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特表2024-518710可溶性封入ポリヌクレオチドとイオン化可能脂質とを含むポリマーソームならびにその作製および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】可溶性封入ポリヌクレオチドとイオン化可能脂質とを含むポリマーソームならびにその作製および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/50 20060101AFI20240424BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240424BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240424BHJP
   A61K 39/225 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240424BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240424BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20240424BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240424BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240424BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240424BHJP
   C07K 14/11 20060101ALN20240424BHJP
   C07K 14/17 20060101ALN20240424BHJP
   C07K 14/77 20060101ALN20240424BHJP
【FI】
A61K9/50 ZNA
A61K47/18
A61K31/7105
A61K31/711
A61K39/00 G
A61K48/00
A61K38/02
A61P37/04
A61P31/12
A61P31/16
A61P31/14
A61K47/34
A61K39/225
A61K39/145
A61K47/20
C12N15/88 Z
C12N15/33
C12N15/62 Z
C12N15/12
C07K19/00
C07K14/11
C07K14/17
C07K14/77
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023562483
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2022059701
(87)【国際公開番号】W WO2022218957
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】21167911.3
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TWEEN
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520272743
【氏名又は名称】エイシーエム バイオラブズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ナラーニ マドハバン
(72)【発明者】
【氏名】ラム ジェン ハン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン リアム
(72)【発明者】
【氏名】ベンカタラマン シュリーニバース
(72)【発明者】
【氏名】キア テック ワン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB36
4C076CC06
4C076CC35
4C076DD49
4C076DD55
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE25
4C076EE27
4C076EE49
4C076FF63
4C076FF70
4C084AA13
4C084BA03
4C084CA01
4C084MA05
4C084MA16
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB33
4C084ZC61
4C085AA03
4C085BA55
4C085BA73
4C085CC08
4C085EE01
4C085EE05
4C085EE07
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA38
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB33
4C086ZC61
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA18
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045CA41
4H045DA70
4H045DA86
4H045EA22
4H045EA29
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、可溶性封入抗原を含むポリマーソームに関し、該可溶性封入抗原は、DNA分子またはmRNA分子から選択されるポリヌクレオチドであり、ポリマーソームはイオン化可能脂質をさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性封入抗原を含むポリマーソームであって、該可溶性封入抗原が、RNA(例えばmRNA)分子またはDNA分子から選択されるポリヌクレオチドであり、該ポリマーソームが、イオン化可能脂質をさらに含む、ポリマーソーム。
【請求項2】
前記イオン化可能脂質が、カチオン性イオン化可能脂質である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項3】
前記イオン化可能脂質が、
(i)第三級アミンであり(例えば、第四級アミンではなく)、および/または1つもしくは複数の第三級アミン部分を含む(例えば、カチオン性四級化アンモニウム部分を含まない)、ならびに/あるいは
(ii)窒素原子に遊離電子対(例えば、イオン化可能な窒素原子)を含む、
前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項4】
前記イオン化可能脂質が、以下:
i)式I:
を有するイオン化可能脂質DLin-MC3-DMA(すなわち、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)、
ii)式II:
を有するイオン化可能脂質319、
iii)式III:
を有するイオン化可能脂質C12-200、
iv)式IV:
を有するイオン化可能脂質5A2-SC8、
v)式V:
を有するイオン化可能脂質306Oi10、
vi)式VI:
を有するイオン化可能脂質5、
vii)式VII:
を有するイオン化可能脂質SM-102(すなわち、ヘプタデカン-9-イル 8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)、
viii)式VIII:
を有するイオン化可能脂質A9、
ix)式IX:
を有するイオン化可能脂質ALC-0315(すなわち、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1ージイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、
x)式X:
を有するイオン化可能脂質Arcturus 2.2(8.8)4C CH3、
xi)式XI:
を有するイオン化可能脂質Genevant CL1、
xii)式XII:
を有するイオン化可能脂質ALC-0159(すなわち、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)、
xiii)1つまたは複数のそのアルキル鎖がさらにエステル化されている、(i)~(xii)のいずれか1つ
を含むか、またはそれからなる、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)が、1つまたは複数のポリペプチドをコードし、好ましくは、該1つまたは複数のポリペプチドが、ウイルスポリペプチドである、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項6】
前記ポリマーソームが、前記ポリヌクレオチド(例えばmRNA)および/または該ポリヌクレオチド(例えばmRNA)によってコードされる1つもしくは複数のポリペプチドの、該ポリマーソーム内での熱安定性および/または貯蔵安定性および/または免疫原性を、好ましくは同じポリヌクレオチド(例えばmRNA)および/または該同じポリヌクレオチド(例えばmRNA)によってコードされる1つもしくは複数のポリペプチドの、イオン化可能物質を有さない別のポリマーソーム内での、またはコレステロールを含むイオン化可能脂質ナノ粒子(LNP)内での、同じ条件下におけるそれと比べて増加させることができ、
さらに好ましくは、該熱安定性および/または貯蔵安定性が、約-80℃~約4℃の温度範囲内で(例えば-80℃、-20℃または4℃、好ましくは-80℃で)増加し、最も好ましくは、該免疫原性が、約36.5℃~約37.5℃の温度範囲内で増加し、さらに最も好ましくは、該増加が、少なくとも約5%(例えば少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%)の増加である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項7】
酸化安定性ポリマーソームである、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項8】
前記ポリマーソームが、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発する能力を有し、好ましくは、該誘発が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ誘発であり、さらに好ましくは、該CD8(+)T細胞媒介性免疫応答が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項9】
前記ポリマーソームが、細胞性免疫応答を誘発する能力を有し、該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは、該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答であり、さらに好ましくは、該CD8(+)T細胞媒介性免疫応答が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項10】
前記ポリマーソームが、細胞性および/または体液性免疫応答を誘発する能力を有し、該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは、免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答であり、さらに好ましくは、該細胞性および/または体液性免疫が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫であり、最も好ましくは、該CD8(+)T細胞媒介性免疫応答が、該ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項11】
前記体液性免疫応答が、特異的抗体の生産を含み、さらに好ましくは、該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答であり、最も好ましくは、該体液性免疫が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項12】
前記ポリマーソームが、エフェクターCD4(+)T細胞の頻度を強化する能力を有し、好ましくは、該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ強化であり、さらに好ましくは、エフェクターCD4(+)T細胞の該頻度が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する頻度である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項13】
前記細胞性免疫応答が、T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは、該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答であり、さらに好ましくは、T細胞媒介性免疫応答を含む該細胞性免疫応答が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項14】
該ポリマーソームが、遊離の抗原と比較して抗原特異的CD8(+)T細胞のクローン拡大を強化する能力を有し、好ましくは、該拡大が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ拡大であり、さらに好ましくは、抗原特異的CD8(+)T細胞の該クローン拡大が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対するクローン拡大である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項15】
前記ポリマーソームが、抗原特異的エフェクターCD8(+)T細胞を誘導する能力を有し、好ましくは、該誘導が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ誘導であり、さらに好ましくは、抗原特異的エフェクターCD8(+)T細胞の該誘導が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する誘導である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項16】
前記ポリマーソームが、抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性表現型を強化する能力を有し、好ましくは、該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ強化であり、さらに好ましくは、抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性表現型の該強化が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する強化である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項17】
前記ポリマーソームが、リンパ節常在性マクロファージおよび/またはB細胞をターゲティングする能力を有し、好ましくは、該ターゲティングが、インビボ、エクスビボまたはインビトロのターゲティングであり、さらに好ましくは、リンパ節常在性マクロファージおよび/またはB細胞の該ターゲティングが、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対するターゲティングである、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項18】
以下の能力:
i)細胞性免疫応答を誘発する能力であって、好ましくは、該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、さらに好ましくは、該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答であり、最も好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
ii)ポリマーソームの内容物を酸化非依存的に放出して、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力であって、好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
iii)前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫応答を刺激する能力、
iv)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする能力であって、好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
v)前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドを抗原提示細胞(APC)に送達する能力、
vi)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする能力であって、好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
vii)対象における免疫応答を刺激する能力であって、好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
viii)非ヒト動物を免疫処置する能力であって、好ましくは、該免疫処置が、前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)によってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫処置である、能力、
ix)前記ポリマーソームが、該ポリマーソームなしでの該抗原の対応する抗原性と比較して、改変された抗原性を有する、
x)前記ポリマーソームが、該ポリマーソームなしでの該抗原の対応する免疫原性と比較して、改変された免疫原性を有する
のうちの1つまたは複数を有する、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項19】
以下の特性:
i)前記ポリマーソームが、酸化安定性膜を含む、ならびに/または
ii)前記ポリマーソームが、合成物である、ならびに/または
iii)前記ポリマーソームが、非封入抗原を含まないか、もしくは非封入抗原と混合されている、ならびに/または
iv)前記ポリマーソームが、両親媒性ポリマーの膜を含む、ならびに/または
v)前記ポリマーソームが、ベシクル膜を形成する両親媒性合成ブロック共重合体を含む、ならびに/または
vi)前記ポリマーソームが、70nm超の直径を有し、好ましくは該直径が、約100nm~約1μm、もしくは約100nm~約750nm、もしくは約100nm~約500nm、もしくは約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、もしくは約220nm~約180nm、もしくは約190nm~約210nmの範囲であり、最も好ましくは該直径が、約200nmである、ならびに/または
vii)前記ポリマーソームが、ベシクルの形態を有する、
viii)前記ポリマーソームが、自己集合性である、
ix)前記ポリマーソームが、両親媒性ブロック共重合体を含み、該両親媒性ブロック共重合体が、(a)pHを感知する能力を有し(例えば、pHに応じてプロトン化もしくは脱プロトン化を起こす能力を有し)、ならびに/または(b)pH感受性部分になるように修飾および/もしくは置換されており(例えば、pHに応じてプロトン化もしくは脱プロトン化を起こす能力を有し)、好ましくは、該修飾および/もしくは置換が、ヒドロキシル基(例えばC-OH)を-NH3基およびカルボキシル基(例えば-COOH)に/で修飾および/もしくは置換すること(例えば、PBD-PEO-OH官能基をPBD-PEO-NH3およびPBD-PEO-COOHに修飾および/もしくは置換すること)を含む
のうちの1つまたは複数を有する、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項20】
前記ポリマーソームが、ポリマーソームの集合体の形態にあり、該ポリマーソームの集合体の平均直径が、約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にある、請求項18記載のポリマーソーム。
【請求項21】
前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)が、免疫原をコードする、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチドが、1つまたは複数のウイルスポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニンおよび/またはブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質をコードするポリヌクレオチド、さらに好ましくは、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:12、13および14からなる群より選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:16)が、以下:
i)インフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択されるもの、
ii)ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:6、
iii)卵白アルブミン(OVA)、好ましくはSEQ ID NO:4、
iv)B16ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11からなる群より選択されるもの、
v)MC38ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3からなる群より選択されるもの、
vi)B16ペプチドおよびMC38ペプチド、好ましくは、群:i)SEQ ID NO:1~3およびii)SEQ ID NO:9~11から独立して選択されるもの、ならびに/または
vii)ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質およびその可溶性フラグメント、好ましくはSEQ ID NO:12、13または14のフラグメント
のうちの1つまたは複数をコードする、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項24】
前記ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、本質的に非免疫原性または本質的に非抗原性であり、好ましくは前記ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、非免疫原性または非抗原性である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項25】
前記ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、免疫賦活薬でもアジュバントでもない、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項26】
前記両親媒性ポリマーが、ジブロックまたはトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)共重合体を含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項27】
前記両親媒性ポリマーが、共重合体ポリ(N-ビニルピロリドン)-b-PLAを含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項28】
前記両親媒性ポリマーが、カルボン酸、アミド、アミン、アルキレン、ジアルキルシロキサン、エーテルまたはアルキレンスルフィドのモノマー単位を少なくとも1つ含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項29】
前記両親媒性ポリマーが、オリゴ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシエチレン)ブロック、オリゴ(オキシプロピレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、オリゴ(オキシブチレン)ブロックおよびポリ(オキシブチレン)ブロックからなる群より選択されるポリエーテルブロックである、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項30】
前記両親媒性ポリマーが、ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PB-PEO)ジブロック共重合体であるか、または前記両親媒性ポリマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項31】
前記PB-PEOジブロック共重合体が、5~50ブロックPBおよび5~50ブロックPEOを含むか、または前記PB-PEOジブロック共重合体が、好ましくは5~100ブロックPDMSおよび5~100ブロックPEOを含む、請求項36記載のポリマーソーム。
【請求項32】
前記両親媒性ポリマーが、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PLA-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくは、該PLA-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPLA-PEO対POPC(例えばPLA-PEO/POPC)の比を有する、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項33】
前記両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PCL-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくは、該PCL-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPCL-PEO対POPC(例えばPCL-PEO/POPC)の比を有する、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項34】
前記両親媒性ポリマーが、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)である、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項35】
ジブロック共重合体PBD21-PEO14(BD21)およびトリブロック共重合体PMOXA12-PDMS55-PMOXA12を含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項36】
脂質ポリマーを含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項37】
以下:
i)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、およびイオン化可能脂質DLin-MC3-DMA(すなわち、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)、
ii)PBD-PEO(ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド))、およびイオン化可能脂質DLin-MC3-DMA(すなわち、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)、好ましくは15%または30%のDLin-MC3-DMAを含むもの、
iii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式IIを有するイオン化可能脂質319、
iv)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式IIIを有するイオン化可能脂質C12-200、
v)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式IVを有するイオン化可能脂質5A2-SC8、
vi)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式Vを有するイオン化可能脂質306Oi10、
vii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式VIを有するイオン化可能脂質5、
viii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式VIIを有するイオン化可能脂質SM-102、
ix)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式VIIIを有するイオン化可能脂質A9、
x)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式IXを有するイオン化可能脂質ALC-0315(すなわち、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1ージイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、
xi)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式Xを有するイオン化可能脂質Arcturus 2.2(8.8)4C CH3、
xii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式XIを有するイオン化可能脂質Genevant CL1、
xiii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式XIIを有するイオン化可能脂質ALC-0159(すなわち、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)
のうちの1つまたは複数を含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム。
【請求項38】
前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソームを含む、組成物。
【請求項39】
薬学的組成物または診断組成物である、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項40】
皮内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、または粘膜表面への非侵襲性投与のために製剤化された、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項41】
前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソームおよび/または組成物を含む、キット。
【請求項42】
医薬として使用するための、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物またはキット。
【請求項43】
以下の方法:
i)抗体を発見および/またはスクリーニングおよび/または調製する方法、
ii)免疫原性組成物または免疫賦活組成物を生産または調製する方法、
iii)前記ポリヌクレオチドによってコードされる前記1つまたは複数のポリペプチドの標的送達方法、さらに最も好ましくは、該標的送達が、対象において実行される、方法、
iv)前記ポリヌクレオチドによってコードされる前記1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫応答を刺激する方法、
v)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする方法、
vi)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする方法、
vii)感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法であって、好ましくは、該感染性疾患が、ウイルス感染性または細菌感染性疾患であり、さらに好ましくは、該ウイルス感染性疾患が、インフルエンザ感染症、PEDウイルス感染症、口蹄疫ウイルス感染症、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症からなる群より選択される、方法、
viii)がんまたは自己免疫疾患の処置、改善、予防または診断のための方法、
ix)がん細胞を化学治療に対して感作させるための方法、
x)がん細胞におけるアポトーシス誘導のための方法、
xi)対象における免疫応答を刺激するための方法、
xii)非ヒト動物を免疫処置するための方法、
xiii)ハイブリドーマの調製のための方法、
xiv)インビボおよび/またはエクスビボおよび/またはインビトロの方法である、前記i)~xiii)のいずれか一つに記載の方法
のうちの1つまたは複数において使用するための、前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物またはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月12日に欧州特許庁に出願された欧州特許出願第21167911号の優先権を主張し、その全内容は、参照により、あらゆる目的で本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本願はコンピュータ可読形式の配列表を含んでおり、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
技術分野
本発明は、可溶性のまたは可溶化された抗原(例えばポリヌクレオチド、例えばDNA分子、RNA分子および/またはそれらの1つもしくは複数の組合せ)とイオン化可能脂質とを含む酸化安定性ポリマーソームを含む、ポリマーソームに関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
免疫処置は確立したプロセスであるが、免疫原または抗原が異なると、誘発される応答のレベルも相違する。例えば膜タンパク質は、低い応答レベルを生じる抗原の一クラスを形成するが、これは結果として、免疫応答を所望のレベルまで生成させまたは誘発するには、多量の膜タンパク質が必要であることを意味する。膜タンパク質は合成が難しいことで知られており、界面活性剤(detergent)が存在しなければ水に不溶である。そのため、膜タンパク質は高価であり、免疫処置のために十分な量の膜タンパク質を得ることは困難である。さらにまた、膜タンパク質は、正しく機能するために、適正なフォールディングを必要とする。正しく折りたたまれたネイティブ膜タンパク質の免疫原性は、生理学的に意味のある形では折りたたまれていない可能性があるそれらの可溶化型よりも、通例、はるかに良好である。したがって、そのような可溶化抗原の免疫原性をブーストするためにアジュバントを使用することができるとしても、それは、あまり大きな利点のない非効率的な方法である(例えばWO2014/077781A1)。
【0005】
インビボで効率的でありうる抗体を単離するチャンスを増加させるために、膜タンパク質抗原の提示には、トランスフェクト細胞および脂質ベースの系が使用されてきたが、これらの系は、多くの場合、不安定(例えば酸化感受性)であり、手間とコストがかかる。そのうえ、そのような膜タンパク質抗原については、不活性なウイルス様粒子を免疫処置に使用することが、現在の先端技術である。
【0006】
