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▶ クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ピストン圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 9/02 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
F04B9/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572860
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022064304
(87)【国際公開番号】W WO2022248605
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】21175774.5
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】コーネル カンター
(72)【発明者】
【氏名】ペーター コヴァシク
(72)【発明者】
【氏名】ゾルタン ラスツロ ヴァス
(72)【発明者】
【氏名】ユヴェス コンペラ
【テーマコード(参考)】
3H075
【Fターム(参考)】
3H075AA18
3H075BB03
3H075DB24
3H075DB29
(57)【要約】
本発明は、ピストン圧縮機であって、圧縮機シリンダ(2)内で案内されるピストン(1)であって、ピストンと圧縮機シリンダとが、流体を圧縮するための圧縮機室(3)を形成している、ピストン(1)と、軸線を中心として回転可能に設けられた軸(4)と、軸の軸線に対して偏心して配置されかつ軸に固定されて設けられた行程部材(6,13)とを含み、行程部材およびピストンは、軸がその軸線を中心として回転すると、ピストンが最大行程位置と最小行程位置との間で運動を行うように構成されている、ピストン圧縮機に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン圧縮機であって、
圧縮機シリンダ(2)内で案内されるピストン(1)であって、該ピストン(1)と前記圧縮機シリンダ(2)とが、流体を圧縮するための圧縮機室(3)を形成している、ピストン(1)と、
軸線(5)を中心として回転可能に設けられた軸(4)と、
前記軸(4)の前記軸線(5)に対して偏心して配置されかつ前記軸(4)に固定されて設けられた行程部材(6,13)と
を含み、
前記行程部材(6,13)および前記ピストン(1)は、前記軸(4)がその前記軸線(5)を中心として回転すると、前記ピストン(1)が最大行程位置と最小行程位置との間で運動を行うように構成されている、
ピストン圧縮機。
【請求項2】
前記行程部材(6,13)と前記ピストン(1)とは、互いに直接に結合されている、または中間部材(9)を介して接続されている、請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
1つの別の圧縮機シリンダ内を案内される少なくとも1つの別のピストンを含む、請求項1または2記載の圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮機は、少なくとも2つの別のピストン、好適には2つ~8つ、より好適には2つ~5つ、さらにより好適にはちょうど2つまたは5つ、最も好適にはちょうど2つの別のピストンを含み、該別のピストンはそれぞれ、1つの別の圧縮機シリンダ内を案内される、請求項1から3までのいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項5】
前記圧縮機シリンダ(2)および前記別の圧縮機シリンダは、前記軸(4)の前記軸線(5)の方向における、前記圧縮機シリンダ(2)の軸線(10)と前記別の圧縮機シリンダの軸線(10)との間の距離が、
圧縮機シリンダ(2)の外側半径と前記別の圧縮機シリンダの外側半径との和よりも小さくなるように、かつ/または
前記ピストンを前記軸に連結している1つの、特にそれぞれの中間部材(9)、特にコネクションロッドの延在長さよりも大きくなるように
配置されている、請求項3または4記載の圧縮機。
【請求項6】
前記圧縮機シリンダ(2)と前記別の圧縮機シリンダとは角度配置で配置されており、各前記圧縮機シリンダの軸線の間の角度は0°超~180°、好適には10°~160°、より好適には30°~140°、さらにより好適には40°~130°、最も好適には60°~120°である、請求項3から5までのいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項7】
前記圧縮機シリンダ(2)と、前記別の圧縮機シリンダとは、列に配置されている、請求項3または4記載の圧縮機。
【請求項8】
前記少なくとも1つの別のピストンは、前記軸(4)がその前記軸線(5)を中心として回転すると、特に全回転を行うと、前記最大行程位置と前記最小行程位置との間で運動を行うように構成されている態様で、前記少なくとも1つの別のピストンは、前記行程部材(6,13)に直接に結合されており、または前記中間部材を介して接続されており、好適には、前記軸の前記軸線の方向における前記行程部材の延在長さは、前記ピストンが前記行程部材に接続され得るように選択されており、前記ピストンの軸線の位置は、前記軸(4)の前記軸線(5)の方向において互いに離間されている、請求項3から7までのいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項9】
前記軸は、円筒形状を有しており、前記行程部材は、中空の円筒形状を有しており、好適には、前記中空の円筒の内径は、前記軸の外径に相当し、前記中空の円筒の外径は、好適には、前記行程部材を前記中間部材、特にコネクティングロッドに連結するための軸受手段、特に転がり軸受の内径に相当する、請求項8記載の圧縮機。
【請求項10】
結合面に沿って互いに結合可能な2つの別個の部分を備えた分割式のクランクケースがさらに含まれており、該分割式のクランクケースでは、前記別個の部分を互いに結合する前に、前記結合面により画定される取付け開口が寸法決めされており、これにより、前記軸、前記行程部材、特に請求項8または9記載の行程部材、および前記ピストン、好適には前記ピストンと、請求項3から7までのいずれか1項記載の少なくとも1つの追加的なピストンのそれぞれを含む、予め組み立てられたクランクドライブを、前記取付け開口を介して一方の前記別個の部分内に挿入することができるようになっている、請求項1から9までのいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項11】
前記結合面は、前記軸の前記軸線の方向、特に前記軸の前記軸線の方向に対して平行な方向に延びており、好適には、請求項3から7までのいずれか1項記載のシリンダのうちの少なくとも1つは、一方の前記別個の部分に結合される一方で、残りの前記シリンダは他方の前記部分に結合される、または
前記結合面は、前記軸の前記軸線に対して角度付けられて、特に垂直に延びており、特に、前記結合面は、請求項3から7までのいずれか1項記載の各シリンダの前記クランクケースにおける各シリンダ開口を2つの部分に切り離す、請求項10記載の圧縮機。
【請求項12】
前記少なくとも1つの別のピストンは、前記軸(4)がその前記軸線を中心として回転すると、前記最大行程位置と前記最小行程位置との間で運動を行うように構成されている態様で、前記少なくとも1つの、好適にはそれぞれ別のピストンは、前記軸(4)に配置された1つの別の行程部材(6,13)、特に各前記ピストンのための1つの別の行程部材(6,13)に直接に結合されており、または前記中間部材を介して接続されている、請求項3から7までのいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項13】
前記行程部材と、前記別の行程部材とはそれぞれ、別個のピースとして構成されており、好適には、前記行程部材と前記軸とは、前記軸の前記軸線の方向に作用する結合力により、トルク伝達式に互いに結合されており、好適には、前記力は、前記軸と前記行程部材とを前記軸の前記軸線の方向で互いに対して付勢する付勢手段により供給され、好適には、前記付勢手段は、好適には前記軸に設けられた対応するねじ山と協働するねじ山付きナットを含む、請求項12記載の圧縮機。
【請求項14】
