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特表2024-518751アスファルテン及びパラフィン分散剤組成物並びにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】アスファルテン及びパラフィン分散剤組成物並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20240424BHJP
   C10G 99/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C09K23/52
C10G99/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564625
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022025203
(87)【国際公開番号】W WO2022225842
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/177,661
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】アシッシュ ダワン
(72)【発明者】
【氏名】リーガン アンドリュー ジョーンズ
【テーマコード(参考)】
4D077
4H129
【Fターム(参考)】
4D077AA07
4D077AB09
4D077AB20
4D077AC05
4D077BA01
4D077BA02
4D077BA07
4D077DB10Y
4D077DC04Y
4D077DC12Y
4D077DC15Y
4D077DC19Y
4D077DC32Y
4D077DD03X
4D077DD03Y
4D077DD09X
4D077DD09Y
4D077DD13X
4D077DD13Y
4D077DD20X
4D077DD20Y
4D077DE08X
4D077DE08Y
4H129CA01
4H129DA08
4H129HA17
4H129HA20
4H129NA29
(57)【要約】
【課題】本開示は、炭化水素の収集、処理、輸送、及び貯蔵中に沈殿する傾向がある天然及び合成汚染物質による汚染を低減するための方法及び組成物に関する。
【解決手段】本方法は、汚染物質を含有する炭化水素に組成物を適用することを含む。組成物は、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との有効量の反応生成物を含む。汚染物質は、例えばワックス及びアスファルテンを含んでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素中に汚染物質を分散させる方法であって、
組成物を前記炭化水素に添加することであって、前記組成物は、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との有効量の反応生成物を含む、添加することと、
前記汚染物質を分散させることを含む、
分散させる方法。
【請求項2】
前記反応生成物が、式I:
【化1】
の構造を含み、式中、RはC~C36アルキル基であり、nは約5~約200であり、Xは連結基である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミノ-ヒドロキシ化合物が、環式脂肪族化合物、非環式脂肪族化合物、又は芳香族化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記環式脂肪族化合物が、
【化2】
【化3】
から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非環式脂肪族化合物が、
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族化合物が、
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記汚染物質が、アスファルテン及び/又はワックスを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、前記炭化水素に連続的又は断続的に添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化水素が、原油を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記有効量の反応生成物が、前記炭化水素の体積に基づいて、約1ppm~約10,000ppmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、約1重量%~約100重量%の前記反応生成物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応生成物が、約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Xが、アルキレン基、アリーレン基、-CHCHNHCHCH-又は-CHCHOCHCH-である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、トルエン、重質芳香族ナフサ、キシレン、グリコール、水、アルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ケロシン、プロピレンカーボネート、グリコールエーテル、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される溶媒を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、アルキルフェノール及び/若しくはアルキルフェノールアルコキシレートを除くか、又はアルキルフェノール及び/若しくはアルキルフェノールアルコキシレートが前記炭化水素に添加されない、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
炭化水素、
α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との反応生成物、
溶媒、及び
汚染物質
を含む、分散剤。
【請求項17】
前記分散剤が、約1ppm~約10,000ppmの前記反応生成物及び約1ppm~約10,000ppmの前記溶媒を含む、請求項16に記載の分散剤。
【請求項18】
前記反応生成物が、式I:
【化21】
の構造を含み、式中、RはC~C36アルキル基であり、nは5~200であり、Xは連結基である、
請求項16又は17に記載の分散剤。
【請求項19】
前記アミノ-ヒドロキシ化合物が、環式脂肪族化合物、非環式脂肪族化合物、又は芳香族化合物である、請求項16~18のいずれか一項に記載の分散剤。
【請求項20】
