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特表2024-518673電気活性化超酸化水及びその合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】電気活性化超酸化水及びその合成方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240424BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20240424BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240424BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240424BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20240424BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240424BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
B01D61/02 500
C02F1/44 D
C02F1/32
A01N59/00 A
A01P3/00
A01N25/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023552255
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 MY2022050014
(87)【国際公開番号】W WO2022191697
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】PI2021001346
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523325613
【氏名又は名称】ヴィジレンズ メディカル ディバイシズ エスディーエヌ. ビーエイチディー. ア バクティガード カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアム サティシュ コマール
(72)【発明者】
【氏名】デリック コー チー ケオン
(72)【発明者】
【氏名】クリシュネン ランジェニ
【テーマコード(参考)】
4D006
4D037
4D061
4H011
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006KA72
4D006KB01
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB14
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4D006PB02
4D006PB06
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4D037AA02
4D037BA18
4D037CA01
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4D037CA03
4D037CA04
4D037CA15
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4D061EB01
4D061EB04
4D061EB37
4D061EB39
4D061ED13
4D061FA06
4D061FA07
4D061FA08
4D061FA09
4D061FA13
4D061GA07
4D061GA08
4D061GC18
4H011AA01
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA13
4H011DC05
(57)【要約】
本発明は、逆浸透脱イオン水を使用して大量に製造される電気活性化超酸化水(EASW)に関する。電気活性化超酸化水は、創傷治癒における抗菌剤、消毒剤及び洗浄剤として使用される。本開示の電気活性化超酸化水は、次亜塩素酸であって、0.0002%~0.01%の量で存在する、次亜塩素酸と、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)と、塩化ナトリウム(NaCl)であって、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)及び塩化ナトリウム(NaCl)が合計で0.1%未満の濃度で存在する、塩化ナトリウム(NaCl)と、精製水であって、99.9%の濃度で存在する、精製水と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気活性化超酸化水であって、
次亜塩素酸であって、0.0002%~0.01%の量で存在する、次亜塩素酸と、
