(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】治療レジメンで使用するためのPI3K-デルタ阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20240424BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240424BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240424BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20240424BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240424BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240424BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240424BHJP
A61K 9/56 20060101ALI20240424BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240424BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240424BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240424BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C07D495/04 CSP
A61K31/5377
A61P29/00
A61P37/00
A61P35/00
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/56
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/12
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023560623
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2022058283
(87)【国際公開番号】W WO2022207646
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523370185
【氏名又は名称】アイオンクチュラ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】IONCTURA SA
【住所又は居所原語表記】Avenue Secheron 15,1202 Geneve Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・ピカリング
(72)【発明者】
【氏名】ラース・ファン・デル・ヴィーン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ラーン
(72)【発明者】
【氏名】レベカ・ソリーリャ
(72)【発明者】
【氏名】ゾーイ・ジョンソン
【テーマコード(参考)】
4C071
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071AA07
4C071BB01
4C071BB05
4C071CC02
4C071CC21
4C071DD40
4C071EE15
4C071FF04
4C071GG05
4C071HH01
4C071HH04
4C071HH28
4C071JJ08
4C071LL01
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA60
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC07
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4C076CC29
4C076DD41
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB26
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が患者において病理学的に関与している疾患または状態、例えば、がん及び炎症性疾患または自己免疫疾患の治療方法に使用するための化合物またはその医薬的に許容される塩。該化合物は、特定の用量で提供され、ヒトにおいて、特に肝毒性、下痢/大腸炎、呼吸器感染症、及び血液毒性に関して、好ましい安全性プロファイルを有することが見出された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が患者において病理学的に関与している疾患または状態の治療方法に使用するための式Iの化合物
【化1】
またはその医薬的に許容される塩であって、
前記方法が、前記式Iの化合物を、1日当たりの前記化合物18mg~108mgの用量で投与することを含む、前記化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
前記用量が、1日当たり約36mgである、請求項1に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項3】
前記用量が、1日当たり約72mgである、請求項1に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項4】
PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が患者において病理学的に関与している疾患または状態の治療方法に使用するための式Iaの塩
【化2】
であって、前記方法が、前記式Iaの塩を、1日当たりの前記塩20mg~120mgの用量で投与することを含む、前記塩。
【請求項5】
前記用量が、1日当たり約40mgである、請求項4に記載の方法に使用するための塩。
【請求項6】
前記用量が、1日当たり約80mgである、請求項4に記載の方法に使用するための塩。
【請求項7】
前記投与が、1日1回である、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項8】
前記投与が、40mgまたは80mgの前記式Iaの塩を含む1つの固体投与単位を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項9】
前記投与が、2つの固体投与単位を含み、各投与単位が、20mgまたは40mgの前記式Iaの塩を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項10】
前記投与が、4つの固体投与単位を含み、各投与単位が、20mgの前記式Iaの塩を含む、請求項1、3、4、6、または7のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項11】
前記疾患が、がんである、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項12】
前記がんが、皮膚癌、眼癌、子宮内膜癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、骨髄線維症、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫(ワルデンストレーム病を含む)、脳癌、中皮腫、頭頸部癌、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌及び結腸直腸癌から選択される、請求項11に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項13】
前記がんが、黒色腫、リンパ腫、骨髄線維症、非小細胞肺癌及び中皮腫から選択される、請求項11または請求項12に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項14】
前記疾患または状態が、炎症性疾患または自己免疫疾患である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項15】