前記環式脂肪族化合物が、
【化22】
【化23】
から選択される、請求項19に記載の分散剤。
【請求項21】
前記非環式脂肪族化合物が、
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
から選択される、請求項19に記載の分散剤。
【請求項22】
前記芳香族化合物が、
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
から選択される、請求項19に記載の分散剤。
【請求項23】
前記分散剤が、約20℃~約400℃の温度で安定である、請求項16~22のいずれか一項に記載の分散剤。
【請求項24】
炭化水素処理装置が、前記分散剤を含む、請求項16~23のいずれか一項に記載の分散剤。
【請求項25】
前記炭化水素が、原油を含む、請求項16~24のいずれか一項に記載の分散剤。
【請求項26】
前記反応生成物が、約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を含む、請求項16~25のいずれか一項に記載の分散剤。
【請求項27】
Xが、アルキレン基、アリーレン基、-CHCHNHCHCH-又は-CHCHOCHCH-である、請求項18に記載の分散剤。
【請求項28】
前記組成物が、トルエン、重質芳香族ナフサ、キシレン、グリコール、水、アルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ケロシン、プロピレンカーボネート、グリコールエーテル、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される溶媒を含む、請求項16~27のいずれか一項に記載の分散剤。
【請求項29】
前記分散剤が、アルキルフェノール及び/又はアルキルフェノールアルコキシレートを除く、請求項16~28のいずれか一項に記載の分散剤。
【請求項30】
前記α-オレフィンが分岐状又は直鎖状である、請求項16~29のいずれか一項に記載の分散剤。
【請求項31】
前記反応生成物が酸基を含まず、及び/又は前記分散剤が酸基を有する化合物を含まない、請求項16~30のいずれか一項に記載の分散剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、汚染物質を分散させる組成物及び方法に関する。より具体的には、本開示は、アスファルテン分散剤組成物及びワックス分散剤組成物などの分散剤組成物、並びに炭化水素を処理するためのそのような組成物を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
精油所から石油化学プラントまでの炭化水素処理プラントは、熱交換器、加熱炉、水再循環ループ、蒸留塔、容器、ライン、オーバーヘッド及び他の処理装置に堆積した炭化水素副生成物の堆積の結果としての汚染に悩まされている。これらの副生成物は、原油中に存在してもよい様々な炭化水素、及び炭化水素精製プロセスの副生成物を含む。処理装置の内面の汚染は、考慮されるユニットに応じて数ヶ月から数年まで変わってもよい期間にわたって生じる。
【0003】
アスファルテン堆積は、精油所熱交換器ネットワークにおいて観察される一般的な汚染機構である。アスファルテンは、原油中に天然に存在する。輸送、製油所での分離及び他の処理操作における油及び石油留分は、アスファルテンを含有することが多い。アスファルテンは概して、非極性溶媒に不溶性である多分散高分子量炭化水素の溶解度クラスとして定義される。アスファルテンは、ピリジン、二硫化炭素、四塩化炭素及びベンゼンなどの25ダイン/cm以上の表面張力を有する液体に可溶性であり、低沸点石油ナフサ、石油エーテル、液化石油ガス(例えば、メタン、エタン、プロパン)、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン等のような表面張力が低い非極性液体に不溶性である。
【0004】
アスファルテン粒子は、原油の他の成分によって安定化されたコロイド分散体の形態で存在すると考えられる。これらの天然に存在する分散体は、石油の生産及び処理に関与する様々な機械的、熱的、及び化学的条件によって不安定化されることができる。非相溶性原油をブレンドしても、アスファルテンが不安定化してもよい。この不安定化により、アスファルテンが凝集、沈殿し、最終的にはタール状残留物が処理装置上に堆積してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アスファルテンは、炭化水素処理において広く認められている問題であり、これらの化合物が内面に接触する様々な種類の装置において問題を引き起こすことが知られている。溶解及び/又は効果的に分散されない限り、アスファルテン及び他の汚染物質は、処理装置又は貯蔵容器内で接触した任意の1つ又は複数の表面上に蓄積及び沈殿することができ、それにより汚染を引き起こすことができる。
【0006】
アスファルテンに加えて、原油などの炭化水素は、ワックスも含有してもよい。そのような原油は、鉄道車両などの貯蔵及び輸送容器の壁に残留物及び固形物(「搭載残留物(remains on board)」として知られる)を残す傾向がある。過剰な残留物があると、原油の輸送効率が低下し、容器から除去された残留物の処分だけでなく、容器の洗浄のための追加のダウンタイムに関連するコストが増加し、これにより環境負荷が増加する。残留物/固形物を除去するために容器を洗浄することができるが、このプロセスからは有害な廃棄物が発生し、洗浄期間中に容器を使用不能にし、費用がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示は、炭化水素中に汚染物質を分散させる方法を提供する。本方法は、組成物を炭化水素に添加すること、及び汚染物質を分散させることを含んでもよく、組成物は、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との有効量の反応生成物を含む。いくつかの実施形態では、反応生成物は、式Iの構造を含み、
【化1】
式中、RはC~C36アルキル基であり、nは約5~約200であり、Xは連結基である。
【0008】
いくつかの実施形態では、Xは、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCH(CH)-、-CH(CH)CH-、-CHCHNHCHCH-、又は-CHCHOCHCH-である。
【0009】
特定の実施形態では、アミノ-ヒドロキシ化合物は、環式脂肪族化合物、非環式脂肪族化合物、又は芳香族化合物である。
【0010】
いくつかの実施形態では、環式脂肪族化合物は、
【化2】
【化3】
又は
【化4】
から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、非環式脂肪族化合物は、
