(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】受信信号電力およびタイミングの測定値を使用したモバイルベースの測位
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20240424BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20240424BHJP
【FI】
G01S5/02 A
H04W64/00 110
H04W64/00 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562508
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 US2022024107
(87)【国際公開番号】W WO2022217114
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523384300
【氏名又は名称】ファイ ワイヤレス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン スティーブン シー
(72)【発明者】
【氏名】ラウ ゼイン
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062AA09
5J062BB05
5J062CC12
5J062CC18
5J062FF01
5K067AA21
5K067BB21
5K067DD20
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067FF03
5K067FF05
5K067JJ54
(57)【要約】
受信信号電力およびタイミング測定値の両方を利用するモバイルデバイスの位置を推定するハイブリッド方法。複数のセルからモバイルデバイスによって受信された信号の受信信号電力が測定され、対応する受信信号電力測定値が記憶される。本方法は、モバイルデバイスにおいて、複数のセルから受信された信号の到着時間を測定することをさらに含む。複数の到着時間差(TDOA)測定値が、到着時間から決定される。電力-時間ハイブリッドガウス最大尤度推定部、および複数のセルに対する測位支援データを使用して、受信信号電力測定値と複数のTDOA測定値との結合条件付き確率を評価することによって、モバイルデバイスの位置の最大尤度推定を生成する。ガウス確率変数が、受信信号電力測定値およびTDOA測定値を表すために使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルデバイスの位置を推定する方法であって、
前記モバイルデバイスにおいて、複数のセルから受信された信号の受信信号電力を測定し、対応する受信信号電力測定値を記憶することと、
前記モバイルデバイスにおいて、前記複数のセルから受信された複数の信号の複数の到着時間を測定することと、
前記モバイルデバイスにおいて、前記複数の到着時間から、複数の到着差(TDOA)測定値を決定することと、
電力-時間ハイブリッドガウス最大尤度推定部、および前記複数のセルに対する測位支援データを使用して、前記受信信号電力測定値と前記複数のTDOA測定値との結合条件付き確率を評価することによって、前記モバイルデバイスの前記位置の最大尤度推定を生成することと
を含み、
前記受信信号電力測定値は、第1のガウス確率変数によって表され、前記複数のTDOA測定値は、第2のガウス確率変数によって表されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記受信信号電力測定値は、ベクトルr
p、すなわち
r
p=h
p(x)+n
p
に含まれており、但し、h
p,m(x)は、前記複数のセルのうちのm番目からの平均の受信信号電力であり、n
p,m=X
mは、前記複数のセルのうちの前記m番目に対する測定された電力誤差項であり、前記方法は、r
p,mが、分散
【数1】
、平均h
p,m(x)、および条件付き確率密度関数
【数2】
m=1,2,...,Mp
を伴う第1のガウス確率変数となるようにX
mを
【数3】
としてモデル化することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記複数のTDOA測定値は、ベクトルr
t、すなわち
r
t=h
t(x)+n
t
に含まれており、但し、h
t(x)は、TDOAグラウンドトゥルースベクトルであり、n
tは、TDOAノイズ成分であり、前記方法は、r
t,mが、分散
【数4】
、平均h
t,m(x)、および条件付き確率密度関数
【数5】
m=1,2,...,Mt
を伴う第2のガウス確率変数となるようにn
t,mを
【数6】
としてモデル化することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
ネットワークサーバからアクセス可能な基地局アルマナック(BSA)からの第1の複数のセルに対する第1のセルパラメータを、前記ネットワークサーバから受信することであって、前記複数のセルは、前記第1の複数のセルのサブセットを形成する、受信することと、
前記第1のセルパラメータを第1のmicro-BSAとして、前記モバイルデバイスのメモリ内に記憶することと、
前記複数のセルに関連付けられた前記第1のセルパラメータのサブセットから前記測位支援データを導出することと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記第1の複数のセルの初期サブセットに関連付けられた前記第1のセルパラメータの初期サブセットから、初期測位支援データを導出することであって、前記第1の複数のセルの前記サブセット内に含まれる1つ以上のセルは、前記第1の複数のセルの前記初期サブセットに含まれない、導出することと、
前記モバイルデバイスにおいて、前記第1の複数のセルの初期サブセットから受信された初期の複数の信号の受信信号電力を測定し、対応する初期の複数の受信信号電力測定値を記憶することと、
前記モバイルデバイスにおいて、前記第1の複数のセルの前記初期サブセットから受信された複数の信号の初期の複数の到着時間を測定することと、
前記モバイルデバイスにおいて、前記初期の複数の到着時間から、初期の複数の到着時間差(TDOA)測定値を決定することと、
電力-時間ハイブリッドガウス最大尤度推定部、および前記初期測位支援データを使用して、前記初期の複数の受信信号電力測定値と前記初期複の数のTDOA測定値との結合条件付き確率を評価することによって、前記モバイルデバイスの前記位置の初期最大尤度推定を生成することと
をさらに含み、
前記初期の複数の受信信号電力測定値は、第1の初期ガウス確率変数によって表され、前記複数のTDOA測定値は、第2の初期ガウス確率変数によって表されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記初期測位支援データが、初期シード推定に基づいて、前記第1のmicro-BSAによって生成されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法であって、
人工知能(AI)管理モジュールによって、前記モバイルデバイスが移動すると予期されるルートを予測することと、
前記BSAからの第2の複数のセルに対する第2のセルパラメータを、前記ネットワークサーバから受信することであって、前記第2の複数のセルは、前記AI管理モジュールによって、前記モバイルデバイスが移動すると予期されるルートに近接するように決定され、前記第2の複数のセルは、前記第1の複数のセルには含まれない少なくとも1つのセルを含む、受信することと、
前記第2のセルパラメータを第2のmicro-BSAとして、前記モバイルデバイスの前記メモリ内に記憶することと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記モバイルデバイスにおいて、前記第2の複数のセルのサブセットから受信された信号の受信信号電力を測定し、対応する第2の受信信号電力測定値を記憶することと、
前記モバイルデバイスにおいて、前記第2の複数のセルの前記サブセットから受信された信号の第2の到着時間を測定することと、
前記モバイルデバイスにおいて、前記第2の到着時間から、複数の第2のTDOA測定値を決定することと、
前記電力-時間ハイブリッドガウス最大尤度推定部、および前記第2のセルパラメータから導出された前記第2の複数のセルの前記サブセットに対する第2の測位支援データを使用して、前記第2の受信信号電力測定値と前記複数の第2のTDOA測定値との結合条件付き確率を評価することによって、前記モバイルデバイスの第2の位置の最大尤度推定を生成することと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記予測することが、前記モバイルデバイスによって受信された信号の周波数におけるドップラシフトを検出することを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、前記予測することが、前記モバイルデバイスが道路上を移動していると決定することと、前記道路を含む地図からルート情報を抽出することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、前記AI管理モジュールによって生成されたパターン認識情報に基づいて、前記第2の複数のセルを選択することをさらに含み、前記パターン認識情報が、前の位置推定を生成するために前記モバイルデバイスによって以前使用された前記予期されるルートに近接したセルに関する情報を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記複数のTDOA測定値が、第1のTDOA測定値ベクトル内に含まれており、前記方法が、
前記モバイルデバイスの前記位置の前記最大尤度推定を使用して、第1のTDOA残差ベクトルを少なくとも計算することによって、前記モバイルデバイスの前記位置の前記最大尤度推定の品質を決定することと、
前記第1のTDOA残差ベクトルに基づいて、前記複数のセル内に含まれる不良セルを検出することと、
前記第1のTDOA測定値ベクトルから、前記不良セルに関連付けられた前記TDOA測定値を除去することによって、第2のTDOA測定値ベクトルを構築することと、
前記電力-時間ハイブリッドガウス最大尤度推定部、および前記第2のTDOA測定値ベクトルを使用して、前記モバイルデバイスの前記位置の更新された最大尤度推定を生成することと、
前記第2のTDOA測定値ベクトルに基づいて、前記モバイルデバイスの前記位置の前記更新された最大尤度推定の品質を決定することと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記モバイルデバイスの前記位置の前記更新された最大尤度推定の前記品質を前記決定することが、前記モバイルデバイスの前記位置の前記更新された最大尤度推定を使用して、第2のTDOA残差ベクトルを計算することを含み、前記方法が、さらなる不良セルを検出するために、前記第2のTDOA残差ベクトルを評価することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、前記モバイルデバイスの前記位置の前記最大尤度推定の前記品質を前記決定することが、少なくとも最小の数のセルが、前記第1のTDOA測定値ベクトル内に含まれているかどうかを判定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、前記モバイルデバイスの前記位置の前記最大尤度推定の前記品質を前記決定することが、前記第1のTDOA測定値ベクトルにおける前記セルのロケーション間の第1の精度の幾何学的希釈(GDOP)を決定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記第1のGDOPが閾値を超えたと決定することと、(i)誤差条件を示すこと、(ii)交互測位方法を使用して前記モバイルデバイスの位置を決定することのうちの少なくとも一方とをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項4に記載の方法であって、前記BSAからの第2の複数のセルに対する第2のセルパラメータを第2のmicro-BSAとして、前記モバイルデバイスの前記メモリ内に記憶することをさらに含み、前記第2の複数のセルは、前記第1の複数のセル内に含まれない少なくとも1つのセルを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項4に記載の方法であって、前記第1の複数のセルの追加サブセットに関連付けられたTDOA測定値と、前記第1の複数のセルの前記追加サブセットに対応する改善された測位支援データとに少なくとも基づいて、前記モバイルデバイスの前記位置の改善された推定を決定することをさらに含み、前記改善された測位支援データは、前記モバイルデバイスの前記位置の前記最大尤度推定に基づいて、前記micro-BSAによって生成されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記モバイルデバイスに対する追加の位置推定のうちの前の1つに基づいて、前記micro-BSAによって生成されたさらに改善された測位支援データに基づいて、前記追加の位置推定を決定することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、(i)位置推定コスト関数における輪郭線を評価すること、および(ii)到着時間差(TDOA)残差ベクトルを計算することのうちの少なくとも一方によって、前記追加の位置推定の品質を判断することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記品質が、規定された品質閾値を下回るとき、前記micro-BSAおよび前記ネットワークサーバのうちの少なくとも一方に、更新された測位支援データを要求することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
モバイルデバイスであって、
プロセッサと、
前記プロセッサと通信するメモリとを備え、前記メモリは、プログラム命令を記憶し、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
第1の複数のセルから受信された信号の受信信号電力を測定し、対応する受信信号電力測定値を記憶することと、
前記第1の複数のセルから受信された第1の複数の信号の第1の複数の到着時間を測定することと、
前記第1の複数の到着時間から第1の複数の到着時間差(TDOA)測定値を決定することと、
電力-時間ハイブリッドガウス最大尤度推定部、および前記第1の複数のセルに対する第1の測位支援データを使用して、前記受信信号電力測定値と前記第1の複数のTDOA測定値との結合条件付き確率を評価することによって、前記モバイルデバイスの位置の最大尤度推定を生成することと
を行わせ、
前記受信信号電力測定値は、第1のガウス確率変数によって表され、前記第1の複数のTDOA測定値は、第2のガウス確率変数によって表されることを特徴とするモバイルデバイス。
【請求項23】
請求項22に記載のモバイルデバイスであって、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
第2の複数のセルから受信された第2の複数の信号の第2の複数の到着時間を測定することと、
前記第2の複数の到着時間から第2の複数の到着時間差(TDOA)測定値を決定することと、
前記第2の複数のセルに対する第2の測位支援データ、および前記第2の複数のTDOA測定値を使用して、前記モバイルデバイスの前記位置の更新された推定を生成することと
を行わせる命令をさらに含むことを特徴とするモバイルデバイス。
【請求項24】
請求項22に記載のモバイルデバイスであって、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記第1の複数のセルおよび前記第2の複数のセルに対するセルパラメータを、前記メモリ内に確立されたmicro-BSA内に記憶することと、
前記セルパラメータから、前記第1の測位支援データおよび前記第2の測位支援データを導出することと
を行わせる命令をさらに含むことを特徴とするモバイルデバイス。
【請求項25】
モバイルデバイスの位置を推定する方法であって、
前記モバイルデバイスにおいて、複数のセルから受信された信号の受信信号電力を測定し、対応する受信信号電力測定値を記憶することと、
前記モバイルデバイスにおいて、前記複数のセルから受信された複数の信号の複数の到着時間を測定することと、
前記モバイルデバイスにおいて、前記複数の到着時間から、複数の到着時間差(TDOA)測定値を決定することと、
前記複数のTDOA測定値と、前記受信信号電力測定値と、前記複数のセルに対する測位支援データとを使用して、前記モバイルデバイスの前記位置の推定を生成することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記生成することが、最大尤度推定部を使用して行われることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法であって、前記生成することが、前記複数のTDOA測定値および前記受信信号電力測定値を、非ガウスインパルス性ノイズとしてモデル化することを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法であって、前記最大尤度推定部は、少なくとも前記複数のTDOA測定値がガウス混合モデルから導かれると想定することを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線環境における到着時間測定値に基づいて、ユーザ端末または他の通信機器の位置を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月9日に出願された、MOBILE-BASED POSITIONING USING MEASUREMENTS OF RECEIVED SIGNAL POWER AND TIMINGと題された米国仮特許出願第63/173,239号の優先権および利益を主張し、その開示は、あらゆる目的のために、その全体において、本願に引用して援用する。
