(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】車両の車輪のスリップ限界値を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
B60W 40/064 20120101AFI20240424BHJP
B60W 30/02 20120101ALI20240424BHJP
B60W 40/10 20120101ALI20240424BHJP
【FI】
B60W40/064
B60W30/02
B60W40/10
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023560660
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2021058294
(87)【国際公開番号】W WO2022207080
(87)【国際公開日】2022-10-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,レオン
(72)【発明者】
【氏名】レイン,レオ
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA16
3D241BA49
3D241DA52Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB26A
3D241DC43Z
(57)【要約】
本発明は、車両(10)の車輪(14、16)のスリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を決定するための方法に関する。スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)は、車両(10)の動作を制御するために使用される。本方法は、車両(10)の動作時間の大部分でスリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を高スリップ限界値(s
x,lim2;
αlim2)よりも小さく設定することを含む。本方法はさらに、車両(10)が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を車両(10)が取るか否かを判定することと、車両(10)が低頻度の操作条件を取ると判定することに応じてスリップ限界値を高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)に設定することと、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)の車輪(14、16)のスリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を決定するための方法であって、前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)は、前記車両(10)の動作を制御するために使用され、前記方法は、前記車両(10)の動作時間の大部分で前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さく設定することを含み、前記方法は、
-前記車両(10)が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することと、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取ると判定することに応じて前記スリップ限界値を前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)に設定することと、
をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さい中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じて前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも低い値に設定すること、
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じて前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)に設定すること、
をさらに含む、請求項2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の回転軸を横断する方向に延びる縦方向(x)に縦方向延長部分を有し、前記スリップ限界値(s
x,lim)は、前記縦方向(x)におけるスリップに関する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の回転軸を横断する方向に延びる縦方向(x)における縦方向延長部分と、前記車輪(14、16)の前記回転軸と平行な横方向(y)における横方向延長部分とを有し、前記スリップ限界値は、前記縦方向(x)における前記車輪(14;16)の縦方向速度(v
x)と、前記横方向(y)における前記車輪(14;16)の横方向速度(v
y)とを使用して決定されるスリップ角(α
lim)に関する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)は、前記車輪(14、16)に関連付けられる所定の許容転がり抵抗に対応するように決定される、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)は、前記車輪(14、16)に関連付けられる所定の許容摩耗率に対応するように決定される、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記車輪(14、16)はタイヤを含み、前記許容摩耗率は前記タイヤの許容可能なタイヤ摩耗率である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)は、ゼロスリップから前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)までの高スリップ限界範囲が得られ、その範囲内ではスリップの増加が常に利用可能な車輪対地の水平力の増加をもたらすように設定される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記車両(10)が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することは、以下のパラメーター、
-横加速度、
-縦加速度、
-ステアリング角度、及び
-経路曲率、のうちの少なくとも1つが、前記所定の時間範囲内で閾値を超えるかまたは前記閾値を超えると予測されると判定することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記車両(10)が低頻度の操作条件を取るか否かを判定することは、以下の、
-前記車両(10)の意図された運転シナリオを予測することと、
-前記車輪(14、16)の前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)が前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)よりも大きくなければ前記意図された運転シナリオに従うことができないと検出することに応じて、前記車両(10)が低頻度の操作条件を取ると判定することと、
