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特表2024-518777ナノチタン酸塩、ナノチタン酸、ナノTiO2の製造方法、及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ナノチタン酸塩、ナノチタン酸、ナノTiO2の製造方法、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20240424BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20240424BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20240424BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240424BHJP
【FI】
C01G23/00 B
C01G23/047
B82Y30/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565459
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2022088185
(87)【国際公開番号】W WO2022222998
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】202110442575.9
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523400998
【氏名又は名称】李 彦軍
(71)【出願人】
【識別番号】522359202
【氏名又は名称】趙 遠雲
【氏名又は名称原語表記】ZHAO, Yuanyun
【住所又は居所原語表記】Room 1401, Building 7, Shanhu Garden, No. 1 Kaide Road, Dalingshan Town Dongguan, Guangdong 523000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 遠雲
(72)【発明者】
【氏名】李 彦軍
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CA06
4G047CB05
4G047CC03
4G047CD02
4G047CD04
(57)【要約】
Ti-T金属間化合物をTi源として用い、常圧で塩基溶液の沸点温度付近でTi-T金属間化合物を塩基溶液と反応させ、ナノTi酸塩フィルム材料の常圧・高効率製造を実現する。これにより、ナノTi酸塩フィルム材料とナノTiOシート粉末の低コストの製造が可能となった。さらに、その後の処理と組み合わせることで、Ti酸塩ナノチューブ、Ti酸ナノチューブ、およびTiOナノチューブ/ロッドの効率的な製造が達成される。本発明の製造方法は、工程が簡単で、操作が容易で、低コストであることが特徴であり、ナノスケールのフィルム、ナノチューブ/ロッドなどを含む様々なナノTi酸塩、ナノTi酸、及びナノ二酸化Ti材料を製造することができ、ポリマー系ナノ複合材料、セラミック材料、光触媒材料、加水分解による水素製造、疎水性材料、廃水分解材料、殺菌コーティング、防食塗料、海洋塗料などの分野で良好な応用の見通しがある。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノチタン酸塩フィルム材料の製造方法であって、
T元素およびTi元素を含み、前記T元素が、Al、Znのうちの少なくとも1つの元素を含み、かつ、相組成が、T-Ti金属間化合物を含む初期合金を提供する工程1と、
前記初期合金を温度Tで塩基溶液と反応させることで、前記初期合金の表面から内側に、界面反応が20μm/minを超える平均速度で進み、かつ、前記前記初期合金における反応界面が、水素析出・脱T反応によりナノ断片化を受けると同時に、形状および組成が再構成され、固体凝集生成物が生成される工程2と、
工程2に記載の反応系中の前記固体凝集生成物の温度をTから低下させることで、前記固体凝集生成物を回収する、即ち、ナノチタン酸塩フィルム材料を得る工程3と、を含み、
前記Tは、100℃<Tであることを特徴とするナノチタン酸塩フィルム材料の製造方法。
【請求項2】
ナノチタン酸フィルム材料の製造方法であって、
請求項1に記載の生成物または請求項1に記載のナノチタン酸塩フィルム材料を酸溶液と反応させ、固体生成物を回収する、即ち、ナノチタン酸フィルム材料を得ることを特徴とするナノチタン酸フィルム材料の製造方法。