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、芳香族化合物は、
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
から選択される。
【0013】
特定の実施形態では、汚染物質は、アスファルテン及び/又はワックスを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、炭化水素に連続的又は断続的に添加される。特定の実施形態では、炭化水素は原油を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、有効量の反応生成物は、炭化水素の体積に基づいて、約1ppm~約10,000ppmである。いくつかの実施形態では、組成物は、約1重量%~約100重量%の反応生成物を含む。いくつかの実施形態では、反応生成物は、約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を含む。
【0015】
特定の実施形態では、組成物は、トルエン、重質芳香族ナフサ、キシレン、グリコール、水、アルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ケロシン、プロピレンカーボネート、グリコールエーテル、及びそれらの任意の組合せから選択される溶媒を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、組成物は、アルキルフェノール及び/若しくはアルキルフェノールアルコキシレートを除くか、又はアルキルフェノール及び/若しくはアルキルフェノールアルコキシレートを炭化水素に添加しない。
【0017】
本開示はまた、炭化水素、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との反応生成物、溶媒、及び汚染物質とを含む分散剤を提供する。特定の実施形態では、分散剤は、約1ppm~約10,000ppmの反応生成物及び約1ppm~約10,000ppmの溶媒を含む。特定の実施形態では、α-オレフィンは、分枝状又は直鎖状である。
【0018】
いくつかの実施形態では、反応生成物は、式Iの構造を含み、
【化22】
式中、RはC~C36アルキル基であり、nは5~200であり、Xは連結基である。いくつかの実施形態では、Xは-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCH(CH)-、-CH(CH)CH-、-CHCHNHCHCH-又は-CHCHOCHCH-である。
【0019】
特定の実施形態では、アミノ-ヒドロキシ化合物は、本開示において開示されるか、又は本開示によって企図される、環式脂肪族化合物、非環式脂肪族化合物、又は芳香族化合物のいずれかである。
【0020】
いくつかの実施形態では、分散剤は、約20℃~約400℃の温度で安定である。いくつかの実施形態では、炭化水素処理装置は分散剤を含む。いくつかの実施形態では、炭化水素は原油を含む。いくつかの実施形態では、反応生成物は、約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を含む。
【0021】
特定の実施形態では、組成物は、トルエン、重質芳香族ナフサ、キシレン、グリコール、水、アルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ケロシン、プロピレンカーボネート、グリコールエーテル、及びそれらの任意の組合せから選択される溶媒を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、分散剤は、アルキルフェノール及び/又はアルキルフェノールアルコキシレートを除く。いくつかの実施形態では、反応生成物は酸基を含まず、及び/又は分散剤は酸基を有する化合物を含まない。
【0023】
前述は、後に続く発明を実施するための形態がより良好に理解され得るように、本開示の特徴及び技術的利点を概括的に概説した。本願の特許請求の範囲の主題を形成する、本開示の更なる特徴及び利点は、以下に説明される。開示される概念及び具体的な実施形態は、本開示と同じ目的を実行するためのその他の実施形態を修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者により理解されるべきである。このような同等の実施形態が、添付の特許請求の範囲に明記される本開示の趣旨及び範囲から逸脱しないこともまた、当業者によって認識されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、原油などの炭化水素中に含まれる汚染物質を処理するための組成物及び方法を提供する。本方法及び組成物は、炭化水素の収集、処理、輸送、及び貯蔵中に沈殿する傾向がある天然及び合成汚染物質による汚染を低減する。本方法は、組成物を炭化水素に適用することを含み、組成物があると、汚染を低減させ、広範囲の処理条件にわたって安定な分散物を形成するのに役立つ。本明細書に開示される組成物及び方法は、汚染物質の沈殿及び/又は堆積を抑制するのに有用である。
【0025】
本明細書で用いる場合、「汚染物質」という用語は、炭化水素中に存在し、そこから沈殿することができる任意の1つ又は複数の種を意味する。汚染物質としては、天然汚染物質、合成汚染物質、又はそれらの組合せが挙げられる。「天然汚染物質」とは、原油中に本来的に存在する任意の汚染物質種を意味する。例えば、天然汚染物質は、アスファルテン、ワックス、重油、タール、並びに水の密度よりも低い密度を有する脂肪族及び芳香族炭化水素を含んでもよい。「合成汚染物質」は、炭化水素精製プロセスの副生成物である汚染物質種である。合成汚染物質は、例えば、多核芳香族炭化水素、コークス、酸化炭化水素、スチレン、ブタジエン、シクロペンタジエンなどの炭化水素処理のビニル副生成物の重合から形成されるポリマー、及びより大きな分子の分解から生じる熱分解生成物を含んでもよい。
【0026】
本明細書で用いる場合、用語「炭化水素処理装置(hydrocarbon process equipment)」、「炭化水素処理装置(hydrocarbon process apparatus)」、及び同様の用語は、金属を含む表面などの内部表面を有する物品を意味し、1つ又は複数の炭化水素生成物は、任意の時間及び任意の温度で表面と流体接触する。炭化水素処理装置は、地下貯留層から炭化水素生成物を除去するため、1つ又は複数の炭化水素生成物を第1の場所から第2の場所に輸送するため、又は1つ又は複数の炭化水素生成物を分離、精製、処理、単離、蒸留、反応、計量、加熱、冷却、若しくは収容するための物品を備える。
【0027】
