(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ロールツーロールプロセスのウェブにおける張力分布の測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
B65H 26/04 20060101AFI20240424BHJP
B65H 23/192 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B65H26/04
B65H23/192
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560865
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 US2022023430
(87)【国際公開番号】W WO2022216673
(87)【国際公開日】2022-10-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598063203
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェン,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,リャン
(72)【発明者】
【氏名】ラマン,アーヴィンド
【テーマコード(参考)】
3F105
【Fターム(参考)】
3F105AA04
3F105AB00
3F105BA02
3F105CA12
3F105CB02
3F105CC01
3F105DA02
3F105DB02
3F105DC08
(57)【要約】
プリンテッドデバイスの製造に使用されるロールツーロールプロセスを含む、ロールツーロールプロセスにおけるウェブ張力分布を測定するシステムおよび方法を提供する。該システムおよび方法は、第1および第2のローラの間をウェブの長手方向に移動するウェブを含み、前記第1および第2のローラの間において前記ウェブのフレキシブル基板に張力が存在するように、前記ウェブの長手方向に張力を生じさせ、前記第1および第2のローラの間において前記フレキシブル基板に不均一な張力分布を生じさせる前記ウェブに誘導された張力によって生じる、前記フレキシブル基板内に存在する平均張力および張力の線形変化を決定するよう、前記システムを作動させることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールツーロールシステムにおいてウェブの幅にわたる張力分布を監視するシステムであって、
前記ロールツーロールシステムは、
ウェブと、
それらの間を前記ウェブが該ウェブの長手方向に移動する、少なくとも第1および第2のローラと、
前記ウェブの長手方向に張力を誘導するための張力誘導手段と、
前記ウェブのフレキシブル基板の表面上にプリンテッドデバイスを製造するための製造手段と、
を備え、
該システムは、
前記第1および第2のローラの間において前記ウェブの歪みを誘導するための手段を備え、
該システムは、前記第1および第2のローラの間において前記フレキシブル基板に誘導された不均一な張力分布から生じる、フレキシブル基板に存在する平均張力と張力の線形変化を決定するために作動することができる、
システム。
【請求項2】
該システムは、前記歪みを誘導する手段が前記ウェブに接触しつつ、前記平均張力および前記張力の線形変化を決定するように作動可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
該システムは、前記歪みを誘導する手段は、少なくとも2つの所定の接触力を付与し、該力は、前記ウェブの横方向にわたる異なるレベルおよび異なる位置に付与される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
該システムは、
フレキシブル基板の表面に対して垂直である横断方向における前記ウェブの歪みを検出する第2装置と、
張力キルヒホッフプレートモデルを使用して前記ウェブの幅方向にわたる該ウェブの局所接触剛性を得て、前記ウェブの歪みに基づいて前記平均張力および前記張力の線形変化を算出するプロセッサ手段と、
を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記歪みを誘導する手段は、前記フレキシブル基板に塑性変形させないレベルの力で前記ウェブに接触する、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記ウェブは、前記第1および第2のローラの間において流体中に存在し、該流体に接触している、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記ウェブは、前記第1および第2のローラの間において真空中に存在する、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記平均張力および前記張力の線形変化は、計装ローラを用いることなく決定される、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1ローラおよび第2ローラの間の前記フレキシブル基板に存在する張力分布の均一性を高めるために、前記ウェブに誘導される張力を制御する手段をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
ロールツーロールプロセスにおいて、ウェブの幅方向にわたる張力分布を監視する方法であって、該方法は、
前記ウェブを第1および第2のローラの間で前記ウェブの長手方向に移動させ、
前記第1および第2のローラの間において前記ウェブのフレキシブル基板に張力が存在するように、前記ウェブの長手方向の張力を前記ウェブに生じさせ、
前記第1および第2のローラの間において前記フレキシブル基板に不均一な張力分布を生じさせる前記ウェブに誘導された張力によって生じる、前記フレキシブル基板内に存在する平均張力および張力の線形変化を決定するシステムを作動させることを備え、
該システムは、
前記第1および第2のローラの間において前記ウェブに歪みを誘導するための手段を備える、
方法。
【請求項11】
前記システムは、前記歪みを誘導する手段が前記ウェブに接触しつつ、前記平均張力および張力の線形変化を決定する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記システムは、前記歪みを誘導する手段が少なくとも2つの所定の接触力を付与し、該力は前記ウェブの横方向にわたって異なるレベルおよび異なる位置に付与されることによって前記平均張力および前記張力の線形変化を決定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該方法は、
前記フレキシブル基板の表面に対して垂直である横断方向における前記ウェブの歪みを検出し、
張力キルヒホッフプレートモデルを使用して、前記ウェブの幅方向にわたる該ウェブの局所接触剛性を得て、該ウェブの歪みに基づいて前記平均張力および前記張力の線形変化を算出する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記歪みを誘導する手段は、前記フレキシブル基板を塑性変形させないレベルの力で前記ウェブに接触する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ウェブは、前記第1および第2のローラの間において流体中に存在し、該流体に接触している、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ウェブは、前記第1および第2のローラの間において真空中に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記平均張力および前記張力の線形変化は、計装ローラを用いることなく決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記第1および第2のローラの間の前記フレキシブル基板に存在する張力分布の均一性を高めるために、前記ウェブに誘導される張力を制御することをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記プリンテッドデバイスは、電子デバイス、光デバイス、および光電子デバイスからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記プリンテッドデバイスは、薄膜トランジスタ、スーパーキャパシタ、有機発光ダイオード、太陽電池、アンテナ、およびセンサからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月5日に出願された米国特許仮出願第63/170,568号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、薄膜トランジスタ、スーパーキャパシタ、有機発光ダイオード、太陽電池、アンテナ、およびセンサなどの電子デバイス、光デバイス、光電子デバイスの製造を含むがこれに限定されない、フレキシブル・プリンテッド・エレクトロニクスの製造システムおよび製造方法に関する。