【請求項3】
ナノTiOシート粉末の製造方法であって、
請求項2に記載の生成物または請求項2に記載のナノチタン酸フィルム材料を熱処理することにより製造することを特徴とするナノTiOシート粉末の製造方法。
【請求項4】
チタン酸塩ナノチューブの製造方法であって、
請求項1に記載の生成物またはナノチタン酸塩フィルムおよび/または請求項2に記載の生成物またはナノチタン酸フィルムを含む固体物質を塩基溶液と共に密閉容器に密閉し、次いで、Tf溶液の温度よりも高い温度Tで高温高圧処理し、一定時間反応させた後、前記密閉容器の温度を低下させ、圧力を常圧に戻し、最終固体生成物を回収する、即ち、チタン酸塩ナノチューブを得る工程を含み、
前記Tf溶液は、常圧下で塩基溶液の反応に関与する沸点温度であり、かつ、100℃<T-Tf溶液<Tであることを特徴とするチタン酸塩ナノチューブの製造方法。
【請求項5】
チタン酸ナノチューブの製造方法であって、
請求項4に記載の生成物または請求項4に記載のチタン酸塩ナノチューブを酸溶液と反応させ、固体生成物を回収する、即ち、チタン酸ナノチューブを得ることを特徴とするチタン酸ナノチューブの製造方法。
【請求項6】
TiOナノチューブ/ロッドの製造方法であって、
請求項5に記載の生成物または請求項5に記載のチタン酸ナノチューブを熱処理することにより製造することを特徴とするTiOナノチューブ/ロッドの製造方法。
【請求項7】
チタン酸塩ナノチューブの製造方法であって、
T元素およびTi元素を含み、前記T元素が、AlおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含み、T-Ti金属間化合物を含む相組成を含む初期合金を提供する工程1と、
前記初期合金を塩基溶液と共に密閉容器に密閉し、次いで、密閉反応系の温度をTに加熱し、一定時間保温する工程2と、
前記密閉容器の温度を低下させ、圧力を常圧に戻し、最終固体生成物を回収する、即ち、チタン酸塩ナノチューブを得る工程3、
を含み、
前記Tは、100℃<Tf溶液<Tであり、前記Tf溶液は、常圧下での反応に関与する塩基溶液の沸点温度であり、Tの温度における反応容器内の圧力は、常圧よりも高いことを特徴とするチタン酸塩ナノチューブの製造方法。
【請求項8】
チタン酸ナノチューブの製造方法であって、
請求項7に記載の生成物または請求項7に記載のチタン酸塩ナノチューブを酸溶液と反応させ、固体生成物を回収する、即ち、チタン酸ナノチューブを得ることを特徴とするチタン酸ナノチューブの製造方法。
【請求項9】
TiOナノチューブ/ロッドの製造方法であって、
請求項8に記載の生成物または請求項8に記載のチタン酸ナノチューブを熱処理することにより製造することを特徴とするTiOナノチューブ/ロッドの製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された生成物材料を、ポリマー系ナノ複合材料、セラミック材料、光触媒材料、加水分解による水素製造、疎水性材料、廃水分解材料、殺菌コーティング、防食塗料または海洋塗料に用いる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ材料の技術分野に関し、特にナノチタン酸塩、ナノチタン酸、ナノTiOの製造方法、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノチタン酸塩とその後継品であるナノチタン酸やナノTiOの主な製造方法は強塩基水熱法である。しかし、この反応は高圧反応容器を使用する必要があり、一般に市販のナノTiOと高濃度の強塩基(例えばNaOH水溶液)を原料として、高温条件下で長時間水熱合成反応を行い、ナノチタン酸塩(例えばナノチタン酸ナトリウム)を得、中和・酸洗浄後、チタン酸塩ナノチューブを得、さらに熱処理によりTiOナノチューブを得るのが一般的である。例えば、工業用アナターゼ型TiOと10mol/LNaOH水溶液を原料として、130℃の高圧反応容器で72時間水熱反応させ、生成物を中和洗浄することにより、管長数十~数百ナノメートル、内径5.3nmのチタン酸ナノチューブが得られることが2001年の文献に報告されている。チタン酸ナトリウムの製造方法として文献に報告されている他の方法としては、NaOH、TiOを化学量論的な関係に従って秤量し、ポリテトラフルオロエチレン製の高圧反応器に移し、混合して230℃の温度で48時間から96時間保持した後、取り出して洗浄し、室温まで冷却した後に乾燥してナノチタン酸ナトリウムを得、さらに酸洗浄してナノチタン酸を得る方法もある。