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特表2024-518716溶融塩中での触媒作用による炭素質物質のガス化方法及び関連設備
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  • 特表-溶融塩中での触媒作用による炭素質物質のガス化方法及び関連設備 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】溶融塩中での触媒作用による炭素質物質のガス化方法及び関連設備
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20240424BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240424BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20240424BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20240424BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20240424BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20240424BHJP
   B09B 101/78 20220101ALN20240424BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
B09B3/70
C08J11/10
B09B101:85
B09B101:75
B09B101:70
B09B101:78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563262
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 FR2022050620
(87)【国際公開番号】W WO2022219260
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】2103945
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523388836
【氏名又は名称】クリミロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100113033
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 精孝
(72)【発明者】
【氏名】ルピネイ,マキシム
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA06
4D004AA07
4D004AA12
4D004BA03
4D004CA22
4D004CA34
4D004CB01
4D004CB04
4D004CB31
4D004CB42
4D004CB46
4D004CC02
4D004CC09
4D004CC11
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA07
4D004DA10
4D004DA20
4F401AA02
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA14
4F401AA17
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA25
4F401AA29
4F401BA03
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB09
4F401CB33
4F401CB34
4F401DA01
4F401EA38
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA02Y
4F401FA04Y
4F401FA20Y
(57)【要約】
所定の期間、固体炭素質物質が、第一溶融塩浴と空気の存在下に接触され、前記第一溶融塩浴が、NaCl、MgCl、CaCl、KCl、FeClから選ばれる少なくとも一つの塩化物系の塩を含み、かつ、300℃以上の融点、液体状態及び大気圧下で測定された1より大きい密度、並びに、25℃の温度及び大気圧下で測定された水の比熱容量より小さい、液体状態及び大気圧下で測定された比熱容量を有し、かつ、形成されたガスが回収される、溶融塩中での触媒作用による固体炭素質物質のガス化方法に関し、前記回収されたガスが、前記第一浴とは異なっていてもよい第二溶融塩浴と接触させられ、及び、前記第二浴の出口において、前記ガスが、加圧下であってよい状態で貯蔵されるか、又は、前記第一浴若しくは前記第二浴中に再注入されることを特徴とする。本発明はまた、本方法の実施を可能にする設備に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
-固体炭素質物質が、所定の期間、第一溶融塩浴と接触させられ、前記第一溶融塩浴が、NaCl、MgCl、CaCl、KCl、FeClから選ばれる少なくとも一つの塩化物系の塩を含み、かつ、300℃以上の融点、液体状態及び大気圧下で測定された1より大きい密度、並びに、25℃の温度及び大気圧下で測定された水の比熱容量より小さい、液体状態及び大気圧下で測定された比熱容量を有し、ここで、前記接触が空気の存在下で実行される、
-形成されたガスが回収される 、
溶融塩中での触媒作用による固体炭素質物質のガス化方法であって、
前記回収されたガスが、前記第一浴とは異なっていてよい第二溶融塩浴と接触させられ、及び、前記第二浴の出口において、前記ガスが、加圧下であってよい状態で貯蔵されるか、又は、前記第一浴若しくは前記第二浴中に再注入されることを特徴とする、溶融塩中での触媒作用よる固体炭素質物質のガス化方法。
【請求項2】
