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特表2024-518665加齢に伴う疾患を防止および/または処置することにおける使用のためのSIRT6のバリアント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】加齢に伴う疾患を防止および/または処置することにおける使用のためのSIRT6のバリアント
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240423BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240423BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/47
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
A61K31/7088
A61K38/17
A61K48/00
A61K35/76
A61P25/00
A61P25/28
A61P35/00
A61P9/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/12
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/12
A61P19/10
A61P19/02
A61P27/16
A61P43/00 105
C12P21/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515284
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022029213
(87)【国際公開番号】W WO2022241228
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/188,573
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523022295
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ロチェスター
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(71)【出願人】
【識別番号】515314797
【氏名又は名称】アルバート アインシュタイン カレッジ オブ メディシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゴルブノワ,ヴェラ
(72)【発明者】
【氏名】セルアノフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ヨウシン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE06
4B064CE08
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065BD16
4B065BD18
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA02
4C084BA22
4C084CA18
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA341
4C084ZA342
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA421
4C084ZA422
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZA971
4C084ZA972
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC521
4C084ZC522
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA59
4C086ZA70
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC52
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA16
4C087ZA33
4C087ZA34
4C087ZA36
4C087ZA42
4C087ZA59
4C087ZA96
4C087ZA97
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC33
4C087ZC35
4C087ZC52
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA01
4H045GA10
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、配列番号1の配列と少なくとも75%の同一性を有するサーチュイン6(SIRT6)のバリアントをコード化する単離核酸分子に関し、バリアントは、配列番号1の配列に関してN308K置換およびA313S置換を含む、またはそれらからなる群において選択される少なくとも1つの変異を有する。本発明は、個体の加齢、および/または老化、および/または生存期間の調節のための手段を提供する。本発明はさらに、細胞における二本鎖切断の修復のための手段を提供する。最後に本発明は、加齢に伴う疾患の予防および/または処置のための手段も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の配列と少なくとも75%の同一性を有するサーチュイン6(SIRT6)のバリアントをコード化する単離核酸分子であって、前記バリアントが、配列番号1の配列に関して置換N308Kおよび置換A313Sを含む、またはそれらからなる群において選択される少なくとも1つの変異を有する、単離核酸分子。
【請求項2】
前記核酸分子が、配列番号6、配列番号7および配列番号8を含む、またはそれらからなる群において選択される配列の核酸分子である、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の核酸酸分子によりコード化された単離ポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号3および配列番号4を含む、またはそれらからなる群において選択される配列のポリペプチドである、請求項3に記載の単離ポリペプチド。
【請求項5】
請求項1または2に記載の単離核酸分子を含むベクター。
【請求項6】
ウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、エクソソーム関連AAVベクター(exo-AAV)、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターである、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
請求項5または6に記載のベクターを含む懸濁液。
【請求項8】
前記細胞が、好ましくは請求項1もしくは2に記載の単離核酸分子、または請求項5もしくは6に記載のベクターをトランスフェクトされている、請求項3または4に記載のポリペプチドを発現する細胞。
【請求項9】
(i)請求項1もしくは2に記載の単離核酸分子、または請求項3もしくは4に記載の単離ポリペプチド、または請求項5もしくは6に記載のベクターと、(ii)薬学的に許容できる賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項10】
個体、好ましくは哺乳動物個体、より好ましくはヒト個体における、加齢、および/または老化、および/または生存期間の調節における、請求項1もしくは2に記載の単離核酸分子、または請求項3もしくは4に記載の単離ポリペプチド、または請求項5もしくは6に記載のベクターの使用。
【請求項11】
細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞における、二本鎖切断の修復における、請求項1もしくは2に記載の単離核酸分子、または請求項3もしくは4に記載の単離ポリペプチド、または請求項5もしくは6に記載のベクターの使用。
【請求項12】
加齢に伴う疾患の防止および/または処置における使用のための、請求項1もしくは2に記載の単離核酸分子、または請求項3もしくは4に記載の単離ポリペプチド、または請求項5もしくは6に記載のベクター。
【請求項13】
前記個体が、哺乳動物個体、好ましくはヒト個体である、請求項12に記載の使用のための単離核酸分子、または単離ポリペプチド、またはベクター。
【請求項14】
前記加齢に伴う疾患が、早老症、ウェルナー症候群、神経変性疾患、アルツハイマー病、がん、心臓血管疾患、肥満、2型糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、眼障害、白内障、緑内障、骨粗しょう症、血栓障害、関節炎、難聴および卒中を含む、またはそれらからなる群において選択される、請求項12または13に記載の使用のための単離核酸分子、または単離ポリペプチド、またはベクター。
【請求項15】
(i)請求項1もしくは2に記載の単離核酸分子、または請求項3もしくは4に記載の単離ポリペプチド、または請求項4もしくは5に記載のベクターと、(ii)前記単離核酸分子、前記単離ポリペプチド、または前記ベクターを投与するための手段と、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の後援による研究または開発に関する表明。本発明は、米国国立衛生研究所により授与された政府助成金AG056278、AG027237、AG047200によりなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、生存期間、長寿、および加齢に伴う疾患に関する。より詳細には本発明は、加齢の調節のための、および加齢に伴う疾患を処置および/または防止するための、サーチュイン6(SIRT6)のバリアント、およびその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
100歳まで生きることは、強力な遺伝的要素を有し、依然として極めて稀であり、先進国での発生率は、多くとも6000人に1人である。ゲノムワイド関連試験からこれまでのところ、おそらく統計力が全体的に欠如しているために、ヒトの長寿に関連する重大なバイオマーカーとして同定されたのはAPOEのみである。
【0004】
しかし、加齢に伴う疾患と称される数多くの疾患は、個体が高齢になると起こることが多い。
【0005】
そのような加齢に伴う疾患の例としては、例えば心臓血管疾患、卒中、高血圧、がん、2型糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー病および他の認知症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、変形性関節症、骨粗しょう症、白内障、加齢黄斑変性症、難聴が挙げられる。
【0006】
現在、加齢に伴う疾患は、身体がDNA損傷を修復する、およびテロメアの完全性を維持する能力が低下した結果であると考えられている。
【0007】
今日まで、サーチュイン(SIRT)と呼ばれるタンパク質ファミリーは、DNA損傷修復、テロメア完全性、老化、および長寿に関与する様々なメカニズムに関連している。
【0008】
SIRTタンパク質のうち、SIRT6遺伝子によりコード化されるSIRT6は、テロメア伸長に必要となるテロメア逆転写酵素に加え、脱アセチル化ヒストン3リジン9(H3K9)および脱アセチル化ヒストン3リジン56(H3K56)の発現を調節して、テロメア完全性の維持をもたらす。加えて、SIRT6遺伝子は、損傷部位に動員されて、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)―1、Ku70、NBS、およびウェルナー(WRN)ヘリカーゼなどの修復タンパク質を脱アセチル化することを通してDNA修復を促進することが示された。特にSIRT6は、転写調節因子として作用して、クロマチン構造を安定化することにより遺伝子発現を抑制する。
【0009】
さらに、SIRT6は、FOXOおよびp53などの種々のシグナル伝達分子の脱アセチル化を通して細胞老化を調整する。SIRT6は、細胞老化関連の遺伝子発現を修飾することにより、NFκBのRelAサブユニットを調節する。最後に、SIRT6はまた、細胞障害を低減し、それにより早期老化を引き起こす損傷を減少させる。
【0010】
それゆえSIRT6は、加齢に伴う疾患を防止および/または処置するための良好な標的を構成し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
加齢に伴う疾患を防止および/または処置する手段を提供することが、依然として求められている。特に、老化関連の障害、特に早期老化を防止および/または処置することが、求められている。早期老化を含む老化および長寿の短縮に関与するDNA損傷修復を改善することも、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
本発明の第一の態様は、配列番号1の配列と少なくとも75%の同一性を有するサーチュイン6(SIRT6)のバリアントをコード化する単離核酸分子に関し、該バリアントは、配列番号1の配列に関して置換N308Kおよび置換A313Sを含む、またはそれらからなる群において選択される少なくとも1つの変異を有する。
【0013】
幾つかの実施形態において、核酸分子は、配列番号6、配列番号7および配列番号8を含む、またはそれらからなる群において選択される配列の核酸分子である。
【0014】
本発明の別の態様は、本明細書で定義された核酸分子によりコード化された単離ポリペプチドに関係する。
【0015】
特定の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2、配列番号3および配列番号4を含む、またはそれらからなる群において選択される配列のポリペプチドである。
【0016】
本発明のさらなる態様は、本明細書で定義された単離核酸分子を含むベクターに関する。
【0017】
幾つかの実施形態において、ベクターは、ウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、エクソソーム関連AAVベクター(exo-AAV)、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターである。
【0018】
一態様において、本発明は、本明細書で定義されたベクターを含む懸濁液に関する。
【0019】
本発明はまた、本明細書で定義されたポリペプチドを発現する細胞にも関し、該細胞は、好ましくは本明細書で定義された単離核酸分子またはベクターをトランスフェクトされている。
【0020】
本発明の別の態様は、(i)本明細書で定義された単離核酸分子、または単離ポリペプチド、またはベクターと、(ii)薬学的に許容できる賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0021】
本発明は、個体、好ましくは哺乳動物個体、より好ましくはヒト個体において、加齢、および/または老化、および/または生存期間の調節における、本明細書で定義された単離核酸分子、または単離ポリペプチド、またはベクターの使用に関する。
【0022】
本発明のさらなる態様は、細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞の二本鎖切断の修復における、本明細書で定義された単離核酸分子、または単離ポリペプチド、またはベクターの使用に関係する。
【0023】
幾つかの態様において、本発明はまた、加齢に伴う疾患の防止および/または処置における使用のための、本明細書で定義された単離核酸分子、または単離ポリペプチド、またはベクターに関する。
【0024】
特定の実施形態において、個体は、哺乳動物個体、好ましくはヒト個体である。
【0025】
幾つかの態様において、加齢に伴う疾患は、早老症、ウェルナー症候群、神経変性疾患、アルツハイマー病、がん、心臓血管疾患、肥満、2型糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、眼障害、白内障、緑内障、骨粗しょう症、血栓障害、関節炎、難聴および卒中を含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0026】
別の態様において、本発明はまた、(i)本明細書で定義された単離核酸分子、または単離ポリペプチド、またはベクターと、(ii)単離核酸分子、単離ポリペプチド、またはベクターを投与するための手段と、を含むキットにも関する。
【0027】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0028】
数字の前にある場合の「約」は、前記数字の値の±10%を意味する。用語「約」が指す値が具体的に、および好ましくは開示される値そのものでもあることが、理解されなければならない。
【0029】
「含む」は、「含有する」、「包含する(encompass)」および「包含する(include)」を意味すると意図される。幾つかの実施形態において、用語「含む」は、用語「からなる」も包含する。
【0030】
「SIRT6」とも称される「サーチュイン6」は、Entrez遺伝子番号51548のポリペプチドを指すと意図され、非限定的に、NAD依存性タンパク質デアセチラーゼサーチュイン6、調節タンパク質SIR2ホモログ6、SIR2様タンパク質6、SIR2L6、サーチュイン(Silent Mating Type Information Regulation2、S.セレビシエ、ホモログ)6、サーチュイン(Silent Mating Type Information Regulation2ホモログ)6、Sir2関連タンパク質6型、サーチュイン6型およびEC.2.3.1.286に関する。
【0031】
「単離」は、核酸分子またはポリペプチドを作製することを可能にする初期生物学的環境から取り出されたこの核酸分子またはポリペプチドを指す。実際には生物学的環境は、少なくとも1つの細胞、または1種もしくは複数の酵素(複数可)を含む。
【0032】
「ポリヌクレオチド」とも称される「核酸」は、非修飾RNAもしくはDNA、または修飾RNAもしくはDNAであり得る、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であるRNA、一本鎖であり得る、またはより典型的には二本鎖、または一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、RNAもしくはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、1つまたは複数の修飾塩基を含有するDNAまたはRNA、および安定性のため、または他の理由で修飾されたバックボーンを有するDNAまたはRNAも包含する。「修飾」塩基としては、例えば、トリチル化塩基、およびイノシンなどの珍しい塩基が挙げられる。種々の修飾を、DNAおよびRNAに行ってもよく、したがって「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、典型的には自然界に見出されるポリヌクレオチドの化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態に加え、ウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、オリゴヌクレオチドと称されることの多い、相対的に短いポリヌクレオチドを包含する。
【0033】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合または改変ペプチド結合、即ちペプチドアイソステアにより互いに接続された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を指す。「ポリペプチド」は、通常ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと称される短鎖と、一般にはタンパク質と称される長鎖と、の両方を指す。ポリペプチドは、20の遺伝子コード化アミノ酸残基以外のアミノ酸残基を含有してもよい。
【0034】
「加齢に伴う疾患」は、高齢または早期老化の個体と相関し、その有病率が、一般集団で観察される平均有病率を超える生理学的または病理学的状態を指す。加齢に伴う疾患の非限定的例としては、早老症、ウェルナー症候群、神経変性疾患、心臓血管疾患、卒中、高血圧、がん、2型糖尿病、パーキンソン病、認知症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、変形性関節症、骨粗しょう症、白内障、加齢黄斑変性症、難聴、および同様の疾患が挙げられる。