を含む、請求項2~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)と前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)との間の比率は、80%未満、好ましくは70%未満である、請求項2~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
車両(10)の動作を制御するための方法であって、前記車両(10)は車輪(14、16)を含み、前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の測定及び/または予測されるスリップを示す車輪スリップ値(s
x;α)を有し、前記方法は、
-請求項1~13のいずれか1項に記載のスリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を決定することと、
-前記車輪スリップ値(s
x;α)に対する制約として前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を使用して、前記車両(10)を動作させることと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記方法は、前記車輪スリップ値(s
x;α)が前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を超えないように前記車両(10)を動作させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
車両(10)の制御ユニット(18)であって、前記制御ユニット(18)は、車両(10)の車輪(14、16)のスリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を決定するように適応され、前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)は、前記車両(10)の動作を制御するために使用され、前記制御ユニット(18)は、前記車両(10)の動作時間の大部分で前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さく設定するように適応され、前記制御ユニット(18)は、
-前記車両(10)に関する情報を受け取り、そこから、前記車両(10)が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することと、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取ると判定することに応じて前記スリップ限界値(sx,lim;αlim)を前記高スリップ限界値(sx,lim2;αlim2)に設定することと、
を行うように適応されている、
制御ユニット(18)。
【請求項17】
前記制御ユニット(18)は、前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さい中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)を決定するようにさらに適応されている、請求項16に記載の制御ユニット(18)。
【請求項18】
前記制御ユニット(18)は、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じて前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を、前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さいスリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)に設定する、
ようにさらに適応されている、請求項16または17に記載の制御ユニット(18)。
【請求項19】
前記制御ユニット(18)は、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じて前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)に設定する、
ようにさらに適応されている、請求項17または18に記載の制御ユニット(18)。
【請求項20】
前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の回転軸を横断する方向に延びる縦方向(x)に縦方向延長部分を有し、前記スリップ限界値(s
x,lim)は、前記縦方向(x)におけるスリップに関する、請求項16~19のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項21】
前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の回転軸を横断する方向に延びる縦方向(x)における縦方向延長部分と、前記車輪(14、16)の前記回転軸と平行な横方向(y)における横方向延長部分とを有し、前記スリップ限界値は、前記縦方向(x)における前記車輪(14;16)の縦方向速度(v
x)と、前記横方向(y)における前記車輪(14;16)の横方向速度(v
y)とを使用して決定されるスリップ角(α
lim)に関する、請求項16~19のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項22】
前記制御ユニット(18)は、前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)を前記車輪(14、16)に関連付けられる所定の許容転がり抵抗に対応するように決定するように適応されている、請求項17~21のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項23】
前記制御ユニット(18)は、前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)を前記車輪(14、16)に関連付けられる所定の許容摩耗率に対応するように決定するように適応されている、請求項17~21のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項24】
前記車輪(14、16)はタイヤを含み、前記許容摩耗率は前記タイヤの許容可能なタイヤ摩耗率である、請求項23に記載の制御ユニット(18)。
【請求項25】
前記制御ユニット(18)は、前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)を、ゼロスリップから高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)までの高スリップ限界範囲が得られ、その範囲内ではスリップの増加が常に利用可能な車輪対地の水平力の増加をもたらすように設定するように適応されている、請求項16~24のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項26】
前記制御ユニット(18)は、前記車両(10)が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することを、以下のパラメーター、
-横加速度、
-縦加速度、
-ステアリング角度、及び、
-経路曲率、のうちの少なくとも1つが前記所定の時間範囲内で閾値を超えるかまたは前記閾値を超えることが予測されることを判定することによって行うように適応されている、請求項16~25のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項27】
前記制御ユニット(18)は、前記車両(10)が低頻度の操作条件を取るか否かの判定を、以下の、
-前記車両(10)の意図された運転シナリオを予測することと、