前記疾患または状態が、アレルギー性疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、原発性シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、膜性腎症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、血管炎、及び特発性血小板減少性紫斑病(ITP)から選択される、請求項14に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項16】
前記治療が、患者において臨床的に重大な治療関連のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇をもたらさない、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項17】
前記治療が、治療関連のグレード3の下痢または大腸炎をもたらさない、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項18】
前記治療が、患者において臨床的に重大な治療関連の好中球減少症をもたらさない、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項19】
20mg、40mgまたは80mgの式Iaの塩を含む固体投与単位であって、
【化3】
任意に、前記式Iaの塩が、微結晶性セルロース、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含む医薬組成物に製剤化され、
任意に、前記医薬組成物が、シェルカプセルまたは錠剤で提供される、前記固体投与単位。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月29日に出願されたGB2104416.9及び2021年12月3日に出願されたGB2117511.2の優先権を主張する。これらの内容及び要素は、すべての目的のため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が病理学的に関与している疾患または状態の、PI3Kδ阻害剤による治療に関する。かかる疾患または状態としては、がんならびに複数の炎症性疾患及び自己免疫疾患が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
PI3Kは、イノシトール環のD3位でホスホイノシチドをリン酸化する脂質シグナル伝達キナーゼのファミリーに属する。PI3Kは、その構造、調節及び基質特異性に従って3つのクラス(クラスI、II、及びIII)に分類される。PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδを含むクラスIのPI3Kは、ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸のリン酸化を触媒し、ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸(PIP3)を生成する脂質キナーゼである。PIP3は、成長、生存、接着、遊走を含めたいくつかの細胞プロセスを制御するセカンドメッセンジャーとして機能する。
【0004】
クラスIのPI3Kアイソフォームの4つすべては、ヘテロ二量体として存在し、触媒サブユニット(p110)ならびに発現、活性化、及び細胞内局在を制御する密接に関連した調節サブユニットで構成される。PI3Kα、PI3Kβ、及びPI3Kδは、p85として知られる調節サブユニットと結合し、チロシンキナーゼ依存性機構を通じて成長因子及びサイトカインによって活性化され(Jimenez,Hernandez et al.2002)、PI3Kγは、2つの調節サブユニット(p101及びp84)と結合し、その活性化は、Gタンパク質共役型受容体の活性化によって駆動される(Brock,Schaefer et al.2003)。PI3Kα及びPI3Kβは、遍在的に発現される。対照的に、PI3Kγ及びPI3Kδは、主に白血球で発現される(Vanhaesebroeck,Ali et al.2005)。
【0005】
PI3K経路は、様々な固形腫瘍及び血液悪性腫瘍で頻繁に活性化されるため、PI3Kは、腫瘍学における魅力的な治療標的となっている。これにより、この経路を標的とする阻害剤の開発分野に大きな関心が集まっている(Buchanan 2019)。多くのPI3K阻害剤が臨床開発の様々な段階に達しているが、臨床使用が承認されたPI3K阻害剤はほとんどない。これらの薬剤は臨床的には有効であるが、その使用には薬剤特有の副作用だけでなく、クラスに関連したいくつかの重篤な副作用も伴う。これらの一部は免疫介在性であると考えられており、皮膚反応、大腸炎を伴うまたは伴わない重度の下痢、肝毒性及び肺炎を含む。PI3K阻害剤は、様々な代謝異常、例えば、高血糖及び高トリグリセリド血症も誘発する。
【0006】
その結果、安全性及び有効性の向上を期待して、様々な程度の標的選択性を備えた多くの新たなPI3K阻害剤が合成された。これらの一部は現在、血液悪性腫瘍だけでなく、様々な固形腫瘍への使用を目的として臨床試験中である。しかしながら、初期の臨床試験からのエビデンスにより、これらの新たな薬剤が、クラスに関連した副作用だけでなく、他の重篤で予期しない副作用にも関連していることが示唆される。その結果、これらの新たな薬剤の多くの開発が中止された。
【0007】
クラスとして、PI3Kδ阻害剤は、重篤な皮膚科学的、骨髄抑制性、代謝性、胃腸及び呼吸器系の副作用と関連している(Curigliano 2019)。遍在的に発現されるp110α及びp110βとは異なり、p110δは、主に白血球(例えば、T細胞及びB細胞)で発現されるため、PI3Kδ阻害剤は、CLL、マントル細胞リンパ腫及び非ホジキンリンパ腫が挙げられるがこれらに限定されない再発性または難治性リンパ腫を標的とするために使用されてきた(Buchanan 2019)。当然のことながら、これらのPI3Kδアイソフォーム特異的阻害剤は、貧血、血小板減少症、白血球増加症、溶血及び好中球減少症を含めた血液毒性でも注目されている。PI3Kδの阻害は、免疫応答の活性化につながり、これがこれらの薬剤、例えば、PI3Kδ選択的イデラリシブに対する副作用の一部の原因にもなると考えられている。イデラリシブ誘発性の大腸炎、肝炎及び肺炎は、免疫介在性の影響であると考えられており、イデラリシブ誘発性の下痢、肺炎及び肝トランスアミナーゼの上昇の高発生率は、免疫正常患者で観察される。FDAが承認したイデラリシブのラベルには、「致死的及び重篤な毒性:肝臓、重度の下痢、大腸炎、肺炎、感染症及び腸穿孔」の可能性に関する詳細な黒枠警告が含まれている。したがって、現在承認されているPI3K阻害剤の安全性は、特に長期間投与した場合に厳しい調査が行われている。
【0008】
PI3Kδ阻害剤を投与された患者が経験する有害事象(AE)は、臨床的に重大であり、それらの使用が制限される可能性がある(Phillips 2020)。現時点では、副作用による投与の中断/変更が、PI3Kδ阻害剤の有効性に悪影響を与えるかどうかは不明である。一般に、PI3Kδ阻害剤に関連する標的またはクラス特異的な毒性は、肝毒性、下痢/大腸炎、呼吸器感染症、及び血液毒性であると考えられている。
【0009】
血液毒性、例えば、好中球減少症は、多くの場合、一般的な検査所見の異常として試験のアウトカムに記される。肝毒性は、ほとんどの場合、血中肝トランスアミナーゼの上昇によって評価され、その重症度に応じて等級分けされる(グレード1は最小であり、グレード5は多くの場合致死的である)。PI3Kδ阻害剤によって一般に観察されるグレード3のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルは、多くの場合、投与の中断または変更につながり、低い頻度で投与の中止につながる。PI3Kδ阻害剤を投与された患者の最大3分の1で下痢または大腸炎が報告されており、通常は、下痢止めまたは抗炎症薬による治療を必要とする。イデラリシブを投与された患者の最大20%で呼吸器感染症が観察されており、通常、PI3Kδ阻害剤投与患者には、抗感染の予防薬が投与される。
【0010】
上記を考慮すると、当技術分野では、他のアイソフォームよりも高い選択性で特定のPI3Kアイソフォーム、特にPI3Kδを阻害すると同時に、好ましい安全性プロファイル(特に肝酵素の上昇、下痢及び好中球減少症に関して)を有するPI3Kモジュレータが必要とされる。さらに、当技術分野では、高い選択性及び好ましい安全性プロファイル(特に肝酵素の上昇、下痢及び好中球減少症に関して)を有する化合物による、PI3Kδ経路が関与する疾患を治療(及び予防)する改良された方法が必要である。
【0011】
本発明者らは、この必要性を認識して、本発明の考案に着手した。
【0012】