【0003】
無線基地局のセットからの信号に対する到着時間(TOA)の測定値は、ユーザの位置またはロケーションを決定するのに役立てることができる。例えば、既存の規格より、無線デバイスは、GPSまたはWiFi支援測位戦略を置き換えること、または補足することができるような手法で、基地局からの信号に基づいて、無線デバイス自体のロケーションまたは測位を決定することができる(例えば特許文献1-4参照)。例えば、3GPP TS 36.133、「Requirements for support of radio resource management」、V15.5.0を参照されたい。
【0004】
無線デバイス(「ユーザ機器」または「UE」とも称される)のダウンリンクセルラ測位における先行技術は、UE支援(UE-A)である。UE-A手法において、ロケーションサーバは、支援データを近くのセル(基地局、4G LTE向けのeNB、5G NR向けのgNBとしても知られる)に提供し、近くのセルは、これをUEに伝達する。UEは、現在のダウンリンク電波条件で測定(すなわち、電力、タイミング測定値)を行い、これらの測定値をアップリンクにおいて送信してロケーションサーバに戻す。次いで、ロケーションサーバは、測定値を使用して、UEのロケーションを推定する。
【0005】
一例の測位方法は、UEがTDOA(3GPP(登録商標)におけるRSTDとしても知られる)測定を行い、ロケーションサーバが、双曲線TDOA位置計算を行う、OTDOA(観測到着時間差)である。別の測位方法は、UEが、周囲セルの電力測定、およびUEサービングセルの往復タイミング推定を行う、強化型セルID(E-CID)である。リリース9 3GPP E-CIDはさらに、eNBにおける到来角(AoA)測定を組み込む。最も基本的なセルラ測位方法は、位置が、サービングセルの重心、またはサービングセルの送信点にあると推定される、ベーシックセルIDである。
【0006】
UE測定値と共に、ロケーションサーバは、UEロケーションを推定するために必要な追加情報を有する。この追加情報は、セルロケーション、セル送信電力、相対的なセルタイミングオフセット、アンテナ方向、およびアパーチャの詳細を含む。
【0007】
例えば、3GPP LTE仕様のリリース13において参照される3GPP TS 36.355バージョン13.3.0に記載されたLTE測位プロトコル(LPP)は、UE-A測位を提供する。例えば、LTE測位プロトコルに従って、測位参照信号(PRS)サブフレームが、測位機会と呼ばれることがある特定の時間間隔にわたって、指定された直交周波数分割多重(OFDM)シンボルに埋め込まれる。UEは、それぞれのアクセス可能な基地局(3GPP LTE仕様がeNodeBと呼ぶ)からPRSサブフレームの到着時間(TOA)を測定することができる。ユーザ機器は好ましくは、2つの異なるeNodeB(一方は参照、他方は近隣と呼ばれる)間の少なくとも1つの参照信号時間差(RSTD)を測定する。参照信号時間差は、LTE測位プロトコルに記載された、観測到着時間差(OTDOA)についての確立された方策に関する。
【0008】
ユーザ機器の位置を決定することは、対象の各eNodeBからの第1の参照信号経路のTOAを測定することによって進行し、それに続いて、ユーザ機器においてそれぞれ測定された到着時間を使用して、指定されたeNodeB基地局のペア間の参照信号時間差(RSTD)を決定する。規格に明記された特定の構成に応じて、TOAおよびRSTD測定は、特定の数の基地局に、および基地局のセットのうちの基地局間のRSTD測定の異なる対応する組合せにわたって行われ得る。
【0009】
ビットを無線で送信するための、LTEの基本波変調スキームは、OFDMを使用する。すなわち、ビットは、直交振幅変調(QAM)を、OFDMシンボルを構成する各アクティブサブキャリアに適用することによって生成される。実際には、LTE OFDMシンボルは、最大1200のサブキャリアのうち、600のアクティブサブキャリアを表す2048の時間サンプルを有することができる。各サブキャリアは、事前にわかっているビットをレシーバに送信し、それによって異なる計算が可能になるなどの機能を、レシーバで割り当てられてもよい。これらの計算は、チャネルインパルス応答(CIR)推定、および測位関連測定を含むことができる。
【0010】
図1は、LTEにおいて規定された参照信号時間差(RSTD)測定に基づいて、観測到着時間差(OTDOA)を使用して位置を決定するための装置の機能ブロック図を提供する。図示されたユーザ機器レシーバ110は、2つの基地局101、103から複数のOFDMシンボルを受信する。レシーバ110は、1つ以上のアンテナを使用してシンボルを受信する。
図1は、RSTD測定向けの最小構成である単一のアンテナを使用するレシーバ110を用いて、2つの基地局101、103から受信した信号を例として使用する、位置決定機能を示す。この構成は、より大きな数の基地局およびより大きな数のユーザ機器アンテナに拡張されることが可能である。
【0011】
ユーザ機器レシーバ110はLTE規格に準拠するので、レシーバは、送信されたビットの最良の推定を提供するために、受信されたOFDMシンボルを処理することができる。そのようなレシーバ110は、測位情報を計算するために割り当てられたサブキャリアに対応する1つ以上の第1の経路識別(FP-ID)モジュール130、140を使用して、第1の経路を特定することができる。それぞれの第1の経路識別モジュール130、140は、ユーザ機器レシーバ110によって提供される、測位測定のために使用されるサブキャリアについての情報132、142に対応する。例えば、情報は、不揮発性メモリ内の表の中に記憶されてもよい。
【0012】
第1の経路識別ユニット130、140は、既知のeNodeBから受信されたOFDMシンボルのためのそれぞれの第1の経路を特定する。参照信号時間差(RSTD)測定は、典型的には、所望の確度を達成するために、OFDMシンボルのあらかじめ定められた持続時間に基づく。LTEでは、これは、14個のOFDMシンボルになるように規定された、OFDMシンボルの少なくとも1つのサブフレームにわたることがある。
【0013】
それぞれの第1の経路識別モジュール130、140からの出力は、対応する基地局からの信号のユーザ機器での到着時間(TOA)である。一般に、LTEでは、kおよびjとしてインデックス付けされている基地局間のRSTDk,jは、
RSTDk,j=TOAk-TOAj EQ.1
と決定される。
【0014】
図1は、レシーバ110のモジュール150が、その出力152として、等式1参照信号時間差演算を与えることを示している。この出力RSTD
0,1152は、第1の経路識別モジュール130の出力134マイナス第1の経路識別モジュール140の出力144の計算結果である。
【0015】
TOA
kおよびTOA
jの信頼性が高い推定を所与とし、第1の経路識別FP-IDモジュール130、140で受信された信号の構造を知っていると、RSTD
k,jの計算は単純である。LTE規格のような規格は、
図2に示されるように一般化されることが可能なシンボルの構造を規定する。基地局などの1つのソースからカバレッジエリア内の複数のユーザに送信する現代の無線システムは、送信を「サブチャネル」へとさらに分割する必要がある。これはFMまたはAMラジオ送信と概念の点であまり違わないが、無線送信は、所定のスペクトルに対する非常に高いビット/秒/ヘルツの目標を有する。現代の無線技術のケースでは、チャネルの特定は、OFDMおよび符号分割多元接続(CDMA)を含む直交スキームを使用して達成することができる。近い将来には、無線規格は、無数の空間的かつ時間的戦略において達成される準直交チャネルを使用することによって容量を増大させることができる。
【0016】
図2は、直交チャネル化を想定する方法を示すことによって、観測到着時間差(OTDOA)測定に関与する信号の説明を簡略化するものである。すなわち、直交度が保たれたまま、チャネル間のクロストークが低いレベルに維持される。
【0017】
図2の水平軸201は時間を表し、受信されたシンボルによって占有される時間を定性的に表す。
図2の縦軸は、
図2が、重複がないようにチャネルを定性的に示すように第2のチャネル次元を示す。縦軸のチャネル分離は、OFDMのケースにおけるような周波数の区分を、またはCDMAにおける異なるコードのインデックス化を表すことができる。例えば、LTE規格では、周波数軸における区分けは、サブキャリアに対する帯域幅の15kHzを表すことができ、OFDMシンボルは、場合によっては、1つのシンボルにおける1024個の全サブキャリアのうち、最大で600のアクティブサブキャリアからなることがある。これは単に一例に過ぎず、他の割当ても知られている。したがって、例えば、
図2における各四角形の範囲は、周波数×時間グリッドにおいて、15kHz(y軸)×71.4μs(x軸)を表すことができる。値71.4μsは、1000μsのLTEサブフレームの持続時間を、LTEサブフレームを構成するように規定された個数14のOFDMシンボルによって除算することによって決定される。LTE技術では、グリッドにおける、それぞれの15kHz(y軸)×71.4μs(x軸)ブロックは、リソース要素(RE)と呼ばれる。7シンボル(500μs)×12サブキャリア(180kHz)の時間-周波数割当ては、3GPP LTEにおいて、リソースブロック(RB)と呼ばれる。
【0018】
図2の以下の論考は、OFDM送信に焦点を当てているが、
図2は、他の送信システムも等しく図示することができると理解されるべきである。例えば、
図2は、CDMA送信などの他の直交スキームのみならず、次世代無線(5G)での使用のためのものなどの送信戦略を図示することができる。送信戦略の中でも特に、直交または準直交送信戦略は、サブチャネルのため、または、観測到着時間差(OTDOA)測定に関連するシグナリングのために使用されてもよい。
【0019】
ユーザ機器端末が、OTDOAを計算することによって位置を決定することを可能にするために、ある特定の無線規格は、位置を決定するため、またはOTDOAの機能性を実現するために、使用されるべきグリッド内にサブキャリアを割り当てる。この論考を簡略化するために、例示のOTDOAサブキャリアは、
図2において「ロケーションパイロット」(LP)212、214、216として指定される。パイロットという用語は、レシーバにおいて既知の送信変調を有するサブキャリアを示すために使用される。これらのパイロットサブキャリアは、未知の情報ビットでエンコードされているために、未知の変調特性を有するデータサブキャリアとは対照的である。このパイロットスキームは、互換端末がさまざまな測定法を実現するのを可能にする。ユーザ機器端末は、一般に、チャネルインパルス応答(CIR)と、OFDMシンボルの正常な受信および変調のための他のパラメータとを推定する必要がある。結果として、
図2に示すグリッドは、パイロットとして指定された他のサブキャリアを含む可能性が高い。これらの持続するパイロットは、推定パイロット(EP)として示され、
図2において221、223、225として示されている。LTEでは、これらのロケーション、およびEPの変調中のビットは、LTE仕様によって定められているので、レシーバでは既知である。UE支援システムでは、ユーザ機器端末は、これらのパイロットを使用してTDOA測定を行い、測定値を、双曲線TDOA位置計算を行うように構成されたロケーションサーバに送る。
【0020】
次に
図3を参照すると、従来のUE支援測位システム300の簡略化された表現が提供されている。示されているように、システム300は、基地局アルマナック(BSA)320、位置支援データ計算部324、および、例えばロケーションサーバ内に位置する位置推定部328を含むネットワークインフラストラクチャ310を含む。従来のUE支援測位システムにおけるロケーションサーバは、位置支援データ計算部324および位置推定部328から構成される。モバイルネットワークオペレータ(MNO)は、BSA320を維持し、ロケーションサーバに入力としてBSA320を提供する。制御プレーンソリューションに関してロケーションサーバはE-SMLCと称され、ユーザプレーンソリューションに関してロケーションサーバはSLPとして知られている。位置推定部328は、UE350から受信された測定値330に基づいて、知られた様式で、位置推定を提供するように構成される。電力およびタイミング測定モジュール354は、位置支援データ計算部324から受信された支援データ358に基づいて、測定値330を生成する。動作中、ロケーションサーバは、測位計算を容易にするために、近くのセルにBSA320からの情報を提供することができる。残念ながら、BSA320内の情報から生成された支援データ358は、UE350にダウンロードされなければならず、測定値330は、位置が更新されるたびに位置推定部328にアップロードされなければならない。これによりネットワーク輻輳が生じ、UE350のバッテリ寿命が損なわれる。
【0021】
現在の最新技術では、支援データ358は、測位のために使用される数十のセルから構成される。例えば、3GPP TS 36.355、「LTE測位プロトコル(LPP)」では、所定の周波数層に対するOTDOA近隣セルの数は24である。ロケーションサーバは、セルの、全世界的に一意の識別子である、サービングセルのECGIを使用して24のセルの「最良のセット」を導出する。しかしながら、ロケーションサーバは、24のセルを導出したとき、UE350のロケーションのごく大まかな推定を有するのみである。この大まかな推定は、例えば、サービングセルの重心または送信点、すなわち、ベーシックセルID位置であってもよい。
図4に示されるように、支援データ358を導出するために使用される初期位置推定は、シード推定410として規定される。しかしながら、ベーシックセルID測位に基づくシード推定410は、支援データ358のために選択された、セルの粗悪なセットに帰着する可能性がある。
【0022】
UEベースの(「UE-B」)セルラ測位は、ロケーションサーバが支援データ(AD)をUEに供給する場合のUE支援と類似している。UE-Bシステムでは、支援データは、UEがロケーションをローカルに推定するために必要となる追加情報を含む。UE-Bは、UE-Aを上回る技術的利点を有する。UE-Bでは、UEは、測定値をロケーションサーバに送信する必要はない。アップリンク送信は、バッテリ消耗の点から費用が高くつき、そのことが、バッテリ寿命の点で、UE-A手法をUE-B手法に対して相対的に不利にする。UE-Bはさらに、測定値がアップリンクにおいて送信されないので、ネットワーク輻輳を緩和する。セルあたり数千またはさらに数百万の接続されたデバイスを用いる5Gの大規模なIoT(モノのインターネット)シナリオの場合、UE-A測位のための過剰なアップリンク送信は、スペクトルおよび時間リソースを使い果たすおそれがある。一方、UE-Bは、アップリンクの通信量を低減し、大規模なサービスの展開を容易にする。
【0023】
UE-AとUE-Bとの両方のセルラ測位は、屋内カバレッジおよびより低い電力消費の点で、従来のGNSS測位を超える技術的利点をもたらす。これらのセルラ測位方法はさらに、WiFiロケーション、ならびに、固有のルックアップテーブルおよび法外に費用が高いビーコン配備に頼るブルートゥース(登録商標)ロケーションを超える利点をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0334215号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第105188082号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1552321号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2893367号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
受信信号電力およびタイミング測定値の両方を利用するモバイルデバイスの位置を推定するハイブリッド方法が、本明細書において開示される。本方法は、モバイルデバイスにおいて、複数のセルから受信された信号の受信信号電力を測定し、対応する受信信号電力測定値を記憶することとを含む。方法は、モバイルデバイスにおいて、複数のセルから受信された複数の信号の複数の到着時間を測定することをさらに含む。複数の到着時間差(TDOA)測定値は、複数の到着時間から決定される。次いで、電力-時間ハイブリッドガウス最大尤度推定部、および複数のセルに対する測位支援データを使用して、受信信号電力測定値と複数のTDOA測定値との結合条件付き確率を評価することによって、モバイルデバイスの位置の最大尤度推定を生成する。受信信号電力測定値は、第1のガウス確率変数によって表され、複数のTDOA測定値は、第2のガウス確率変数によって表される。
【0026】
本開示はまた、プロセッサと、プロセッサと通信するメモリとを含むモバイルデバイスに関する。メモリは、プログラム命令を記憶し、プログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、第1の複数のセルから受信された信号の受信信号電力を測定させ、メモリ内に、対応する受信信号電力測定値を記憶させる。命令はさらに、プロセッサに、第1の複数のセルから受信された第1の複数の信号の第1の複数の到着時間を測定させ、第1の複数の到着時間からの第1の複数の到着時間差(TDOA)測定値を決定させる。プロセッサはさらに、電力-時間ハイブリッドガウス最大尤度推定部、および第1の複数のセルに対する第1の測位支援データを使用して、受信信号電力測定値と第1の複数のTDOA測定値との結合条件付き確率を評価することによって、モバイルデバイスの位置の最大尤度推定を生成するように構成される。受信信号電力測定値は、第1のガウス確率変数によって表され、第1の複数のTDOA測定値は、第2のガウス確率変数によって表される。
【0027】
プログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、第2の複数のセルから受信された第2の複数の信号の第2の複数の到着時間を測定させ、第2の複数の到着時間から第2の複数の到着時間差(TDOA)測定値を決定させる、追加命令を含んでもよい。プロセッサは、命令によって、第2の複数のセルに対する第2の測位支援データ、および第2の複数のTDOA測定値を使用して、モバイルデバイスの位置の更新された推定を生成するようにさらに構成されてもよい。
