(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】飲料を保存するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A23L 2/44 20060101AFI20240424BHJP
B01F 25/314 20220101ALI20240424BHJP
【FI】
A23L2/44
B01F25/314
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561714
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2022057698
(87)【国際公開番号】W WO2022214321
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォーグル、エラスムス
(72)【発明者】
【氏名】ブルクホルツ、ヨナス
【テーマコード(参考)】
4B117
4G035
【Fターム(参考)】
4B117LC15
4B117LG17
4B117LK06
4B117LP20
4B117LT05
4G035AB05
4G035AC22
4G035AE10
(57)【要約】
飲料を保存するための装置(1)は、飲料ライン(10)を通って流れる液体の流量の決定に適し流量を決定するように意図された測定装置(2)を有し、保存料、とくには二炭酸ジアルキルを飲料ラインへと運ぶポンプ装置(4)を有し、飲料ライン(10)へと開くデリバリラインが設けられ、ポンプ装置はデリバリラインを通って二炭酸ジアルキルを届け、ポンプ装置(4)を測定装置(2)によって決定される流量の関数として制御することができる装置であって、ポンプ装置(4)が、往復ピストンポンプとして構成されている、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料ライン(10)を通って流れる液体の流量の決定に適しており、前記流量を決定するように意図された測定装置(2)を有し、保存料、とくには二炭酸ジアルキルを前記飲料ライン(10)へと運ぶポンプ装置(4)を有し、前記飲料ライン(10)へと開くデリバリラインが設けられ、前記ポンプ装置(4)は前記デリバリラインを通って前記保存料を届け、前記ポンプ装置(4)を前記測定装置(2)によって決定される流量の関数として制御することができる、飲料を保存するための装置(1)であって、
前記ポンプ装置(4)が、往復ピストンポンプとして構成されている、
ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記装置(1)は、前記保存料を前記飲料ライン(10)へと運ぶノズル装置(6)を有し、前記ノズル装置(6)は、好ましくは、加熱可能なノズル装置である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記ノズル装置(6)は、前記保存料の事前圧力によって制御することができる開放機構を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記ポンプ装置(4)は、チャンバ(12)内に配置される、ことを特徴とする請求項1~3の少なくとも一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記装置は、保存料の蒸気、およびとくには二炭酸ジアルキルの蒸気を処理するための不活化装置(16)を備え、
前記不活化装置(16)は、好ましくは、少なくとも1つの空気循環装置および/またはフィルタ装置を備える、
ことを特徴とする請求項1~4の少なくとも一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記デリバリラインは、前記飲料ライン(10)の湾曲部分(10a)へと開口する、ことを特徴とする請求項1~5の少なくとも一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記装置(1)は、前記二炭酸ジアルキルを受け入れるための貯蔵容器を備える、ことを特徴とする請求項1~6の少なくとも一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記