従来の強塩基水熱法の特徴は、1)チタン原料としてTiOを使用すること、2)高圧反応容器で行われるため、気密性と高圧条件が必要であること、3)高温で行われること、4)反応時間が非常に長いこと、5)得られる生成物は一般に管状のナノチタン酸塩または管状のナノチタン酸であること、であることがわかる。これらの特徴、特にチタン原料としてTiOを使用することは、高圧の限定された環境と極めて長い反応時間を必要とし、生産コストを大幅に増加させ、生産効率を低下させ、ナノチタン酸塩、ナノチタン酸、ナノTiOの大規模な製造と応用を妨げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに基づき、上記の技術的課題に対して、プロセスが簡単で、条件が穏やかで、かつ、大規模生産に適しているナノチタン酸塩、ナノチタン酸、及びナノTiOの製造方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の技術的課題を解消するために、具体的に、以下の10の態様を含む技術内容が提案されている。
【0005】
第1の態様において、ナノチタン酸塩フィルム材料を製造する方法は、以下の製造工程を含むことを特徴とする。
【0006】
工程1: 初期合金を提供し、上記初期合金は、T元素、およびTi元素を含み、上記T元素が、AlおよびZnのうちの少なくとも1つを含み、かつ、上記初期合金の相組成は、T-Ti金属間化合物を含む。
【0007】
工程2: 上記初期合金をTの温度で塩基溶液と反応させ、その間に、反応界面が20μm/minを超える平均速度で初期合金の表面から内側に進み、反応界面の初期合金が、水素析出・脱T反応によりナノ断片化を受け、同時に、形状および組成の再構成により、固体凝集生成物を生成する。ここで、100℃<Tである。
【0008】
工程3:工程2に記載の反応系中の固体凝集生成物の温度をTから低下させ、固体凝集生成物を回収し、ナノチタン酸塩フィルム材料を得る。
【0009】
さらに、上記フィルム材料が、巨視的には粉末材料の形態であり、微視的には多数の二次元フィルムから構成されている。
【0010】
さらに、上記フィルム材料が、巨視的には粉末材料の形態であり、微視的には多数の単一の二次元フィルムが分散または絡み合って構成されている。その構造は、従来の脱合金反応によって形成されたナノポーラス構造とは全く異なる。従来の脱合金反応により得られるナノポーラス構造は、三次元網目状の繋ぎ目が一体となって全体を構成しており、その全体的な外観は基本的に脱合金反応前の初期合金と同じである。
【0011】
さらに、上記二次元フィルム材料とは、材料の最小単位(例えば、単一の粉末粒子、モノリシックフィルム)の面積が大きく、その厚さ方向の寸法が面積方向の二次元寸法よりもはるかに小さく、厚さが10nm以下である材料を指す。
【0012】
上記工程1において、
【0013】
さらに、上記T元素がAlを含み、さらにT元素がAlである。
【0014】
さらに、上記T元素がZnを含み、さらにT元素がZnである。
【0015】
さらに、上記T元素がAlおよびZnを含む。
【0016】
さらに、上記初期合金が、T元素、とTi元素を含む溶湯を凝固させることにより製造され、合金の凝固プロセス中に、T-Ti金属間化合物を含む凝固組織が形成される。
【0017】
さらに、T-Ti金属間化合物が、Ti-T金属間化合物に相当する。
【0018】
さらに、上記初期合金溶湯の凝固速度が、1K/s~10K/sである。
【0019】
さらに、上記初期合金の相組成が主に、T-Ti金属間化合物から構成される。
【0020】
さらに、上記T-Ti金属間化合物が、TTi、TTi、TTi金属間化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
さらに、上記T-Ti金属間化合物が、AlTi、AlTi、およびAlTi金属間化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
さらに、上記初期合金が、TTi、TTi、およびTTi金属間化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
さらに、上記初期合金が、AlTi、AlTi、およびAlTi金属間化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
さらに、上記初期合金が主に、AlTi、AlTi、およびAlTi金属間化合物のいずれかを含む。
【0025】
好ましくは、上記初期合金が、AlTi金属間化合物を含む。
【0026】