【0028】
プロセッサは、命令によって、第1の複数のセルおよび第2の複数のセルに対するセルパラメータを、メモリ内に確立されたmicro-BSA内に記憶し、セルパラメータから第1の測位支援データおよび第2の測位支援データを導出するようにさらに構成されてもよい。
【0029】
さらに、モバイルベースの測位システムと、サーバからダウンロードされ、micro-BSAとしてモバイルデバイス(または、ユーザ機器、UE)にオンボードで記憶された基地局アルマナック(BSA)情報のリポジトリによって提供される支援データを使用する方法とが、本明細書において開示される。開示されるシステムおよび方法は、例えば、ネットワーク効率、測位の確度、コスト、およびデバイスバッテリ寿命の改善を提供することによって、ダウンリンクセルラ測位に関する最新技術に対して改善する。これらの改善は、開示されるUEベースの測位方法から生じるUEのロケーションアウェアネスを活用することによって少なくとも部分的に達成される。
【0030】
本明細書で論じられているように、UE上に記憶されるmicro-BSAは、改善された支援データ生成のために使用され、改善された支援データ生成は、デバイス上で行われる測定および位置推定に基づいて改良されてもよい。このより高品質な支援データにより、最新技術のTDOA技法を使用して生成された推定に対して相対的に、より正確な位置推定がUEによって生成されるようになる。さらに、支援データのオンボード生成により、UEは、ローミングして、ネットワークとのインタラクションの必要なしに、高確度の更新された位置推定を生成することができるようになる。したがって、これにより、ネットワーク輻輳が緩和され、デバイスのバッテリ寿命が改善される。
【0031】
1つの態様では、本開示は、モバイルデバイスの位置を推定するためにモバイルデバイスにおいて実行される方法に関する。本方法は、ネットワークサーバからアクセス可能な基地局アルマナック(BSA)からの第1の複数のセルに対する、観測到着時間差(OTDOA)支援データを、ネットワークサーバから受信することを含む。OTDOA支援データは、第1のmicro-BSAとしてモバイルデバイスのメモリ内に記憶される。モバイルデバイスに対する初期位置推定は、第1の複数のセルの初期サブセットに関連付けられた到着時間差(TDOA)測定値と、第1の複数のセルの初期サブセットに対応する初期OTDOA支援データとに基づいて決定される。初期OTDOA支援データは、初期シード推定に基づいてmicro-BSAによって生成される。モバイルデバイスに対する改善された位置推定は、第1の複数のセルの追加サブセットに関連付けられたTDOA測定値と、第1の複数のセルの追加サブセットに対応する改善されたOTDOA支援データとに基づいて決定される。改善されたOTDOA支援データは、初期位置推定に基づいてmicro-BSAによって生成される。
【0032】
方法はさらに、BSAから第2の複数のセルに対する追加のOTDOA支援データを、第2のmicro-BSAとして、モバイルデバイスのメモリ内に記憶することを含んでもよい。第2の複数のセルは、第1の複数のセル内に含まれない少なくとも1つのセルを含む。
【0033】
本開示の別の態様によると、改善された位置推定を決定することはさらに、第1の複数のセル内のセルの第1の構成に関連付けられたTDOA測定値と、セルの第1の構成に対応する第1の改善されたOTDOA支援データとに基づいて、モバイルデバイスに対する第1の位置推定を計算することを含み、セルの第1の構成は、第1の精度の幾何学的希釈(GDOP)を特徴とする。モバイルデバイスに対する第2の位置推定は、第1の複数のセル内のセルの第2の構成に関連付けられたTDOA測定値と、セルの第2の構成に対応する第2の改善されたOTDOA支援データとに基づいて決定されるものであり、セルの第2の構成は、第2のGDOPを特徴とする。モバイルデバイスに対する第3の位置推定はさらに、TDOA測定値とは関係しない交互測位方法を使用して計算されてもよい。次いでさらに、改善された位置推定を決定することは、第1の位置推定、第2の位置推定、および第3の位置推定の中から選択することを含んでもよい。
【0034】
本開示のさらなる態様では、モバイルデバイスは、初期位置推定を決定した後に低電力スリープモードに移行する。このケースでは、モバイルデバイスの位置を推定するための方法はさらに、モバイルデバイスが低電力スリープモードから一時的に移行すると、第1の複数のセルの初期サブセットに関連付けられた追加の到着時間差(TDOA)測定値と、第1の複数のセルの初期サブセットに対応する追加のOTDOA支援データとに基づいて、モバイルデバイスに対する更新された位置推定を決定することを含み、追加のOTDOA支援データは、初期位置推定に基づいて、micro-BSAによって生成される。モバイルデバイスは、更新された位置推定を決定した後に低電力スリープモードに移行するように構成される。
【0035】
本開示はさらに、プロセッサと、プロセッサと通信するレシーバと、モバイルデバイスの位置を推定するためにプロセッサによって実行可能なプログラムコードを含むメモリとを含むモバイルデバイスに関する。プログラムコードは、ネットワークサーバから、第1の複数のセルに対する観測到着時間差(OTDOA)支援データを受信するためのコードを含み、OTDOA支援データは、ネットワークサーバからアクセス可能な基地局アルマナック(BSA)に含まれる。プログラムコードはさらに、OTDOA支援データを第1のmicro-BSAとしてメモリ内に記憶するためのコードを含む。プログラムコードはさらに、第1の複数のセルの初期サブセットに関連付けられた到着時間差(TDOA)測定値と、第1の複数のセルの初期サブセットに対応する初期OTDOA支援データとに基づいて、モバイルデバイスに対する初期位置推定を決定するためのコードを含む。初期OTDOA支援データは、初期シード推定に基づいて、micro-BSAによって生成される。プログラムコードはさらに、第1の複数のセルの追加サブセットに関連付けられたTDOA測定値と、第1の複数のセルの追加サブセットに対応する改善されたOTDOA支援データとに基づいて、モバイルデバイスに対する改善された位置推定を決定するためのコードを含む。改善されたOTDOA支援データは、初期位置推定に基づいて、micro-BSAによって生成される。
【0036】
本開示はさらに、モバイルデバイスの位置を推定するために、モバイルデバイスにおいて実行される方法に関する。方法は、第1の複数のセルに対する第1の観測到着時間差(OTDOA)支援データ、およびネットワークサーバからアクセス可能な基地局アルマナック(BSA)からの第2の複数のセルに対する第2のOTDOA支援データを、ネットワークサーバから受信することを含み、第1の複数のセルは、第1の地理学的エリアに対応し、第2の複数のセルは、第1の地理学的エリアとは異なる第2の地理学的エリアに対応する。第2の複数のセルは、第1の複数のセル内には含まれない少なくとも1つのセルを含む。方法はさらに、第1のOTDOA支援データを、第1のmicro-BSAとして、および、第2のOTDOA支援データを、第2のmicro-BSAとして、モバイルデバイスのメモリ内に記憶することを含む。次いで、モバイルデバイスに対する第1の位置推定は、ネットワークサーバから追加のOTDOA支援データを受信せずに、第1の複数のセルのサブセットに関連付けられた第1の到着時間差(TDOA)測定値と、第1の複数のセルのサブセットに対応する第1のOTDOA支援データとに基づいて決定される。第1のOTDOA支援は、前の位置推定に基づいて、第1のmicro-BSAによって生成される。方法はさらに、ネットワークサーバから追加のOTDOA支援データを受信せずに、第2の複数のセルのサブセットに関連付けられた第2の到着時間差(TDOA)測定値と、第2の複数のセルのサブセットに対応する第2のOTDOA支援データとに基づいて、モバイルデバイスに対する第2の位置推定を決定することを含む。第2のOTDOA支援は、第1の位置推定に基づいて、第2のmicro-BSAによって生成される。
【0037】
さらに別の態様では、本開示は、モバイルデバイスの位置を推定するためのモバイルデバイスにおいて実行される方法に関する。方法は、ネットワークサーバからアクセス可能な基地局アルマナック(BSA)からの第1の複数のセルに対する、観測到着時間差(OTDOA)支援データをネットワークサーバから受信することを含む。OTDOA支援データは、モバイルデバイスのメモリ内に第1のmicro-BSAとして記憶される。方法はさらに、第1の複数のセルのサブセットに関連付けられた到着時間差(TDOA)測定値と、第1の複数のセルのサブセットに対応する初期OTDOA支援データとに基づいて、モバイルデバイスに対する第1の位置推定を決定することを含む。人工知能(AI)管理モジュールは、モバイルデバイスが移動すると予期されるルートを予測する。BSAからの第2の複数のセルに対する、観測到着時間差(OTDOA)支援データは、ネットワークサーバから受信される。第2の複数のセルは、モバイルデバイスが移動すると予期されるルートに近接するように、AI管理モジュールによって決定されるものであり、第2の複数のセルは、第1の複数のセル内には含まれない少なくとも1つのセルを含む。次いで、第2の位置推定が、第2の複数のセルのサブセットに対応する第2のOTDOA支援データに少なくとも部分的に基づいて決定される。
【0038】
本開示はさらに、モバイルデバイスの位置を推定するために、モバイルデバイスにおいて実行される方法に関する。方法は、第1の複数のセルの少なくとも1つのサブセットに関連付けられた到着時間差(TDOA)測定値と、第1の複数のセルのサブセットに対応する観測到着時間差(OTDOA)支援データとに基づいて、モバイルデバイスに対する第1の位置推定を決定することを含む。TDOA測定値は、第1のTDOA測定値ベクトルに関連付けられ、OTDOA支援データは、モバイルデバイスのメモリ内のmicro-BSA内に記憶される。方法はさらに、第1の位置推定の品質を、第1の位置推定を使用して第1のTDOA残差ベクトルを少なくとも計算することによって、決定することと、第1のTDOA残差ベクトルに基づいて、第1の複数のセルのサブセット内に含まれる不良セルを検出することとを含む。次いで、第2のTDOA測定値ベクトルが、第1のTDOA測定値ベクトルからの不良セルに関連付けられたTDOA測定値を除去することによって構築され、モバイルデバイスに対する第2の位置推定の品質が、第2のTDOA測定値ベクトルに基づいて決定される。
【0039】
追加の態様では、本開示は、モバイルデバイスの位置を推定するために、モバイルデバイスにおいて実行される方法に関する。方法は、モバイルデバイスの近辺の複数のセルから受信した信号の到着時間(TOA)推定を決定することと、TOA推定に関連付けられた品質メトリックの値を決定することとを含む。複数のセルのうちの1つが、TOA推定に関連付けられた品質メトリックの値に基づいて、参照セルとして選択される。方法はさらに、参照セルと複数のセル内に含まれる近隣セルとの間の到着時間差(TDOA)測定値を決定することを含む。モバイルデバイスの位置の初期推定は、複数のTDOA測定値と、モバイルデバイスのメモリ内のmicro-BSA内に記憶された関連する観測到着時間差(OTDOA)とを使用して決定される。複数のTDOA測定値は、TDOA測定値の他のTDOA測定値に関連付けられたTOA推定に対応する品質メトリックの値に対して相対的な品質メトリックの値を有するTOA推定のサブセットに関連付けられる。方法はさらに、停止基準が満たされるまで、TDOA測定値の追加のTDOA測定値と、関連するOTDOA支援データを使用して、モバイルデバイスの位置の初期推定を更新することによって、連続した追加の位置推定を決定することを含む。連続した追加の位置推定を決定することは、(i)位置推定コスト関数における輪郭線を評価すること、および(ii)到着時間差(TDOA)残差ベクトルを計算することのうちの少なくとも一方によって、連続した追加の位置推定の品質を判断することを含んでもよい。
【0040】
本開示はさらに、ネットワークサーバからアクセス可能な基地局アルマナック(BSA)からの第1の複数のセルに対する、観測到着時間差(OTDOA)支援データを、ネットワークサーバによってモバイルデバイスに送ることを含む方法に関する。OTDOA支援データは、モバイルデバイスのメモリ内に第1のmicro-BSAとして記憶される。モバイルデバイスは、第1の複数のセルのサブセットに関連付けられた到着時間差(TDOA)測定値と、第1の複数のセルのサブセットに対応する初期OTDOA支援データとに基づいて、モバイルデバイスに対する第1の位置推定を決定するように構成される。モバイルデバイスが移動すると予期されるルートは、人工知能(AI)管理モジュールによって予測される。次いで、ネットワークサーバは、BSAからの第2の複数のセルに対する、観測到着時間差(OTDOA)支援データをモバイルデバイスに送る。第2の複数のセルは、モバイルデバイスが移動すると予期されるルートに近接するように、AI管理モジュールによって決定されるものであり、第2の複数のセルは、第1の複数のセル内には含まれない少なくとも1つのセルを含む。モバイルデバイスは、第2の複数のセルのサブセットに対応する第2のOTDOA支援データに少なくとも部分的に基づいて、第2の位置推定を決定するように構成される。
【0041】
本開示はさらに、モバイルデバイスの近辺の複数のセルから受信された信号の到着時間(TOA)推定を決定することを含む方法に関する。方法は、参照セルと複数のセル内に含まれる近隣セルとの間の到着時間差(TDOA)測定値を決定することと、複数のTDOA測定値と、関連する観測到着時間差(OTDOA)とを使用して、モバイルデバイスの推定される位置を決定することとを含む。方法はさらに、複数のTDOA測定値から形成されたコスト関数の輪郭線を評価することによって、推定される位置の不確実性を決定することを含むものであり、不確実性は、輪郭線のうちの1つに関連付けられたエリアに対応する。
【0042】
本発明は、添付の図面と併せて行われる以下の詳細な説明に関連して、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】LTE規格において規定された参照信号時間差(RSTD)測定に基づいて、観測到着時間差(OTDOA)を使用して位置を決定するための装置の機能ブロック図である。
【
図2】LTE規格において使用されるタイプのシンボル構造を一般化した図である。
【
図3】従来のUE支援測位システムの簡略化された表現を提供する図である。
【
図4】測位支援データを導出するために、シード推定の形態の初期位置推定を使用する図である。
【
図5】一実施形態による、測位システムの機能図である。
【
図6】一実施形態による、UEによって実行される動作のシーケンスのフローチャートである。
【
図7】
図5のシステムに含まれるUE上に記憶された複数のmicro-BSAに関連付けられた地理学的フットプリントを示す図である。
【
図8】
図5のUEに含まれる位置推定部によって作り出された位置推定の品質を改善するための不良セル検出部によって実施される不良セル検出プロセスを示す図である。
【
図9】本開示による、GDOPを低下させる際に役立つサーキュラセクタ支援データ生成の方法を示す図である。
【
図10】幾何学的多様性を欠くセルの配置を示すニューヨーク市の一部分の地図のスクリーンショットキャプチャを示す図である。
【
図11】改善された幾何学的多様性を有するように、サーキュラセクタ支援データ生成方法に従って選択されたセルの配置を示す地図のスクリーンショットキャプチャの図である。
【
図12】一実施形態に従って構成されたUEの特定の実装形態のブロック図表現を含む図である。
【
図13】参照セルと近隣セルとから構成されたセルペアを形成するための例示的および潜在的な戦略を示す図である。
【
図14】参照セルと近隣セルとから構成されたセルペアを形成するための例示的および潜在的な戦略を示す図である。
【
図15】参照セルと近隣セルとから構成されたセルペアを形成するための例示的および潜在的な戦略を示す図である。
【
図16】複数の観測値を評価することによって形成された、推定される信頼楕円を示す図である。
【
図17】信頼領域を確立するために生成された例示的な誤差面の輪郭線を示す図である。
【
図18】一般に使用される減衰モデルに関連付けられた減衰プロファイルを示す図である。
【
図19A】一実施形態による、電力-時間ハイブリッド測位方法を使用して行われたシミュレーションの結果を示す図である。
【
図19B】一実施形態による、電力-時間ハイブリッド測位方法を使用して行われたシミュレーションの結果を示す図である。
【
図19C】一実施形態による、電力-時間ハイブリッド測位方法を使用して行われたシミュレーションの結果を示す図である。
【
図20】本開示による、電力-時間ハイブリッド測位システムの第1の実施形態のブロックダイアグラム図を提供する図である。
【
図21】本開示による、電力-時間ハイブリッド測位システムの第2の実施形態のブロックダイアグラム図を提供する図である。
【
図22】本開示による、電力-時間ハイブリッド測位システムの第3の実施形態のブロックダイアグラム図を提供する図である。
【
図23】本開示による、電力-時間ハイブリッド測位システムの第4の実施形態のブロックダイアグラム図を提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図5に注意を向けると、
図5は、一実施形態による測位システム500の機能図を示している。下記で論じるように、システム500は、ネットワーク514内のBSAサーバ511からアクセス可能な基地局アルマナック(BSA)512の比較的小さなサブセットに基づいて、測位支援データ526を生成するように構成されたUE510を含む。BSA512は、BSAサーバ511と通信するサーバ上にあってもよく、またはBSAサーバ511上に含まれてもよい。一実施形態では、BSA512からの情報は、ネットワーク514内のmicro-BSAクラウド支援サーバ516によってUE510に提供される。
【0045】