測定装置は、前記飲料の流れの方向において前記二炭酸ジアルキルの前記飲料ラインへの供給の位置の上流に配置される、ことを特徴とする請求項1~7の少なくとも一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記ポンプ装置(4)は、可変の送出速度を有する、ことを特徴とする請求項1~8の少なくとも一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記装置(1)は、前記ポンプ装置(4)の漏れの検出に適しており、前記漏れを検出するように意図された監視装置を備える、ことを特徴とする請求項1~9の少なくとも一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
飲料ライン(10)を通って流れる液体の流量が、測定装置(2)によって決定され、
保存料、とくには二炭酸ジアルキルが、ポンプ装置(4)によって前記飲料ライン(10)へと運ばれ、
デリバリラインが、前記飲料ライン(10)へと開口し、
前記ポンプ装置は、前記飲料ラインを通って前記保存料を運び、
前記ポンプ装置(4)は、前記測定装置(2)によって決定される流量の関数として制御される、
飲料を保存するための方法であって、
前記ポンプ装置(4)が、往復ピストンポンプとして設計されている、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記保存料は、ノズル装置(6)によって前記飲料ライン(10)へと計量され、前記ノズル装置(6)は、好ましくは加熱される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ノズル装置(6)の開放の状態が、前記デリバリラインにおける前記保存料の事前圧力によって制御される、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
生じた保存料の蒸気、およびとくには二炭酸ジアルキルの蒸気が、不活化される、ことを特徴とする請求項11~13の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項15】
飲料の充てん時に飲料ラインへと保存料を供給するためのピストンポンプの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を保存するための方法および装置、ならびにこの目的のための装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二炭酸ジアルキル、二酸化硫黄、ナタマイシン、ベンゾエート、またはソルベートなどの保存料が、非アルコールの発泡または非発泡果汁飲料、果汁、ワイン、非アルコールワイン、サイダー、アイスティー、および他の飲料の低温殺菌のために、飲料業界において使用されている。とくには二炭酸ジメチルまたは二炭酸ジエチルなどの二炭酸ジアルキルは、いくつかの利点を有する特別な低温殺菌剤の代表である。顕著な利点は、高温充てんとは対照的に、味および色が影響を受けないという事実にある。また、安息香酸ナトリウムまたは安息香酸あるいはソルビン酸カリウムまたはソルビン酸などの持続性の保存料と比較して、利点は、とりわけ味を損なうことがなく、効果が消失することである。二炭酸ジアルキルは無害な成分に分解されるため、実際の消費者が保存料を摂取することがない。
【0003】
低温無菌充てんと比較して、二炭酸ジアルキルを使用するとき、プラント技術における大幅に低い投資コストが、利点になることが知られている。
【0004】
技術水準によれば、二炭酸ジアルキルの添加には、オンラインのダイアフラム投入ポンプのみが使用されている。これは、処理される飲料の量が、初めから固定されていないがゆえに必要である。ダイアフラムポンプの利点は、ポンプ室が完全に密閉されていることである。
【0005】
ウォータジェットポンプの原理による比較的単純な装置でワイン樽への二炭酸ジアルキルの導入を可能にする装置および方法が記載されている。しかしながら、この方法は、飲料の量が正確に知られている場合や、標準化されたワイン樽の量に正確に対応する場合にのみ機能する。これは、国際公開第2019/179695号公報で既知となった樽内の正確に規定された量のワインのための装置を含む。これは、はるかに単純な原理で動作するが、開始前のより少量かつ正確に定義された量の飲料においてのみ機能する。通常のオンラインでの投入に使用されるものではない。
