(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】細長い貯蔵タンクから加熱された重油を取り出すためのシステム
(51)【国際特許分類】
F23K 5/14 20060101AFI20240423BHJP
F02M 31/125 20060101ALI20240423BHJP
F23K 5/20 20060101ALI20240423BHJP
B65D 90/00 20060101ALI20240423BHJP
B67D 9/00 20100101ALN20240423BHJP
【FI】
F23K5/14 501
F02M31/125 B
F23K5/20
B65D90/00 H
B67D9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507060
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022059503
(87)【国際公開番号】W WO2022223329
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523394653
【氏名又は名称】エングラン アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソールゴー、カール ヴィゴ
【テーマコード(参考)】
3E083
3E170
3K068
【Fターム(参考)】
3E083BB20
3E170AA09
3E170AB03
3E170EA07
3E170EB02
3E170GB20
3E170RA01
3E170VA20
3K068AA13
3K068AB19
3K068CB01
3K068CB11
3K068EA01
(57)【要約】
本発明は、細長い重油貯蔵タンク(1)から加熱された重油を取り出すためのシステムについて説明する。システムは、閉じた頂部(8)および側面(9)ならびに実質的に開いた底部を有する対流シールド(2)を備え、対流シールド(2)は、貯蔵タンク(1)の底部と対流シールドの下縁部との間に隙間を設けて取り付けられ、加熱要素(4)および燃料吸入ライン(3)が内部に配置された状態で、重油は開いた底部を通って対流シールドに流入することができる。システムは、対流シールド(2)の下縁部に接続され、かつ内部に流入加熱要素(15)を有する細長い流入対流シールド(10)によって特徴付けられ、加熱された重油は流入対流シールドから対流シールドまで妨げられることなく流れることができる共通の内部を共有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い重油貯蔵タンク(1)から加熱された重油を取り出すためのシステムであって、
閉じた頂部(8)および側面(9)ならびに実質的に開いた底部を有する対流シールド(2)であって、前記対流シールド(2)は、前記貯蔵タンク(1)の底部と前記対流シールドの下縁部との間に隙間を設けて取り付けられ、重油は前記開いた底部を通って前記対流シールドへ流入できる、対流シールド(2)と、
前記対流シールド内の前記重油を加熱するために前記対流シールド(2)内に配置される加熱要素(3)と、
加熱された重油を前記重油貯蔵タンクから取り出すために前記対流シールド内に配置される燃料吸入ライン(4)と
を備え、
細長い流入対流シールド(10)であって、
頂部(12)および側面(13)を備える閉じた上側部分(11)と、
貫流のための開口部(17)が前記対流シールド(2)の前記下縁部と同じ高さまたはそれより低い位置に配置され、重油が下側部分(16)を通って前記流入対流シールドに流入することを可能にする下側部分(16)と
を備え、
前記流入対流シールド(10)は、前記対流シールド(2)の前記下縁部に接続され、加熱された重油が前記流入対流シールドから前記対流シールドへ流れることができる共通の内部を共有し、
前記流入対流シールド内の前記重油を加熱するために、流入加熱要素(15)は前記流入対流シールド(10)の長さに沿って、かつその内部に配置され、
前記流入対流シールドは前記貯蔵タンクの前記底部に沿ってその長手方向に延びる
細長い流入対流シールド(10)によって特徴付けられる、システム。
【請求項2】
