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特表2024-518725ホスホリルコリンコンジュゲートを含むペプチド及びその合成方法
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  • 特表-ホスホリルコリンコンジュゲートを含むペプチド及びその合成方法 図1A
  • 特表-ホスホリルコリンコンジュゲートを含むペプチド及びその合成方法 図1B
  • 特表-ホスホリルコリンコンジュゲートを含むペプチド及びその合成方法 図2A
  • 特表-ホスホリルコリンコンジュゲートを含むペプチド及びその合成方法 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ホスホリルコリンコンジュゲートを含むペプチド及びその合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/09 20060101AFI20240424BHJP
   C07K 1/06 20060101ALI20240424BHJP
   C07K 7/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240424BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20240424BHJP
【FI】
C07F9/09 V CSP
C07K1/06
C07K7/00
A61K38/08
A61P37/02
A61K47/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564463
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 IL2022050413
(87)【国際公開番号】W WO2022224259
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/177,420
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520150201
【氏名又は名称】ターシア ファーマ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Tarsier Pharma Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アイデルマン,ハイム
(72)【発明者】
【氏名】ファン マイヘレン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ブラウ,リチャード ヘンドリック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
4H050
【Fターム(参考)】
4C076CC07
4C076CC41
4C076DD63
4C076EE41
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA17
4C084BA23
4C084BA33
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZB07
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA14
4H045BA50
4H045BA72
4H045EA20
4H045FA20
4H045FA57
4H045FA61
4H050AA01
4H050AB80
4H050AD17
4H050BB31
4H050BC10
(57)【要約】
本発明の一態様では、ホスホリルコリンで修飾されたN保護チロシンを含む化合物が存在する。さらに、SPPSなどのための化合物の使用も提供される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
【化1】
によって表される化合物またはその塩であって、式中、
Xが、水素、フェノール保護基、または
【化2】
であり、R2が、保護または無保護の天然または非天然アルファアミノ酸の側鎖であり、各R1が、独立して水素またはアミン保護基であり、Rが、水素、カルボキシル保護基、脱離基、固相のリンカー基であるかまたは存在しない、化合物またはその塩。
【請求項2】
前記アミン保護基が、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、Alloc、Dde、iv-Dde、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、2-[ビフェニリル-(4)]-プロピル-2-オキシカルボニル、ジメチル-3,5ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2-(4-ニトロフェニルスルホニル)エトキシカルボニル、1,1-ジオキソベンゾ[b]チオフェン-2-イルメチルオキシカルボニル、2,7-ジ-tert-ブチル-Fmoc、2-フルオロ-Fmoc、ニトロベンゼンスルホニル、ベンゾチアゾール-2-スルホニル、2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル、ジチアサクシノイル、p-ニトロベンジルオキシカルボニルのいずれか1つを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記カルボキシル保護基が、tert-ブチルエステル、メチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル、シリルエステル、2-(トリメチルシリルエチル)、(2-フェニル-2-トリメチルシリル)エチル、2-(トリメチルシリル)イソプロピル)、アリルエステル、2-クロロトリチル(2-Cl-Trt)、2,4-ジメトキシベンジル、2-フェニルイソプロピル、9-フルオレニルメチル、Dmab、カルバモイルメチル、フェナシル、p-ニトロベンジル、4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル、1,1-ジメチルアリルのいずれか1つを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
前記フェノール保護基が、トリイソプロピルシリルエーテル(TIPS)、tert-ブチルジメチルシリルエーテル(TBDMS)、メチルエーテル、ベンジルエーテル(Bn)、メトキシメチルアセタール(MOM)、2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチルアセタール、tert-ブチルエーテル、2-クロロトリチル、トリチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、Bocのいずれか1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記脱離基が、ハロ、ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ペンタフルオロフェノール、炭酸イミダゾール、O-アシルイソ尿素のいずれか1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
式2:
【化3】
によって表され、式中、R1が、前記アミン保護基を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R1が、FmocまたはBocである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式1:
【化4】
によって表され、式中、
Xが、水素、またはフェノール保護基であり、
R1が、アミン保護基を含み、
Rが、固相に結合したリンカー基である、
化合物またはその塩。
【請求項9】
前記アミン保護基が、Fmocであるか、またはFmocを含む、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
XがHである、請求項8または9に記載の化合物。
【請求項11】
その任意の塩を含む目的のペプチド配列を合成する方法であって、前記目的のペプチド配列が、式3:
【化5】
によって表され、式中、各R4が、H、アミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸を含む群から独立して選択され、少なくとも1つのR4が、Hではなく、R5が、水素、または固相に結合したリンカー基であり、前記方法が、固相に連結した請求項8~10のいずれか一項に記載の化合物を提供することと:
(i)前記化合物の前記アミン保護基を脱保護することと、
(ii)N保護アミノ酸部分を前記化合物にカップリングさせることと、
(iii)前記固相をアミン塩基と接触させ、それにより、前記固相に連結した前記目的のペプチド配列を得ることと
を含む、方法。
【請求項12】
前記アミン塩基が、Fmoc脱保護剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミン塩基が、それらの任意の組み合わせを含む、一級アミン、二級アミン、グアニジン系化合物、およびアミジン系化合物から選択される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
任意選択で、ステップ(iii)を行う前に前記N保護アミノ酸部分を脱保護するステップ(iv)を行うことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(iii)を行う前に、前記ステップ(ii)および前記ステップ(iv)を続いて繰り返すことをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチド配列を前記固体担体から切断し、それにより、前記目的のペプチド配列を得ることをさらに含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(ii)が、前記固相を、1~5モル当量の前記N保護アミノ酸部分を含むカップリング組成物と接触させることを含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記N保護アミノ酸部分が、任意選択で、前記N保護アミノ酸部分の活性エステルを含む、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記カップリング組成物が、塩基を実質的に欠いている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップ(ii)が、前記固相を、1~5モル当量の前記N保護アミノ酸部分を含むカップリング組成物と接触させることを含む、請求項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記目的のペプチド配列が、以下:
【化6】
を含む、請求項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
本発明の方法によって合成されるペプチドであって、以下:
【化7】

を含み、(i)466.4DaのMW、(ii)約0.7の相対保持時間(RRT)、または(i)および(ii)の両方によって特徴づけられる微量の不純物をさらに含む、ペプチド。
【請求項23】
前記不純物が、以下:
【化8】
であり、その任意の塩を含む、請求項22に記載のペプチド。
【請求項24】
(i)1263.5DaのMW、(ii)約1.27の相対保持時間(RRT)、または(i)および(ii)の両方によって特徴づけられる不純物を欠いている、請求項22または23のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項25】
前記不純物の前記RRTが、分析法Aを介して決定される、請求項22~24のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項26】
式3A:
【化9】
によって表されるジアゾ化チロシンを含む目的のペプチド配列を合成する方法であって、式中、R6が、1つ以上の置換基を表し、波状の結合の少なくとも1つが、前記目的のペプチド配列への結合点を表し、別の波状の結合が、(i)OH、O、R1、N保護基、アシル、OR、およびHのいずれか1つ、(ii)前記目的のペプチド配列への結合点を表し、前記方法が、
