(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】付加製造装置用のプロセスチャンバおよびプロセスチャンバを作動させる方法
(51)【国際特許分類】
B22F 12/00 20210101AFI20240423BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240423BHJP
B22F 12/70 20210101ALI20240423BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240423BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240423BHJP
B29C 64/371 20170101ALI20240423BHJP
B29C 64/25 20170101ALI20240423BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240423BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240423BHJP
【FI】
B22F12/00
B22F10/28
B22F12/70
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/371
B29C64/25
B33Y30/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513555
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022061835
(87)【国際公開番号】W WO2022233860
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021111964.2
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523397665
【氏名又は名称】ニコン エスエルエム ソリューションズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ビアク ホッペ
(72)【発明者】
【氏名】カーステン ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス シュミットヒューセン
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL43
4F213WL52
4F213WL67
4F213WL72
4F213WL76
4F213WL87
4K018CA44
4K018DA33
4K018EA51
(57)【要約】
付加製造装置用のプロセスチャンバハウジング(1)であって、プロセスチャンバ(5)の容積(51)を共に取り囲む底面(9)、天井(10)、および側壁(11,12,13)を有したプロセスチャンバと、側壁(11,12,13)のうちの前側壁(11)に、プロセスチャンバ(5)に不活性ガスを提供するように構成された不活性ガス入口(6)と、側壁(11,12,13)のうちの後側壁(12)に、プロセスチャンバ(5)から不活性ガスを放出するように構成された不活性ガス出口(7)とを有しているプロセスチャンバハウジング(1)は、不活性ガス入口(6)と不活性ガス出口(7)とが、開口(94)の対向する側に配置されており、両者は互いに向かい合っていて、これにより、不活性ガス入口(6)から、開口を越えて不活性ガス出口(7)に到る主流れ方向(2)における不活性ガス流(2)が生成されるように構成されているならば、向上したビーム品質を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造装置用のプロセスチャンバハウジング(1)であって、前記プロセスチャンバハウジング(1)は、プロセスチャンバ(5)を有していて、前記プロセスチャンバハウジング(1)は、少なくとも:
前記プロセスチャンバ(5)の容積(51)を共に取り囲む底面(9)、天井(10)、および側壁(11,12,13)と、
前記プロセスチャンバ(5)内に不活性ガスを供給するように構成された不活性ガス入口(6)と、
前記プロセスチャンバ(5)から前記不活性ガスを放出するように構成された不活性ガス出口(7)と
を有しているプロセスチャンバハウジング(1)において、
前記底面(9)は、開口壁(93)によって画定された開口(94)を有していて、前記開口壁(93)の間には、3次元的な物体(4)を支持するための垂直方向可動な支持体(8)が配置されており、かつ/または
前記ガス入口(6)は、1.4kg/m
3未満の密度を有する軽量の不活性ガスを前記プロセスチャンバ(5)内に供給するように構成されている
ことを特徴とする、プロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項2】
前記不活性ガス入口(6)と前記不活性ガス出口(7)とは、前記プロセスチャンバおよび/または前記開口(94)の対向する側に配置されており、これにより、前記不活性ガス入口(6)から、前記開口を越えて前記不活性ガス出口(7)に到る主流れ方向(2)における不活性ガス流(2)が生成されるように構成されている、請求項1記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項3】
前記不活性ガス入口(6)は、He供給源に接続されていて、前記He供給源から前記プロセスチャンバ(5)内にHeガスを供給するように構成されている、請求項1または2記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項4】
前記ガス入口は、少なくとも0.1W/m・Kの熱伝導率を有するガスまたはガス混合物を提供するガス供給源に接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項5】
前記He供給源は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%のHeのうちの少なくとも1つを含むガスを供給し、前記パーセンテージは、ガスの総量に対するHeおよび/またはNeのmol量に関する、請求項1から4までの少なくとも1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項6】
前記主流れ方向(2)における前記不活性ガス流は、流速を有していて、前記開口の0.5cm上方で測定された平均流速は、
0.75m/秒を上回っていて、かつ/または
4m/秒未満である、
請求項1から5までの少なくとも1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項7】
前記プロセスチャンバ(5)は、少なくとも1つのガス成分濃度センサを有していて、前記少なくとも1つのガス成分濃度センサ(30)のうちの少なくとも1つは、
前記底面に、かつ/または
前記底面の凹部に、かつ/または
前記底面の上方5cmの距離未満に、かつ/または
前記支持体上にかつ/または前記支持体の下方に、かつ/または
前記開口を取り囲む、前記底面における縁部から10cm、5cm、2.5cm、1cm、0.5cmのうちの少なくとも1つのところまたは少なくとも1つ以内に、かつ/または
前記不活性ガス出口(7)を前記不活性ガス入口(6)に接続するダクト33内に、
配置されている、請求項1から6までの少なくとも1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項8】
前記プロセスチャンバハウジングは、前記プロセスチャンバ(5)の前記不活性ガス入口(6)に、不活性ガス成分弁(36)を介して流体接続された少なくとも1つの不活性ガス成分供給源(34)をさらに有している、少なくとも請求項7記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項9】
