(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】結晶型CSF-1R阻害剤酸性塩およびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20240423BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20240423BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240423BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61P3/00
A61P37/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 111
A61P35/02
A61P29/00 101
A61P25/00
A61P19/10
A61P19/00
A61P11/06
A61P11/00
A61K31/444
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572651
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2022094457
(87)【国際公開番号】W WO2022247786
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】202110565750.3
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519166372
【氏名又は名称】アビスコ セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ザオ バオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ホンピン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC17
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA02
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC21
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、結晶型CSF-1R阻害剤酸性塩およびその製造方法と使用に関し、前記CSF-1R阻害剤は、式(I)構造で表される化合物3,3-ジメチル-N-(6-メチル-5-((2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-4-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)-2-オキソピロリジン-1-カルボキサミドを有し、前記結晶型酸性塩化合物は、遊離状態の式(I)で表される化合物の溶解性、吸湿性および化学的安定性などの物理化学的性質を大幅に改善し、工業生産の要求を適し、臨床薬物製剤の開発ニーズを満たすことができる。本発明の結晶型酸性塩化合物は、癌、腫瘍、自己免疫疾患、代謝性疾患または転移性疾患を治療するための薬物の製造に広く使用できる。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【化1】
【請求項2】
前記酸性塩は、無機酸塩または有機酸塩を含み、前記無機酸塩は、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、フッ化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩またはリン酸塩から選ばれ、前記有機酸塩は、酢酸塩、ジクロロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、4-クロロベンゼンスルホン酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、エタン-1,2-ジスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、安息香酸塩、カプリン酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、シクロヘキサンスルファミン酸塩、カンファースルホン酸塩、アスパラギン酸塩、樟脳酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、エリソルビン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、ピログルタミン酸塩、酒石酸塩、ドデシル硫酸塩、ジベンゾイル酒石酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクト酸塩、ゲンチシン酸塩、アセトヒドロキサム酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩、2-ケトグルタル酸塩、グリコール酸塩、馬尿酸塩、イセチオン酸塩、ラクトビオン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ラウリン酸塩、マレイン酸塩、ニコチン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、プロピオン酸塩、4-アセトアミド安息香酸塩、4-アミノ安息香酸塩、サリチル酸塩、4-アミノサリチル酸塩、2,5-ジヒドロキシ安息香酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、ステアリン酸塩、チオシアン酸塩、ウンデシレン酸塩またはコハク酸塩から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項3】
前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は塩酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.52±0.2°、19.72±0.2°、10.64±0.2°、14.32±0.2°、16.56±0.2°、18.52±0.2°および27.20±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含むか、または、24.32±0.2°、17.78±0.2°、24.58±0.2°、19.96±0.2°、10.18±0.2°、21.34±0.2°、18.06±0.2°、28.10±0.2°および18.42±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含むか、または、18.74±0.2°、22.94±0.2°、17.64±0.2°、9.38±0.2°、9.10±0.2°、9.94±0.2°、29.70±0.2°および11.24±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含み、好ましくは、その結晶型塩酸塩のX線粉末回折パターンは、
図1、
図2または
図3に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じである、ことを特徴とする請求項2に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項4】
前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は硫酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、20.08±0.2°、23.22±0.2°、21.38±0.2°、24.86±0.2°、18.78±0.2°、20.46±0.2°および9.38±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含み、好ましくは、その結晶型硫酸塩のX線粉末回折パターンは、
図4に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じである、ことを特徴とする請求項2に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項5】
前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリン酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、8.44±0.2°、16.82±0.2°、10.78±0.2°、18.10±0.2°、24.78±0.2°、19.62±0.2°および23.24±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含むか、または、10.86±0.2°、8.48±0.2°、17.02±0.2°、10.46±0.2°、18.38±0.2°、7.98±0.2°、23.82±0.2°および16.06±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含むか、または、10.84±0.2°、8.54±0.2°、17.14±0.2°、16.76±0.2°、10.36±0.2°、18.26±0.2°、27.88±0.2°および22.34±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含み、好ましくは、その結晶型リン酸塩のX線粉末回折パターンは、