【0006】
ダイアフラムポンプを備える装置は、磁気または電気によって駆動されるダイアフラムポンプ、貯蔵器、二炭酸ジアルキルを霧化させるための飲料ラインに取り付けられた装置、飲料ラインに取り付けられた流量計、および電子制御システムからなる。この形式の投入ポンプは、通常は、飲料ラインに恒久的に設置される。
【0007】
これらの装置の動作モードは、飲料配管を流れる飲料の流量のオンライン測定と、並行して計算される投入すべき二炭酸ジアルキルの量とに基づく。したがって、二炭酸ジアルキルは、必要な量にて飲料配管に比例的に投入される。これらのポンプの例は、Lanxess社のVelcorinDTというユニットである。
【0008】
飲料、例えば非アルコールのソフトドリンクまたはワインまたは混合ビール飲料の処理において、例えば細菌または酵母に対抗するために、二炭酸ジアルキルによる低温滅菌処理が必要となり得る。したがって、前述の投入装置が処理に使用される。
【0009】
上述のダイアフラムポンプは、良好に機能するが、特定の制限を伴う。例えば、使用されるダイアフラム投入ポンプは、比較的大きくて重く、したがって通常は、荷物を支えるための特別な機械的装置を用いて輸送されなければならない。1人の人間によって容易に運ぶことができる投入ポンプを有することが、望ましいと考えられる。これにより、はるかに簡単でより柔軟な使用が可能になると考えられる。
【0010】
加えて、金属ダイアフラムを有するダイアフラム投入ポンプは、比較的高価である。これは、信頼できる機能を保証するために必要とされる比較的堅固な設計に起因する。はるかに単純な設計の装置が、望ましいと考えられる。
【0011】
加えて、ダイアフラム投入ポンプの使用は、設定および設置に充分な時間を必要とする。例えば、ポンプが水平に設置されることが保証されなければならない。ここで、とくには該当の装置が年間の短い時間しか使用されず、したがって迅速かつ簡単な設置がきわめて有利であると考えられるワインの瓶詰めにおいて、比較的単純かつ迅速に設置することができる装置が望ましいと考えられる。
【0012】
さらに、ダイアフラム投入ポンプのダイアフラムは、破れたり、微細な亀裂を生じたりする可能性がある。これにより、ダイアフラムの油圧領域からの油が飲料に入る可能性がある。したがって、誤投入を確実に防止するため、ダイアフラムの裂けを確実に検出するために、これらのポンプに複雑な監視装置を設置する必要がある。
【0013】
二炭酸ジアルキルを用いた保存のためのすべての既知のポンプ装置は、膜によって機能する。この1つの理由は、二炭酸ジアルキルの使用が、これらの二炭酸ジアルキルが場合によってはきわめて刺激性であるため、ダイアフラムによってのみ可能であるというこれまでの仮定であるかもしれない。ギアポンプまたはピストンポンプなどの多数の他のポンプにおいては、製品搬送領域が通常は完全には密封されず、したがって最小限の製品漏れを防止することができない。実際、ダイアフラム計量ポンプを使用する場合、環境/外部からの二炭酸ジアルキル含有領域の分離は、比較的容易、完全、かつ安全である。これまでのところ、これが二炭酸ジアルキルの安全な投入のための必要条件であると考えられていた。したがって、当業者にとってダイアフラムポンプのみが考慮の対象であった。
【0014】
したがって、二炭酸ジアルキルを投入するための技術水準の欠点を克服する方法が、依然として必要とされていた。
【発明の概要】
【0015】
驚くべきことに、ダイアフラム投入ポンプを超える著しい利点を提供する方法および装置が今や発見された。
【0016】
この装置または方法は、飲料の保存にこれまで使用されてきた方法よりも、はるかに経済的でもある。
【0017】
本発明の飲料を保存するための装置は、飲料ラインを通って流れる液体の流量の決定に適しており流量を決定するように意図された測定装置と、保存料、とくには二炭酸ジアルキルを飲料ラインへと運ぶ及び/又は投与するポンプ装置と、を有し、飲料ラインへと開くデリバリラインが設けられ、ポンプ装置はデリバリラインを通って二炭酸ジアルキルを届け、ポンプ装置を測定装置によって決定される流量の関数として制御することができる。
【0018】