本発明は、特に、ロールツーロール(R2R)プロセスを使用したフレキシブル・プリンテッド・エレクトロニクスの製造方法によって製造されたプリンテッド・エレクトロニクスの品質と歩留まりを高めることを可能とするシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大量生産が可能であり、かつ、広範囲に展開することが可能である比較的低コストの電子デバイス、光デバイス、および光電子デバイスを製造し開発するための継続的な取り組みが行われている。そのようなアプローチの1つは、ロールツーロール(R2R)システム(ウェブ処理またはリールツーリール処理とも呼ばれる)を使用して、そのようなデバイスを製造することである。一般的に、ロールツーロールプロセスは、フレキシブル基板(ウェブとも呼ばれることもある)上に部品またはデバイス全体を印刷またはその他の方法で塗布することによってデバイスを製造する。たとえば、プラスチックフィルムまたは金属箔がロールからロールツーロールシステムに供給され、ロールツーロールプロセスの終了時にロールに巻き戻される。これらに限定されないが、薄膜トランジスタ、スーパーキャパシタ、有機発光ダイオード、太陽電池、アンテナ、およびセンサが広く知られており、これらを低コスト、高スループット、かつ大規模な製造能力で提供する目的において、ロールツーロールプロセスが採用されている。
【0004】
ロールツーロールによるフレキシブル・エレクトロニクスのスケーラビリティにおける障壁は、製造過程におけるデバイスの歩留まり率が低いことであり、これを制御するには、コストの高いポストプロセス製品試験が必要である。歩留り率を最大化するためには、プロセスのモデリングと制御、インライン計測、インライン特性評価、および新しい材料の効果的な利用が必要とされる場合が多い。
【0005】
ロールツーロールプロセスによって製造されたフレキシブルデバイスにおける応力は、ウェブ張力と印刷(インクジェット、グラビア、スクリーン、スロットダイなど)、化学気相成長、レーザ/熱アニーリング、紫外線(UV)硬化、および/または、ホットエンボス加工によるプロセス誘導応力の組み合わせによって製造中に発生する。このような複合応力は、ロールツーロールで製造されたデバイスにおいて顕著である。これらのデバイスが製造されるウェブが、集積回路製造に使用されるシリコンウェーハのような硬いデバイス基板とは異なる、大きな歪みを伴う可能性のあるフレキシブル基板(非限定的な例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI))であるためである。
【0006】
ロールツーロールプロセスで一般的に使用されるウェブの可撓性により、ウェブとローラとの間の均一でない摩擦、ローラ・ウェブの位置ずれ、ローラ・ローラの位置ずれによって誘導される不均一な応力が発生しやすい。デバイスの製造中に応力が誘導されたウェブを分割または切断して、フレキシブルデバイスを分離すると、ウェブに存在する応力に起因して、デバイス内に残留応力が存在することになる。印刷された電子デバイスの性能は、残留応力に左右される可能性がある。そのため、ウェブ内の不均一な張力分布は、ウェブの幅方向におけるデバイス性能の不均一化、さらには、ウェブのしわにつながる可能性がある。不均一なウェブ張力を監視し修正することは、残留応力を判断する上で重要な考慮事項であり、これにより、ロールツーロールプロセスのフィードバック品質を管理して、デバイスの歩留まりを最大限に高めることが可能となる。
【0007】
ロールツーロールシステムにおいてウェブ張力を測定するために、さまざまなタイプのシステムと方法が報告されている。ウェブ張力を測定するための計測器を備えたローラ(一般的に「計装ローラ」と呼ばれる)は、そのようなシステムおよび方法の周知の例である。ウェブに均一な張力が存在すると仮定した場合、計装ローラは、多くの場合、ロードセルやダンサシステムのような張力センサを速度センタと共に用いて、速度と共にウェブ張力を測定し制御する。Schultheisによる米国特許出願第2007/0006644号は、ローラに巻かれた圧力センサを使用してウェブ張力を測定する方法を開示している。
【0008】
計装ローラを使用するデメリットとしては、カスタマイズされたローラへの投資が必要であることや、ウェブパスが変更された場合に再校正を実行する必要があること挙げられる。また、計装ローラを使用したロールツーロールシステムでのウェブ張力の測定では、ローラに巻かれたウェブの張力が摩擦によって変化しないと仮定している。さらに、計装ローラで使用されるセンサは、ドリフトしやすく、環境温度や振動に敏感である。
【0009】
ロールツーロールシステムにおいてウェブ張力を監視するために報告された他のアプローチでは、基本振動周波数測定を利用してウェブ張力を推測する。しかし、このような方法では、ウェブの幅方向における不均一なウェブ張力分布の存在や空気負荷(減衰)が測定に与える影響は考慮されていない。空気結合ウェブシステムの振動に関する研究により、空気がウェブの周波数とモード形状を大きく変化させることが明らかとなっている。たとえば、Ramanらの「紙のウェブの振動に関する観察(Observations on the Vibrations of Paper Webs)」(Proceedings of 11th Annual Symposium on Information Storage and Processing Systems, Santa Clara, CA, June 10-13, p. 415-429 (2001))、Vaughanらの「圧縮不可能なフローに結合された軸方向に移動するウェブの空力弾性安定性(Aeroelastic Stability of Axially Moving Webs Coupled to Incompressible Flows)」(Journal of Applied Mechanics, 77(2) (2010))、および、Fengらの「空気結合ウェブシステムの振動(Vibration of Air-Coupled Web Systems)」(Journal of Vibration and Acoustics, 143(1):0110404 (2021))を参照することができる。
【0010】
Linnaらの「ウェブ張力プロファイルを測定することによる生産性の向上(Better Productivity by Measuring Web Tension Profile)」(In 55th Appita Annual Conference, Hobart, Australia 30 April-2 May 2001: Proceedings, p.305 (2001))では、空気膜圧力を使用して不均一なウェブ張力を測定するシステムの開発が報告されている。ただし、このシステムは、エア・ロールツーロールプロセスでの高速なウェブ速度に対してのみ機能し、ウェブパスが変更されたときには再校正が必要である。さらに、この技術は、交差幅ウェブ接触剛性が均一であるという前提で機能するが、張力が均一であったとしても、幅が有限である系では、このようなことは起こらない。
【0011】