さらに好ましくは、上記初期合金が主に、AlTi金属間化合物で構成される。
【0027】
好ましくは、上記初期合金が、AlTi金属間化合物を含む。
【0028】
さらに好ましくは、上記初期合金が主に、AlTi金属間化合物で構成される。
【0029】
好ましくは、上記初期合金が、AlTi金属間化合物を含む。
【0030】
さらに好ましくは、上記初期合金が主に、TTi金属間化合物で構成される。
【0031】
さらに好ましくは、上記初期合金が主に、AlTi金属間化合物で構成される。
【0032】
好ましくは、上記初期合金中のTの原子百分率が75%以下である。
【0033】
好ましくは、上記初期合金中のTの原子百分率が70%未満である。
【0034】
好ましくは、上記初期合金中のAlの原子百分率が75%以下である。
【0035】
好ましくは、上記初期合金中のAlの原子百分率が70%未満である。
【0036】
好ましくは、上記初期合金がT相を含まない。
【0037】
好ましくは、上記初期合金がAl相を含まない。
【0038】
Al-Ti相図によると、Al-Ti合金中のAlの原子百分率が75%を超える場合、合金凝固組織が一般にAl相を含み、Al-Ti合金中のAlの原子百分率が75%未満の場合、合金凝固組織が一般にAl相を含まない。
【0039】
相図によると、合金がTiAlを含む場合、TiAl相またはTiAl相とは共存できるが、Al相とは共存できないため、TiAlを含む合金はAl相を含むことができない。
【0040】
さらに、上記T-Ti金属間化合物とは、金属間化合物の相組成がT-Ti金属間化合物相であること、すなわち、上記T-Ti金属間化合物のXRD相分析結果がAlTi、 AlTi、AlTi、ZnTi、 ZnTi、ZnTi金属間化合物相構造を含むT-Ti金属間化合物であることを意味する。
【0041】
さらに、上記初期合金の形状が、三次元方向のいずれかの次元の平均サイズが4μmより大きい。
【0042】
さらに、上記初期合金の形状が、三次元方向のいずれかの次元の平均サイズが10μmより大きい。
【0043】
さらに、上記初期合金の形状が、三次元方向のいずれかの次元の平均サイズが15μmより大きい。
【0044】
さらに、上記初期合金は粉末またはリボンの形状であり、粉末粒子またはリボンは、三次元方向の少なくとも1つの寸法が5mm未満である。
【0045】
さらに、上記初期合金粉末粒子またはリボンが、三次元方向の少なくとも1つの寸法が1mm未満である。
【0046】
さらに、上記初期合金は粉末またはリボンが、三次元方向の少なくとも1つの寸法が500μm未満である。
【0047】
さらに、上記初期合金は粉末またはリボンが、三次元方向の少なくとも1つの寸法が200μm未満である。
【0048】
さらに、上記初期合金は粉末またはリボンが、三次元方向の少なくとも1つの寸法が50μm未満である。
【0049】
さらに、上記初期合金がリボンの形状である場合、溶融ストリップキャストを含む方法によって製造することができる。
【0050】
さらに、上記初期合金が粉末の形状である場合、鋳造法によってより大きな初期合金インゴットを製造し、次いで粉砕して初期合金粉末とすることもできる。
【0051】
上記工程2において、
【0052】
さらに、上記TがT型元素を意味する略記であり、TがAl、Zn、AlZnのいずれかを表し、AlZnにおけるAlとZnの比率は限定されない。
【0053】
さらに、上記水素析出・脱T反応とは、初期合金を温度Tで塩基溶液と反応させると、Tが塩基により塩に溶解して溶液中に混入し、同時に水素ガスが放出される反応を指す。
【0054】
さらに、上記塩基溶液が、NaOH、KOH、LiOH、RbOH、Ba(OH) 、Ca(OH) 、およびSr(OH) 溶液のうちの少なくとも1つを含む。
【0055】
さらに、上記塩基溶液の溶媒が、水を含み、好ましくは、上記塩基溶液の溶媒が、水である。
【0056】
さらに、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、5.1~25mol/Lである。
【0057】
好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、5.1~15mol/Lである。
【0058】
好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、7~15mol/Lであり、さらに好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、7~12mol/Lである。
【0059】