本発明によれば、ポンプ装置は往復ポンプとして、特に往復ピストンポンプとして設計される。
【0019】
したがって、本発明の技術的範囲において、測定装置、とくには流量測定装置と、往復ポンプとを備える飲料の保存のための装置および方法が説明される。
【0020】
往復ポンプの使用は、その設計がダイアフラムポンプの設計よりも複雑であるため、普通ではない。しかしながら、往復ピストンポンプを使用する主な利点は、とくには流量に関してより可変的に使用できることである。
【0021】
本発明の意味における飲料は、好ましくは、非アルコールの清涼飲料、または他の分類を部分的に使用する他の管轄区域のすべての対応する飲料である。また、ワインおよび混合ワイン飲料、アルコールが0.5~18%のアルコール飲料、例えばビールまたは混合ビール飲料、ジュース、ネクター、混合ジュース飲料、アイスティー、なども本発明に適する。発泡飲料および非発泡飲料が等しく適している。5を超えるpH値を有する飲料は、本発明の意味において好ましくない。したがって、好ましくは、瓶詰めされる飲料は、5以下のpH値を有する。
【0022】
本発明の意味における飲料は、好ましくは、液体の総質量に基づいて、70~99.9重量%の水を含有する。
【0023】
好ましくは、測定装置は、流量測定装置である。すべての可能な種類の流量測定装置が好適である。好ましくは、流量測定装置は、誘導流量計、質量流量計、機械式流量計、あるいは例えば音波流量計または表面流量計を含む流量測定装置の群から選択される。
【0024】
本発明に従って使用される往復ピストンポンプは、典型的には、とくに好ましくは電気モータによって駆動される少なくとも1つの可動なピストン形状のポンプ本体(とくには、直線方向に移動可能)を有する。好ましくは、モータは、制御可能かつとくには調整可能なモータであり、とくに好ましくはサーボモータである。
【0025】
このピストンは、典型的には、適切なハウジング(とくにはステンレス鋼で作られる)内に配置され、前後に繰り返し移動する。ピストンは、典型的には、適切なシール装置、好ましくはシーリングによって、送り出される液体が逃げ出すことができず、あるいは無視できる量しか逃げ出すことができないようなやり方で封止される。好ましくは0.1ppm未満、好ましくは0.08ppm未満、とくに好ましくは0.04ppm未満しか逃げ出すことができない。
【0026】
加えて、往復ポンプは、好ましくは、物質、とくにはピストンの背後の領域に進入した保存料を洗い流すために適したフラッシング装置を有する。フラッシングを、溶媒によって行うことができ、あるいは空気などの気体によっても行うことができる。
【0027】
好ましくは、ポンプ装置は、少なくとも1つの弁、好ましくは少なくとも2つの弁、とくにはポンプ作用を可能にする一方向弁を有する。これらの弁を、逆止弁として設計することができる。これらの弁は、とくにはピストンのチャンバの前後に配置され、好ましくはチャンバに流れに関して接続されてよい。このようにして、搬送されるべき媒体の流入および流出が、それ自体は公知のやり方で達成され、これによって媒体は前方に搬送される。
【0028】
本発明の意味におけるピストンポンプのさらなる実施形態は、前後運動が送出速度に変換される両側において使用されるピストンを含むことができる。同様に、いくつかのピストンを有するポンプを、送出および送出圧力がもはやパルス状ではなく比較的連続的であるように接続することができる。例えば、バイナリポンプ、クォータナリポンプ、またはデュアルポンプが挙げられ、これらはすべて本発明の意味において好適である。
【0029】
さらなる好ましい実施形態において、ポンプ装置は、パルス状の体積流量をもたらす。さらなる好ましい実施形態において、ポンプ装置は、連続的または本質的に連続的な体積流量、例えば周期的に変動する体積流量をもたらす。最大体積流量の10%未満に低下しない体積流量も考えられる。
【0030】
本発明の意味におけるピストンポンプの例は、例えば、ガソリン噴射ポンプである。本発明の意味におけるさらなる例は、分析または分取HPLC技術から由来するポンプである。
【0031】
好ましい実施形態において、ポンプ装置は、可変のデリバリ速度可変の送出速度を有する。
【0032】