-前記車輪(14、16)の前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)が前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)よりも大きくなければ前記意図された運転シナリオに従うことができないと検出することに応じて、前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取ると判定することと、
を含む手順によって行うように適応されている、請求項17~26のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項28】
前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)と前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)との間の比率は、80%未満、好ましくは70%未満である、請求項17~27のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項29】
車両(10)の制御アセンブリ(20)であって、前記制御アセンブリは、請求項16~28のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)を含み、前記車両(10)は、車輪(14、16)を含み、前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の測定及び/または予測されるのスリップを示す車輪スリップ値(sx;α)を有し、前記制御アセンブリは、
-請求項16~28のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)を使用して前記スリップ限界値(sx,lim;αlim)を決定することと、
-前記車輪スリップ値(sx;α)に対する制約として前記スリップ限界値(sx,lim;αlim)を使用して前記車輪(14、16)を制御するために、前記車両(10)に1つ以上の制御信号を発することと、
を行うように適応されている、
制御アセンブリ(20)。
【請求項30】
前記制御アセンブリ(20)は、前記車輪スリップ値(s
x;α)が前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を超えないように前記車輪(14、16)を制御するために、前記車両(10)に1つ以上の制御信号を発するように適応されている、請求項29に記載の制御アセンブリ(20)。
【請求項31】
請求項16~28のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)及び/または請求項29~30のいずれか1項に記載の制御アセンブリを含む、車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車輪のスリップ限界値を決定するための方法に関する。また、本発明は、車両の動作を制御するための方法に関する。さらに、本発明は、車両の制御ユニットに関する。加えて、本発明は、車両の制御アセンブリに関する。さらに、本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運動を制御する際、車両の1つ以上の車輪のスリップ限界値に関する情報を取得することが望ましい場合がある。たとえば、スリップ限界値は、車両をどのように制御するかを決定するときの車輪スリップに対する制約として使用されることがある。
【0003】
単なる一例として、スリップ限界値は、車両の制動、操縦、および/または推進を制御するときに役に立つ場合がある。
【発明の概要】
【0004】
以上のことを考慮して、本発明の目的は、適切なスリップ限界値を提供する、車両の車輪のスリップ限界値を決定するための方法を提供することである。
【0005】
したがって、本発明は、車両の車輪のスリップ限界値を決定するための方法に関する。スリップ限界値は、車両の動作を制御するために使用される。本方法は、車両の動作時間の大部分でスリップ限界値を高スリップ限界値よりも小さく設定することを含む。
【0006】
本方法は、
-所定の時間範囲内で車両が低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を車両が取るか否かを判定することと、
-車両が低頻度の操作条件を取ると判定することに応じてスリップ限界値を高スリップ限界値に設定することと、
をさらに含む。
【0007】
上述の方法は、車両の通常または高頻度の動作中のスリップ限界値については中程度のレベルが使用されてもよいことを意味する。高スリップ限界値の下で車両が動作し続けると、車輪摩耗率の増大及び/または転がり抵抗の増大など、車両制御のそれほど望ましくない効果が生じる場合があるため、このような中程度のレベルの使用は有用であり得る。
【0008】
任意選択で、本方法は、高スリップ限界値よりも小さい中程度スリップ限界値を決定することをさらに含む。
【0009】
任意選択で、本方法は、
-車両が低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じてスリップ限界値を高スリップ限界値よりも低い値に設定すること、
をさらに含む。
【0010】
任意選択で、本方法は、
-車両が低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じてスリップ限界値を中程度スリップ限界値に設定すること、
をさらに含む。
【0011】
上述の特徴はさらに、スリップ限界値が、車両の動作時間の大部分の間、適切に低く維持されることを意味する。
【0012】
任意選択で、車輪は、車輪の回転軸を横断する方向に延びる縦方向における縦方向延長部分(longitudinal extension)を有する。スリップ限界値は、縦方向におけるスリップに関する。
【0013】
任意選択で、車輪は、車輪の回転軸を横断する方向に延びる縦方向における縦方向延長部分(longitudinal extension)と、車輪の回転軸と平行な横方向における横方向延長部分(lateral extension)とを有する。スリップ限界値は、縦方向における車輪の縦方向速度と横方向における車輪の横方向速度とを使用して決定されるスリップ角に関する。
【0014】
任意選択で、中程度スリップ限界値は、車輪に関連付けられる所定の許容転がり抵抗に対応するように決定される。これは、車両の動作時間の大部分の間、適切な転がり抵抗を有する条件の下で車両が動作されることを意味する。これは、ひいては、車両にとっての適切なエネルギー(たとえば燃料)の経済性を示す。
【0015】
任意選択で、中程度スリップ限界値は、車輪に関連付けられる所定の許容摩耗率に対応するように決定される。これは、車両の動作時間の大部分の間、適切に低い車輪摩耗率を有する条件の下で車両が動作されることを意味する。
【0016】
任意選択で、車輪はタイヤを含み、許容摩耗率はタイヤの許容可能なタイヤ摩耗率である。
【0017】
任意選択で、高スリップ限界値は、ゼロスリップから高スリップ限界値までの高スリップ限界範囲が得られ、その範囲内ではスリップの増加が常に利用可能な車輪対地の水平力の増加をもたらすように設定される。
【0018】
任意選択で、車両が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を車両が取るか否かを判定することは、以下のパラメーター、
-横加速度、
-縦加速度、
-ステアリング角度、及び
-経路曲率、のうちの少なくとも1つが、所定の時間範囲内に閾値を超えるかまたは閾値を超えると予測されると判定すること、を含む。
【0019】