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)と、
塩化ナトリウム(NaCl)であって、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)及び塩化ナトリウム(NaCl)が合計で0.1%未満の濃度で存在する、塩化ナトリウム(NaCl)と、
精製水であって、99.9%の濃度で存在する、精製水と、
を含む、電気活性化超酸化水。
【請求項2】
前記水は、pHが5.5~8.0の範囲である、請求項1に記載の電気活性化超酸化水。
【請求項3】
前記水は、30ppm~500ppmの範囲にある遊離塩素と、>850mVの酸化還元電位(ORP)とを有する、請求項1に記載の電気活性化超酸化水。
【請求項4】
前記水は、複数の細菌に対して有効であり、前記複数の細菌は、大腸菌、セレウス菌、緑膿菌、エンテロコッカス・ファエカリス、サルモネラ属種、黄色ブドウ球菌、リステリア属種、レジオネラ属種及びシュードモナス・プチダを含む、請求項1に記載の電気活性化超酸化水。
【請求項5】
前記水は、複数の真菌に対して有効であり、前記複数の真菌は、カンジダ・アルビカンス、枯草菌、クロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・スポロゲネスを含む、請求項1に記載の電気活性化超酸化水。
【請求項6】
前記水は、複数の胞子に対して有効であり、前記複数の胞子は、毛瘡白癬菌、スポロトリックス・シェンキイ及びカンジダ・アウリスを含む、請求項1に記載の電気活性化超酸化水。
【請求項7】
前記水は、SARS-CoV-2に対して有効である、請求項1に記載の電気活性化超酸化水。
【請求項8】
電気活性化超酸化水を合成する方法であって、
冷却装置を使用して逆浸透(RO)水を20~25℃の範囲にある温度に冷却する工程(101)と、
冷却された前記水を紫外線(UV)清浄機に通して消毒する工程(102)と、
冷却された前記水を超微細フィルタカートリッジ及びUV清浄機に通す工程(103)であって、前記フィルタカートリッジのサイズが0.45μm及び0.2μmである、工程(103)と、
前記水を電解用水素発生器に供給する工程(104)であって、前記水素発生器がDC電流を使用して、前記電気活性化超酸化水を製造する、工程(104)と、
を含む、方法。
【請求項9】
前記水素発生器は、NaClからHOClへの反応を駆動する少なくとも2つの電解槽を含み、前記2つの電解槽は、カソード及びアノードである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
HOClは、アノード槽において製造され、NaOHは、カソード槽において製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
水のpHは、5.5~8.0の範囲に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
電気活性化超酸化水の製造システムであって、
逆浸透脱イオン水システムを有する水素発生器であって、
前記水素発生器が食塩(NaCl)溶液又はブライン溶液を電気的に活性化する電解装置(槽)を含み、
前記電解装置が少なくとも2つの室を含み、前記2つの室がアノード室及びカソード室であり、
前記アノード室及び前記カソード室が隔膜により仕切られ、それぞれが1つの電極を有し、1つの電極が正極であり、別の電極が負極であり、
前記ブライン溶液が負極室において処理された後に、DC電流が前記溶液を通過し、アノライトが製造されて正極室から出て、アノライト出力コネクタから中性アノライト溶液を収集して、電気活性化超酸化水(EASW)を製造するために使用する、水素発生器と、
pHコントローラと、
貯蔵タンクと、
を含む、電気活性化超酸化水の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、酸化水に関し、特に、電気活性化超酸化水に関する。
【背景技術】
【0002】
電気活性化水及び電気化学活性化水溶液としても知られている電解水は、溶解した塩化ナトリウム又は他のアルカリ金属塩を含有する普通の水道水の電解により製造される。このような塩溶液の電解により、次亜塩素酸及び水酸化ナトリウムの溶液を製造する。電解水は、消毒剤として使用される。
【0003】
何世紀にもわたって、感染は、世界的に数百万人が直面する重大な挑戦の1つとなってきた。感染は、関連する微生物の種類又は宿主に作用する感染源によって分類される。ヒトに感染する致命的な微生物感染の一部は、髄膜炎、肺炎、結核症、ボツリヌス中毒症、炭疽病、及び尿路感染症である。
【0004】