Jinら「ロールツーロール製造における局所接触力測定によるウェブ張力推定(Web Tension Estimation by Local Contact Force Measurement in Roll-to-Roll Manufacturing)」(International Journal of Precision Engineering and Manufacturing, 21(11), p.2067-2075 (2020))では、固定ウェブ歪み下にあるウェブに対する実験的に適合させたウェブ張力と接触力について報告されている。しかしながら、このアプローチは、特定のウェブ特性、ウェブ形状、およびローラ構成に関するものであり、測定された特定のウェブごとに再校正が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような観点から、ロールツーロール(R2R)プロセスによって製造されたプリンテッドデバイスの品質の向上と歩留まりの促進を目的として、ロールツーロールプロセスにおける張力分布を包括的に、正確に、信頼性が高く、かつ、安価な手段により実現するためは、いまだ解決されていない大きな課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、たとえば、電子デバイス、光デバイス、および光電子デバイスを含むがこれに限定されないプリンテッドデバイスの製造に使用されるロールツーロールプロセスを含む、ロールツーロールプロセスにおけるウェブ張力分布を測定するシステムおよび方法を提供する。
【0014】
本発明の非限定的な態様によれば、ロールツーロールシステムにおいてウェブの幅にわたって張力分布を監視するシステムが提供される。該ロールツーロールシステムは、ウェブと、該ウェブが該ウェブの長手方向にそれらの間を移動する少なくとも第1および第2のローラと、前記長手方向に前記ウェブに張力を誘導する張力誘導手段と、前記ウェブのフレキシブル基板の表面上にプリンテッドデバイスを製造する製造手段とを有する。該システムは、第1および第2のローラ間で前記ウェブに歪みを誘導する手段を有する。該システムは、第1および第2のローラ間において前記フレキシブル基板に誘導される不均一な張力分布から生じる該フレキシブル基板内に存在する張力の平均張力と線形変化を決定するように作動可能である。
【0015】
本発明の非限定的な態様によれば、ロールツーロールプロセスにおけるウェブの幅にわたる張力分布を監視する方法が提供される。該方法は、ウェブを第1および第2のローラ間で該ウェブの長手方向に移動させ、第1および第2のローラ間において前記ウェブのフレキシブル基板に張力が存在するように、該ウェブの長手方向の張力を該ウェブに誘導し、第1および第2のローラ間において前記フレキシブル基板に不均一な張力分布を誘導する前記ウェブに誘導された前記張力によって生じる、前記フレキシブル基板内に存在する張力の平均張力および線形変化を決定するシステムを作動させることを含む。該システムは、第1および第2のローラ間において前記ウェブに歪みを誘導するための手段を備える。
【発明の効果】
【0016】
上記したシステムおよび方法の技術的な特徴により、その品質と歩留まりがその製造中における不均一な張力の影響を受けるデバイスのロールツーロールプロセスにおいて、ウェブにおける張力分布を監視および測定し、不均一な張力分布を補正することが可能となる。
【0017】
本発明の他の態様および利点は、以下の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、ロールツーロール(R2R)プロセスにおいて、ウェブの摩擦と位置ずれが該ウェブ内の不均一な張力分布を引き起こす可能性がある理由を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、スパン幾何学および座標系を参照した、不均一な張力分布下にあるウェブを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の非限定的実施形態にしたがってウェブ張力分布を測定(監視)するためのシステムを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、(ウェブが、空気または他のガスまたは他の流体により接触される)大気中(単に「空気中」と呼ぶこともある)および真空で作動するロールツーロールウェブについての応力の線形変化の関数(
図4では、単位幅あたりの平均張力(※1)に対する最大または最小張力の不一致を説明する張力の線形変化に対する無次元比(σ)で示される)としてf
11およびf
12の2つの共振周波数を示す図であり、σ=0および0.5の場合に対応するモード形状を示す。灰色のバーは、前記モード形状における各基底関数の寄与を示す。分析式は、真空中および空気中で実行されるロールツーロールプロセスについての前記平均張力と前記線形変化に共振周波数(たとえば、f
11およびf
12)を関連付ける張力プレート理論に基づいて開発されたものである。代表的なウェブは、
図11の表1に示す特性および環境条件を有するPETで形成される。本実施例における平均ウェブ張力は、150.47Nm
-1である。
【
図5】
図5は、本発明の他の非限定的実施形態による、ウェブ張力分布を測定(監視)するシステムを模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、
図5に示したタイプの測定システムを利用した場合における、歪みを受けたウェブの交差スパンの接触剛性プロファイルを示した図である。
【
図7】
図7は、
図3に示したようなタイプの測定システムを利用した場合における、2つの最小共振周波数であるf
11およびf
12の局所的に測定された伝達関数、位相、および、単一自由度(SDOF)適合伝達関数を示す周波数応答関数をプロットしたグラフである。
【
図8】
図8は、
図5に示したタイプの測定システムを利用した場合における、複数の接触力と歪みのフィッティングをプロットしたグラフである。
【
図10】
図10A,
図10B、および
図10Cは、
図3に示したタイプの測定システムを利用した場合における、市販のロールツーロールシステムのウェブに対して得られた周波数応答関数をプロットしたグラフである。
図10Aは、静止時のウェブの周波数応答関数を示す。
図10Bは、0.98m/分~1.26m/分の搬送速度で移動する場合のウェブの周波数応答関数を示す。
図10Cは、1.93/分~2.24m/分の搬送速度で移動する場合のウェブの周波数応答関数を示す。
【
図11】
図11は、シミュレーション、実験検証、および、インライン測定に使用されたウェブ特性と環境条件が含まれる表1を示す。
【
図12】
図12は、
図11に示した表1の環境条件下における市販のロールツーロールシステムの2つのスパンにおけるウェブ張力分布のインライン測定結果が含まれる表2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の以下の詳細な説明、および、以下の詳細な説明において使用される表現および用語の意図する目的は、本発明の1つ以上の非限定的な実施形態に関する記述を含む図示した内容について説明することであり、かつ、図示された実施形態を含む図示した内容のすべてではないが特定の部分を説明することである。以下の詳細な説明は、図示された実施形態に関する検討事項を記述し、かつ、図示された実施形態のすべてではないが特定の代替的な実施形態を特定している。非限定的な例として、本発明は、追加的または代替的な実施形態を包含するが、かかる追加的または代替的な実施形態において、特定の実施形態の一部として示されおよび/または説明される1つ以上の特徴または態様を除外することは可能であり、また、かかる追加的または代替的な実施形態は、異なる実施形態の一部として示されおよび/または説明される2つ以上の特徴または態様を組み合わせることにより構成されることもできる。したがって、詳細な説明に記載された態様および代替態様のすべてではないが一定の内容を含む、本発明の主題を具体的に特定することを意図しているのは、詳細な説明ではなく、あくまでも添付の特許請求の範囲である。
【0020】
以下の開示内容では、ロールツーロール(R2R)プロセスを監視するのに適したシステム、装置、および方法のさまざまな態様について説明する。本開示は、特に、プリンテッドデバイスの製造に使用されるロールツーロールシステムと、品質および歩留まりが不均一なウェブ張力の影響を受けるプリンテッドデバイスの製造中に、ウェブ内の張力分布を監視および測定し、不均一な張力分布を補正する方法およびシステムについて説明する。