(i)化合物:
【化10】
を伸長するペプチド鎖にカップリングさせることであって、式中、R1が、アミン保護基を含み、R5が、OH、O、水素、活性エステル、または固相に結合したリンカー基であり、(a)前記伸長するペプチド鎖または(b)前記化合物が、前記固相に結合する、カップリングさせることと、
(ii)前記固相をアミン塩基と接触させ、それにより、前記固相に連結した前記目的のペプチド配列を得ることと
を含む、方法。
【請求項27】
前記アミン塩基が、Fmoc脱保護剤である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記アミン塩基が、それらの任意の組み合わせを含む、一級アミン、二級アミン、三級アミン、グアニジン系化合物、およびアミジン系化合物から選択される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
(iii)前記アミン保護基を脱保護して脱保護されたN末端アミンを得ることと、(iv)次のN保護アミノ酸を前記脱保護されたN末端アミンにカップリングさせることとをさらに含み、ステップ(iii)および(iv)が、ステップ(ii)を行う前に行われる、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(iii)および(iv)が、続いて行われ、任意選択で1回以上繰り返される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記固相に連結した前記目的のペプチド配列の切断を行って、前記目的のペプチド配列を得ることをさらに含む、請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
R6が、以下:
【化11】
であるか、またはそれを含み、前記化合物が、請求項1~7のいずれか一項に記載のものである、請求項26~31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年4月21日に出願された米国仮特許出願第63/177,420号の優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、チロシン-ホスホリルコリンコンジュゲート、およびペプチド誘導体の合成などのためのその使用を対象とする。
【背景技術】
【0003】
眼炎症、眼の任意の部分の炎症は、最も一般的な眼疾患の1つである。眼炎症は、広範な眼の炎症性疾患を指し、その1つはぶどう膜炎である。これらの疾患は、全年齢層に広まっており、クローン病、ベーチェット病、若年性特発性関節炎および他の疾患などの全身性疾患と関連し得る。炎症は、ドライアイおよび乾性黄斑変性などの他の一般的な眼症状とも関連し得る。いくつかの薬物は、ぶどう膜炎および/またはドライアイを引き起こす既知の副作用を有する。眼炎症の最も一般的な処置は、ステロイド、特にコルチコステロイドである。しかしながら、これらの処置は、いくつかの既知の、しばしば重度の副作用を有する。
【0004】
ホスホリルコリン(PC)は、蠕虫類が宿主中で生存するのを可能にする、蠕虫類によって分泌される双性イオン小分子であり、一部の細菌およびアポトーシス細胞の表面と同様に免疫寛容の状況を誘導する。タフトシン-ホスホリルコリン(TRS)は、免疫調節活性を有する二重特異性小分子である。TRS(Thr-Lys-Pro-Arg-Gly-Tyr-PC)は、免疫調節ペプチド誘導体である。
【0005】
現在、TRSは、PC部分をチロシンのフェノール環にカップリングさせるためにThr-Lys-Pro-Arg-Gly-Tyrの合成後修飾によって合成されている。しかしながら、この合成手法は非常に低い収率をもたらし、したがって、TRSの合成を、有効でない、費用のかかるものにする。TRSを合成する新規の単純かつ効率的な方法が強く求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様では、化合物またはその塩が存在し、化合物は、式1:
【化1】
によって表され、式中、R1は、水素またはアミン保護基であり、
Xは、水素、フェノール保護基、または
【化2】
であり、R2は、天然または非天然アルファアミノ酸の側鎖であり、Rは、水素、カルボキシル保護基、脱離基、固相のリンカー基であるかまたは存在しない。
【0007】
一実施形態では、化合物は、式2:
【化3】
によって表され、式中、R1は、前記アミン保護基を含む。
【0008】
別の態様では、式3:
【化4】
によって表される目的の化合物を合成する方法が存在し、式中、各R4は、H、アミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸を含む群から独立して選択され、少なくとも1つのR4は、Hではなく、R5は、水素、または固相に結合したリンカー基であり、方法は、固相に連結した本発明の化合物を提供することと:
(i)前記化合物の前記アミン保護基を脱保護することと、
(ii)N保護アミノ酸部分を前記化合物にカップリングさせることと、
(iii)前記固相を、環状アミン部分を含む組成物と接触させ、それにより、固相に連結した前記目的の化合物を得ることと
を含む。
【0009】
一実施形態では、方法は、任意選択で、ステップ(iii)を行う前に前記N保護アミノ酸部分を脱保護するステップ(iv)を行うことを含む。
【0010】
一実施形態では、方法は、前記ステップ(iii)を行う前に、前記ステップ(ii)および前記ステップ(iv)を続いて繰り返すことをさらに含む。
【0011】
一実施形態では、前記ステップ(ii)は、前記固相を、1~5モル当量の前記N保護アミノ酸部分を含むカップリング組成物と接触させることを含む。
【0012】
一実施形態では、化合物は、以下:
【化5】
を含む。
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または均等な方法および材料が、本発明の実施形態の実施または試験に使用され得るが、例示的な方法および/または材料が、以下に記載される。矛盾がある場合、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、必ずしも限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A-1B】SPPS後修飾を介して合成されたTRSの不純物プロファイルを示すHPLCクロマトグラム(図1A)、および保持時間30.8分(RRT=1.27)を有する主要な不純物の対応するMSスペクトル(図1B)を示すグラフである。MSスペクトルのピークは、422.171M/Z[M+3H]/3、632.753M/Z[M+2H]/2、Mw=1264.576Daに対応する。図1Bは、(MS/MS分析に基づく)1.27不純物の提唱される構造を示す。
図2A-2B】本明細書に記載の方法を介して合成されたTRSの不純物プロファイルを示すHPLCクロマトグラム(図2A)、および保持時間17.044分(RRT=0.7)を有する主要な不純物の対応するMSスペクトル(図2B)を示すグラフである。MSスペクトルのピークは、234.0M/Z[M+2H]/2および467.2M/Z[M+1H]に対応する。図2Bは、(MS/MS分析に基づく)0.7不純物の提唱される構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、アゾ結合を介してPPCで修飾されたN保護チロシンを含む化合物を提供する。本発明は、そのいくつかの実施形態において、無保護チロシン側鎖を有する本発明の化合物をTRSのSPPS合成にうまく実装することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づく。発明者らは、驚くべきことに、本発明の化合物(チロシンの無保護フェノール基を有する)を実装することによって行われるTRSのSPPS合成が、合成収率の劇的な改善をもたらし、所望のTRSを高純度で提供することを見出した。
【0016】
本発明の一態様では、式1:
【化6】
によって表される化合物であって、Xは水素、フェノール保護基、または
【化7】
である、化合物および/またはその塩が存在し、式中、各R1は、独立して水素もしくはアミン保護基であるかまたはそれらを含み、R2は、天然または非天然アルファアミノ酸(保護または無保護)の側鎖であり、Rは、水素、カルボキシル保護基、脱離基、固相のリンカー基であるかまたは存在しない。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物の塩は、リン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の化合物の塩は、本明細書に開示される化合物のいずれか1つのリン酸塩、例えば、脱プロトン化リン酸基を指す。いくつかの実施形態では、本発明の化合物の塩は、式I:
【化8】
によって表される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物の塩は、式1またはIおよびその対イオン(例えば、対カチオンおよび/もしくは対アニオン)によって表される化合物を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、式1によって表される化合物のリン酸塩を含む。R1がHであるいくつかの実施形態では、本発明の化合物は、式1によって表される化合物のリン酸塩および/またはアンモニウム塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、式1によって表される化合物および対イオンを含む。いくつかの実施形態では、対イオンは、一価カチオンを含む。いくつかの実施形態では、対イオンは、多価カチオン(例えば、二価および/または三価カチオン)を含む。いくつかの実施形態では、対イオンは、対アニオン(例えば、一価対アニオンおよび/または多価対アニオン)を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、R1は水素である。いくつかの実施形態では、R1は、保護基であるか、または保護基を含む。いくつかの実施形態では、R1は、アミン保護基であるか、またはアミン保護基を含む。いくつかの実施形態では、アミン保護基は、ペプチド固相合成(SPPS)の条件下で切断可能(または除去可能)である。いくつかの実施形態では、アミン保護基は、SPPSで適用される脱保護条件のいずれかの下で切断可能である(例えば、脱保護または切断を受けて遊離の無保護アミンをもたらす)。いくつかの実施形態では、アミン保護基は、酸に不安定なアミン保護基および塩基に不安定なアミン保護基から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、アミン保護基は、SPPSと適合性である。いくつかの実施形態では、アミン保護基は、SPPSと適合性である条件下で切断可能である。いくつかの実施形態では、アミン保護基は、FmocまたはBocの脱保護に適した条件下で切断可能である。いくつかの実施形態では、アミン保護基は、Fmoc脱保護に適した条件下で切断可能である。いくつかの実施形態では、アミン保護基は、Boc脱保護に適した条件下で切断可能である。いくつかの実施形態では、FmocまたはBoc脱保護に適した条件は、固相ベースの合成(例えば、SPPS)で適用される条件を指す。
【0022】
いくつかの実施形態では、アミン保護基は、固相Fmoc脱保護に適した条件下で切断可能である。いくつかの実施形態では、アミン保護基は、固相Boc脱保護に適した条件下で切断可能である。FmocまたはBocの固相脱保護の条件は、当該技術分野で周知である。例えば、Fmocの固相脱保護の条件は、特に、有機溶媒中の20%ピペリジン(またはDBU)溶液を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、アミン保護基は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、Alloc、Dde、iv-Dde、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、2-[ビフェニリル-(4)]-プロピル-2-オキシカルボニル、ジメチル-3,5ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2-(4-ニトロフェニルスルホニル)エトキシカルボニル、1,1-ジオキソベンゾ[b]チオフェン-2-イルメチルオキシカルボニル、2,7-ジ-tert-ブチル-Fmoc、2-フルオロ-Fmoc、ニトロベンゼンスルホニル、ベンゾチアゾール-2-スルホニル、2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル、ジチアサクシノイル、p-ニトロベンジルオキシカルボニルのいずれか1つを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、アミン保護基は、BocまたはFmocである。