PI3K阻害化合物に関する無数の開示の中でも、WO2011058149は、PI3K阻害剤である三環式ピラゾールアミン誘導体ならびに自己免疫疾患、炎症性障害、多発性硬化症及びがん等の他の疾患を治療するためのその使用を記載している。
【発明の概要】
【0013】
第一の態様では、本発明は、PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が患者において病理学的に関与している(例えば、限定されないが、免疫細胞応答の不均衡または腫瘍細胞における発現)疾患または状態の治療方法に使用するための式Iの化合物
【化1】
またはその医薬的に許容される塩を提供し、該方法は、式Iの化合物を、1日当たりの該化合物18mg~108mgの用量で投与することを含む。いくつかの実施形態では、該用量は、1日当たり18mg~72mgである。好ましくは、該用量は、1日当たり約36mgである。別の実施形態では、好ましくは、該用量は、1日当たり約72mgである。
【0014】
本明細書に記載及び例示されるように、該医薬的に許容される塩は、好ましくは、ヘミフマル酸塩である。すなわち、該化合物は、式Iaの塩として提供される。
【化2】
【0015】
したがって、本発明は、PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が患者において病理学的に関与している(例えば、限定されないが、免疫細胞応答の不均衡または腫瘍細胞における発現)疾患または状態の治療方法に使用するための式Iaの塩を提供し、該方法は、式Iaの塩を、1日当たりの該塩20mg~120mgの用量で投与することを含む。いくつかの実施形態では、該用量は、1日当たり20mg~80mgである。好ましくは、該用量は、1日当たり約40mgである。別の実施形態では、好ましくは、該用量は、1日当たり約80mgである。
【0016】
該用量は、1日1回のレジメンで投与され得る。すなわち、1日用量は、一度に1つ以上の投与単位で摂取され得る。したがって、いくつかの実施形態では、該投与は、1日1回である。これは、QD(quaque die)と呼ばれることがある。
【0017】
適切には、該投与は、経口である。これは、P.O.(per os)と呼ばれることがある。
【0018】
言い換えれば、いくつかの実施形態では、式Iaの塩の用量は、20~120mg、より好ましくは20~80mg、より好ましくは30~60mg、より好ましくは30~50mg、最も好ましくは約40mg、P.O.QDであり得る。他の実施形態では、式Iaの塩の用量は、20~120mg、より好ましくは20~80mg、より好ましくは30~100mg、より好ましくは30~80mg、より好ましくは40~80mg、最も好ましくは約80mg、P.O.QDであり得る。
【0019】
適切には、投与ごとに1つを超える固体投与単位が使用される。言い換えれば、該用量は、複数の投与単位に分割される。例えば、該投与は、2つの固体投与単位を含んでもよく、各投与単位は、20mgの式Iaの塩を含む。別の例では、該投与は、4つの固体投与単位を含んでもよく、各投与単位は、20mgの式Iaの塩を含む。
【0020】
したがって、さらなる態様では、本発明は、20mgの式Iaの塩を含む固体投与単位を提供し得る。
【0021】
したがって、さらなる態様では、本発明は、5mgの式Iaの塩を含む固体投与単位を提供し得る。
【0022】
別の実施形態では、投与ごとに1つの固体投与単位が使用される。例えば、該投与は、40mgの式Iaの塩を含む1つの固体投与単位を含み得る。別の実施形態では、該投与は、80mgの式Iaの塩を含む1つの固体投与単位を含み得る。
【0023】
したがって、さらなる態様では、本発明は、80mgの式Iaの塩を含む固体投与単位を提供し得る。
【0024】
したがって、さらなる態様では、本発明は、40mgの式Iaの塩を含む固体投与単位を提供し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、式Iaの塩は、微結晶性セルロース、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含む医薬組成物に製剤化される。いくつかの実施形態では、該医薬組成物は、シェルカプセルで提供される。
【0026】
本発明の方法は、PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が病理学的に関与している(例えば、限定されないが、免疫細胞応答の不均衡または腫瘍細胞における発現)疾患または状態の治療を対象とする。かかる疾患または状態としては、炎症性疾患、自己免疫疾患及びがんが挙げられる。言い換えれば、該方法は、炎症性疾患、自己免疫疾患及びがんから選択される疾患または状態を治療する方法であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、該方法は、がんの治療方法である。
【0028】
いくつかの実施形態では、該がんは、皮膚癌、眼癌、子宮内膜癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、骨髄線維症、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫(ワルデンストレーム病を含む)、脳癌、中皮腫、頭頸部癌、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌及び結腸直腸癌から選択される。例えば、該がんは、黒色腫、リンパ腫、骨髄線維症、非小細胞肺癌または中皮腫であり得る。場合によっては、黒色腫は、進行性もしくは転移性黒色腫、または眼/ブドウ膜黒色腫である。進行性または転移性黒色腫は、組織学的に確認される、切除不能なIII期またはIV期の黒色腫であってもよい。場合によっては、該がんは、B細胞リンパ腫である。場合によっては、該がんは、T細胞リンパ腫である。場合によっては、該がんは、黒色腫である。場合によっては、該がんは、ブドウ膜黒色腫である。
【0029】
いくつかの実施形態では、該炎症性疾患または自己免疫疾患は、活性化PI3Kδ症候群(APDS)、アレルギー性疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、原発性シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、膜性腎症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、血管炎、及び特発性血小板減少性紫斑病(ITP)であり得る。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、該治療は、患者において臨床的に重大な治療関連のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇をもたらさない。いくつかの好ましい実施形態では、該治療は、治療関連のグレード3の下痢または大腸炎を引き起こさない。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態では、該治療は、患者において臨床的に重大な治療関連の好中球減少症をもたらさない。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態では、該治療により、重篤な副作用の非存在下での治療期間が長くなる。
【0033】
本発明はさらに、これらの方法で使用するための固体剤形を提供する。適切な固体剤形としては、錠剤及び硬シェルまたは軟シェルカプセルが挙げられる。
【0034】
本発明は、本記載の態様及び好ましい特徴の組み合わせを含むが、かかる組み合わせが、明らかに容認できない場合または明らかに回避される場合を除く。
【0035】
本発明の原理を示す実施形態及び実験を、ここで添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】a及びbは、化合物1を投与された患者において測定されたALTレベルを示す。
【
図2】a及びbは、化合物1を投与された患者において測定されたASTレベルを示す。
【
図3】a及びbは、化合物1を投与された患者において測定された好中球を示す。
【
図4】a及びbは、抗IgEによるエキソビボ刺激後に化合物1を投与された患者において測定されたCD63陽性好塩基球を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の態様及び実施形態を、ここで説明する。さらなる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。本文において言及されるすべての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