前記ガスが、前記第二浴中で前記ガスをバブリングすることにより、前記第二浴と接触させられることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ガスが、前記第二浴を含む槽の底部から注入されることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第一浴が、更に、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)、Fe(OH)から選ばれる少なくとも一つの水酸化物、及び/又は、KO、NaO、CaO、Pから選ばれる少なくとも一つの酸化物、及び/又は、LiCO、NaCO、KCO、CaCOから選ばれる少なくとも一つの炭酸塩、及び/又は、NaNO及びNaNOから選ばれる少なくとも一つの亜硝酸化合物を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第一浴が、少なくとも一つの炭酸塩を含み、かつ、該炭酸塩の質量含有量が、10%未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記第一浴が、融点が前記一の塩化物の融点より低いか、又は、前記複数の塩化物の最低融点より低い、少なくとも一つの塩を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記第二浴が、300℃を超える融点を有し、かつ/又は、塩化ナトリウムとは異なる少なくとも一つの塩化物を更に含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記第二浴が、少なくとも一つのヨウ化物及び/又は一つのフッ化物を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記第二浴が、10質量%を超える少なくとも一つの炭酸塩を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記第一浴と前記炭素質物質との間の接触が、空気を含むエンクロージャー内で実施され、かつ、前記炭素質物質を前記エンクロージャー中に導入した後に密閉状態にされることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記密閉されたエンクロージャーが、20体積%未満の酸素ガスを含むガス混合物を含むことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記固体炭素質物質が、
-ABS、酢酸セルロース(CA)、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレン、PET、HDPE、PP、PVC、PTFE、LDPE、PMMA、ポリホルムアルデヒド(POM)、PVAC、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、発泡されていてよいポリスチレン、PEEK、シリコーンを包含する熱硬化性樹脂、及び、これらのプラスチックの少なくとも二つの混合物から選ばれる一以上のプラスチックを含む固体廃棄物、又は、前記一以上のプラスチックから成る固体廃棄物、
-動物性有機物質を含む廃棄物若しくは動物性有機物質から成る廃棄物、及び/又は、紙、ボール紙、木材、植物廃棄物を包含する、加工されていてよい植物性有機物質を含む廃棄物若しくは前記植物性有機物質から成る廃棄物、並びに、これら二種類の廃棄物の混合物、及び
-ABS、酢酸セルロース(CA)、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレン、PET、HDPE、PP、PVC、PTFE、LDPE、PMMA、ポリホルムアルデヒド(POM)、PVAC、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、発泡されていてよいポリスチレン、PEEK、シリコーンを包含する熱硬化性樹脂、及び、これらのプラスチックの少なくとも二つの混合物から選ばれるプラスチックの混合物中にあってよい上記廃棄物、又は、前記プラスチックから作られた袋に入れられていてもよい上記廃棄物
から選ばれることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記第二浴との前記接触が、20%以下の酸素を含むガス混合物を含む閉鎖されたエンクロージャー内で実施され、ここで、前記ガス混合物は、大気圧未満の圧力であってよいことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
第一浴からの前記ガスが、水蒸気を含み、ここで、前記水蒸気が、第二浴に導入される前に凝縮されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
-溶融状態であってよい第一の塩混合物を含むエンクロージャー(1)、ここで、前記第一の塩混合物が、NaCl、MgCl、CaCl、KCl、FeClから選ばれる少なくとも一つの塩化物系の塩を含み、300℃以上の融点、液体状態及び大気圧下で測定された1より大きい密度、並びに、25℃の温度及び大気圧下で測定された水の比熱容量より小さい、液体状態及び大気圧下における比熱容量を有する、
-前記第一の塩混合物を加熱して、その溶融を可能にする手段、
-炭素質物質の少なくとも一つのコンベアー(5)、ここで、前記コンベアーが、前記炭素質物質が導入される入口(51)、及び、前記物質が前記第一浴に落下するように配置された出口を備える、
-前記エンクロージャーに接続され、かつ、前記第一浴より上方で開口するガス回収手段、並びに
-前記ガス回収手段に接続された入口を備え、かつ、第二の溶融塩混合物を含むことができる第二反応器(2)、
-前記第二の塩混合物を溶融することができる加熱手段
を備え、