【0035】
「懸濁液」は、本発明による核酸分子、ポリペプチド、またはベクターなどの活性成分が、液体媒体中に浮遊している液体混合物を指す。
【0036】
「処置すること」、「処置」またな「緩和」は、目的が標的病理状態または障害、特に加齢に伴う疾患を防止または緩徐化(減弱)することである、治療的処置と予防的または防止的手段の両方を指す。処置を必要とするものとしては、前記障害を既に有するもの、および障害を発症しやすいもの、または障害が防止されるべきであるもの、が挙げられる。個体が、活性成分、特に本発明による核酸分子、ポリペプチド、またはベクターの治療量を受けた後、加齢に伴う疾患に関連する症状の1つまたは複数の観察可能および/または測定可能な低減または非存在を示す場合;疾病率および死亡率の低減を示す場合、ならびにクオリティオブライフの問題の改善を示す場合、その個体は、加齢に伴う疾患の処置に成功している。疾患において処置および改善の成功を評価するための上記パラメータは、医師または権限を与えられた職員によく知られた日常的手順により即座に測定可能である。
【0037】
「防止すること」は、加齢に伴う疾患、臓器、組織または細胞機能の欠損または非存在に関連する障害または状態の発病の機会、またはその少なくとも1つの有害作用もしくは症状が起こらないようにすること、および/または減少させることを指す。
【0038】
「治療有効量」は、標的に対して重大な負の、または有害な副作用を引き起こすことなく、(1)加齢に伴う疾患、障害もしくは状態の発病を遅延もしくは防止すること;(2)加齢に伴う疾患、障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状の進行、増悪もしくは悪化を緩徐化もしくは停止させること;(3)加齢に伴う疾患、障害もしくは状態の症状の好転をもたらすこと;(4)加齢に伴う疾患、障害もしくは状態の重症度もしくは発生を低減すること;または(5)加齢に伴う疾患、障害もしくは状態を治癒すること、を目標とする活性成分のレベルまたは量を指す。治療有効量は、予防作用または防止作用のために加齢に伴う疾患、障害または状態の発病前に投与されてもよい。あるいはまたは追加として、治療有効量は、治療作用のために、加齢に伴う疾患、障害または状態の発病後に投与されてもよい。一実施形態において、活性成分の治療有効量は、加齢に伴う疾患、障害または状態の少なくとも1つの症状を低減するために有効な量である。
【0039】
「個体」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。一実施形態において、個体は、雄性である。別の実施形態において、個体は、雌性である。一実施形態において、個体は、医療を受けるために待機している、もしくは受けている、または医学的手順の対象であった/対象である/対象になる、またはがんの発症についてモニタリングされている、「患者」、即ち温血動物、より好ましくはヒトであってもよい。一実施形態において、個体は、成体(例えば、18歳を超える対象)である。別の実施形態において、個体は、小児(例えば、18歳未満の対象)である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、アシュケナージ系ユダヤ人(AJ)百寿者におけるゲノム維持(GM)遺伝子内のバリアントのためのスクリーニング戦略を示すスキームである。
図2図2は、精製SIRT6タンパク質の代謝回転速度を示すプロットである。SIRT6バリアントを発現するHEK293細胞に関するSILAC解析。
図3図3は、精製SIRT6タンパク質の熱安定性を示すグラフである(WT:野生型SIRT6ポリペプチド;Cent:N308KおよびA313S変異を有するSIRT6バリアントポリペプチド)。データは、各々がRocおよびIchorの調製物からのSIRT6を用いる2つの技術的反復を含む2つの反復実験を表す。
図4図4A~4Bは、グラフの組合わせである。図4Aは、データを方程式1にフィッティングすることによりFLTシグナルから測定された蛍光寿命τを示す(方法を参照)。2種の異なるSIRT6バイオセンサーのそれぞれが、GFPのみの対照と比較して蛍光寿命の減少を示し、高度に有意なFRETを示している。C末端GFPを有するバイオセンサーと比較して、内部GFPバイオセンサーは、より大きな寿命変化を示す(FRETが大きいほど、距離Rが短く、構造の感度が大きい)。このバイオセンサーのcentSIRT6もまた、試験した。それは、野生型SIRT6(1.75±0.01ns)と比較して寿命τの有意な増加を示す(1.96±0.02ns)。エラーバーは、SEMを示す(n=3~5)。図4Bは、FRET効率Eおよび距離R(オングストロームÅでの)が寿命データから決定され(方法の方程式2および3)、内部GFPバイオセンサーの尺度である距離RがcentSIRT6では有意に3.0±0.4Å大きいことが明らかとなった。
図5図5A~5Bは、グラフの組合わせである。図5Aは、異なる濃度のミリストイル化ペプチドを用いたミカエリス・メンテン反応速度パラメータを示す。図5Bは、異なる濃度のNAD+を用いたミカエリス・メンテン反応速度パラメータを示す。反応を、三重測定で実施した。黒丸:WT;黒四角:Cent。
図6図6は、滴定濃度のNAD+を有するSIRT6バリアントのトリプトファン蛍光曲線を示すグラフである。
図7図7A~7Bは、centSIRT6アレルにおいて低減された活性を有する、H3K9ac(図7A)およびH3K18ac(図7B)残基でのデアセチラーゼ活性を示すプロットの組合わせである(デアセチラーゼ活性は、アセチル化化合物の相対的存在量と反比例する)。対応するアセチル化ヒストン残基で飽和されたデザイナーヒストンを、精製SIRT6および1mM NAD+と共に1時間インキュベートした後、SDS-PAGEゲルにより分解し、アセチル特異的ヒストン抗体で染色した。全ての反応を、n=3で実行し;エラーバーは、s.d.を示す。統計値を、両側スチューデントt検定を用いて計算した。アスタリスクは、p<0.05を示す。
図8図8A~8Bは、SIRT6バリアントのH3K9ac(図8A)およびH3K18ac(図8B)残基での脱アセチル化反応速度を示すプロットの組合わせである。デザイナーヒストンを、精製SIRT6および5mM NAD+と共に1時間インキュベートし、その後、SDS-PAGEにより分解し、アセチル特異的ヒストン抗体によるイムノブロットにより分析した。全ての反応を、n=3で実行し;エラーバーは、s.d.を示す。統計値を、両側スチューデントt検定を用いて計算した。アスタリスクは、p<0.05を示す。
図9図9A~9Bは、HeLa細胞から精製されたヒストンを有する精製SIRT6タンパク質のH3K9ac(図9A)およびH3K18ac(図8B)残基に関するインビトロ脱アセチル化速度を示すプロットの組合わせである。
図10図10は、異なるSIRT6アレルを発現するヒト細胞から精製されたヒストンH3ペプチドの定量的質量分析を示すプロットであり、アセチル化レベルの差が明らかにならなかった。相対的分画は、同じ領域のペプチド定量値全ての合計と比較した、H3K9-17を包含するペプチドの部分を表す。3つの異なる調製物の平均および標準偏差を、プロットする。
図11図11は、ウェスタンブロットにより評価したクマート誘導型SIRT6ヒト線維芽細胞における全細胞ヒストンH3アセチル化レベルを示す写真である。Cu:クマート;PQ:パラコート。等価のSIRT6タンパク質存在量に必要なクマート投与量を、ウェスタンブロットにより決定し、それに応じて各細胞株に投与した。
図12図12は、放射線標識NAD+を用いたSIRT6の自己リボシル化を示すプロットである。組換えSIRT6を、P32標識NAD+と共にインキュベートし、その後、SDS-PAGEで泳動した。シグナルを、PhosphoImagerを用いて測定した。全ての実験を、少なくとも3回繰り返し;エラーバーは、s.d.を示す。有意性を、両側スチューデントt検定により計算した。アスタリスクは、p<0.05を示す。アスタリスクは、HPRT対照に対する有意性を示す。
図13図13は、NAD+の滴定によるSIRT6の自己リボシル化を示すプロットである。mADPr特異性抗体を使用して、リボシル化された野生型SIRT6(黒丸)およびcentSIRT6(黒四角)タンパク質を検出した。プロットを、Kaleidagraphソフトウエアによってミカエリス・メンテン方程式にフィットした。KmNADは、centSIRT6に関して142+29、および野生型SIRT6に関して106+45であり、最大シグナルは、野生型SIRT6と比較してcentSIRT6では約2倍大きかった。
図14図14は、SIRT6バリアントによるPARP1の活性化を示すグラフである。SIRT6タンパク質を、ヒトPARP1タンパク質と共にインキュベートした後、ポリADPr抗体によるイムノブロットにより分析した。PARP1のポリADPr活性は、広範囲の生成物サイズをもたらす。活性を、ポリADPrシグナルを各試料について全レーンで定量することにより評価した。全ての実験を、少なくとも3回繰り返し;エラーバーは、s.d.を示す。有意性を、両側スチューデントt検定により決定した。アスタリスクは、p<0.05を示す。下のアスタリスクは、HPRT対照に対する有意性を示す。上のアスタリスクは、野生型SIRT6に対する有意性を示した。
図15図15は、クマート誘導型SIRT6線維芽細胞におけるLINE1発現のqRT-PCR分析を示すグラフである。プライマーは、活性LINE1レトロトランスポゾンのLiMdA1ファミリーからの5’(ORF1:黒いバー)および3’(ORF2:斜線のバー)の両方のLINE1配列を評価した。両方の領域の評価を行って、コーディング遺伝子における部分的挿入配列からの寄与を軽減した。全ての実験を、少なくとも3回繰り返した。エラーバーは、s.d.を示す。他に断りがなければ、有意性を、両側スチューデントt検定により決定した。アスタリスクは、p<0.05を示す。
図16図16A~16Bは、SIRT6バリアントによるNHEJ(図16A)およびHR(図16B)の刺激を示すグラフの組合わせである。レポーター細胞株に、SIRT6発現プラスミド、I-Sce1プラスミド、およびDsRedトランスフェクション対照をコトランスフェクトした。72時間の回復後に、GFPレポーターの再活性化を、フローサイトメトリーにより測定した。NHEJまたはHRの刺激を、GFP+陽性細胞/DsRed+陽性細胞の比率(radio)として計算した。
図17図17は、非誘導(白色バー)または誘導(黒色バー)条件下でのクマート誘導型SIRT6線維芽細胞における基礎γH2AXフォーカスを示すグラフである。フォーカスを、条件ごとに少なくとも80細胞でスコアづけした。
図18図18は、クマート誘導型SIRT6線維芽細胞におけるDNA修復反応速度を示すプロットである。細胞を、スライド上で成長させ、2Gyガンマ線を照射した後、γH2AXに関して免疫染色した。放射線照射は、細胞がスライド上で75%コンフルエンシーになった時に実行した。細胞を、固定し、フォーカスを、t=照射後0.5時間、2時間、4時間、6時間、および24時間でスコアづけした。フォーカスを、各時点で遺伝子型ごとに少なくとも80個の細胞においてスコアづけした。アスタリスクは、野生型SIRT6からの有意差を示す(p<0.05)。
図19図19A~19Bは、酸化ストレス抵抗性を示すプロットの組合わせである。クマート誘導型SIRT6線維芽細胞を、SIRT6発現に関して誘導し、パラコートに24時間曝露した。抵抗性を、曝露後48時間目のアポトーシス染色により決定した。
図20図20A~20Cは、グラフの組合わせである。図20Aは、SIRT6バリアントでのトランスフェクションの後の接着細胞の数を示している。細胞に、異なるSIRT6アレルをコード化するSIRT6プラスミドをトランスフェクトし、細胞数を、72時間後に計数した。HCA2は、正常なヒト包皮線維芽細胞である。a:対照(CT);b:WT;c:N308K SIRT6バリアント;d:A313S SIRT6バリアント;e:Cent(N308K A313Sバリアント)。アスタリスクは、野生型SIRT6からの有意差を示す(p<0.05)。図20B~20Cは、トランスフェクションの48時間後のHT1080(図20B)およびHeLa(図20C)がん細胞株のアポトーシス染色を示している。細胞を、アネキシンV/PIで染色し、フローサイトメトリーにより分析した。有意性を、二元配置分散分析により決定した。全ての実験を、少なくとも3回繰り返した。エラーバーは、s.d.を表す。統計値は、他に断りがなければ、両側スチューデントt検定により決定された。アスタリスクは、p<0.05を示す。
図21図21は、野生型(WT)またはcentSIRT6(Cent)アレルを発現するクマート誘導型線維芽細胞からの溶解物の、SIRT6、LMNA、およびmADPrに対する抗体による免疫沈降(IP)実験を示す写真である。SIRT6発現を、IPの48時間前に誘導した。IP実験を、3回繰り返した。IPの代表的な1セットを示す。
図22図22は、SIRT6 IPの後のLMNAに対する抗体によるウェスタンブロットを示すグラフであり、centSIRT6(Cent)は、野生型SIRT6(WT)と比較して増強されたLMNAとの相互作用を示す。図21に示されたIP実験の定量。
図23図23は、クマート誘導型SIRT6線維芽細胞からのLMNA IPの後のSIRT6への抗体でのウェスタンブロットを示すグラフであり、LMNAは、野生型(WT)と比較して増強された、centSIRT6(Cent)との相互作用を示す。図21に示されたIP実験の定量。
図24図24は、図21に示されたIP実験の定量を示すグラフである。クマート誘導型SIRT6線維芽細胞からのSIRT6 IPの後のmADPr残基に対する抗体によるウェスタンブロットは、centSIRT6が増強されたmADPrを呈することが示す。
図25図25は、図21に示されたIP実験の定量を示すグラフである。クマート誘導型SIRT6線維芽細胞からの抽出物を用いたmADPr抗体によるIPの後のLMNAに対する抗体によるウェスタンブロットは、LMNAが野生型(WT)と比較してcentSIRT6(Cent)を発現する細胞において増強されたmADPrシグナルを呈することを示す。
図26図26は、SIRT6およびLMNAのタンパク質-タンパク質相互作用プロファイルを示すスキームである。SIRT6およびLMNAは、暗灰色で示し、2つの対立する相互作用ノードの中の中心点として強調する。第三のノード(上の中央)は、SIRT6およびLMNAにより共有される相互作用パートナーを示す。centSIRT6アレルによりその相互作用が増強されたタンパク質を、淡灰色で示す。野生型およびcentSIRT6アレルと等しく相互作用したタンパク質は、無着色である。H15は、centSIRT6との相互作用の増加と、centSIRT6アレルの存在下でのLMNAとの相互作用の減少を示したため、特別な例である。過去の報告でリボシル化されることが知られるタンパク質を、六角形で示す。
図27図27A~27Bは、ヒストグラムの組合わせである。図27Aは、クマート誘導型テロメラーゼ不死化HCA2ヒト線維芽細胞株におけるSIRT6発現を示す。SIRT6アレルを、PiggyBac Transposon Vector Systemを用いてSIRT6ノックアウトHCA2細胞のゲノムの中に組み込んだ。異なる投与量のクマートおよび得られたSIRT6存在量を使用して、各細胞株の均等なSIRT6発現を実現するのに必要な用量を決定した。細胞を、計数および総タンパク質により正規化した。クマート誘導型SIRT6線維芽細胞を利用するその後の実験を、これらのデータを用いてSIRT6存在量に関して制御した。各細胞株について、枠は、等価の発現のための対応するクマート投与量を示す(WT=60μg/ml、N308K=30μg/ml、A313S=30μg/ml、およびCent=7.5μg/ml)。これらの濃度を、これらの細胞による実験で用いた。図27Bは、クマートの標準化投与量を利用したSIRT6のqRT-PCR発現分析を示す(投与量は、図27Aの枠に対応する)。
図28図28は、ビオチン標識NAD+を用いたSIRT6の自己リボシル化を示すヒストグラムである。組換えSIRT6を、ビオチン残基とコンジュゲートしたNAD+と共にインキュベートし、その後、SDS-PAGEにおいて泳動させた。各アレルを、0時間の時点と比較して評価し、SIRT6総タンパク質負荷対照に対して正規化した。
図29】29A~29Fは、CRISPRヒトMSC細胞株の分析を示す写真、グラフおよびヒストグラムの組合せである。図29Aおよび29Bは、野生型およびcentSIRT6(「Cent#1」および「Cent#2」)hMSCにおけるDNA二本鎖修復効率を示す。DSB修復レポーター構築物を、hMSCに組み込んだ。72時間の回復後に、GFPレポーターの再活性化を、フローサイトメトリーにより測定した。NHEJまたはHRの刺激を、GFP+陽性細胞/DsRed+陽性細胞の比率(radio)として計算した。図29Cは、MMS処置された野生型およびcentSIRT6(「Cent」)hMSCにおける細胞生存率を示す。hMSCを、MMSによって48時間処置し、細胞生存率を、MTSアッセイにより評価した。データを、対照群(0mM)に対して正規化した。n=6。図29Dは、MMS処置を行った野生型およびcentSIRT6(「Cent」)hMSCにおける53BP1の免疫蛍光染色を示す。MMS(0.25mM)処置を行った、または行わない野生型およびcentSIRT6 hMSCの核における53BP1フォーカスの数を、定量した。10の画像からの600を超える核を、スコアづけしたされた。図29Eは、野生型およびcentSIRT6(「Cent#1」および「Cent#2」)hMSC(P2)におけるSIRT6発現のqRT-PCR分析を示す。データを、アクチンに対して正規化し、平均±SEMとして表し、NSは、有意でないことを表す。図29Fは、この定量を示す。エラーバーは、s.d.を表す。有意性を、両側スチューデントt検定により決定した。アスタリスクは、p<0.05を示す。
図30図30A~30Cは、ヒトウェルナー症候群不死化線維芽細胞におけるSIRT6(野生型、SIRT6 N308KまたはcentSIRT6(「Cent」))の過剰発現を示す写真およびヒストグラムの組合わせである。図30Aは、24時間、48時間および72時間のHoechst蛍光染色を利用した同じ細胞の増殖アッセイを示す。データを、平均+SEMとして示す。図30Bは、トランスフェクトされていない対照細胞と比較した場合の、トランスフェクトされた細胞全てで有意差を示したテロメア長アッセイを示す(=対照と比較して)。図30Cは、テロメラーゼ活性アッセイが、トランスフェクトされていない対照細胞と比較した場合にcentSIRT6群(「Cent」)における有意な低下を同定したことを示す。
図31図31A~31Bは、SIRT6過剰発現(野生型、SIRT6 N308KまたはcentSIRT6(「Cent」))がLVトランスフェクションの12日後、およびハイグロマイシン選択の3日後に、肝細胞がん細胞株において細胞死を誘導することを示す写真およびヒストグラムの組合わせである。図31Aは、ヒト肝細胞がん(HCC)細胞において、SIRT6 WT/SIRT6 N308K/centSIRT6(「Cent」)過剰発現が、致死性であり、SIRT6 N308K/centSIRT6(「Cent」)ではより大きな影響が観察されたことを示す。図31Bは、図31Aに例示された細胞生存率の定量を表す。
図32図32は、SIRT6過剰発現(野生型、SIRT6 N308KまたはcentSIRT6(「Cent」))が、3T3-L1脂肪前駆細胞の分化を増加させることを示すグラフである(免疫蛍光の定量)。
図33図33A~33Eは、肝星細胞(LX2)におけるSIRT6過剰発現(野生型、SIRT6 N308KまたはcentSIRT6(「Cent」))の影響を示す写真およびヒストグラムの組合せである。図33Aは、SIRT6(WTまたは変異体)のトランスフェクションの24時間後のLX2細胞の生存率を示す。図33B~33Eは、ビメンチン(図33B)、TIMP1(図33C)、COL1A1(図33D)およびαSMA(図33E)についての24hのTGF-β 20ng処置後のSIRT6を過剰発現した、または過剰発現していないLX2細胞における遺伝子発現(mRNA)を示す(N=4;=各対照と比較してp<0.05)。
図34図34A~34Cは、不死化ヒト肝細胞(IHH)およびヒト肝星細胞(LX2)からから作製されたスフェロイドでのSIRT6過剰発現(WT、SIRT6 N308K、およびcentSIRT6(「Cent」)の影響を示すヒストグラムの組合わせである。スフェロイドは、IHH細胞および全細胞塊の5%のLX2から形成される。図34Aは、centSIRT6(「Cent」)を過剰発現する、または過剰発現しないIHH-LX2スフェロイドにおけるコラーゲンIの定量を示す(免疫蛍光の定量)。図34B~34Cは、遊離脂肪酸(FFA)の非存在下(図34B)、またはFFAの存在下(図34C)、のどちらかでのαSMA、COL1A1、TIMP1、ビメンチンおよびMMP2に関してGAPDHと比較したIHH-LX2スフェロイド遺伝子発現を示す(各対照に対比してp<0.05;** p<0.01;*** p<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な記載