【0025】
いくつかの実施形態では、化合物は、本明細書に記載されたとおりであり、R1は、アセチル基を欠いている。いくつかの実施形態では、化合物は、本明細書に記載されたとおりであり、R1は、アシル基を欠いている。
【0026】
いくつかの実施形態では、カルボキシル保護基は、SPPSと適合性である保護基を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、カルボキシル保護基は、tert-ブチルエステル、メチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル、シリルエステル(例えば、2-トリメチルシリルエチル)、(2-フェニル-2-トリメチルシリル)エチル、2-(トリメチルシリル)イソプロピル)、アリルエステル、2-クロロトリチル(2-Cl-Trt)、2,4-ジメトキシベンジル、2-フェニルイソプロピル、9-フルオレニルメチル、Dmab、カルバモイルメチル、フェナシル、p-ニトロベンジル、4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル、1,1-ジメチルアリルのいずれか1つを含む。他のカルボキシル保護基が、当該技術分野で周知である。
【0028】
いくつかの実施形態では、フェノール保護基は、SPPSと適合性である保護基を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、Rは、固相に結合したリンカー基(本明細書では切断可能なリンカーとも呼ばれる)であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、「固相」という用語および「固体担体」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「固相」という用語は、粒子の形態のポリマー樹脂(通常、1μm~1mmの範囲の平均直径を有するポリマービーズ)を指す。いくつかの実施形態では、固相は、SPPSプロセスと適合性である固相であるか、またはそれを含む(例えば、固相および本発明の化合物に共有結合したリンカー、またはそれを含む伸長するペプチド鎖は、SPPS中に適用される条件下で化学的および/または物理的に安定である)。
【0030】
固体担体の非限定的な例としては、PAM、クロロトリチル、Rinkアミド、およびWangが挙げられるが、これらに限定されない。固相合成(例えば、ペプチド合成)用の他の市販の樹脂が、当該技術分野で周知である。
【0031】
SPPSプロセスと適合性である固相は切断可能なリンカーをさらに含むことを、当業者なら理解するであろう。化合物またはそれから誘導されるポリペプチドが固体担体から切断されることを可能にする化学部分(例えば、MBHAリンカー)を含む様々な切断可能なリンカーが、当該技術分野で周知である
【0032】
いくつかの実施形態では、化合物または化合物から誘導されるポリペプチドは、切断可能なリンカーを介して固体担体に共有結合する。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、固体担体および本発明の化合物またはそれから誘導されるポリペプチドに共有結合する。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、カルボニル基またはアミノ基を介して本発明の化合物に共有結合する。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、Rを介して本発明の化合物に共有結合し、Rは結合を表す。いくつかの実施形態では、Rは、固相への共有結合を表す。
【0033】
いくつかの実施形態では、化合物または化合物から誘導されるポリペプチドは、切断可能な結合を介して固体担体に共有結合する。いくつかの実施形態では、切断可能な結合は、特定の切断条件下で分解するように構成される。切断可能な結合は、特定の切断溶液(通常、酸性溶液)に不安定であり、(通常、TFAベースの溶液などの酸性溶液を含む)切断溶液などの好適な切断条件下で、化合物またはそれから誘導されるポリペプチドを放出するように構成される。いくつかの実施形態では、切断可能な結合は、熱照射、UV照射、求核剤(例えば、水酸化物、アルコール、アミン、チオール、特に塩基性条件下でのヒドラジン)への曝露を含む、切断可能な結合の切断に適した任意の他の条件に不安定である。
【0034】
いくつかの実施形態では、固体担体に共有結合する本発明の化合物は、式1A:
【化9】
によって表され、式中、R1およびXは、本明細書に記載されたとおりであり、Yは、ヘテロ原子を表し、
【化10】
は、固体担体および/または固体担体に結合したリンカー(すなわち、切断可能なリンカー)を表す。いくつかの実施形態では、Yは、O、NH、およびSから選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、固体担体に共有結合する本発明の化合物は、式1A1:
【化11】
によって表され、式中、R1は、本明細書に記載されたとおりである。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、式1A1によって表され、式中、R1は、アミン保護基を表す。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、式1A1によって表され、式中、R1は、H、Boc、またはFmocである。
【0036】
いくつかの実施形態では、フェノール保護基は、トリイソプロピルシリルエーテル(TIPS)、tert-ブチルジメチルシリルエーテル(TBDMS)、メチルエーテル、ベンジルエーテル(Bn)、メトキシメチルアセタール(MOM)、2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチルアセタール、tert-ブチルエーテル、2-クロロトリチル、トリチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、Bocのいずれか1つを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、その活性エステルを含む。様々な活性エステルが、当該技術分野で公知であり、概して、いかなる触媒もなく求核剤と反応することが可能なカルボキシレートの安定な誘導体に関連する。
【0038】
いくつかの実施形態では、化合物の活性エステルは、式1によって表され、式中、Rは、脱離基であるか、または脱離基を含む。いくつかの実施形態では、脱離基は、本発明の化合物の遊離カルボキシ基をカップリング試薬と反応させることによって得られる活性エステルを含む。様々なカップリング試薬が、当該技術分野で周知であり、特に、HATU、HOBt、PyBOP、BOP、DIC、DCC、EDACなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、脱離基は、ハロ、ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ペンタフルオロフェノール、炭酸イミダゾール、O-アシルイソ尿素のいずれか1つを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、さらなる天然または非天然アミノ酸にさらに結合する。いくつかの実施形態では、結合は、ペプチド結合を介している。いくつかの実施形態では、結合は、化合物のアミノ基を介している。いくつかの実施形態では、アミノ酸に結合する本発明の化合物は、式1B:
【化12】
によって表され、式中、R、R1、およびXは、本明細書に記載されたとおりであり、R2は、天然または非天然アルファアミノ酸(保護または無保護)の側鎖である。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、本明細書に記載されたとおりであり、RおよびXは水素である。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、本明細書に記載されたとおりであり、RおよびXは水素であり、R1は水素またはアミン保護基である。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、式2:
【化13】
または式II
【化14】
によって表され、式中、R1は、上記のとおりである。
【0042】
いくつかの実施形態では、R1は、Hまたはアミン保護基である。いくつかの実施形態では、R1は、FmocまたはBocである。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、式2によって表され、式中、R1は、FmocまたはBocである。本明細書に開示される化合物の1つの非限定的な例示的合成手順は、実施例の節で提供される。
【0043】
いくつかの実施形態では、ジアゾ化チロシンを含む目的のペプチド配列または化合物が提供され、本発明の方法によって合成され、ジアゾ化チロシンは、式3A:
【化15】
によって表され、式中、R6は、1つ以上の置換基を表し、波状の結合は、(i)目的のペプチド配列、ならびに/または(ii)R1、N保護基、アシル、OR、O、OH、およびHのいずれか1つへの結合点を表す。いくつかの実施形態では、目的のペプチド配列は、式2A:
【化16】
によって表され、式中、各Zは、独立してペプチド、アミノ酸、NH、OH、もしくはHであるかまたはそれらを含み、少なくとも1つのZは、ペプチドである(例えば、Zはカルボキシ基に結合している)。
【0044】
いくつかの実施形態では、目的のペプチド配列は、微量の以下:
【化17】
を含み、式中、R6は、本明細書に記載されたとおりである。いくつかの実施形態では、目的のペプチド配列は、以下
【化18】
を欠き、式中、R6は、本明細書に記載されたとおりであり、波状の結合は、(i)目的のペプチド配列、ならびに/または(ii)R1、N保護基、アシル、OR、O、OH、およびHのいずれか1つへの結合点を表す。
【0045】
いくつかの実施形態では、目的のペプチド配列は、本発明の方法によって合成されるTRSであるかまたはそれを含み、TRSは、実施例の節に記載されるHPLC不純物プロファイルの少なくとも1つの不純物を含み、不純物プロファイルは、本明細書に記載の分析法Aを介して得られる。いくつかの実施形態では、不純物は、0.7の相対保持時間(RRT)および/または466.4DaのMWによって特徴づけられる。いくつかの実施形態では、不純物(本明細書では0.7不純物とも呼ばれる)は、以下
【化19】
であり、その任意の塩を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって合成されるTRSは、1.27の相対保持時間(RRT)および/または1263.5DaのMWによって特徴づけられる不純物(本明細書では1.27不純物としても使用される)がなく、不純物プロファイルは、本明細書に記載の分析法Aによって得られる。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって合成されるTRSは、1.27不純物:
【化20】
を欠いている。
【0047】
例示的なHPLC不純物プロファイルおよび不純物のMSスペクトルは、図1A~Bおよび図2A~Bに示される。
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって合成される目的のペプチド配列は、分析用HPLCにより決定した場合に、その間の任意の範囲を含む、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも99%、少なくとも99.5%の純度によって特徴づけられる。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって合成される目的のペプチド配列は、実質的に純粋である。