図5、
図6または
図7に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じである、ことを特徴とする請求項2に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項6】
前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はメタンスルホン酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、16.28±0.2°、20.82±0.2°、7.78±0.2°、26.68±0.2°、23.36±0.2°、26.30±0.2°および23.62±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含むか、または、8.64±0.2°、21.02±0.2°、16.34±0.2°、23.34±0.2°、18.48±0.2°、7.84±0.2°、26.00±0.2°および10.82±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含み、好ましくは、その結晶型メタンスルホン酸塩のX線粉末回折パターンは、
図8または
図9に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じである、ことを特徴とする請求項2に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項7】
前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はクエン酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、16.14±0.2°、7.12±0.2°、14.86±0.2°、16.64±0.2°、21.34±0.2°および13.70±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含み、好ましくは、その結晶型クエン酸塩のX線粉末回折パターンは、
図10に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じである、ことを特徴とする請求項2に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項8】
前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリンゴ酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、8.44±0.2°、27.82±0.2°、14.22±0.2°、9.72±0.2°、15.44±0.2°、18.96±0.2°および19.28±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含み、好ましくは、その結晶型リンゴ酸塩のX線粉末回折パターンは、
図11に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じである、ことを特徴とする請求項2に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項9】
前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は酒石酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.16±0.2°、16.64±0.2°、19.80±0.2°、26.84±0.2°、18.96±0.2°、24.06±0.2°および12.16±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含み、好ましくは、その結晶型酒石酸塩のX線粉末回折パターンは、
図12に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じである、ことを特徴とする請求項2に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項10】
前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はフマル酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、16.82±0.2°、18.28±0.2°、11.62±0.2°、15.10±0.2°、8.44±0.2°、21.54±0.2°および27.58±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含み、好ましくは、その結晶型フマル酸塩のX線粉末回折パターンは、
図13に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じである、ことを特徴とする請求項2に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩の製造方法であって、
1)遊離状態(free state)の式(I)で表される化合物を水性溶媒または適切な有機溶媒に溶解または分散させ、無機酸または有機酸の液体または固体酸の溶液を前記の系に添加するか、または遊離状態の式(I)で表される化合物を酸の溶液に添加するステップと、
2)前記の造塩反応の過程で析出した固体生成物を集めるか、または造塩系における過飽和を作ることにより結晶型生成物を得るステップとを含み、
前記無機酸は、塩酸、硫酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸またはリン酸から選ばれ、
前記有機酸は、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、安息香酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、カンファースルホン酸、アスパラギン酸、樟脳酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、エリソルビン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、ピログルタミン酸、酒石酸、ドデシル硫酸、ジベンゾイル酒石酸、ギ酸、フマル酸、ガラクト酸、ゲンチシン酸、アセトヒドロキサム酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2-ケトグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ラウリン酸、マレイン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノ安息香酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ステアリン酸、チオシアン酸、ウンデシレン酸またはコハク酸から選ばれる、ことを特徴とする製造方法。
【請求項12】
前記ステップ2)において造塩系における過飽和を作る方法は、種結晶を添加すること、溶媒を揮発させること、貧溶媒を添加すること、または冷却のうちの1つまたは複数を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記適切な有機溶媒は、アルコール類、クロロアルカン、ケトン類、エーテル類、環状エーテル類、エステル類、アルカン類、シクロアルカン類、ベンゼン類、アミド類、スルホキシド類の有機溶媒またはそれらの混合物、またはそれらの水溶液から選ばれ、好ましくは、前記適切な有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-tert-ブチルエーテル、2-メトキシエチルエーテルまたはそれらの混合物、またはそれらの水溶液から選ばれる、ことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩の製造方法であって、
下記ステップを含む:式(I)で表される化合物酸性塩の1つの結晶形を、加熱または適切な溶媒において懸濁液結晶形変換の方法を含む結晶形変換の方法によって、当該塩の別の結晶形に変換することであり、前記適切な溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-tert-ブチルエーテル、2-メトキシエチルエーテルまたはそれらの混合物、またはそれらの水溶液から選ばれる、ことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩と薬用可能な担体とを含む薬物組成物。
【請求項16】