本発明は、本明細書において、アシュケナージ系ユダヤ人(AJ)百寿者のコホートのゲノムに豊富に存在する希少な長寿遺伝子バリアントを直接同定するための代替の候補機能関連アプローチを使用した。
【0042】
加齢の駆動因子であるDNA損傷の過去の証拠に基づき、本発明者らは、496人のAJ百寿者および572人の対照において、主要な長寿保証システムであるゲノム維持(GM)に関与する301の遺伝子の標的化シーケンシングを実施した。
【0043】
百寿者のゲノムに豊富に存在する名目上有意なミスセンス遺伝子バリアントを含有する10種のGM遺伝子のうち、SIRT6、つまりデアシラーゼおよびモノADPリボシルトランスフェラーゼ(mADPr)酵素-6は、モデル生物におけるDNA二本鎖切断(DSB)修復および長寿の両方に関与した。
【0044】
本発明者らは、さらなる機能分析のために同じアレルにおける2つの遺伝的に連鎖するバリアント(N308KおよびA313S)を選択した。このSIRT6百寿者アレル(centSIRT6)の特徴づけから、SIRT6百寿者アレルが野生型アレルと比較してLINE1レトロトランスポゾンのより強力な抑制因子であり、DNA DSB修復の刺激の増強、およびよりロバストながん細胞殺滅を付与することが実証された。
【0045】
驚くべきことに、centSIRT6は、野生型と比較してより弱いデアセチラーゼ活性を呈した。反対に、そのmADPr活性は、強力に増強された。FRETに基づく分析から、centSIRT6がよりオープンなコンフォメーションを有することが実証された。centSIRT6は、ラミンA/C(LMNA)とより強い相互作用を示し、これはLMNAの増強されたリボシル化と相関した。
【0046】
本発明は、配列番号1の配列と少なくとも75%の同一性を有するサーチュイン6(SIRT6)のバリアントをコード化する単離核酸分子に関し、該バリアントは、配列番号1の配列に関してN308K置換およびA313S置換およびA313S置換を含む、またはそれらからなる群において選択される少なくとも1つの変異を有する。
【0047】
本明細書で用いられる表現「少なくとも75%の同一性」は、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%および100%の同一性を包含する。
【0048】
2つのポリペプチドの同一性のレベルは、最先端技術で利用可能な公知のアルゴリズムの任意の1つを用いることにより実施され得る。例示として、アミノ酸同一性のパーセンテージを、CLUSTAL Wソフトウエア(バージョン1.83)を用いて決定してもよく、そのパラメータは、以下のとおり設定される:
- スロー/正確なアライメントでは:(1)ギャップ開始ペナルティ:10.00;(2)ギャップ延長ペナルティ:0.1;(3)タンパク質重み行列;BLOSUM;
- ファスト/近似アライメントでは:(4)ギャップペナルティ:3;(5)Kタプル(ワード)サイズ:1;(6)最適な対角線の数:5;(7)ウィンドウのサイズ:5;(8)評価方法:パーセント。
【0049】
特定の実施形態において、単離核酸分子は、配列番号1と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%の同一性を有するSIRT6のバリアントをコード化し、該バリアントは、配列番号1の配列に関してN308K置換およびA313S置換を含む、またはそれらからなる群において選択される少なくと1つの変異を有する。
【0050】
本発明の範囲内では、配列番号1の配列は、野生型SIRT6ポリペプチドの361アミノ酸残基の配列を指す。実際に、置換N308KおよびA313Sは、それぞれSIRT6ポリペプチド内の308位の天然に存在するAsn(N)アミノ酸残基、およびSIRT6ポリペプチド内の313位のSer(S)アミノ酸残基をコード化するコドンの変異を指す。
【0051】
本発明の範囲内で、配列番号5の配列は、野生型SIRT6ポリペプチドの1,068ヌクレオチド(bp)の配列を指す。
【0052】
幾つかの実施形態において、SIRT6ポリペプチド内の308位の天然に存在するAsn(N)アミノ酸残基は、配列番号5の922~924位のコドン「aac」によりコード化される。幾つかの実施形態において、SIRT6ポリペプチド内の313位の天然に存在するSer(S)アミノ酸残基は、配列番号5の937~939位のコドン「gcc」によりコード化される。
【0053】
特定の実施形態において、N308K置換は、配列番号5の922~924位のコドン「aac」の、コドン「aag」またはコドン「aaa」への、好ましくはコドン「aag」への変異により表される。言い換えれば、N308K置換は、配列番号5の924位のヌクレオチド「c」の、ヌクレオチド「g」またはヌクレオチド「a」、好ましくはヌクレオチド「g」への変異により表される。
【0054】
特定の実施形態において、A313S置換は、配列番号5の937~939位のコドン「gcc」の、コドン「tcc」、「tct」、「tca」および「tcg」からなる群において選択されるコドン、好ましくはコドン「tcc」への変異により表される。言い換えれば、A313S置換は、配列番号5の937位のヌクレオチド「g」の、ヌクレオチド「t」への変異;配列番号5の937位のヌクレオチド「g」の、ヌクレオチド「t」への、および配列番号5の939位のヌクレオチド「c」の、ヌクレオチド「t」への変異;配列番号5の937位のヌクレオチド「g」の、ヌクレオチド「t」への変異、および配列番号5の939位のヌクレオチド「c」の、ヌクレオチド「a」への変異;ならびに配列番号5の937位のヌクレオチド「g」の、ヌクレオチド「t」への、および配列番号5の939位のヌクレオチド「c」の、ヌクレオチド「g」への変異、からなる群において選択される1つまたは2つの変異(複数可)により表される。
【0055】
幾つかの実施形態において、核酸分子は、配列番号6、配列番号7および配列番号8を含む、またはそれらからなる群において選択される配列の核酸分子である。
【0056】
本明細書で用いられる配列番号6の配列は、N308K置換、特に配列番号5の922~924位のコドン「aac」の、コドン「aag」への変異を有するSIRT6のバリアントの核酸配列を指す。
【0057】
本明細書で用いられる配列番号7の配列は、A313S置換、特に配列番号5の922~924位のコドン「gcc」の、コドン「tcc」への変異を有するSIRT6のバリアントの核酸配列を指す。
【0058】
本明細書で用いられる配列番号8の配列は、N308KおよびA313S置換、特に配列番号5の922~924位のコドン「aac」の、コドン「aag」への変異、および配列番号5の922~924位のコドン「gcc」の、コドン「tcc」への変異を有するSIRT6のバリアントの核酸配列を指す。
【0059】
幾つかの実施形態において、本明細書に定義された単離核酸分子によりコード化されたSIRT6のバリアントは、デアシラーゼおよび/またはモノADPリボシルトランスフェラーゼ(mADPr)活性を有する。
【0060】
実際にはデアシラーゼ活性およびモノADPリボシルトランスフェラーゼ(mADPr)活性は、最先端技術からいずれか適切な方法、またはそれから適合された方法に従ってアッセイされ得る。例示として、デアシラーゼ活性は、NAD、MgCl、DTTの存在下でSIRT6のバリアントをインビトロでヒストンと接触させること、ならびに抗H3K9acおよび抗H3K18ac抗体を用いてウェスタンブロット解析を実施すること、によりアッセイされ得る。例示として、モノADPリボシルトランスフェラーゼ(mADPr)活性は、ZnCl、MgCl、NAD、DTT、サケ精子DNAの存在下でSIRT6のバリアントをインビトロでPARP1と接触させること、ならびに抗PADPR抗体を用いてウェスタンブロット解析を実施することによりアッセイされ得る。
【0061】
特定の実施形態において、SIRT6のバリアントは、野生型SIRT6(配列番号1の配列)と比較して、多くとも約90%、好ましくは多くとも約50%、より好ましくは多くとも約25%のデアシラーゼ活性を有する。本発明の範囲内では、表現「多くとも約90%」は、約90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%またはそれ未満を包含する。
【0062】
幾つかの実施形態において、SIRT6のバリアントは、野生型SIRT6(配列番号1の配列)と比較して、少なくとも100%、好ましくは少なくとも約200%、より好ましくは少なくとも約300%のモノADPリボシルトランスフェラーゼ(mADPr)活性を有する。本発明の範囲内では、表現「少なくとも約100%」は、約100%、120%、140%、160%、180%、200%、220%、240%、260%、280%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、またはより多くを包含する。
【0063】
本発明の別の態様は、本発明による核酸分子によりコード化された単離ポリペプチドに関する。
【0064】
本発明は、配列番号1の配列と少なくとも75%の同一性を有するSIRT6のバリアントである単離ポリペプチドに関し、該バリアントは、配列番号1の配列に関して置換N308Kおよび置換A313Sを含む、またはそれらからなる群において選択される少なくとも1つの変異を有する。
【0065】
本明細書で用いられる表現「少なくとも75%の同一性」は、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%の同一性を包含する。
【0066】
特定の実施形態において、SIRT6のバリアントである単離ポリペプチドは、配列番号1の配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%の同一性を有し、バリアントは、配列番号1の配列に関して置換N308Kおよび置換A313Sを含む、またはそれらからなる群において選択される少なくと1つの変異を有する。
【0067】
幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2、配列番号3および配列番号4を含む、またはそれからなる群において選択される配列のポリペプチドである。
【0068】
本明細書で用いられる配列番号2の配列は、N308K置換を有するSIRT6のバリアントのアミノ酸配列を指す。幾つかの実施形態において、配列配列番号2のポリペプチドは、配列番号6の配列の核酸分子によりコード化される。
【0069】
本明細書で用いられる配列番号3の配列は、A313S置換を有するSIRT6のバリアントのアミノ酸配列を指す。幾つかの実施形態において、配列番号3の配列のポリペプチドは、配列番号7の配列の核酸分子によりコード化される。
【0070】
本明細書で用いられる配列番号4の配列は、N308KおよびA313S置換を有するSIRT6のバリアントのアミノ酸配列を指す。幾つかの実施形態において、配列番号4の配列のポリペプチドは、配列番号8の配列の核酸分子によりコード化される。
【0071】
特定の実施形態において、ポリペプチドは、組換えポリペプチドである。本明細書で用いられる用語「組換えポリペプチド」は、操作された核酸によりコード化されて、前記操作された核酸の微生物への形質転換、または合成の目的の真核細胞内でのトランスフェクションにより合成されるポリペプチドを指す。
【0072】
本発明のさらなる態様は、本発明による単離核酸分子を含むベクターに関する。
【0073】
幾つかの実施形態において、ベクターは、ミニサークル核酸、プラスミド、コスミド、または細菌人工染色体である。
【0074】
本明細書で用いられる用語「ミニサークル核酸」は、単に遺伝子発現カセットを含み、標準プラスミドからのウイルスおよび/または細菌バックボーンDNAエレメントを含まない非ウイルスベクターを包含する。
【0075】
本明細書で用いられる用語「プラスミド」は、最大約15kb(即ち、15,000塩基対)のDNAフラグメントのコピーを作製および/または改変するために分子生物学におけるクローニングベクターとして用いられ得る環状二本鎖DNA分子として最も一般的に見出される小さなゲノム外DNA分子を指すことが意図される。プラスミドはまた、プロモーター配列の下流でプラスミド内に見出される核酸配列によりコード化された多量の目的のタンパク質を生成するための発現ベクターとしても用いられ得る。
【0076】
本明細書で用いられる用語「コスミド」は、ラムダファージからのcos配列を含有して、ファージヘッドへのコスミドのパッケージング、および続く細菌細胞の感染を可能にするハイブリッドプラスミドを指し、コスミドは、環化され、プラスミドとして複製され得る。コスミドは、典型的には約32~52kbのサイズ範囲のDNAフラグメントのためのクローニングベクターとして用いられる。
【0077】
本明細書で用いられる用語「細菌人工染色体」または「BAC」は、細菌細胞の分裂後に前記ゲノム外DNA分子の均等分割を可能にする機能的稔性プラスミドに基づくゲノム外核酸分子を指す。BACは、典型的には約150~350kbのサイズ範囲のDNAフラグメントのためのクローニングベクターとして用いられる。
【0078】
実際に、SIRT6のバリアントをコード化する核酸分子を含むベクターは、特に核酸ベクターへの目的の核酸のクローニングから得られる、プラスミドの形態であり得る。幾つかの実施形態において、非限定的で適切な核酸ベクターは、pBluescriptベクター、pETベクター、pETduetベクター、pGBMベクター、pBADベクター、pUCベクターである。一実施形態において、プラスミドは、低コピー数プラスミドである。一実施形態において、プラスミドは、高コピー数プラスミドである。
【0079】
幾つかの実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。幾つかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス(AAV);エクソソーム関連AAV(exo-AAV);アルファウイルス;ヘルペスウイルス;例えばレンチウイルスまたは非組み込み型レンチウイスルなどのレトロウイルス;ワクシニアウイルス;バキュロウイルス;または、例えばB型肝炎ウイスル、パルボウイルス科;レトロウイルス科;フラビウイルス科;パラミクソウイルス科もしくはバクテリオファージなどレトロウイルスに由来する粒子などのウイルス様粒子を含む、またはそれからなる群において選択される。
【0080】
特定の実施形態において、ベクターは、ウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、エクソソーム関連AAVベクター(exo-AAV)、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターである。
【0081】
幾つかの実施形態において、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)は、AAV血清型2またはAAV血清型5である。
【0082】
特定の実施形態において、ベクター、特にウイルスベクターは、exo-AAVベクターである。本明細書で用いられるexo-AAVは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたはその一部が細胞外小胞(エクソソームとも称される)に会合していて、AAVベクターが、細胞外小胞の中に部分的に融合、埋め込まれるまたは内在化されている、ベクターを指す。細胞外小胞は、例えば標的化目的のために、特異的タンパク質またはマーカーを発現してもよい。
【0083】
特定の実施形態において、ベクター、特にウイルスベクターは、血液脳関門を通過しない。幾つかの代替的実施形態において、ベクター、特にウイルスベクターは、血液脳関門を通過する。実際には、ウイルスベクターの選択は、標的化される臓器または組織に依存し得る。例えば脳がん、神経変性疾患、アルツハイマー病およびプロジェリアの場合、好ましくは血液脳関門を通過するベクターが選択され得る。反対に、肥満、心臓血管疾患、2型糖尿病、高コレステロール血症、眼科疾患の場合、好ましくは血液脳関門を通過しないベクターが選択され得る。
【0084】
実際には、ベクター、特にウイルスベクターが、血液/脳関門を通過するかどうかを評価することは、最先端技術から認識された任意の適切な方法、またはそれから適合させた方法により実施され得る。例示としてこの評価は、血液/脳関門透過性の2種の至適基準の実験的手段、即ち(1)血中濃度で除算した脳内化合物濃度を測定することを意図するLogBB;および(2)透過性と表面積の積を測定するLogPS、の一方の手段により実施され得る。
【0085】
幾つかの実施形態において、ベクター、特にウイルスベクターは、哺乳動物個体、好ましくはヒト個体における遺伝子発現に適したプロモーター配列を含む。
【0086】
哺乳動物個体、好ましくはヒト個体における遺伝子発現に適したプロモーター配列の非限定的例としては、CMV(ヒトサイトメガロウイルス)プロモーター、EF1a(ヒト伸長因子1アルファ)プロモーター、SV40(サル空胞化ウイルス40)プロモーター、PGK1(フォスフォグリセリン酸キナーゼ)プロモーター、Ubc(ヒトユビキチンC)プロモーター、および同様のものが挙げられる。
【0087】
特定の実施形態において、プロモーター配列は、好ましくはCMVプロモーターである。
【0088】
幾つかの実施形態において、ベクター、特にウイルスベクターはさらに、標的レシピエント細胞内への本発明による核酸分子によりコード化されたポリペプチドの核局在化を容易にする核酸配列を含む。実際にはこれらの核局在化シグナル(NLS)は、最先端技術において多く議論されている。
【0089】
特定の実施形態において、ベクター、特にウイルスベクターは、S/MAR(足場/マトリックス付着領域)核酸配列を含んでもよい。本明細書で用いられる、SAR(足場付着領域の場合)またはMAR(マトリックス結合領域の場合)とも称されるS/MAR核酸配列は、自然界で真核細胞染色体のDNA内で見出され、核マトリックスへの付着を促進する、核酸配列を指すと意図される。幾つかの実施形態において、S/MAR核酸配列は、複製開始点として役立ち得る。実際には、S/MAR核酸配列を含むベクターは、トランスフェクトされた細胞において染色体外因子として挙動し得て、有利には子孫に伝達され得る。例示として、適切なS/MAR核酸配列は、Narwadeら(Nucleic Acids Research, 2019; 47(14):7247-7261)に記載されたとおり決定され得る。
【0090】
一態様において、本発明は、本発明によるベクターを含む懸濁液に関する。
【0091】
幾つかの実施形態において、懸濁液はさらに、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびそれらの組合わせからなる群から選択される1種または複数の成分を含む流体を含む。
【0092】
特定の実施形態において、懸濁液は、静脈内注入のために製剤化される。実際には、静脈内注入のために製剤化される懸濁液は、生理食塩水(例えば、0.9%NaCl);乳酸リンゲル液;5%デキストロース;例えばアルブミンなどのコロイド;同様のもの;およびそれらの任意の組合わせを含んでもよい。
【0093】
一態様において、本発明は、ポリペプチドを発現する細胞に関係し、細胞は、好ましくは本発明による単離核酸分子またはベクターをトランスフェクトされている。
【0094】
特定の実施形態において、細胞は、真核細胞、好ましくは動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞である。本明細書で用いられる「哺乳動物細胞」は、非ヒト哺乳動物細胞およびヒト細胞を含む。幾つかの実施形態において、細胞は、ヒト細胞である。
【0095】
幾つかの実施形態において、細胞は、神経細胞、骨細胞、乳房細胞、赤血球、白血球、軟骨細胞、上皮細胞、内皮細胞、皮膚細胞、筋細胞、膀胱細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、前立腺細胞、子宮頸部細胞、卵巣細胞、肺細胞、網膜細胞、結膜細胞、角膜細胞、脂肪細胞、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0096】