前記流入加熱要素(15)が、前記対流シールド(2)から出て前記流入対流シールド(10)の長さに沿ってループ状に前記流入対流シールド(10)内を延び、再び戻る加熱パイプである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記流入対流シールド(10)が、頂部(12)と、2つの側面(13)と、前記流入対流シールド(10)の外端部にあるエンドピース(14)と、複数の開口部(17)を有する底部とを有する細長い直方体の形状を有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記流入対流シールド(10)が、前記貯蔵タンクの長さまたは幅の10%超、好ましくは前記貯蔵タンクの長さの30%超に沿って延びる、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記対流シールドが、前記対流シールド(2)の頂部に取り付けられたバルク加熱バルブを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記燃料吸入ライン(4)が、前記頂部付近の前記対流シールド内に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムが、前記対流シールド(2)の下流に、
閉じた頂部および側面ならびに主に閉じた底部とを有する第二段対流シールド(19)と、
前記第二段対流シールド内に配置された第二段加熱要素(20)と、
部分的に加熱された重油を前記対流シールドの頂部から前記第二段ヒータ(21)の底部に導く第二段チャネル(22)と、
前記第二段対流シールド(19)内に配置された第二段燃料吸入ライン(23)と
を含む第二段ヒータ(21)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
燃料吸入ライン(23)が前記頂部付近で前記第二段対流シールド(19)内に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第二段対流シールド(19)が前記第二段対流シールド(19)の頂部に取り付けられたバルク加熱バルブ(5)を有する、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第二段対流シールド(19)の前記底部(24)が排水孔を有する、請求項7~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のシステムを備える外航船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油を燃料とする大型船舶の燃料システムに関する。本発明は、より具体的には、高さの低い細長い貯蔵タンクから加熱された重油を取り出すシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型船のほとんどは、重油を燃料としている。これは容易に入手できる燃料であるが、粘度が高く、貯蔵タンクから消費者用タンクへ重油を流すためには加熱する必要がある。従来技術では、重油の貯蔵タンク全体を加熱するのが通例であったため、エネルギーを浪費していた。
【0003】
欧州特許第2630402号明細書には、重油またはその他の高粘性流体用の貯蔵タンクが説明されており、このタンクは、特許によれば、タンク全体を加熱する必要なしにタンクからの圧送を可能にする加熱要素を内部に有する対流シールドを備えている。
【0004】
しかしながら、多くの貯蔵タンクは、船の底部近くに配置され、高さの低い細長い直方体として形成されることが多い。燃料の加熱エネルギーを節約するために、欧州特許第2630402号明細書によるシステムをこのような貯蔵タンクに設置した場合、2つの問題が生じる。1つは、バルク加熱バルブが開いているときにタンク全体が加熱されないことで、これは、低温状態の間では粘度が高いため、対流パターンが対流シールドから遠い端部に到達しないためである。第2の問題は、低温状態の間、特に燃料の液面が低いときに、欧州特許第2630402号明細書による対流シールドへの流入が不十分になることである。このような状態の間に発生する問題は、十分な燃料が対流シールドに入ることができず、その結果、燃料吸入ラインが適切に機能しなくなることである。
【0005】
本発明の目的は、上述の問題を解決し、低温状態の間でも燃料の流れを確実に作り出すことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本発明は、独立請求項に記載され、特徴付けられ、従属請求項には本発明の他の特徴が記載されている。
【0008】
一態様では、本発明は、細長い重油貯蔵タンクから加熱された重油を取り出すためのシステムを説明する。本システムは、閉じた頂部および側面ならびに実質的に開いた底部を有する対流シールドを備え、対流シールドは、貯蔵タンク底部と対流シールド下縁部との間に隙間を設けて取り付けられ、重油は開いた底部を通って対流シールドへ流入することができる。
【0009】