ここで、前記第二反応器が、所与の寸法の気泡を形成する少なくとも一つのスクリーン(220)を備えてもよく、かつ、前記第二反応器(2)の出口を貯蔵槽(6)に接続する第一配管を備え、かつ、前記第二反応器(2)の出口を、前記第一溶融塩浴の表面より下方に位置する前記エンクロージャー(1)の領域又は前記第二反応器(2)の入口と接続する第二配管を備えていてもよいことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一つに記載の方法の実施を可能にする設備。
【請求項16】
前記第二反応器が、前記第二の溶融塩混合物を含む槽を備え、かつ、前記第二反応器の前記入口が、前記第二の溶融塩混合物の自由表面のレベルより下方に配置されることを特徴とする、請求項15記載の設備。
【請求項17】
前記第二反応器が、それを気密にする手段を備え、かつ、前記設備が、前記第二の溶融塩混合物と回収ガスとを接触させる前に、前記第二反応器(2)中に含まれるガス混合物の圧力を低下させるためのポンプとして機能する手段を備えることを特徴とする、請求項15又は16記載の設備。
【請求項18】
水蒸気を凝縮するための手段を備え、かつ、前記凝縮手段が、前記貯蔵槽(6)より上流並びに/又は前記第二配管上であって、かつ、前記第一のエンクロージャー及び/若しくは前記第二反応器(2)より上流に配置されることを特徴とする、請求項15~17のいずれか一つに記載の設備。
【請求項19】
前記エンクロージャー及び/又は前記第二反応器を外部環境に対して隔離/閉鎖する手段を、更に備えることを特徴とする、請求項14~17のいずれか一つに記載の設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質物質のガスへの転換、とりわけ、揮発性炭化水素への転換に関する。この方法は、様々な起源及び組成の廃棄物に有利に適用され得る。
【背景技術】
【0002】
廃棄物、特に、プラスチック、とりわけ、熱硬化性プラスチック及び/又はハロゲン含有物はリサイクルが難しい。これらは、殆どの部分が埋め立てられる。それにもかかわらず、プラスチック廃棄物をリサイクルする方法が提案されている。そのいくつかは、溶融無機塩を使用するものである。
【0003】
例えば、特許文献1は、溶融塩を使用してプラスチックをリサイクルする方法を開示している。処理されるべきプラスチック間の接触表面積を増大させるために、溶融塩は、30mm未満のプラスチック粒子上に噴霧される。使用される溶融塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び、低融点ではあるが50℃超の融点を有する他の炭酸塩の混合物である。
【0004】
特許文献2は、複数枚の印刷版をリサイクルする方法を開示している。該印刷版は粉砕され、そして次いで、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムから構成される溶融塩浴に浸漬される。ガス化剤として空気が使用される。該浴の温度は900℃から1000℃である。
【0005】
非特許文献1は、溶融塩浴を用いたバイオマスの熱分解及びガス化の最新技術を開示している。ハロゲン化物は、いくつかの化合物の分解に触媒作用を持つことが知られている。アルカリ金属炭酸塩は、水蒸気と二酸化炭素との存在下での炭素ガス化において触媒作用を有することが知られている。この刊行物には、また、炭酸塩と塩化物(NaCl及びKCl)との塩混合物を用いて、600℃~900℃において木材の熱分解が行われたことも記載されている。リグニンは、ZnClとKClとの混合物中で、500℃~800℃の温度で熱分解され得る。
【0006】
廃棄物に関して、上記非特許文献1は、家庭廃棄物の熱分解が溶融NaCO中870℃~1000℃で可能であることを示している。ポリエチレン、ポリスチレン及びPVCは、MgClとKClの溶融混合物中、640℃~850℃の間の温度で熱分解された。得られた主な生成物はメタンとエチレンである。NaOHとNaCOとの420℃~480℃の温度における共融混合物は、また、PVC、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンを熱分解することを可能にする。ゴムを含むプラスチック廃棄物は、380℃~570℃でのNaCl/AlClの液状混合物によって熱分解されて、ガスに転換された。
【0007】
同じく非特許文献1は、古紙が水蒸気と二酸化炭素との存在下で700~750℃の間の温度で溶融炭酸塩の浴中でガス化されたことを述べている。ティッシュペーパーの場合、LiCOとNaCOとの混合物が使用されている。炭酸リチウムLiCOは、より多くのCOを得ることを可能にする。原子が小さいアルカリ金属は、廃棄物中に拡散し易いため、他の金属よりも触媒力が大きい。それにもかかわらず、カルシウムは、紙とCOの間の接触を制限して、反応収率を低下させる傾向にある。
【0008】
他の研究は、650℃から750℃の間の温度でのCOと溶融炭酸塩浴との存在下における紙廃棄物のガス化を実証している。溶融したNaCOの存在が、紙へのCOのアタックに触媒作用を及ぼすことを可能にする。KCOとLiCOの添加は収率を増大させる。
【0009】
非特許文献1は、また、処理場汚泥及び米が、二酸化炭素の存在下、及び、500℃~750℃の間の温度で、LiCOとKCOの浴によってガス化されたことも述べている。それにもかかわらず、生成された気相中にSO化合物が発見された。
【0010】
特許文献3は、硫黄及び/又はハロゲン及び/又は有毒金属を含む有機物質の破壊方法を開示している。使用された浴は、アルカリ及びアルカリ土類酸化物並びに/又はアルカリ硫酸塩を含む。この方法は、タイヤのガス化に適用される。特許文献4は、溶融塩浴中で炭化水素物質(炭化水素)を分解する方法を開示している。該浴は、酸化リチウム、酸化カリウム及び酸化ホウ素の混合物、又は、五酸化リン及び酸化ナトリウムの混合物のいずれかを含む。こうしてガス状のC炭化水素が得られる。ガス化は大気圧下で空気流を伴って実行される。
【0011】
特許文献5は、固体又は液体の炭化水素物質、例えば、石炭、褐炭、石炭から誘導された液体、ビチューメン、木材又はその他バイオマス若しくはシェールオイルを、溶融塩浴によって処理する方法を開示している。該浴は、次の塩、即ち、KCl、LiCl、NaCl、CaCl又は炭酸塩の混合物を含むことができる。