前記プロセスチャンバ(5)は、前記プロセスチャンバを通る前記不活性ガス流の少なくとも一部の温度を25℃、40℃、60℃、80℃、100℃、150℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃のうちの少なくとも1つの温度以上に加熱するように構成されているヒータ(35)を備える、請求項1から8までの少なくとも1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項10】
前記プロセスチャンバは、前記プロセスチャンバの内側の圧力を、前記プロセスチャンバの外側の周囲圧力未満に、かつ/または1000hPa、900hPa、800hPa、700hPa、600hPa、500ha、400hPa、300hPa、200hPa、100hPaのうちの少なくとも1つの圧力以下に維持するように構成されている圧力制御装置を備える、請求項1から9までの少なくとも1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項11】
前記不活性ガス出口(7)は、真空ポンプに流体連通されていて、かつ/または前記不活性ガス入口(6)は、不活性ガス供給源に流体連通されていて、前記不活性ガス入口の上流にスロットル弁が配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項12】
前記プロセスチャンバは:
前記底面、前記支持体、前記開口壁、および前記開口の底面のうちの少なくとも1つに設けられた少なくとも1つの第2のガス出口、および/または
前記天井に設けられた少なくとも1つの第2の不活性ガス入口
をさらに備える、請求項1から11までの少なくとも1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項13】
前記第2のガス出口は、第2のガス出口制御弁に、好ましくは前記第2のガス出口を介して前記プロセスチャンバ内にガスが流れることができないように構成されたチェック弁に接続されていて、かつ/または
前記第2のガス出口は、第2の出口真空ポンプのガス入口に接続されている、
請求項12記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項14】
前記開口(91)の上方に位置する少なくとも1つのレーザービーム進入窓をさらに備える、請求項1から13までの少なくとも1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項15】
前記窓と前記支持体との間に不活性ガス噴流を供給するように配置された少なくとも1つの不活性ガス噴流入口ノズル、および/または
前記窓と前記支持体との間に不活性ガス噴流を供給するように配置された少なくとも1つの不活性ガス噴流出口ノズル
をさらに備える、少なくとも請求項14記載のプロセスチャンバハウジング(1)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの不活性ガス噴流入口ノズルは、前記不活性ガス入口に対して平行な向きから角度α
js以内に向けられたノズル出口開口を有しており、前記α
jsは、∈Aであって、A={30°、20°、10°、5°、2.5°、1°、0.5°、0°}である、少なくとも請求項15記載のプロセスチャンバハウジング(5)。
【請求項17】
付加製造装置であって、請求項1から16までの少なくとも1項記載のプロセスチャンバハウジング(1)を有していることを特徴とする、付加製造装置。
【請求項18】
前記プロセスチャンバ(5)は、少なくとも1つのレーザービーム進入窓を有していて、
前記プロセスチャンバ(5)の外側で前記少なくとも1つの窓の前方に、支持体(8)の上面における粉末床に少なくとも1つのレーザービームを放射するようにそれぞれ構成された少なくとも2つのレーザー源がある、
請求項17記載の付加製造装置。
【請求項19】
粉末床の層の少なくとも一部を溶融結合するための方法であって、少なくとも:
粉末床の第1の位置に、第1のビーム源から少なくとも第1のビームを放射し、前記粉末床の第2の位置に、第2のビーム源から少なくとも第2のビームを放射するステップであって、前記第1の位置と前記第2の位置とは異なっており、これにより第1の煙柱と第2の煙柱とがそれぞれ生成されるステップ、
前記粉末床に対して平行な成分を含む方向を有する不活性ガス流を生成することにより、前記第1の煙柱と前記第2の煙柱とを水平方向に向かって傾けるステップ、
を含む方法において、
前記第2の位置の少なくとも一部は、前記第1の煙柱の下方に位置するように選択され、下方とは、前記第1の煙柱が、前記第2のビーム源と前記第2の位置の前記一部との間にあることを表しており、かつ/または前記不活性ガス流の密度は、通常の状態でかつ/または層の上方20mmの距離を置いた状態で、1.4kg/m
3以下であること
を特徴とする、方法。
【請求項20】
前記方法はさらに、
前記第1の位置のセットと前記第2の位置のセットとの間の距離は、100mm、70mm、40mm、30mm、20mm、および10mmのうちの少なくとも1つの距離未満の距離を有していること;および/または
第1の位置と第2の位置との間の距離が、100mm、70mm、40mm、30mm、20mm、10mmのうちの少なくとも1つの距離未満であり、前記第1のビームと前記第2のビームとが前記第1の位置と前記第2の位置とに放射される瞬間の間の時間的な間隔は、前記第1のビームまたは前記第2のビームとが前記層上に放射される最大の期間の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、および80%のうちの少なくとも1つの期間未満であること
を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
生成された前記不活性ガス流は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%のHeのうちの少なくとも1つのうちの少なくとも1つを含み、これらのパーセンテージは、ガスの総量に対するHeおよび/またはNeのmol量に関する、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
前記生成された不活性ガス流は、25℃、40℃、60℃、80℃、100℃、150℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃のうちの少なくとも1つの温度以上の温度を有する、請求項19から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
粉末床の層の少なくとも一部を溶融結合するための方法であって、少なくとも:
粉末床の第1の位置に、第1のビーム源から少なくとも第1のビームを放射し、前記粉末床の第2の位置に、好ましくは、第2のビーム源から少なくとも第2のビームを放射するステップであって、前記第1の位置と前記第2の位置とは異なっており、これにより第1の煙柱と任意選択的に第2の煙柱とがそれぞれ生成されるステップ、
前記粉末床に対して平行な成分を含む方向を有する不活性ガス流を生成することにより、前記第1の煙柱と前記第2の煙柱とを水平方向に向かって傾けるステップ、
除去された不活性ガス混合物の少なくとも一部を、プロセスチャンバの不活性ガス出口(7,257)を通して不活性ガス入口(6,256,266)へと供給するステップ、
前記プロセスチャンバから除去される、または前記プロセスチャンバ内にある前記不活性ガス混合物内のN
2、He、Ne、Ar、KrおよびXeのうちの少なくとも1つの濃度および/または分圧を表す測定値を測定するステップ、
前記測定値を、前記不活性ガス混合物内のN
2、He、Ne、Ar、KrおよびXeのうちの少なくとも1つの濃度および/または分圧のための下限値および/または上限値と比較するステップ、
を含んでおり、
