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特表2024-518698ラージモード領域リングファイバにおける高次モード抑制を増大させる方法およびそのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ラージモード領域リングファイバにおける高次モード抑制を増大させる方法およびそのシステム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20240424BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240424BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20240424BHJP
   H01S 3/08031 20230101ALI20240424BHJP
   H01S 3/1106 20230101ALN20240424BHJP
【FI】
H01S3/067
G02B6/02 401
G02B6/036
G02B6/02 Z
H01S3/08031
H01S3/1106
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561678
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2022023602
(87)【国際公開番号】W WO2022216780
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/171,441
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン,ジェフリー,ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
2H250
5F172
【Fターム(参考)】
2H250AD18
2H250AE28
2H250AE29
2H250AH14
2H250AH33
2H250AH42
5F172AF02
5F172AF04
5F172AF05
5F172AF06
5F172AM01
5F172AM04
5F172AM08
5F172EE15
5F172ZZ01
(57)【要約】
本開示の実施形態は、概して、ラージモード領域リングファイバにおける高次モード抑制を増加させる方法に関する。このアプローチは、横モード不安定性(TMI)閾値を上昇させ、より高い電力のためのさらなるモードフィールド直径(MFD)スケーリングを可能にし得る。本明細書に開示されるのは、コア特性のセットと、コアの周りのクラッドリングとを有するコアとを備える光ファイバであって、光ファイバは14ミクロンおよび40ミクロンの間の基本モード有効MFDを有し、光ファイバはLHOMの高次モード損失を示す。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア特性のセットを有するコアと、
前記コアの周りのクラッドリングとを備える光ファイバであって、
前記光ファイバは、14ミクロンおよび40ミクロンの間の基本モード有効モードフィールド直径(MFD)を有し、前記光ファイバは、LHOMの高次モード損失を示す光ファイバ。
【請求項2】
前記コアの周りの第2のクラッドリングをさらに含む請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記コアの周りの第2のクラッドリングと、トレンチとをさらに含む請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記光ファイバのLHOMは、前記クラッドリングのない前記コア特性のセットを有する光ファイバよりも少なくとも1.5倍大きい請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記光ファイバのPHOMは、前記クラッドリングのない前記コア特性のセットを有する光ファイバよりも少なくとも30%小さい請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記コア特性のセットは、2e-3未満のデルタnを有するコアを含む請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記リングは、コアの縁部から3ミクロンおよび15ミクロンの間で始まる請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記リングは0.7×デルタnよりも小さいデルタnを含む請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記ファイバは、14ミクロンおよび37ミクロンの間の基本モード有効MFDを有する請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記ファイバは、5cmおよび30cmの間の曲げ直径で発生する1dB/m未満の基本モード損失を有する請求項1に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、米国特許仮出願63/171,441 (“Increasing higher-order mode suppression in large-mode area ring fibers,”、2021年4月6日)に対する優先権主張出願であって、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示の実施形態は、概して、高次モード抑制に関する。一般に、ファイバレーザは、活性利得媒質がエルビウム、イッテルビウム、ネオジム、ジスプロシウム、プラセオジム、ツリウム、ホルミウムなどの希土類元素をドープした光ファイバであるレーザであってもよい。ファイバレーザは、レーザ発振なしに光増幅を提供するドープファイバ増幅器に関連する。ファイバレーザの進歩により、さまざまな用途および実装形態で使用する機会が生じている。ファイバレーザは、高出力と高ビーム品質の両方を必要とする産業用レーザ加工用途において広く使用されている。例えば、金属および金属合金のレーザ切断およびレーザ溶接などである。コアは、典型的には、複数のダイオードレーザによって提供されるポンプ放射で励起される。ダイオードレーザは、電力を、利得ファイバに向けることができる光電力に効率的に変換する。「クラッドポンピング」構成では、ポンプ放射は、コアを被覆するポンプクラッド内で利得ファイバに沿って誘導される。外側クラッドはポンプクラッドを覆う。
【0003】
ファイバレーザの特定の用途は、特定の電力レベルを必要とする。いくつかのファイバレーザ用途に必要とされる必要な電力レベルを達成するために、いくつかのレーザが、増加された電力のために組み合わせられることができる。ファイバレーザは、スペクトル結合またはコヒーレント結合を使用して結合することができる。ファイバレーザの出力パワーのスケーリングは、例えば、誘導ブリルアン散乱(SBS)、誘導ラマン散乱(SRS)、自己位相変調(SPM)などの非線形性によって制限される。特に、狭線幅動作用に設計されたファイバレーザでは、SBSが支配的な非線形性よって制限される。対照的に、線幅を狭くする必要がない商業用途向けに設計されたファイバレーザは、多くの場合、SRSによって制限される。
【0004】
非線形性を低減し、出力電力を増加させる1つの方法は、ファイバの基本モードの有効面積を増加させることである。しかしながら、ファイバの有効面積が増加するにつれて、ファイバのシングルモード動作を維持することはますます困難になる。ある時点で、有効面積が増加し、高次モード(HOM)損失が減少するにつれて、横モード不安定性(TMI)は、非線形性よりもむしろ出力電力を増加させる際の制限要因になる。
【0005】
TMIは、量子欠陥加熱によって生成される熱誘起屈折率格子が基本モードを高次モードに結合するときに生じる。概して、直線偏光(LP)LP11モードは、関心のある支配的なHOMである。モードが結合するにつれて、レーザの出力は、基本モードとHOMとの間でkHz周波数でランダムに変動し、著しい雑音を引き起こし、ビーム品質を劣化させる。TMI閾値は、典型的には、HOMの曲げ損失を増加させることによって増加されるが、これはまた、基本モード信号の損失を増加させ、光学効率を低減させ、達成可能なHOM損失を制限する。
【0006】
したがって、高出力ファイバレーザ用のファイバの設計には自然のトレードオフがある。有効面積を増加させると、非線形性の閾値は増加するが、TMIの閾値は減少する。また、HOM曲げ損失を増加させることによってTMI閾値を増加させることは、光学効率を低下させる。様々な単純なステップインデックスプロファイルが、これらの制限のバランスをとるために最適化されている。これらのファイバの基本モード(2×(有効面積/pi)^0.5と定義する)の有効モードフィールド直径(MFD)は、典型的には20ミクロン未満であり、LP01曲げ誘起損失は2dB/m未満に保たれ、高次モード損失>200dB/mである。しかしながら、これらの設計はファイバ製造における低収率において極めて感度が高い。既存の設計で現在達成可能なものを超える出力電力のさらなるスケーリングは、利用可能ではない。これらのファイバの高次モード損失を増加させるための新しいアプローチの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、概して、クラッド内にリングを有するラージモード領域ファイバにおいて高次モード抑制を増加させる方法に関する。このアプローチは、横モード不安定性(TMI)閾値を上昇させ、より高い電力のためのさらなるモードフィールド直径(MFD)スケーリングを可能にし得る。加えて、このアプローチはまた、所望の非線形およびTMI閾値を達成することができる屈折率プロファイルの範囲を広げることによって、ファイバ製造収率を増加させ得る。