化合物1
化合物1は、WO2011058149の実施例339であり、該文書は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。その構造は、式Iに従う:
【化3】
【0039】
IUPAC命名法では、上記の化合物1は、6-フルオロ-3-(モルホリン-4-イルカルボニル)-1-[4-(モルホリン-4-イルメチル)フェニル]-1,4-ジヒドロチオクロメノ[4,3-c]ピラゾール5,5-ジオキシドと称され得る。代替的に、上記構造式は、[6-フルオロ-1-(4-モルホリン-4-イル-メチルフェニル)-5,5-ジオキソ-4,5-ジヒドロ-1H-5λ6-チオクロメノ[4,3-C]ピラゾール-3-イル]-モルホリン-4-イル-メタノンと記載される場合もある。
【0040】
化合物1は、公開特許出願第WO2011058149A1号に記載の通りに調製及び特性評価され得る(69ページの化合物339、303~307ページの調製、及び481ページと414~418ページの特性評価参照)。この情報は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0041】
WO2011/058149A1に開示されたプロセスに基づいて、著者のHaselmayer et al.は、該化合物の5段階の調製手順を記載している(Haselmayer,2014)。この手順は、ナトリウムエトキシドの存在下、8-フルオロ-2,3-ジヒドロ-4Hチオクロメン-4-オンとシュウ酸ジエチルとの反応から始まる。その中間体を、4-(4-ヒドラジニルベンジル)モルホリンで環化し、ピラゾール環を形成する。次いで、そのチオエーテルをメタ-クロロ過安息香酸との反応により対応するスルホンに酸化し、続いてそのエチルエステルを対応する酸にケン化し、続いてモルホリンとカップリングさせて式Iの化合物を得る。
【0042】
別の方法として、ナトリウムエトキシドの存在下での8-フルオロ-2,3-ジヒドロ-4H-チオクロメン-4-オンとシュウ酸ジエチルとの反応の中間体を4-ヒドラジノ安息香酸で環化する。この安息香酸を、ボラン-THF錯体を使用して還元し、そのチオエーテルを、メタ-クロロ過安息香酸との反応により対応するスルホンに酸化する。そのエチルエステルを対応する酸にケン化し、ジメチルホルムアミドの存在下、その酸とアルコールの両方を過剰の塩化チオニルで塩素化し、その後モルホリンとカップリングさせると、化合物1が得られる。
【0043】
化合物1は、医薬的に許容される塩として提供され得る。適切な医薬的に許容される塩は、当技術分野では既知である。化合物1のいくつかの医薬的に許容される塩は、参照により全体として組み込まれるWO2014121901に記載されている。
【0044】
本明細書で使用される、化合物1は、無水ヘミフマル酸塩として提供される(式を示す)。その合成及び特性評価は、WO2014121901(4ページ)に記載されている。これは、固体形態A1と呼ばれている。ヘミフマル酸塩水和物(H1)も同定されている。使用される無水ヘミフマル酸塩は結晶性であり、WO2014121901に記載されている粉末X線ピークリストを有する。本発明の発見は、この固体形態の使用に限定されないが、それが好ましいことが理解されよう。
【化4】
【0045】
Haselmayer et al.は、該化合物の高選択性PI3Kδ阻害剤としての特性評価も記載している。化合物1の好ましいインビトロ及びインビボ特性は、Johnson et al.によってさらに記載されている(Johnson,Z.et al.,AACR 2020,poster 666)。
【0046】
製剤
化合物1は、上記のヘミフマル酸塩として適切に提供される。適切には、化合物1は、経口投与用に製剤化される医薬組成物に提供される。該医薬組成物は、カプセルで提供される場合もあれば、錠剤で提供される場合もある。場合によっては、それは、錠剤、例えば、粉末または顆粒組成物の圧縮によって製造されるコーティング錠または素錠として提供される。他の場合には、それは、カプセル、例えば、硬シェルまたは軟シェルカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)カプセル内に粉末または顆粒組成物として提供される。言い換えれば、経口剤形が好ましい。
【0047】
製剤は、適切には、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤、崩壊剤、流動促進剤、及び/または滑沢剤を含む。
【0048】
場合によっては、該経口剤形は、ヘミフマル酸塩として提供される5mgの化合物1を含み得る。場合によっては、該経口剤形は、ヘミフマル酸塩として提供される20mgの化合物1を含み得る。両方の経口剤形は、表1に記載のとおりに製造されている。該方法の用量に関して、特に20mgの固体剤形が使用される場合、患者に課される投薬量負担(カプセルまたは錠剤の数)が比較的低いことが理解されよう。これは患者のコンプライアンスにとって有利である。
【0049】
しかしながら、一部の患者にとって、例えば、患者が嚥下に困難を抱えている場合には、より小さい剤形が好まれる場合があることが理解されよう。請求項に係る状態の治療においては、より少量の5mgの抗体剤形の使用であっても、患者の負担(カプセルまたは錠剤の数)は珍しいことではない。
【表1】
【0050】
該経口剤形は、ヘミフマル酸塩として提供される40mgの化合物1を含み得る。該経口剤形は、ヘミフマル酸塩として提供される80mgの化合物1を含み得る。両方の経口剤形は、表1に記載の剤形と同様に製造され得る。該方法の用量に関して、単一の固体剤形が使用される場合、患者に課される投薬量負担(カプセルまたは錠剤の数)が最も低いことが理解されよう。これは患者のコンプライアンスにとって最も有利である。
【0051】
したがって、本発明はさらに、経口投与用に製剤化される、好ましくはヘミフマル酸塩として提供される化合物1を含む医薬組成物に関する。
【0052】
例示的な製剤は、化合物1のヘミフマル酸塩、微結晶性セルロース、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含む。該製剤は、固体剤形、例えば、錠剤またはシェルカプセルに封入された粉末もしくは顆粒組成物として提供され得る。単一の錠剤は、単一のカプセルよりも高用量の化合物1のヘミフマル酸塩を収容することができることが理解されよう。したがって、より高い用量単位には錠剤が好ましい。錠剤は、味または嚥下を改善するためにコーティングされ得る。
【0053】
化合物1のヘミフマル酸塩の量は、5mg~20mg、例えば、5mgまたは20mgであり得る。別の実施形態では、化合物1の量は、5mg~80mg、例えば、5mg、20mg、40mgまたは80mgであり得る。
【0054】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、5mgの化合物1のヘミフマル酸塩を含む医薬組成物を含む固体投与単位を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、20mgの化合物1のヘミフマル酸塩を含む医薬組成物を含む固体投与単位を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、40mgの化合物1のヘミフマル酸塩を含む医薬組成物を含む固体投与単位を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、80mgの化合物1のヘミフマル酸塩を含む医薬組成物を含む固体投与単位を提供する。
【0055】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、40mgの化合物1のヘミフマル酸塩を含む医薬組成物を含む錠剤を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、80mgの化合物1のヘミフマル酸塩を含む医薬組成物を含む錠剤を提供する。該錠剤の医薬組成物は、カプセルの医薬組成物と同様であってもよいし、錠剤化用に最適化されてもよいことが理解されよう。
【0056】
本発明の方法
以下にさらに詳細に記載するように、本発明者らは、驚くべきことに、化合物1が、ヒトにおいて、特に肝毒性、下痢/大腸炎、呼吸器感染症、及び血液毒性に関して、好ましい安全性プロファイルを有することを見出した。さらに、化合物1による患者の治療は、肝酵素の上昇、下痢及び好中球減少症をもたらさない。したがって、アイソフォームδに対する特異性及び患者に好ましい安全性特性を備えたPI3K阻害剤が提供され得る。
【0057】