さらに好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、10~15mol/Lである。
【0060】
さらに、上記塩基の濃度が、塩基中のOHの濃度を意味する。
【0061】
さらに、初期合金と反応する塩基溶液中の塩基は過剰量であり、塩基溶液の体積は初期合金の体積の5倍以上であり、より高い塩基濃度で常時反応を進行させることができる。
【0062】
さらに、塩基溶液の体積が、初期合金の体積の10倍以上である。
【0063】
さらに、塩基溶液の体積が、初期合金の体積の20倍以上である。
【0064】
さらに、上記塩基溶液の温度が、初期合金と塩基溶液との反応温度である。
【0065】
さらに、100℃<Tである。
【0066】
さらに、上記初期合金と塩基溶液との反応が、常圧または高圧で行われる。
【0067】
さらに、上記初期合金と塩基溶液との反応が、密閉容器内で行われる。
【0068】
密閉容器内では、容器内の圧力が1気圧を超えると高圧となり、同時に、容器内の反応により発生したガスが排出できない場合には、さらに高圧となることもある。
【0069】
さらに、密閉容器内で反応を行う場合、まず初期合金と塩基溶液を密閉容器内に別々に入れ、塩基溶液の温度が設定した反応温度に達すると、初期合金と塩基溶液と接触させて反応を行う。
【0070】
さらに、密閉容器内では、塩基溶液の温度が常圧での沸点温度を超えていてもよい。
【0071】
さらに、初期合金と熱塩基溶液との反応が、常圧で行われる。
【0072】
さらに、上記常圧とは、密閉容器を使用しないときの大気圧のことであり、さらに、容器が密閉されていない場合、容器内の圧力は完全に開放された環境における周囲気圧よりもわずかに高いが、このときの圧力もまた、非密閉環境であるため、常圧の範疇に入る。
【0073】
さらに、上記反応は常圧環境下で行われ、常圧とは一般に1標準気圧を指し、このときの水の沸点は100℃に相当する。水に塩基が溶解している場合、1標準大気圧における塩基水溶液の沸点温度は100℃より高く、かつ塩基の濃度が高くなるほど、沸点も高くなる。例えば、モル濃度5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の沸点Tf溶液が約108℃であり、モル濃度7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の沸点Tf溶液が約112℃であり、モル濃度10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の沸点Tf溶液が約119℃であり、モル濃度12mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の沸点Tf溶液が約128℃であり、モル濃度15mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の沸点Tf溶液が約140℃であり、モル濃度17mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の沸点Tf溶液が約148℃であり、モル濃度20mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の沸点Tf溶液が約160℃であり、モル濃度25mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の沸点Tf溶液が約180℃であり、モル濃度10mol/Lの水酸化カリウム水溶液の沸点Tf溶液が約125℃であり、モル濃度12mol/Lの水酸化カリウム水溶液の沸点Tf溶液が約136℃であり、モル濃度15mol/Lの水酸化カリウム水溶液の沸点Tf溶液が約150℃である。
【0074】
さらに、100℃≦T≦Tf溶液であり、Tf溶液が、常圧下での反応に関与する前記塩基溶液の沸点温度である。
【0075】
さらに、101℃≦T≦Tf溶液である。
【0076】
さらに、105℃≦T≦Tf溶液である。
【0077】
さらに、101℃≦Tf溶液-5℃≦T≦Tf溶液である。
【0078】
さらに、101℃≦Tf溶液-2℃≦T≦Tf溶液である。
【0079】
さらに好ましくは、上記塩基溶液の温度はTf溶液、すなわちT=Tf溶液である。
【0080】
反応溶液は、常圧下で加熱できる最高温度がその沸点温度(Tf溶液)であるため、その温度に達すると、それ以上加熱しても溶液の温度が上昇しない。したがって、沸点温度は最も簡単、単純、かつ正確に制御できる。さらに、同じ条件下での沸点温度での反応に要する反応時間は、沸点以下の他の温度での反応に要する反応時間よりも短く、生成物の収率や効率も最も高い。
