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特表2024-518661紫外線吸収剤、組成物、化粧品及び化粧品の製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】紫外線吸収剤、組成物、化粧品及び化粧品の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240423BHJP
   C07C 229/52 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240423BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240423BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240423BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20240423BHJP
   D06M 13/207 20060101ALI20240423BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C09K3/00 104D
C07C229/52
A61K8/41
A61Q17/04
C08L101/00
C08K5/18
D06M13/207
D06M13/224
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508816
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2022142177
(87)【国際公開番号】W WO2023125475
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111628792.3
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523403128
【氏名又は名称】黄岡美豊化工科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】劉 建軍
(72)【発明者】
【氏名】徐 文立
(72)【発明者】
【氏名】曾 誠
(72)【発明者】
【氏名】ウー ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】熊 耀東
【テーマコード(参考)】
4C083
4H006
4J002
4L033
【Fターム(参考)】
4C083AC331
4C083AC332
4C083AC342
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC551
4C083AC552
4C083AD661
4C083AD662
4C083CC19
4C083DD23
4C083DD30
4C083DD38
4C083EE17
4C083FF01
4C083FF05
4H006AA03
4H006AB12
4H006AB92
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BR60
4H006BT32
4J002AA001
4J002EN066
4J002EN096
4J002EN106
4J002FD056
4J002FD070
4J002FD200
4L033AB04
4L033AC15
4L033BA09
4L033BA21
(57)【要約】
本発明は、紫外線吸収剤組成物、化粧品を開示する。前記紫外線吸収剤は2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステルである。前記紫外線吸収剤の最大粒度d(0.9)は50~100μmの範囲内にあるとともに、前記紫外線吸収剤の最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は30~100μmである。そして前記紫外線吸収剤は測定器により測定された3以下の有効スパンを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステルである紫外線吸収剤であって、具体的な構造式は、
【化1】
であり、
前記紫外線吸収剤は100μm未満の中央粒径d(0.5)を有し、
前記紫外線吸収剤の最大粒度d(0.9)は50~100μmの範囲内にあるとともに、
前記紫外線吸収剤の最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は30~100μmであることを特徴とする、紫外線吸収剤。
【請求項2】
前記最大粒度d(0.9)は50~90μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項3】
前記最大粒度d(0.9)は50~80μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項4】
前記最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は30~70μmであることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項5】
前記最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は40~50μmであることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項6】
前記最小粒度d(0.1)は5~15μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項7】
測定器により測定された3以下の有効スパンを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤。
【請求項8】
測定器により測定された範囲0.5~1.5のコンシステンシーを有することを特徴とする、請求項7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項9】
測定器により測定された範囲0.5~1のコンシステンシーを有することを特徴とする、請求項7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項10】
前記紫外線吸収剤の中央粒径d(0.5)は20~40μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項11】
前記紫外線吸収剤の粒径分布は、
【数1】
という要件を満たし、
式中、
αd10は10μm粒子の分布係数であり、
d10は紫外線吸収剤中の粒度が10μm以下の粒子と前記粒子の総体積比%であり、
d100は紫外線吸収剤中の粒度が100μm以下の粒子と前記粒子の総体積比%であり、