【0012】
特許文献6は、少なくとも、亜鉛、スズ、アルミニウム、鉛、銅及びこれらの合金を含む溶融非鉄金属の浴であることができる熱分解液によってプラスチックをリサイクルする方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】中国特許出願公開第105385468号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第102389888号明細書
【特許文献3】仏国追加特許公開第0070789号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2156050号明細書
【特許文献5】英国特許出願公開第2106932号明細書
【特許文献6】国際公開第2014/167139号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Review of thermal processing of biomass and waste in molten salts for production of renewable fuels and chemicals, International Journal of low-carbon technologies,2012年, 第7巻,p.318~324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、揮発性酸素化合物の形成を低減又は抑制させることが可能なガス化方法を提供することにある。実際、これらの化合物は回収することができず、かつ、望ましくない副生成物と考えられる。
【0016】
本発明の他の目的は、実施が簡単で、かつ、とりわけ、空気中で実施し得る炭素質物質のガス化方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、塩の溶融に到達するために余りに多くのエネルギーを使用しない、上記方法を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、主として揮発性炭化水素、とりわけ、ペンタン、プロペン、エタン及びエチレンを得ることを可能にするガス化方法を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、7、8、9又はそれ以上の炭素原子を含む炭化水素を少ない割合(8質量%未満)で得ることを可能にする方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、2個から4個の炭素原子を含む直鎖状不飽和炭化水素(エチレン、プロピレン及びブテン)を少なくとも30質量%得ることを可能にする方法を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、多種多様な炭素質物質を用いて実施可能なガス化方法を提供することにあり、ここで、該炭素質物質が、合成物(例えば、プラスチック、とりわけ、例えば、熱硬化性ポリマー)、有機物質(木材、ボール紙、植物廃棄物)又は混合物(有機物質残留物(食品包装)を含む湿った家庭廃棄物)である。
【0022】
本発明の他の目的は、炭素質物質の粉砕を必ずしも必要とせず、かつ、固体物質が異なる寸法、及び、とりわけ、数センチメートル又は約10センチメートル程度の断片の形態で与えられるときでさえ、揮発性炭化水素を得ることを可能にする方法を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、炭素質物質がプラスチック袋(例えば、植物及びプラスチックを含む家庭廃棄物のような異種の炭素質物質)に含まれているときでさえ有効であることがわかる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、
- 固体炭素質物質が、所定の期間、第一溶融塩浴と接触させられ、前記第一溶融塩浴が、NaCl、MgCl、CaCl、KCl、FeClから選ばれる少なくとも一つの塩化物系の塩を含み、かつ、300℃以上の融点、液体状態及び大気圧下で測定された1より大きい密度、並びに、25℃の温度及び大気圧下で測定された水の比熱容量より常に小さい(即ち、4.18kJ/kg.Kより小さい)、液体状態及び大気圧下で測定された比熱容量を有し、ここで、前記接触が空気の存在下で実行される、
- 形成されたガスが回収される、
溶融塩中での触媒作用による固体炭素質物質のガス化方法に関する。
【0025】
特徴としては、本発明によれば、前記回収されたガスは、前記第一浴とは任意的に異なっていてよい第二溶融塩浴と接触させられ、及び、前記第二浴の出口において、前記ガスは、任意的に加圧下であってよい状態で貯蔵されるか、又は、前記第一浴若しくは前記第二浴中に再注入されることである。
【0026】
第二浴中での通過により、揮発性酸素化合物を、もはや酸素を含まずかつ回収可能なアルカン、アルケン又はアルキンに転換することが可能となる。第二浴での通過が十分でないなら、第二浴の出口において回収されたガス状混合物を、第一浴に入れるか、又は、第二浴に再度入れることが可能である。第二浴はまた、第一浴であることもでき、この場合、第一浴を含む同一のエンクロージャー(enclosure)内で2回の通過がある。
【0027】
酸素を含むガス状化合物は、処理される炭素質物質の性質に応じて、無視できない量で形成され得る。従って、炭素質物質がリグニン又はセルロースを含むなら、酸素化合物はプラスチック廃棄物の場合より非常に多くなる。
【0028】
第二浴は、第一浴より上方の空気中に含まれる酸素と反応することにより形成された有機化合物(例えば、エタナール等)を炭化水素に分解することを可能にする。
【0029】
有利には、前記ガスは、前記第二浴中でガスをバブリングすることにより、前記第二浴と接触させられる。とはいえ、該接触はバブリングに限定されない。
【0030】
有利には、前記ガスは、第二浴の自由表面レベルより下に、かつ、該浴の最大の高さを通過するように導入される。従って、該ガスは第二浴を含む槽の底部から注入されることができる。
