(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】フローセル
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240424BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240424BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240424BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z ZNA
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561699
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022026041
(87)【国際公開番号】W WO2022231984
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ブラック,ヘイデン
(72)【発明者】
【氏名】フォン ハッテン,ゼイビア
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029DC04
4B029DC05
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
例示的な方法は、フローチャネルに少なくとも部分的に露出した表面を有する作用電極を含むフローセルのフローチャネルに第1の流体を導入することであって、該表面は、遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されていないか、又は修飾されており、それによって、第1の流体中に存在する複合体の連結部分が、該複合体を表面に化学的に付着させて、作用電極の一時的に修飾された表面を形成する、ことと、一時的に修飾された表面の複合体を伴うセンシング動作を行うことと、連結部分の脱離電圧を作用電極に印加し、それによって連結部分を脱着し、表面を再生することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
フローチャネルに少なくとも部分的に露出した表面を有する作用電極を含むフローセルの前記フローチャネルに第1の流体を導入することであって、前記表面は、遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されていないか又は修飾されており、それによって、前記第1の流体中に存在する複合体の連結部分が、前記複合体を前記表面に化学的に付着させて、前記作用電極の一時的に修飾された表面を形成する、ことと、
前記一時的に修飾された表面の複合体を伴うセンシング動作を行うことと、
前記連結部分の脱離電圧を前記作用電極に印加し、それによって、前記連結部分を脱着し、前記表面を再生することと
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、前記連結部分と、前記修飾されていない表面に付着しない直交する官能基とを含み、
前記センシング動作を行う前に、前記方法は、i)複数のプライマーが付着され、ii)前記直交する官能基と反応性である反応性官能基が付着されたヒドロゲルを含む第2の流体を前記フローチャネルに導入することを更に含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記センシング動作が、
前記複数のプライマーを使用して鋳型核酸鎖を増幅して、鋳型核酸鎖のクラスターを生成することと、
複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体を前記フローチャネルに導入することと、
前記複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、前記鋳型核酸鎖のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと
を伴う、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、前記連結部分と、前記修飾されていない表面に付着しない直交する官能基とを含み、
前記センシング動作を行う前に、前記方法は、i)鋳型核酸鎖のクラスターが付着され、ii)前記直交する官能基と反応性である反応性官能基が付着された粒子を含む第2の流体を前記フローチャネルに導入することを更に含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体が、前記連結部分と、前記連結部分に付着した捕捉オリゴヌクレオチドとを含み、
前記センシング動作を行う前に、前記方法は、i)鋳型核酸鎖のクラスターが付着され、ii)前記捕捉オリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドが付着された粒子を含む第2の流体を前記フローチャネルに導入することを更に含む、方法。
【請求項6】
請求項4又は5のいずれか一項に記載の方法であって、前記センシング動作が、
複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体を前記フローチャネルに導入することと、
前記複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、前記鋳型核酸鎖のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと
により、
前記鋳型核酸鎖のクラスターの配列決定を伴う、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、i)前記連結部分が付着され、ii)複数のプライマーが付着されたヒドロゲルを含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、i)前記連結部分が付着され、ii)鋳型核酸鎖のクラスターが付着された粒子を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記センシング動作が、
複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体を前記フローチャネルに導入することと、
前記複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、前記鋳型核酸鎖のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと
により、
前記鋳型核酸鎖のクラスターの配列決定を伴う、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記表面は、前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されており、
前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーは遷移金属錯体であり、
前記連結部分は配位子であり、前記配位子は前記遷移金属錯体結合対の第2のメンバーであり、
前記複合体は、i)配位子及びii)鋳型核酸鎖のクラスターを有するヒドロゲルで官能化された金属ナノ粒子を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記表面は、前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されており、
前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーは配位子であり、
前記連結部分は遷移金属錯体であり、前記遷移金属錯体は、前記遷移金属錯体結合対の第2のメンバーであり、
前記複合体は、i)前記遷移金属錯体が付着され、ii)複数のプライマーが付着されたヒドロゲルを含む、方法。
【請求項12】
前記脱離電圧を印加することが、前記作用電極に負バイアスを印加することを伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記脱離電圧を印加することが、前記作用電極に正バイアスを印加することを伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記脱離電圧が印加された後に、洗浄流体を前記フローチャネルに導入することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記フローセルが、
基材と、
前記基材上に位置付けられた作用電極と、
前記作用電極の上に位置付けられたパターン形成された絶縁材料であって、間隙領域によって分離された凹部を画定し、前記修飾されていない表面が前記凹部の各々で露出している、パターン形成された絶縁材料と、
前記間隙領域の上に位置付けられた第2の作用電極と
を備え、
前記方法は、前記第1の流体が導入されるときに前記連結部分の前記脱離電圧を前記第2の作用電極に印加し、それによって、前記間隙領域から複合体を反発させることを更に含む、方法。
【請求項16】
前記センシング動作の後に、前記連結部分の前記脱離電圧を前記第2の作用電極に印加することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
方法であって、
フローチャネルに少なくとも部分的に露出した基材の表面を含むフローセルの前記フローチャネルに第1の流体を導入することであって、前記表面は、遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第1のメンバーで修飾されており、それによって、前記第1の流体中に存在する複合体の連結部分が、前記複合体を前記表面に化学的に付着させて、前記基材の一時的に修飾された表面を形成する、ことと、
前記一時的に修飾された表面の複合体を伴うセンシング動作を行うことと、
前記一時的に修飾された表面を可視光に曝露し、それによって、前記連結部分を脱着させ、前記表面を再生することと
を含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記連結部分がチオエーテルであり、
前記複合体は、i)前記チオエーテルが付着され、ii)複数のプライマーが付着されたヒドロゲルである、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
前記連結部分がチオエーテルであり、
前記複合体は、i)前記チオエーテルが付着され、ii)鋳型核酸鎖のクラスターが付着されたヒドロゲルである、方法。
【請求項20】
方法であって、
フローチャネルに少なくとも部分的に露出した修飾されていない表面を有する作用電極を含むフローセルの前記フローチャネルに第1の流体を導入し、それによって、前記第1の流体中に存在する複合体の連結部分が、前記複合体を前記修飾されていない表面に化学的に付着させて、前記作用電極の一時的に修飾された表面を形成する、ことと、
前記一時的に修飾された表面の複合体を伴うセンシング動作を行うことと、
前記フローセルに電解質溶液を導入することと、
前記電解質溶液の存在下で前記作用電極に電圧を印加し、それによって、前記作用電極の層を除去し、前記表面を再生することと
を含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、前記連結部分と、前記修飾されていない表面に付着しない直交する官能基とを含み、
前記センシング動作を行う前に、前記方法は、i)複数のプライマーが付着され、ii)前記直交する官能基と反応性である反応性官能基が付着されたヒドロゲルを含む第2の流体を前記フローチャネルに導入することを更に含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記センシング動作が、
前記複数のプライマーを使用して鋳型核酸鎖を増幅して、鋳型核酸鎖のクラスターを生成することと、
複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体を前記フローチャネルに導入することと、
前記複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、前記鋳型核酸鎖のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと
を伴う、方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、前記連結部分と、前記修飾されていない表面に付着しない直交する官能基とを含み、
前記センシング動作を行う前に、前記方法は、i)鋳型核酸鎖のクラスターが付着され、ii)前記直交する官能基と反応性である反応性官能基が付着された粒子を含む第2の流体を前記フローチャネルに導入することを更に含む、方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体が、前記連結部分と、前記連結部分に付着した捕捉オリゴヌクレオチドとを含み、
前記センシング動作を行う前に、前記方法は、i)鋳型核酸鎖のクラスターが付着され、ii)前記捕捉オリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドが付着された粒子を含む第2の流体を前記フローチャネルに導入することを更に含む、方法。
【請求項25】
請求項23は24のいずれか一項に記載の方法であって、前記センシング動作が、
複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体を前記フローチャネルに導入することと、
前記複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、前記鋳型核酸鎖のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと
により、
前記鋳型核酸鎖のクラスターの配列決定を伴う、方法。
【請求項26】
請求項20に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、i)前記連結部分が付着され、ii)複数のプライマーが付着されたヒドロゲルを含む、方法。
【請求項27】
請求項20に記載の方法であって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、i)前記連結部分が付着され、ii)鋳型核酸鎖のクラスターが付着された粒子を含む、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記センシング動作が、
複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体を前記フローチャネルに導入することと、
前記複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、前記鋳型核酸鎖のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと
により、
前記鋳型核酸鎖のクラスターの配列決定を伴う、方法。
【請求項29】
前記電圧が印加された後に、洗浄流体を前記フローチャネルに導入することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
キットであって、
前記フローセルが、
フローチャネルと、
前記フローチャネルに少なくとも部分的に露出した表面を有する作用電極であって、前記表面は、遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されていないか又は修飾されている、作用電極と、
前記作用電極に電気的に接続された対電極と、
フローセル表面化学流体であって、
液体キャリアと、
修飾されていない表面又は前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーに化学的に付着し、脱離電圧に曝露されたときに前記修飾されていない表面又は前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーから脱離する連結部分を含む複合体と
を含む、フローセル表面化学流体と
を備える、キット。
【請求項31】
請求項30に記載のキットであって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、前記連結部分と、前記修飾されていない表面に付着しない直交する官能基とを含み、
前記キットは、i)複数のプライマーが付着され、ii)前記直交する官能基と反応性である反応性官能基が付着されたヒドロゲルを含む第2の流体を更に備える、キット。
【請求項32】
請求項30に記載のキットであって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、前記連結部分と、前記修飾されていない表面に付着しない直交する官能基とを含み、
前記キットは、i)鋳型核酸鎖のクラスターが付着され、ii)前記直交する官能基と反応性である反応性官能基が付着された粒子を含む第2の流体を更に備える、キット。
【請求項33】
請求項30に記載のキットであって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体が、前記連結部分と、前記連結部分に付着した捕捉オリゴヌクレオチドとを含み、
前記キットは、i)鋳型核酸鎖のクラスターが付着され、ii)前記捕捉オリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドが付着された粒子を含む第2の流体を更に備える、キット。
【請求項34】
複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体を更に備える、請求項32又は33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
請求項30に記載のキットであって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、i)前記連結部分が付着され、ii)鋳型核酸鎖のクラスターが付着された粒子を含む、キット。
【請求項36】
複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体を更に備える、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
請求項30に記載のキットであって、
前記表面は修飾されておらず、
前記複合体は、i)前記連結部分が付着され、ii)複数のプライマーが付着されたヒドロゲルを含む、キット。
【請求項38】
請求項30に記載のキットであって、前記フローセルが、
基材と、
前記基材上に位置付けられた作用電極と、
前記作用電極の上に位置付けられたパターン形成された絶縁材料であって、間隙領域によって分離された凹部を画定し、前記表面が前記凹部の各々で露出している、パターン形成された絶縁材料と、
前記間隙領域の上に位置付けられた第2の作用電極と、
前記作用電極及び前記第2の作用電極の各々に電気的に接続された対電極と、
前記作用電極及び前記第2の作用電極に電気的に接続された第1のコントローラと
を備える、キット。
【請求項39】
請求項30に記載のキットであって、
前記フローセルは、基材を備え、
前記作用電極は、間隙領域によって分離された凹部を画定するように前記基材上にパターン形成されており、
前記作用電極の表面は、前記凹部の各々で露出しており、
前記フローセルは、
前記間隙領域の上に位置付けられたパターン形成された絶縁材料と、
前記パターン形成された絶縁材料の上に位置付けられた第2のパターン形成された作用電極と、
前記作用電極及び前記第2の作用電極の各々に電気的に接続された対電極と、
前記作用電極及び前記第2の作用電極に電気的に接続されたコントローラと
を更に備える、キット。
【請求項40】
請求項30に記載のキットであって、
前記作用電極は、炭素系電極、酸化インジウムスズ、白金、パラジウム、及び金からなる群から選択され、
前記連結部分は、チオール、ジアゾニウム、アルキン、カルベン、アデノシンオリゴヌクレオチド、ジチオエステル、イソニトリル、イソチオシアネート、カルボキシル、アミン、ニトリル、ニトロ、及びトリアルキルシリルからなる群から選択される、キット。
【請求項41】
請求項30に記載のキットであって、
前記表面は、前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されており、
前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーは遷移金属錯体であり、
前記連結部分は配位子であり、前記配位子は前記遷移金属錯体結合対の第2のメンバーであり、
前記複合体は、i)配位子及びii)鋳型核酸鎖のクラスターを有するヒドロゲルで官能化された金属ナノ粒子を含む、キット。
【請求項42】
請求項30に記載のキットであって、
前記表面は、前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されており、
前記遷移金属錯体結合対の第1のメンバーは配位子であり、
前記連結部分は遷移金属錯体であり、前記遷移金属錯体は、前記遷移金属錯体結合対の第2のメンバーであり、
前記複合体は、i)前記遷移金属錯体が付着され、ii)複数のプライマーが付着されたヒドロゲルを含む、キット。
【請求項43】
キットであって、
前記フローセルが、
フローチャネルと
前記フローチャネルに少なくとも部分的に露出した表面を有する基材であって、前記表面は、遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第1のメンバーで修飾されている、基材と、
フローセル表面化学流体であって、
液体キャリアと、
前記可視光応答性の第1のメンバーに化学的に付着し、可視光に曝露されたときに前記可視光応答性の第1のメンバーから脱離する連結部分を含む複合体と
を含むフローセル表面化学流体と
を備える、キット。
【請求項44】
請求項43に記載のキットであって、
前記連結部分がチオエーテルであり、
前記複合体は、i)前記チオエーテルが付着され、ii)複数のプライマーが付着されたヒドロゲルである、キット。
【請求項45】
請求項43に記載のキットであって、
前記連結部分がチオエーテルであり、
前記複合体は、i)前記チオエーテルが付着され、ii)鋳型核酸鎖のクラスターが付着されたヒドロゲルである、キット。
【請求項46】
フローセルであって、
基材と、
前記基材上に位置付けられた第1の作用電極と、
第1の作用電極の上に位置付けられたパターン形成された絶縁材料であって、前記パターン形成された絶縁材料は、間隙領域によって分離された凹部を画定し、前記第1の作用電極の表面は、前記凹部の各々で露出され、前記表面は、修飾されていないか、又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されている、パターン形成された絶縁材料と、
前記間隙領域の上に位置付けられた第2の作用電極と、
前記第1の作用電極及び前記第2の作用電極の各々に電気的に接続された対電極と、
前記第1の作用電極の表面及び前記第2の作用電極と流体連通するフローチャネルと、
前記第1の作用電極、前記第2の作用電極、及び前記対電極に電気的に接続されたコントローラと
を備える、フローセル。
【請求項47】
前記対電極が、前記フローチャネルの表面を形成する透明な対電極である、請求項46に記載のフローセル。
【請求項48】
前記基材に接続され、前記フローチャネルの表面を形成する透明な蓋を更に備える、請求項47に記載のフローセル。
【請求項49】
フローセルであって、
基材と、
前記基材上に位置付けられた第1のパターン形成された作用電極であって、前記第1のパターン形成された作用電極は、間隙領域によって分離された凹部を画定し、前記第1のパターン形成された作用電極の表面は、前記凹部の各々において露出され、前記表面は、修飾されていないか、又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されている、第1のパターン形成された作用電極と、
前記間隙領域の上に位置付けられたパターン形成された絶縁材料と、
前記パターン形成された絶縁材料の上に位置付けられた第2のパターン形成された作用電極と、
前記第1のパターン形成された作用電極及び前記第2のパターン形成された作用電極の各々に電気的に接続された対電極と、
前記第1のパターン形成された作用電極の表面及び前記パターン形成された第2の作用電極と流体連通するフローチャネルと、
前記第1のパターン形成された作用電極、前記第2のパターン形成された作用電極、及び対電極に電気的に接続されたコントローラと
を備える、フローセル。
【請求項50】
前記対電極が、前記フローチャネルの表面を形成する透明な対電極である、請求項49に記載のフローセル。
【請求項51】
前記基材に接続され、前記フローチャネルの表面を形成する透明な蓋を更に備える、請求項50に記載のフローセル。
【請求項52】
配列決定システムであって、
電気化学的に又は可視光曝露を介して配列決定準備完了状態から配列決定準備未完了状態に切り替え可能な再生可能な表面を含むフローセルと、
流体を前記フローセルに送達するための送達フルイディクスを含む流体制御システムと、
前記再生可能な表面を照明するように位置付けられた照明システムと、
前記再生可能な表面の画像を取り込むように位置付けられた検出システムと、
コントローラであって、
前記フローセルの電極を配列決定準備未完了状態に誘導させるか、
又は
前記照明システムに、前記フローセルを可視光に曝露させる、コントローラと
を備える、配列決定システム。
【請求項53】
請求項52に記載の配列決定システムであって、
前記再生可能な表面は、作用電極表面であり、
前記作用電極表面は、配列決定準備未完了状態の遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾されている、配列決定システム。
【請求項54】
請求項52に記載の配列決定システムであって、
前記再生可能な表面は、作用電極表面であり、
前記作用電極表面は、配列決定準備未完了状態で修飾されていない、配列決定システム。
【請求項55】
請求項52に記載の配列決定システムであって、
前記再生可能な表面は、基材表面であり、
前記基材表面は、配列決定準備未完了状態の遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第1のメンバーで修飾されている、配列決定システム。
【請求項56】
請求項52に記載の配列決定システムであって、
送達フルイディクスに流体接続されたリザーバと、
前記リザーバに収容された前記流体と
を更に備え、前記流体は、複合体を前記再生可能な表面に化学的に付着させる連結部分を有する複合体を含む、配列決定システム。