一方、感染性疾患を主とする疾患を防止するには、ワクチンが最も効率のよい方法である[例えばLiu et al.,2016]。現時点では、認可されたワクチンの大半が、生ウイルスまたは死滅ウイルスのどちらかでできている。そのようなワクチンは、ウイルスの伝播および細胞への進入を防ぐ目的で体液性免疫(抗体媒介性応答)を生成させるには有効であるものの、そのようなワクチンの安全性には懸念が残る。過去数十年の間に、科学の進歩は、非複製組換えウイルスであるワクチンベクターを工学的に作出することにより、そのような問題を克服するのに役立ってきた。並行して、より安全な代替物として、タンパク質ベースの抗原またはサブユニット抗原が検討されている。しかし、そのようなタンパク質ベースのワクチンによって誘発される免疫は(体液性応答も細胞性応答も)典型的には不十分である。抗原の免疫原特性を改良するために、いくつかのアプローチが使用されてきた。例えば、ポリマーへの抗原のマイクロカプセル化は広範囲に研究されており、それにより免疫原性を強化することはできたものの、抗原の凝集および変性は未解決のままである[例えばHilbert et al.,1999]。さらにまた、より顕著な体液性応答および細胞性応答を誘発するために、アジュバント(例えば水中油型エマルションまたはポリマーエマルション)[例えばUS 9636397 B2、US 2015/0044242 A1]が、抗原と一緒に使用される。これらの進歩にもかかわらず、それらは取込みおよびクロスプレゼンテーションの効率が低い。クロスプレゼンテーションを促進するために、ウイルス感染時の免疫系に関する利用可能な情報に基づいて、そのような特性を模倣するウイルス様粒子が開発されている。抗原が封入されているリポソームなどの合成アーキテクチャは特に魅力的である。リポソームは脂質でできた自己集合性ユニラメラ構造であり、カチオン性リポソームは、抗原提示細胞(APC)によって効率よく取り込まれることから、送達媒体として、より魅力的であり、有望である[例えばMaji et al.,2016]。さらにまた、リポソームには、受容体を介して免疫細胞を刺激するtoll様受容体(TLR)アゴニストである免疫調節物質、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、CpGオリゴデオキシヌクレオチドなどを組み込むこともできる。このような送達媒体にはこれら格好の条件があるにも関わらず、制限因子の一つとなるのが、血清成分存在下でのリポソームの安定性である。リポソームの安定性の問題は、PEG化、高融点脂質のローディングによって、多少は低減する。よく特徴づけられたそのような例の一つは、脂質を連結する短い共有結合性架橋でマルチラメラベシクルを安定化することによって形成される二重層間架橋マルチラメラベシクル(interbilayered-crosslinked multilamellar vesicle)(ICMV)である[例えばMoon et al.,2011]。他のナノ粒子アーキテクチャも、ナノディスク[例えば、Kuai et al.,2017]またはpH感受性粒子[例えばLuo et al.,2017]を使った免疫処置の成功につながっている。しかし、そのような戦略は依然としてアジュバントを必要とするか、またはプロトタイプの卵白アルブミン(OVA)モデル以外では、あまり効率がよくない。
【0007】
加えて、リポソームの安定な代替物としてポリマーソームが出現し、免疫応答を誘発するためにそれらを使って膜タンパク質が組み込まれている[例えばQuer et al.,2011,WO2014/077781A1]。タンパク質抗原は、抗原とアジュバントを樹状細胞に放出するために、ポリマーソームの化学的に改変された膜(ただし酸化感受性の膜)にも封入された[例えばStano et al.,2013]。
【0008】
ポリマーの使用によってなされたこの進歩をもってしてもなお、上記の課題を克服し、または少なくとも緩和すると共に、なかんずく、感染性疾患、がんおよび自己免疫疾患の処置および/または防止においてとりわけ重要なCD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発することもできるという点で改良された機能性を有し、取込み効率がよく、しかも安定な、クロスプレゼンテーション送達媒体および方法を提供することが、今なお必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、可溶性封入抗原を含むポリマーソームに関し、該可溶性封入抗原は、RNA(例えばmRNA)分子またはDNA分子から選択されるポリヌクレオチド(例えば一本鎖または二本鎖)であり、ポリマーソームはイオン化可能脂質をさらに含む。
【0010】
本発明は、免疫応答を誘発するための、
i)ポリペプチド、
ii)糖質、
iii)好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、さらに好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、または
iv)i)および/もしくはii)および/もしくはiii)の組合せ
からなる群より選択される可溶性封入抗原を含む、約120nmもしくは140nmまたはそれ以上の直径を有するポリマーソームの使用にも関係する。
【0011】
免疫応答を誘発するための、約120nmもしくは140nmまたはそれ以上の平均直径を有するポリマーソームの集合体の使用であって、該集合体のポリマーソームが、
i)ポリペプチド、
ii)糖質、
iii)好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、さらに好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、または
iv)i)および/もしくはii)および/もしくはiii)の組合せ
からなる群より選択される可溶性封入抗原を含む、使用。
【0012】
さらにまた、本発明のポリマーソームを提供することにより、(該ポリマーソームに)封入された可溶性の(または可溶化された)抗原は、(アジュバントを伴うまたはアジュバントを伴わない遊離の抗原と比較して)より強い体液性免疫応答を生じさせると共に、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発することが可能になることが本発明の過程でわかった。その結果、対象における抗体生産効率の増加が達成される。効率の増加はアジュバントを使用しても使用しなくても得ることができる。さらにまた、本発明のポリマーソームがCD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発できることは、免疫治療用抗原送達・提示系としてのそれらの潜在能力を劇的に増加させる。
【0013】
ポリマーソームによって可溶性(例えば可溶化)封入抗原が提示されるので、本発明のポリマーソームの使用および本発明の方法によって生産される抗体は、さまざまな溶液ベースの抗体応用例において使用した場合に、より高い生産成功率と、それぞれの対応するインビトロまたはインビボ標的に対するより高いアフィニティー、および相応に改良された感度とを有することになるだけでなく、遊離抗原の注射を用いる従来の方法では抗体生産をトリガーすることができなかった難しい抗原に対する抗体を容易に生じさせ、かつ/またはそのような抗体生産手順に必要な抗原の量を減少させ、よってそのような生産のコストを減少させることも可能にするであろう。さらにまた、本発明のポリマーソームによって提示される可溶性(例えば可溶化)封入抗原はCD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発することもでき、そのことが、対応するポリマーソームの使用を細胞媒介性免疫に拡張し、それゆえに、それらの免疫治療能および抗原送達・提示能を改良する。
【0014】
したがって本願は、本明細書において以下に記載し、特許請求の範囲において特徴づけ、添付の実施例および図面によって例示する、抗原の免疫原特性を改良する酸化安定性ポリマーソーム、その生産方法およびそのようなポリマーソームを含む組成物を提供することによって、この需要を満たす。
【0015】
配列表の概要
本明細書で述べるように、UniProtKBアクセッション番号(http://www.uniprot.org/ 例えば2021年2月10日公開のUniProt Release 2021_01で入手可能)に言及する。
【0016】
本明細書で述べるように、NCBI GenBankアクセッション番号(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/release/current 例えば2021年2月15日公開のRelease242.0で入手可能)に言及する。
【0017】
SEQ ID NO:1は、大腸がんMC-38マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ポリペプチドReps1 P45Aのアミノ酸配列である。
【0018】
SEQ ID NO:2は、大腸がんMC-38マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ペプチドAdpgk R304Mのアミノ酸配列である。
【0019】
SEQ ID NO:3は、大腸がんMC-38マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ペプチドDpagt1 V213Lのアミノ酸配列である。
【0020】
SEQ ID NO:4は、ニワトリ卵白アルブミン(OVA)、UniProtKBアクセッション番号P01012のアミノ酸配列である。
【0021】
SEQ ID NO:5は、インフルエンザAウイルス(A/ニューヨーク/38/2016(H1N1))ヘマグルチニン、UniProtKBアクセッション番号A0A192ZYK0のアミノ酸配列である。
【0022】
SEQ ID NO:6は、インフルエンザAウイルス(A/ブタ/4/メキシコ/2009(H1N1))ヘマグルチニン、UniProtKBアクセッション番号D2CE65のアミノ酸配列である。
【0023】
SEQ ID NO:7は、インフルエンザAウイルス(A/プエルトリコ/8/1934(H1N1))ヘマグルチニンのアミノ酸配列である。
【0024】
SEQ ID NO:8は、インフルエンザAウイルス(A/カリフォルニア/07/2009(H1N1))ヘマグルチニンのアミノ酸配列である。
【0025】
SEQ ID NO:9は、黒色腫B16-F10マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ポリペプチドCD8 Trp2 173-196のアミノ酸配列である。
【0026】
SEQ ID NO:10は、黒色腫B16-F10マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ポリペプチドCD4 M30 Kif18b K739Nのアミノ酸配列である。
【0027】
SEQ ID NO:11は、黒色腫B16-F10マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ポリペプチドCD4 M44 Cpsf3l D314Nのアミノ酸配列である。
【0028】
SEQ ID NO:12は、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDv)スパイクタンパク質(Sタンパク質)(UniProtKBアクセッション番号V5TA78)の可溶性部分(アミノ酸残基19~1327)のアミノ酸配列である。
【0029】
SEQ ID NO:13は、PEDvスパイクタンパク質(Sタンパク質)のS1領域(アミノ酸残基19~739)のアミノ酸配列である。
【0030】
SEQ ID NO:14は、PEDvスパイクタンパク質(Sタンパク質)のS2領域(アミノ酸残基739~1327)のアミノ酸配列である。
【0031】
SEQ ID NO:15は、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)のアミノ配列である。
【0032】
SEQ ID NO:16は、OVA mRNAヌクレオチド配列である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】抗原を封入した本発明のポリマーソームによる免疫処置ならびに体液性応答および細胞性応答の測定の模式図である。
図2A】本発明のポリマーソームに関する動的光散乱結果の結果を表す。図2Aは、173.1nm(直径)の単分散集団であるOVA封入ポリマーソームの動的光散乱プロットである。図2Bは、さまざまな抗原が封入されたさまざまなポリマーソームに関してDLSによって測定された平均直径(Z平均)の表である。
図2B図2Aの説明を参照。
図3】サイズ排除クロマトグラフィーにおけるOVA封入ポリマーソームの溶出プロファイルを表す。
図4】OVA封入ポリマーソームのドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を表す。
図5A】本発明のポリマーソームへの核酸(ここでは高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)のコード遺伝子)の封入および核酸が封入されているポリマーの細胞への取込みの結果を表す。図5Aは、細胞内部へのさまざまなポリマーソームの蛍光強度取込み、およびポリマーソームに封入されたDNAに基づくeGFP発現を表す。図5Bは、DNA封入ポリマーソームがトランスフェクトされた細胞の蛍光像を表す。図5Cは、DNA封入ポリマーソームがトランスフェクトされた細胞の蛍光像を表す。
図5B図5Aの説明を参照。
図5C図5Aの説明を参照。
図6】PBS、OVAのみ、OVAとSASアジュバント、アジュバントなしのOVA封入ポリマーソームで免疫処置されたマウス血清からの抗体力価を表す。OVAを封入したACM(以下「ACM」とは本発明のポリマーソームを指す)だけがIgG力価を誘導することができた。
図7】PBS、HAのみ、およびアジュバントなしのHA封入ポリマーソームで免疫処置されたマウス血清からの抗体力価を表す。HAを封入したACM(本発明のポリマーソーム)はIgG力価を誘導することができた。
図8】MC-38マウス腫瘍モデルに関する結果を表す。遊離ペプチド(白抜きの丸)、ACMに封入されたペプチド(黒四角、本発明のポリマーソーム)または抗PD1抗体処置を伴うACMに封入されたペプチド(黒い三角)で免疫処置したマウスにおいて、腫瘍体積をモニターした。腫瘍の成長は、ACMに封入されたペプチド(本発明のポリマーソーム)により、遊離ペプチドと比較して改変された。また、それは抗PD1抗体の添加によってさらに増強される。どの群にもアジュバントは加えなかった。
図9】PBSおよび本明細書に記載するように使用されるポリマーソームに封入されたPEDv Sタンパク質の可溶性フラグメント(「スパイクタンパク質が封入されたポリマーソーム」)で免疫処置されたマウス血清からの、ならびに比較対象として、死滅PEDウイルス(「死滅PEDv」)およびACMポリマーソームのみ(すなわち、抗原なし、「ポリマーソームのみ」)で免疫処置されたマウス血清からの、IgG抗体力価およびウイルス中和反応(PEDv USA/コロラド/2013(CO/13)株に対するもの)を表す。図9のIgG力価から、ACMに封入されたPEDv Sタンパク質のフラグメントと死滅ウイルスが、どちらもIgG力価を誘導することは明白である。ウイルス中和反応データからは、ACMに封入されたPEDv Sタンパク質だけが有意な中和力価をもたらし、一方、陰性対照(抗原を一切含まないACMポリマーソーム)および死滅PEDウイルスは無視できる程度の中和反応しか示さなかったことがわかる。
図10】PBSおよびさまざまなポリマーソーム(例えば完全長可溶性PEDスパイクタンパク質(「可溶性Sタンパク質を含むBD21」)またはそのS1もしくはS2フラグメント(他のすべての場合)のいずれかを封入する、BD21(後述)、PDMS46-PEO37(図では単に「PDMS」と記す)、PDMS46-PEO37と添加された脂質としてのDSPE-PEG(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン[DSPE]ポリエチレングリコール)、アゾレクチン脂質(大豆由来の市販のリン脂質)が添加されたポリエチレングリコール-ポリ乳酸(PLA-PEG))による免疫処置後にマウスから生成した血清からのウイルス中和反応データ(PEDv USA/コロラド/2013(CO/13)株に対するもの)を表す。PBS試料で免疫処置されたマウスの群がいかなるウイルス中和反応も示さないのに対し、ポリマーソーム製剤は、それらが完全長タンパク質を封入しているか、そのフラグメントを封入しているかとは関わりなく、すべてがさまざまな程度のウイルス中和反応を示すことは、図10から明らかである。
図11】アジュバントを使わずにACMに封入されたPEDv Sタンパク質で経口免疫処置されたブタからのIgA抗体力価を表す。力価は糞便スワブからの値である。図11に見られるように、力価は経時的に上昇する。これは、PEDv Sタンパク質を封入して経口投与された本発明のポリマーソームが、ブタにおける免疫応答を誘発できることを示している。
図12】ブタ流行性下痢ウイルス(PEDv)スパイクタンパク質(Sタンパク質)(UniProtKBアクセッション番号V5TA78)、ならびに本明細書に記載するようにポリマーソームへの可溶性Sタンパク質の封入とそれに続くマウスおよびブタの免疫処置/ワクチン接種に使用された、SEQ ID NO:12(アミノ酸残基19~1327)、SEQ ID NO:13(アミノ酸残基19~739)およびSEQ ID NO:14(アミノ酸残基739~1327)の可溶性フラグメントの模式的表現である。
図13-1】ACM-ポリマーソーム(参照例としてのBD/DOTAP)にローディングされたOVA-mRNAの、-80℃における安定性が、LNP(オンパットロ(Onpattro)組成物)にローディングされたOVA-mRNAよりも優れていることを実証する、DLSプロファイルを示している。A- LNP;B- ACM-ポリマーソーム。
図13-2】図13-1の説明を参照。
図14】BD/DLin-MC3-DMA(A)イオン化可能脂質で作られた空のポリマーソームのDLSプロファイルを、参照例としての空のBD/DOTAP(B)ポリマーソームと比較して示しており、両者が同じように形成されることを実証している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
以下の詳細な説明では添付の実施例と図面に言及するが、それらは本発明を実施する際にとりうる具体的詳細および態様を、例示のために示している。これらの態様は、当業者が本発明を実施することができるように、十分に詳しく記載されている。本発明の範囲から逸脱することなく、構造的、論理的および取捨選択的な変更を加えうるような形で、他の態様も利用しうる。本発明の局面は1つまたは複数の他の局面と組み合わされて本発明の新しい態様を形成することができるので、本明細書に記載する本発明のさまざまな局面は必ずしも相互排他的ではない。
【0035】
本文脈において、ポリマーソームとはポリマー膜を持つベシクルであり、これは、典型的には、ジブロックおよびトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)などのさまざまなタイプであることができる1種または複数種の両親媒性ブロック共重合体の希薄溶液の自己集合によって形成されるが、必ずしもそうではない。本発明のポリマーソームはテトラブロック共重合体またはペンタブロック共重合体でも形成されうる。トリブロック共重合体の場合、中心ブロックはその隣接ブロックによって環境から遮蔽されることが多いが、ジブロック共重合体は二重層に自己集合して、2つの疎水性ブロックを尾-尾状に配置することで、ほぼ同じ効果を発揮する。ほとんどの場合、ベシクル膜は不溶性の中間層と可溶性の外側層とを有する。自己集合によるポリマーソーム形成の駆動力は、自らを水との接触から遮蔽するために会合する傾向を示す不溶性ブロックのミクロ相分離であると考えられる。本発明のポリマーソームは、構成共重合体の大きな分子量ゆえに、注目すべき特性を有する。ブロック共重合体の総分子量が増加するとベシクル形成が有利になる。結果として、(ポリマー状)両親媒性物質の拡散は、脂質および界面活性剤(surfactant)によって形成されるベシクルと比べて、極めて少ない。ベシクル構造に凝集したポリマー鎖の可動性はこのように低いため、安定したポリマーソーム形態を得ることが可能である。別段の明言がある場合を除き、本明細書において使用する「ポリマーソーム」および「ベシクル」という用語は、類似していると解釈され、相互可換的に使用されうる。重要なことに、本発明のポリマーソームは、1種類のブロック共重合体から形成させるか、2種類以上のブロック共重合体から形成させることができる。つまり、ポリマーソームは、ポリマーソームの混合物から形成させることもでき、したがって2種以上のブロック共重合体を含有することができる。いくつかの局面において、本発明のポリマーソームは酸化安定性である。
【0036】
いくつかの局面において、本発明は、対象における可溶性(例えば可溶化)封入抗原に対する免疫応答を誘発するための方法に関する。本方法は、両親媒性ポリマーの膜(例えば周囲膜)を有するポリマーソーム(例えば担体または媒体)を含む組成物を対象に注射するのに適している。組成物は、本発明のポリマーソームの両親媒性ポリマーの膜(例えば周囲膜)によって封入された可溶性(例えば可溶化)抗原を含む。抗原は以下のうちの1つまたは複数でありうる:(i)ポリペプチド、(ii)糖質、(iii)ポリヌクレオチド(例えばポリヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、好ましくはポリヌクレオチドはDNA分子またはメッセンジャーRNA(mRNA)分子である)、または(i)および/もしくは(ii)および/もしくは(iii)の組合せ。
【0037】
いくつかのさらなる局面において、本発明は、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発することができるポリマーソームに関する。
【0038】
いくつかの局面において、本発明は、リンパ節常在性マクロファージおよび/またはB細胞をターゲティングする能力を有するポリマーソームに関する。本発明によって想定される例示的な非限定的ターゲティング機序には、(i)T細胞活性化(CD4および/またはCD8)のための樹状細胞(DC)への封入抗原(例えばポリペプチドなど)の送達が含まれる。もう1つの機序は、(ii)DCへの経路となり、力価(B細胞)もトリガーするであろう、折りたたまれた抗原全体(例えばタンパク質など)の送達である。
【0039】
いくつかの局面において、本発明は、(i)自己抗原、(ii)非自己抗原、(iii)非自己免疫原および(iv)自己免疫原からなる群より選択される抗原を封入したポリマーソームに関する。したがって、本発明の産物および方法は、例えば自己免疫疾患を標的とする場合など、誘導性寛容の状況下(例えば臨床状況下)での使用に適している。
【0040】
いくつかの局面において、本発明は、脂質ポリマーを含む本発明のポリマーソームに関する。
【0041】
本発明のポリマーソームは、1種または複数種のアジュバントを共封入(すなわち、抗原に加えて封入)していてもよい。アジュバントの具体例を少しだけ挙げると、Toll様受容体9を発現する細胞(ヒトの形質細胞様樹状細胞およびB細胞を含む)がTh1および炎症誘発性サイトカインの生産を特徴とする先天性免疫応答を開始するためのトリガーとなりうる非メチル化CpGモチーフを含有する合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、インターロイキン-1、インターロイキン-2またはインターロイキン-12などのサイトカイン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシンインヒビターなどがある。
【0042】
本発明のポリマーソームは、そのポリマーソームが免疫応答を誘発できる限り、任意のサイズであることができる。例えばポリマーソームは70nm超の直径を有してもよい。ポリマーソームの直径は約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nmの範囲であってもよい。ポリマーソームの直径は、さらに、約125nm~約175nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲であってもよい。ポリマーソームの直径は、例えば約200nm、約205nmまたは約210nmであってもよい。免疫応答を誘発するための集合体として使用する場合、ポリマーソームの集合体は、典型的には単分散性の集団である。使用されるポリマーソームの集合体/集団の平均直径は、典型的には70nm超、または120nm超、または125nm超、または130nm超、または140nm超、または150nm超、または160nm超、または170nm超、または180nm超、または190nm超である(この点で図2も参照されたい)。ポリマーソームの集合体の平均直径は、例えば、上述した個々のポリマーソームの範囲にあってもよい。つまり、ポリマーソームの集合体の平均直径は、100nm~約1μmの範囲、または約100nm~約750nmの範囲、または約100nm~約500nmの範囲、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、もしくは約220nm~約180nm、もしくは約190nm~約210nmの範囲にあってもよい。ポリマーソームの集団の平均直径は、例えば約200nm、約205nmまたは約210nmであってもよい。直径は、例えば動的光散乱(DLS)計器により、好ましいDLSパラメータであるZ-平均(d,nm)を使って決定することができる。Z-平均サイズは強度加重調和平均粒径(intensity weighted harmonic mean particle diameter)である(実施例1および実施例2参照)。これに関連して、Hubbelらの米国特許第8,323,696号によれば、免疫応答を誘発することができるように、ポリマーソームの集合体は70nm未満の平均直径を有するべきとされていることに留意されたい。同様に、前掲のStano et al,2013は、もっと小さなポリマーソームを使用することを望みつつも、技術的制約から、免疫応答を誘発するために125nm±15nmの直径を有するポリマーソームを使用した。このように、例えば150nm超の平均直径を持つ本発明のポリマーソームの集団/集合体が、細胞性免疫応答と体液性免疫応答をどちらも誘導できることは(「実施例」参照)、驚くべきことである。そのようなポリマーソームの集合体は、例えば注射または経口投与によって免疫応答を誘発するのに適した形態をとりうる。
【0043】
いくつかの局面において、本発明は、皮内、腹腔内、皮下、静脈内、もしくは筋肉内注射、または本発明の抗原の非侵襲的投与、例えば経口投与または経鼻投与に適した、本発明の組成物に関する。組成物は、両親媒性ポリマーの膜(例えば周囲膜)を有する本発明のポリマーソーム(例えば担体)を含みうる。組成物は、ポリマーソームの両親媒性ポリマーの膜によって封入された可溶性(例えば可溶化)抗原を、さらに含む。本発明の組成物は、治療目的(例えば罹患している対象の処置、またはワクチン接種などによる罹患の防止)に使用するか、抗体の発見、ワクチンの発見、または標的送達に使用することができる。
【0044】
いくつかの局面において、本発明のポリマーソームはその表面にヒドロキシル基を有する。いくつかのさらなる局面において、本発明のポリマーソームはその表現にヒドロキシル基を有しない。
【0045】
本願に関して、「封入(された)」という用語は、膜(例えば本発明のポリマーソームの膜)に囲まれる(例えば該ポリマーソームの内腔内に包含される)ことを意味する。抗原に関して「封入(された)」という用語は、抗原が膜(例えば本発明のポリマーソームの膜)に組み込まれてもいないし、共有結合もしていないし、コンジュゲートもしていないことを、さらに意味する。本明細書に記載するポリマーソームのベシクル構造のコンパートメント化に関して、「封入(された)」という用語は、内側のベシクルが外側のベシクルの内部に完全に含まれ、外側ベシクルのベシクル膜に囲まれていることを意味する。外側ベシクルのベシクル膜に囲まれた閉鎖空間が1つのコンパートメントを形成する。内側ベシクルのベシクル膜に囲まれた閉鎖空間がもう1つのコンパートメントを形成する。
【0046】
本願に関して、「抗原」という用語は、免疫系成分によって特異的に結合されうる任意の物質を意味する。免疫応答を誘発(または惹起もしくは誘導)することができる抗原だけが免疫原性であるとみなされ、「免疫原」と呼ばれる。例示的な非限定的抗原は、タンパク質の可溶性部分に由来するポリペプチド、封入のために可溶性にされた疎水性ポリペプチド、ならびに凝集物として可溶性である凝集ポリペプチドである。抗原は、体内に起源を持つか(「自己抗原」)、または外部環境に起源を持ちうる(「非自己」)。
【0047】
膜タンパク質は、典型的には低レベルの免疫応答を生じる抗原の1クラスを形成する。特に興味深いことに、可溶性(例えば可溶化)膜タンパク質(MP)ならびに膜結合ペプチド(MAP)およびそのフラグメント(すなわち、一部分)(例えば本明細書において言及する抗原)はポリマーソームによって封入され、そのことが、それらが生理学的に意味のある形で折りたたまれることを可能にしうる。これは、そのような抗原の免疫原性を強くブーストするので、遊離の抗原と比較した場合、より少量の対応する抗原を使って、同じレベルの免疫応答を生じさせることができる。さらにまた、ポリマーソームのサイズが(遊離の膜タンパク質と比べて)大きいことは、それらが免疫系によってより容易に検出されることを可能にする。
【0048】
本願に関して、「B16ペプチド」という用語は、自然発生C57BL/6由来B16黒色腫モデル(例えば黒色腫B16-F10マウスモデル)に由来する任意のネオ抗原ポリペプチドを指す。その非限定的な例としてSEQ ID NO:9、10および11のペプチドが挙げられる。
【0049】
本願に関して、「MC38ペプチド」という用語は、大腸がんMC38マウスモデルに由来する任意のネオ抗原ポリペプチドを指す。その限定的な例としてSEQ ID NO:1、2および3のペプチドが挙げられる。
【0050】
本願に関して、「インフルエンザヘマグルチニン(HA)」という用語は、インフルエンザウイルスの表面に見出される糖タンパク質を指す。HAは少なくとも18種の異なる抗原を有し、それらはすべて本発明の範囲内である。これらのサブタイプはH1~H18と名付けられる。「インフルエンザヘマグルチニン(HA)」サブタイプH1の非限定的な例としてSEQ ID NO:5、6、7および8のポリペプチドが挙げられる。
【0051】
本願において「ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)」という用語は、ブタに特有のインフルエンザウイルスのファミリーであるブタインフルエンザウイルスの表面に見出される糖タンパク質を指す。「ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)」の非限定的な例として、SEQ ID NO:6のサブタイプH1が挙げられる。
【0052】
本願に関して、「PEDv Sタンパク質」という用語は、ブタにおけるコロナウイルスのファミリーであるブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)の表面に存在するスパイク糖タンパク質を指す。本明細書において使用されうる可溶性「PEDv Sタンパク質」の非限定的な例としては、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDv)スパイクタンパク質(Sタンパク質)(UniProtKBアクセッション番号V5TA78)の、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を有するS1領域とS2領域とからなる可溶性フラグメント全体、SEQ ID NO:13のS1領域の可溶性フラグメント、またはSEQ ID NO:14のS2領域の可溶性フラグメントが挙げられる。S1領域およびS2領域の可溶性フラグメント全体の、またはS1領域もしくはS2領域のどちらか一方のみの、より短いフラグメントを使用することも、もちろん可能である(この点については図12参照)。本発明のポリマーソームにおいて、S1の一部とS2の一部とを含有するフラグメント、例えばスパイクタンパク質の寄託された配列のアミノ酸500~939を使用することも、もちろん可能である。本発明のポリマーソームが、スパイクタンパク質の1種または複数種の異なる可溶性フラグメント、例えばS1領域、S2領域ならびに/またはS1領域とS2領域の全体などを封入していてもよいことにも留意されたい。本発明のポリマーソームの例示的な態様では、本発明のポリマーソームは、その中に、1タイプの可溶性フラグメント(例えばS1領域のみ)、2つの異なるタイプの可溶性フラグメント(例えばS1領域およびS2領域)、3つの異なるタイプの可溶性フラグメント(S1領域、S2領域、およびSEQ ID NO:12のS1とS2の全可溶性フラグメント(アミノ酸残基19~1327))、さらには4つの異なるタイプのフラグメント(例えば、S1領域、S2領域、SEQ ID NO:12のS1とS2の全可溶性フラグメント(アミノ酸残基19~1327)、および4番目のタイプとして、S1の一部とS2の一部とを含有する上述のフラグメント、例えばスパイクタンパク質配列のアミノ酸500~939)を封入している。ここで、スパイクタンパク質の1つまたは複数の異なる可溶性フラグメントを封入している本発明のポリマーソームが、好ましい一態様では、ブタ流行性下痢ウイルスに対する経口ワクチンとして使用されることにも留意されたい。
【0053】
本願に関して、「酸化安定性」という用語は、例えばScott et al.,2012が記載した方法を用いる、ポリマーソーム(または対応するポリマーもしくは膜)の酸化に対する耐性の尺度を指す。この方法では、封入抗原を持つポリマーソームが過酸化水素の0.5%溶液中でインキュベートされ、(放出された)遊離抗原の量をUV/蛍光HPLCで定量することができる。これらの酸化条件下で封入抗原の実質的部分またはすべてを放出するポリマーソームは、酸化感受性であるとみなされる。ブロック共重合体が、そしてそれゆえに結果として得られるポリマーソームが酸化安定性であるか酸化感受性であるかを決定する別の一方法は、米国特許第8,323,696号の第16カラムに記載されている。この方法によれば、酸化感受性の官能基を持つポリマーは温和な酸化剤によって化学的に改変されることになり、その試験手段は、インビトロで20時間での10%過酸化水素への溶解性の強化である。例えばポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)は酸化感受性ポリマーである(例えば前掲のScott et al 2012およびUS8,323,696参照)。PPSは、関心対象のポリマーとそれぞれの関心対象のポリマーソームが酸化感受性であるか酸化安定性であるかを決定するための基準として役立ちうる。例えば、同じ抗原が封入されているPPSポリマーソームから放出される量と比べて、同じかそれ以上の量の抗原、または約90%以上の量、もしくは約80%以上、もしくは約70%以上、もしくは約60%以上が、関心対象のポリマーソームから放出されるのであれば、そのポリマーソームは酸化感受性とみなされる。同じ抗原が封入されているPPSポリマーソームから放出される量と比べて、約0.5%以下、または約1.0%以下、または約2%以下、または約5%以下、または約10%以下、または約20%以下、または約30%以下、または約40%以下、または約50%以下の抗原しか、関心対象のポリマーソームから放出されないのであれば、そのポリマーソームは酸化安定性であるとみなされる。したがってこれに沿って、米国特許第8,323,696号に記載のPPSポリマーソーム、またはPPS-bl-PEGポリマーソーム、例えばStano et alに記載されているように構成要素としてのポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)とポリ(エチレングリコール)(PEG)とでできているものは、本発明の意味での酸化安定性ポリマーソームではない。同様に、PPS30-PEG17ポリマーソームも本発明の意味での酸化安定性ポリマーソームではない。酸化安定性測定の他の非限定的な例としては、血清成分(例えば哺乳動物血清、例えばヒト血清の成分)の存在下での安定性の測定、または例えばエンドソーム内部での安定性の測定が挙げられる。
【0054】
本願に関して、「還元安定性」という用語は、ポリマーソームの還元環境における還元に対する耐性の尺度を指す。
【0055】
本願において「血清」という用語は、凝固タンパク質が除去された血漿を指す。
【0056】
本願に関して、「酸化非依存的放出」という用語は、ポリマーソームを形成するポリマーの酸化を伴わない、または本質的に伴わない、ポリマーソーム内容物の放出を指す。