【0008】
本開示の実施形態はまた、コア特性のセットを有するコアと、コアの周りのクラッドリングとを含む光ファイバであって、光ファイバは14ミクロンおよび40ミクロンの間の基本モード有効モードフィールド直径(MFD)を有し、光ファイバはLHOMの高次モード損失を示す。いくつかの実装形態では、光ファイバは、14ミクロンおよび37ミクロンの間の基本モード有効MFDを備え得る。
【0009】
本開示の実施形態はまた、コア特性のセットを有するコアと、コアの周囲のクラッドリングであって、コアの縁部から3ミクロンから15ミクロンの間で始まるクラッドリングとを備える光ファイバであって、光ファイバは14ミクロンおよび40ミクロンの間の基本モード有効モードフィールド直径(MFD)を有し、光ファイバはLHOMの高次モード損失およびPHOMの高次モードパワーオーバーラップを示す。
【0010】
本開示の実施形態はまた、ラージモード領域リングファイバにおける高次モード抑制を増加させる方法であって、光ファイバを提供するステップは、2e-3未満のデルタnを有するコアと、コアの周りのクラッドリングにおいて、3ミクロンから15ミクロンの間で始まるクラッドリングコアの縁部と、光ファイバは、14ミクロンおよび40ミクロンの間の基本モード有効モードフィールド直径(MFD)を有し、光ファイバはLHOMの高次モード損失及びPHOMの高次モードパワーオーバーラップを示し、光ファイバを通して光を伝搬させる。
【0011】
したがって、本開示の上記で挙げた特徴を詳細に理解することができるように、本開示の実施形態のより具体的な説明は、添付の図面を参照することによって得ることができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の範囲内に包含される例示的な実施形態のみを示し、本開示が他の等しく効果的な実施形態を認め得るため、限定と見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】Ybドープファイバの設計を示すチャートである。
図1B】本開示の実施形態によるYbドープファイバの例示的な設計を示すチャートである。
図2A】本開示の実施形態によるモード損失と曲げ直径との間の関係を示すチャートである。
図2B】本開示の実施形態によるリング特徴部を有するファイバのモード損失と曲げ直径との間の関係を示すチャートである。
図3A】本開示の実施形態による、リングのない基本モードおよび高次モード(HOM)のコアとのモード電力重複を示すチャートである。
図3B】本開示の実施形態による、基本モードのコアとリングを有するHOMとのモード電力重複を示すチャートである。
図4】本開示の実施形態によるリングファイバのプロファイルを示すプロットである。
図5】本開示の実施形態による、スパイラル端におけるLP11損失とMFDとの間の関係を示すチャートである。
図6】本開示の実施形態による、ラージモード領域リングファイバにおける高次モード抑制を増加させる方法を示すフローチャートである。
【0013】
本明細書で使用される見出しは、編成目的のみのためであり、説明または請求項の範囲を限定するために使用されることを意味しない。本出願を通して使用される場合、であって、用語「あり得る」は、必須の意味(すなわち、必要とされる意味)ではなく、許容的な意味(すなわち、潜在性を有する意味)で使用される。同様に、「含む(include)」、「含む(including)」、および「含む(includes)」という用語は、これらに限定されないが含むことを意味する。理解を容易にするために、可能な場合、図面に共通の同様の要素を示すために同様の参照番号が使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態は、概して、ラージモード領域リングファイバにおける高次モード抑制を増加させる方法に関する。このアプローチは、横モード不安定性(TMI)閾値を上昇させ、より高い電力のためのさらなるモードフィールド直径(MFD)スケーリングを可能にし得る。加えて、このアプローチはまた、所望の非線形およびTMI閾値を達成することができる屈折率プロファイルの範囲を広げることによって、製造収率を増加させ得る。