化合物1を使用する治療方法のさらに有利な特性としては、より高い有効性、より長い投与期間、より少ない用量減量または中断もしくは中止のうちの1つ以上が挙げられ得る。
【0058】
言い換えれば、本発明者らは、驚くべきことに、患者(この場合、黒色腫、ブドウ膜黒色腫及び中皮腫の患者であり、したがって、これはすべてのヒト対象に当てはまると予想される)は、PI3K阻害剤を使用した治療レジメンで予想されるよりも少ない副作用で、化合物1によって治療され得ることを見出した。これにより、投与を減らしたり中断したりすることなく、治療が長期処方に適したものになり得る。
【0059】
本明細書に記載の臨床試験及び実施例では、化合物1は、ヘミフマル酸塩として投与される。したがって、場合によっては、化合物1は、ヘミフマル酸塩として投与される。しかしながら、本発明はそれに限定されず、他の固体形態(例えば、他の医薬的に許容される塩)も想定されることが理解されよう。
【0060】
40mgの用量に含まれる遊離塩基としての化合物1の重量当量は、約36mgと計算される(すなわち、化合物1のヘミフマル酸塩の重量の約90%が遊離塩基に相当し、重量の残りの約10%が塩を形成する酸に相当する)。
【0061】
80mgの用量に含まれる遊離塩基としての化合物1の重量当量は、約72mgと計算される(すなわち、化合物1のヘミフマル酸塩の重量の約90%が遊離塩基に相当し、重量の残りの約10%が塩を形成する酸に相当する)。
【0062】
本発明は、したがって、PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が患者において病理学的に関与している疾患または状態の治療方法に関し、該方法は、化合物1を、1日当たり18mg~108mgの量で投与することを含む。場合によっては、該量は、1日当たり18mg~72mgである。場合によっては、該量は、1日当たり27~54mgである。場合によっては、該量は、1日当たり27g~45mg、例えば、1日当たり約36mgである。場合によっては、該量は、1日当たり27~108mgである。場合によっては、該量は、1日当たり27~72mgである。場合によっては、該量は、1日当たり36~90mg、例えば、1日当たり約72mgである。場合によっては、該量は、1日当たり36~72mgである。
【0063】
化合物1がヘミフマル酸塩(式Ia)として投与される場合、本発明は、PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が患者において病理学的に関与している疾患または状態の治療方法に関し、該方法は、化合物1を該ヘミフマル酸塩として、1日当たり20mg~120mgの量で投与することを含む。場合によっては、該量は、1日当たり20mg~80mgである。場合によっては、該量は、1日当たり30~60mgである。場合によっては、該量は、1日当たり30~50mg、例えば、1日当たり約40mgである。場合によっては、該量は、1日当たり30~120mgである。場合によっては、該量は、1日当たり30~80mgである。場合によっては、該量は、1日当たり40~100mg、例えば、1日当たり約80mgである。場合によっては、該量は、1日当たり40~80mgである。
【0064】
より低い用量も検討されており、想定されている。したがって、本明細書に記載の任意の方法において、該方法は、1日当たり9mg~108mgの量で化合物1を投与することを含み得ることが理解されよう。場合によっては、化合物1の量は、1日当たり9mg~72mgである。化合物1がヘミフマル酸塩として投与される場合、本明細書に記載の任意の方法において、該方法は、化合物1を該ヘミフマル酸塩として、1日当たり10mg~120mgの量で投与することを含み得る。場合によっては、化合物1の該ヘミフマル酸塩としての量は、1日当たり10mg~80mgである。
【0065】
患者のPI3Kδ経路の阻害は、血液サンプル中の化合物1の薬力学的活性(PD)を測定することによって実証され得る。血中のPI3Kδ阻害に特異的なPDマーカーは、好塩基球上のCD63発現である。ヘミフマル酸塩としての化合物1による患者の治療により、患者の血液サンプル中のCD63陽性好塩基球のパーセンテージが、他のPI3Kδ阻害剤(例えば、イデラリシブ)について報告されているものと同程度に用量依存的に減少する。特に40mgの用量では、測定されたすべてのサンプルにおいてCD63陽性好塩基球のパーセンテージが低く、治療の過程でのPI3Kδ経路の効果的な阻害が確認される。特に80mgの用量では、測定されたすべてのサンプルにおいてCD63陽性好塩基球のパーセンテージが同様に低く、治療の過程でのPI3Kδ経路の効果的な阻害が確認される。
【0066】
したがって、ある特定の好ましい実施形態は、40mgの用量の式Iaの塩、または36mgの用量の式Iの化合物に関する。
【0067】
しかしながら、より高い用量が包含され、想定されることが理解されよう。例えば、該用量は、式Iaの塩の60mg、または式Iの化合物の54mgの用量であり得る。例えば、該用量は、式Iaの塩の80mg、または式Iの化合物の72mgの用量でよく、いくつかの実施形態では、これが好ましい場合がある。
【0068】
場合によっては、より低い用量が想定される。例えば、該用量は、式Iaの塩の10mg、または式Iの化合物の9mgの用量であり得る。
【0069】
本発明者らは、1日1回の投与が効果的であり、忍容性が良好であることを見出した。1日1回の投与は、一部の既知の使用されているPI3K阻害剤と比較した場合に利点がある(例えば、イデラリシブは、副作用による用量の減量が必要でない限り、1日2回150mgの用量として処方される)。1日1回の投与により患者経験価値が改善され、患者のコンプライアンスが改善され得る。がん患者、特に進行がんでは、しばしばかなりの量の錠剤の負担を経験し、嚥下が困難になる場合がある。したがって、本発明の方法では、該用量は、1日1回摂取され得る。言い換えれば、該用量は、1日を通して分割及び分散されない。それは、単一の投与単位(例えば、単一の錠剤またはカプセル)として、または複数の剤形(例えば、2つ以上の錠剤またはカプセル)として摂取され得る。
【0070】
したがって、場合によっては、該方法は、1つ以上の固体投与単位を投与することを含む。例えば、場合によっては、該1日用量は、40mgであり、該方法は、2つの20mgの固体投与単位(すなわち、化合物1をヘミフマル酸塩として20mg含む固体投与単位)、またはより好ましくは、1つの40mgの固体投与単位を投与することを含む。
【0071】
別の例では、該1日用量は、60mgでよく、投与は、3つの固体投与単位を含んでもよく、各投与単位は、20mgの式Iaの塩を含む。別の例では、該1日用量は、80mgであり、投与は、4つの固体投与単位を含んでもよく、各投与単位は、20mgの式Iaの塩を含む。別の実施形態では、該投与は、40mgの式Iaの塩を含む2つの投与単位、またはより好ましくは、80mgの式Iaの塩を含む1つの投与単位を含み得る。
【0072】
本明細書に記載のとおり、本発明者らは、化合物1が、驚くべきことに、ヒトにおいて良好な安全性プロファイルを有することを確認し、その治療は、このクラスの阻害剤に対して予想される治療関連のグレード3のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇を低くし得ることを観察した。
【0073】
したがって、場合によっては、化合物1による患者の治療は、患者の5%超において治療関連のグレード3のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇をもたらさない。より好ましくは、化合物1による患者の治療は、患者の1%超において治療関連のグレード3のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇をもたらさない。最も好ましくは、化合物1による患者の治療は、患者において臨床的に重大な治療関連のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇をもたらさない。
【0074】
本発明者らはさらに、最初の試験から、化合物1による治療は、このクラスの阻害剤で予想されるよりも副作用が少ないことを確認した。特に、重篤な下痢及び/または大腸炎の発生が少なくなることが予想される。これは、特に80mgの用量で最も驚くべきことであり、この用量レベルでは、PI3Kδ活性のほぼ完全な阻害を予想することができる。
【0075】
したがって、場合によっては、化合物1による患者の治療は、患者の5%超において治療関連のグレード3の下痢または大腸炎をもたらさない。より好ましくは、化合物1による患者の治療は、患者の1%超において治療関連のグレード3の下痢または大腸炎をもたらさない。最も好ましくは、化合物1による患者の治療は、患者において臨床的に重大な治療関連の下痢または大腸炎をもたらさない。
