(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】埋立石炭灰の活用のための前処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/30 20220101AFI20240424BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20240424BHJP
B03D 1/02 20060101ALI20240424BHJP
B03D 1/08 20060101ALI20240424BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240424BHJP
B03C 1/005 20060101ALI20240424BHJP
B03C 1/02 20060101ALI20240424BHJP
B03B 5/30 20060101ALI20240424BHJP
B03B 7/00 20060101ALI20240424BHJP
B03B 9/06 20060101ALI20240424BHJP
B09B 101/30 20220101ALN20240424BHJP
【FI】
B09B3/30 ZAB
B09B3/35
B03D1/02
B03D1/08 104
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/005
B03C1/02 Z
B03B5/30
B03B7/00
B03B9/06
B09B101:30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538165
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2022003144
(87)【国際公開番号】W WO2023158010
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0021349
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年7月8日 プロセス・セイフティー・アンド・エンバイロメンタル・プロテクション,第153巻,2021年,第192~204頁,エルゼビア
(71)【出願人】
【識別番号】522243495
【氏名又は名称】ナショナル インスティチュート オブ エンヴァイロメンタル リサーチ
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL INSTITUTE OF ENVIRONMENTAL RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】ウム ナミル
(72)【発明者】
【氏名】カン ヨンヨル
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョルウ
(72)【発明者】
【氏名】ホン スヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ナヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンジョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジャヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン テワン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヨンサム
【テーマコード(参考)】
4D004
4D071
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AC04
4D004BA03
4D004BA05
4D004CA04
4D004CA09
4D004CA10
4D004DA20
4D071AA43
4D071AA62
4D071AB52
4D071CA03
4D071DA15
(57)【要約】
本発明は、埋立石炭灰(石炭火力発電所の近隣埋立池に埋め立てられた石炭灰)の活用のための前処理方法に関し、より詳細には、スクリーニング(screening)、比重選別(float-sink)、浮遊選別(floatation)、粉砕(grinding)及び磁力選別(magnetic separation)の簡単な分離工程によって高い活用度で石炭灰を活用できる埋立石炭灰の前処理方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含む埋立石炭灰(CPA)の前処理方法:
(a)埋立石炭灰を篩(sieve)を用いてスクリーニングし、粗大粒子、中間粒子及び微粒子に分類する段階;
(b)前記(a)段階で取得した微粒子を浮遊選別(floatation)させる段階;
(c)前記(a)段階で取得した中間粒子を比重選別(float-sink)させる段階;及び
(d)前記(b)段階で取得した残留物と前記(c)段階で取得した残留物とを混合した後、磁力選別(magnetic separation)させて、Fe酸化物含有微細物質とSi及びAl含有微細物質を取得する段階。
【請求項2】
前記(a)段階において、0.15mm及び2.36mm直径の格子がある標準篩を用いて、2.36mm超過の直径を有する粗大粒子、0.15~2.36mmの直径を有する中間粒子、及び0.15mm未満の直径を有する微粒子に分類することを特徴とする、請求項1に記載の埋立石炭灰(CPA)の前処理方法。
【請求項3】
前記(b)段階はpH7で行われることを特徴とする、請求項1に記載の埋立石炭灰(CPA)の前処理方法。
【請求項4】
前記(c)段階において、比重(specific gravity)が2.2である溶液を用いて比重選別を行うことを特徴とする、請求項1に記載の埋立石炭灰(CPA)の前処理方法。
【請求項5】
前記(c)段階を行った後、取得した残留物を1.0Tの磁力強度で湿式磁力選別させ、分離されたFe酸化物含有物質を粉砕(grinding)させる段階をさらに含む、請求項1に記載の埋立石炭灰(CPA)の前処理方法。
【請求項6】
前記(d)段階において、前記(c)段階で取得した残留物と前記(b)段階で取得した残留物との混合物から、0.1Tの湿式磁力選別機(wet magnetic separator)を用いて高純度のFe酸化物含有微細物質を分離した後、1.0Tの湿式磁力選別機を用いて低純度のFe酸化物含有微細物質を分離することを特徴とする、請求項1に記載の埋立石炭灰(CPA)の前処理方法。
【請求項7】
前記埋立石炭灰(CPA)は、石炭火力発電所(CPP)から発生し、埋立池(AP)に埋め立てられていることを特徴とする、請求項1に記載の埋立石炭灰(CPA)の前処理方法。
【請求項8】
次の段階を含む埋立石炭灰(CPA)から、未燃焼炭素(unburned carbon、UC)及び非晶質化合物(amorphous components、ACs)の純度を増加させた副産物を取得する方法:
(a1)埋立石炭灰をスクリーニング及び回収する段階;
(a2)埋立石炭灰をスクリーニング、浮遊選別及び回収する段階;
(a3)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別、粉砕、浮遊選別及び回収する段階;
(a4)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別、磁力選別及び回収する段階;
(a5)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別、1次磁力選別及び粉砕して取得した副産物と前記(a2)段階で取得した残留物とを混合した後、2次磁力選別及び回収する段階;又は
(a6)前記(a5)段階で取得した残留物を磁力選別及び回収する段階。
【請求項9】
次の段階を含む埋立石炭灰(CPA)からFe酸化物の回収率を増加させた副産物を取得する方法:
(b1)埋立石炭灰をスクリーニング及び回収する段階;
(b2)埋立石炭灰をスクリーニング、浮遊選別及び回収する段階;
(b3)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別及び回収する段階;
(b4)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別及び粉砕して取得した副産物と前記(b2)段階で取得した残留物とを混合した後、磁力選別及び回収する段階;又は
(b5)前記(b4)段階で取得した残留物を磁力選別及び回収する段階。
【請求項10】
次の段階を含む埋立石炭灰(CPA)からFe酸化物のみを取得する方法:
(c1)埋立石炭灰を粉砕、磁力選別及び回収する段階;又は
(c2)埋立石炭灰を粉砕、1次磁力選別、2次磁力選別及び回収する段階。
【請求項11】
粉砕工程のエネルギー費用(energetic cost)を減らすために、前記(c1)及び(c2)の粉砕前に磁力選別をさらに行うことを特徴とする、請求項10に記載の埋立石炭灰(CPA)からFe酸化物のみを取得する方法。
【請求項12】