【0049】
いくつかの実施形態では、「ペプチド配列」、「目的のペプチド配列」、および「目的のペプチド」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0050】
本明細書で使用される場合、実質的に純粋とは、薄層クロマトグラフィー(TLC)、核磁気共鳴(NMR)、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析(MS)、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、ならびにそのような純度、またはさらなる精製が物質の酵素活性および生物活性などの物理的および化学的特性を検出可能に変更しないように十分に純粋であることを評価するために、当業者によって使用される類似の方法などの、標準的な分析方法により決定した場合に、容易に検出可能な不純物が十分に含まれていないことを意味する。実質的に化学的に純粋な化合物を生成する化合物の精製のための伝統的および現代的な方法の両方が、当業者に公知である。しかしながら、実質的に化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、任意の医薬的に許容されるその塩を含む目的のペプチドを含む医薬組成物が提供され、目的のペプチドは、本発明の方法によって合成され、医薬品グレードの化合物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、任意の薬学的に許容されるその塩を含む目的のペプチドを、薬学的活性剤として含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、治療上有効量の目的のペプチドを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、任意の薬学的に許容されるその塩を含む目的のペプチドから本質的になる。
【0052】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬物として使用するため(例えば、それを必要とする対象における疾患および/または医学的状態を処置および/または防止するため)のものである。
【0053】
いくつかの実施形態では、「アミノ酸」という用語は、任意選択で1つ以上の保護基を含むDおよび/またはL-アミノ酸を包含する。
【0054】
「アミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、塩基性アミノ基および酸性カルボキシル基の両方を含有する有機化合物を意味する。天然に存在するアミノ酸、保護されたアミノ酸(例えば、アミノ酸のカルボキシル、アミン、および/または側鎖に1つ以上の保護基を含む)、異常な、天然に存在しないアミノ酸、ならびに遊離または結合形態で生物学的に生じることが知られているが、通常はタンパク質中に生じないアミノ酸が、この用語に含まれる。例えば、Roberts and Vellaccio (1983) The Peptides. 5: 342-429に開示されたものなどの、修飾および異常アミノ酸が、この用語に含まれる。修飾、異常、または天然に存在しないアミノ酸としては、D-アミノ酸、ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリン、N-Cbz-保護アミノ吉草酸(Nva)、オルニチン(O)、アミノオクタン酸(Aoc)、2,4-ジアミノ酪酸(Abu)、ホモアルギニン、ノルロイシン(Nle)、N-メチルアミノ酪酸(MeB)、2-ナフチルアラニン(2Np)、アミノヘプタン酸(Ahp)、フェニルグリシン、β-フェニルプロリン、tert-ロイシン、4-アミノシクロヘキシルアラニン(Cha)、N-メチル-ノルロイシン、3,4-デヒドロプロリン、N,N-ジメチルアミノグリシン、N-メチルアミノグリシン、4-アミノピペチジン-4-カルボン酸(4-aminopipetdine-4-carboxylic acid)、6-アミノカプロン酸、トランス-4-(アミノメチル)-シクロヘキサンカルボン酸、2-、3-、および4-(アミノメチル)-安息香酸、1-アミノシクロペンタンカルボン酸、1-アミノシクロプロパンカルボン酸、シアノプロピオン酸、2-ベンジル-5-アミノペンタン酸、ノルバリン(Nva)、4-O-メチル-トレオニン(TMe)、5-O-メチル-ホモセリン(hSM)、tert-ブチルアラニン(tBu)、シクロペンチルアラニン(Cpa)、2-アミノイソ酪酸(Aib)、N-メチルグリシン(MeG)、N-メチルアラニン(MeA)、N-メチルフェニルアラニン(MeF)、2-チエニルアラニン(2Th)、3-チエニルアラニン(3Th)、O-メチルチロシン(YMe)、3-ベンゾチエニルアラニン(Bzt)、ならびにD-アラニン(DAl)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。
【0056】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、天然ペプチド、ベータペプチドなどのペプチド誘導体、ペプチド模倣体(典型的には、非ペプチド結合または他の合成修飾を含む)、ならびにペプチド類似体であるペプトイドおよびセミペプトイド、またはそれらの任意の組み合わせを包含する。別の実施形態では、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的類似体であるアミノ酸ポリマーに適用される。
【0057】
「誘導体」または「化学誘導体」という用語は、ペプチド内の側鎖または任意の官能基上での反応によって化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有するポリペプチドの任意の化学誘導体を含む。そのような誘導体化分子としては、例えば、1つ以上の保護基(例えば、側鎖保護基(単数もしくは複数)および/もしくはN末端保護基)を有するペプチド、ならびに/または遊離アミノ基が誘導体化されてアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、アセチル基、もしくはホルミル基を形成しているペプチドが挙げられる。遊離カルボキシル基を誘導体化して、そのアミド、塩、メチルおよびエチルエステル、または他のタイプのエステル、またはヒドラジドを形成してもよい。遊離ヒドロキシル基を誘導体化して、O-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成してもよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素を誘導体化してN-イム-ベンジルヒスチジン(N-im-benzylhistidine)を形成してもよい。20種の標準的なアミノ酸残基の1つ以上の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するペプチドも、化学誘導体として含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンを、プロリンの代わりに置換してもよく、5-ヒドロキシリジンを、リジンの代わりに置換してもよく、3-メチルヒスチジンを、ヒスチジンの代わりに置換してもよく、ホモセリンを、セリンの代わりに置換してもよく、Dab、Daa、および/またはオルニチン(O)を、リジンの代わりに置換してもよい。
【0058】
さらに、ペプチド誘導体は、末端NH2アシル化、アセチル化、またはチオグリコール酸アミド化が挙げられるがこれらに限定されない化学修飾により、ならびに例えばアンモニア、メチルアミンなどでの末端および/または側鎖カルボキシ基のアミド化により、本発明のペプチドの天然の配列とは異なり得る。ペプチドは、当該技術分野で公知の方法を使用して達成され得る任意の立体構造を有する直鎖状、環状、または分岐状などのいずれかであり得る。
【0059】
方法
別の態様では、目的の化合物および/またはその任意の塩を合成する方法が存在し、目的の化合物は、式3:
【化21】
によって表され、式中、各R4は、H、アミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸を含む群から独立して選択され、少なくとも1つのR4は、Hではなく、R5は、水素、または固相に結合したリンカー基であり、方法は、本発明の化合物を提供すること:すなわち
(i)本発明の化合物のアミン保護基を脱保護することと、
(ii)N保護アミノ酸部分を本発明の化合物にカップリングさせ、それにより、固相に結合したペプチド鎖の伸長を誘導することと、
(iii)伸長するペプチド鎖をアミン塩基と接触させ、それにより、固相に結合した目的の化合物を得ることと
を含み、本発明の化合物は、式1:
【化22】
の化合物であるか、またはそれを含み、式中、Xは、水素、またはフェノール保護基であり、R1は、アミン保護基を含み、Rは、固相に結合したリンカー基を表す。いくつかの実施形態では、「固相」および「固体担体」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。いくつかの実施形態では、目的の化合物は、ペプチドを含み、ペプチドの配列は、本明細書に記載のジアゾ化チロシン(例えば、Tyr-PPC)を含む。いくつかの実施形態では、ジアゾ化チロシンは、N末端、C末端、および/またはペプチド配列内に位置する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、固相に結合した本発明の化合物を提供し、続いてステップi~iiiを行うことによって、目的の化合物を合成することを含み、固相に結合した本発明の化合物は、式1Aによって表され、式中、R1は、アミン保護基(例えば、Fmoc)であるかまたはそれを含み、Xは、水素であり、Yは、本明細書に記載されたとおりである。いくつかの実施形態では、固相に結合した本発明の化合物は、式1Aによって表され、式中、R1は、アミン保護基(例えば、Fmoc)であるかまたはそれを含み、Xは、水素であり、Yは、Oである。いくつかの実施形態では、ステップi~iiiは、順序どおりに行われる。
【0061】
別の態様では、本発明の方法は、固相に結合した本発明の化合物を提供し、続いて、
‐N保護アミノ酸部分を本発明の化合物のN末端にカップリングさせ、それにより、固相に結合したペプチド鎖の伸長を誘導するステップ、および
‐伸長するペプチド鎖(および/またはそれに結合した固相)を十分な量のアミン塩基と接触させ、それにより、固相に結合した目的の化合物を得るステップ
を行うことを含み、本発明の化合物は、式1:
【化23】
の化合物であるか、またはそれを含み、式中、Xは、水素、またはフェノール保護基であり、R1は、Hであり、Rは、固相に結合したリンカー基を表す。いくつかの実施形態では、XはHである。
【0062】
別の態様では、式A-X-B-NH2によって表される目的のペプチド配列を合成する方法が提供され、式中、Aは、第1のアミノ酸または第1のアミノ酸配列を表し、Bは、第2のアミノ酸または第2のアミノ酸配列を表し、Xは、以下:
【化24】
を表し、波状の結合は、ペプチド配列への結合点を表し、方法は、
‐固相に結合した第1のアミノ酸または第1のアミノ酸配列を提供することと、
‐脱保護ステップを行って、脱保護された第1のアミノ酸または脱保護された第1のアミノ酸配列(例えば、脱保護されたN末端アミンを含む)を得ることと、
‐脱保護された第1のアミノ酸または脱保護された第1のアミノ酸配列を、その任意の塩を含む式IIまたは2のいずれか1つの化合物にカップリングさせることであって、式中、R1がアミン保護基を含むことと、
‐アミン保護基を脱保護して脱保護されたN末端アミンを得ることと、
‐第2のアミノ酸をカップリングさせること、または第2のアミノ酸配列のSPPSを行うことと、
‐続いてステップiiiを行い、それにより、固相に結合した目的のペプチド配列を得ることと