UE510の機能要素は、micro-BSAクラウド支援サーバ516からUE510によって受信されたBSA512のサブセットに対応する情報を記憶するように構成された1つ以上のmicro-BSA520を含む。micro-BSA520は、UEロケーションの大まかな推定を提供するために、UE510サービングセルECGIの情報を用いて計算されてもよい。測位支援データ計算部524は、支援データ526を生成する際の使用のためのmicro-BSA520から、セルパラメータを受信するように構成される。測位支援データ計算部524は、支援データ526を計算するためのUEロケーションの大まかな推定を導出するためにサービングセルのECGIを使用してもよい。示されているように、支援データ526は、電力およびタイミング測定値モジュール530ならびに位置推定部540に提供される。下記で論じられるように、計算部524はさらに、micro-BSA520の内容をインテリジェントに更新する際に役立つセル選択フィードバック536を提供する際に、測定フィードバック532および位置推定フィードバック534に応答するように構成される。位置推定部540は、支援データ526と、電力およびタイミング測定値モジュール530から受信された測定値542とに基づいて、位置推定および位置推定フィードバック534を提供するように構成される。電力およびタイミング測定値モジュール530は、支援データ526と、位置推定部540から受信されたフィードバック546とに基づいて、測定値542および測定フィードバック532を生成する。
【0046】
一実施形態において、位置推定部540は、支援データ526と、支援データ526に関連付けられた複数のセルの基地局(例えば、eNodeB)から受信された測位参照信号(PRS)の到着時間(TOA)のUE510による測定値とに基づいて、OTDOA計算を実行する。位置推定部540は、参照信号時間差(RSTD)、または到着時間差(TDOA)測定値を形成するために、そのような複数のセルに対応する測定されたTOAから参照セルのTOA(知られている技法を使用してUE510によって選択されてもよい)を減算する。これらのTDOA測定値を支援データ526と一緒に使用して、UE510の位置を双曲線のセットに束縛することができる。UE510によってなされたTOA測定に、完全にノイズおよび干渉がなかった場合、これらの双曲線は、UE510の位置に対応する単一の点で交差することになる。しかしながら、実際には、そのようなノイズおよび干渉は、UE510の位置が推定され得る確度を制限する。本明細書で論じられるように、本開示に従ったmicro-BSA520の使用は、UE510の位置の推定に関する確度および効率を改善する。
【0047】
規模の点では、例示的な実施形態において、BSA512は、数十万のセルに対応する情報を含むことができ、micro-BSA520は、数百のセルについての情報を含むことができ、支援データ526は、数十のセルに関係することができる。
【0048】
このBSA512は、典型的には、モバイルネットワークオペレータ(MNO)によって管理され、ネットワークレイアウトを規定するセルパラメータを含むデータベースを含む。BSA512のデータベースにおける各セルは、典型的には、一意のセル識別子(ECGI)、セル送信点の緯度および経度、物理的セルインデックス(PCI)、アンテナアパーチャおよび配向の詳細、送信電力、ならびにさまざまな他のパラメータを特徴とする。クラウド支援サーバ516は、BSA512とインタラクションして、UE510に、BSA512の内容の小さなサブセットを提供する。上記のように、支援データ526がそれから導出される、もたらされるmicro-BSA520は、UE510のサービングセルの近傍の数百のセルからなることができる。さらに1000のセルのmicro-BSA520に関連付けられたストレージおよびダウンロード要件は中程度である。例えば、大まかに120のビットが所定のセルに対するセルパラメータを表す必要があるとすると、ほんのおよそ15kBが1000-セルmicro-BSA520に対して必要となる(すなわち、1000セル×120ビット/セル×1kB/8000ビット=15kB)。
【0049】
この15kB、1000-セルmicro-BSAを含む情報は、UEがLTE接続モードにある間に、無線リンクを介して数秒でUE510に転送されることが可能である。より短いダウンロード時間およびより小さいストレージのために要求されるのは、より小さなmicro-BSAである場合があり、より巨大なカバレッジのため、およびクラウド支援サーバ516との、または別様にネットワーク514とのより少ない全体的なインタラクションのために要求されるのは、より大きなmicro-BSAである場合がある。参考として、典型的なセル密度1セル/km2の場合、1000-セルmicro-BSA520は、面積1000km2に対してカバレッジを提供する。単一のmicro-BSA520を用いて、多くの位置決めを得ることができる。したがって、micro-BSA520に対する情報がダウンロードされると、UE510は、ネットワーク514の要素との最小限のさらなるインタラクションが必要となる。
【0050】
したがって、UE510の動作中に、位置推定部540は、たとえUE510が、ただ単に、測定値542と、micro-BSA520内の情報から導出された支援データ526とに基づいて動作中であっても、多くの位置推定を生成することができるようになる。これにより、有利には、UE510のバッテリ寿命が改善され、ネットワーク輻輳が低減される。これは、アルマナック情報がBSA512によって提供されることもなく、支援情報も、位置推定部によって生成された各位置推定に関連したネットワークによって、別様にUE510に提供されることもないからである。その上、UE510は、いくつかの実施形態では、位置推定部540によってローカルに生成された位置推定を平均化、または別様に平滑化するためにフィルタリングおよび他の技法を利用することができるので、そのようなアルマナック情報、および/または支援データが各位置測定を容易にするためにUE510に提供されるケースに対して相対的に、測位の確度は強化される。現在の最新技術であるUE支援方法は、支援データがロケーションサーバからUEに提供され、次いでUEが測定値を報告し、ロケーションサーバが単一のセットの測定値を用いてロケーションを推定する、「単一ショット」推定とみなされる。この手法では、連続的な測定報告が、UEバッテリ消耗とネットワーク輻輳の視点との両方から実現可能でないため、推定アルゴリズムはフィルタリングから実際に利益を得られない。測定値542は、推定処理を強化するために位置推定部540に、より効率的に供給される。
【0051】
UE510は、自身の現在のロケーションを認識しているので、新たなBSA情報が必要なときを感知するように構成されてもよい。例えば、位置推定部540が高品質の位置推定を導出しているとき、micro-BSAクラウド支援サーバ516からの新たなBSA情報は必要ない。位置推定部540は、尤度もしくは帰納的関数面の輪郭線を調査することによって、またはTDOA残差ベクトルを計算することによって、推定値が高品質であるかどうか決定することができる。TDOA残差ベクトルは、eによって表され、
【数1】
によって与えられる。但し、rは、追加の位置推定のうちの1つに対するTDOA測定値ベクトルであり、rの各要素は、支援データ526に含まれるセルのセットのうちの1つのセルに関連付けられたTDOA測定値を含み、
【数2】
は、位置推定
【数3】
に対するTDOAベクトルであり、
【数4】
によって与えられる。但し、x
mはm番目のセルのロケーションであり、x
1は、支援データ526に含まれ、UE510によって選択されるTDOA参照セルのロケーションである。eの要素が比較的小さい場合、位置推定部540は、位置推定が高品質であるという、より大きな信頼性を有する。
【0052】
一実施形態では、位置推定部540は、TDOA双曲線ロケーション信号モデルを使用して位置推定を作り出す。
【0053】
TDOA双曲線ロケーション信号モデル
UE510が、ダウンリンク到着時間差(TDOA)双曲線ロケーション推定を実施する実施形態において、UE510は、周囲セルに関する到着時間(TOA)推定を行う。以下では、用語「セル」は、「基地局」または「送信点」と交換可能なように使用される。加えて、用語「RSTD」(すなわち、3GPP規格において定義されている「参照信号時間差」)は、TDOAと交換可能なように使用される。周囲セルは、時間同期されており、τ秒に近いある時間に、測位参照信号(「パイロット」)を送信したと想定される。より具体的には、k番目のセルは、時間
τ
k=τ+α
k
に送信する。但し、α
kは、比較的小さな送信同期期間である。k番目のセルのTOAは、
【数5】
である。但し、cは真空における光の速度であり、x=[x,y]
Tは、未知のUEロケーションのデカルト座標であり、x
k=[x
k,y
k]
Tは、k番目のセルの既知のデカルト座標であり、
【数6】
は見通し外(NLOS)バイアスである。上記は、xおよびy成分を有する2次元を規定し、3次元への公式化拡張は、3番目のz成分項を単に加えることによって行われることに留意されたい。
【0054】
UE510が、UE510に最も近いセルであってもよい、または最も近いセルでなくてもよいあるサービングセルに同期されると仮定する。一般性を損なうことなく、このサービングセルはk=0でインデックス付けされ、他のセルのそれぞれは、k=1,2,...,Kでインデックス付けされる。同期するために、UE510は、サービングセルのTOAを
【数7】
である、と推定する。但し、γ’
0は、同期誤差項である。次いで、UE510は、この時間推定を使用して、相対的ローカル時間を形成する。サービングセル同期のために調整すると、k番目のセルの相対的TOAは、
【数8】
となる。
項
【数9】
は、k番目のセルとサービングセルとの間のTDOAである。したがって、
【数10】
は、セル送信同期誤差(α
k-α
0)、NLOSバイアス(β
k-β
0)、およびサービングセル同期誤差γ’
0によって破損したTDOA測定値である。サービングセルとの同期プロセスにより、相対的TOAから送信時間τが除去されることに注目されたい。
【0055】
次に、UE510は、相対的TOAの推定を行う。
【数11】
k=0,1,...,Kであり、但し、γ
kは推定誤差に起因する。
【0056】
ここで、UExの未知のロケーションは、相対的TOA推定
【数12】
および既知のセルロケーション
【数13】
から推定することができる。しかしながら、よりロバストな手法がTDOA推定を最初に形成することがあってもよい。
【数14】
m=1,2,...,Mである。相対的TOA推定の減算により、同期誤差項γ’
0が除去される。
【数15】
同期誤差項の除去は、UE510がネットワークに良好に同期しない事象では、有益であり得る。これが、3GPP仕様によって利用される方法である。
【0057】
ベクトル形式でTDOA測定値を表すのは、便利である。
【数16】
但し、rのm番目の要素はr
mであり、h(x)のm番目の要素は
【数17】
であり、ノイズベクトルnのm番目の要素は
n
m=η
i(m)-η
j(m)
であり
η
k=α
k+β
k+γ
k
は、個々のTOAノイズ成分である。
【0058】
i(m)番目のセルは、m番目の測定のRSTD近隣セルとみなされ、j(m)番目のセルは、m番目の測定のRSTD参照セルとみなされる。3GPP仕様では、共通のRSTD参照セルが使用され、あるkref∈{0,1,...,K}に対して、j(m)=krefとなる。残りのセルは、RSTD近隣セル候補である。参照セルに対してRSTD近隣セル候補をペアにするための他の戦略があり得る。例えば、1つのそのような潜在的なペアリング戦略は、N=K+1の場合に、すべての「Nが2つ選ぶ」、セルペアとして特徴付けられる。例えば、F.グスタフソン(F.Gustafsson)およびF.グンナーソン(F.Gunnarsson)、「Positioning using time-difference of arrival measurements」、2003 IEEE International Conference on Acoustics,Speech,and Signal Processing,2003.Proceedings.(ICASSP‘03),Hong Kong,China,2003)を参照されたい。別の実現可能なことは、m=1,2,...,M=Kに対して、i(m)=j(m)+1およびj(m)=m-1であるような近隣インデックス手法である。これらの列挙された戦略は、他の実現可能なことを排除せず、記述された戦略は、それらの利益およびコストを有する。例えば、低誤差参照セルが選択された場合、単一の参照セルは、有利であるが、高誤差参照セルが選択された場合、最近隣手法に性能が及ばない可能性がある。網羅的な「Nが2つ選ぶ」は、より高い計算の複雑さを代償として、ロケーション推定アルゴリズムに、より富んだ情報を提供することができる。
【0059】
次に
図13~15に注意を向けると、
図13~15は、参照および近隣セルから構成されたセルペアを形成するための例示的で、潜在的な戦略を示している。具体的には、
図13は、単一セル参照セルペアリング戦略を示しており、
図14は、近隣インデックスセルペアリング戦略を示しており、
図15は、Nが2つ選ぶセルペアリング戦略を示している。
【0060】
TDOA位置推定部
TDOA位置推定部540は、rにおける測定値を所与としてxに対する良好な推定を決定するように機能する。位置推定部540は、この決定を行う際に、例えば、最小二乗、重み付け最小二乗、およびガウス最大尤度を含むさまざまな異なる方法を利用することができる。下記の方法は、他の実現可能なものの使用を排除しない。
【0061】
位置推定部540は、UE510のロケーションが
【数18】
にあると推定したと仮定する。このロケーションにおいて、推定されるTDOAはr
mであるが、i(m)番目のセルとj(m)番目のセルとの間のグラウンドトゥルースTDOAは、
【数19】
である。それらの差
【数20】
は、残差と呼ばれる。統計学的誤差n
mがUE510のレシーバで知ることができない一方で、この用語は、計算上実現することができるので有用である。二乗された残差成分の和は、
【数21】
である。
位置推定部540は、
【数22】
を最小化する
【数23】
を見出すように構成される限りにおいて、最小二乗(LS)推定部として特徴付けられてもよい。
【数24】
【0062】
rにおけるいくつかの測定値は他の測定値よりも高品質であると仮定する。したがって、より高品質な推定により多い重みを付け、より低品質な推定により少ない重みを付けるのは、位置推定部540にとって有益であり得る。重み付け最小二乗(WLS)推定部は、これ
【数25】
を行う。但し、
D
WLS=diag(w
1,w
2,...,w
M)
は、対角重み付け行列である。重みがすべて同じとき、WLSはLSと同等である。
【0063】
ここで、測定値ベクトルrに関する統計学的情報が入手可能であると仮定する。UE510のロケーションがxにあるとき、測定値ベクトルrの確率をp(r|x)とする。これは、尤度関数として知られており、推定
【数26】
は、最大尤度(ML)推定として知られている。
【0064】
ML推定部の特殊なケースは、尤度関数が、
【数27】
として表される、ガウス最大尤度(GML)推定部である。但し、
R=E((n-E(n))(n-E(n))
T)
は、TDOAノイズのM×M共分散行列であり、E()は、期待演算子であり、|R|は、Rの行列式を表し、上付き-1は、逆行列を表す。GML推定部は、
【数28】
に単純化する。
これは、GML推定部が、WLSの一タイプであることを示しており、但し、GMLは、重み付け行列がノイズ共分散逆行列であるWLSである。
【0065】
一般化された重み付け最小二乗推定部は、
【数29】
として表され、但し、Wは重み付け行列である。上記で特定された3つの推定部について、
【数30】
であり、Iは単位行列である。
【0066】
上述のGML推定部としての位置推定部540の実装形態は、TOAがガウス分布から得られると想定する。このフレームワークの知られている一般化は、TOAが、ガウス混合モデル(GMM)から導かれると想定することである。例えば、F.ペレズ-クルズ(F.Perez-Cruz)、C.リン(C.Lin)およびH.フアン(H.Huang)、「BLADE: A Universal,Blind Learning Algorithm for ToA Localization in NLOS Channels」、2016 IEEE Globecom Workshops(GC Wkshps),Washington,DC,USA,2016を参照されたい。GMMフレームワークは、セルラ無線周波数(RF)環境のマルチパスの性質をより良好に説明する。さらに、位置推定部540によって実装されるML推定部は、UE510のロケーションについての前の統計学的情報を用いて、一般化されて最大帰納的(MAP)推定部になることができる。
【0067】
上記で導出された重み付け最小二乗推定部は、二次コスト関数
Q(x)=(r-h(x))TW(r-h(x))
を最小化する。
最小化は、矩形または六角形グリッドの数値サンプリングによって、またはMetropolis Hastingsアルゴリズムが一例であるマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)のような統計学的サンプリング方法によって行われることが可能である。代替的に、最小化は、例えば、トリエリ(Torrieri),D.J.、「Statistical Theory of Passive Location Systems」、IEEE Trans.on Aerospace and Electronic Systems AES-20,2(Mar.1984)を参照すると、テイラーシリーズ展開を通じて、解析的に解決され得る。ガウス最大尤度のケースでは、このコスト関数は、尤度関数の対数であり、対数-尤度として知られる。同様に、最大帰納的(MAP)推定については、同様の公式化が、いわゆる先験的確率を組み込むことによって導出される。
【0068】
Micro-BSA情報からの支援データのアダプティブ生成