次の段階を含む埋立石炭灰(CPA)から未燃焼炭素及びFe酸化物のみを取得する方法:
(d1)埋立石炭灰を粉砕、浮遊選別及び回収する段階;
(d2)埋立石炭灰を粉砕、浮遊選別、磁力選別及び回収する段階;又は
(d3)埋立石炭灰を粉砕、浮遊選別、1次磁力選別、2次磁力選別及び回収する段階。
【請求項13】
次の段階を含む埋立石炭灰(CPA)から強度(strength)を増加させた副産物を取得する方法:
(e1)埋立石炭灰をスクリーニング及び回収する段階;
(e2)埋立石炭灰をスクリーニング、浮遊選別及び回収する段階;又は
(e3)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別及び回収する段階。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋立石炭灰の活用のための前処理方法に関し、より詳細には、スクリーニング(screening)、比重選別(float-sink)、浮遊選別(floatation)、粉砕(grinding)及び磁力選別(magnetic separation)の簡単な分離工程によって高活用度で埋立石炭灰を活用できる埋立石炭灰の前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭灰(Coal Ash,CA)は、石炭火力発電所(Coal-fired power plants,CPPs)の溶鉱炉で燃えきらずに残った無機廃棄物である。石炭灰は、飛散灰(fly ash,電気集塵機(electrostatic precipitators)で採取)と底灰(bottom ash,ボイラーの底で採取)とに大別される。粒子のサイズは、直径が0.1μm未満から5cm超過まで広く分布し、主成分は、二酸化硅素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al203)、酸化鉄(Fe203)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)である(Lee,S.et al.,Renew.Sust.Energy Rev.50,186-193,2015;Liang,W.et al.,J.Energy Inst.93,642-648,2020)。石炭灰は、リサイクル可能な素材として産業現場で活用されてきており、新しい代替資源として必須役割を果たすことができる。このような理由から、多くの国では石炭灰を新しい資源として代替するために多くの政策的努力を傾けている。韓国では、石炭灰のリサイクル率を高めるために、環境部が告示した「資源の節約とリサイクル促進に関する法律」でリサイクル可能な副産物として表示した(環境部,2020)。また、政府の許可無しにも政府の承認が受けられる石炭灰用リサイクル品目録を「鉄鋼スラグ及び石炭灰の排出事業者リサイクル指針(告示第2016-217号,環境部)(環境部,2016)」に提供した。目録には、レミコンなどのコンクリート混和材、セメント原料、軽量骨材、セメント2次製品原料、盛土用骨材、覆土用骨材、道路用骨材、木材接着材原料、セメントクリンカー製造原料の代替用、排水層骨材、窯業用材料、ゴム・プラスチック充填材、塗料・研磨材・断熱材原料、製鉄製鋼原料、土壌肥料原料の16項目が含まれる。米国では、石炭灰に対して州毎に異なる法律及び規定が適用される。ペンシルバニア環境保護部は、固形廃棄物管理法(環境保護部,2021)に従い「石炭灰の有益な使用方法」を開発した。ヨーロッパで、石炭灰の使用は「石炭灰を含む廃棄物の管理を改善し、再使用及びリサイクルを促進するために制定されたDirective 2008/98/EC」により統制される(European Union Law,2008)。日本は現在、リサイクル石炭灰の効率性を高めるために、リサイクル製品の品質及び環境安全性の確保に力を入れている。環境安全に対する責任は、生産者、中間契約者、最終使用者にそれぞれ適用される(Sato,K.et al.,2015.Japanese Goetechnical Society Special Publication 3,65-70)。中国は、石炭の管理を強化しながら民間の石炭標準が含まれた一連の商業用石炭の品質標準を設定した。これにより、中国の中央及び地方政府は、石炭灰を使用するプロジェクトに対して資金調達又は税金減免のような優待政策を施行している(Bai,X.et al.,2017,Int.Geol.Rev.60,535-547)。また、一部の専門家らは、次のようないくつかの対策を提示している。第一に、国内の石炭灰のリサイクルを促進するために、政府主導の改善された支援システム(例えば、道路通行料免除、金融貸出支援、リサイクル市場の安定化、リサイクル製品需要の経路拡大)が必要である(UNDP,2017,Sustainable Development Goals(Policy Brief Series):Examples of Korea’s Successful Policies in Waste Management & Lessons Learned That Could Apply in Other Countries(Accessed 24 June 2021))。第二に、石炭灰のリサイクルに対する生産者の責任を強化しなければならない(UNEP,2010)。第三に、リサイクル品の範囲を拡大しなければならない(環境部,2016)。第四に、政府、石炭火力発電所の関係者、リサイクル業者など民官協議体を構成し、石炭灰の国内リサイクル率を高めるための追加方案を随時議論しなければならない。
【0003】
しかしながら、このような努力にもかかわらず、一部の石炭灰タイプは埋立池処理タイプに依存する。例えば、2017年に韓国の石炭火力発電所で生産された石炭灰の量は、最大で940万トン(MT)であった。そのうち、リサイクル量は8.0MT(85.1%)で最も多かった。しかし、埋立処理は1.4MT(14.9%)であり、焼却(0.1MT未満、<1%)が続いた(Um,N.et Al.,2018.Study on the Performance Improvement of Domestic Management System for Effective Control of Transboundary Movements of Waste.National Institute of Environmental Research,Incheon(South Korea))。また、リサイクルの場合、セメントの代替原料及びセメントの補助燃料としての石炭灰の使用が7.1MT(88.8%)で最も高く、充填材及び被服材(0.4MT,5%)がその後を続いた。レンガ(0.2MT,2.5%)及びその他の分野(0.3MT,3.8%)において石炭灰のリサイクルがセメント産業に集中的に依存していることが分かる。例えば、セメント産業における石炭灰の使用に関する諸研究は、セメント資源及びコンクリート骨材(Mangi,S.A.et al.,2019.Resources 8(2),99;Navdeep,S.et al,2019.Resour.Conserv.Recycl.144,240-251;Qin,Q.et al.,2020,Bioresour.Technol.318,124055)、ショートクリート及び建築資材の再使用(Anghelescu,L.et al.,2019.Constr.Build.Mater.227,116616;Kim,H.et al.,2009.Mater.Sci.Forum 620-622,251-254)に対する活用のように積極的に行われた。その外、セメント材料をリサイクルする用途などで物理的特性を調べた(Rifal,A.et al.,2009,Advances in Environmental Geotechnics.Springer,pp.715-720)。このような偏った研究と活用は、石炭灰が政府で勧告するリサイクル品目録には含まれているものの、品質が低いため、他のリサイクル分野で原料として使用しにくいということを意味する。その上、リサイクル業者らは運送、処理、施設設置などの追加費用を節減するために、前処理過程を省いた直接リサイクル方式を優先的に考慮する。結局、石炭灰の物理的及び化学的組成(特性)は、リサイクル製品に必要な品質基準に達しないことがある。このような懸念は、韓国に限ったものではない。ヨーロッパでは、2016年に総30MTの石炭灰のうち13MTしかリサイクルされておらず、そのうち、>70%がセメント(原料、混合セメント及びコンクリートの添加)の代替原料として使用された(European Coal Combustion Products Association,2021)。米国では、2018年に総110MTの石炭灰のうち41MTのみが、コンクリート、コンクリート製品及びグラウト製造のためのセメント原料としてリサイクルされただけである(EPA,2021)。中国の場合、近年、石炭灰の総合利用量が漸次増加しているが、石炭灰発生量の急激な増加、運送半径の制約、原料としての石炭灰の品質低下などのため、リサイクル率を70%未満と維持している(He et al.,2012)。
【0004】