を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、方法は、ペプチド配列の切断を行って目的のペプチド配列を得ることをさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、方法のステップの各々(例えば、ステップi~iii)は、対応する試薬の溶液を適用することによって行われる。固相反応は、試薬と伸長する鎖または化合物との間の反応を誘導するように、伸長する鎖または化合物と接触している固体担体に試薬を含む溶液を適用することによって行われることを、当業者なら理解するであろう。さらに、固体担体上での反応は、樹脂に十分な膨潤を提供するように採用された溶媒を必要とし、それにより、反応を容易にするか、または各ステップの反応収率を改善することは明らかなはずである。さらに、溶媒は、樹脂と適合性でなければならず、例えば、溶媒は、樹脂の物理的または化学的分解を誘導することなく、樹脂に対して不活性でなければならない。DMF、DCM、NMPなどの様々な溶媒を、固相反応に実装することができる。固相反応に好適であるかまたは適合性である他の溶媒が、当該技術分野で公知である。的確な溶媒は、樹脂の化学組成、樹脂膨潤、溶媒が試薬のいずれかを溶解する能力などに依存し、好ましくは、乾燥溶媒が、本発明の方法のステップのいずれか1つに使用される。特に、方法のステップiiに乾燥溶媒(含水量1%未満)を使用することが望ましい。
【0065】
いくつかの実施形態では、方法のステップの各々(例えば、ステップi~iii)は、顕著な変換、例えば、その間の任意の範囲を含む少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%の反応収率を誘導するために十分な条件下で行われる。いくつかの実施形態では、方法のステップの各々(例えば、ステップi~iii)は、空気雰囲気下、その間の任意の範囲を含む10~50℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態では、方法のステップの各々(例えば、ステップi~iii)は、溶媒の沸点未満の温度で行われる。
【0066】
いくつかの実施形態では、方法のステップの各々(例えば、ステップi~iii)は、1回行われる。いくつかの実施形態では、方法のステップのいずれか1つ(例えば、ステップi~iiiのいずれか1つ)は、繰り返される。いくつかの実施形態では、方法のステップのいずれか1つは、複数回(例えば、2~20回、2~4回、4~6回、6~10回、10~20回(間の任意の範囲を含む))行われる。いくつかの実施形態では、方法のステップのいずれか1つは、1回行われるか、または反応が完了するまで複数回行われる。当業者であれば、反応がいつ完了するかを決定することができるであろう。例えば、カップリング(ステップii)の変換効率を、ニンヒドリン試験(カイザー試験とも呼ばれる)を行うことによって決定することができる。脱保護ステップiの効率を、脱保護溶液のUV吸光度を測定すること、したがって、切断されたアミン保護基(例えば、Fmoc脱保護の)の濃度を決定することによって、決定することができる。さらに、本発明のステップのいずれかの持続時間を、本明細書に記載されるように各ステップの収率をモニターすることによって、最高効率を得るように調節することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の方法のステップiは、固体担体に結合した化合物または伸長する鎖に、少なくとも1秒、少なくとも1分(m)、少なくとも5m、少なくとも10m、少なくとも20m(間の任意の範囲を含む)の期間、脱保護溶液を適用することを含む。いくつかの実施形態では、ステップiは、アミンの脱保護またはアミン保護基の切断をもたらす。
【0068】
いくつかの実施形態では、脱保護溶液は、適切な量の脱保護剤(例えば、酸または塩基)を、アミン保護基の、その間の任意の範囲を含む少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、少なくとも99.9%の脱保護に十分な量で含む。様々な脱保護溶液が、当該技術分野で周知である(Fmoc脱保護のための20%ピペリジン溶液、またはBoc脱保護のための50%TFA溶液など)。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の方法のステップiiは、固体担体に結合した化合物または伸長する鎖に、その間の任意の範囲を含む少なくとも1分(m)、少なくとも5m、少なくとも10m、少なくとも20m、少なくとも30m、少なくとも1時間、少なくとも10h、またはそれ以上の期間、カップリング溶液を適用することを含み、カップリング溶液は、十分な量のアミノ酸部分を含む。いくつかの実施形態では、本発明のステップiiは、アミノ基と次のアミノ酸との間のペプチド結合の形成をもたらす(または、次のアミノ酸のカップリングをもたらす)。いくつかの実施形態では、本発明の方法のステップiiは、アミノ酸部分(例えば、N保護アミノ酸部分)を本発明の化合物のアミノ基にカップリングさせ、それにより、固相上での鎖の伸長を誘導することを含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法のステップiiは、ペプチド鎖を伸長させるためである。いくつかの実施形態では、本発明の方法のステップiiは、固相に結合した伸長するペプチド鎖の伸長を誘導する。
【0070】
いくつかの実施形態では、アミノ酸部分は、N保護アミノ酸部分を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸部分は、アミノ酸の活性エステルを含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸部分は、アミノ酸のN保護活性エステルを含む。活性エステルは、上記のとおりである。いくつかの実施形態では、アミノ酸部分は、アミノ酸を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、十分な量のN保護アミノ酸部分、および任意選択で、十分な量の有機塩基(DIPEAまたはコリジンなど)を含む。いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、十分な量のN保護アミノ酸部分、および任意選択で、十分な量のカップリング剤を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、十分な量のN保護アミノ酸およびカップリング剤を含む。カップリング剤は、当該技術分野でよく知られており、例示的なカップリング剤は、上記のとおりである。いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、1~2モル当量(化合物または伸長する鎖のアミンに対して)のN保護アミノ酸およびカップリング剤を含む。いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、1~2モル当量のN保護アミノ酸およびカップリング剤を含み、塩基を欠いている。いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、1~5モル当量(間の任意の範囲を含む)のN保護アミノ酸およびカップリング剤を含み、塩基を欠いている。
【0073】
いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、1~5モル当量(間の任意の範囲を含む)のN保護アミノ酸部分を含み、カップリング剤および塩基を欠いている。いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、1~5、1~2、2~4モル当量(間の任意の範囲を含む)のアミノ酸のN保護活性エステル(例えば、NHSエステル)を含み、カップリング剤および塩基を欠いている。いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、その間の任意の範囲を含む4モル当量未満、3モル当量未満、2モル当量未満、1.6モル当量未満の塩基を含む(例えば、三級アミンなどの有機アミン塩基)。
【0074】
いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、1~6、1~4、1~2、2~4モル当量のN保護アミノ酸部分を含む。いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、N保護アミノ酸部分を、その間の任意の範囲を含む、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、少なくとも99.9%のカップリング収率のために十分な量で含む。いくつかの実施形態では、カップリング溶液は、N保護アミノ酸部分を、伸長する鎖の遊離アミン基への選択的カップリングをもたらすために十分な量で含む。本明細書で使用される場合、カップリング選択性という用語は、アミノ基へのカップリングとチロシンのフェノール環のヒドロキシ基へのカップリングとの比率を指す。
【0075】
スキーム1に表されるように、カップリングは、アミノ基(伸長する鎖のN末端)およびチロシン側鎖のOH基の両方で起こり得る。OH-カップリング副生成物を最小限にするために、カップリング選択性を最大限にすることが望ましい。
【化25】
【0076】
カップリング溶液の厳密な組成は、アミノ酸部分に依存し、任意選択で特定のカップリング剤に依存することを、当業者なら理解するであろう。さらに、カップリング溶液の厳密な組成は、カップリング段階の選択性および収率に基づいて調節することができる。非限定的な例示的カップリング溶液は、実施例の節に記載されるとおりである。
【0077】
いくつかの実施形態では、方法のステップ(例えば、ステップi~iii)は、順序どおりに行われる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、本発明の化合物を固相にロードし、それにより、固相に結合した本発明の化合物を得るステップを行うことを含む。ローディングは、周知の手順に従って行われる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ステップiiiを行い、それにより、上記スキーム1に示されるような、チロシンの(例えば、フェノール環の)ヒドロキシ基にカップリングした伸長する鎖を含む副生成物を除去することを含む。実施例の節に記載されるように、本発明者らは、ジアゾ化チロシンを含むペプチド(例えば、TRS)のSPPSの新規手法を行った。スキーム1に例証されるように、本明細書に記載のSPPS経路を実装することによって、発明者らは、ジアゾ化チロシンの無保護フェノール環で起こる副反応による著しい副生成物の形成を観察した(例えば化合物13、以下のスキーム2を参照)。したがって、所望の生成物を十分な収率で得るために、副生成物を切断しなければならない。
【0080】
この目的のために、本発明は、そのいくつかの実施形態において、副生成物の除去のための効率的で単純な手順(本明細書に記載される本発明のステップiii)を提供し、したがって、TRSなどのジアゾ化チロシンを含むペプチドのSPPS合成を容易にする。
【0081】
いくつかの実施形態では、ステップiiiは、伸長するペプチド鎖を、アミン塩基、または十分な量のアミン塩基を含む溶液もしくは組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ステップiiiは、伸長するペプチド鎖を、適切な条件下で十分な量のアミン塩基を含む切断溶液と接触させることを含み、十分な量は、副生成物の実質的な(少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の)切断または除去を誘導する量である。いくつかの実施形態では、十分な量は、その間の任意の範囲を含む、少なくとも1、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、10~500、10~100、50~500、50~100、10~50、1~100、1~10、1~500モル当量のアミン塩基を含む。いくつかの実施形態では、適切な条件は、その間の任意の範囲を含む、1秒~1時間の範囲の接触時間、および/または5~90、もしくは15~40,もしくは15~30℃の範囲の操作可能温度を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、アミン塩基は、Fmoc脱保護剤である。いくつかの実施形態では、アミン塩基は、Fmocを十分に脱保護することができる(例えば、固体担体上で少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%のFmoc脱保護をもたらす)。いくつかの実施形態では、アミン塩基は、それらの任意の組み合わせを含む、一級アミン、二級アミン、グアニジン系化合物、およびアミジン系化合物から選択される。いくつかの実施形態では、アミン塩基は、直鎖アミンまたは環状アミンである。