【請求項57】
前記複合体が複数のプライマーを更に含む、請求項56に記載の配列決定システム。
【請求項58】
前記複合体が、鋳型核酸鎖のクラスターを更に含む、請求項56に記載の配列決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月26日に出願された米国仮特許出願第63/179,794号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
EFS-Webを介して提出された配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ファイルの名称はILI216BPCT_IP-2117-PCT_Sequence_Listing_ST25.txtであり、ファイルのサイズは812バイトであり、ファイルの作成日は2022年4月8日である。
【背景技術】
【0003】
フローセルは、遺伝子配列決定、遺伝子型決定などの様々な方法及び用途において使用される。核酸分析のために、フローセルの表面は、行われる反応に応じて、プライマー、ポリメラーゼなどの特定の表面化学(surface chemistry)で官能化され得る。多くの場合、表面化学はフローセル表面に共有結合される。共有結合は、様々な使用中にフローセルの寿命を通して、フローセルの活性領域における表面化学を維持するために望ましくあり得る。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示されるフローセルは、複数回使用され得る。核酸分析のためのフローセル表面化学は、分析の初期サイクル(例えば、シーケンシングラン)を実行する前に、リアルタイムで導入され、表面に付着される。フローセル表面化学はまた、例えば、電気化学的に誘導された脱離又は可視光により誘導された解離を介して除去可能である。脱離又は解離の際に、洗浄サイクルによりフローセルから表面化学が除去され、表面が別の核酸分析で使用するための新しい表面化学を導入できる状態になる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかになろう。図面において、同様の参照番号は、類似なものではあるが、おそらく同一ではない構成要素に対応している。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号又は特徴は、それらが現れる他の図面と関連させて記載されてもよく、記載されなくてもよい。
【
図2A】電気化学的に再生可能な表面を有するフローセルの一例の、
図1の線2A-2Aに沿った断面図である。
【
図2B】電気化学的に再生可能な表面を有するフローセルの別の例の、
図1の線2B-2Bに沿った断面図である。
【
図2C】電気化学的に再生可能な表面を有するフローセルの更に別の例の、
図1の線2C-2Cに沿った断面図である。
【
図3A】可視光再生可能な表面を有するフローセルの一例の、
図1の線3A-3Aに沿った断面図である。
【
図3B】可視光再生可能な表面を有するフローセルの別の例の、
図1の線3B-3Bに沿った断面図である。
【
図4A】本明細書に開示されるフローセルの例に除去可能な表面化学を導入するために使用することができる複合体の異なる例を概略的に示す。
【
図4B】本明細書に開示されるフローセルの例に除去可能な表面化学を導入するために使用することができる複合体の異なる例を概略的に示す。
【
図4C】本明細書に開示されるフローセルの例に除去可能な表面化学を導入するために使用することができる複合体の異なる例を概略的に示す。
【
図4D】本明細書に開示されるフローセルの例に除去可能な表面化学を導入するために使用することができる複合体の異なる例を概略的に示す。
【
図4E】本明細書に開示されるフローセルの例に除去可能な表面化学を導入するために使用することができる複合体の異なる例を概略的に示す。
【
図5】フローセル表面の電気化学的再生を含む、本明細書に開示される方法の一例を示す概略的なフロー図である。
【
図6】フローセル表面の電気化学的再生を含む、本明細書に開示される方法の別の例を示す概略的なフロー図である。
【
図7】フローセル表面の電気化学的再生を含む、本明細書に開示される方法の更に別の例を示す概略的なフロー図である。
【
図8】フローセル表面の電気化学的再生を含む、本明細書に開示される方法の更に別の例を示す概略的なフロー図である。
【
図9】フローセル表面の可視光再生を含む、本明細書に開示される方法の一例を示す概略的なフロー図である。
【
図10】本明細書に開示される配列決定システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書では、複数回使用され得るフローセルが開示される。初期フローセル表面は、修飾されていないか、又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバー(member)で修飾されている。核酸分析のための表面化学をフローセルに導入し、フローセル表面に付着させて、一時的に修飾された表面を生成する。所望の分析が行われた後、表面化学は、フローセルから除去可能である。表面化学の除去により、修飾されていないか又は修飾された初期表面が再生され、その後の核酸分析のための新しい表面化学を受け取るようにフローセル表面が準備される。
【0007】
フローセルの再利用性は、それが、消耗品セットの一部とは対照的に、シーケンシング機器の一部であることを可能にし得る。
【0008】
定義
本明細書で使用される用語は、別段の指定がない限り、関連する技術分野における通常の意味を取るものと理解されたい。本明細書で使用されるいくつかの用語及びそれらの意味は、以下に記載される。
【0009】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0010】
含む(comprising)、含む(including)、含有する(containing)という用語、及びこれらの用語の様々な形態は、互いに同義であり、等しく広義であることを意味する。
【0011】
フローセル及び/又はフローセルの様々な構成要素を説明するために、本明細書では、上(top)、下(bottom)、下方(lower)、上方(upper)、上(on)などの用語が使用される。これらの方向を示す用語は、特定の配向を示すことを意味するものではなく、構成要素間の相対的な配向を指定するために使用されることを理解されたい。方向を示す用語の使用は、本明細書に開示される例を任意の特定の配向に制限すると解釈されるものではない。
【0012】
第1、第2などの用語はまた、特定の配向又は順序を示すことを意味するものではなく、むしろ1つの構成要素を別の構成要素から区別するために使用される。
【0013】
本明細書に提供される範囲は、そのような値又は部分範囲が明示的に列挙されているかのように、示される範囲及びその示される範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことを理解されたい。例えば、約400nm~約1μm(1000nm)の範囲は、約400nm~約1μmの明示的に引用された制限を含むだけでなく、個別の値、例えば約708nm、約945.5nmなど、及び部分範囲、例えば約425nm~約825nm、約550nm~約940nmなどもまた含むと解釈されなければならない。更に、「約」及び/又は「実質的に」が値を説明するために使用される場合、これらは、記載した値の微小な変化(最大±10%)を包含することを意味する。
【0014】
「アクリルアミド」は、構造
【0015】
【化1】
を有する官能基であり、式中、各Hは、代替的に、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された別種であってもよい。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合又は三重結合を含有しない)直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。例として、表記「C1~C6アルキル」は、アルキル鎖に1~6個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、及びヘキシルからなる群から選択されることを示す。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「アルキルアミノ」は、水素原子のうちの1つ以上がアミノ基で置換されているアルキル基を指し、アミノ基は、-NRaRb基を指し、Ra及びRbは、それぞれ独立して、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C7炭素環、C6~C10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び5~10員複素環から選択される。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「アルキルアミド」は、水素原子のうちの1つ以上が、C-アミド基又はN-アミド基で置換されているアルキル基を指す。「C-アミド」基は、「-C(=O)N(RaRb)」基を指し、式中、Ra及びRbは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環(heteroalicycle)、アラルキル、又は(ヘテロ脂環)アルキルからなる群から選択され得る。「N-アミド」基は、「RC(=O)N(Ra)-」基を指し、式中、R及びRaは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アラルキル、又は(ヘテロ脂環)アルキルからなる群から選択され得る。任意のアルキルアミドは、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「アルキルチオ」は、RS-を指し、式中、Rは、アルキルである。アルキルチオは、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「アルケン」又は「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「アルキン」又は「アルキニル」は、1つ以上の三重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「アラルキル」及び「アリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して置換基として結合されたアリール基を指す。アラルキルの低級アルキレン基及びアリール基は、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。例としては、ベンジル、2-フェニルアルキル、3-フェニルアルキル、及びナフチルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「アリール」という用語は、環骨格中に炭素のみを含有する芳香族環又は環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。アリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有し得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、及びアントラセニルが挙げられる。任意のアリールは、環骨格中に、少なくとも1つのヘテロ原子、すなわち、炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄など)を有するヘテロアリールであってもよい。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「付着した(attached)」という用語は、2つのものが、直接的又は間接的のいずれかで、互いに、接合、締結、接着、接続、又は結合されている状態を指す。例えば、核酸は、共有結合又は非共有結合によって官能化ポリマーに付着され得る。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる。非共有結合は、電子対の共有を伴わない物理結合であり、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用、及び疎水性相互作用を挙げることができる。
【0025】
「アジド(azide)」又は「アジド(azido)」官能基は、-N3を指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「炭素環」は、環系骨格に炭素原子のみを含有する非芳香族環式環又は環系を意味する。炭素環が環系である場合、2つ以上の環が、縮合、架橋、又はスピロ結合方式で一緒に接合され得る。炭素環は、環系内の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有し得る。したがって、炭素環には、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びシクロアルキニルが含まれる。炭素環基は、3~20個の炭素原子を有し得る。炭素環式環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、及びスピロ[4.4]ノナニルが挙げられる。炭素環のいずれかは、環骨格に少なくとも1つのヘテロ原子を有する複素環であってもよい。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」とは、完全に飽和した(二重又は三重結合がない)単環又は多環式炭化水素環系を指す。2つ以上の環から構成される場合、環は、縮合方式で一緒に接合され得る。シクロアルキル基は、環内に3~10個の原子を含有し得る。いくつかの例では、シクロアルキル基は、環内に3~8個の原子を含有し得る。シクロアルキル基は、非置換であってもよく、又は置換されていてもよい。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルケニル」又は「シクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。例としては、シクロヘキセニル又はシクロヘキセン及びノルボルネニル又はノルボルネンが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキニル」又は「シクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。一例は、シクロオクチンである。別の例は、ビシクロノニンである。更に別の例は、ジベンゾシクロオクチン(dibenzocyclooctyne、DBCO)である。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「堆積」という用語は、手作業であっても自動であってもよく、いくつかの場合では表面特性の修飾をもたらす、任意の好適な適用技術を指す。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用して実行され得る。いくつかの特定の例としては、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、液滴分配(puddle dispensing)、フロースルーコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「凹部」という用語は、基材又はパターン形成された材料の間隙領域によって少なくとも部分的に包囲される表面開口部を有する、基材又はパターン形成された材料における不連続の凹状の特徴を指す。凹部は、表面の開口部において、例として、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を有する)などの、様々な形状を取ることができる。表面と直交するように取られた凹部の断面は、湾曲形状、正方形、多角形、双曲線、円錐、角のある形状などであることができる。例として、凹部は、ウェル又は2つの相互接続されたウェルであり得る。凹部はまた、尾根、階段状の特徴など、より複雑な構造を有し得る。
【0032】
「各々」という用語は、項目の集合を参照して使用されるとき、集合内の個々の項目を識別することを意図しているが、必ずしも集合内の全ての項目を指すものではない。明示的な開示又は文脈がそうでないことを明確に指示する場合、例外が生じ得る。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「フローセル」という用語は、少なくとも1つの修飾されていない表面又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバーで修飾された少なくとも1つの表面と流体連通するフローチャネルを有する容器を意味することを意図している。修飾されていないか又は修飾された表面は、核酸分析中に使用される表面化学を付着させることができ、電気化学的に又は可視光への曝露時に表面化学を放出することができる。フローセルはまた、試薬をフローチャネルに送達するための入口と、試薬をフローチャネルから除去するための出口とを含む。フローセルは、表面化学を含む反応の検出を可能にする。例えば、フローセルは1つ以上の透明な表面を含むことができ、これにより、フローチャネル内で、アレイ、光学的に標識された分子などの光学的な検出が可能になる。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「フローチャネル」又は「チャネル」は、液体サンプルを選択的に受容することができる、2つの結合された構成要素間に画定される領域であり得る。いくつかの例では、フローチャネルは、パターン形成されているか又はパターン形成されていない構造と蓋との間に画定され得る。他の例では、フローチャネルは、一緒に結合されている2つのパターン形成されているか又はパターン形成されていない構造の間に画定され得る。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロ脂環式」又は「ヘテロ脂環」は、3員、4員、5員、6員、7員、8員、9員、10員、最大18員の単環式、二環式、及び三環式環系を指し、炭素原子は、1~5個のヘテロ原子と一緒になってこの環系を構成する。ヘテロ脂環式環系は、しかしながら、完全に非局在化されたパイ電子系が全ての環全体にわたって起こらないような様式で位置する1つ以上の不飽和結合を、任意選択で含有してもよい。ヘテロ原子は、独立して、酸素、硫黄、及び窒素から選択される。ヘテロ脂環式環系は、その定義がラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、及び環状カルバメートなどのオキソ系及びチオ系を含めるように、1つ以上のカルボニル又はチオカルボニル官能基を更に含有してもよい。環は、縮合方式で一緒に接合されてもよい。更に、ヘテロ脂環式における任意の窒素を四級化してもよい。ヘテロ脂環又はヘテロ脂環式基は、非置換であってもよく、又は置換されていてもよい。このような「ヘテロ脂環式」又は「ヘテロ脂環」基の例としては、1,3-ジオキシン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,2-ジオキソラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,3-オキサチオラン、1,3-ジチオール、1,3-ジチオラン、1,4-オキサチアン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、モルホリン、オキシラン、ピペリジンN-オキシド、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、4-ピペリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、2-オキソピロリジン、テトラヒドロピラン、4H-ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルホリン、チアモルホリンスルホキシド、チアモルホリンスルホン、及びそれらのベンゾ縮合類似体(例えば、ベンズイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、3,4-メチレンジオキシフェニル)が挙げられる。
【0036】
「(ヘテロ脂環式)アルキル」は、低級アルキレン基を介して置換基として結合された複素環式又はヘテロ脂環式基を指す。(ヘテロ脂環式)アルキルの低級アルキレン及び複素環、又は複素環は、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。例としては、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル、(ピペリジン-4-イル)エチル、(ピペリジン-4-イル)プロピル、(テトラヒドロ-2H-チオピラン-4-イル)メチル、及び(1,3-チアジナン-4-イル)メチルが挙げられる。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0038】
「グリコール」という用語は、末端基-(CH2)nOHを指し、式中、nは、2~10の範囲である。特定の例として、グリコールは、エチレングリコール末端基-CH2CH2OH、プロピレングリコール末端基-CH2CH2CH2OH、又はブチレングリコール末端基-CH2CH2CH2CH2OHであり得る。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「間隙領域」という用語は、凹部を分離する領域、例えば、基材、パターン形成された樹脂、又は他の支持体の領域を指す。例えば、間隙領域は、アレイの1つの凹部を、アレイの別の凹部から分離することができる。互いに分離された2つの凹部は、別個であってもよい、すなわち、互いとの物理的な接触が欠如していてもよい。多くの例では、間隙領域は、連続的であるが、凹部は、例えば、それ以外は連続的である表面に画定される複数の凹部の場合のように、不連続である。他の例では、間隙領域及び特徴部は、例えば、それぞれの間隙領域によって分離される複数のトレンチの場合のように、不連続である。間隙領域によって提供される分離は、部分的又は完全な分離であり得る。間隙領域は、表面に画定される凹部の表面材料とは異なる表面材料を有してもよい。例えば、凹部の表面は電極であってもよく、間隙領域は電気絶縁材料であってもよい。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基を含む。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位である。リボ核酸RNAにおいて、糖はリボースであり、デオキシリボ核酸DNAにおいて、糖は、デオキシリボース、すなわち、リボースの2’位に存在するヒドロキシル基が欠如している糖である。窒素含有複素環式塩基(すなわち、核酸塩基)は、プリン塩基であってもピリミジン塩基であってもよい。プリン塩基としては、アデニン(A)及びグアニン(G)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。ピリミジン塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1又はプリンのN-9に結合される。核酸類似体は、リン酸骨格、糖、又は核酸塩基のいずれかが変化していてもよい。核酸類似体の例としては、例えば、ペプチド核酸(peptide nucleic acid、PNA)などのユニバーサル塩基又はリン酸-糖骨格類似体が挙げられる。
【0041】
いくつかの例では、「の上に(over)」という用語は、1つの構成要素又は材料が別の構成要素又は材料の上に直接位置付けられることを意味し得る。一方が他方の上に直接存在する場合、2つは互いに接触している。
図2Aにおいて、作用電極24Aは、基材22A上に直接位置し、かつ接触するように、基材22A上に適用される。同様に、
図2Aにおいて、作用電極24Bは、基材22B上に直接位置し、かつ接触するように、基材22B上に適用される。
【0042】
他の例では、「の上に(over)」という用語は、1つの構成要素又は材料が別の構成要素又は材料上に間接的に位置付けられることを意味し得る。間接的にとは、ギャップ又は追加の構成要素又は材料が、2つの構成要素又は材料の間に位置付けられ得ることを意味する。
図2Aにおいて、パターン形成された絶縁層26Aは、基材22A上に、両者が間接的に接触するように位置付けられる。より具体的には、パターン形成された絶縁層26Aは、作用電極24Aが2つの構成要素26A、22Aの間に位置付けられるので、間接的に基材22A上にある。
【0043】
本明細書で使用するとき、「プライマー」という用語は、一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNA)として定義される。いくつかのプライマーは、鋳型増幅及びクラスター生成の開始点として機能するプライマーセットの一部である。本明細書において配列決定プライマーと称される他のプライマーは、DNA合成の開始点として機能する。プライマーの5’末端は、直交するポリマーのうちの1つの官能基とのカップリング反応を可能にするように修飾され得る。プライマーの長さは、任意の数の塩基の長さであることができ、様々な天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。一例では、配列決定プライマーは、10~60塩基、又は20~40塩基の範囲の短鎖である。
【0044】
「基材」という用語は、フローセルの様々な構成要素(例えば、電極、遷移金属錯体結合対の第1のメンバーなど)がその上に追加され得る構造を指す。基材は、ウエハ、パネル、長方形シート、ダイ、又は任意の他の好適な構成であってもよい。基材は、概して剛性硬質であり、水性液体に不溶性である。基材は、単層構造又は多層構造(例えば、支持体及び支持体上のパターン形成された材料を含む)であってもよい。好適な基材の例は、本明細書で更に説明される。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「テトラジン」及び「テトラジニル」という用語は、4つの窒素原子を含む6員のヘテロアリール基を指す。テトラジンは、任意選択的に置換され得る。
【0046】
「遷移金属錯体結合対」という用語は、互いに付着することができる2つの薬剤(そのうちの1つは遷移金属錯体である)を指す。
【0047】