前記比較が、前記測定値が下限値未満であることを示す場合には、前記方法は、対応する成分を、前記不活性ガス混合物に加え、この間に、前記不活性ガス混合物の少なくとも1つの他の成分は、前記不活性ガス混合物に加えないまたは相対的に僅かにしか加えないステップをさらに含み、かつ/または
前記比較が、前記測定値が上限値を超えていることを示す場合には、前記方法は、前記上限値を超える測定値を有する前記成分とは異なる少なくとも1つの成分を、前記不活性ガス混合物に加え、この間に、前記上限値を超える測定値を有する前記成分は前記不活性ガス混合物に加えないまたは相対的に僅かにしか加えないステップをさらに含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末床溶融結合による付加製造に関する。特に、本発明は、付加製造装置用のプロセスチャンバハウジングに関する。プロセスチャンバハウジングは、プロセスチャンバの容積を共に取り囲む底面、天井、および側壁を備えたプロセスチャンバを有している。側壁のうち、例えば前側壁における不活性ガス入口により、プロセスチャンバ内に不活性ガスを供給することができ、側壁のうち例えば後側壁における不活性ガス出口は、プロセスチャンバから不活性ガスを放出するために設けられている。
【0002】
関連技術の説明
付加製造は、3次元的なワークピースを製造することができるますます重要となっている方法である。様々な付加製造があるが、本明細書では、粒子のいくつかを互いに付着させるために、例えば粉末粒子床の上面における粉末粒子を選択的に加熱することにより粉末粒子を結合させるための方法および装置に焦点をあてる。粉末粒子は、焼結、溶融結合、および/または溶接(以下、まとめて、「溶融結合」)により互いに付着させられる。これらのプロセスのための熱は、典型的に、例えば電子ビームまたはレーザービームによる集束された放射によって供給される。これらのビームは、粉末床の上層の部分を選択的に加熱し、これにより、上層の粒子を、先に形成された層の粒子に付着させる。このプロセスは、一般的に、粉末床溶融結合プロセス、または単に粉末溶融結合プロセスと呼ばれる。本明細書では、異なる種類の放射を区別せず、単に「ビーム」と呼ぶ。
【0003】
粉末床溶融結合のための近年の装置は、プロセスチャンバを備えたハウジングを有している。プロセスチャンバは、可動な支持体を収容するための支持体開口を有している。最初に、薄い粉末層が、支持体に塗布される。これは主として、リコータによって行われる(例えば、いくつかを挙げるならば、国際公開第2018/156264号、国際公開第2017/143145号、欧州特許出願公開第1234625号明細書、および独国特許発明第102006056422号明細書参照)。層がビーム処理されると、後続の粉末層が塗布され、次いで、この粉末層が再び選択的に溶融結合される。このプロセスは、ワークピースの付加製造が完了するまで繰り返される。例えば研削、切削、フライス削りなどの、ワークピースのさらなる加工がなお必要な場合もある。
【0004】
例えば欧州特許第3321003号明細書により教示されたように、プロセスチャンバには、有利には不活性ガスが充填される。付加製造プロセス中、不活性ガスは、ガス入口から底面の上方を通って、ひいては支持体上の粉末の上層の上方を通ってガス出口へと流れる。欧州特許第3321003号明細書は、不活性ガスの実質的に層状の流れを形成し、これにより、溶融結合プロセスのヒューム、煙、またはその他の副生成物(以下、まとめて「煙」)を除去することを目指している。この目的のために、入口開口は、多孔質材料から形成されており、これにより、プロセスチャンバを通る不活性ガスの実質的に均一な流れが放出される。不活性ガスの選択は、国際公開第2012/3828号、国際公開第2020/064147号、国際公開第2020/064148号、または国際公開第2020/126086号において説明されており、具体的には、酸素濃度が1000ppm(parts per million)未満であるアルゴン(Ar)または窒素(N2)雰囲気が提案されている。高いレーザー走査速度を可能にするために、不活性ガス雰囲気へのヘリウム(He)の添加も提案されている。
【0005】
初期の粉末床溶融結合プロセスには、時間がかかるという問題があり、例えば、複数のビーム源を同時に使用することによって製造時間を短縮し、これにより、一定の付加製造されるワークピースに関連するコストを減じるための多くの試みがあった。このアプローチの難点は、ワークピースの品質を著しく損なうことなく、第1のビームの動作から生じる煙柱が、第2のビーム源と粉末床の対応する部分との間に位置している間は、第2のビームは、粉末床のどの部分も溶融結合しないことにある。このような煙柱は、ビームを変形、吸収および散乱させるように出現し、したがって、他のビームによって粉末床を走査することによって生じる煙柱によって影ができる、粉末床の部分の溶融結合を回避するために、多くのコンセプトが開発されている(例えば、国際公開第2016/075026号または国際公開第2020/178216号参照)。
【0006】
発明の概要
本発明によって解決すべき課題は、粉末床プロセスを改善することである。
【0007】
この課題の解決手段は、独立請求項に記載されている。従属請求項は、本発明のさらなる改良に関する。
【0008】
プロセスチャンバハウジングは、底面、天井、および側壁を備えたプロセスチャンバを有している。底面、天井、および側壁は、プロセスチャンバの容積を共に取り囲む。好ましい実施形態では、側壁のうちの前側壁に、少なくとも1つの不活性ガス入口が設けられていて、プロセスチャンバの容積内に不活性ガスを供給するように構成されている。容積へと供給された不活性ガスのうちの少なくとも一部は、側壁のうちの後側壁における少なくとも1つの不活性ガス出口を介して除去することができ、したがって、不活性ガス出口は、プロセスチャンバから不活性ガスを放出するように構成されている。代替的にまたは付加的に、ガス入口および/またはガス出口は、天井、底面、異なる側壁または同じ側壁に設けられていてよい。ガス入口およびガス出口は、好ましくは、プロセスチャンバの対向する側に配置されていてよい。
【0009】
底面は、開口を有していてよい。開口は、開口壁によって画定されていてよい。好ましくは、粉末床を、したがって、選択的粉末床溶融結合により製造される3次元的(3D)な物体を支持するための垂直方向に可動な支持体が、開口壁の間に位置していてよい。既に明らかなように、支持体は好ましくは、開口内に可動に支持されている。例えば、支持体は、粉末床に新しい粉末層を加える前に、開口内にさらに引き込まれてよい(すなわち、水平な支持面と仮定すると、下降させられてよい)。
【0010】
開口壁は、底面と開口壁との間の移行部によって形成される縁部に対して少なくとも実質的に垂直な方向への移動に限定するリニアベアリングであってよい、かつ/またはリニアベアリングを提供してよい。少なくとも実質的に垂直とは、好ましくは垂直であるが、小さい偏差、例えば、1°、2.5°、5°および/または10°よりも小さい偏差を許容できることを表している。開口壁は、空間、例えば箱または円筒を取り囲んでいてよい。この空間は、粉末床の、既に溶融結合された部分を収容することができる。開口壁は、プロセスチャンバハウジングから取り外すことができるように構成されていてよい。これにより、ワークピースが製造された後、開口壁を空の壁のセットに簡単に交換することができる。
【0011】
好ましくは、不活性ガス入口および不活性ガス出口は、開口の対向する側に配置されていて、互いに向かい合っている。したがって、これにより、(第1の)不活性ガス出口を介して不活性ガスを容積から除去する間に、または言い換えれば、不活性ガス入口から不活性ガス出口への圧力勾配を提供することによって、不活性ガスを(第1の)不活性ガス入口から噴射することにより主流れ方向で主不活性ガス流を提供することが可能になる。この主不活性ガス流は、好ましくは、底面および/または任意選択的な支持体の上向き面に対して少なくとも実質的に平行である。主不活性ガス流は、上向きの成分または下向きの成分を含んでいてもよい。好ましい例では、主不活性ガス流の方向は、底面および/または支持体に対して平行な非消失成分を有している。この非消失成分は、ビームで粉末床を走査する際に生成される煙柱が、垂直に対して傾斜する方向を提供する。