【0021】
以下の説明では、特にロールツーロールプロセスを使用してプリンテッドデバイスを製造するための検討内容について説明するが、本開示には、他のプロセスを利用して製造されるその他のタイプのデバイスも包含する。本明細書で使用されるように、「製造する」という用語およびそのさまざまな形態は、表面上にデバイス(およびそれらの材料)をプリントする、堆積させる、コーティングする、パターン形成する、および修正することを包含するが、これらに限定されない。本明細書において、「プリンテッドデバイス」とは、薄膜トランジスタ、スーパーキャパシタ、有機発光ダイオード、太陽電池、アンテナ、およびセンサを含むがこれらに限定されない、さまざまな電子デバイス、光デバイス、および光電子デバイスを意味し、その製造は、プリント、コーティング、レーザ処理、アニール処理、その他の薄膜あるいは厚膜の堆積、処理、および/または、エッチング技術の1つ以上を使用して、少なくとも一層のデバイスを堆積および処理することを含む。これらの技術の特定の例としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スロットダイコーティング、化学蒸着、レーザ/熱アニール処理、UV硬化、および/または、ホットエンボス加工が含まれる。
【0022】
さらに、「R2R」および「ロールツーロール」という用語は、大量のプリンテッドデバイスを製造することができるが、使用される製造方法により、プリンテッドデバイスの一部の信頼性が低下する可能性がある、システムおよび継続的なプロセスを指称するために使用される。本開示は、デバイスの歩留まりを向上させるために、ロールツーロールプロセスおよびその他の比較的高速なプロセスが有する欠点を説明することも意図している。
【0023】
フレキシブルプリンテッドデバイス用の高品質なロールツーロール製造では、多くの場合、プリンテッドデバイスが製造されるフレキシブル基板を備えるウェブに均一な張力が必要とされる。張力分布が不均一になると、ウェブの幅方向にわたってプリンテッドデバイスのパフォーマンスが不均一になり、さらには、ウェブにおける張力分布が過度に不均一になると、ウェブにしわが発生することがある。ウェブに不均一な張力分布を発生させる原因の非限定的な例としては、ロールツーロールシステムにおけるローラ間の位置ずれ、ウェブとローラとの間における不均一な接触および/または摩擦、不均一なローラ形状、および、不均一なプロセスパラメータが挙げられる。
【0024】
以下の説明では、ウェブのウェブ張力分布を測定するために開発されテストが行われた、少なくとも平均張力とウェブの幅にわたる線形変化により特徴づけられる、「非接触共振(NCR)」方式と「穏やかな接触剛性マッピング(GCSM)」方式について説明する。本明細書で使用されるように、「幅」、「交差スパン」、「平均張力」、および「張力の線形変化」(あるいは「平均応力」および「応力の線形変化」)は、ウェブがロールツーロールシステムの隣接する一対のローラ間を移動する長手方向に対する横方向(短手方向)を意味する。本明細書では、任意の時点における隣接する一対のローラ間にあるウェブの一部を、ウェブの「スパン」と称する。NCR方式は、ウェブの共振周波数を閉じた形式の式とともに使用して、その線形変化張力分布を取得する。閉じた形式の式には、正確な流体力学的関数を通してウェブの振動に及ぼす空気負荷の重要な影響が含まれる。GCSM方式は、ウェブの複数の場所での接触剛性の非線形回帰に基づくものである。
【0025】
開示されたNCRおよびGCSM方式はいずれも、空気中(ウェブが空気または他のガスまたは他の流体によって接触されるような)または真空中で作動する既存のロールツーロールシステムのインライン計量プロセスを補完するために使用することができ、高価な計装ローラ(本明細書では、張力センサおよび/または圧力センサが物理的に組み込まれているローラを指称する)を必要としない。どちらの方法も、広範囲なウェブの特性、ウェブの経路、ウェブの張力、測定構成、および環境条件において、ウェブの張力分布を正確に測定することができる。どちらの方法も、張力プレートの第一原理力学モデルに基づいている。
【0026】
NCR方式は、プレートと周囲の流体との相互作用を含む。これらの方法は、固定試験台で行った静的試験(2つのローラ間でウェブを静的に支持)を使用して相互検証され、NCR方式は、市販のロールツーロールシステム(ウェブが市販のロールツーロールシステムにおける典型的な範囲内の速度でローラによって移動する)で実行されたインライン(動的)試験を使用して検証された。研究では、ロールツーロールシステムのウェブで最大35.58%の交差スパン張力変動が測定され、平均張力とその線形変化の両方がロールツーロールシステムのウェブの異なるスパンで変化することが示された。交差スパン張力変動を減少させることにより、フレキシブルプリンテッドデバイスに対するロールツーロールプロセスの品質管理を向上させて、デバイスの歩留まりを向上させることが可能となる。
【0027】
図1は、隣接する一対のローラ14間を走行するウェブ12と、ローラ14間にあるウェブ12のスパン内において、ウェブ12の幅方向にわたってプリンテッドデバイス16を製造するプリント装置15とを備える、ロールツーロール(R2R)システム10を模式的に示す図である。該スパンは、システム10の張力ゾーンと称され、ウェブ12上で実行されるプロセスに応じて任意の数の張力ゾーンを含むことができる。プリント装置15としては、非限定的な例として、インクジェット、グラビア、スクリーン、またはスロットダイプリンタを挙げることができる。ウェブ12は、化学気相成長(CVD)、レーザ/熱アニール処理、紫外線(UV)硬化、および/または、ホットエンボスなどの他のプロセスにより処理されることもできる。
【0028】
図1の模式図において、プリント装置15の下流側のローラ14は巻き取りローラであり、ウェブ12に張力を誘導するように駆動される。ウェブ12内の張力は、1つ以上のローラ14を加速または減速させる、および/または、ダンサ(図示せず)などの機構を使用してウェブ12に引張力を直接加えることができる、閉ループ制御システム16を使用して制御することができる。ロードセルのような1つ以上のフィードバック装置17を使用して、制御システム16にフィードバックを提供し、制御ループを閉じることができる。
【0029】
図1は、ロールツーロールシステム10におけるウェブ12の摩擦および位置ずれが、ローラ14間のウェブ12のスパン内でウェブ12の幅方向にわたって不均一な(すなわち一定でない)張力分布18を生じさせる可能性があることを模式的に示す図である。ウェブ12における不均一な張力分布(たとえば、
図1に示すような不均一な張力分布)は、ウェブ12の幅方向にわたってデバイス16の性能を不均一化させることになり、さらには、ウェブ12にしわを引き起こす可能性もある。したがって、ウェブ張力の監視と不均一な張力分布の修正は、残留応力を判断する上で重要な考慮すべき事項であり、これにより、ロールツーロールプロセスにおけるフィードバック品質管理がサポートされ、デバイスの歩留まりを最大化することが可能となる。
【0030】
図2は、スパン幾何学および座標系を参照した、不均一な張力分布を有するウェブの図である。2次元(2D)等方性、線形弾性、一軸方向に張力のかかった長方形のキルホフプレートモデルを選択して、
図1に模式的に表示されるような、ロールツーロールシステムの隣接する一対のローラ間の単一スパンをシミュレートした。ウェブにおける張力分布、特にウェブにおける張力の平均張力と線形変化を測定するために、NCR方式では、ウェブの交差スパン(幅)方向における該ウェブの最小共振周波数を含むがこれに限定されないウェブの共振周波数を区別することができ、GCSM方式では、ウェブの交差スパン(幅)方向におけるウェブの接触剛性プロファイルを正確に決定することができる。
【0031】