【0083】
いくつかの実施形態では、アミン塩基は、ピペリジン、DBU、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ピロリジン、モルホリン、4-メチルピペリジン、テトラメチルグアニジン、およびDBN、またはそれらの任意の組み合わせのいずれか1つを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、アミン塩基は、実質的に三級アミンを欠いている。いくつかの実施形態では、アミン塩基は、DIPEA、TEA、または両方を実質的に欠いている。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、任意選択で、ステップ(iii)を行う前にN保護アミノ酸部分を脱保護するステップ(iv)を行うことを含む。いくつかの実施形態では、ステップivは、樹脂に結合した伸長する鎖に脱保護溶液を適用し、それにより、アミン保護基を除去することを含み、脱保護溶液は、本明細書に記載されたとおりである。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、前記ステップ(iii)を行う前に、ステップ(ii)およびステップ(iv)を続いて繰り返すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、ステップ(ii)およびステップ(iv)が行われ、続いて繰り返され、それにより、ペプチド鎖を伸長させる。いくつかの実施形態では、ステップ(ii)およびステップ(iv)は、所定の配列(例えば、所定のアミノ酸配列)を合成するために繰り返される。いくつかの実施形態では、ステップ(ii)およびステップ(iv)は、所定の配列を合成するために複数回繰り返され、複数回は、本明細書に記載されたとおりである。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、合成された化合物(例えば、ペプチド)を固体担体から切断することをさらに含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、式4:
【化26】

によって表されるTRSを合成するための方法であり、方法は、ステップi~iiiを含み、式4によって表されるペプチド配列を合成するために、ステップ(iii)を行う前にステップ(ii)およびステップ(iv)を繰り返すことをさらに含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、SPPSを行い、それにより、固体担体上でペプチド鎖:
【化27】
を合成することであって、式中、PGは、保護基(例えば、Fmoc)であり、ペプチド鎖は、アミノ酸(複数可)の側鎖に1つ以上の保護基をさらに含むことと、(ii)続いて、ペプチド鎖の切断を行い(PGおよびリジンの保護基を保持するのに十分な条件下で)、それにより、保護されたペプチド鎖:
【化28】
を得ることであって、リジン、アルギニン、トレオニン、または両方の側鎖が、任意選択で保護基に結合していることと、(iii)保護されたペプチド鎖と化合物:
【化29】
とのカップリングを行い、それにより、TRSを得ることとを含む、TRSを合成する方法が存在する。いくつかの実施形態では、カップリングは、保護されたペプチド鎖を十分な量のカップリング溶液と混合し、それにより活性エステルを得、続いて化合物:
【化30】
を活性エステル溶液に加えることによって行われる。
【0090】
いくつかの実施形態では、化合物:
【化31】
は、式2の化合物を提供することであって、式中、R1がBoc(例えば、実施例1に記載される化合物)であることと、本明細書に記載されるようにBocを脱保護することとによって合成される。
【0091】
いくつかの実施形態では、保護されたペプチド鎖:
【化32】
を提供することと、保護されたペプチド鎖と化合物:
【化33】
とのカップリングを行い、それにより、TRSを得ることとを含む、TRSを合成する方法が存在する。
【0092】
いくつかの実施形態では、方法は、固体担体に結合したジアゾ化チロシンを提供することと、アミン保護基を脱保護し、それにより遊離アミン基を得ることと、遊離アミン基を次のアミノ酸またはポリペプチドにカップリングさせることとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、既定の配列(例えば、既定のアミノ酸配列)を合成するために、脱保護ステップおよびカップリングステップを(例えば、本明細書に記載されるように複数回)繰り返すことをさらに含む。
【0093】
別の態様では、ジアゾ化チロシンを含む目的のペプチド配列(その任意の誘導体を含む)を合成する方法が存在し、ジアゾ化チロシンは、アゾ結合
【化34】
を介してチロシンのフェノール環に結合した置換基を含む。いくつかの実施形態では、ジアゾ化チロシンは、式3A:
【化35】
によって表されるジアゾ化チロシンであるか、またはそれを含み、式中、R6は、1つ以上の置換基を含み、波状の結合は、目的のペプチド配列への結合点を表し、波状の結合の少なくとも1つは、ペプチド配列への結合点を表す。いくつかの実施形態では、波状の結合の1つは、ペプチド配列への結合点を表し、別の波状の結合は、(i)R1、N保護基、アシル、OR、O、OH、およびHのいずれか1つ、(ii)目的のペプチド配列への結合点を表す。
【0094】
いくつかの実施形態では、方法は、化合物:
【化36】
を固体担体上の伸長するペプチド鎖にカップリングさせることと、ステップiiiを行い、それにより、固体担体に結合した目的のペプチド配列を得ることとを含み、式中、R1はアミン保護基を含み、R6は本明細書に記載されたとおりである。
【0095】
いくつかの実施形態では、方法は、次のN保護アミノ酸をN末端にカップリングさせることと、アミン保護基を脱保護して脱保護されたN末端アミンを得ることとをさらに含み、カップリングステップおよび脱保護ステップは、ステップiiiを行う前に行われる。いくつかの実施形態では、方法は、カップリングステップおよび脱保護ステップを繰り返し、それにより、固体担体に結合した目的のペプチド配列を得ることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、ペプチド配列の切断を行って目的のペプチド配列を得ることをさらに含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、目的のペプチド配列は、式A-X-B-NH2によって表され、式中、Aは、第1のアミノ酸配列を表し、Bは、第2のアミノ酸配列を表し、Xは、ジアゾ化チロシンを表し、方法は、
-固相に結合した第1のアミノ酸配列を提供することと、
-脱保護ステップを行って脱保護された第1のアミノ酸配列(例えば、脱保護されたN末端アミンを含む)を得ることと、
-脱保護された第1のアミノ酸配列を、化合物:
【化37】
にカップリングさせることであって、式中、R1がアミン保護基を含み、R6が本明細書に記載されたとおりであることと、
-アミン保護基を脱保護して脱保護されたN末端アミンを得ることと、
-第2のアミノ酸配列のSPPSを行い、それにより、ペプチド鎖を伸長させることと、
-続いてステップiiiを行い、それにより、固相に結合した目的のペプチド配列を得ることと
を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、方法は、ペプチド配列の切断を行って目的のペプチド配列を得ることをさらに含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、R6は、ホスホリルコリン、(C~C)アルキル-アリール、(C~C)アルキル-ヘテロアリール、(C~C)アルキル-(C~C)シクロアルキル、任意選択で置換されたC~Cヘテロシクリル、ハロゲン、-NO、-CN、-OH、-CONH、-CONR、-CNNR、-CSNR、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR、-NC(=S)OR、-NC(=S)NR、-SOR、-SOR、-SR、-SOOR、-SON(R)、-NHNR、-NNR、C~Cハロアルキル、任意選択で置換されたC~Cアルキル、-NH、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、C~Cアルキル-NR、C~Cアルキル-SR、-CONH(C~Cアルキル)、-CON(C~Cアルキル)、-COH、-COR、-OCOR、-OCOR、-OC(=O)OR、-OC(=O)NR、-OC(=S)OR、-OC(=S)NR、ポリアミノ酸、ペプチド、またはそれらの組み合わせを含む置換基を表す。さらなる置換基が、当該技術分野で周知である。
【0099】
いくつかの実施形態では、方法は、SPPSを行い、それによりペプチド鎖を合成することと、ジアゾ化チロシンをペプチド鎖(例えば、伸長するペプチド鎖のN末端)にカップリングさせることとを含む。いくつかの実施形態では、ジアゾ化チロシンは、式3B:
【化38】
によって表され、式中、R6およびR4は、本明細書に記載されたとおりであり、R5は、H、または活性エステルであるか、または存在しない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR4は、アミン保護基(例えば、Fmoc)であるか、またはそれを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、方法は、(i)SPPSを行い、それによりペプチド鎖を合成することと、(ii)続いて、ペプチド鎖の切断を行い(N末端もしくはC末端のいずれかおよび/または側鎖の保護基を保持するのに十分な条件下で)、それにより、脱保護されたN末端または脱保護されたC末端を含むペプチド鎖を得ることと、(iii)脱保護されたN末端または脱保護されたC末端と、本明細書に記載されるジアゾ化チロシン(例えば、式3Bのジアゾ化チロシン)とのカップリングを行うこととを含み、ステップ(iii)は、溶液中で(例えば、反応物と適合性である有機溶媒を利用することによって)行われる。
【0101】
いくつかの実施形態では、固体担体に結合したジアゾ化チロシンは、式3C:
【化39】
によって表され、式中、R6は、本明細書に記載されたとおりであり、少なくとも1つのR4は、アミン保護基を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されたように、ステップiiiを行うことによって副生成物を除去し、それにより、実質的に副生成物を欠いている既定の配列を得ることをさらに含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、その間の任意の範囲を含む、10mol%未満、8mol%未満、5mol%未満、1mol%未満、0.5mol%未満、0.1mol%未満の副生成物の形成をもたらす。いくつかの実施形態では、副生成物の量は、ペプチド配列(例えば、固体担体に結合しているか、または切断後)の全量に対する生成物のモルパーセントに関係する。
【0104】
定義
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖および分岐鎖基を含む脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキル基は、21~100個の炭素原子、より好ましくは21~50個の炭素原子を有する。例えば「21~100」という数値範囲が本明細書で述べられるときは常に、基、この場合アルキル基が、21個の炭素原子、22個の炭素原子、23個の炭素原子など、100個以下の炭素原子を含有し得ることを暗示する。本発明の文脈では、「長鎖アルキル」は、その主鎖(連続した共有結合原子の最長経路)に少なくとも20個の炭素原子を有するアルキルである。したがって、短鎖アルキルは、20個以下の主鎖炭素を有する。アルキルは、本明細書で定義される場合、置換または非置換であり得る。
【0105】