前記行程部材はそれぞれ、前記軸を収容するための孔を有しており、特に、各前記行程部材が既に前記圧縮機のクランクケース内に予め組み付けられる場合には、好適には、各前記行程部材の前記孔は、特に円筒形の前記軸が前記孔を通って前記軸の前記軸線の方向に挿入され得るように互いに整列させられており、これにより、各前記行程部材は、既に前記ピストンに連結されており、好適にはさらに、前記軸の前記軸線に対して半径方向に前記軸から突出する当接面が含まれており、これにより、前記軸から前記行程部材に前記結合力を伝達することができる、請求項13記載の圧縮機。
【請求項15】
前記行程部材は、前記軸(4)の前記軸線(5)に対して偏心して配置されており、かつ好適には前記軸に固定されて設けられており、各前記行程部材は互いに整列させられており、これにより、各前記行程部材の間の角度、特に各前記行程部材の対称軸線の間の角度は180°未満、好適には90°未満、より好適には60°未満、さらにより好適には30°未満、最も好適には10°未満になっており、特に、各前記行程部材は一列に配置されている、請求項12から14までのいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項16】
前記行程部材(6,13)と前記別の行程部材(6,13)とは、前記軸(4)の前記軸線の方向において互いに当接するように配置されており、かつ/または前記行程部材(6,13)と前記別の行程部材(6,13)との間には、特に冷却のためにスペース(11)が設けられている、請求項12から15までのいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項17】
前記行程部材(6,13)、好適には請求項8から12までのいずれか1項記載の各行程部材と前記軸(4)とは、ワンピースとして構成されており、好適には、
前記軸は円筒形状を有しており、かつ/または
前記行程部材はディスク形状または円筒形状を有している、
請求項1から16までのいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項18】
前記ピストン(1)は、コネクションロッドを介して、前記行程部材(6,13)、特に各前記行程部材に接続されており、かつ/または
前記行程部材(6,13)、特に各前記行程部材は、円形のディスクを有しており、該ディスクは、前記軸(4)の前記軸線(5)に関して偏心して、前記軸(4)に設けられており、かつ/または
前記行程部材(6,13)、特に各前記行程部材と、前記ピストン(1)、特に各前記ピストンとの間に、転がり軸受または滑り軸受が設けられており、かつ/または
前記流体は、気体、特に空気、または液体、特に液圧液体である、
請求項1から17までのいずれか1項記載の圧縮機。
【請求項19】
請求項1から15までのいずれか1項記載の圧縮機を有する車両であって、好適には、
前記圧縮機は、前記車両のこれらのシステム、すなわち
燃料電池、
空圧制動システム、
エアサスペンション、
圧縮空気リザーバ
のうちの少なくとも1つに空気を供給するように構成されており、かつ/または
前記車両は、好適には、商用車、トラック、トレーラ、乗用車、および/または牽引車両とトレーラとが組み合わせられたものとして構成されており、かつ/または前記車両は、好適には、電気車両、ハイブリッド車両または従来型の車両として構成されている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン圧縮機に関する。
【0002】
ピストン圧縮機は、それぞれ圧縮機シリンダ内で案内される1つ以上のピストンを含み、この場合、ピストンと圧縮機シリンダとは、流体を圧縮するための圧縮機室を形成する。圧縮機の動作中、ピストンは、圧縮機シリンダの軸線に沿って、最大行程位置と最小行程位置との間で動かされ、この場合、ピストンが最大行程位置にあるとき、圧縮機室はその最小容積を有しており、ピストンが最小行程位置にあるとき、圧縮機室はその最大容積を有している。好適には、圧縮されるべき流体は、弁により制御されるポートを介して圧縮機室に供給されかつ圧縮機室から流出させられる。
【0003】
本発明によるピストン圧縮機は、この原理に従って動作する。
【0004】
車両、特に商用車は、車両の様々なシステムのために圧縮流体、特に圧縮空気の供給を必要とする。例えば空気は、車両の燃料電池用に必要とされる、または空圧制動システムもしくは空圧式のエアサスペンションおよび/または別の消費装置の圧縮空気リザーバ内に蓄えられる。圧縮空気は、上述したように特にピストン圧縮機により生ぜしめられる。
【0005】
車両の設置スペースは限られているため、本発明は、少なくとも1つの方向における延在長さを短縮することにより、ピストン圧縮機用に必要とされる設置スペースを減少させるという目的を有している。本発明の別の課題は、ピストン圧縮機の設計の複雑度を低減することにある。
【0006】
これらの課題は、独立請求項の主題により解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明により、ピストン圧縮機であって、
-圧縮機シリンダ内で案内されるピストンであって、ピストンと圧縮機シリンダとが、流体を圧縮するための圧縮機室を形成している、ピストンと、
-軸線を中心として回転可能に設けられた軸と、
-軸の軸線に対して偏心して配置されかつ軸に固定されて設けられた行程部材と
を含み、
行程部材およびピストンは、軸がその軸線を中心として回転すると、特に全回転を行うと、ピストンが最大行程位置と最小行程位置との間で運動を行うように構成されている、ピストン圧縮機が提供される。
【0008】
「運動」という表現は、特に「少なくとも1つの運動」を意味すると理解されるべきである。好適には、ピストンは、軸がその軸線を中心として全回転を行うと、最大行程位置と最小行程位置との間で、例えば最大位置から最小位置まで、かつ最小位置から最大位置まで戻る2つの運動を行う。
【0009】
特に、軸の軸線に対する行程部材の偏心的な配置に基づき、行程部材が行う行程運動は、ピストンに伝達される。
【0010】
好適には、行程部材は円筒部材を含み、この場合、円筒部材の軸線は、軸の軸線に対して偏心して配置されている。好適には、重量削減のために、行程部材は中実の円筒部材を含まない。例えば、円筒部材は、軸が貫通して延びている内輪と、内輪に対して偏心して配置された外輪とを有している。2つの輪は、内輪から外輪へ半径方向外側に向かって延びる複数の部材を介して結合され得る。円筒部材はディスクとして構成され得、この場合、円筒部材の高さは円筒部材の半径よりも小さくなっており、これにより、軸の軸線方向における圧縮機の延在長さを短縮する。行程部材のディスクまたは円筒形状は、特に有利である。それというのも、このことは、例えばクランクショルダにより軸に結合されたクランクピンにより実現された行程部材の場合に使用されるような小さな転がり軸受よりも熱およびトルク変動に対してより耐久性がある比較的大きな転がり軸受を介して、行程部材にコネクティングロッドの取付け部分を結合することを可能にするからである。
【0011】
一般に、行程部材は、行程部材の行程運動をピストンに伝達することによりピストンを持ち上げることができるかぎり、他の形状を有する部材を含んでいてもよい。特に、行程部材は部分的に円筒形の部材を含んでいてもよい。
【0012】
好適には、行程部材とピストンとは、互いに直接に結合されている、または中間部材を介して接続されている。
【0013】
好適には、圧縮機は、1つの別の圧縮機シリンダ内を案内される少なくとも1つの別のピストンを含む。特に好適には、圧縮機は、少なくとも2つの別のピストン、好適には2つ~8つ、より好適には2つ~5つ、さらにより好適にはちょうど2つまたは5つ、最も好適にはちょうど2つの別のピストンを含み、この場合、別のピストンはそれぞれ、1つの別の圧縮機シリンダ内を案内される。換言すると、圧縮機は、好適には合計3つ~9つ、好適には3つ~6つ、より好適にはちょうど3つ、6つまたは9つ、最も好適にはちょうど3つのピストンを含み、各ピストンは、1つの圧縮機シリンダ内を案内される。特に3つのピストンの使用は、ピストンをY字形配置の形態の角度配置で配置することを可能にするため、特に有利であることが分かった。Y字形配置は、圧縮機の騒音および振動放出の削減に関して特に有利であることが分かった。これにより、この圧縮機は、空気圧縮機として、特に制動システム用、特に、車両、特に商用車または鉄道車両の制動システム用の空気圧縮機として、特に適している。
【0014】
以下で、圧縮機シリンダおよび別の圧縮機シリンダ、またはピストンおよび別のピストンに関する特徴を説明する場合、それぞれの特徴は、少なくとも2つの別のピストンおよびシリンダ、好適には2つ~8つ、より好適には2つ~5つ、より好適にはちょうど2つまたは5つ、最も好適にはちょうど2つの別のピストンおよびシリンダを有する複数の好適な実施形態に等しく適用されることを意図したものである。この記述に加えて、このことは追加的に、「追加的なピストン」または追加的な「シリンダ」という文言の後ろの終端部における「/s」により示されている。