任意選択で、低頻度の操作条件を車両が取るか否かを判定することは、
-車両の意図された運転シナリオを予測することと、
-車輪のスリップ限界値が中程度スリップ限界値よりも大きくなければ意図された運転シナリオに従うことができないと検出することに応じて、車両が低頻度の操作条件を取ると判定することと、
を含む。
【0020】
任意選択で、中程度スリップ限界値と高スリップ限界値との間の比率は、80%未満、好ましくは70%未満である。
【0021】
本発明の第2の態様は、車両の動作を制御するための方法に関する。車両は車輪を含み、車輪は、車輪の測定及び/または予測されるスリップを示す車輪スリップ値を有する。本方法は、
-前述したステップのいずれか1つによりスリップ限界値を決定することと、
-車輪スリップ値に対する制約としてスリップ限界値を使用して車両を動作させることと、
を含む。
【0022】
任意選択で、本方法は、車輪スリップ値がスリップ限界値を超えないように車両を動作させることを含む。
【0023】
本発明の第3の態様は、車両の制御ユニットに関する。制御ユニットは、車両の車輪のスリップ限界値を決定するように適応されている。スリップ限界値は、車両の動作を制御するために使用される。制御ユニットは、車両の動作時間の大部分でスリップ限界値を高スリップ限界値よりも小さく設定するように適応されている。制御ユニットは、
-車両に関する情報を受け取り、そこから、車両が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を車両が取るか否かを判定することと、
-車両が低頻度の操作条件を取ると判定することに応じてスリップ限界値を高スリップ限界値に設定することと、
を行うように適応されている。
【0024】
任意選択で、制御ユニットは、高スリップ限界値よりも小さい中程度スリップ限界値を決定するようにさらに適応されている。
【0025】
任意選択で、制御ユニットは、
-車両が低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じてスリップ限界値を高スリップ限界値よりも低い値に設定する、
ようにさらに適応されている。
【0026】
任意選択で、制御ユニットは、
-車両が低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じてスリップ限界値を中程度スリップ限界値に設定する、
ようにさらに適応されている。
【0027】
任意選択で、車輪は、車輪の回転軸を横断する方向に延びる縦方向における縦方向延長部分を含む。スリップ限界値は、縦方向におけるスリップに関する。
【0028】
任意選択で、車輪は、車輪の回転軸を横断する方向に延びる縦方向における縦方向延長部分と、車輪の回転軸と平行な横方向における横方向延長部分とを含む。スリップ限界値は、縦方向における車輪の縦方向速度と横方向における車輪の横方向速度とを使用して決定されるスリップ角に関する。
【0029】
任意選択で、制御ユニットは、中程度スリップ限界値を、車輪に関連付けられる所定の許容転がり抵抗に対応するように決定するように適応されている。
【0030】
任意選択で、制御ユニットは、中程度スリップ限界値を、車輪に関連付けられる所定の許容摩耗率に対応するように決定するように適応されている。
【0031】
任意選択で、車輪はタイヤを含み、許容摩耗率はタイヤの許容可能なタイヤ摩耗率である。
【0032】
任意選択で、制御ユニットは、高スリップ限界値を、ゼロスリップから高スリップ限界値までの高スリップ限界範囲が得られ、その範囲内ではスリップの増加が常に利用可能な車輪対地の水平力の増加をもたらすように設定するように適応されている。
【0033】
任意選択で、制御ユニットは、車両が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を車両が取るか否かを判定することを、以下のパラメーター、
-横加速度
-縦加速度
-ステアリング角度及び
-経路曲率、のうちの少なくとも1つが、所定の時間範囲内に閾値を超えるかまたは閾値を超えると予測されると判定することによって行うように適応されている。
【0034】
任意選択で、制御ユニットは、低頻度の操作条件を車両が取るか否かの判定を、
-車両の意図された運転シナリオを予測することと、
-車輪のスリップ限界値が中程度スリップ限界値よりも大きくなければ意図された運転シナリオに従うことができないと検出することに応じて、車両が低頻度の操作条件を取ると判定することと、
を含む手順によって行うように適応されている。
【0035】
任意選択で、中程度スリップ限界値と高スリップ限界値との間の比率は、80%未満、好ましくは70%未満である。
【0036】
本発明の第4の態様は、車両の制御アセンブリに関し、制御アセンブリは、本発明の第3の態様による制御ユニットを含む。車両は車輪を含み、車輪は、車輪の測定及び/または予測されるスリップを示す車輪スリップ値を有する。制御アセンブリは、
-本発明の第3の態様による制御ユニットを使用してスリップ限界値を決定することと、
-車輪スリップ値に対する制約としてスリップ限界値を使用して車輪を制御するために、車両に1つ以上の制御信号を発することと、
を行うように適応されている。
【0037】
任意選択で、制御アセンブリは、車輪スリップ値がスリップ限界値を超えないように車輪を制御するために、車両に1つ以上の制御信号を発するように適応されている。
【0038】
本発明の第5の態様は、本発明の第3の態様による制御ユニット及び/または本発明の第4の態様による制御アセンブリを含む車両に関する。
【0039】
以下、添付図面を参照して、実施例として挙げた本発明の実施形態について、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】車輪スリップの関数としての車輪力の概略図である。
【
図3】車輪スリップの関数としての車輪摩耗率の概略図である。
【
図4】スリップ角の関数としての車輪摩耗率の概略図である。
【
図6】本発明の方法の実施形態を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を、
図1に例示されたトラックのようなトラック10の形態の車両について説明する。トラック10は、本発明による制御ユニットを含むことができる車両の一例として考えるべきである。
【0042】
しかしながら、本発明は、複数の異なるタイプの車両に実装されてもよい。単なる一例として、本発明は、トラック、トラクター、自動車、バス、ホイールローダーなどの作業機械、または任意の他のタイプの建設機械に実装され得る。
【0043】
また、車両10は、意図された走行方向と平行な縦方向xにおける縦方向延長部分と縦方向に垂直な横方向yにおける横方向延長部分とを有する。さらに、
図1に示されるように、車両10はまた、垂直方向zにおける垂直方向延長部分を有し、横方向yは、長手方向x及び垂直方向zのそれぞれに対して垂直である。
【0044】
車両は、一般に、地面12によって支持されるように適応されており、また、車両は、一般に、複数の車輪を含み、
図1においては2つの車輪14、16によって例示されている。車両が地面12に対して移動しているとき、一般に、車輪14、16のそれぞれと地面12との間にスリップが生じる。
【0045】
スリップは、車輪14、16と車輪14、16が移動している地面12との間の相対運動として考えてもよい。このようなスリップは、縦方向スリップ及び/または横方向スリップという観点で表現することができる。
【0046】
たとえば、縦方向スリップは、車両の車輪とその地面との間の相対的な縦方向の動き(すなわち「滑り(skidding)」の量)を示すパラメーターと考えてもよい。
【0047】