【0076】
実施例に記載のとおり、本発明者らは、化合物1による治療が、正常範囲を下回る臨床的に重大な治療関連の好中球の減少をもたらさないと思われることを認めた。
【0077】
したがって、場合によっては、化合物1による患者の治療は、患者の5%超において治療関連のグレード3の好中球減少症をもたらさない。より好ましくは、化合物1による患者の治療は、患者の1%超において治療関連のグレード3の好中球減少症をもたらさない。最も好ましくは、化合物1による患者の治療は、患者において臨床的に重大な治療関連の好中球減少症をもたらさない。
【0078】
副作用は、その重篤度に応じて、進行中の治療を中断する場合もあれば、不可能にする場合さえあることが理解されよう。重篤な副作用が認められた場合、治療が一時停止される可能性、用量が下方調整される可能性(有効性に悪影響を与える可能性がある)、または治療終了の決定につながる可能性さえある。がんの治療においては、これらの中断のいずれかが、患者の健康、予後、及び/または気力に重大な悪影響を与える可能性がある。
【0079】
本発明者らは、最初の試験から、化合物1による治療は、このクラスの阻害剤で予想されるよりも治療の期間が長くなることを確認した。特に、重篤な副作用の非存在下での治療期間が長いことは患者にとって有益であることが予想される。固形腫瘍では、すでに20mgの用量の1人の患者で部分的な抗腫瘍反応が生じ、40mg及び80mgの用量レベルの他の数人の患者において、長期にわたる病状の安定がもたらされている。
【0080】
その優れた安全性プロファイルは、化合物1が、中断することのない長期使用に適し得る治療レジメンを提供することを意味する。したがって、患者は、数ヶ月にわたる治療レジメンを処方され得ることが想定される。場合によっては、該治療は、少なくとも1ヶ月間処方される。場合によっては、該治療は、少なくとも2ヶ月間処方される。場合によっては、該治療は、少なくとも3ヶ月間処方される。場合によっては、該治療は、少なくとも4ヶ月間処方される。場合によっては、該治療は、少なくとも5ヶ月間処方される。場合によっては、該治療は、少なくとも6ヶ月間処方される。場合によっては、該治療は、少なくとも1年間処方される。
【0081】
場合によっては、該治療期間は、中断することなく少なくとも1ヶ月である。場合によっては、該治療期間は、中断することなく少なくとも2ヶ月である。場合によっては、該治療期間は、中断することなく少なくとも3ヶ月である。場合によっては、該治療期間は、中断することなく少なくとも4ヶ月である。場合によっては、該治療期間は、中断することなく少なくとも5ヶ月である。場合によっては、該治療期間は、中断することなく少なくとも6ヶ月である。場合によっては、該治療期間は、中断することなく少なくとも1年である。
【0082】
場合によっては、該治療は、28日周期で施される。該治療期間は、中断することなく複数の28日周期であり得る。場合によっては、該治療期間は、中断することなく28日周期で少なくとも1年である。
【0083】
本発明の方法は、ある特定の患者群、例えば、忍容性が低いために現在PI3Kδ阻害剤を受けることが適格でない高齢及び/または虚弱患者の治療に特に有用であり得ることが理解されよう。
【0084】
したがって、場合によっては、該患者は、50歳以上、例えば、55歳以上、例えば、60歳以上、例えば、65歳以上、例えば、70歳以上、例えば、75歳以上、例えば、80歳以上である。
【0085】
場合によっては、該患者は、イデラリシブ及び/または他のPI3Kδ阻害剤による治療に適さないか、または医師によって適さないと見なされる。
【0086】
場合によっては、該患者は、以前に胃腸障害、例えば、大腸炎または慢性下痢に罹患していると診断されたことがある患者である。
【0087】
PI3Kδ経路を介したシグナル伝達が、病理学的に関与している疾患または状態の化合物1を使用した治療
化合物1は、PI3Kδ阻害剤である。PI3K経路が様々な疾患において頻繁に活性化されることが当技術分野で認識されている。したがって、本発明の方法は、(健康な個体の状態と比較して)PI3K経路の活性化に関与する、好ましくは因果関係がある疾患、例えば、炎症性疾患、自己免疫疾患またはがん等の治療を対象とする。
【0088】
したがって、本発明の方法は、PI3K経路の上方制御を特徴とする疾患または障害の治療に関連し得る。したがって、本発明の方法は、患者のPI3K経路の調節による疾患または障害の治療に関連し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、該炎症性疾患または自己免疫疾患は、活性化PI3Kδ症候群(APDS)、アレルギー性疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、原発性シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、膜性腎症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、血管炎、及び特発性血小板減少性紫斑病(ITP)であり得る。
【0090】
PI3K経路は、固形腫瘍及び血液悪性腫瘍で頻繁に活性化される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、がんの治療を対象とする。該がんは、固形腫瘍または血液悪性腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、該がんは、皮膚癌、眼癌、子宮内膜癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、骨髄線維症、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫(ワルデンストレーム病を含む)、脳癌、中皮腫、頭頸部癌、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌及び結腸直腸癌から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、該がんは、黒色腫、リンパ腫、骨髄線維症、非小細胞肺癌または中皮腫である。
【0092】
いくつかの実施形態では、該黒色腫は、進行性もしくは転移性黒色腫、または眼/ブドウ膜黒色腫から選択される。進行性または転移性黒色腫は、組織学的に確認される、切除不能なIII期またはIV期の黒色腫であってもよい。いくつかの実施形態では、該黒色腫は、ブドウ膜黒色腫である。
【0093】
いくつかの実施形態では、該リンパ腫は、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫から選択される。
***
【0094】
前述の記載、または以下の特許請求の範囲、または添付の図面中で開示され、特定の形態で、または開示する機能を実行するための手段、または開示する結果を得るための方法もしくはプロセスと言う観点から表された特徴は、多様な形態で本発明を実現するために、必要に応じて、別々に、またはかかる特徴を任意に組み合わせて利用してもよい。
【0095】
本発明を、上記の例示的な実施形態と併せて説明してきたが、本開示が与えられた場合、多くの均等の修正及び変形が当業者には明らかであろう。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は、例示的であって、限定的ではないと見なされる。本記載の実施形態への様々な変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくなされる場合がある。
【0096】
誤解を避けるために、本明細書に提供する理論的な説明は、読者の理解を深めることを目的として提供されている。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望むものではない。
【0097】
本明細書で使用される任意のセクションの見出しは構成の目的のみのためであり、記載される対象物の限定として解釈されるべきではない。
【0098】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書を通して、文脈が特別に要求しない限り、「含む(comprise)」及び「含む(include)」という単語、ならびに変形、例えば、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」及び「含むこと(including)」は、明示された構成要素もしくはステップ、または構成要素もしくはステップの群を包含するが、他の構成要素もしくはステップ、または構成要素もしくはステップの群を除外しないことを示唆すると理解される。