韓国の11箇所の原発(ハドン、テアン、ヨス、ヨンドン、ヨンフン、サムチョンポ、ドンへ、ホナム、ダンジン、サチョン、ボリョン)で発生する石炭灰の埋立処理は、各石炭火力発電所近隣の海岸近くの埋立池で行われている。米国には~265箇所の石炭火力発電所現場があり、このような現場にはほとんど石炭灰埋立池が存在する(Environmental Integrity Project,2019)。日本には38箇所の石炭火力発電所がある。2011年の東日本大震災以後、原子力発電から火力発電への重大な転換がああったし、これにより石炭火力発電は現在、安定的な電力として重要な役割を果たしている(Sato,K.et al.,2015,Japanese Goetechnical Society Special Publication 3,65-70)。一般に、埋立池に埋め立てられた石炭灰は、飛散灰と底灰との混合物から構成されている。飛散灰の場合、粒子が球形であるか又は鋭く、微細な粒子サイズが0.1μm未満であって、粒子サイズの分布が均一であるため、底灰と異なる特性を有し得る。しかし、飛散灰を埋め立てると底材と混合され、両者は別途処理されずに埋め立てられる。埋立量から分かるように、将来、埋立池域では少なくとも毎年一定量の石炭灰が埋め立て続けられることが予想される。実際に、ほとんどの埋立池が埋まりきっているため、新しい埋立池域の構築は必須である。しかし、高価な埋立池建設費用と周辺環境汚染の可能性を懸念している地域住民たちのため、建設が難しい。例えば、米国全域の石炭灰により汚染された土地を示している報告書は、その地域の地下水の品質に疑問を述べている。全現場の91%が安全ではないレベルにあり、これは、現場埋立池の影響を受けていることを示した(Environmental Integrity Project,2019;Vengosh,A.et al.,2019,Sci.Total Environ.686,1090-1103)。アフリカの場合、モザンビ-クで大規模の炭鉱が開発されており、南アフリカの隣国に電力を供給する大規模の石炭火力発電所のハブになる計画である。しかし、このような活動は、石炭灰による汚染可能性を高める(Marove,C.A.et al.,2020,J.Afr.Earth Sci.168,103861)。中国では、中国発電所14箇所の石炭灰処理場を調べた。調査によると、人の健康と環境に有害な重金属及び化学物質を含め20種類以上の様々な毒性物質が発見された。一部の地域では牛と羊が石炭灰で汚染された草を食べてから、下痢、出産率の減少及び死亡率の増加で苦しんでいることが分かった。また、多くの石炭火力発電所の周辺の地表水と井戸水のいずれも公式標準を満たしていないことが分かった(Si,M.,2010.Coal Ash Cloud Looms Large Over China.Inside Climate News(Accessed 24 June 2021))。インドで、KhanとUmarは土壌及び地下水の品質に対する石炭灰の潜在的影響を評価するため、石炭火力発電所の石炭灰埋立池の周辺で実験を行った。この研究は、石炭灰埋立池が水と土壌に毒性要素を放出し、結果的に土壌及び地下水の汚染を発生させ、健康及び環境問題を招くということを示した(Khan,I.Umar,R.,2019.India.Groundw.Sustain.Dev.8,346-357)、したがって、一般に埋立池に埋め立てられる莫大な量の石炭灰(ここでは「埋立石炭灰」と称する。)を処理することが世界の主要問題の一つである。埋立石炭灰の量を減らす唯一の代案は、可能な全ての前処理技術を用いて資源循環における原料としての埋立石炭灰の品質を高めることである。ただし、埋立石炭灰を活用するためには、3つの事項を確認しなければならない。第一に、埋立石炭灰は飛散灰と底灰とが混合しているため、その特性を調べなければならない。第二に、各石炭火力発電所の特性が埋立石炭灰に影響を及ぼすことがある。第三に、石炭火力発電所周辺の埋立池は沿岸地域に位置するため、埋立石炭灰は、塩化陰イオン(19.344g/kg Cl)が多く含まれた塩水溶液である海水の影響を受けることがある(Ito,K.et al.,2009,Comprehensive Handbook of Iodine,pp.83-91)。
【0005】
そこで、本発明者らは、前記問題点を解決し、石炭火力発電所で多量生成される埋立石炭灰のリサイクル率を高めるために鋭意努力した結果、スクリーニング(screening)、比重選別(float-sink)、浮遊選別(floatation)、粉砕(grinding)、磁力選別(magnetic separation)の簡単な分離工程を最適の条件で行うと、埋立石炭灰のリサイクル率が相当なレベルまで上昇することを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、埋立石炭灰を活用する前の予備段階として、リサイクル率を高めることができる埋立石炭灰の前処理方法を提供することにある。
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、(a)埋立石炭灰を篩(sieve)を用いてスクリーニング(screening)して、粗大粒子、中間粒子及び微粒子に分類する段階;(b)前記(a)段階で取得した微粒子を浮遊選別(floatation)させる段階;(c)前記(a)段階で取得した中間粒子を比重選別(float-sink)させる段階;及び、(d)前記(c)段階で取得した残留物と前記(b)段階で取得した残留物とを混合した後、磁力選別(magnetic separation)させて、Fe酸化物含有微細物質とSi及びAl含有微細物質を取得する段階を含む石炭灰の前処理方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、(a1)埋立石炭灰をスクリーニング及び回収する段階;(a2)埋立石炭灰をスクリーニング、浮遊選別及び回収する段階;(a3)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別、粉砕、浮遊選別及び回収する段階;(a4)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別、磁力選別及び回収する段階;(a5)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別、1次磁力選別及び粉砕して取得した副産物と前記(a2)段階で取得した残留物とを混合した後、2次磁力選別及び回収する段階;又は(a6)前記(a5)段階で取得した残留物を磁力選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)から未燃焼炭素(unburned carbon,UC)と非晶質成分(amorphous components,AC)の純度を増加させた副産物を取得する方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、(b1)埋立石炭灰をスクリーニング及び回収する段階;(b2)埋立石炭灰をスクリーニング、浮遊選別及び回収する段階;(b3)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別及び回収する段階;及び(b4)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別及び粉砕して取得した副産物と前記(b2)段階で取得した残留物とを混合した後、磁力選別及び回収する段階;又は(b5)前記(b4)段階で取得した残留物を磁力選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)からFe酸化物の回収率を増加させた副産物を取得する方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、(c1)埋立石炭灰を粉砕、磁力選別及び回収する段階;又は(c2)埋立石炭灰を粉砕、1次磁力選別、2次磁力選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)からFe酸化物のみを取得する方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、(c1)及び(c2)の粉砕前に磁力選別段階をさらに含む、粉砕工程のエネルギー費用(energy cost)を減らすための埋立石炭灰(CPA)からFe酸化物のみを取得する方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、(d1)埋立石炭灰を粉砕、浮遊選別及び回収する段階;(d2)埋立石炭灰を粉砕、浮遊選別、磁力選別及び回収する段階;又は(d3)埋立石炭灰を粉砕、浮遊選別、1次磁力選別、2次磁力選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)から未燃焼炭素及びFe酸化物のみを取得する方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、(e1)埋立石炭灰をスクリーニング及び回収する段階;(e2)埋立石炭灰をスクリーニング、浮遊選別及び回収する段階;又は(e3)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)から強度(strength)を増加させた副産物を取得する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る韓国の10箇所の石炭火力発電所(CPP)と7箇所の埋立池(AP)の位置を示す地図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る埋立石炭灰(CPA)のXRDパターンを示す図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る埋立石炭灰(CPA)のイメージを示す走査電子顕微鏡の写真である:非晶質化合物(amorphous components,AC)(Al種及びガラス相)(a)、Fe