したがって、車輪14、16は、車輪14、16の回転軸(図示せず)を横断する方向に延びる縦方向xに縦方向延長部分を有してもよい。結果として、車輪14、16がまっすぐ前方に走行するための位置にあるとき(及び、車輪14、16がたとえばトーインまたはトーアウト条件を取らないと想定した場合)、車輪14、16の縦方向xは、本質的に、車両10の縦方向xと平行である。スリップ限界値sx,limは、車輪14、16の縦方向xにおけるスリップに関していてもよい。
【0048】
単なる一例として、車輪14、16の縦方向xにおけるスリップを示すパラメーターs
xは、以下に従って規定されてもよい。
【数1】
ここで、Rは車輪の半径を示し、ωは車輪の角速度を示し、v
xは車輪の縦方向速度を示し、縦方向速度は一般に車輪の中心の縦方向速度に関連する。
【0049】
上述の代わりに、またはそれに加えて、車輪14、16は、車輪の回転軸(図示せず)を横断する方向に延びる縦方向xにおける縦方向延長部分と、車輪14、16の回転軸と平行な横方向yにおける横方向延長部分とを有する。結果として、車輪14、16がまっすぐ前方に走行するための位置にあるとき、車輪14、16の横方向yは車両10の横方向yと平行である。スリップ角αlimに関するスリップ限界値は、車輪の縦方向xにおける車輪14、16の縦方向速度vxと、車輪の横方向yにおける車輪14、16の横方向速度vyとを使用して、決定されてもよい。
【0050】
したがって、横方向yにおけるスリップは、以下に従ってスリップ角αの観点で表現されてもよい。
【数2】
ここで、v
xは車輪の縦方向速度を示し、v
yは車輪の横方向速度を示す。
【0051】
図2に、車輪から得られる縦方向の車輪力F
xの関係を、縦方向xにおけるスリップs
xの関数として例示する。
図2から分かるように、得られる縦方向の車輪力F
xは、スリップs
xの増加とともに、
図2の図の原点からピーク値F
x,peak(ピークスリップ値s
x,peakにおける)まで増加し、その後、縦方向の車輪力F
xは、スリップs
xのさらなる増加とともに減少する。
【0052】
図2の図は概略図であるが、そこから理解され得るのは、スリップがピークスリップ値s
x,peakに近いがそれ以下である場合は、比較的大きな縦方向の車輪力F
xが得られ、その結果、車両10の制御が容易になり得るということである。単なる一例として、比較的大きな縦方向の車輪力F
xは、車両を好都合な方法で制動、推進、及び操縦できることを意味し得る。完全を期すために、車両10は、ピークスリップ値s
x,peakを超えるスリップ値においても動作し得ることに注意されたい。
【0053】
しかし、本発明の発明者らが気付いたのは、ピークスリップ値sx,peakに近いスリップ値における車両10の動作は、不利点を伴い得るということである。単なる一例として、このような不利点には、車輪の望ましくないほど高い摩耗率及び/または車両の1つ以上の車輪の望ましくない高い転がり抵抗が含まれ得る。したがって、車輪から得られる力を増大させる強い必要があるときを除いて、比較的低いスリップ値において車両を動作させることが有用であり得ることが分かっている。
【0054】
図1に戻って、そこに示されるように、車両10は、制御ユニット18を含んでいてもよい。単なる一例として、制御ユニット18は、制御アセンブリ20の一部を構成してもよいが、車両10の実施形態は、関連する制御アセンブリ20を備えることなく、制御ユニット18を含むことも考えられる。
【0055】
制御ユニット18は、車両10の車輪14、16のスリップ限界値sx,lim;αlimを決定するように適応されており、それに関連する制御ユニット18の特徴が以下に提示されるが、制御ユニット18の以下の提示は、スリップ限界値sx,lim;αlimを決定するための方法にも同様に適用可能であることに注意されたい。
【0056】
以下の例において、スリップ限界値は、縦方向xにおけるスリップに対する限界値sx,limまたは横方向yにおけるスリップに対する限界値αlimによって例示される。しかし、本発明の制御ユニット18または方法は、他のタイプのスリップ値及び結果としてスリップ限界値を使用してよいことも考えられる。
【0057】
したがって、制御ユニット18は、車両10の車輪14、16のスリップ限界値sx,lim;αlimを決定するように適応されている。スリップ限界値sx,lim;αlimは、車両10の動作を制御するために使用される。単なる一例として、また以下に詳しく述べるように、車両10の動作は、制御アセンブリ20を使用して制御され得る。
【0058】
再び
図2を参照して、また一例として、縦方向xにおけるスリップに対する限界値s
x,limを使用して、制御ユニット18は、車両10の車輪14、16のスリップ限界値s
x,limを決定するように適応されている。スリップ限界値s
x,limは、車両10の動作を制御するために使用される。制御ユニット18は、車両10の動作時間の大部分で、スリップ限界値s
x,limを高スリップ限界値s
x,lim2よりも小さく設定するように適応されている。単なる一例として、用語「動作時間の大部分」は、車両10の動作時間の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%に関してもよい。
図2の例においては、設定されたスリップ限界値s
x,limと高スリップ限界値s
x,lim2との間の差を明らかにするために、設定されたスリップ限界値s
x,limがかなり低く示されている。
【0059】
さらに、制御ユニット18は、
-車両10に関する情報を受け取り、そこから、車両10が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を、車両が取るか否かを判定することと、
-車両が低頻度の操作条件を取ると判定することに応じて、スリップ限界値sx,lim;αlimを高スリップ限界値sx,lim2,αlim2に設定することと、
を行うように適応されている。
【0060】
したがって、本発明による制御ユニット18及び/または方法により、高スリップ限界値sx,lim2;αlim2は、現在の及び/または予測される操作条件に対して比較的大きな車輪力、たとえば、縦方向の車輪力を利用できるようにする必要があると考えられる特定の条件の下で使用され得、好ましくはこの条件の下でのみ使用され得る。
【0061】
単なる一例として、制御ユニット18はさらに、高スリップ限界値sx,lim2よりも小さい中程度スリップ限界値sx,lim1を決定するように適応され得る。
【0062】
他の場合には、たとえばそれほど厳しくない操作条件の下で、高スリップ限界値よりも低い値を使用してもよい。したがって、本発明の実施形態において、制御ユニット18はさらに、
-車両が低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じて、スリップ限界値sx,limを高スリップ限界値sx,lim2よりも低い値、好ましくは中程度スリップ限界値sx,lim1に設定する、
ように適応されている。
【0063】
さらに、
図2に示されるように、制御ユニット18は、高スリップ限界値s
x,lim2を、ゼロスリップから高スリップ限界値s
x,lim2までの高スリップ限界範囲Δs
x,lim2が得られ、その範囲内ではスリップs
xの増加が利用可能な車輪対地の水平力F
xの増加を常にもたらすように、設定するように適応されてもよい。
【0064】
前述の中程度スリップ限界値sx,lim1は、以下に詳しく述べる複数の異なる方法で決定されてもよい。しかし、中程度スリップ限界値sx,lim1をどのように決定するかとは関係なく、中程度スリップ限界値sx,lim1は、好ましくは、中程度スリップ限界値sx,lim1と高スリップ限界値sx,lim2との間の比率が、80%未満、好ましくは70%未満であるような値であってよい。
【0065】