【0015】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、高出力ファイバレーザファイバの設計に追加されるクラッド特徴に関する。本明細書に記載される実施形態によれば、このクラッド特徴は、14ミクロンおよび40ミクロンの範囲のモードフィールド直径を有するファイバについて希土類ドープファイバコアとの高次モードオーバーラップを減少させながら、高次モード損失を著しく増加させ得、より高い電力動作を可能にする。いくつかの実装形態では、光ファイバは、14ミクロンと37ミクロンとの間のMFDを備え得る。
【0016】
TMIは、概して、ファイバレーザにおける電力スケーリングを防止する。TMIは、熱誘起屈折率格子によって促進される基本モードとLP11高次モード(HOM)との間の電力伝達を含む。モードフィールド直径(MFD)の増加は、より高い非線形閾値、より低いHOM損失、および関連するより低いTMI閾値をもたらし得る。非線形閾値は、誘導ブリルアン散乱(SBS)閾値、ラマン閾値、4波混合(FWM)閾値などを含むことができる。4波混合(FWM)は、非線形光学における相互変調現象であり得、2つまたは3つの波長間の相互作用は、2つまたは1つの新しい波長を生成する。TMIは、市販のファイバレーザと指向性エネルギーファイバレーザプログラムの両方に影響を与える。TMIを抑制する1つのアプローチは、HOM損失を増加させることである。HOM損失の増加は、大きいモードフィールド直径に対してより困難になる。MFDを維持しながらHOM損失を増加させることは、現在の動作電力レベルに対する製造収率の増加、および高いLP11損失を維持しながらより低いLP01損失で動作することによって効率の増加を可能にする。これはまた、より大きな有効面積へのスケーリング、非線形性の低減、および動作電力レベルの増加を可能にする。利得ドーパント濃度を増加させることは、ファイバ長を減少させることによって非線形性を減少させ得るが、これは、TMI閾値を減少させるフォトダークニングの増加に起因して有害であり得る。
【0017】
例示的な実施形態によれば、クラッドリングなどを屈折率プロファイルに追加することができる。クラッドリングを追加することは、HOM曲げ損失を増加させ得る共振などによる。曲げに対するLP11モードの対称性は、平行対称性、直交対称性を含み得る。平行対称では、典型的には、より高い曲げ損失がある。直交対称性では、典型的には、より低い曲げ損失がある。いくつかの実装形態では、共振では、平行対称LP11モードは、いくつかの屈曲直径において直交対称よりも低い損失を有する。いくつかの実装では、ファイバの屈折率プロファイルが熱光学係数を通して変更されるため、増幅器における動作中に生成される量子欠陥誘起加熱は、リングの利益を最大限にし得る。
【0018】
いくつかの実装形態では、たとえば、19ミクロンのMFD Ybドープファイバおよび傾斜屈折率コアを有する16ミクロンのMFDファイバにおいて、コアを同じに保ち、リングを追加することは、広い曲げ直径範囲にわたってHOM曲げ損失を増加させる。リングを追加することは、基本モード重複に影響を及ぼすことなく、コアとのHOMモード重複を実質的に低減し得る。いくつかの実施形態では、所与の屈折率プロファイルのためのリング設計が最適化され、次いで、他の測定されたファイバ屈折率プロファイルに適用されてもよい。リング設計は、単一のプロファイルに対して最適化され得るが、広範囲のファイバ設計およびMFDにわたってHOM曲げ損失の増加も与え得る。リング設計は、コア変更に対してロバストであり得る。
【0019】
図1Aは、Ybドープファイバの設計100aを示すチャート。図1Bは、本開示の実施形態によるYbドープファイバの例示的な設計100bを示すチャート。本開示のいくつかの実施形態では、基本モードの損失を増加させることなくHOMの損失を増加させるための解決策は、コア付近のクラッドに新たな構造を追加することである。この構造は、リングと呼ばれ得る。図1Aは、高出力Ybドープファイバの設計を示し、図1Bは、HOM抑制のための追加のリング構造を示す。図1Bに示す例示的な設計パラメータは、開始半径、デルタn、幅など。これは、主に高次モードと相互作用するように最適化され得る、リングの屈折率は、基本モードに対する著しい摂動を回避するのに充分低く保たれる。さらに、1つ以上のリングを使用してもよい。
【0020】
図2Aは、本開示の実施形態による、リング特徴のないモード損失と曲げ直径との間の関係を示すチャート200aである。図2Bは、本開示の実施形態によるリング特徴を有するファイバのモード損失と曲げ直径との間の関係を示すチャート200bである。チャート上の曲線は、曲げ直径ならびに平行および直交対称LP11モードの関数としての基本モード損失を示す。図2Bに示すように、リングを加えるとHOM損失が増加する。LP01損失も増加し、LP11/LP01損失の比が増加する。いくつかの実施形態では、動作点をより大きな曲げ直径に移動させることによって、より高いLP01曲げ損失に対応することができる。コアおよびリングの設計はまた、望ましい曲げ半径を提供し得る。