本発明による細胞は、本発明による単離核酸分子をトランスフェクトされていること、または本発明による単離核酸分子が形質導入されていること、または本発明による核酸分子を含有するベクターもしくは懸濁液と接触していることが、理解されなければならない。それゆえ細胞は、ゲノムに組み込まれた、または組み込まれていない核酸分子を含有する。実際には、ベクターは発現系であるため、SIRT6のバリアントをコード化する核酸分子は、細胞内に、発現を可能にする形態で、その最終的な場所、即ち細胞核および細胞質に存在する。
【0097】
本発明の別の態様は、(i)本発明による単離核酸分子、または単離ポリペプチド、またはベクターと、(ii)薬学的に許容できる賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0098】
幾つかの実施形態において、本発明による適切な薬学的に許容できる担体としては、あらゆる従来の溶媒、分散媒、充填剤、固形担体、水性溶液、コーティング、抗菌および抗真菌薬、等張および吸収遅延剤、ならびに同様のものが挙げられる。特定の実施形態において、適切な薬学的に許容できる担体としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールおよびそれらの混合物を挙げることができる。幾つかの実施形態において、薬学的に許容できる担体はさらに、細胞の貯蔵寿命または有効性を増大する、湿潤または乳化剤、防腐または緩衝剤などの補助物質の微量を含んでもよい。薬学的に許容できる担体の調製および使用は、当技術分野で周知である。
【0099】
本発明の一態様は、個体、好ましくは哺乳動物個体、より好ましくはヒト個体における加齢、および/または老化、および/または生存期間の調節における、本発明による単離核酸分子または単離ポリペプチドまたはベクターの使用に関する。
【0100】
本明細書で用いられる用語「老化を調節すること」は、老化メカニズム、特に早期老化を低下、低減、または停止させる工程を指すことを意図する。
【0101】
本明細書で用いられる用語「生存期間を調節すること」は、生存期間を増加または改善する工程、言い換えれば一生の期間を増加または改善する工程を指すことを意図する。
【0102】
本発明はさらに、それを必要とする個体、好ましくは哺乳動物個体、より好ましくはヒト個体における加齢、および/または老化、および/または生存期間を調節する方法であって、本発明による単離核酸分子または単離ポリペプチドまたはベクターの治療有効量の投与を含む方法に関する。
【0103】
本発明のさらなる態様は、細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞の二本鎖切断の修復における、本発明による単離核酸分子または単離ポリペプチドまたはベクターの使用に関係する。
【0104】
本発明はまた、細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞の二本鎖切断を修復する方法であって、本発明による単離核酸分子または単離ポリペプチドまたはベクターの治療有効量の投与を含む方法に関する。
【0105】
本明細書で用いられる「二本鎖切断の修復」は、二本鎖DNA核酸の両方の鎖の切断の発生にあるDNA損傷の修復によりDNA完全性の回復を可能にする工程を指す。実際には二本鎖切断の修復は、非相同末端結合(NHEJ)および相同修復(HR)などの修復メカニズムを含む。
【0106】
実際に二本鎖切断修復の効率は、最先端技術からの任意の適切な方法、またはそれから適合された方法により評価され得る。例示として二本鎖切断修復効率は、Seluanovら(J Vis Exp, 2010; doi:10.3791/2002)に記載された方法により評価され得る。
【0107】
本発明の範囲内では、本発明による核酸分子、ポリペプチド、ベクター、懸濁液または医薬組成物は、参照レベルとしての任意の処置の非存在下でのDSB修復の効率と比較して、標的細胞におけるDSB修復の効率を増加、改善または好転させることを意図する。
【0108】
本明細書で用いられる用語「DSB修復の効率を増加、改善または好転させる」は、参照レベルと比較して少なくとも1.2倍の増加を包含する。本発明の範囲内では、用語「少なくとも1.2倍」は、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.2倍、2.4倍、2.6倍、2.8倍、3.0倍、3.2倍、3.4倍、3.6倍、3.8倍、4.0倍、4.5倍、5.0倍、5.5倍、6.0倍、6.5倍、7.0倍、7.5倍、8.0倍、8.5倍、9.0倍、9.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1,000倍、またはより多くを包含する。
【0109】
別の態様において、本発明は、加齢に伴う疾患の防止および/または処置における使用のための、本発明による単離核酸分子または単離ポリペプチドまたはベクターに関する。
【0110】
本発明はまた、加齢に伴う疾患の防止および/または処置のための薬品の調製または製造のための、本発明による単離核酸分子または単離ポリペプチドまたはベクターの使用に関する。
【0111】
幾つかのさらなる態様において、本発明は、それを必要とする個体における加齢に伴う疾患を防止するおよび/または処置する方法であって、本発明による単離核酸分子または単離ポリペプチドまたはベクターの治療有効量の投与を含む方法に関係する。
【0112】
特定の実施形態において、それを必要とする個体は、哺乳動物個体、好ましくはヒト個体である。
【0113】
幾つかの実施形態において、加齢に伴う疾患は、早老症、ウェルナー症候群、神経変性疾患、アルツハイマー病、がん、心臓血管疾患、肥満、2型糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、眼障害、白内障、緑内障、骨粗しょう症、血栓障害、関節炎、難聴および卒中を含む、またはそれからなる群において選択される。
【0114】
一実施形態において、加齢に伴う疾患は、早老症またはウェルナー症候群である。
【0115】
幾つかの実施形態において、加齢に伴う疾患は、がんである。特定の実施形態において、がんは、血液がんまたは固形がんである。
【0116】
本明細書で用いられる、「血液のがん」とも称される用語「血液がん」は、血液細胞、特に白血球の非制御的増殖を含む任意のがんを包含する。血液がんとしては、白血病、リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)および骨髄腫が挙げられる。
【0117】
特定の実施形態において、がんは、血液がんである。幾つかの実施形態において、前記がんは、ホジキン病、免疫芽球性リンパ節症、リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性白血病、および同様のものからなる群において選択される血液がんである。
【0118】
本明細書で用いられる用語「固形がん」は、塊を形成せずに組織にびまん性に浸潤するがん(または悪性腫瘍)と反対に、別個の腫瘍塊を形成する任意のがん(悪性腫瘍とも称される)を包含する。
【0119】
特定の実施形態において、がんは、固形がんである。幾つかの実施形態において、固形がんは、線維肉腫、黒色腫、乳癌、結腸癌、腎臓癌、副腎皮質癌、精巣奇形腫、皮膚肉腫、線維肉腫、肺癌、腺癌、肝臓癌(即ち、肝癌)、膠芽腫、前立腺癌、卵巣がんおよび膵臓癌からなる群において選択される。
【0120】
幾つかの実施形態において、加齢に伴う疾患は、ハッチンソン・ギルフォード早老症、ウェルナー症候群、アルツハイマー病およびがんを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0121】
幾つかの実施形態において、加齢に伴う疾患は、ハッチンソン・ギルフォード早老症、ウェルナー症候群、アルツハイマー病および線維肉腫を含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0122】
幾つかの実施形態において、加齢に伴う疾患は、ハッチンソン・ギルフォード早老症、ウェルナー症候群、アルツハイマー病および肝癌を含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0123】
一実施形態において、加齢に伴う疾患は、肝癌である。一実施形態において、加齢に伴う疾患は、線維肉腫である。
【0124】
特定の実施形態において、早老症は、ハッチンソン・ギルフォード早老症である。
【0125】
一実施形態において、加齢に伴う疾患は、ウェルナー症候群である。
【0126】
幾つかの実施形態において、本発明による核酸分子、ポリペプチド、ベクター、懸濁液、または医薬組成物は、任意の適切な経路、即ち、皮膚投与により、経口投与、局所投与、または非経口投与により、例えば、皮下投与、静脈投与、動脈投与、筋肉内投与、眼内投与および耳介内投与(intra-auricular administration)を含む注射により、それを必要とする個体に投与されなければならない。
【0127】
特定の実施形態において、本発明による核酸分子、ポリペプチド、ベクター、懸濁液、または医薬組成物は、皮膚投与により、それを必要とする個体に投与されなければならない。特定の実施形態において、本発明による核酸分子、ポリペプチド、ベクター、懸濁液、または医薬組成物は、例えば皮膚指向性を上昇させることにより、または皮膚バリア透過性を上昇させることにより、皮膚投与を可能にする、および/または容易にする組成物と会合される。幾つかの実施形態において、皮膚投与は、本発明による核酸分子、ポリペプチド、ベクター、懸濁液、または医薬組成物の長期放出を可能にする
【0128】
特定の実施形態において、本発明による核酸分子、ポリペプチド、ベクター、懸濁液、または医薬組成物は、静脈内投与により、特に静脈内注入または静脈内注射により、それを必要とする個体に投与されなければならない。
【0129】
本発明の範囲内では、投与されるべき本発明による核酸分子、ポリペプチド、ベクター、懸濁液、または医薬組成物の治療有効量は、医師または権限を与えられた当業者により決定されてもよく、処置の時間的経過の中で適宜、適合され得る。
【0130】
特定の実施形態において、投与されるべき治療有効量は、投与のために選択される材料、投与が単回投与であるか、または反復投与であるかを含む種々のパラメータ、ならびに年齢、身体条件、体格、体重、性別、および処置されるべき加齢に伴う疾患の重症度を含む個体のパラメータに依存し得る。
【0131】
特定の実施形態において、本発明による単離ポリペプチドまたは単離ポリペプチド、薬剤を含む医薬組成物の治療有効量は、投与単位あたり約0.001mg~約3,000mg、好ましくは投与単位あたり約0.05mg~約100mgの範囲内であり得る。
【0132】
本発明の範囲内では、表現「約0.001mg~約3,000mg」は、投与単位あたり約0.001mg、0.002mg、0.003mg、0.004mg、0.005mg、0.006mg、0.007mg、0.008mg、0.009mg、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,100mg、1,150mg、1,200mg、1,250mg、1,300mg、1,350mg、1,400mg、1,450mg、1,500mg、1,550mg、1,600mg、1,650mg、1,700mg、1,750mg、1,800mg、1,850mg、1,900mg、1,950mg、2,000mg、2,100mg、2,150mg、2,200mg、2,250mg、2,300mg、2,350mg、2,400mg、2,450mg、2,500mg、2,550mg、2,600mg、2,650mg、2,700mg、2,750mg、2,800mg、2,850mg、2,900mg、2,950mgおよび3,000mgを含む。
【0133】
特定の実施形態において、本発明による単離ポリペプチドまたは単離ポリペプチドを含む医薬組成物は、1日あたり約0.001mg/kg対象体重~約100mg/kg対象体重、約0.01mg/kg対象体重~約50mg/kg対象体重、好ましくは約 0.1mg/kg対象体重~約40mg/kg対象体重、好ましくは約0.5mg/kg対象体重~約30mg/kg対象体重、約0.01mg/kg対象体重~約10mg/kg対象体重、約0.1mg/kg対象体重~約10mg/kg対象体重、より好ましくは約1mg/kg対象体重~約25mg/kg対象体重を送達するのに充分な投与レベルであり得る。本発明の範囲内では、表現「約0.001mg/kg~約100mg/kg」は、約0.001mg/kg、0.002mg/kg、0.003mg/kg、0.004mg/kg、0.005mg/kg、0.006mg/kg、0.007mg/kg、0.008mg/kg、0.009mg/kg、0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kgおよび100mg/kgを含む。
【0134】
幾つかの実施形態において、本発明による単離核酸分子、ベクター、または医薬組成物の治療有効量は、約10~約1015コピー/ml範囲内である。実際には治療有効量は、約10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、1010、5×1010、1011、5×1011、1012、5×1012、1013、5×1013、1014、5×1014および1015コピー/mlを含む。特定の実施形態において、治療有効量は、約10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、1010、5×1010、1011、5×1011、1012、5×1012、1013、5×1013、1014、5×1014および1015コピー/cmを含む約10~約1015コピー/cmである。幾つかの実施形態において、治療有効量は、約10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、1010、5×1010、1011、5×1011、1012、5×1012、1013、5×1013、1014、5×1014および1015コピー/用量を含む、約10~約1015コピー/用量である。
【0135】
特定の実施形態において、本発明による単離核酸分子、単離ポリペプチド、ベクター、懸濁液、または医薬組成物は、加齢に伴う疾患、特に早老症、ウェルナー症候群、神経変性疾患、アルツハイマー病、がん、心臓血管疾患、肥満、2型糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、眼障害、白内障、緑内障、骨粗しょう症、血栓障害、関節炎、難聴および卒中からなる群において選択される疾患を予防および/または処置するのに適した薬物と共投与または連続投与されなければならない。
【0136】
本明細書で用いられる用語「共投与される」は、活性成分の同時投与を指す。本明細書で用いられる用語「連続投与」は、第二の活性成分の投与前、または投与後の第一の活性成分の投与を指す。
【0137】
本発明の別の態様は、(i)本発明による単離核酸、単離ポリペプチド分子、ベクター、または懸濁液と、(ii)該単離核酸分子、単離ポリペプチド、ベクター、または懸濁液を投与する手段とを含むキットに関する。
【0138】
幾つかの実施形態において、単離核酸分子、単離ポリペプチド、ベクター、または懸濁液を投与する手段は、シリンジまたはカテーテルを含む。
【0139】
本発明の別の態様は、対象における脂肪生成分化を増加させる方法であって、配列番号2、配列番号3および配列番号4を含む、もしくはそれらからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5もしくは100%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらをコード化する核酸分子の有効量を投与することを含む方法に関する。幾つかの実施形態において、核酸分子は、配列番号6、配列番号7および配列番号8を含む、またはそれらからなる群から選択される核酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5または100%の配列同一性を有する。
【0140】
本発明の別の態様は、細胞または細胞集団の脂肪生成分化を増加させるためのインビトロ方法であって、配列番号2、配列番号3および配列番号4を含む、もしくはそれらからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5もしくは100%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらをコード化する核酸分子の有効量に、細胞または細胞集団を曝露することを含む方法に関する。幾つかの実施形態において、核酸分子は、配列番号6、配列番号7および配列番号8を含む、またはそれらからなる群から選択される核酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5または100%の配列同一性を有する。幾つかの実施形態において、細胞または細胞集団は、脂肪前駆細胞である。
【0141】
本発明の別の態様は、対象におけるα-SMA発現を減少させる方法であって、配列番号2、配列番号3および配列番号4を含む、もしくはそれらからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5もしくは100%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらをコード化する核酸分子の有効量を投与することを含む方法に関する。幾つかの実施形態において、核酸分子は、配列番号6、配列番号7および配列番号8を含む、またはそれらからなる群から選択される核酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5または100%の配列同一性を有する。
【0142】
本発明の別の態様は、細胞または細胞集団におけるα-SMA発現を減少させるためのインビトロ方法であって、配列番号2、配列番号3および配列番号4を含む、もしくはそれらからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5もしくは100%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらをコード化する核酸分子の有効量に、細胞または細胞集団を曝露することを含む方法に関する。幾つかの実施形態において、核酸分子は、配列番号6、配列番号7および配列番号8を含む、またはそれらからなる群から選択される核酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5または100%の配列同一性を有する。幾つかの実施形態において、細胞または細胞集団は、脂肪前駆細胞である。
【0143】
本発明の別の態様は、対象におけるコラーゲン発現を減少させる方法であって、配列番号2、配列番号3および配列番号4を含む、もしくはそれらからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5もしくは100%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらをコード化する核酸分子の有効量を投与することを含む方法に関する。幾つかの実施形態において、核酸分子は、配列番号6、配列番号7および配列番号8を含む、またはそれらからなる群から選択される核酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5または100%の配列同一性を有する。
【0144】
幾つかの実施形態において、コラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、V型コラーゲン、およびIX型コラーゲンを含む、またはそれらからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、コラーゲンは、I型コラーゲンである。幾つかの実施形態において、I型コラーゲンは、I型アルファ1コラーゲンまたはI型アルファ2コラーゲンである。幾つかの実施形態において、I型コラーゲンは、I型アルファ1コラーゲンであり、COL1A1遺伝子によりコード化される。
【0145】
本発明の別の態様は、細胞または細胞集団のコラーゲン発現を減少させるためのインビトロ方法であって、配列番号2、配列番号3および配列番号4を含む、もしくはそれらからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5もしくは100%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらをコード化する核酸分子の有効量に、細胞または細胞集団を曝露することを含む方法に関する。幾つかの実施形態において、核酸分子は、配列番号6、配列番号7および配列番号8を含む、またはそれらからなる群から選択される核酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5または100%の配列同一性を有する。幾つかの実施形態において、細胞または細胞集団は、脂肪前駆細胞である。