更に、慢性創傷及び医療機器関連の感染におけるバイオフィルムの成長は、健康管理サービスに対して大きな脅威を与え、これは、患者の罹患及び死亡の主要な原因である。慢性細菌感染症の最大80%は、関連する微生物によるバイオフィルムの形成に関連する。一般的に、浮遊する微生物が創傷又は留置医療器具の表面に存在する場合、バイオフィルムが形成され始め、次に、細菌と他の微生物群落とを接着する細胞外高分子物質(EPS)が構築され、3次元構造が形成される。このバイオフィルム構造は、埋め込まれた細菌細胞を、適用されるいずれの物理的処理及び化学的処理から保護する防護壁として作用する。したがって、バイオフィルムは、抗生物質及び免疫応答に対する耐性が高いため、慢性感染症の臨床治療における合併症を引き起こすことが知られている。
【0005】
現在、抗バイオフィルム戦略は、主に、活性抗バイオフィルム剤によるバイオフィルム形成プロセスの破壊に着目したり、抗バイオフィルムコーティングなどの生物工学方法によるバイオフィルム形成の防止に着目したりするものである。抗バイオフィルム技術が存在し、成功を収めているにもかかわらず、患者は、依然として創傷で感染症を発症するリスクがある。したがって、バイオフィルムに対して有効な消毒液が求められている。
【0006】
Covid-19のパンデミック状況により、人々の日常生活における予防メカニズムの重要性が教えられる。不慣れな感染症は、怖い。また、コロナウイルスのワクチンは、まだ有効性が証明される初期段階にある。定められた基準を有する電気活性化超酸化水には、コロナウイルス(SARS-CoV-2)を30秒で99.9%減少させる効果のあることが判明した。
【0007】
電気活性化超酸化溶液又は水は、食塩水の電解プロセスにより製造される。従来、電解槽は、少量の不安定で低pHの酸化水を生成し、次亜塩素酸塩(漂白剤)を形成することしかできない。したがって、微生物感染症に対してより有効であり、創傷治癒における消毒剤及び洗浄剤として使用することができる電気活性化超酸化水を大量に製造する方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の主な目的は、微生物感染に対して有効な電気活性化超酸化水を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、微バイオフィルムに対して有効な電気活性化超酸化水を提供することである。
【0010】
本発明のまた別の目的は、電気活性化超酸化水を大量に製造する方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、微生物感染に対してより有効な電気活性化超酸化水を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、創傷治癒における消毒剤又は洗浄剤として使用することができる電気活性化超酸化水を提供することである。
【0013】
本発明のまた別の目的は、終末消毒、飲料水衛生、足及びホイールの浸漬、噴霧、家禽用空中消毒、養殖業者及び一般農業用途、手及び表面の消毒、医療機器用一般消毒、及び創傷ケア溶液を含む医療分野及び非医療分野の幅広い用途に適切な電気活性化超酸化水を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水が提供される。電気活性化超酸化水は、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、塩化ナトリウム(NaCl)及び精製水を含む。次亜塩素酸は、0.0002%~0.01%の量で存在する。次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)及び塩化ナトリウム(NaCl)は、0.1%未満の濃度で存在し、精製水は、99.9%の濃度で存在する。
【0015】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、pHが5.5~8.0の範囲である。
【0016】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、30ppm~500ppmの範囲にある遊離塩素と、>850mVの酸化還元電位(ORP)とを有する。
【0017】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、複数の細菌に対して有効であり、前記複数の細菌は、大腸菌、セレウス菌、緑膿菌、エンテロコッカス・ファエカリス、サルモネラ属種、黄色ブドウ球菌、リステリア属種、レジオネラ属種及びシュードモナス・プチダを含む。
【0018】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、複数の真菌に対して有効であり、前記複数の真菌は、カンジダ・アルビカンス、枯草菌、クロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・スポロゲネスを含む。
【0019】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、複数の胞子に対して有効であり、前記複数の胞子は、毛瘡白癬菌、スポロトリックス・シェンキイ、カンジダ・アウリスを含む。