【0015】
好適には、圧縮機シリンダおよび別の圧縮機シリンダは、互いに重なり合って、すなわち、軸の軸線の方向における、圧縮機シリンダの軸線と別の圧縮機シリンダの軸線との間、特に隣接し合うシリンダ間の距離が、圧縮機シリンダの外寸の外側半径と別の圧縮機シリンダの外寸の外側半径との和よりも小さくなるように、配置されている。その結果、圧縮機シリンダが一列に配置されることはなく、この場合、軸の軸線の方向の圧縮機の延在長さが短縮されている。追加的または択一的に、好適には追加的に、圧縮機シリンダおよび別の圧縮機シリンダは、シリンダの軸線が、軸の軸線の方向において互いに離間されているように配置されている。追加的または択一的に、好適には追加的に、圧縮機シリンダおよび別の圧縮機シリンダは、軸の軸線の方向における、圧縮機シリンダの軸線と別の圧縮機シリンダの軸線との間、特に隣接し合うシリンダの間の距離が、ピストンを軸に連結している1つの、特にそれぞれの中間部材、特にコネクションロッドの延在長さよりも大きくなるように、互いに配置されている。これにより、各ピストンを、個々の行程部材または行程部材部分を介して、かつ好適には個々のコネクションロッドおよび好適には個々の軸受手段、特に転がり軸受を介して、軸に接続することができる。軸の軸線の方向における各シリンダ間のスペースに基づき、ピストンは、転がり軸受により軸に連結され得る。このことは、オイル潤滑式の軸受とは異なり、クランクケース内のオイルフリーの軸受の実現を可能にし、これにより、空気がオイルで汚染されるリスクなしに、圧縮機により圧縮されるべき空気をクランクケースの内部から吸引することができる。さらに、軸の軸線方向における各シリンダ間のスペースに基づき、比較的大きなピストンを使用すること、および/または熱およびトルク変動に対する圧縮機の耐性を高めることが可能であり、これにより、圧縮機は、空気圧縮機として、特に制動システム用、特に車両、特に商用車または鉄道車両の制動システム用の空気圧縮機として、特に適格になる。特に、後述の好適な角度配置と前述の軸線方向の小さなスペースとを組み合わせることにより、熱およびトルク変動に対する耐性が増大した小さな寸法の圧縮機を提供することができる。
【0016】
好適には、各ピストンは、行程部材により、好適にはコネクティングロッドにより、軸に連結されている。好適には、各コネクティングロッドは、特に好適には玉軸受等のオイルフリー軸受手段により、そのピストンに接続されている。追加的または択一的に、各コネクティングロッドは、特に独自の軸受手段、特にオイルフリー軸受手段、特に好適には転がり軸受を介して軸に連結されている。好適には、各コネクティングロッドは、独自の行程部材または独自の行程部材部分を介して行程部材に連結されている。好適には、ピストン圧縮機は、各ピストンにつき1つの行程部材または行程部材部分、特に各ピストンにつき1つのディスク形の行程部材または行程部材部分を有しており、この場合、行程部材または行程部材部分とピストンとは、軸がその軸線を中心として回転すると、ピストンが最大行程位置と最小行程位置との間で運動を行うように構成されている。
【0017】
好適には、圧縮機シリンダと別の圧縮機シリンダとは角度配置で配置されており、この場合、各圧縮機シリンダの軸線の間の角度は0°~180°、特に0°超~180°、好適には10°~160°、より好適には30°~140°、最も好適には60°~120°であり、V型エンジン、ボクサーエンジンまたはラジアルエンジンと同様である。好適には、圧縮機シリンダと、少なくとも2つの別の圧縮機シリンダとは、それらの軸線がそれぞれ基準角度位置に対して異なる角度を有するように、角度配置で配置されている。特に好適には、圧縮機シリンダと少なくとも2つの別の圧縮機シリンダとは、周方向において互いに隣接し合うそれらの軸線のうちの2つの間の最大角度スペースが10°~160°、好適には30°~140°、より好適には60°~120°、さらにより好適には60°または120°、最も好適には120°であるように、角度配置で配置されている。好適には、圧縮機シリンダと少なくとも2つの別の圧縮機シリンダとは、軸の周囲に星形配置で、好適にはY字形配置で配置されており、好適には、星形配置またはY字形配置の脚部の間の角度スペースは、10°~160°、好適には30°~140°、より好適には60°~120°、さらにより好適には60°または120°、最も好適には120°である。
【0018】
圧縮機の円滑でバランスの取れた運転を特徴とする、本発明の1つの有利な実施形態では、圧縮機は、互いに120°または60°離間された3つまたは6つの圧縮機シリンダを含む。
【0019】
有利な実施形態では、圧縮機シリンダの軸線と、別の圧縮機シリンダの軸線とは、同一平面内に配置されており、この場合、軸の軸線は、この平面に対して垂直に向けられている。これにより、軸の軸線の方向の延在長さが短縮された圧縮機が得られる。
【0020】
1つの択一的な実施形態では、軸の軸線に対して横方向の圧縮機の延在長さを短縮しようとする場合、圧縮機シリンダと、別の圧縮機シリンダとは一列に配置され得る。
【0021】
圧縮機シリンダの角度配置と列配置とが組み合わせられてもよい。例えば、少なくとも2つの圧縮機シリンダが、軸の軸線に沿って一列に配置され得、この場合、少なくとも2つの別の圧縮機シリンダが別の列に配置されており、両方の列は、軸の軸線を中心とした角度配置で配置されている。
【0022】
一般に、圧縮機は、2つ以上の別の圧縮機シリンダを含んでいてもよい。好適には、圧縮機は3つの圧縮機シリンダを含み、この場合、軸の軸線を中心とした各圧縮機シリンダの軸線の間の角度は120°である。別の実施形態では、圧縮機は6つの圧縮機シリンダを含み、この場合、軸の軸線を中心とした各圧縮機シリンダの軸線の間の角度は60°である、すなわち、V型エンジンまたはラジアルエンジンと同様である。
【0023】
好適には、少なくとも1つの別のピストンは、行程部材に直接に結合されており、または中間部材を介して接続されており、これにより、少なくとも1つの別のピストンは、軸がその軸線を中心として回転すると、特に全回転を行うと、最大行程位置と最小行程位置との間で運動を行うように構成されている。好適には、軸の軸線の方向における行程部材の延在長さは、ピストンがそれぞれ行程部材に接続され得るように選択されており、この場合、ピストンの軸線の位置は、軸の軸線の方向において互いに離間されている。特に好適には、行程部材の延在長さは、各ピストンの中間部材の延在長さの和と比べて少なくとも同じ大きさであり、好適にはより大きくなっている。
【0024】
好適には、軸は円筒形状を有している。特に好適には、行程部材は中空の円筒形状を有しており、この場合、中空の円筒の内径は、軸の外径に相当し、中空の円筒の外径は、行程部材を中間部材、特にコネクティングロッドに連結するための軸受手段、特に転がり軸受の内径に相当する。好適には、行程部材の延在部は、軸に対して偏心して設けられている。好適には、この実施形態は上述の角度配置と組み合わせられる。好適には、行程部材はワンピースとして構成されており、特に、例えば鋳造により一体に成形されている。
【0025】
特に、中間部材、好適には各中間部材は、コネクティングロッドである。好適には、コネクティングロッド、特に各コネクティングロッドは、コネクティングロッドを軸、特にクランク軸に連結するための取付け部分と、コネクティングロッドをピストンに連結、特に結合するためのロッド部分とを有している。取付け部分は、軸との連結を様々な形式で実現するように構成され得る。例えば取付け部分は、クランクショルダを介して軸に結合されたクランクピンを収容するように構成された孔を有していてもよい。しかしながら、発明者らは、軸を収容するように構成された孔により、コネクティングロッドと軸との連結を実現することが有利である、ということを発見した。特に好適には、孔は、軸および偏心体を収容するように構成されている。好適には、偏心体は回転対称形であり、特にディスク形または円筒形である。特に取付け部分の孔は、偏心体の半径方向の延在長さと、偏心体と取付け部分との間の軸受手段の半径方向の延在長さとの和に相当する直径を有している。特に好適には、軸受手段は転がり軸受を含む。
【0026】