前記紫外線吸収剤の小粒径粒子の分布係数はαd10≦0.2を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項12】
前記小粒径粒子の分布係数はαd10≦0.15を満たすことを特徴とする、請求項11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項13】
前記小粒径粒子の分布係数は0.05≦αd10≦0.15を満たし、好ましくは前記小粒径粒子の分布係数は0.07≦αd10≦0.12を満たすことを特徴とする、請求項11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項14】
前記紫外線吸収剤のVd100は70%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上であることを特徴とする、請求項11~13のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤。
【請求項15】
溶媒がアジピン酸ジブチルで、添加濃度が3~20wt%で、温度が20~30℃で、撹拌速度が150±5r/minである具体的な加工条件で、前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解する時間は30分以内であり、
前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解している指標は溶媒中の固形分が0.5%よりも低いことであることを特徴とする、請求項1~6又は11~13のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤。
【請求項16】
前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解する時間は25分以内であることを特徴とする、請求項15に記載の紫外線吸収剤。
【請求項17】
紫外線吸収剤、分散剤、膜形成剤、酸化防止剤及び潤滑剤を含む紫外線吸収作用を有する組成物であって、
前記紫外線吸収剤は請求項1~16のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤を含み、
前記分散剤、膜形成剤、酸化防止剤及潤滑剤のうちの少なくとも1つは20℃以上の条件において油相である、紫外線吸収作用を有する組成物。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の紫外線吸収粒子2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステル、炭酸ジオクチル、アジピン酸ジブチル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、酢酸トコフェロールを含む、請求項17に記載の紫外線吸収作用を有する組成物。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤又は請求項17~18のいずれか1項に記載の組成物の、化粧品の日焼け止め成分としての用途、又は布地表面処理の紫外線防止添加剤成分としての用途、又は高分子材料の紫外線防止添加剤成分としての用途。
【請求項20】
原料として、請求項1~16のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤を含むか、又は請求項17~18のいずれか1項に記載の組成物を含む、化粧品。
【請求項21】
原料として請求項1~16のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤又は請求項17~18のいずれか1項に記載の組成物を使用し、且つ前記原料を油相に溶解する時、
温度は50℃以下、好ましくは40~50℃であり、
添加濃度は20wt%以下、好ましくは3~20wt%であることを特徴とする、化粧品製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線防御の分野に属し、特に、紫外線吸収剤及びその組成物と用途に関し、その用途としては、上記紫外線吸収剤又は組成物を用いた化粧品の製造であってもよい。
【背景技術】
【0002】
2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステル(DHHB,Diethylamino Hydroxybenzoyl Hexyl Benzoate)は、代表的且つ一般的に使用される油溶性有機紫外線吸収剤であり、油溶温度が50℃以下で、日焼け止めの波長帯が320~400nmであり、特に近紫外線を吸収するUVA吸収剤として、紫外線のエネルギーを化学的に吸収して熱エネルギーに変換することで、紫外線の浸透を防ぎ、さらに、例えばプラスチックやゴム等の高分子材質の製品の使用過程における光老化や劣化の現象を効果的に遅らせる。日焼け止めクリーム等の化粧品の添加剤として使用されると、紫外線の影響から肌を効果的に守ることができる。
【0003】
化粧品におけるDHHBの使用(中国、欧州連合及びオーストラリアで、使用可能な最大濃度は10%)を例とすると、従来の日焼け止め化粧品の製造プロセスでは、一般的なO/W及びW/O型の日焼け止めクリームについて、油相と水相は通常、別々に処理され、一般的に、DHHBのような紫外線吸収剤は油相に溶解して使用される。W/O型の日焼け止めクリームの製造を例とすると、具体的には、油相原料(DHHB含有)を乳化釜に投入し、全ての原料が完全に溶解又は均一に分散しているように撹拌して80~85℃に昇温させ、温度を10分間保持する。水相原料を水相釜に投入し、全ての原料が完全に溶解又は均一に分散しているように撹拌して80~85℃に昇温させ、温度を10分間保持する。乳化釜の真空及び撹拌を開始し、水相原料を乳化釜(即ち油相成分)に一定の速度で注入して均質化し、均質化が完了すると、混合、撹拌して45℃前後に降温し、活性物質、揮発性成分、エッセンス及び防腐剤等を乳化釜に入れ、均一に撹拌(均質化)する。検査合格後に排出して充填する。周知のように、例えば特許文献1では、油状物質を混合容器に導入し、好ましくは85~95℃でUVフィルター剤を入れて撹拌する。又は例えば特許文献2では、油相系を調製する時、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、DHHB及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを混合して油相溶媒に入れ、80~85℃で溶解して油相混合液を得る。
【0004】
初期のDHHB合成で溶液から調製された結晶形態のピンク色の粗生成物は、まずクロマトグラフィー法によって精製され、次に存在する溶媒が蒸留によって除去され、最後に、クリーンな最終製品は溶融物として瓶詰めされて販売され、且つその後の使用時、パッケージから液体製品を取り出すためには、パッケージ全体を2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステルの融点よりも高い温度に加熱する必要がある。使用プロセスの発展に伴い、瓶詰めのDHHBの使用上の欠点が徐々に現れる。需要から、粒径がミリメートルレベルの顆粒状のDHHBを直接製造することができる、より便利なDHHB粒子の新たな結晶製造方法が登場した。また、周知のように、一般的な油溶性有機紫外線吸収剤は油溶温度が50℃以下であるため、一般の生産者は粒径がDHHBにどのような悪影響を与えるかを過度に考慮する必要はない。