BSAコヒーレンス時間は、BSA情報が測位に対して比較的固定して有用なままである時間持続期間であると定義することができる。BSAコヒーレンス時間は、位置測定更新率に対して相対的に大きい。例えば、位置測定値が1時間に1回更新され得るのに対して、BSAコヒーレンス時間は、日にち、または月のオーダーであり得る。これにより、micro-BSA520内の同じBSA情報が、複数の位置測定事象にわたって使用されることができるようになる。
【0069】
ジオフェンシングを使用するケースを考察する。貴重なアセットの所有者は、それをジオフェンシング追跡器デバイス(UE510の簡略化された実装形態であり得る)に取り付ける。所有者は、アセットが特定の領域を越えて移動した場合に通知されることを希望する。数日または数ヶ月間、アセットは特定の領域にとどまる場合がある。この時間の持続期間にわたって、micro-BSA520の内容もまた、実際には固定したままとなり、位置推定部540は、高品質な位置推定を生成する。これらの条件の下、追跡器デバイスとしてのUE510の実装形態は、さらなるBSA情報を必要とすることはなく、したがって、BSAサーバ511と、または、BSA512をホストする他のクラウドサーバとインタラクションする必要もないことになる。
【0070】
注目すべきことには、現在のセルラ測位最新技術において、UEはロケーションアウェアではない。したがって、このネットワーク緩和特徴は実現することができない。現在の最新技術は、支援データがUEにダウンロードされなければならず、測定値が位置更新ごとにロケーションサーバにアップロードされなければならない点で、効率的ではない。これにより、ネットワーク輻輳の問題が引き起こされ、デバイスのバッテリ寿命が損なわれる。対照的に、UE510は、「ロケーションアウェア」であるので、より良好およびより効率的に、ジオフェンシングのようなアプリケーションが使用可能になる。このロケーションアウェアネスにより、さらに、より高速な測位決め、遅延の低減、初期測位時間(TTFF)の改善が可能になる。これらの特徴は、UEが主に低電力なスリープモードにある場合に、バッテリ効率のよいブレッドクラムアプリケーションを可能にする。それは瞬時に起動し、自身の位置推定を更新して、より低い電力状態に戻る。位置更新が高速であればあるほど、解決もより効率的になる。
【0071】
背景技術において述べたように、現在の最新技術において、支援データは、測位のために使用される数十のセルから構成されており、従来のロケーションサーバは、セルの全世界的に一意の識別子を使用してセルの「最良のセット」を導出する。しかしながら、これは、支援データを生成する際に使用されるセルのセットを導出したとき、ロケーションサーバにUEロケーションのごく大まかなシード推定を提供するのみである。
【0072】
次に
図6に注意を向けると、
図6は、現在の最新技術におけるこの欠点に対処するために、UE510内の支援データ526のインテリジェントおよびアダプティブ生成が利用され得る1つの方法を強調する、UE510によって実行される動作600のシーケンスのフローチャートである。さらに、一実施形態では、micro-BSA520は、支援データ526において表されたセルよりも多くのセルに関する情報を含む。micro-BSA520におけるこのより大きなセルの集合は、支援データ526に対して良好なセルのセットを生成する際に、改善された柔軟性をもたらす。
図6を参照すると、初期セットの支援データセルが、シード推定に対してベーシックセルID604を使用して生成される(ステージ608)。次いで、初期位置推定が、ベーシックセルID推定より優れた位置推定を用いて導出される(ステージ612)。この新たな推定を使用して、支援データを再導出し、それによって、改善された支援データを生成する(ステージ616)。これは、micro-BSAクラウド支援サーバ516とのインタラクションを必要とせず、または、そうでない場合にネットワーク514とのインタラクションを必要とせず、ローカルmicro-BSA520を使用して、UE510上で効率的に行われる。次いで、改善された支援データを使用して、改善された位置推定が生成されてもよい(ステージ620)。より優れた支援データを生成するための改善されたシード推定のこの方法600は、もちろん時間にわたって反復され得る。
【0073】
デバイス初期化およびMicro-BSAのポピュレーション
BSA512はネットワークオペレータによって制御され、ネットワーク内のすべてのセル(例えば、最も大きなオペレータに対して~700,000セル)に対してパラメータを有する。micro-BSA520は典型的には、UE510の近辺のセルに対してBSA512内に情報のごく小さいサブセットを含む。例えば、micro-BSA520は、都会のダウンタウンおよび周囲エリアを含む大都市エリアを構成する1,000のセルに対するパラメータを含むことができる。UEベースのOTDOAに対して、micro-BSA520は、OTDOAアルゴリズムを実行するのに必要なパラメータを有する。OTDOAアルゴリズムは、例えば、(i)micro-BSA520から支援データ(AD)を生成することと、(ii)支援データ(AD)を使用してTOA/TDOA測定を行い、TOA/TDOA測定値プラス支援データ(例えば、セルの緯度/経度)を使用してUEのロケーションを推定することとからなる。
【0074】
ADは、micro-BSA520のサブセットである。例えば、ADは、50のセルのパラメータからなり得る。
BSA->micro-BSA->AD
700,000セル->1,000セル->50セル
【0075】
UE510は、1つ以上のmicro-BSA520を有し得る。例えば、UE510は、UE510がよく行く町の辺りの少数の異なるエリアにサービスを提供するために、2つ以上のmicro-BSA520を有し得る。デバイスを初期化するために、UE510は、micro-BSAクラウド支援サーバ516を介してBSAサーバ511と通信する。UE510は、BSAサーバ511にサービングセルのECGIを、および場合によっては、近隣セルのECGIまたはPCIを通知する。例えば、UE510は、micro-BSAクラウド支援サーバ516を介してBSAサーバ511に、サービングセルECGIは「xyz」であること、および、UE510は、200のセルのmicro-BSA520を希望することを通知し得る。セルを構成するパラメータは、大まかに120ビットであり、したがって、200-セルmicro-BSA520は、200*120/8/1000=3キロバイトとなる。BSA情報のこれらの3kBは、BSAサーバ511によって、BSA512から取り出され、次いで、ダウンリンクチャネルにおいて、micro-BSAクラウド支援サーバ516によって、UE510に伝達されて記憶される。
【0076】
micro-BSA520が、UE510上でインスタンス化されて、UE510は、それらの200のセルの「小型地図」に効果的にアクセスする。UE510は、自身のロケーションを認識しているので、自身がこれらの200のセルのサービスエリア内に残っているかどうかを知っている。UE510が、これらのセルの外側をローミングする場合、UE510は新たなmicro-BSA520を要求することを欲す場合がある。UE510が、静止しており、現在のmicro-BSA520の予期された所定の内容と同じ数に及ぶセルを検出していない場合、セルのトポロジーが変更されており、micro-BSA520をリフレッシュさせるのによい時機であり得ることが当てはまる場合がある。
【0077】
サービングセルのECGIは、micro-BSAセルのセットがそこから導出されるUE510のシード推定を提供することができる。そのシード推定は、単に、サービングセルの送信点である可能性がある。さらなる近隣情報を用いて、サーバは、サービングセルおよび周囲セルの重心のように、より優れたシード推定を導出することができる。
【0078】
ADセルの良好なセットを決定するために、シード推定は、BSAサーバ511からmicro-BSA520を入手するために使用されるシード推定と類似したもの、すなわち、セルIDに似たものとすることができる。または、UE510はローミングしていると仮定する。サービングセルは、ハンドオーバーによって1つのECGIから別のECGIに変わってもよい。このとき、UE510は、何らかの新たなサービングセルと同期するので、UE510での参照タイミングは、変化する可能性が高くなる。この時間変化は、モニタ中の現在のセルのセットに対して現在のタイミング測定値のセットが調整されるように、ロギングされることが可能である。UE510上の測位支援データ計算部524は、micro-BSA520から新たなADセルのセットを取得することを欲する可能性が高くなる。新たなADのためのシード推定は、最新のUEロケーション推定(例えばOTDOAを使用して)とすることができる。新たなサービングセルがmicro-BSA520内にある場合、さらなるアクションは不要である。そうでない場合、UE510は、BSA512をホストする、またはBSA512にアクセスするBSAサーバ511から新たなmicro-BSA520を取り出す必要があるようになる。UE510が、ADのために利用されているmicro-BSA520のサービングエリアの縁部にある場合、測位支援データ計算部524、および/または位置推定部540は、UE510にBSAサーバ511から、新たなmicro-BSA520に対応するBSA情報を取り出させることができる。
【0079】
UE510のmicro-BSA520にそれの情報が記憶されるセルを、BSAサーバ511に常時監視させることが望ましい場合がある。そのようにして、BSAサーバ511は、UE510に、現在のmicro-BSAの複製ではない新たなセルに対する情報を与えることができる。新たなmicro-BSAをポピュレートする場合には、前のmicro-BSAからの差分のみを送るのが有利なことがある。
【0080】
再び
図5および
図6を参照すると、改善された支援データ616は、612における改善されたシード推定によって実現可能になる。フィードバック532もまた、支援データの改善を可能にする。例えば、サービングセルが、UE510から他の周囲セルよりもかなり離れているケースを考察する。例えば、これは、サービングセルが、UE510のレシーバと見通し内にある丘の頂上で、高電力で送信しているときに、起こり得る。UE510のレシーバは、そのすべての周囲セルのうちこの丘頂上のセルが信号対ノイズプラス干渉比(SINR)が最も高いことを感知し、これをそのサービングセルとして使用することができる。この例では、場合によってはさらに低い電力で送信する、または見通し内にはない、他のより近傍のセルがあり得る。初期シード推定をサービングセルロケーション604に設定することは、サービングセルがUE510の標的レシーバから比較的遠くなるため、この場合には次善であり得る。この条件は、サービングセルよりも実際にははるかに近いセルを排除することができる。
【0081】
支援データは、支援データのスーパーセットであるmicro-BSA520を用いて構成された、UE510などのデバイス上で適応的に導出されるのではなく、ロケーションサーバにおいて導出されるので、現在の最新技術はこのシナリオに苦しむことになる。本システムの実施形態では、測定値530は、フィードバック532として測位支援データ計算部524に提供されて、効率的な適応および改善されたロケーション確度をもたらす。
【0082】
遠く離れたサービングセルのこの記述されたシナリオでは、530におけるタイミング測定は、より近傍のセルを検出することができる(サービングセルのタイミングに対して相対的に負のディレイで)。例えば、1000メートルの高品質(PAPR、またはSINR、低分散など)の負のTOAが、検出されたセルのリストに存在することができる。これは、負のTOAセルは、サービングセルよりもUEに1000メートル近いことを含意する。この情報を組み込むことによって、支援データ計算に再シードすることは、有益であり得る。例えば、より近傍のセルの緯度/経度座標を新たな支援データシード推定612として使用することができる。
【0083】
同様に、遠く離れたサービングセルを検出するために、レシーバにおけるタイミング前進(TA)を使用することができる。セルラシステムでは、TAを使用して、遠く離れたレシーバに早く送信するようにシグナリングし、その結果、遠く離れた、およびより近傍のデバイスのアップリンク送信がほぼ同時に基地局レシーバに到達する。したがって、支援データ計算部は、
図12におけるホストモデム1224で入手可能なTA情報を使用して、支援データ生成戦略を改善することができる。例えば、TAが高く、遠く離れたサービングセルを含意している場合、TOA測定のための支援データにおけるセルの数は、サービングセルからさらに遠くの距離まで拡大する可能性がある。したがって、より近傍のTOAが検出されると、支援データは上述のように再計算されることが可能である。
【0084】
複数のオンボードMicro-BSAおよび追跡使用ケース
本システムは、有利には、UE510などのデバイスに、より広い範囲の使用ケースのためのロケーションサービスに特化させることができるようにする。現在の最新技術は、支援データに、主に緊急サービス(e911)の単一の使用ケースのために意図された数十のセルを供給するのみである。この現在の最新技術は、例えば、ローミング使用ケースにあまりふさわしくない。本システムは、UE510上に記憶されたmicro-BSA520の使用によって、この問題を解決する。専用のロケーションデバイスとして実装されたUEに対して、UE510上でより多くのメモリを割り当てて、micro-BSA520を記憶することができる。これにより、ローミング使用ケースが可能になり、micro-BSAクラウド支援サーバ516との、またはネットワーク514の他の要素とのインタラクションが最小化される。例えば、セルあたり15バイトは、支援データにおけるセルパラメータを表すのに十分である。この表現は、例えば、物理的セルID(PCI)、セルの緯度/経度座標などのパラメータを含む。現在の最新技術において行われることであるが、24のセルを記憶する代わりに、UE510は、メモリの15キロバイトを使用して、1000のセルを記憶することができる。1平方キロメートルあたりセルが1つのセル密度を想定すると、micro-BSA520は、1000平方キロメートルのロケーションサービスエリアを有することができ、それによって、UE510はローミングすることができるようになる。ここでの例の使用ケースは、デバイスが町をあちこちローミングする場合の、レンタルスクータの追跡である。これらのスクータの運転手は、屋内および屋外の両方の自身のロケーションを追跡することを所望することができ、本システムを用いて、この特徴を低コストで送達することができる。
【0085】
次に
図7に進むと、UE510上に記憶された複数のmicro-BSA520に関連付けられた地理学的フットプリントの例示が提供されている。いくつかの使用ケースでは、UE510が、より大きな地理学的領域をまたぐ複数のmicro-BSAを記憶することが望ましい場合がある。示されているように、高いセル密度の領域に対応する第1の地理学的フットプリント710内に位置する情報関連セルは、第1のmicro-BSA520
1内に記憶される。同様に、中程度のセル密度の領域に対応する第2の地理学的フットプリント720内に位置する情報関連セルは、第2のmicro-BSA520
2内に記憶され、低いセル密度の領域に対応する第3の地理学的フットプリント730内に位置する情報関連セルは、第3のmicro-BSA520
3内に記憶される。
【0086】
図7に例示されたこの使用ケースでは、UE510は、通常、第1の地理学的フットプリント710、第2の地理学的フットプリント720、および第3の地理学的フットプリント730にわたって移動することが知られている。各地理学的フットプリント710、720、730に対して、micro-BSA520
1、520
2、520
3を記憶することによって、UE510は、micro-BSAクラウド支援サーバ516との、またはネットワーク514の他の要素とのインタラクションを行わずに、ロケーション関数を実行するために、すべての必要とされるセル情報を有する。しかも、これは、地理学的フットプリント710、720、730の、円750によって表されるスーパーセットを記憶するよりも少ないストレージを使用して行うことができる。UE510は、地理学的フットプリント710、720、730全体を通してローミングするので、UE510は、複数のローカルに記憶されたmicro-BSA520
1、520
2、520
3をまたいでセル選択を行うことによって、その支援データをインテリジェントに導出する。
【0087】
図7に例示された特定の使用ケースは、異なる仕事場で使用されるツールの会社の追跡を含む。例えば、建築会社は、仕事場から仕事場に移動する高価な発電機または往復動鋸を有することがある。会社が3つの仕事場(それぞれ、地理学的フットプリント710、720、730に位置する)を有し、管理者がツールを置き間違えたと仮定する。このケースでは、管理者は、ツールに取り付けた小さな追跡器(UE510の実装形態)を使用してそのロケーションを決定することができる。
【0088】
人工知能(AI)支援micro-BSA管理
UE510などのデバイスが大きな距離にわたって移動している(例えば、米国内の州間幹線道路を横断するトラック内の容器に取り付け、または関連付けられながら)使用ケースでは、UE510は、高い移動度を感知することができ(例えば、ドップラ推定を用いて)、デバイスのmicro-BSA520にダウンロードされたセルパラメータ情報が、適宜適応されることが可能である。例えば、このケースでは、トラックの予期されるルート上にあるセルに、micro-BSA520内のパラメータ情報を提供することが有利であり得る。
【0089】
このような使用ケースでは、micro-BSA「人工知能」(AI)管理モジュール550は、micro-BSA520に含まれる情報の管理を手伝うことができる。例えば、micro-BSA AI管理モジュール550は、UE510が州間幹線道路上に位置し、ある特定の速度で移動しているときに、micro-BSAセルのある特定のセットから最良の利益を得ることになるということを、高尤度で特定することができるパターン認識アルゴリズムを実施することができる。同様に、UE510が町の中心において静止していると決定されたとき、UE510は、異なる戦略から利益を得る可能性が高くなる。この後者のケースでは、UE510は、スマートメータ、交通標識、または、UE510の生命のために移動が意図されていない現金自動預払機(ATM)現金機に取り付けることができる。これらの適用の場合、AI管理モジュール550によって行われるmicro-BSAダウンロード管理は、高速度州間移動使用のケースとは異なることになる。