ロッド部分は、ピストンとの連結を様々な形式で実現するように構成され得る。「連結」とは特に、力がコネクティングロッドからピストンへ、かつその逆に伝達され得ることを意味する。ピストンとコネクティングロッドとが別個の部品である必要はない。反対に、ピストンと、ロッド部分またはロッド部分の少なくとも一部、好適にはロッド部分のピストンに面した部分とは、ワンピースとしてまたは別個のピース(部品)として構成され得る。好適には、これらはワンピースとして構成されており、特に例えば鋳造により一体に成形されており、かつ/またはこれらの間には接合部が存在しない。択一的に、ピストンとコネクティングロッドとは、2つのピースから製造されてもよく、ロッド部分とピストンとの間の回転運動(回転可能な接続)を可能にする接続手段またはこのような運動を妨げる(固定的な接続)接続手段により互いに接続されてもよい。回転可能な接続のためには、リストピン軸受が接続手段として使用され得る。このようなリストピン軸受は、ロッド部分と、シリンダの対応する収容部分、特に孔とに接続されたリストピンにより実現され得、またはその逆も然りである。固定的な接続のためには、接続手段は、ピストンからロッド部分内へ延びる孔を有していてもよい。ピストンの内部およびロッド部分の内部に、両方の部品を互いにねじにより固定するためのねじ山が設けられてもよい。択一的に、第2の孔、例えばピストンにおける1つの孔と、ロッド部分における1つの孔とが設けられてもよく、これにより、これらの孔のうちの一方を介してねじを挿入し、かつこれらの孔のうちの他方を介してねじ山付きナットを挿入し、両方の部品を互いに接続する。特に好適には、一方の孔は、半径方向にピストンを貫通して、特に、半径方向においてシリンダに面したピストンの面からロッド部分まで延びていてもよい。ロッド部分における孔は、ピストンにおける孔に対して直交して延びていてもよい。ピストンとロッド部分との上述した好適なワンピース構成のケースでは、上述した孔は、有利には弁、特にリード弁をピストンに接続するために使用され得、これにより、特にクランクケースの内側からピストンを介して空気を吸引することができる。
【0027】
択一的に、この実施形態は、同一平面内に2つ以上の圧縮機シリンダを配置すること、すなわち、2つの圧縮機シリンダが設けられている場合には180°の角度配置で配置することを可能にし、この場合、軸の軸線は、この平面に対して垂直に向けられている。さらに、これらを同一の行程部材に接続することにより、より多くの圧縮機シリンダを同一平面内に配置することさえ可能である。
【0028】
好適には、結合面に沿って特にねじ手段により互いに結合可能な2つの別個の部分を備えた分割式のクランクケースがさらに含まれており、分割式のクランクケースでは、別個の部分を互いに結合する前に、結合面により画定される取付け開口が寸法決めされており、これにより、軸、行程部材、特に前述または後述の行程部材である行程部材、およびピストン、好適にはピストンと少なくとも1つの追加的なピストンのそれぞれを含む、予め組み立てられたクランクドライブを、取付け開口を介して一方の別個の部分内に挿入することができるようになっている。このことは、例えば結合面が軸の軸線の方向、特に軸の軸線の方向に対して平行な方向に延びていることにより実現され得、好適には、シリンダのうちの少なくとも1つが一方の別個の部分に結合される一方で、残りのシリンダは他方の部分に結合されることにより実現され得る。択一的に、このことは、結合面が軸の軸線に対して角度付けられて、特に垂直に延びていることにより実現され得、特に、結合面が各シリンダのクランクケースにおける各シリンダ開口を2つの部分に切り離すことにより実現され得る。
【0029】
上述した分割式のクランクケースに基づき、クランクドライブをクランクケースの外側で予め完全に組み立てることができ、その結果、ピストンは既に軸に連結されている。このことは、クランクドライブの各部品間の適当な嵌合を提供し、これにより、圧縮機は空気圧縮機として、特に、制動システム用、特に車両、特に商用車または鉄道車両の制動システム用の空気圧縮機として、特に適切になる。特に、上述の角度配置と上述の軸線方向の小さなスペースとを組み合わせることにより、熱およびトルク変動に対する耐性が増大した小さな寸法の圧縮機を提供することができる。
【0030】
択一的に、1つの別の圧縮機シリンダの少なくとも1つの、好適にはそれぞれ別のピストンは、軸に配置された1つの別の行程部材、特に各ピストンのための1つの別の行程部材に直接に結合されており、または中間部材を介して接続されており、これにより、少なくとも1つの別のピストンは、軸がその軸線を中心として回転すると、特に全回転を行うと、最大行程位置と最小行程位置との間で運動を行うように構成されている。
【0031】
好適には、行程部材と、別の行程部材とはそれぞれ、別個のピースとして構成されており、この場合、行程部材と軸とは、軸の軸線の方向に作用する結合力により、トルク伝達式に互いに結合されており、この場合、好適には、力は、軸と行程部材とを軸の軸線の方向で互いに対して付勢する付勢手段により供給され、この場合、好適には、付勢手段は、好適には軸に設けられた対応するねじ山と協働するねじ山付きナットを含む。特に好適には、行程部材はそれぞれ、好適にはディスク形であり、軸を収容するための孔を有しており、この場合、好適には、各行程部材の孔は、特に円筒形の軸が孔を通って軸の軸線の方向に挿入され得るように互いに整列させられており、この場合、特に、各行程部材は、既に圧縮機のクランクケース内に予め組み付けられており、これにより、各行程部材は、既にピストンに連結されている。好適には、軸の軸線に対して半径方向に軸から突出する当接面が設けられており、これにより、軸から行程部材に結合力を伝達することができる。
【0032】
行程部材が別個の部材であるという事実に基づき、行程部材を、クランクケースの外側でピストンに個別に予め組み付けることができ、これにより、ピストンと行程部材との間、特に好適には、行程部材を、コネクティングロッドを介してピストンに接続する転がり軸受の間の強力な嵌合、特にプレス嵌めが可能になる。行程部材が別個の部品であることに基づき、行程部材は、ピストンに予め組み付けられた状態でクランクケース内へ、特にクランクケースにおけるピストン開口、特に孔を介して挿入され得る。このことは特に、クランクケースの外側でピストンと行程部材とを予め組み付けることの利点を、ワンピースのクランクケースと組み合わせることを可能にする。
【0033】
軸の方向に作用する結合力による力伝達式の、軸と行程部材との結合に基づき、行程部材は、ワンピースのクランクケース内に予め組み付けられてもよく、これにより、行程部材は、好適には既にシリンダ内に組み付けられたピストンに既に連結されており、この場合、クランク軸は、各行程部材の整列させられた孔を通って軸の軸線の方向に挿入され得る。モータ、特に電動モータから軸へのトルク伝達は、例えばクラッチによる連結により、または圧縮機の軸をモータの軸に直接に取り付けることにより、提供され得る。上述した設計の1つの利点は、軸の軸線に対して周方向における行程部材の向きを自由に選択することができる点にある。
【0034】
好適には、行程部材は、軸の軸線に対して偏心して配置されており、かつ好適には軸に固定されて設けられており、この場合、各行程部材は互いに整列させられており、これにより、各行程部材の間の角度、特に各行程部材の対称軸線の間の角度は180°未満、好適には90°未満、より好適には60°未満、さらにより好適には30°未満、最も好適には10°未満になっており、特に、各行程部材は一列に配置されており、特に、各行程部材は1つの共通の対称軸線を共有している。行程部材がディスク形である好適なケースでは、対称軸線は、特に行程部材の回転対称軸線に関係する。行程部材が軸の軸線に対して偏心して配置されていることは、特に、行程部材の対称軸線が、軸の軸線から、軸の軸線に対して半径方向に離間されていることを意味する。
【0035】
好適には、行程部材と別の行程部材とは、軸の軸方向において互いに当接するように配置されている。有利には、これにより、軸の軸線の方向における圧縮機の延在長さが短縮される。例えば、少なくとも1つの行程部材は、軸に取り付けられるスリーブを有しており、この場合、軸は、別の行程部材に当接している。
【0036】
好適には、行程部材と別の行程部材との間には、特に冷却のためにスペースが設けられている。行程部材は永久潤滑式の軸受を有しているため、冷却は、潤滑剤の過熱を回避し、ひいては潤滑剤が軸受から流出することを回避するために重要である。
【0037】
好適には、行程部材、好適には上述の各行程部材と軸とは、例えば鋳造により、ワンピースとして構成されている。好適には、軸は円筒形状を有している。追加的または択一的に、行程部材、特に各行程部材は、ディスク形状または円筒形状を有している。
【0038】
好適には、ピストン、特に各ピストンは、コネクションロッドを介して、行程部材、特に独自の行程部材または行程部材部分に接続されている。
【0039】
好適には、行程部材、特に各行程部材は、円形のディスクを有しており、ディスクは、軸の軸線に関して偏心して、軸に設けられている。
【0040】