【0057】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書では「タンパク質」という用語と等価に使用される。タンパク質(そのフラグメント、好ましくは生物学的に活性なフラグメント、およびペプチド、通常は30個未満のアミノ酸を有するものを含む)は、ペプチド共有結合を介して互いにカップリングされた(結果としてアミノ酸の鎖を生じる)、1つまたは複数のアミノ酸を含む。本明細書において使用する「ポリペプチド」という用語は、一群の分子、例えば30個を上回るアミノ酸からなるものをいう。ポリペプチドは、二量体、三量体およびさらに高次のオリゴマーなどといった多量体、すなわち、2つ以上のポリペプチド分子からなるものを、さらに形成しうる。そのような二量体、三量体などを形成するポリペプチド分子同士は同一であっても同一でなくてもよい。したがって、そのような多量体の対応する高次構造は、ホモ二量体またはヘテロ二量体、ホモ三量体またはヘテロ三量体などと呼ばれる。ヘテロ多量体の一例は抗体分子であり、これは、その天然型では、2つの同一軽ポリペプチド鎖と2つの同一重ポリペプチド鎖とからなる。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、天然に修飾されたポリペプチド/タンパク質も指し、この場合、修飾は、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などのような翻訳後修飾によって達成される。そのような修飾は当技術分野では周知である。
【0058】
本願において「糖質」という用語は、化学量論式Cn(H2O)nを有する(例えばそれゆえに「炭水化物」である)アルドースおよびケトースなどの化合物を指す。「糖質」という総称には、単糖、オリゴ糖および多糖、ならびにカルボニル基の還元(アルジトール)、1つまたは複数の末端基のカルボン酸への酸化、または水素原子、アミノ基、チオール基などの基による1つもしくは複数のヒドロキシ基の置き換えによって、単糖から誘導される物質が包含されるが、それらに限定されるわけではない。これらの化合物の誘導体も包含される。
【0059】
本願に関して、「ポリヌクレオチド」(「核酸」ともいい、これは「ポリヌクレオチド」という用語と相互可換的に使用することができる)という用語は、例えば、一定のピリミジン塩基またはプリン塩基(通常はアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル)、d-リボースまたは2-デオキシ-d-リボースおよびリン酸への加水分解が可能でありうるヌクレオチド単位で構成された高分子を指す。「ポリヌクレオチド」の非限定的な例として、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA(mRNA)、それらの組合せ、またはDNAとRNAとで構成されるハイブリッド分子が挙げられる。核酸は二本鎖または一本鎖であることができ、二本鎖フラグメントと一本鎖フラグメントとを同時に含有しうる。最も好ましいのは二本鎖DNA分子およびmRNA分子である。
【0060】
本願において「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、核酸ポリマーであって、少なくともその一部分が正常細胞または罹患細胞中に存在する核酸に対して相補的であるものを指す。例示的な「アンチセンスオリゴヌクレオチド」として、アンチセンスRNA、siRNA、RNAiが挙げられる。
【0061】
本願において「CD8(+)T細胞媒介性免疫応答」という用語は、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8(+)T細胞またはキラーT細胞としても公知である)によって媒介される免疫応答を指す。細胞傷害性T細胞の例として抗原特異的エフェクターCD8(+)T細胞が挙げられるが、それに限定されるわけではない。T細胞受容体(TCR)がクラスI MHC分子に結合するには、クラスI MHC分子の定常部分に結合するCD8と呼ばれる糖タンパク質が、TCRに付随していなければならない。それゆえにこれらのT細胞はCD8(+)T細胞と呼ばれる。ひとたび活性化されると、TC細胞は、T細胞にとっての増殖分化因子であるサイトカイン・インターロイキン-2(IL-2)の助けを借りて、「クローン拡大」を起こす。これにより、標的抗原に特異的な細胞の数が増加し、次にそれらは抗原陽性体細胞を捜して体中を移動することができる。
【0062】
本願において「抗原特異的CD8(+)T細胞のクローン拡大」という用語は、標的抗原に特異的なCD8(+)T細胞の数の増加を指す。
【0063】
本願において「細胞性免疫応答」という用語は、抗体が関わるのではなく、食細胞の活性化、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球、抗原に応答して起こるさまざまなサイトカインの放出が関わる、免疫応答を指す。
【0064】
本願において「抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性表現型」という用語は、抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性機能に関する同細胞の観察可能な一組の特徴を指す。
【0065】
本願において「リンパ節常在性マクロファージ」という用語は、全身にある小さなマメ状の腺であるリンパ節中に存在して、貪食というプロセスを使って粒子を飲み込み、次いでそれらを消化する、我々の免疫系の不可欠な一部である大きな白血球であるマクロファージを指す。
【0066】
本願において「体液性免疫応答」という用語は、分泌された抗体、補体タンパク質、および一定の抗微生物ペプチドなどといった、細胞外液中に見出される高分子によって媒介される免疫応答を指す。抗体が関与するその局面は、しばしば抗体媒介性免疫と呼ばれる。
【0067】
本願において「B細胞」という用語は、Bリンパ球としても公知であり、リンパ球サブタイプの白血球の一タイプである。それらは、抗体を分泌することにより、適応免疫系の体液性免疫成分において機能する。
【0068】
本明細書において使用する場合、「抗体」とは、実質的にまたは部分的に免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによってコードされている、(1つまたは複数の結合ドメイン、好ましくは抗原結合ドメインを含む)1つまたは複数のポリペプチドを含むタンパク質である。「免疫グロブリン」(Ig)は本明細書では「抗体」と相互可換的に使用される。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。特に、本明細書において使用される場合、「抗体」とは、典型的には、それぞれおよそ25kDaである2本の軽(L)鎖とそれぞれおよそ50kDaである2本の重(H)鎖とで構成される四量体型のグリコシル化されたタンパク質である。抗体にはラムダおよびカッパと呼ばれる2タイプの軽鎖を見出しうる。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンはA、D、E、G、およびMという5つの主要クラスに割り当てることができ、これらのうちのいくつかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2などのサブクラス(アイソタイプ)にさらに分割しうる。本発明との関連ではIgGが好ましい。本発明に関係する抗体として、Fcイプシロン受容体Iによって結合されるIgE定常ドメインまたはその一部分を有するものも想定される。IgM抗体は、5つの基本的ヘテロ四量体ユニットとJ鎖と呼ばれる追加ポリペプチドとからなり、10個の抗原結合部位を含有する。一方、IgA抗体は2~5個の基本的4鎖ユニットを含み、それらは多量体化することでJ鎖と組み合わされた多価集合物を形成することができる。IgGの場合、4鎖ユニットは一般に約150,000ダルトンである。各軽鎖は、N末端の可変(V)ドメイン(VL)と定常(C)ドメイン(CL)とを含む。各重鎖は、N末端のVドメイン(VH)、3つまたは4つのCドメイン(CH)およびヒンジ領域を含む。定常ドメインは抗体を抗原に結合させることに直接的には関与しないが、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)への参加など、さまざまなエフェクター機能を呈することができる。抗体がADCCを発揮すべき場合、その抗体はIgG1サブタイプであることが好ましく、IgG4サブタイプはADCCを発揮する能力を有しないだろう。
【0069】
「抗体」という用語には、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性または多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体、移植抗体、およびインビトロ生成抗体も包含されるが、それらに限定されるわけではなく、キメラ抗体またはヒト化抗体は好ましい。「ヒト化抗体」という用語は、一般に、HCおよびLCの特異性をコードしているCDRが適当なヒト可変フレームワークに移入(「CDR移植」)されている抗体に対して定義されている。「抗体」という用語は、scFv、一本鎖抗体、ダイアボディまたはテトラボディ、ドメイン抗体(dAb)およびナノボディも包含する。本発明に関して「抗体」という用語は、数個の抗原結合部位を有する二量体、三量体もしくは多量体型または二機能性、三機能性もしくは多機能性抗体も包含するものとする。
【0070】
さらにまた、本発明において使用される「抗体」という用語は、本明細書に記載する抗体の誘導体(フラグメントを含む)にも関係する。抗体の「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失または付加の導入によって改変されたアミノ酸配列を含む。加えて、誘導体には、抗体またはタンパク質に任意のタイプの分子が共有結合することによって修飾された抗体も包含される。そのような分子の例として、糖類、PEG、ヒドロキシル基、エトキシ基、カルボキシ基またはアミン基が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。要するに、共有結合による抗体の修飾は、グリコシル化、PEG化、アセチル化、リン酸化、アミド化などにつながるが、それらに限定されるわけではない。
【0071】
本発明に関係する抗体は好ましくは「単離された」抗体である。「単離された」とは、本明細書に開示する抗体を説明するために使用される場合は、その生産環境の構成要素から同定され、分離されかつ/または回収された抗体を意味する。好ましくは、単離された抗体は、その生産環境からの他のどの構成要素とも関連を持たない。その生産環境の夾雑構成要素、例えば組換えトランスフェクト細胞に起因するものは、当該ポリペプチドの診断または治療への使用を典型的には妨害するであろう材料であり、これには酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれうる。好ましい態様において、抗体は、(1)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)を利用して、N末端アミノ酸配列または内部アミノ酸配列のうちの少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製されるか、または(2)非還元条件下または還元条件下のSDS-PAGEにより、クーマシーブルー染色または好ましくは銀染色を使って、均一に精製されることになる。しかし通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製されることになる。
【0072】
「本質的に非免疫原性」という用語は、本発明のブロック共重合体または両親媒性ポリマーが適応免疫応答を誘発しないこと、すなわち、封入された免疫原と比較して、ブロック共重合体または両親媒性ポリマーは30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、特に好ましくは9、8、7、6または5%未満の免疫応答を示すことを意味する。
【0073】
「本質的に非抗原性」という用語は、本発明のブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、適応免疫性を有する一定の産物群(例えばT細胞受容体または抗体)と特異的に結合しないこと、すなわち、封入された抗原と比較して、ブロック共重合体または両親媒性ポリマーは30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、特に好ましくは9、8、7、6または5%未満の結合を示すことを意味する。
【0074】
典型的には、結合アフィニティーが10-6Mより高い場合に、結合は特異的であるとみなされる。好ましくは、結合アフィニティーが約10-11~10-8M(KD)、好ましくは約10-11~10-9Mである場合に、結合は特異的であるとみなされる。必要であれば、結合条件を変化させることにより、特異的結合には実質的に影響を及ぼすことなく、非特異的結合を低減することができる。
【0075】
「アミノ酸」または「アミノ酸残基」という用語は、典型的には、当技術分野において認識されているその定義を有するアミノ酸、例えばアラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(HeまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、およびバリン(ValまたはV)からなる群より選択されるアミノ酸を指すが、所望に応じて修飾アミノ酸、合成アミノ酸、または希少アミノ酸を使用してもよい。一般に、アミノ酸は、非極性側鎖を有するもの(例えばAla、Cys、He、Leu、Met、Phe、Pro、Val)、負荷電側鎖を有するもの(例えばAsp、Glu)、正荷電側鎖を有するもの(例えばArg、His、Lys)、または非荷電極性側鎖を有するもの(例えばAsn、Cys、Gln、Gly、His、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、およびTyr)に分類することができる。
【0076】
「ポリクローナル抗体」または「ポリクローナル抗血清」とは、1つまたは複数の抗原で免疫処置された動物の血液から調製しうる、前記1つ(一価または特異的抗血清)または複数(多価抗血清)の抗原に特異的な抗体の混合物を含有する免疫血清を指す。
【0077】
さらにまた、本発明において使用される「抗体」という用語は、本明細書記載の抗体と同じ特異性を呈する、本明細書記載の抗体の誘導体またはバリアントにも関係する。「抗体バリアント」の例としては、非ヒト抗体のヒト化バリアント、「アフィニティー成熟」抗体(例えばHawkins et al.J.Mol.Biol.254,889-896(1992)およびLowman et al.,Biochemistry 30,10832-10837(1991)参照)およびエフェクター機能が改変されている抗体変異体(例えば米国特許第5,648,260号参照)が挙げられる。
【0078】
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、微量に存在するかもしれない考えうる天然の変異および/または翻訳後修飾(例えば異性化、アミド化)を除けば、同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位を指向している。さらにまた、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を指向する。モノクローナル抗体は、それらの特異性に加えて、他の免疫グロブリンによる汚染がないハイブリドーマ培養物によって合成されるという点で、有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示しているのであって、何らかの方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)が初めて記載したハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号参照)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」は、例えばClackson et al.,Nature,352:624-628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載の技法を使って、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0079】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定種に由来する抗体中または特定抗体クラスもしくは特定抗体サブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、一方、鎖の残りの部分は、別の種に由来する抗体中または別の抗体クラスもしくは抗体サブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体のフラグメントが、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、特に包含される(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))。本明細書における関心対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿など)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む「霊長類化(primitized)」抗体が含まれる。
【0080】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、ほとんどがヒト配列であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、キメラ免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合性部分配列)である。ヒト化抗体は、大部分がヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域(CDRとも)の残基が、所望の特異性、アフィニティーおよび能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域の残基で置き換えられている。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基で置き換えられる。さらにまた、本明細書にいう「ヒト化抗体」は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基も含みうる。これらの修飾は抗体の性能をさらに精密化し最適化するためになされる。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも、含むだろう。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522-525(1986)、Reichmann et al.,Nature,332:323-329(1988)、およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)を参照されたい。
【0081】
「ヒト抗体」という用語は、例えばKabatらが記載しているもの(Kabat,et al.(1991)上記引用文中)など、当技術分野において公知のヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に実質的に対応する可変領域と定常領域とを有する抗体を包含する。本発明のヒト抗体は、例えばCDRに、特にCDR3に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダム変異導入もしくは部位特異的変異導入によって導入される変異、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含みうる。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基で置き換えられている位置を、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上有することができる。
【0082】
本明細書にいう「インビトロ生成抗体」とは、可変領域(例えば少なくとも1つのCDR)の全部または一部を非免疫細胞選択法(例えばインビトロファージディスプレイ、プロテインチップ、または候補配列をその抗原結合能について試験することができる他の任意の方法)で生成させる抗体を指す。したがって、好ましくは、免疫細胞におけるゲノム再編成によって生成する配列は、この用語から除外される。
【0083】
「二重特異性」または「二機能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖ペアおよび2つの異なる結合部位を有する人工的ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'フラグメントの連結を含むさまざまな方法によって生産することができる。例えばSongsivilai&Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315-321(1990)、Kostelny et al.,J.Immunol.148,1547-1553(1992)を参照されたい。一態様において、二重特異性抗体は、第2結合ドメインポリペプチドに免疫グロブリン定常領域を介して連結された、Fab'フラグメントなどの第1結合ドメインポリペプチドを含む。
【0084】
抗体またはその抗原結合フラグメントを得るために、当業者に公知の数多くの方法を利用することができる。例えば抗体は組換えDNA法を使って生産することができる(米国特許第4,816,567号)。公知の方法に従い、ハイブリドーマの生成(例えばKohler and Milstein(1975)Nature,256:495-499参照)によって、モノクローナル抗体を生産してもよい。この方法で形成されたハイブリドーマは、次に、指定された抗原に特異的に結合する抗体を生産する1つまたは複数のハイブリドーマを同定するために、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)や表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))解析などといった標準的な方法によってスクリーニングされる。指定された抗原は、例えば組換え抗原、天然型、それらの任意のバリアントまたはフラグメントおよびそれらの抗原性ペプチドなど、どの形態であっても、免疫原として使用することができる。
【0085】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、指定された抗原を使って、非ヒト動物、例えばマウス、ハムスターまたはラットなどの齧歯類動物を免疫処置することもできる。一態様において、前記非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、マウス抗体生産が欠損した、ヒトIg座位の大きなフラグメントを持つマウス系統を、工学的に作出することが可能である。ハイブリドーマ技術を使って、所望の特異性を持つ遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を生産し、選択してもよい。例えばXENOMOUSE(商標)、Green et al.(1994)Nature Genetics 7:13-21、US2003-0070185、WO 96/34096、およびWO96/33735参照。
【0086】
別の一態様では、モノクローナル抗体を非ヒト動物から得て、次に、当技術分野において公知の組換えDNA技法を使って、改変された抗体、例えばヒト化抗体、脱免疫化(deimmunized)抗体、キメラ抗体を生産することができる。キメラ抗体を作製するためのアプローチは種々記載されている。例えばMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.ScL U.S.A.81:6851,1985、Takeda et al.,Nature 314:452,1985、Cabillyらの米国特許第4,816,567号、Bossらの米国特許第4,816,397号、TanaguchiらのEP171496、EP173494、GB2177096を参照されたい。ヒト化抗体は、例えば、ヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現するが内在性のマウス免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子は発現することができないトランスジェニックマウスを使って生産してもよい。Winterは、本明細書記載のヒト化抗体を調節するために使用しうる例示的CDR移植法を記載している(米国特許第5,225,539号)。特定ヒト抗体のCDRのすべてを非ヒトCDRの少なくとも一部分で置き換えてもよいし、またはそれらCDRの一部だけを非ヒトCDRで置き換えてもよい。予め決定された抗原へのヒト化抗体の結合にとって必要な数のCDRを置き換えるだけでよい。
【0087】
ヒト化抗体またはそのフラグメントは、Fv可変ドメインのうち、抗原結合に直接的には関与していない配列を、ヒトFv可変ドメインからの等価な配列で置き換えることによって生成させることができる。ヒト化抗体またはそのフラグメントを生成させるための例示的方法は、Morrison(1985)Science 229:1202-1207、Oi et al.(1986)BioTechniques 4:214、およびUS 5,585,089、US 5,693,761、US 5,693,762、US 5,859,205およびUS 6,407,213によって提供されている。これらの方法には、重鎖または軽鎖の少なくとも一方から免疫グロブリンFv可変ドメインの全部または一部をコードする核酸配列を単離し、操作し、発現させる工程が含まれる。そのような核酸は、上述のように予め決定された標的に対する抗体を生産するハイブリドーマから得ることも、他の供給源から得ることもできる。次に、ヒト化抗体分子をコードする組換えDNAを適当な発現ベクターにクローニングすることができる。
【0088】
一定の態様において、ヒト化抗体は、保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系置換および/または復帰変異の導入によって最適化される。そのような改変免疫グロブリン分子は、当技術分野において公知のいくつかの技法のいずれかによって作製することができ(例えばTeng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:7308-7312,1983、Kozbor et al,Immunology Today,4:7279,1983、Olsson et al.,Meth.Enzymol.,92:3-16,1982)、WO 92/06193またはEP 239400の教示に従って作製してもよい。
【0089】
抗体またはそのフラグメントは、WO 98/52976およびWO 00/34317に開示されている方法によるヒトT細胞エピトープの特異的欠失、すなわち「脱免疫化(deimmunization)」によって、修飾することもできる。簡単に述べると、抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインを、MHCクラスIIに結合するペプチドについて解析することができる。これらのペプチドは(WO 98/52976およびWO 00/34317に定義される)潜在的T細胞エピトープである。潜在的T細胞エピトープの検出には、「ペプチドスレッディング(peptide threading)」と呼ばれるコンピュータモデリングアプローチを応用することができると共に、WO 98/52976およびWO 00/34317に記載されているように、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを、VH配列およびVL配列中に存在するモチーフについて検索することができる。これらのモチーフは、18種の主要MHCクラスII DRアロタイプのいずれかに結合し、よって潜在的T細胞エピトープを構成する。検出された潜在的T細胞エピトープは、可変ドメイン中の少数のアミノ酸残基を置換することによって排除するか、または好ましくは単一アミノ酸置換によって排除することができる。典型的には保存的置換がなされる。多くの場合、ヒト生殖細胞系抗体配列中の位置に共通するアミノ酸を使用しうるが、そうでない場合もある。ヒト生殖細胞系配列は、例えばTomlinson,et at.(1992)J.MoI.Biol.227:776-798、Cook,G.P.et al.(1995)Immunol.Today Vol.16(5):237-242、Chothia,et al.(1992)J.MoI.Biol.227:799-817、およびTomlinson et al.(1995)EMBO J.14:4628-4638に開示されている。V BASEディレクトリ(V BASE directory)は、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的ディレクトリを提供している(MRCタンパク質工学センター(英国ケンブリッジ)のTomlinson,LA.らによって編纂されている)。これらの配列は、例えばフレームワーク領域およびCDRに関するヒト配列の情報源として使用することができる。例えば米国特許第6,300,064号に記載されているように、コンセンサスヒトフレームワーク領域を使用することもできる。
【0090】
「エフェクター細胞」、好ましくはヒトエフェクター細胞は、1つまたは複数のFcRを発現してエフェクター機能を履行する白血球である。好ましくはこれらの細胞は、少なくともFcyRmを発現し、ADCCエフェクター機能を履行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、ネイティブな供給源、例えば血液から単離することができる。
【0091】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体およびヘテロコンジュゲート抗体を含む抗体を生産するための技法は、当技術分野において公知であり、その一部を以下に例示する。
【0092】
1)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、一般に、動物において関連抗原(例えばポリマーソームに封入されたもの)とアジュバントとを皮下(sc)または腹腔内(ip)に複数回注射することによって生じる。免疫処置される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシンインヒビターなどに、二官能性作用物質または誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸などを使って、関連抗原をコンジュゲートすることは、有用でありうる。使用しうるアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバントおよびMPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。当業者は、はなはだしい実験を行わなくても、免疫処置プロトコールを選択しうる。
例えば動物は、抗原、免疫原性のコンジュゲートまたは誘導体に対して、そのタンパク質またはコンジュゲート(それぞれウサギまたはマウスの場合)を3体積のフロイント完全アジュバントと混合してその溶液を複数部位の皮内に注射することにより、免疫処置される。1ヶ月後、その動物に、複数部位への皮下注射により、フロイント完全アジュバント中の、元の1/5量~1/10量のペプチドまたはコンジュゲートで、追加免疫処置を行う。7~14日後に、動物から採血し、血清を抗体価についてアッセイする。力価がプラトーに達するまで、動物に追加免疫処置を行う。コンジュゲートは組換え細胞培養においてタンパク質融合物として作製することができる。また、ミョウバンなどの凝集剤も、免疫応答を強化するための使用に適している。
【0093】
「免疫処置する」という用語は、非ヒト動物に、その動物内で抗体が生じうるように、1つまたは複数の抗原を投与する1つまたは複数の工程を指す。
【0094】
具体的に述べると、非ヒト動物は、アジュバントと混合されていてもよいポリペプチド(抗原)で、好ましくは少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回、免疫処置される。「アジュバント」とは免疫応答の非特異的刺激剤である。アジュバントは、以下の構成要素のうちのどちらか一方または両方を含む組成物の形態をとりうる:(a)抗原を迅速な異化作用から保護する沈着物(deposit)を形成するように意図された物質(例えば鉱油、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リポソームまたは界面活性剤(例えばプルロニックポリオール))および(b)免疫処置された宿主動物の免疫応答を(例えばそこでのリンホカインレベルを増加させることなどによって)非特異的に刺激する物質。
【0095】
リンホカインレベルを増加させるための例示的な分子としては、リポ多糖(lipopolysaccaride)(LPS)またはそのリピドA部分、百日咳菌(Bordetalla pertussis)、百日咳毒素、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、およびムラミルジペプチド(MDP)が挙げられる。アジュバントの例としては、フロイントのアジュバント(任意で死滅結核菌(M.tuberculosis)を含むもの;完全フロイントアジュバント)、水酸化アルミニウムアジュバント、およびモノホスホリルリピドA-合成トレハロースジコリノミコレート(MPL-TDM)が挙げられる。
【0096】
本明細書において免疫処置される「非ヒト動物」は好ましくは齧歯類動物である。「齧歯類動物」とは胎盤哺乳類の齧歯目に属する動物をいう。例示的な齧歯類動物としてはマウス、ラット、モルモット、リス、ハムスター、フェレットなどが挙げられ、本明細書における方法に従って免疫処置するには、マウスが好ましい齧歯類動物である。本明細書において免疫処置することができる他の非ヒト動物としては、旧世界ザル(例えばヒヒまたはアカゲザルおよびカニクイザルを含むマカク;米国特許第5,658,570号参照)などの非ヒト霊長類、鳥類(例えばニワトリ)、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ロバ、イヌなどが挙げられる。
【0097】
「スクリーニング」とは、1種または複数種のモノクローナル抗体(例えば精製抗体および/または抗体を含むハイブリドーマ培養上清)を、関心対象の抗原に結合する抗体の能力を定性的および/または定量的に決定する1つまたは複数のアッセイに供することを意味する。
【0098】
「イムノアッセイ」とは、抗原への抗体の結合を決定するアッセイを意味し、任意で、抗体または抗原のどちらか一方または両方が、アッセイのいくつかの段階において、固相に吸着される(すなわち、「免疫吸着(immunoadsorbent)」アッセイ)。例示的なそのようなアッセイとしては、ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、およびFACSアッセイが挙げられる。上記のことから、本発明は、こうして、上述の抗体生成法によって得ることができる、すなわち、前述のように非ヒト動物を免疫処置することによって得ることができる、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を提供する。
【0099】
2)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られる。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、微量に存在するかもしれない考えうる天然の変異および/または翻訳後修飾(例えば異性化、アミド化)を除けば、同一である。したがって「モノクローナル」という修飾語は、別々の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示している。例えばモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって初めて記載されたハイブリドーマ法を使って作製されてもよいし、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製されてもよい。
【0100】
ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適当な宿主動物、例えばハムスターを、本明細書において上述したように免疫処置することで、免疫処置に使用されたタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を生産するかまたは生産する能力を有するリンパ球を誘発する。
【0101】