【0146】
幾つかの実施形態において、コラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、V型コラーゲン、およびIX型コラーゲンを含む、またはそれらからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、コラーゲンは、I型コラーゲンである。幾つかの実施形態において、I型コラーゲンは、I型アルファ1コラーゲンまたはI型アルファ2コラーゲンである。幾つかの実施形態において、I型コラーゲンは、I型アルファ1コラーゲンであり、COL1A1遺伝子によりコード化される。
【0147】
実施例
本発明および開示を、以下の実施例によりさらに例示する。
【0148】
実施例1
1.材料と方法
1.1.試験対象および試料採取
この試験群は、Albert Einstein College of Medicineで長寿試験の一部として過去に採取された1068のアシュケナージ系ユダヤ人(AJ)試料、つまり496のAJ百寿者および572のAJ対照からなった。百寿者は、95歳以上で自立して生活する健常個体と定義され、対照は、稀な長寿の家族歴のない個体と定義され、対照の親は、85歳以下まで生存した。書面による同意書を、Albert Einstein College of MedicineのCommittee on Clinical Investigationsの方針に従って得た。ゲノムDNAを血液試料から抽出し、Illustra GenomiPhi V2 DNA Amplificationキット(GE healthcare Life Sciences(登録商標))を用いて増幅した。
【0149】
1.2.2ラウンドのターゲットシーケンシング
ステージ1では、ゲノム維持に関与する301の候補遺伝子を、51の百寿者および51の対照で選択およびシーケンシングした。301の候補遺伝子の全リストを、表1に提供する。
【表1】
【0150】
SureSelectXTターゲットエンリッチメントプラットフォーム(Agilent(登録商標))を適用して、候補ゲノム維持遺伝子のエクソン、エクソン-イントロンジャンクション、および2kb近位プロモーター配列をカバーするゲノム領域を設計および捕捉した。個別にインデックス化したライブラリを、Illumina(登録商標)HiSeq2000によりシーケンシングした。シーケンスリードを、BWAを用いて整列させ、バリアントを、GATKにより呼び出した。102の試料中の全てのバリアントを、特徴づけ、ANNOVARを用いて機能的アノテーションを行った。候補遺伝子の優先順位をつけるために、UMINP(単変量minP)遺伝子に基づく順列による関連づけ(n=100)を実施し、少なくとも1種の有意な単一バリアントの影響を考慮して、0.05未満の名目上のp値を示す122の遺伝子を同定した(表2)。
【表2】
【0151】
遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析を、clusterProfilerパッケージを用いて実行し、DNA二本鎖切断修復機能における122のUMINPでの有意な遺伝子のエンリッチメントを同定した。
【0152】
ステージ2では、DNA二本鎖切断修復に関与する106の候補遺伝子を、496人の百寿者および572人の対照において選択およびシーケンシングした。106のDSB修復遺伝子のリストが、表3に提供される。
【表3】
【0153】
25の試料をプールするターゲットキャプチャーシーケンシングを、実施した。手短に述べると、同じ群からの25の試料を、同モル濃度で一緒にプールし、合計20の百寿者プールおよび23の対照プールを使用して、Illumina(登録商標)TruSeq DNA試料調製ロースループット(LT)プロトコルに従ってインデックス化したライブラリを作成した。捕捉されたライブラリをさらに、候補DSB遺伝子のエクソン、エクソン-イントロンジャンクション、および2kb近位プロモーター配列をカバーするゲノム領域を濃縮するSeqCap EZ Choice Enrichment Kit(Roche(登録商標))を用いて作成し、Illumina(登録商標)HiSeq2000によりシーケンシングした。シーケンスリードを、BWAを用いて整列させ、バリアントが、プールされたDNA配列データにおいてバリアントを呼び出すために専用で開発されたソフトウエアCRISP(Comprehensive Read analysis for Identification of Single Nucleotide Polymorphisms)を用いて呼び出した。1068の試料中の全てのバリアントを、特徴づけ、ANNOVARを用いて機能的アノテーションを行った。長寿の関連性について検査するために、本発明者らは、希少なバリアントに関するSKAT(シーケンシング・カーネル関連検査)、全てのバリアントに関するSKAT-C(一般的および希少)、および指向性のあるバリアントに関するSKAT-O(百寿者または対照のみでエンリッチメント)などのSKAT解析の異なるサブタイプを実施した(表4)。
【表4】
【0154】
1.3.細胞株
HEK293細胞を、jetPRIMEトランスフェクション試薬を介して直鎖状CMV-SIRT6プラスミドでトランスフェクトして、安定して組み込まれたクローンを選択することにより、HEK293 SIRT6過剰発現株を作製した。クマート誘導型プロモーターの制御下で、SIRT6のWTおよび百寿者のアレルを発現する正常なヒト線維芽細胞(クマートSIRT6線維芽細胞)を作製するために、クマートプロモーターの制御下でSIRT6アレルを含有する構築物を、PiggyBac Transposon Vector Systemを介してテロメラーゼ不死化SIRT6-KOヒトHCA2包皮線維芽細胞のゲノムに組み込んだ。内在性SIRT6を、CRISPR/Cas-9を用いてこれらの細胞においてノックアウトした。NHEJおよびHRレポーターアッセイを、組み込まれたレポーター構築物(I9AおよびH15C)を含有するテロメラーゼ不死化HCA2ヒト線維芽細胞株を用いて実行した。HT1080およびHeLa細胞株を用いて、抗腫瘍活性を評価した。
【0155】
1.4.細胞株
全ての細胞株を、5%CO、5%O、37℃の加湿インキュベータで維持した。細胞は、15%ウシ胎仔血清および1×ペニシリン/ストレプトマイシンを含むイーグル最小必須培地で成長させたが、但し例外としてHEK293、HT1080およびHeLa細胞は、D-グルコースおよびL-グルタミンを含むDMEM中での培養であった。細胞株を、マイコプラズマ汚染について日常的に検査する。
【0156】
1.5.ウェスタンブロット
細胞および反応物を、2×レムリー溶液を用いて回収し、氷中で15分間インキュベートし、その間、試料を大きなゲージの針に数回通過させ、5分ごとにボルテック処理した。試料をその後、14,000RPMで遠心沈降させて細胞片を除去し、上清を新しい試験管に移した。試料を、沸騰水中で20分間加熱した後、14,000RPMで1分間遠心分離し、BioRad(登録商標)Criterion4~20%ゲルにロードした。PDVF膜に移してRT(室温)で2時間ブロック(5%粉乳)した後、膜を、2.5%ブロッキング緩衝液中の抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。膜に、TBSTでの10分間の洗浄を3回行い、その後、1×TBST中の二次抗体を、RTでの2時間インキュベーションの間添加した。膜に、TBSTでの10分間の洗浄を3回行い、その後、イメージングした。
【0157】
以下の抗体を用いた:H3(Abcam(登録商標)ab500)-1:5,000、H3K9ac(Abcam(登録商標)ab4441)-1:1,000、H3K18ac(Abcam(登録商標)ab1191)-1:1,000、β-チューブリン(Abcam(登録商標)ab6046)-1:10,000、SIRT6(Cell Signaling(登録商標)#12486)-1:1,000、AbD33204(ウサギ、REF)-1:500、ラミンA/C-1:1,000(Abcam(登録商標)ab108595、Millipore(登録商標)05-714)、γH2AX(Millipore(登録商標)05-636)、PARP1(Abcam(登録商標)ab227244)-1:1,000、mADPr 1:500(AbD33204およびAbD33205)。
【0158】
1.6.免疫沈降(IP)
細胞を播種し、同投与量のクマートと共に48時間成長させた後、IPを行った。手短に述べると、細胞をトリプシンおよび遠心分離を介して回収し、その後、IP緩衝液(20mM HEPES pH=8、0.2mM EDTA、5%グリセロール、150mM NaCl、1%NP40)+COMplete(登録商標)プロテアーゼ阻害剤を用いて氷中で10分間溶解した。溶解物に、25%の出力で10パルスの音波処理を行い、その後、細胞片を、4℃、13000RPMで10分間の遠心分離により沈降させた。上清を、新しい試験管に移し、A/G Sepharoseビーズによってローター上で4℃で1時間、予めきれいにした。ビーズを遠心分離により除去し、きれいにした試料を新しい試験管に移した。試料50μlをインプット対照として保存した。試料を、抗体(SIRT6;Cell Signaling(登録商標))#12486 3μg;PARP1-Abcam(登録商標)ab227244;ラミンA/C-Millipore(登録商標)05-714;AbD33204、AbD33205と共に4℃で一晩インキュベートし、その後、25%Sepharose 30μlと共に4℃で2時間インキュベートした。試料を遠心沈降により沈殿させ、ビーズをIP緩衝液で5回洗浄した。IP緩衝液100μlでの最終的な再懸濁。
【0159】
1.7.DNA修復アッセイ
NHEJおよびHR効率の両方を、Seluanovら(J Vis Exp, 2010; doi:10.3791/2002)において過去に記載されたとおり評価した。手短に述べると、I-Sce1、SIRT6またはHPRT対照、およびdsREDプラスミドを、染色体に組み込まれたNHEJまたはHRレポーターカセット(I19AまたはH15C)細胞を含有するテロメラーゼ不死化ヒト包皮線維芽細胞にトランスフェクトした。細胞を、3日間放置して回復させた後、フローサイトメトリーにより分析した。効率を、dsRED事象に対するGFP事象の比として計算した。
【0160】
1.8.トランスフェクション
トランスフェクションを、細胞をトランスフェクション前に500,000細胞/10cmプレートの密度で2日間播種することにより実行した。トランスフェクションを、Amaxa(登録商標)Nucleafectorを正常ヒト皮膚線維芽細胞トランスフェクション溶液と共に用いて、製造業者のプロトコルに従って実行した。がん細胞のトランスフェクションのために、JetPRIMEトランスフェクション試薬を使用して、プラスミドを細胞に送達した。
【0161】
1.9.定量的RT-PCR
総RNAを、Trizol試薬を用いて80%コンフルエンシーの細胞から単離し、その後、DNaseで処置した。cDNAを、Superscript III(Life Technologies(登録商標))cDNAキットをOligodTプライマーと共に用いて合成した。qRT-PCRを、BioRad(登録商標) CFX Connect Real Time装置とSYBR(商標) Green Master Mix(BioRad(登録商標))により、cDRA 30ng/反応を用い、3×反応/試料で実施した。全てのプライマーセット(以下の表5参照)を、特異性および効率について検査した。アクチンを、Quantum mRNA Actin Universalプライマー(Thermo Fisher Scientific(登録商標) AM1720)を用いてアッセイした。
【表5】
【0162】
1.10.免疫蛍光およびアポトーシス
γH2AX免疫染色を、Maoら(Science, 2011; Vol. 332:1443-1446)において過去に記載したとおり実行した。抗γH2AX抗体を、Millipore(登録商標)(05-636)から購入した。線維芽細胞のアポトーシスを、Annexin V Staining Kit(Roche(登録商標))を用いて測定した。
【0163】
1.11.ガンマ線照射
細胞を、75%コンフルエンシーまで成長させた後、コーティングしたスライド上で処置した。Cs-137照射器を用いて、2Gyの放射線を細胞に送達した。細胞を、37℃のコンテナに移動させ、培地を、曝露後に交換した。
【0164】
1.12.パラコート処置
細胞を、75%コンフルエンシーで維持し、その時点で、ピルビン酸ナトリウムを欠如してパラコートを含有する新鮮な培地を、添加した。細胞を、処置した培地中で24時間維持し、その後、ピルビン酸ナトリウムが欠如した新鮮な培地と交換した。処置の48時間後に、細胞を染色し、アポトーシスについて評価した。
【0165】
1.13.SIRT6タンパク質精製
HisタグSIRT6 cDNAを、pET11aベクターにクローニングし、Rosetta-Gami大腸菌細胞に形質転換した。細胞を抗体の存在下で成長させ、その後、0.5mM IPTGによるタンパク質生成を2時間誘導した後、回収した。細胞を、遠心沈降により沈降させ、50mM Tris-HCl(pH=7.5)、300mM NaCl、10%グリセロールおよび10mMイミダゾールと、EDTA不含プロテアーゼ阻害剤(Sigma-Aldrich(登録商標)#8849)および1mg/ml卵白リゾチームとの溶液を用いて氷中で1時間溶解した後、Branson装置で音波処理した。遠心分離による細胞片の除去の後、溶解物をNi2+-NTAアガロースと共に一晩インキュベートした。ビーズを含む溶液を、重力カラムに入れ、溶解溶液で洗浄した後、2容量の洗浄緩衝液(溶解緩衝液+30mMイミダゾール)で洗浄した。最後に、タンパク質を、溶出緩衝液(溶解緩衝液+500mMイミダゾール)で溶出し、画分を回収した。タンパク質濃度を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイにより評価し、SDS-PAGEゲルで泳動させた。3~4の最高濃度の画分をプールし、貯蔵緩衝液(50mM Tris-HCl pH=7.5、150mM NaCl、1mM DTT、5%グリセロール)で透析した。
【0166】
1.14.細胞培養におけるアミノ酸の安定した同位体標識(SILAC)
代謝回転率実験を、SIRT6 WTまたはcentSIRT6を安定して発現するHEK293細胞株を用いて実施した。細胞を、10%透析FBS(Gibco(登録商標))、L-グルタミン、L-アルギニン13 15(Cambrige Isotopes(登録商標))、およびL-リジン13 15(Cambrige Isotopes(登録商標))を補充したSILAC用MEM(Thermo Fisher Sicientific(登録商標))において、コンフルエントになるまで1週間培養した。培地を、通常の培養培地に交換し、細胞ペレットを、培地交換後0、2、4、6、8、12および24h目に回収した。細胞ペレットを、8M尿素、75mm NaCl、50mM Tris pH8.5をプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche(登録商標))と共に含有する緩衝液に溶解した。ペレットを、30秒間ボルテックス処理し、音波処理ステップの間に氷中で1分の休止を入れながら10秒間の超音波処理を5回行った。溶解物を15,000×gで10分間遠心分離し、その後、上清を回収した。
【0167】
1.15.SIRT6脱アシル化活性
この反応の基質は、Schusterら(Sci Rep, 2016; Vol. 6:22643)により最初に開発された合成TNF由来ペプチドであり、Genscript(登録商標)が合成した。反応を、150mM NaCl、20mM Tris、5%グリセロール、1mM β-メルカプトエタノール、2μM SIRT6、ならびに7~1000μMの基質濃度範囲のNAD+および2~88μMペプチドを用いて実施した。反応を、37℃で実施し、蛍光を、Tecan Spark 20Mプレートリーダーで310/405nm励起/発光スペクトルを用いて測定した。30秒ごとに読み取りを行い、初期速度を、最短で6分にわたる相対蛍光増加から計算した。
【0168】
1.16.ヒストン分析
ヒストンを、確立された酸抽出法の後に、カバレッジを増強させるためにトリプシン消化の前にリジンのプロピオニル化を使用することにより、クマートSIRT6線維芽細胞(クマート誘導型プロモーターを介してテロメラーゼの触媒サブユニットおよびSIRT6の様々なアレルを構成的に発現するSIRT6 KO初代ヒト包皮線維芽細胞)から精製した、。試料を、EpiProfile(登録商標)を用いるnano-LCにより分離した後、あるいは直接融合後のEpiProfileLite(登録商標)による1分間取得および解析の後に、データ非依存的解析(DIA)質量分析(MS)法を、改変ペプチドの定量に用いた。
【0169】
1.17.質量分析によるSIRT6およびLMNAタンパク質-タンパク質相互作用の分析
クマートSIRT6線維芽細胞を、centSIRT6および野生型SIRT6への相互作用を比較するために用いた。核抽出物を、低張溶解緩衝液を用いて調整した。およそ2.5×10細胞から単離した核を、1mlの抽出緩衝液(50mM TrisHCl pH7.5、150mM NaCl、10%グリセロール、5mM DTT、0.25%NP-40、1×Roche(登録商標)完全プロテアーゼ阻害剤に加え、キナーゼ/ホスファターゼ阻害剤である1mM NaVO、10mMベータ-グリセロリン酸塩、1mMピロリン酸ナトリウム、1mM NaF)に再懸濁し、27ゲージ針を通過させた後、氷中のBranson(登録商標)音波処理装置での音波処理(一定の20%出力での3パルス)により、核を破壊した。次に試料を、0.2μmMWCOフィルターで濾過し、任意の不溶性材料を除去した(そして非特異的結合を低減した)。タンパク質を、BCAアッセイを利用して定量し、同量の野生型SIRT6およびcentSIRT6由来抽出物を、それぞれ5本ずつ分割した。抽出物3本ずつに、4μg抗SIRT6抗体(Cell Signaling(登録商標)#1248)または抗ラミンA(ラミンA/C-Millipore(登録商標)05-714)および75μlのMitenyi(登録商標)タンパク質G μMACS磁気粒子を与えた。試料2本ずつを、粒子との非特異的結合のための対照として正常ウサギIgG(Cell Signaling(登録商標)#2729)と混合した。試料を、4℃で6時間回転した後、磁気により分離した。試料を、さらなる3mlの抽出緩衝液で洗浄し、沸騰溶出緩衝液(boiling elution buffer)(5mM Tris-HCl pH7.5を含む5%SDS)100μlで溶出した。S-columns(Protifi(登録商標);NY州ハンティントン)でのSDS除去およびトリプシン消化の後、ペプチドをMS等級の水に再懸濁し、タンデム質量タグ(TMT 10-plex Thermo Fisher Scientific(登録商標))で標識した。1.8μm C-18ビーズをパッケージングした30cm自家製カラムを用いた陽イオンモードでのOrbitrap Fusion Lumos MS装置(Thermo Fisher Scientific(登録商標))でのナノエレクトロスプレーイオン化により、試料を分解し、ペプチドを分解した。溶媒Aは、0.1%ギ酸であり、溶媒Bは、0.1%ギ酸を含む100%アセトニトリル(CAN)であった。測定の長さは、90分勾配を含む2時間であった。CID(35%衝突エネルギー)を、MS2分画に用いた。HCD(60%衝突エネルギー)を、TMT群のMS3検出に用いた。測定パラメータの他の詳細は、ProteomeXchangeデータベースにアップロードしたRAWデータファイルの埋込み測定レポートに見出され得る。ペプチドのアサインメントを、Proteome DiscovererおよびSequestを用いて行い、MS3イオンを、定量に用いた。偽発見率(FDR)を、0.01に設定したTarget FDR(strict)および0.05に設定したTarget FDR(relaxed)でのDecoy Database Searchを用いて推定した。検証は、q値に基づいた。コンセンサスステップでは、30%を超える同時分離閾値(co-isolation threthold)を有するイオンを、除外した。単一タンパク質のペプチド数をレーンの全タンパク質の合計で除算する総タンパク質アプローチを利用して、反復測定の間の正規化を実現した。スチューデントt検定を用いて正常IgG血清と比較した特異的抗体(抗SIRT6または抗ラミンAのどちらか)の中に出現したタンパク質を、相互作用と見なした。同様に、野生型SIRT6と比較してcentSIRT6において高レベルを示すタンパク質は、p<0.05に基づいた。