【0005】
上述した従来方法では、油相と水相を予め別々に加熱してから、両者を混合して撹拌し、室温まで冷却するが、油相と水相を70℃又はそれ以上に加熱するには多大な時間やエネルギー消費がかかり、また、冷却過程にはより長い時間を要したり、又は例えば水冷等の補助手段を使用して急速に冷却させる必要がある。その他に、エッセンスと不安定成分のプロセスにおける添加タイミングは非常に制限されている。化粧品会社は、原料、輸送、包装だけでなく、製品プロセスにおいても、エネルギー消費と二酸化炭素排出をどのように削減するかを検討する必要がある。これに踏まえて、現在、製品加工には一般的に低エネルギー乳化法(LEE,Low-Energy Emulsification)が使用されている。例えば、特許文献1のいわゆる低温法は、つまり室温20~25℃で、溶媒及び選択的な他の一般的な補助物質を日焼け止めの最終配合剤に転化するものである。
【0006】
しかし実際の生産では、新たな結晶化プロセスで製造された顆粒状のDHHBの使用過程においてプロセス加工に制限が生じるため、上記低エネルギー乳化法は一定の制限を受けている。最も典型的な問題の1つは、温度の低下や濃度の増加によりDHHBの油溶化時間が倍増することである。もう1つの問題は、生産プロセス全体の安定性とリズム性に影響を与えることであり、生産過程があまりにも多くの要因によって制限されると、変動が発生しやすく、生産プロセス自体の安定性や生産リズムの安定性に重大な影響を及ぼし、さらには製品の品質にも影響を及ぼすことがある。
【0007】
【特許文献1】CN105358221B、公開日2019-08-23、UV安定剤を多量に含有する試薬。
【特許文献2】CN109908020A、公開日2019-06-21、日焼け止め組成物、その製造方法及びその用途。
【発明の概要】
【0008】
1.発明が解決しようとする課題
本発明の1つの目的は、上記従来の方法及び低温(室温20~25℃)加工方法の両方にも適した紫外線吸収剤又はそれをベースとした組成物を提供することである。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、従来の紫外線吸収剤又はそれをベースとした組成物が上記従来のプロセス及び低温(室温20~25℃)加工プロセスに適用された場合、生産プロセス自体の安定性や生産リズムの安定性に重大な悪影響を及ぼすことがあるという問題を解決することであり、前記紫外線吸収剤は100μm未満の最大粒径を有する。
【0010】
2.技術的解決手段
上記課題を解決するために、本発明は紫外線吸収剤を提供し、前記紫外線吸収剤は2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステルであり、具体的な構造式は、
【化1】
であり、
前記紫外線吸収剤は100μm未満の中央粒径d(0.5)を有し、
前記紫外線吸収剤の最大粒度d(0.9)は50~100μmの範囲内にあるとともに、
前記紫外線吸収剤の最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は30~100μmである。
【0011】
ここで説明すべきことは、出願人は実験により、紫外線吸収剤の平均粒径が100μmを下回ると、その溶解速度と溶解時間は急激に低下する区間があることを発見した点である。粒子をナノレベルやサブミクロンレベルまで破砕すると、製造プロセスの精度を向上させる必要があり、粉砕のコストとエネルギー消費が増加し、また、ナノ粒子間の微小な作用力により、分散過程でナノ粒子が互いに引き寄せられ、さらに分散媒体に大きな粒子団塊が形成され、かえって溶解速度が低下する可能性がある。
【0012】
範囲として、前記最大粒度d(0.9)の数値は、50~100μm、50~90μm、50~80μm、50~70μm、50~60μm、60~100μm、60~90μm、60~80μm、60~70μm、70~100μm、70~90μm、70~80μm、80~100μm、80~90μm、90~100μmのいずれかの数値範囲から取られたいずれか1つの数値であってもよい。前記最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の数値は、30~100μm、30~90μm、30~80μm、30~70μm、30~60μm、30~50μm、30~40μm、40~100μm、40~90μm、40~80μm、40~70μm、40~60μm、40~50μm、50~100μm、50~90μm、50~80μm、50~70μm、50~60μm、60~100μm、60~90μm、60~80μm、60~70μm、70~100μm、70~90μm、70~80μm、80~100μm、80~90μm、90~100μmのいずれかの数値範囲から取られたいずれか1つの数値であってもよい。
【0013】
さらに、前記紫外線吸収剤の最小粒度d(0.1)は5~15μmの範囲内にある。範囲として、前記最小粒度d(0.1)の数値は、5~15μm、5~12μm、5~10μm、5~8μm、5~6μm、7~15μm、7~12μm、7~10μm、7~8μm、9~15μm、9~12μm、9~10μm、10~15μm、10~12μm、12~15μm、14~15μmのいずれかの数値範囲から取られたいずれか1つの数値であってもよい。
【0014】
さらに、前記紫外線吸収剤の中央粒径d(0.5)は20~40μmの範囲内にある。範囲として、前記中央粒径d(0.5)の数値は、20~40μm、20~35μm、20~30μm、20~25μm、25~40μm、25~35μm、25~30μm、30~40μm、30~35μm、35~40μmのいずれかの数値範囲から取られたいずれか1つの数値であってもよい。
【0015】
さらに、前記紫外線吸収剤は、測定器により測定された3以下の有効スパンを有する。前記有効スパンの数値は、1~3、1~2.5、1~2、1~1.5、1.5~3、1.5~2.5、1.5~2、2~3、2~2.5、2.3~3のいずれかの数値範囲から取られたいずれか1つの数値であってもよい。
【0016】
さらに、前記紫外線吸収剤は、測定器により測定された範囲0.5~1.5のコンシステンシーを有する。前記コンシステンシーの数値は、0.5~1.5、0.5~1.2、0.5~1、0.5~0.8、0.5~0.6、0.7~1.5、0.7~1.2、0.7~1、0.7~0.8、1~1.5、1~1.2のいずれかの数値範囲から取られたいずれか1つの数値であってもよい。
【0017】
さらに、前記紫外線吸収剤の最大粒度d(0.9)は50~90μmの範囲内にあるとともに、
前記紫外線吸収剤の最小粒度d(0.1)は5~15μmの範囲内にあり、且つ