2O
3及びFe
3O
4の球形Fe酸化物を含む粗大粒子(b)、未燃焼炭素(UC)(c)、ムライト(d)、及び石英(e)。
【
図4】本発明の一実施例により、様々な比重(specific gravities,SGs)を有する比重選別工程を用いて分離された埋立石炭灰(CPA)の重量、未燃焼炭素(UC)及び非晶質化合物(ACs)(Al種及びガラス相を含む。)の分布(a)、及びXRDパターン(b)を示す図である。実験条件:固体/液体200(g/L)、反応温度20℃、反応時間4時間、撹拌速度100rpm、SG用のCCl
4及びCH
2Br
2試薬。
【
図5】本発明の一実施例に係る未燃焼炭素(UC)の吸着動力学に対するpH効果(a)、BET(Brunauer-Emmett-Teller)の吸着等温線(b)、(C
O-C)/C対C
o/C
O-C)U
sec(c)を示す図である。実験条件:13(g/L)固体/液体(a)、及び6.5、13、19.5、26、39及び52(g/L)固体/液体(b);20℃反応温度;60秒反応時間(a)、及び10秒反応時間(b);空気ガスの10L/min流量;及び0.5g/L灯油及び0.08g/LMIBC。
【
図6】本発明の一実施例において、粉砕時間による埋立石炭灰(CPA)の粒子サイズ分布の変化(a)、埋立石炭灰(CPA)のイメージを示す走査型電子顕微鏡の写真(処理されていない埋立石炭灰(CPA)の粒子(左側(b))、及び20分間粉砕された埋立石炭灰(CPA)の粒子(右側(b))である。
【
図7】0.1、0.5、1、2Tの様々な磁力により分離された鉄素材のFe酸化物の回収率(Y
Fe)及び純度(P
Fe)の変化を示すグラフである。
【
図8】埋立石炭灰(CPA)から、未燃焼炭素(UC)、Fe酸化物、Al種(Al
2O
3・xH
2O)及びガラス相を含む非晶質化合物(AC)、Si及びAlを主原料とする無機物質を含む最終副産物の分離のための前処理工程に関する概略的な流れ図である。
【
図9】最終副産物の条件による前処理工程の様々なデザインである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特に断らない限り、本明細書で使われた技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われた命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常用いられるものである。
【0016】
本発明では、埋立石炭灰(CPA)を活用する前の予備段階として前処理方法を考慮した。この方法は、特定の有害物質を除去する或いは安定化させた後に埋立石炭灰(CPA)を直接リサイクルできるという意味ではなく、最終リサイクル工程のリサイクル効率を高めるための単純な分離方法を含む中間工程に該当する。埋立石炭灰(CPA)の効果的な活用のために必要な前処理方法を設計するために、韓国ボリョンの石炭火力発電所(CPP)の近隣に位置している埋立池(AP)から採取した埋立石炭灰(CPA)のサンプルを用いて様々な調査を行った。まず、収集された試料の化学的組成、粒度の分布、XRD(X-ray diffraction)分析、SEM(Scanning Electron Microscopy)のイメージに基づいて特性を調べた。次に、埋立石炭灰(CPA)の特性に応じて、スクリーニング(screening)、比重選別(float-sink)、浮遊選別(floatation)、粉砕(grinding)及び磁力選別(magnetic separation)の簡単な分離工程を有する前処理方法を設計し、各分離工程に対する最適の条件を得るための実験を行った。最後に、韓国と全世界の埋立石炭灰(CPA)に対する前処理方法の適用可能性も確認した。
【0017】
本発明の明細書全般に亘って使われる略語を整理すると、次の通りである。石炭灰(Coal ash)はCA、石炭火力発電所(Coal-fired power plants)はCPP、埋立池(ash ponds)はAP、また埋立石炭灰(Coal pond ash)はCPAと称する。
【0018】
本発明は、石炭火力発電所(CPP)から発生する石炭灰(CA)が埋め立てられている埋立池(AP)の周辺環境汚染の可能性が懸念されるため、埋立石炭灰(CPA)の活用度を高める方案を提案する。そこで、APに埋め立てられたCAをCPAとみなす。また、CPA特性(粒子サイズ及び重量分布、化学組成、未燃焼炭素(UC)の含量、粒子イメージ及び鉱物学的分析)を調べた。次に、主な分離工程に対する実験が行われた:1.8SG未満、1.8~2.2SG、2.2~2.5SG、及び2.5SG超過の4つの異なる比重(SG)を用いた比重選別実験;pH2、7、12の条件でカラム型ガラス反応器にて浮遊選別;バッチ式ボールミルにて5分、10分、20分、40分間粉砕;4個の磁気力(0.1、0.5、1及び2T)を用いた湿式磁力選別。このような結果に基づいて前処理方法が提案され、最終副産物はUC、Al種(Al2O3・xH2O)とガラス相を含む非晶質化合物(ACs)、SiとAlを含む無機物質、鉄物質群に分類することができる。各分離工程の様々な組合せにより6つの更なる前処理方法を提示した。また、韓国の全体CPAだけでなく、全世界のCPAに対してこの方法を適用できることを確認した。
【0019】
したがって、本発明は、(a)埋立石炭灰を篩(sieve)を用いてスクリーニング(screening)して粗大粒子、中間粒子及び微粒子に分類する段階;(b)前記(a)段階で取得した微粒子を浮遊選別(floatation)させる段階;(c)前記(a)段階で取得した中間粒子を比重選別(float-sink)させる段階;及び(d)前記(c)段階で取得した残留物と前記(b)段階で取得した残留物とを混合した後、磁力選別(magnetic separation)させてFe酸化物含有微細物質とSi及びAl含有微細物質を取得する段階を含む、石炭灰の前処理方法に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明において、前記(a)段階で0.15mmと2.36mm直径の格子がある標準篩を用いて、2.36mm超過の直径を有する粗大粒子、0.15~2.36mmの直径を有する中間粒子、及び0.15mm未満の直径を有する微粒子に分類することができる。
【0021】
本発明において、前記(b)段階は、最も適合したpHに合わせるために、pH調節剤を入れて安定化させ、目的とする副産物を順次に水面上に浮かせて取得した後、脱水乾燥させる。前記(b)段階はpH7で行ってよい。
【0022】
前記浮遊選別をする上で考慮すべき要素がいくつかある。まず、水に濡れるかどうかである。浮遊選別において重要な媒質は水であり、水と親しい(よく濡れる)物質と親しくない(よく濡れない)物質との差異を用いることが浮遊選別であるからである。取得しようとする固体の表面が水に濡れないようにし、その固体が水中で発生した空気泡にくっつき(水に濡れた物質は気泡にくっつかない。)、その空気泡の上昇力を受けて共に水面に浮上し、これらの気泡を取り除いて集めると、高品質の副産物になる。第二に、粒子のサイズである。浮遊選別の過程において全ての粒子をできるだけ均一にすることが重要である。サイズが均一でないと、比重を合わせることが難しいからである。また、気泡にくっついて上昇可能な重さにならなければならず、目的とする鉱物と脈石鉱物とが確実に分離されるサイズにもならなければならない。
【0023】
本発明において、前記(c)段階で比重(specific gravity)が2.2である溶液を用いて比重選別を行うことができる。
【0024】
本発明において、前記(c)段階を行った後、取得した残留物を1.0Tの磁力強度にして磁力選別させ、分離されたFe酸化物含有物質を粉砕(grinding)させる段階をさらに含むことができる。
【0025】
本発明において、前記(d)段階において、前記(c)段階で取得した残留物と前記(b)段階で取得した残留物との混合物を0.1Tの湿式磁力選別機(wet magnetic separator)を用いて高純度のFe酸化物含有微細物質を分離し後、1.0Tの湿式磁力選別機を用いて低純度のFe酸化物含有微細物質を分離することができる。
【0026】
また、本発明による前処理方法は、各分離工程の様々な組合せによって変更されてよく、所望の最終副産物を選択的に得ることができる。
【0027】