前述のすべてのポンプ装置の好ましい実施形態において、このポンプ装置は、0.01l/hを超え、好ましくは0.02l/hを超える送出速度を有する。好ましくは、ポンプ装置は、60l/h未満、好ましくは50l/h未満、好ましくは40l/h未満、好ましくは30l/h未満、好ましくは最大20l/h未満の送出速度を有する。
【0033】
好ましくは、ポンプ装置を、最低流量と最高流量との比が0.1未満、好ましくは0.01未満である出力範囲内で制御することができる。このようにして、飲料を充てんするための多種多様な要件を、単一の種類のポンプで満たすことができる。
【0034】
ポンプは、周期的な送出が可能であり、かつ/またはパルス状の体積流量をもたらすことができ、あるいは弁回路またはピストンの前後運動を利用することによって比較的連続的な送出も可能である。
【0035】
本発明の意味におけるポンプは、遠心ポンプ、ギアポンプ、ダイアフラムポンプ、ヘリカルポンプ、液体ジェットポンプ、容積式ポンプ、スクリューポンプ、または蠕動ポンプではない。本出願の出願人は、広範な研究および実験において、これらの前述のポンプの各々が、保存料の使用から生じるきわめて特定の要件を満たすうえで好適でないと判断した。
【0036】
好ましくは、本発明の意味におけるポンプ装置は、セルフプライミングポンプである。これらは、始動時に送り出すべき液体媒体で満たされる必要がなく、空の状態で始動することができ、その能力ゆえに、乾燥状態でも吸引効果を発現し、独立して媒体を吸引することができるポンプである。したがって、使用されるポンプ装置は、好ましくは、液体物質を、たとえそれらが一時的にポンプ装置と接触していなくても送出するのに適しており、そのように意図される。
【0037】
さらなる好都合な実施形態において、ポンプ装置は、保存料の分解を引き起こさず、とくには二炭酸ジメチルの分解を引き起こさない材料を少なくとも部分的に含む。とくに好ましくは、少なくともポンプ装置のうちの保存料と接触する構成要素が、保存料の分解を引き起こさず、とくには二炭酸ジメチルの分解を引き起こさない材料を有する(あるいは、そのような材料からなる)。
【0038】
好ましい実施形態において、材料は不動態化ステンレス鋼である。したがって、好ましくは、ポンプ装置の少なくとも個々の構成要素は、保存料の分解を引き起こさず、とくには二炭酸ジメチルの分解を引き起こさない材料を有する(あるいは、そのような材料からなる)。好ましくは、これらの構成要素は、ポンプ装置のピストン、ポンプ装置のピストンチャンバ、保存料を導くための導管、ポンプ装置の弁、密封装置、などを含むポンプ装置の構成要素の群から選択される。
【0039】
好ましい実施形態において、ポンプ装置の弁はボール弁である。とくに好ましい実施形態において、これらのボール弁の弁ボールは、保存料の分解を引き起こさない材料で作られ、好ましくはルビーまたは不動態化ステンレス鋼で作られる。
【0040】
さらなる好都合な実施形態において、ポンプ装置は、ポンプ装置の構成要素を加熱し、とくには保存料と接触する構成要素を加熱するための加熱装置を有する。例えば、ピストンチャンバ、ピストン、あるいは弁または配管などの構成要素を加熱することができる。
【0041】
さらなる実施形態において、ポンプ装置は、保存料および/またはポンプ装置の構成要素の温度を検出するための少なくとも1つの温度検出装置を有する。好ましい実施形態において、ポンプ装置を、この温度記録装置またはこれらの温度記録装置によって記録および/または出力されるデータまたは測定値の関数として制御することも可能である。
【0042】
保存料の温度が低すぎると検出された場合、ポンプ装置の領域を加熱することができる。温度が低すぎることが検出された場合、ポンプ装置への保存料の供給を中断したり、ポンプ装置をオフにしたりすることができる。
【0043】
さらに有利な実施形態において、本発明に係る装置は、保存料、特に二炭酸ジアルキルをこの飲料ラインへと運ぶ及び/又は計量するノズル装置を有し、このノズル装置は、好ましくは、加熱可能なノズル装置である。充填される飲料を少なくとも20℃の温度に保つことも可能である。
【0044】
ポンプ装置は、好ましくは、貯蔵器から保存料、とくには二炭酸ジアルキルを取り出し、ノズル装置へと送る。ノズル装置は、好ましくは、保存料、とくには二炭酸ジアルキルを飲料へと噴霧する。
【0045】
好ましくは、ポンプ装置は、圧力下、好ましくは5bar~100bar、好ましくは15bar~50barの圧力下で、保存料をノズル装置へと届ける。