前記紫外線吸収剤の中央粒径d(0.5)は20~40μmの範囲内にあり、且つ
前記紫外線吸収剤は、測定器により測定された1以下のコンシステンシーを有する。
【0018】
さらに、前記紫外線吸収剤の粒径分布は、
【数1】
という要件を満たし、
式中、
αd5は5μm粒径粒子の分布係数であり、
d5は粒子群中の粒度が5μm以下の粒子と前記粒子群の体積比%であり、
d100は粒子群中の粒度が100μm以下の粒子と前記粒子群の体積比%であり、
前記粒子群の小粒径粒子の分布係数はαd5≦0.2を満たす。
【0019】
さらに、前記紫外線吸収剤の粒径分布は、
【数2】
という要件を満たし、
式中、
αd10は10μm粒子の分布係数であり、
d10は紫外線吸収剤中の粒度が10μm以下の粒子と前記粒子の総体積の比%であり、
d100は紫外線吸収剤中の粒度が100μm以下の粒子と前記粒子の総体積の比%であり、
前記紫外線吸収剤の小粒径粒子の分布係数はαd10≦0.2を満たす。ここで説明すべきことは、出願人は、紫外線吸収剤中にあまりにも多くの小粒子又は微細な粉末が混入すると、小粒子が大粒子の隙間に充填され、粒子間の接触点の数が増え、固結が促進されるが、紫外線吸収剤中の小粒子の体積を一定の範囲内に制御し、大粒径と小粒径の差値を制御すれば、固結は依然として存在するものの、固結の程度は従来技術に比べて著しく低減されることを発見して驚いた点である。また、大粒径と小粒径の差値を制御することで、紫外線吸収剤の団塊の解砕度が高く、本発明の製品がプロセスに投入されて使用される時、出願人は、製品がパッケージから容器に注がれる時に衝突又は簡単な機械的撹拌によって迅速に分散することができ、追加の加熱又は他の補助処理を必要とせず、エネルギー消費が節約され、プロセスの二酸化炭素排出が削減されることを発見した。また、本発明の紫外線吸収剤を通常の通りに有機相に溶解して再加工を行う時、吸収粒子中に一定量の小粒径粒子が存在するためか、有機相との液体架橋力がより生成しやすく、界面間の付着力がある程度増加し、これにより、吸収粒子は有機相中により容易且つ迅速に分散される。また、小粒径の吸収粒子の溶解速度はそもそも大粒径の吸収粒子よりも大きいため、吸収粒子の溶解過程がさらに加速される。
【0020】
さらに説明すべきことは、撹拌過程では、原則として、例えば、磁気撹拌コア、アンカー撹拌機、プロペラ撹拌機、傾斜ブレード撹拌機、又はディスク撹拌機等、任意のタイプの撹拌機を使用することができる点である。原料投入体積に対する撹拌機の寸法は決定的ではない。溶解速度は、撹拌機の速度、即ち撹拌機の回転数/分を上げることによって加速できることが知られている。本発明において、撹拌機は、100~600rpm/min、好ましくは200~500rpm/min、最も好ましくは250~350rpm/minで撹拌する。
【0021】
さらに、前記紫外線吸収剤の小粒径粒子の分布係数はαd10≦0.15を満たす。
【0022】
さらに、前記紫外線吸収剤の小粒径粒子の分布係数は0.05≦αd10≦0.15を満たし、且つ前記紫外線吸収剤の小粒径粒子の分布係数の数値は、0.05~0.15、0.05~0.12、0.05~0.1、0.05~0.08、0.05~0.06、0.07~0.15、0.07~0.12、0.07~0.1、0.09~0.15、0.09~0.12、0.09~0.1、0.11~0.15、0.11~0.12、0.12~0.15のいずれかの数値範囲から取られたいずれか1つの数値であってもよい。好ましくは前記小粒径粒子の分布係数は0.07≦αd10≦0.12を満たす。説明すべきことは、一定含有量の小粒径粒子を大粒径粒子の隙間に分散させることにより、紫外線吸収粒子は互いに衝突・嵌合し、十分な解砕・分散効果が得られ、均一な混合の効果が実現される点である。
【0023】
さらに、前記紫外線吸収剤のVd100は≧70%、好ましくは≧85%、さらに好ましくは≧95%である。
【0024】
さらに、溶媒がアジピン酸ジブチルで、添加濃度が3~20wt%で、温度が20~30℃で、撹拌速度が150±5r/minである具体的な加工条件で、前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解する時間は30分以内であり、
前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解している指標は溶媒中の固形分が0.5%よりも低いことである。
【0025】
さらに、前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解する時間は25分以内である。
【0026】
紫外線吸収剤、分散剤、膜形成剤、酸化防止剤及び潤滑剤を含む紫外線吸収作用を有する組成物であって、前記紫外線吸収剤は上記いずれか1項に記載の紫外線吸収剤を含み、
前記分散剤、膜形成剤、酸化防止剤及潤滑剤のうちの少なくとも1つは20℃以上の条件において油相である、紫外線吸収作用を有する組成物を提供する。
【0027】
さらに、前記した紫外線吸収作用を有する組成物は、上記いずれか1項に記載の紫外線吸収粒子2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステル、炭酸ジオクチル、アジピン酸ジブチル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、酢酸トコフェロールを含む。
【0028】
原料として、上記紫外線吸収剤を含むか、又は上記組成物を含む化粧品を提供する。本発明で定義された化粧品は広義的な定義であり、「化粧品」は美白剤、日焼け止めクリーム、日焼け止め剤等を含むが、これらに限定されない。
【0029】
原料として上記いずれか1項に記載の紫外線吸収剤又は上記いずれか1項に記載の組成物を使用し、且つ前記原料を油相に溶解する時、
温度は50℃以下、好ましくは40~50℃であり、
添加濃度は20wt%以下、好ましくは3~20wt%であることを特徴とする、化粧品製造プロセスを提供する。
【0030】
本発明は、上記紫外線吸収粒子の、化粧品の日焼け止め成分としての用途、又は布地表面処理の紫外線防止添加剤成分としての用途、又は高分子材料の紫外線防止添加剤成分としての用途をさらに提供し、製造された最終製品は、紫外線吸収のカバー率が高く、紫外線吸収の効果が高い。
【0031】