ロールツーロールシステムは交差スパン方向には張力を付与しないため、NCR方式およびGCSM方式は、線形膜モデルの代わりに張力キルヒホッフプレートモデルを使用して、非常に小さいが有限ウェブ曲げ剛性を含む、該方向における固有モードの空間依存性を定義する。さらに、フレキシブルプリンテッドデバイスの製造に使用される一般的なロールツーロールシステムの動作範囲では、ウェブ搬送速度(巻き込み速度)が周波数に与える影響は非常に小さい。固定された張力プレートの面外振動に関する運動の偏微分方程式:式(1)は、以下の通りである。
【数1】
【0032】
図2に示すように、x
1、x
2、x
3は、それぞれ長手方向(ウェブの平面内およびウェブの移動方向およびウェブ張力方向)、横断方向(プリンテッドデバイスが製造されるウェブの表面に対して垂直方向)、および、ウェブの横方向(ウェブの平面内であるが、ウェブの移動とウェブ張力の方向に対して垂直方向)に沿った座標である。Lは長手方向におけるウェブのスパン内長さ、bはウェブの横方向の交差スパン幅、τは時間、w(x
1、x
3、τ)は横断方向のウェブ歪み、ρ
webはウェブ面積質量密度、D=Eh
3/[12(1-υ
2)]はウェブ曲げ剛性、E、h、およびυは、それぞれウェブのヤング率、厚さ、およびポアソン比、▽
4はバイハーモニック(重調和)演算子、N
11(x
3)はウェブの単位幅あたりのウェブの一軸張力、P(x
1、x
3、τ)はウェブ表面の圧力(たとえば、空気結合ウェブ振動におけるウェブの空気圧および接触力による圧力)である。不均一な張力分布は、x
3の多項式関数として記述される。多項式の最初の2項は、実験から式(2)のように定義される。
【数2】
【0033】
ここで、※1は単位幅あたりの平均ウェブ張力(N/m)であり、σは単位幅あたりの平均ウェブ張力※1に対する最大張力または最小張力の間の不一致を説明する張力の線形変化に対する無次元比率である。特に、※2は、自由端の1つに張力がないことを示している。したがって、※3は、自由端の1つに近接する局所的なウェブのしわに関する重大な張力変動である。式(2)を式(1)に代入すると、以下の式(3)の通りとなる。
【数3】
【0034】
単純支持境界条件は、有限半径ローラ間に渡されたプレ張力ウェブの線形振動を正確に予測することができるため、以下の境界条件は、NCR解析およびGCSM解析の両方に使用される。
【0035】
1)ウェブは単に上流側ローラおよび下流側ローラに支持される。
【数4】
【0036】
2)両方の自由端には、せん断力や曲げモーメントがない。
【数5】
【0037】
[NCR方式]
図3は、NCR方式にしたがって、ロールツーロールプロセスにおけるウェブ内の張力分布(不均一な張力分布の存在を含む)を測定(監視)するために適用された監視システムを模式的に示す図である。
図3では、監視システムは、ロールツーロールシステム10がインストールされているものとして模式的に示され、歪みを誘導する、より具体的には、振動を励起する、少なくとも1つの装置20と、ウェブ12の振動(歪み)を検出する装置22(非限定的な例として、レーザセンサまたはその他の非接触式の運動センサまたは近接センサ)と、プロセッサ24とを含むように模式的に示されている。
【0038】
装置20は、
図3において音響スピーカとして模式的に示されているが、特にウェブ12および装置20が真空中である場合には、振動を誘導する他の手段を採用することも可能である。非限定的な例としては、システム10内またはその周辺に機械的、熱的および/または音響的に存在する固有の振動が挙げられる。
【0039】
プロセッサ24は、検出された振動に基づいて計算を実行して、張力キルヒホッフプレートモデルを使用して振動の共振周波数に基づいて、平均張力(および/または応力)と張力(および/または応力)の線形変化とを算出し、ウェブの幅全体にわたって固有モードの空間依存性を定義する。
【0040】
図3に模式的に示すように、ウェブ張力分布を測定するシステムは、装置20、22とプロセッサ24とを含む。プロセッサ24は、
図1のロールツーロールシステム10の一部として表される制御システム16の一部であってもよい。したがって、
図1に示す制御システム16およびフィードバック装置17との組み合わせにより、
図3に示すウェブ張力分布測定システムは、ウェブ12に誘導される張力を制御して、ウェブ12に存在する張力分布の均一性を高めるための手段からなるサブシステムを包含または構成することができる。
図3に示したシステム10の他の特徴については、詳細には説明しないが、その構成要素、機能などについては、本質的に
図1に示したシステム10について説明したとおりである。
【0041】
本明細書に記載されている非限定的な研究では、固有モード11および12が一般的に(完全に必要とされるわけではないが)それぞれ対称と反対称であるウェブの最も低い横断共振周波数f
11およびf
12を使用してNCR方式について※1とσを測定した。f
11およびf
12の固有モードは、不均一な張力分布によって結合される。空気中と真空でのロールツーロールプロセスの両方に一貫した方法で説明するために、振動ウェブの共振周波数と固有モードへの空力負荷の影響を見積もるための主要な結果が空気効果の存在下において得られた。空気効果は、振動するウェブを囲む非粘性の非圧縮流体としてモデル化された。ウェブの張力は線形に変化すると仮定された。最も低い2つのウェブ周波数は、次式(6)、(7)のように予測された。
【数6】
【数7】
【0042】
ここで、※4および※5の値は、流体力学的関数、ウェブ寸法Lおよびb、ウェブ面積質量密度ρ
webおよび空気密度ρ
airの関数として記載される。真空分析では、空気密度を0としたため、※4および※5=ρ
web、および、次式(8)および(9)が成立する。
【数8】
【数9】
【0043】
図4に示すように、空気中および真空中で動作するロールツーロールシステムでは、張力の線形変化に関する無次元比(σ)(以下、単に「張力の線形変化」という)が均一な張力分布の場合と比較して周波数および対応するモード形状を大きく変化させる。
図4に示す例では、ウェブは、
図11の表1に示すような特性と空気密度とを有するPETで完全に形成されたフレキシブル基板である。本例における単位幅あたりの平均張力※1(以下、単に「平均張力」という)は、150.47N/mである。周波数は、式(6)~式(9)によって計算された。σ=0の対応するモード形状は、仮定モード方式(Assumed Modes Method(AMM))を用いて得られた。真空でのロールツーロールシステムの場合、※6である。灰色のバーを含む小さなボックスは、対応するモード形状に対する基底関数W
11、W
12、W
13およびW
14の寄与を示す。基底関数は以下の通りであった。
【数10】
【0044】
以下のような知見が得られた。
【0045】
真空中でも空気中でも、張力の線形変化が増加すると共振周波数(f11)が減少し、共振周波数(f12)が増加する。
【0046】
ウェブの最も低い共振周波数(f11およびf12)は、均一な張力分布(すなわち、0と等しい張力の線形変化)の下で真空ウェブシステムに関して密にクラスタリングされるが、不均一な張力分布によって分割される。
【0047】
空気中で均一な張力分布を有するウェブの最小共振周波数(f11およびf12)は、添加された空気質量の大きさが異なるため分離する。
【0048】
均一な張力分布(すなわち、0と等しい張力の線形変化)を伴う灰色のバーから、固有モード11および12はそれぞれ完全に対称および反対称である。均一な張力分布を持つウェブでは、対称基底関数と反対称基底関数の間にクロスカップリングはない。
【0049】
不均一な張力分布(すなわち、0以外の張力の線形変化)は、モード形状において対称基底関数と反対称基底関数との間にカップリングを生じ、真空中および空気中の両方でモード形状を変更する。
【0050】
最小共振周波数f
11およびf
12による平均張力と張力の線形変化を測定するために、式(6)および式(7)を逆に書き換え、以下に示す閉形式の式(10)および式(11)を得た。
【数11】
【数12】
【0051】
NCR方式は、張力の線形変化を解決することができるが、その方向は解決できない。張力の線形変化(σ)の正と負の値は、式(6)~式(9)に示されるのと同じ周波数を与えるためである。真空のロールツーロールシステムには空気負荷がなく、式(10)および(11)は次のように単純化することができる。
【数13】
【数14】
【0052】