【0020】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、SARS-CoV-2に対して有効である。
【0021】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水の合成方法が提供される。前記方法は、電解室又は水素発生器において、DC電流を使用して、塩化ナトリウムを含む水を電解する工程を含み、前記電解室は、乾燥した純粋な真空塩とともに逆浸透脱イオン水を利用して電気活性化超酸化水を製造する。
【0022】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水の合成方法は、冷却装置を使用して逆浸透(RO)水を20~25℃の範囲にある温度に冷却する工程(101)を含む。次いで、冷却された水は、紫外線(UV)清浄機に通して消毒する(102)。冷却された水は、超微細フィルタカートリッジ及びUV清浄機に通す(103)。このフィルタカートリッジのサイズは、0.45μm及び0.2μmである。次いで、水を電解用水素発生器に供給する(104)。前記水素発生器は、DC電流を使用して前記電気活性化超酸化水を製造する。水素発生器は、NaClからHOClへの反応を駆動する少なくとも2つの電解槽を含み、2つの電解槽は、カソード及びアノードである。HOClは、アノード槽において製造され、NaOHは、カソード槽において製造される。水のpHは、5.5~8.0の範囲に維持される。
【0023】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水の製造システムが提供される。前記システムは、逆浸透脱イオン水システムを有する水素発生器を含み、前記水素発生器は、食塩(NaCl)溶液を電気的に活性化する電解装置(槽)を含む。前記電解装置は、少なくとも2つの室を含み、前記2つの室は、アノード室及びカソード室である。前記アノード室及びカソード室は、隔膜により仕切られ、それぞれが1つの電極を有し、1つの電極が正極であり、別の電極が負極であり、前記ブライン溶液が負極室において処理された後に、DC電流が溶液を通過し、アノライトが製造されて正極室から出る。アノライト出力コネクタから中性アノライト溶液を収集して、電気活性化超酸化水(EASW)を製造するために使用する。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、電気活性化超酸化水の製造システムは、逆浸透脱イオン水システムを有する水素発生器を含む。前記水素発生器は、食塩(NaCl)溶液又はブライン溶液を電気的に活性化する電解装置(槽)を含む。前記電解装置は、少なくとも2つの室を含む。前記2つの室は、アノード室及びカソード室である。前記アノード室及びカソード室は、隔膜により仕切られ、それぞれが1つの電極を有し、1つの電極が正極であり、別の電極が負極である。前記ブライン溶液が負極室において処理された後に、DC電流が溶液を通過し、アノライトが製造されて正極室から出る。アノライト出力コネクタから中性アノライト溶液を収集して、電気活性化超酸化水(EASW)を製造するために使用する。前記システムは、pHコントローラと、貯蔵タンクとを更に含む。
【0025】
本明細書のこれら及びその他の実施形態は、以下の説明及び添付の図面と共に検討されると、より良く理解されるであろう。しかしながら、以下の説明は、好適な実施形態及びその多数の具体的詳細について示しているが、限定的なものではなく例示的なものとして与えられている点を理解すべきである。本明細書の実施形態の範囲内で、その精神を逸脱することなく、多くの変更及び修正を施すことも可能であり、本明細書の実施形態は、そのような全ての修正を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面を参照しながら、以下の説明によって明らかになる。図面において、いくつかの図を通して、同様の参照符号は、対応する部材を示す。
【0027】
図1A】本発明の実施形態による電気活性化超酸化水の合成方法における様々な工程を示す流れ図である。
図1】本発明の実施形態による500LPH浄水システム(RO/DI)を示す。
図2】本発明の実施形態による水素発生プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明の様々な実施形態は、電気活性化超酸化水を提供する。電気活性化超酸化水は、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、塩化ナトリウム(NaCl)及び精製水を含む。
【0030】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、pHが5.5~8.0の範囲である。
【0031】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、30ppm~500ppmの範囲にある遊離塩素と、>850mVの酸化還元電位(ORP)とを有する。電気活性化超酸化水は、細菌、真菌及びウイルスを含む微生物を広範囲に殺すことができる。