「透明」という用語は、特定の波長又は波長範囲に対して透明である、例えば、基材、電極又は他の層の形態の材料を指す。例えば、材料は、核酸分析中に使用される励起及び発光波長に対して透明であり得る。発光波長は、核酸分析において使用される蛍光色素に依存し、したがって、使用される透明材料も部分的に蛍光色素に依存する。透明度は、透過率、すなわち、物体に入射する光エネルギーの物体を透過する光エネルギーに対する比を使用して定量化され得る。透明材料の透過率は、材料の厚さ及び光の波長に依存する。本明細書に開示される例では、材料の透過率は、0.25(25%)~1(100%)の範囲であり得る。材料は、得られる基材、電極又は他の層が所望の透過率を可能にする限り、純粋な材料、いくらかの不純物を有する材料、又は材料の混合物であってもよい。追加的に、材料の透過率に応じて、光曝露の時間及び/又は光源の出力電力を増加又は減少させて、透明な材料を通して好適な線量の光エネルギーを送達して、所望の効果(例えば、蛍光標識を励起する)を達成することができる。
【0048】
フローセル
フローセル10を
図1に上面図で示す。フローセル10は、互いに接合された2つのパターン形成された構造(例えば、
図2A及び
図3A参照)、互いに接合された2つのパターン形成されていない構造(例えば、
図2C及び
図3B参照)、又は蓋に接合された1つのパターン形成された若しくはパターン形成されていない構造(例えば、
図2B参照)を含み得る。
図1は、フローセル10の上面図を示し、したがって、基材の表面又は蓋の表面を示す。基材又は蓋は、核酸分析中に使用される励起及び発光波長に対して透明である。
【0049】
2つのパターン形成された若しくはパターン形成されていない構造の間、又は1つのパターン形成された又はパターン形成されていない構造と蓋との間には、フローチャネル12がある。
図1に示される例は、8つのフローチャネル12を含む。8つのフローチャネル12が示されているが、任意の数のフローチャネル12がフローセル10に含まれ得る(例えば、単一のフローチャネル12、4つのフローチャネル12など)ことを理解されたい。各フローチャネル12は、あるフローチャネル12内に導入される流体が、隣接するフローチャネル12内に流入しないように、別のフローチャネル12から隔離され得る。フローチャネル12に導入される流体のいくつかの例は、表面化学成分(例えば、ヒドロゲル、捕捉/増幅のためのプライマー、鋳型核酸鎖のクラスターをその上に有する粒子など)、洗浄溶液、デブロッキング剤などを導入し得る。
【0050】
フローチャネル12は、任意の望ましい形状を有することができる。一例では、フローチャネル12は、実質的に長方形の構成を有する。フローチャネル12の長さは、パターン形成された構造又はパターン形成されていない構造がその上に形成される基材のサイズに部分的に依存する。フローチャネル12の幅は、パターン形成された構造又はパターン形成されていない構造がその上に形成される基材のサイズ、フローチャネル12の所望の数、隣接するチャネル12間の所望の空間、及びパターン形成された構造又はパターン形成されていない構造の周囲における所望の空間に部分的に依存する。
【0051】
フローチャネル12の深さは、マイクロコンタクト、エアロゾル、又はインクジェット印刷を使用して、パターン形成された若しくはパターン形成されていない構造、又はパターン形成された若しくはパターン形成されていない構造及び蓋を取り付ける別個の材料(例えば、スペーサ層20)を堆積させる場合、単層厚さ程度に小さくすることができる。他の例として、フローチャネル12の深さは、約1μm、約10μm、約50μm、約100μm、又はそれ以上であり得る。一例では、深さは、約10μm~約100μmの範囲であり得る。別の例では、深さは、約10μm~約30μmの範囲であり得る。更に別の例では、深さは、約5μm以下である。フローチャネル12の深さは、上で指定した値よりも大きくてもよく、それよりも小さくてもよく、又はそれらの間であってもよいことを理解されたい。
【0052】
各フローチャネル12は、入口14及び出口16と流体連通している。
図1に示すように、各フローチャネル12の入口14及び出口16は、フローセル12の対向する端部に位置付けられる。それぞれのフローチャネル12の入口14及び出口16は、望ましい流体の流れを可能にするフローチャネル12の長さ及び幅に沿った任意の場所に位置付けられてもよい。
【0053】
入口14は、流体がフローチャネル12内に導入されることを可能にし、出口16は、流体がフローチャネル12から抽出されることを可能にする。入口14及び出口16の各々は、流体の導入及び排出を制御する流体制御システム(例えば、リザーバ、ポンプ、バルブ、廃棄物容器などを含む)に流体接続される。
【0054】
【0055】
電気化学的に再生可能なフローセル
フローチャネル12内の構造(architecture)のいくつかは、フローセル表面の電気化学的再生のために設計される。様々な例を
図2A~
図2Cに示す。
【0056】
ここで
図2Aを参照すると、フローチャネル12内の構造の一例は、互いに取り付けられた2つのパターン形成された構造18A、18Bを含む。フローチャネル12は、2つのパターン形成された構造18A、18Bの間に形成される。別の例(図示せず)では、パターン形成された構造18Aは、(
図2Bに示される例と同様に)蓋に取り付けられてもよい。この他の例では、フローチャネル12は、パターン形成された構造18Aと蓋との間に形成される。
【0057】
パターン形成された構造18A、18B(又はパターン形成された構造18A及び蓋)は、スペーサ層20を介して互いに取り付けられてもよい。スペーサ層20は、パターン形成された構造18A、18Bの部分を一緒に封止するか、又はパターン形成された構造18A及び蓋の部分を封止する任意の材料であってもよい。例として、スペーサ層20は、接着剤、接合を助ける放射線吸収材料などであってもよい。いくつかの例では、スペーサ層20は、放射線吸収材料、例えば、KAPTON(登録商標)ブラックである。パターン形成された構造18A、18B、又はパターン形成された構造18A及び蓋は、レーザ接合、拡散接合、陽極接合、共晶接合、プラズマ活性化接合、ガラスフリット接合、又は当該技術分野で公知の他の方法などの任意の好適な技術を使用して接合することができる。
【0058】
パターン形成された構造18A、18Bの各々は、基材22A、22Bと、作用電極24A、24Bと、作用電極24A、24Bの上に位置付けられたパターン形成された絶縁材料26A、26Bとを含む。パターン形成された絶縁材料26A、26Bは、間隙領域30A、30Bによって分離された凹部28A、28Bを画定する。この例では、作用電極24A、24Bの表面32A、32Bは、凹部28A、28Bの各々で露出している。
【0059】
この例では、各基材22A、22Bは単層構造である。各基材22A、22Bは電気絶縁性であり、いくつかの例では、核酸分析中に使用される励起及び発光波長に対して透明である。例えば、パターン形成された構造18A、18Bが互いに取り付けられる場合、基材22A、22Bは電気絶縁性で透明である。代替的に、パターン形成された構造18Aが蓋に取り付けられる場合、基材22Aは電気絶縁性であるが、蓋は核酸分析中に使用される励起及び発光波長に対して透明であるので、透明であってもなくてもよい。電気絶縁性で透明な基材材料の例としては、エポキシ、シロキサン、ガラス、修飾又は官能化されたガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン及びスチレンと他の材料とのコポリマーを含む)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、環状オレフィンコポリマー(COC)、いくつかのポリアミド、シリカ又は酸化ケイ素(SiO2)、溶融シリカ、シリカ系材料、窒化ケイ素(Si3N4)、五酸化タンタル(Ta2O5)又は他の酸化タンタル(TaOx)、酸化ハフニウム(HfO2)、無機ガラスなどが挙げられる。
【0060】
各基材22A、22Bの形態は、ウエハ、パネル、矩形シート、ダイ、又は任意の他の好適な構成であり得る。一例では、各基材22A、22Bは、約2mm~約300mmの範囲の直径を有する円形ウエハ又はパネルであり得る。より具体的な例としては、各基材22A、22Bは、約200mm~約300mmの範囲の直径を有するウエハである。別の例では、各基材22A、22Bは、最大約10フィート(約3メートル)の最大寸法を有する矩形シート又はパネルであり得る。このタイプの大きな基材22A、22Bは、フローセル10で使用するためにいくつかのより小さな基材に分割することができる。具体的な例としては、各基材22A、22Bは、約0.1mm~約10mmの範囲の幅を有する矩形のダイである。例示的な寸法を示しているが、任意の好適な寸法を有する基材22A、22Bを使用してもよいことを理解されたい。
【0061】
図2Aにおいて、入口14及び出口16は、フローチャネル12の対向する側に示されている。この位置決めは、入口14及び出口16がフローチャネル12の対向する端部にある
図1に示されるものとは異なる。したがって、
図2Aの断面図は、
図1には示されていない変形例を含む。本明細書に記載されるように、入口14及び出口16は、望ましい流体の流れを可能にするフローチャネル12の長さ及び幅に沿った任意の場所に位置付けられてもよい。
【0062】
図2Aの入口14及び出口16の図は、入口14及び出口16が基材22A、22Bのうちの1つを通してどのように形成され得るかの理解を容易にするために含まれる。入口14及び出口16は、フローチャネル12を入口フルイディクス36(例えば、チューブ、流体ライン、試薬リザーバなど)及び出口フルイディクス38(例えば、チューブ、流体ライン、廃棄物容器など)に接続するそれぞれの貫通孔である。入口14及び出口16は、同じ基材22A若しくは22Bに形成されてもよく、又は対向する基材に形成されてもよい(例えば、入口14が基材22Aに形成され、出口16が基材22Bに形成される)。
【0063】
図2Aの構造では、作用電極24A、24Bはそれぞれ基材22A、22B上に位置付けられる。各作用電極24A、24Bは、金(Au)、銀(Ag)、塩化銀(AgCl)、白金(Pt)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、炭素(例えば、グラフェン、カーボンナノチューブシート)、導電性ポリマー(例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PANI))などの任意の好適な電極材料を含み得る。パターン形成された構造18A、18Bが互いに取り付けられる場合、作用電極24A、24Bは、核酸分析中に使用される励起及び発光波長に対して透明であるべきである。透明材料の例としては、酸化インジウムスズ(ITO)、グラフェン、導電性ポリマー、超薄金属層(例えば、10nm以下の厚さ)などが挙げられる。パターン形成された構造18Aが蓋に取り付けられる場合、蓋は核酸分析中に使用される励起及び発光波長に対して透明であるため、電極24Aは透明であってもなくてもよい。
【0064】
電極24A、24Bは、任意の好適な厚さを有し得る。例として、各電極24A、24Bの厚さは、10nm以下(例えば、透明性が所望される場合)又は50nm以上(例えば、200nm、500nm、1μm、25μmなど)であってもよい。より厚い電極24A、24Bは、より機械的に堅牢であり、化学的安定性を示すことができる。再生プロセスが電極表面の剥離を伴う場合、電極24A、24Bは各々少なくとも50μmの厚さを有する。
【0065】
図2Aの例では、各電極24A、24Bはパターン形成されておらず、したがって、それぞれの基材22A、22B上の連続層である。電極24A、24Bは、好適な堆積技術(例えば、スパッタリング)を使用して基材12上に堆積されてもよく、又は、例えば接着剤を使用して基材22A、22Bに取り付けられる予め形成されたシートであってもよい。
【0066】
図2Aの構造では、各パターン形成された絶縁材料26A、26Bは、作用電極24A、24Bの上に位置付けられる。各パターン形成された絶縁材料26A、26Bは、間隙領域30A、30Bによって分離された凹部28A、28Bを画定する。
【0067】
凹部28A、28B及び間隙領域30A、30Bを形成するために選択的に堆積、又は堆積及びパターン形成することができる任意の電気絶縁材料を、パターン形成された絶縁材料26A、26Bに使用できることを理解されたい。
【0068】
一例では、パターン形成された絶縁材料26A、26Bは無機酸化物である。無機酸化物は、蒸着、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷を介して作用電極24A、24Bに選択的に適用され得る。好適な無機酸化物の例としては、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ハフニウムなどが挙げられる。
【0069】
別の例では、パターン形成された絶縁材料26A、26Bは樹脂である。樹脂は、作用電極24A、24Bに適用され、次いでパターン形成されてもよい。好適な堆積技術としては、化学蒸着、ディップコーティング、ダンクコーティング(dunk coating)、スピンコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンシング、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷などが挙げられる。好適なパターン形成技術としては、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)、スタンピング技術、エンボス加工技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術などが挙げられる。
【0070】
好適な樹脂のいくつかの例としては、多面体オリゴマーシルセスキオキサン系樹脂(例えば、Hybrid PlasticsからのPOSS(登録商標))、非多面体オリゴマーシルセスキオキサンエポキシ樹脂、ポリ(エチレングリコール)樹脂、ポリエーテル樹脂(例えば、開環エポキシ)、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、非晶質フルオロポリマー樹脂(例えば、BellexからのCYTOP(登録商標))、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
本明細書で使用されるとき、「多面体オリゴマーシルセスキオキサン」という用語は、シリカ(SiO2)とシリコーン(R2SiO)との間のハイブリッド中間体(例えば、RSiO1.5)である化学組成物を指す。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの一例は、Kehagias et al.,Microelectronic Engineering 86(2009),pp.776-778に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が組み込まれる。一例では、組成物は、化学式[RSiO3/2]nを有する有機シリコン化合物であり、R基は同じであっても異なってもよい。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの例示的なR基としては、エポキシ、アジド(azide)/アジド(azido)、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、テトラジン、アクリレート、及び/若しくはメタクリレート、又は、更に、例えば、アルキル、アリール、アルコキシ、及び/若しくはハロアルキル基を含む。多面体オリゴマーシルセスキオキサン樹脂の例としては、モノマー単位として1つ以上の異なるケージ又はコア構造を挙げることができる。
【0072】
上述したように、パターン形成された絶縁材料26A、26Bは、凹部28A、28Bを画定する。規則的、反復的、及び非規則的なパターンを含む、凹部28A、28Bの多くの異なるレイアウトが想定され得る。一例では、凹部28A、28Bは、密に充填して密度を向上させるために六角形の格子状に配置される。他のレイアウトは、例えば、長方形のレイアウト、三角形のレイアウトなどを含んでもよい。いくつかの例では、レイアウト又はパターンは、行及び列をなしているx-yフォーマットであり得る。他のいくつかの例では、レイアウト又はパターンは、凹部28A、28B及び/又は間隙領域30A、30Bの繰り返し配置であり得る。更に他の例では、レイアウト又はパターンは、凹部28A、28B及び/又は間隙領域30A、30Bのランダムな配置であり得る。
【0073】
レイアウト又はパターンは、画定された領域内の凹部28A、28Bの密度(数)に関して特徴付けることができる。例えば、凹部28A、28Bは、1mm2当たりおよそ200万の密度で存在し得る。例えば、1mm2当たり約100、1mm2当たり約1,000、1mm2当たり約10万、1mm2当たり約100万、1mm2当たり約200万、1mm2当たり約500万、1mm2当たり約1000万、1mm2当たり約5000万、又はそれ以上若しくはそれ以下の密度を含む、異なる密度に調整され得る。密度は、上記の範囲から選択される、下限値のうちの1つと上限値のうちの1つとの間であり得、又は他の密度(所与の範囲外)が使用され得ることを更に理解されたい。例として、高密度アレイは、約100nm未満で分離された凹部28A、28Bを有するものとして特徴付けられ得、中密度アレイは、約400nm~約1μmで分離された凹部28A、28Bを有するものとして特徴付けられ得、低密度アレイは、約1μmを超えて分離された凹部28A、28Bを有するものとして特徴付けられ得る。
【0074】
凹部28A、28Bのレイアウト若しくはパターンは、平均ピッチ、又は1つの凹部28A、28Bの中心から隣接する凹部28A、28Bの中心までの間隔(中心間間隔)、又は1つの凹部28A、28Bの右縁部から隣接する凹部28A、28Bの左縁部までの間隔(縁部間間隔)に関して、更に若しくは代替的に特徴付けられてもよい。パターンは、平均ピッチ周辺の変動係数が小さくなるように規則的である場合もあれば、パターンが不規則である場合もあり、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、又は約100μmであってもよい。特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択される、低い方の値のうちの1つと高い方の値のうちの1つとの間であり得る。一例では、凹部28A、28Bは、約1.5μmのピッチ(中心間間隔)を有する。平均ピッチ値の例を提供してきたが、他の平均ピッチ値も使用され得ることを理解されたい。
【0075】
各凹部28A、28Bのサイズは、その容積、開口面積、深さ、及び/又は直径によって特徴付けられ得る。例えば、容積は、約1×10-3μm3~約100μm3の範囲に及び、例えば、約1×10-2μm3、約0.1μm3、約1μm3、約10μm3、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。別の例では、開口部面積は、約1×10-3μm2~約100μm2の範囲に及び、例えば、約1×10-2μm2、約0.1μm2、約1μm2、少なくとも約10μm2、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。更に別の例では、深さは、約0.1μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約0.5μm、約1μm、約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。更に別の例では、直径又は長さ及び幅は、約0.1μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約0.5μm、約1μm、約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。
【0076】
図2Aの構造では、各作用電極24A、24Bの表面32A、32Bは、それぞれの凹部28A、28Bの各々で露出される。
【0077】
いくつかの例では、露出した作用電極表面32A、32Bは修飾されていない。「修飾されていない」とは、電極材料が官能化されていないか、あるいは非ネイティブな表面基を付加するような処理が施されていないことを意味する。露出した作用電極表面32A、32Bが修飾されていない場合、参照番号34A、34Bで破線で示される部分は、パターン形成された構造18A、18Bに存在しないことを理解されたい。これらの例では、作用電極表面32A、32Bにおけるネイティブな官能基は、所望の表面化学を含むか、又は所望の表面化学に付着することができる複合体の連結部分に付着することができる。
【0078】
他の例では、露出した作用電極表面32A、32Bは、遷移金属錯体結合対の一方のメンバー34A、34Bで修飾される。遷移金属錯体結合対は、遷移金属錯体と、遷移金属錯体に結合することができる別の実体(例えば、追加の配位子)とを含む。遷移金属錯体は、中心原子又はイオン(通常は金属性である)、及び結合分子又はイオンの周囲配列(配位子として知られる)を含む。
【0079】
遷移金属錯体は、それらの配位圏を変化させることができ、酸化の程度に基づいて収容され得る配位子の数が変化する。
図2Aに示される例では使用される遷移金属錯体は、作用電極24A、24Bを使用して生成される電界に応答して可逆的に酸化及び還元され得る。したがって、遷移金属錯体結合対のこの例は、電気化学的に応答性の遷移金属錯体結合対と称され得る。
【0080】
いくつかの場合では、遷移金属錯体は、露出した作用電極表面32A、32Bに結合したメンバー34A、34Bであり、配位子は、表面化学の一部として導入される。一例として、電気化学的に応答性の遷移金属錯体結合対は、フェロセニル-ポリ(プロピレンイミン)デンドリマー(遷移金属錯体)及びβ-シクロデキストリン(配位子)を含み、フェロセニル-ポリ(プロピレンイミン)デンドリマーは、露出した作用電極表面32A、32Bに結合したメンバー34A、34Bである。他の例では、配位子は、露出した作用電極表面32A、32Bに結合したメンバー34A、34Bであり、遷移金属錯体は、表面化学の一部として導入される。一例として、電気化学的に応答性の遷移金属錯体結合対は、亜鉛ポルフィリン複合体(遷移金属錯体)及びピリジン(配位子)を含み、ピリジンは、露出した作用電極表面32A、32Bに結合したメンバー34A、34Bである。
【0081】
露出した作用電極表面32A、32Bへのメンバー34A、34Bの付着は、共有結合又は非共有結合を含んでもよい。一例として、ピリジンジアゾニウム又は他の好適な化学的に官能化されたピリジンは、炭素系電極、酸化インジウムスズ電極、白金電極、パラジウム電極、又は金電極の表面基に結合することができる。別の例として、フェロセニル-ポリ(プロピレンイミン)デンドリマーは、チオール、チオレート、アミン、ブロモ、又はヨードリンカーを介して金電極に付着することができる。フェロセニル-ポリ(プロピレンイミン)デンドリマーのイミンはまた、任意の求核性作用電極表面32A、32Bと反応してもよい。更に、ITO作用電極は、メンバー34A、34Bと反応することができる官能基を有する任意のトリメトキシ、トリエトキシ、又はクロロオルガノシランでコーティングすることができる。一例は、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)であるが、アミンは、カルボン酸、チオール、アルデヒド、アクリレートなどで置き換えることができる。更に別の例として、ピリジンは、シランリンカーを介して酸化インジウムスズ電極に付着させることができる。特定の例として、作用電極表面32A、32Bは、第1のメンバー34A、34B及びシランリンカーを含む2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジンでコーティングされる。非共有結合(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン)を、非共有結合対のいずれのメンバーも、使用される遷移金属錯体の配位子として作用することができない限り、使用することができる。
【0082】
図2Aの構造では、作用電極24A、24Bは、対電極40に電気的に接続される。対電極40は、作用電極24A、24Bの露出表面32A、32Bが流体と接触するのと同時に、(フローチャネル12に導入された)流体と接触することを可能にする任意の位置にあってもよい。流体は、それぞれの作用電極24A、24Bを対電極40にブリッジする。
図2Aに示される例では、対電極40は、入口フルイディクス36と流体接触して位置付けられる。例えば、対電極40は、流体入口14に動作可能に接続された流体ラインに組み込まれる。この例では、流体はフローチャネル12を満たし、対電極40を含む流体ライン内に延びる。他の例では、対電極40は、それぞれの作用電極24A、24Bから物理的に分離されるように、基材22A、22Bのうちの1つの上に位置付けられてもよい。
【0083】
図2Aに示される例では、単一の対電極40が、作用電極24A、24Bの両方に電気的に接続される。この例では、対電極40と作用電極の一方、例えば24Aとの間にバイアスを印加して、露出表面32Aにおいて表面化学を付着又は脱着させることができ、次いで、対電極40と作用電極の他方、例えば24Bとの間にバイアスを印加して、露出表面32Bにおいて表面化学を付着又は剥離させることができる。他の例では、それぞれの対電極は、作用電極24A、24Bの各々に個別に電気的に取り付けられてもよい。
【0084】
本明細書に開示される表面化学のいくつかは、電気トリガなしで付着され得ることを理解されたい。例えば、金属配位化学又は他の非電気的に誘起された反応を利用する表面化学は、電気的バイアスなしで反応し、次いで、電気的バイアスは、脱離、分解、解離など(例えば、酸化又は還元を介して)を引き起こすために使用される。
【0085】
対電極40に好適な材料の例としては、白金、銀、金、真鍮、導電性炭素材料(例えば、グラファイト)、銅、チタン、パラジウム、ルテニウム、銀/塩化銀、導電性有機材料などが挙げられる。
【0086】
作用電極24A、24B及び対電極40は、所望の電気バイアスを選択的に印加するように動作可能なコントローラ(図示せず)に電気的に接続される。コントローラは、(電流及び電圧レベルを読み取るための)ポテンショスタットを含んでもよい。
【0087】
図2Aに示されるパターン形成された構造18A、18Bのいくつかの例は、第2の作用電極42A、42Bを含む。第2の作用電極42A、42Bは、パターン形成された絶縁材料26A、26Bの上にそれぞれ位置付けられ、したがって、作用電極24A、24Bから物理的に隔離される。
【0088】
第2の作用電極42A、42Bは、作用電極24A、24Bについて本明細書に記載される材料のいずれかであってもよい。第2の作用電極42A、42Bは、それぞれの間隙領域30A、30Bに適用され、露出表面32A、32Bには適用されない。第2の作用電極42A、42Bは、選択的堆積プロセスを使用して堆積されてもよく、又はそれらは、例えば接着剤を使用して、それぞれの間隙領域30A、30Bに取り付けられる予め形成されたパターン形成シートであってもよい。