【0090】
AIを使用するこのmicro-BSA情報の管理は、地下労働者使用ケースに利益を与えることができる。例えば、デバイスサービングセルが、都会の地下鉄システム内の地下にある場合、AI管理モジュール550は、micro-BSA520内の地下セルに提供することのみを考えてもよい。別の使用ケースを考察すると、AI管理モジュール550は、通勤におけるパターンから学習することができる。例えば、通勤路線は、有限数の移動ルートを有することになる。路線によって輸送されているUE510のmicro-BSA520への情報のダウンロードは、最も一般的な移動ルート内のセルを含むことによって利益を得ることができるが、このことは1日/週間のうちの時間に依存する可能性がある。別の例として、AI管理モジュール550は、特定の時間(例えば、エルセントロの20マイル東、火曜日、午前9時、州間8号上)中の特定の幹線道路上を急いで移動中のデバイスが、90%の尤度でアリゾナ、グレンデールに到着することになることを「学習する」ことができ得る。次いで、この知識を利用して、特定の時間にそのような幹線道路を通行しているとき、UE510によって利用される可能性がより高くなるセルに関する情報をmicro-BSA520にダウンロードしてもよい。
【0091】
他の実施形態では、BSAサーバ511内のAI管理モジュール550は、UE510内に配設された任意選択のAI管理モジュール552によって、補完され得る。任意選択のAI管理モジュールは、普通ならAI管理モジュール550によって実行される処理のうちの少なくともいくつかを実行するように構成されても良い。
【0092】
不良セル検出部
図8は、位置推定部540によって作り出された位置推定の品質を改善するために、不良セル検出部544(
図5)によって実施される不良セル検出プロセス800を示す。上述のように、TDOA残差ベクトルは、洞察を位置推定の品質に提供するが、これらの洞察はプロセス800において活用することができる。まず、位置推定が、第1のTDOA測定値ベクトルr
1におけるTDOA測定値を使用して計算される(ステージ810)。得られた位置推定を使用してTDOA残差ベクトルe
1を構築する(ステージ820)。セル5は、自身の比較的高い誤差値故に「不良セル」として検出され、ラベル付けされる(ステージ830)。次いで、セル5は、除去されて新たなTDOA測定値ベクトルr
2を構築する(ステージ840)。この測定値ベクトルを使用して、得られた位置推定が改善される(ステージ850)。この不良セル検出プロセス800は他の基準と結合されて位置推定の品質を決定することができる。例えば、最小数のセルが必要とされてもよい。2D双曲線TDOA測位の場合、少なくとも3つの別個のセル拠点からの測定値が必要とされる。位置計算において、特別の冗長性および追加されたロバストネスのために、3つを越える別個のセル拠点が必要とされるのは有利であり得る。その上、推定されるUEロケーションと測位のために使用されたセルとの間のGDOPは、計算されることが可能である。GDOPが、ある特定の閾値より高く引き上げられた場合、環境が双曲線TDOAに良好には適合していないと決定されることが可能である。このケースでは、位置推定は、結果を返さないこと、および誤り結果を返すことを行う場合があり、またはE-CIDのような別の測位方法にフォールバックされる場合がある。残差に対する閾値設定、セルの最小数、および最小GDOPは、動的に決定されることが可能であり、または複数の静的な構成は、独立して並列に動作することができる。例えば、config Aは、厳密な構成とすることができ、config Bは、あまり厳密でない構成とすることができ、config Cは、E-CIDとすることができる。報告時、config Aの位置推定は、利用可能であれば使用され、別の場合には、config Bは、利用可能であれば使用され、別の場合には、config Cは、フォールバックとして使用される。代替的に、閾値は、動的に設定されることが可能である。多くのセルが測定される密なセルラ環境では、例えば、最小の閾値は引き上げられることが可能である。セルのロケーションが一方向に曲がった海岸沿いの環境では(多くは陸上にあって、海にいくらかある場合は、少数が海にある)、GDOP閾値は、低く始まるかもしれないが、徐々に増加して、この所定の環境に対する要件をゆるめる。E-CIDは、vシフトごとに電力測定値を組み込んで、複数の周囲セルのためにRSRPを取得することができ、セルTOA検知能力率は、組み込まれて、サービングセルに対する相対的なUE角度の確定を得ることができる。
【0093】
UE510は、支援データ526を改善するために不良セル検出部544からのフィードバックを活用するように構成されてもよい。
図8の特定のケースでは、セル5が不良セル検出部544によって劣悪であるとみなされることは、測位支援データ計算部524へのフィードバック534に含まれ得る役立つ情報である。このようにして、セル5に関する情報は、将来の支援データ526における包含から排除され得る。
【0094】
再び
図8の例を考察すると、「セル5」は、TOA推定が損なわれる、困難なマルチパスチャネル条件のせいで、低品質であるとみなされる可能性がある。代替的に、セル5は、グループ内の他のセルに対して比較的同期していない可能性がある。後のケースでは、不良セル検出部544は、良好には同期していないネットワークに対処するアルゴリズム的な手段を提供する。特に、比較的、他のセルと同期していない、リスト内の少数のセルを除外することによって、改善された性能が達成される。その上、非同期のレベルは、位置推定部540において推定され補償される、比較的、固定的な量であり得る。
【0095】
本システムの別の特徴は、めったに、または決して検出されない支援データ526内のセルを除外することである。検出できないセルを検出しようとすることは、UE510のコンピューティングリソースを浪費する。したがって、検出するのが困難なセルを無視することによって、得られる効率的な利得がある。位置推定部540によって実行される推定アルゴリズムは、どのセルが検出されているのか、およびどのセルが検出されていないのかをモニタすることができる。この情報は、漸増的で効率的な改善をできるようにするために、測位支援データ計算部524に提供されるフィードバック534に含まれることが可能である。
【0096】
良好セル選択部
代替の実施形態において、位置推定方法が、不良セル検出部544によって実行された方法の代わりに位置推定部540の良好セル選択部(GCS)560によって実行されることが可能である。まず、良好セル選択部560は、品質に関して、周囲セルの推定されるTOAをランク付けする。品質メトリックは、相関部出力の信号対ノイズプラス干渉比(SINR)、またはピーク対平均電力比(PAPR)に基づき得る。例えば、トンプソン(Thompson)らの「Communication System Determining Time of Arrival Using Matching Pursuit」、米国特許第10,749,778号を参照されたい。あるいは、周囲セルの推定されるTOAは、multiple signal classification(MUSIC)超分解能アルゴリズムにおける疑似スペクトルのピーク対平均電力比によってランク付けされ得る。例えば、X.リー(X.Li)およびK.パフラバン(K.Pahlavan)、「Super-Resolution TOA Estimation With Diversity for Indoor Geolocation」、IEEE Transactions on Wireless Communications,vol.3,no.1,Jan.2004を参照されたい。
【0097】
最高品質のTOAをRSTD参照セルとして使用し、残りのTOAをRSTD近隣セルとして使用するのは、有利である。これにより、インデックスi(m)は、最高品質のTOAに設定され、RSTD近隣セルインデックスj(m)は、残りのセルに設定される。良好セル選択部(GCS)の目的は、M個の利用可能なTDOA測定値のうち、良好測定値P≦M個のサブセットを選択することである。これは、測定値のうちのいくつかは劣悪であることを想定しており、しかもこれは、タイミング誤差、見通し外(NLOS)バイアス、およびTOA推定誤差を含むさまざまな誤差ソースのせいである可能性がある。良好セルを特定するための1つの手順は、コスト関数Q(x)を最小化することによって初期ロケーション推定を形成するために、最初の少数の最高品質測定から開始することである。2D双曲線推定では、3つの地理学的に別個のセルから少なくとも2つのTDOA測定値が必要となる。したがって、初期推定では、3つの地理学的に別個のセルに対応する少なくともP=2の高品質TDOA測定値が必要となる。
【0098】
初期推定が確立されると、(P+1)番目のTDOA測定値は、rに含まれ、新たなQ(x)が形成されて最小化される。新たなセルの包含により、更新された位置推定が、新たなセルを含むことが有益であるかどうかを判定するために調査される。これはさまざまな方法で行うことができる。例えば、量
【数31】
は、メートル単位において、最小残差の尺度である。この尺度が、新たなセルの包含により、確立された閾値を超えると、新たなセルを、使用されたセルのリストから除外することができる。別の方法は、Q(x)の輪郭線を調査することである。明らかな大域的最小値が、小さな最小領域によって特定された場合、新たなセルは良好とみなされ得る。他方では、2番目の局所的最小値が存在する場合(したがって、全体的な最小値が不明瞭になる)、新たなセルは良好でないと特定され得る。
【0099】
良好セル選択部560が、新たな候補セル(すなわち、TDOA測定)をテストするとき、それらのランク付けされた品質順序でセルを使用するのが有利である。推定幾何学形状を改善する(すなわち、精度の幾何学的希釈を低減する(GDOP))次の試行セルを選択するのがまた、有益であり得る。現在のUEの推定されるロケーションを所与とすると、周囲セルは、サーキュラセクタの観点で類別することができる。過小評価された(underrepresented)セクタにおけるセルは、改善された幾何学形状に対して優先されることが可能である。このサーキュラセクタ方法は、
図9~11を参照して記述されたサーキュラセクタ支援データ(CSAD)を使用する支援データセルの選択に類似している。推定されるUEロケーションは、サーキュラセクタの原点に置かれており、例えば、6個のセクタは、この原点の周りに確立される。rのセルをセクタ0から3までとし、しかしセクタ4および5にはrのセルがないと仮定する。このケースでは、過小評価されたセクタ4および5から次のセル候補を導入するのは有益であり得る。
【0100】
良好セル選択部560は、所望の数のセルが位置計算に含まれるまで、実行し続ける。この停止基準は、Pに関する閾値によって確立され得るか、あるいは所望のGDOPレベルに到達したら、もしくは、
【数32】
における輪郭線からの不確実性領域が望ましいレベルに閉じ込められたら、または何らかの他の手段によって確立され得る。停止規則は、もちろんこれらの基準に限定されるものではなく、異なる基準の混合も有効であり得る。
【0101】
測定に応答したMicro-BSAの改良
一実施形態において、オンデバイスmicro-BSA520は、モジュール530によって行われる電波条件測定および位置推定からのフィードバック532を用いて改良され、余分な部分が取り除かれることが可能である。例えば、特定のセルが検出できない場合、micro-BSA520からセルを除去し、メモリを開放することが有益であり得る。同様に、セルは、不良セル検出部544において「不良」と一貫してみなされる場合、さらに除去され得る。
【0102】
BSA要求最適化
位置推定部540が、信頼性が高い推定を生成している場合、上述のように、さらなるBSA情報は必要とされない。新たなBSA情報が必要とされるかどうかを判定するための他の方法は、以下を含む。
【0103】
セル統計データ追跡(受信電力、タイミング測定値など)。これらが経時的に著しく変化していない場合、UE510は、ネットワーク構成は変化していなかったので、BSA更新は必要ないと想定することができる。
【0104】
セル走査。UE510は、すべてのセル(PCI、PRS ID)に対して走査することができる。micro-BSA520にないセルが検出された場合、これにより、さらなる情報がBSA512に要求される、micro-BSA520の更新が引き起こされ得る。
【0105】
UE移動度に応答したBSA更新。UE510が、ドップラ推定部を用いて、例えば、または高いサービングセル変化速度を用いて、高い移動性であると検出すると、より遅い速度が達成されるまでBSA更新を一時停止することによって、効率利得を得ることができる。これは、micro-BSA520の記憶されたセルの数に依存する。例えば、1000のセルが記憶されており、セル密度が、1平方キロメートルあたり1セルである場合、高い移動度が、1000平方キロメートルのサービングエリアにおいて維持される。しかしながら、100のセルが記憶されており、セル密度が、1平方キロメートルあたり10セルである場合、高い移動度の結果、micro-BSA520内の情報が古くなる可能性がある。位置更新がアプリケーションによって必要とされる場合、micro-BSA520は、高い移動度の時間中に測位決めを提供するために更新されることが可能である。しかしながら、アプリケーションが位置更新を要求していない場合、UE510が静止状態に戻るまで、micro-BSA520の内容の更新が一時停止されるのが有利であり得る。
【0106】
低減された遅延
例えば、e911などの現存の測位アプリケーションでは、UE510のロケーションに関する要求がなされる。そのような要求は従来、背景技術節に記述された完全なプロセス、すなわち、ネットワークからUEへの支援データ送達、UE上での測定、UEからネットワークへの測定値の伝達、ならびに、最後に、ロケーション推定、およびアプリケーションへの送達を、引き起こす。そのような従来手法に関わる遅延は、数十秒であり得る。
【0107】
本システムは、アプリケーション位置要求と位置送達との間の時間遅延を低減する。UE510は、ロケーションアウェアであるので、アプリケーションが、micro-BSAクラウド支援サーバ516によってホストされている場合、または別様にネットワーク514内のクラウドベースである場合、送達は、数十ミリ秒のオーダーで「瞬時」であり得る。アプリケーションがUE410によって実行される場合、アップリンクにおいてUEロケーションの緯度および経度座標を送信するために必要とされる時間は、数十ナノ秒のオーダーであり得る。UE510のロケーションアウェアネスは、UEベースの測位方法のおかげで、本システムによって実現可能である。micro-BSA520のインテリジェントな取り扱いにより、位置要求の事象において、UE510に、micro-BSAクラウド支援サーバ516との、または、ネットワーク514の他の要素とのインタラクションの必要をなくせることができる。したがって、UE510は、位置要求の合間に、micro-BSAクラウド支援サーバ516との、またはネットワーク514の他の要素とのインタラクションをせずに自身の位置推定を周期的に更新することができる。ネットワークへの測位要求の合間の、モバイルデバイスの一部に関するこのタイプのロケーションアウェアネスは、現存の手法によって実現させることはできない。例えば、高速で移動している従来のUEの位置は、ネットワークに対してなされる位置要求の時間の合間に実質的に変わり得る可能性がある。
【0108】
クラウドベースのアプリケーションまたはUE510上で実行されるアプリケーションのどちらかが位置を要求すると、「瞬時の」位置推定は、直ちに本システムによって利用可能となり、アプリケーションに送達される。推定と共にタイムスタンプも供給されて、アプリケーションに、この最新の位置更新がいつ行われたか、シグナリングすることができる。例えば、位置推定は、バックグラウンドにおいて1時間ごとに更新され得る。ツール会社の管理者が会社の発電機のロケーションを見つけたいケースを考察する。このケースでは、ブレッドクラムアプリケーションは、管理者に、デバイスが10分前に仕事場にあったことを知らせることができる。これは、この使用ケースでは、十分な量の情報である場合があり、デバイスは、ネットワークとのさらなるインタラクションを必要としない。または、管理者は、現時点におけるデバイスのロケーションを知りたいかもしれず、そうであれば、追跡デバイス(例えば、UE510の簡素化された実装形態)は、適宜、ロケーション推定を更新することができる。
【0109】
micro-BSAにおける幾何学形状最適化、および支援データ選択
次に、
図9~11に注意を向けると、本開示による、micro-BSAにおける幾何学形状最適化、および支援データ選択の記述に関して
図9~11への参照を行うこととなる。一実施形態では、測位支援データ計算部は、micro-BSA情報および支援データ526の選択において知能を利用する。セルラ位置推定は、精度の幾何学的希釈(GDOP)の影響を受けやすい。したがって、一実装形態において、支援データ526は、上述のように、UE510のロケーションのシード推定を使用して生成される。しかしながら、UEシード推定に最も近いN個のセルを単に選択することは、幾何学形状の観点で次善の戦略であり得る。GDOPおよび位置計算の全体的な安定度を改善するセルを選択することは有利である可能性がある。
【0110】
図9は、本開示による、GDOPを低くする際に役立つサーキュラセクタ支援データ生成の方法900を示す。支援データシードを中心として使用して、6つのサーキュラセクタ904が、60°の均等な中心角によって形成されている。支援データ526は、セクタ0および(904
0)において組み立てられ始め、反時計回りに回転し、連続的に各セクタから1つのセルを追加する。
図9の例では、支援データに含まれる第1のセル910
1は、セクタ0(904
0)内にある。第2のセル910