したがって、本発明の他の観点は、(a1)埋立石炭灰をスクリーニング及び回収する段階;(a2)埋立石炭灰をスクリーニング、浮遊選別及び回収する段階;(a3)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別、粉砕、浮遊選別及び回収する段階;(a4)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別、磁力選別及び回収する段階;(a5)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別、1次磁力選別及び粉砕して取得した副産物と前記(a2)段階で取得した残留物とを混合した後、2次磁力選別及び回収する段階;又は(a6)前記(a5)段階で取得した残留物を磁力選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)から未燃焼炭素(unburned carbon、UC)と非晶質成分(amorphous components,ACs)の純度を増加させた副産物を取得する方法に関し、前記方法は、
図9の(a)に示す通りである。
【0028】
本発明のさらに他の観点は、(b1)埋立石炭灰をスクリーニング及び回収する段階;(b2)埋立石炭灰をスクリーニング、浮遊選別及び回収する段階;(b3)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別及び回収する段階;及び(b4)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別及び粉砕して取得した副産物と前記(b2)段階で取得した残留物とを混合した後、磁力選別及び回収する段階;又は(b5)前記(b4)段階で取得した残留物を磁力選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)からFe酸化物の回収率を増加させた副産物を取得する方法に関し、前記方法は、
図9の(b)に示す通りである。
【0029】
本発明のさらに他の観点は、(c1)埋立石炭灰を粉砕、磁力選別及び回収する段階;又は(c2)埋立石炭灰を粉砕、1次磁力選別、2次磁力選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)からFe酸化物のみを取得する方法に関し、前記方法は
図9の(c-1)に示す通りである。
【0030】
ここで、工程のエネルギー費用(energy cost)を減らすために、前記(c1)及び(c2)の粉砕前に磁力選別をさらに行うことができ、前記方法は、
図9の(c-2)に示す通りである。
【0031】
本発明のさらに他の観点は、(d1)埋立石炭灰を粉砕、浮遊選別及び回収する段階;(d2)埋立石炭灰を粉砕、浮遊選別、磁力選別及び回収する段階;又は(d3)埋立石炭灰を粉砕、浮遊選別、1次磁力選別、2次磁力選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)から未燃焼炭素とFe酸化物のみを取得する方法に関し、前記方法は、
図9の(d)に示す通りである。
【0032】
本発明のさらに他の観点は、(e1)埋立石炭灰をスクリーニング及び回収する段階;(e2)埋立石炭灰をスクリーニング、浮遊選別及び回収する段階;又は(e3)埋立石炭灰をスクリーニング、比重選別及び回収する段階を含む、埋立石炭灰(CPA)から強度(strength)を増加させた副産物を取得する方法に関し、前記方法は、
図9の(e)に示す通りである。
【0033】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示するだけであり、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正も添付の特許請求の範囲に属することは当然である。
【実施例】
【0034】
瀝青炭(bituminous coal)を主に使用するボリョン地域に位置しているCPPを選定したし、全ての実験のためのCPA試料は、選定れたCPPの周辺に位置しているAPから採取した。総9個のCPAサンプルが、
図1に示すように、APの3個のサイトから収集された。各サンプルの重さは200kgであった。様々な水分含量を有するサンプルを100℃で24時間乾燥させた。その後、0.15、0.3、0.6、1.18、2.36mm直径の格子がある5個の標準篩(Test Sieves,200×50mm)に通過させて、1.15未満、0.15~0.3、0.3~0.6、0.6~1.18、1.18~2.36及び2.36mm超過などの必要な粒度を有するサンプルを得た。
【0035】
実施例1:CPAの物性の確認
X線蛍光分光計(XRF 3726AI,Rigaku)を用いてCPAの化学組成とSi、Al、Fe、Ca、Mg、K、Na、Ti及びMnの含量を測定した。未燃焼炭素(UC)の含量は、韓国標準LOI法(ES 06303.1)を用いて求めた(環境部,2011)。水分を除去した試料20gを取って815℃の電気炉で3時間加熱した。デシケーターで乾燥させた後、LOI前後の重量差からUC含量(w/w.%)を評価した。Clは、酸性溶液に溶かした後、初期量を得た。酸分解後に溶解されたClの濃度は、イオンクロマトグラフィー(ICS-3000,Dionex)を用いて測定した。鉱物学的段階を確認するために、処理されていないか又は特定の分離方法で処理されたCPAサンプルをXRD(PW3040/00,Philips)により測定した。また、走査電子顕微鏡(JEOL)を用いて標的粒子の表面を分析した。
【0036】
ボリョンCPPの近隣APから採取したCPAの特性を確認するため、粒度分布、化学組成、粒子イメージ、鉱物学的分析を調べた。表1は、粒度別重量分布を示したものであり、1.18mm以上の粒度では2.5%と低い重量分布を示し、2.36mm以上を除けば、粒度が減少するにつれて増加する値を示した。特に、0.3mm以下では全含量の78.2%を占めた。CPA粒度別の化学組成の場合、Si、Al、Fe、Caが主元素であり、全組成の75%以上を占めた。そのうち、シリカ系及びアルミナ系の物質は、全体粒度に亘って均一に分布した。Feは、粒子サイズが小さくなるほど含量が増加した。例えば、2.36mm以上の粒子サイズの含量は<0.1%であった。しかし、0.15~0.3及び0.15mm未満の粒子サイズの含量はそれぞれ、15.6%及び18.8%であった。
【0037】
表1は、各粒子サイズのUC含量を示し、これは全体粒子サイズに均等に分布しているのに対し、2.36mm及び1.18~2.36mm以上の粒子サイズのUC含量は、それぞれ28.4%と最も高く、9.3%と最も低かった。Clの場合、粒子サイズが2.36以上、1.18~2.36、0.6~1.18、0.3~0.6、0.15~0.3、0.15mm以下であるCPA試料の含量(mg/kg)は、それぞれ42、74、112、184、273、392である。ボリョン火力発電所周辺のAPは沿岸の付近に位置しており、CPAは海水に影響を受けることがあるが、これは、海水が塩水溶液であって、塩化陰イオン(19.344g/kg Cl)を多く含有しているからである(Ito,K.et al.,2009.Chapter9-Indine and Iodine Species in Seawater:Speciation,Distribution,and Dynamics.Comprehensive Handbook of Iodine,pp.83-91)。CAの大部分のClは、水を用いた洗浄過程により除去され、このことから、可溶性塩化物として判断した。
図2のCPAのXRDパターンから、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2)、石英(SiO
2)、方解石(CaCO
3)、磁鉄鉱(Fe
3O
4)及び鋼玉(Al
2O
3)が観察できる。これらのピークは、表1のように、CPAがSi、Al、Fe、Caを主元素としている証拠を提供する。x軸の角度が15θから35θに移動するにつれて、背景ピークがΩ形態に変化することが分かる。これは、UC(Bartonova,L.,2015.FuelProcess.Technol.134,136-158;Tai,F.C.et al.,2009,J.Raman Spectrosc.41,933-937)及びAl種(Al
2O
3・xH
2O)及びガラス相(Kim,B.et al.,2019.The Korean Ceramic Society 56,365-373;Yan,K.et al.,2018,J.Non.Solids 483,37-42)を有する非晶質化合物(AC)が存在している証拠を提供する。
図3は、CPA粒子のSEMイメージを示す。そのうち、
図3(a)は、CPAの粒子表面のACを示す。また、
図3(b)は、球形のFe酸化物を含むCPAの形状を示す。瀝青炭がCPPで燃焼するとき、石炭のFe元素が溶解されて酸化した後、小さな球形粒子として凝集される(Sharonova,O.M.et al.,2015,Energy Fuels 29,5404-5414;Sokol,E.et al.,2002.Fuel 81,867-876)。特に、大部分のFe酸化物の粒子サイズは、0.15mm未満である。Fe酸化物は、他のCPA材料に比べて強度が相対的に高いため、APでの埋め立て中に又はAPへの運搬中に外部衝撃によりCPAが自然に破砕されるか、又は粉砕された後にもFe酸化物が球形状を維持し、0.15mm未満の粒度で独立に存在する。次に、