【0089】
図2Aに示される例では、対電極40はまた、第2の作用電極42A,42Bの両方に電気的に接続される。この例では、対電極40と作用電極の一方、例えば24Aとの間、及び対電極40と第2の作用電極の対応する一方、例えば42Aとの間に、それぞれのバイアスを同時に印加することができる。例えば、作用電極、例えば24Aに印加される吸着バイアスは、露出表面32Aで表面化学の付着を開始し、一方、第2の作用電極42Aに同時に印加される反対のバイアス(脱離バイアス)は、間隙物質(interstitials)30Aを清浄に保つために表面化学を反発させる。同様に、それぞれのバイアスは、対電極40と作用電極の他方、例えば24Bとの間、及び対電極40と第2の作用電極の対応する一方、例えば42Bとの間に同時に印加することができる。作用電極、例えば24Bに印加される吸着バイアスは、露出表面32Bにおける表面化学の付着を開始し、一方、第2の作用電極42Bに同時に印加される反対のバイアス(脱離バイアス)は、間隙物質30Bを清浄に保つために表面化学を反発させる。表面化学による作用電極24A、24Bの官能化の間に第2の作用電極42A、42Bに脱離電圧バイアスを印加することは、間隙領域30A、30Bが表面化学を含まないままであることを保証するのに役立つ。電極表面32A、32Bからの表面化学の脱着又は脱離中に、同じ又は同様の脱離バイアスを作用電極24A、24B及び第2の作用電極42A、42Bに印加することもできる。
【0090】
したがって、
図2Aの例のうちのいくつかでは、フローセルは、基材22A、22B;基材22A、22Bの上に位置付けられた第1の作用電極24A、24B;第1の作用電極24A、24Bの上に位置付けられたパターン形成された絶縁材料26A、26Bであって、パターン形成された絶縁材料26A、26Bは、間隙領域30A、30Bによって分離された凹部28A、28Bを画定し、第1の作用電極24A、24Bの表面32A、32Bは、凹部28A、28Bの各々で露出され、表面32A、32Bは、修飾されていないか、又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bで修飾されている、パターン形成された絶縁材料26A、26B;間隙領域30A、30Bの上に位置付けられた第2の作用電極42A、42B;第1の作用電極24A,24B及び第2の作用電極42A,42Bの各々に電気的に接続された対電極40;第1の作用電極24A、24Bの表面32A、32B及び第2の作用電極42A、42Bと流体連通するフローチャネル12;第1の作用電極24A、24B、第2の作用電極42A、42B、及び対電極40に電気的に接続されたコントローラを含む。
【0091】
ここで
図2Bを参照すると、フローチャネル12内の構造の別の例は、蓋44に取り付けられた1つのパターン形成された構造18Cを含む。この例では、フローチャネル12は、パターン形成された構造18Cと蓋44との間に形成される。別の例(図示せず)では、(
図2Aに示される例と同様に)2つのパターン形成された構造18Cが互いに取り付けられてもよい。この他の例では、フローチャネル12は、2つのパターン形成された構造18Cの間に形成される。
【0092】
蓋44は、パターン形成された構造18Cに向けられる励起光に対して透明な任意の材料であってもよい。例として、蓋44は、ガラス(例えば、ホウケイ酸、溶融シリカなど)、プラスチックなどであり得る。好適なホウケイ酸ガラスの市販の例は、Schott North America,Inc.から入手可能なD 263(登録商標)である。好適なプラスチック材料、すなわち、シクロオレフィンポリマーの市販の例は、Zeon Chemicals L.P.から入手可能なZEONOR(登録商標)製品である。
【0093】
蓋44は、スペーサ層20を介してパターン形成された構造18Cに取り付けることができる。スペーサ層20は、本明細書に記載される材料のいずれかであってもよい。パターン形成された構造18C及び蓋は、レーザ結合、拡散結合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、又は当該技術分野で知られている他の方法などの任意の好適な技術を使用して結合することができる。この例では、透明な蓋44は、基材22Dに接続され、フローチャネル12の表面を形成する。
【0094】
図2Bに示す構造では、パターン形成された構造18Cは、基材22Cと、基材22C上にパターン形成されて間隙領域30Cによって分離された凹部28Cを画定する作用電極24Cであって、作用電極24Cの表面32Cが凹部28Cの各々で露出されている作用電極24Cと、間隙領域30C上に位置付けられたパターン形成された絶縁材料26Cとを含む。
【0095】
この例では、基材22Cは単層構造である。基材22Cは電気絶縁性であり、蓋44が透明であるため、透明であってもなくてもよい。基材22A、22Bについて本明細書に記載される例のいずれも、基材22Cに使用することができる。基材22Cの他の好適な例としては、ポリプロピレン、ポリウレタン、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(COP)(例えば、ZeonからのZEONOR(登録商標)、ポリイミドなど)、セラミック/セラミック酸化物、ケイ酸アルミニウム、シリコン、及び窒化シリコン(Si3N4)が挙げられる。2つのパターン形成された構造18Cが互いに取り付けられる場合、基材22Cは電気絶縁性で透明である。基材22Cの形態は、本明細書に開示される例のいずれであってもよい。
【0096】
図2Bにおいて、入口14及び出口16は、フローチャネル12の対向する側に示されている。この位置決めは、入口14及び出口16がフローチャネル12の対向する端部にある
図1に示されるものとは異なる。したがって、
図2Bの断面図は、
図1には示されていない変形例を含む。本明細書に記載されるように、入口14及び出口16は、望ましい流体の流れを可能にするフローチャネル12の長さ及び幅に沿った任意の場所に位置付けられてもよい。
【0097】
図2Bの入口14及び出口16の図は、入口14及び出口16が蓋44を通してどのように形成され得るかの理解を容易にするために含まれる。入口14及び出口16は、フローチャネル12を入口フルイディクス36(例えば、チューブ、流体ライン、試薬リザーバなど)及び出口フルイディクス38(例えば、チューブ、流体ライン、廃棄物容器など)に接続するそれぞれの貫通孔である。入口14及び出口16は、両方とも蓋44又は基材22Cに形成されてもよく、あるいは一方(例えば、入口14)が蓋44に形成され、他方(例えば、出口16)が基材22Cに形成されてもよい。
【0098】
図2Bの構造では、作用電極24Cは基材22C上に位置付けられる。作用電極24Cは、電極24A、24Bについて本明細書に記載される電極材料のいずれかであってもよい。パターン形成された構造18Cが蓋44に取り付けられる場合、作用電極24Cは透明であってもなくてもよい。パターン形成された構造18Cが別のパターン形成された構造18Cに取り付けられる場合、作用電極24Cは、本明細書に記載される透明電極材料のいずれかであるべきである。電極24Cはまた、任意の好適な厚さを有してもよい。
【0099】
図2Bの例では、作用電極24Cは、間隙領域30Cによって分離された凹部28Cを画定するようにパターン形成される。パターン形成された作用電極24Cは、例えば接着剤を使用して基材22Cに取り付けられる予め形成されたグリッドであってもよく、又は好適な技術を使用して所望のパターンで基材22C上に堆積されてもよい。一例として、パターン形成された作用電極24Cを生成するための付加的な技法は、所望の電極材料のフォトリソグラフィ及びスパッタリングを伴ってもよい。別の例として、パターン形成された作用電極24Cを生成するためのサブトラクティブ技法は、所望の電極材料のブランケット堆積と、それに続くフォトリソグラフィ及びエッチングとを伴ってもよい。パターンは、間隙領域30Cを形成するためのより厚い部分と、間隙領域30Cの間に凹部28Cを形成するためのより薄い部分とを含むことができる。
図2Aの凹部28A、28Bに関して本明細書に記載されるパターン、レイアウト、及び寸法のいずれも、
図2Bに示される凹部28Cに使用することができる。
【0100】
図2Bの構造では、パターン形成された絶縁材料26Cは、作用電極24Cの間隙領域30Cの上に位置付けられる。間隙領域30C上に選択的に堆積させることができるか、又は堆積させてパターン形成することができる(凹部28C内の表面32C上には堆積させない)任意の電気絶縁材料を、パターン形成された絶縁材料26Cに使用できることを理解されたい。パターン形成された絶縁材料26A、26Bの材料のいずれも、パターン形成された絶縁材料26Cに使用することができる。
【0101】
図2Bの構造では、パターン形成された作用電極24Cの表面32Cは、凹部28Cの各々で露出される。いくつかの例では、露出した作用電極表面32Cは、本明細書に記載されるように修飾されていない。他の例では、露出した作用電極表面32Cは、本明細書に記載される遷移金属錯体結合対の1つのメンバー34C(破線で示される)で修飾される。
【0102】
図2Bの構造では、パターン形成された作用電極24Cは、対電極40に電気的に接続される。本明細書で言及されるように、対電極40に好適な材料の例としては、白金、銀、及び金が挙げられる。対電極40は、パターン形成された作用電極24Cの露出表面32Cが流体と接触するのと同時に、対電極40が(フローチャネル12に導入される)流体と接触することを可能にする任意の位置にあってもよい。流体は、パターン形成された作用電極24Cを対電極40にブリッジする。
図2Bに示される例では、対電極40は、入口フルイディクス36と流体接触して位置付けられる。この例では、透明な対電極40は、代替的に、蓋44上に直接パターン形成され得る。
【0103】
対電極40とパターン形成された作用電極24Cとの間に印加されるバイアスは、露出表面32Cにおいて表面化学を付着又は脱着させる。
【0104】
フローセル10が2つの対向するパターン形成された構造18C(
図2Aに示される例と同様)を含む場合、単一の対電極40がそれぞれのパターン形成された構造18Cのパターン形成された作用電極24Cに電気的に接続され得ることを理解されたい。それぞれのパターン形成された構造18Cの露出表面32Cにおいて表面化学を付着又は脱着するために、順次バイアスが印加されてもよい。
【0105】
作用電極24C及び対電極40は、所望の電気バイアスを選択的に印加するように動作可能なコントローラ(図示せず)に電気的に接続される。この例では、コントローラはポテンショスタットを含んでもよい。
【0106】
図2Bに示されるパターン形成された構造18Cのいくつかの例は、第2の作用電極42Cを含む。第2の作用電極42Cは、パターン形成された絶縁材料26Cの上に位置付けられ、したがって、パターン形成された作用電極24Cから物理的に隔離される。
【0107】
第2の作用電極42Cは、作用電極24A、24B及びパターン形成された作用電極24Cについて本明細書に記載される材料のいずれかであってもよい。第2の作用電極42Cは、パターン形成された絶縁材料26Cに適用され、露出表面32Cには適用されない。第2の作用電極42Cは、選択的堆積プロセスを使用して堆積されてもよく、又は、例えば接着剤を使用して、パターン形成された絶縁材料26Cに取り付けられる予め形成されたパターン形成されたシートであってもよい。
【0108】
図2Bに示される例では、対電極40はまた、第2の作用電極42Cに電気的に接続される。この例では、対電極40とパターン形成された作用電極、例えば24Cとの間、及び対電極40と第2の作用電極、例えば42Cとの間にそれぞれのバイアスを同時に印加することができる。例えば、パターン形成された作用電極、例えば24Cに印加される吸着バイアスは、露出表面32Cで表面化学の付着を開始し、一方、第2の作用電極42Cに同時に印加される反対のバイアス(脱離バイアス)は、間隙物質30Cを清浄に保つために表面化学を反発させる。電極表面32Cからの表面化学の脱着又は脱離中に、同じ又は同様の脱離バイアスを作用電極24C及び第2の作用電極42Cに印加することもできる。
【0109】
したがって、
図2Bの例のうちのいくつかでは、フローセル10は、基材22C;基材22C上に位置付けられた第1のパターン形成された作用電極24Cであって、第1のパターン形成された作用電極24Cは、間隙領域30Cによって分離された凹部28Cを画定し、第1のパターン形成された作用電極24Cの表面32Cは、凹部28Cの各々で露出され、表面32Cは、修飾されていないか、又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34Cで修飾されている、第1のパターン形成された作用電極24C;間隙領域30Cの上に位置付けられたパターン形成された絶縁材料26C;パターン形成された絶縁材料26Cの上に位置付けられた第2のパターン形成された作用電極42C;第1のパターン形成された作用電極24C及び第2のパターン形成された作用電極42Cの各々に電気的に接続された対電極40;第1のパターン形成された作用電極24C及び第2のパターン形成された作用電極42Cの表面32Cと流体連通するフローチャネル12と、第1のパターン形成された作用電極24C、第2のパターン形成された作用電極42C、及び対電極40に電気的に接続されたコントローラを含む。
【0110】
ここで
図2Cを参照すると、フローチャネル12内の構造の一例は、互いに取り付けられた2つのパターン形成されていない構造46A、46Bを含む。フローチャネル12は、2つのパターン形成されていない構造46A、46Bの間に形成される。別の例(図示せず)では、パターン形成されていない構造46Aは、蓋44に取り付けられてもよい。この他の例では、フローチャネル12は、パターン形成されていない構造46Aと蓋44との間に形成される。
【0111】
パターン形成されていない構造46A、46Bの各々は、基材22D、22Eと、基材22D、22Eの一部の上に位置付けられた作用電極24A、24Bとを含む。この例では、各作用電極24A、24Bの表面32A、32B全体が露出している。パターン形成されていない構造46A、46Bは、間隙領域によって分離された凹部を含まない。
【0112】
基材22D、22Eは、単層構造である。各基材22D、22Eは電気絶縁性であり、いくつかの例では、核酸分析中に使用される励起及び発光波長に対して透明である。例えば、パターン形成されていない構造46A、46Bが互いに取り付けられる場合、基材22D、22Eは電気絶縁性で透明である。代替的に、パターン形成されていない構造46Aが蓋44に取り付けられる場合、基材22Dは電気絶縁性であるが、蓋44が透明であるので、透明であってもなくてもよい。基材22A、22Bの例は、基材22D、22Eに使用することができる。各基材22D、22Eの形態は、ウエハ、パネル、矩形シート、ダイ、又は任意の他の好適な構成であり得る。
【0113】
図2Cに示される例では、基材22D、22Eは、エッジ領域50A、50Bによって囲まれた凹部領域48A、48Bを有する。凹部領域48A、48Bは、作用電極24A、24Bを取り付けることができる指定領域を提供する。エッジ領域50A、50Bは、2つのパターン形成されていない構造46A、46Bを互いに取り付けることができる、又は1つのパターン形成されていない構造46Aを蓋44に取り付けることができる結合領域を提供する。
【0114】
パターン形成されていない構造46A、46B(又はパターン形成されていない構造46A及び蓋44)は、エッジ領域50A、50Bにおいてスペーサ層20を介して互いに取り付けられてもよい。スペーサ層20は、本明細書に記載される材料のいずれかであってもよい。パターン形成されていない構造46A、46Bは、レーザ結合、拡散結合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、又は当該技術分野で知られている他の方法などの任意の好適な技術を使用して結合することができる。
【0115】
図2Cの構造では、作用電極24A、24Bはそれぞれ、基材22D、22Eの凹部領域48A、48B内に位置付けられる。作用電極24A、24Bは、凹部領域48A、48Bの底面にわたって延在するパターン形成されていない電極である。作用電極24A、24Bは、本明細書に記載される任意の例であってもよい。
【0116】
電極24A、24Bは、好適な堆積技術(例えば、スパッタリング)を使用して基材22D、22Eの凹部領域48A、48B内に堆積されてもよく、又は、例えば、接着剤を使用して凹部領域48A、48Bに取り付けられる予め形成されたシートであってもよい。
【0117】
図2Cにおいて、入口14及び出口16は、フローチャネル12の対向する側に示されている。この位置決めは、入口14及び出口16がフローチャネル12の対向する端部にある
図1に示されるものとは異なる。したがって、
図2Cの断面図は、
図1には示されていない変形例を含む。本明細書に記載されるように、入口14及び出口16は、望ましい流体の流れを可能にするフローチャネル12の長さ及び幅に沿った任意の場所に位置付けられてもよい。
【0118】
図2Cの入口14及び出口16の図は、入口14及び出口16が基材22D、22Eのうちの1つを通してどのように形成され得るかの理解を容易にするために含まれる。入口14及び出口16は、フローチャネル12を入口フルイディクス36(例えば、チューブ、流体ライン、試薬リザーバなど)及び出口フルイディクス38(例えば、チューブ、流体ライン、廃棄物容器など)に接続するそれぞれの貫通孔である。入口14及び出口16は、同じ基材22D又は22Eに形成されてもよく、又は対向する基材に形成されてもよい(例えば、基材22Dにおける入口及び基材22Eにおける出口)。
【0119】
図2Cの構造では、各作用電極24A、24Bの表面32A、32Bは、フローチャネル12にわたって露出される。いくつかの例では、露出した作用電極表面32A、32Bは、本明細書に記載されるように修飾されていない。他の例では、露出した作用電極表面32A、32Bは、本明細書に記載される遷移金属錯体結合対の一方のメンバー34A、34Bで修飾される。
【0120】
図2Cの構造では、作用電極24A、24Bは、対電極40に電気的に接続される。対電極40は、作用電極24A、24Bが流体と接触するのと同時に、それがフローチャネル12に導入される流体と接触することを可能にする任意の位置にあってもよい。流体は、それぞれの作用電極24A、24Bを対電極40にブリッジする。
図2Cに示される例では、対電極40は、凹部領域48Bの側壁に沿ってフローチャネル12内に位置付けられている。
【0121】
図2Cに示される例では、単一の対電極40が、作用電極24A、24Bの両方に電気的に接続される。この例では、対電極40と作用電極の一方、例えば24Aとの間にバイアスを印加して、露出表面32Aにおいて表面化学を付着又は脱着させることができ、次いで、対電極40と作用電極の他方、例えば24Bとの間にバイアスを印加して、露出表面32Bにおいて表面化学を付着又は剥離させることができる。他の例では、それぞれの対電極は、作用電極24A、24Bの各々に個別に電気的に取り付けられてもよい。
【0122】
対電極40に好適な材料の例としては、白金、銀、及び金が挙げられる。
【0123】
作用電極24A、24B及び対電極40は、所望の電気バイアスを選択的に印加するように動作可能なコントローラ(図示せず)に電気的に接続される。コントローラは、ポリヌクレオチドを含み得る。
【0124】
図2Aから
図2Cに示される例のいずれにおいても、第2のパターン形成された構造18B、蓋44、又は第2のパターン形成されていない構造46Bは、透明な対電極40に置き換えられてもよい。この例では、対電極40は、フローチャネル12の表面を形成する透明な対電極である。
【0125】
可視光再生可能なフローセル
フローチャネル12内の構造のいくつかは、フローセル表面の可視光再生のために設計される。2つの例を
図3A及び
図3Bに示す。これらの例では、フローセル10は、フローチャネル12と、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出した表面52A、52B、52C、52Dを有する基材22F、22G、22H、22Iとを含み、表面52A、52B、52C、52Dは、遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bで修飾されている。
【0126】
ここで
図3Aを参照すると、フローチャネル12内の構造の別の例は、互いに取り付けられた2つのパターン形成された構造18D、18Eを含む。フローチャネル12は、2つのパターン形成された構造18D、18Eの間に形成される。別の例(図示せず)では、パターン形成された構造18Dは、蓋44に取り付けられてもよい。この他の例では、フローチャネル12は、パターン形成された構造18Dと蓋44との間に形成される。
【0127】
2つのパターン形成された構造18D、18Eは、スペーサ層20を介して取り付けられている。スペーサ層20は、本明細書に記載される材料のいずれかであってもよい。パターン形成された構造18D、18Eは、レーザ結合、拡散結合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、又は当該技術分野で知られている他の方法などの任意の好適な技術を使用して結合することができる。
【0128】
パターン形成された構造18D、18Eの基材22F、22Gは多層構造である。多層構造は、ベース支持体56A、56Bと、ベース支持体56A、56B上のパターン形成された層58A、58Bとを含む。パターン形成された構造18D、18Eが一緒に接着される場合、多層構造の構成要素は、可視光(表面化学の吸収及び/又は脱離のため、並びに核酸分析のために使用される)に対して透明であるか、又は可視光(表面化学の吸収及び/又は脱離のために使用される)及び紫外光(核酸分析のために使用される)の両方に対して透明であるべきである。パターン形成された構造18Dが蓋44に接着される場合、蓋44は可視光及び紫外光の両方に対して透明であるため、多層構造の構成要素は透明であってもなくてもよい。
【0129】
基材22F、22Gのベース支持体56A、56Bの例は、ガラス、UV溶融シリカ、CaF2、MgF2、BaF2、石英、サファイア、及びいくつかのセラミックを含む。ベース支持体56A、56Bの他の好適な材料は、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマー(COC)、及びポリカーボネートなどの硬質透明プラスチックを含む。基材22F、22Gのパターン形成された層58A、58Bの例としては、光開始剤及び/又は光酸発生剤の存在下で光硬化性である多面体オリゴマーシルセスキオキサン系樹脂、アクリレート、メタクリレート、チオール、又はエポキシ官能性樹脂、UV/VIS透明セラミック酸化物(例えば、五酸化タンタル)、酸化インジウムスズ(例えば、赤色/緑色系に適している)、並びに凹部28D、28E及び間隙領域30D、30Eを形成するために選択的に堆積され得るか、又は堆積及びパターン形成され得る任意の材料が挙げられる。多層構造(基材22F、22G)の一例は、ベース支持体56A、56Bとしてガラスを含み、パターン形成された層58A、58Bとして酸化タンタル(例えば、五酸化タンタル又は別の酸化タンタル(TaOx))又は別のUV/VIS透明セラミック酸化物の層を含む。
【0130】
各基材22F、22Gの形態は、ウエハ、パネル、矩形シート、ダイ、又は本明細書に開示される任意の他の適切な構成であり得る。
【0131】
図3Aの例では、パターン形成された層58A、58Bは、間隙領域30D、30Eによって分離された凹部28D、28Eを画定するようにパターン形成される。
図2Aの凹部28A、28Bに関して本明細書に記載されるパターン、レイアウト、及び寸法のいずれも、
図3Aに示される凹部28D、28Eに使用することができる。
【0132】
図3Aの構造では、基材22F、22Gのパターン形成された層58A、58Bは、フローチャネル12に露出される。凹部28D、28E及び間隙領域30D、30E内の表面52A、52Bは、フローチャネル12に露出される。
【0133】
この例では、表面52A、52Bは、遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bで修飾されている。本明細書で言及されるように、遷移金属錯体結合対は、遷移金属錯体と、遷移金属錯体に結合することができる追加の実体(例えば、配位子)とを含む。
図3Aに示される例では、遷移金属錯体は、表面52A、52Bに付着される可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bであり、追加の配位子は、フローセル10に導入される表面化学である。追加の配位子は、遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第2のメンバーであり、可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bに付着することができ、可視光に曝露されると可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bから切断することができる。
【0134】
この遷移金属錯体結合対の一例としては、可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bとしてルテニウム複合体、及び可視光応答性の第2のメンバーとして官能化チオエーテル配位子が挙げられる。ルテニウム複合体は、一般式[Ru(bpy)2L2]2+H2Oを有し、式中、bpyは2,2’-ビピリジンであり、Lは4-アミノピリジンである。遷移金属錯体結合対の遷移金属は、代替的に、オスミウム、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、イリジウムなどであってもよい。遷移金属錯体結合対の配位子は、代替的に、フェナントロリン、キノリン、イミダゾール、インドール、及び様々な他の複素環であってもよい。
【0135】
可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bの表面52A、52Bへの付着は、共有結合又は非共有結合を含み得る。一例として、可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bは、シランリンカー(例えば、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、ノルボルネンシランなど)を介して表面52A、52Bに付着されてもよい。この例では、パターン形成された層58A、58Bは、プラズマアッシング(-OH基を生成するため)、シラン化、次いで研磨に曝されて、シランリンカーを表面52A、52Bに付着させたまま、間隙領域30D、30Eからシランリンカーを除去することができる。非共有結合(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン)を、非共有結合対のいずれのメンバーも、使用される遷移金属錯体の配位子として作用することができない限り、使用することができる。