【0081】
T元素(Al、Zn)は両性金属であり、高温の濃塩基溶液と反応してT塩となり、水素ガスを激しく放出しながら溶液中に溶解するため、初期合金中のTは、Tと塩基溶液との反応によって除去することができ、初期合金中に残存するTiは、さらに塩基溶液と相互作用し、同時に、Ti原子の拡散的転位および水素、酸素、OH、塩基中の陽イオンとの相互作用を含む一連の変化を受け、形状および組成の再構築により、新たな二次元ファイル状の固体凝集生成物を生成する。
【0082】
さらに、100℃を超える温度での上記初期合金と塩基溶液との反応は、二次元フィルム状の微視的形態を備えた生成物の製造にとって非常に重要である。一比較実施形態において、常圧下で、TiAl金属間化合物の初期合金粉末を10mol/LのNaOH溶液と35℃で2時間反応させ、反応前後の元の初期合金粉末の形状はほぼ変化せず、角のある元の粉砕粉末粒子のままであり、かつ、その微細構造は、モノリシックな二次元フィルム状生成物を多数生成するのではなく、代わりに、ナノ多孔質構造を有するチタン酸塩またはナノ多孔質構造を有するチタンを生成する。そして、このナノ多孔質構造は、三次元ネットワークリンクを通じて元の合金粉末の形状と一致した外観を形成し、その粒子サイズは依然として元の合金粉末のサイズと同等であり、主に数ミクロンまたは数十ミクロンのオーダーである。したがって、室温付近のより低い温度で起こる初期合金と塩基溶液との反応は、本発明の100℃≦T≦Tf溶液における反応とは全く異なり、生成物の形態も全く異なる。
【0083】
具体的には、高温の濃塩基溶液を用いて上記初期合金と反応させ、反応温度が溶液温度範囲100℃≦T≦Tf溶液である場合、得られる生成物の外観と形態が初期合金の形態に比べて激変し始め、溶液中で生成した生成物は肉眼で見ると、元の固体粉末の顆粒またはリボン状ではなく、固体凝集体である。例えば、反応温度が100℃より高い場合、より高い収率の二次元ナノチタン酸塩フィルムが得られ、その収率が一般に95%~100%である。反応温度が常圧下での塩基溶液の沸点Tf溶液である場合、さらにより高い収率の二次元ナノチタン酸塩フィルムが得られ、収率が一般に99%~100%である。
【0084】
特に常圧下、塩基溶液の沸点温度Tf溶液で反応が起こる場合、反応系の溶液組成は明らかに特殊な変化があり、それは次のように現れる:塩基溶液の沸点温度以下の温度区間では、溶媒は主に液体の水として存在するが、塩基溶液の沸点温度または沸点温度付近では、溶媒は液体の水と沸騰によって生成される気体の水に加えて、液体の水から気体の水への遷移が進行している臨界状態の水も含んでいる。さらに、この特殊な環境では、水中の溶存大気ガス(酸素、窒素)の含有量と状態も極めて特殊である(沸騰水蒸気、Tと塩基の反応で発生する大量の水素が、水中の溶存ガスの飽和分圧条件を変化させるため)。同時に、Ti-T金属間化合物と濃塩基溶液との反応は、合金中のTが除去される過程で大量の水素を発生させ、これらの短期間に発生した水素ガスによって引き起こされる激しい膨張効果が、反応を続けている初期合金に大きなダメージを与え、反応界面の初期合金を断片化させ続け、塩基溶液に溶解したT塩は反応溶液系の材料組成を変化させる。沸点温度における溶液のこれらの多くの特性は、反応に非常に特殊な反応環境を提供する。この特殊な反応環境下では、特殊な反応プロセスが発生し、初期合金が激しい水素析出・脱T反応によって効率的なナノ断片化を受け、一般に低温または室温での脱合金反応によって生成される三次元網目状の連続ナノ多孔質構造を安定化させることが困難になり、さらに形状・組成再構成により二次元ナノチタン酸塩フィルムを主成分とする固体凝集生成物を生成させ、目的生成物の製造時間を大幅に短縮するとともに、二次元ナノチタン酸塩フィルムの高い収率も達成される。特定の塩基溶液の沸点温度が一定であるため、温度制御を極めて正確に行うことができ、生成物の形態や組成の制御が極めて正確、かつ容易になる。
【0085】