図3(c)、
図3(d)、
図3(e)はそれぞれUC、ムライト、及び石英成分を示す。
【0038】
表1は、各粒子サイズの分率に対する埋立石炭灰(CPA)の化学組成及び重量分布を示すものである(実験は3反復で各データを決定し、各データの標準偏差を推定した。)
【表1】
【0039】
実施例2:前処理工程
2-1:比重選別(Float-sink)
全ての比重選別実験は、ホットプレート撹拌機で20℃に維持された1Lバッチ式ガラス反応器で4つの異なる比重(SG)を有する600mLの溶液に各サンプル120gを添加して行われた。温度調節装置付き磁気撹拌機を用いて100rpmの撹拌速度で分離時間0.5時間撹拌した。4つの異なるSGを、四塩化炭素(CCl4)とジブロモメタン(CH2Br2)とを所望の割合で混合して準備した。実験手順において、一番目の実験は1.8SG溶液を用いて行われた。その後、二番目の実験のために1.8SGにより沈殿されたサンプルを取って、2.2SG溶液に添加した。最後に、2.2SGにより沈殿された試料を用いて2.5SG溶液で三番目の実験を行った。実験後、1.8SG未満、1.8~2.2SG、2.2~2.5SG及び2.5SG超過の4つのSG範囲に属する4つの最終副産物を取得した。
【0040】
2-2:浮遊選別(Flotation)
全ての浮遊選別実験は、直径6cm、容量1.5Lのカラム型ガラス反応器に1L溶液に所望の量の試料を添加して行った。反応器の底をホースで連結し、10L/minの流量で内部に空気を注入した。ホースと底との間にガラスフィルターがあり、気泡のサイズを減らして広く分散させる効果があった。また、ケロシン(Kerosene)(0.5g/L)とMIBC(0.08g/L)を用いて気泡を長期間維持し、UCと気泡との吸着効果を高めた。塩酸(HCl)と水酸化ナトリウム(NaOH)を用いてpH値をそれぞれ2、7、12に調整し、浮遊選鉱に対するpH効果を確認した。実験手順では、UC吸着動力学に対するpH効果を確認するために、各pH条件でサンプル26gを用いて60秒間実験を行った。また、BET(Brunauer-Emmett-Teller)の吸着等温線を確認するために、6.5、13、19.5、26、39及び52gの6つのサンプルを用いて10秒間実験を行った。
【0041】
2-3:粉砕(grinding)
全ての粉砕実験は、直径200mm、内径160mm、長さ180mのバッチ式ミール(SH-BALL700B,Weus)を用いて行った。直径が~1.6mmであるボールの体積とミールの内部空間体積との割合を0.4にし、ボールをミールの内部に詰め込んだ。次に、ボーロで満たされたミール内部の空き空間体積当たりのサンプル体積を1.2にしてサンプルをミールの内部に詰め込んだ。次に、粉砕機を臨界回転数の
にして各粉砕時間(5、10、20及び40分)回転させて粉砕を行った。
【0042】
2-4:磁力選別(magnetic separation)
全ての磁力選別実験は、湿式磁力選別機(Laboratory High Gradient Magnetic Separator:L-HGMS,DAE BO MAGNETIC CO.,LTD.)を用いて行った。電流により磁場が発生する電磁石を分離器の中心の外側に置き、試料を自由落下させて選別機に通過させた。実験に必要な磁力は、電流を調節して0.1、0.5、1、2Tと維持した。
【0043】
実施例3:CPAのための効果的な分離プロセス
前記言及したCPAの特性を考慮して、効果的な分離工程を選定するための7つの主要事項を前処理工法の設計に提示しており、その細部内容は次の通りである。
【0044】
ポイント1:CPAは、UC、Fe酸化物、Al種(Al203・xH20)及びガラス相を含むAC、Si及びAlを含む無機物質の4つの主要副産物群から構成される。
【0045】
ポイント2:2.36mm以上の粒径は、UC含量が高く、Fe含量がほとんどない。したがって、スクリーニングにより2.36mm以上の粒子を分離してUC含量の高い粗大粒子を確保することができる。
【0046】
ポイント3:CPAにおいて、他の物質より相対的にSG値が小さいUCとACは、SG特性を用いて分離することができる。したがって、SG差を用いる分離原理を有する比重選別工程を考慮することができる(Wills,B.A.et al.,2016.Wills’ Mineral Processing Technoloty,pp.245-264)。しかし、0.15mm以下のような小さな粒子は、分離効率がよくない。
【0047】
ポイント4:0.15mm以下の粒子は合、UC含量割合が10.5%であって、他のCPA粒子サイズに比べて高くない。しかし、全体UC含量の41.2%が0.15mm以下の粒子に存在しており、UCの重量分布の中では最も高い方である。したがって、0.15mm未満のCPA粒子の場合、UC分離が主要プロセスになり得る。ここで、分離工程に対して浮遊選別を考慮することができる(Eisele,T.C.et al.,2010.Miner.Process.Extr.Metall.Rev.23,1-10;Zhang,R.et al.,2019.Waste Manag.98,29-36;Zhou,F.et al.,2017.Fuel 190,182-188)。
【0048】
ポイント5:一般にFe酸化物は、磁力選別を用いて容易に分離することができる。また、
図3のように粒子サイズが0.15mm以下の球形のFe酸化物をCPAから遊離させると、分離効果を高めることができる。したがって、遊離させるための粉砕工程(0.15mm以下)は、磁力選別工程以前に考慮されてよい。
【0049】
ポイント6:ポイント1、2、3、4、5により、4つの主要副産物群の分離効率を高めるためにはCPAの粒度分類を考慮しなければならない。したがって、2.36mm超過、0.15~2.36mm及び0.15mm未満の3つの範囲の粒子サイズを分類することができる。
【0050】
ポイント7:沿岸の海水は、APで冷却される間にCPAのCl含量に影響を及ぼす。しかし、大部分の内容物が可溶性塩化物であるので、湿式分離工程を簡単に操作して容易に除去することができる。
【0051】
比重選別、浮遊選別、粉砕、磁力選別に対する細部実験因子を、前述した要点に従って調べた。比重選別の場合、UCとACを効果的に分離するためのGS値を確認した。浮遊選別の場合、気泡とUC粒子との間の多層吸着を有するBETモデルから、UC分離に対するpH効果を確認した。また、粉砕及び磁力選別実験は、粉砕後にCPAからのFe酸化物の遊離効果と様々な磁気力によるCPAからFe酸化物の回収率及び純度の影響をそれぞれ提供した。詳細な内容は下記に説明されている。
【0052】
3-1:比重選別
比重選別は、1.8SG未満、1.18~2.2SG、2.2~2.5SG及び2.5SG超過の4つのSG範囲で行われ、各SG範囲による重さ、UC、Al種及びガラス相を含むACなどの分布割合を確認した。ポイント1、4、6を考慮して、粒子サイズ0.15~2.36mmのCPAがこの実験のために選択された。
図4(a)は、比重選別後、各SG範囲における重さとUC分布を示す。SG範囲(2.5SG以上を除外)が増加するにつれて数値が増加し、1.8SG未満の範囲が16.8%と最も低く、2.2~2.5SGが31.1%と最も高かった。また、UCの大部分が低いSG範囲に分布していることが見られ、1.8SG未満の範囲が54.7%と最も高く、1.8~2.2SG、2.5SG超過、及び2.2~2.5SGがそれぞれ39.6%、4.1%、1.6%を示した。
図4(b)は、様々なSG範囲で比重選別により分離されたCPAのUC及びACのXRDピーク変化を示す。これは、1.8~2.2SG及び1.8SG範囲未満の2つのXRDパターンでのみUC及びACピークを示すので、
図4(a)のUC分布結果を裏付ける。当該結果によると、
図4は、比重選別を用いてUCとACを分離するのに最も効率的なSG値が2.2SGであることを示す。
【0053】
3-2:浮遊選別
pH2、7、12の様々な溶液条件で浮遊選別を行い、UCと気泡との吸着動力学に対するpHの影響を調べてUCの効果的な分離を確認した。ポイント1、2、5を考慮して、本実験では粒子サイズが0.15mm以下のCPAを選択した。
図5(a)は、浮遊時間による、気泡によって吸着されたUCの動力学曲線を示す。C
Rは、必要な浮遊時間後のUC吸着(%)を示し、次のように計算できる。
[数学式1]
【0054】
ここで、C
0及びCはそれぞれ、未処理されたCPAの初期UC重量(mg)及び浮遊後のCPAの残りのUC(分離されていない)の重量(g)を表す。全ての曲線は初期に急激に増加し、10秒後に一定に維持された。pH7のC
Rが78.8%と最も高く、pH2が70.4%、pH12が59.2%と、その後を続いた。浮遊メカニズムにおいて、UCは、カラム装備の底で生成された気泡の表面に吸着されて溶液の上に浮上した。UCと気泡との吸着は、x(C)及びy(U,浮遊線により分離されたUCの重さ(g))軸により、変化されたBET吸着等温線を用いて表現できる。また、Uは、次のようにk及びU