好適には、行程部材、特に各行程部材と、ピストン、特に各ピストンとの間に、特に行程部材と、中間部材、例えばコネクションロッドとの間に、転がり軸受または滑り軸受が設けられている。特に、軸受は、行程部材と、行程部材を取り囲む接続部材とにより形成され得、この場合、両部材の間には、転がり軸受を形成するための球または針等のころ部材を含むスペースが形成されている。滑り軸受を形成するためには、行程部材と接続部材との間のスペースが、両部材が互いに摺動することができるように構成されている。全ての実施形態において、スペースは、潤滑剤、特に永久潤滑剤を含んでいてもよい。
【0041】
好適には、流体は、気体、特に空気、または液体、特に液圧液体である。
【0042】
好適には、圧縮機は、2つ以上の行程部材を含み、この場合、少なくとも1つの行程部材は、上述のように構成されている。
【0043】
行程部材は、軸の軸線に対して偏心して設けられてもよく、この場合、各行程部材の中心は、軸の軸線を中心として所定の角度配置で設けられてもよく、この場合、各中心間の角度は、0°~180°である。1つの好適な実施形態では、偏心的な各行程部材は、同一の角度方向を有している、または互いに結合されて単一の行程部材を形成している。
【0044】
本発明の1つの実施形態では、圧縮機は、マルチタンブルピストン圧縮機として構成されている。低振動要件を満たし、かつ往復運動のような騒音を最小限に抑えるためには、複数の圧縮機シリンダが好適である。したがって、特に圧縮機は、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたはそれ以上の圧縮機シリンダを含んでいてもよく、さらに好適には、ラジアルエンジンのような配置で配置され得る。ただし、2つまたは1つまたは9つ以上の圧縮機シリンダも同様に可能である。
【0045】
本発明の別の態様に基づき、上述のような圧縮機を有する車両が提供される。
【0046】
好適には、圧縮機は、車両のこれらのシステム、すなわち
-燃料電池、
-空圧制動システム、
-エアサスペンション、
-圧縮空気リザーバ
のうちの少なくとも1つに空気を供給するように構成されている。
【0047】
好適には、車両は、商用車、トラック、トレーラ、乗用車、および/または牽引車両とトレーラとが組み合わせられたものとして構成されている。
【0048】
追加的または択一的に、車両は、電気車両、ハイブリッド車両または従来型の車両として構成されている。電気車両またはハイブリッド車両として、車両は、燃料電池に基づくシステムおよび/またはバッテリシステムにより駆動され得る。
【0049】
特に圧縮機は、好適にはもっぱらトレーラ用の空気供給ユニットとして働くことができ、この場合、圧縮機は、トレーラ内または対応する牽引車両内に取り付けられる。
【0050】
以下に、本発明によるいくつかの好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1a】本発明によるピストン圧縮機の概略図であり、ピストンはその最大行程位置にある。
図1b図1aに示した圧縮機を示す図であり、ピストンは、その最小行程位置にある。
図2a】本発明によるピストン圧縮機の軸および1つの行程部材の別の実施形態を示す図である。
図2b】本発明によるピストン圧縮機の軸および1つの行程部材のさらに別の実施形態を示す図である。
図2c】本発明によるピストン圧縮機の軸および2つの行程部材のさらに別の実施形態を示す図である。
図2d】本発明によるピストン圧縮機の軸および2つの行程部材のさらに別の実施形態を示す図である。
図2e】本発明によるピストン圧縮機の軸および2つの行程部材のさらに別の実施形態を示す図である。
図2f】本発明によるピストン圧縮機の軸および2つの行程部材のさらに別の実施形態を示す図である。
図3】本発明による圧縮機の概略側面図である。
図4】本発明による圧縮機の概略正面図である。
図5図3に示した圧縮機をクランクケースおよび空気通路と共に示す概略側面図である。
【0052】
図1aおよび図1bには、本発明によるピストン圧縮機の概略図が示されており、この場合、ピストンはその最大行程位置にある。
【0053】
図示のピストン1は、圧縮機シリンダ2内を案内される。圧縮機シリンダ2は、この図では鉛直方向上向きに延びており、これにより、その軸線10は鉛直方向に向けられている。ピストン1は軸線10に沿って、図1aに示すような最大行程位置から図1bに示すような最小行程位置まで可動に圧縮機シリンダ2内に設けられている。ピストン1と圧縮機シリンダ2とは圧縮機室3を形成しており、この場合、ピストン1の移動により流体が圧縮される。
【0054】
さらに、図示の軸4は、図平面から垂直に延びている。したがって、軸4の軸線5も同様に、図平面から垂直に延びている。軸4は、その軸線5を中心として回転するように構成されている。
【0055】
軸4には、行程部材6が設けられている。行程部材6は、円形または円筒形の部材を含む。円形または円筒形の部材の軸線は、軸4の軸線5に対して平行に向けられているが、この軸線5に対してずらされている。よって、行程部材6は軸4に対して偏心して設けられている。
【0056】
軸4がその軸線5を中心として回転すると、行程部材6も、行程部材6が軸4に固定的に結合されていることに基づき、この軸線を中心として回転する。
【0057】
行程部材6の周りには、接続部材7が設けられている。接続部材7は、行程部材6に対して同軸的に設けられた円形または円筒形の部材を含む。行程部材6と接続部材7とは、両部材6,7の間にスペース8を形成している。
【0058】
スペース8は、軸4がその軸線5を中心として回転する間に、行程部材6が接続部材7の内面において滑動するように構成され得る。よって、行程部材6と接続部材7とスペース8とにより、滑り軸受が形成されている。この実施形態では、行程部材6と接続部材7との間の摩擦を減じるために、スペース8内に潤滑剤を供給することができる。
【0059】
別の実施形態では、球または針等のころ部材がスペース8内に設けられている。よって、行程部材6と接続部材7と、ころ部材を含むスペース8とにより、転がり軸受が形成されている。この実施形態では、行程部材6ところ部材と接続部材7との間の摩擦を減じるために、スペース8内に潤滑剤を供給することができる。
【0060】
行程部材6は、軸線5に対して偏心して配置されているため、行程部材6と接続部材7とは、軸4がその軸線5を中心として回転すると、特に全回転すると、行程運動を行う。
【0061】
接続部材7には、コネクションロッドを含む中間部材9が、コネクションロッドの一方の端部でもって回転可能に取り付けられている。コネクションロッドの他方の端部は、ピストン1に回転可能に取り付けられている。中間部材9は、軸4が軸線5を中心として回転すると、特に全回転を行うと、中間部材9が接続部材7の行程運動をピストン1に伝達するように構成されている。
【0062】
この行程運動は、最大行程位置(図1a)におけるピストン1を示す図1aと、最小行程位置(図1b)におけるピストン1を示す図1bとを比較することにより、看取され得る。
【0063】
圧縮機の別のコンポーネント、特にポートまたは弁は、図面を簡単に保つために図示されていない。
【0064】
図1aおよび図1bに示す実施形態は、本発明による1つの実施形態のみを表す。2つ以上のピストンを設けることにより、別の実施形態が形成され得る。例えば、軸4の軸線5の周りに2つ以上のピストンが配置され得る。好適には、これらのピストンは規則的な間隔で配置されている。例えば3つまたは6つのピストンが、軸4の周りに、特にそれぞれ120°または60°の間隔をあけて配置され得る。
【0065】
以下に、軸および1つまたは複数の行程部材のいくつかの実施形態を示す。
【0066】
図2aには、本発明によるピストン圧縮機の軸および1つの行程部材の1つの実施形態が示されている。
【0067】
図示の軸線5を備えた軸4は、左から右へ延びている。軸4には行程部材6が設けられており、行程部材6は断面図で示されている。軸4と行程部材6とは、2つの別個の部材として設けられている。
【0068】
行程部材6は、軸4の軸線5に対して偏心して設けられており、これにより、軸4がその軸線5を中心として回転すると、特に全回転を行うと、行程部材6は行程運動を行うようになっている。
【0069】
行程部材6の周囲には、上述のようにそれぞれ圧縮機シリンダ内を案内される1つまたは複数のピストンを配置することができる。ピストンは、軸線5が垂直に向けられた平面と同じ平面内に配置され得る。つまり、圧縮機シリンダの各軸線は、この平面内に配置され得る。
【0070】
図2bには、本発明によるピストン圧縮機の軸および1つの行程部材の別の実施形態が示されている。
【0071】
図2aに示した実施形態とは対照的に、行程部材6が軸線5の方向に、より大きな延在長さを有している。このことは、1つの行程部材6により運動させることができるより多くのピストンを軸線5の方向に配置することを可能にする。このことは、複数の圧縮機シリンダを一列に設けることを可能にし、この場合、これらのシリンダのピストンは、同じ行程部材6により制御される。
