の周波数、音響放出器の個数、音響放出器間の離隔距離などが調節されることができる。
【0107】
さらに、音響制御部210は、空間要素及び感知要素を考慮して音響信号の放出持続時間、放出時間間隔、放出周波数値、放出周波数の変化速度、放出周波数の位相などを調節することができるとともに、周波数成分の個数、周波数値などを調節することができる。音響信号に対する設定が行われると、音響制御部210は、音響放出部230を制御して監視対象空間へ複数の音響信号を放出(S150)する。
【0108】
再び前記
図10に回帰して以後の過程を説明し続ける。複数の音響信号が放出されることにより、監視対象空間上には、複数の音響信号間の干渉で3次元アコースティックウェブが形成(S200)される。
【0109】
監視対象空間上に3次元アコースティックウェブが形成された状態で侵入者の動き、火災発生、ガス漏れ、温度変化などの多様な状況変化が発生すると、それにより3次元アコースティックウェブの影響を受けてそれぞれの空間状況別に音響信号変化が発生(S300)する。
【0110】
状況判断手段300は、監視対象空間上の音響信号を受信(S400)し、受信された音響信号の変化を把握して、空間状況を判断(S500)する。
【0111】
一方、人工知能のデータ学習結果に基づいて、測定された空間の周波数応答の変化パターンを分析して監視対象空間にどんな状況が発生したかを判断することができる。
【0112】
空間状況を判断する過程についての一実施形態を
図12を参照して説明する。
【0113】
音響受信器331を介して監視対象空間上の音響信号を受信して監視対象空間の周波数応答を測定すると、音響信号変化判断部311は、互いに異なる時間に測定された空間の周波数応答を比較するか或いは基準周波数応答と測定された空間の周波数応答とを比較して、周波数応答変化を把握(S510)する。
【0114】
そして、空間状況判断部315は、空間の周波数応答の変化パターンに基づいて監視対象空間の状況を判断(S550)する。例えば、状況別空間の周波数応答の変化パターンに対する人工知能の学習結果に基づいて、空間状況判断部315は、監視対象空間上でどんな状況が発生するかを把握することができる。
【0115】
3次元アコースティックウェブを用いて監視対象空間の状況を判断する一実施形態として、
図13及び
図14を参照して説明する。
【0116】
図13は、本発明によって監視対象空間上の侵入者を感知する一実施形態を示す。監視対象空間50上に音響放出部230の複数の音響放出器231、232で複数の音響信号を放出して3次元アコースティックウェブWを形成させる。監視対象空間50上に3次元アコースティックウェブWが形成された状態で監視対象空間50に侵入者M3が入って移動する場合、アコースティックウェブがない場合よりはさらに大きい音響信号変化が発生する。音響受信部330の音響受信器331を介して監視対象空間50上の音響信号を受信し、空間の周波数応答の変化パターンを把握して、これに基づいて侵入者M3の発生状況を感知することができる。
【0117】
図14は、本発明によって監視対象空間上の火災状況を感知する一実施形態を示す。監視対象空間50上に3次元アコースティックウェブWが形成された状態で火災M4が発生する場合、3次元アコースティックウェブWの影響を受けてさらに大きい音響信号変化が発生する。音響受信部330の音響受信器331を介して監視対象空間50上の音響信号を受信し、空間の周波数応答の変化パターンを把握して、これに基づいて火災M4の発生状況を感知することができる。
【0118】
このように、本発明では、監視対象空間の形態、大きさ、模様などの多様な空間要素と侵入者、火災発生、ガス漏れ、温度変化などの多様な感知要素を考慮して音響信号を調節し、複数の音響信号を放出することにより、音響信号間の干渉を介して3次元アコースティックウェブを形成させることができる。このように、本発明では、積極的に3次元アコースティックウェブを適切に形成させることにより、監視対象空間で発生する多様な状況による音響信号変化量を拡大させ、究極的に空間状況感知能力を向上させることができる。
【0119】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱することなく多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明に記載された実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施形態によって本発明の技術思想が限定されるものではない。本発明の保護範囲は下記の請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同等の範囲内にあるあらゆる技術思想は本発明の権利範囲に含まれると解釈されなければならない。
【国際調査報告】