【0031】
第一浴の密度は、反応の良好な触媒作用を可能とし、炭素質物質は殆ど、該浴内(2つの水の間)か又は該浴上に浮遊して見いだされる。
【0032】
好ましくは、本特許出願を通して、密度及び比熱容量は該浴の融点において測定される。
【0033】
該反応は空気の存在下において実施可能であるため、該方法の実施は簡単であり、かつ、先行技術の方法のように水蒸気又は二酸化炭素の存在を必要としない。また、設備の具現化もより簡単である。
【0034】
該浴は、好ましくは、プラスチックの最大密度を示す2.2より低い密度を有する。従って、不活性廃棄物(瓦礫、レンガ、コンクリート、石等)は該浴中に沈み、そして、容易に除去され得る。
【0035】
第一浴の融点は、好ましくは650℃以下である。この温度により、過剰なエネルギー消費なしに溶融物を得ることが可能となる。
【0036】
第一浴の比熱容量が水の比熱容量よりも低いという事実は、塩の溶融を迅速に得ることを可能にし、かつまた、該方法が(バッチモードで)不連続的に実施されるときに有利である比較的急速な冷却を得ることを可能にする。
【0037】
大部分の塩化物は、好ましくは塩化ナトリウムである。第一浴は、また、塩化物として、塩化カルシウムのみを含むこともできる。それは、また、塩化ナトリウムから成ることもできる。
【0038】
本発明によれば、第一浴の組成は限定されない。それは更に、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)、Fe(OH)から選ばれる少なくとも一つの水酸化物、及び/又はKO、NaO、CaO、Pから選ばれる少なくとも一つの酸化物、及び/又は、LiCO、NaCO、KCO、CaCOから選ばれる少なくとも一つの炭酸塩、及び/又は、NaNO及びNaNOから選ばれる少なくとも一つの亜硝酸化合物を含むことができる。
【0039】
有利には、第一浴が少なくとも一つの炭酸塩を含むとき、第一浴の炭酸塩の質量含有量は10%未満である。この分量により、良好な触媒活性を有しながら第一浴の融点を制限することが可能になる。
【0040】
有利には、前記第一浴は、融点が前記一の塩化物の融点より低いか、又は、前記複数の塩化物の最低融点より低い、少なくとも一つの塩を含む。この塩混合物は、固化すると部分的に相分離することができて、槽の腐食を制限することが可能となる。浴を収容する槽は、有利にはステンレス鋼製である。
【0041】
前記第一浴の有利な一実施態様によれば、それは、塩化物塩(好ましくは、塩化ナトリウム)、塩化物の融点より低い融点を有する塩、及び、5%未満の一つ以上の酸化物及び一つ以上の炭酸塩を含む。このような浴は、本発明に従う方法の実施を可能にする。一つ以上の炭酸塩は、上記で引用した炭酸塩から選ばれる。一つ以上の酸化物は、上記で引用した酸化物から選ばれる。
【0042】
本発明によれば、第二浴の組成は限定されない。それは、300℃を超える融点を有することができ、及び/又は、それは、塩化ナトリウムとは異なる少なくとも一つの塩化物を更に含むことができる。この第二浴により、第一浴により予めガス化された炭素質物質の転化物を精製することが可能となる。ガスは第二浴中で泡立ち、迅速な反応を保証する。第二浴の体積は、第一浴の体積未満であり得る。たとえ融点が高くても、体積が小さければ、融解を得るためのエネルギー消費は妥当ものになる。第二浴はまた、第一浴により発せられる熱の一部により加熱されることもできる。
【0043】
上記の各実施態様と組み合わせることができる一つの実施態様によれば、前記第二浴は、少なくとも一つのヨウ化物及び/又はフッ化物を含む。該ヨウ化物は、特にLiI、NaI、KI、AlIから選ばれることができ、これらに限定されない。該フッ化物は、ヨウ化物とは独立して、次の塩、即ち、LiF、NaF、KF、CaF、MgF、NaAlFから選ばれることができるが、これらに限定されない。
【0044】
従って、第二浴はまた、10質量%を超える、少なくとも一つの炭酸塩を含むことができる。
【0045】
前記第一浴より上方の圧力は、大気圧に等しいか、又は、大気圧より大きくあり得る。有利には大気圧に等しい。第一浴より上の温度は、例えば、少なくとも100℃である。
【0046】
有利には、前記第一浴と前記炭素質物質との間の接触は、空気を含むエンクロージャー内で実行され、かつ、前記炭素質物質を前記エンクロージャー内に導入した後に密閉される。このように、第二浴を使用することを回避することができる。反応開始時に酸素が消費され、そして、酸素原子を含む有機化合物が製造される。これらは、エンクロージャーが閉じられ、そして、酸素量が減じられる故に、少量である。更に、これらはまた、第一浴でのリサイクル(第二の通過)により炭化水素に転換され得る。
【0047】
該反応はまた、空気中で開始することができ、そして次いで、ガス状酸素が消耗された雰囲気(有利には20体積%未満)で継続されることもできる。従って、形成された酸素を含む有機化合物の量を制限することができる。
【0048】
固体炭素質物質は、有利には、
-ABS、酢酸セルロース(CA)、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレン、PET、HDPE、PP、PVC、PTFE、LDPE、PMMA、ポリホルムアルデヒド(POM)、PVAC、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、任意的に、発泡されていてよいポリスチレン、PEEK、とりわけ、シリコーンを包含する熱硬化性樹脂、及び、これらのプラスチックの少なくとも2つの混合物から選ばれる、一以上のプラスチックを含む固体廃棄物、又は、前記一以上のプラスチックから成る固体廃棄物、
-動物性有機物質を含む廃棄物若しくは動物性有機物質から成る廃棄物、及び/又は、とりわけ、紙、ボール紙、木材、植物廃棄物を包含する、任意的に加工されていてよい植物性有機物質を含む廃棄物若しくは前記植物性有機物質から成る廃棄物、並びに、これら二種類の廃棄物の混合物、及び