また、消費者ごとに肌の特性、感度及び吸収性が大きく異なるため、消費者は日焼け止め化粧品に対してより高い要求を提出し、異なるグループの消費者は自分の肌の特性に合った差別化された製品を求める傾向がある。消費者の需要の分化に伴い、化粧品の製品種類、製品タイプ及び製品特性に対する消費者の需要もますます多様化になり、その結果、企業は異なる種類、タイプ又は特性の日焼け止め化粧品を生産又は加工する必要があり、化粧品企業の製品生産、加工の複雑さが大幅に増加し、例えば、製品の生産種類又はタイプを頻繁に調整する必要がある。また、製品の種類に対する需要が徐々に増加する一方で、消費者は化粧品の品質をもますます重視し、特に同じタイプや同じ種類の化粧品の性能の均一性を重視している。しかし、化粧品の生産と加工は生産の流れが長く、生産と加工が複雑で、作業ユニットが多い等の特徴を持っているため、化粧品の生産では該問題の解決を急務としているが、解決されていない。係る技術者もまた上記問題を解決するために、加工工程の方法又は装置を改良する試みをしている。出願人は、紫外線吸収粒子を改良する過程で、さらに驚くべきことに、本発明の紫外線吸収粒子は生産プロセスの安定性を大幅に向上させることができ、生産リズムのテンポを良好に維持することができることを発見した。異なる型番や異なる濃度の製品を生産する時、異なる種類や型番の製品を交互に生産しても、生産プロセスの安定性を維持することができ、さらに、生産プロセスはそれに応じた安定性を有し、生産リズムの連続性が保たれ、生産安定性の変化が製品品質の安定性に影響を与えることが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例1のDHHB紫外線吸収剤の粒度分布曲線である。
図2】実施例2のDHHB紫外線吸収剤の粒度分布曲線である。
図3】実施例3のDHHB紫外線吸収剤の粒度分布曲線である。
図4】実施例4のDHHB紫外線吸収剤の粒度分布曲線である。
図5】実施例5のDHHB紫外線吸収剤の粒度分布曲線である。
図6】実施例6のDHHB紫外線吸収剤の粒度分布曲線である。
図7】実施例1のサンプルの低温溶解実験の結果を示す写真(5min未満)である。
図8】比較例1のサンプルの低温溶解実験の結果を示す写真(5min)である。
図9】比較例1のサンプルの低温溶解実験の結果を示す写真(45min)である。
図10】比較例1のサンプルの低温溶解実験の結果を示す写真(105min)である。 図中の矢印は溶解していないDHHBサンプルを指す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
他に定義しない限り、本発明において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書で使用される用語「及び/又は」は、1つ又は複数の関連して列挙された項目の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0034】
本発明において、実施例に具体的な条件が明記されていないものは、通常の条件又は製造業者が推薦する条件で実施する。用いられる試薬又は機器についてその製造業者が明記されていない場合は、いずれも市販から得られる通常の製品である。
【0035】
本明細書で使用される用語「約」は、与えられた用語、尺度又は値に関連する柔軟性と不正確さを提供するためのものである。当業者であれば、特定の変数の柔軟性の程度を容易に判断することができる。より具体的には、本発明の例示的な実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、前記詳細な説明から当業者が認識できる、例えば各実施例間の組み合わせ、適応的な変更及び/又は置換等の修正、省略が行われた任意の及び全ての実施例をも包含する。特許請求の範囲における限定は、特許請求の範囲で使用される文言に基づいて広く解釈することができ、前記詳細な説明又は該出願の実施に記載された例に限定されず、例は非排他的であると解釈されるべきである。任意の方法又はプロセスの請求項で列挙した任意のステップは、請求項に提示される順序に限定されることなく、任意の順序で実行することができる。したがって、本発明の範囲は、上記で与えられた記載及び実施例ではなく、添付の特許請求の範囲及びその法的均等物によってのみ決定されるべきである。
【0036】
他に定義しない限り、本発明において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同一の意味を有する。矛盾がある場合には、本明細書における定義に準じる。質量、濃度、温度、時間、その他の値又はパラメータを範囲、好ましい範囲、又は一連の上限の好ましい値及び下限の好ましい値で限定される範囲で示す場合に、範囲が単独で開示されているか否かにもかかわらず、任意の範囲の上限又は好ましい値と任意の範囲の下限又は好ましい値とで形成される範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50からなる群から選択される任意の数、数の組み合わせ、又はサブ範囲、ならびに、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9等、前述の整数間の全ての介在する小数を包含すると理解されるべきである。サブ範囲について、範囲内のいずれかの端点から延伸する「入れ子になったサブ範囲」が具体的に意図されている。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子になったサブ範囲は、一方向に1~10、1~20、1~30及び1~40、又は逆方向に、50~40、50~30、50~20及び50~10を含んでよい。
【0037】
本明細書で使用される用語「中央粒径d(0.5)」について、ここで「中央粒径」は「中間粒径」とも呼ばれ、「d(0.5)」は「Dv50」又は「D50」と示されてもよく、サンプルの累積粒度分布の百分率(累計粒度分布の百分率とも呼ばれる)が50%に達した時に対応する粒径を表し、さらに、その物理的意味は、粒径がそれよりも大きい粒子が50%を占め、それよりも小さい粒子も50%を占めることである。
【0038】
本明細書で使用される用語「最大粒径d(0.9)」について、ここで「d(0.9)」は「Dv90」又は「D90」と示されてもよく、サンプルの累積粒度分布の百分率が90%に達した時に対応する粒径を表し、その物理的意味は、粒径がそれよりも大きい粒子が10%を占め、それよりも小さい粒子が90%を占めることである。
【0039】
本明細書で使用される用語「最小粒径d(0.1)」について、ここで「d(0.1)」は「Dv10」又は「D10」と示されてもよく、サンプルの累積粒度分布の百分率が10%に達した時に対応する粒径を表し、その物理的意味は、粒径がそれよりも大きい粒子が90%を占め、それよりも小さい粒子が10%を占めることである。
【0040】
本明細書で使用される「最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差」は、「有効粒径幅」又は「粒径幅」又は「粒径分布幅」又は「有効粒度幅」又は「粒度幅」又は「粒度分布幅」と呼ばれてもよく、具体的には、サンプルの累積粒度分布の百分率が特定の値d(0.1)に達した時に対応する粒径と、サンプルの累積粒度分布の百分率が別の値d(0.9)に達した時に対応する粒径との差の絶対値を表す。
【0041】
|粒径試験|
例えば、最小粒度d(0.1)、d(0.9)、コンシステンシー等、本明細書に記載の紫外線吸収剤の粒度分布及びその特徴は、全てレーザー回折法により測定され、その測定条件は次の通りである。
粒度分析装置:malvern MS2000レーザー粒度計。
サンプルインジェクタ名称:Hydro 2000MU(A)。
分析モード:汎用。
粒径範囲:0.02~2000μm。