【0072】
図2cには、本発明によるピストン圧縮機の軸および2つの行程部材のさらに別の実施形態が示されている。
【0073】
基本的に、この実施形態は、図2aに示した実施形態に相応し、この場合、別の行程部材13が軸4に設けられている。両行程部材6,13の間には、軸線5の方向にスペース11が形成されている。行程部材6,13は、それぞれ転がり軸受または滑り軸受の一部を形成する、図1aおよび図1bに示した接続部材7に接続されているため、スペース11は、行程部材6,13を冷却するために使用される。特に、永久潤滑剤の冷却が保証され得ると共に、潤滑剤が過度に流動性であることによる、軸受からの潤滑剤の流出が回避される。
【0074】
図2dには、本発明によるピストン圧縮機の軸および2つの行程部材のさらに別の実施形態が示されている。
【0075】
この実施形態は、図2cに示した実施形態に相応し、この場合、別の行程部材13がスリーブ12を含み、スリーブ13を貫通して、軸4が延びている。スリーブ12は、行程部材6に当接している。別の行程部材13の一部は、スリーブ12を含む部分よりも細いため、行程部材6,13の間にはスペース11が形成されている。このスペース11は、図2cに関して上述したのと同様に、冷却のために使用される。
【0076】
図2eには、本発明によるピストン圧縮機の軸および2つの行程部材のさらに別の実施形態が示されている。
【0077】
この実施形態は、図2dに示した実施形態に相応し、この場合、スリーブ12は別個の部材として構成されている。したがって、行程部材6,13およびスリーブ12の製造が、より簡単になる。なぜならば、各部材6,12,13の幾何学形状が単純化されているからである。
【0078】
図2fには、本発明によるピストン圧縮機の軸および2つの行程部材のさらに別の実施形態が示されている。
【0079】
この実施形態は実質的に、図2cに示した実施形態に相応する。対照的に、行程部材6,13と軸4とはワンピースとして構成されている。有利には、行程部材6,13を、別個の組立てステップにおいて軸4に取り付ける必要がない。
【0080】
図1a、図1bおよび図2a~図2fに示した実施形態は、本発明の主題を限定するものではない。その代わりに、これらの図面の意図は、本発明のいくつかの態様をより詳細に示すことにある。さらに、図示の実施形態の一部または全部を組み合わせることにより、より多くの実施形態を形成することができる。
【0081】
以下に、図3図5を詳細に説明するが、同じ部品に対して異なる名称を使用する場合がある。例えば、接続部材7の部品は部分的に、接続部材7であり、エキセロッド(ecce rod)と呼ばれ、コンロッドと呼ばれる。
【0082】
図5には、本発明による圧縮機14、特に空気圧縮機14の断面が概略的に示されている。圧縮機14は、複数の転がり軸受15により回転軸線17を中心として回転可能に取り付けられた軸4を含む。図示の圧縮機14は、3つの圧縮機ユニット19を含み、圧縮機ユニット19はそれぞれ、シリンダ23とピストン21とを含む。図4に示す正面図により看取され得るように、圧縮機ユニット19、特に圧縮機ユニット19のピストン21およびシリンダ23は、周方向において互いに120°間隔をあけられている。図面を単純化するために、図5には1つの圧縮機ユニット19のみが示されている。
【0083】
圧縮機14はさらに、軸4の回転運動27をピストン21の往復運動29に変換するための3つのクランク機構25を含む。クランク機構25はそれぞれ、偏心体31、特にディスク形の偏心体31の形態の行程部材31を含む。さらに、各クランク機構は、転がり軸受36により軸4に結合されたコンロッド33を含む。転がり軸受36は、軸4(クランク軸4)を包囲している。特に、転がり軸受36は、ディスク形の偏心体31に取り付けられ、これを包囲している。軸4と偏心体31とは、周方向Uにおいて転がり軸受36により包囲されている。軸線方向Aは、Aで示されている。半径方向は、Rで示されている。
【0084】
図3および図5において最も良好に看取され得るように、軸4には、カウンタウェイトが設けられておらず、複数のフライホイール35が、軸線方向Aにおいてクランク機構25の間に、特にディスク形の行程部材31と、転がり軸受36により行程部材31に取り付けられたコンロッド33との間に取り付けられている。特に、クランク機構25、特に行程部材31は、軸方向Aにおいて互いに直接に隣接して配置されている。行程部材31は、偏心体31として、特にディスク形の偏心体31として実現されている。図示のケースでは、ディスク形の偏心体31は、互いにかつ軸に関して個別の部品として製造されている。ただし行程部材31は、軸4に固定的に結合されており、これにより、行程部材31は軸と同じ回転速度で回転するようになっている。図示のケースでは、このことは、ねじ山付きナット90により実現されており、ねじ山付きナット90は、軸4のねじ山92に係合して行程部材を力嵌合式に、つまり軸線方向Aに作用する圧縮力94により結合する。このケースでは、圧縮力94が行程部材31と、フライホイール35と、環状のショルダ96とを互いに対して圧縮する。環状のショルダ96は、軸から半径方向に突出した当接面を提供して、結合力を軸4から行程部材31へ、特にねじ山付きナット90から環状のショルダ96を介してフライホイール35を通じ行程部材31へ伝達することを可能にする。環状のショルダ96は、任意の取付け方法により、特にプレス嵌めにより、軸に結合され得る。択一的に、行程部材31と軸とは、例えば鋳造により、ワンピースから製造されてもよい。択一的に、3つの行程部材31だけが、1つのシングルピースとして、特に有孔シリンダの形態で製造されてもよく、この有孔シリンダは、シリンダの対称軸線からずらされた円筒孔を有しているため、偏心体として作用することができる。このように穿孔された円筒状の偏心体31は、例えばプレス嵌めにより軸4に固定され得る。
【0085】
図3および図5において最も良好に看取され得るように、圧縮機ユニット19、特にそれらのピストン21の中心軸線、および/またはクランク機構25、特に行程部材31およびコンロッド33は、軸線方向Aにおいて転がり軸受15の間に配置されている。特に転がり軸受15は、軸線方向Aにおいて互いに間隔をあけられており、これにより、圧縮機ユニット19用のスペースを、特にピストン21の中心軸線とクランク機構25、特に行程部材31との間に提供する。さらに図5において看取され得るように、軸4を回転可能に取り付ける転がり軸受15は、好適には軸線方向Aにおいて互いに間隔をあけられており、これにより、転がり軸受15の間に、クランク機構25、圧縮機ユニット19およびフライホイール35用のスペースを提供している。特に、フライホイール35とクランク機構25と圧縮機ユニット19とは、軸線方向において軸4の転がり軸受15の間に配置されている。
【0086】
圧縮機14はさらに、軸4に作用する質量力37,39,41、特に回転質量力37および交番質量力39,41を打ち消すように構成された2つのフライホイール35を含む。このことは特に、フライホイールを、そのフライホイール機能(圧縮機のトルク曲線の平坦化)に加え、カウンタウェイト機能を提供するように構成することにより、実現される。このことは特に、フライホイール35を、フライホイール35の重心43が半径方向Rにおいて回転軸線17から離間させられており、かつ行程部材31、コンロッド33およびピストン21に対して周方向に配置されており、これにより、結果的に生じるフライホイール35の回転質量力45が、行程部材31、コンロッド33および/またはピストン21の質量力37,39および41を打ち消すように構成することにより、実現される。図3において看取され得るように、各フライホイール35の重心43は、周方向Uにおいて互いに整列させられている。換言すると、周方向Uにおける各フライホイール35の重心43の間隔はゼロである。追加的に、各フライホイール35の重心43は、軸4の回転軸線7から等距離離間されている。
【0087】
図3図4および図5に示すフライホイール35は、偏心体31の回転質量力37を打ち消すように構成されている。このことは特に、フライホイール35を、フライホイール35の重心43が半径方向Rにおいて軸4およびフライホイール35の回転軸線17,55から離間させられており、この場合、偏心体31の重心77がフライホイール35の重心43から周方向Uに180°離間させられているように構成することにより、実現される。換言すると、偏心体31の重心77は、周方向において軸4およびフライホイール35の回転軸線17,55の反対側に配置されている。フライホイール35と偏心体とは、軸と同一回転速度で回転するように軸4に結合されているため、軸4の回転時の周方向Uにおける互いの相対位置は一定に保たれる。したがって、偏心体31の回転質量力37は、フライホイール35の回転質量力45とは反対の径方向Rに作用し、これにより、互いに打ち消し合う。