2は、より近いセル(910
3)がセクタ0内にあるにもかかわらず、セクタ2(904
2)内にある。セクタ2内のセル910
2は、幾何学的により多様なセットを提供するので、優先される。セクタ2のセルが追加された後、第3のセル910
3はセクタ0内にある。
【0111】
図10に進むと、ニューヨーク市の一部分の地
図1000のスクリーンショットキャプチャが示されている。地
図1000は、UEのロケーション1002を示しているが、UEの西側および南側には隣接のセル拠点がないので、ロケーション1002は測位の観点からは困難なロケーションである。このケースでは、次善の方法では、ロケーション1002に最も近いセルに関連付けられたすべての情報を支援データシードに単に追加するだけとなる。しかしながら、これらの最も近いセルは、ロケーション1002の北方および東方だけにあるので、この手法は幾何学的多様性を提供しない。結果として、この手法に関連付けられたGDOPは粗悪であり、得られる位置推定誤差1004は、およそ280メートルである。
【0112】
図11は、
図10において示された同じスクリーンショットキャプチャに対応する地
図1100のスクリーンショットキャプチャを示す。しかしながら、このケースでは、本開示のサーキュラセクタ支援データ生成方法は、UEのロケーション1102を決定する際に支援データが使用されることになるセルを選択するために使用される。支援データにおけるセルの数は、
図10の例におけるのと同じであるが、セルのセットは、幾何学的により多様であり、UEのロケーション1102から比較的遠いセル1110を含むので、GDOPは低くなる。得られる位置推定誤差1114は、280メートルから低減されて、およそ3メートルになる。
【0113】
さらなるネットワーク輻輳緩和
現在の最新技術のLPP/SURLの支援データ方法は、不必要な輻輳をネットワークに加える可能性がある。例えば、3GPP Rel-14では、ミューティングビットの数はセルあたり1024もあり得る。セルあたり1024のビットの交換は、一意のビットシーケンスの数が2^1024より小さくなるため、必要とならないことがある。一意のシーケンスはデバイス上に記憶されることができ、より少数のビットは、ネットワークを介して送信されることが可能である。16ビットミューティングシーケンスを使用する別のRel-13の例では、たった70だけの一意のシーケンスがあり得る。これらの70のシーケンスは、デバイス上の70*16=1120ビットのルックアップテーブル内に記憶されることができ、セルあたり2^(ceil(log2(70)))=7ビットが、クラウドサーバからアクセスされるために必要となる。これによって、ミューティングビットシーケンスダウンロードにおいて9ビット(56%)の節約になる。
【0114】
他の例は、MCC(モバイル国コード(mobile country code))、MNC(モバイルネットワークコード(mobile network code))、および28ビットセル識別情報からなるLPPにおいて記述された3GPP ECGIである。MCCおよびMNCは、24ビットを必要とするが、それらはネットワークオペレータと共通とすることができる。したがって、3GPP ECGIに対して52ビットすべてを使用する代わりに、セル識別情報に対して28ビットを特定の配備のために使用して、46%低減することができる。
【0115】
ネットワーク輻輳を低減するために、レンペルジブのようなデータ圧縮アルゴリズムを使用することもできる。完全なmicro-BSAビットシーケンスは、シーケンスのエントロピーが1未満になる可能性が高くなるので、シーケンスを連結することができ、圧縮アルゴリズムを使用してビットパターンを圧縮することになる。
【0116】
例示的なUE実装形態
次に
図12に注意を向けると、
図12は、本開示に従って構成されたUE1200の特定の実装形態、このケースでは、モバイルすなわちセルラフォンのブロック図表現を含む。UE1200のある特定の詳細および機能は、わかりやすいように省略されているけれども、さまざまな実装形態において、モバイルデバイスのさまざまな追加的な特徴は、知られているように含まれることになることは明らかであろう。さらに、当業者であれば、UE1200は、モバイルすなわちセルラフォンなどのパーソナル通信デバイスとして実装される必要はなく、他の実装形態では、
図12の実装形態のある特定の特徴および特性を欠く追跡デバイスなどを含み得ることが理解されるであろう。
【0117】
図12を参照すると、UE1200は、ユーザインターフェース1208を提示するように構成されたタッチ感知ディスプレイ1204に動作可能に結合されたプロセッサ1220を含む。他の実施形態では、ユーザインターフェース1208は、物理的キーパッドもしくはキーボード、音声入力デバイス、および/またはユーザ入力もしくは命令を受信することができる任意の他のデバイスを含み得る。UE1200は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ならびに/またはプロセッサ1220にデータを記憶、および取り出させることができるようになる任意の他の媒体のうちの1つ以上から構成されるメモリ1240を含む。示されているように、メモリ1240は、micro-BSA520と、プロセッサ1220によって実行可能なプログラムまたは命令を含むプログラムとを記憶する。これらのモジュールは、測位支援データ計算部524、電力およびタイミング測定値モジュール530、位置推定部540、ならびにmicro-BSA AI管理モジュール552を含む。
【0118】
UE1200は、ネットワーク514などのネットワークとの通信のための無線トランシーバおよびモデム1224を含み、ネットワーク514は、例えば、インターネット、および/もしくは、セルラネットワークなどの無線ネットワーク、ならびに/または他の有線もしくは無線ネットワークを含み得る。UE1200はさらに、カメラ1228および他の補助的モジュールを含み得る。
【0119】
UEベースの測位の不確実性計算
ロケーション推定の品質を推定するための通常の手法は、多くの位置推定を調査し、信頼楕円を形成することである。例えば、チュー,V.(Chew,V.)、「Confidence,Prediction,and Tolerance Regions for the Multivariate Normal Distribution」、Journal of the American Statistical Association.61,315(Sept.1966)605-617、ならびにオーウェンス,T.(Owens,T.)およびマッコンビル,D.(McConville,D.)、「Geospatial Application:Estimating the Spatial Accuracy of Coodinates Collected Using the Global Positioning System」、Tech.rep.,National Biological Service,Environmental Management Technical Center,Onalaska,Wisconsin(Apr.1996)を参照されたい。例えば、
図16は、複数(すなわち、50)の位置推定(観測1610)が使用されて信頼楕円1602を形成する例を示している。
【0120】
次に
図17に進むと、実施形態による、信頼領域を確立するために生成された例示的な、誤差面の輪郭線1700が示されている。この方法では、
【数33】
の輪郭線は、
図17において示されるように評価される。最も濃い青領域1704は、UEの真ロケーション1710、およびUEの推定されるロケーション1720をきっちりと取り囲んでいる。したがって、UEの推定されるロケーションの不確実性は、最も濃い青領域のエリアを見出すことによって決定することができる。
【0121】
本明細書に記述されているオンボードmicro-BSA測位方法により、信頼領域(ロケーション推定不確実性)がUE510上で計算されることができるようになり、これは、最新技術のUE支援ロケーション推定を上回る技術的利点を有する。例えば、信頼楕円を形成するための複数の推定の実行は、ネットワーク514とインタラクションせず、UE510と受信専用モードでインタラクションすることによって、現在開示されている方法を使用して行うことができる。この方法は、データ通信の側面から、UE510が技術的にRRCアイドル、eDRX、またはPSMの状態にあるときに行うことができる。同様に、誤差面の輪郭線方法は、単一セットのTDOA測定値を用いてUE510上で実行することができ、誤差面の輪郭線方法は、信頼楕円を形成する方法とは対照的に、有利には、複数の観測を必要としない。
【0122】
ハイブリッドな電力-タイミングベースの測位
上で論じたTDOA測位方法では、タイミング測定は、UEのロケーションを推定するために使用される。本明細書において説明されているように、TDOAは、各セルペアが2次元地図上に双曲線をもたらす双曲線ロケーション方法である。複数の双曲線間の交点は、デバイスの推定されるロケーションである。検出されたセルの数が低いとき、限定された数の双曲線が、推定における不確実性を増大させる可能性がある。2つのセルのみが検出された場合、単一の双曲線のみが描かれて、UEの推定されるロケーションの不確実性が大幅に増大する。
【0123】
タイミング測定値のみを使用して取得されたロケーション推定の不確実性を低減するために、ハイブリッド電力-時間測位方法が、本節において記述される。電力測定対距離の関係は通常、時間測定対距離の関係よりも明瞭でないことが理解され得る。結果として、電力のみの測位方法は通常、十分な数の検出されたセルがある限り、タイミング専用測定測位方法に性能が及ばなくなる。しかしながら、2つのセルのみが検出されると、電力のみの方法は、時間のみの方法より性能が優れることが可能であり、ハイブリッド電力-時間方法は最良に行うことができる。
【0124】
UEが、Mp個の周囲トランスミッタ上で電力測定を行うと仮定する。m番目のセルに対する受信信号電力測定値は、下記のようにモデル化することができる。
rp,m=PTX,m+Am(θm)-PLavg,m(||x-xm||)+Xm
【0125】
dBm、但しm=1,2,...,Mp、PTX,mは、dBm単位でのm番目のトランスミッタ電力であり、Am(θm)は、dB単位でのm番目のトランスミッタ減衰係数であり、PLavg,m(||x-xm||)は、||x-xm||メートル移動するm番目の送信された信号が受けたdB単位での平均経路損失であり、xは未知のUEロケーションであり、xmは、m番目のトランスミッタの既知のロケーションであり、Xmは、標準偏差σp,mのゼロ平均ガウス確率変数である。
【0126】
通常の経路損失モデルは、いわゆる対数距離モデルであり、但し、
【数34】
である。
【0127】
例えば、ラパポート,T.S.(Rappaport,T.S.)Wireless Communications: Principles and Practices.PrenticeHall,2002を参照されたい。
【0128】
PLavg,close(d0)は、何らかの近距離d0メートルでdB単位での近距離経路損失であり、nは、経路損失の指数である。項Xm~N(0,σp,m)は、トランスミッタとレシーバとの間の大規模なシャドーフェーディングを特徴付ける。パラメータセット{PLavg,close,d0,n,σp,m}は、モデルを完全に特徴付けるものであり、経験的に、取得されたデータセットに適合することができる。
【0129】
図18は、通常使用される減衰モデルに関連付けられた減衰プロファイルを示す。3GPP TR 36.814: Table A.2.1.1-2、「Further advancements for E-UTRA physical layer aspects」を参照されたい。このモデルは、
【数35】
と表され得る。但し、θ
mは、対象の方向(方位角)とアンテナのボアサイトとの間の角度であり、B
3dBは、アンテナアパーチャの3dBビーム幅であり、A
maxは、デシベル単位の最大減衰である。
図18は、B
3dB=70度、およびA
max=25dBに設定する。次に、
r
p,m=h
p,m(x)+n
p,m
と定義し、但し、
h
p,m(x)=P
TX,m+A
m(θ
m)-PL
avg,m(||x-x
m||)は、平均の受信電力であり、
n
p,m=X
mは、シャドーフェーディングに起因する測定された電力誤差項である。この公式化は、ベクトル形成
r
p=h
p(x)+n
p
を可能にし、但し、m番目の要素はr
p,mである。このベクトル形成により、タイミングベースの文脈において、上述の最小二乗推定部の直接的な適用が可能になる。したがって、電力ベースの最小二乗推定部は、
【数36】
となる。
【0130】
次に、電力-タイミングハイブリッド方法のためのタイミング測定値を組み込むために、添字「t」が導入され、ここではm番目のTDOA測定値は、
rt,m=ht,m(x)+nt,m
である。但し、ht,m(x)は、グラウンドトゥルースTDOA成分であり、nt,mは、TDOAノイズ成分である。ベクトル形式は、
rt=ht(x)+nt
である。
【0131】
電力測定値とTDOA測定値とは異なる単位を有するので(電力測定値ではdBm、タイミング測定値では秒)、厳密にどのように測定値を結合するかは不明瞭であり、以前の測位手法による提案もない。この問題を回避するために、ガウス最大尤度方法などの最大尤度方法が推進される。
【0132】
特に、シャドーフェーディング項X
mを
【数37】
としてモデル化することにより、受信電力測定値項は、分散
【数38】
、平均h
p,m(x)、および条件付き確率密度関数
【数39】
を用いたガウス確率変数となる。
【0133】
同様に、n
t,mを
【数40】
としてモデル化することにより、r
t,mは、分散
【数41】
、平均h
t,m(x)、および条件付き確率密度関数
【数42】
を用いたガウス確率変数となる。
【0134】
電力測定値、および時間測定値にわたって統計学的独立であるとすると、すべての測定値の結合条件付き確率は、
【数43】
となる。
次いで、電力-時間ハイブリッドガウス最大尤度推定部は、
【数44】
となる。但し、
【数45】
および
【数46】
はそれぞれ、電力およびタイミング測定値において、対角線重み付け行列である。
【0135】
位置推定部内で電力測定値とTDOA測定値を結合するためのガウス最大尤度(GML)推定部の使用は、一般に好まれ得るが、位置推定部の他の実装形態は、代替の実施形態における使用に好適であり得る。例えば、上で論じたGML推定部は、TOAがガウス分布から導かれると想定するものであるので、この手法の一般化は、TOAがガウス混合モデル(GMM)から導かれると想定するものである。上で述べたように、GMMフレームワークは、セルラ無線周波数(RF)環境のマルチパスの性質をより良好に説明する。あるいは、位置推定部は、最大帰納的(MAP)推定部などのML推定部として実装され得る。さらに他の実施形態では、電力およびTDOA測定値は、非ガウスインパルス性ノイズとしてモデル化され得る。
【0136】
図19A~19Cに注意を向けると、
図19A~19Cは、本明細書において開示された電力-時間ハイブリッド手法を使用する測位が、限定された数のセルを有する環境において有利であり得ることを例示する、シミュレーション結果を示している。
図19Aは、電力のみを使用して、UEが2つのセルから信号を受信する環境内でUEの位置を推定した結果を示している。
図19Bは、時間のみを使用して、
図19Aと同じ2つのセル環境内でUEの位置を推定した結果を示している。
図19Cは、電力-時間ハイブリッド手法を使用して、同じ2つのセル環境内でUEの位置を推定した結果を示している。
図19A~19Cにおいて推定される位置に関連付けられた誤差を比較することによって理解できるように、2つのセルを有するこの例において、電力-時間ハイブリッド手法は、電力のみ、および時間のみの方法に対して相対的に有益であると例証する。
【0137】
次に
図20に進むと、本開示による、電力-時間ハイブリッド測位システム2000の第1の実施形態のブロックダイアグラム図が提供されている。システム2000は、ネットワーク2014内のBSAサーバ2011からアクセス可能な基地局アルマナック(BSA)2012の比較的小さなサブセットに基づいて測位支援データを生成するように構成されたUE2010を含む。BSA2012は、BSAサーバ2011と通信するサーバ上にあり得るか、またはBSAサーバ2011上に含まれ得る。一実施形態では、BSA2012からの情報は、ネットワーク2014内のmicro-BSAクラウド支援サーバ2016によってUE2010に提供される。
【0138】
示されているように、UE2010は、メモリ2040、ならびに無線トランシーバおよびモデム2024に動作可能に結合されたプロセッサ2020を含む。メモリ2040は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、および/またはプロセッサ2020にデータを記憶もしくは取り出させることができるようになる任意の他の媒体のうちの1つ以上から構成される。示されているように、メモリ2040は、micro-BSA2022と、プロセッサ2020によって実行可能なプログラムまたは命令を含むプログラムとを記憶する。これらのモジュールは、測位支援データ計算部2026、電力およびタイミング測定値モジュール2030、電力-時間ハイブリッド位置推定部2042、ならびにmicro-BSA AI管理モジュール2052を含む。電力-時間ハイブリッド位置推定部2042は、本明細書に記載されている電力-時間ハイブリッド測位技法を実装するように構成され得る。
【0139】
UE2010のある特定の詳細および機能は、わかりやすいように省略されているけれども、さまざまな実装形態において、モバイルデバイスのさまざまな追加的な特徴(例えば、ディスプレイ、およびユーザインターフェース要素など)は、知られているように含まれることになることは明らかであろう。さらに、UE2010は、モバイルすなわちセルラフォンなどのパーソナル通信デバイスとして実装され得るものであるが、他の実装形態では、UE2010は、そのようなパーソナル通信デバイスのある特定の特徴および特性を欠く追跡デバイスなどを含み得る。