分散剤の名称:水。
【0042】
実施例1
レーザー回折法により本実施例における紫外線吸収剤を測定し、使用される粒度分析装置はmalvern MS2000レーザー粒度計であり、その測定条件及び検出結果は次の表1に示すとおりである。
【0043】
【表1】
【0044】
測定結果から、本実施例の紫外線吸収剤は下記表2の粒径分布特徴を有することが示され、具体的な分布曲線は図1を参照すること。
【0045】
【表2】
【0046】
本実施例における紫外線吸収剤はαd5=0.0160、αd10=0.111、D[3,2]とD[4,3]の差が11.727μmであった。
【0047】
実施例2
レーザー回折法により本実施例における紫外線吸収剤を測定し、使用される粒度分析装置はmalvern MS2000レーザー粒度計であり、その測定条件及び検出結果は次の表3に示すとおりである。
【0048】
【表3】
【0049】
測定結果から、本実施例の紫外線吸収剤は下記表4の粒径分布特徴を有することが示され、具体的な分布曲線は図2を参照すること。
【0050】
【表4】
【0051】
本実施例における紫外線吸収剤はαd5=0.006、αd10=0.104、D[3,2]とD[4,3]の差が8.865μmであった。
【0052】
実施例3
レーザー回折法により本実施例における紫外線吸収剤を測定し、使用される粒度分析装置はmalvern MS2000レーザー粒度計であり、その測定条件及び検出結果は次の表5に示すとおりである。
【0053】
【表5】
【0054】
測定結果から、本実施例の紫外線吸収剤は下記表6の粒径分布特徴を有することが示され、具体的な分布曲線は図3を参照すること。
【0055】
【表6】
【0056】
本実施例における紫外線吸収剤はαd5=0.019、αd10=0.107、D[3,2]とD[4,3]の差が17.543μmであった。
【0057】
実施例4
レーザー回折法により本実施例における紫外線吸収剤を測定し、使用される粒度分析装置はmalvern MS2000レーザー粒度計であり、その測定条件及び検出結果は次の表7に示すとおりである。
【0058】
【表7】
【0059】
測定結果から、本実施例の紫外線吸収剤は下記表8の粒径分布特徴を有することが示され、具体的な分布曲線は図4を参照すること。
【0060】
【表8】
【0061】
本実施例における紫外線吸収剤はαd5=0.002、αd10=0.074、D[3,2]とD[4,3]の差が11.215μmであった。
【0062】
実施例5
レーザー回折法により本実施例における紫外線吸収剤を測定し、使用される粒度分析装置はmalvern MS2000レーザー粒度計であり、その測定条件及び検出結果は次の表9に示すとおりである。
【0063】
【表9】
【0064】
測定結果から、本実施例の紫外線吸収剤は下記表10の粒径分布特徴を有することが示され、具体的な分布曲線は図5を参照すること。
【0065】
【表10】
【0066】
本実施例における紫外線吸収剤はαd5=0.037、αd10=0.095、D[3,2]とD[4,3]の差が21.881μmであった。
【0067】
比較例1
本比較例において、サンプルとして、BASF社製の商品名Uvinul A PlusのDHHB製品を使用する。レーザー回折法により本比較例のサンプルを測定し、使用される粒度分析装置はmalvern MS2000レーザー粒度計であり、その測定条件及び検出結果は次の表11に示すとおりである。
【0068】
【表11】
【0069】
測定結果から、本実施例の紫外線吸収剤は下記表12の粒径分布特徴を有することが示され、具体的な分布曲線は図6を参照すること。
【0070】
【表12】
【0071】
本比較例における紫外線吸収剤はαd5=0.005、αd10=0.122、D[3,2]とD[4,3]の差が128.616μmであった。
【0072】
第1溶解実験
本溶解実験において、上記実施例及び比較例における紫外線吸収剤の固結程度を評価し、一定質量のサンプルを油相に加え、常温(25℃)で150r/minの撹拌速度で撹拌して溶解させる。ここで、本溶解実験はSPF=25の日焼け止めオイルの製造原料について試験を行った。その原料は表13に示すとおりである。
【0073】
【表13】
【0074】
固体のDHHBを除けば、その他は全て液体グリースである。その生産プロセスは、各成分をオイルポットに順次投入し、完全に溶解し清澄となるまで撹拌することである。上記原料及びプロセスに対する実験室でのシミュレーションテストの結果は次の表14に示すとおりである。
【0075】
【表14】
【0076】
上記表14のデータと図7から、添加濃度3%、温度25℃、150r/minの撹拌速度で撹拌して溶解させる場合、本発明の実施例1~5で提供されるDHHB紫外線吸収剤の溶解に要する時間はいずれも5分未満であることが分かる。
【0077】
上記表14のデータと図8~10から、同じ溶解条件で、比較例1のサンプルは5分と45分溶解した後でも依然として明らかな未溶解のDHHB粒子を含有し、最終的に溶解して清澄となるまで要する時間は151分であることが分かる。
【0078】
比較例1と比較例2から、DHHB紫外線吸収剤は実際の様々な要素の影響を受けており、その溶解速度は、粒径が小さいほど、溶解速度が速いという従来の法則とは必ずしも一致しないことが分かる。
【0079】
第2溶解実験
本溶解実験において、上記実施例及び比較例における紫外線吸収剤の固結程度を評価し、一定質量のサンプルを油相に加え、常温(25℃)で150r/minの撹拌速度で撹拌して溶解させる。ここで、本溶解実験はSPF=25の日焼け止めオイルの製造原料について試験を行った。その原料は表15に示すとおりである。
【0080】
【表15】
【0081】
固体のDHHBを除けば、その他は全て液体グリースである。その生産プロセスは、各成分をオイルポットに順次投入し、完全に溶解し清澄となるまで撹拌することである。上記原料及びプロセスに対する実験室でのシミュレーションテストの結果は次の表16に示すとおりである。
【0082】
【表16】
【0083】
表16から、添加濃度を6%に変更し、温度と撹拌速度がいずれも第1溶解実験と同じである条件で、本発明の実施例1~5で提供されるDHHB紫外線吸収剤の溶解に要する時間は同様にいずれも5分未満であることが分かり、溶解に要する時間が添加濃度に影響されなかったことを示している。
【0084】
しかし、表14と表16を比較すると、比較例1のサンプルの溶解に要する時間は151minから208minへと約38%増加し、比較例2のサンプルの溶解に要する時間は134minから202minへと約50%増加したことが分かり、両者の溶解に要する時間は添加濃度の影響を受けて大幅に上昇することを示している。
【0085】