【0170】
1.18.トリプトファン蛍光によるSIRT6-NAD+結合
緩衝液(50mM Tris-HCl pH=7.5および150mM NaCl)50μl中の1μM SIRT6タンパク質を、NAD+(0~2mM)の範囲内で混和した。その後、試料を384Corning(登録商標)平底黒色プレートに入れ、Tecan Spark(登録商標)20Mプレートリーダで分析した。蛍光を、280nm励起を利用して2nm段階で300~400nmにわたり測定した。7M尿素により変性したSIRT6のNAD+によるバックグランドクエンチングを、Panら(J Phys Chem B, 2011; Vol. 115:3245-3253)により過去に記載したとおりスペクトルから差し引いた。
【0171】
1.19.デアセチラーゼアッセイ
SIRT6タンパク質3μgを、ヒストン0.5μg、1または5mM NAD、30mMTris-HCl pH=8、4mM MgCl、1mM DTTおよびddHOと混和して50μlにした。全ての試薬を、氷中で調製し、インキュベーションの期間、37℃に移した。反応を、BMEを含む2×レムリー緩衝液 1容量の直接適用によりクエンチした。試料を15分間煮沸した後、抗H3K9acおよび抗H3K18ac抗体を用いたウェスタン分析で泳動させた。
【0172】
1.20.PARP1リボシラーゼアッセイ
SIRT6タンパク質5μgを、100fm PARP1、20mM Tris-HCl pH=8、10μM ZnCl、10mM MgCl、10%グリセロール、300μM NAD+、1mM DTT、0.1μg/mlサケ精子DNAおよびddHOと混和して50μlにした。全ての試薬を氷中で調製し、30分間、37℃に移した。反応を、BMEを含む2×レムリー緩衝液 1容量の直接適用によりクエンチした。試料を15分間煮沸した後、抗PADPR抗体を用いてウェスタン分析で泳動させた。
【0173】
1.21.自己リボシル化アッセイ
SIRT6 3μgを、50mM Tris-HCl pH=7.5、1mM DTT、10μM ZnCl、150mM NaCl、25μM NAD+、1μl [32P]-NAD+(800Ci/mmol、5mCi/ml;Perkin Elmer(登録商標)BLU023×250UC)およびddHOと混和して20μlにした。全ての試薬を、SIRT6を除くマスターミックス中、氷中で混和した。マスターミックスを、反応試験管に分取し、SIRT6を添加して、37℃で3時間インキュベートした。反応を、BMEを含む2×レムリー緩衝液 1容量でクエンチした。試料を煮沸し、その後、SDS-PAGEゲルで泳動し、PDPF膜に移した。自己リボシル化を、ホスホイメージャーを用いてアッセイした。
【0174】
1.22.熱安定性
4μM SIRT6タンパク質を、貯蔵緩衝液(50mM Tris-HCl pH=7.5、150mM NaCl、1mM DTT、5%グリセロール)中の1×SYPRO(商標)Orange dyeと混和して50μlにした。試料を、qRT-PCRプレートに入れ、溶融曲線プロトコル(30℃~75℃、10秒間隔で0.5℃段階)を用いてBioRad(登録商標) CFX Connect Real Time装置で測定した。
【0175】
1.23.FRET
百寿者の変異体(N308K/A313S)を作製するための突然変異誘発を、NEB Q5部位特異的変異導入キットを用い、プライマー設計のためのプロトコルに従って実施した。
【0176】
HEK293-6E細胞を、293fectin(登録商標)試薬を用いて製造業者(Thermo Fisher Sicientific(登録商標))の使用説明書に従ってトランスフェクトした。SIRT6バイオセンサーを、哺乳動物発現ベクターpTT5 (National Research Council、カナダ)を用いて発現させた。2日間培養後に、バイオセンサーを高レベルで発現する一過性トランスフェクト細胞株を作製するおよそ3000万個を生成した。この細胞株を、F17培地(Sigma Aldrich(登録商標))+(200nM/mL)GlutaMAX(登録商標)を用いて維持した。
【0177】
各FRETアッセイ日に、各トランスフェクションからのおよそ3000万個の細胞を回収し、300×gでの遠心分離によりMgまたはCaを含まないPBS(Thermo Fischer Scientific(登録商標);MA州ウォルサム)で3回洗浄し、70μmセルストレーナー(Corning(登録商標);NY州コーニング)を用いて濾過し、Countess(商標)自動細胞カウンター(Invitrogen(登録商標);CA州カールズバッド)を用いて100万~200万細胞/mLに希釈した。各実験日に、細胞生存率を、トリパンブルーアッセイを利用して評価した。PBSでの再懸濁および希釈後に、細胞を室温で磁気撹拌棒により連続で穏やかに撹拌し、細胞を懸濁状態に保持して、凝集を防止した。
【0178】
蛍光測定装置の詳細な説明は、Schaafら(SLAS Discov, 2017; Vol.22:262-273)において過去に発表されている。FLT測定のために、観察された蛍光波形を、機器応答関数デコンボリューションしてF(t)(方程式1)を決定し、平均エネルギー伝達効率Eを、方程式2を用いてドナーτおよびドナーアクセプターτDAの平均FLTから計算し、ドナー-アクセプター距離Rを、方程式3を用いて計算した。
【数1】
【0179】
1.24.定量および統計解析
他に断りがなければ、スチューデントt検定を、群間の統計学的有意性を決定するために用いた。全ての検定が、両側であり、p値は、0.05閾値未満を有意と見なした。細胞培養実験は、各遺伝子型について少なくとも2つの別々に誘導した細胞株を用い、他に断りがなければ、三重測定で実施した。インビトロアッセイを、2つ以上の別々のタンパク質単離調製物を使用して三重測定で実施した。
【0180】
結果
ゲノム維持(GM)が主要な長寿保証システムである、という証拠が存在するが、ヒトおよびマウスにおける生存期間の低減および早期老化につながるGM遺伝子の遺伝子欠損、ならびに動物種全体でのより効率的なDNA修復とより長い最大生存期間との相関により、ヒトの極度の長寿におけるGMの役割は、これまで系統的に試験されていない。
【0181】
GMがヒトの極度の長寿における役割を担うかどうかを検討するために、ヌクレオチド除去修復(NER)、塩基除去修復(BER)、ミスマッチ修復(MMR)、相同組換え(HR)、非相同末端結合(NHEJ)、テロメア維持をはじめとする経路における301のゲノム維持遺伝子(表1)、およびこれらの経路の調節に関与する遺伝子のパネルを、アセンブルした。
【0182】
次に、2ラウンドの標的化シーケンシングを実施して、アシュケナージ系ユダヤ人(AJ)百寿者、および発端者に無関係で百寿者の親族を持たない60~70歳のAJ個体の末梢血からのDNA中のこれらの遺伝子の希少なバリアントを同定した(図1)。第一ラウンドでは、51人のAJ百寿者および51人のAJ対照を、シーケンシングし、長寿との関連性を示した122の遺伝子を同定した(表2)。遺伝子オントロジー解析から、これらの遺伝子がDNA二本鎖切断(DSB)修復機能のために豊富であることが示した。次にDSB修復遺伝子を、496人のAJ百寿者および572人の対照のより大規模な集団でシーケンシングした(表4)。
【0183】
モデル生物においてDSB修復のみならず長寿にも機能的に関係する遺伝子SIRT6は、特に興味深かった。SIRT6ノックアウトマウスは、早期老化およびゲノム不安定性を示すが、SIRT6を過剰発現するマウスは、生存期間の延長を示す(Mostoslavsky et al.; Cell, 2006; Vol. 124:315-329参照)。より高いSIRT6活性が、哺乳動物種全体でより効率的なDSB修復およびより長い最大生存期間に関連する。分子レベルでは、SIRT6は、DNA修復、テロメア維持、LINE1レトロトランスポゾンを含む反復エレメントのサイレンシング、グルコース恒常性の調節、炎症および多能性、ならびに腫瘍抑制に関与する。
【0184】
百寿者に豊富に見出されるSIRT6アレルは、高可撓性C末端内に2つのミスセンスを含有し、極性アスパラギン308を荷電リジンに変換し(N308K)、疎水性アラニン313を極性セリンに変換している(A313S)。百寿者キャリアにおける遺伝子型決定から、これらの2種のSIRT6バリアントが連鎖した二重バリアントとして存在することが確認され、それを本発明者らはcentSIRT6と命名した。このアレルは、Geisinger Health Systemにおける主なヨーロッパ起源の人々の成人参加者50,726名の全エクソーム配列データにおいて非常に希少であった(0.001%というわずかなアレル頻度)。次に、百寿者のSIRT6アレルがSIRT6タンパク質の生物活性を変更するかどうかを、検査した。
【0185】
異なるSIRT6アレルを発現するHEK293細胞のSILAC分析は、WTとcentSIRT6の間にタンパク質代謝回転率の差を示さなかった(図2)。異なるSIRT6アレルの生化学的特性を評価するために、各アレルの組換え型を精製した。野生型とcentSIRT6とのインビボでの半減期が類似であることと一致して、インビトロでのSIRT6アレルの熱安定性の顕著な差は観察されず(図3)、centSIRT6がフォールディングまたは周囲の安定性を大きく可変しないことが示唆された。centSIRT6変異は、残基の極性および電荷を変化させるため、SIRT6の中央およびC末端に融合したSIRT6 FRETバイオセンサーを使用して、centSIRT6変異が引き起こし得るタンパク質構造へのより微細な変化について評価した(図4A~4B)。centSIRT6は、ドナー-アクセプター距離Rにおける3.0±0.4Å増加に対応して、FRETを野生型SIRT6に比べてΔE=6.4±0.1%減少させた。この増加は、centSIRT6変異がSIRT6構造をよりオープンなコンフォメーションに向けて移行させることを示している。
【0186】
SIRT6デアシラーゼ活性を、野生型およびcentSIRT6のNAG+およびペプチドについてのKmを決定するためにミリストイル化ペプチドについて検査した。百寿者アレルは、野生型と比較してわずかな活性低減(Vmax)を呈したが(p=0.02)(図5A~5B)、Kmは、両方の基質について野生型とcentSIRT6の間で有意差はなかった(表6)。
【表6】
【0187】
NAD+結合によりSIRT6の本質的Trp蛍光をクエンチングすると、centSIRT6が、野生型アレルと類似のNAD+への親和性を有することも示された(図6)。総括すると、これらのデータから、centSIRT6がデアシラーゼ触媒効率(Vmax/Kmにより定義される)のわずかな低減を付与することが示される(表6)。
【0188】
centSIRT6は、飽和したH3K9acおよびH3K18ac修飾を含む組換えヌクレオソームにおいて有意により低いデアセチラーゼ活性を呈した(図7Aおよび7B)。加えて、centSIRT6アレルは、有意により遅いヒストンデアセチラーゼ反応速度論を呈した(図8A~8B)。合成ヒストンと同様に、centSIRT6は、HeLa細胞から精製したヌクレオソームのH3K9acおよびH3K18a残基cの両方を、野生型SIRT6と比較して有意に低い割合で脱アセチル化した(図9A~9B)。まとめると、デアシラーゼ実験とヒストンデアセチラーゼ実験のデータの組合わせから、centSIRT6バリアントが低減されたデアシラーゼ/デアセチラーゼ活性を有することが示される。
【0189】
インビボでのヒストンデアセチラーゼ活性に及ぼすcentSIRT6アレルの影響を検査するために、テロメラーゼ不死化ヒトHCA2線維芽細胞株を、SIRT6 WT、N308K、A313S、およびcentSIRT6アレルの発現を駆動するクマートスイッチプロモーターを含有するSIRT6 KOバックグランドで作製した(クマートSIRT6線維芽細胞)。各細胞株を、同レベルのSIRT6発現を駆動するようにクマートで誘導した(図27A~27B)。精製ヒストンからのヒストン翻訳後修飾を、過去に記載したとおりペプチド標準を用いて質量分析によりこれらの細胞から定量した (Sidoli et al. Journal of visualized experiments: JoVE, 2016; doi:10.3791/54112)。centSIRT6、N308K、およびA313S SIRT6アレルを発現する細胞は、H3K9ac、H3K18ac、およびH3K56acを含むSIRT6基質であることが知られた全ての部位で類似の包括的ヒストン翻訳後修飾(PTM)レベルを示した(図10)。同様に、ウェスタンブロットにより測定したH3K9acおよびH3K56acの包括的レベルは、パラコート誘導酸化障害をチャレンジした場合でも、有意な変化を示さなかった(図11)。これらの結果は、centSIRT6の脱アシル化活性の低減がインビボで野生型レベルに近いSIRT6脱アセチル化活性の維持を支援する追加的タンパク質因子またはPTMにより補填されることを示唆する。
【0190】
SIRT6は、脱アセチル化活性に加えて、それ自体および他のタンパク質をモノADPリボシル化することが可能なモノADPリボシル化(mADPr)活性を有する。mADPr活性は、DNA損傷応答およびLINE1抑制におけるSIRT6の役割にとって重大である。mADPr活性を評価するために、2種の公知SIRT6基質、つまりPARP1およびSIRT6そのものを用いた。centSIRT6は、野生型SIRT6よりも有意に高い、放射線標識NAD+での自己リボシル化率を実証した(図12)。単一SNAPアレルおよび組み合わせたcentSIRT6は、野生型と比較して自己mADPrの類似の増加を呈し、2種のSNPの間で累積的でない全般的増加を示唆した(図12および28)。これに続いて、mADPr残基への特異性を有する抗体を利用して、NAD+の滴定を使用して自己リボシル化効率を試験した(Bonfiglio et al.; Cell, 2020; Vol. 183:1086-1102)。放射線標識NAD+と同様に、centSIRT6は、野生型SIRT6の106+45と比較してほぼ2倍高い最大mADPr活性を呈し、142+29のより高いKm NADを呈した(図13)。したがってmADPmax/Kapp NADにより定義された全効率は、野生型SIRT6の0.023と比較してcentSIRT6では0.037であり、ほぼ2倍の差となった。トランスでは(In trans)、SIRT6によりリボシル化されることが過去に示されたヒトPARP1とのインキュベーションにより、mADPr活性を評価した。自己リボシル化と同様に、centSIRT6は、より高いPARP1リボシル化活性を呈した(図14)。奇妙にも、両方の単一変異体は、高い活性を有したが、A313Sアレルは、N308KよりもcentSIRT6に類似していた(図14)。これらのデータから、centSIRT6が増強したmADPr活性を呈することが示される。
【0191】
これらのエレメントのサイレンシングの欠如は、SIRT6 KOマウスにおいて、加齢に伴う無菌性炎症に寄与し、早期老化様表現型を駆動する。centSIRT6がLINE1トランスポゾンをサイレンシングする能力を評価するために、SIRT6のアレルを発現するクマート誘導型線維芽細胞を、用いた。LINE1の進化的に活性のあるファミリーの5’および3’の両方のバイアス領域(biased regions)のqRT-PCR分析はいずれも、N308Kアレルと同様に、野生型SIRT6と比較して、LINE1抑制を増強することを示した(図15)。A313Sアレルは、より強い抑制への傾向をわずかに示したを、3’バイアスについて評価すると、野生型SIRT6に対して有意な改善を示さなかった。これらの結果から、centSIRT6が長寿において機能的に示唆されるLINE1エレメントのサイレンシングにおいてより効率的であることが示される。
【0192】
DSB修復を促進する際のSIRT6アレルの間の差を定量するために、I-SceI酵素により誘導した染色体DSBの非相同性末端結合(NHEJ)および相同組換え(HR)修復を測定するインビボGFPに基づくアッセイが用いられた。SIRT6の異なるアレルを、NHEJおよびHRレポーターテロメラーゼ不死化ヒト包皮線維芽細胞株において一過性発現した。同量のcentSIRT6が野生型SIRT6よりもNHEJおよびHRをそれぞれ2.5倍および2倍大きく刺激することが見出した(図16A~16B)。同様に、centSIRT6を発現するクマートSIRT6線維芽細胞において、γH2AXフォーカスの基礎レベルが単一アレルまたは野生型SIRT6のどちらかで観察されたレベルと比較して50%低減されることが観察された(図17)。まとめると、これらのデータは、centSIRT6アレルがDNA修復活性の増強を誘発することが示している。
【0193】
次に、異なるSIRT6アレルがストレスにおいて異なる影響を有するかどうかを、比較した。クマートSIRT6線維芽細胞を利用して、細胞を、γ線に曝露され、DSBの分解を、γH2AX免疫染色を介して経時的に評価した。野生型およびcentSIRT6を発現する細胞の両方が、曝露の直後に類似レベルのγH2AXフォーカスを有したが、centSIRT6を発現する細胞株は、改善した回復率を示した(図18)。さらに、centSIRT6発現細胞が酸化ストレスに誘導したアポトーシスにより抵抗性があることが見出した(図19A~19B)。対照的に、クマート誘導の非存在下では、全ての細胞株が、酸化ストレス後の生存率に有意差を示さなかった(図19A)。まとめると、これらの結果から、centSIRT6がDSB修復およびDNA損傷への抵抗性を改善することが示される。
【0194】
centSIRT6がゲノム維持を増強することをさらに確認するために、centSIRT6アレルを担持するノックインヒト胚性幹細胞を、作製した。2種の百寿者変異を、CRISPR CAS9を用いて導入し、シーケンシングにより確認した。2種の独立したノックインクローンを、作製され、MSCに分化させた。MSCにその後、直鎖状NHEJおよびHR GFPレポーターをトランスフェクトした。centSIRT6アレルを宿す細胞は、高い修復効率を示した(図29A~29B)。これらの細胞はまた、強力なDNA損傷剤であるメタンスルホン酸メチル(MMS)によって処置すると、生存率の上昇および53BP1フォーカス数の低下を示した(図29C~29D)。興味深いこととして、centSIRT6ノックイン細胞は、SIRT6のより高いタンパク質レベルおよびmRNAレベルを示し(図29E~29F)、百寿者変異がSIRT6酵素活性を調整することに加え、mRNA安定性を上昇させることを示唆した。CRISPRノックイン細胞において同レベルのSIRT6を比較することはできなかったため、インビボアッセイの大部分は、クマート細胞に依存した。
【0195】
centSIRT6アレルの腫瘍細胞殺滅能力を評価するために、SIRT6アレルを、2種の一般的腫瘍細胞株、つまりHT1080線維芽細胞腫細胞およびHeLa細胞にトランスフェクトした。centSIRT6は、両方のがん細胞株において約2倍低い接着生存細胞を示した(図20A)。centSIRT6アレルは、野生型SIRT6アレルよりも少なくとも2倍高いアポトーシスレベルを惹起した(図20B~20C)。これらのデータは、centSIRT6が野生型同等物よりもロバストな抗腫瘍活性を付与することを示す。
【0196】
centSIRT6変異は、SIRT6の可撓性C末端に位置し、タンパク質-タンパク質相互作用に影響を及ぼし得るため、centSIRT6および野生型アレルの相互作用を、比較した。SIRT6に対する抗体を用いて、クマートSIRT6線維芽細胞からのSIRT6相互作用タンパク質を免疫沈降させ、正確な定量を可能にするタンデム質量タグ(TMT)での質量分析によりそれらを分析した。複数の相互作用タンパク質を、centSIRT6アレルにより濃縮した(表7)。
【表7】
【0197】
タンパク質を、クマート誘導型SIRT6細胞株から調製し、SIRT6抗体によって免疫沈澱させ、ウサギ免疫前血清を、対照として用いた。質量分析による分析の前に、試料を、タンデム質量タグで標識した。
【0198】
野生型SIRT6よりも強力な、centSIRT6との相互作用を示した最も顕著なタンパク質は、LMNAおよびビメンチン(VIME)であり、それぞれ38および40ペプチドを示した。これらのタンパク質は両者とも、SIRT6と相互作用することが知られており、LMNAは、SIRT6活性を刺激することが示された。centSIRT6セットにおいて、相互作用の欠如または獲得は明らかでなく、新規なアレルの影響が既存のSIRT6機能を増強することにあり得ることを示した。
【0199】