【0136】
図3Aにおいて、入口14及び出口16は、フローチャネル12の対向する側に示されている。この位置決めは、入口14及び出口16がフローチャネル12の対向する端部にある
図1に示されるものとは異なる。したがって、
図3Aの断面図は、
図1には示されていない変形例を含む。本明細書に記載されるように、入口14及び出口16は、望ましい流体の流れを可能にするフローチャネル12の長さ及び幅に沿った任意の場所に位置付けられてもよい。
【0137】
図3Aの入口14及び出口16の図は、入口14及び出口16がパターン形成された構造18D、18Eのうちの1つを通してどのように形成され得るかの理解を容易にするために含まれる。入口14及び出口16は、フローチャネル12を入口フルイディクス36(例えば、チューブ、流体ライン、試薬リザーバなど)及び出口フルイディクス38(例えば、チューブ、流体ライン、廃棄物容器など)に接続するそれぞれの貫通孔である。入口14及び出口16は、同じ基材22F若しくは22Gに形成されてもよく、又は
図3Aに示されるように対向する基材に形成されてもよい(例えば、基材22Gにおける入口及び基材22Fにおける出口)。
【0138】
ここで
図3Bを参照すると、フローチャネル12内の構造の別の例は、互いに取り付けられた2つのパターン形成されていない構造46C、46Dを含む。フローチャネル12は、2つのパターン形成されていない構造46C、46Dの間に形成される。別の例(図示せず)では、パターン形成されていない構造46Cは、蓋44に取り付けられてもよい。この他の例では、フローチャネル12は、パターン形成されていない構造46Cと蓋44との間に形成される。
【0139】
パターン形成されていない構造46C、46Dの各々は、基材22H、22Iと、基材22H、22Iの表面52C、52Dの一部に取り付けられた可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bとを含む。パターン形成されていない構造46C、46Dは、間隙領域によって分離された凹部を含まない。
【0140】
示される例では、基材22H、22Iは、単層構造である。本明細書に開示されるベース支持体58A、58Bの任意の例は、基材22H、22Iに使用することができる。各基材22H、22Iの形態は、ウエハ、パネル、矩形シート、ダイ、又は任意の他の好適な構成であり得る。
【0141】
図3Bに示される例では、基材22H、22Iは、エッジ領域50C、50Dによって囲まれた凹部領域48C、48Dを有する。凹部領域48C、48Dは、可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bを取り付けることができる指定領域を提供する。エッジ領域50C、50Dは、2つのパターン形成されていない構造46C、46Dを互いに取り付けることができる、又は1つのパターン形成されていない構造46Cを蓋44に取り付けることができる結合領域を提供する。
【0142】
パターン形成されていない構造46C、46D(又はパターン形成されていない構造46C及び蓋44)は、エッジ領域50C、50Dにおいてスペーサ層20を介して互いに取り付けられてもよい。スペーサ層20は、本明細書に記載される材料のいずれかであってもよい。パターン形成されていない構造46C、46Dは、レーザ結合、拡散結合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、又は当該技術分野で知られている他の方法などの任意の好適な技術を使用して結合することができる。
【0143】
図3Bの構造では、基材22H、22Iの凹部領域48C、48Dは、フローチャネル12に露出される。凹部領域48C、48D内の表面52C、52Dは、フローチャネル12に露出される。
【0144】
この例では、表面52C、52Dは、遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bで修飾されている。可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bの任意の例及び表面52C、52Dへの任意の取付け機構を使用することができる。
【0145】
図3Bにおいて、入口14及び出口16は、フローチャネル12の対向する側に示されている。この位置決めは、入口14及び出口16がフローチャネル12の対向する端部にある
図1に示されるものとは異なる。したがって、
図3Bの断面図は、
図1には示されていない変形例を含む。本明細書に記載されるように、入口14及び出口16は、望ましい流体の流れを可能にするフローチャネル12の長さ及び幅に沿った任意の場所に位置付けられてもよい。
【0146】
図3Bにおける入口14及び出口16の図は、入口14及び出口16がパターン形成されていない構造46C、46Dのうちの1つを通してどのように形成され得るかの理解を容易にするために含まれる。入口14及び出口16は、フローチャネル12を入口フルイディクス36(例えば、チューブ、流体ライン、試薬リザーバなど)及び出口フルイディクス38(例えば、チューブ、流体ライン、廃棄物容器など)に接続するそれぞれの貫通孔である。入口14及び出口16は、同じ基材22H、22Iに形成されてもよく、又は
図3Bに示されるように対向する基材に形成されてもよい(例えば、基材22Iにおける入口及び基材22Hにおける出口)。
【0147】
表面化学複合体
本明細書に開示されるフローセル50は、核酸配列決定のために表面32A、32B、32C、52A、52Bを一時的に官能化する表面化学を受容し付着させることができる。表面化学は、電気化学的に、又は可視光への曝露を介して除去可能である。表面化学の例をここで説明する。
【0148】
表面化学の各例は、複合体を含む。複合体の各例は、作用電極表面32A、32B、32C、52A、52Bのうちの1つ以上に付着することができる連結部分を含む。いくつかの場合では、複合体は、核酸分析に関与し得る他の表面化学のためのリンカーとして機能する。他の例において、複合体は、核酸分析に関与することができる更なる表面化学を含む。好適な複合体の例を、
図4A~
図4Eに示す。
【0149】
複合体60Aの一例を
図4Aに示す。この複合体60Aは、電気化学的に除去可能であり、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cと共に使用することができる。複合体60Aは、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cに付着し、そこから脱着することができる連結部分62Aと、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cに付着しない直交する官能基64とを含む。
【0150】
連結部分62Aは、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cに付着し、そこから脱着することができるので、連結部分62Aは、電極材料及び電極材料のネイティブな官能基に依存する。作用電極24A、24B、24Cが、炭素系電極、酸化インジウムスズ、白金、パラジウム、及び金からなる群から選択される場合、連結部分62Aは、チオール、ジアゾニウム、アルキン、カルベン、アデノシンオリゴヌクレオチド、ジチオエステル、イソニトリル、イソチオシアネート、カルボキシル、アミン、ニトリル、ニトロ、及びトリアルキルシリルからなる群から選択される。これらの連結部分62Aは、好適な反応条件に曝露されたときに、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cのネイティブな官能基に結合することができ、脱離バイアスに曝露されると、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cから脱離することができる。反応条件は、連結部分62A及び作用電極24A、24B、24Cに依存し、いくつかの場合では、反応は、連結部分62Aを導入するために使用される流体中で自発的である。いくつかの例では、これらの連結部分62Aは、i)第1のバイアスの非存在下で、又はii)第1のバイアスに曝露されたときに、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cのネイティブな官能基に結合することができ、i)バイアスに曝露されたときに、又はii)第1のバイアスと反対の第2のバイアスに曝露されたときに、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cから脱着することができる。付着又は脱着のために印加されるバイアスは、0V~+/-3V(0はバイアスの非存在である)の範囲であり得、使用される連結部分62Aに依存する。一例として、負バイアスを印加して、ジアゾニウム基(連結部分62Aとして)を作用電極表面32A、32B、32Cに付着させることができ、正バイアス又はより負のバイアスを脱着に使用することができる。他の例として、連結部分62Aは、バイアスなし(0Vが印加される)で電極表面32A、32B、32Cと自発的に反応することができ、正バイアス又は負バイアスのいずれかで脱着することができる。
【0151】
直交する官能基64は、その反応性が連結部分62Aに対して直交性であり、したがって、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cのネイティブな官能基と反応しないように選択される。直交する官能基64はまた、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cに付加される追加の表面化学の反応性官能基と反応性であるように選択される。直交する官能基64が付着する追加の表面化学は、プライマー官能化ヒドロゲル若しくは粒子又は予めプレクラスター化されたヒドロゲル若しくは粒子であってもよい。例として、直交する官能基64は、追加の表面化学のアルキン(例えば、ジアルキン、歪みアルキン)若しくはテトラジンに共有結合するアジドであってもよく、又は、直交する官能基64は、追加の表面化学の遊離アミン基に共有結合するエポキシであり、又は、直交する官能基64は、活性化されたカルボキシレート(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)であり、これは、追加の表面化学の遊離アミン基に共有結合し、又は、直交する官能基64は、追加の表面化学のヒドラジンに共有結合するアルデヒドであり、又は直交する官能基64は、追加の表面化学のチオエーテルに共有結合するホスホロアミダイトであり、又は、直交する官能基64は、追加の表面化学のチオエーテルに共有結合するアルキル化試薬である。直交する官能基64は、追加の表面化学の反応性官能基と非共有結合を形成することもできる。例えば、直交する官能基64は、追加の表面化学のストレプトアビジンに非共有結合するビオチンであり、又は、直交する官能基64は、追加の表面化学のspyタグに非共有結合するspyキャッチャーである。
【0152】
別の例示的な複合体60Bを
図4Bに示す。この複合体60Bは、電気化学的に除去可能であり、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cと共に使用することができる。複合体60Bは、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cに付着し、そこから脱着することができる連結部分62Aと、捕捉オリゴヌクレオチド66とを含む。
【0153】
連結部分62Aの任意の例が、複合体60Bにおいて使用され得る。
【0154】
捕捉オリゴヌクレオチド66は、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cに付加されることになる追加の表面化学の相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができる一本鎖核酸配列である。捕捉オリゴヌクレオチド66は、約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、又は約12ヌクレオチド~約60ヌクレオチド、又は約15ヌクレオチド~約50ヌクレオチドの範囲の長さを有し得る。
【0155】
更に他の複合体60C、60C’、60C’’を
図4Cに示す。
【0156】
一例では、複合体60Cは、電気化学的に除去可能であり、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cと共に使用することができる。複合体60Cのこの例は、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cに付着し、そこから脱着することができる連結部分62Aと、i)連結部分62Aが付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68とを含む。
【0157】
別の例では、複合体60C’は電気化学的に除去可能であり、電気化学的に応答性の遷移金属錯体結合対の一方のメンバー34A、34Bで修飾された作用電極表面32A、32B、32Cと共に使用することができる。複合体60C’のこの例は、連結部分62Bとして(電気化学的に応答性の遷移金属錯体結合対の)配位子又は遷移金属錯体のいずれかと、i)連結部分62Bが付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68とを含む。
【0158】
更に別の例では、複合体60C’’は、可視光曝露によって除去可能であり、可視光応答性の遷移金属錯体結合対の一方のメンバー54A、54Bで修飾された基材表面52A、52B、52C、52Dと共に使用することができる。複合体60C’’のこの例は、連結部分62Cとして(可視光応答性の遷移金属錯体結合対の)チオエーテル配位子又は遷移金属錯体のいずれかと、i)連結部分62Cが付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68とを含む。
【0159】
連結部分62Aの任意の例が、複合体60Cにおいて使用され得る。連結部分62Aは、ヒドロゲル68の官能基のいずれかに結合され得る。
【0160】
ヒドロゲル68は、液体が吸収される場合に膨潤し、例えば乾燥によって液体が除去される場合に収縮することができる任意のゲル材料であり得る。一例では、ポリマーヒドロゲルは、アクリルアミドコポリマーを含む。アクリルアミドコポリマーのいくつかの例は、以下の構造(I)によって表される:
【0161】
【化2】
式中、
R
Aは、アジド、任意選択で置換アミノ、任意選択で置換アルケニル、任意選択で置換アルキン、ハロゲン、任意選択で置換ヒドラゾン、任意選択で置換ヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意選択で置換テトラゾール、任意選択で置換テトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、硫酸塩、及びチオールからなる群から選択され、
R
BはH又は任意選択で置換アルキルであり、
R
C、R
D、及びR
Eは各々、H及び任意選択で置換アルキルからなる群から独立して選択され、
-(CH
2)
p-の各々は、任意選択で置換され得、
pは1~50の範囲の整数であり、
nは1~50,000の範囲の整数であり、かつ
mは、1~100,000の範囲の整数である。
【0162】
構造(I)によって表されるアクリルアミドコポリマーの一具体例は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド、PAZAM)である。
【0163】
当業者は、構造(I)における繰り返される「n」及び「m」個の特徴の配置が代表的なものであり、モノマーサブユニットがポリマー構造(例えば、ランダム、ブロック、パターン形成、又はそれらの組み合わせ)中に任意の順序で存在し得ることを認識する。
【0164】
アクリルアミドコポリマーの分子量は、約5kDa~約1500kDa又は約10kDa~約1000kDaの範囲であり得るか、あるいは特定の例では、約312kDaであり得る。
【0165】
いくつかの例では、アクリルアミドコポリマーは、線状ポリマーである。他のいくつかの例では、アクリルアミドコポリマーは、軽度に架橋されたポリマーである。
【0166】
他の例では、ゲル材料は、構造(I)の変形であり得る。一例では、アクリルアミドユニットはN,N-ジメチルアクリルアミド
【0167】
【化3】
で置き換えられ得る。この例では、構造(I)のアクリルアミドユニットは、
【0168】
【化4】
で置き換えられ得、式中、R
D、R
E、及びR
Fは、各々H又はC1~C6アルキルであり、R
G及びR
Hは、各々C1~C6アルキルである(アクリルアミドの場合のようにHではない)。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。別の例では、アクリルアミドユニットに加えて、N,N-ジメチルアクリルアミドが使用され得る。この例では、構造(I)は、繰り返される「n」及び「m」個の特徴に加えて、
【0169】
【化5】
を含み得、式中、R
D、R
E、及びR
Fは、各々H又はC1~C6アルキルであり、R
G及びR
Hは、各々C1~C6アルキルである。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。
【0170】
高分子ヒドロゲルの別の例として、構造(I)における繰り返される「n」個の特徴は、構造(II)を有する複素環アジド基を含むモノマーで置換され得、
【0171】
【化6】
式中、R
1は、H又はC1~C6アルキルであり、R
2は、H又はC1~C6アルキルであり、Lは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子を含む線状鎖を含むリンカーであり、その鎖中の炭素原子及び任意の窒素原子上に10個の任意選択の置換基を含み、Eは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子を含む線状鎖であり、その鎖中の炭素原子及び任意の窒素原子上に任意選択の置換基を含み、Aは、H又はC1~C4アルキルがNに付着したN置換アミドであり、Zは、窒素含有複素環である。Zの例としては、単環構造又は縮合構造として存在する5~10炭素含有環員が挙げられる。Zのいくつかの具体的な例としては、ピロリジニル、ピリジニル、又はピリミジニルが挙げられる。
【0172】
更に別の例として、ゲル材料は、構造(III)及び(IV)の各々の繰り返し単位を含み得、
【0173】
【化7】
式中、R
1a、R
2a、R
1b及びR
2bの各々は、水素、任意選択で置換アルキル又は任意選択で置換フェニルから独立して選択され、R
3a及びR
3bの各々は、水素、任意選択で置換アルキル、任意選択で置換フェニル、又は任意選択で置換C7~C14アラルキルから独立して選択され、L
1及びL
2の各々は、任意選択で置換アルキレンリンカー又は任意選択で置換ヘテロアルキレンリンカーから独立して選択される。
【0174】
更に別の例では、アクリルアミドコポリマーは、ニトロキシド媒介重合を使用して形成され、したがって、コポリマー鎖の少なくともいくつかは、アルコキシアミン末端基を有する。コポリマー鎖において、「アルコキシアミン末端基」という用語は、休眠種-ONR1R2を指し、式中、R1及びR2の各々は、同じであっても異なっていてもよく、独立して、直鎖若しくは分枝鎖アルキル、又は環構造であってもよく、酸素原子は、コポリマー鎖の残りに結合している。一部の例では、アルコキシアミンはまた、繰り返しアクリルアミドモノマーの一部に、例えば、構造(I)のRA位に導入されてもよい。したがって、一例では、構造(I)は、アルコキシアミン末端基を含み、別の例では、構造(I)は、アルコキシアミン末端基と、側鎖の少なくともいくつかにアルコキシアミン基とを含む。
【0175】
所望の化学、例えば、リンカー分子62A及びプライマー70、70’で官能化され得る限り、他の分子を使用してヒドロゲル68を形成してもよいことを理解されたい。好適なヒドロゲル68材料のいくつかの例としては、ノルボルネンシラン、アジドシラン、アルキン官能化シラン、アミン官能化シラン、マレイミドシラン、又は所望の化学、例えば、リンカー分子62A及びプライマー70、70’をそれぞれ付着させることができる官能基を有する任意の他のシランなどの官能化シランが挙げられる。好適なヒドロゲル68材料の他の例としては、アガロースなどのコロイド構造、又はゼラチンなどのポリマーメッシュ構造、又はポリアクリルアミドポリマー及びコポリマー、シランフリーアクリルアミド(silane free acrylamide、SFA)、又はアジド分解バージョンのSFAなどの架橋ポリマー構造を有するものが挙げられる。好適なポリアクリルアミドポリマーの例は、アクリルアミドとアクリル酸若しくはビニル基を含むアクリル酸とから、又は[2+2]光付加環化反応を形成するモノマーから合成され得る。好適なヒドロゲル68材料の更に他の例としては、アクリルアミドとアクリレートとの混合コポリマーが挙げられる。本明細書に開示される実施例では、デンドリマー(例えばマルチアーム若しくは星型ポリマー)、星状又は星型ブロックポリマーなどを含む分岐ポリマーなど、アクリルモノマー(例えば、アクリルアミド、アクリレートなど)を含む様々なポリマー構造が利用され得る。例えば、モノマー(例えば、アクリルアミド、触媒を含有するアクリルアミドなど)は、ランダムに又はブロックで、デンドリマーの分岐(アーム)中に組み込まれてもよい。
【0176】
ヒドロゲル68は、ニトロキシド媒介重合(NMP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合などの任意の好適な共重合プロセスを使用して形成されてもよい。
【0177】
プライマー70、70’は、任意のフォワード増幅プライマー及び/又はリバース増幅プライマーであり得る。プライマー70、70’は共に、プライマー70、70’に相補的な末端アダプターを有するライブラリー鋳型の増幅を可能にする。一例として、プライマー70、70’は、P5及びP7プライマーを含む。P5及びP7プライマーの例は、例えばHISEQ(商標)、HISEQX(商標)、MISEQ(商標)、MISEQDX(商標)、MINISEQ(商標)、NEXTSEQ(商標)、NEXTSEQDX(商標)、NOVASEQ(商標)、ISEQ(商標)、GENOME ANALYZER(商標)及び他の装置プラットフォーム上での配列決定のためにIllumina Inc.により販売されている市販のフローセルの表面上で使用される。
【0178】
一例では、P5プライマーは、
P5:5’→3’
AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC(配列番号1)
P7プライマーは、以下のいずれかであり得る:
P7#1:5’→3’
CAAGCAGAAGACGGCATACGAnAT(配列番号2)
P7#2:5’→3’
CAAGCAGAAGACGGCATACnAGAT(配列番号3)
ここで、「n」は、各配列中の8-オキソグアニンである。
【0179】
プライマー70、70’は、5’末端において、ヒドロゲル68の官能基との単一点共有結合が可能な官能基で終端され得る。使用可能な末端プライマーの例としては、アルキン末端プライマー、テトラジン末端プライマー、アジド末端プライマー、アミノ末端プライマー、エポキシ又はグリシジル末端プライマー、チオホスフェート末端プライマー、チオール末端プライマー、アルデヒド末端プライマー、ヒドラジン末端プライマー、ホスホロアミダイト末端プライマー、及びトリアゾリンジオン末端プライマーが挙げられる。いくつかの具体例では、スクシンイミジル(NHS)エステル末端プライマーを、ヒドロゲル68のアミンと反応させてもよいか、アルデヒド末端プライマーを、ヒドロゲル68のヒドラジンと反応させてもよいか、又は、アルキン末端プライマーを、ヒドロゲル68のアジドと反応させてもよいか、又は、アジド末端プライマーを、ヒドロゲル68のアルキン若しくはDBCO(dibenzocyclooctyne、ジベンゾシクロオクチン)と反応させてもよいか、又は、アミノ末端プライマーを、ヒドロゲル68の活性化カルボキシレート基若しくはNHSエステルと反応させてもよいか、又は、チオール末端プライマーを、ヒドロゲル68のアルキル化反応物質(例えば、ヨードアセトアミド若しくはマレイミド)と反応させてもよいか、又は、ホスホロアミダイト末端プライマーを、ヒドロゲル68のチオエーテルと反応させてもよい。いくつかの例を提供してきたが、プライマー70、70’に付着することができ、ヒドロゲル68の官能基に付着することができる官能基を使用してもよいということを理解されたい。
【0180】
上記のように、複合体60C’は、ヒドロゲル68、プライマー70、70’、及び連結部分62Aの代わりに連結部分62Bを含む。ヒドロゲル68及びプライマー70、70’の任意の例を使用することができる。電気化学的に応答性の遷移金属錯体結合対の配位子又は遷移金属錯体のいずれかを、連結部分62Bとして使用することができる。連結部分62Bは、ヒドロゲル68の官能基のいずれかに結合され得る。
【0181】
また、上記のように、複合体60C’’は、ヒドロゲル68、プライマー70、70’、及び連結部分62Aの代わりに連結部分62Cを含む。ヒドロゲル68及びプライマー70、70’の任意の例を使用することができる。連結部分62Cとして、可視光応答性の遷移金属錯体結合対の配位子又は遷移金属錯体のいずれかを使用してもよい。連結部分62Cは、ヒドロゲル68の官能基のいずれかに結合され得る。一具体例では、連結部分62Cはチオエーテルであり、複合体60C’’は、i)チオエーテルが付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68である。
【0182】
更に他の複合体60D、60D’、60D’’を
図4Dに示す。
【0183】
一例では、複合体60Dは、電気化学的に除去可能であり、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cと共に使用することができる。複合体60Dのこの例は、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cに付着し、そこから脱着することができる連結部分62Aと、i)連結部分62Aが付着され、ii)鋳型核酸鎖74のクラスターが付着された粒子72とを含む。