あるいは、リンパ球をインビトロで免疫処置してもよい。次に、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使ってリンパ球を骨髄腫細胞と融合することで、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。
【0102】
免疫処置剤は典型的には抗原タンパク質またはその融合バリアントを含むだろう。ヒト由来の細胞が望ましい場合には、一般に末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、非ヒト哺乳類供給源が望ましい場合には、脾細胞もしくはリンパ節細胞が使用される。次に、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使って、リンパ球を不死化細胞株と融合させることで、ハイブリドーマ細胞を形成させる。Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press(1986),pp.59-103。
【0103】
不死化細胞株は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯類動物、ウシおよびヒト由来の骨髄腫細胞である。通常はラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が使用される。こうして調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1種または複数種の物質を含有する適切な培養培地に播種して成長させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含むことになる(HAT培地)。
【0104】
好ましい不死化骨髄腫細胞は、効率よく融合し、選択された抗体生産細胞による抗体の安定した高レベル生産をサポートし、HAT培地などの培地に感受性を示すものである。これらのなかでは、米国カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerから入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍由来のもの、ならびに米国バージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionから入手可能なSP-2細胞(およびその誘導体、例えばX63-Ag8-653)などといった、マウス骨髄腫株が好ましい。ヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の生産に関して記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク,1987))。
【0105】
ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の生産についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生産されたモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降によって決定するか、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunoabsorbent assay)(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって決定する。
【0106】
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、モノクローナル抗体の結合アフィニティーおよび結合特異性を、免疫沈降によって決定するか、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合アッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって決定することができる。そのような技法およびアッセイは当技術分野において公知である。例えば結合アフィニティーは、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャッチャード分析によって決定しうる。
【0107】
所望の特異性、アフィニティーおよび/または活性の抗体を生産するハイブリドーマ細胞を同定した後、それらのクローンを限界希釈法によってサブクローニングし、標準的方法によって成長させることができる(Goding,前掲書)。この目的に適した培養培地としては、例えばD-MEM培地またはRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物において腹水腫瘍としてインビボで成長させうる。
【0108】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、培養培地、腹水液、または血清から、例えばプロテインA-Sepharose、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどといった従来の免疫グロブリン精製手順によって適切に分離される。
【0109】
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されているものなどといった組換えDNA法によって、上述のように作製してもよい。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使って(例えばマウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合する能力を有するオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。ひとたび単離されたら、そのDNAを発現ベクターに入れることができ、次にそれが、本来は免疫グロブリンタンパク質を生産しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞に、そのような組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成するためにトランスフェクトされる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関する総説としては、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256-262(1993)およびPluckthun,Immunol.Revs.130:151-188(1992)が挙げられる。
【0110】
3)ヒト化抗体
本発明の抗体はヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含みうる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、キメラ免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合性部分配列)である。ヒト化抗体としては、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、アフィニティーおよび能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基で置き換えられる。
【0111】
「ヒト化抗体」は、レシピエント抗体にもインポートされるCDR配列またはフレームワーク配列にも見出されない残基も含みうる。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質上すべてが非ヒト免疫グロブリンに対応し、FR領域のすべてまたは実質上すべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれである、少なくとも1つの、典型的には2つの、可変ドメインの実質上すべてを含むだろう。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも、含むだろう。Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)およびPresta,Curr.Opin.Struct.Biol.2:593-596(1992)。
【0112】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト供給源からそこに導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「インポート」残基と呼ばれ、それらは通例「インポート」可変ドメインから採用される。ヒト化は、本質的に、Winterとその共同研究者らの方法、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536(1988)に従って、または齧歯類のCDRもしくはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに使用することによって、履行することができる。したがってそのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に小さな部分が非ヒト種からの対応する配列で置換されている、キメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基と場合によってはいくつかのFR残基が齧歯類抗体中の類似する部位からの残基で置換されているヒト抗体である。
【0113】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体の作製において使用される軽鎖および重鎖両方のヒト可変ドメインの選択が極めて重要である。いわゆる「ベストフィット(best-fit)」法に従って、齧歯類抗体の可変ドメインの配列を、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。次に、齧歯類の配列に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体用のヒトフレームワーク(FR)として受け入れる。Sims et al.,J.Immunol.)151:2296(1993)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987)。
【0114】
別の一方法では、軽鎖または重鎖の特定サブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列から導き出された特定フレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用しうる。Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)。
【0115】
抗体が、抗原に対する高いアフィニティーおよび他の好都合な生物学的特性を保持したままヒト化されることは、さらに重要である。この目的を達成するために、好ましい一方法では、親配列とさまざまな概念上のヒト化産物とを、親配列とヒト化配列の三次元モデルを使って解析するプロセスによって、ヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列のありそうな三次元コンフォメーション構造を図解し表示するコンピュータプログラムを利用することができる。これらの表示を検査することにより、候補免疫グロブリン配列の機能における、残基のありそうに思われる役割の解析が、すなわち、候補免疫グロブリンの抗原結合能に影響を及ぼす残基の解析が、可能になる。こうして、標的抗原に対する増加したアフィニティーなどといった望ましい抗体特徴が達成されるように、レシピエント配列およびインポート配列から、FR残基を選択し、組み合わせることができる。一般に、抗原結合への影響には、CDR残基が直接的かつ最も実質的に関与している。
【0116】
さまざまな形態のヒト化抗体が考えられる。例えばヒト化抗体は、Fabなどの抗体フラグメントであってよく、これは、イムノコンジュゲートを生成させるために1つまたは複数の細胞毒性作用物質とコンジュゲートされていてもよい。
【0117】
あるいは、ヒト化抗体はインタクトIgG1抗体などのインタクト抗体であってもよい。
【0118】
4)ヒト抗体
ヒト化に代わる選択肢として、ヒト抗体を生成させることができる。例えば、免疫処置を受けた時に、内在性免疫グロブリン生産の非存在下で、ヒト抗体の完全なレパトアを生産する能力を有するトランスジェニック動物(例えばマウス)を作出することが、今では可能になっている。例えば、キメラおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失は、内在性抗体生産の完全な阻害をもたらすことが記載されている。そのような生殖系列変異体マウスへのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原曝露時に、ヒト抗体の生産をもたらすことになる。例えばJakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255-258(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immun.,7:33(1993)、米国特許第5,591,669号およびWO 97/17852を参照されたい。
【0119】
あるいは、免疫処置を受けていないドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパトアから、ヒト抗体およびヒト抗体フラグメントをインビトロで生産するために、ファージディスプレイ技術を使用することもできる。McCafferty et al.,Nature 348:552-553(1990)、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)。この技法では、抗体Vドメイン遺伝子が、M13などの繊維状バクテリオファージのメジャーコートタンパク質遺伝子またはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面に機能的抗体フラグメントとしてディスプレイされる。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能的特性に基づく選択は、それらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子の選択ももたらす。したがってファージは、B細胞の特性のうちの一部を模倣する。ファージディスプレイは、例えばJohnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Curr.Opin Struct.Biol.3:564-571(1993)に総説があるさまざまなフォーマットで、実施することができる。ファージディスプレイにはV遺伝子セグメントのいくつかの供給源を使用することができる。Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)は、免疫処置マウスの脾臓から誘導されたランダム組換えライブラリーV遺伝子から、多種多様な抗オキサゾロン抗体を単離した。免疫処置を受けていないヒトドナーからV遺伝子のレパトアを構築することができ、多種多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)またはGriffith et al.,EMBO J.12:725-734(1993)に記載の技法に本質的に従って、単離することができる。米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号も参照されたい。
【0120】
ヒトモノクローナル抗体の調製にはColeらおよびBoernerらの技法も利用できる(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)およびBoerner et al.,J.Immunol.147(1):86-95(1991)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位を、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されているトランスジェニック動物、例えばマウスに導入することによって作製することができる。抗原に曝露されると、遺伝子の再編成、アセンブリおよび抗体レパトアを含めて、あらゆる面でヒトに見られるものとよく似たヒト抗体生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号および以下の科学刊行物に記載されている:Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)、Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994)、Morrison,Nature 368:812-13(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845-51(1996)、Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996)およびLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)。最後に、ヒト抗体は、活性化B細胞により、インビトロでも生成されうる(米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号参照)。
【0121】
5)二重特異性および多重特異性抗体
二重特異性抗体(BsAb)は、少なくとも2つの異なるエピトープ(同じタンパク質上にあるものまたは別のタンパク質上にあるものを含む)に対して結合特異性を有する抗体である。あるいは、一方のアームは標的抗原に結合するように装備されており、他方のアームは、細胞性防御機構が標的抗原発現細胞に集中し局在化するように、白血球上のトリガリング分子、例えばT細胞受容体分子(例えばCD3)またはIgGに対するFc受容体(FcyR)、例えばFcyRI(CD64)、FcyRII(CD32)およびFcyRin(CD16)に結合するアームと組み合わせることができる。そのような抗体は完全長抗体または抗体フラグメントから誘導することができる(例えばF(ab')2二重特異性抗体)。
【0122】
二重特異性抗体は、標的抗原を発現する細胞に細胞毒性作用物質を局在化させるためにも使用しうる。そのような抗体は、所望の抗原に結合する1つのアームと、細胞毒性作用物質(例えばメトトレキサート)に結合するもう一つのアームとを有する。
【0123】
二重特異性抗体を作製するための方法は当技術分野において公知である。完全長二重特異性抗体の従来の生産は、2種の免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの共発現に基づき、この場合、2本の鎖は異なる特異性を有する。Millstein et al.,Nature,305:537-539(1983)。免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖とがランダムに取り合わされるので、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生産し、正しい二重特異性構造を有するのはそのうちの1つだけである。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われる正しい分子の精製は、かなり面倒であり、製品収率は低い。同様の手順はWO 93/08829およびTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0124】
異なる一アプローチでは、所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を持つ抗体可変ドメインが免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖結合に必要な部位を含有する第1重鎖定常領域(CH1)が、融合物の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物と所望であれば免疫グロブリン軽鎖とをコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、それらを適切な宿主生物に共トランスフェクトする。これにより、構築に使用される3つのポリペプチド鎖の比率が等しくない場合に最適な収率が得られる態様において、それら3つのポリペプチドフラグメントの相互比率の調節に大きな自由度が得られる。ただし、少なくとも2つのポリペプチド鎖が等しい比で発現することで高い収率がもたらされる場合、または比が特には重要でない場合に、2つのポリペプチド鎖または3つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することは可能である。
【0125】
このアプローチの好ましい一態様において、二重特異性抗体は、一方のアームにおける第1結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペア(第2の結合特異性を与えるもの)とで構成される。免疫グロブリン軽鎖が二重特異性分子の半分にしか存在しないことは簡単な分離方法をもたらすので、この非対称構造は、不要な免疫グロブリン鎖の組合せからの、所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることがわかった。このアプローチはWO 94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成に関するさらなる詳細については、例えばSuresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照されたい。
【0126】
WO 96/27011またはUS 5,731,168に記載のもう一つのアプローチによれば、一対の抗体分子間の境界面を、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージが最大になるように、工学的に改変することができる。好ましい境界面は抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の境界面にある1つまたは複数の小さなアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。それら大きな側鎖と同じサイズまたは類似するサイズの補償的「くぼみ」は、第2抗体分子の境界面において、大きなアミノ酸側鎖を、それより小さなもの(例えばアラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって作出される。これは、他の不要な最終生成物、例えばホモ二量体と比較して、ヘテロ二量体の収率を増加させるための機序になる。
【0127】
抗体フラグメントから二重特異性抗体を生成させるための技法は文献に記載がある。例えば二重特異性抗体は化学的連結によって調製することができる。Brennan et al.,Science 229:81(1985)には、インタクト抗体をタンパク質分解的に切断して、F(ab')2フラグメントを生成させる手順が記載されている。これらのフラグメントは、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、隣接ジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防止する。生成したFab'フラグメントは、次に、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次に、Fab'-TNB誘導体の一つをFab'-TNB誘導体に再変換することで、二重特異性抗体を形成させる。生産された二重特異性抗体は、酵素を選択的に固定化するための作用物質として使用することができる。
【0128】
Fab'フラグメントを大腸菌から直接回収して、それらを化学的にカップリングすることで、二重特異性抗体を形成させてもよい。Shalaby et al.,J.Exp.Med.175:217-225(1992)には、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')2分子の生産が記載されている。各Fab'フラグメントは、大腸菌から別々に分泌され、二重特異性抗体を形成させるために、インビトロでの指向的化学カップリング(directed chemical coupling)に供された。こうして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞と正常ヒトT細胞とに結合することができ、ヒト乳腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性をトリガーすることもできた。
【0129】
組換え細胞培養から二価抗体フラグメントを直接的に作製し単離するためのさまざまな技法も記載されている。例えば、ロイシンジッパーを使って二価ヘテロ二量体が生産されている。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)。
【0130】
Fosタンパク質およびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、2つの異なる抗体のFab'部分に、遺伝子融合によって連結された。抗体ホモ二量体をヒンジ領域において還元することで単量体を形成させてから、再酸化することで抗体ヘテロ二量体を形成させた。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)によって記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異性/二価抗体フラグメントを作製するための代替機序となっている。これらのフラグメントは、同じ鎖上の2つのドメイン間でペアを形成するには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つのフラグメントのVHドメインおよびVLドメインは、もう一つのフラグメントの相補的なVLドメインおよびVHドメインとペア形成することを強いられ、それによって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体を使って二重特異性/二価抗体フラグメントを作製するための別の戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Imnzunol.,152:5368(1994)を参照されたい。
【0131】
3以上の結合価を持つ抗体が考えられる。例えば三重特異性抗体を調製することができる。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。
【0132】
例示的な二重特異性抗体は、所与の分子上の2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、細胞性防御機構が特定タンパク質を発現する細胞に集中するように、抗タンパク質アームを、白血球上のトリガリング分子、例えばT細胞受容体分子(例えばCD2、CD3、CD28またはB7)またはIgGに対するFc受容体(FcyR)、例えばFcyRI(CD64)、FcyRII(CD32)およびFcyRIII(CD16)に結合するアームと組み合わせてもよい。
【0133】
もう一つの関心対象の二重特異性抗体は、関心対象のタンパク質に結合し、さらにヒト血清アルブミンにも結合する。
【0134】
Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)によって記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異性フラグメントを作製するための代替機序となっている。これらのフラグメントは、同じ鎖上の2つのドメイン間でペアを形成するには短すぎるリンカーによってVLに接続されたVHを含む。したがって、1つのフラグメントのVHドメインおよびVLドメインは、もう一つのフラグメントの相補的なVLドメインおよびVHドメインとペア形成することを強いられ、それによって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体を使って二重特異性抗体フラグメントを作製するための別の戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい。
【0135】
3以上の結合価を持つ抗体が考えられる。例えば三重特異性抗体を調製することができる。Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)。
【0136】
多価抗体は、その抗体が結合する抗原を発現する細胞によって、二価抗体よりも早く内部移行(および/または異化)されうる。本発明の抗体は、3つ以上の抗原結合部位を持つ多価抗体(IgMクラス以外のもの)(例えば四価抗体)であることができ、これは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現によって容易に生産することができる。多価抗体は二量体化ドメインと3つ以上の抗原結合部位とを含むことができる。好ましい二量体化ドメインはFc領域またはヒンジ領域を含む(またはそれらからなる)。このシナリオでは、抗体は、Fc領域と、Fc領域のアミノ末端側にある3つ以上の抗原結合部位とを含むだろう。本明細書における好ましい多価抗体は、3~約8つの、ただし好ましくは4つの、抗原結合部位を含む(またはそれらからなる)。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、その(それらの)ポリペプチド鎖は2つ以上の可変ドメインを含む。例えばポリペプチド鎖はVDI(X1n-VD2-(X2)n-Fcを含みうる。ここに、VDIは第1可変ドメインであり、VD2は第2可変ドメインであり、Fcは1つのFc領域ポリペプチド鎖であり、X1およびX2はアミノ酸またはポリペプチドを表し、nは0または1である。例えばポリペプチド鎖はVH-CHI-フレキシブルリンカー-VH-CHI-Fc領域鎖またはVH-CHI-VH-CHI-Fc領域鎖を含みうる。本明細書において多価抗体は、好ましくは、少なくとも2つ(好ましくは4つの)軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに含む。本明細書において多価抗体は、例えば、約2つ~約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含みうる。ここで考えられる軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを含み、任意で、CLドメインをさらに含む。
【0137】
ヘテロコンジュゲート抗体も本発明の範囲内である。
【0138】
ヘテロコンジュゲート抗体は、共有結合で接合された2つの抗体で構成される。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方をアビジンにカップリングし、他方をビオチンにカップリングすることができる。これらの抗体は、架橋剤を必要とするものを含む合成タンパク質化学における公知の方法を使って、インビトロで調製しうると考えられる。例えばイムノトキシンは、ジスルフィド交換反応を使って、またはチオエーテル結合を形成させることによって、構築することができる。この目的に適した試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミデートならびに例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが挙げられる。ヘテロコンジュゲート抗体は任意の従来の架橋法を使って作製しうる。適切な架橋剤は当技術分野において周知であり、米国特許第4,676,980号に、いくつかの架橋技法と共に開示されている。
【0139】
他の抗体生産技法については、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlowら編,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照されたい。本発明は、抗体の供給源、生産方法または他の特別な特徴について、いかなる特定のものにも、必ずしも限定されない。
【0140】
本発明に関係する抗体は好ましくは「単離された」抗体である。「単離された」とは、本明細書に開示する抗体を説明するために使用される場合は、その生産環境の構成要素から同定され、分離されかつ/または回収された抗体を意味する。好ましくは、単離された抗体は、その生産環境からの他のどの構成要素とも関連を持たない。その生産環境の夾雑構成要素、例えば組換えトランスフェクト細胞に起因するものは、当該ポリペプチドの診断または治療への使用を典型的には妨害するであろう材料であり、これには酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれうる。好ましい態様において、抗体は、(1)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)を利用して、N末端アミノ酸配列または内部アミノ酸配列のうちの少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製されるか、または(2)非還元条件下または還元条件下のSDS-PAGEにより、クーマシーブルー染色または好ましくは銀染色を使って、均一に精製されることになる。ただし通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製されることになる。
【0141】
本明細書にいう「がん」は、身体における異常細胞の無制御な成長を特徴とする幅広い一群の疾患を指す。無秩序な細胞分裂は悪性腫瘍または隣接組織に侵入する細胞の形成をもたらし、リンパ系または血流を介して身体の遠隔部に転移しうる。
【0142】