本システムは、対流シールド内で重油を加熱するために対流シールド内に配置されている加熱要素と、加熱された重油を重油貯蔵タンクから取り出すために対流シールド内に配置された燃料吸入ラインとを更に備える。本システムは、細長い流入対流シールドを更に備え、細長い流入対流シールドは、頂部と側面を含む閉じられた上側部分と、対流シールドの下縁部と同じ高さ、またはそれより低い位置に配置された下側部分とを備え、この下側部分には貫通流用の開口部があり、重油が下側部分を通って流入対流シールドに流入することができる。流入対流シールドは、対流シールドの下縁部に接続され、共通の内部を共有しているため、加熱された重油が流入対流シールドから対流シールドへ妨げられずに流れることができる。流入対流シールド内の重油を加熱するための流入加熱要素は、流入対流シールドの長さに沿って、かつ流入対流シールド内に配置され、流入対流シールドは、貯蔵タンクの底部に沿ってその長手方向に延びる。
【0010】
一実施形態では、流入加熱要素が、流入対流シールド内を対流シールド(2)からエンドピースまでループ状に延び、再び戻る加熱パイプである。
【0011】
別の実施形態では、流入対流シールドが、頂部と2つの側面と、流入対流シールドの外側端部にあるエンドピースと、複数の開口部を有する底部とを備えた細長い直方体の形状を有する。
【0012】
更に別の実施形態では、流入対流シールドが、貯蔵タンクの長さまたは幅の10%超、好ましくは貯蔵タンクの長さの30%超に沿って延びる。
【0013】
更に別の実施形態では、対流シールドが、対流シールドの頂部に取り付けられたバルク加熱バルブを有する。
【0014】
更に別の実施形態では、燃料吸入ラインが、頂部付近の対流シールド内に配置される。
【0015】
更に別の実施形態では、システムが、対流シールドの下流に第二段ヒータを備え、第二段ヒータが、閉じた頂部および側面ならびに主に閉じた底部を有する第二段対流シールドと、第二段対流シールド内に配置された第二段加熱要素と、部分的に加熱された重油を第二段対流シールドの頂部から第二段ヒータの底部に導く第二段チャネルと、流入対流シールド内に配置された燃料吸入ラインとを備える。
【0016】
更に別の実施形態では、燃料吸入ラインが、頂部付近の第二段対流シールド内に配置される。
【0017】
更に別の実施形態では、第二段対流シールドが、対流シールドの頂部に取り付けられたバルク加熱バルブを有する。
【0018】
更に別の実施形態では、第二段対流シールドが、第二段対流シールドの底部に排水孔を有する。
【0019】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様によるシステムを備える外航船が説明される。
【0020】
本発明の理解を容易にするために以下の図面を添付する。図面は本発明の実施形態を示しており、ここでは例示としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】流入対流シールドが取り付けられた対流シールドを示す。
【
図2】流入対流シールドを取り付けた対流シールド付き重油燃料タンクを示す。
【
図3】流入対流シールドを取り付けた一実施形態の断面図である。
【
図4】
図2の実施形態に第二段ヒータを取り付けたもので、アクティブシステムを通る重油の典型的なフローパターンを示す。
【
図5】バルクヒータ弁が開放されている本発明の実施形態を使用した貯蔵タンク内のフローパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、一般に燃料用に使用される細長い重油貯蔵タンク1から、加熱された重油を取り出すためのシステムについて説明する。これは、高さの低い重油タンクにおいて特に有効である。主に、重油の取出しは、例えばエンジンや消費者タンクに燃料を供給するなどのゆっくりしたプロセスであるが、場合によっては、貯蔵タンクを直ちに空にする必要が生じることもある。
【0023】
図1および
図2に見られるように、このシステムは、閉じた頂部8および閉じた側面9ならびに主に開いた底部側を有する対流シールド2を備える。一般に、対流シールド2は箱形、代替的に頂部が円形の逆さバケツ形や中空円筒形を有する。加熱要素3が対流シールド2内に配置され、加熱要素が重油を加熱しているときに対流6が発生する。
図2に例示的なフローパターンを示す。加熱された重油は、燃料吸入ライン4によって対流シールド2の内部から取り出される。燃料吸入ライン4の吸入口は、重油の温度が高い頂部付近の対流シールドの上端付近に配置される。対流シールド2は、貯蔵タンク1の底部の近くに取り付けられているが、貯蔵タンク1の底部と対流シールドの下縁部との間には隙間が設けられており、重油は開いた底部を通って対流シールド2へ流入することができる。対流シールドの下縁部と貯蔵タンクの底部との間の隙間は、5~70cm、より好ましくは10~15cmである。