【0021】
以下の表1は、LP01損失=1dB/mの曲げ直径における計算されたLP11損失を示す。リングを追加すると、LP01=1dB/m損失での曲げ直径は7.7cmから9cmに増加する。しかしながら、その直径では、LP11損失は、リングの追加に伴って59dB/mから1380dB/mに増加する。ファイバのモードフィールド直径は、リングの追加によって実質的に変化しない。
【表1】
【0022】
リングは、ファイバの計算されたHOM損失を増加させ、TMI閾値の増加をもたらし得る。曲げ損失は、ファイバの屈折率に基づいてモードソルバによって計算することができる。低屈折率被覆ファイバでは、コアの高い曲げ損失は、クラッドモードへの高い結合を意味するが、それらのクラッドに結合されるパワーは意味しないモードはファイバによって誘導されたままである。計算された損失は、HOMがガラスコーティング界面をどれだけサンプリングするかの代用である。
【0023】
低屈折率被覆ファイバにおける曲げ損失の問題のため、HOMがファイバの利得ドープ領域とどれだけ重なり合うかを考慮することも有用である。リングは、LP11に、そのエネルギーをクラッドの中へ拡張させ得る。したがって、HOMとファイバのコアとの重なりは、リングが屈折率プロファイルに加えられると減少する。これは、利得ドープ領域との重なりが小さいほど、HOMが有する利得が小さくなり、TMI閾値がさらに増加するので、ファイバレーザの別の利益である。多くの場合、利得ドーパントはコアの全範囲にのみ存在する。利得ドーパントがコアの一部に閉じ込められるか、またはコアを越えて延在する事例では、モード電力重複は、ファイバの利得ドープ領域を考慮すべきである。
【0024】
図3Aは、リングのない基本モードおよび高次モード(HOM)のコアとのモード電力重複を示すチャート300aである。図3Bは、本開示の実施形態による、基本モードのコアとリングを有するHOMとのモード電力重複を示すチャート300bである。図3Aおよび図3Bは、基本モードのコアとの計算されたモードオーバーラップと、特定の屈折率プロファイル設計のためのリングを有するおよびリングを有さないHOMとを示す。チャートの網掛け領域は、長さ10mのYbドープファイバがスパイラル状に巻かれるときに典型的に使用される作動直径を示す。コアとの基本モードオーバーラップは、予想される動作直径範囲において変化しないが、コアとの高次モードオーバーラップは劇的に減少する。動作直径は、リングの追加に伴って、わずかにより大きい直径にシフトし、これは、コアの設計段階で補償することができる。
【0025】
いくつかの実装形態では、リングによって提供される利点は、リングインデックスプロファイルの詳細に対してロバストである。しかし、HOMとリングとの間の相互作用は共鳴に基づき、特定のリング設計では内部の点で最大化されるリング直径、リング幅、およびデルタn、損失の有意な増加およびコア重複の減少は、広範囲の設計にわたって維持される。これは、リング設計をロバストにし、ファイバ収率を増加させ得る。コアとの高LP11損失および低モード重複の両方について最適化する領域が設計空間内に存在し得る。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態では、リングは、ファイバが低いNAを示し、リングがなくても、LP11モードに対して比較的弱いコア閉じ込めおよび高い損失をもたらすため機能する。そのような敏感な設計にリングを追加することは、クラッドの中へのHOMの漏出を促進する。
【0027】
図1A、1B、2A、2B、3A、および3Bは、ステップインデックスのようなコアを有するファイバに関連するデータを示す。リングは、市販のファイバレーザなどで使用されるファイバなどのグレーデッドインデックスコアと同等に良好に機能することができる。リングは、理想化されたステップインデックスファイバから逸脱し、プロファイルにおけるピークまたはディップを示すコアと同等に良好に機能し得る。
【0028】
本明細書に記載される計算は、例えば室温で測定されるファイバの屈折率プロファイルに対して行われ得る。増幅器において動作するとき、ポンプと信号との間の量子欠陥によって引き起こされる加熱は、熱光学効果に起因して屈折率プロファイルの実質的な変化を引き起こし得る。この影響を設計段階で考慮すると、高電力増幅器におけるファイバの性能をさらに改善することができる。
【0029】
上記の議論は、コイルに巻かれたファイバの曲げ直径を考慮し、曲げ直径はファイバの長さに沿って変化する。いくつかの実装では、これは、TMIがファイバの信号入力端において最も深刻であり得、HOM屈曲損失が、局所的により高いLP01損失を犠牲にしてさえ、より高くあり得るため、有利。いくつかの実装形態では、利得ファイバ長に沿って平均化されたHOM曲げ損失またはコアオーバーラップを管理することが望ましい。いくつかの実装形態では、経路平均特性ベース光パワーが使用されてもよい。これは、利得を生じさせず、非線形効果などを回避しなければならない受動ファイバに適用される場合に関連し得る。