がんの非限定的な例としては、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平非小細胞肺がん(NSCLC)、非NSCLC、神経膠腫、胃腸がん、腎がん(例えば明細胞がん)、卵巣がん、肝がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎がん(例えば腎細胞がん(RCC))、前立腺がん(例えばホルモン不応性前立腺腺がん)、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、膠芽腫(多形性神経膠芽腫)、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、大腸がん、および頭頸部がん(またはがん)、胃がん、胚細胞性腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば転移性悪性黒色腫、例えば皮下または眼内悪性黒色腫)、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門部がん、精巣がん、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、子宮頸部がん、膣がん、外陰がん、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児の固形腫瘍、尿管がん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮細胞がん、T細胞性リンパ腫、環境誘発がん、例えばアスベストによって誘発されるもの、ウイルス関連がん(例えばヒトパピローマウイルス(HPV)関連腫瘍)、2つの主要血液細胞系譜、すなわち、骨髄細胞系(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージおよび肥満細胞を産生する)またはリンパ細胞系(B細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞を産生する)のどちらか一方から派生する血液学的悪性疾患、例えばあらゆるタイプの白血病(luekemias)、リンパ腫および骨髄腫、例えば急性、慢性、リンパ球性および/または骨髄性白血病、例えば急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML(M0)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2;細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3またはM3バリアント[M3V])、骨髄性単球性白血病(M4または好酸球性を伴うM4バリアント[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、孤立性顆粒球肉腫、および緑色腫;リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞性リンパ腫、T細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球様B細胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えばKi1+)大細胞リンパ腫、成人T細胞性リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性T細胞性リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞性リンパ腫、原発性縦隔B細胞性リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ系の造血器腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫(CTLC)(菌状息肉腫またはセザリー症候群とも呼ばれる)、およびワルデンストレーム・マクログロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、骨髄腫、例えばIgG型骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(無症候性骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫、および多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞リンパ腫;骨髄系の造血器腫瘍、線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;精上皮腫、奇形がん、中枢神経系および末梢神経系の腫瘍、例えば星状細胞腫、シュワン腫;線維肉腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;ならびに他の腫瘍、例えば黒色腫、色素性乾皮症、角化性棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞がんおよび奇形がん、リンパ系の造血器腫瘍、例えばT細胞腫瘍およびB細胞腫瘍、限定するわけではないが、例えば小細胞型および大脳様細胞型(cerebriform cell type)を含むT前リンパ性白血病(T-PLL)などのT細胞障害;大型顆粒リンパ球白血病(LGL)、好ましくはT細胞型のもの;a/d T-NHL肝脾リンパ腫;末梢性/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性亜型および免疫芽細胞亜型);血管中心性(鼻)T細胞性リンパ腫;頭頸部のがん、腎がん、直腸がん、甲状腺のがん;急性骨髄リンパ腫(acute myeloid lymphoma)、ならびに前記のがんの任意の組合せが挙げられる。本明細書に記載する方法は、転移がん、不応性がん(例えば以前の免疫治療、例えばCTLA-4またはPD-1またはPD-L1遮断抗体によるものに不応性であるがん)および再発がんの処置に使用することもできる。
【0143】
「対象」という用語は生体を包含するものとする。対象の例として、哺乳動物、例えばヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、およびトランスジェニック非ヒト動物が挙げられる。ただし対象(動物)は鳥類または魚類などの非哺乳類動物であってもよい。本発明のいくつかの好ましい態様において対象はヒトであり、他のいくつかの好ましい態様では対象は農用動物であってもよく、農用動物は哺乳動物または非哺乳類動物のどちらかであることができる。そのような非哺乳類動物の例は、鳥類(例えばニワトリ、カモ、ガチョウまたはシチメンチョウなどの家禽)、魚類(例えばサケ、マス、またはティラピアなどの養殖魚)または甲殻類(シュリンプ(shrimp)またはプローン'(prawn)など)である。哺乳類(家畜)動物の例としては、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタまたはロバが挙げられる。他の哺乳動物には、例えばネコ、イヌ、マウスおよびウサギが含まれる。例示的態様において、本発明のポリマーソームは、ウイルス感染に対する上記農用動物(哺乳類農用動物と非哺乳類農用動物(鳥類、魚類、甲殻類)の両方)のワクチン接種または免疫処置に使用される(これについては「実施例」を参照されたい)。したがってそのような場合、本発明のポリマーソームは、可溶性の完全長ウイルスタンパク質または完全長ウイルスタンパク質の可溶性フラグメントを、そこに封入しうる。
【0144】
ヒトおよび非ヒト動物のどちらのワクチン接種に使用する場合にも、本発明のポリマーソームまたは本発明のポリマーソームを含む組成物は、適切な(薬学的に許容される)緩衝液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)または0.9%生理食塩水(オスモル濃度が308mOsm/Lである0.90%w/v NaClの等張液)に溶解して、それぞれの対象に経口投与しうる(ここでも「実施例」を参照されたい)。あるいは、天然ポリマーでコーティングすることなどによってポリマーソームを修飾するか、アルギナートもしくはキトサンなどの天然ポリマーの粒子中に、またはポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(g-グルタミン酸)(g-PGA)[31,32]もしくはポリ(エチレングリコール)(PEG)などの合成ポリマーの粒子中に、ポリマーソームを処方することができる。これらの粒子は、マイクロメートル域の粒子(「マクロビーズ」)もしくはナノ粒子、またはマクロビーズに組み入れられたナノ粒子のいずれかであることができ、これらはいずれも当技術分野では周知である。例えばHari et al「Chitosan/calcium-alginate beads for oral delivery of insulin」Applied Polymer Science,Volume 59,Issue11,14 March 1996,1795-1801、Sosnikの総説「Alginate Particles as Platform for Drug Delivery by the Oral Route:State-of-the-Art」ISRN Pharmaceutics Volume 2014,Article ID 926157、Machado et al「Encapsulation of DNA in Macroscopic and Nanosized Calcium Alginate Gel Particles」Langmuir 2013,29,15926-15935、国際特許出願WO2015/110656、Liang Zhaoらの総説「Nanoparticle vaccines」Vaccine 32(2014)327-337またはLi et al「Chitosan-Alginate Nanoparticles as a Novel Drug Delivery System for Nifedipine」Int J Biomed Sci vol. 4 no. 3 September 2008,221-228を参照されたい。これらのポリマーソームおよび経口製剤の例示的態様において、ワクチン接種に使用されるポリマーソームは、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、VP1、VP2もしくはVP3コートタンパク質などの口蹄疫(FMD)ウイルスタンパク質(VP1コートタンパク質はFMDビリオンの主要抗原決定基を含有しているので、その配列の変化はこのウイルスの高い抗原多様性の原因となっているはずである)、卵白アルブミン(OVA)、またはブタ流行性下痢(PED)ウイルススパイクタンパク質の可溶性部分を含むウイルス抗原を、そこに封入している。インフルエンザヘマグルチニンまたはVP1、VP2もしくはVP3コートタンパク質などの口蹄疫(FMD)ウイルスタンパク質の可溶性部分を含むポリマーソームの使用から明らかであるように、ウイルス疾患は鳥類および哺乳動物を含む任意の動物を侵すことができ、哺乳動物はヒトであることもできる。
【0145】
「有効量」または「有効投薬量」という用語は、所望の効果を達成するのに十分な量または所望の効果を少なくとも部分的に達成するのに十分な量と定義される。「治療有効量」という用語は、既に疾患に侵されている患者における疾患およびその合併症を治癒させ、または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量と定義される。この用途に有効な量は、感染症の重症度および対象自身の免疫系の一般的状態に依存するだろう。「患者」という用語は、予防的処置または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を包含する。
【0146】
抗体またはその抗原結合部分の適当な投薬量または治療有効量は、処置される状態、状態の重症度、前治療、ならびに患者の臨床歴および治療剤に対する応答に依存するだろう。適正な用量は、主治医の判断に従って、患者に一度に、または一連の投与として投与することができるように、調節することができる。薬学的組成物は、唯一の治療薬として投与するか、必要に応じて追加の治療と組み合わせて投与することができる。
【0147】
薬学的組成物が凍結乾燥されている場合は、投与に先立って、その凍結乾燥材料をまず適当な液体に再構成する。凍結乾燥材料は、例えば静菌性注射用水(BWFI)、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、または凍結乾燥前にタンパク質が入っていたものと同じ製剤に再構成することができる。
【0148】
注射用の薬学的組成物は、単位剤形で、例えばアンプルに入れて、または保存剤が添加された多用量型容器に入れて、提示することができる。加えて、新しい薬物送達アプローチもいくつか開発されており、本発明の薬学的組成物は、これらの新しい方法、例えばInject-ease、Genject、Genenなどのペン型注射器、ならびにMediJectorおよびBioJectorなどの無針デバイスを使った投与に適している。本薬学的組成物は、まだ発見されていない投与方法にも適合させることができる。Langer,1990,Science,249:1527-1533も参照されたい。
【0149】
薬学的組成物をデポー調製物として製剤化することもできる。そのような長時間作用性製剤は、植込み(例えば皮下、靱帯内もしくは腱内、滑液膜下または筋肉内への植込み)、滑液膜下注射または筋肉内注射によって投与しうる。したがって例えば、製剤は、適切なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば許容される油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂で修飾するか、やや溶けにくい誘導体として、例えばやや溶けにくい塩として、修飾することができる。
【0150】
薬学的組成物は、反応性組成物を提供するための投与に使用される、さまざまな従来のデポー型であってもよい。それらには、例えば、溶液または懸濁液、スラリー、ゲル、クリーム、バーム、エマルション、ローション、粉末、スプレー、フォーム、ペースト、オイントメント(ointment)、サルブ(salve)、バームおよび液滴などの固形、半固形および液状剤形が含まれる。
【0151】
所望であれば薬学的組成物は、活性成分を含有する1または複数の単位剤形を含有しうる、バイアル、パックまたはディスペンサーデバイスに入れて提示することができる。一態様において、ディスペンサーデバイスは、すぐに注射できる液状製剤の単回用量を有するシリンジを含むことができる。シリンジには投与に関する説明書を添付することができる。
【0152】
薬学的組成物は薬学的に許容される追加の構成要素をさらに含みうる。本明細書に記載するタンパク質には、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されているものなど、他の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤も、それらが製剤の望ましい特徴に有害な影響を及ぼすのでない限り、含めることができる。本明細書にいう「薬学的に許容される担体」とは、薬学的投与と適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を意味する。薬学的に活性な物質のためのそのような媒質および作用物質の使用は当技術分野において周知である。許容される担体、賦形剤または安定剤は使用される投薬量および濃度においてレシピエントにとって無毒性であり、追加の緩衝剤;保存剤;共溶媒;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;キレート剤、例えばEDTA;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);生分解性ポリマー、例えばポリエステル;塩形成対イオン、例えばナトリウム、多価糖アルコール;アミノ酸、例えばアラニン、グリシン、アスパラギン、2-フェニルアラニン、およびスレオニン;糖類または糖アルコール、例えばラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えばイノシトール)、ポリエチレングリコール;含硫黄還元剤、例えばグルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、[アルファ]-モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリン;および親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンを含む。
【0153】
本明細書に記載の製剤は、それを必要とする患者における本明細書に記載の病態医学的状態の処置および/または防止において、薬学的組成物として有用である。「処置」という用語は、治療的処置と予防的もしくは防止的措置の両方を指す。処置には、ある疾患/障害、疾患/障害の症状、または疾患/障害の素因を有する患者の身体、単離された組織または細胞に、その疾患、疾患の症状または疾患の素因を治癒(cure、heal)させ、緩和し、軽減し、改変し、矯正し、改善し、改良し、またはそれらに影響を及ぼす目的で、製剤を適用または投与することが含まれる。
【0154】
本明細書において使用する「処置する」および「処置」という用語は、治療有効量の本発明の薬学的組成物を対象に投与することを指す。「治療有効量」とは、疾患または障害を処置または改善し、疾患の発症を遅延させ、または疾患の処置もしくは管理において何らかの治療的利益を得るのに十分な、薬学的組成物または抗体の量を指す。
【0155】
本明細書において使用する「予防」という用語は、疾患または障害の発症を防止するための作用物質の使用を指す。「予防有効量」は、疾患の発症または再発を防止するのに十分な活性構成要素または薬学的作用物質の量を規定する。
【0156】
本明細書において使用する「障害」および「疾患」という用語は、対象における状態を指すために、相互可換的に使用される。特に、「がん」という用語は「腫瘍」という用語と相互可換的に使用される。
【0157】
本発明のキットは、典型的には、上述の容器と、例えば緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジおよび使用説明書を含む添付文書などといった商業的観点および使用者の観点から望ましい材料を含む1つまたは複数の他の容器とを含むであろう。
【0158】
本願に関して、「リポソーム」という用語は、少なくとも1つの脂質二重層を有する球場のベシクルを指す。
【0159】
本願に関して、「エンドソーム」という用語は、真核細胞内の膜で区切られたコンパートメント(すなわち、液胞)を指し、エンドサイトーシスによって取り入れられた材料はそこに送達される。
【0160】
本願に関して、「後期エンドソーム」という用語は、内腔pHが低くタンパク質組成が異なることによって初期エンドソームとは区別される、プレリソソームエンドサイトーシス細胞小器官を指す。後期エンドソームは初期エンドソームよりも球形であり、大部分が核近傍にあって、微小管形成中心近くに濃縮されている。
【0161】
本願に関して、「Tヘルパー細胞」(TH細胞または「エフェクターCD4(+)T細胞」とも呼ばれる)という用語は、形質細胞およびメモリーB細胞へのB細胞の成熟や細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む免疫学的プロセスにおいて、他の白血球を支援するTリンパ球を指す。これらの細胞は、その表面にCD4糖タンパク質を発現するので、「CD4(+)T細胞」としても公知である。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現したMHCクラスII分子によって、例えばペプチド抗原を提示されると、活性化される。
【0162】
本明細書において使用する「自己抗原」という用語は、ある生物の任意の分子または化学基であって、別の生物では抗体形成の誘導において抗原として作用するが、親生物の健常な免疫系はそれに対して寛容であるものを指す。
【0163】
本明細書において使用する「%同一性」という用語は、www.clustal.orgから入手可能なClustalW法もしくはClustalX法またはそれらと等価な技法で例示されるような最適な配列アラインメントで2つのアミノ酸配列を比較した場合に、配列内の対応する位置における同一アミノ酸残基のパーセンテージを指す。したがって、両方の配列(リファレンス配列と関心対象の配列)をアラインメントし、両配列間の同一アミノ酸残基を同定し、同一アミノ酸の総数を、アミノ酸の総数(アミノ酸長)で割る。この割り算の結果がパーセント値、すなわち、パーセント同一性値/パーセント同一度である。
【0164】
本発明の免疫処置法は、完全長可溶性封入抗原(例えばタンパク質)または前記タンパク質のフラグメントを、その適正なフォールディングを可能にする合成環境で使用することによって実行することができるので、インビボで対応する抗原(例えば膜タンパク質)を検出する能力を有する抗体が単離される確率は高くなるだろう。そのうえ、本免疫処置および抗体生成は、ペプチドベースの免疫処置アプローチを使用する場合には本来必要になるであろう膜タンパク質構造に関する知識が事前に何もなくても、実行することができる。
【0165】
さらに、他の技法と比べると、本発明の方法は、酸化安定性膜環境に封入された膜タンパク質の迅速で費用対効果の高い生産を可能にする。
【0166】
いくつかの局面において、本発明は、対象における抗原(例えば免疫原)に対する免疫応答を誘発するための方法に関する。本方法は、両親媒性ポリマーの膜(例えば周囲膜)を有する本発明のポリマーソームを含む組成物を対象に投与する工程を含みうる。本組成物は、本発明のポリマーソームの両親媒性ポリマーの膜によって封入された可溶性抗原を、さらに含む。免疫原は膜結合型タンパク質でありうる。いくつかのさらなる局面において、本発明のポリマーソームは脂質ポリマーを含む。投与は、例えば経口投与、外用投与、または注射など、任意の適切な方法で実行されうる。
【0167】
当業者は、所望する応答のレベルに応じて、投与(例えば経口投与または注射)の頻度を決定し、調節することができる。例えば、対照(これは哺乳類動物を含みうる)には、本発明のポリマーソームの週1回または2週に1回の投与(例えば経口投与または注射による投与)を与えることができる。免疫応答は、本発明のポリマーソームに封入された抗原の初期量に対して哺乳類動物における抗体の血中濃度レベル(力価)を定量することによって測定することができる(「実施例」参照)。
【0168】
ポリマーソームの構造は、ベシクル状に自己集合してさまざまな抗原(例えば可溶性タンパク質など)を封入している両親媒性ブロック共重合体を含むことができ、抗原は、溶媒再水和(solvent re-hydration)の方法、直接的分散、または自発的自己集合によって封入される(例えば本明細書に記載の実施例1)。
【0169】
本願に関して、本明細書において使用する「可溶性抗原」という用語は、溶解することができるまたは液状にすることができる抗原を意味する。「可溶性抗原」という用語は、「可溶化された」抗原、すなわち、界面活性剤または他の薬剤の作用によって可溶性にされた、または特に水への、溶解度を増した抗原を包含する。例示的で非限定的な本発明の可溶性抗原としては、タンパク質の非可溶性部分に由来するポリペプチド、封入のために可溶性にされた疎水性ポリペプチド、ならびに凝集物として可溶性である凝集ポリペプチドが挙げられる。
【0170】
いくつかの局面において、本発明の抗原(例えば膜タンパク質)は、界面活性剤(detergent)、界面活性剤(surfactant)、温度変化またはpH変化を使って可溶化される。両親媒性ブロック共重合体によって提供されるベシクル構造は、抗原(例えば膜タンパク質)が生理的に正しく機能的な形で折りたたまれることを可能にすることで、標的哺乳類動物の免疫系が該抗原を検出し、それによって強い免疫応答を生じることを可能にする。
【0171】
いくつかの局面において、本発明の組成物の注射は、腹腔内注射、皮下注射もしくは静脈内注射、筋肉内注射、または非侵襲的投与を含みうる。他のいくつかの局面において、本発明の組成物の注射は皮内注射を含みうる。
【0172】
他のいくつかの局面では、本発明のポリマーソームを含む組成物にアジュバントを含めることによって、免疫応答レベルをさらに高め、またはブーストすることができる。そのような局面において、ポリマーソームとアジュバントは対象に同時に投与することができる。
【0173】
いくつかの局面において、本発明のポリマーソームのブロック共重合体または両親媒性ポリマーは、免疫賦活加薬でもアジュバントでもない。
【0174】
他のいくつかの局面において、本発明のブロック共重合体または両親媒性ポリマーは免疫賦活薬および/またはアジュバントである。
【0175】
いくつかのさらなる局面において、本発明のポリマーソームは免疫原性である。
【0176】
いくつかのさらなる局面において、本発明のポリマーソームは非免疫原性である。
【0177】
いくつかの局面において、アジュバントは、本発明のポリマーソームを含む本発明の組成物の投与とは別個に投与しうる。アジュバントは、本発明の抗原を封入したポリマーソームを含む組成物を投与する前に、またはその投与と同時に、またはその投与後に、投与しうる。例えば、アジュバントは、本発明の抗原を封入したポリマーソームを含む組成物を注射した後に、対象に注射しうる。いくつかの局面において、アジュバントは、抗原と一緒にポリマーソームに封入することができる。
【0178】
注射されるべきアジュバントのタイプが注射されるべき抗原のタイプに依存することは、当業者には容易に認識され、理解されるだろう。抗原は、細菌、ウイルスまたは真菌由来の抗原でありうる。例えば、抗原がOVAである場合、アジュバントはSigma Adjuvant System(SAS)でありうる。他の抗原-アジュバントペアも本発明の方法における使用に適している。一定の局面では、アジュバントの使用は必要ない。さらに別の局面では、アジュバントを使用しない方が、本方法は、より良く作用する、すなわち、より強い免疫応答が惹起される。
【0179】
いくつかの局面において、膜タンパク質は、膜貫通タンパク質、Gタンパク質共役受容体、神経伝達物質受容体、キナーゼ、ポリン、ABC輸送体、イオン輸送体、アセチルコリン受容体および細胞接着受容体であってもよい。膜タンパク質はタグに融合またはカップリングしてもよいし、タグを含まなくてもよい。膜タンパク質にタグ付けする場合、タグは、例えばVSV、His-タグ、Strep-tag(登録商標)、Flag-タグ、インテイン-タグまたはGST-タグなどの周知のアフィニティータグ、またはビオチンもしくはアビジンなどの抗アフィニティー結合ペアのパートナー、または蛍光ラベル、酵素ラベル、NMRラベルもしくは同位体ラベルなどのラベルから選択することができる。
【0180】
いくつかの局面において、膜タンパク質またはそのフラグメント(もしくは一部分)は、封入前に用意されてもよいし、無細胞発現系によるタンパク質の生産と同時に封入されてもよい。無細胞発現系はインビトロ転写・翻訳系であってよい。
【0181】
無細胞発現系は、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽抽出物または昆虫抽出物に基づくTNT系などの真核無細胞発現系、原核無細胞発現系または古細菌無細胞発現系であることもできる。
【0182】
上述のとおり、ポリマーソームは、両親媒性ジブロックまたはトリブロック共重合体で形成されうる。さまざまな局面において、両親媒性ポリマーは、カルボン酸、アミド、アミン、アルキレン、ジアルキルシロキサン、エーテルまたはアルキレンスルフィドのモノマー単位を少なくとも1つ含みうる。
【0183】
いくつかの局面において、両親媒性ポリマーは、オリゴ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシエチレン)ブロック、オリゴ(オキシプロピレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、オリゴ(オキシブチレン)ブロックおよびポリ(オキシブチレン)ブロックからなる群より選択されるポリエーテルブロックでありうる。ポリマーに含まれうるブロックのさらなる例としては、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリスチレン、ポリ(ブタジエン)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリ(プロピレンスルフィド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート)、ポリ(2-ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)、ポリ(2-メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン、ポリ(イソプレン)、ポリ(イソブチレン)、ポリ(エチレン-co-ブチレン)およびポリ(乳酸)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。適切な両親媒性ポリマーの例としては、ポリ(エチルエチレン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-b-PEO)、ポリ(ブタジエン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-b-PEO)、ポリ(スチレン)-b-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)としても公知であるポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(本明細書ではPDMS-PEOという)、例えばMay et al.,2013が使用したPMOXA20-PDMS54-PMOXA20(ABA)などのトリブロック共重合体を含むポリ(2-メチルオキサゾリン)-b-ポリ(ジメチルシロキサン)-b-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-bPDMS-bPMOXA)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)-b-ポリ(ジメチルシロキサン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PMOXA-b-PDMS-b-PEO)、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(プロピレンスルフィド)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-b-PPS-b-PEO)およびポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ブチレンオキシド)ブロック共重合体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ブロック共重合体は、共重合体中に含まれるそれぞれのブロックの平均ブロック長によってさらに指定することができる。したがって、PBMPEONは、長さMのポリブタジエンブロック(PB)と長さNのポリエチレンオキシド(PEO)ブロックとの存在を示す。MおよびNは、独立して選択される整数であり、これは例えば約6~約60の範囲内で選択されうる。したがってPB35PEO18は、平均長35のポリブタジエンブロックと平均長18のポリエチレンオキシドブロックとの存在を示す。一定の局面において、PB-PEOジブロック共重合体は、5~50ブロックPBと5~50ブロックPEOとを含む。同様に、PB10PEO24は、平均長10のポリブタジエンブロックと平均長24のポリエチレンオキシドブロックとの存在を示す。本発明において使用することができる適切なPB-PEOジブロック共重合体の具体例としては、ジブロック共重合体PBD21-PEO14(市販もされている)および[PBD]21-[PEO]12(WO2014/077781A1およびNallani et al.,2011参照)が挙げられる。さらなる一例として、EOBPは、長さOのエチレンオキシドブロック(E)と長さPのブタジエンブロック(B)の存在を示す。したがってOおよびPは独立して選択される整数であり、例えば約10~約120の範囲にある。したがってE16E22は平均長16のエチレンオキシドブロックと平均長22のブタジエンブロックとの存在を示す。
【0184】
次に、本発明のポリマーソームを形成させるために使用されるもう1つの好ましいブロック共重合体であるポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)(PDMS-PEO)について考えると、ここでは線状PDMS-PEOとくし型PDMS-PEOをどちらも使用できることに留意されたい(PDMS-PEOから形成されたポリマーソームを記載しているGaspard et al「Mechanical Characterization of Hybrid Vesicles Based on Linear Poly(Dimethylsiloxane-b-Ethylene Oxide)and Poly(Butadiene-b-Ethylene Oxide)Block Copolymers」Sensors 2016,16(3),390参照)。
【0185】
線状PDMS-PEOの構造を以下に式(I):
として示し、くし型PDMS-PEOの構造を以下に式(II):
として示す。構造式(I)に沿って、PDMSn-PEOmという術語は、長さnのポリジメチルシロキサン(PDMS)ブロックと長さmのポリエチレンオキシド(PEO)ブロックとの存在を示す。mおよびnは独立して選択される整数であり、それぞれ例えば約5もしくは約6~約100、約5~約60、または約6~約60、または約5~50の範囲で選択することができる。例えば、PDMS12-PEO46またはPDMS47PEO36などの線状PDMS-PEOは、カナダ・ケベック州ドーバル(モントリオール)のPolymer Source Inc.から市販されている。したがってPDMS-PEOブロック共重合体は、5~100ブロックPDMSと5~100ブロックPEO、6~100ブロックPDMSと6~100ブロックPEO、5~100ブロックPDMSと5~60ブロックPEO、または5~60ブロックPDMSと5~60ブロックPEOを含みうる。
【0186】
上記に従って、本発明は、一局面において、対象における免疫応答を誘発する方法であって、抗原を担持するPDMS-PEOから形成されたポリマーソームを対象に投与する工程を含む方法に関する。抗原は任意の適切な形でPDMS-PEOポリマーソームと会合/物理的に連結することができる。例えばPDMS-PEOポリマーソームは、本発明に記載するように、その中に封入された可溶性抗原を有しうる。上記に代えて、または上記に加えて、ポリマーソームは、WO2014/077781A1に記載されているように、ポリマーソームの周囲膜に組み込まれた/組み入れられた抗原を有しうる。この場合、抗原は、PDMS-PEO-ポリマーソームの周囲膜にその(1つまたは複数の)膜貫通ドメインが組み込まれる膜タンパク質である。組込みは、WO2014/077781A1またはNallani et al「Proteopolymersomes:in vitro production of a membrane protein in polymersome membranes」Biointerphases,1 December 2011,page 153に記載されているように達成することができる。抗原がPDMS-PEOポリマーソームに封入される場合、それは、ポリペプチド、糖質、ポリヌクレオチドおよびそれらの組合せからなる群より選択される可溶性抗原でありうる。本発明はさらに、PDMS-PEOポリマーソーム中のそのような封入抗原の生産方法および該方法によって生産されたポリマーソームに関する。
【0187】
本発明はさらに、抗原を担持するPDMS-PEOポリマーソームを含む組成物に関する。ここでもやはり、これらの組成物において、抗原は任意の適切な形でPDMS-PEOポリマーソームと会合/物理的に連結することができる。例えばPDMS-PEOポリマーソームは、本発明に記載するように、その中に封入された可溶性抗原を有しうる。上記に代えて、または上記に加えて、ポリマーソームは、WO2014/077781A1に記載されているように、ポリマーソームの周囲膜に組み込まれた/組み入れられた抗原を有しうる。本発明は、抗原を担持するそのようなPDMS-PEOポリマーソームを含むワクチン、免疫応答を誘発する方法、またはがん、自己免疫疾患もしくは感染性疾患を処置、改善、予防または診断するための方法であって、それを必要とする対象に抗原を担持するPDMS-PEOポリマーソームを与える工程を含む方法にも関係する。
【0188】
上記に従って、本発明は、免疫応答を誘発するのに適した形での、抗原を担持(または輸送)するPDMS-PEOポリマーソームのインビトロ使用およびインビボ使用にも関係する。抗原はPDMS-PEOポリマーソームに封入するか、例えばWO2014/077781A1に記載されているように、ポリマーソームの周囲膜に組み入れることができる。
【0189】
一定の局面において、本発明のポリマーソームは、1つまたは複数のコンパートメント(「マルチコンパートメント」と別称される)を含有しうる。ポリマーソームのベシクル構造のコンパートメント化は、生きている細胞における複雑な反応経路の併存を可能にし、細胞内で多くの活動を空間的、時間的に分離するのに役立つ。したがって2タイプ以上の抗原を本発明のポリマーソームに封入しうる。異なる抗原は同じアイソフォームまたは異なるアイソフォームを有しうる。各コンパートメントも同じ両親媒性ポリマーまたは異なる両親媒性ポリマーで形成されうる。さまざまな局面において、2つ以上の異なる抗原は両親媒性ポリマーの周囲膜に組み込まれる。各コンパートメントはペプチド、タンパク質、および核酸のうちの少なくとも1つを封入しうる。ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは糖質は免疫原性でありうる。
【0190】
適切なマルチコンパートメント化ポリマーソームのさらなる詳細はWO20121018306に見出され、その内容は参照によりあらゆる目的でそのまま本明細書に組み入れられる。
【0191】
また、ポリマーソームは独立していてもよいし、例えばWO2010/1123462(その内容は参照によりあらゆる目的でそのまま本明細書に組み入れられる)に記載されているもののように、表面に固定化されていてもよい。
【0192】