【0024】
高さの低い貯蔵タンクに関連する前述の問題を軽減するために、本発明は、頂部12および側面13と、流入対流シールド10の外側端部にあるエンドピース14とを備える閉じた上側部分11を有する細長い流入対流シールド10について説明する。流入対流シールドは、開口部17を有する下側部分16を更に備え、対流シールドの下縁部と同じ高さ、またはそれよりも低い位置に取り付けられ、重油は下側部分底部の開口部を通って対流シールドに流入することができる。一実施形態では、流入対流シールド10は、底部が開いた細長い直方体の形状を有する。流入対流シールドは、対流シールドの下縁部に接続されている。好ましくは、更に加熱するために、流入対流シールドが固定される対流シールドの下側に、流入対流シールドの断面に一致する開口部を切り込み、部分的に加熱された重油が流入対流シールド10から対流シールド2へ妨げられずに流れるようにする。対流シールドと流入対流シールドは、共通の内部を共有しており、加熱された重油が流入対流シールドから対流シールドへ妨げられずに流れるようにしている。
【0025】
流入加熱要素15は、流入対流シールド10の長さに沿って、かつその内部に配置されている。好ましくは、流入加熱要素は、対流シールド2からエンドピース14までループ状に延び、再び戻る加熱パイプである。加熱パイプは、蒸気または熱流体のような熱媒体を有する。
【0026】
流入対流シールドは、主に対流シールドの下縁部と同じ高さで貯蔵タンクの底部に沿って延びる。この結果、重油はより長い距離にわたって加熱部分に流入できることになる。好ましくは、流入対流シールドは、貯蔵タンク1の長さの10%超、より好ましくは30%超にわたって延びる。好ましくは、対流シールドは、貯蔵タンクの後方/後部側に配置される。通常、船舶は低い船尾に向かってトリム(trim)され、対流シールドは貯蔵タンク内の最も低い位置に配置されるため、これは有利である。換言すれば、対流シールドは、貯蔵タンク内の最も低い位置に配置されることが好ましい。
【0027】
一実施形態では、開位置と閉位置を有するバルク加熱バルブ5が対流シールド2の頂部8に取り付けられる。開位置では、加熱された重油は対流シールドから上方に流出し、非加熱の重油は流入対流シールド10および対流シールド2の底部側から吸い込まれ、
図5に示すように、貯蔵タンクの大部分で対流7が現れる。バルク加熱バルブ5が閉位置では、対流シールド2内の重油のみが加熱される。バルブのサイズは、頂部8の面積の2~30%、より好ましくは2~10%である。換言すれば、本発明は、バルク加熱バルブが閉位置にある場合には通常の対流シールドとして機能し、バルク加熱バルブ5が開位置にある場合にはバルクヒータとして機能する。バルク加熱バルブのサイズは、対流シールドから貯蔵タンクのバルクに放出される熱の割合を決定する。高さの低い貯蔵タンクでは、液面がバルク加熱バルブ5の高さに達すると、重油の大部分がタンク内に残り、その時点で、上述のフローパターンが停止する。
【0028】
本発明の一実施形態では、第二段ヒータ21が対流シールドの下流に接続される。第二段ヒータの目的は、より安定した重油温度を提供することであり、これは、対流シールドの高さが低いことから加熱要素3の高さも低く、結果として、燃料吸入ライン4に流入する重油の温度変化が大きくなり、吸入ラインが詰まる可能性があるためである。第二段ヒータ21は、閉じた頂部9および側面8、主に閉じた底部24、ならびに第二段加熱要素20を有する第二段対流シールド19を備える。二次燃料吸引パイプ23は二次対流シールドから重油を取り出すので、加熱された重油を対流シールド2から二次対流シールド19へ吸引するため、二次対流シールドの底部24は、主に閉じられていなければならない。一実施形態では、底部24は排水孔を有する。第二段チャネル22は、部分的に加熱された重油を対流シールドの頂部から第二段ヒータ21の底部に導く。第二段対流シールド19の内部には、第二段燃料吸入ライン23が配置されている。
【符号の説明】
【0029】
1 重油貯蔵タンク
2 対流シールド
3 加熱要素
4 燃料吸入ライン
5 バルク加熱バルブ
6 対流シールド内の対流
7 重油貯蔵タンク全体での対流
8 (対流シールドの)頂部
9 (対流シールドの)側面
10 流入対流シールド
11 流入対流シールド上側部分
12 (流入対流シールドの)頂部
13 (流入対流シールドの)側面
14 (流入対流シールドの)エンドピース
15 流入加熱要素
16 下側部分
17 開口部
18 対流チャンバ
19 第二段対流シールド
20 第二段加熱要素
21 第二段ヒータ
22 第二段チャネル
23 第二段燃料吸入ライン
24 第二段対流シールド底部
【国際調査報告】