【0012】
好ましい例では、ガス入口は、Heを含む不活性ガスを提供する不活性ガス供給源に接続されている。不活性ガス供給源は、好ましくは、少なくともヘリウム(He)と、他の希ガス(すなわち、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)のうちの少なくとも1つ)および/または窒素(N2)のうちの1つとを含む不活性ガスを供給するように構成されている。不活性ガス供給源は、Heを含む不活性ガスを、不活性ガス供給源からプロセスチャンバの容積内に供給するように構成されている。特に好ましくは、不活性ガス供給源は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%のうちの少なくとも1つのパーセンテージのHeおよび/またはNeを含むガスを供給し、この場合のパーセンテージは、ガスのmol総量に対するHeおよび/またはNeそれぞれのmol量に関する。
【0013】
予期せぬことに、ArまたはN2をHeおよび/またはNeで置き換えることで、第1のビーム源によって放出される第1のビームによって生成される煙が、第2のビーム源のビーム出口と、溶融結合すべき粉末床の部分との間に位置しているときに、第2のビーム源によって放出される第2のビームによって粉末床の部分が溶融結合することができることがわかった。したがって、1つの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの第2のビームが、別のビーム(少なくとも1つの第1のビーム)によって粉末床の別の部分を溶融結合することにより生じる煙柱によって覆われる粉末床の個所を溶融結合するように制御される間に、少なくとも2つのビームを使用して粉末床を溶融結合するステップを含み、この場合、煙柱は、主不活性ガス流によってプロセスチャンバから除去され、この場合、少なくとも20%のHeおよび/またはNeを含み、かつ/または1.4kg/m3、1.2kg/m3、1kg/m3、0.6kg/m3、0.4kg/m3、および0.2kg/m3のうちの少なくとも1つの密度未満の密度を有する不活性ガスにより主不活性ガス流が生成される。密度は、好ましくは、通常の条件(0℃、1013hPa)を基準としているが、プロセスチャンバ内の実際の条件を基準としてもよい。換言すると、少なくとも1つの第2のビーム源は、別のビーム源のビームスポットの下流で動作し、この場合、下流とは、粉末床の上方の主不活性ガス流方向に関する。覆われる、とは、少なくとも1つの第2のビームのビーム路内に煙柱が存在することを表現しようとしたものである。既に言及したように、ビーム源は、好ましくは、レーザービーム源であるが、これに限定されるものではない。本明細書における「レーザービーム」または「レーザービーム源」という用語の使用は、「ビーム」または「ビーム源」の好ましい例として理解されるべきである。作動時、ビーム源は、粉末床上の溶融結合すべき位置を走査するように旋回されてもよい。例えば、粉末床上の前述の位置にレーザービームを投影するために旋回させられるミラーは、このビームが、ミラー自体によって生じるものでないとしてもビーム源としてみなすことができる。このような用途では、粉末床の1つの位置に向かってビームを放射する位置が重要であり、ビームの種類またはビーム発生装置は重要ではない。
【0014】
従来技術のあらゆる教示とは異なり、Arおよび/またはN2の少なくとも一部をHeおよび/またはNeで置き換えることにより、第1のビームによって粉末床の一部を走査することにより生じる煙柱の操作が可能となる。さらに、これらの煙柱内の煙は、別のビームによって生成された煙柱を貫通することによって溶融結合される溶融結合領域の品質に対して比較的低い影響を有することが研究から明らかになった。これらの観察から明らかなように、熱により誘発される煙柱内の密度変化は、レーザービームの歪みをもたらし、これにより、良好に集束されるはずのビームのデフォーカスおよび/またはビームプロファイルの変化および/またはビームプロファイルにわたるビーム強度分布の変化をもたらす。Heおよび/またはNeの熱伝導率の上昇と組み合わせられたHeおよび/またはNeの密度の低下により、不活性ガス流の高温部分と低温部分との間の密度勾配が低くなり、ひいてはデフォーカスの影響が低減される。不活性ガス流中の熱的不均一性に起因するレーザービーム歪みを低減することによる有利な効果は、容積中のガス量を低減することにより、すなわち、周囲圧力よりも低い圧力でプロセスチャンバを作動させることにより、さらに向上させることができる。圧力を著しく低下させることにより、Arおよび/またはN2を不活性ガスとして使用すること(または単に空気を使用すること)、すなわち、Heおよび/またはNeを省くことも可能である。圧力を低下させること(すなわち容積内のガス分子の量を減じること)のさらなる利点は、粉末床に予め堆積された粉末粒子を不活性ガス流によって移動させる(吹き飛ばす)ことなく、不活性ガス流の流速を上げることができることにある。
【0015】
特に好ましくは、不活性ガスは、通常条件(0℃、1013hPa)において、0.15W/m・K、0.1W/m・K、0.05W/m・K、0.025W/m・K、および0.02W/m・Kのうちの少なくとも1つの熱伝導率以上の熱伝導率を有していて、かつ/または、プロセスチャンバ内の条件において、0.15W/m・K、0.1W/m・K、0.05W/m・K、0.025W/m・K、および0.01W/m・Kのうちの少なくとも1つの熱伝導率以上の熱伝導率を有している。
【0016】
好ましい例では、不活性ガス流は、主流れ方向における流速を有していてよく、1013hPaで、開口の0.5cm上方で測定された平均流速は、0.75m/秒よりも高く、好ましくは1m/秒よりも高く、かつ/または4m/秒未満であり、好ましくは3m/秒未満であり、より好ましくは2.5m/秒未満である。これらの境界は、好ましくは、プロセスチャンバの容積内のガス圧力が減少した場合、かつ/またはガスのモル質量が減少した場合に、上昇されてよい。
【0017】
好ましい例では、プロセスチャンバは、少なくとも1つの酸素センサおよび/またはガス密度センサおよび/または、不活性ガスそれぞれの熱伝導率および/または熱容量を表す値を測定するように構成された熱伝導率センサおよび/または熱容量センサを有している。これらのセンサのうちの少なくとも1つは、好ましくは、容積の底面部分に位置している。例えば、これらのセンサのうちの少なくとも1つは、底面上に、かつ/または底面の凹部内に、かつ/または底面の上方5cmの距離未満に、かつ/または支持体上に、かつ/または支持体の下方に、かつ/または開口を取り囲む縁部から10cm、5cm、2.5cm、1cm、0.5cmのうちの少なくとも1つの距離以内に位置していてよい。別の例では、これらのセンサのうちの少なくとも1つは、好ましくは(第1の)不活性ガス出口に、好ましくは(第1の)不活性ガス出口の底面に、かつ/または(第1の)不活性ガス出口を取り囲む縁部から10cm、5cm、2.5cm、1cm、0.5cmのうちの少なくとも1つの距離以内に位置する。これらの例示的な位置のそれぞれは、粉末床の近傍における酸素濃度を測定することを可能にする。He(4u)および/またはNe(10u)が不活性ガスとして使用される場合(通常、uは統一原子質量単位である)、酸素は、分子当たりのより高い質量(16u)を有しているので、容積の底部に蓄積することになる。したがって、潜在的なリークやガス源から発生する不純物を迅速に検出することができる。さらに、この測定は、粉末床のすぐ上の酸素レベルを可能な限り代表するものである。付加的にまたは代替的に、センサのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの不活性ガス出口を少なくとも1つの不活性ガス入口に接続するダクト内に位置していてよい。
【0018】