ポリマーソーム担体が2つ以上のコンパートメントを含有する場合、それらのコンパートメントは、外側ブロック共重合体ベシクルと、外側ブロック共重合体ベシクルの内側に封入された少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルとを含みうる。いくつかの局面において、外側ベシクルおよび内側ベシクルのブロック共重合体のそれぞれは、ポリ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、およびポリ(オキシブチレン)ブロックなどのポリエーテルブロックを含む。共重合体中に含まれうるブロックのさらなる例として、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリスチレン、ポリ(ブタジエン)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリ(プロピレンスルフィド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート)、ポリ(2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン)およびポリ(乳酸)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。適切な外側ベシクルおよび内側ベシクルの例としては、ポリ(エチルエチレン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-b-PEO)、ポリ(ブタジエン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-b-PEO)、ポリ(スチレン)-b-ポリ(アクリル酸)(PS-b-PAA)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(カプロラクトン)(PEO-b-PCL)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(乳酸)(PEO-b-PLA)、ポリ(イソプレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PI-b-PEO)、ポリ(2-ビニルピリジン)-ポリ(エチレンオキシド)(P2VP-b-PEO)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PEO-b-PNIPAm)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレンスルフィド)(PEG-b-PPS)、ポリ(メチルフェニルシラン)-ポリ(エチレンオキシド)(PMPS-b-PEO-b-PMPS-b-PEO-b-PMPS)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)-b-ポリ-(ジメチルシロキサン)-b-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-b-PDMS-b-PMOXA)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)-b-ポリ(ジメチルシロキサン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PMOXA-b-PDMS-b-PEO)、ポリ[スチレン-b-ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)](PS-b-PIAT)、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(プロピレンスルフィド)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-b-PPS-b-PEO)およびポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ブチレンオキシド)(PEO-b-PBO)ブロック共重合体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ブロック共重合体は、共重合体中に含まれるそれぞれのブロックの平均数によってさらに指定することができる。したがって、PSM-PIATNは、繰り返し単位数Mのポリスチレンブロック(PS)と繰り返し単位数Nのポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)(PIAT)ブロックとの存在を示す。したがってMおよびNは独立して選択される整数であり、それらは例えば約5~約95の範囲内で選択しうる。したがってPS40-PIAT50は、繰り返し単位数が平均で40のPSブロックと繰り返し単位数が平均で50のPIATブロックとの存在を示す。
【0193】
いくつかの局面において、本発明は、ポリマーソーム中の封入抗原を生産するための方法であって、(i)本発明の両親媒性ポリマーをクロロホルムに溶解する工程であって、好ましくは両親媒性ポリマーがポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)である、工程、(ii)ポリマーフィルムを形成させるために、溶解した両親媒性ポリマーを乾燥させる工程、(iii)可溶化された抗原を工程(ii)の乾燥両親媒性ポリマーフィルムに加える工程であって、該抗原が、(a)ポリペプチド、好ましくは本発明の抗原であるポリペプチド、(b)糖質、(c)(a)および/または(b)および/または(c)の組合せからなる群より選択される、工程、(iv)ポリマーベシクルを形成させるために、工程(iii)のポリマーフィルムを再水和する工程、(v)任意で、ポリマーベシクル単分散ベシクルを精製するために、工程(iv)のポリマーベシクルを濾過する工程、および/または(vi)任意で、工程(iv)または工程(v)のポリマーベシクルを非封入抗原から単離する工程を含む、方法に関する。
【0194】
他のいくつかの局面において、本発明は、抗原の水性溶液へのポリマーの非水性溶液の混合、対応するポリマーと抗原との混合溶液の超音波処理、または対応するポリマーと抗原との混合溶液の押出しに基づく方法を含む、ポリマーソーム中の封入抗原を生産するための別の方法に関する。例示的な方法として、Rameez et al,Langmuir 2009およびNeil et al Langmuir 2009,25(16),9025-9029に記載の方法が挙げられる。他のいくつかの局面において、本発明は、可溶性封入抗原を含むポリマーソーム(または複数のポリマーソームもしくはポリマーソームの集合体)に関し、ここで、可溶性封入抗原は、RNA分子(例えばmRNA、自己増幅mRNAまたはsiRNA)もしくはDNA分子またはDNA/RNAハイブリッドから選択されるポリヌクレオチド(例えば一本鎖または二本鎖)であり、ポリマーソームはイオン化可能脂質をさらに含む。
【0195】
本発明の他のいくつかの局面において、イオン化可能脂質はカチオン性イオン化可能脂質である。
【0196】
本発明の他のいくつかの局面において、イオン化可能脂質は、(i)第三級アミンであり(例えば第四級アミンではなく)および/または1つもしくは複数の第三級アミン部分を含む(例えばカチオン性四級化アンモニウム部分を含まない)、ならびに/または(ii)窒素原子に遊離電子対(free electron pair)(例えばイオン化可能な窒素原子)を含む。
【0197】
本発明の他のいくつかの局面において、イオン化可能脂質は、以下の物質を含むか、または以下の物質からなる:式Iを有するイオン化可能脂質DLin-MC3-DMA(すなわち、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート);式IIを有するイオン化可能脂質319;式IIIを有するイオン化可能脂質C12-200;式IVを有するイオン化可能脂質5A2-SC8;式を有するイオン化可能脂質306Oi10;式VIを有するイオン化可能脂質5;式VIIを有するイオン化可能脂質SM-102(すなわち、ヘプタデカン-9-イル 8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート);式VIIIを有するイオン化可能脂質A9;式IXを有するイオン化可能脂質ALC-0315(すなわち、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート);式Xを有するイオン化可能脂質Arcturus 2.2(8.8)4C CH3;式XIを有するイオン化可能脂質Genevant CL1;式XIIを有するイオン化可能脂質ALC-0159(すなわち、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド);上記のいずれか1つであって、1つまたは複数のそのアルキル鎖がさらにエステル化されているもの。
【0198】
本発明のいくつかの好ましい局面において、イオン化可能脂質は、DLin-MC3-DMA((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)を含むか、またはそれからなる、カチオン性イオン化可能脂質である。
【0199】
本発明の他のいくつかの局面において、ポリマーソームは、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)および/またはポリヌクレオチド(例えばmRNA)によってコードされる1つもしくは複数のポリペプチドの、該ポリマーソーム内での熱安定性および/または貯蔵安定性および/または免疫原性を、好ましくは同じポリヌクレオチド(例えばmRNA)および/または同じポリヌクレオチド(例えばmRNA)によってコードされる1つもしくは複数のポリペプチドの、イオン化可能物質を有さない別のポリマーソーム内での、またはコレステロールを含むイオン化可能脂質ナノ粒子(LNP)内での、同じ条件下におけるそれと比べて増加させることができ、さらに好ましくは、該熱安定性および/または貯蔵安定性は、約-80℃~約4℃の温度範囲内で(例えば-80℃、-20℃または4℃、好ましくは-80℃で)増加し、最も好ましくは、該免疫原性は、約36.5℃~約37.5℃の温度範囲内で増加し、さらに最も好ましくは、該増加は少なくとも約5%(例えば少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%)の増加である。
【0200】
本発明の他のいくつかの局面において、ポリマーソームは、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)とDLin-MC3-DMA((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート);および/またはPBD-PEO(ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド))とDlin-MC3-DMA((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)、好ましくは15%または30%のDlin-MC3-DMAを含むもの;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式IIを有するイオン化可能脂質319;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式IIIを有するイオン化可能脂質C12-200;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式IVを有するイオン化可能脂質5A2-SC8;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式Vを有するイオン化可能脂質306Oi10;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式VIを有するイオン化可能脂質5;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式VIIを有するイオン化可能脂質SM-102;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式VIIIを有するイオン化可能脂質A9;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式IXを有するイオン化可能脂質ALC-0315(すなわち、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1ージイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート);および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式Xを有するイオン化可能脂質Arcturus 2.2(8.8)4C CH3;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式XIを有するイオン化可能脂質Genevant CL1;および/またはポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)と式XIIを有するイオン化可能脂質ALC-0159(すなわち、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)を含む。
【0201】
既存の取込み・クロスプレゼンテーション媒体およびそれらに基づく方法と比較して、本発明のポリマーソームには、なかんずく以下の利点があり、それらも本発明の局面である:
・本ポリマーソームは取込みおよび免疫系へのクロスプレゼンテーションの効率が非常に高い、
・免疫応答がCD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含む、
・ポリマーソームが酸化安定性である、
・体液性応答が、アジュバントありまたはアジュバントなしの遊離抗原ベースの技法によって生じるものと比べて強い、
・本発明のポリマーソームによって誘導される免疫応答は、アジュバントを使ってより一層ブーストすることができる、
・本発明のポリマーソームのポリマーは本質的に頑強であり、体内での循環時間が増加するように適応させ、または官能基化することができる、
・本発明のポリマーソームは血清成分の存在下で安定である、
・ポリマーソームのポリマーは安価であり、迅速に合成される、
・本発明の方法によって免疫応答を誘発するのに必要な抗原の量は、アジュバントありまたはアジュバントなしの遊離抗原ベースの技法と比較して少ない。
【0202】
本発明は以下の項目も特徴とする。
1.ポリマーソーム(例えば、可溶性封入抗原を含む酸化安定性ポリマーソーム)であって、
該可溶性封入抗原が、
(i)ポリペプチド、
(ii)糖質、
(iii)好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、さらに好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
(iv)(i)および/または(ii)および/または(iii)の組合せ
からなる群より選択される、
ポリマーソーム。
2.ポリマーソームが、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発する能力を有し、好ましくは該誘発が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの誘発である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
3.抗原が、膜タンパク質(MP)または膜結合ペプチド(MAP)の可溶性部分を含み、好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
4.ポリマーソームが、血清成分の存在下で安定性であり、好ましくは該安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
5.ポリマーソームが、エンドソーム内で安定であり、好ましくは該安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
6.ポリマーソームが、リポソームの対応する酸化安定性と比較して改良された酸化安定性を有し、好ましくは該改良された安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの改良された安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
7.ポリマーソームが、可溶性封入抗原を含むその内容物を酸化非依存的に放出して、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力を有し、好ましくは該放出が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの放出である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
8.ポリマーソームが、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含む細胞性免疫応答を誘発する能力を有し、好ましくは該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
9.ポリマーソームが、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を誘発する能力を有し、細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
10.体液性免疫応答が、特異的抗体の生産を含み、さらに好ましくは該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
11.ポリマーソームが、エフェクターCD4(+)T細胞の出現頻度を強化する能力を有し、好ましくは該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの強化である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
12.細胞性免疫応答が、T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
13.ポリマーソームが、遊離の抗原と比較して抗原特異的CD8(+)T細胞のクローン拡大を強化する能力を有し、好ましくは該拡大が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの拡大である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
14.ポリマーソームが、抗原特異的エフェクターCD8(+)T細胞を誘導する能力を有し、好ましくは該誘導が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの誘導である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
15.ポリマーソームが、抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性表現型を強化する能力を有し、好ましくは該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの強化である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
16.ポリマーソームが、リンパ節常在性マクロファージおよび/またはB細胞をターゲティングする能力を有し、好ましくは該ターゲティングが、インビボ、エクスビボまたはインビトロでのターゲティングである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
17.ポリマーソームが還元安定性であり、好ましくは該ポリマーソームが、血清成分の存在下で還元安定性であり、さらに好ましくは該還元安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの還元安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
18.ポリマーソームが、低減した透過性を有し、好ましくは該低減した透過性が、リポソームの対応する透過性との比較であり、さらに好ましくは該透過性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの透過性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
19.ポリマーソームが、エンドソーム内でその内容物を放出する能力を有し、好ましくは該エンドソームが、後期エンドソームであり、さらに好ましくは該放出が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの放出である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
20.以下:
(i)細胞性免疫応答を誘発する能力であって、好ましくは該細胞性免疫応答がCD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、さらに好ましくは該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答であり、最も好ましくは該細胞性免疫応答が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに最も好ましくは該細胞性免疫応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である、細胞性免疫応答を誘発する能力;
(ii)エンドソーム内でポリマーソーム内容物を放出する能力であって、好ましくは該エンドソームが、後期エンドソームであり、さらに好ましくは該内容物が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくは該内容物が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、エンドソーム内でポリマーソーム内容物を放出する能力;
(iii)ポリマーソーム内容物を酸化非依存的に放出してCD8(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力であって、好ましくは該内容物が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは該内容物が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、ポリマーソーム内容物を酸化非依存的に放出してCD8(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力;
(iv)抗原に対する免疫応答を刺激する能力であって、好ましくは該抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは該抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、抗原に対する免疫応答を刺激する能力;
(v)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする能力であって、好ましくは該応答が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに好ましくは該応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする能力;
(vi)ペプチドまたはタンパク質を抗原提示細胞(APC)に送達する能力であって、好ましくは該ペプチドまたはタンパク質が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含むか、または該可溶性部分に由来し、さらに好ましくは該ペプチドまたはタンパク質が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含むか、該ポリペプチドに由来する、ペプチドまたはタンパク質を抗原提示細胞に送達する能力;
(vii)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする能力であって、好ましくは該応答が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに好ましくは該応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする能力;
(viii)対象における免疫応答を刺激する能力であって、好ましくは該応答が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに好ましくは該応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である、対象における免疫応答を刺激する能力;
(ix)非ヒト動物を免疫処置する能力であって、好ましくは該免疫処置が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する免疫処置であり、さらに好ましくは該免疫処置が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する免疫処置である、非ヒト動物を免疫処置する能力;
(x)ポリマーソームが、該ポリマーソームなしでの抗原の対応する抗原性と比較して、改変された抗原性を有することであって、好ましくは該抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分であり、さらに好ましくは該抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドである、改変された抗原性を有すること;
(xi)ポリマーソームが、該ポリマーソームなしでの抗原の対応する免疫原性と比較して、改変された免疫原性を有することであって、好ましくは該免疫原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分であり、さらに好ましくは該免疫原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドである、改変された免疫原性を有すること
の能力のうちの1つまたは複数を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
21.以下の特性:
(i)ポリマーソームが、酸化安定性膜を含む、および/または
(ii)ポリマーソームが、合成物である、および/または
(iii)ポリマーソームが、非封入抗原を含まないか、または遊離の非封入抗原と混合されている、および/または
(iv)ポリマーソームが、両親媒性ポリマーの膜を含む、および/または
(v)ポリマーソームが、ベシクル膜を形成する両親媒性合成ブロック共重合体を含む、および/または
(vi)ポリマーソームが、70nm超の直径を有し、好ましくは該直径が、約100nm~約1μm、または約120nm~約250nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲である、および/または
(vii)ポリマーソームが、ベシクルの形態を有する、
(viii)ポリマーソームが、自己集合性である
のうちの1つまたは複数を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
22.ポリマーソームが、ポリマーソームの集合体の形態にあり、ポリマーソームの集合体の平均直径が、約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nm、または約120nm~約250nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にある、項目21記載のポリマーソーム。
23.抗原が、免疫原である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
24.抗原が、(i)自己抗原、(ii)非自己抗原、(iii)非自己免疫原および(iv)自己免疫原からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
25.抗原が、以下:
(i)ウイルスポリペプチド配列と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドであって、好ましくは該ウイルスポリペプチド配列がインフルエンザヘマグルチニンまたはブタインフルエンザヘマグルチニンであり、さらに好ましくは該ウイルスポリペプチド配列が、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択される、ポリペプチド;
(ii)細菌ポリペプチド配列と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチド;
(iii)哺乳類ポリペプチド配列または鳥類ポリペプチド配列と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドであって、好ましくは該哺乳類ポリペプチド配列または該鳥類ポリペプチド配列が、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチド、B16ペプチドまたはMC38ペプチドであり、さらに好ましくは該哺乳類ポリペプチド配列または該鳥類ポリペプチド配列が、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択される、ポリペプチド
からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
26.哺乳類ポリペプチド配列が、ヒト、齧歯類、ウサギおよびウマのポリペプチド配列からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
27.抗原が、抗体またはそのフラグメントである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
28.抗原が、以下:
(i)インフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択されるもの、
(ii)ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:6、
(iii)卵白アルブミン(OVA)、好ましくはSEQ ID NO:4、
(iv)ブタ流行性下痢ウイルス(PED)スパイクタンパク質、好ましくはSEQ ID NO:12~14、
(v)B16ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11からなる群より選択されるもの、
(vi)MC38ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3からなる群より選択されるもの、
(vii)B16ペプチドおよびMC38ペプチド、好ましくは該ペプチドが、群:(i)SEQ ID NO:1~3および(ii)SEQ ID NO:9~11から独立して選択される、
からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
29.カチオン性、アニオン性およびノニオン性ポリマーソーム、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
30.ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、本質的に非免疫原性または本質的に非抗原性であり、好ましくはブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、非免疫原性または非抗原性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
31.ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、酸化安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
32.ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、免疫賦活薬でもアジュバントでもない、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
33.両親媒性ポリマーが、ジブロックまたはトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)共重合体を含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
34.両親媒性ポリマーが、共重合体ポリ(N-ビニルピロリドン)-b-PLAを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
35.両親媒性ポリマーが、カルボン酸、アミド、アミン、アルキレン、ジアルキルシロキサン、エーテルまたはアルキレンスルフィドのモノマー単位を少なくとも1つ含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
36.両親媒性ポリマーが、オリゴ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシエチレン)ブロック、オリゴ(オキシプロピレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、オリゴ(オキシブチレン)ブロックおよびポリ(オキシブチレン)ブロックからなる群より選択されるポリエーテルブロックである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
37.両親媒性ポリマーが、ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PB-PEO)ジブロック共重合体である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
38.PB-PEOジブロック共重合体が、5~50ブロックPBと5~50ブロックPEOとを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
39.両親媒性ポリマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体であり、好ましくは該PB-PEOジブロック共重合体が、好ましくは、5~100ブロックPDMSと5~100ブロックPEOとを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
40.ポリマーソームが、ブロック共重合体または両親媒性ポリマーだけで構成されるか、脂質と混合されたブロック共重合体または両親媒性ポリマーで構成されうる、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
41.脂質が、合成脂質もしくは天然脂質、または合成脂質混合物もしくは天然脂質混合物、または合成脂質と天然脂質との組合せで構成される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
42.両親媒性ポリマーが、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PLA-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくはPLA-PEO/POPCが、50:50以上(例えば50/50または75/25または90/10)のPLA-PEO対POPC(例えばPLA-PEO/POPC)の比を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
43.両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PCL-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくはPCL-PEO/POPCが、50:50以上(例えば50/50または75/25または90/10)のPCL-PEO対POPC(例えばPCL-PEO/POPC)の比を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
44.両親媒性ポリマーが、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)またはポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
45.ポリマーソームが、ジブロック共重合体PBD21-PEO14(本明細書では「BD21」という)、PDMS47-PEO36(PDMS-PEO)またはトリブロック共重合体PMOXA12-PDMS55-PMOXA12を含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
46.1つまたは複数のコンパートメントを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
47.ポリマーソームが、1つまたは複数のコンパートメントを含み、該1つまたは複数のコンパートメントのそれぞれが、少なくとも1つのペプチド、タンパク質、および核酸を封入し、好ましくは該ペプチド、タンパク質、および核酸のうちの該少なくとも1つが免疫原性または抗原性であり、さらに好ましくは該1つまたは複数のコンパートメントのそれぞれが、同じ両親媒性ポリマーまたは異なる両親媒性ポリマーで構成される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