特に常圧下、塩基溶液の沸点温度Tf溶液で反応が起こる場合、反応系の溶液組成は明らかに特殊な変化があり、それは次のように現れる:塩基溶液の沸点温度以下の温度区間では、溶媒は主に液体の水として存在し、反応系の状態は普通であるが、塩基溶液の沸点温度または沸点温度付近では、溶媒は液体の水と沸騰によって生成される気体の水に加えて、液体の水から気体の水への遷移が進行している臨界状態の水も含んでいる。さらに、不均一核生成の原理に従って、溶液中の反応物と事前に生成されたナノスケールの反応生成物の存在により、多数の沸騰および蒸発粒子が提供され、反応系が完全に沸騰および蒸発の特殊な環境に置かれる。この特殊な環境では、水中の溶存大気ガス(酸素、窒素)の含有量と状態も極めて特殊である(沸騰水蒸気、Tと塩基の反応で発生する大量の水素が、水中の溶存ガスの飽和分圧条件を変化させるため)。同時に、Ti-T金属間化合物と濃塩基溶液との反応は、合金中のTが除去される過程で大量の水素を発生させ、これらの短期間に発生した水素ガスと、不均一核沸騰蒸発により発生した大量の水蒸気が、水素析出・脱T反応界面に作用する。それによって引き起こされる激しい膨張効果が、反応界面での初期合金の連続的なナノ断片化と形状および組成の再構築プロセスをさらに促進する。また、塩基溶液に溶解したT塩も、反応溶液系の物質組成を変化させることになる。沸点温度における溶液のこれらの多くの特性は、反応に非常に特殊な反応環境を提供する。この特殊な反応環境下では、特殊な反応プロセスが発生し、初期合金が水素析出・脱T反応によって効率的なナノ断片化と形状・組成の再構成を受ける。そのため、一般に低温または室温での脱合金反応によって生成される三次元網目状の連続ナノ多孔質構造を安定化させることが困難になる。その代わりに、特殊なナノ細分化プロセスや形状・組成再構築プロセスによって、埋め込まれたAナノ粒子を含むナノチタン酸塩フィルムを主成分とする固体凝集生成物が生成される。これにより、目的のフィルム状生成物の製造時間が大幅に短縮されるだけでなく、ナノチタン酸塩フィルムの高い収率も達成される。 さらに、特定の塩基溶液の沸点温度が一定であるため、温度制御を極めて正確に行うことができ、製品の形態や組成の制御が極めて正確、かつ容易になる。
【0086】
さらに、上記工程2の「ナノ断片化-生成物形状・組成の再構築」工程は、「水素析出・脱T」反応とほぼ同時に発生するため、上記工程2の生成物生成工程に必要な理論上の最小所要時間は、初期合金反応界面が表面から内側に進み、水素析出・脱T反応が完了するまでの時間であり、水素析出が完了したかどうかで判断できる。
【0087】
さらに、上記水素析出・脱T反応が、激しい水素析出・脱T反応である。
【0088】
さらに、上記激しい水素析出・脱T反応が、水素析出・脱T反応の反応界面進行速度が十分に速く、反応界面で析出した水素が短時間で濃縮・放出され、激しい反応過程を示すことを意味する。
【0089】
さらに、上記水素析出・脱T反応の激しさが、単位時間当たりの初期合金表面から内側への反応界面の前進速度に関係し、塩基溶液の温度が高いほど、反応界面の前進速度が速くなり、反応が激しくなる。
【0090】
さらに、上記反応界面が、30μm/minより大きい平均速度で初期合金表面から内側に進む。
【0091】
例えば、塩基の濃度が10mol/Lである場合、Ti25Al75初期合金と塩基溶液との反応中に、反応界面が次の速度で初期合金表面から内側に進む:
【0092】
100℃<T-110℃である場合、上記反応界面の平均進行速度が、約35μm/min~60μm/minである。
【0093】
110℃<T-120℃である場合、上記反応界面の平均進行速度が、約60μm/min~125μm/minである。
【0094】
120℃<T-Tf溶液である場合、上記反応界面の平均進行速度が、120μm/minより大きい。
【0095】
さらに、上記水素析出・脱T反応中に超音波が適用され、超音波処理によりナノ断片化効果と反応速度をさらに高める。
【0096】
さらに、上記超音波が、20kHz~10kHzの周波数を有する。
【0097】
T元素(Al、Zn)は両性金属であるため、常圧下で沸点温度(100℃より高い)付近の塩基溶液との反応が、非常に速い。一般的に、初期合金中のT元素が完全に除去されるまでの反応時間は、初期合金の形状に関係する。つまり、初期合金粉末粒子が小さいほど、あるいは初期合金リボンが薄いほど、水素析出・脱T反応の完了に要する時間が短くなり、逆に、水素析出・脱T反応の完了に要する時間が長くなる。反応界面の平均進行速度と初期合金のサイズに基づいて、水素析出・脱T反応が完了するのに必要な最小反応時間tを計算することができる。例えば、初期合金が厚さdのリボンであり、反応界面の平均進行速度がvである場合、反応界面がリボンの上側と下側からそれぞれ進行すると考えると、t=0.5d/vとなる。同様に、初期合金が直径dの粒子であり、反応界面の平均進行速度がvである場合、t=0.5d/vとなる。
【0098】
一実施形態では、TiAl金属間化合物の初期合金リボンは、沸点温度(沸点温度は約119℃である)で10mol/LのNaOH溶液と反応し、初期合金リボンの反応界面の平均進行速度が約 120μm/minであり、すなわち、厚さ40μmの初期合金スリボンの場合、水素析出・脱Al反応が10秒で完了することができ、厚さ20μmの初期合金リボンの場合、水素析出・脱Al反応が5秒で完了することができ、粒径5mmの初期合金球の場合でも、水素析出・脱Al反応が21minで完了することができる。