【0184】
別の例では、複合体60D’は電気化学的に除去可能であり、電気化学的に応答性の遷移金属錯体結合対の一方のメンバー34A、34Bで修飾された作用電極表面32A、32B、32Cと共に使用することができる。複合体60D’のこの例は、連結部分62Bとして(電気化学的に応答性の遷移金属錯体結合対の)配位子又は遷移金属錯体のいずれかと、i)連結部分62Bが付着され、ii)鋳型核酸鎖74のクラスターが付着された粒子72とを含む。
【0185】
更に別の例では、複合体60D’’は、可視光曝露によって除去可能であり、可視光応答性の遷移金属錯体結合対の一方のメンバー54A、54Bで修飾された基材表面52A、52B、52C、52Dと共に使用することができる。複合体60D’’のこの例は、連結部分62Cとして(可視光応答性遷移金属錯体結合対の)チオエーテル配位子又は遷移金属錯体のいずれかと、i)連結部分62Bが付着され、ii)鋳型核酸鎖74のクラスターが付着された粒子72とを含む。
【0186】
連結部分62Aの任意の例が、複合体60Dにおいて使用され得る。連結部分62Aは、粒子72の官能基のいずれかに結合され得る。
【0187】
粒子72は、鋳型核酸鎖74のクラスターを生成するために使用される連結部分62A及びプライマー70、70’を付着させることができる官能基を含む任意の好適な材料であってもよい。代替的に、粒子72は、鋳型核酸鎖74のクラスターを生成するために使用される連結部分62A及びプライマー70、70’を付着させることができる官能基を含むヒドロゲル68でコーティングされ得る。
【0188】
粒子72に有用な材料の例としては、タンパク質足場;ガラス(例えば、制御された細孔ガラスビーズ);プラスチック、例えば、アクリル、ポリスチレン、又はスチレンと別の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン又はポリテトラフルオロエチレン(ChemoursからのTEFLON(登録商標));多糖類又は架橋多糖類、例えば、アガロース又は(Cytiva BioprocessからのSEPHAROSE(登録商標));ナイロン;ニトロセルロース;シリコン及び変性シリコンを含むシリカ又はシリカ系材料;常磁性ビーズ;炭素繊維;金属(例えば、金、銀、スズ、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、アルミニウムなど);ドープされた半金属(例えば、ドープされたシリコン);直接バンドギャップ半導体(例えば、ガリウムヒ素);金属複合材(上記金属のうちの2つ以上);又は本明細書に開示されるヒドロゲル68が挙げられる。一例では、粒子72は、シリカ、本明細書に開示されるヒドロゲル68の任意の例、ヒドロゲル68でコーティングされた金属ナノ粒子、又はタンパク質足場からなる群から選択される。
【0189】
粒子72は、例えば、球体、楕円形、微小球、又は規則的若しくは不規則な寸法を有するかどうかに関わらず他の認識された粒子形状として特徴付けられる形状を有することができる。
【0190】
図4Dには示されていないが、粒子72は最初に、表面に付着したプライマー70、70’を有する。この例では、プライマー70、70’は、5’末端において、粒子72の官能基との単一点共有結合が可能な官能基で終端され得る。プライマー70、70’は、
図4Dに示される鋳型核酸鎖74のクラスターを生成するために使用される。
【0191】
粒子72上に鋳型核酸鎖74のクラスターを生成するために、ライブラリー鋳型は、最初に任意の核酸サンプル(例えば、DNAサンプル又はRNAサンプル)から調製され得る。DNA核酸サンプルは、同様にサイズ決定された(例えば、1000bp未満の)一本鎖DNA断片に断片化されてもよい。RNA核酸サンプルは、相補的DNA(cDNA)を合成するために使用することができ、cDNAは、同様にサイズ決定された(例えば、1000bp未満の)一本鎖cDNA断片に断片化されてもよい。調製中に、アダプターが、断片のいずれかの末端に追加され得る。還元サイクル増幅により、粒子72上のプライマー70、70’に相補的な配列決定プライマー結合部位、インデックス、及び領域などの異なるモチーフがアダプターに導入され得る。いくつかの例では、単一の核酸サンプルからの断片は、断片に追加された同じアダプターを有する。最終的なライブラリー鋳型は、DNA又はcDNA断片と、両端にアダプターと、を含む。DNA又はcDNA断片は、配列決定しようとする最終ライブラリー鋳型の一部分を表す。
【0192】
複数のライブラリー鋳型を粒子懸濁液に導入することができ、この粒子懸濁液は、液体キャリアと、プライマー70、70’が付着された粒子72とを含む。複数のライブラリー鋳型は、例えば、2種類のプライマー70、70’のうちの1つにハイブリダイズする。
【0193】
粒子72上の鋳型核酸鎖の増幅を開始して、鋳型鎖74のクラスターと複合体60Dを形成することができる。一例では、増幅はクラスター生成を含む。クラスター生成の一例では、ライブラリー鋳型は、高忠実度DNAポリメラーゼを使用して3’伸長によって、ハイブリダイズされたプライマーからコピーされる。元のライブラリー鋳型は変性され、粒子72の全周にコピーを固定したままにする。固定化されたコピーを増幅するために、等温ブリッジ増幅又は他の何らかの形態の増幅が使用され得る。例えば、コピーされた鋳型は、ループオーバーして隣接する相補的なプライマーにハイブリダイズし、ポリメラーゼは、コピーされた鋳型をコピーして二本鎖ブリッジ構造を形成し、当該構造は、変性して2本の一本鎖を形成する。これらの2本の鎖は、ループオーバーして隣接する相補的なプライマーにハイブリダイズし、再度伸長して、2つの新しい二本鎖ループを形成する。このプロセスを、等温変性及び増幅のサイクルによって各鋳型コピーに対して繰り返して、粒子72上の密集したクローンクラスターを作り出す。二本鎖ブリッジ構造の各クラスターが変性される。一例では、逆鎖は、特異的塩基切断によって除去され、順方向鋳型鎖を残す。クラスター化は、粒子72上に固定されたいくつかの鋳型鎖74の形成をもたらす。このクラスター化の例はブリッジ増幅と称され、この増幅は実行できる増幅の1つの例である。他の増幅技術が使用され得るということを理解されたい。
【0194】
上記のように、複合体60D’は、粒子72、鋳型鎖74、及び連結部分62Aの代わりに連結部分62Bを含む。粒子72及び鋳型鎖74の任意の例を使用することができる。電気化学的に応答性の遷移金属錯体結合対の配位子又は遷移金属錯体のいずれかを、連結部分62Bとして使用することができる。連結部分62Bは、粒子72の表面の官能基を介して粒子72に結合してもよい。
【0195】
また、上記のように、複合体60D’は、粒子72、鋳型鎖74、及び連結部分62Aの代わりに連結部分62Cを含む。ヒドロゲル68及びプライマー70、70’の任意の例を使用することができる。連結部分62Cとして、可視光応答性の遷移金属錯体結合対の配位子又は遷移金属錯体のいずれかを使用してもよい。連結部分62Cは、ヒドロゲル68の官能基のいずれかに結合され得る。一具体例では、連結部分62Cはチオエーテルであり、複合体60D’は、i)チオエーテルが付着され、ii)鋳型核酸鎖74のクラスターが付着されたヒドロゲル粒子72である。
【0196】
更に別の複合体60Eを
図4Eに示す。複合体60Eは、可視光曝露によって除去可能であり、可視光応答性の遷移金属錯体結合対の一方のメンバー54A、54Bで修飾された基材表面52A、52B、52C、52Dと共に使用することができる。複合体60Eのこの例は、連結部分62Cとして(可視光応答性遷移金属錯体結合対の)チオエーテル配位子と、i)配位子及びii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68’で官能化された金属ナノ粒子73とを含む。
【0197】
この例では、金属ナノ粒子73は、金、銀、スズ、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、アルミニウムなどであってもよく、ヒドロゲル68’は、本明細書に記載されるヒドロゲル68の任意の例であってもよく、プライマー70、70’は、本明細書に記載される任意の例であってもよい。
【0198】
付着したプライマー70、70’と共に示される複合体60C~60Eのいずれも、フローセル10に導入される前に、フローセル外でクラスター化されるか、又は部分的にクラスター化されて、鋳型核酸鎖74を生成し得ることを理解されたい。部分的なクラスター化により、金属ナノ粒子73が鋳型核酸鎖74で完全に覆われないように増幅サイクルが制御される。同様に、鋳型鎖74と共に示される複合体60C~60Eのいずれかは、代わりにプライマー70、70’を含み得る。これらの例は、鋳型核酸鎖74を生成するためにフローセル上でクラスター化され得る。
【0199】
なお更に、複合体60A~60Eのいずれにもポリメラーゼが付着していてもよい。付着したポリメラーゼは、単一分子センシング動作において望ましい場合がある。任意の好適なポリメラーゼ及び連結分子が、これらの例において使用され得る。
【0200】
フローセル表面を電気化学的に再生する方法
図2A~
図2Cに示されるフローセル10の例のいずれも、作用電極表面32A、32B、32Cが、本明細書に開示される複合体60の一例を使用して一時的に修飾され、電気化学を使用して再生可能である方法において使用され得る。
【0201】
一例では、本方法は、一般に、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出した表面32A、32B、32Cを有する作用電極24A、24B、24Cを含むフローセル10のフローチャネル12に第1の流体を導入することを含み、表面32A、32B、32Cは、修飾されていないか、又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bで修飾されており、それによって、第1の流体中に存在する複合体60A、60B、60C、60C’、60D、60D’の連結部分62A、62Bは、複合体60A、60B、60C、60C’、60D、60D’を表面32A、32B、32Cに化学的に付着させて、作用電極24A、24B、24Cの一時的に修飾された表面を形成することと、一時的に修飾された表面の複合体60A、60B、60C、60C’、60D、60D’を伴うセンシング動作を行うことと、連結部分62A、62Bの脱離電圧を作用電極24A、24B、24Cに印加し、それによって連結部分62A、62Bを脱離し、表面32A、32B、32Cを再生することと、を含む。この方法の例は、
図5~
図8を参照して示され、説明される。
【0202】
この方法の一例を
図5に概略的に示す。
図5は、フローチャネル12と、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出される表面32A、32B、32Cを有する作用電極24A、24B、24Cとを含むフローセル10の一部を示す。この例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されていない。
【0203】
この例示的な方法では、複合体60Aは、第1の流体76に存在する。第1の流体76は、水及び緩衝剤を含んでもよい。好適な緩衝剤の例としては、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はTrizma(登録商標))、ビス-トリスメタン緩衝剤、ADA緩衝剤(双性イオン性緩衝剤)、MES(2-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、又は別の酸性緩衝剤が挙げられる。代替的に、第1の流体76は、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムなどの任意の有機可溶性電解質を有する有機溶媒から構成されてもよい。
【0204】
第1の流体76は、流体制御システムを使用して、入口フルイディクス36を通してフローチャネル12に導入される。一例では、第1の流体76は、貯蔵リザーバから流体ラインを通って、流体入口14を通ってフローチャネル12内に圧送される(
図5には図示せず)。
【0205】
フローチャネル12内で、複合体60Aの連結部分62Aは、修飾されていない表面32A、32B、32Cと反応する。使用される反応条件は、連結部分62A及び修飾されていない表面32A、32B、32Cに依存する。上述したように、反応は、第1の流体76の存在下で自発的であってもよく、又は印加バイアスの存在下で起こってもよい(例えば、ジアゾニウムは、0V~-2Vの負バイアスを印加することによって電極に付着されてもよい)。修飾されていない表面32A、32B、32Cへの複合体60Aの付着は、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’の一例を生成する。
【0206】
複合体60Aが付着されると、センシング動作を行う前に、この例示的な方法は、センシング動作で使用される追加の表面化学80A、80B、80Cを含む第2の流体78をフローチャネル12に導入することを更に含む。
【0207】
図5に示す方法の一例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Aは、連結部分62Aと、修飾されていない表面32A、32B、32Cに付着しない直交する官能基64とを含み、センシング動作を行う前に、本方法は、i)複数のプライマー70、70’が付着され、ii)直交する官能基64と反応性である反応性官能基82が付着されたヒドロゲル68を含む追加の表面化学80Aを含む第2の流体78をフローチャネル12に導入することを更に含む。
【0208】
追加の表面化学80Aのヒドロゲル68及びプライマー70、70’は、本明細書に開示される例のいずれかであり得る。
【0209】
反応性官能基82は、複合体60Aの直交する官能基64と反応性であるように選択される。例として、反応性官能基82は、アジド直交する官能基64に共有結合したアルキン(例えば、ジアルキン、歪みアルキン)又はテトラジンであってもよい。代替的に、反応性官能基82は、エポキシ直交する官能基64に共有結合する遊離アミンであってもよい。代替的に、反応性官能基82は、活性化カルボキシレート直交する官能基64に共有結合した遊離アミンであってもよく、又は、反応性官能基82は、アルデヒド直交する官能基64に共有結合したヒドラジンであってもよく、又は、反応性官能基82は、ホスホロアミダイト直交する官能基64に共有結合したチオエーテルであってもよく、又は、反応性官能基82は、アルキル化試薬直交する官能基64に共有結合したチオエーテルであってもよい。反応性官能基82は、複合体60Aの直交する官能基64と非共有結合を形成することもできる。例えば、反応性官能基82は、ビオチンに非共有結合するストレプトアビジンであってもよく、又は、反応性官能基82は、spyキャッチャーに非共有結合するspyタグであってもよい。
【0210】
反応性官能基82と官能基64との反応は、追加の表面化学80Aを一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’に付着させ、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’をセンシング動作の準備が整った状態にする(
図5において#1として示される)。
【0211】
詳細は
図5に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数のプライマー70、70’を使用して鋳型核酸鎖74を増幅して、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’上に鋳型核酸鎖74のクラスターを生成することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、を伴う。
【0212】
一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’上でのクラスター生成は、ライブラリー鋳型及びプライマー70、70’を使用して、本明細書に記載されるように行われ得る。この例では、試薬はフローセル10に導入され、増幅サイクルは追加の表面化学80Aのプライマー70、70’を用いて実行される。
【0213】
次いで、配列決定プライマーが、フローセル10に導入され得る。配列決定プライマーは、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’上の鋳型核酸鎖74にハイブリダイズする。この配列決定プライマーは、鋳型鎖74を配列決定可能な状態にする。
【0214】
次いで、標識ヌクレオチドを含む組み込み混合物を、例えば、入口ポート14を介してフローセル10へと導入してもよい。標識ヌクレオチドに加えて、組み込み混合物は、水、緩衝液、及びポリメラーゼを含み得る。組み込み混合物がフローセル10に導入されると、その混合物は、フローチャネル12に入り、固定されかつ配列決定準備の整った鋳型鎖74と接触する。
【0215】
組み込み混合物をフローセル10内でインキュベートし、標識ヌクレオチド(光学標識を含む)を、鋳型鎖74に沿ってそれぞれのポリメラーゼによって新生鎖に組み込む。組み込み中、標識ヌクレオチドのうちの1つは、それぞれのポリメラーゼにより、1つの配列決定プライマーを伸長して鋳型鎖のうちの1つに相補的である1つの新生鎖に組み込まれる。組み込みは、鋳型鎖依存的様式で実施され、したがって、新生鎖に添加された標識ヌクレオチドの順序及びタイプの検出を使用して、鋳型鎖74の配列を決定することができる。組み込みは、単一の配列決定サイクル中に、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’を横切る鋳型鎖74の少なくともいくつかで起こる。
【0216】
組み込まれた標識ヌクレオチドは、標識ヌクレオチドが付加されると更なる配列決定プライマー伸長を終結させる3’OHブロッキング基の存在に起因する、可逆的終結特性を含み得る。インキュベーション及び組み込みの所望の時間の後、組み込まれていない標識ヌクレオチドを含む組み込み混合物は、洗浄サイクル中にフローセル10から除去され得る。洗浄サイクルは、例えば、ポンプ又は他の好適な機構によって、洗浄溶液(例えば、緩衝液)が、フローチャネル12内に導かれて通り、次いでフローチャネル12から出る、フロースルー技術を含み得る。
【0217】
更なる組み込みが行われることなく、直近で組み込まれた標識ヌクレオチドを、イメージング事象を通して検出することができる。イメージング事象中、照明システムが、フローセル10に励起光を提供してもよい。組み込まれた標識ヌクレオチドの光学標識は、励起光に応答して光学信号を放出する。これらの光信号は、イメージング装置を使用して取り込むことができる。
【0218】
イメージングを行った後、次いで切断混合物をフローセル10に導入することができる。一例では、切断混合物は、(i)組み込まれたヌクレオチドから3’OHブロッキング基を除去することができ、(ii)組み込まれたヌクレオチドから光学標識を切断することができる。切断混合物中の3’OHブロッキング基及び好適な脱ブロッキング剤/成分の例としては、塩基加水分解によって除去することができるエステル部分;Nal、クロロトリメチルシラン及びNa2S2O3で又はアセトン/水中のHg(II)で除去することができるアリル部分;トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はトリ(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)などのホスフィンで切断することができるアジドメチル;酸性条件で切断することができるtert-ブトキシ-エトキシなどのアセタール;LiBF4及びCH3CN/H2Oで切断することができるMOM(-CH2OCH3)部分;チオフェノール及びチオサルフェートなどの求核剤で切断することができる2,4-ジニトロベンゼンスルフェニル;Ag(I)又はHg(II)で切断することができるテトラヒドロフラニルエーテル;並びにホスファターゼ酵素(例えば、ポリヌクレオチドキナーゼ)によって切断され得る3’ホスフェート、が挙げられ得る。切断混合物中の好適な光学標識切断剤/成分の例としては、隣接ジオールを切断することができる過ヨウ素酸ナトリウム;アジドメチル結合を切断することができる、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はトリ(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)などのホスフィン;アリルを切断することができるパラジウム及びTHP;エステル部分を切断することができる塩基;又は任意の他の好適な切断剤が挙げられ得る。
【0219】
次いで、鋳型鎖74が配列決定されるまで、更なる配列決定サイクルが行われ得る。
【0220】
センシング動作が完了すると、連結部分62Aの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される(
図5の#2)。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図5には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。電解質溶液は、電気化学を駆動するのに十分な塩を有する水性又は有機性の任意の溶液であってもよい。広範囲の塩濃度、例えば、1mM<塩<3Mを使用することができる。電解質溶液の例としては、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)、カリウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩などの水溶液、又はアセトニトリル若しくは炭酸プロピレンに溶解されたテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム(TEABF
4)が挙げられる。アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、塩化メチレン又はクロロホルムを含む有機溶媒中のハロゲン化テトラアルキルアンモニウムなどの有機電解質も使用することができる。
【0221】
脱離電圧は、複合体60Aに付着した連結部分62A及び追加の表面化学80Aを脱着し、したがって、表面32A、32B、32Cを再生する。脱離電圧は、使用される連結部分62Aに依存する。いくつかの例では、脱離電圧を印加することは、作用電極24A、24B、24Cに負バイアスを印加することを伴う。十分に大きな負バイアス(例えば、-2V~-3V)は、大部分の連結部分62A(例えば、アセチレンなど)を除去するはずである。他の例では、脱離電圧を印加することは、作用電極24A、24B、24Cに正バイアスを印加することを伴う。十分に大きい正バイアス(例えば、+2V~+3V)もまた、大部分の連結部分62A(例えば、ジアゾニウムなど)を除去するのに好適であり得る。
【0222】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0223】
図5に示す方法の別の例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Aは、連結部分62Aと、修飾されていない表面32A、32B、32Cに付着しない直交する官能基64とを含み、センシング動作を行う前に、本方法は、i)鋳型核酸鎖74のクラスターが付着され、ii)直交する官能基64と反応性である反応性官能基82が付着されたヒドロゲル68を含む追加の表面化学80Bを含む第2の流体78をフローチャネル12に導入することを更に含む。
【0224】
追加の表面化学80Bのヒドロゲル68は、本明細書に開示される例のいずれかであってもよく、核酸鎖74の鋳型は、本明細書に記載されるように(例えば、
図4Dを参照して)フローセル10の外側で生成されてもよい。追加の表面化学80Bの反応性官能基82はまた、複合体60Aの直交する官能基64と反応性である任意の基であってもよい。
【0225】
図5は、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’に付着した追加の表面化学80Aを示すが、この例では、反応性官能基82と官能基64との反応によって、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’に追加の表面化学80Bが付着することを理解されたい。追加の表面化学80Bの付着は、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’をセンシング動作の準備が整った状態にする。
【0226】
詳細は
図5に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、により鋳型核酸鎖74のクラスターを配列決定することを伴う。組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0227】
センシング動作が完了すると、連結部分62Aの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図5には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。脱離電圧は、複合体60Aに付着した連結部分62A及び追加の表面化学80Bを脱着し、したがって、表面32A、32B、32Cを再生する。
【0228】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0229】
図5に示す方法の更に別の例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Aは、連結部分62Aと、修飾されていない表面32A、32B、32Cに付着しない直交する官能基64とを含み、センシング動作を行う前に、本方法は、i)鋳型核酸鎖74のクラスターが付着され、ii)直交する官能基64と反応性である反応性官能基82が付着された粒子72’を含む追加の表面化学80Cを含む第2の流体78をフローチャネル12に導入することを更に含む。
【0230】
追加の表面化学80Cの粒子72’は、本明細書に開示される粒子72の任意の例であってもよく、核酸鎖74の鋳型は、本明細書に記載されるように(例えば、
図4Dを参照して)フローセル10の外側で生成されてもよい。追加の表面化学80Cの反応性官能基82はまた、複合体60Aの直交する官能基64と反応性である任意の基であってもよい。
【0231】