-ABS、酢酸セルロース(CA)、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレン、PET、HDPE、PP、PVC、PTFE、LDPE、PMMA、ポリホルムアルデヒド(POM)、PVAC、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、任意的に発泡されていてよいポリスチレン、PEEK、とりわけ、シリコーンを包含する熱硬化性樹脂、及び、これらプラスチックの少なくとも二つの混合物から選ばれるプラスチックから成る混合物中に任意的に存在していてよい上記廃棄物、又は、前記プラスチックから作られた袋に任意的に入れられていてもよい上記廃棄物
から選ばれる。
【0049】
従って、プラスチック及び有機物質を含む家庭ごみを、プラスチック製断熱材をしばしば含む建設廃棄物と同様に処理することができる。これら種類の廃棄物を混合して処理することさえ可能である。
【0050】
炭素質物質は、有利には、例えば、プラスチック袋、フィルム又はシートのような、数ミリメートルの厚さの部材の形式で与えられる。これらの部材の表面積は限定されない。それにもかかわらず、炭素質物質は、第一浴の寸法の範囲内で、厚さ又は直径が数センチメートルの部材の形式で与えられることができる。炭素質物質は明らかに予め粉砕され得るが、それは必須ではない。
【0051】
本発明に従う方法の実施の様式にかかわらず、前記第二浴との前記接触は、20%以下の酸素を含むガス混合物を含む閉鎖されたエンクロージャーの中で実施され、ここで、前記ガス混合物は任意的に、大気圧より低い圧力であってよい。
【0052】
有利には、回収されたガスと接触させる前に、第二浴より上方に位置するガス混合物の圧力が低下される。該浴より上方で酸素含有量が減少することにより、酸素化合物の形成が減少する。
【0053】
第一浴から得られかつ回収された前記ガスが、水蒸気を含むとき、前記水蒸気は、前記第二浴への導入前に凝縮される。
【0054】
実際、炭素質物質が水を含むなら、水は蒸発し、第一浴を通過する。水蒸気を凝縮させ、第二浴に導入しないことが重要である。存在する水は、触媒反応を犠牲にして蒸発させるエネルギーを吸収し、それ故、水の存在は該方法のエネルギー消費を増加させる。
【0055】
本発明はまた、前記の請求項に記載した発明のいずれか一つに記載の方法を実施することを可能にする設備に関する。
【0056】
この設備は、
-任意的に溶融状態であってよい第一の塩混合物を含むエンクロージャー、ここで、前記第一の塩混合物が、NaCl、MgCl、CaCl、KCl、FeClから選ばれる少なくとも一つの塩化物系の塩を含み、300℃以上の融点、液体状態及び大気圧下で測定された1より大きい密度、並びに、25℃の温度及び大気圧下で測定された水の比熱容量より小さい、液体状態及び大気圧下で測定された比熱容量を有する、
-前記第一の塩混合物を加熱して、その溶融を可能にする手段、
-炭素質物質の少なくとも一つのコンベアー、ここで、前記コンベアーが、前記炭素質物質が導入される入口、及び、前記物質が前記第一浴に落下するように配置された出口を備える、
-前記エンクロージャーに接続され、かつ、前記第一浴より上方で開口するガス回収手段、並びに
-前記ガス回収手段に接続された入口を備え、かつ、第二の溶融塩混合物を含むことができる第二反応器、
-前記第二の塩混合物を溶融することができる加熱手段、
を備え、
ここで、前記第二反応器が、所与の寸法の気泡を形成するための少なくとも一つのスクリーンを任意的に備えてもよく、かつ、前記第二反応器が、前記第二反応器の出口を貯蔵槽に接続する第一配管を備え、かつ、前記第二反応器が、前記第二反応器の出口を、前記第一溶融塩浴の表面より下方に位置する、前記エンクロージャーの領域又は前記第二反応器の入口と接続する第二配管を任意的に備えていてよい。
【0057】
前記第二反応器が、前記第二の溶融塩混合物を含む槽を備えるとき、前記第二反応器の前記入口は、前記溶融塩混合物の自由表面のレベルより下方に配置され、これにより、回収されたガスのバブリングによる接触が可能になる。
【0058】
エンクロージャー及び第二反応器は、第一浴より上方に位置する体積にガス又はガス状混合物を収容するのに十分な寸法を有する。生成したガス状炭化水素はこの体積に蓄積される。
【0059】
上記の各実施態様と組み合わせることができる一実施態様によれば、第二の反応器は、それをガス気密にするための手段を備え、かつ、前記設備は、前記第二の溶融塩混合物と回収ガスとの接触に先立って、前記第二反応器内に含まれるガス状混合物の圧力を減じるためのポンプとして機能する手段を備える。従って、第二の反応器が第二浴を含む槽を備えるなら、ポンプとして機能する手段は、第二浴の前に回収したガスの接触に先立って、第二浴の自由表面より上方に位置するガス体積の圧力を減じることを可能にする。
【0060】
該実施態様にかかわらず、該設備は、有利には、水蒸気を凝縮させるための手段を備え、かつ、前記凝縮手段は、前記貯蔵槽から上流並びに/又は前記第二配管上であって、かつ、前記第一のエンクロージャー及び/若しくは前記第二反応器から上流に配置される。
【0061】
有利には、該エンクロージャー及び/又は第二反応器は、外部環境に対して前記エンクロージャーを隔離/閉鎖するための手段を更に備える。これらの手段により、製造されたガスが外部環境に排出されるのを防止することが可能になり、かつまた、空気からの酸素との反応のために製造される、過度に多量の酸素化有機化合物の形成を防止することも可能になる。ポンプとして機能する手段もまた、第一浴を含むエンクロージャーに装備することができ、これにより、(処理すべき廃棄物を導入し、そして、エンクロージャーを隔離した後)第一浴より上方の圧力を減じることによって、炭素質物質と反応可能な酸素の量を減じることが可能になる。
【0062】
前記第二の反応器は、並流又は向流で操作する液体/気体交換カラムであり得る。
【0063】
一実施態様によれば、該第二反応器は、前記第二の塩混合物を含む槽を備え、かつ、前記第二反応器の前記入口は、前記第二の塩混合物の自由表面のレベルより下方、好ましくは該槽の底部に配置される。