図3に、車輪の車輪摩耗率Iの量を、縦方向xにおけるスリップs
xの関数として表す図を例示する。単なる一例として、
図3の図は、試験手順を使用して及び/または理論モデルを使用して生成され得る。さらに、
図3に示す図は、特定のタイヤ圧力(車輪がタイヤを有する場合)、特定の垂直力、及び特定の車輪キャンバー角など、特定の条件に対して生成され得る。
【0066】
図3から理解され得るように、車輪摩耗率Iは、縦方向xにおけるスリップs
xの値の増加とともに増加する。また、
図3に示されるように、このような摩耗率の増加は必ずしも線形である必要はない。したがって、該当する車輪のスリップが中程度スリップ限界値s
x,lim1以下となるように車両が動作されるときに適切に低い車輪摩耗率Iが得られるように、中程度スリップ限界値s
x,lim1を選択することが可能であり得る。
【0067】
図4に、スリップ角αの関数としての車輪の車輪摩耗率Iのいくつかの関数を、縦手方向xにおけるスリップs
xの複数の異なる値(s
x=A、s
x=B、s
x=C)について提示する他の図を例示する。
【0068】
図3の図の場合と同様に、単なる一例であるが、
図4の図は、試験手順を使用して及び/または理論モデルを使用して生成され得る。さらに、
図4に示す図は、特定のタイヤ圧力(車輪がタイヤを有する場合)、特定の垂直力、周囲温度及び/または車輪温度、ならびに特定の車輪キャンバー角など、特定の条件に対して生成され得る。さらに、
図4に示されるように、縦方向xにおけるスリップに対する限界値s
x,limと、横方向yにおけるスリップに対する限界値α
limと、に対して、中程度スリップ限界値の1つ以上のペアs
x,lim1,α
lim1を選択することが可能であり得る。非限定的な例として、このようなペアがルックアップテーブルなどに格納されてもよい。
【0069】
車輪摩耗率Iに基づいて中程度スリップ限界値sx,lim1を決定する代わりに、またはそれに加えて、制御ユニット18は、車輪に関連付けられる所定の許容転がり抵抗に対応するように中程度スリップ限界値sx,lim1を決定するように適応されてもよい。
【0070】
車両が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を、車両が取るか否かを判定するために、制御ユニット18は、以下のパラメーター、
-横加速度、
-縦加速度、
-ステアリング角度、及び
-経路曲率、のうちの少なくとも1つが、所定の時間範囲内に閾値を超えるかまたは閾値を超えると予測されることを判定するように適応されてもよい。
【0071】
単なる一例として、上記で示した横加速度は、車両10の横方向yにおける加速度に関連してもよい(たとえば
図1を参照)。同様に、単なる一例であるが、上記で示した縦加速度は、車両10の縦方向xにおける加速度に関連してもよい(たとえば
図1を参照)。
【0072】
したがって、制御ユニット18は、上述のエンティティのうちの少なくとも1つを示す情報を伴う1つ以上の信号を受け取るように適応されてもよい。この目的を達成するために、制御ユニット18をホストしている車両は、このような信号を発するように適応された1つ以上のセンサを含んでいてもよい。
【0073】
上述の手順を使用して低頻度の操作条件を車両が取るか否かを判定する代わりに、またはそれに加えて、制御ユニット18は、低頻度の操作条件を車両が取るか否かの判定を、以下の、
-車両(10)の意図された運転シナリオを予測することと、
-車輪(14、16)のスリップ限界値(sx,lim;αlim)が中程度スリップ限界値(sx,lim1;αlim1)よりも大きくなければ、意図された運転シナリオに従うことができないと検出することに応じて、車両(10)が低頻度の操作条件を取ると判定することと、
を含む手順によって行うように適応されてもよい。
【0074】
上記で示されたように、車両10は、上記で提示された制御ユニット18を含む制御アセンブリ20を含んでもよい。単なる一例として、制御アセンブリ20は、車両10の1つ以上の車輪を制御するように適応されてもよい。非限定的な例として、制御アセンブリ20は、車両の1つ以上の車輪の制動、推進力、及び操縦のうちの少なくとも1つを制御するように適応されてもよい。
【0075】
したがって、また前述したように、車両10は車輪(たとえば、
図1の前輪14)を含み、この車輪は、車輪14の測定された及び/または予測されるスリップを示す車輪スリップ値を有する。制御アセンブリ20は、
-本発明による制御ユニット18、たとえば、上記で提示された実施形態のうちのいずれか1つによる制御ユニット18を使用して、スリップ限界値s
x,lim;α
limを決定することと、
-車輪スリップ値に対する制約としてスリップ限界値を使用して車輪を制御するために、車両10に1つ以上の制御信号を発することと、
を行うように適応されている。
【0076】
好ましくは、制御アセンブリ20は、車輪スリップ値sx;αがスリップ限界値sx,lim;αlimを超えないように車輪を制御するために、車両に1つ以上の制御信号を発するように適応されている。
【0077】
車輪スリップ値sx;αがスリップ限界値sx,lim;αlimを超えないことを確実にする代替案として、スリップ限界値sx,lim;αlimが他の方法で車輪スリップ値sx;αに対する制約として使用されてもよい。単なる一例として、スリップ限界値sx,lim;αlimは、適切な車輪スリップ値sx;αを決定するときのペナルティ関数で使用されてもよい。
【0078】
制御アセンブリ20の上述の動作は、
図5及び
図6に示されており、
図5において横方向yにおけるスリップに対する限界値α
limとして例示されているスリップ限界値が、車両(
図5に示さず)が縦方向の距離を移動するときにどのように変化し得るかが示されている。また、
図5は、中程度スリップ限界値α
lim1及び高スリップ限界値α
lim2が、縦方向に沿った異なる位置に対してどのように決定されるか(好ましくは制御ユニット18を使用して)を示している。したがって、単なる一例であるが、第1及び高スリップ限界値α
lim1,α
lim2は、たとえば、車両の関係する車輪及び/または他の部分の現在のまたは予想される条件に基づいて、様々な時点において決定され得る。ここで、
図6が本発明の方法に対するフローチャートを例示することにも留意されたい。
【0079】
図5に示されるように、たとえば制御アセンブリ20を使用して車両を制御するとき、一般に、限界値α
limが中程度スリップ限界値α
lim1以下であることが保証される。しかし、
図5においてボックスC1及びC2によってそれぞれ例示される特定の条件では、車両が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を車両が取る。車両が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を当該車両が取る否かを判定する特徴を、
図6のフローチャートにおいてボックスS10によって例示する。
【0080】
車両がこのような低頻度の操作条件を取るとき、たとえばボックスS10における判定の結果が「はい」(Y)であるとき、限界値α
limは、代わりに高スリップ限界値α
lim2に設定される。このような特徴は、
図6におけるボックスS12に示されている。
【0081】