CSF1-Rに関連する癌、腫瘍、自己免疫疾患、代謝性疾患または転移性疾患を治療するための薬物の製造における、請求項1~10のいずれか一項に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩の使用。
【請求項17】
CSF1-Rに関連する癌、腫瘍、自己免疫疾患、代謝性疾患または転移性疾患を治療するための薬物として利用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【請求項18】
CSF1-Rに関連する卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、子宮頸癌、骨転移癌、乳頭状甲状腺癌、非小細胞肺癌、結腸癌、消化管間質腫瘍、固形腫瘍、メラノーマ、中皮腫、膠芽腫、骨肉腫、多発性骨髄腫、過剰増殖性疾患、代謝性疾患、神経変性疾患、原発性腫瘍部位の転移、骨髄増殖性疾患、白血病、関節リウマチ、慢性関節リウマチ、骨関節炎、多発性硬化症、自己免疫腎炎、ループス、クローン病、喘息、慢性閉塞性肺疾患、骨粗鬆症、高好酸球症候群、肥満細胞増加症または肥満細胞白血病を治療するための薬物として利用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は薬物開発分野に属し、具体的には、結晶型CSF-1R阻害剤酸性塩およびその製造方法と使用に関する。
【0002】
背景技術
CSF-1R(cFMS)の全称は細胞コロニー刺激因子-1受容体である。CSF-1RはcKIT、FLT3、PDGFR-a&bとともにIII型成長ホルモン受容体ファミリーに属する。当該受容体は膜タンパク質であり、マクロファージと単球の表面に発現し、その細胞外部分はマクロファージコロニー刺激因子と結合することができ、細胞内部分チロシンキナーゼはマクロファージと単球下流細胞の増殖シグナル経路を活性化することができ、MAPKやPI3Kなどを含む。そのため、CSF-1Rシグナル経路はマクロファージ、単球の発育、分化および腫瘍関係のマクロファージ(Tumor-Associated Macrophage、TAM)の生理機能に重要な影響がある。
【0003】
近年の腫瘍免疫治療の進展に伴い、腫瘍関連マクロファージ(TAM)と骨髄由来抑制細胞(MDSC)は腫瘍内部免疫抑制微小環境の形成と腫瘍成長を支持する血管形成と直接関係があると考えられている。同時に、臨床研究により、TAMの含有量は腫瘍患者の予後と負の相関を呈することが明らかになった。マウス体内での薬効実験により、CSF-1Rシグナル経路を抑制することで、腫瘍内部の免疫系に対する抑制性マクロファージ数を著しく低下させ、CD8陽性のT細胞含有量を高めることができることが証明された。これらの実験結果は、CSF-1R小分子阻害剤が腫瘍内部の免疫抑制環境を逆転させ、免疫系の活性化を促進し、腫瘍患者の生命を延長させる可能性があることを示している。
【0004】
長期にわたる研究過程において、アビスコ セラピューティクス カンパニー リミテッド(Abbisko TherapeuticsCo.,Ltd)は、構造が新規なCSF-1R阻害効果を有する小分子化合物(WO2018214867A1、国際公開日:2018年11月29日)を発明し、その代表的な化合物は以下のとおりである:
【0005】
【0006】
日文名は、3,3-ジメチル-N-(6-メチル-5-((2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-4-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)-2-オキソピロリジン-1-カルボキサミド(式(I)で表される化合物)であり、当該化合物は、CSF-1R標的の阻害作用および他のキナーゼ受容体に対する選択性を著しく向上させ、治療ウインドウを向上させ、臨床毒性副作用を低減させ、現段階の国内外の肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、メラノーマ、膵臓癌、頭頸部癌、神経膠腫および腱鞘巨細胞腫などの腫瘍に対する標的治療のニーズを満たすことができる。
【0007】
しかしながら、当該特許WO2018214867A1の出願時点で、工業生産に適した原料形態を開発するためのさらなる研究は行われず、工業使用に適したプロセス方法も開発されておらず、式(I)で表される化合物の凝集状態を鋭意研究して化合物の物理化学的性質を改善し、薬学的または臨床的使用のニーズを満たすことがない。WO2018214867A1には、非晶質の遊離状態または泡沫状の固体化合物が開示されており、具体的な製造方法については、その実施例1を参照する。即ち、氷浴下で3,3-ジメチル-2-オキソピロリジン-1-カルボニルクロリド(0.33 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液を、6-メチル-5-((2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-4-イル)オキシ)ピリジン-2-アミン(93 mg、0.33 mmol)およびピリジン(78 mg、0.99 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液に滴下した。5℃で30分間撹拌し、次いで室温で2時間撹拌し反応させた。ジクロロメタンと水で分層し、有機相を水および飽和塩化ナトリウムで順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、濃縮してから、カラムクロマトグラフィーにより分離して[溶離剤:ジクロロメタン/メタノール(15:1)]、泡沫状の化合物3,3-ジメチル-N-(6-メチル-5-((2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-4-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)-2-オキソピロリジン-1-カルボキサミド(42 mg、収率30.4%)を得た。前記泡沫状の化合物は、発明者らにより非晶質化合物と同定し、吸湿しやすく、軟化しやすいため、保存できず、臨床製剤開発にも適さない。したがって、臨床研究および市販薬物製剤のニーズを満たすために、薬物開発に適する凝集形態を開発して従来技術の欠点を克服することが強く望まれている。
【0008】
発明の概要
従来技術に存在する問題を解決するために、本発明者らは、式(I)で表される化合物(3,3-ジメチル-N-(6-メチル-5-((2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-4-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)-2-オキソピロリジン-1-カルボキサミド)の異なる凝集形態を鋭意検討し、複数種の結晶型酸性塩、特に塩酸塩を開発し、式(I)で表される化合物の溶解性、吸湿性および化学的安定性などの物理化学的性質を大幅に改善し、前記結晶型酸性塩化合物の原料は、工業生産の要求を適し、臨床薬物製剤の開発ニーズを満たすことができる。前記結晶型酸性塩化合物は、非常に重要な臨床使用価値があり、新世代のCSF-1R小分子阻害剤への開発の加速が期待される。
【0009】
本発明の第一の態様では、結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を提供する。
【0010】
【0011】
好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は、無機酸塩または有機酸塩である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は無機酸塩であり、前記無機酸塩は、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、フッ化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩またはリン酸塩から選ばれる。
【0012】
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は有機酸塩であり、前記有機酸塩は、酢酸塩、ジクロロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、4-クロロベンゼンスルホン酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、エタン-1,2-ジスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、安息香酸塩、カプリン酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、シクロヘキサンスルファミン酸塩、カンファースルホン酸塩、アスパラギン酸塩、樟脳酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、エリソルビン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、ピログルタミン酸塩、酒石酸塩、ドデシル硫酸塩、ジベンゾイル酒石酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクト酸塩、ゲンチシン酸塩、アセトヒドロキサム酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩、2-ケトグルタル酸塩、グリコール酸塩、馬尿酸塩、イセチオン酸塩、ラクトビオン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ラウリン酸塩、マレイン酸塩、ニコチン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、プロピオン酸塩、4-アセトアミド安息香酸塩、4-アミノ安息香酸塩、サリチル酸塩、4-アミノサリチル酸塩、2,5-ジヒドロキシ安息香酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、ステアリン酸塩、チオシアン酸塩、ウンデシレン酸塩またはコハク酸塩から選ばれる。