炭化水素処理流中に存在するアスファルテンなどの天然及び/又は合成汚染物質は、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との有効量の反応生成物を含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる組成物を使用して分散させることができることが発見された。
【0028】
本明細書に開示される組成物は、原油貯蔵及び輸送容器中のワックス堆積を低減させるのに有効であることも発見された。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本明細書に開示される組成物は、ワックスを分散し、ワックスを溶解し、及び/又は特定の原油と接触する金属表面上でのワックスの滑りを提供すると考えられる。これらの組成物はまた、金属表面などの表面上へのワックス堆積物の接着を阻害してもよい。
【0029】
α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体は、C~C36α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体である。いくつかの実施形態では、α-オレフィンは、C10~C36アルキル基、C12~C36アルキル基、C14~C36アルキル基、C16~C36アルキル基、C18~C36アルキル基、C20~C36アルキル基、C22~C36アルキル基、C24~C36アルキル基、C26~C36アルキル基、C28~C36アルキル基、C30~C36アルキル基、C32~C36アルキル基、又はC34~C36アルキル基である。
【0030】
アルキル基は、置換されていても、置換されていなくても、直鎖及び/又は分枝鎖であってもよい。
【0031】
α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体をアミノ-ヒドロキシ化合物と反応させて、本明細書に開示される汚染物質分散剤を形成する。アミノ-ヒドロキシ化合物は、特に限定されず、アミノ基及びヒドロキシル基の両方を含む任意の化合物から選択してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、アミノ-ヒドロキシ化合物は、脂肪族又は環式脂肪族化合物である。例えば、アミノ-ヒドロキシ化合物は、
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
から選択してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、アミノ-ヒドロキシ化合物は、芳香族アミノ-ヒドロキシ化合物である。例えば、アミノ-ヒドロキシ化合物は、
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
から選択してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との反応生成物は、式1から選択される構造を含み、
【化42】
式中、RはC~C36アルキル基であり、Xは連結基であり、nは約5~約200から選択される。いくつかの実施形態では、nは、5~150、5~100、5~75、5~50、10~50、10~75、10~100、10~150又は10~200から選択される。いくつかの実施形態では、RはC10~C36アルキル基、C12~C36アルキル基、C14~C36アルキル基、C16~C36アルキル基、C18~C36アルキル基、C20~C36アルキル基、C22~C36アルキル基、C24~C36アルキル基、C26~C36アルキル基、C28~C36アルキル基、C30~C36アルキル基、C32~C36アルキル基、又はC34~C36アルキル基である。アルキル基は、置換されていても、置換されていなくても、直鎖及び/又は分枝鎖であってもよい。
【0035】
連結基の例示的な非限定的な例としては、アルキレン及びアリーレン基が挙げられる。連結基の例示的な非限定的な例としては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、CHCH(CH)-、-CH(CH)CH-、-CHCHNHCHCH-及び-CHCHOCHCH-が挙げられる。
【0036】
別段の指示がない限り、単独で又は別の基の一部として本明細書に記載されるアルキル基は、例えば、主鎖に1~約36個の炭素原子を含有する、任意選択で置換された直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素置換基である。非置換アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチルなどが挙げられる。
【0037】
本明細書において、単独で又は別の基(例えば、アリーレン)の一部として使用される用語「アリール(aryl)」又は「アル(ar)」は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニル、又は置換ナフチルなどの、環部分に約6~約12個の炭素を含有する単環式又は二環式基などの、任意選択的に置換された同素環式芳香族基を指す。「アリール」という用語は、ヘテロアリールも含む。
【0038】
「置換アルキル」などでの「置換された」という用語は、当該基(すなわち、このアルキル基)において、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシ(-OH)、アルキルチオ、ホスフィノ、アミド(-CON(R)(R)(式中、R及びRは独立して、水素、アルキル、又はアリールである))、アミノ(-N(R)(R)(式中、R及びRは独立して、水素、アルキル、又はアリールである))、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード)、シリル、ニトロ(-NO)、エーテル(-OR(式中、Rは、アルキル又はアリールである))、エステル(-OC(O)R(式中、Rは、アルキル又はアリールである))、ケト(-C(O)R(式中、Rは、アルキル又はアリールである))、ヘテロシクロなどの1つ又は複数の置換基で置換されていることを意味する。
【0039】
「置換された」という用語が可能性のある置換基のリストを導入する場合、この用語は、その基の各メンバーに適用されることが意図される。すなわち、「任意選択的に置換されたアルキル又はアリール」という語句は、「任意選択的に置換されたアルキル又は任意選択的に置換されたアリール」と解釈されるべきである。
【0040】
α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との反応生成物の重量平均分子量は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、反応生成物は、約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を含む。
【0041】