48. ポリマーソームが、2つ以上のコンパートメントを含み、該コンパートメントが、外側ブロック共重合体ベシクルと少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルとを含み、該少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルが、外側ブロック共重合体ベシクルの内部に封入され、好ましくは外側ブロック共重合体ベシクルが、
(i)ポリ[スチレン-b-ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)](PS-PIAT)、
(ii)ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-PEO)、
(iii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(カプロラクトン)(PEO-PCL)、
(iv)ポリ(エチルエチレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-PEO)、
(v)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(乳酸)(PEO-PLA)、
(vi)ポリ(イソプレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PI-PEO)、
(vii)ポリ(2-ビニルピリジン)-ポリ(エチレンオキシド)(P2VP-PEO)、
(viii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PEO-PNIPAm)、
(ix)ポリ(スチレン)-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、
(x)ポリ(エチレングリコール)-ポリプロピレンスルフィド)(PEG-PPS)、
(xi)ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-PDMS-PMOXA)、
(xii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PEO-PDMS-PMOXA)、および
(xiii)ポリ(メチルフェニルシラン)-ポリ(エチレンオキシド)(PMPS-PEO-PMPS-PEO-PMPS)
からなる群より独立して選択される共重合体で形成されたポリマーソームであり、さらに好ましくは該少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルが、
(xiv)ポリ[スチレン-b-ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)](PS-PIAT)、
(xv)ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-PEO)、
(xvi)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(カプロラクトン)(PEO-PCL)、
(xvii)ポリ(エチルエチレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-PEO)、
(xviii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(乳酸)(PEO-PLA)、
(xix)ポリ(イソプレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PI-PEO)、
(xx)ポリ(2-ビニルピリジン)-ポリ(エチレンオキシド)(P2VP-PEO)、
(xxi)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PEO-PNIPAm)、
(xxii)ポリ(スチレン)-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、
(xxiii)ポリ(エチレングリコール)-ポリプロピレンスルフィド)(PEG-PPS)、
(xxiv)ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-PDMS-PMOXA)、
(xxv)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PEO-PDMS-PMOXA)、および
(xxvi)ポリ(メチルフェニルシラン)-ポリ(エチレンオキシド)(PMPS-PEO-PMPS-PEO-PMPS)
からなる群より独立して選択される共重合体で形成されたポリマーソームである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
49.脂質ポリマーを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
50.封入されたアジュバントをさらに含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
51.ポリマーソーム中の封入抗原を生産するための方法であって、以下の工程:
(i)両親媒性ポリマーをクロロホルムに溶解する工程であって、好ましくは両親媒性ポリマーが、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)である、工程、
(ii)ポリマーフィルムを形成させるために、溶解した両親媒性ポリマーを乾燥させる工程、
(iii)可溶化された抗原を工程(ii)の乾燥両親媒性ポリマーフィルムに加える工程であって、抗原が、
(a)ポリペプチドであって、好ましくはポリペプチド抗原が、前記項目のいずれか一項に記載のとおりであり、さらに好ましくはポリペプチド抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくはポリペプチド抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、ポリペプチド、
(b)糖質、
(c)アンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、好ましくはDNA分子またはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
(d)(a)および/もしくは(b)および/もしくは(c)の組合せ
からなる群より選択される工程、
(iv)ポリマーベシクルを形成させるために、工程(iii)のポリマーフィルムを再水和する工程、
(v)任意で、ポリマーベシクル単分散ベシクルを精製するために、工程(iv)のポリマーベシクルを濾過する工程、ならびに/または
(vi)任意で、工程(iv)もしくは工程(v)のポリマーベシクルを非封入抗原から単離する工程
を含む、方法。
52.ポリマーソームが、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソームである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム中の封入抗原を生産するための方法。
53.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム中の封入抗原を生産するための方法によって生産された、ポリマーソーム。
54.可溶性封入抗原を含むポリマーソームであって、該可溶性封入抗原が、RNA分子(例えばmRNA、自己増幅mRNAもしくはsiRNA、好ましくはmRNA)、またはDNA分子、またはその組み合わせ(例えば、DNA/RNAハイブリッド)から選択されるポリヌクレオチド(例えば、一本鎖または二本鎖)であり、該ポリマーソームが、イオン化可能脂質をさらに含み、好ましくは前記項目のいずれか一項記載のポリマーソームである、ポリマーソーム。
55.前記イオン化可能脂質が、カチオン性イオン化可能脂質である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
56.前記イオン化可能脂質が、
(i)第三級アミンであり(例えば、第四級アミンではなく)、および/または1つもしくは複数の第三級アミン部分を含む(例えば、カチオン性四級化アンモニウム部分を含まない、すなわちイオン化可能脂質がDOTAPではない)、ならびに/あるいは
(ii)窒素原子に遊離電子対(例えば、イオン化可能な窒素原子)を含む、ならびに/あるいは
(iii)プロトン化して第四級アミンになることができる、もしくはできない
前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
57.前記イオン化可能脂質が、以下:
i)式I:
を有するイオン化可能脂質DLin-MC3-DMA(すなわち、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)、
ii)式II:
を有するイオン化可能脂質319、
iii)式III:
を有するイオン化可能脂質C12-200、
iv)式IV:
を有するイオン化可能脂質5A2-SC8、
v)式V:
を有するイオン化可能脂質306Oi10、
vi)式VI:
を有するイオン化可能脂質5、
vii)式VII:
を有するイオン化可能脂質SM-102(すなわち、ヘプタデカン-9-イル 8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)、
viii)式VIII:
を有するイオン化可能脂質A9、
ix)式IX:
を有するイオン化可能脂質ALC-0315(すなわち、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1ージイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、
x)式X:
を有するイオン化可能脂質Arcturus 2.2(8.8)4C CH3、
xi)式XI:
を有するイオン化可能脂質Genevant CL1、
xii)式XII:
を有するイオン化可能脂質ALC-0159(すなわち、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)、
xiii)1つまたは複数のそのアルキル鎖がさらにエステル化されている、(i)~(xii)のいずれか1つ
を含むか、またはそれからなる、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
58.前記ポリヌクレオチドが、1つまたは複数のポリペプチドをコードし、好ましくは、該1つまたは複数のポリペプチドが、ウイルスポリペプチドである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
59.前記ポリマーソームが、前記ポリヌクレオチド(例えばmRNA)および/または該ポリヌクレオチド(例えばmRNA)によってコードされる1つもしくは複数のポリペプチドの、該ポリマーソーム内での熱安定性および/または貯蔵安定性および/または免疫原性を、好ましくは同じポリヌクレオチド(例えばmRNA)および/または該同じポリヌクレオチド(例えばmRNA)によってコードされる1つもしくは複数のポリペプチドの、イオン化可能物質を有さない別のポリマーソーム内での、またはコレステロールを含むイオン化可能脂質ナノ粒子(LNP)内での、同じ条件下におけるそれと比べて増加させることができ、
さらに好ましくは、該熱安定性および/または貯蔵安定性が、約-80℃~約4℃の温度範囲内で(例えば-80℃、-20℃または4℃、好ましくは-80℃で)増加し、最も好ましくは、該免疫原性が、約36.5℃~約37.5℃の温度範囲内で増加し、さらに最も好ましくは、該増加が、少なくとも約5%(例えば少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%)の増加である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
60.酸化安定性ポリマーソームである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
61.前記ポリマーソームが、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発する能力を有し、好ましくは、該誘発が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ誘発であり、さらに好ましくは、該CD8(+)T細胞媒介性免疫応答が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
62.前記ポリマーソームが、細胞性免疫応答を誘発する能力を有し、該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは、該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答であり、さらに好ましくは、該CD8(+)T細胞媒介性免疫応答が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
63.前記ポリマーソームが、細胞性および/または体液性免疫応答を誘発する能力を有し、該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは、免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答であり、さらに好ましくは、該細胞性および/または体液性免疫が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫であり、最も好ましくは、該CD8(+)T細胞媒介性免疫応答が、該ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
64.前記体液性免疫応答が、特異的抗体の生産を含み、さらに好ましくは、該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答であり、最も好ましくは、該体液性免疫が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
65.前記ポリマーソームが、エフェクターCD4(+)T細胞の頻度を強化する能力を有し、好ましくは、該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ強化であり、さらに好ましくは、エフェクターCD4(+)T細胞の該頻度が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する頻度である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
66.前記細胞性免疫応答が、T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは、該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答であり、さらに好ましくは、T細胞媒介性免疫応答を含む該細胞性免疫応答が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
67.該ポリマーソームが、遊離の抗原と比較して抗原特異的CD8(+)T細胞のクローン拡大を強化する能力を有し、好ましくは、該拡大が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ拡大であり、さらに好ましくは、抗原特異的CD8(+)T細胞の該クローン拡大が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対するクローン拡大である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
68.前記ポリマーソームが、抗原特異的エフェクターCD8(+)T細胞を誘導する能力を有し、好ましくは、該誘導が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ誘導であり、さらに好ましくは、抗原特異的エフェクターCD8(+)T細胞の該誘導が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する誘導である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
69.前記ポリマーソームが、抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性表現型を強化する能力を有し、好ましくは、該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ強化であり、さらに好ましくは、抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性表現型の該強化が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する強化である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
70.前記ポリマーソームが、リンパ節常在性マクロファージおよび/またはB細胞をターゲティングする能力を有し、好ましくは、該ターゲティングが、インビボ、エクスビボまたはインビトロのターゲティングであり、さらに好ましくは、リンパ節常在性マクロファージおよび/またはB細胞の該ターゲティングが、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対するターゲティングである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
71.以下の能力:
i)細胞性免疫応答を誘発する能力であって、好ましくは、該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、さらに好ましくは、該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答であり、最も好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
ii)ポリマーソームの内容物を酸化非依存的に放出して、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力であって、好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
iii)前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫応答を刺激する能力、
iv)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする能力であって、好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
v)前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドを抗原提示細胞(APC)に送達する能力、
vi)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする能力であって、好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
vii)対象における免疫応答を刺激する能力であって、好ましくは、該免疫応答が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する応答である、能力、
viii)非ヒト動物を免疫処置する能力であって、好ましくは、該免疫処置が、前記ポリヌクレオチドによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫処置である、能力、
ix)前記ポリマーソームが、該ポリマーソームなしでの該抗原の対応する抗原性と比較して、改変された抗原性を有する、
x)前記ポリマーソームが、該ポリマーソームなしでの該抗原の対応する免疫原性と比較して、改変された免疫原性を有する
のうちの1つまたは複数を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
72.以下の特性:
i)前記ポリマーソームが、酸化安定性膜を含む、ならびに/または
ii)前記ポリマーソームが、合成物である、ならびに/または
iii)前記ポリマーソームが、非封入抗原を含まないか、もしくは非封入抗原と混合されている、ならびに/または
iv)前記ポリマーソームが、両親媒性ポリマーの膜を含む、ならびに/または
v)前記ポリマーソームが、ベシクル膜を形成する両親媒性合成ブロック共重合体を含む、ならびに/または
vi)前記ポリマーソームが、70nm超の直径を有し、好ましくは該直径が、約100nm~約1μm、もしくは約100nm~約750nm、もしくは約100nm~約500nm、もしくは約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、もしくは約220nm~約180nm、もしくは約190nm~約210nmの範囲であり、最も好ましくは該直径が、約200nmである、ならびに/または
vii)前記ポリマーソームが、ベシクルの形態を有する、
viii)前記ポリマーソームが、自己集合性である、
ix)前記ポリマーソームが、両親媒性ブロック共重合体を含み、該両親媒性ブロック共重合体が、(a)pHを感知する能力を有し(例えば、pHに応じてプロトン化もしくは脱プロトン化を起こす能力を有し)、ならびに/または(b)pH感受性部分になるように修飾および/もしくは置換されており(例えば、pHに応じてプロトン化もしくは脱プロトン化を起こす能力を有し)、好ましくは、該修飾および/もしくは置換が、ヒドロキシル基(例えばC-OH)を-NH3基およびカルボキシル基(例えば-COOH)に/で修飾および/もしくは置換すること(例えば、PBD-PEO-OH官能基をPBD-PEO-NH3およびPBD-PEO-COOHに修飾および/もしくは置換すること)を含む
のうちの1つまたは複数を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
73.前記ポリマーソームが、ポリマーソームの集合体の形態にあり、該ポリマーソームの集合体の平均直径が、約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にある、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
74.前記ポリヌクレオチドが、免疫原をコードする、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
75.前記ポリヌクレオチドが、1つまたは複数のウイルスポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニンおよび/またはブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質をコードするポリヌクレオチド、さらに好ましくは、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:12、13および14からなる群より選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
76.前記ポリヌクレオチドが、以下:
i)インフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択されるもの、
ii)ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:6、
iii)卵白アルブミン(OVA)、好ましくはSEQ ID NO:4、
iv)B16ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11からなる群より選択されるもの、
v)MC38ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3からなる群より選択されるもの、
vi)B16ペプチドおよびMC38ペプチド、好ましくは、群:i)SEQ ID NO:1~3およびii)SEQ ID NO:9~11から独立して選択されるもの、ならびに/または
vii)ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質およびその可溶性フラグメント、好ましくはSEQ ID NO:12、13または14のフラグメント
のうちの1つまたは複数をコードする、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
77.前記ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、本質的に非免疫原性または本質的に非抗原性であり、好ましくは前記ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、非免疫原性または非抗原性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
78.前記ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、免疫賦活薬でもアジュバントでもない、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
79.前記両親媒性ポリマーが、ジブロックまたはトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)共重合体を含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
80.前記両親媒性ポリマーが、共重合体ポリ(N-ビニルピロリドン)-b-PLAを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
81.前記両親媒性ポリマーが、カルボン酸、アミド、アミン、アルキレン、ジアルキルシロキサン、エーテルまたはアルキレンスルフィドのモノマー単位を少なくとも1つ含み、好ましくは該アミンがpHに応じてプロトン化もしくは脱プロトン化を起こす能力を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
82.前記両親媒性ポリマーが、オリゴ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシエチレン)ブロック、オリゴ(オキシプロピレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、オリゴ(オキシブチレン)ブロックおよびポリ(オキシブチレン)ブロックからなる群より選択されるポリエーテルブロックである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
83.前記両親媒性ポリマーが、ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PB-PEO)ジブロック共重合体であるか、または前記両親媒性ポリマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
84.前記PB-PEOジブロック共重合体が、5~50ブロックPBおよび5~50ブロックPEOを含むか、または前記PB-PEOジブロック共重合体が、好ましくは5~100ブロックPDMSおよび5~100ブロックPEOを含む、項目36記載のポリマーソーム。
85.前記両親媒性ポリマーが、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PLA-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくは、該PLA-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPLA-PEO対POPC(例えばPLA-PEO/POPC)の比を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
86.前記両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PCL-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくは、該PCL-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPCL-PEO対POPC(例えばPCL-PEO/POPC)の比を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
87.前記両親媒性ポリマーが、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
88.ジブロック共重合体PBD21-PEO14(BD21)およびトリブロック共重合体PMOXA12-PDMS55-PMOXA12を含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
89.脂質ポリマーを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
90.以下:
i)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式Iを有するDLin-MC3-DMA((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)、
ii)PBD-PEO(ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド))、およびDLin-MC3-DMA((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)、好ましくは15%または30%のDLin-MC3-DMAを含むもの、
iii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式IIを有するイオン化可能脂質319、
iv)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式IIIを有するイオン化可能脂質C12-200、
v)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式IVを有するイオン化可能脂質5A2-SC8、
vi)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式Vを有するイオン化可能脂質306Oi10、
vii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式VIを有するイオン化可能脂質5、
viii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式VIIを有するイオン化可能脂質SM-102、
ix)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式VIIIを有するイオン化可能脂質A9、
x)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式IXを有するイオン化可能脂質ALC-0315(すなわち、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1ージイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、
xi)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式Xを有するイオン化可能脂質Arcturus 2.2(8.8)4C CH3、
xii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式XIを有するイオン化可能脂質Genevant CL1、
xiii)ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)、および式XIIを有するイオン化可能脂質ALC-0159(すなわち、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)
のうちの1つまたは複数を含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
91.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソームを含む、組成物。
92.薬学的組成物または診断組成物である、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
93.免疫原性組成物、抗原性組成物または免疫治療組成物である、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
94.1つまたは複数の免疫賦活薬および/または1つもしくは複数のアジュバントをさらに含む、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
95.ワクチンである、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
96.皮内、腹腔内、筋肉内、皮下、静脈内注射、または粘膜表面への非侵襲性投与のために製剤化された、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
97.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソームまたは組成物に曝露された、単離された抗原提示細胞またはハイブリドーマ細胞。
98.樹状細胞を含む、前記項目のいずれか一項記載の抗原提示細胞。
99.マクロファージを含む、前記項目のいずれか一項記載の抗原提示細胞。
100.B細胞を含む、前記項目のいずれか一項記載の抗原提示細胞。
101.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞またはハイブリドーマを含み、かつ薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、ワクチン。
102.(i)抗原がインフルエンザヘマグルチニン(HA)を含み、ワクチンがインフルエンザワクチンであり、好ましくは該インフルエンザヘマグルチニン(HA)が、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択されるポリペプチドと少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(ii)抗原がブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)を含み、ワクチンがブタインフルエンザワクチンであり、好ましくは該ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)が、SEQ ID NO:6と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(iii)抗原が卵白アルブミン(OVA)を含み、ワクチンががんワクチンであり、好ましくは該卵白アルブミン(OVA)が、SEQ ID NO:4と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(iv)抗原がスパイクタンパク質(PEDv S)を含み、ワクチンがPEDワクチンであり、好ましくはブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質(Sタンパク質)が、SEQ ID NO:12~14のポリペプチドと少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(v)抗原がB16ペプチドを含み、ワクチンががんワクチンであり、好ましくは該ペプチドが、SEQ ID NO:9~11からなる群より選択される、
(vi)抗原がMC38ペプチドを含み、ワクチンががんワクチンであり、好ましくは該ペプチドが、SEQ ID NO:1~3からなる群より選択される、
(vii)抗原がB16ペプチドおよびMC38ペプチドを含み、ワクチンががんワクチンであり、好ましくは該ペプチドが、群:(i)SEQ ID NO:1~3および(ii)SEQ ID NO:9~11から独立して選択される、
(viii)抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であり、ワクチンががんワクチンである、
(ix)抗原が、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばSEQ ID NO:43