【0013】
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は有機酸塩であり、前記有機酸塩は、メタンスルホン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩または酒石酸塩から選ばれる。
【0014】
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は塩酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.52±0.2°、19.72±0.2°、10.64±0.2°、14.32±0.2°、16.56±0.2°、18.52±0.2°および27.20±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0015】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は塩酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図1に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表1に示される。
【0016】
【0017】
当該結晶型塩酸塩は、塩酸塩結晶形Iに指定され、融点が157.8℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は塩酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、24.32±0.2°、17.78±0.2°、24.58±0.2°、19.96±0.2°、10.18±0.2°、21.34±0.2°、18.06±0.2°、28.10±0.2°および18.42±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0018】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は塩酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図2に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表2に示される。
【0019】
【0020】
当該結晶型塩酸塩は、塩酸塩結晶形IIに指定され、融点が120.6℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は塩酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、18.74±0.2°、22.94±0.2°、17.64±0.2°、9.38±0.2°、9.10±0.2°、9.94±0.2°、29.70±0.2°および11.24±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0021】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は塩酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図3に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表3に示される。
【0022】
【0023】
当該結晶型塩酸塩は、塩酸塩結晶形IIIに指定され、融点が110.9℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は硫酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、20.08±0.2°、23.22±0.2°、21.38±0.2°、24.86±0.2°、18.78±0.2°、20.46±0.2°および9.38±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0024】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は硫酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図4に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表4に示される。
【0025】
【0026】
当該結晶型硫酸塩は、硫酸塩結晶形Iに指定される。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリン酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、8.44±0.2°、16.82±0.2°、10.78±0.2°、18.10±0.2°、24.78±0.2°、19.62±0.2°および23.24±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0027】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリン酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図5に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表5に示される。
【0028】
【0029】
当該結晶型リン酸塩は、リン酸塩結晶形Iに指定され、融点が154.2℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリン酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、10.86±0.2°、8.48±0.2°、17.02±0.2°、10.46±0.2°、18.38±0.2°、7.98±0.2°、23.82±0.2°および16.06±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0030】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリン酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図6に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表6に示される。
【0031】
【0032】
当該結晶型リン酸塩は、リン酸塩結晶形IIに指定され、融点が153.8℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリン酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、10.84±0.2°、8.54±0.2°、17.14±0.2°、16.76±0.2°、10.36±0.2°、18.26±0.2°、27.88±0.2°および22.34±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0033】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリン酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図7に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表7に示される。
【0034】
【0035】
当該結晶型リン酸塩は、リン酸塩結晶形IIIに指定され、融点が147.3℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はメタンスルホン酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、16.28±0.2°、20.82±0.2°、7.78±0.2°、26.68±0.2°、23.36±0.2°、26.30±0.2°および23.62±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0036】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はメタンスルホン酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図8に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表8に示される。