monolayer-maxに基づいて派生されてよい(Anderson,R.B.,1946.J.Am.Chem.Soc.68,686-691)。
[数学式2]
【0055】
ここで、k及びU
monolayer-maxはそれぞれ、前指数因子(pre-exponential factor)、及び単層吸着によって吸着可能なUCの最大重量(g)を表す。実際に、
図5(b)に見られるように、吸着等温線は多層曲線と一致する。式(2)を再整列し、次のように式(3)を得た:
[数学式3]
【0056】
線形形態において、この方程式は、x軸としてC
o/(C
o?C)U、Y軸としてC?C、勾配としてkU
monolayer-max、y切片として?kを含む。したがって、C
o、C、及びUで計算されたC
o/(C?C)U値は、
図5(c)のように((C
o?C)/Cに対して表示される。結果的に、pH7条件で、BETモデルは、R
2値が0.9427である吸着等温線を効果的に記述した。また、この線形プロットは、k及びU
monolayer-maxの値がそれぞれ-3.39及び0.66(g)であると確認されたことを示す。しかし、
図5(c)のpH2と12値は、BET吸着等温線に及ぼす影響が少なく、これは、
図5(a)に示したUCの吸着動力学の結果を裏付ける。
図5の結果によって、pH2と12条件でBETパターンの崩壊は、低い吸着動力学を誘導し、UCの分離効率を減少させることが見られた。
【0057】
3-3:粉砕
ポイント5により、5、10、20、40分の粉砕時間によって0.15mm以下の粒子サイズで粉砕を行った。次に、粉砕時間によるCPAの粒度分布の変化とFe酸化物遊離効果を確認した。ポイント1、2、5、6を考慮して0.15~2.36mmの粒子サイズを有するCPAがこの実験のために選択された。
図6(a)は、粉砕時間によるCPAの粒度分布の変化を示す。20分後、大部分の粒子は<0.15mmに粉砕された。また、
図6(b)は、粉砕前のFe酸化物が含まれたCPAと粉砕後のCPAから遊離されたFe酸化物のイメージをそれぞれ示す。CPA内で、Fe酸化物は他の物質に比べて相対的に強度が高いので、‘2-3:粉砕(grinding)’で提示した条件下で粉砕する際に壊れなかった。この結果によると、
図6は、粉砕がFe酸化物遊離効果に影響を及ぼすことをよく示している。
【0058】
3-4:磁力選別
0.1、0.5、1、2Tの4つの磁力で磁力選別を行い、各磁力の強さによって、分離されたFe酸化物の回収率及び純度の変化を確認した。磁力選別で粉砕により遊離されたFe酸化物の選別効果を確認するために、この実験ではポイント1、2、5及び6を考慮して3つのサンプルを選択した。2つは、粒子サイズが0.15~2.36mmであり、0.15mm未満であるCPAである。残り一つは、粒子サイズが0.15mm未満のCPAであり、粒子サイズが0.15~2.36mmであるCPAで粒子を0.15mm未満に粉砕して得たものである。
図7は、3つの試料に対する、様々な磁力によるFe酸化物の回収率(Y
Fe)及び純度(P
Fe)の変化を示す。ここで、式(4)及び式(5)を、F
o、F
r、及びW
tの実験データを用いてY
FeとP
Feを推定するために適用した。
[数学式4]
[数学式5]
【0059】
ここで、F
o及びF
sはそれぞれ、未処理試料中のFe酸化物の初期重量(g)、及び磁力選別により分離された物質中のFe酸化物の重量(g)を表す。W
tは、磁力選別により分離された物質の総重量(g)を表す。
図7に見られるように、磁力の強さが増加するにつれて、磁力選別により分離されたFe酸化物の回収率が増加するのに対し、純度は減少した。0.15~2.36mmの粒子サイズを有するCPAの場合、0.1Tでの回収率と純度値はそれぞれ49%と81%であった。1Tに増加させると、回収率が88%に増加したのに対し、純度は32%に減少した。0.15mm以下の粒度を有するCPAの場合、0.1Tでの回収率及び純度はそれぞれ71%及び98%と、0.15~2.36mmの粒度よりも高かった。磁力が1Tに増加することにより、回収率は95%に増加し、純度は56%に減少した。しかし、1Tから2Tに増加したとき、値には変化がなかった。これに対し、粉砕処理したCPAの場合、粒径が0.15mm以下のCPAとほぼ同一の数値を示しており、粉砕が磁力選別においてFe酸化物の選別効果を高めていることを示している。
【0060】
CPA特性を用いて、
図8のような全体流れ図(前処理工程)を導出し、実験結果を得た。同図では、まず、1段階でCPAを2.36mm及び0.15mmでスクリーニングして処理した。この際、溶解性塩化物を除去するために湿式でスクリーニングを適用することができる。2段階及び3段階で、サイズが0.15~2.38mm及び0.15mm未満であるCPAは、それぞれ、比重選別及び浮遊選別で処理された。4段階では、1T(磁気強度)で1次磁力選別により比重選別工程を行った後、残留物からFe酸化物が含まれた物質を分離した。次に、Fe酸化物が含まれた物質を粉砕機を用いて粉砕させた(5段階)。2段階の残渣物と5段階で粉砕された物質を2次(0.1T)及び3次(1T)の磁力選別工程によってFe酸化物を分離した。したがって、本前処理工程により、7つの最終副産物(回収(Recovery)1~7)を得ることができる。また、200kgのボリョンCPAを対象に、
図8に示した前処理方法によって実験室規模の実験を行った。表2は、実験室規模の実験の各工程に対する最終副産物(回収1~7)の分離された量及び化学組成を示すものである。回収1においてUC純度28.4%の粗大粒子及び回収2においてUC純度62.1%の微粒子に対する各分子量は、4.2kg(2.1%)及び11.0kg(5.5%)であった。しかし、回収3において、分離されたUC(純度37.0%)とACとの混合物は49.8kg(24.8%)であった。Fe酸化物の場合、回収5及び6において純度94.8%及び42.2%の微細Fe酸化物粒子の分離量はそれぞれ、23.2kg(11.6%)及び18.6kg(9.3%)であった。
【表2】
【0061】
前処理方法は、各分離工程の様々な組合せにより変更されてよい。したがって、所望の最終副産物を選択的に得ることができる。
図9は、所望の最終副産物に対する前処理方法の様々なデザインを示しており、いくつかの例を提示する。
図9(a)は、比重選別工程後に回収されたUCとACの混合物が追加の粉砕及び浮遊選別により、純度を上げて分離され得ることを示している。しかし、追加工程のためエネルギー費用が増加する。また、
図9(b)に示した工程は、
図8に比べてFe酸化物の回収率を増加させることができる。比重選別工程後、一番目の磁力選別を除外させると、残りの二番目及び三番目の磁力選別工程により、CPAからFe酸化物の回収率を高めることを可能にする。しかし、これは、粉砕のエネルギー費用を増加させる。Fe酸化物の回収率を最大化するために、二つの前処理方法を考慮することができる。
図9(c-1)は、高い粉砕エネルギー費用の負担を抱えながらFe酸化物を極力回収する方法であるのに対し、
図9(c-2)は、
図9(c-1)に比べて粉砕に対する依存度を減らしながらFe酸化物を回収する方法である。
図9(c-1)でUCの分離を考慮すれば、
図9(d)のような方法を設計することができる。また、CAの弱い強度は、建設現場での活用を妨げる主な問題の一つである(Mangi,S.A.et al.,2019.Resources 8(2),99;Luna,Y.L.et al.,2014.Int.J.EnergyEnviron.Eng.5,387-397)。UCとACは、CPAの強度を低下させる物質であるため、
図9(e)のように、UCとACの分離工程により、より高い強度の生成が可能な無機物を確保することができる。
【0062】
回収された副産物は、最終製品の品質要求事項を満たすための追加の物理的又は化学的工程により、様々な産業分野でリサイクル可能な物質として利用可能である。例えば、UCの場合、一部の応用分野に適切な炭素供給源になり得る。発電所や焼却施設で補助燃料として使用する又は多孔性の高い吸着剤としても使用することができる(Evans,M.J.S.et al.,1999.Carbon 37,269-274;Lee,S.et al.,2014.Journal of Korean inst.of Resources Recycling 23,40-47)。また、天然黒鉛は希少な商品と見なされるので、人工黒鉛の生産応用分野において好ましい代替資源になり得る(Cabielles,M.et al.,2008.Energy Fuels 22,1239-1243;Camean,I.et al.,2011.J.Power Sources 196,4816-4820)。Al種及びガラス相を有するACの場合、陽イオン交換剤及び吸着剤として使用される無機高分子であるゼオライト(zeolite)の原料になり得る(Jin,X.et al.,2015.Procedia Eng.121,961-966;Lee,Y.R.et al.,2017.Chem.Eng.J.317,821-843;Penilla,R.P.et al.,2006.Fuel 85,823-832)。ゼオライト化された(合成された)ACは、固定化剤、汚染された水の危険要素除去剤、汚染された土壌の浄化要素としても使用可能である(Fernandez-Pereira,C.et al.,2002.J.Chem.Technol.Biotechnol.77(Issue3);Sarkar,D.K.,2015.Thermal Power Plant.Elsevier,pp.139-158;Sarkar,M.et al.,2006.Waste Manag.26,559-570;Sitarz-Palczak,E.et al.,2012.J.Environ.Prot.(Irvine,Calif)3,1373-1383)。