これまでの生産プロセスでは、生産過程全体を最適化するという目的を達成するために、個々の工程自体の方法又は装置又はその他の面の最適化・調整に重点を置いた研究が多く、実際にも一定の効果を得た。しかし、生産過程の最適化を制約する大きな課題である生産リズムの安定性が残されており、生産リズムの安定性に注目する研究者は少ない。リズムの安定した生産過程は、各工程が厳密に一定のリズムで生産することが要求される。ある工程の生産リズムが不安定であると、生産過程全体のスムーズさが影響され、生産のスムーズさは生産プロセスの生産効率に影響を与えるだけでなく、生産過程における製品の品質にも直接影響する。化粧品の分野では、スムーズでないプロセス操作は、多くの場合他の生産品質の問題に直接つながり、最終的には製品の安定性に影響を与える。
【0086】
上記で例示したように、実際にDHHB粒子を用いた日焼け止め製品の生産過程は、複数の工程を含むが、第1、第2溶解実験に挙げられた模式的なシミュレーションテストは、生産過程の1つの工程に過ぎない。該工程では、添加されるDHHBの型番や濃度が異なると、溶解時間が大きく変化しやすく、その結果、生産プロセスの安定性が著しく低下し、生産リズムの安定性に重大な影響を及ぼし、さらに製品の品質安定性が低下する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステルである紫外線吸収剤であって、具体的な構造式は、
【化1】
であり、
前記紫外線吸収剤は100μm未満の中央粒径d(0.5)を有し、
前記紫外線吸収剤の最大粒度d(0.9)は50~100μmの範囲内にあるとともに、
前記紫外線吸収剤の最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は30~100μmであることを特徴とする、紫外線吸収剤。
【請求項2】
前記最大粒度d(0.9)は50~90μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項3】
前記最大粒度d(0.9)は50~80μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項4】
前記最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は30~70μmであることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項5】
前記最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は40~50μmであることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項6】
前記最小粒度d(0.1)は5~15μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項7】
測定器により測定された3以下の有効スパンを有することを特徴とする、請求項に記載の紫外線吸収剤。
【請求項8】
測定器により測定された範囲0.5~1.5のコンシステンシーを有することを特徴とする、請求項7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項9】
測定器により測定された範囲0.5~1のコンシステンシーを有することを特徴とする、請求項7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項10】
前記紫外線吸収剤の中央粒径d(0.5)は20~40μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項11】
前記紫外線吸収剤の粒径分布は、
【数1】
という要件を満たし、
式中、
αd10は10μm粒子の分布係数であり、
d10は紫外線吸収剤中の粒度が10μm以下の粒子と前記粒子の総体積比%であり、
d100は紫外線吸収剤中の粒度が100μm以下の粒子と前記粒子の総体積比%であり、
前記紫外線吸収剤の小粒径粒子の分布係数はαd10≦0.2を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項12】
前記小粒径粒子の分布係数はαd10≦0.15を満たすことを特徴とする、請求項11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項13】
前記小粒径粒子の分布係数は0.05≦αd10≦0.15を満たし、好ましくは前記小粒径粒子の分布係数は0.07≦αd10≦0.12を満たすことを特徴とする、請求項11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項14】
前記紫外線吸収剤のVd100は70%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上であることを特徴とする、請求項11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項15】
溶媒がアジピン酸ジブチルで、添加濃度が3~20wt%で、温度が20~30℃で、撹拌速度が150±5r/minである具体的な加工条件で、前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解する時間は30分以内であり、
前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解している指標は溶媒中の固形分が0.5%よりも低いことであることを特徴とする、請求項又は11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項16】
前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解する時間は25分以内であることを特徴とする、請求項15に記載の紫外線吸収剤。
【請求項17】
紫外線吸収剤、分散剤、膜形成剤、酸化防止剤及び潤滑剤を含む紫外線吸収作用を有する組成物であって、
前記紫外線吸収剤は請求項1又は11に記載の紫外線吸収剤を含み、
前記分散剤、膜形成剤、酸化防止剤及潤滑剤のうちの少なくとも1つは20℃以上の条件において油相である、紫外線吸収作用を有する組成物。
【請求項18】
請求項1又は11に記載の紫外線吸収粒子2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステル、炭酸ジオクチル、アジピン酸ジブチル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、酢酸トコフェロールを含む、請求項17に記載の紫外線吸収作用を有する組成物。
【請求項19】
請求項に記載の紫外線吸収剤の、化粧品の日焼け止め成分としての用途、又は布地表面処理の紫外線防止添加剤成分としての用途、又は高分子材料の紫外線防止添加剤成分としての用途。
【請求項20】
請求項17に記載の組成物の、化粧品の日焼け止め成分としての用途、又は布地表面処理の紫外線防止添加剤成分としての用途、又は高分子材料の紫外線防止添加剤成分としての用途。
【請求項21】
原料として、請求項に記載の紫外線吸収剤を含む、化粧品。
【請求項22】
原料として、請求項17に記載の組成物を含む、化粧品。
【請求項23】