【0037】
【0038】
当該結晶型メタンスルホン酸塩は、メタンスルホン酸塩結晶形Iに指定され、融点が184.4℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はメタンスルホン酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、8.64±0.2°、21.02±0.2°、16.34±0.2°、23.34±0.2°、18.48±0.2°、7.84±0.2°、26.00±0.2°および10.82±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0039】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はメタンスルホン酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図9に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表9に示される。
【0040】
【0041】
当該結晶型メタンスルホン酸塩は、メタンスルホン酸塩結晶形IIに指定され、融点が185.5℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はクエン酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、16.14±0.2°、7.12±0.2°、14.86±0.2°、16.64±0.2°、21.34±0.2°および13.70±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0042】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はクエン酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図10に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表10に示される。
【0043】
【0044】
当該結晶型クエン酸塩は、クエン酸塩結晶形Iに指定され、融点が58.1℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリンゴ酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、8.44±0.2°、27.82±0.2°、14.22±0.2°、9.72±0.2°、15.44±0.2°、18.96±0.2°および19.28±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0045】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はリンゴ酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図11に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表11に示される。
【0046】
【0047】
当該結晶型リンゴ酸塩は、リンゴ酸塩結晶形Iに指定され、融点が82.8℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は酒石酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.16±0.2°、16.64±0.2°、19.80±0.2°、26.84±0.2°、18.96±0.2°、24.06±0.2°および12.16±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0048】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は酒石酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図12に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表12に示される。
【0049】
【0050】
当該結晶型酒石酸塩は、酒石酸塩結晶形Iに指定され、融点が122.4℃である。
さらに好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はフマル酸塩であり、そのX線粉末回折パターン(XRPD)は、16.82±0.2°、18.28±0.2°、11.62±0.2°、15.10±0.2°、8.44±0.2°、21.54±0.2°および27.58±0.2°の回折角(2θ)に位置する4つまたは4つ以上のピークを含む。
【0051】
最も好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はフマル酸塩であり、そのX線粉末回折パターンは、
図13に示される回折角(2θ)に位置するピークと基本的に同じ(±0.2°)であり、そのX線粉末回折データは表13に示される。
【0052】
【0053】
当該結晶型フマル酸塩は、フマル酸塩結晶形Iに指定される。
本発明の第二の態様では、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩の製造方法を提供し、
1)遊離状態(free state)の式(I)で表される化合物を水性溶媒または適切な有機溶媒に溶解または分散させ、無機酸または有機酸の液体または固体酸の溶液を前記の系に添加するか、または遊離状態の式(I)で表される化合物を酸の溶液に添加するステップと、
2)前記の造塩反応の過程で析出した固体生成物を集めるか、または造塩系における過飽和を作ることにより結晶型生成物を得るステップと、を含み、
前記無機酸は、塩酸、硫酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸またはリン酸から選ばれ、前記有機酸は、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、安息香酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、カンファースルホン酸、アスパラギン酸、樟脳酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、エリソルビン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、ピログルタミン酸、酒石酸、ドデシル硫酸、ジベンゾイル酒石酸、ギ酸、フマル酸、ガラクト酸、ゲンチシン酸、アセトヒドロキサム酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2-ケトグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、アスコルビン酸、ラウリン酸、マレイン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノ安息香酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ステアリン酸、チオシアン酸、ウンデシレン酸またはコハク酸から選ばれる。
【0054】
好ましい態様として、前記有機酸は、メタンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸または酒石酸から選ばれる。
さらに好ましい態様として、前記製造方法のステップ2)において造塩系における過飽和を作る方法は、種結晶を添加すること、溶媒を揮発させること、貧溶媒を添加すること、または冷却の方法によって結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を得ることのうちの1つまたは複数を含む。
【0055】
さらに好ましい態様として、前記製造方法の前記ステップ1)において造塩過程における前記適切な有機溶媒は、アルコール類、クロロアルカン、ケトン類、エーテル類、環状エーテル類、エステル類、アルカン類、シクロアルカン類、ベンゼン類、アミド類、スルホキシド類の有機溶媒またはそれらの混合物、またはそれらの水溶液から選ばれる。
【0056】
さらに好ましい態様として、前記製造方法の前記ステップ1)において造塩過程における前記適切な有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-tert-ブチルエーテル、2-メトキシエチルエーテルまたはそれらの混合物、またはそれらの水溶液から選ばれる。
【0057】
本発明の第三の態様では、式(I)で表される化合物酸性塩の1つの結晶形を、加熱または適切な溶媒において懸濁液結晶型変換の方法を含む結晶型変換の方法によって、当該塩の別の結晶形に変換するステップを含む、前記結晶形の式(I)で表される化合物酸性塩の製造方法を提供する。