当然のことながら、本発明は、上述の及び図面に示された実施形態に限定されるにものではなく、むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲の範囲内で多くの変形及び変更を行うことを認識するであろうことを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)の車輪(14、16)のスリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を決定するための方法であって、前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)は、前記車両(10)の動作を制御するために使用され、前記方法は、前記車両(10)の動作時間の大部分で前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さく設定することを含み、前記方法は、
-前記車両(10)が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することであって、前記車両(10)が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することは、以下のパラメーター、
・横加速度、
・縦加速度、
・ステアリング角度、及び
・経路曲率、のうちの少なくとも1つが、前記所定の時間範囲内で閾値を超えるかまたは前記閾値を超えることが予測されると判定することを含む、前記低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することと、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取ると判定することに応じて前記スリップ限界値を前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)に設定することと、
をさらに含み、
前記方法は、前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さい中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)を決定することをさらに含み、前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)は、前記車輪(14、16)に関連付けられる所定の許容摩耗率に対応するように決定されることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記方法は、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じて前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも低い値に設定すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じて前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)に設定すること、
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の回転軸を横断する方向に延びる縦方向(x)に縦方向延長部分を有し、前記スリップ限界値(s
x,lim)は前記縦方向(x)におけるスリップに関する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の回転軸を横断する方向に延びる縦方向(x)における縦方向延長部分と、前記車輪(14、16)の前記回転軸と平行な横方向(y)における横方向延長部分とを有し、前記スリップ限界値は、前記縦方向(x)における前記車輪(14;16)の縦方向速度(v
x)と、前記横方向(y)における前記車輪(14;16)の横方向速度(v
y)とを使用して決定されるスリップ角(α
lim)に関する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)は、前記車輪(14、16)に関連付けられる所定の許容転がり抵抗に対応するように決定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記車輪(14、16)はタイヤを含み、前記許容摩耗率は前記タイヤの許容可能なタイヤ摩耗率である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)は、ゼロスリップから前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)までの高スリップ限界範囲が得られ、その範囲内ではスリップの増加が常に利用可能な車輪対地の水平力の増加をもたらすように設定される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記車両(10)が低頻度の操作条件を取るか否かを判定することは、以下の、
-前記車両(10)の意図された運転シナリオを予測することと、
-前記車輪(14、16)の前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)が前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)よりも大きくなければ前記意図された運転シナリオに従うことができないと検出することに応じて、前記車両(10)が低頻度の操作条件を取ると判定することと、
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)と前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)との間の比率は、80%未満、好ましくは70%未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
車両(10)の動作を制御するための方法であって、前記車両(10)は、車輪(14、16)を含み、前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の測定及び/または予測されるスリップを示す車輪スリップ値(s
x;α)を有し、前記方法は、
-請求項1~10のいずれか1項に記載のスリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を決定することと、
-前記車輪スリップ値(s
x;α)に対する制約として前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を使用して、前記車両(10)を動作させることと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記方法は、前記車輪スリップ値(s
x;α)が前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を超えないように前記車両(10)を動作させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
車両(10)の制御ユニット(18)であって、前記制御ユニット(18)は、車両(10)の車輪(14、16)のスリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を決定するように適応され、前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)は前記車両(10)の動作を制御するために使用され、前記制御ユニット(18)は、前記車両(10)の動作時間の大部分で前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さく設定するように適応され、前記制御ユニット(18)は、
-前記車両(10)に関する情報を受け取り、そこから、前記車両(10)が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することであって、前記制御ユニット(18)は、前記車両(10)が所定の時間範囲内で低頻度の操作を行う及び/または低頻度の操作を行うことが予測される低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することを、以下のパラメーター、