少なくとも1つの酸素センサおよび/またはガス密度センサおよび/または熱伝導率センサおよび/または熱容量センサが、好ましくは、チャンバを通流する不活性ガス流内に位置している。特に好ましくは、各センサは、不活性ガス流に対して少なくとも実質的に平行に向けられており、この場合、少なくとも実質的に平行とは、平行であることが好ましいが、数度以内(例えば、±30°、±20°、±10°、±5°、±2.5°、±1°または0°以内)の偏差が許容可能であることを表している。
【0019】
少なくとも1つの酸素センサおよび/またはガス密度センサは、好ましくは、プロセスチャンバ制御デバイスに、すなわち、プロセスチャンバの動作を制御するための電子回路および/またはプロセスチャンバを備えた付加製造装置全体に連結されている(以下では単に「制御装置」)。特に、例えば酸素レベルが予め定められた閾値を上回る場合には、制御装置は、例えば不活性ガス出口に接続されている真空ポンプに供給される電力を増大することにより、かつ/または不活性ガス入口の上流のスロットル弁を開放することにより、開口上方の不活性ガス流の流速を高めてよい。さらに、粉末床溶融結合の前に、好ましくは、プロセスチャンバは不活性ガスで満たされる。酸素レベルが予め定められた閾値より低くなると、不活性ガスポンプを使用して不活性ガスを不活性ガス出口から不活性ガス入口に循環させてよく、これにより、不活性ガス流が形成される。
【0020】
好ましい例では、プロセスチャンバは、O2、N2、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnの濃度のうちの少なくとも1つを表す値および/または不活性ガス中のこれらのガスのうちの少なくとも2種のガスの比を表す値を測定するように構成されているガス成分濃度センサを有していてよい。ガス成分センサは、酸素センサについて上述した位置に位置していてよい、またはその位置にガス入口を有していてよい。上述したセンサは、ガス成分濃度センサの例と考えることができる。換言すると、ガス成分濃度センサは、酸素センサおよび/またはガス密度センサおよび/または熱伝導率センサおよび/または熱容量センサおよび/またはガスクロマトグラフおよび/またはスペクトロメータおよび/またはガス分析計、特にHe分析計のうちの少なくとも1つであってよく、または少なくとも1つを含んでいてよい。さらに、全圧が既知である場合、O2、N2、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnの分圧値が、これらのガスの濃度のうちの少なくとも1つを表すものと考えられてよいことに留意されたい。したがって、濃度を測定する単純であるが効率的な方法は、例えば半透膜を通る拡散速度により、これらのガスのうちの少なくとも1つのガスの分圧を測定することである。例えば、半透膜がHeのみに対して透過性である場合、膜によって分離される空間の間の所定の差圧で膜を通る拡散速度を使用して、不活性ガス中のHeの分圧を測定することができる。
【0021】
ガス成分濃度センサは、好ましくはデータラインによってプロセスチャンバ制御デバイスに接続されている。したがって、ガス成分濃度センサによって得られた値は、プロセスチャンバ制御デバイスで利用可能であってよい。
【0022】
任意の実施形態において、当該方法は、不活性ガス出口を通して除去された不活性ガスの少なくとも一部を不活性ガス入口からプロセスチャンバへと供給するステップを含んでいてよい。これは、不活性ガスのリサイクルまたは循環とも呼ばれる。
【0023】
したがって、粉末床の少なくとも一部を溶融結合するための方法は、粉末床の上方に生成された不活性ガス流の組成を制御することを含んでいてよい。
【0024】
この方法は、プロセスチャンバ内にある、かつ/または少なくとも1つの不活性ガス出口を介してプロセスチャンバから除去された、かつ/または不活性ガス入口を介してプロセスチャンバへと供給される不活性ガス内のO2、N2、He、Ne、Ar、KrおよびXeのうち少なくとも1つの成分の濃度および/または分圧を検出することにより、粉末上方に生成される不活性ガス流内のO2、N2、He、Ne、Ar、KrおよびXeのうち少なくとも1つの成分の濃度および/または分圧を測定するステップを含んでいてよい。この方法はさらに、不活性ガス内のO2、N2、He、Ne、Ar、KrおよびXeのうち少なくとも1つの成分の濃度および/または分圧を代表する測定値を取得するステップ、ならびにこの測定値を、不活性ガス内のN2、He、Ne、Ar、KrおよびXeのうちの少なくとも1つの各成分の濃度および/または分圧のための下限値および/または上限値と比較するステップを含んでいてよい。O2は不活性ではなく、したがって不活性ガスに含まれるべきでないことに留意されたい。しかしながら、意図しないO2濃度の監視を利用して、不活性ガスの不活性成分の濃度を上昇させることができ、それにより、O2の分圧および濃度を低下させることができ、これは、意図しないO2をプロセスチャンバから、ひいては溶融結合プロセスから効果的に除去するものとしてみなすことができる。
【0025】
前述の比較が、この測定値が下限値未満であることを示す場合には、この方法は、対応する減少した成分を、例えば、不活性ガス出口から不活性ガス入口へと循環してプロセスチャンバを通流する不活性ガス流に加えることにより、プロセスチャンバ内の不活性ガス流に加え、この間に、不活性ガス混合物の少なくとも1つの他の成分は、不活性ガス混合物に加えないまたは相対的に僅かにしか加えないステップを含んでいてよい。この文脈で「相対的に僅かに」とは、減少した成分の量に関するものであり、すなわち少なくとも別の加えられる成分の加えられる量は、減少した成分の加えられる量よりも少ないことを意味する。
【0026】
同様に、前述の比較が、この測定値が上限値を超えていることを示す場合には、この方法は、上限値を超える測定値を有する前述の成分とは別の少なくとも1つの成分を、例えば、不活性ガス出口からダクトを介して不活性ガス入口へと(ひいてはプロセスチャンバ内へと)供給される不活性ガス流に加えることにより、プロセスチャンバ内の不活性ガスにこの別の成分を加え、この間に、上限値を超える測定値を有する前述の成分は加えないまたは相対的に僅かにしか加えないステップを含んでいてよい。上記と同様に、「相対的に僅かに」とは、加えられる少なくとも1つの別の成分の量に関する。換言すると、少なくとも1つの別の成分は、上限値を超える測定値を有する成分よりも多量に加えられる。
【0027】
この方法により、各成分の上限および下限によって規定される通りの所定の組成において不十分であると示された不活性ガスの成分のみを部分的かつ選択的に補充することができるようになる。これは、ワークピースの高品質を維持しながら、作動コストを低く維持する助けとなる。このような方法ステップは、実用目的のために、不活性ガスは、実質的にHeおよび/またはNeと、Arおよび/またはN2との混合物であることが多いという考察に基づいていて、その際、混合物中のHe、Ne、Ar、およびN2の濃度は十分に規定されている。しかしながら、HeおよびNeは、著しく高い速度でプロセスチャンバハウジングのダクト壁および他の画定構造を通って拡散する。したがって、この方法により、不活性ガス中のHeおよび/またはNeの分圧および/またはHeおよび/またはNeの濃度を所定の限界内に維持することができ、一方で、プロセスチャンバからのHeおよび/またはNeが減少した不活性ガスを(高価な)「新しい」不活性ガスによって置換することはない。例えば、Heおよび/またはNeの濃度(および/または分圧)を表す値を測定し、Heおよび/またはNeのそれぞれの下限を下回るHeおよび/またはNeの減少が観察された場合、プロセスチャンバハウジングを通流して循環する不活性ガスに、Heおよび/またはNeのみを添加する。このような手法は、上述したすべての他の不活性ガスにも使用することができ、すなわち、Heおよび/またはNe減少の補正は、単に好ましい例である。その他すべての減少も、減少した成分を、好ましくはそれだけを加えることにより解消することができる。
【0028】