【0058】
さらに好ましい態様として、前記適切な溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-tert-ブチルエーテル、2-メトキシエチルエーテルまたはそれらの混合物、またはそれらの水溶液から選ばれる。
【0059】
本発明の第四の態様では、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩と薬用可能な担体とを含む薬物組成物を提供する。
本発明の第五の態様では、CSF1-Rに関連する癌、腫瘍、自己免疫疾患、代謝性疾患または転移性疾患を治療するための薬物の製造における、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩の使用を提供する。
【0060】
本発明の第六の態様では、CSF1-Rに関連する癌、腫瘍、自己免疫疾患、代謝性疾患または転移性疾患を治療するための薬物として利用される、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を提供する。
【0061】
本発明の第七の態様では、CSF1-Rに関連する卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、子宮頸癌、骨転移癌、乳頭状甲状腺癌、非小細胞肺癌、結腸癌、消化管間質腫瘍、固形腫瘍、メラノーマ、中皮腫、膠芽腫、骨肉腫、多発性骨髄腫、過剰増殖性疾患、代謝性疾患、神経変性疾患、原発性腫瘍部位の転移、骨髄増殖性疾患、白血病、関節リウマチ、慢性関節リウマチ、骨関節炎、多発性硬化症、自己免疫腎炎、ループス、クローン病、喘息、慢性閉塞性肺疾患、骨粗鬆症、高好酸球症候群、肥満細胞増加症または肥満細胞白血病を治療するための薬物として利用される、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を提供する。
【0062】
好ましい態様として、前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩は、CSF1-Rに関連する卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、乳癌、子宮頸癌、膠芽腫、多発性骨髄腫、代謝性疾患、神経変性疾患、原発性腫瘍部位の転移または骨転移癌を治療するための薬物として利用される。
【0063】
本発明の第八の態様では、必要とする患者に前記結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を投与することを含む、CSF1-Rに関連する癌、腫瘍、自己免疫疾患、代謝性疾患または転移性疾患を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】本発明の式(I)で表される化合物塩酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図2】本発明の式(I)で表される化合物塩酸塩結晶形IIのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図3】本発明の式(I)で表される化合物塩酸塩結晶形IIIのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図4】本発明の式(I)で表される化合物硫酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図5】本発明の式(I)で表される化合物リン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図6】本発明の式(I)で表される化合物リン酸塩結晶形IIのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図7】本発明の式(I)で表される化合物リン酸塩結晶形IIIのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図8】本発明の式(I)で表される化合物メタンスルホン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図9】本発明の式(I)で表される化合物メタンスルホン酸塩結晶形IIのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図10】本発明の式(I)で表される化合物クエン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図11】本発明の式(I)で表される化合物リンゴ酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図12】本発明の式(I)で表される化合物酒石酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図13】本発明の式(I)で表される化合物フマル酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンを示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図14】本発明の式(I)で表される化合物塩酸塩結晶形IのDSC/TGA図を示す。横座標は温度(℃)、縦座標は熱流(w/g)/重量(%)を表す。
【
図15】本発明の式(I)で表される化合物塩酸塩結晶形IのDVS図を示す。横座標は相対湿度(%)、縦座標は重量変化(%)を表す。
【
図16】本発明の式(I)で表される化合物リン酸塩結晶形IのDSC/TGA図を示す。横座標は温度(℃)、縦座標は熱流(w/g)/重量(%)を表す。
【
図17】本発明の式(I)で表される化合物リン酸塩結晶形IのDVS図を示す。横座標は相対湿度(%)、縦座標は重量変化(%)を表す。
【
図18】本発明の式(I)で表される化合物メタンスルホン酸塩結晶形IIのDSC/TGA図を示す。横座標は温度(℃)、縦座標は熱流(w/g)/重量(%)を表す。
【
図19】本発明の式(I)で表される化合物メタンスルホン酸塩結晶形IIのDVS図を示す。横座標は相対湿度(%)、縦座標は重量変化(%)を表す。
【
図20】本発明の式(I)で表される化合物酒石酸塩結晶形IのDSC/TGA図を示す。横座標は温度(℃)、縦座標は熱流(w/g)/重量(%)を表す。
【
図21】本発明の式(I)で表される化合物酒石酸塩結晶形IのDVS図を示す。横座標は相対湿度(%)、縦座標は重量変化(%)を表す。
【
図22】本発明の式(I)で表される化合物塩酸塩の単結晶シミュレーション図と塩酸塩結晶形IのX線粉末回折重ね合わせ図を示し、粉末結晶回折ピーク図(上)、単結晶シミュレーション図(下)を示す。横座標は2θ値(度)、縦座標はピーク強度を表す。
【
図23】本発明の式(I)で表される化合物塩酸塩結晶形Iの単結晶単位胞構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の発明者らは、式(I)で表される化合物3,3-ジメチル-N-(6-メチル-5-((2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-4-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)-2-オキソピロリジン-1-カルボキサミドの異なる凝集形態を検討し、結晶型CSF-1R阻害剤酸性塩を提供し、式(I)で表される化合物の溶解性、吸湿性および化学的安定性などの物理化学的性質を大幅に改善し、前記結晶型酸性塩が臨床薬物製剤の開発ニーズを満たすことを可能にし、非常に重要な臨床使用価値を有し、癌、腫瘍、自己免疫疾患、代謝性疾患または転移性疾患を治療する薬物、特に卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、乳癌、子宮頸癌、膠芽腫、多発性骨髄腫、代謝性疾患、神経変性疾患、原発性腫瘍部位の転移または骨転移性癌を治療する薬物の製造に広く使用でき、新世代のCSF-1R阻害剤薬物の開発の加速が期待される。本発明はこれを踏まえてなされたものである。
【0066】
詳述:相反する陳述がない限り、以下の明細書と請求の範囲で使用される用語は下記の意味となる。
「薬物組成物」は1つまたは複数の本明細書にかかる化合物またはその生理学/薬用可能な塩またはプロドラッグとその他の化学成分との混合物と、生理学/薬用可能な担体および賦形剤のようなその他の成分とを含むものを表す。薬物組成物の目的は生体への投与を促進し、活性成分の吸収に繋がることで生物活性を発揮させることである。
【0067】
式(I)で表される化合物は、多結晶形または単結晶形の現象を示す複数の分離した酸性塩を有する。例えば、塩酸塩、リン酸塩およびメタンスルホン酸塩のそれぞれは、いずれも多結晶形のものとして示され、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩および酒石酸塩のそれぞれは、いずれも単結晶形のものとして示される。これらの「多結晶形のもの」は、そのX線粉末回折パターン、物理化学的および薬物動態学的特性、ならびに熱力学的安定性に関して異なる。
【0068】