【0030】
コイル構成が本明細書で説明されるが、いくつかの事例では、ファイバは、リング内に保持される、または円筒上に巻着される等、本質的に均一な屈曲直径を伴って巻着されてもよい。これは、HOM損失およびLP11/LP01損失比が、リングレス設計よりも曲げ直径に伴う変動が少ない、リングベース設計の特徴によって可能にされ得る。低NAの大きいファイバ設計に対する曲げ直径による曲げ損失の相対的な非感受性は、高性能および改善されたパッケージ性の両方にとって非常に有利であり得る。
【0031】
本明細書で説明される特性は、デバイスが高電力で、したがって、高熱負荷下で動作しているときに生じる、非線形性およびTMI等の有害効果のための閾値付近で重要であり得る。ファイバの屈折率は温度と共に変化するので、目標動作温度範囲で動作させたときに望ましい特性を生成するようにファイバ設計を補償することが重要であり得る。
【0032】
いくつかのファイバは、リング状構造ならびにポンプクラッドの残りよりも低い屈折率を有するトレンチを有し得る。リングおよびトレンチ構造の組み合わせは、HOM損失をさらに増加させるために使用され得る。
【0033】
本発明の例示的な実施形態は、高出力ファイバレーザに関連する設計パラメータを含むことができる。商業用および指向性エネルギー用途のための高出力ファイバレーザの文脈では、これらのパラメータは、例えば、微細構造化ファイバプローチを区別するための固体クラッドファイバを有する固体コア、14ミクロンより大きいMFD、約40ミクロン未満のMFDを含み得る。いくつかの実施形態では、設計は、いくつかの利点を伴って、25ミクロンにおけるMFDを備えてもよい。40ミクロン超では、HOM抑制へのリングアプローチはより困難であり得る。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態では、低デルタnファイバを使用することができる。本明細書で説明されるように、ファイバコア設計は、LP11曲げ損失が有意であり、リングと相互作用し得る点に調整され得るため、リングが機能し得る。たとえば、コアデルタnは<2e-3などに制限され得る。いくつかの実施形態では、コアよりも実質的に小さいデルタnを有するリングが使用され得る。リングデルタnがコアデルタnに近づくにつれて、基本モードは損失性になり得る。この例では、リングデルタnは、コアデルタnの<70%に制限され得る。別のパラメータは、コアの縁部から少なくとも2ミクロン離れて、かつコアの縁部から15ミクロン以下離れて始まるリングなどを含み得る。リングがコアから離れすぎると設計スペースが狭くなり、高損失と低HOMコアオーバーラップを同時に実現することが困難になる。リングがコアに近すぎると、製造が困難になることがある。別のパラメータは、高いHOM損失、例えば、LP11>300dB/mを含み得る。
【0035】
いくつかの実装形態では、多次元最適化ルーチンに基づくファイバ設計は、最大23.5ミクロンのMFDを有する19ミクロンファイバのHOM損失を超えるHOM損失を有するリングベースの設計を見出した。本明細書に記載の例示的な実施形態によれば、設計アルゴリズムは、HOM損失>200dB/mで25ミクロンのMFDにおける設計を決定する。いくつかの実装形態では、設計は、より大きいMFDにおいてより高い値のHOM損失を可能にし、MFDについて>200またはさらには>300dB/mが25ミクロンまたはさらには30ミクロンを超える。
【0036】
ここで論じられる設計は、単一の矩形形状のリングを示し得る。リングの外観は矩形に見えるが、リングの側面は、拡散により延伸中に傾斜を獲得し得る。三角形またはグレーデッドインデックス等の他のリング形状もまた、利益を提供してもよい。クラッドに複数のリングを使用することにも利点があり得る。リングは、一定または方位角的に変化する内半径および外半径で連続的であってもよく、または別個のセグメントからなってもよい。
【0037】
本開示の例示的な実施形態によれば、光ファイバを設計し、製造することができる。いくつかの実装形態では、光ファイバは、コアとリングとを含み得る。光ファイバの特性は、デルタn<2e-3を含むコアと、コアの縁部から3~15ミクロンの間で始まるリングであって、リングのデルタn<0.7*デルタnを有するリングとを含み、ファイバは14ミクロンおよび30ミクロンの間の基本実効MFDを有し、ファイバは5cmおよび30cmの間の曲げ直径で発生する基本モード損失<1dB/mを有し、ファイバは、基本モード損失=1dB/mの曲げ直径で高次モード損失>300dB/mを有する。
【0038】