【0088】
フライホイール35はさらに、ピストン21の交番質量力39,41を打ち消すように構成されている。図4において看取され得るように、各ピストン21は、ピストン21の運動29に対して平行な方向に作用する交番質量力39を生ぜしめる。交番質量力39は、行程部材31の回転質量力37に対して平行に作用する平行力成分41と、行程部材31の回転質量力37に対して直交して作用する直交力成分40とを含む。ピストン21および行程部材31の周方向位置は、各ピストン21の交番質量力39,40,41が少なくとも部分的に互いに相殺し合うように、特に各直交成分40が少なくとも部分的に互いに相殺し合うように、互いに関して選択される。特に、それらの周方向位置は、交番質量力39,40,41が互いに重畳し合い、行程部材31の回転質量力37に対して平行に作用する、可変の振幅を有する重畳力79を形成するように、互いに選択される。このことは特に、図4に示したように、各ピストン21を互いから120°だけ周方向にずらして放射状に配置することと、図4に示したように、各偏心体31の重心77および/または対称軸線を互いに整列させることとを組み合わせることにより、実現される。このような重畳された交番質量力79に基づき、フライホイール35の重心43を、軸13の回転軸線7から重畳力79の反対方向に離間させることができる。これにより、フライホイール35は、行程部材31の回転質量力37と、ピストン21の交番質量力39の平行力成分41の少なくとも一部の両方を相殺するために使用され得る。
【0089】
図5には、クランクケース81の内側から空気を吸引する圧縮機14の1つの好適な実施形態が示されている。クランクケース81はハウジング83を含み、ハウジング83内には、軸4と、行程部材31と、コンロッド33の少なくとも一部とが配置されている。軸4は、転がり軸受15を介してハウジング83およびクランクケース81のカバー91に対して回転可能に取り付けられている。ハウジング83は、各ピストン21につき1つの孔85を有しており、孔85を介して、コンロッド33およびピストン21がハウジング83から突出することができる。クランクケース81はさらに、各ピストン21用のシリンダ23を含む。シリンダ23は、半径方向Rにおいて孔85の上側に配置され得る。
【0090】
クランクケースハウジング83はさらに、軸4を、特に偏心体31が予め取り付けられた状態で軸線方向Aにおいてハウジング83内に挿入するための取付け開口89を含んでいてもよい。クランクケース81はさらに、軸4と、特にクランク機構と圧縮機ユニットとが取り付けられた後に取付け開口89を閉鎖するためのカバー91を含む。軸4は、カバー91に対して半径方向Rにおいて転がり軸受15により支持され得る。カバー91およびハウジング83は両方とも、同一直径および同一回転軸線、特に軸の回転軸線17を有する孔を有しており、この孔を介して、転がり軸受15がハウジング83およびカバー91に回転可能に取り付けられている。
【0091】
圧縮機14はさらに、クランクケース81への流入前に空気を濾過するためのエアフィルタ95を含む。エアフィルタ95は、軸線方向Aにおいてカバー91とフィルタカバー99との間に取り付けられている。エアフィルタ95は、中空円筒状に形成され得る。圧縮機14を通る空気流97は、参照符号97により概略的に示されている。左から右へ、空気は、エアフィルタカバー99の開口(図示せず)を通過して、中空円筒状に形成されたエアフィルタ95の内側へ流入し、空気97はエアフィルタ95を半径方向Rに通過する。エアフィルタ95から流出した後、濾過された空気97は、カバー91の開口(図示せず)を介してクランクケースハウジング83内に流入する。次いで、空気はピストン21の複数の開口(孔)101を通り、ピストン21とシリンダ23とにより画定された空気圧縮室内に流入する。シリンダ23は、排出通路系105に通じる複数の開口(孔)103を有している。排出通路系105は、環状の空気収集通路107を含み、空気収集通路107内には3つの圧縮機ユニット19から圧縮空気が集められ、その後、空圧制動システム等の圧縮空気の消費体に案内される。収集通路107は、冷却フィン108を有している。収集通路107は、個々の排出通路(管路)109により、各圧縮機ユニット19に流体接続されている。個々の排出通路109は、半径方向内側ではシリンダ23により画定され得、かつ半径方向外側ではシリンダカバー111により画定され得る。さらに、個々の排出通路109の特に半径方向Rの経路において、排出通路109は、圧縮室の外側の軸の軸線方向に延在するシリンダ23を貫通する孔により実現され得る。さらに、個々の排出通路109および/または収集通路107は、クランクケースハウジング83に一体化され得る。
【0092】
図5に示す圧縮機14の1つの実施形態では、行程部材31と別の行程部材31とが別個のピースとして構成されており、この場合、行程部材31と軸4とは、軸4の軸線17の方向Aに作用する結合力94により、トルク伝達式に互いに結合されている。力94は、軸4と行程部材31とを軸4の軸線17の方向Aで互いに対して付勢する付勢手段90,92により供給される。付勢手段は、ねじ山付きナット90と、協働する、軸4に設けられた対応するねじ山92とを含む。行程部材31は、それぞれディスク形であり、軸4を収容するための孔114を有している。行程部材31の孔114は、孔114を通じて軸4の軸線の方向に軸4を挿入することができるように、互いに整列させられている。これにより、各行程部材31を、これらが既にピストン21に結合された状態で、圧縮機14のクランクケース81内に予め組み付けることができる。圧縮機はさらに、軸の軸線に対して半径方向に軸から突出した当接面116を提供する環状のショルダ96を含み、これにより、結合力94を軸4から行程部材31に伝達することを可能にする。
【0093】
各行程部材31は別個の部材であるという事実に基づき、行程部材31を、クランクケース81の外側でピストン21に個別に予め取り付けることができ、このことは、特に行程部材31を、コネクティングロッド33を介してピストンに接続する転がり軸受36を介した、コネクティングロッド33と行程部材31との間の強力な嵌合、特にプレス嵌めを可能にする。さらに、行程部材が別個の部品であることに基づき、行程部材は、クランクケース81のピストン開口、特に孔85を介してクランクケース内に挿入され得る。このことは特に、クランクケース81の外側でピストン21と行程部材31とを予め組み付けることの利点を、ワンピースのクランクケース81と組み合わせることを可能にする。モータ、特に電動モータから軸4へのトルク伝達は、例えばクラッチ118による連結により提供され得る。
【0094】
1つの択一的な実施形態では、クランクケースは、図5に切断線120および122により示された、分割式のクランクケースであってもよい。分割線120は、分割線が軸線方向Aに延びる1つの実施形態を示している。分割線122は、分割線が半径方向Rに延びる1つの択一的な実施形態を示している。分割線120,122に沿って、クランクケースの別個の部分が互いに結合され得る。例えば分割線120および122により示すような分割線を選択することにより、予め組み付けられた軸4、行程部材31、コネクティングロッド33およびピストン21を含むクランクドライブを、取付け開口を介してクランクケースの別個の部分のうちの1つに挿入することができる。このことは、クランクケース81の外側での、クランクドライブ全体と複数のピストン21との事前組付けおよび/または複数の行程部材31のワンピース構成を可能にする一方で、依然として、圧縮機14の簡単な組立てを可能にしている。
【0095】
上述の説明、図面および特許請求の範囲に開示された特徴は、本発明の異なる実施形態を個別に、また任意の組み合わせで実現するために重要であり得る。
【符号の説明】
【0096】
1 ピストン
2 圧縮機シリンダ
3 圧縮機室
4 軸
5 軸線
6 行程部材
7 接続部材
8 スペース
9 中間部材
10 圧縮機シリンダの軸線
11 スペース
12 スリーブ
13 行程部材
14 圧縮機
15 転がり軸受
17,55 回転軸線
19 圧縮機ユニット
21 ピストン
23 シリンダ
25 クランク機構
27 回転運動
29 往復運動
31 偏心体
33 コンロッド
35 フライホイール
36 転がり軸受
37 回転質量力
39 ピストンの交番質量力
40 直交力成分
41 平行力成分
43 フライホイールの重心
45 回転質量力
77 偏心体の重心
79 重畳力
81 クランクケース
83 ハウジング
85 孔
89 取付け開口
90 ねじ山付きナット
91 カバー