例えば、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との反応生成物は、約1,000Da~約80,000Da、約1,000Da~約60,000Da、約1,000Da~約40,000Da、約1,000Da~約20,000Da、約5,000Da~約80,000Da、約5,000Da~約60,000Da、約5,000Da~約40,000Da、約5,000Da~約20,000Da、約10,000Da~約80,000Da、約10,000Da~約60,000Da、約10,000Da~約40,000Da、約20,000Da~約80,000Da、約20,000Da~約60,000Da、約20,000Da~約40,000Da、又は約30,000Da~約50,000Daの重量平均分子量を含んでもよい。
【0042】
アミノ-ヒドロキシ化合物は二官能性化合物であり、アミノ官能性及びヒドロキシ官能基の両方を介して無水物と反応してもよい。アミン基はヒドロキシル基よりも求核性であり、より高い反応性を有し、ヒドロキシ基と比較してより温和な条件下で無水物と反応する。アミノ-ヒドロキシ化合物と無水物との反応から、3個の可能な開環生成物を得てもよい。例示的で非限定的な例を以下に示す。ただし、アミノ-ヒドロキシ化合物は以下のものに限定されず、任意のアミノ-ヒドロキシ化合物を使用してもよい。
【化43】
【0043】
見て分かるように、反応は、半アミド-半酸構造
【化44】
、半アミド-半エステル構造
【化45】
、及び/又は半酸-半エステル構造
【化46】
)を生成してもよい。
【0044】
特定の実施形態では、本開示の反応生成物は、半アミド-半酸構造を含む又は除く。特定の実施形態では、反応生成物は、半アミド-半エステル構造を含む又は除く。特定の実施形態では、反応生成物は、半酸-半エステル構造を含む又は除く。
【0045】
本開示の特定の実施形態によれば、組成物は溶媒を含んでもよい。溶媒は、例えば、トルエン、重質芳香族ナフサ、キシレン、グリコール、水、アルコール、ケロシン、プロピレンカーボネート、パラフィン系溶媒、及びそれらの任意の組合せから選択してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、及びそれらの任意の組合せから選択してもよい。いくつかの実施形態では、グリコールは、エチレングリコール又は、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテルであってもよい。
【0047】
本明細書に開示される組成物は、他の添加剤を含んでもよく、除いてもよい。例えば、組成物は、腐食抑制剤、粘度低減剤、摩擦低減剤、スケール抑制剤、粘土膨潤抑制剤、殺生物剤、追加のアスファルテン分散剤、追加のワックス分散剤、逆流助剤、乳化剤、乳化破壊剤、硫化水素捕捉剤、水和物抑制剤、pH調整剤、界面活性剤、及び/又は原油生産、精製及び化学処理に使用される他の化学処理添加剤を含んでもよく、除いてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、組成物の総重量に基づいて、0~約50重量%の1つ又は複数の添加剤を含んでもよい。例えば、組成物は、約0.01重量%~約50重量%、約0.01重量%~約40重量%、約0.01重量%~約30重量%、約0.01重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.01重量%~約1重量%、約0.1重量%~約50重量%、約0.1重量%~約40重量%、約0.1重量%~約30重量%、約0.1重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.1重量%~約1重量%、約0.5重量%~約50重量%、約0.5重量%~約40重量%、約0.5重量%~約30重量%、約0.5重量%~約20重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、約0.5重量%~約1重量%、約1重量%~約50重量%、約1重量%~約40重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の1つ又は複数の添加剤を含んでもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との約1重量%~約100重量%の反応生成物を含む。例えば、組成物は、約1重量%~約90重量%、約1重量%~約80重量%、約1重量%~約70重量%、約1重量%~約60重量%、約1重量%~約50重量%、約1重量%~約40重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約60重量%、約5重量%~約70重量%、約5重量%~約80重量%、約5重量%~約90重量%、約10重量%~約90重量%、約10重量%~約80重量%、約10重量%~約70重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約40重量%、約10重量%~約30重量%、約20重量%~約60重量%、約30重量%~約60重量%、約40重量%~約60重量%の反応生成物を含んでもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、アルキルフェノール化合物及び/又はアルキルフェノールアルコキシレートを除く。
【0051】
本明細書に開示される汚染物質分散剤は、炭化水素処理流内で一般的に用いられるか又は遭遇する条件下で熱分解的に安定である。したがって、処理流を水素化処理などの1つ又は複数の熱分解的に困難なプロセスに供する前に、汚染物質分散剤を1つ又は複数の炭化水素処理流に添加してもよい。汚染物質分散剤は、約20℃~400℃の温度での炭化水素処理中にそれらの防汚特性を保持する。更に、汚染物質分散剤は、加水分解的に安定であり(加水分解を受けにくい)、したがって、約1重量%以下の水などの水で汚染された炭化水素処理流中での使用に適している。
【0052】