【0063】
現在、韓国のCPP及びCPA現況を確認するために、CPPの個数と位置、燃焼方式、発電容量、使用される石炭タイプ、APを調べた。表3は、韓国内11箇所の石炭火力発電所の特性を示している。11箇所のCPPのうち10箇所が現在稼動中であり、残りの1箇所が2017年に中断されたサチョンCPPであることを示している。
【表3】
【0064】
すべてのCPPは沿岸地域に位置しており、燃焼後に生成されたCAの高温を冷却するために海水を使用することができる。
図1は、各CPPが海岸周辺に位置していることを示す地図である。地図上のボリョン火力発電所の周辺に位置するAP関連の図面は、Leeの論文(Lee,S.J.et al.,2007,Geosystem Eng.10,47-52)から抜粋したものである。各CPPの燃焼方式は、ほとんど微粉炭燃焼(PCC)方式で運営されている。最近、ドンへ火力発電所(400MW)とヨス火力発電所(340MW)が建設され、循環流動層燃焼(CFBC)方式で運営されている。PCCタイプで生成されたCAは、ポゾラン反応性が特徴であり、高い燃焼温度(1300℃~1700℃)で形成されるガラス質アルミノシリケートを含む(Cheriaf,M.et al.,1999.Cem.Concr.Res.29(9),1387-1391)。これは、前述したPCC型ボリョン火力発電所のCPA特性(Al系AC及びガラス相)の結果とも一致する。しかし、CFBCのCAは、脱硫過程で投入される石灰石によって、ガラス石灰(Free CaO)と無水石膏が豊富で、独自の硬化特性を有する(Sheng,G.et al.,2012.Fuel 98,61-66)。発電容量は、最近に増設されたダンジン(6,040MW)、ヨンフン(5,080MW)、テアン(6,100MW)が高い熱エネルギーを生産しており、ボリョン(4,000MW)、ハドン(4,000MW)、及びサムチョンポ(3,240MW)がその後を続く。各CPPで主燃料として使用される石炭の種類はほとんど有煙炭であり、規模の小さいヨンドンとドンへだけが無煙炭を使用している。無煙炭は、低い揮発性(3~7%)にもかかわらず、固定炭素含量(85~90%)が高いため発熱量が良い。しかし、燃焼速度が遅いため、発電用燃料としては適合していない。これと逆に、有煙炭は大量の揮発性物質を含んでおり、火炎を放出する。各CPPは、CAの埋立のためにAPを運営しており、ホナム、ドンへ、ヨス地域の小規模のCPPだけが、独自のAPを運営する近隣のCPPに埋立処理を委託している。AP容量及び埋立量を基準として、ボリョンが23,160,000m
3及び32.9MTと、最も大きいCPPであり、その後をダンジン(17,560,000m
3及び24.9MT)、サムチョンポ(13,380,000m
3及び14.6MT)が続いた。
【0065】
提案する前処理方法は、ボリョン地域のCPAだけを基準とする。したがって、各AP(韓国内計7箇所のAP)に埋め立てられるCPAによって、分離方法及び実際分離物質が異なってよい。しかし、先に述べた調査によると、CPAの全体特性は、燃焼方式及び使用される石炭タイプに影響を受けることが見られた。大部分のCPPは、PCC方式で運営されており、主に有煙炭を主燃料として使用するため、表3のように、大部分のCPA(韓国全体CPAの92%以上)は、ガラスアルミノシリケートとポゾラン反応性を有すると予想される。また、相対的にUC含量が低い。したがって、ボリョンCPP近隣のAPに埋め立てられているCPAは、韓国の全てのCPAを代表すると仮定できる。恐らく各APのCPAは、化学組成において各項目の含量割合のみが異なるであろう。したがって、この前処理方法を韓国の全てのCPAに適用しても問題にならないと予測した。実際に提案された前処理方法において、CPAの物質の流れ分析は、韓国の全てのAPに埋め立てられた総CPA量(~1,517.5MT,表3を参照)を用いて予想することができる。前処理後に、Fe酸化物を含む副産物は317.1MTであったし、炭素(115.3MT)、非晶質物質(376.4MT)、SiとAlを主原料とする無機物質(708.7MT)の順であった。
【0066】
多量のCAがCPPから生成される。CAのリサイクル率を高めるための多くの政府の支援と政策的改善、技術的努力にもかかわらず、各CCPはCAを近隣APに埋め立てる埋立方式で依然として処理している。現在は大部分のAPが埋まりきった状態であり、AP周辺の環境汚染の可能性に対する地域住民たちの懸念が高まっている。したがって、本研究ではCPA(APに埋め立てられたCAを表す。)を適切に活用するために、CPAの粒子サイズ及び重量分布、化学的組成、UC含量、粒子イメージ及び鉱物学的分析に基づいてCPAの特性を調べた。このような結果によって、スクリーニング(2.38mm及び0.15mm直径の格子の標準篩)、比重選別(2.2SG)、浮遊選別(pH7)、粉砕(0.15mm未満)及び磁力選別(0.1及び1T)に基づいて、CPAの活用のための前処理方法を設計した。次に、分離方法及び微粒子のサイズによって異なる組成を有する7つの最終副産物群を取得した:(1)UCを含む粗大粒子、2.1重量%分離量;(2)UCを含む微粒子、5.5重量%;(3)UC及びACの混合物、24.8重量%;(4)Si及びAlを主に含む無機物質である粗大粒子、19.5重量%;(5)高純度のFe酸化物を含む微粒子、11.6重量%;(6)低純度のFe酸化物を含む微粒子、9.3重量%;(7)Si及びAlを主に含む無機物質である微粒子、27.2重量%。また、所望の最終材料の目的、エネルギー費用、回収効率を考慮し、各分離工程の様々な組合せを用いて6つの追加の前処理方法を提案した。
【0067】
本発明で提案した前処理方法を韓国内のCPAに適用できることを確認した。しかし、本発明による方法は、最終リサイクル過程においてリサイクル効率を上げるための中間処理に過ぎないため、各細部事項に対する研究の潜在的方向についてはさらに議論されてよい。また、各国のCPAの特性の差による様々なCPAの特性に対する論理的検討により、本発明に類似する前処理方法を開発しなければならない。それにもかかわらず、石炭を焼成する主要工法である微粉炭燃焼(PCC)方式は、大規模な発電所の建設へとつながったため、韓国を含め全世界的にCPPにおいて最も多用される工法であるといえる(Sarkar,M.et al.,2005.J.Chem.Technol.Biotechnol.80(Issue 12))。また、Xia等の重量基準の石炭カテゴリーのグローバル供給構造によると、有煙炭は全世界の石炭供給の73.85%を占めるのに対し、無煙炭は1.38%を占めている(Xia,X.H.et al.,2017.J.Clean.Prod.143,125-144)、したがって、全世界のCPPは有煙炭を主要燃料として使用する。このような事実を考慮し、他の国の大部分のCPAと本研究で取り扱ったCPAとを比較すると、化学組成において、項目などの含量割合だけが異なり得ると予測できる。したがって、本発明による前処理方法を他の国のCPAに適用しても問題がないであろう。また、本発明から得た結果を他の国の同種産業に直接適用すると、APに埋め立てられるCA前処理場を新規設計するか或いは既存の設計を修正するのに根拠資料になり得るであろう。
【0068】
既存の単純埋立処理方法から脱し、リサイクル戦略の活用可能性を確認することを目的とする。全世界的に、提案された方法が、特にAP周辺環境の埋立処理、メンテナンス及び周期的な環境モニタリング費用を含む環境保護費用の節減と関連して大きい利点をもたらし得ると見なされる。また、埋立池の周辺地域の経済的不利や汚染された地域の復元などの活動と関連した間接的な環境費用の節減も期待できる。このような前処理方法をより広い規模で行うための詳細な費用分析は、今後の研究から十分に得られるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る前処理方法により、石炭火力発電所で発生して埋立池に埋め立てられる埋立石炭灰の活用度を高めることができ、未燃焼炭素、Al種(Al2O3・xH20)とガラス相を含む非晶質化合物、SiとAlを含む無機物質、鉄物質群に分類して得ることができる。
また、他の国の同種産業に直接適用し、埋立池に埋め立てられる石炭灰の前処理場を新規設計したり既存設計を修正したりする根拠を提供することができる。
【0070】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者にとってこのような具体的技術は単に好ましい実施様態であり、これによって本発明の範囲が制限されないことは明白であろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
【国際調査報告】