粉末床の上方に生成された不活性ガス流の組成を制御するこれらのステップは、「制御装置」とも称されるプロセスチャンバ制御デバイスによって行われてよい。換言すると、プロセスチャンバ制御デバイスは、上述した方法ステップのいずれかを直接実施するように、または例えばガス成分濃度センサのような対応する構成要素を制御および/またはこれと通信することによって実施するように、構成されていてよい。
【0029】
対応するプロセスチャンバハウジングは、したがって、プロセスチャンバ制御デバイスを有していてよい。プロセスチャンバ制御デバイスは、例えば、データラインおよび/または任意の他のデータ伝送手段を介して、少なくとも1つのガス成分濃度センサに接続されていてよい。このようなガス成分濃度センサは、プロセスチャンバ内に位置していてよい。代替的にまたは付加的に、この(または他の)ガス成分濃度センサは、不活性ガス出口を不活性ガス入口に接続するダクトに位置していてよく、かつ/またはこのダクトに取り付けられていてよく、かつ/またはこのダクトに組み込まれていてよい。
【0030】
プロセスチャンバは、さらに、プロセスチャンバ内の不活性ガスの1つの成分のみまたは限定された数の成分のみを含む不活性ガス成分供給源を備えていてよい。例えば、不活性ガス成分供給源は、不活性ガスが、全部で3種のガスの混合物である場合、Heおよび/またはNeのみを含み、ArもN2も含んでいなくてよい。実際には、不活性ガス成分供給源によって供給されるガス中の、減少した不活性ガス成分の濃度が、不活性ガス中の減少した成分の予め設定されたまたは意図された濃度よりも高ければ十分である。なぜなら、この場合、不活性ガス成分供給源からガス混合物を添加することにより、プロセスチャンバと、不活性ガス出口を不活性ガス入口に接続するダクトとを通って循環する不活性ガス中で減少した成分の濃度が増加するからである。
【0031】
プロセスチャンバは、それぞれ異なる1種の不活性ガス成分を含むかつ/または異なる不活性ガス混合物を含む2つ以上の不活性ガス成分供給源を有していてもよい。
【0032】
通常、「限定された数の成分」とは、(意図された)不活性ガス混合物の少なくとも1つの成分が、不活性ガス成分供給源に含まれていない、または不十分であることを意味する。不活性ガス成分供給源は、少なくとも1つの不活性ガス成分弁を介して不活性ガス入口に、または例えばダクトの分岐部を介して、別個のガス入口に流体接続されていてよい。ダクトを介した流体接続は、プロセスチャンバに供給される不活性ガスの成分の濃度が均一になるので、好ましい。換言すると、プロセスチャンバ内の不活性ガスは、より均一な組成を有する。
【0033】
プロセスチャンバ制御デバイスは、例えば少なくとも1つの制御ラインおよび/または無接触データ接続を介して、不活性ガス成分弁に接続されてよく、これにより、不活性ガス成分弁を開閉することができる。
【0034】
別の好ましい例では、プロセスチャンバは、プロセスチャンバを通る不活性ガス流の少なくとも一部の温度を、25℃、40℃、60℃、80℃、100℃、150℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃のうちの少なくとも1つの温度以上に加熱するように構成されているヒータを備える。より高い温度を使用する場合には、プロセスチャンバハウジングは、好ましくは、熱的に絶縁されている。ガス温度のこのような上昇により、煙柱における温度勾配は減少し、したがって、無視できるほど小さくはないとしても、煙柱のビーム歪みは減じられる。
【0035】
既に上述したように、プロセスチャンバは、好ましくは、プロセスチャンバの内側の圧力を、プロセスチャンバの外側の周囲圧力未満に、かつ/または1000hPa、900hPa、800hPa、700hPa、600hPa、500hPa、400hPa、300hPa、200hPa、100hPaのうちの少なくとも1つの圧力以下に維持するように構成されている圧力制御装置を備える。圧力制御装置は、プロセスチャンバ制御装置に組み込まれていてよく、またはプロセスチャンバ制御装置の一部を形成してよい。別の好ましい例では、プロセスチャンバ内の圧力は、周囲圧力よりも高く、これにより、酸素がプロセスチャンバ内に偶発的に吸い込まれないことを保証している。別の例では、プロセスチャンバは、別のハウジング内に収容されており、プロセスチャンバ内の圧力は、周囲圧力よりも低く、一方で、プロセスチャンバと別のハウジングとの境界によって画定される容積内の圧力は、周囲圧力より高く、この容積内のガスも不活性ガスであり、好ましくはプロセスチャンバ内と同じものである。これにより、プロセスチャンバと別のハウジングとの境界の間の容積に、不活性ガスが充填され、周囲圧力よりも高い圧力を有しているので、酸素が偶発的にプロセスチャンバ内に吸い込まれるリスクを減じると同時に、プロセスチャンバ内の低圧を保証することができる。
【0036】
例えば、不活性ガス出口は、ガスポンプの低圧側入口(例えば、真空ポンプ入口)に、例えば上述したダクトを介して流体連通されていてよく、かつ/または不活性ガス入口は、不活性ガス供給源(例えば、ガスポンプの高圧側ガス出口)に流体連通されていてよく、不活性ガス入口の上流にスロットル弁が配置されていてよい。任意選択的な圧力制御装置は、ガスポンプに供給される電力を増加および/または減少させるように構成されていてよい。さらに、この圧力制御装置は、例えば、アクチュエータへの電力供給により、スロットル弁を開放および/または閉鎖するように構成されていてよい。任意選択的な圧力制御装置は、したがって、不活性ガス流の流速も制御してよい。任意選択的な圧力制御装置は、少なくとも1つの圧力センサおよび/または流速センサに接続されていてよく、圧力センサおよび/または流速センサのうちの少なくとも一方により提供される信号に反応してプロセスチャンバ内の圧力および/または流速を制御してよい。
【0037】
不活性ガスにおける変化は、流速センサおよび/または圧力センサによって提供される信号に影響を与える場合がある。このような影響により、ワークピースの製造中、または2つのワークピースの製造の間に不活性ガスが変化した場合に、センサの再較正が必要となり得る。例えば、熱容量が上昇したかつ/または熱伝導率が上昇した不活性ガスが使用されるならば、流速を測定するための流速計は、再較正を要する場合がある。例えば、不活性ガスの熱伝導率が上昇した場合には、熱線流速計には、より良好な冷却が行われる。したがって、上昇した熱伝導率が考慮されないならば、熱線の抵抗率が低下し、これは、おそらく誤った流速読み取りに直接つながる。ベーン流速計またはカップ型流速計が使用される場合、同様に、不活性ガスの(平均)モル質量および/または密度の変化も、流速センサの再較正を要する場合がある。
【0038】
好ましい例では、プロセスチャンバは、底面、支持体、開口壁、および開口の底面のうちの少なくとも1つに設けられた少なくとも1つの第2のガス出口をさらに備える。第2のガス出口は、空気などのガス(混合物)を、不活性ガス、例えば、Heおよび/またはNeおよび/またはArおよび/またはN2のうちの少なくとも1つにより置き換える場合に使用されてよく、この不活性ガスは、次いで好ましくは、天井における少なくとも1つの第2の不活性ガス入口を介して容積に提供されてよい。高価なHeおよび/またはNeまたはその他の不活性ガスの使用は、これらの各手段によって減じることができる。
【0039】
任意選択的な第2のガス出口は、第2のガス出口制御弁に、好ましくは第2のガス出口を介してプロセスチャンバ内にガスが流れることができないように構成されたチェック弁に接続されていてよい。さらに、第2のガス出口は、チューブ等を介して、第2の出口真空ポンプのガス入口に接続されていてよい。
【0040】