本明細書で使用される「塩」とは、有機酸または塩基類薬物と薬用可能な無機または有機酸もしくは塩基との反応によって製造される化合物を指す。
方法と材料
結晶型式(I)で表される化合物酸性塩はX線粉末回折パターンにより特徴付けられる。そこで、Cu Kα放射線を用いて反射モードで操作するRigaku Ultima IV粉末回折計において、前記塩のX線粉末回折パターンを収集する。当該装置は、Cu Kα照射(40kV、40mA)を採用し、室温でD/tex Ultra検出器を使用して行う。走査範囲は、2θ区間で3°から45°までであり、走査速度は20°/分である。回折パターンは、2017年にリリースされたバージョン5.0.37のMaterials Data,Incを有するJade 5ソフトウェアで分析される。
【0069】
XRPD試料の製造は、試料を単結晶シリコン上に置き、ガラス板または同等物で試料粉末をプレスして、試料の表面が平坦で適切な高さを有することを確保することによって行われる。そして、試料ホルダーをRigaku Ultima IV XRPD装置に設置し、前記に説明した装置パラメータを使用してX線粉末回折パターンを収集する。かかるX線粉末回折分析の結果に関連する測定の差異は、(a)試料製造物(例えば、試料の高さ)における誤差、(b)装置誤差、(c)較正差異、(d)作業者の誤差(ピーク位置を測定する時に生じる誤差を含む)、および(e)物質の特性(例えば、好ましい配向誤差)を含む、複数の要因から生じる。較正誤差および試料高さ誤差は、多くの場合、すべてのピークが同じ方向にシフトすることをもたらす。一般的には、この較正係数は、測定されたピーク位置を予想されるピーク位置と一致させ、予想される2θ値±0.2°の範囲内にあり得る。本発明の実施例で得られた各多結晶形の角度2θ値(°)および強度値(最高ピーク値の%とする)は表1~表13に示される。
【0070】
示差走査熱量測定(DSC)を使用して結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を特徴付ける実験方法としては、少量の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩粉末を取り、装置とセットをしてキャッピング可能なアルミニウムパンに置き、試料を装填した後、アルミニウムパンでキャッピングし、キャッピングした後に装置に送り込んで測定する。本特許における示差走査熱量測定に使用されるすべての装置の型番はTA Q2000であり、走査パラメータは、窒素雰囲気を採用し、昇温速度が10℃/minであるように設けられる。
【0071】
熱重量分析法(TGA)を使用して結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を特徴付ける実験方法としては、少量の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩粉末を取り、装置とセットをするアルミニウムパンに置き、試料を装填した後、装置に送り込んで測定する。本特許における熱重量分析法に使用されるすべての装置の型番はTA Q500であり、走査パラメータは、窒素雰囲気を採用し、昇温速度が10℃/minであるように設けられる。
【0072】
動的水蒸気吸着法(DVS)を使用して結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を特徴付ける実験方法としては、少量の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩粉末を取り、装置とセットをする精密な試料パンに置き、試料を装填した後、装置に送り込んで測定する。本特許における動的水蒸気吸着法に使用されるすべての装置の型番はDVS Intrinsicであり、実験パラメータは、キャリアガスとして窒素を採用するように設けられ、平衡到達の判定基準として一定温度は25℃、単位時間当たりの質量百分率変化率(dm/dt)=0.01%/minであるように設定し、プログラム湿度変化サイクルは、初期相対湿度が0%、終点時相対湿度が90%であるように設けられ、サイクルを2回設け、10% R.H.毎に1つの階段に変化する。
【0073】
本発明の実施例における試薬は既知の市販品、または本分野で既知の方法を採用し、または本分野で既知の方法によって合成できるものであり、API原料は、特許WO2018214867A1に従って製造され得る。
【0074】
特別に説明しない限り、本発明のすべての反応はいずれも連続的な磁気撹拌で、乾燥窒素またはアルゴンの雰囲気において行われ、溶媒は乾燥溶媒で、温度の単位はセルシウス度(℃)である。
【0075】
本発明でいう各種結晶形は、特別な説明がない限り、無水結晶形でも含水結晶形でもよく、例えば含水結晶形であり、好ましくは、各結晶体1部に1、2、3、4または5部の結晶水を含み、より好ましくは、各結晶体1部に1または2部の結晶水を含む。
【0076】
本発明は、添付図面および以下の実施例によってさらに詳細かつ完全に説明され、これらは本発明の特定の実施形態のみを説明するために使用され、いかなる形態で本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0077】
具体的な実施例の製造
実施例1 塩酸塩結晶形Iの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLのメチル-tert-ブチルエーテルに溶解し、2.35μLの濃塩酸を含有する0.1mLのメチル-tert-ブチルエーテルを添加し、室温で3日間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図1に示した。
【0078】
実施例2 塩酸塩結晶形IIの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLの酢酸エチルに溶解し、2.35μLの濃塩酸を含有する0.1mLの酢酸エチルを添加し、室温で3日間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図2に示した。
【0079】
実施例3 塩酸塩結晶形IIIの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLのアセトンに溶解し、2.35μLの濃塩酸を含有する0.1mLのアセトンを添加し、室温で3日間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図3に示した。
【0080】
実施例4 塩酸塩結晶形Iの製造
約50mgの式(I)で表される化合物を1.2mLのメチル-tert-ブチルエーテルに溶解し、11.7μLの濃塩酸を含有する1.2mLのメチル-tert-ブチルエーテルを添加し、室温で7日間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD、DSC、TGAおよびDVS分析を行い、そのX線粉末回折パターンは
図1に示すものと一致し、そのDSC、TGAおよびDVS分析を
図14~
図15に示した。
【0081】
実施例5 硫酸塩結晶形Iの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLのメチル-tert-ブチルエーテルに溶解し、4.67μLの濃硫酸を含有する0.1mLのメチル-tert-ブチルエーテルを添加し、室温で3日間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図4に示した。
【0082】
実施例6 リン酸塩結晶形Iの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLのメタノールに溶解し、2.74μLの濃リン酸を含有する0.1mLのメタノールを添加し、撹拌し、-20℃で3日間静置し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図5に示した。
【0083】
実施例7 リン酸塩結晶形IIの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLの酢酸エチルに溶解し、2.74μLの濃リン酸を含有する0.1mLの酢酸エチルを添加し、撹拌し、-20℃で3日間静置し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図6に示した。
【0084】
実施例8 リン酸塩結晶形IIIの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLの96%エタノールに溶解し、2.74μLの濃リン酸を含有する0.1mLの96%エタノールを添加し、-20℃で3日間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図7に示した。
【0085】
実施例9 リン酸塩結晶形Iの製造
約50mgの式(I)で表される化合物を1.2mLのメタノールに溶解し、13.7μLの濃リン酸を含有する1.2mLのメタノールを添加し、撹拌し、-20℃で7日間静置し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD、DSC、TGAおよびDVS分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図5に示し、そのDSC、TGAおよびDVS分析を