・横加速度、
・縦加速度、
・ステアリング角度、及び
・経路曲率、のうちの少なくとも1つが、前記所定の時間範囲内で閾値を超えるかまたは前記閾値を超えることが予測されると判定することによって行うように適応されている、前記低頻度の操作条件を前記車両(10)が取るか否かを判定することと、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取ると判定することに応じて前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)に設定することと、
を行うように適応され、
前記制御ユニット(18)は、前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さい中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)を決定するようにさらに適応されており、前記制御ユニット(18)は、前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)を、前記車輪(14、16)に関連付けられる所定の許容摩耗率に対応するように決定するように適応されていることを特徴とする、
制御ユニット(18)。
【請求項14】
前記制御ユニット(18)は、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じて前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)よりも小さいスリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)に設定する、
ようにさらに適応されている、請求項13に記載の制御ユニット(18)。
【請求項15】
前記制御ユニット(18)は、
-前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取らないと判定することに応じて前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)に設定する、
ようにさらに適応されている、請求項13または14に記載の制御ユニット(18)。
【請求項16】
前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の回転軸を横断する方向に延びる縦方向(x)に縦方向延長部分を有し、前記スリップ限界値(s
x,lim)は、前記縦方向(x)におけるスリップに関する、請求項13~15のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項17】
前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の回転軸を横断する方向に延びる縦方向(x)における縦方向延長部分と、前記車輪(14、16)の前記回転軸と平行な横方向(y)における横方向延長部分とを有し、前記スリップ限界値は、前記縦方向(x)における前記車輪(14;16)の長手方向速度(v
x)と、前記横方向(y)における前記車輪(14;16)の横方向速度(v
y)とを使用して決定されるスリップ角(α
lim)に関する、請求項13~15のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項18】
前記制御ユニット(18)は、前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)を前記車輪(14、16)に関連付けられる所定の許容転がり抵抗に対応するように決定するように適応されている、請求項13~17のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項19】
前記車輪(14、16)はタイヤを含み、前記許容摩耗率は前記タイヤの許容可能なタイヤ摩耗率である、請求項13~18のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項20】
前記制御ユニット(18)は、前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)を、ゼロスリップから前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)までの高スリップ限界範囲が得られ、その範囲内ではスリップの増加が常に利用可能な車輪対地の水平力の増加をもたらすように設定するように適応されている、請求項16~19のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項21】
前記制御ユニット(18)は、前記車両(10)が低頻度の操作条件を取るか否かの判定を、以下の、
-前記車両(10)の意図された運転シナリオを予測することと、
-前記車輪(14、16)の前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)が前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)よりも大きくなければ前記意図された運転シナリオに従うことができないと検出することに応じて、前記車両(10)が前記低頻度の操作条件を取ると判定することと、
を含む手順によって行うように適応されている、請求項13~20のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項22】
前記中程度スリップ限界値(s
x,lim1;α
lim1)と前記高スリップ限界値(s
x,lim2;α
lim2)との間の比率は、80%未満、好ましくは70%未満である、請求項16~21のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)。
【請求項23】
車両(10)の制御アセンブリ(20)であって、
前記制御アセンブリは、請求項13~22のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)を含み、前記車両(10)は車輪(14、16)を含み、前記車輪(14、16)は、前記車輪(14、16)の測定及び/または予測されるスリップを示す車輪スリップ値(s
x;α)を有し、前記制御アセンブリは、
-請求項13~22のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)を使用して前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を決定することと、
-前記車輪スリップ値(s
x;α)に対する制約として前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を使用して前記車輪(14、16)を制御するために、前記車両(10)に1つ以上の制御信号を発することと、
を行うように適応されている、
制御アセンブリ(20)。
【請求項24】
前記制御アセンブリ(20)は、前記車輪スリップ値(s
x;α)が前記スリップ限界値(s
x,lim;α
lim)を超えないように前記車輪(14、16)を制御するために、前記車両(10)に1つまたは複数の制御信号を発するように適応されている、請求項23に記載の制御アセンブリ(20)。
【請求項25】
請求項13~22のいずれか1項に記載の制御ユニット(18)及び/または請求項23~24のいずれか1項に記載の制御アセンブリを含む、車両(10)。
【国際調査報告】