【0046】
好ましくは、飲料は、40l/h~80,000l/hの流量で飲料ラインを通って運ばれる。
【0047】
好ましくは、リザーバとポンプ装置とを接続するラインおよび/またはポンプ装置からノズルまでのラインは、ステンレス鋼で製作されるが、別の金属またはプラスチックで製作することも可能である。
【0048】
本発明の意味におけるノズルは、好都合にはステンレス鋼で作られ、とくに好ましくは不動態化されたステンレス鋼で作られる。
【0049】
好ましくは、ノズル装置は、保存料、とくには二炭酸ジアルキルを最も微細な形態で飲料へと噴霧し、平均液滴サイズは、好ましくは0.1mm未満である。とくに好ましくは、ノズル装置は圧力によって開き、とくには自動的に、保存料または二炭酸ジアルキルがもはや送られなくなるとすぐに閉じ、あるいは保存料/二炭酸ジアルキル側の圧力が所定の限界を下回り、例えば圧力が10バール未満に低下すると閉じる。
【0050】
とくに好ましくは、ノズル装置は、二炭酸ジアルキルの結晶化を防止するために加熱される。加熱は、例えば、好ましくは、とくに好ましくは加熱する加熱ワイヤによって制御される電気加熱素子の形態をとることができ、加熱ワイヤは、とくには金属体に埋め込まれ、あるいはノズルの周りに直接配置される。好ましくは、ノズル装置を、25°C~70°Cの範囲、好ましくは35°C~55°Cの範囲に加熱することができる。
【0051】
保存は、細菌、酵母、および真菌などの微生物に対抗して行われる。好ましくは、保存は、二次汚染に起因して飲料中に存在する微生物に対抗して行われる。本発明の文脈における保存という用語は、滅菌、すなわち保存料が添加される前に微生物が飲料中にすでに存在する場合も含む。したがって、保存料は滅菌剤としても作用する。
【0052】
二炭酸ジアルキルは、好ましくは保存料として使用される。きわめて好ましくは、二炭酸ジメチルが使用され、さらにより好ましくは、99.8%超の純度の二炭酸ジメチルが保存料として使用される。本発明のさらなる実施形態において、適切なプロセスによって安定化された二炭酸ジメチルが使用される。
【0053】
一連のリン酸化物、リン酸素酸、およびそれらの誘導体からのリン化合物の使用など、そのような方法は、例えば欧州特許第2013160号明細書から知られている。欧州特許第2016041号明細書が、化学的および熱的分解反応に対して二炭酸ジアルキルを安定にするために、一連の無機酸および有機カルボン酸ならびにそれらの誘導体からの少なくとも1つのプロトン酸の使用を記載しており、有機カルボン酸は、飽和およびモノまたはポリ不飽和脂肪族モノカルボン酸ならびに飽和およびモノまたはポリ不飽和脂肪族ジおよびポリカルボン酸であり、それらの誘導体は、ヒドロキサム酸、ヒドロキシカルボン酸、アルデヒド、およびケト酸であり、プロトン酸またはその混合物は、二炭酸ジアルキルまたはそれらの混合物に対して0.01~100,000ppmの量で存在する。
【0054】
本発明のさらなる実施形態において、二炭酸ジメチルは、好ましくはリン酸塩などのリン化合物、さらにより好ましくはリン酸トリメチルまたはリン酸との混合物にて使用される。好ましくは、リン化合物は、二炭酸ジメチルとリン化合物との混合物の総量に基づいて0.01ppm~1000ppmの量で使用される。
【0055】
さらに有利な実施形態において、ポンプ装置は、チャンバ内又はハウジング内に配置される。好ましくは、飲料の量に関して0.1ppm~250ppmの保存料が使用される。とくに好ましくは、飲料の量に基づいて1ppm~250ppmの保存料が使用される。
【0056】
好ましくは、このハウジングはステンレス鋼で作られる。このチャンバまたはハウジングは、(保存料の入口および出口を除いて)ポンプ装置を本質的に完全に取り囲むことが可能である。さらなる好ましい実施形態においては、保存料の貯蔵容器もこのハウジング内に配置される。
【0057】
さらなる好都合な実施形態において、装置は、保存料の蒸気、とくには二炭酸ジアルキルの蒸気を処理し、とくには不活化するための不活化装置を備える。
【0058】
好ましい実施形態において、この不活化装置は、少なくとも1つの空気循環装置および/または少なくとも1つのフィルタ装置、とくには活性炭フィルタ装置を備える。
【0059】