「アルキル」という用語はまた、本明細書で使用される場合、飽和または不飽和炭化水素を包含し、したがって、この用語は、アルケニルおよびアルキニルをさらに包含する。
【0106】
「アルケニル」という用語は、本明細書で定義される場合、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和アルキルを表す。アルケニルは、上記のように、1つ以上の置換基によって置換され得るか、または非置換であり得る。
【0107】
「アルキニル」という用語は、本明細書で定義される場合、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する不飽和アルキルである。アルキニルは、上記のように、1つ以上の置換基によって置換され得るか、または非置換であり得る。
【0108】
「シクロアルキル」という用語は、環の1つ以上が完全に共役したπ電子系を有さない、すべてが炭素の単環または縮合環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。シクロアルキル基は、本明細書で示されるように、置換または非置換であり得る。
【0109】
「アリール」という用語は、完全に共役したπ電子系を有する、すべてが炭素の単環または縮合多環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。アリール基は、本明細書で示されるように、置換または非置換であり得る。
【0110】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるO-アルキルおよび-O-シクロアルキル基の両方を表す。
【0111】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で定義される-O-アリールを表す。
【0112】
本明細書の一般式におけるアルキル、シクロアルキル、およびアリール基の各々は、1つ以上の置換基によって置換され得、各置換基は、独立して、例えば、ハライド、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、チオアルコキシ、カルボキシ、アミド、アリール、およびアリールオキシであり得、分子中の置換される基およびその位置に依存する。さらなる置換基も企図される。
【0113】
「ハライド」、「ハロゲン」、または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表す。
【0114】
「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハライドによってさらに置換された、本明細書で定義されるアルキル基を表す。
【0115】
「ハロアルコキシ」という用語は、1つ以上のハライドによってさらに置換された、本明細書で定義されるアルコキシ基を表す。
【0116】
「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を表す。
【0117】
「メルカプト」または「チオール」という用語は、-SH基を表す。
【0118】
「チオアルコキシ」という用語は、本明細書で定義される-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を表す。
【0119】
「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書で定義される-S-アリールおよび-S-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0120】
「アミノ」という用語は、本明細書に記載されるR’およびR’’を有する-NR’R’’基を表す。
【0121】
「ヘテロシクリル」という用語は、環(単数もしくは複数)内に窒素、酸素、および硫黄などの1つ以上の原子を有する単環または縮合環基を表す。環は、1つ以上の二重結合も有し得る。しかしながら、環は、完全に共役したπ電子系を有さない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノなどである。
【0122】
「カルボキシ」または「カルボキシレート」という用語は、-C(O)OR’基を表し、式中、R’は、本明細書で定義される、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を通して結合する)、またはヘテロシクリル(環炭素を通して結合する)である。
【0123】
「カルボニル」という用語は、-C(O)R’基を表し、式中、R’は、上で定義されるとおりである。
【0124】
上記用語は、それらのチオ誘導体(チオカルボキシおよびチオカルボニル)も包含する。
【0125】
「チオカルボニル」という用語は、-C(S)R’基を表し、式中、R’は、上で定義されるとおりである。
【0126】
「チオカルボキシ」基は、-C(S)OR’基を表し、式中、R’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0127】
「スルフィニル」基は、-S(O)R’基を表し、式中、R’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0128】
「スルホニル」または「スルホネート」基は、-S(O)2R’基を表し、式中、R’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0129】
「カルバミル」または「カルバメート」基は、-OC(O)NR’R’’基を表し、式中、R’は、本明細書で定義されるとおりであり、R’’は、R’について定義されるとおりである。
【0130】
「ニトロ」基は、-NO2基を指す。
【0131】
「アミド」という用語は、本明細書で使用される場合、C-アミドおよびN-アミドを包含する。
【0132】
「C-アミド」という用語は、-C(O)NR’R’’末端基または-C(O)NR’-連結基を表し、これらの語句は上で定義されており、式中、R’およびR’’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0133】
「N-アミド」という用語は、-NR’’C(O)R’末端基または-NR’C(O)-連結基を表し、これらの語句は上で定義されており、式中、R’およびR’’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0134】
「カルボン酸誘導体」という用語は、本明細書で使用される場合、カルボキシ、アミド、カルボニル、無水物、炭酸エステル、およびカルバメートを包含する。
【0135】
「シアノ」または「ニトリル」基は、-CN基を指す。
【0136】
「アゾ」または「ジアソ」という用語は、-N=NR’末端基または-N=N-連結基を表し、これらの語句は上で定義されており、上で定義されるR’を有する。
【0137】
「グアニジン」という用語は、-R’NC(N)NR’’R’’’末端基または-R’NC(N)NR’’-連結基を表し、これらの語句は上で定義されており、式中、R’、R’’、およびR’’’は、本明細書で定義されるとおりである。
【0138】
本明細書で使用される場合、「アジド」という用語は、-N3基を指す。
【0139】
「スルホンアミド」という用語は、本明細書で定義されるR’およびR’’を有する-S(O)2NR’R’’基を指す。
【0140】
「ホスホニル」または「ホスホネート」という用語は、上で定義されるR’を有する-OP(O)-(OR’)2基を表す。
【0141】
「ホスフィニル」という用語は、上で定義されるR’およびR’’を有する-PR’R’’基を表す。
【0142】
「アルキルアリール」という用語は、本明細書に記載されるアリールによって置換された、本明細書で定義されるアルキルを表す。例示的なアルキルアリールは、ベンジルである。
【0143】
「ヘテロアリール」という用語は、環(単数もしくは複数)内に例えば窒素、酸素、および硫黄などの1つ以上の原子を有し、さらに、完全に共役したπ電子系を有する、単環(例えば、C5~C6ヘテロアリール環)または縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)の基を表す。いくつかの実施形態では、「ヘテロアリール」および「C5~C6ヘテロアリール」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、およびプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、上記のように、1つ以上の置換基によって置換され得るか、または非置換であり得る。代表的な例は、チアジアゾール、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0144】
本明細書で使用される場合、本明細書では交換可能とされる「ハロ」および「ハライド」という用語は、ハロゲンの原子、すなわち、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表し、本明細書ではフッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物とも呼ばれる。
【0145】
「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハライドによってさらに置換された、上で定義されるアルキル基を表す。
【0146】
本発明のさらなる目的、利点、および新規特徴は、限定を意図するものではない以下の実施例を検討すると、当業者に明らかになるであろう。さらに、上で描写され、以下の特許請求の範囲で請求される、本発明の様々な実施形態および態様の各々は、以下の実施例において実験的支持を見出す。
【0147】
明確にするために別々の実施形態に関連して記載された本発明の特定の特徴をまた、組み合わせて単一の実施形態に提供してもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態に関連して記載された本発明の様々な特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分組み合わせで、または本発明の任意の他の記載された実施形態において好適であるように、提供され得る。様々な実施形態に関連して記載された特定の特徴は、実施形態がそれらの要素がないと動作不能である場合を除き、それらの実施形態の必須の特徴と見なされるべきではない。
【0148】
本発明は、その特定の実施形態に関連して記載されてきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内にあるすべてのそのような代替、修正、および変形を包含することが意図されている。
【0149】
本明細書で言及されたすべての刊行物、特許、および特許出願は、明細書への参照によりその全体が、個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個々に示されて参照により本明細書に組み込まれるのと同じ程度に、本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認と解釈されるものではない。節の見出しが使用される限りにおいて、それらは、必ずしも限定と解釈されるべきではない。
【0150】
実施例、
実施例1
BOC-TYRへのホスホリルコリンのコンジュゲーション
1)ジアゾニウム塩の調製
4-アミノフェニル(2-(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(50mg、0.18mmol)を、1M水性HCl(1mL)に溶解し、氷水浴中で冷却し、亜硝酸ナトリウム(12.6mg、0.18mmol)を、単一バッチで加えた。得られた溶液を、0℃で30分間撹拌した。
【0151】
2)アゾカップリング
NaHCO3(1M)+NaOH緩衝液(pH10)(3.3mL)+アセトニトリル(1.2mL)中のBOC-L-チロシン(107mg、0.38mmol)を含む新規混合物を調製した。混合物を氷水浴中で冷却した。ジアゾニウム塩混合物を滴下した。赤色溶液が形成された。これの混合を、0℃で6分間続けた。反応混合物を、1N水性HClでpH=~3に酸性化した。
【0152】
得られた溶液を、終夜凍結乾燥し、続いて、(例えば、分取MPLCによって)精製して、化合物:
【化40】