前記項目のいずれか一項記載のワクチン。
103.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンを含む、キット。
104.対象(例えばヒト)における免疫応答を誘発する方法であって、以下の工程:
(i)前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンを該対象に提供する工程、
(ii)該ポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンを該対象に投与する工程であって、好ましくは該投与が、皮内、腹腔内、筋肉内、皮下、静脈内注射、または粘膜表面への非侵襲性投与である、工程
を含む、方法。
105.免疫応答が、広範な免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載の免疫応答を誘発する方法。
106.免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む、前記項目のいずれか一項記載の免疫応答を誘発する方法。
107.その必要がある対象(例えばヒト)において感染性疾患、がんまたは自己免疫疾患を処置または防止するための方法であって、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンの治療有効量を対象に投与する工程を含み、好ましくは感染性疾患が、ウイルス感染性疾患または細菌感染性疾患である、方法。
108.非ヒト動物を免疫処置するための方法であって、以下の工程:
(i)前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンを用意する工程、
(ii)該ポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンで非ヒト動物を免疫処置する工程
を含む、方法。
109.抗体を調製するための方法であって、以下の工程:
(i)前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンで非ヒト哺乳動物を免疫処置する工程、
(ii)工程(i)で得られた抗体を単離する工程
を含む、方法。
110.抗体がモノクローナル抗体(mAb)である、前記項目のいずれか一項記載の方法。
111.医薬として使用するための、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチン。
112. 以下の方法:
i)抗体を発見および/またはスクリーニングおよび/または調製する方法、
ii)ワクチンを発見および/またはスクリーニングおよび/または調製する方法、
iii)免疫原性組成物または免疫賦活組成物を生産または調製する方法、
iv)タンパク質および/またはペプチドの標的送達の方法であって、好ましくは標的送達が、前記項目のいずれか一項記載の抗原性タンパク質および/または抗原性ペプチドの標的送達であり、さらに好ましくは抗原性タンパク質および/または抗原性ペプチドが、膜タンパク質(MP)または膜結合型ペプチド(MAP)の可溶性部分を含み、最も好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であり、さらに最も好ましくは標的送達が対象において実行される方法、
v)抗原に対する免疫応答を刺激する方法であって、好ましくは抗原が、前記項目のいずれか一項記載の抗原であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であり、さらに最も好ましくは対象における該抗原に対する免疫応答の刺激に使用するための方法、
vi)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする方法であって、好ましくは前記項目のいずれか一項記載の抗原に対するCD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする方法であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である方法、
vii)前記項目のいずれか一項記載の抗原提示細胞(APC)にペプチドおよび/またはタンパク質を送達する方法であって、好ましくはペプチドおよび/またはタンパク質が、前記項目のいずれか一項記載の抗原であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である方法、
viii)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする方法であって、好ましくは応答が、前記項目のいずれか一項記載の抗原に対する応答であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:12~14からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である抗原に対する応答である方法、
ix)感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法であって、好ましくは感染性疾患が、ウイルス感染性疾患または細菌感染性疾患であり、さらに好ましくはウイルス感染性疾患が、インフルエンザ感染症、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症からなる群より選択される方法、
x)がんまたは自己免疫疾患の処置、改善、予防または診断のための方法、
xi)がん細胞を化学治療に対して感作させるための方法、
xii)がん細胞におけるアポトーシスを誘導するための方法、
xiii)対象における免疫応答を刺激するための方法、
xiv)非ヒト動物を免疫処置するための方法、
xv)ハイブリドーマの調製方法、
xvi)前記項目のいずれか一項記載の方法、
xvii)インビボおよび/またはエクスビボおよび/またはインビトロの方法である、前記i)~xvi)のいずれか一つに記載の方法、
xviii)抗原が、該抗原が使用される環境にとって異種である、前記i)~xvii)のいずれか一つに記載の方法
のうちの1つまたは複数において使用するための、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチン。
113.以下:
(i)抗体を発見および/またはスクリーニングおよび/または調製するため、
(ii)ワクチンを発見および/またはスクリーニングおよび/または調製するため、
(iii)免疫原性組成物または免疫賦活組成物を生産または調製するため、
(iv)タンパク質および/またはペプチドの標的送達のためであって、好ましくは標的送達が、抗原性タンパク質および/または抗原性ペプチドの標的送達であり、さらに好ましくは標的送達が、対象において実行される、標的送達のため、
(v)抗原に対する免疫応答を刺激するためであって、好ましくは対象における抗原に対する免疫応答を刺激するのに使用するため、
(vi)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーするため、
(vii)抗原提示細胞(APC)にペプチドまたはタンパク質を送達するためであって、好ましくはペプチドまたはタンパク質が、抗原であり、さらに好ましくはペプチドまたはタンパク質が、免疫原性または免疫治療用である、送達のため、
(viii)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーするため、
(ix)感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法であって、好ましくは感染性疾患が、ウイルス感染性疾患または細菌感染性疾患であり、さらに好ましくはウイルス感染性疾患が、インフルエンザ感染症、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症からなる群より選択される、感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法において、
(x)がんまたは自己免疫疾患の処置、改善、予防または診断のため、
(xi)がん細胞を化学治療に対して感作させるため、
(xii)がん細胞におけるアポトーシスの誘導のため、
(xiii)対象における免疫応答を刺激するため、
(xiv)非ヒト動物を免疫処置するため、
(xv)ハイブリドーマの調製のため、
(xvi)前記項目のいずれか一項記載の方法において、
(xvii)インビボおよび/またはエクスビボおよび/またはインビトロでの使用である、前記(i)~(xvi)のいずれか一つに記載の使用のため、
(xviii)抗原が、該抗原が使用される環境にとって異種である、前記(i)~(xvii)のいずれか一つに記載の使用のため
のうちの1つまたは複数のための、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンの使用。
114.対象における免疫応答を誘発する方法であって、抗原を担持するPDMS-PEOから形成されたポリマーソームを対象に投与する工程を含む、方法。
115.抗原がPDMS-PEOポリマーソーム内に封入される、項目114記載の方法。
116.PDMS-PEOポリマーソームに封入される抗原が可溶性抗原である、項目115記載の方法。
117.抗原が、ポリペプチド、糖質、ポリヌクレオチドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、項目116記載の方法。
118.抗原がPDMS-PEOポリマーソームの周囲膜に組み込まれる、項目114記載の方法。
119.抗原を担持する、PDMS-PEOポリマーソーム。
120.抗原がPDMS-PEOポリマーソーム内に封入される、項目119記載のポリマーソーム。
121.PDMS-PEOポリマーソームに封入される抗原が可溶性抗原である、項目120記載のポリマーソーム。
122.抗原が、ポリペプチド、糖質、ポリヌクレオチドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、項目121記載のポリマーソーム。
123.抗原がPDMS-PEOポリマーソームの周囲膜に組み込まれる、項目122記載のポリマーソーム。
124.抗原が膜結合型タンパク質または脂質抗原である、項目123記載のポリマーソーム。
125.膜結合型タンパク質が、膜貫通タンパク質、Gタンパク質共役受容体、神経伝達物質受容体、キナーゼ、ポリン、ABC輸送体、イオン輸送体、アセチルコリン受容体および細胞接着受容体からなる群より選択される、項目124記載のポリマーソーム。
126.項目119~125のいずれか一項記載のポリマーソームを含む薬学的組成物。
127.免疫応答を誘発するための、項目119~125のいずれか一項記載のPDMS-PEOまたは項目126記載の薬学的組成物のインビトロおよびインビボでの使用。
【実施例
【0203】
発明の実施例
本発明が容易に理解され、容易に実用化されうるように、本発明のいくつかの局面を、以下に非限定的な例を挙げて説明する。
【0204】
材料および方法
実施例1:ポリマーソームへの卵白アルブミン、ペプチド、可溶性HA、PEDvスパイクタンパク質およびeGFP DNAの封入
ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(本明細書では「BD21」という)の100mg/ml原液をクロロホルムに溶解する。次に、100μLの100mg/ml BD21原液を、ホウケイ酸(12×75mm)培養チューブに入れ、窒素ガスの気流下でゆっくり乾燥させることで、薄いポリマーフィルムを形成させる。そのフィルムを乾燥器中で6時間、減圧下でさらに乾燥した。次に、1×PBS緩衝液に溶解した1~5mg/mlの可溶化卵白アルブミン(OVA)タンパク質1mLを培養チューブに加えた。その混合物を600rpm、4℃で少なくとも18時間撹拌することで、フィルムを再水和し、ポリマーベシクルを形成させた。その濁った懸濁液を孔径200nmのWhatman Nucleoporeメンブレンを通して押出機(Avanti 1mLリポソーム押出機、21ストローク)で押し出すことにより、単分散ベシクルを得た[例えばFu et al.,2011、Lim.S.K,et al.,2017]。その混合物を1Lの1×PBSに対して透析膜(300kDa MWCO、セルロースエステルメンブレン)を使って透析することにより、タンパク質含有BD21ポリマーベシクルを非封入タンパク質から精製した。
【0205】
最終ベシクル混合物を、サイズ排除クロマトグラフィーを使って非封入タンパク質について分析した。SECからのベシクルピークの画分を使って、タンパク質封入量をSDS-PAGEで定量した。ベシクルサイズおよび単分散性は動的光散乱計器(英国、Malvern)で特徴づけた(1×PBSで100倍希釈)。ポリマーソームに封入されたOVAを定量するために、試料を20%DMSOで前処理してから試料緩衝液で処理し、その後にSDS-PAGE分析にローディングした。
【0206】
ペプチドの封入(SEQ ID NO:1、2および3のMC38ネオ抗原ペプチドで例証)については、同様のプロトコールに従った。封入用にPBSに溶解したペプチド濃度は0.5~0.3mg/mlであった。透析後に、Cary Eclipse分光測光器(Agilent)を使用し、フェニルアラニン蛍光(励起波長270nm/蛍光波長310nm)を使って、封入されたペプチドの量を決定した。3種すべてのペプチドの封入を個別に行ったところ、濃度はすべてのペプチドについて20~30ug/mlと決定された。3種の封入ペプチドのそれぞれを等量ずつ、マウスへの注射の直前に、1つに混合した。
【0207】
HAの封入については、同様のプロトコールに従った。封入のために組換えHA(H1N1/A/プエルトリコ/8/1934株)を10ug/mlの濃度でPBSに溶解した。透析後に、封入されたペプチドの量をウェスタンブロットで決定した。封入後のHA濃度は1ug/ml前後と決定された。100ulをマウスに注射した。
【0208】
BD21ポリマーソームへのPEDvスパイクタンパク質の封入については、上述のように、同様のプロトコールに従った。バキュロウイルス発現系を使ってPEDvスパイクタンパク質(さまざまなコンストラクト、SEQ ID NO:12~14)を発現させた。昆虫細胞から単離されたタンパク質を封入のために加えた。一方、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(カナダ・ケベックのPolymer Sourceから入手したPDMS46-PEO37)またはブロック共重合体と脂質との混合物、例えばPDMS46-PEO37/DSPE-PEG、PLA-PEG/POPC、PLA-PEG/アゾレクチンで作製されたポリマーソームへのPEDvスパイクタンパク質の封入については、本方法の普遍性を示すために異なるプロトコールに従った。ポリマーおよび/またはポリマー脂質混合物をエタノールまたは任意の水混和性溶媒に溶解し、タンパク質溶液に滴下することで自己集合させた。タンパク質は自己集合中にポリマーソームに封入される。非封入タンパク質をPBSを使った透析によって除去した。透析後に各ポリマーソーム試料封入タンパク質の量をデンシトメトリーによって決定した。封入後のタンパク質の濃度は、これらのポリマーソーム製剤のそれぞれについて1μg/ml前後と決定された。ポリマーソームに可溶性スパイクタンパク質(SEQ 12)またはスパイクタンパク質のS1領域(SEQ 13)およびスパイクタンパク質のS2領域(SEQ 14)のいずれかを封入した。マウスには100~200μlのポリマーソーム(可溶性スパイクタンパク質だけを含むか、ポリマーソームとスパイクタンパク質のS1領域およびS2領域との混合物を含むもの)を注射し、ブタには1mlの同ポリマーソームを経口投与した。
【0209】
eGFR DNA封入については、OVA封入と同様のプロトコールに従った。簡単に述べると、ブロック共重合体、例えばポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(BD21)、ポリ(エチレンオキシド)鎖の末端が官能基(例えばNH2、COOH)で修飾されたポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(BD21-NH2)、ブロック共重合体と脂質との混合物、例えばPLA-PEG/POPC、PLA-PEG/アゾレクチン、ジメチルアミノエタン-カルバモイル(DC)-コレステロール、1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)をクロロホルムに溶解し、ガラス管に移し、窒素ガスの気流下でゆっくり乾燥させることで、薄いフィルムを形成させた。そのフィルムを乾燥器中で6時間、減圧下でさらに乾燥した。1μgのeGFP DNAをフィルムに加え、一晩、再水和させた。その後、試料を0.2umポリカーボネートフィルターで押し出し、HEPES緩衝液中で透析した。
【0210】
実施例2:HEK293T細胞を用いるeGFP DNA封入ポリマーソームのトランスフェクション
HEK293T細胞を50,000細胞/ウェルの密度で48ウェルプレートに播種した。トランスフェクション(Lipofectamine 2000トランスフェクション)のために、1,000μLのOpti-MEM I(Invitrogen)、2μLのLipofectamine 2000(Invitrogen)、および1μgのSF-GFP PC DNA(または1μgのSF-GFP PC DNAを含有するポリマーソーム製剤)を混合した。トランスフェクション複合体は、RTで20分間のインキュベーション中に形成された。トランスフェクションのために、lipofectamine複合体を細胞に加え、37Cおよび5%CO2で24時間~72時間インキュベートした。トランスフェクションの効率は、GFP蛍光(励起波長485nm、蛍光波長520nm)によって測定した。細胞取込みについては、蛍光を励起波長530nm、蛍光波長560nmで測定した。イメージング用に、細胞培地を吸引した後、細胞をDPBS(Ca2+/Mg2+含有)で洗浄し、4%p-ホルムアルデヒドで固定した。次に、ガラス製カバーグラスを取り出し、DAPIを含む20ulの封入剤1滴をのせたスライドガラスにはじき落とした。最後にカバーグラスをマニキュアでシールし、後のイメージングのために4Cで保存した。イメージングには蛍光顕微鏡法を使用した。
【0211】
実施例3:抗体力価のためのOVA封入ポリマーソームによる免疫処置
Sigma Adjuvant System(SAS)を含むまたは含まない遊離OVAおよびOVA封入ACM(ポリマーソーム)を使用し、プライムと21日後のブーストを行うことによって、C57bl/6マウスを免疫処置した。すべての免疫処置は5~10ug OVA/注射/マウスの最終OVA量で行った。最終採血はプライムの42日後に行った。次に力価を評価するためにELISAを行った。すなわち、OVAをMaxiSorpプレート(1ug/ml)上に一晩コーティングした。プレートをPBS中の3%BSAを使ってRTで1時間ブロッキングした。すべての血清を1:100に希釈し、RTで1時間、プレート上でインキュベートした。PBS+0.05%Tween 20による3回の洗浄後に、抗マウスIgG-HRP結合二次抗体を、RT(室温)において、1:10,000の希釈率で、1時間インキュベートした。PBS/Tween 20緩衝液で3回洗浄した後、TMB基質を加え、1M HClを使って反応を停止した。光学密度を450nmで定量した。
【0212】
実施例4:抗体力価のためのHA封入ポリマーソームによる免疫処置
同様に、PBS中の遊離HAタンパク質(SEQ ID NO:7)、ACMに封入されたHA(ポリマーソーム)またはPBS対照で、Balb/cマウスを免疫処置した。すべての免疫処置は100ng HA/注射/マウスの同じ最終HA量で行った。プライムの42日後に最終採血を行い、プレートのコーティングに1ug/ml HAを使ってELISAを上記のように行った。
【0213】
実施例5:細胞性応答のためのMC38ネオ抗原ペプチド封入ポリマーソームによる免疫処置
免疫処置後の特異的CD8 T細胞応答を観察するために、本発明者らはMC-38同系腫瘍モデルを使用した。腫瘍を発生させるために、C57bl/6マウスの右側腹部の皮下に0.1mlPBS中のMC-38腫瘍細胞(3×105個)を接種した。接種の日を0日目と定義する。動物を体重に基づいてランダム化し、接種後4日目に免疫処置を開始した。免疫処置は、遊離ペプチド、市販の抗PD-1抗体による同時処置ありおよびなしでのACMに封入されたペプチド(ポリマーソーム)からなった。ペプチドは、Reps1 P45A(SEQ ID NO:1)、Adpgk R304M(SEQ ID NO:2)およびDpagt1 V213L(SEQ ID NO:3)であり、Genscriptから入手した。4日目、11日目および18日目に200ulのペプチドおよびACM中のペプチドを皮下に免疫処置した。ACM中のペプチドの濃度は20~30μg/mlと決定された。一方、単独のペプチドについてはマウス1匹につき注射1回あたり10μgを使用した。抗PD1抗体は、5mg/kgの投薬量で、5、8、12、15、19および22日目に腹腔内注射した。腫瘍成長および処置が、移動性などの正常行動、食物および水の消費、体重増/体重減(体重は週に3回測定される)に何らかの効果を及ぼすかどうか、動物をチェックした。腫瘍サイズは、週に3回、カリパスを使って二次元で測定し、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径である)を使って体積をmm3の単位で表した。
【0214】
実施例6:PEDvスパイクタンパク質封入ポリマーソームによるマウスおよびブタの免疫処置
マウスをACMに封入されたPEDvスパイクタンパク質で免疫処置し、21日後に2回目の投与でブーストした。免疫処置にはPEDvスパイクタンパク質が封入された150ul~200μlのポリマーソームを使用した。最終採血から血清を収集し、ELISAに使用した。さらにこれらの血清を、従来のウイルス中和反応により、PEDV株USA/コロラド/2013(CO/13)を中和する能力について試験した。さらにまた、PEDスパイクタンパク質が封入された1mlのポリマーソームを、離乳ブタに経口ワクチン接種した(1日目のプライムおよび14日目のブースト後)。経口ワクチン接種には簡単な生理溶液を使用した。
【0215】
結果
実施例1のタンパク質およびDNAの封入:
OVA封入ポリマーソームを、透析およびサイズ排除カラム(SEC)で精製することで、非封入タンパク質を除去し、動的光散乱法で分析した。図2A図3および図4に示すように、SECからのOVA封入ポリマーソームの溶出プロファイルおよび単分散集団が観察された。
【0216】
OVA、PEDvスパイクタンパク質またはeGFP DNAが封入されているさまざまなポリマーソームについて動的光散乱(DLS)データを図2Bに提示する。好ましいDLSパラメータであるZ-平均(d,nm)を使って測定すると、それらはいずれも平均直径120nm~180nmである。Z-平均サイズは強度加重調和平均粒径であり、それらの値は、ポリマーソームの以前のデータ[Fu et al.,2011、Lim.S.K,et al.,2017]とよく一致する。
【0217】
実施例2の封入eGFP DNAおよびトランスフェクションデータ:
HEK293T細胞を使ってeGFP DNA封入ポリマーソームをトランスフェクトし、トランスフェクション後に、ACMポリマーソームの取込みを蛍光プレートリーダーによって励起波長530nmおよび蛍光波長560nmで測定し、トランスフェクション効率はGFP蛍光(励起波長485nm、蛍光波長520nm)で測定した。図5に示すように、DNAを含むポリマーソームが細胞中に侵入し、DNAを放出してそのDNAをタンパク質に発現させうることは明らかであり、ポリマーソーム製剤はいずれも細胞に取り込まれてDNAを放出することができ、一方、ポリマーソーム放出対タンパク質発現の比は、その安定性および生分解性とよく相関する(図5A)。BD21などの非生分解性ポリマーソームは、生分解性ポリマーソームと比較して、取り込まれる量が少なく、発現レベルも低かった。同様の結果は細胞の蛍光像からも観察された(図5Bおよび図5C)。
【0218】
実施例3の封入OVAおよび力価:
プライムおよび21日後のブーストの投与によるC57bl/6マウスの免疫処置にOVA封入ポリマーソームを使用した。最後の採血を使ってELISAを行った。図6に示すように、遊離OVA、アジュバントを伴うOVA、または対照試料(PBSのみ)と比較して、OVA封入ポリマーソームが、力価をトリガーできる唯一の製剤であることは明らかである。SASを伴うOVAで力価が生じなかった理由は、治験に使用されたOVAの量が少なかったためかもしれない(1回の注射につき5ug前後)。したがってACMに封入されたOVAは、OVAに対するB細胞応答を、卵白アルブミンに特異的なIgG血清力価の形で、トリガーすることができた。
【0219】
実施例4の封入HAおよび力価:
プライムおよび21日後のブーストの投与によるBalb/cマウスの免疫処置にHA(H1N1/A/プエルトリコ/8/1934株、SEQ ID NO:7)封入ポリマーソームを使用した。最後の採血を使ってELISAを行った。図7に示すように、遊離HAまたは対照試料(PBSのみ)と比較して、HA封入ポリマーソームが、力価をトリガーできる唯一の製剤であることは明らかである。遊離HAで力価が生じなかった理由は、治験に使用されたHAの量が少なかったためかもしれない(1回の注射につき100ng前後)。したがってACMに封入されたHAは、HAに対するB細胞応答を、HAに特異的なIgG血清力価の形で、トリガーすることができた。
【0220】
実施例5の封入MC-38ネオ抗原ペプチドおよびCD8 T細胞応答:
ACMに封入された抗原がCD8 T細胞応答をトリガーできることを示すために、本発明者らは、公知のCD8抗原性ペプチドの送達に依拠する詳しく特徴づけられたMC-38同系マウス腫瘍モデルを使用した。アジュバントと組み合わされた大量のこれらのペプチドは、治療マウスモデルにおける腫瘍制御をトリガーすることが示されている(例えばKuai et al.,2017、Luo et al.,2017)。加えて、これらの効果は、マウス血中のペプチド特異的CD8 T細胞の存在と明らかに相関した。したがって、群間の腫瘍成長の相違はいずれも、CD8 T細胞のペプチド特異的プールの存在に直接的に起因すると考えることができるだろう。MC-38細胞株を接種した4日後に、本明細書の「材料および方法」で述べたように、遊離のペプチド、または抗PD1抗体処置ありおよび抗PD1抗体処置なしでのACMに封入されたペプチド(ポリマーソーム)のいずれかを使って、マウスを免疫処置した。図8に示すように、封入ペプチドによる免疫処置は、遊離のペプチドと比較して、腫瘍成長阻害効果をトリガーすることができた。この効果は、抗PD1抗体注射を加えると常に、劇的に増強された。このデータにより、ACMに封入されたペプチド(ポリマーソーム)は、おそらくは樹状細胞へのこれらのペプチドの送達によって、ペプチド特異的CD8 T細胞応答をトリガーでき、それが腫瘍制御をもたらすということが実証された。この効果は、抗PD1抗体などのチェックポイント阻害剤の添加によって増加した。事実、MC-38は、腫瘍内部でT細胞の殺傷活性を阻害することが公知であるPD-L1分子を、その細胞表面に発現することが示されている。したがって、PD1/PD-L1相互作用を遮断する抗体によるそのような相互作用の阻害は、腫瘍特異的T細胞の存在をより一層明らかにすることが知られている。このデータは全体として、ACMに封入された抗原(ポリマーソーム)がアジュバントの添加なしで抗原特異的CD8 T細胞応答をトリガーできることを、明確に実証している。
【0221】
実施例6の封入PEDvスパイクタンパク質およびIgG、IgAおよびウイルス中和応答:
マウスをACMに封入されたPEDvスパイクタンパク質で免疫処置し、21日後に2回目の投与でブーストした。最終採決から血清を収集してELISAに使用した。図8に見られるように、ELISAプレートにコーティングされたスパイクタンパク質に結合する抗体および力価は、ACMワクチン接種マウスと比較して、死滅ウイルスをワクチン接種した動物に類似するレベルだった。さらにこれらの血清を、従来のウイルス中和反応実験により、PEDV株USA/コロラド/2013(CO/13)を中和する能力について試験した(図9)。ここでは、ACMワクチン(すなわち、ACMに封入されたPEDスパイクタンパク質)で免疫処置されたマウスからの血清だけにウイルス中和反応が見出されることが観察され、死滅ウイルスをワクチン接種したマウスからの血清では中和反応は観察されなかった。さらにまた、完全長可溶性タンパク質が封入されたさまざまなポリマーソーム(例えばBD21、PDMS46-PEO37図10では「PDMS」とだけ記している)、PDMS46-PEO37/DSPE-PEG、PLA-PEG/アゾレクチン脂質)ならびにS1領域およびS2領域を含有するポリマーソーム混合物を免疫処置に使用し、血清をウイルス中和反応について試験した(図10)。PBS試料で免疫処置されたマウスの群がいかなるウイルス中和反応も示さないのに対し、他のポリマーソーム製剤はいずれも、さまざまな程度のウイルス中和反応を示すことは、図10から明らかである。さらにまた、離乳ブタにACMに封入されたPEDスパイクタンパク質を経口ワクチン接種したところ、(1日目のプライムおよび14日目のブースト後に)ウイルスに対する特異的IgA抗体の増加が、収集した糞便スワブから観察され、ELISAで測定された(図11参照)。
【0222】
実施例7:可溶性封入mRNAとイオン化可能脂質とを含むポリマーソームの改良された安定性(例えば貯蔵)
以下のプロトコール/条件/組成物に従い、ACM-ポリマーソームを使って、OVA mRNA(SEQ ID NO:16)を調製した。
【0223】
20mMトリス、4.5mM酢酸塩、5%スクロースに(例えばModerna LNP製剤に基づいて)、10μg/ml OVA mRNAを調製した。
【0224】
BD/DOTAP(85/15)400mg/ml ACM-ポリマーソームをTHF中に調製した。実施例7では、BD/DOTAPを使って調製されたACM-ポリマーソームが参照例として使用される。したがって、イオン化可能脂質を含むACM-ポリマーソームは、BD/DOTAPポリマーソームと同じ方法で調製することができる。
【0225】
11ml(均質化に9ml、押出しに1ml、非押出し物(non-extruded)に1ml)。
【0226】
均質化は次のように行った:5ストローク、最終圧力75~80Mpa-153nm PdI 0.18。
【0227】
均質化バッチスプリット-4ml透析1000kDaメンブレン、4℃、-20℃、-80℃間で、4mlスプリット。
【0228】
押出しバッチスプリット-0.5ml透析、4℃、-20℃、-80℃間で0.5mlスプリット。
【0229】
共溶媒バッチスプリット-0.5ml透析、4℃、-20℃間で残りスプリット。
【0230】
次に、均質化およびACM-ポリマーソームへのmRNA封入後に、mRNA濃度を測定した(表1および表2)。
【0231】
(表1)界面活性剤(Triton)存在下での、均質化およびACM-ポリマーソームへのOVA-mRNA封入後の、mRNA濃度測定
【0232】
(表2)界面活性剤(Triton)非存在下での、均質化およびACM-ポリマーソームへのOVA-mRNA封入後の、mRNA濃度測定
【0233】
表2の結果は、界面活性剤非存在下での、均質化後の、ACM-ポリマーソームへのmRNA封入の成功を実証している。
【0234】
さらにまた、ACM-ポリマーソームに封入されたOVA-mRNAの貯蔵安定性も、4℃で週末越しに調べた(表3)。
【0235】
(表3)ACM-ポリマーソームに封入されたOVA-mRNAの4℃における貯蔵安定性
【0236】
したがって、mRNA試料の安定性を評価するために、OVA-mRNAがローディングされたACM BD/DOTAPポリマーソーム(上記)とLNP(オンパットロ組成物、下記表4~5)のDLSプロファイルを比較した。
【0237】
そのために以下のプロトコール/条件/組成物を使用した。
緩衝液:20mMトリス、5%スクロース、pH7.4。
ACM/LNPモル含量:5μM。
OVA-mRNA(SEQ ID NO:16)含量:25μg/ml。
貯蔵温度:-80℃。
【0238】
DLSの結果を図13に示す。この結果は、ACM-ポリマーソームにローディングされたOVA-mRNAの、-80℃における安定性が、LNP(オンパットロ組成物)にローディングされたOVA-mRNAよりも優れていることを実証している。
【0239】
(表4)オンパットロ組成物
【0240】
(表5)オンパットロ組成物(続き)
【0241】
さらに、以下の空ACM-ポリマーソーム組成物を調製した。
【0242】
DOTAPを含む空ACM-ポリマーソーム(上述のように調製した、参照例としてBD/DOTAPポリマーソームが使用される):ACM濃度:5μM(7.7~8.6mg/ml);ポリマー(mol%):85または70;DOTAP(mol%):15または30;緩衝液:20mMトリス、4.5mM酢酸塩、5%スクロース、pH7.4。
【0243】
DLin-MC3-DMAを含む空のACM-ポリマーソーム(BD/DLin-MC3-DMA):ACM濃度:5μM(7.6~8.6mg/ml);ポリマー(mol%):85または70;MC3(mol%):15または30;出発緩衝液:20mM酢酸ナトリウム、pH5または20mMトリス、4.5mM酢酸塩、5%スクロース、pH7.4;最終緩衝液:20mMトリス、4.5mM酢酸塩、5%スクロース、pH7.4。
【0244】
次に、DLin-MC3-DMAイオン化可能脂質を使って調製された空のACMポリマーソーム(BD/DLin-MC3-DMA)をDLSによって参照DOTAPポリマーソーム(空)と比較したところ、どちらも同じように形成されることが実証された(図14)。
【0245】
さらに、PBD-PEOとDLin-MC3-DMAとを含むACM-ポリマーソームも調製した(表6)。
【0246】
(表6)PBD-PEOとDLin-MC3-DMAとを含むACM-ポリマーソーム
【0247】
本発明が、それを実行し、上述のそしてそこに内在する目的および利点を得るのに適していることは、当業者には容易に理解されるだろう。さらに、本発明の範囲および要旨から逸脱することなく、本明細書に開示された発明にさまざまな置換および変更を加えうることは、当業者には一目瞭然であるだろう。本明細書に記載された組成物、方法、手順、処置、分子および具体的化合物は、現時点において一定の態様を代表するものであり、例示的であって、本発明の範囲の限定を意図していない。そこでの改変および他の使用であって、本発明の要旨に包含され、請求項の範囲によって規定されるものを、当業者は思いつくであろう。以前に公開された文書の本明細書における一覧または考察は、必ずしも、その文書が技術水準の一部であることまたは共通一般知識であることの認知であると解釈されるべきではない。
【0248】
本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に具体的に開示されていない1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限が存在しなくても、適切に実施されうる。したがって、例えば「を含む」(comprising、including、containing)などの用語は、限定されることなく、拡張的に読解されるものとする。加えて、本明細書で使用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用に、表示され説明された特徴またはその一部分のいかなる等価物も除外する意図はなく、請求項に係る発明の範囲内でさまざまな変更が考えられると認識される。したがって、例示的な態様および随意の特徴によって本発明を具体的に開示したが、当業者であれば、本明細書に具体化された発明の改変および変形に頼ることができ、そのような変更および変形が本発明の範囲内とみなされることは、理解すべきである。
【0249】
本明細書では本発明を広く上位概念によって記載した。上位概念の開示に包含される下位概念および下位分類のそれぞれも、本開示の一部を形成する。これには、削除される事項が本明細書において具体的に言明されているか否かにかかわらず、上位概念からいずれかの対象事項を除外する但し書きまたは消極的限定を伴う、上位概念による本発明の説明が包含される。
【0250】
他の態様は添付の請求項の範囲内にある。加えて、本発明の特徴または局面がマーカッシュ群によって記載されている場合、本発明が、それにより、そのマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群によっても記載されていることは、当業者には理解されるだろう。
【0251】
参考文献
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
【配列表】
2024518710000001.app
【国際調査報告】