92 ねじ山
94 圧縮力
95 エアフィルタ
96 環状のショルダ
97 空気流
99 フィルタカバー
101,103 開口(孔)
105 排出通路系
107 収集通路
108 冷却フィン
109 個々の排出通路
111 シリンダヘッド(カバー)
114 孔
116 当接面
118 クラッチ
120,122 切断線
R 半径方向
A 軸線方向
U 周方向
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン圧縮機であって、
圧縮機シリンダ(2)内で案内されるピストン(1)であって、該ピストン(1)と前記圧縮機シリンダ(2)とが、流体を圧縮するための圧縮機室(3)を形成している、ピストン(1)と、
軸線(5)を中心として回転可能に設けられた軸(4)と、
前記軸(4)の前記軸線(5)に対して偏心して配置されかつ前記軸(4)に固定されて設けられた行程部材(6,13)と
を含み、
前記行程部材(6,13)および前記ピストン(1)は、前記軸(4)がその前記軸線(5)を中心として回転すると、前記ピストン(1)が最大行程位置と最小行程位置との間で運動を行うように構成されている、
ピストン圧縮機。
【請求項2】
前記行程部材(6,13)と前記ピストン(1)とは、互いに直接に結合されている、または中間部材(9)を介して接続されている、請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
1つの別の圧縮機シリンダ内を案内される少なくとも1つの別のピストンを含む、請求項1または2記載の圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮機は、少なくとも2つの別のピストン、好適には2つ~8つ、より好適には2つ~5つ、さらにより好適にはちょうど2つまたは5つ、最も好適にはちょうど2つの別のピストンを含み、該別のピストンはそれぞれ、1つの別の圧縮機シリンダ内を案内される、請求項1または2記載の圧縮機。
【請求項5】
前記圧縮機シリンダ(2)および前記別の圧縮機シリンダは、前記軸(4)の前記軸線(5)の方向における、前記圧縮機シリンダ(2)の軸線(10)と前記別の圧縮機シリンダの軸線(10)との間の距離が、
圧縮機シリンダ(2)の外側半径と前記別の圧縮機シリンダの外側半径との和よりも小さくなるように、かつ/または
前記ピストンを前記軸に連結している1つの、特にそれぞれの中間部材(9)、特にコネクションロッドの延在長さよりも大きくなるように
配置されている、請求項記載の圧縮機。
【請求項6】
前記圧縮機シリンダ(2)と前記別の圧縮機シリンダとは角度配置で配置されており、各前記圧縮機シリンダの軸線の間の角度は0°超~180°、好適には10°~160°、より好適には30°~140°、さらにより好適には40°~130°、最も好適には60°~120°である、請求項記載の圧縮機。
【請求項7】
前記圧縮機シリンダ(2)と、前記別の圧縮機シリンダとは、列に配置されている、請求項記載の圧縮機。
【請求項8】
前記少なくとも1つの別のピストンは、前記軸(4)がその前記軸線(5)を中心として回転すると、特に全回転を行うと、前記最大行程位置と前記最小行程位置との間で運動を行うように構成されている態様で、前記少なくとも1つの別のピストンは、前記行程部材(6,13)に直接に結合されており、または前記中間部材を介して接続されており、好適には、前記軸の前記軸線の方向における前記行程部材の延在長さは、前記ピストンが前記行程部材に接続され得るように選択されており、前記ピストンの軸線の位置は、前記軸(4)の前記軸線(5)の方向において互いに離間されている、請求項記載の圧縮機。
【請求項9】
前記軸は、円筒形状を有しており、前記行程部材は、中空の円筒形状を有しており、好適には、前記中空の円筒の内径は、前記軸の外径に相当し、前記中空の円筒の外径は、好適には、前記行程部材を前記中間部材、特にコネクティングロッドに連結するための軸受手段、特に転がり軸受の内径に相当する、請求項8記載の圧縮機。
【請求項10】
結合面に沿って互いに結合可能な2つの別個の部分を備えた分割式のクランクケースがさらに含まれており、該分割式のクランクケースでは、前記別個の部分を互いに結合する前に、前記結合面により画定される取付け開口が寸法決めされており、これにより、前記軸、前記行程部材、および前記ピストンのそれぞれを含む、予め組み立てられたクランクドライブを、前記取付け開口を介して一方の前記別個の部分内に挿入することができるようになっている、請求項1または2記載の圧縮機。
【請求項11】
前記結合面は、前記軸の前記軸線の方向、特に前記軸の前記軸線の方向に対して平行な方向に延びており、または
前記結合面は、前記軸の前記軸線に対して角度付けられて、特に垂直に延びている、請求項10記載の圧縮機。
【請求項12】
前記少なくとも1つの別のピストンは、前記軸(4)がその前記軸線を中心として回転すると、前記最大行程位置と前記最小行程位置との間で運動を行うように構成されている態様で、前記少なくとも1つの、好適にはそれぞれ別のピストンは、前記軸(4)に配置された1つの別の行程部材(6,13)、特に各前記ピストンのための1つの別の行程部材(6,13)に直接に結合されており、または前記中間部材を介して接続されている、請求項記載の圧縮機。
【請求項13】
前記行程部材と、前記別の行程部材とはそれぞれ、別個のピースとして構成されており、好適には、前記行程部材と前記軸とは、前記軸の前記軸線の方向に作用する結合力により、トルク伝達式に互いに結合されており、好適には、前記力は、前記軸と前記行程部材とを前記軸の前記軸線の方向で互いに対して付勢する付勢手段により供給され、好適には、前記付勢手段は、好適には前記軸に設けられた対応するねじ山と協働するねじ山付きナットを含む、請求項12記載の圧縮機。
【請求項14】
前記行程部材はそれぞれ、前記軸を収容するための孔を有しており、特に、各前記行程部材が既に前記圧縮機のクランクケース内に予め組み付けられる場合には、好適には、各前記行程部材の前記孔は、特に円筒形の前記軸が前記孔を通って前記軸の前記軸線の方向に挿入され得るように互いに整列させられており、これにより、各前記行程部材は、既に前記ピストンに連結されており、好適にはさらに、前記軸の前記軸線に対して半径方向に前記軸から突出する当接面が含まれており、これにより、前記軸から前記行程部材に前記結合力を伝達することができる、請求項13記載の圧縮機。
【請求項15】
前記行程部材は、前記軸(4)の前記軸線(5)に対して偏心して配置されており、かつ好適には前記軸に固定されて設けられており、各前記行程部材は互いに整列させられており、これにより、各前記行程部材の間の角度、特に各前記行程部材の対称軸線の間の角度は180°未満、好適には90°未満、より好適には60°未満、さらにより好適には30°未満、最も好適には10°未満になっており、特に、各前記行程部材は一列に配置されている、請求項12記載の圧縮機。
【請求項16】
前記行程部材(6,13)と前記別の行程部材(6,13)とは、前記軸(4)の前記軸線の方向において互いに当接するように配置されており、かつ/または前記行程部材(6,13)と前記別の行程部材(6,13)との間には、特に冷却のためにスペース(11)が設けられている、請求項12記載の圧縮機。
【請求項17】
前記行程部材(6,13)と前記軸(4)とは、ワンピースとして構成されており、好適には、
前記軸は円筒形状を有しており、かつ/または
前記行程部材はディスク形状または円筒形状を有している、
請求項1または2記載の圧縮機。
【請求項18】
前記ピストン(1)は、コネクションロッドを介して、前記行程部材(6,13)、特に各前記行程部材に接続されており、かつ/または
前記行程部材(6,13)、特に各前記行程部材は、円形のディスクを有しており、該ディスクは、前記軸(4)の前記軸線(5)に関して偏心して、前記軸(4)に設けられており、かつ/または
前記行程部材(6,13)、特に各前記行程部材と、前記ピストン(1)、特に各前記ピストンとの間に、転がり軸受または滑り軸受が設けられており、かつ/または
前記流体は、気体、特に空気、または液体、特に液圧液体である、
請求項1または2記載の圧縮機。
【請求項19】
請求項1または2記載の圧縮機を有する車両であって、好適には、
前記圧縮機は、前記車両のこれらのシステム、すなわち
燃料電池、
空圧制動システム、
エアサスペンション、
圧縮空気リザーバ
のうちの少なくとも1つに空気を供給するように構成されており、かつ/または
前記車両は、好適には、商用車、トラック、トレーラ、乗用車、および/または牽引車両とトレーラとが組み合わせられたものとして構成されており、かつ/または前記車両は、好適には、電気車両、ハイブリッド車両または従来型の車両として構成されている、車両。
【国際調査報告】