【0032】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水が提供される。電気活性化超酸化水は、慢性創傷における洗浄剤として使用される。
【0033】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、バイオフィルム及びSARS-CoV-2(コロナウイルス)に対して有効であることが証明される。更に、電気活性化超酸化水は、創傷管理の他、消毒用途に適用される。
【0034】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、殺菌、殺真菌及び殺胞子として機能する。
【0035】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、複数の細菌に対して有効であり、前記複数の細菌は、大腸菌、セレウス菌、緑膿菌、エンテロコッカス・ファエカリス、サルモネラ属種、黄色ブドウ球菌、リステリア属種、レジオネラ属種及びシュードモナス・プチダを含む。
【0036】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、複数の真菌に対して有効であり、前記複数の真菌は、カンジダ・アルビカンス、枯草菌、クロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・スポロゲネスを含む。
【0037】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、複数の胞子に対して有効であり、前記複数の胞子は、毛瘡白癬菌、スポロトリックス・シェンキイ及びカンジダ・アウリスを含む。
【0038】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水は、SARS-CoV-2に対して有効である。
【0039】
本発明の実施形態によれば、電気活性化超酸化水の合成方法が提供される。上記方法は、電解室又は水素発生器を利用し、電解室は、乾燥した純粋な真空塩とともに逆浸透脱イオン水を利用して電気活性化超酸化水を製造する。
【0040】
図1に示すように、電気活性化超酸化水の合成方法は、冷却装置を使用して逆浸透(RO)水を20~25℃の範囲にある温度に冷却する工程(101)を含む。次いで、冷却された水は、紫外線(UV)清浄機に通して消毒する(102)。冷却された水は、超微細フィルタカートリッジ及びUV清浄機に通す(103)。フィルタカートリッジのサイズは、0.45μm及び0.2μmである。次いで、水を電解用水素発生器に供給する(104)。水素発生器は、DC電流を使用して電気活性化超酸化水を製造する。水素発生器は、NaClからHOClへの反応を駆動する少なくとも2つの電解槽を含み、2つの電解槽は、カソード及びアノードである。HOClは、アノード槽において製造され、NaOHは、カソード槽において製造される。水のpHは、5.5~8.0の範囲に維持される。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、電気活性化超酸化水の製造システムが提供される。上記システムは、逆浸透脱イオン水システムを有する水素発生器を含む。水素発生器は、食塩(NaCl)溶液を電気的に活性化する電解装置(槽)を含む。電解装置は、少なくとも2つの室を含み、2つの室は、アノード室及びカソード室である。アノード室及びカソード室は、隔膜により仕切られ、それぞれが1つの電極を有し、1つの電極が正極であり、別の電極が負極である。ブライン溶液が負極室において処理された後に、DC電流が溶液を通過し、アノライトが製造されて正極室から出る。アノライト出力コネクタから中性アノライト溶液を収集して、電気活性化超酸化水(EASW)を製造するために使用する。図1は、500LPH浄水システム(RO/DI)を示し、図2は、水素発生プロセスを示し、上記製造は、500LPH浄水システムで始まり、そこで、乾燥した純粋な真空塩とともに電気活性化超酸化溶液の製造に用いられる純水を製造する。
【0042】
本発明の実施形態によれば、逆浸透脱イオン水(RO/DI)は、次亜塩素酸含有量に関して高品質な溶液を製造するために使用され、この溶液は、少量の塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウム(ND<0.1%)を有する。
【0043】
電気活性化超酸化水は、電解室又は水素発生器により生成される。水素発生器は、乾燥した純粋な真空塩とともに逆浸透脱イオン水を利用して電気活性化超酸化水を製造する。
【0044】
プロセスにおいて、まず、水道用水又は水道水は、沈殿物フィルタ(主に、様々な大きさの砂を含む)及び炭素フィルタからなる第一段階のRO/DIシステムに供給される。沈殿物フィルタは、大きな浮遊粒子又は汚染物質を捕捉するために使用される。粒状活性炭からなる炭素フィルタは、有機物と、塩素及びクロラミンなどの溶存汚染物質とを吸着する。