式(10)~式(13)は、再校正を必要とせずに、広範囲のウェブ特性、ウェブ厚さ、ウェブアスペクト比、ウェブ経路、ウェブ張力、測定構成、および環境条件に適用することができる。
【0053】
[GCSM方式]
図5は、GCSM方式にしたがって、ロールツーロールプロセスのウェブにおける張力分布(不均一な張力分布の存在を含む)を測定(監視)するために適用された監視システムを模式的に示す図である。
図5において、監視システムには、ロールツーロールシステム10がインストールされていることが模式的に示されるとともに、ウェブ12に歪みを誘導するための少なくとも1つの装置26(非限定的な例として、ウェブ12の幅(交差スパン)にわたって異なるレベルおよび異なる位置で少なくとも2つの所定かつ一定の力を順次適用する1つ以上の装置26)と、ウェブ12の歪みを検出する装置28(非限定的な例として、レーザセンサまたは他の非接触の運動センサまたは近接センサ)と、プロセッサ30とを備えるよう模式的に示される。
【0054】
装置26は、力計として
図5に模式的に示されているが、ウェブ12において所定の一定の歪みを引き起こす他の手段を採用することも可能である。プロセッサ30は、張力キルヒホッフプレートモデルなどを使用して、検知された歪みに基づいて計算を実行し、ウェブ12の幅方向にわたる複数の位置での平均張力(および/または応力)、および、歪みに基づく張力(および/または応力)の線形変化を算出する。
【0055】
図5に模式的に示すように、ウェブ張力分布を測定するシステムは、装置26および28とプロセッサ30とを含み、プロセッサ30は
図1に示したロールツーロールシステム10の一部として表される制御システム16の一部により構成されることができる。したがって、
図5に示すウェブ張力分布測定システムは、
図1に示す制御システム16およびフィードバック装置17と組み合わせて、ウェブに誘導される張力を制御し、ウェブ12に存在する張力分布の均一性を高めるための手段のサブシステムを包含または構成することができる。
図5に示したシステム10の他の態様についての詳細な説明は省略するが、その構成要素、機能などについては、本質的には
図1に示したシステム10について説明したとおりである。
【0056】
GCSM方式では、ウェブの幅に沿って少なくとも2箇所に複数の接触力を緩やかに付与し、結果として生じる歪みを測定する。接触力は、ウェブがその塑性変形領域のはるか下で変形することを確実とするために緩やかに付与される。各接触位置において、複数の局所的な接触力は、線形項および立方項を有する多項式を備えた歪みを備え、局所(線形)接触剛性を抽出する。この非線形フィッティングは、非線形フォン・カルマン理論プレート力学から派生した非線形応答を反映する。ウェブ張力分布(平均張力※1と張力の線形変化σ)は、異なる位置での局所接触剛性の非線形回帰によって得られる。さらに、塑性変形は局所的にウェブにダメージを与え、測定の精度を低下させ得る。局所的な塑性変形を避け、各接触力によって付与されたすべての仕事が弾性領域におけるウェブひずみエネルギーに吸収されることを確実とするために、接触力を大きな接触球(標準のピンポン玉)で穏やかに付与した。
【0057】
ウェブの2つの位置で測定された線形接触剛性を使用してウェブ張力分布を決定するために、式(1)によって決定されたウェブ歪みが、準静的負荷の状態にあると仮定した場合に、許容される基底関数の線形結合は次の式(14)である。
【数15】
【0058】
ここで、MおよびNはそれぞれ、x1方向とx2方向に沿った関数の数である。AmmとBmmはそれぞれ、反対称成分と対称成分の振幅である。
【0059】
A
mm、B
mm、平均張力※1、張力の線形変化σ、および局所接触力Fの関係を記述する式(15)が、次のように得られた。
【数16】
【0060】
X
1は、x
1方向の接触位置の座標である。接触力によってウェブの歪みが得られると、局所接触剛性は式(16)のように解かれる。
【数17】
【0061】
ここで、X3はx3方向の接触位置の座標であり、A′mm=Amm/F、および、B′mm=Bmm/Fである。ウェブの中心と自由端の中心の歪みに関する収束研究に基づいて、M=51およびN=18を選択すると、1%の誤差でM=1E4およびN=1E4となる。あるいは、計算において20%の補償でM=3およびN=5を使用することも選択可能である。
【0062】
異なる場所に同じ接触力を付与すると、異なる局所的な歪みが生じる。接触位置に対するウェブ全体の歪み形状を把握するために計算を行ったところ、PETウェブ上では、
図3で使用したのと同じウェブ特性と、x
1方向に沿って4つの異なる位置に同じ接触力F=0.1Nが付与されると、中央の方がローラに近い位置よりも歪みが大きくなっていることがわかった。これは、式(4)において単純に支持される境界条件の制限と一致する。一方、x
3方向に沿って、ウェブは中心よりも自由端において付与された接触力によってより多く歪むことがわかった。これは、ウェブ剛性のエッジ効果があることを意味する。ウェブの接触剛性の空間的変化を理解するために、ウェブ特性が
図3のものと同じであることに基づいて、式(15)および(16)を使用して接触剛性を求めた。
図6は、x
1=L/2におけるウェブ接触剛性の対応する交差スパンプロファイルをプロットしたグラフである。次のような知見が得られた。
【0063】
長手方向x1に沿って、単純に支持された境界に近い接触剛性は中心領域よりも高く、これらの境界においては、最終的に接触剛性は無限である。
【0064】
自由端付近でエッジ効果があり、横方向x3では、自由端に近くにおいて局所接触剛性が中央領域の約半分まで低下した。
【0065】
ウェブが均一な張力分布下にあった場合、その接触剛性プロファイルはx1=L/2およびx3=0の両方に対して対称であった。
【0066】
不均一な張力分布により、接触剛性プロファイルがx3=0に対して非対称に変更された。
【0067】
式(17)は、フォン・カルマン理論におけるひずみ-変位関係と、横断方向x
2におけるウェブの両側における反対称接触力とウェブ歪みとの関係に基づいている。
【数18】
【0068】
ここで、k′
1とk′
3は、ウェブの厚さに対する歪みの比率に対する線形係数および立方係数である。ウェブ歪みを、ウェブの同じ位置に複数の局所接触力がある条件下で測定し、最小二乗フィッティングでk′
1およびk′
3を得る。線形弾性変形領域における局所線形接触剛性により、式(18)が導かれる。
【数19】
【0069】
X
3値が異なる、少なくとも2箇所における線形接触剛性を測定した後、ウェブの平均張力※1および張力の線形変化σを求めることができる。既知の平均張力と張力の線形変化から線形接触剛性を求めることは、式(15)と式(16)を使用することにより簡単に行うことができるが、接触剛性から平均張力および張力の線形変化を求めるための閉形式の解を得ることはできない。信頼領域反射アルゴリズムを用いた非線形回帰によって、平均張力および張力の線形変化を求めた。最適化手順では、測定された剛性とモデルとの間の根二乗平均誤差を式(19)のように最小化した。
【数20】
【0070】
ここで、rは測定される位置の総数である。各反復ステップにおけるウェブの平均張力※1および張力の線形変化σに対するeの勾配は、それぞれ、現在推測さ
れているウェブの平均張力※1および張力の線形変化σのそれぞれ±10%の間であるように選択される。
【0071】
[実験手順]
実験的な試験は、上述したNCR方式およびGCSM方式に基づいて行われた。上述したように、それぞれの方法を固定試験台(2つのローラ間で静的に支持されるウェブ)上で評価し、これら2つの方法の相互検証を可能とした。また、NCR方式は、製造環境におけるNCR方式の性能を示すために、市販のロールツーロールシステムのローラによって搬送されるウェブを使用して実行されたインライン(動的)試験を用いてさらに評価した。実験では、固定試験台とロールツーロールシステムを、
図3および
図5に模式的に示した監視システムで構成し、NCR方式とGCSM方式をそれぞれ実行した。
【0072】
固定試験台およびロールツーロールシステム上でNCR方式により実施した試験においては、監視システムは、ウェブの振動を励起するために、
図3の装置20としてスピーカ(VISATON(登録商標)FR10、VISATON GmbH & Co. KG)を使用するとともに、応答を測定するために、