既に述べたように、プロセスチャンバは、好ましくは、支持体の上方に位置していてよい少なくとも1つの(レーザー)ビーム進入窓を備える。特に好ましい例では、プロセスチャンバは、少なくとも1つの不活性ガス噴流入口ノズルをさらに有している。より詳しく後述するように、「噴流」という用語は、このガス流が、不活性ガス流の上方を流れる、言語的に区別可能な第2のガス流であることを表すためだけに使用されている。不活性ガス噴流入口ノズルは、好ましくは、プロセスチャンバの上方部分に位置していて、好ましくは、窓と支持体との間に不活性ガス噴流を供給するように方向付けられている。特に好ましくは、不活性ガス噴流は、窓表面に付着するかつ/または下方に向けられている。これは、不活性ガス噴流入口ノズルをそのように方向付けることにより、例えば窓表面に向かって方向付けることにより、かつ/またはコアンダ効果を利用することにより得られる。
【0041】
好ましくは、不活性ガス噴流入口ノズルの反対側には、少なくとも1つの不活性ガス噴流出口ノズルが位置していてよく、したがって、窓と支持体との間に不活性ガス噴流を供給するように良好に位置決めされている。
【0042】
不活性ガス噴流は、減じられた密度雰囲気内では煙はより高く上昇する傾向があるという効果を相殺する。不活性ガス噴流は、ビーム品質、ひいてはワークピース品質も劣化させるおそれのある、凝縮または昇華した煙による汚染から窓を保護する。したがって、提案による手段により、容積の垂直方向の寸法を適正に保つことができ、これにより、作動コストと設置コストは減じられるが、レーザー源と粉末との間の距離の増加により、ビーム集束における不完全性がより現れるので、ワークピースの品質が下がるため、最後には少なからずワークピースの品質が下がる。
【0043】
例えば、少なくとも1つの不活性ガス噴流入口ノズルは、(第1の)不活性ガス入口に対して平行な向きから角度αjs以内に向けられたノズル出口開口を有していてよく、αjsは、∈Aであって、A={30°、20°、10°、5°、2.5°、1°、0.5°、0°}である。このような手段により、容積内の乱流が減じられ、したがって、容積からの煙除去の効率が上がる。
【0044】
好ましくは、窓に対して相対的な不活性ガス噴流の流速は、開口の上方0.5cmの不活性ガス流の流速の少なくとも1.1、1.25、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、7.5および/または10倍である。したがって、この高められた流速により、底面から天井への流速勾配が提供される。この勾配により、粉末床から不活性ガス出口に向かって粉末を吹き付けることなく、煙を安全に除去することができる。
【0045】
好ましい例では、少なくとも1つの任意選択的な不活性ガス噴流の温度は、少なくとも対応するノズル開口において測定された主不活性ガス流の温度よりも低い。よって、煙中の残留物は、窓に到達する前に凝縮することができ、煙中の残留物は、窓上に凝縮しないか、または少なくとも殆ど凝縮しない。
【0046】
別の例では、少なくとも1つの任意選択的な不活性ガス噴流の温度は、少なくとも対応するノズル開口において測定された、主不活性ガス流の温度よりも高い。これにより、好ましくは粉末床の少なくともほぼ直接上方を流れる主不活性ガス流によって粉末床を効率的に冷却することができる。これは、(第1の)不活性ガス入口の下縁部および/または(第1の)不活性ガス出口の下縁部を、支持体開口の縁部の高さにかつ/または底面の高さにまたはこれらの高さの僅かに上方に位置決めすることにより得られる。僅かに上方とは、対応する基準高さよりも上方0.5cm、1cm、1.5cm、2cmおよび/または2.5cmのうちの少なくとも1つの高さ以内を意味する。さらに、(第1の)不活性ガス入口から(第1の)不活性ガス出口への主(第1の)不活性ガス流の温度は、好ましくは、周囲温度未満であり、例えば、23℃、20℃、18℃、10℃、0℃、-5℃、-10℃、-20℃のうちの少なくとも1つの温度以下である。温度が低いほど、冷却、すなわち粉末床および/またはワークピースから主不活性ガス流への熱伝達が良好である。不活性ガス噴流の温度は、好ましくは周囲温度以上であってよく、例えば、25℃、40℃、60℃、80℃、100℃、150℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃のうちの少なくとも1つの温度以上であってよい。粉末床の近傍で低下した温度を有することと上方で上昇した温度を有することとのこのような特に好ましい組み合わせにより、良好な冷却および低いビーム歪みの両方が提供される。
【0047】
さらに、主不活性ガス流または主不活性ガスの流れの垂直方向の厚さが、主不活性ガス流の上方の不活性ガス噴流の垂直方向の厚さよりも著しく小さいならば好ましい。各流れの垂直方向の厚さは、例えば、各入口開口の垂直方向の寸法により調整することができる。したがって、不活性ガス噴流入口の垂直方向の寸法d2は、好ましくは、(第1の)不活性ガス入口の垂直方向の寸法d1のx倍以上であり、この場合、x∈{1.5、2、2.5、5、10、15}であり、すなわちx・d1≦d2である。
【0048】
明らかなように、不活性ガス入口ノズルから不活性ガス出口ノズルへの主不活性ガス流と、不活性ガス噴流とは両方とも「不活性ガス流」であり、主不活性ガス流および不活性ガス噴流という用語は、これらを言語的に区別できるようにするためだけに使用される。代替的に、第1のガス流および第2のガス流という用語を使用することもできるが、最初に提案した用語の方がより鮮明であると考える。明らかなように、好ましい例では、第2の不活性ガス流(すなわち、不活性ガス噴流)は、第1の(主)不活性ガス流よりも高い流速を容積全体にわたって有している。第2の不活性ガス流の流量は、第1の(=主)不活性ガス流よりも高くてよい。したがって「主」という言葉は、他の不活性ガス流と比較された単位時間当たりに流れるガスの量に関して何の関連もない。
【0049】
本発明による付加製造装置は、もちろん、上述した特徴のうち少なくとも1つを有するプロセスチャンバを含むことを特徴としてよい。特に、付加製造装置は、1つのレーザービーム進入窓と、プロセスチャンバの外側で少なくとも1つの窓の前方に、支持体の上面における粉末床に少なくとも1つの(レーザー)ビームを放射するようにそれぞれ構成された少なくとも2つの(レーザー)ビーム源とを有していてよい。窓は、(レーザー)ビーム源によって少なくとも1つの窓を通して支持体へと放射されるビームに対して少なくとも実質的に透過性であることは言うまでもない。好ましい例では、付加製造装置は、第1の(レーザー)ビーム源の動作により生成される煙柱の下方にある粉末床の表面を走査するように構成されている。このような手段は、例えば、製造中のワークピースに対する熱応力を最適にすることにより、ワークピース品質を向上させることもできる。
【0050】
図面の説明
以下では、図面に関連する実施形態の複数の例に基づいて、一般的な発明の概念を制限することなく、例として発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】付加製造装置の例示的なプロセスチャンバを示す図である。
【
図2】付加製造装置の別の例示的なプロセスチャンバを示す図である。
【0052】
図1には、プロセスチャンバ5を有する例示的な付加製造装置1の簡略化された断面図が示されている。プロセスチャンバ5は、側壁11,12,13(第4の側壁は見えない)と、天井10と、底面9とによって取り囲まれた容積51を有する。底面9は、開口壁93を備えた開口94を有している。開口壁93は、可動に支持された昇降可能な支持体8のためのリニアベアリングを提供してよい。支持体8の上面には、任意選択的な粉末床99があってよく、この粉末床内には、部分的に製造されたワークピース4が埋め込まれていてよい。粉末床99とワークピース4とは、一例としてのみ示されているが、付加製造装置1および/またはプロセスチャンバ5は典型的には、粉末床またはワークピースなしで納品される。
【0053】
天井10は、ビーム源80,90によって放射されるビーム81,91に対して透過性の窓101,102を有する。第1のビーム81および第2のビーム91をそれぞれ放射する第1のビーム源80と第2のビーム源90とが示されている。好ましくは、プロセスチャンバ5は、3つ以上のビーム源80,90を有している。窓101,102は、一体であってもよく、したがって、底面における開口94の上方には少なくとも1つの窓が設けられている。