【0045】
炭素濾過段階の後、水が軟化コラムに入り、水における硬いミネラルイオン(例えば、マグネシウムMg2+、カルシウムCa2+)が除去される。硬水は、ミネラルタンクに入る場合、球状樹脂ビーズの床を流れる。これらのビーズは、ナトリウムイオンで充満している。樹脂ビーズは、負電荷を有するアニオンである。カルシウム及びマグネシウムミネラルは、正電荷を有するため、カチオンとなる。硬水が樹脂を通過する場合、ビーズは、ミネラルイオンをしっかりと捕捉して水から除去する。ビーズがミネラルイオンを捕捉する場合、ナトリウムイオンが放出される。
【0046】
その後、水は、逆浸透(RO)システムに供給され、塩類、細菌、重金属、他の有機物などの汚染物質の大部分を除去する多層の薄膜を通して濾過される。ここで、水は、廃水ラインと生産水ラインの2つの異なる水ラインに分かれる。生産水は、ほぼ純粋であり、DI(脱イオン化)システムへのリザーバとして作用する貯蔵タンク内に移動する。ある程度の割合の廃水は、ROシステムに再循環され、他の廃水は、排水ラインに排出される。
【0047】
DIシステムに供給される前に、RO水は、冷却装置により、20~25℃の温度範囲に冷却される。冷却された水は、紫外線(UV)清浄機を通過して消毒プロセスを経験する。UV清浄機は、細菌、ウイルス、嚢胞(クリプトスポリジウム、ジアルジアなど)などの生体を殺菌紫外線波長に曝して、病原微生物におけるDNAを破壊するため、これらが繁殖できなくなる。
【0048】
UV消毒後の水は、樹脂からなる3つの同じ脱イオン化カラムを通過する。脱イオン化段階において、ナトリウム及び他の金属元素などのミネラル不純物を誘引するイオン交換プロセスが使用される。負に帯電したカチオン樹脂は、水中の正に帯電したイオンを誘引し、正に帯電したアニオン樹脂は、負イオンを誘引する。最後に、DI水は、超微細フィルタカートリッジ(即ち、0.45μm及び0.2μm)及びUV清浄機を通過して、水素発生器に導かれる。
【0049】
EASW生成用の別の重要な入力は、ブライン(NaCl)溶液である。水素発生器は、NaClの水溶液を使用してアノライト及びカソード液を製造する。隔膜が詰まるのを防止するために、最高純度を有するNaClが使用される。イオン透過膜は、イオン、特にナトリウム及び塩化物イオンが通過するように設計されている。塩中に含まれ得る相当な量の別のイオン(例えば、マグネシウム又はカルシウム)を有する塩を使用すると、膜及び周辺構成要素の追加の洗浄が行われ、耐用年数が短くなる。
【0050】
ブラインタンクは、ブライン溶液が常に同じ品質を有することを保証する。ブライン溶液は、常に飽和し、ブラインタンクの底部に位置するインラインフィルタを使用してブライン溶液の汚染が防止される。ブライン溶液は、ブラインタンクの底部から水素発生器に吸い込まれる。
【0051】
機器は、2つの電解槽を使用して、NaClからHOCl(生成物A及びB)及びNaOH(カソード液)への反応を駆動する。各槽には、膜で仕切られた2つの室があり、そのそれぞれがアノード又はカソードのいずれかで指定される。アノードは、外部電極であり、電源の正端子に接続される。カソードは、内部電極であり、電源の負端子に接続される。HOClは、アノード室で製造され、NaOHは、カソード室で製造される。pH/ORPプローブは、生成物A/Bライン(図2)に位置する。それは、製造中の生成物のpH/ORPを直接測定し、pH制御弁の自動制御に使用される。pH制御弁は、最終生成物のpHを制御するために使用される。水素発生器システムは、有効な設定通りに運転して所望の溶液を製造する。生成物出口は、指定された貯蔵タンクに接続され、更に、最終ボトルに充填される。
【0052】
(実験の詳細)
電気活性化超酸化水(EASW)溶液は、創傷洗浄及び管理のために開発された。電気活性化超酸化水の成分は、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、塩化ナトリウム(NaCl)及び精製水である。EASWは、HOCl成分の存在により、広範囲の病原体に対して特異的な抗菌性を有する。表1は、ASTM E2315-03(Standard Guide for Assessment of Antimicrobial Activity Using a Time-Kill Procedure)に準じて評価された、EASWの補助的抗菌性の有効性を示す。
【表1】
【0053】
表2は、EASWに60秒間暴露したときに観察された微生物の死滅時間を示す。
【表2】
【0054】
表3は、EASWの抗バイオフィルム有効性を示す。
【表3】
【0055】
EASWは、ISO 10993に従って、生体適合性について試験されており、表4に示す以下の生体内及び生体外の調査で合格した。
【表4】
【0056】