本開示の組成物を含む安定な分散剤などの分散剤も、本明細書で提供される。分散剤は、炭化水素、本明細書に開示されるα-オレフィン/無水マレイン酸共重合体とアミノ-ヒドロキシ化合物との反応生成物、本開示に開示されるか、又は本開示によって企図される任意の溶媒、及び汚染物質を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、分散剤は、約1ppm~約10,000ppmの反応生成物を含む。例えば、分散剤は、約1ppm~約8,000ppm、約1ppm~約6,000ppm、約1ppm~約4,000ppm、約1ppm~約2,000ppm、約1ppm~約1,000ppm、約1ppm~約500ppm、約1ppm~約250ppm、約1ppm~約100ppm、約100ppm~約8,000ppm、約100ppm~約6,000ppm、約100ppm~約4,000ppm、約100ppm~約2,000ppm、約100ppm~約1,000ppm、約100ppm~約500ppm、約100ppm~約250ppm、約500ppm~約8,000ppm、約500ppm~約6,000ppm、約500ppm~約4,000ppm、約500ppm~約2,000ppm、又は約500ppm~約1,000ppmの反応生成物を含んでもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、分散剤は、約1ppm~約10,000ppmの溶媒を含んでもよい。例えば、分散剤は、約1ppm~約8,000ppm、約1ppm~約6,000ppm、約1ppm~約4,000ppm、約1ppm~約2,000ppm、約1ppm~約1,000ppm、約1ppm~約500ppm、約1ppm~約250ppm、約1ppm~約100ppm、約100ppm~約8,000ppm、約100ppm~約6,000ppm、約100ppm~約4,000ppm、約100ppm~約2,000ppm、約100ppm~約1,000ppm、約100ppm~約500ppm、約100ppm~約250ppm、約500ppm~約8,000ppm、約500ppm~約6,000ppm、約500ppm~約4,000ppm、約500ppm~約2,000ppm、又は約500ppm~約1,000ppmの溶媒を含んでもよい。
【0055】
分散剤中の汚染物質の量は、炭化水素の種類及び炭化水素の起源などの多くの要因に依存する。例えば、原油は一般に、約10重量%~約70重量%のワックスを含む。更に、原油は一般に、約0重量%~約50重量%のアスファルテンを含む。
【0056】
本明細書に開示される分散剤は、約20℃~約400℃の範囲の温度で存在し、安定であってもよい。
【0057】
本開示はまた、汚染物質分散剤の製造方法を提供する。いくつかの実施形態では、合成は、無水マレイン酸とα-オレフィンとのフリーラジカル重合でα-オレフィン無水マレイン酸共重合体を生成すること、及び共重合体とアミノアルコールとの縮合でヒドロキシ-スクシンイミド共重合体を形成することを含む。
【0058】
例示的な非限定的な例では、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体(3)(OMAC)は、従来の技術、例えば、ラジカル付加重合原理及びポリマー合成の当業者によく知られている技術を使用して、α-オレフィン(1)を無水マレイン酸(2)と反応させることによって合成される(スキーム1)。このような前駆体ポリマーの合成は、Cornerらの米国特許第5,214,224号にも記載されており、これは本出願に参照により明示的に組み込まれる。
【化47】
【0059】
共重合体は、例えば、1:5~5:1の範囲のα-オレフィン対無水マレイン酸のモル比を含んでもよい。共重合体の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析した場合、約5,000Da~約300,000Da、例えば約100,000Daであってもよい。
【0060】
次いで、共重合体(3)をアミノ-ヒドロキシ化合物(4)と反応させて、汚染物質分散剤(5)を形成する。
【化48】
【0061】
この反応は、約100℃~約180℃の温度で行われて、水分子脱離を介して骨格中にヒドロキシ含有スクシンイミドを提供してもよい。例えば、反応は、約120℃~約180℃、約140℃~約180℃、又は約160℃~約180℃の温度で実施してもよい。
【0062】
アミノ-ヒドロキシ化合物は、アミノ基及びヒドロキシ基を含む任意の化合物のこともある。例えば、アミノ-ヒドロキシ化合物は、本明細書の任意の非環式若しくは環式脂肪族アミノ-ヒドロキシ化合物又は本明細書に開示される任意の芳香族アミノ-ヒドロキシ化合物とすることができる。反応は、例えば、約1:1のアミン部分対無水物部分のモル比を使用して実施してもよい。この反応は、石油溶媒(例えば、パラフィン系溶媒、鉱油、「HAN」すなわち重質芳香族ナフサ/Aromatic 150、これらの任意の混合物など)などの溶媒中で実施される。
【0063】
本開示は更に、炭化水素中に汚染物質を分散させる方法を提供する。本方法を実施する間、本明細書に開示される組成物を、バッチ式で、連続的に、又は半連続的に炭化水素処理流に適用してもよい。いくつかの実施形態では、組成物の適用は手動であり、他の実施形態では、適用は自動化される。選択された時間単位にわたって適用される組成物の量は、変動してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の炭化水素処理流中に存在する炭化水素は、原油、還元原油、原油留出物、重油、ビチューメン、コーカー装入物、水素化処理装置流入物、フラッシュ原油、軽質サイクル油、又はディーゼル若しくはナフサ精油所流である。いくつかの実施形態では、炭化水素処理装置は、1つ又は複数の原油、還元原油、原油留出物、重油、ビチューメン、コーカー装入物、水素化処理装置流入物、フラッシュ原油、軽質サイクル油、又はディーゼル若しくはナフサ精製所流の収集、処理、輸送、又は貯蔵に従来関連する任意の装置であり、処理装置物品を流体連結し、合わせてそこに配置された処理流の処理を容易にするために使用されるパイプ及び関連インフラストラクチャを含む。
【0065】
処理された処理流は、炭化水素処理装置の内面と流体接触して配置された処理された液体炭化水素生成物であってもよく、これでは接触した内面の汚染が低減又は排除される。いくつかの実施形態では、処理された処理流は、対応する処理流(すなわち、未処理の処理流)と比較して汚染が50%~100%低減する、又は対応する処理流と比較して炭化水素処理装置の内面の測定可能な汚染が約60%~100%、又は約70%~100%、又は約80%~100%、又は約90%~100%、又は約95%~100%低減する。
【0066】
汚染減少率は、例えば、以下の試験によって決定してもよい。選択した体積の処理された液体炭化水素生成物をヘキサン又はヘプタンに添加して、炭化水素生成物の1%~100%溶液を形成し、希釈した生成物を約20℃で2時間放置する。次いで、形成された沈殿物を容積測定し、対応する未処理炭化水素生成物である対照試料中に観察された沈殿物の百分率として報告する。汚染は、同じ期間にわたる未処理炭化水素生成物中の固形物の保持量と比較した、処理された炭化水素生成物中の固形物の保持量の相対的な増加として測定してもよい。汚染はまた、炭化水素処理装置と対応する未処理炭化水素処理流との同じ接触期間と比較した、関連する炭化水素処理装置物品内の処理された炭化水素処理流の選択された接触期間から生じる沈殿物の重量又は体積の相対的な減少として測定してもよい。別の言い方をすれば、汚染の低減は、同じ期間に未処理炭化水素処理流から堆積又は沈殿した固体の重量又は体積と比較した場合、選択された期間にわたって処理された炭化水素処理流と接触した炭化水素処理装置から堆積又は沈殿した固体の測定された重量又は体積の相対的な減少である。