図4は、本開示の実施形態によるリングファイバのプロファイルを示すプロット400である。プロット400は、本開示の実施形態によるリングファイバのデルタnと半径(ミクロン)との関係を示す。ファイバは、本開示の実施形態によるクラッドリングを備えてもよい。クラッドリングを追加して、TMI閾値を増加させることなどができる。例示的な実施形態によれば、製造されたリングファイバを使用することができる。
【0039】
図5は、本開示の実施形態による、スパイラル端におけるLP11損失とMFDとの間の関係を示すチャート500である。いくつかの実装形態では、パルスYbファイバ増幅器用のリングファイバの設計は、37ミクロン程度の大きさのモードフィールドなどに拡張可能である。チャート500は、本開示の実施形態による製造されたファイバのコンパイルを示し、より大きいモードフィールドにおいて、リングファイバが従来のステップインデックス設計よりも著しく高いHOM損失を達成することを示す。例えば、25ミクロンのMFDでは、設計は、19ミクロンのMFD、ステップインデックスファイバよりも高いHOM損失を有する。37ミクロンMFDでは、設計は40dB/m超の損失を有し、これは1kW超、TMIフリーの信号電力などをサポートするのに充分であり得る。MFDがスケーリングされるにつれて、デルタnは減少し得、動作し得る直径は増加し得る。いくつかの実装では、37ミクロンMFDでは、動作直径は、約30cm等であってもよい。
【0040】
図6は、本開示の実施形態による、ラージモード領域リングファイバにおける高次モード抑制を増大させる方法600を示すフローチャートである。方法600は、ステップ602で開始することができ、コアプロパティまたはパラメータが設定される。コア特性は、例えば、デルタn<2e-3を含み得る。方法は、リングパラメータが設定されるステップ604に進み得る。リングパラメータは、例えば、コアの縁部から3および15ミクロンの間で始まるリングを含んでもよく、リングは、リングのデルタn<0.7*デルタnを有する。ステップ602において、デルタnおよびコア半径に関してコア設計を定義することは、MFDおよび動作屈曲直径を実質的に定義し得る。ステップ604において、リング設計を定義することは、HOM損失を決定し、動作直径を微調整し得る。ファイバパラメータは、例えば、14ミクロンおよび30ミクロンの間の基本モード有効MFDを有するファイバと、5cmおよび30cmの間の曲げ直径で発生する基本モード損失<1dB/mと、基本モード損失=1dB/mである曲げ直径において、高次モード損失>300dB/mとを含み得る。ステップ606では、光は、ファイバ等を通って伝搬されてもよい。
【0041】
図示の簡素化および明瞭化のために、添付の図面には一般的な構成スキームが示されており、本開示の例示的な実施形態の議論が不必要に不明瞭になることを避けるために、当技術分野で周知の特徴および技術についての詳細な説明は省略されている。さらに、添付の図面における構成要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。例えば、サイズは、本開示の例示的な実施形態の理解を助けるために誇張されている場合がある。
【0042】
本明細書に記載される本開示の例示的な実施形態は、例示される順序とは異なる順序で動作され得ることが理解されるであろう本明細書に記載される。方法が一連のステップを含むと本明細書で説明される場合、本明細書で提案されるこれらのステップのシーケンスは、必ずしもこれらのステップが実行され得るシーケンスではない。
【0043】
本開示において使用される用語は、本開示を限定するのではなく、例示的な実施形態を説明するためのもの。本開示において、単数の表現は、特に明示的な記載がない限り、複数の表現を含む。本開示で使用される「備える(comprise)」および/または「備える(comprising)」という用語によって言及される構成要素、ステップ、動作、および/または要素は、1つまたは複数の他の構成要素、ステップ、動作、および/または要素の存在または追加を排除しない。
【0044】
上記において、本開示は、その例示的な実施形態を参照して説明されている。本開示に開示される全ての例示的な実施形態及び条件付き説明は、本開示が属する技術分野の当業者による本開示の原理及び概念の理解を助けることを意図して説明された。したがって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を変形して実施できることを理解できるであろう。種々の特徴を有する多数の実施形態が本明細書に説明されているが、本明細書に議論されない他の組み合わせにおけるそのような種々の特徴の組み合わせは、本開示の実施形態の範囲内であると想定される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
【国際調査報告】