【0054】
前側壁11における(第1の)不活性ガス入口6および後側壁12における(第1の)不活性ガス出口7は、底面9における開口94を横切る、すなわち主不活性ガス流れ方向2における、主不活性ガス流20を供給することを可能にする。見て取れるように、主不活性ガス流20は、底面9に対して少なくとも実質的に平行(すなわち、±αms(αms∈{30°、20°、10°、5°、2.5°、1°、0.5°、0°})に、したがって支持体8の粉末床表面および粉末床支持面に対して少なくとも実質的に平行に、流れることができる。図示した例では、主不活性ガス流方向2は、小さな下向きの成分を有している。好ましくは、不活性ガスは、少なくとも20%のヘリウム(He)を含み、かつ/または1.4kg/m3未満の密度、および/またはガスの露点温度を上回る温度を有する。一例では、圧力は、周囲圧力以上であってよい。別の例では、圧力は、周囲圧力以下であってよい。
【0055】
主不活性ガス入口6の上方には、少なくとも1つの任意選択的な第2の不活性ガス入口256と、少なくとも1つの任意選択的な第3の不活性ガス入口266とがある。主不活性ガス出口7の上方には、少なくとも1つの任意選択的な第2の不活性ガス出口257がある。これらは、それぞれ、不活性ガス噴流入口または不活性ガス噴流出口と呼ぶこともできる。
【0056】
作動中、第2の不活性ガス流が、主(第1の)不活性ガス流の上方で、少なくとも1つの任意選択的な第2の不活性ガス入口256から、少なくとも1つの任意選択的な第2の不活性ガス出口257へと流れてよい。矢印25で示されているように、任意選択的な第2の不活性ガス流25の時間あたりの体積、すなわち、流量および/または流速は、好ましくは、それぞれ主不活性ガス流20の流量および/または流速よりも高い。さらに、第2の不活性ガス流方向252の流れ方向の下向きの成分は、好ましくは、主不活性ガス流方向2の下向きの成分よりも大きい。第2の不活性ガス流25の温度は、好ましくは、主不活性ガス流20の温度よりも低い。
【0057】
任意選択的な第3の不活性ガス入口266は、好ましくは、天井10の少なくとも1つの窓101,102の近傍(10cm、5cm、2.5cmおよび/または1cm以内)に配置されていて、少なくとも1つの窓101,102の表面に第3の不活性ガス流を付着させるように配置されていて、これにより、少なくとも1つの窓101,102を凝縮物のない状態に保つために貢献している。好ましくは、第3の不活性ガス入口を出た不活性ガスの温度は、少なくとも1つの第2の不活性ガス入口256から容積51に進入する第2の不活性ガスの温度よりも高い。
【0058】
図示されたように、各ビーム81,91は、粉末床99の異なる位置に向けられ、溶融結合プロセスは、第1および第2の煙柱82,92を発生させる。図示されたように、第2のビーム91は、第1のビーム81と粉末床99との相互作用により生じる第1の煙柱82を通過する。
【0059】
不活性ガスは、少なくとも1つのポンプ32によって除去され、すなわち、第1および第2の不活性ガス出口7,257は、ガスポンプ32の低圧入口と流体連通しており、次いで、ポンプは、ダクト33を介して不活性ガス入口6,256,266のうちの少なくとも1つに不活性ガスを供給する。異なる不活性ガス流の温度は、好ましくは、任意選択的な間接熱交換器201,251,261によって制御することができる。
【0060】
ビーム源80,90、センサ類30、ポンプ32、弁38などには、データラインおよび/または電力ラインによって、制御装置3が接続されてよい。接続例は、破線または点線の矢印によって示されている。
【0061】
図2は、プロセスチャンバ5を有する例示的な付加製造装置1の簡略化された別の断面図を示している。
図1の説明を、
図2に関しても読むことができる。ここでは、相違点のみを説明する。
図1と同様に、プロセスチャンバ5の不活性ガス出口7および257のうちの少なくとも1つは、ダクト33を介して不活性ガス入口6,256,266のうちの少なくとも1つと接続されていてよい。ポンプ32は、不活性ガス出口6,25のうちの少なくとも1つと流体連通しているポンプ入口を有していてよく、ポンプ出口は、ダクト33を介して不活性ガス入口6,256,266のうちの少なくとも1つと流体連通していてよい。ダクトは、ガス成分センサ30を有していてよい。ガス成分センサ30によって測定された値は、その位置に関係なく、いくつかのデータラインまたは任意の他の通信手段によって制御装置3に供給されてよい。制御装置は、プロセスチャンバ制御デバイス3と称されてもよい。
【0062】
プロセスチャンバハウジングは、好ましくは、これらのガス成分センサ30のうちの少なくとも1つを有している。
図2では、例示目的のために好ましい位置で、2つのガス成分センサ30が示されている。他の個数のガス成分センサを使用することもできる。
【0063】
プロセスチャンバハウジングは、さらに、少なくとも1つの不活性ガス成分供給源34を有していてよい。一例では、不活性ガス成分供給源34は、例えばHeおよび/またはNeまたはその他の不活性ガスまたは不活性ガス混合物で充填されたまたは充填されるように構成されたタンクを有していてよい。
【0064】
不活性ガス成分供給源34は、不活性ガス成分弁36を介して不活性ガス入口6,256,266のうちの少なくとも1つと流体接続されている。
【0065】
制御装置3は、好ましくは、少なくとも1つの測定値に基づいて、プロセスチャンバ5および/またはダクト33における不活性ガス内のHeおよびNeのうちの少なくとも一方の濃度および/または分圧を監視するように構成されている。このような測定値は、少なくとも1つの不活性ガス成分センサ30のうちの少なくとも1つから引き出すことができる。プロセスチャンバ5における不活性ガス内のHeおよびNeの濃度が、予め規定された下限値を下回って減少した場合、制御装置は、不活性ガス成分弁36を、例えば所定の期間にわたって開放するように構成されていてよい。この期間は、下限値と測定値との間の差に基づき計算されてよい。不活性ガス成分弁36を開放することにより、プロセスチャンバに供給されている不活性ガスに、減少した不活性ガス成分を供給することができる。これにより、減少した成分、この例では、Heおよび/またはNeの濃度を補正することができる。同様に、プロセスチャンバ5および/またはダクトにおける不活性ガスの別の成分の測定された濃度が、上限値を上回っていた場合、制御装置は、不活性ガス成分弁36を開放して、これにより、上限値を上回った濃度を有する成分の濃度を減じることができる。プロセスチャンバは、異なる不活性ガスが充填される複数の不活性ガス成分供給源34と、対応する不活性ガス成分弁36とを有していてよく、これにより、減少した不活性ガス成分を選択的に補充することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 付加製造装置
2 主不活性ガス流方向
3 制御装置/プロセスチャンバ制御デバイス
4 ワークピース/原料の接着部
5 プロセスチャンバ
6 ガス入口
7 ガス出口
8 支持体
9 底面
10 天井
101 窓
102 窓
11 第1の側壁
12 第2の側壁
13 第3の側壁
20 主不活性ガス流
201 熱交換器
25 第2の不活性ガス流(不活性ガス噴流)
251 熱交換器
252 第2の不活性ガス流の方向
256 第2の不活性ガス入口
257 第2の不活性ガス出口
26 第3の不活性ガス流
261 熱交換器
266 第3の不活性ガス入口
30 ガス成分センサ、例えば、酸素センサおよび/またはガス密度センサおよび/またはガス成分濃度センサ
32 ポンプ
33 ダクト
34 不活性ガス成分供給源
35 ヒータ
36 不活性ガス成分弁
50 リコータ
80 第1のビーム源
81 第1のビーム/第1のレーザービーム
82 第1の煙柱
90 第2のビーム源
91 第2のビーム/第2のレーザービーム
92 第2の煙柱
93 開口壁
94 支持体8を受容するように構成された、底面9における支持体開口
99 粉末床
【国際調査報告】