【0067】
いくつかの実施形態では、処理された炭化水素処理流(組成物が添加された流)は、炭化水素処理装置内に配置され、装置は、金属を含む表面などの内面を備え、処理された炭化水素流は、表面と流体接触している。
【0068】
いくつかの実施形態において、組成物を油井の表面下に注入することによって、坑口で原油に注入することによって、又は坑口と最終油貯蔵タンクとの間の地点で原油処理流に注入することによって、組成物を原油に導入する。組成物を、例えば、連続的又はバッチ方式で注入してもよい。注入は一般に、電気ポンプ又はガスポンプを使用して達成される。
【0069】
更に、組成物をワックス分散剤として適用する予定の場合、ワックス堆積を低減する方法を実施してもよい。方法は、例えば原油貯蔵又は輸送容器内でのワックス堆積を低減してもよい。方法は、原油を含有する貯蔵又は輸送容器中のワックス堆積を低減するのに有効な量で組成物を原油に添加することを含んでもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、原油は、留出物(例えば、コールドフロー留出物又はディーゼル燃料)などの精製炭化水素生成物をいかなる有意な量又はいかなる量でも含まないような、任意のAPI比重の原油から本質的になる。
【0071】
貯蔵又は輸送容器は、原油を貯蔵又は輸送するために用いられる任意の容器とすることができ、貯蔵タンク、鉄道車両、タンクトラック、船舶、はしけ、又はパイプラインを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、組成物は、貯蔵タンク、鉄道車両、又はタンクトラックに含まれる原油に添加することができる。
【0072】
添加される汚染物質分散剤の量は、処理される特定の炭化水素などの特定の要因に依存する。概して、汚染物質分散剤の有効量は、油の体積に基づいて約1ppm~約10,000ppmの範囲である。例えば、有効量は、油の体積に基づいて、約1ppm~約8,000ppm、約1ppm~約6,000ppm、約1ppm~約4,000ppm、約1ppm~約2,000ppm、約1ppm~約1,000ppm、約1ppm~約500ppm、約1ppm~約250ppm、約1ppm~約100ppm、又は約1ppm~約50ppmであってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、アスファルテン分散剤として適用される場合、有効量は、約1ppm~約1,000ppmであってもよいが、前述の段落で記載した量も同様に使用してもよい。いくつかの実施形態では、ワックス分散剤として適用される場合、有効量は、約1ppm~約5,000ppmであってもよいが、前述の段落で記載した量も同様に使用してもよい。
【0074】
以下の実施例を参照することによって上記をよりよく理解してもよく、これらは例示を目的とするものであり、本開示又はその適用の範囲をいかなる方法でも限定することを意図していない。
【実施例
【0075】
実施例
【0076】
以下は、ポリマー1の代表的な合成スキームである。
【化49】
【0077】
アミン部分対無水物部分のモル比が約1:1である、C24-C28α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体(CAS番号68459-79-0)を、米国特許第5,214,224号に概説されている手順に従って得た。
【0078】
表1では、反応に使用した試薬及び量を示す。この反応で使用した3-アミノフェノールに対する骨格中の無水マレイン酸残基のモル比は約1:1であった。
【0079】
【表1】
【0080】
温度プローブ、窒素入口、Dean-Stark装置、コンデンサ-及び磁気撹拌棒を備えた250mLの4つ口丸底フラスコに、C24~C28α-オレフィン無水マレイン酸共重合体(約14.4g)を加えた。次いで、ポリマーを約82gのHANで希釈し、温度を約65℃に上昇させた。次いで、3-アミノフェノールを十分に撹拌した反応混合物に添加した。反応混合物の温度が約80℃に上昇するのを観察した。得られた懸濁液を窒素ブランケット下で約160℃に加熱し、約6時間又は反応が完了するまで撹拌した。反応が完了まで進行するにつれて、懸濁液は均質な生成物に変わった。得られた生成物をNMR及びIR技術によって特徴付けた。無水物又はイミド基に関連するピークは、最終生成物では観察されなかった。
【0081】
上述の一般的な合成を用いて、C24~C28α-オレフィン無水マレイン酸共重合体及び対応するアミノ-ヒドロキシ化合物から出発して、表2に列挙されるポリマーを合成した。
【0082】
【表2】
【0083】
ポリマー1、2、3及び4を、アスファルテン分散剤としての有効性についてスクリーニングした。試験では、所定体積の原油を、アスファルテン沈殿を促進する環境であるn-ヘプタン又はn-ヘキサンに溶解した。各アスファルテン安定化剤の有効性は、2時間の静止沈降後に各管に形成された沈殿物の体積を比較することによって観察した。より有効な分散剤では、沈殿物の体積が少ない。
【0084】
アスファルテン分散剤試験(ADT)は、石油及びガス産業において「アスファルテン分散剤」をスクリーニング及び評価するために広く使用されている。この手順は、原油のアスファルテン含有量を比較し、このような油内にアスファルテンを分散させるアスファルテン分散剤の能力を評価するために使用される。アスファルテン分散剤試験の基礎は、非溶媒媒体中にアスファルテンを分散させたままにする際の分散剤の相対的有効性を決定することである。
【0085】
ADTは、アルカン希釈剤(例えば、ヘプタンなどのパラフィン系有機溶媒)中のアスファルテンの不溶性を利用する。一定体積のアスファルテン材料(原油など)を一定量のアルカン希釈剤で希釈すると、アスファルテンが沈殿する。同じ一定体積のアルカン希釈剤中に分散剤を適切に添加した同じ一定体積のアスファルテン材料を希釈すると、制御された試験期間中のアスファルテンの沈殿量が最小限になる。
【0086】
有効な分散剤があると、試料をアルカン希釈剤で希釈するときにアスファルテンの凝集及び最終的な沈殿を防止できる。したがって、望ましい結果は、アスファルテン物質の沈殿量が少ないか全くないことであり、これらの物質の堆積量が最も少ない(分散量が最も多い)試料が最良の結果を示す。この手順によって測定される沈殿は、石油処理流における相対的な汚染挙動を予測する。
【0087】
実験で使用した装置は、10~15mLの目盛り付き円錐形遠心分離管、タイマー、並びに暗色の石油液体中に存在する沈殿物を見やすくするためのライトボックス及び/又はフラッシュライトを含んでいた。遠心分離管に所定体積の原油を充填した。次いで、管に特定量の分散剤を充填した。1本の管をブランクとし、未処理のままとした。10mLのn-ヘプタンを各遠心分離管に添加し、全ての油が確実に分散するように、各管を十分に混合した。全ての管を十分に混合したら、管を明るい光の前の試験管立てに配置した。2時間の静止沈降後、各管中の沈降物の相対体積を記録した。