さらなる好都合な実施形態において、装置は、蒸気、とくには保存料の蒸気を検出するための検出装置を備える。
【0060】
さらなる好都合な実施形態において、デリバリラインは、飲料ラインの湾曲部分および/または偏向部分へと開口する。これは、そのような湾曲部分において飲料の流れの方向が変化し、したがって好ましくは乱流が発生し、保存料の投入に有利であり、すなわち飲料中の保存料の良好な分布をもたらすため、好ましい。
【0061】
さらなる好ましい実施形態において、装置は、保存料、とくには二炭酸ジアルキルを保持するための貯蔵容器を有する。とくには、貯蔵容器は、交換可能な容器である。好ましくは、装置は、この容器を受け入れるためのホルダを有することができる。
【0062】
好ましくは、ポンプ装置は、この貯蔵容器から保存料を取り出すことができる。さらなる好ましい実施形態において、貯蔵容器はポンプ装置の下方に配置される。さらなる好都合な実施形態において、貯蔵容器は、ポンプ装置に流れに関して連絡しており、あるいはそのように流れに関して連絡させることが可能である。
【0063】
さらに有利な実施形態では、測定装置は、飲料の流れの方向において保存料又は二炭酸ジアルキルの飲料ラインへの供給の位置の上流に配置される。好ましくは、流量測定装置は、保存料の供給位置の(飲料の流れの方向における)上流に、変化する飲料の流量に常に直接反応することができる距離に配置される。
【0064】
流量測定装置は、充てんシステムの構成要素であり、そのデータを読み出すことが可能である。しかしながら、好ましくは、本発明による装置は、独立型の装置として設計され、好ましくは、既存の充てんシステム(とくには、自前の流量測定装置を有さないシステムも)への追加または後付けも可能である。
【0065】
さらなる好都合な実施形態において、装置は、ポンプ装置の漏れの検出に適しており、ポンプ装置の漏れを検出するように意図された監視装置を有する。これは、例えば、好ましくは、例えばピストンチャンバの領域における液体の漏れを検出するカメラであってよい。あるいは、そのような監視装置を水分センサとして設計することも可能である。
【0066】
このようにして、とくには装置の動作中に漏れを検出することができる。この検出に応答して警告信号を発することができる。このような漏れが検出されたときにポンプ装置をオフにすることも可能である。
【0067】
さらに、本発明は、飲料を保存するための方法に関し、飲料ラインを通って流れる液体の流量が、測定装置によって決定され、保存料、とくには二炭酸ジアルキルが、ポンプ装置によって飲料ラインへと運ばれ、デリバリラインが飲料ラインへと開口し、ポンプ装置は、このデリバリラインを通って保存料を運び、ポンプ装置は、測定装置によって決定される流量の関数として制御される。
【0068】
本発明によれば、ポンプ装置は、往復ポンプ、とくには往復ピストンポンプとして設計される。
【0069】
好ましくは、本発明による方法は、飲料の充てんプロセスが始まるとすぐにポンプ装置がオンになるようなやり方で実行される。とくに好ましくは、測定装置または流量計によって測定される飲料の量から、投入すべき保存料、とくには二炭酸ジアルキルの量を計算する電子制御装置が使用される。このようにして、独立かつ完全に自動化された投入を達成することができる。
【0070】
好ましい方法において、保存料はノズル装置によって飲料ラインに投入され、このノズル装置は、好ましくは加熱される。とくに好ましくは、このノズル装置は電気的に加熱される。
【0071】
さらなる好ましい方法において、ノズル装置は、保存料の圧力に応じて開閉する。
【0072】
さらなる好ましい方法において、ノズル装置の開放状態は、デリバリライン、とりわけ上述のデリバリラインにおける保存料の事前圧力によって制御される。この場合、保存料を飲料の流れへと連続的または実質的に連続的に、とくには計量して導入することが可能である。あるいは、保存料をパルスにて飲料の流れに導入することが可能である。
【0073】
好ましくは、ポンプ装置は、20kg未満、好ましくは15kg未満、好ましくは10kg未満の重量を有する。好ましくは、装置全体の重量が100kg未満である。
【0074】
さらなる好都合なプロセスにおいて、保存料の蒸気、とくには二炭酸ジアルキルの蒸気が不活化される。これは、好ましくは、フィルタ装置および/または空気循環装置によって実行することができる。このような蒸気の発生を検出し、それに応じて空気循環装置を作動させることが可能である。