LMNAは、核構成において中枢的役割を担う核足場タンパク質であり、加齢にも関与する。LMNA SNPは、ヒト百寿者において同定されたが、LMNAの異常なプロセシングは、ヒトの早期老化症候群、ハッチンソン・ギルフォード早老症をもたらす。百寿者から単離された線維芽細胞は、高レベルのLMNA前駆体を有することも示され、調整されたLMNA機能が早期老化と例外的長寿の両方に関連することを示唆した。SIRT6とLMNAとの相互作用に関する質量分析データを確認するために、co-IPをSIRT6抗体によって実施し、その後、クマートSIRT6線維芽細胞を用いてLMNA抗体によるウェスタンブロットを実施した。centSIRT6は実際に、野生型SIRT6アレルよりも強力にLMNAと会合することが見出され(図21および図22)、その影響は、LMNA抗体によるco-IP、およびその後のSIRT6抗体によるウェスタンブロットにより評価したとおり相互的であった(図21および図23)。まとめると、これらの結果は、centSIRT6が野生型同等物よりも強力にLMNAと相互作用することが実証する。
【0200】
centSIRT6アレルのmADPr活性が増強することを前提として、次に、mADPr抗体を用いてLMNAのリボシル化状態を評価した。mADPr特異性抗体を用いてクマートSIRT6線維芽細胞で実施したSIRT6 IPでは、精製SIRT6タンパク質によりインビトロで実証したとおり(図13)、インビボでcentSIRT6がよりリボシル化されることが示した(図24)。mADPr特異性抗体を用いたIPおよび続く抗LMNA抗体でのウェスタンブロットで、centSIRT6アレルの存在下でのLMNAのリボシル化の増加が明らかとなった(図25)。LMNAは、インビボで複数の残基でADPリボシル化されることが報告されている。
【0201】
centSIRT6アレルがLMNAと他のタンパク質との相互作用に影響を及ぼし得るという仮説を立てた。これを試験するために、野生型SIRT6またはcentSIRT6アレルのどちらかを発現するクマート線維芽細胞からのLMNAを、免疫沈降させ、TMT標識を用いた定量的タンパク質相互作用分析、およびその後の質量分析を、実施した。多くのタンパク質が、LMNAとの類似の相互作用を示したが、存在するSIRT6アレルとは無関係に、大きなタンパク質群が、centSIRT6の存在下でのLMNAとの相互作用の増強を示した(図26)。centSIRT6により増強されたLMINA相互作用のパートナーは、ELAVL1、FUS、PCBP2、SAFB、SRSF1、SRSF3、TFIP11、THRAP3、BCLAF1、およびU2AFBPを含み、全てのタンパク質が、DNA損傷応答とRNAプロセシングとの連携を容易にする。SIRT6およびLMINA IPで同定されたタンパク質の多くは、ADPリボシル化され(図26に六角形で示される)、SIRT6またはSIRT6活性化PARP1によるADPリボシル化がこれらの相互作用を媒介することにおいて役割を担い得ることを示唆する。まとめると、これらのデータは、centSIRT6がDNA修復を促進してLINE1エレメントを抑制する増強された能力を有し、それが、増強されたmADPr活性およびLMNAとのより強力な相互作用により媒介される可能性があることを示す。
【0202】
考察
百寿者コホートにおいて増強したmADP活性に関連する有益なSIRT6変異の発見は、上昇したSIRT6活性がヒトの長寿に利益をもたらすことを示唆する。上昇したSIRT6活性は、モデル生物においてより長い生存期間と相関するが、SIRT6の酵素活性のどれが長寿の中枢であるかは、明らかにされていない。興味深いこととして、ヒトのSIRT6デアセチル化活性の欠如またはサルのSIRT6ノックアウトは、早期老化よりむしろ重度の発達表現型をもたらし、少なくとも霊長類では、SIRT6の脱アセチル化活性が発達に必要とされるが、必ずしも成人の長寿には必須でないことを示唆している。脱アセチル化とmADPr酵素活性とのバランスの変化は、mADPr活性を必要とする、DNA修復、LINE1抑制およびがん細胞殺滅におけるSIRT6機能の増強をもたらす。centSIRT6バリアントはまた、LMNAへの増強された結合を示し、それがさらに、SIRT6酵素活性の直接刺激を介して、そしてLMNAと他のLMNA複合体成分との連携した相互作用により、DNA修復およびクロマチン構成においてその機能を促進し得る。
【0203】
実施例2
材料と方法
細胞培養
3T3-L1、LX2、HepG2、Hep3b(全てマナサスのAmerican Type Culture Collection-ATCCから購入)およびWSF(NJ州のCoriell Institute for Medical Researchから購入)細胞を、10%ウシ胎仔血清(F9665、Sigma-Aldrich)、15mM Hepes緩衝液(L0180、Biowest)、GlutaMAX(商標) Supplement(100×、35050-038、Gibco)、100U/mlペニシリンおよび100mg/mlストレプトマイシン溶液(L0022、Biowest)、100nMピルビン酸ナトリウム(11360、Gibco)、ならびに非必須アミノ酸(NEAA 11140、100×、Gibco)を補充した高グルコース(4.5g/l)DMEM(LM-D1108/500、Biosera)からなる基本培地中、37℃の5%CO2/湿潤大気中で成長させた。培地を、日常的に2日ごとに交換し、細胞を、90%コンフルエンスに達すると、TrypLE Express(1×、Gibco)を用いて継代培養した。
【0204】
IHH細胞を、American Type Culture Collection(ATCC、VA州マナサス)から購入し、2g/lグルコースを含有し、10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン溶液、20mU/mlインスリン、ならびに50nMデキサメタゾンを補充したウィリアムズE培地(12551032、Gibco)中、37℃の5%CO2/湿潤大気中で培養した。細胞培養培地を、2日ごとに交換し、90%コンフルエンシーに達するとTrypLE Expressを用いて継代培養した。
【0205】
顕微鏡分析の目的で、全ての適当な細胞株を、標準の培養プロトコルをさらに改変せずに、0.2%ゼラチンでコーティングしたガラスカバースリップに播種した。組織線維形成に及ぼすSIRT6バリアントおよびそれらの過剰発現の影響の評価のために、適当な細胞株を、線維形成工程の強力な誘導物質としての、10および20ng/mlの濃度の組換えTGF-β1タンパク質(100-21C、Peprotech、米国)で処置した、または処置しなかった。
【0206】
レンチウイルス感染およびSIRT6細胞株の樹立
コンフルエンスに達した後の細胞を、分離し、成長表面積2cmの24ウェルプレートに播種し、そこで50×10細胞/ウェルで播種した。播種直後の細胞に、4μg/mLポリブレントランスフェクション試薬(TR-1003、Sigma-Aldrich)を補充した基礎DMEM培地中、1~2のMOIでSIRT6構築物:LV2-EMPTY-IresKat2S、LV2-SIRT6(wt)-IresKat2S、LV2-SIRT6(N308K)-IresKat2SおよびLV2-SIRT6(centSIRT6)-IresKat2Sを含有するレンチウイルスを感染させた。細胞を、レンチウイルス構築物と共に24時間の期間、培養し、その後、新鮮な培地を、添加し、細胞を、さらに48時間培養した。その後、細胞を、500μg/mLハイグロマイシン(H3274、Merck)を含む基礎DMEM培地で構成した選択培地で5日間、処置した(1日おきに、培地を新鮮な培地に交換した)。選択の後、残留する細胞を、増殖させ、ex/em 588/635の蛍光顕微鏡により蛍光Kat2Sシグナルの存在についてチェックした。SIRT6過剰発現を、ウェスタンブロットにより確認した。
【0207】
3T3-L1脂肪細胞への分化
細胞を、500μM IBMX(I5879、Sigma-Aldrich)、1μMロシグリタゾン(I5879、Sigma-Aldrich)、250nMデキサメタゾン(D4902、Sigma-Aldrich)、10nM 3,3’,5’-トリヨード-L-チロニン(T6397、Sigma-Aldrich)、17μM D-パントテン酸(21210、Sigma-Aldrich)、10μg/mlヒトトランスフェリン(T8158、Sigma-Aldrich)および1μg/mlインスリン(I9278、Sigma-Aldrich)を追加的に補充した標準の基礎高グルコースDMEM培地からなる分化培地中で72時間の期間、インキュベートすることにより、3T3-L1脂肪細胞の分化を、100%コンフルエンシーでの播種の2日後に誘導した。その後、細胞を、25nMデキサメタゾンおよび0.1μg/mlインスリンのみを補充した基礎高グルコースDMEM培地からなる維持培地で少なくとも4日の期間、維持する。脂肪細胞分化および/または細胞内脂質の蓄積を、BODIPY色素(1μg/ml)による30分間の蛍光標識(ex/em 493/503)および1μg/mL DAPI対比染色による30分間の蛍光標識を利用して評価した。その後、蛍光を、適当な励起/発光フィルターを具備したAglient BioTek FL×800マイクロプレート蛍光リーダにより捕捉した。
【0208】
細胞生存率アッセイ
細胞を、96ウェルプレートに2000生存可能細胞/ウェルで播種し、24、48および72時間後に、培養培地を、除去し、核染色のために1μg/mLのHoechst色素を含有する培地と交換した。37での20分間のインキュベーション後に、細胞をPBSで2回洗浄し、蛍光シグナルを、ex/em 355/488のAglient BioTek FL×800マイクロプレート蛍光リーダで測定した。異なる時点とT0とのシグナルの比を、生存可能細胞の相対的パーセンテージとして用いた。
【0209】
遺伝子発現測定
ゲノムRNAを、RNeasy mini Kit(74106、Qiagen、ドイツ)を用い、製造業者の使用説明書に従ってカラム分離技術により単離した。少なくとも4つの生物学的反復実験を、各処置群で調製した。NanoDrop 1000分光光度計(ThermoFisher Scientific)での単離総RNAの定量の後、総単離RNA 1μgを用いて、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(4368814、ThermoFisher Scientific)を用いてcDNAを調製した。リアルタイムPCRを、StepOnePlus(商標)Real-Time PCR System(Applied Biosystems)およびSYBR(商標)Select Master Mix(4472908、ThermoFisher Scientific)を用いて少なくとも2つの技術的反復実験で実施した。PCR反応物を、10μl容量に保持し、250ng cDNA/ウェルを、インプット量として用いた。この試験で用いたプライマー配列を、表8に列挙する。
【表8】
【0210】
テロメア長
定量的RT-PCRを用いて、ScienCellのRelative Human Telomere Length Quantification qPCR Assay Kit(#8909)に基づいて、LVトランスフェクトWSF細胞および非処置WSFの平均テロメア長の変化を決定した。キットは、試料の平均テロメア長を直接比較する。テロメアプライマーセットは、テロメア配列を認識および増幅する。シングルコピーリファレンス(SCR)プライマーセットは、ヒト染色体17上の100bp長領域を認識および増幅して、データ正規化のための参照として役立つ。注意深く設計したプライマーは、(i)信頼できる定量のための高い効率、および(ii)非特異的増幅がないことを確実にする。各プライマーセットは、融解曲線分析を用いるqPCR、および増幅特異性のためのゲル電気泳動、および増幅効率のためのテンプレート系列希釈により検証されている。ゲノムDNA(gDNA)を、Qiagen DNA Isolation Kit(Qiagen、ドイツ ハイデン)を用いて単離した。各PCR反応物は、ゲノムDNA試料(0.01μg/μL)、テロメアプライマー、2×qPCRマスターミックス、およびヌクレアーゼ不含水を含有した。プライマー-プローブ・リアルタイムPCRを、StepOnePlus(商標)Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を用いて実施した。全ての反応を、二重測定で実施し、テンプレート対照を、各測定に含んだ。増幅を、以下の条件下で実施した:95℃で10分間の変性、その後、95℃で20秒間の変性、52℃で20秒間のアニーリング、および72℃で45秒間の伸長を32サイクル。平均テロメア長を、製造業者の使用説明書に従って計算した。
【0211】
テロメラーゼ活性の定量
LV WSFトランスフェクト細胞株および正常WSF細胞の相対的テロメラーゼ活性を、SYBR(登録商標)Greenアッセイキット(ScienCellのTelomerase Activity Quantification qPCR Assay Kit[TAQ]、米国CA州カールズバッド)を用いて、製造業者の推奨に従い、StepOnePlus(商標)Real-Time PCR System(Applied Biosystems)でのqPCRにより評価した。300万個の細胞を、各試料のために回収した。各実験で、2種の対照:陰性テロメラーゼおよび陽性細胞溶解物(Cat#8928e)を、用いた。PCRを、テロメラーゼ反応後試料 1μL、TPS 2μL、2×qPCR FastStart Essential Green Master Mix(Roche Diagnostics International)10μLおよびヌクレアーゼ不含水7μLを用いて、最終容量20μLで実施した。PCR条件は、以下のとおりであった:95℃で10分間、その後95℃で20秒間、52℃で20秒間、72℃で45秒間を36サイクル。全ての反応を、三重測定で実施した。データ解析を、製造業者の使用説明書に従って実行した。
【0212】
イムノブロッティング分析
細胞を、TrypLE Expressを用いて培養プレートから回収し、1×PBSで洗浄し、300gで遠心分離した。上清を廃棄した後、得られたペレットを、Halt(商標)Protease and Phosphatase Inhibitor Cocktail(100×、Thermo Fisher)を補充した1×Rippa溶解緩衝液(20-188、Millipore、米国)で再懸濁し、10分ごとに激しくボルテックス処理しながら氷中(4℃)で30分間溶解した。10,000gで10分間遠心沈降させた後、上清を新しいバイアルに移し、タンパク質の濃度を、Pierce(商標)BCA Protein Assay Kit(23225、Thermo Fisher)により、製造業者の使用説明書に従って測定した。同量のタンパク質試料(少なくとも20μg)を、1xレムリーサンプル緩衝液(1610747、4×、Bio-Rad)と混合し、95℃で5分間煮沸して氷中で冷却した後、同量のタンパク質(40μl)を、10%Mini-PROTEAN(登録商標)TGX Stain-Free(商標)Protein Gels(4568034、Bio-Rad)にロードし、120ボルトで45分間測定する電気泳動により分離した。タンパク質の移動を、Trans-Blot Turbo RTA Mini 0.45μm LF PVDF Transfer Kit(1704274、Bio-Rad)と、1,3Aおよび25VのBio-Rad Trans-Blot Turbo Transfer Systemと、を用いてPVDF膜で10分間実施した。膜をその後、TBST緩衝液(20mM Tris-HCl pH7.6、140mM NaCl、0.1%Tween20)に溶解した5%ウシ血清アルブミン(BSA、P6154、BioWest)で少なくとも30分間ブロックし、TBSTブロッキング溶液に適当な希釈率で希釈した特異的一次抗体(以下参照)と共にインキュベートした。TBST緩衝液での3回の洗浄に続いて、膜を、TBSTブロッキング緩衝液で希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼをコンジュゲートした二次抗体と共にインキュベートした。TBSTでのさらなる3回の洗浄の後、タンパク質を、Clarity Western ECL Substrate(1705061、Bio-Rad)により顕色し、シグナルを、Bio-Rad ChemiDoc XRS+イメージングシステムで検出した。定量的測定のために、スキャンした膜を、Image Lab(商標)ソフトウエア(Bio-Rad)を用いて解析した。
【0213】
この試験で用いられた抗体:Cell Signaling Technology(米国MA州)-ウサギ抗Akt(1:1000)、ウサギ抗ホスホAkt(Ser473)(1:1000)、ウサギ抗ビメンチン(1:1000)、ウサギ抗ヒストンH3(D1H2、1:1000)、Abcam(UK)-マウス抗-β-アクチンHRPコンジュゲート抗体(AC-15;1:2000)、マウス抗GAPDHモノクローナルHRPコンジュゲート抗体(1:2000)、ウサギ抗コラーゲンI(1:1000)、ウサギ抗αSMA(1:1000)、ウサギ抗SIRT6抗体(1:1000、EPR18463)、ThermoFischer Scientific(米国CA州)-マウスIgG1 GAPDHモノクローナルHRPコンジュゲート抗体(1:2000)、二次ヒツジ抗ウサギIgG HRP結合(1:2000)。
【0214】
3Dスフェロイド培養
細胞スフェロイドの作製のための、細胞を、細胞培養のためのBIOFLOAT(商標) 96ウェル丸底超低接着プレートに10000生存可能細胞/ウェルで播種した。各IHH LVトランスフェクト細胞株(CTL/EMPTY、WT、N308KおよびcentSIRT6)を、正常LX2細胞または過剰発現centSirt6 LX2細胞のどちらかと20:1の比で共培養し、肝細胞が主な細胞型で肝星細胞を5%だけ含む肝実質内で、生理学的割合で再生させた。スフェロイドを、先に記載した通り補充した基礎高グルコースDMEM培地で成長した。プレートを、5%CO2の加湿雰囲気において37℃で3日間インキュベートし、その後、スフェロイドを、遊離脂肪酸溶液(FFA、L9655、Sigma-Aldrich)で処置して、また処置せずに、48時間培養を維持した。その後、スフェロイドを、回収し、PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド+エオジン溶液で20分間固定し、10%スクロース中で20分間インキュベートし、切断および次の免疫組織学的分析のために組織凍結培地(14020108926、Leica Biosystems、米国)に組み入れた。
【0215】
組織学的免疫染色
組織凍結培地中の包埋および瞬間凍結したスフェロイドの試料を、Cryotome(Leica Microsystems)により-20℃で7μmに切り出し、さらなる使用のために-80℃で貯蔵した。肝臓組織線維形成に及ぼすSIRT6バリアントおよびその過剰発現の影響を評価するために、スフェロイド組織切片を免疫標識して、コラーゲン1Aを検出した。スライドを1×PBSで1回洗浄し、組織凍結培地に溶解し、0.2%Tween-20および5%BSAを補充した1×PBSでブロックした。一次抗体のウサギ抗コラーゲンI(1:500、ab34710、Abcam)を、DAKO抗体希釈液(S202230-2、Agilent technologies)で希釈して、検査室温度の加湿チャンバー内で一夜インキュベートした。1×PBSでの連続3回の洗浄の後、Alexa Fluor(商標)647をカップリングした二次抗体の(1:500)ロバ抗ウサギIgGのミックスを、適用し、少なくとも1時間インキュベートした。1×PBSで3回洗浄した後、スライドをDAPI(1μg/ml)溶液で15分間対比染色し、Mowiol硬化培地で封入した。硬化(4℃で一夜)の後、Hamamatsu ORCA-Flash 4.0カメラを具備したAxio scan Z.1(ZEISS)で画像を獲得し、ImageJソフトウエア(NIH、米国)解析プログラムを用いて、全ての免疫蛍光画像を評価した。各条件/細胞株ごとの少なくとも5のスフェロイドを、連続3回の独立した実験で用い、スフェロイド試料中の線維形成、即ちコラーゲン1Aの存在量を、100×倍率でDAPI蛍光により輪郭を描かれた全スフェロイド面積の%として評価した。
【0216】
結果
SIRT6野生型、またはヒトの例外的長寿に関連する1つもしくは2つの変異を有するSIRT6(SIRT6 N308K、centSIRT6)は、種々の細胞株で過剰発現され、これがどのようにして特異的細胞機能に影響を及ぼすかを評価した。
【0217】
ウェルナー症候群モデル
ヒトウェルナー症候群不死化線維芽細胞において、SIRT6 WT/SIRT6 N308K/centSIRT6は、細胞生存率、増殖またはテロメア長に影響を及ぼさなかった(図30A~30B)。しかしcentSIRT6は、テロメラーゼ活性を低下させた(図30C)。