図5は、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’に付着した追加の表面化学80Aを示すが、この例では、反応性官能基82と官能基64との反応によって、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’に追加の表面化学80Cが付着することを理解されたい。追加の表面化学80Cの付着は、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’をセンシング動作の準備が整った状態にする。
【0232】
詳細は
図5に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、により鋳型核酸鎖74のクラスターを配列決定することを伴う。組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0233】
センシング動作が完了すると、連結部分62Aの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図5には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。脱離電圧は、複合体60Aに付着した連結部分62A及び追加の表面化学80Cを脱着し、したがって、表面32A、32B、32Cを再生する。
【0234】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0235】
方法の別の例を
図6に概略的に示す。
図6は、フローチャネル12と、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出した表面32A、32B、32Cを有する作用電極24A、24B、24Cとを含むフローセル10の一部を示す。この例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されていない。
【0236】
この例示的な方法では、複合体60Bは、第1の流体76に存在する。第1の流体76の任意の例を使用してもよい。第1の流体76は、流体制御システムを使用して、入口フルイディクス36を通してフローチャネル12に導入される。一例では、第1の流体76は、貯蔵リザーバから流体ラインを通って、流体入口14を通ってフローチャネル12内に圧送される(
図6には図示せず)。
【0237】
フローチャネル12内で、複合体60Bの連結部分62Aは、修飾されていない表面32A、32B、32Cと反応する。上述したように、使用される反応条件は、連結部分62A及び修飾されていない表面32A、32B、32Cに依存する。いくつかの例では、反応条件は、修飾されていない表面32A、32B、32Cへの連結部分62Aの付着を開始するバイアス電圧の印加を含む。修飾されていない表面32A、32B、32Cへの複合体60Bの付着は、一時的に修飾された表面32A’’、32B’’、32C’’の別の例を生成する。
【0238】
複合体60Bが付着されると、センシング動作を行う前に、この例示的な方法は、センシング動作で使用される追加の表面化学80D、80E、80Fを含む第2の流体78をフローチャネル12に導入することを更に含む。
【0239】
図6に示される方法の一例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Bは連結部分62A及び連結部分62Aに付着した捕捉オリゴヌクレオチド66を含み、センシング動作を行う前に、本方法は、i)鋳型核酸鎖74のクラスターに付着され、ii)捕捉オリゴヌクレオチド66に相補的なオリゴヌクレオチド84に付着された粒子72’を含む追加の表面化学80Dを含む第2の流体78をフローチャネル12に導入することを更に含む。
【0240】
追加の表面化学80Dの粒子72’は、本明細書に開示される粒子72の任意の例であってもよく、核酸鎖74の鋳型は、本明細書に記載されるように(例えば、
図4Dを参照して)フローセル10の外側で生成されてもよい。
【0241】
オリゴヌクレオチド84は、修飾された作用電極表面32A’’、32B’’、32C’’に付着された複合体60Bの相補的捕捉オリゴヌクレオチド66にハイブリダイズすることができる一本鎖核酸配列である。オリゴヌクレオチド84は、使用される捕捉オリゴヌクレオチド66に依存して、約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、又は約12ヌクレオチド~約60ヌクレオチド、又は約15ヌクレオチド~約50ヌクレオチドの範囲の長さを有し得る。
【0242】
追加の表面化学80Dは、オリゴヌクレオチド84を捕捉オリゴヌクレオチド66にハイブリダイズさせるのに適した温度でフローセル10内でインキュベートされる。ハイブリダイゼーションの結果として、追加の表面化学80Dを一時的に修飾された表面32A’’、32B’’、32C’’に付着させ、一時的に修飾された表面32A’’、32B’’、32C’’をセンシング動作の準備が整った状態にする(
図6において#1として示される)。
【0243】
詳細は
図6に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、により鋳型核酸鎖74のクラスターを配列決定することを伴う。組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0244】
センシング動作が完了すると、連結部分62Aの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図6には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。脱離電圧は、複合体60Bに付着した連結部分62A及び追加の表面化学80Dを脱着し、したがって、表面32A、32B、32Cを再生する。
【0245】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0246】
図6に示される方法の別の例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Bは連結部分62A及び連結部分62Aに付着した捕捉オリゴヌクレオチド66を含み、センシング動作を行う前に、方法は、i)複数のプライマー70、70’が付着され、ii)捕捉オリゴヌクレオチド66に相補的なオリゴヌクレオチド84に付着されたヒドロゲル68を含む追加の表面化学80Eを含む第2の流体78をフローチャネル12に導入することを更に含む。
【0247】
追加の表面化学80Eのヒドロゲル68及びプライマー70、70’は、本明細書に開示される例のいずれかであり得る。上記のように、オリゴヌクレオチド84は、修飾された作用電極表面32A’’、32B’’、32C’’に付着された複合体60Bの相補的捕捉オリゴヌクレオチド66にハイブリダイズすることができる一本鎖核酸配列である。
【0248】
図6は、一時的に修飾された表面32A’’、32B’’、32C’’に付着した追加の表面化学80Dを示すが、この例では、一時的に修飾された表面32A’’、32B’’、32C’’に追加の表面化学80Eが付着することを理解されたい。更に、詳細は
図6に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数のプライマー70、70’を使用して鋳型核酸鎖74を増幅して、一時的に修飾された表面32A’’、32B’’、32C’’上に鋳型核酸鎖74のクラスターを生成することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、を伴う。
【0249】
一時的に修飾された表面32A’’、32B’’、32C’’上でのクラスター生成は、ライブラリー鋳型及びプライマー70、70’を使用して、本明細書に記載されるように行われ得る。この例では、試薬はフローセル10に導入され、増幅サイクルは追加の表面化学80Eのプライマー70、70’を用いて実行される。
【0250】
組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、この場合、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0251】
センシング動作が完了すると、連結部分62Aの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図6には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。脱離電圧は、複合体60Bに付着した連結部分62A及び追加の表面化学80Eを脱着し、したがって、表面32A、32B、32Cを再生する。
【0252】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0253】
図6に示される方法の別の例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Bは連結部分62A及び連結部分62Aに付着した捕捉オリゴヌクレオチド66を含み、センシング動作を行う前に、本方法は、i)鋳型核酸鎖74のクラスターに付着され、ii)捕捉オリゴヌクレオチド66に相補的なオリゴヌクレオチド84に付着されたヒドロゲル68を含む追加の表面化学80Fを含む第2の流体78をフローチャネル12に導入することを更に含む。
【0254】
追加の表面化学80Fのヒドロゲル68は、本明細書に開示される例のいずれかであってもよく、核酸鎖74の鋳型は、本明細書に記載されるように(例えば、
図4Dを参照して)フローセル10の外側で生成されてもよい。上記のように、オリゴヌクレオチド84は、修飾された作用電極表面32A’’、32B’’、32C’’に付着された複合体60Bの相補的捕捉オリゴヌクレオチド66にハイブリダイズすることができる一本鎖核酸配列である。
【0255】
図6は、一時的に修飾された表面32A’’、32B’’、32C’’に付着した追加の表面化学80Dを示すが、この例では、オリゴヌクレオチド84と捕捉オリゴヌクレオチド66とのハイブリダイゼーションにより、一時的に修飾された表面32A’、32B’、32C’に追加の表面化学80Fが付着することを理解されたい。追加の表面化学80Fの付着は、一時的に修飾された表面32A’’、32B’’、32C’’をセンシング動作の準備が整った状態にする。
【0256】
詳細は
図6に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、により鋳型核酸鎖74のクラスターを配列決定することを伴う。組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0257】
センシング動作が完了すると、連結部分62Aの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図6には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。脱離電圧は、複合体60Bに付着した連結部分62A及び追加の表面化学80Fを脱着し、したがって、表面32A、32B、32Cを再生する。
【0258】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0259】
方法の更に別の例を
図7に概略的に示す。
図7は、フローチャネル12と、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出した表面32A、32B、32Cを有する作用電極24A、24B、24Cとを含むフローセル10の一部を示す。この例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されていない。
【0260】
この例示的な方法では、複合体60C又は60Dは、第1の流体76に存在する。本明細書に開示される第1の流体76の任意の例が使用されてもよい。第1の流体76は、流体制御システムを使用して、入口フルイディクス36を通してフローチャネル12に導入される。一例では、第1の流体76は、貯蔵リザーバから流体ラインを通って、流体入口14を通ってフローチャネル12内に圧送される(
図7には図示せず)。
【0261】
フローチャネル12内で、複合体60C又は60Dの連結部分62Aは、修飾されていない表面32A、32B、32Cと反応する。使用される反応条件は、連結部分62A及び修飾されていない表面32A、32B、32Cに依存する。いくつかの例では、反応条件は、修飾されていない表面32A、32B、32Cへの連結部分62Aの付着を開始するバイアス電圧の印加を含む。修飾されていない表面32A、32B、32Cへの複合体60C又は60Dの付着は、一時的に修飾された表面32A’’’、32B’’’、32C’’’の別の例を生成する。
【0262】
複合体60C又は60Dが付着されると、センシング動作が行われてもよい(
図7の#1)。センシング動作は、使用される複合体60C、60Dに依存して変化する。
【0263】
一例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Cは、i)連結部分62Aが付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68を含む。この例では、ヒドロゲル68、プライマー70、70’、及び連結部分62Aは、本明細書に開示される例のいずれかであり得る。
【0264】
詳細は
図7に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数のプライマー70、70’を使用して鋳型核酸鎖74を増幅して、一時的に修飾された表面32A’’’、32B’’’、32C’’’上に鋳型核酸鎖74のクラスターを生成することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、を伴う。
【0265】
一時的に修飾された表面32A’’’、32B’’’、32C’’’上でのクラスター生成は、ライブラリー鋳型及びプライマー70、70’を使用して、本明細書に記載されるように行われ得る。この例では、試薬はフローセル10に導入され、増幅サイクルは複合体60Cのプライマー70、70’を用いて行われる。
【0266】
組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、この場合、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0267】
センシング動作が完了すると、連結部分62Aの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図7には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。脱離電圧は、連結部分62Aと、複合体60Cに付着した表面化学とを脱着する。これにより、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cが再生される。
【0268】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0269】
別の例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Dは、i)連結部分62Aが付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68を含む。この例では、ヒドロゲル68、プライマー70、70’、及び連結部分62Aは、本明細書に開示される例のいずれかであり得る。
【0270】
一例では、作用電極表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Dは、i)連結部分62Aが付着され、ii)鋳型鎖74のクラスターが付着された粒子72を含む。この例では、ヒドロゲル68及び連結部分62Aは、本明細書に開示される例のいずれかであり得る。核酸鎖74の鋳型は、本明細書に記載されるように(例えば、
図4Dを参照して)、フローセル10の外側で生成され得る。
【0271】
詳細は
図7に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、により鋳型核酸鎖74のクラスターを配列決定することを伴う。組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、この場合、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0272】
センシング動作が完了すると、連結部分62Aの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図7には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。脱離電圧は、連結部分62Aと、複合体60Dに付着した表面化学とを脱着する。これにより、修飾されていない作用電極表面32A、32B、32Cが再生される。
【0273】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0274】
方法の更に別の例を
図8に概略的に示す。
図8は、フローチャネル12と、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出した表面32A、32B、32Cを有する作用電極24A、24B、24Cとを含むフローセル10の一部を示す。この例では、作用電極表面32A、32B、32Cは、電気化学的に可逆的な遷移金属結合対の一方のメンバー34A、34Bで修飾される。
【0275】
この例示的な方法では、連結部分62Bを含む複合体60C’又は60D’が使用される。
図4C及び
図4Dを参照して本明細書に記載されるように、連結部分62Bは、メンバー34A、34Bに結合することができる、電気化学的に可逆的な遷移金属結合対の他方のメンバーを含む。
【0276】
複合体60C’又は60D’は、第1の流体76中に存在し、第1の流体76は、本明細書に開示される例のいずれかであり得る。複合体60C’又は60D’を含有する第1の流体76は、本明細書に説明されるような流体制御システムを使用して、入口フルイディクス36を通してフローチャネル12に導入される。
【0277】
フローチャネル12内で、複合体60C’又は60D’の連結部分62Bは、メンバー34A、34Bに結合する。使用される反応条件は、遷移金属結合対に依存する。いくつかの例では、反応条件は、連結部分62Bのメンバー34A、34Bへの付着を開始するバイアス電圧の印加を含む。複合体60C’又は60D’の連結部分62Bのメンバー34A、34Bへの付着は、一時的に修飾された表面32A’’’’、32B’’’’、32C’’’’の更に別の例を生成する。
【0278】
一時的に修飾された表面32A’’’’、32B’’’’、32C’’’’上に結合対が形成されると、センシング動作が行われ得る(
図8の#1)。センシング動作は、使用される複合体60C’、60D’に依存して変化する。
【0279】
複合体60C’を含む一例では、作用電極表面32A、32B、32Cは、遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bで修飾され、遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bは配位子であり、連結部分62Bは遷移金属錯体であり、遷移金属錯体は遷移金属錯体結合対の第2のメンバーであり、複合体60C’は、i)遷移金属錯体が付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68を含む。
【0280】
この例では、作用電極表面32A、32B、32Cに付着した遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bはピリジンであってもよく、ヒドロゲル68に付着した遷移金属錯体(すなわち、連結部分62B)は亜鉛ポルフィリン複合体であってもよい。この例では、ピリジン複合体が亜鉛ポルフィリン複合体の亜鉛を錯化するとき、複合体60C’は表面32A、32B、32Cを官能化する。
【0281】
詳細は
図8に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数のプライマー70、70’を使用して鋳型核酸鎖74を増幅して、一時的に修飾された表面32A’’’’、32B’’’’、32C’’’’上に鋳型核酸鎖74のクラスターを生成することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、を伴う。
【0282】
一時的に修飾された表面32A’’’’、32B’’’’、32C’’’’上でのクラスター生成は、ライブラリー鋳型及びプライマー70、70’を使用して、本明細書に記載されるように行われ得る。この例では、試薬はフローセル10に導入され、増幅サイクルは複合体60C’のプライマー70、70’を用いて行われる。
【0283】
組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、この場合、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0284】
センシング動作が完了すると、連結部分62Bの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図8には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。脱離電圧は、使用される連結部分62Bに依存する。いくつかの例では、脱離電圧を印加することは、作用電極24A、24B、24Cに負バイアスを印加することを伴う。他の例では、脱離電圧を印加することは、作用電極24A、24B、24Cに正バイアスを印加することを伴う。ピリジンと亜鉛ポルフィリン錯体の結合対の例では、脱離電圧は、亜鉛1を亜鉛0に還元する電圧である。
【0285】
脱離電圧は、連結部分62Bを第1のメンバー34A、34Bから脱着させる。したがって、連結部分62Bを介して付着した表面化学が除去される。これにより、第1のメンバー34A、34Bによって修飾された作用電極表面32A、32B、32Cが再生される。
【0286】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0287】
複合体60Dを伴う別の例では、作用電極表面32A、32B、32Cは、遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bで修飾され、遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bは遷移金属錯体であり、連結部分62Bは配位子であり、配位子は遷移金属錯体結合対の第2のメンバーであり、複合体60D’は、i)配位子(連結部分62B)、及びii)鋳型核酸鎖74のクラスターが付着されたヒドロゲル68で官能化された金属ナノ粒子を含む。
【0288】
この例では、作用電極表面32A、32B、32Cに付着した遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bは、フェロセニル-ポリ(プロピレンイミン)デンドリマーであってもよく、ヒドロゲル68に付着した配位子(すなわち、連結部分62B)は、β-シクロデキストリンであってもよい。この例では、複合体60D’は、フェロセニル末端基の電気化学的還元を用いて表面32A、32B、32Cを官能化する。
【0289】
詳細は
図8に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、により鋳型核酸鎖74のクラスターを配列決定することを伴う。組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、この場合、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0290】
センシング動作が完了すると、連結部分62Bの脱離電圧が作用電極24A、24B、24Cに印加される。電解質溶液は、作用電極24A、24B、24C及び対電極40(
図8には図示せず)と接触するように、フローセル10に導入される。脱離電圧は、連結部分62Bを第1のメンバー34A、34Bから脱着させる。したがって、連結部分62Bを介して付着した表面化学が除去される。これにより、第1のメンバー34A、34Bによって修飾された作用電極表面32A、32B、32Cが再生される。フェロセニル-ポリ(プロピレンイミン)デンドリマー及びβ-シクロデキストリン結合対を有する例では、脱離電圧は、フェロセニル末端基を酸化する電圧である。いくつかの例では、脱離電圧は、連結部分62Bを第1のメンバー34A、34Bから脱着し、第1のメンバー34A、34Bを作用電極表面32A、32B、32Cから脱着する。これらの例では、第1のメンバー34A、34Bは、追加の表面化学がフローセル10に加えられるときに、作用電極表面32A、32B、32Cに導入されて付着されてもよい(例えば、シランリンカーなどを介して)。
【0291】
この例示的な方法は、脱離電圧が印加された後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含み得る。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0292】
化学洗浄方法(例えば、強酸又は強塩基の導入など)とは異なり、
図5~
図8を参照して説明される電気化学的脱離方法は、作用電極表面32A、32B、32C上のバルク材料を劣化させず、むしろ、作用電極表面32A、32B、32Cと表面化学との間の界面(例えば、連結部分62A、62B)を劣化させる。これらの例のいずれにおいても、脱離バイアスの印加中に表面から反発され得る正味電荷を有する表面化学を利用することによって、表面化学の除去をより効率的にすることもできる。
【0293】
電気化学的再生を含む方法の更に別の例は、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出される修飾されていない表面32A、32B、32Cを有する作用電極24A、24B、24Cを含むフローセル10のフローチャネル12に第1の流体76を導入し、それによって、第1の流体76中に存在する複合体60A、60B、60C、60Dの連結部分62Aが、複合体60A、60B、60C、60Dを表面32A、32B、32Cに化学的に付着させて、作用電極24A、24B、24Cの一時的に修飾された表面(例えば、32A’、32A’’、32A’’’)を形成することと、一時的に修飾された表面(例えば、32A’、32A’’、32A’’’)の複合体60A、60B、60C、60Dを含むセンシング動作を行うことと、フローセル10に電解質溶液を導入することと、電解質溶液の存在下で作用電極24A、24B、24Cに電圧を印加し、それによって、作用電極24A、24B、24Cの層を除去し、修飾されていない表面32A、32B、32Cを再生することと、を含む。