【0075】
さらに、本発明は、飲料の充てん中に保存料を飲料ラインへと供給するために往復ポンプを使用することに関する。
【0076】
さらなる利点および実施形態を、添付の図面において見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1が、本発明による装置1を示している。参照符号10が、例えば、概略的にのみ示されている充てん装置20に通じることができる飲料ラインを指している。参照符号2が、飲料ライン10を通る飲料の流量を、とくには連続的に検出する流量測定装置を示している。この流量測定装置2は、この信号に応答してポンプ装置4を制御する制御装置14に信号Sを出力する。
【0079】
ポンプ装置4は、ここでは、保存料を貯蔵容器8から吸い出してデリバリラインへと運ぶ往復ポンプとして設計されている。ノズル装置6が、このデリバリラインの端部に配置され、保存料を飲料ライン10の曲がり領域10aに届ける。
【0080】
ポンプ装置4は、好ましくは貯蔵容器8と共に、ハウジング12内に配置される。参照符号18が、保存料の蒸気の存在の検出に適しており、保存料の蒸気の存在を検出するように意図された検出装置を示している。参照符号22が、ハウジング12内の空気の循環の達成に適しており、ハウジング12内の空気の循環を達成するように意図された循環ポンプをきわめて概略的に示している。
【0081】
参照符号16が、活性炭フィルタなどの不活化装置を示している。
【0082】
本発明による装置は、二炭酸ジアルキルによる保存プロセスをより経済的に、より大きな性能範囲でも機能させることができる新規かつ効率的な装置および方法を記載する。加えて、装置全体を、一般的に使用されるダイアフラム式の投入ポンプよりも著しく小さくすることができる。
【0083】
本発明による方法の第1の例においては、
図1による装置が使用される。貯蔵容器8に二炭酸ジメチルを収容した。使用した二炭酸ジメチルは、LanxessDeutschlandGmbHのVelcorin(登録商標)という製品であった。
【0084】
ポンプ装置を、ステンレス鋼管で配管の入口および出口に接続した。ポンプ装置の前に配管を接続し、二炭酸ジメチルの吸引を可能にした。
【0085】
流量計の内部電子機器を電子制御に使用し、受信した信号をポンプ装置4に直接送信した。これにより、流量計の電子機器は、好ましくは、体積比例制御信号を発する。10mlのポンプヘッドおよび50~85バールの背圧における3.5ml/分までの流量で、飲料(水)への二炭酸ジメチルの微細な噴霧を観察することができた。ノズル装置における液滴形成は観察されなかった。結果は、飲料への二炭酸ジメチルの均一な導入および混合を示している。刺激性の二炭酸ジメチルの環境への漏出は観察されなかった。
【0086】
さらなる例においては、ステンレス鋼ノズルをノズル装置として使用した。これは、円錐形の穴を有し、この穴に円錐形の相手方が取り付けられていた。印加される圧力が増加すると、このノズル装置が徐々に開く。入口圧力が低下すると、ノズルは再び自動的に閉じる。この事前圧力は、好ましくは5bar~30barの範囲である。
【0087】
アイスティーを飲料として用いた。24時間後の加水分解後に生じたメタノール(MeOH)から、投入した二炭酸ジメチルの量を逆算することができる。メタノールに関する飲料の分析は、以下の表1に示されるとおり、二炭酸ジメチル(DMDC)の均一かつ制御された導入を示した。
【0088】
【0089】
結果は、飲料への二炭酸ジメチルの均一な導入および混合を示している。所望の投入量が保証される。刺激性の二炭酸ジメチルの環境への漏出は観察されなかった。
【0090】
出願人は、個別にまたは組み合わせて従来技術と比較して新しい場合に限り、出願書類に開示されたすべての特徴を本発明に必須であると主張する権利を留保する。さらに、図には、それ自体で有利になる可能性のある機能も記載されていることが指摘される。当業者であれば、図からさらなる特徴を採用しなくても、図に記載されている特定の特徴も有利であり得ることを直ちに認識する。さらに、当業者は、個々の図または異なる図に示されるいくつかの特徴の組み合わせからも利点が得られることを認識する。
【国際調査報告】