原料として請求項に記載の紫外線吸収剤を使用し、且つ前記原料を油相に溶解する時、
温度は50℃以下、好ましくは40~50℃であり、
添加濃度は20wt%以下、好ましくは3~20wt%であることを特徴とする、化粧品製造プロセス。
【請求項24】
原料として請求項17に記載の組成物を使用し、且つ前記原料を油相に溶解する時、
温度は50℃以下、好ましくは40~50℃であり、
添加濃度は20wt%以下、好ましくは3~20wt%であることを特徴とする、化粧品製造プロセス。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステルである紫外線吸収剤であって、具体的な構造式は、
【化1】

であり、
前記紫外線吸収剤は100μm未満の中央粒径d(0.5)を有し、
前記紫外線吸収剤の最大粒度d(0.9)は50~100μmの範囲内にあるとともに、
前記紫外線吸収剤の最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は30~100μmであることを特徴とする、紫外線吸収剤。
【請求項2】
前記最大粒度d(0.9)は50~90μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項3】
前記最大粒度d(0.9)は50~80μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項4】
前記最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は30~70μmであることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項5】
前記最小粒度d(0.1)と最大粒度d(0.9)の幅の差の範囲は40~50μmであることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項6】
前記最小粒度d(0.1)は5~15μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項7】
測定器により測定された3以下の有効スパンを有することを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項8】
測定器により測定された範囲0.5~1.5のコンシステンシーを有することを特徴とする、請求項7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項9】
測定器により測定された範囲0.5~1のコンシステンシーを有することを特徴とする、請求項7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項10】
前記紫外線吸収剤の中央粒径d(0.5)は20~40μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項7に記載の紫外線吸収剤。
【請求項11】
前記紫外線吸収剤の粒径分布は、
【数1】
という要件を満たし、
式中、
αd10は10μm粒子の分布係数であり、
d10は紫外線吸収剤中の粒度が10μm以下の粒子と前記粒子の総体積比%であり、
d100は紫外線吸収剤中の粒度が100μm以下の粒子と前記粒子の総体積比%であり、
前記紫外線吸収剤の小粒径粒子の分布係数はαd10≦0.2を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項12】
前記小粒径粒子の分布係数はαd10≦0.15を満たすことを特徴とする、請求項11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項13】
前記小粒径粒子の分布係数は0.05≦αd10≦0.15を満たし、好ましくは前記小粒径粒子の分布係数は0.07≦αd10≦0.12を満たすことを特徴とする、請求項11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項14】
前記紫外線吸収剤のVd100は70%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上であることを特徴とする、請求項11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項15】
溶媒がアジピン酸ジブチルで、添加濃度が3~20wt%で、温度が20~30℃で、撹拌速度が150±5r/minである具体的な加工条件で、前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解する時間は30分以内であり、
前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解している指標は溶媒中の固形分が0.5%よりも低いことであることを特徴とする、請求項1又は11に記載の紫外線吸収剤。
【請求項16】
前記紫外線吸収剤が溶媒に溶解する時間は25分以内であることを特徴とする、請求項15に記載の紫外線吸収剤。
【請求項17】
紫外線吸収剤、分散剤、膜形成剤、酸化防止剤及び潤滑剤を含む紫外線吸収作用を有する組成物であって、
前記紫外線吸収剤は請求項1又は11に記載の紫外線吸収剤を含み、
前記分散剤、膜形成剤、酸化防止剤及潤滑剤のうちの少なくとも1つは20℃以上の条件において油相である、紫外線吸収作用を有する組成物。
【請求項18】
-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシルエステル、炭酸ジオクチル、アジピン酸ジブチル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、酢酸トコフェロールを含む、請求項17に記載の紫外線吸収作用を有する組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の紫外線吸収剤の、化粧品の日焼け止め成分としての用途、又は布地表面処理の紫外線防止添加剤成分としての用途、又は高分子材料の紫外線防止添加剤成分としての用途。
【請求項20】
請求項17に記載の組成物の、化粧品の日焼け止め成分としての用途、又は布地表面処理の紫外線防止添加剤成分としての用途、又は高分子材料の紫外線防止添加剤成分としての用途。
【請求項21】
原料として、請求項1に記載の紫外線吸収剤を含む、化粧品。
【請求項22】
原料として、請求項17に記載の組成物を含む、化粧品。
【請求項23】
原料として請求項1に記載の紫外線吸収剤を使用し、且つ前記原料を油相に溶解する時、
温度は50℃以下、好ましくは40~50℃であり、
添加濃度は20wt%以下、好ましくは3~20wt%であることを特徴とする、化粧品製造プロセス。
【請求項24】
原料として請求項17に記載の組成物を使用し、且つ前記原料を油相に溶解する時、
温度は50℃以下、好ましくは40~50℃であり、
添加濃度は20wt%以下、好ましくは3~20wt%であることを特徴とする、化粧品製造プロセス。
【国際調査報告】