電気活性化超酸化水は、Hydrocyn aqua(登録商標)で製造され、終末消毒、飲料水衛生、足及びホイールの浸漬、噴霧、家禽用空中消毒、養殖業者及び一般農業用途、手及び表面の消毒、医療機器用一般消毒、及び創傷ケア溶液を含む医療分野及び非医療分野の幅広い用途に適切である。EASWは、以下の表5のように、普通の風邪及びインフルエンザを引き起こすウイルスと、副鼻腔炎及び口腔バイオフィルムを引き起こす細菌とを排除した鼻及び口腔健康用途に使用できるという効果を有する。
【表5】
【0057】
また、EASWは、滅菌水に代えて酸素加湿器に使用されるような眼及び呼吸治療にも好適である。動物で見い出された最も一般的な感染性因子に対して、EASWの微生物学的有効性を試験した(表6)。試験サンプルは、生体外タイムキル試験(in vitro time kill test)を使用して、選択された微生物に対する有効性が試験される場合、有意な抗菌活性を示した。これは、微生物の増殖を阻害することにより、溶液が有効な抗菌活性を示すことを示す。特に、この非抗生物質技術は、イヌなどの動物における急性及び慢性皮膚疾患の予防及び治療のために、広範な新しいパラダイムを提供するものと考えられる。EASWは、例えば、動物のホットスポット、湿疹、皮膚発疹及び潰瘍、切り傷、火傷、手術後の部位、皮膚刺激及び裂傷用の溶液などの獣医用途に有用である。
【表6】
【0058】
当業者であれば、本発明の本質的な特徴を逸脱することなく、本発明を他の特定の形態で容易に作製することができることが明らかになる。したがって、本実施形態は、限定的なものではなく、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲に属する全ての変更が本発明の範囲に含まれることが意図される。
図1
図1A
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-12-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気活性化超酸化水性組成物であって、
次亜塩素酸であって、0.0002重量%~0.01重量%の量で存在する、次亜塩素酸と、
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)と、
塩化ナトリウム(NaCl)であって、前記次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)及び前記塩化ナトリウム(NaCl)が合計で0.1重量以下の濃度で存在する、塩化ナトリウム(NaCl)と、
精製水であって、前記水性組成物の残りが精製水であり、消毒され、濾過された逆浸透(RO)水である、精製水と、
を含む、水性組成物
【請求項2】
前記水性組成物は、pHが5.5~8.0の範囲である、請求項1に記載の水性組成物
【請求項3】
前記水性組成物は、30ppm~500ppmの範囲にある遊離塩素と、>850mVの酸化還元電位(ORP)とを有する、請求項1に記載の水性組成物
【請求項4】
前記水性組成物は、複数の細菌に対して有効であり、前記複数の細菌は、大腸菌、セレウス菌、緑膿菌、エンテロコッカス・ファエカリス、サルモネラ属種、黄色ブドウ球菌、リステリア属種、レジオネラ属種及びシュードモナス・プチダを含む、請求項1に記載の水性組成物
【請求項5】
前記水性組成物は、複数の真菌に対して有効であり、前記複数の真菌は、カンジダ・アルビカンス、枯草菌、クロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・スポロゲネスを含む、請求項1に記載の水性組成物
【請求項6】
前記水性組成物は、複数の胞子に対して有効であり、前記複数の胞子は、毛瘡白癬菌、スポロトリックス・シェンキイ及びカンジダ・アウリスを含む、請求項1に記載の水性組成物
【請求項7】
前記水性組成物は、SARS-CoV-2に対して有効である、請求項1に記載の水性組成物
【請求項8】
電気活性化超酸化水性組成物調製するための方法であって、
NaClを含む逆浸透(RO)水を提供する工程と、
冷却装置を使用して前記逆浸透(RO)水を20~25℃の範囲にある温度に冷却する工程(101)と、
冷却された前記水を紫外線(UV)清浄機に通して消毒する工程(102)と、
冷却された前記水を超微細フィルタカートリッジ及びUV清浄機に通す工程(103)と
前記水を電解用水素発生器に供給する工程(104)であって、前記水素発生器がDC電流を使用して、HOClを含む前記電気活性化超酸化水性組成物を製造する、工程(104)と、
を含む、方法。
【請求項9】
前記水素発生器は、NaClからHOClへの反応を駆動する少なくとも2つの電解槽を含み、前記2つの電解槽は、カソード及びアノードである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
HOClは、アノード槽において製造され、NaOHは、カソード槽において製造される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
性組成物のpHは、5.5~8.0の範囲に維持される、請求項に記載の方法。
【国際調査報告】