図3の装置22としてレーザセンサ(Microtrak 7000, MTI Instruments Inc.)を使用した。データ取得システムおよび処理手段(
図3のプロセッサ24に対応)を用いて、レーザセンサで検出された振動応答を記録して処理した。実験は、上述したシミュレーションで使用された特性および寸法に一致するPETウェブ(フィルム)上で行われた。PETウェブの一部を、レーザセンサによる測定を容易にするために白く塗った。張力は、ウェブの端部に2.34kgまたは2.85kgの低炭素鋼棒をぶら下げることにより付与された。張力分布の不均一性を最小限に抑えるために、ローラとウェブの位置合わせを慎重に行った。スピーカの駆動には、振幅が0.005Vで、200秒で1Hz~100Hzのチャープ信号を使用した。レーザセンサで検出された応答の振幅と位相は、高速フーリエ変換を使用して計算された。ウェブの伝達関数は、ウェブ上の測定値とスピーカ上の測定値との振幅比と位相差から得られた。共振周波数は、伝達関数を電力帯域幅の半幅値にフィッティングさせる1自由度系(SDOF)により得られた。
【0073】
固定試験台でGCSM方式を用いて行った試験では、監視システムは、接触ヘッドとしてピンポン玉を備えた力計(VTSYIQI HF-5 Digital Push Pull Force Gauge、Vetus Electronic Technology Co.)を
図5の装置26として使用して、ウェブを変形させ、結果として得られる力を測定した。NCR方式で使用されたのと同一のレーザセンサを
図5の装置28として使用し、かつ、同一のデータ収集システムおよび処理手段を
図5のプロセッサ30として使用して、負荷位置でのウェブ変形を測定、記録、処理した。比較的大きな接触面積を有するピンポン玉の接触ヘッドを使用することにより、ウェブの局所塑性変形を最小限に抑えた。0.004Nから0.01Nの間の増分のうちの0.06Nから0.13Nまでの力がウェブに付与され、対応するウェブ変形は0.55mmから1.10mmの間で変化した。
【0074】
市販のロールツーロールシステムにおいてNCR方式を用いて行われたインライン試験では、DICEウェブデジタルインクジェットプリンタ・ロールツーロールシステム(Prototype & Production Systems, Inc.)の2つのスパンでウェブ張力分布を測定した。ウェブ張力は、このロールツーロールシステムの巻き出しローラのサーボモータからのトルクによって付与し、ウェブ搬送速度は、巻き取りローラのサーボモータによるトルクによって調整した。両方のローラとも、付与されたトルクを制御するための、ロールの半径を測定するセンサを有する。DICEウェブシステムは、張力と速度のダイナミクスを試験した場合のようなフィードバック制御は有していない。これらの測定には、
図11の表1に示した特性を有する不透明PETウェブを使用した。ロールツーロールシステムのスパン内長さは、スパン1とスパン2として示され、それぞれ292.10mmおよび107.95mmと測定された。スパン1はスパン2の上流で、スパン2はインクジェットプリンタの機能領域に対応していた。レーザセンサとスピーカを2つのスパンのそれぞれに設置した。レーザセンサの向きは、ウェブの移動方向に対して垂直であった。
【0075】
図7、
図8、
図9A、および
図9Bは、NCRとGCSMの相互検証実験から得られたデータを含むグラフである。
図7に示したNCR方式のデータでは、スピーカの位置は固定されたままであり、レーザセンサは7つの異なる位置に再配置された(X
1=101.6mmおよび、X
3=0mm、±22.86mm、±45.72mm、および±68.58mm)。
図8に示したGCSM方式のデータでは、接触ヘッドは、NCR方式と同じ7箇所に配置された。ウェブは、2.34kgの吊り質量(
図7、
図8、
図9A)または2.85kgの吊り質量(
図9B)で張られたPETウェブであった。
【0076】
図7は、周波数応答関数をX
1=101.6mm、X
3を-45.72mmでプロットしたものである。
図8は、式(17)を用いて、X
1=101.6mm、X
3=-45.72mmでの複数の接触力と歪みのフィッティングをプロットしたものである。
図7は、2つの共振ピークを含む1Hz~100Hzの間の周波数応答関数を示す。周波数が共鳴領域を横切って移動する際に、位相が180°ずれるのが観察された。最初の2つの共振周波数の平均値と1つの標準偏差は、f
11=43.89±0.02Hz、f
12=53.22±0.06Hzであった。
【0077】
図8は、GCSM方式の接触力と歪みをフォン・カルマン理論にフィッティングさせた結果を示す。線形弾性変形領域における局所接触剛性は、式(17)と式(18)を用いて抽出した。k′
1=0.007909±0.000223、k′
2=0.000107±0.000005、および、k=62.27±1.76N/mであった。
【0078】
図9Aおよび
図9Bは、それぞれ、2.34kgと2.85kgの吊り質量によってウェブが張力を受けた場合についての、NCR方式およびGCSM方式における接触剛性とウェブ張力分布を比較した図である。
図9Aのデータを測定した際の環境条件は、空気圧102.67kPa、気温21℃、相対湿度68%で、計算上の空気密度は1.208kg/m
3であった。NCR方式とGCSM方式で測定した7つの接触位置の剛性間の根二乗平均誤差は3.00Nm
-1であった。NCR方式は、平均張力134.49N/mと張力の線形変化±0.2724でウェブ張力分布を測定し、GCSM方式は、回帰誤差(式(19))e=2.4594において平均張力139.26N/mと張力の線形変化±0.2619でウェブ張力分布を測定した。
【0079】
NCR方式は、張力の線形変化の符号を識別しなかったため、その値は、
図9Aにプロットしたグラフでは、GCSM方式と同じ符号を持つように選択した。2つの方法間の平均張力、最大張力、最小張力の誤差は、それぞれ、3.43%、2.62%、4.78%であった。平均張力に対する交差スパン張力変動の割合(2σ)は54.48%であった。この変化量は、プリンテッド電子デバイスのパフォーマンスに大きく影響する可能性があり、ウェブアラインメントに最適な状態としたにもかかわらず存在した。さらに、観察結果は、理論と一致する接触剛性のエッジ効果を示した。
【0080】
図9Bは、2.85kg吊り質量を用いたNCR方式およびGCSM方式を使用した、接触剛性とウェブ張力分布との比較を示す。これらの測定の環境条件は、空気圧101.84kPa、気温21℃、相対湿度76%、計算上の空気密度1.198kg/m
3であった。測定された共振周波数は、f
11=49.01±0.06Hz、f
12=62.16±0.55Hzであった。NCR方式とGCSM方式で求めた接触剛性間の根二乗平均誤差は15.84N/mであった。NCR方式で測定した平均張力と張力の線形変化は、それぞれ176.59N/m、±0.3602であった。一方で、GCSM方式によって測定された平均張力と張力の線形変化は、それぞれ211.84N/mと±0.4542で、回帰誤差(式(19))はe=12.6698であった。2つの方法間の平均張力、最大張力、最小張力の誤差は、それぞれ、16.64%、28.25%、2.34%であった。
【0081】
ウェブ上では、GCSM方式により、X
3=±45.72mmでの高い接触剛性が認められた。NCR方式で測定した平均応力は139.0MPaであり、PETウェブの降伏強度より大きかった。ウェブは、x
1方向に沿って局所的に塑性伸長した可能性がある。局所的な塑性伸長により、局所的なウェブ面積質量密度および局所的なウェブ厚さが低減される。式(6)~式(9)により、局所的な塑性伸長によって全体的なウェブ面積質量密度が僅かに減少すると、共振周波数が僅かに増加することが判明した。したがって、NCR方式は、式(10)および式(12)によって、平均張力を僅かに過大に予測した。GCSM方式は、式(18)および式(19)に示されるフォン・カルマン理論によって抽出された局所接触剛性を使用した。局所的なウェブの厚さが減少すると予測された線形接触剛性が増加し、ウェブ張力を過大に予測した。接触剛性は限られた場所で測定されたため、局所的な塑性伸長が発生した領域において、局所的な塑性伸長は、NCR方式よりもGCSM方式に影響を与えた。