【0099】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確にそうでないと示されない限り、複数の指示物を包含することに留意されたい。範囲は、「約」ある特定の値から及び/または「約」他の特定の値として、本明細書において表現され得る。かかる範囲が表現されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似として表現される場合に、先行詞「約」の使用によって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関連する「約」という用語は、任意であり、例えば、+/-10%を意味する。
【実施例】
【0100】
実施例1
進行性または転移性がん患者におけるIOA-244のファースト・イン・ヒューマン投与試験
患者における化合物1の安全性及び忍容性プロファイルを特定するために、進行性または転移性がん患者において臨床研究を行った。この臨床研究は、clinicaltrials.govに番号NCT04328844で記載されており、化合物1は、ヘミフマル酸塩として提供されている。推定される基本的な完了日は、2022年9月であり、推定される研究完了日は、2023年4月である。
【0101】
実施例2
化合物1を投与された患者の血液サンプル中のALTレベルの測定
患者における化合物1の肝毒性を、化合物1のヘミフマル酸塩を投与された患者の血液サンプル中のALTレベルを測定することによって特定した。初期用量群は、本明細書に記載の経口製剤として10、20、及び40mgを1日1回摂取した。これらの用量群のデータを
図1aに示す。さらなる用量群は、本明細書に記載の経口製剤として80mgを1日1回摂取した。80mgの1日1回を含めたすべての用量群のデータを
図1bに示す。これは、1日1回10、20、及び40mgの用量群に関するさらなる投与周期も示している。x軸はサンプル採取の時点を示し、「Cx」は28日のx周期を意味し、「Dy」は28日周期内のy日を意味する。したがって、連続投与期間ごとに、C1D1は投与1日目に対応し、C1D8は投与8日目に対応する等であり、C2D1は投与29日目に対応し、C3D1は投与57日目に対応する等である。
【0102】
驚くべきことに、化合物1を患者に投与することでは、正常範囲を上回る臨床的に重大な治療関連のALTの上昇をもたらさないことが観察された。さらに驚くべきことに、化合物1の投与により、化合物1の投与前にALTレベルが上昇していた1人の患者のALTレベルが低下した。
図1bは、化合物1が、化合物1の投与前、第1周期の1日目にALTレベルが上昇していた3人の患者においてALTレベルが低下したことを示している。他の1人の患者では、化合物1の投与中にALTレベルが増加したが、この増加は、肝臓における腫瘍病変の成長に関連していた。
【0103】
これは、イデラリシブの患者への投与が、患者の42.9%でALTレベルの上昇をもたらし、これがPI3Kδの標的及びクラス特異的毒性と考えられることが報告されていることから、驚くべきことである(ZydeligのCHMP評価報告書の表57参照)。
【0104】
実施例3
化合物1を投与された患者の血液サンプル中のASTレベルの測定
患者における化合物1の肝毒性を、化合物1を投与された患者の血液サンプル中のASTレベルを測定することによって特定した。初期用量群は、本明細書に記載の経口製剤として10、20、及び40mgを1日1回摂取した。これらの用量群のデータを
図2aに示す。さらなる用量群は、本明細書に記載の経口製剤として80mgを1日1回摂取した。80mgの1日1回を含めたすべての用量群のデータを
図2bに示す。これは、1日1回10、20、及び40mgの用量群に関するさらなる投与周期も示している。
【0105】
驚くべきことに、化合物1を患者に投与することでは、正常範囲を上回る臨床的に重大な治療関連のASTの上昇をもたらさないことが観察された。さらに驚くべきことに、化合物1の投与により、化合物1の投与前にASTレベルが上昇していた1人の患者のALTレベルが低下した。さらにより驚くべきことに、化合物1の投与が、化合物1の投与前、第1周期の1日目にASTレベルが上昇していた3人の患者においてASTレベルが低下した。他の1人の患者では、化合物1の投与中にASTレベルが増加したが、この増加は、肝臓における腫瘍病変の成長に関連していた。
【0106】
化合物1の投与がASTレベルを上昇させないという発見は、イデラリシブの患者への投与が、患者の41.8%でASTレベルの上昇をもたらし、これがPI3Kδの標的及びクラス特異的毒性と考えられることが報告されていることから、驚くべきことである(ZydeligのCHMP評価報告書の表57参照)。
【0107】
実施例4
化合物1を投与された患者で報告された治療関連有害事象(AE)
治療担当医師によって化合物1を投与された患者について報告された治療関連のAEは軽度であり、グレード2のブドウ膜炎の一例を除いてグレード1である。驚くべきことに、患者への化合物1の投与は、他のPI3Kδ阻害剤に関して認められる典型的な毒性、例えば、下痢/大腸炎及び(呼吸器)感染症をもたらさないことが観察された。下痢が疑われる1症例のみが存在したが、この症例は軽度(グレード1)で短期間(2日間)であったため、食中毒の発生に関連している可能性もあった。大腸炎や(呼吸器)感染症の症例はなかった。これは、イデラリシブの患者への投与が、患者の38.2%で下痢/大腸炎をもたらし、患者の59.3%で感染症をもたらすことが報告されているため、非常に驚くべきことである(ZydeligのCHMP評価報告書の表49参照)。表2は、化合物1の投与に関連して治験責任医師によって評価された有害事象を文書化している。80mgQDを投与された患者では副作用は記録されなかった。
【表2】
【0108】
実施例5
化合物1を投与された患者の血液サンプル中の好中球の測定
患者における化合物1の血液毒性を、化合物1を投与された患者の血液サンプル中の好中球数を測定することによって特定した。初期用量群は、本明細書に記載の経口製剤として10、20、及び40mgを1日1回摂取した。これらの用量群のデータを
図3aに示す。さらなる用量群は、本明細書に記載の経口製剤として80mgを1日1回摂取した。80mgの1日1回を含めたすべての用量群のデータを
図3bに示す。これは、1日1回10、20、及び40mgの用量群に関するさらなる投与周期も示している。
【0109】
驚くべきことに、化合物1を患者に投与することでは、正常範囲を下回る臨床的に重大な治療関連の好中球の減少をもたらさないことが観察された。
【0110】
これは、イデラリシブの患者への投与が、患者の45.5%で好中球数の減少をもたらし、これがPI3Kδの標的及びクラス特異的毒性と考えられることが報告されていることから、驚くべきことである(ZydeligのCHMP評価報告書の表55)。
【0111】
実施例6
CD63マーカーの情報
患者における化合物1の薬力学的(PD)活性を、抗IgEによるエキソビボ刺激後に化合物1を投与された患者の血液サンプル中において好塩基球活性化試験(BAT)を使用してCD63陽性好塩基球のパーセンテージを測定することによって特定した。
図4a及び
図4bを参照されたい。
【0112】
FcεR1受容体の架橋後の好塩基球の脱顆粒は、PI3Kδ依存性であることが分かっており(Ali 2008)、好塩基球脱顆粒に対するPI3Kδ阻害剤の活性は、エキソビボでのIgE媒介CD63発現の阻害によって測定することができる(Lannutti 2011)。化合物1は、イデラリシブについて報告されているものと同程度の患者の血液サンプル中のCD63陽性好塩基球の用量依存的な減少を示す(Horak 2016)。
【0113】
参考文献
本発明及び本発明が属する最先端をより完全に記載及び開示するために、多くの刊行物が上記で引用されている。これらの参考文献についての完全な引用を以下に提供する。これらの参照文献の各々の全体が本明細書に組み込まれる。
WO2011058149
WO201412190
CHMP assessment report on Zydelig(2014)
Ali,K.et al.(2008).Isoform-Specific Functions of Phosphoinositide 3-Kinases:p110δ but Not p110γ Promotes Optimal Allergic Responses In Vivo.J Immunol 180,2538-2544.