図16~
図17に示した。
【0086】
実施例10 メタンスルホン酸塩結晶形Iの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLのテトラヒドロフランに溶解し、2.29μLのメタンスルホン酸を含有する0.1mLのテトラヒドロフランを添加し、撹拌し、-20℃で3日間静置し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図8に示した。
【0087】
実施例11 メタンスルホン酸塩結晶形IIの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLのアセトンに溶解し、2.29μLのメタンスルホン酸を含有する0.1mLのアセトンを添加し、撹拌し、-20℃で3日間静置し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図9に示した。
【0088】
実施例12 メタンスルホン酸塩結晶形IIの製造
約50mgの式(I)で表される化合物を1.2mLのアセトンに溶解し、11.4μLのメタンスルホン酸を含有する1.2mLのアセトンを添加し、撹拌し、-5℃で3日間静置し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD、DSC、TGAおよびDVS分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図9に示し、そのDSC、TGAおよびDVS分析を
図18~
図19に示した。
【0089】
実施例13 クエン酸塩結晶形Iの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLのアセトニトリルに溶解し、4.57mgのクエン酸を添加し、室温で3日間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図10に示した。
【0090】
実施例14 リンゴ酸塩結晶形Iの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLの酢酸エチルに溶解し、2.76mgのリンゴ酸を添加し、室温で3日間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図11に示した。
【0091】
実施例15 酒石酸塩結晶形Iの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLのアセトニトリルに溶解し、3.57mgの酒石酸を添加し、撹拌し、溶媒を蒸発させ、固体を50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図12に示した。
【0092】
実施例16 酒石酸塩結晶形Iの製造
約50mgの式(I)で表される化合物を1.2mLのアセトニトリルに溶解し、17.87mgの酒石酸、1mLのアセトニトリル、0.2mLの精製水を添加し、撹拌し、沈殿析出なし、5℃で1週間静置し、沈殿析出なし、1mLのメチル-tert-ブチルエーテルを添加し、撹拌し、-20℃で1週間静置し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD、DSC、TGAおよびDVS分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図12に示し、そのDSC、TGAおよびDVS分析を
図20~
図21に示した。
【0093】
実施例17 フマル酸塩結晶形Iの製造
約10mgの式(I)で表される化合物を0.5mLのメチル-tert-ブチルエーテルに溶解し、2.76mgのフマル酸塩を添加し、撹拌し、-20℃で3日間静置し、ろ過し、ろ過ケーキを50℃でオーブン乾燥し、XRPD分析を行い、そのX線粉末回折パターンを
図13に示した。
【0094】
実施例18 塩酸塩結晶形Iの構造分析
40mgの式(I)で表される化合物を秤取して20mLバイアルに置き、3mLのアセトンを添加して溶解させ、さらに40μLの濃塩酸(12M)を添加して懸濁液を得た。孔径0.22μmのFPTE材質のニードルフィルタでろ過し、清澄な溶液を得た。0.2mLのろ液を取って2mLのバイアルに置き、バイアルをパラフィルムで密封し、パラフィルムに小孔をあけ、室温でゆっくりと揮発させ、体積の比較的小さい片状の単結晶を種結晶として得た。
【0095】
40mgの式(I)で表される化合物を秤取して20mLバイアルに置き、3mLのアセトンを添加して溶解させ、さらに40μLの濃塩酸(12M)を添加して懸濁液を得た。孔径0.22μmのFPTE材質のニードルフィルタでろ過して、清澄な溶液を得た。0.4mLのろ液を取って2mLのバイアルに置き、さらに0.3mLのアセトンを添加し、前記製造された片状の種結晶を少量添加し、バイアルをパラフィルムで密封し、パラフィルムに小孔をあけ、室温でゆっくりと揮発させ、体積の比較的小さい片状の単結晶を得た。
【0096】
適切な単結晶を選択してBruker APEX-II CCD単結晶回折計で検出を行った。データ収集期間において、温度は220Kに維持された。Mercury 3.10.2(Build 189770)ソフトウェアを用いて、単結晶回折パターンを計算により粉末結晶回折パターンにシミュレートし、さらに式(I)で表される化合物塩酸塩結晶形Iの粉末結晶回折パターンと比較し、
図22に示すように、比較から分るように、塩酸塩結晶形Iは、単結晶シミュレーションと一致し、かつ余分なピークの生成がなく、本特許における式(I)で表される化合物塩酸塩結晶形Iは純粋な相であることが示された。同時に、式(I)で表される化合物塩酸塩結晶形Iは、一塩酸塩一水和物であることも確認できた。単結晶単位胞構造は
図23に示される。
【0097】
【0098】
実施例19 溶解度測定
約2mgの各種の結晶型酸性塩および遊離状態の式(I)で表される化合物をそれぞれ秤取して2mLのガラスバイアルに置き、精密に計量し、毎回約100μLの脱イオン水を添加し、超音波処理し、化合物が溶解しない場合、化合物が完全に溶解するまたは濃度<0.2mg/mLになるまで脱イオン水を添加し続け、添加した水の総体積を記録し、溶解挙動および現象を観察し、各化合物の溶解度を計算した。溶解度試験の結果は以下の表に示される。
【0099】
【0100】
以上の実験結果から分るように、遊離状態の式(I)で表される化合物を造塩化して結晶型化合物を得た後、すべての塩型の水への溶解度が大幅に向上し、薬物臨床製剤の開発ニーズを満たすことができる。したがって、遊離状態の式(I)で表される化合物を造塩化して結晶型化合物を得た後の溶解度および薬物放出挙動の方面は、著しく改善され得る。
【0101】
実施例20 吸湿挙動試験
本特許の発明者らは、動的水蒸気吸着法により、各種の結晶形の各相対湿度における吸湿重量増加結果(吸湿重量増加/吸湿前重量*100%)を測定し、異なる結晶形化合物の吸湿性を評価し、得られた結果は以下の表に示される。
【0102】
【0103】
以上の実験結果から、塩酸塩結晶形Iは、相対湿度が80%未満の場合、結晶の吸湿重量増加が1%未満であり、相対湿度が80%に上昇してから結晶の吸湿性が徐々に増加し始め、相対湿度が90%に上昇してから結晶の吸湿性が著しく増加し、塩酸塩結晶形Iのこのような吸湿特性は臨床製剤の保存要求に非常に適し、高湿度環境で大量に吸湿できることにより結晶体の溶解を加速することにも適し、臨床製剤の造粒プロセスに有利であることが判明される。
【0104】
メタンスルホン酸塩結晶形IIは、塩酸塩結晶形Iと類似した吸湿特性を有し、その相違点は、メタンスルホン酸塩結晶形IIの相対湿度が70%に上昇する場合、結晶の吸湿性が著しく増加することのみにある。この吸湿特性は、臨床製剤の造粒プロセスの要求にも非常に適する。
【0105】
酒石酸塩結晶形Iの吸湿特性は、相対湿度の増加につれて、結晶の吸湿重量増加が基本的に等しく増加し、良好な直線関係を成していることであり、かかる吸湿特性により、発明者らの後続の研究において特殊な製剤の開発に有利である。
【0106】
リン酸塩結晶形Iの吸湿性も非常に特徴的であり、環境の相対湿度にかかわらず常に小さい吸湿度を維持し、かかる特性は、異なる地域の保存、輸送および生産に利用され得、特殊な製剤の製造にも便利である。
【0107】
周知のように、薬物の吸湿性は、薬物の生産、貯蔵および含有量に影響を与える重要な物理化学的性質であり、異なる吸湿特性に応じて異なる薬物製剤を開発でき、これにより薬物臨床の異なる開発ニーズに適応する。低吸湿性の物理的形態により、薬物の生産、貯蔵および含有量がより安定的になる。したがって、前記結晶型化合物は、いずれも比較的良好な吸湿特性を有し、特に、塩酸塩結晶形Iおよびリン酸塩結晶形Iは、他の結晶形の塩よりも開発可能性の面で優れている。
【0108】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明にかかるすべての文献は本出願で参考として引用される。また、本発明の前記に説明された内容を読み終わった後、当業者が本発明に対して種々の変更や修正をすることができ、これらの等価の形態は同様に本発明にかかる範囲に含まれることが理解される。
【国際調査報告】