【0064】
エンクロージャーは、底部に、不活性物質(瓦礫等)を除去するための取り外し可能な格子を備えることができる。
【0065】
本発明に従う設備は、少なくとも部分的に埋設することができる。従って、少なくとも第一浴は地中に埋設することができる。コンベアーの入口のみが、炭素質物質の第一浴への挿入を可能にするために利用可能である。第二浴及び/又は貯蔵槽もまた埋設することができる。
【0066】
本発明に従う方法を参照して引用した溶融塩浴の全ての特徴は、本発明に従う設備において使用され得る塩の混合物(溶融塩又は非溶融塩)に適用され得ることは明らかである。
【0067】
定義
述語「揮発性炭化水素」は、293.15Kの温度において0.01kPa以上の蒸気圧を有する飽和、不飽和(アルケン、アルキン)、環状、不飽和環状炭化水素を意味する。より詳細には、それは、飽和又は不飽和、任意的に環状(飽和又は不飽和でもある)であり、かつ、1個から5個の炭素原子を含む炭化水素から成り得る。これらは、任意的に、次の基、即ち、メチル又はエチルから選ばれる一つ以上の残基により分岐及び置換されることができる。
【0068】
述語「炭素質物質」は、炭素原子、水素原子、及び、任意的に他の原子、例えば、酸素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含む、任意の物質を意味する。本発明の意味において、有機物質は炭素質物質である。
【0069】
述語「固体炭素質物質」は、何らかの寸法制限なしに分割された状態にあり、かつ、水又は油を含むことができる物質を意味し、ここで、水及び油は少量である。液体中の炭素質物質の分散物又は乳化物(スラッジ)は、本発明の意味において炭素質物質ではない。
【0070】
図面
本発明、その技術的特徴、及び、それにより提供される様々な利点は、非限定的な例として提示され、かつ、以下の添付図面を参照する、本発明の特定の実施態様に関する下記の説明を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、本発明の特定の実施態様の概略図を示す。
図2図2は、槽及びコンベアーの特定の実施態様を示す。
図3図3は、第二溶融塩浴の3つの代わりとなる実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1を参照して、本発明に従う設備、及び、方法の実施の様式の特定の実施態様を述べる。該設備は、第一溶融塩浴を含むエンクロージャー1を備える。第一の液体浴の表面は、線分Lにより示されている。加熱手段(図示せず)により、当初固体であった塩を溶融し、かつ、溶融塩浴を形成する液相を形成することができる。該エンクロージャーにはドレイン配管3が設けられており、このドレイン配管は、該浴の下部でエンクロージャーの底部の中に開口しており、そして、エンクロージャー1のドレイン抜きを可能にしている。該エンクロージャーはまた、該浴によって分解されない固形物質を保持することを可能にする取り外し可能なスクリーン11を備える。2つのコンベアー5が、該浴の表面より上方に通じており、そして、その入口51に堆積した廃棄物を該浴中に搬送することを可能にする。エンクロージャー1は、例えば、ハッチ等の手段により、コンベアー5の出口で密閉されることができる。該設備は、第二溶融塩浴を含むカラム2を備える。バルブV1により、エンクロージャー1からカラム2に入るガス流を調節することができる。カラム2の出口は、ガスを加圧するための貯蔵槽6に接続されている。バルブV2は、貯蔵槽6に入るガス流を調節するために使用される。バルブV2の上流にはバイパス配管23が配置されており、これにより、カラム2の出口をエンクロージャー1に接続することができる。バイパス配管23は、第一溶融塩浴の表面Lより下方の位置レベルにおいて、エンクロージャー1中に開口する。バルブV3がバイパス23に装備され、かつ、第一浴へリサイクルされるガス流を調節するために使用される。点線SSは床表面を表す。図1において、エンクロージャー1は埋設され、かつ、コンベアーの入口51は地面と同一面にある。また、カラム2を埋設することも可能である。
【0073】
次に、本発明に従う方法の実施の様式が、図1を参照して説明される。処理されるべき炭素質物質は、例えば、トラックにより該設備まで運ばれる。これらは固形廃棄物から成っていてよい。液体中に懸濁する固体粒子の形態の廃棄物(スラッジ)は、本発明に従う方法では処理できない。廃棄物は、その入口51でコンベアー5に導入される。コンベアー5は、該廃棄物をエンクロージャーの中に運び、そして、第一溶融塩浴中にそれを落とす。該浴は、加熱手段(図示せず)により塩を溶融することにより予め形成されている。その密度に従って、廃棄物は浴中に沈むか、又は、浴の表面に浮く。炭素質廃棄物より大きい密度を有する不活性廃棄物(瓦礫、レンガ、コンクリート、石等)、とりわけ、プラスチックは、浴の底に落ちてスクリーン11上に蓄積する。この廃棄物は該処理の最後に後で取り除かれる。廃棄物を導入した後、入口51は、例えば、ハッチ等の手段により密閉され、そして、塩類が溶融される(バッチ操作)。エンクロージャー1は、第一浴の表面より上方にある空気を含む。炭素質物質の炭化水素への分解反応は、第一浴のイオンによって触媒作用が及ぼされる。この反応は、第一浴の表面Lより上方の、エンクロージャー1に含まれる空気中の酸素を消費する。エンクロージャー1は密閉されている故、反応は空気雰囲気において開始する。その後反応は、酸素が消耗された雰囲気、即ち、もはや酸素を含まない雰囲気でも継続する。酸素がないため、処理される炭素質物質の種類に関係なく、炭化水素、特に揮発性炭化水素の収率が上昇する。炭化水素の形成に伴い、第一浴より上方の圧力が上昇する。圧力が、エンクロージャーが殆ど(揮発性又は非揮発性)炭化水素を含むことを示す所定の値に達するとき、バルブV1が開放される。ガスは、第二溶融塩浴を含むカラム2に入る。次いで、ガスは、この第二浴中で第二の接触分解を受ける。第二浴により、揮発性炭化水素の収率を高めることが可能になる。第二浴は、処理されるべきガスがバブリングされるカラム2内で使用され得る。カラム2及びその様々な代わりとなる実施態様が、図3を参照してより詳細に説明される。カラム2において、ガスは第二の分解を受ける。カラム2の出口では、流出するガス流の組成に応じて、この流れは(部分的又は完全に)貯蔵槽6に向けられる。該流れの全部又は一部が、新たな処理のために、エンクロージャー1内に配置された第一浴に再度向けられ得る。ガスは該浴の中に注入されて、気泡の形態で該浴を通過し、そして、該浴内で再び分解される。