Brock,C.et al.(2003).Roles of Gβγ in membrane recruitment and activation of p110γ/p101 phosphoinositide 3-kinase γ.J Cell Biology 160,89-99.
Buchanan,C.M.Et al.(2019).For Better or Worse:The Potential for Dose Limiting the On-Target Toxicity of PI 3-Kinase Inhibitors.Biomol 9,402.
Curigliano and Shah(2019).Safety and Tolerability of Phosphatidylinositol-3-Kinase(PI3K) Inhibitors in Oncology.Drug Saf.42(2),247-262.
Esposito,A.Et al.(2019).Safety,Tolerability,and Management of Toxic Effects of Phosphatidylinositol 3-Kinase Inhibitor Treatment in Patients With Cancer.Jama Oncol 5,1347-1354.
Haselmayer,P.et al.,Frontiers in Immunology(2014),Vol.5,Art.233,p.1-15;p.2,col.2,section“Chemical Synthesis”,par.1参照
Horak,F.et al.(2016).Randomized phase 1 study of the phosphatidylinositol 3-kinase δ inhibitor idelalisib in patients with allergic rhinitis.J Allergy Clin Immun 137,1733-1741.
Jimenez,C.et al.(2002).The p85 regulatory subunit controls sequential activation of phosphoinositide 3-kinase by Tyr kinases and Ras.J Biol Chem 277,41556-62.
Johnson,Z.et al.,AACR 2020,poster 666
Lannutti,B.J.et al.(2011).CAL-101,a p110δ selective phosphatidylinositol-3-kinase inhibitor for the treatment of B-cell malignancies,inhibits PI3K signaling and cellular viability.Blood 117,591-594
Phillips,T.J.et al.(2020).Can Next-Generation PI3K Inhibitors Unlock the Full Potential of the Class in Patients With B-Cell Lymphoma? Clin Lymphoma Myeloma Leukemia 21,8-20.e3.
Vanhaesebroeck,B.et al.(2005).Signalling by PI3K isoforms:insights from gene-targeted mice.Trends Biochem Sci 30,194-204.
【0114】
標準的な分子生物学手法については、Sambrook,J.,Russel,D.W.Molecular Cloning,A Laboratory Manual.3 ed.2001,Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんまたは炎症性疾患または自己免疫疾患の治療方法に使用するための式Iの化合物
【化1】
またはその医薬的に許容される塩であって、
前記方法が、前記式Iの化合物を、1日当たりの前記化合物
36mg~
72mgの用量で投与することを含む、前記化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
前記用量が、1日当たり約36mgである、請求項1に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項3】
前記用量が、1日当たり約72mgである、請求項1に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項4】
がんまたは炎症性疾患または自己免疫疾患の治療方法に使用するための式Iaの塩
【化2】
であって、前記方法が、前記式Iaの塩を、1日当たりの前記塩
40mg~
80mgの用量で投与することを含む、前記塩。
【請求項5】
前記用量が、1日当たり約40mgである、請求項4に記載の方法に使用するための塩。
【請求項6】
前記用量が、1日当たり約80mgである、請求項4に記載の方法に使用するための塩。
【請求項7】
前記投与が、1日1回である、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項8】
前記投与が、40mgまたは80mgの前記式Iaの塩を含む1つの固体投与単位を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項9】
前記投与が、2つの固体投与単位を含み、各投与単位が、20mgまたは40mgの前記式Iaの塩を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項10】
前記投与が、4つの固体投与単位を含み、各投与単位が、20mgの前記式Iaの塩を含む、請求項1、3、4、6、または7のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項11】
前記疾患が、がんである、先行請求項のいずれかに記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項12】
前記がんが、皮膚癌、眼癌、子宮内膜癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、骨髄線維症、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫(ワルデンストレーム病を含む)、脳癌、中皮腫、頭頸部癌、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌及び結腸直腸癌から選択される、請求項11に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項13】
前記がんが、黒色腫、リンパ腫、骨髄線維症、非小細胞肺癌及び中皮腫から選択される、請求項11または請求項12に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項14】
前記疾患または状態が、炎症性疾患または自己免疫疾患である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項15】
前記疾患または状態が、アレルギー性疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、原発性シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、膜性腎症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、血管炎、及び特発性血小板減少性紫斑病(ITP)から選択される、請求項14に記載の方法に使用するための化合物または塩。
【請求項16】
20mg、40mgまたは80mgの式Iaの塩を含む固体投与単位であって、
【化3】
任意に、前記式Iaの塩が、微結晶性セルロース、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含む医薬組成物に製剤化され、
任意に、前記医薬組成物が、シェルカプセルまたは錠剤で提供される、前記固体投与単位。
【国際調査報告】