【0218】
逆効果と思われるかもしれないが、ウェルナー症候群不死化線維芽細胞は、発がん性を有し得る、あまり特徴付けがなされていない不死化細胞株である。それゆえ、任意の理論に拘束されることなく、これが当てはまる場合には、テロメラーゼ活性を低下させることは、有益効果になるであろう。
【0219】
ヒト肝細胞がんモデル
ヒト肝細胞がん(HCC)細胞において、SIRT6 WT/SIRT6 N308K/centSIRT6過剰発現は、致死性であり、SIRT6 N308K/centSIRT6ではより大きな影響が観察した(図31A~31B)。 それゆえ、変異型SIRT6は、がんの処置にとって有用になり得る。
【0220】
脂肪生成分化
SIRT6の欠損が低血糖およびエネルギー恒常性の障害をもたらすことが報告されており、SIRT6が脂肪細胞分化を調節することに重要な役割を担う可能性を示唆している。加齢脂肪細胞は、特に高脂肪食摂取の下では、肥大するようになり、インスリン抵抗性になり、広いパターンの炎症促進性サイトカインを生成して、循環するトリグリセリドおよび遊離脂肪酸の増加に寄与し、同時に他の臓器に影響を及ぼして、典型的には肥満に関連する併存疾患をもたらす。その一方で、脂肪生成の増加は、インスリンにより感受性がある新しい脂肪細胞の形成を可能にし、代謝恒常性および炎症レベルの低下に寄与する、脂肪貯蔵能力の上昇およびアディポカインレベルの増加を示す。
【0221】
本明細書において、結果は、SIRT6が脂肪生成分化の増加において役割を担うことを実証し(図32)、それはSIRT6がエネルギー恒常性におけるこのタンパク質の役割と一致する。SIRT6変異体(SIRT6 N308KおよびcentSIRT6)は、この特性を保持しており、これは加齢および加齢に伴う疾患の処置にとって重要である。
【0222】
肝星細胞モデル
α-SMA発現は、肝星細胞(HSC)活性化の信頼性のあるマーカーおよび肝線維症の重大なバイオマーカーであると考えられている。肝臓では、HSCは、生理学的組織修復および線維症の発症において中心的な役割を担い、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、炎症工程およびROSに応答して、「静止期」HSCから筋線維芽細胞性表現型に分化転換する。
【0223】
SIRT6 WT/SIRT6 N308K/centSIRT6過剰発現は、細胞生存率または増殖に影響を及ぼさなかった(図33A)。TGFベータによってLX2を活性化すると、遺伝子型にかかわらず、レンチウイルス感染による幾つかの線維形成マーカー(ビメンチン、TIMP1)の活性化が遮断される(図33B~33C)。コラーゲンmRNA発現は、TGFベータにより増加し、SIRT6 WT/SIRT6 N308K/centSIRT6過剰発現の影響は認められなかった(図33D)。しかし、centSIRT6は、主要な線維形成性マーカーであるaSMAのmRNA発現を有意に減少させた(図33E)。
【0224】
対照と比較してcentSIRT6 LX2におけるα-SMAのより低い遺伝子発現レベルは、肝線維症の防止、および/またはその分解の促進におけるcentSIRT6の潜在的な抗線維症効果を示唆している。
【0225】
肝スフェロイドモデル
コラーゲン(COL1A)は、α-SMAと共に、重大な線維症マーカーの1種を表す。肝臓におけるその生成は、主に活性化した肝星細胞により増加する。
【0226】
IHH細胞、および全細胞塊の5%のLX2(ヒト肝星細胞)から形成されるスフェロイドを、作製した。スフェロイドを、遊離脂肪酸(FFA)で処置したか、または処置せず、免疫蛍光によるコラーゲン生成を評価した(図34A)。
【0227】
centSIRT6をトランスフェクトしたIHHを含むIHH/LX2スフェロイドにおいて、対照(エンプティ群)と比較した内部コラーゲン量の減少が、観察され、ストレス因子の非存在下の基本レベルでIHH centSIRT6がコラーゲン生成を阻害することを、示唆した(図34B)。
【0228】
遊離脂肪酸(FFA)への曝露が酸化ストレスを促進し、LX2を間接的に活性化してコラーゲン生合成を増加させることは、公知である。驚くべきことに、FFAの存在下では、対照と比較してIHH centSIRT6スフェロイド中の内部コラーゲンの増加レベルが、観察された(図34C)。centSIRT6過剰発現により誘導されたベータ-酸化の増強を伴う遊離脂肪酸レベルの上昇は、線維芽細胞の筋線維芽細胞表現型の獲得に必要となるより多くのATPを提供して、基本レベルで観察したcentSIRT6過剰発現により発揮されるコラーゲン生成に及ぼす阻害効果を克服し得る。
【0229】
本明細書で用いられた配列
配列番号1 - 野生型SIRT6アミノ酸配列
MSVNYAAGLSPYADKGKCGLPEIFDPPEELERKVWELARLVWQSSSVVFHTGAGISTASGIPDFRGPHGVWTMEERGLAPKFDTTFESARPTQTHMALVQLERVGLLRFLVSQNVDGLHVRSGFPRDKLAELHGNMFVEECAKCKTQYVRDTVVGTMGLKATGRLCTVAKARGLRACRGELRDTILDWEDSLPDRDLALADEASRNADLSITLGTSLQIRPSGNLPLATKRRGGRLVIVNLQPTKHDRHADLRIHGYVDEVMTRLMKHLGLEIPAWDGPRVLERALPPLPRPPTPKLEPKEESPTRINGSIPAGPKQEPCAQHNGSEPASPKRERPTSPAPHRPPKRVKAKAVPS
【0230】
配列番号2 - SIRT6 N308Kバリアントアミノ酸配列
MSVNYAAGLSPYADKGKCGLPEIFDPPEELERKVWELARLVWQSSSVVFHTGAGISTASGIPDFRGPHGVWTMEERGLAPKFDTTFESARPTQTHMALVQLERVGLLRFLVSQNVDGLHVRSGFPRDKLAELHGNMFVEECAKCKTQYVRDTVVGTMGLKATGRLCTVAKARGLRACRGELRDTILDWEDSLPDRDLALADEASRNADLSITLGTSLQIRPSGNLPLATKRRGGRLVIVNLQPTKHDRHADLRIHGYVDEVMTRLMKHLGLEIPAWDGPRVLERALPPLPRPPTPKLEPKEESPTRIKGSIPAGPKQEPCAQHNGSEPASPKRERPTSPAPHRPPKRVKAKAVPS
【0231】
配列番号3 - SIRT6 A313Sバリアントアミノ酸配列
MSVNYAAGLSPYADKGKCGLPEIFDPPEELERKVWELARLVWQSSSVVFHTGAGISTASGIPDFRGPHGVWTMEERGLAPKFDTTFESARPTQTHMALVQLERVGLLRFLVSQNVDGLHVRSGFPRDKLAELHGNMFVEECAKCKTQYVRDTVVGTMGLKATGRLCTVAKARGLRACRGELRDTILDWEDSLPDRDLALADEASRNADLSITLGTSLQIRPSGNLPLATKRRGGRLVIVNLQPTKHDRHADLRIHGYVDEVMTRLMKHLGLEIPAWDGPRVLERALPPLPRPPTPKLEPKEESPTRINGSIPSGPKQEPCAQHNGSEPASPKRERPTSPAPHRPPKRVKAKAVPS
【0232】
配列番号4 - SIRT6 N308K A313Sバリアント(centSIRT6)アミノ酸配列
MSVNYAAGLSPYADKGKCGLPEIFDPPEELERKVWELARLVWQSSSVVFHTGAGISTASGIPDFRGPHGVWTMEERGLAPKFDTTFESARPTQTHMALVQLERVGLLRFLVSQNVDGLHVRSGFPRDKLAELHGNMFVEECAKCKTQYVRDTVVGTMGLKATGRLCTVAKARGLRACRGELRDTILDWEDSLPDRDLALADEASRNADLSITLGTSLQIRPSGNLPLATKRRGGRLVIVNLQPTKHDRHADLRIHGYVDEVMTRLMKHLGLEIPAWDGPRVLERALPPLPRPPTPKLEPKEESPTRIKGSIPSGPKQEPCAQHNGSEPASPKRERPTSPAPHRPPKRVKAKAVPS
【0233】
配列番号5 - 野生型SIRT6核酸配列
atgtcggtgaattacgcggcggggctgtcgccgtacgcggacaagggcaagtgcggcctcccggagatcttcgaccccccggaggagctggagcggaaggtgtgggaactggcgaggctggtctggcagtcttccagtgtggtgttccacacgggtgccggcatcagcactgcctctggcatccccgacttcaggggtccccacggagtctggaccatggaggagcgaggtctggcccccaagttcgacaccacctttgagagcgcgcggcccacgcagacccacatggcgctggtgcagctggagcgcgtgggcctcctccgcttcctggtcagccagaacgtggacgggctccatgtgcgctcaggcttccccagggacaaactggcagagctccacgggaacatgtttgtggaagaatgtgccaagtgtaagacgcagtacgtccgagacacagtcgtgggcaccatgggcctgaaggccacgggccggctctgcaccgtggctaaggcaagggggctgcgagcctgcaggggagagctgagggacaccatcctagactgggaggactccctgcccgaccgggacctggcactcgccgatgaggccagcaggaacgccgacctgtccatcacgctgggtacatcgctgcagatccggcccagcgggaacctgccgctggctaccaagcgccggggaggccgcctggtcatcgtcaacctgcagcccaccaagcacgaccgccatgctgacctccgcatccatggctacgttgacgaggtcatgacccggctcatgaagcacctggggctggagatccccgcctgggacggcccccgtgtgctggagagggcgctgccacccctgccccgcccgcccacccccaagctggagcccaaggaggaatctcccacccggatcaacggctctatccccgccggccccaagcaggagccctgcgcccagcacaacggctcagagcccgccagccccaaacgggagcggcccaccagccctgccccccacagaccccccaaaagggtgaaggccaaggcggtccccagctga
【0234】
配列番号6 - SIRT6 N308Kバリアント核酸配列
atgtcggtgaattacgcggcggggctgtcgccgtacgcggacaagggcaagtgcggcctcccggagatcttcgaccccccggaggagctggagcggaaggtgtgggaactggcgaggctggtctggcagtcttccagtgtggtgttccacacgggtgccggcatcagcactgcctctggcatccccgacttcaggggtccccacggagtctggaccatggaggagcgaggtctggcccccaagttcgacaccacctttgagagcgcgcggcccacgcagacccacatggcgctggtgcagctggagcgcgtgggcctcctccgcttcctggtcagccagaacgtggacgggctccatgtgcgctcaggcttccccagggacaaactggcagagctccacgggaacatgtttgtggaagaatgtgccaagtgtaagacgcagtacgtccgagacacagtcgtgggcaccatgggcctgaaggccacgggccggctctgcaccgtggctaaggcaagggggctgcgagcctgcaggggagagctgagggacaccatcctagactgggaggactccctgcccgaccgggacctggcactcgccgatgaggccagcaggaacgccgacctgtccatcacgctgggtacatcgctgcagatccggcccagcgggaacctgccgctggctaccaagcgccggggaggccgcctggtcatcgtcaacctgcagcccaccaagcacgaccgccatgctgacctccgcatccatggctacgttgacgaggtcatgacccggctcatgaagcacctggggctggagatccccgcctgggacggcccccgtgtgctggagagggcgctgccacccctgccccgcccgcccacccccaagctggagcccaaggaggaatctcccacccggatcaagggctctatccccgccggccccaagcaggagccctgcgcccagcacaacggctcagagcccgccagccccaaacgggagcggcccaccagccctgccccccacagaccccccaaaagggtgaaggccaaggcggtccccagctga
【0235】
配列番号7 - SIRT6 A313Sバリアント核酸配列
atgtcggtgaattacgcggcggggctgtcgccgtacgcggacaagggcaagtgcggcctcccggagatcttcgaccccccggaggagctggagcggaaggtgtgggaactggcgaggctggtctggcagtcttccagtgtggtgttccacacgggtgccggcatcagcactgcctctggcatccccgacttcaggggtccccacggagtctggaccatggaggagcgaggtctggcccccaagttcgacaccacctttgagagcgcgcggcccacgcagacccacatggcgctggtgcagctggagcgcgtgggcctcctccgcttcctggtcagccagaacgtggacgggctccatgtgcgctcaggcttccccagggacaaactggcagagctccacgggaacatgtttgtggaagaatgtgccaagtgtaagacgcagtacgtccgagacacagtcgtgggcaccatgggcctgaaggccacgggccggctctgcaccgtggctaaggcaagggggctgcgagcctgcaggggagagctgagggacaccatcctagactgggaggactccctgcccgaccgggacctggcactcgccgatgaggccagcaggaacgccgacctgtccatcacgctgggtacatcgctgcagatccggcccagcgggaacctgccgctggctaccaagcgccggggaggccgcctggtcatcgtcaacctgcagcccaccaagcacgaccgccatgctgacctccgcatccatggctacgttgacgaggtcatgacccggctcatgaagcacctggggctggagatccccgcctgggacggcccccgtgtgctggagagggcgctgccacccctgccccgcccgcccacccccaagctggagcccaaggaggaatctcccacccggatcaacggctctatcccctccggccccaagcaggagccctgcgcccagcacaacggctcagagcccgccagccccaaacgggagcggcccaccagccctgccccccacagaccccccaaaagggtgaaggccaaggcggtccccagctga
【0236】
配列番号8 - SIRT6 N308K A313Sバリアント(centSIRT6)核酸配列
atgtcggtgaattacgcggcggggctgtcgccgtacgcggacaagggcaagtgcggcctcccggagatcttcgaccccccggaggagctggagcggaaggtgtgggaactggcgaggctggtctggcagtcttccagtgtggtgttccacacgggtgccggcatcagcactgcctctggcatccccgacttcaggggtccccacggagtctggaccatggaggagcgaggtctggcccccaagttcgacaccacctttgagagcgcgcggcccacgcagacccacatggcgctggtgcagctggagcgcgtgggcctcctccgcttcctggtcagccagaacgtggacgggctccatgtgcgctcaggcttccccagggacaaactggcagagctccacgggaacatgtttgtggaagaatgtgccaagtgtaagacgcagtacgtccgagacacagtcgtgggcaccatgggcctgaaggccacgggccggctctgcaccgtggctaaggcaagggggctgcgagcctgcaggggagagctgagggacaccatcctagactgggaggactccctgcccgaccgggacctggcactcgccgatgaggccagcaggaacgccgacctgtccatcacgctgggtacatcgctgcagatccggcccagcgggaacctgccgctggctaccaagcgccggggaggccgcctggtcatcgtcaacctgcagcccaccaagcacgaccgccatgctgacctccgcatccatggctacgttgacgaggtcatgacccggctcatgaagcacctggggctggagatccccgcctgggacggcccccgtgtgctggagagggcgctgccacccctgccccgcccgcccacccccaagctggagcccaaggaggaatctcccacccggatcaagggctctatcccctccggccccaagcaggagccctgcgcccagcacaacggctcagagcccgccagccccaaacgggagcggcccaccagccctgccccccacagaccccccaaaagggtgaaggccaaggcggtccccagctga
【0237】
配列番号9 - LINE1 ORF1フォワードプライマー
atggcgaaaggcaaacgtaag
【0238】
配列番号10 - LINE1 ORF1リバースプライマー
attttcggttgtgttggggtg
【0239】
配列番号11 - LINE1 ORF2フォワードプライマー
gcaggggttgcaatcctagtc
【0240】
配列番号12 - LINE1 ORF2リバースプライマー
ctgggtgctcctgtattgggt
【0241】
配列番号13 - αSMAフォワードプライマー
aaaagacagctacgtgggtga
【0242】
配列番号14 - αSMAリバースプライマー
gccatgttctatcgggtacttc
【0243】
配列番号15 - COL1A1フォワードプライマー
gtgcgatgacgtgatctgtga
【0244】
配列番号16 - COL1A1リバースプライマー
cggtggtttcttggtcggt
【0245】
配列番号17 - TIMP1フォワードプライマー
accaccttataccagcgttatga
【0246】
配列番号18 - TIMP1リバースプライマー
ggtgtagacgaaccggatgtc
【0247】
配列番号19 - ビメンチンフォワードプライマー
agtccactgagtaccggagac
【0248】
配列番号20 - ビメンチンリバースプライマー
catttcacgcatctggcgttc
【0249】
配列番号21 - MMP2フォワードプライマー
tacaggatcattggctacacacc
【0250】
配列番号22 - MMP2リバースプライマー
ggtcacatcgctccagact
【0251】
配列番号23 - GAPDHフォワードプライマー
ggtgcgtgcccagttga
【0252】
配列番号24 - GAPDHリバースプライマー
tactttctccccgcttttt
【0253】
配列番号25 - アクチンβフォワードプライマー
catgtacgttgctatccaggc
【0254】
配列番号26 - アクチンβリバースプライマー
ctccttaatgtcacgcacgat
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B-C】
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B-C】
図29D-E】
図29F
図30A
図30B-C】
図31A
図31B
図32
図33A
図33B
図33C-D】
図33E
図34A
図34B-C】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024518665000001.app
【国際調査報告】