【0074】
次に、本発明の方法の一実施態様が、任意的に、湿っていてもよく又は有機物質(例えば、食品包装)で部分的に覆われていてもよい、プラスチックを含む廃棄物の場合において、図1を参照して説明される。該廃棄物は、例えば、ゴミ収集車によってコンベアー5に導入される。廃棄物を導入した後、入口51は、例えば、ハッチ又は他の手段によって密閉され、そして、塩類は溶融される。廃棄物はプラスチック袋に入れられている。該袋は第一溶融塩浴中に落下する。該袋はその密度のために、直ぐに浴中に沈む。エンクロージャー1は、コンベアー5で外部と連通している。触媒反応が直ぐに生じ、そして、該浴より上方で種々のガスが製造される。該エンクロージャーは外部と連通していない。該エンクロージャーは、任意的に、カラム2又は槽6に接続されるフランジカバーを備える。空気中に酸素が存在するため、揮発性炭化水素と同時にエタナール型化合物もまた製造される。該浴の温度が500℃であり、かつ、圧力が1バールであるとき、浴より上方の温度は少なくとも100℃である。第一溶融塩浴より上方で圧力が所定の値に達すると、製造されたガスは第二溶融塩浴に通される。この第二溶融塩浴により、酸素を含む化合物を揮発性炭化水素に転換することが可能となる。カラム2の出口に取り付けられた分析手段により、カラム2の出口におけるガス状混合物の揮発性炭化水素濃度を示すことができる。該組成が十分であると考えられるなら、即ち、90体積%を超える揮発性炭化水素を含むなら、ガス流は貯蔵槽に向けられる。さもなければ、ガス流は、その組成及び揮発性炭化水素に分解されることが所望される化合物(表2参照)に従って、第一溶融塩浴の方向又は第二溶融塩浴の方向に向けられる。
【0075】
次いで、図2を参照して、エンクロージャー1及びコンベアー5の特定の実施態様を説明する。図1の要素と共通する要素は、同一番号により参照される。図2において、エンクロージャー1は、その下部に、第一浴(液体は図示せず)を含む円筒容器11を備える。該エンクロージャーの上部は平行六面体であり、かつ、コンベアー5を介して外部に開放されている。この部分の3つの面はコンベアー5に接続されている。ハッチは示されていない。触媒反応は常に、廃棄物の導入、入口51の密閉及び塩の溶融の後に行われる。出口61は貯蔵槽6に接続されている。出口231は、形成されたガスを第一浴に向けて再循環させることができる。完全な設備は必ずしも第二浴を備えない。
【0076】
次いで、図3を参照して、第二浴の3つの代わりとなる実施態様について説明する。第二浴は任意的であることに留意されたい。
【0077】
図3を参照して、カラム2は、カラムの高さに沿って互いの上部に配置された2つのスクリーン220を備える。これらのスクリーンは、処理されるべきガス流を所定の大きさの気泡に分割することを可能にする。黒い矢印は、底から上へ向かうガス循環を示す。溶融塩、つまり液状の塩は、入口210から出口211まで、頂部から下に向かって循環する。該ガスと該塩は向流で循環する。気泡は、ガスと塩の間の接触表面積を増大させることにより、触媒反応を促進しかつ加速する。
【0078】
図3においては、第二の反応器は第二浴を含む。該反応器が満杯ではないとき、溶融塩により占有されていない空間を不活性雰囲気により満たすまで、第二浴より上方に空気が残存することができる。ガスは、第二溶融塩浴中で泡立つように、入口配管25によって該反応器の中心に送られる。入口配管25は該浴中に浸漬され、かつ、反応器の中心で開口する。第二浴中での反応後、処理されたガスは、反応器頂部の出口27から排出される。
【0079】
次いで図3を参照して、第三の代わりの実施態様を説明する。第二反応器2は水平であり、かつ、第二浴を含む。好ましくは、第二浴は第二反応器2の半分だけを満たす。入口及び出口配管は、反応器の入口及び出口で気泡の形成を可能にするスクリーン220を備える。第二塩浴は、第二の代わりの実施態様と同様に静止している。
【実施例
【0080】
実施例1
表1において以下に示された異なる種類の廃棄物が、本発明の方法に従って処理された。
【0081】
【表1】
Tedlar(登録商標)は、半結晶性の熱可塑性ポリフッ化ビニルである。
【0082】
表2は、空気の存在下、及び、500℃(±20℃)の第一溶融塩浴のみを含む閉鎖された反応器内での表1のプラスチックの処理中に、本発明に従う方法により製造された非メタンVOCを列挙したものである。
【0083】
【表2】
【0084】
表2の結果は、ただ一つの塩化物塩(この場合には塩化ナトリウム)、塩化物の融点より低い融点を持つ塩、及び、5%未満の酸化物及び炭酸塩を含む触媒を使用することにより、製造された揮発性炭化水素の大部分は、ペンタン、プロペン、エタン及びエチレンであることを示している。
【0085】
表3は、得られた特定の炭化水素の合計をまとめたものである。
【0086】
【表3】
【0087】
表3を考慮すれば、7個以上の炭素原子を含む炭化水素は、試料アルファ1、アルファ2及びアルファ3中に、夫々、たった7.17質量%、6.68質量%及び4.66質量%存在するに過ぎないことを表していることが観察される。
【0088】
2、3及び4個の炭素原子を持つ直鎖状不飽和炭化水素は、夫々、31.31質量%、51.34質量%、40.53質量%の、含まれている炭化水素を表している。
【0089】
酸素の存在により、アルデヒドとケトンの製造が可能になった。これらの酸素化合物は、第二浴中の通過の間、特に、バブリングによって、そして従って、酸素がない状態で、専ら炭化水素と一酸化炭素に分解され得る。

図1
図2
図3
【国際調査報告】