図9Bにおける、2つの局所的な異常に高い接触剛性を含まない場合、平均張力は175.33N/m、張力の線形変化は0.2894、およびe=2.9621である。NCR方式による結果と比較して、2つの異常に高い接触剛性測定値を除外した場合、NCR方式とGCSM方式との間の平均張力、最大張力、および最小張力の誤差は、0.72%、5.88%、および10.27%にまで減少した。
【0082】
上述した試験は静的なウェブ上で実行されたものであり、ウェブの搬送(ライン)速度が臨界搬送速度よりもはるかに小さい限り、NCR方式およびGCSM方式を使用してウェブを移動させることも可能であることは明らかである。ウェブの搬送速度が臨界搬送速度に近づくにつれて、共振周波数はゼロまで低下する。
【0083】
実用的な製造環境におけるNCR方式の性能を実証するために、NCR方式を市販のロールツーロールシステムで実施されたインライン試験に使用した。この試験では、ロールツーロールシステム上の2つの異なるスパンにおいて異なる搬送速度で単一の位置での測定を実行した。測定中の環境条件は、空気圧102.71kPa、空気温度21℃、湿度43%、および空気密度1.212kg/m3であった。周波数は、スパン1における共振を測定するために、40Hz~100Hzの間で、スパン2における共振を測定するために、140Hz~200Hzの間で掃引された。
【0084】
インライン試験は、スパン1においては搬送速度0(固定)、0.98m/分~1.26m/分、および1.93m/分~2.24m/分であり、スパン2においては搬送速度0(固定)、1.07m/分~1.31m/分、および1.85m/分~2.22m/分で実行された。すべての搬送速度(固定を除く)は、フレキシブルプリンテッドデバイスの製造における一般的な搬送速度の範囲内である。正規化された搬送速度は、搬送速度の臨界搬送速度に対する比として定義された。約2m/分の最大試験搬送速度は、スパン1に対して53.57m/秒および55.89m/秒、スパン2に対して47.32m/秒および47.48m/秒と推定されるウェブの臨界搬送速度よりもはるかに低速であり、このことは、試験中にNCR方式でのウェブ搬送速度の影響を無視しても安全であることを示す。スパン1におけるウェブの測定された静止張力は、ウェブが移動している際に測定された張力よりも著しく小さかった。これは、ウェブ張力分布における巻き出しモータおよび巻き取りモータの動きの影響であると仮定された。ウェブが動き始めると、ウェブとローラとの間の摩擦による抵抗が変化し、いくつかのスパンにおいて張力の変動が生じた。
【0085】
図10A~
図10Cはそれぞれ、伝達関数と、搬送速度がそれぞれ0、1m/分、2m/分に設定されたときの共振周波数を抽出するために使用されたSDOFフィッティングを示す。ウェブが動いている場合に、実際の搬送速度は最大0.26m/分まで変動した。動いているウェブの伝達関数は、静止ウェブの伝達関数よりもノイズが多かった。このノイズについて、推定される原因が挙げられた。1つは、ウェブ表面の不均一性および粗さがレーザセンサの出力に及ぼす影響である。ウェブが移動するにしたがって、ウェブ表面の不完全性は、ウェブ歪みとして誤って検出される可能性がある。もう1つの原因として考えられるのは、ウェブを駆動するモータからのノイズがウェブを通して伝達され、ウェブが振動することである。このようなスプリアス振動は、レーザセンサによって検出され、データ分析で捕捉することができる。ノイズの原因として、さらなる別の可能性としては、巻き出しモータおよび巻き取りモータの回転によって生じる、ウェブ張力の変化が挙げられる。最終的には、NCR方式が正確にウェブの共振周波数を特定することはノイズによって妨げられなかったため、ノイズはNCR方式を実施するにあたっての障害とはならなかった。
【0086】
図12の表2は、ロールツーロールシステムの2つのスパンにおけるウェブ張力分布をインラインで測定した結果を示す。スパン2における張力の交差スパン線形変化は無視できるが、スパン1においては最大35.58%まで変化しており、ロールツーロールシステムのスパンごとに張力の変化が異なることを示している。スパン2における平均張力は、スパン1と比較して21.46%~28.29%小さかった。張力の線形変化が小さい場合には、σ
2は低い負の値を有した。これは、より高い次数の張力の変化と、フィッティングと測定の誤差とを無視することによって生じた。しかしながら、負の値σ
2が小さい場合を、張力分布が均一であるものとして近接させることが合理的であるため、このことはNCR方式の使用に重大な影響を与えなかった。
【0087】
上述した研究および試験から、ロールツーロールプロセスにおけるウェブ張力の分布が不均一であると、ウェブの幅全体にわたってデバイスの性能が不均一となる可能性があることは明らかである。NCR方式およびGCSM方式の両方が、ウェブにおける平均張力と張力の線形変化を測定するために行われた(これにより、代替的または追加的に、ウェブの断面に基づいてウェブにおける平均応力と応力の線形変化を計算することができる)。
図1に示すロールツーロールシステム10を参照すると、NCR方式およびGCSM方式によって提供される張力測定の平均張力および線形変化を、制御システム16へのフィードバックとして使用することができる。これにより、制御システム16は、たとえば、加速、減速、および/または、1つ以上のローラ14の位置調整(たとえば、ローラ14の一方または両方の軸方位を上げる、下げる、および/または、変更する)、ウェブ12の幅における1つ以上の位置でウェブ12に追加の引張力を付与および/または発生させること、非限定的な例としては、上流、下流、またはローラ14間に配置される1つ以上の追加的なローラ14をウェブ12に接触させることなどを含む、さまざまな公知のあるいは未開発の技術を使用して、ウェブ12の幅方向における張力分布を制御するために使用される。NCR方式およびGCSM方式は、実施費用が安く、再校正を必要とすることなく、ウェブ経路が異なるさまざまなスパンに柔軟に適応することができる。この研究および試験から、以下のような結論が得られた。
【0088】
張力の線形変化を増加させると、真空中において均一な張力分布で密にクラスター化された共振周波数f11およびf12は、それぞれ、減少および増加する。
【0089】
張力の線形変化は、対称基底関数および反対称基底関数を結合した。
【0090】
閉形式の式を使用したNCR方式は、最小共振周波数による平均張力とその線形変化を測定した。
【0091】
ウェブの自由端付近の局所的な接触剛性は、ウェブの中心領域における接触剛性よりも小さいため、同一の接触力では、ウェブの中心領域における変形よりも、ウェブの縁部においてより変形する。
【0092】
不均一な張力分布は、接触剛性プロファイルをその交差クロス中心で非対称に変化する。
【0093】
GCSM法は、非線形回帰による局所接触剛性から、平均張力とその線形変化を測定することができた。
【0094】
NCR方式およびGCSM方式は実験的に相互検証され、局所的な塑性伸長が存在しない場合、平均張力で3.43%の誤差、および張力の線形変化で4.12%の誤差が得られた。
【0095】
NCR方式は、市販のロールツーロールシステムのスパンにおける張力分布を3つの異なる搬送速度でインライン測定することができた。
【0096】
同一のロールツーロールシステムにおけるさまざまスパンは、さまざまな平均張力や張力の線形変化を有することができる。
【0097】
上述したように、上記の詳細な説明において、本発明の1つ以上の特定の実施形態および本発明に関連する研究を説明したが、発明の代替態様についても、当業者によって適用可能である。たとえば、本発明を使用することのできるシステムは、図示の態様および構造とは異なっていてもよく、特定の部品の機能は、異なる構造を有するが機能が類似する(必ずしも同等でなくてもよい)部品により達成されてもよく、プロセスのパラメータは変更することができ、記載した材料の代わりに適切な材料を使用することもできる。したがって、上述したように、本発明は、本明細書に記述された実施形態または図示された実施形態に限定されない。
明細書中の※(こめじるし)の部分は、以下のイメージの記号または式が入るものである。
※1
※2
※3
※4
※5
※6
【国際調査報告】