【0140】
1つ以上のmicro-BSA2022は、micro-BSAクラウド支援サーバ2016から、UE2010によって受信されたBSA2012のサブセットに対応する情報を記憶するように構成される。micro-BSA2022は、UEロケーションの大まかな推定を提供するためにUE2010サービングセルECGIの情報を用いて計算されてもよい。測位支援データ計算部2026は、測位支援データを生成する際の使用のためのmicro-BSA2022からセルパラメータを受信するように構成される。測位支援データ計算部2026は、測位支援データをそれから計算するためのUEロケーションの大まかな推定を得るためにサービングセルのECGIを使用してもよく、大まかな推定は、電力およびタイミング測定値モジュール2030と、電力-時間ハイブリッド位置推定部2042とに提供される。
【0141】
示されているように、電力-時間ハイブリッド位置推定部2042は、比較的高い誤差を残差ベクトル内に生じさせるセルを特定することによって、推定部2042によって作り出された位置推定の品質を改善するように構成された不良セル検出部2044を含み得る。電力-時間ハイブリッド位置推定部2042は、代替的に、不良セル検出部2044の代わりに良好セル選択部(GCS)2060を含み得る。上で論じたように、良好セル選択部2060は最初に、品質の観点で、周囲セルの推定されるTOAをランク付けし、最高品質のTOAをRSTD参照セルとして選択することができる。不良セル検出部2044または良好セル選択部2060は、UE2010が、かなりの数の異なるセルの範囲内にある状況において役立ち得る。他のケースでは(例えば、UE2010が、2つまたは3つのセル内にのみあるとき)、不良セル検出部2044または良好セル選択部2060は、利用されなくてもよい。
【0142】
図21は、本開示による、電力-時間ハイブリッド測位システム2100の第2の実施形態のブロックダイアグラム図を提供する。
図20および21を比較することによって理解され得るように、電力-時間ハイブリッド測位システム2100は、システム2100内のUE2110のメモリ2140が、TDOA位置推定部2142を含むこと以外は、実質的にシステム2000に類似している。一実施形態では、TDOA位置推定部2142は、位置推定部540と実質的に類似して、または同一に実装される。以前に述べたように、電力-時間ハイブリッド測位システムの実施形態は、UEが比較的小さい数のセルの範囲内にあるとき、特に有用である。UE2110が、比較的より大きな数のセルの範囲内にあるロケーションに移動する限りにおいて、測位不確実性は、位置推定を生成するために電力-時間ハイブリッド位置推定部2042ではなくTDOA位置推定部2142を利用することによって、最小化されるということが当てはまり得る。
【0143】
次に
図22に注意を向けると、
図22は、本開示による、電力-時間ハイブリッド測位システム2200の第3の実施形態を示している。システム2200は、サーバ構成と通信するUE2210を含む。サーバ構成は、ネットワーク2214内にBSAサーバ2211を含む。BSA2212は、BSAサーバ2011と通信するサーバ上にあり得るか、または、BSAサーバ2011上に含まれ得る。一実施形態では、BSA2212からの情報は、ネットワーク2214内のロケーション支援サーバ2250によってUE2210に提供される。
【0144】
図20および22を参照することによって理解され得るように、UE2210は、
図20のUE2010に類似しているが、micro-BSAおよびmicro-BSA AI管理モジュールを欠いている。UE2210のメモリ2240は、測位支援データ計算部2026、電力およびタイミング測定値モジュール2030、ならびに電力-時間ハイブリッド位置推定部2042を含む。
図22の実施形態では、BSA2212からのセルパラメータは、必要に応じて、またはスケジュール通りに、ロケーションサーバ2250によってUE2210に提供される。測位支援データ計算部2026は、電力およびタイミング測定値モジュール2030によって行われるタイミング測定、ならびに電力-時間ハイブリッド位置推定部2042によって生成される位置推定を容易にするために、受信されたセルパラメータから測位支援データを導出する。UE2210内にmicro-BSAがないことにより、ロケーション支援サーバ2250からセルパラメータを入手する継続的な必要性の結果として、ネットワーク通信量および電力消費は増加する傾向にあり得るが、サーバ2250がmicro-BSAをポピュレートするように構成されていないか、または、UEがそのようなmicro-BSAを備えて構成されていないかのどちらかが当てはまり得る。しかしながら、それにもかかわらず、これらの状況では、UE2210は、micro-BSAが、またはセルパラメータの他のローカルに記憶されたリポジトリがないときに動作することができる電力-時間ハイブリッド位置推定部2042を用いて構成されてもよい。
【0145】
図23は、本開示による、電力-時間ハイブリッド測位システム2300の第4の実施形態を示す。
図22および23を比較することによって理解され得るように、システム2200および2300は、システム2300内のUE2310のメモリ2340が、TDOA位置推定部2340をさらに含むこと以外は、実質的に類似している。上で述べたように、電力-時間ハイブリッド位置推定部2042は、UE2310が比較的小さい数のセルの範囲内にある環境では特に有用であり得る。UE2310が、比較的より大きな数のセルの範囲内にあるロケーションに移動する限りにおいて、測位不確実性が、位置推定を生成するために電力-時間ハイブリッド位置推定部2042ではなくTDOA位置推定部2342を利用することによって、最小化されるということが当てはまり得る。
【0146】
上述の方法が、ある特定の事象がある特定の順序で行われることを示す場合、ある特定の事象の順序付けは変形され得る。さらに、事象のうちのいくつかが、可能な場合に並列プロセスで同時に行われ得るばかりか、上述のように順次に行われ得る。異なるデバイスにおけるさまざまなモジュールは、デバイスのプロセッサ内に位置するように示されているにもかかわらず、さらにデバイス(例えば、ソフトウェアモジュール)のメモリ内に位置する/記憶されることができ、プロセッサによってアクセスおよび実行されることが可能である。したがって、本明細書は、添付の特許請求項の趣旨および範囲内にある開示された実施形態のすべてのそのようなさまざまな変形および異形を包含することを意図するものである。
【0147】
上の記述は説明を目的として、特許請求されたシステムおよび方法の完全な理解を実現するために特殊な術語を使用した。しかしながら、当業者には、本明細書に記述されたシステムおよび方法を実践するために、特定の詳細を必要としないことは明らかであろう。したがって、記述されたシステムおよび方法の特定の実施形態の上の記述は、例示および説明を目的として提示されている。それらは、網羅的であることを意図するものではなく、特許請求の範囲を、開示された精密な形態に限定するものでもない。明らかに、多くの変形および異形が、上述の教示に鑑みて実現可能である。実施形態は、記述されたシステムおよび方法の原理ならびにそれらの実際の適用を最良に説明するために選択され、記述されたものであるので、それらにより、他の当業者は記述されたシステムおよび方法と、企図された特定の使用に適するようなさまざまな変形を伴うさまざまな実施形態とを最良に利用することができるようになる。以下の特許請求の範囲およびその均等物は、本明細書に記述されているシステムおよび方法の範囲を規定することを意図するものである。
【0148】
本明細書において概説されているさまざまな方法またはプロセスは、さまざまなオペレーティングシステムまたはプラットフォームのうちのどれか1つを採用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化されてもよい。さらに、そのようなソフトウェアは、いくつかの好適なプログラミング言語、および/またはプログラミングもしくはスクリプティングツールを使用して記述されてもよく、さらにフレームワークまたは仮想機械上で実行される実行可能な機械言語コードまたは中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0149】
コンピュータコードの例には、限定するものではないが、マイクロコードまたはマイクロ命令、コンパイラによって作り出されたような機械命令、ウェブサービスを作り出すために使用されるコード、およびインタープリタを使用してコンピュータによって実行される高水準命令を含むファイルがある。例えば、実施形態は、必須のプログラミング言語(例えば、C、フォートランなど)、機能的プログラミング言語(Haskell、Erlangなど)、論理的プログラミング言語(例えば、Prolog)、オブジェクト指向プログラミング言語(例えば、Java(登録商標)、C++など)、もしくは他の好適なプログラミング言語、および/または開発ツールを使用して実装されてもよい。コンピュータコードのさらなる例には、限定するものではないが、制御信号、暗号化コード、圧縮コードがある。
【0150】
この点に関して、さまざまな発明概念が、1つ以上のコンピュータまたは他のプロセッサ上で実行されると、上で論じた発明のさまざまな実施形態を実施する方法を実行する1つ以上のプログラムを用いて符号化されたコンピュータ可読ストレージ媒体(または複数のコンピュータ可読ストレージ媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のフロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、もしくは他の半導体デバイスにおける回路構成、または他の非一時的媒体もしくは有形コンピュータストレージ媒体)として具現化されてもよい。コンピュータ可読媒体は、その上に記憶されたプログラムが、本発明のさまざまな態様を上で論じたように実施するための1つ以上のコンピュータまたは他のプロセッサにロードされることが可能であるような可搬式とすることができる。
【0151】
用語「プログラム」または「ソフトウェア」は、一般的な意味において、上で論じた実施形態のさまざまな態様を実施するようにコンピュータまたは他のプロセッサのプログラムを作るために採用されることが可能な任意のタイプのコンピュータコードまたはコンピュータ実行可能命令のセットを指すために本明細書において使用される。さらに、一態様により、実行されると本発明の方法を実行する1つ以上のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータまたはプロセッサ上にある必要はないが、しかし、本発明のさまざまな態様を実施するために、いくつかの異なるコンピュータまたはプロセッサ間で、モジュラー様式で分配されてもよいことが理解されるべきである。
【0152】
コンピュータ実行可能命令は、プログラムモジュールなどの、1つ以上のコンピュータまたは他のデバイスによって実行される多くの形態であり得る。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行する、または特定の抽象的なデータタイプを実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。プログラムモジュールの典型的な機能性は、さまざまな実施形態において望まれるように結合または分配されてもよい。
【0153】
さらに、データ構造は、任意の好適な形態でコンピュータ可読媒体に記憶されてもよい。説明をわかりやすくするために、データ構造は、データ構造内のロケーションを通じて関係付けられたフィールドを有するように示されてもよい。そのような関係性は同様に、フィールドのためのストレージに、フィールド間の関係性を伝達するコンピュータ可読媒体内のロケーションを割り当てることによって達成され得る。しかしながら、データ構造のフィールド内の情報間の関係性を確立するために、ポインタ、タグ、または、データ要素間の関係性を確立する他の機構の使用を通じることを含め、任意の好適な機構が使用されてもよい。
【0154】
さらに、さまざまな発明概念が、提供されている例の1つ以上の方法として、具現化されてもよい。方法の一部として実行される行為は、任意の好適な方法で順序付けされてもよい。したがって、行為が例示とは異なる順序で行われる実施形態が構築されてもよく、たとえ例示の実施形態において連続の行為として示されていても、いくつかの行為を同時に行うことを含んでもよい。
【0155】
本明細書において定義され、使用されるすべての定義は、辞書の定義、引用して援用された文書における定義、および/または定義された用語の通常の意味にわたって支配すると理解されるべきである。
【0156】
本明細書および本特許請求の範囲において使用される不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、逆に明確に示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0157】
本明細書および本特許請求の範囲において使用される句「および/または(and/or)」は、そのように等位接続された要素の「どちらか一方」、または「両方」すなわち、いくつかのケースでは接続的に存在し、他のケースでは分離して存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」によって列挙された複数の要素は、同じ様式で、すなわち、そのように等位接続された要素のうちの「1つ以上(on or more)」の意味に解釈されるべきである。「および/または」節によって明確に特定された要素ではない他の要素(明確に特定された要素に関係付けられていようとなかろうと)が、任意選択的に存在する場合がある。したがって、非限定的な例として、「備える(comprising)」などのオープンエンドの言い回しと併用して使用されるとき、「Aおよび/またはB」への参照は、一実施形態において、Aのみ(任意選択的にBでない要素を含む)、別の実施形態において、Bのみ(任意選択的にAでない要素を含む)、さらに別の実施形態において、AとBとの両方(任意選択的に他の要素を含む)、などを指すことができる。
【0158】
本明細書および本特許請求の範囲において使用されるように、「または」は、上で定義されたように、「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リストにおいて項目が分離しているとき、「または」または「および/または」は、インクルーシブとして、すなわち、いくつかの要素もしくは要素のリストと、任意選択で追加のリストにない項目と、のうちの少なくとも1つの包含だけでなく、そのうちの2つ以上を含むと解釈されるものとする。明らかに逆に示される、「のうちの1つだけ(only one of)」もしくは「のうちの厳密に1つ」または本特許請求の範囲において使用されるとき「からなる(consisting of)」などの唯一の用語は、いくつかの要素もしくは要素のリストのうちの厳密に1つの要素の包含を指すことになる。一般に、本明細書において使用される用語「または」は、「どちらか一方」、「のうちの1つ」、「のうちの1つだけ」、「のうちの厳密に1つ」などの排他性の用語によって先行されるとき、排他的に代替的(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すようにのみ解釈されるものとする。本特許請求の範囲において使用されるとき、「から本質的になる(Consisting essentially of)」は、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0159】
本明細書および本特許請求の範囲において使用されるように、1つ以上の要素のリストに関連する、句「少なくとも1つ(at least one)」は、要素のリスト内の要素のうちの任意の1つ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも、要素のリスト内の特に列挙された、各要素のうちの少なくとも1つ、およびすべての要素を含むものではなく、要素のリストの要素の任意の組合せを除外するものでもないと理解されるべきである。この定義によりさらに、句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内で明確に特定された要素ではない要素(明確に特定された要素に関係付けられていようとなかろうと)が任意選択的に存在し得ることができるようになる。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも一方(at least one of A and B)」(または、言い換えると「AまたはBのうちの少なくとも一方(at least one of A or B)」または、言い換えると「Aおよび/またはBのうちの少なくとも一方(at least one of A and/or B)」)は、一実施形態において、任意選択的にBはなく(任意選択的にBでない要素を含む)2つ以上のAを含む、少なくとも1つのA、別の実施形態において、任意選択的にAはなく(任意選択的にAでない要素を含む)2つ以上のBを含む、少なくとも1つのB、ならびに、さらに別の実施形態において、任意選択的に2つ以上のAを含む、少なくとも1つのAおよび、任意選択的に2つ以上のBを含む、少なくとも1つのB(および任意選択的に他の要素を含む)、などを指すことができる。
【0160】
上記本明細書内と同様、特許請求の範囲内にも、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「運ぶ(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」および「からなる(composed of)」などのすべての移行句は、オープンエンドであると、すなわち、含むものの限定はされないことを意味すると理解されるべきである。米国特許庁の特許審査手続マニュアル、節2111.03に記載されているように、移行句「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」のみが、それぞれクローズドまたはセミクローズドな移行句であるものとする。
【国際調査報告】