【0294】
複合体60A、60B、60C、60Dを修飾されていない表面32A、32B、32Cに付着させる方法は、
図5~
図7を参照して本明細書で説明したように行うことができる。
【0295】
この追加の例では、作用電極表面32A、32B、32Cと表面化学との間の界面(例えば、連結部分62A、62B)を劣化させるのではなく、作用電極表面32A、32B、32Cの薄層を腐食除去することによって、表面結合基を電気化学的に除去することができる。作用電極表面32A、32B、32Cの薄層を腐食させるために印加されるバイアスは、特定の金属及び溶液中の塩濃度に依存する。いくつかの場合では、腐食は0バイアスで起こり得るか、又は0~+1Vのいくらかの正バイアスの印加を必要とする場合がある。腐食が0バイアスで自発的に発生する場合、表面化学が導入され利用されるときに表面化学を保存するために、センシング動作中に腐食保護のために負バイアスが印加されてもよい。
【0296】
これにより、作用電極表面32A、32B、32Cにおいて表面化学に結合した金属がイオンとして表面から離れるため、表面化学が除去される。
【0297】
この例では、フローセル10は、作用電極24A、24B、24Cの初期厚さ及び洗浄サイクルごとの厚さの損失に関連する特定の寿命を有する。
【0298】
フローセル10が第2の作用電極42A、42B、42Cを含む場合、いずれの方法も、第2の作用電極42A、42B、42Cに電圧を印加して、表面化学の導入中に表面化学が付着しないように反発させることも含み得る。したがって、本方法のいくつかの例は、第1の流体76が導入されるときに、連結部分62A、62Bの脱離電圧を第2の作用電極42A、42B、42Cに印加し、それによって、間隙領域30A、30B、30Cから複合体60A、60B、60C、60C’、60D、60D’を反発させることを伴う。フローセル10が第2の作用電極42A、42B、42Cを含む場合、いずれの方法も、第2の作用電極42A、42B、42Cに電圧を印加して、表面化学の脱離中に第2の作用電極42A、42B、42Cの洗浄を助けることを含み得る。したがって、本方法のいくつかの例は、センシング動作の後に、連結部分62A、62Bの脱離電圧を第2の作用電極42A、42B、42Cに印加することを伴う。
【0299】
フローセル表面を可視光で再生する方法
図3A及び
図3Bに示されるフローセル10の例のいずれも、基材表面52A、52B、52C、52Dが、本明細書に開示される複合体60C’’、60D’’、60Eの一例を使用して一時的に修飾され、可視光曝露を使用して再生可能である方法において使用され得る。
【0300】
一例では、本方法は、概して、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出した基材22F、22G、22H、22Iの表面52A、52B、52C、52Dを含むフローセル10のフローチャネル12に第1の流体76を導入することを含み、表面52A、52B、52C、52Dは、遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bで修飾され、それによって、第1の流体76中に存在する複合体60C’’、60D’’、60Eの連結部分62Cは、複合体60C’’、60D’’、60Eを表面52A、52B、52C、52Dに化学的に付着させて、基材22F、22G、22H、22Iの一時的に修飾された表面を形成することと、一時的に修飾された表面の複合体60C’’、60D’’、60Eを含むセンシング動作を行うことと、一時的に修飾された表面を可視光に曝露し、それによって連結部分62Cを脱着し、表面52A、52B、52C、52Dを再生することと、を含む。この方法の例は、
図9を参照して示され、説明される。
【0301】
図9は、フローチャネル12と、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出した表面52A、52B、52C、52Dを有する基材22F、22G、22H、22Iとを含むフローセル10の一部を示す。この例では、基材表面52A、52B、52C、52Dは、可視光応答性の遷移金属結合対の一方のメンバー54A、54Bで修飾される。
【0302】
この例示的な方法では、連結部分62Cを含む複合体60C’’又は60D’’又は60Eが使用される。
図4C~
図4Eを参照して本明細書に記載されるように、連結部分62Cは、メンバー54A、54Bに結合することができる可視光応答性の遷移金属結合対の他方のメンバーを含む。
【0303】
複合体60C’’又は60D’’又は60Eは、第1の流体76中に存在し、第1の流体76は、本明細書に開示される例のいずれかであり得る。複合体60C’’又は60D’’又は60Eを含有する第1の流体76は、本明細書に説明されるような流体制御システムを使用して、入口フルイディクス36を通してフローチャネル12に導入される。
【0304】
フローチャネル12内で、複合体60C’’又は60D’’又は60Eの連結部分62Cは、メンバー54A、54Bに結合する。使用される反応条件は、遷移金属結合対に依存する。一例では、反応は、クロロホルム中で約20分~約30分の光曝露を用いて行われ得る。複合体60C’’又は60D’’又は60Eの連結部分62Cのメンバー54A、54Bへの付着は、一時的に修飾された表面52A’、52B’、52C’、52D’の一例を生成する。これらの例のいずれにおいても、第1のメンバー54A、54Bは加水分解ルテニウム複合体であってもよく、連結部分62Cはチオエーテルであってもよい。これらの例では、加水分解されたルテニウム複合体がチオエーテル連結部分62Cのチオールと複合体を形成する場合、複合体60C’’又は60D’’又は60Eは、基材表面52A、52B、52C、52Dを官能化する。
【0305】
一時的に修飾された表面52A’、52B’、52C’、52D’上に結合対が形成されると、センシング動作が行われ得る(
図9の#1)。センシング動作は、使用される複合体60C’’、60D’’、60Eに依存して変化する。
【0306】
複合体60C’’を含む例では、連結部分62Cはチオエーテルであり、複合体60C’’は、i)チオエーテルが付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68である。
【0307】
ヒドロゲル68及びプライマー70、70’は、本明細書に開示される例のいずれかであり得る。チオエーテルは、ヒドロゲル68の好適な官能基に付着され得る。
【0308】
詳細は
図9に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数のプライマー70、70’を使用して鋳型核酸鎖74を増幅して、一時的に修飾された表面52A’、52B’、52C’、52D’上に鋳型核酸鎖74のクラスターを生成することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、を伴う。
【0309】
一時的に修飾された表面52A’,52B’,52C’,52D’上でのクラスター生成は、ライブラリー鋳型及びプライマー70、70’を使用して、本明細書に記載されるように行われ得る。この例では、試薬はフローセル10に導入され、増幅サイクルは複合体60C’’のプライマー70、70’を用いて行われる。
【0310】
組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、この場合、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0311】
センシング動作が完了すると、一時的に修飾された表面52A’、52B’、52C’、52D’は可視光に曝露され得る。可視光曝露は、チオエーテル連結部分62C、したがって複合体60C’’の解離を誘導する波長を放射する光源(例えば、レーザ)を使用して行われ得る。可視光曝露の時間は、光源の出力に依存し得る。より高い出力の光源は、より短い露光時間を伴い得、より低い出力の光源は、より長い露光時間を伴い得る。
【0312】
可視光は、連結部分62Cを第1のメンバー54A、54Bから解離させる。したがって、連結部分62Cを介して付着した表面化学が除去される。これにより、第1のメンバー54A、54Bによって修飾された基材表面52A、52B、52C、52Dが再生される。
【0313】
この例示的な方法は、可視光曝露後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含んでもよい。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0314】
複合体60D’を伴う例では、連結部分62Cはチオエーテルであり、複合体60D’は、i)チオエーテルが付着され、ii)鋳型鎖74のクラスターが付着されたヒドロゲル68である。
【0315】
ヒドロゲル68は、本明細書に開示される例のいずれかであってもよく、核酸鎖74の鋳型は、本明細書に記載されるように(例えば、
図4Dを参照して)フローセル10の外側で生成されてもよい。
【0316】
詳細は
図9に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、により鋳型核酸鎖74のクラスターを配列決定することを伴う。組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、この場合、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0317】
センシング動作が完了すると、一時的に修飾された表面52A’、52B’、52C’、52D’は可視光に曝露され得る。可視光曝露は、連結部分62C、したがって複合体60D’’の解離を誘導する波長を放射する光源(例えば、レーザ)を使用して行われ得る。可視光曝露の時間は、光源の出力に依存し得る。
【0318】
可視光は、連結部分62Cを第1のメンバー54A、54Bから解離させる。したがって、連結部分62Cを介して付着した表面化学が除去される。これにより、第1のメンバー54A、54Bによって修飾された基材表面52A、52B、52C、52Dが再生される。
【0319】
この例示的な方法は、可視光曝露後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含んでもよい。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0320】
複合体60Eを含む例では、連結部分62Cはチオエーテルであり、複合体60Eは、i)付着されたチオエーテル及びii)複数のプライマー70、70’で官能化された金属ナノ粒子73である。
【0321】
金属ナノ粒子73及び複数のプライマー70、70’は、本明細書に開示される任意の例であり得る。チオエーテルは、ヒドロゲル68の好適な官能基に付着され得る。
【0322】
詳細は
図9に示されていないが、この例示的な方法におけるセンシング動作は、複数のプライマー70、70’を使用して鋳型核酸鎖74を増幅して、一時的に修飾された表面52A’、52B’、52C’、52D’上に鋳型核酸鎖74のクラスターを生成することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体をフローチャネル12に導入することと、複数の光学的に標識されたヌクレオチドのうちのそれぞれ1つの、鋳型核酸鎖74のうちの少なくともいくつかに沿った新生鎖への組み込み事象を光学的に検出することと、を伴う。
【0323】
一時的に修飾された表面52A’,52B’,52C’,52D’上でのクラスター生成は、ライブラリー鋳型及びプライマー70、70’を使用して、本明細書に記載されるように行われ得る。この例では、試薬はフローセル10に導入され、増幅サイクルは複合体60Eのプライマー70、70’を用いて行われる。
【0324】
組み込み事象の配列決定及び光学的検出は、この場合、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0325】
センシング動作が完了すると、一時的に修飾された表面52A’、52B’、52C’、52D’は可視光に曝露され得る。可視光曝露は、連結部分62C、したがって複合体60Eの解離を誘導する波長を放射する光源(例えば、レーザ)を使用して行われ得る。可視光曝露の時間は、光源の出力に依存し得る。
【0326】
可視光は、連結部分62Cを第1のメンバー54A、54Bから解離させる。したがって、連結部分62Cを介して付着した表面化学が除去される。これにより、第1のメンバー54A、54Bによって修飾された基材表面52A、52B、52C、52Dが再生される。
【0327】
この例示的な方法は、可視光曝露後にフローチャネル12に洗浄流体を導入することを更に含んでもよい。これは、脱着された表面化学の全てがフローセル10から除去されることを確実にするのに役立つ。
【0328】
キット
本明細書に開示されるフローセル10の任意の例は、キットの一部としてフローセル表面化学流体と共に含まれてもよい。キットの一例は、i)フローセル10であって、フローチャネル12と、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出した表面32A、32B、32Cを有する作用電極24A、24B、24Cであって、表面32A、32B、32Cは、修飾されていないか、又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bで修飾されている、作用電極24A、24B、24Cと、作用電極24A、24B、24Cに電気的に接続された対電極40と、を含むフローセル10と、ii)フローセル表面化学流体であって、液体キャリア(例えば、流体76)と、修飾されていない表面又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bに化学的に付着し、脱離電圧に曝露されたときに修飾されていない表面又は遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bから脱離する連結部分62A、62Bを含む複合体60A、60B、60C、60C’、60D、60D’と、を含む、フローセル表面化学流体と、を含む。このキットにおけるフローセル10の例はまた、本明細書に記載される構成のいずれかにおける第2の作用電極42A、42B、42Cと、本明細書に記載される構成のいずれかにおける対電極40と、本明細書に記載される構成のいずれかにおけるコントローラと、を含み得る。
【0329】
このキットの一例では、表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Aは、連結部分62Aと、修飾されていない表面32A、32B、32Cに付着しない直交する官能基64とを含み、キットは、i)複数のプライマー70、70’が付着され、ii)直交する官能基64と反応性である反応性官能基82が付着されたヒドロゲル68を含む第2の流体(例えば、流体78)を更に備える。この例示的なキットはまた、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体を備え得る。
【0330】
このキットの別の例では、表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Aは、連結部分62Aと、修飾されていない表面32A、32B、32Cに付着しない直交する官能基64とを含み、キットは、i)鋳型鎖74のクラスターが付着され、ii)直交する官能基64と反応性である反応性官能基82が付着された粒子72を含む第2の流体(例えば、流体78)を更に備える。この例示的なキットはまた、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体を備え得る。
【0331】
このキットの更に別の例では、表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Bは、連結部分62Aと、連結部分62Aに付着した捕捉オリゴヌクレオチド66とを含み、キットは、i)鋳型鎖74のクラスターが付着され、ii)捕捉オリゴヌクレオチド66に相補的なオリゴヌクレオチド84が付着された粒子72を含む第2の流体(例えば、流体78)を更に備える。この例示的なキットはまた、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体を備え得る。
【0332】
このキットの更に別の例では、表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Cは、i)連結部分62Aが付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着された粒子72を含む。この例示的なキットはまた、鋳型鎖74を生成するための試薬を有する第2の流体と、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第3の流体と、を備え得る。
【0333】
このキットの更に別の例では、表面32A、32B、32Cは修飾されておらず、複合体60Dは、i)連結部分62Aが付着され、ii)鋳型核酸鎖74のクラスターが付着された粒子72を含む。この例示的なキットはまた、複数の光学的に標識されたヌクレオチドを含む第2の流体を備え得る。
【0334】
このキットの別の例では、表面32A、32B、32Cは、遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bで修飾されている。遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bは配位子であり、連結部分は遷移金属錯体であり、遷移金属錯体は遷移金属錯体結合対の第2のメンバーであり、複合体60C’は、i)遷移金属錯体(例えば、連結部分62B)が付着され、ii)複数のプライマー70、70’が付着されたヒドロゲル68を含む。
【0335】
このキットの更なる例では、表面32A、32B、32Cは、遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bで修飾されている。遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bは遷移金属錯体であり、連結部分62Bは配位子であり、配位子は遷移金属錯体結合対の第2のメンバーであり、複合体60D’は、i)配位子(例えば、連結部分62B)、及びii)鋳型核酸鎖74のクラスターが付着されたヒドロゲル68で官能化された金属ナノ粒子72を含む。
【0336】
キットの別の例は、i)フローチャネル12と、フローチャネル12に少なくとも部分的に露出した表面52A、52B、52C、52Dを有する基材22E、22F、22G、22Hと、を含むフローセル10であって、表面52A、52B、52C、52Dは、遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bで修飾されている、フローセル10と、ii)フローセル表面化学流体であって、液体キャリア(例えば、流体76)と、可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bに化学的に付着し、可視光に曝露されたときに可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bから脱離する連結部分62Cを含む複合体60C’’、60D’’、60Fと、を含むフローセル表面化学流体と、を含む。
【0337】
配列決定システム
本明細書に記載されるフローセル10の任意の例は、配列決定システムの一部であってもよい。例示的な配列決定システム90を
図10に概略的に示す。配列決定システム90は、配列決定準備完了状態から配列決定準備未完了状態に電気化学的に又は可視光曝露によって切り替え可能な再生可能な表面(例えば、32A、32B、32C、52A、52B、52C、52D)を含むフローセル10と、流体をフローセル10に送達するための送達フルイディクスを含む流体制御システム92と、再生可能な表面(例えば、32A、32B、32C、52A、52B、52C、52D)を照明するように位置付けられた照明システム94と、再生可能な表面(例えば、32A、32B、32C、52A、52B、52C、52D)の画像を取り込むように位置付けられた検出システム96と、フローセル10の電極24A、24B、24Cを配列決定準備未完了状態に誘導させるか、又は、照明システム94に、フローセル10を可視光に曝露させるコントローラ102とを備える。
【0338】
「配列決定準備完了状態」は、表面化学が付着して、一時的に修飾された表面の任意の例を形成する状態である。換言すれば、この状態は、所望の核酸分析のための表面化学が表面に付着されたときのフローセル10の状態を指す。配列決定準備完了状態では、フローセル10は、配列決定動作又は別の核酸分析において使用することができる。「配列決定準備未完了状態」は、表面化学が再生可能な表面(例えば、32A、32B、32C、52A、52B、52C、52D)に付着していない状態である。換言すれば、この状態は、所望の核酸分析のための表面化学が表面に付着していないときのフローセル10の状態を指す。配列決定準備未完了状態では、フローセル10は、好適な表面化学の欠如に起因して、配列決定動作又は別の核酸分析において使用することができない。
【0339】
流体制御システム92は、本明細書に記載される入口フルイディクス36及び出口フルイディクス38を含む。入口フルイディクス36は、流体リザーバ又は流体カートリッジ98と、所望の流体、例えば76、78、洗浄流体などを入口14を通してフローセル10に供給する流体ラインと、を含み得る。出口フルイディクス38は、廃液リザーバ100と、流体、例えば76、78、洗浄流体などをフローセル10から出口16を通して除去する流体ラインと、を含み得る。流体制御システム92は、コントローラ102からのコマンドに応答して望ましい方法で流体を移動させるためのポンプ、バルブなどを含み得る。配列決定システム90の一具体例は、送達フルイディクスに流体接続されたリザーバと、リザーバ内に含まれる流体(例えば、第1の流体76)と、を含み、該流体は、複合体60A、60Bなどを含み、複合体60A、60Bなどを再生可能な表面に化学的に付着させるための連結部分62A、62Bなどを有する。
【0340】
照明システム94は、核酸分析のための励起波長(例えば、紫外光)を放射することができる任意の光源(例えば、レーザ)であってもよい。いくつかの例では、照明システム94は、基材表面52A、52B、52C、52Dの再生を開始するための可視光を放射することができる別の光源を含む。照明システムは、コントローラ102からのコマンドに応答して動作可能である。
【0341】
検出システム96は、核酸分析から生じる放出光子を記録することができ、記録可能な出力を生成する任意の検出器であってもよい。いくつかの例では、検出システム96はデジタルイメージングシステムである。検出システム96は、コントローラ102からのコマンドに応答して動作する。
【0342】
コントローラ102は、マイクロコントローラ、低減命令セットコンピュータ(Reduced Instruction Set Computer、RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、論理回路、及び本明細書に記載される機能を実行することができる任意の他の回路又はプロセッサを使用するシステムを含む、任意のプロセッサベース又はマイクロプロセッサベースのシステムを含み得る。いくつかの例を提供してきたが、これらは、システムコントローラという用語の定義及び/又は意味を決して限定することを意図していないことを理解されたい。一例では、システムコントローラ102は、本明細書に記載される例に従って、流体を送達し、電圧バイアスを印加し、照明システム94を動作させ、検出システム96を動作させるなどのために、1つ以上の記憶素子、メモリ、又はモジュールに記憶された命令セットを実行する。電気化学的に再生可能な表面32A、32B、32Cを含む例では、コントローラ102はまた、作用電極24A、24B、24Cと対電極40との間、及び/又は第2の作用電極42A、42B、42Cと対電極40との間の所望のバイアスを制御するために、ポテンショスタットを含んでもよい。
【0343】
配列決定システム90の一例では、再生可能な表面は、作用電極表面24A、24B、24Cであり、作用電極表面24A、24B、24Cは、配列決定準備未完了状態の遷移金属錯体結合対の第1のメンバー34A、34Bで修飾されている。
【0344】
配列決定システム90の別の実施例では、再生可能な表面は、作用電極表面24A、24B、24Cであり、作用電極表面24A、24B、24Cは、配列決定準備未完了状態において修飾されていない。
【0345】
配列決定システム90の別の例では、再生可能な表面は、基材表面52A、52B、52Cであり、基材表面52A、52B、52Cは、配列決定準備未完了状態の遷移金属錯体結合対の可視光応答性の第1のメンバー54A、54Bで修飾されている。
【0346】
追記事項
本明細書に記載される例の任意の特徴は、例えばフローセルを得ることを含む、本開示に記載される利点を達成するために任意の望ましい方法で一緒に組み合わされてもよいことを理解されたい。
【0347】
また、以下により詳細に考察される、前述の概念及び更なる概念の全ての組み合わせが、(かかる概念が相互に矛盾しなければ)本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図されることを理解されたい。具体的には、本開示の終わりに現れる特許請求される主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図される。本明細書で明示的に用いられ、また参照により組み込まれる任意の開示においても出現し得る用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解されたい。
【0348】
「一例(one example)」、「別の例」、「一例(an example)」などへの本明細書全体を通じての言及は、例に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの例に含まれており、他の例に存在していても、存在していなくてもよいことを意味している。加えて、文脈上明確に別段の指示がない限り、任意の例に関する記載の要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせられ得ることを理解されたい。
【0349】
いくつかの実施例を詳細に説明してきたが、開示された例は修正され得ることを理解されたい。したがって、これまでの説明は非限定的なものであると考えるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】