(式中、RはBocである)を得た。
【0153】
実施例2
本発明の例示的化合物の調製
ジアゾニウム塩の調製:
【化41】
4-アミノフェニル(2-(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(250mg、0.912mmol)を、1M水性HCl(5mL)に溶解し、氷水浴中で冷却し、亜硝酸ナトリウム(62.9mg、0.912mmol)を、単一バッチで加えた。得られた溶液を、0℃で30分間撹拌した。アゾカップリング、飽和NaHCO3(17mL)+アセトニトリル(12.5mL)中のFmoc-Tyr-OH(739mg、1.832mmol)を含む新規混合物を調製した。得られた懸濁液/溶液を氷水浴中で冷却した。ジアゾニウム塩混合物を滴加した。0℃で混合した。反応混合物は、徐々に黄色になった。5.5h後、LCMSは、完全な変換を示した。反応混合物を、1N HClでpH~6に酸性化し、黄色がかった懸濁液は、透明な橙色溶液に変化し、これを凍結乾燥した。これは、2.10gを提供した。DMSO/H2O/MeCN(~1:1:1)の混合物中に溶解し、酸性分取MPLCによる5回の実行で精製した。画分を組み合わせ、終夜凍結乾燥して、所望の生成物(化合物10)を得た。
【0154】
実施例3
TRSのSPPS合成
化合物10のヒドロキシ基の保護の困難に直面したため、発明者らは、TRSのSPPS合成のための新規戦略を探索した。
【0155】
発明者らは、
N保護(Fmoc)ホスホリルコリン修飾チロシン(例えば、化合物10)を実装することによってSPPS合成を開始し、200mgの化合物10を、CTC樹脂にロードした。手短に述べると、2-クロロトリチルクロリド樹脂(1.0~1.2mmol/g、200~400mesh)(450mg、1.441mmol)を、ジクロロメタン(12mL)中で30分間揺動することによって膨潤させた。溶媒を除去し、DIPEA(0.177mL、1.016mmol)を含有する(S,E)-4-((5-(2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-2-カルボキシエチル)-2-ヒドロキシフェニル)ジアゼニル)フェニル(2-(トリメチルアンモニオ)-エチル)ホスフェート(200mg、0.290mmol)のジクロロメタン(12mL)溶液を加えた(基質はDCMに溶解せず、DIPEAを加えた後に溶液が得られた)。
【0156】
17h後、溶液を除去し、樹脂をジクロロメタンで洗浄した(3×10mL、各洗浄ステップ>2分)。キャッピング溶液(CH2Cl2:MeOH:DIPEA 9:1:0.5)を加え(10.5mL)、樹脂を1時間揺動した。次いで、樹脂をジクロロメタン(3×10mL)で洗浄し、真空中で乾燥した。
【0157】
次いで、化合物13の単離(スキーム2参照)で見られるような、先に発見されたチロシンO-アシル化の形成の防止を目的として、後続の化学のいくつかの条件を並行して検討するために、この樹脂を均等に分割した。異なる反応条件を、表1に概説した(以下を参照)。
【化42】

【表1】
【0158】
表1に示すように、様々なカップリング条件を試験した。エントリa~cは、実質的な量の副生成物(13)の形成をもたらした。DMF中のFmoc-Gly-OSu(エントリd)を使用することによって、改善が得られた。この場合、副生成物(13)の形成は、所望の化合物12に対してわずか3%に減少した。それにもかかわらず、これらの方法のどれも、13の形成を完全に抑制することはできず、これは副生成物(化合物13)の蓄積をもたらし得るので、依然としてさらなるペプチド合成にとってリスクとなる。
【0159】
驚くべきことに、発明者らは、副生成物(またはスキーム3の化合物13によって表されるフェノールエステル副生成物)を、DMF中でピペリジンまたはDBUを用いて標準的なFmoc脱保護条件下で切断することができ、以下に示すように、化合物15をきれいに提供することを見出した。
【化43】
【0160】
発明者らはさらに、副生成物の切断のための(ピペリジンおよびDBU以外の)さらなるアミン塩基を実装することに成功した。一級および二級アミン、グアニジン系化合物、ならびにアミジン系化合物を含む多数のアミン塩基を、副生成物の切断のために実装することに成功した。さらに、発明者らは、三級アミンも副生成物の切断のために実装することができるが、三級アミンはしばしば、より長い反応時間および/または副生成物切断ステップのその後の繰り返しを必要とすることを観察した。この目的のために、発明者らは、一級および二級アミン、グアニジン系化合物、ならびにアミジン系化合物が、改善された反応性によって特徴づけられ、したがって、同様の反応条件下の三級アミンと比較して、より効率的な副生成物の切断をもたらす(例えば、目的の化合物の改善された収率および/または純度をもたらす)ことを見出した。
【0161】
発明者らが試験することに成功したアミン塩基(少なくとも約95%の副生成物の切断)は、以下のとおりである:ピペリジン、DBU、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ピロリジン、モルホリン、4-メチルピペリジン、テトラメチルグアニジン、およびDBN。アミン塩基は、DMF中の5~20%溶液の形態で実装されている(約30分のインキュベーション時間)。発明者らはさらに、ピロリジン、ピペリジン、DBU、シクロヘキシルアミン、およびエタノールアミンが、副生成物の切断について優れた効率(ほぼ100%の収率)を有することを観察した。さらに、一級および二級アミン、グアニジン系化合物、ならびにアミジン系化合物(特に、ピロリジン、ピペリジン、DBU、シクロヘキシルアミン、およびエタノールアミン)は、ほぼ完全なFmoc脱保護をもたらし、その結果、化合物15が99~100%の収率で得られたことが見出された。
【0162】
化合物11を得るために化合物10を樹脂にロードした後(スキーム2参照)、Fmoc-Gly-OHとのペプチドカップリングを、標準的な条件下で、固相上で繰り返し、その後、Fmoc脱保護を行った。次に、Boc-Arg(Pbf)-OHとの別のペプチドカップリングステップを行った(スキーム4、ステップ1~4)。次いで、樹脂を2つの部分に分割した。第1の部分を、樹脂切断(ステップ5a)のためにHFIPで直接処理し、これは、化合物16および17の混合物を提供した。第2のバッチを、フェノールエステルを切断するために、まずDMF中のピペリジンで処理した(ステップ5b)。次いで、樹脂切断ステップを行い(ステップ6)、これは、所望のトリペプチド16を、微量のジカップリング化合物17を含まずに、非常に高い純度で提供した。
【化44】
【0163】
これらの結果は、標準的なSPPS条件下でのより長いペプチドの固相合成のための道を開き、遊離チロシンOHのO-アシル化の問題は、DMF中のピペリジンでのFmoc脱保護ステップ中のフェノールエステル副生成物の切断によって、効率的に克服される。
【0164】
TRSのSPPS合成の標準的な非限定的手順を、以下に記載する:
【化45】
【0165】
化合物10(スキーム2)を、上記のように固体担体にロードし、それにより、化合物11の形成をもたらした。
【0166】
Fmoc脱保護:化合物10(化合物11)に結合した樹脂を、ペプチドグレードDMF(2mL、4.05mmol)中のピペリジン20%(w/w)中で30分間揺動した。ピペリジン溶液を除去し、樹脂をDMF(5mL、ペプチドグレード)で洗浄した。この手順を2回繰り返した。
【0167】
BocベースのSPPS合成の場合、化合物10のBoc保護代替物を使用することができる。SPPS合成は、FmocベースのSPPS合成とほとんど同一であるが、Boc切断は、通常DCM中に50%TFAを含む酸性条件下で行われる。Boc切断の厳密な条件は、当該技術分野で周知である。BocベースのSPPSは、それと適合性である固体担体を必要とすることが理解される。BocベースのSPPSのための固体担体は、当該技術分野で周知である。
【0168】
樹脂に結合したFmoc-チロシン-PPC(11)を、次いで、TRSへのペプチド固相合成手順に使用した(スキーム10)。各アミノ酸を、DMF中でDIPEAとともにHBTUおよびHOBtを使用して、標準的な条件下でカップリングさせた。いくつかの実施形態では、各カップリングステップを、複数回(例えば、2回)行った。
【0169】
フェノールエステル副生成物の除去およびペプチドの切断:
樹脂を、ペプチドグレードDMF(2mL、4.05mmol)中のピペリジン20%(w/w)中で30分間揺動し、次いで、DMF(2×3mL)で洗浄した。この手順を2回繰り返し、副生成物のほぼ完全な除去をもたらした(分析研究によって確認された)。あるいは、DMF中のDBU溶液が、副生成物の除去のためにうまく実装された。
【0170】
最後に、ペプチドを、TFA/TIS/H2O(18:1:1)を使用して樹脂から切断し、同時にすべての酸に不安定な保護基を除去した。粗ペプチドを、水に溶解し、その後、Pbf残渣を、EtOAcおよびEt2Oでの抽出によって容易に除去することができた。凍結乾燥後、粗TRS(TFA塩)を、収率63%、純度88%で得た。分取HPLCによる精製は、240mg(10から51%)の所望の化合物を高純度で提供した。あるいは、粗ペプチド(例えば、TRS、および以下に開示されるさらなるペプチドのいずれか1つ)は、分取逆相MPLCによって精製されており、目的のペプチドを高純度で得た。
【0171】
いくつかの実施形態では、副生成物の除去およびN末端保護基の脱保護は、同時に行われる(例えば、アミン塩基切断溶液を固体担体に結合したペプチド鎖に適用することによって、N末端保護基および副生成物の両方を同時に除去する)。
【0172】
さらに、本明細書に記載されるように合成されたTRSを、HPLCおよびLC/MSによってさらに分析して、その不純物プロファイルを得た。不純物プロファイルを、PC部分をチロシンのフェノール環にカップリングさせるために、Thr-Lys-Pro-Arg-Gly-TyrのSPPS後修飾(ジアゾ化)によって合成されたTRSの不純物プロファイルとさらに比較した。驚くべきことに、発明者らは、本明細書に記載されるように合成されたTRSが、図1Aおよび2Aに示されるような異なる不純物プロファイルによって特徴づけられることを確認した。発明者らは、SPPS後修飾によって合成されたTRSが1.27不純物によって特徴づけられる一方で、本明細書に記載されるように合成されたTRSがそのような不純物を欠いていることを観察した。1.27不純物の提唱される構造に基づくと、そのような不純物がSPPS後修飾(ジアゾ化)に特有であることは明らかなはずである。
【0173】
さらに、本明細書に記載されるように合成されたTRSは、保護基(単数または複数)を欠く本発明の化合物に対応する、プロセスに特有の不純物(上に開示された0.7不純物)によって特徴づけられた。したがって、本明細書に記載されるように合成されたTRS(またはジアゾ化チロシン部分を有する任意のペプチド)は、上に記載された0.7不純物などの、プロセスに特有の不純物(単数または複数)に基づいて区別され得ると仮定される。したがって、ジアゾ化チロシン部分(例えば、
【化46】
)および/またはその誘導体を含む不純物の存在は、本発明の方法によって合成されたペプチドであることを示す。
【0174】
この目的のために、発明者らは、本明細書に記載された方法に基づいて、本発明の化合物(Fmoc-チロシン-PPC)を利用することによって、チロシン-PPCを有する様々なペプチドを合成することに成功した。例示的なペプチドは、以下のとおりである:H-Leu-Phe-Orn-Gly-TyrPPC-OH;H-Leu-Phe-TyrPPC-Orn-Gly-OH;およびH-TyrPPC-Leu-Phe-Orn-Gly-OH。
【0175】
ジアゾ化チロシン部分を有する任意のペプチド配列を本明細書に開示された方法のいずれか1つに従って合成することができることを、当業者なら理解するであろう。
【0176】
本発明の特定の特徴を本明細書に説明および記載してきたが、多くの修正、置換、変化、および均等物が当業者に想起されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に含まれるすべてのそのような修正および変更を含むと意図されていることが理解されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
【国際調査報告】