【0088】
第1の一連の試験において、ポリマー1~3を2個の従来技術の分散剤と比較した。ADT条件は以下の通りである。
●原油A:20.3°API比重
●原油体積:100μL
●分散剤用量:10ppm活性物質
●パラフィン系溶媒:10mLn-へプタン
●試験時間:2時間
【0089】
データを以下の表3に示し、これは沈殿物体積を示す。
【0090】
【表3】
【0091】
第2の一連の試験において、ポリマー1~3及び5~7のアスファルテン分散剤性能を、2個の従来技術の分散剤と比較した。ADT条件は以下の通りである。
●試験した原油:36.1°API比重
●原油体積:500μL
●分散剤用量:5ppm活性物質
●パラフィン系溶媒:n-へプタン10mL
●試験時間:2時間
【0092】
データを以下の表4に示し、これは沈殿物体積を示す。
【0093】
【表4】
【0094】
第3の試験では、ポリマー4のアスファルテン分散剤性能を3個の異なる原油で評価した。ADT条件は以下の通りである。
●試験した原油:19.2、24.8、及び31.0°API原油
●原油体積:50~200μL
●分散剤用量:10ppm活性物質
●パラフィン系溶媒:n-へプタン10mL
●試験時間:2時間
【0095】
データを以下の表5に示し、これは沈殿物体積を示す。
【0096】
【表5】
【0097】
最後の試験では、ワックス分散剤特性を評価した。原油及び重油は、典型的にはC10~C60の範囲の長鎖パラフィンを含有する。油をワックス出現温度未満に冷却すると、パラフィンが油から結晶化してワックスを形成する。ワックスがあると、油の粘度及び流動点が増加する。こうなると、油がパイプラインを通して圧送されているときに、圧送速度が低下し、ワックス堆積の問題が生じる。流動点降下剤/ワックス分散剤は、原油の流動点及び粘度を低下させるために使用される物質である。これらの化合物は、油中のパラフィンと相互作用してワックス結晶サイズを減少させ、ワックス結晶凝集を防止する。
【0098】
ASTM D5950流動点試験は、原油が流動する最低温度を評価する方法である。流動点降下剤の有効性も評価することができる。流動点試験は、PAC計測器OptiCPPを用いて実施した。試験前に油を約52℃に予熱した。
【0099】
減圧軽油を約52℃に加熱し、2-アミノエタン-1-オールと縮合した1,000ppmの49重量%C24~C28α-オレフィン無水マレイン酸共重合体で処理した。表6に示すデータに見られるように、ポリマーは、油の流動点を33℃から6℃に低下させることができ、これらの化合物の流動点降下剤としての有効性が明確に示された。
【0100】
【表6】
【0101】
本明細書で開示及び特許請求される組成物及び方法の全ては、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに作製及び実行され得る。本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。なお、異なるように明示的に述べられない限り、「a(ある1つの)」という用語は、「少なくとも1つ(at least one)」又は「1つ以上(one or more)」を含むことを意図する。例えば、「ある1つの分散剤(a dispersant)」は、「少なくとも1つの分散剤(at least one dispersant))」又は「1つ又は複数の分散剤(one or more dispersant)」を含むことを意図する。
【0102】
絶対的な用語又は近似的な用語のいずれかで示される任意の範囲は、両方を包含することを意図しており、本明細書で使用される任意の定義は、明確にすることを意図するものであり、限定することを意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲及びパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含む。更に、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(全ての小数値及び全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0103】
本明細書に開示される任意の組成物は、本明細書に開示される任意の要素、成分、及び/並びに原料、又は本明細書に開示される要素、成分、又は原料のうちの2つ以上の任意の組合せを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなり得る。
【0104】
本明細書に開示される任意の方法は、本明細書に開示される任意の方法ステップ、又は本明細書に開示される方法ステップのうちの2つ以上の任意の組合せを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなり得る。
【0105】
「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義である「含む(comprising)」という移行句は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素、成分、原料、及び/又は方法工程を除外しない。
【0106】
「からなる(consisting of)」という移行句は、特許請求の範囲に明記されていない任意の要素、成分、原料、及び/又は方法工程を除外する。
【0107】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、特許請求の範囲を、特定の要素、成分、原料及び/又は工程、並びに特許請求される発明の基本的な及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0108】
特に明記されていない限り、本明細書で言及される全ての分子量は、重量平均分子量であり、全ての粘度は、ニート(希釈されていない)ポリマーを用いて25℃で測定した。
【0109】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差が判定され得ない場合、「約」は、例えば、引用された値の5%以内を指し得る。
【0110】
更に、本発明は、本明細書において説明される様々な実施形態の一部又は全部の、あらゆる可能な組合せを包含する。また、本明細書において説明される本発明の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者にとって明らかであろうこともまた、理解されるべきである。このような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】