【0099】
さらに、上記初期合金のT温度での塩基溶液との反応時間が、最小10sであり得る。
【0100】
さらに、上記初期合金のT温度での熱塩基溶液との反応時間が、10s~59minである。
【0101】
さらに、上記初期合金のT温度での熱塩基溶液との反応時間が、10s~29minである。
【0102】
さらに、上記初期合金のT温度での熱塩基溶液との反応時間が、10s~9.9minである。
【0103】
さらに、上記初期合金のT温度での熱塩基溶液との反応時間が、10s~4.9minである。
【0104】
さらに、上記初期合金のT温度での熱塩基溶液との反応時間が、10s~2minである。
【0105】
さらに、上記初期合金のT温度での熱塩基溶液との反応時間が、10s~1minである。
【0106】
さらに、上記初期合金のT温度での熱塩基溶液との反応時間が、10s~30sである。
【0107】
明らかに、Tが高くなるほど、初期合金の厚さが薄くなったり、粒径が小さくなったりすると、必要な反応時間が短くなり、逆に反応時間が長くなる。
【0108】
水素析出・脱T反応が完了すると、反応系は平衡に達する。この時点で、反応系を元の反応温度で保持する時間を引き続き延長することにより、生成物の安定性が依然として確保される。 従って、初期合金と熱塩基溶液との反応時間が、必要な最小限の水素析出・脱T反応時間tを超える場合、例えば数時間であっても、対応する生成物を得ることができる。
【0109】
さらに、上記ナノ断片化の発生とは、反応界面における初期合金が水素析出・脱T反応によりナノスケールの中間体または生成物に断片化され、同時に、形状および組成の再構成により二次元ナノチタン酸塩フィルム生成物が生成されることを意味する。このプロセスでは、水素析出・脱T反応による水素の激しい放出が、中間体や生成物のナノ断片化、生成物の形状や組成の再構成、反応界面を離れた後の塩基溶液中での生成物の拡散分布を促進する。
【0110】
さらに、上記ナノ断片化の発生とは、反応界面における初期合金が、水素析出・脱T反応によって、三次元方向の少なくとも1つの寸法が500nm未満の単一の中間体または生成物に断片化されることを意味する。
【0111】
さらに、上記固体凝集生成物が、主に、三次元方向の少なくとも1つの寸法が20nm未満の単一の中間体または生成物から構成される。
【0112】
さらに、上記固体凝集生成物が、主に、三次元方向の少なくとも1つの寸法が10nm未満の単一の中間体または生成物から構成される。
【0113】
さらに、上記固体凝集組成物が、形状と成分再構成によって生成した後、初期合金反応界面に残留せず、また、生成と同時に拡散により初期合金反応界面から離れ、かつ熱拡散およびアルカリ溶液液体対流によってさらに拡散してアルカリ溶液中に分布する。
【0114】
さらに、上記形状及び組成の再構築とは、初期合金水素析出・脱T反応及びナノ断片化後の中間生成物が同時に形状及び組成の更なる変化を受け、ミクロンまたはミリメートルスケールの初期合金とは全く異なる組成及び形状を有するナノスケール生成物を生成することを意味する。
【0115】
さらに、上記生成されたナノチタン酸塩フィルムが、三次元連続網目状ナノ多孔質構造または多孔質骨格構造を含まない。
【0116】
さらに、上記水素析出・脱T反応が、表面から内側への段階的なナノ断片化プロセスによって、ミクロンまたはミリメートルスケールの初期合金を、多数の二次元ナノチタン酸塩フィルムに変換する。
【0117】
さらに、上記凝集性固体生成物は、主に、多数の二次元ナノチタン酸塩フィルムが相互に凝集し、絡み合って構成されており、巨視的には固体である。
【0118】
さらに、上記凝集性固体生成物とは、ナノスケールのフィルム状生成物が拡散過程で凝集し、固体の凝集生成物となり、観察的観点から、溶液中でより長い時間懸濁させることができるものをいう。
【0119】
上記工程3において、
【0120】
一般的に、化学反応の温度と生成物が平衡に達した後、反応系の温度をゆっくり下げると、新しい温度で反応を長時間保持すると、元の反応平衡が崩れ、反応生成物の組成と形態が変化する可能性がある。
【0121】
上記工程2の反応系には、反応により生成した生成物と反応後の塩基溶液が含まれる。
【0122】
元の反応平衡の生成物を熱塩基溶液に保持し、同時に生成物の固液分離を促進するために、工程3には、工程2に記載の反応系内の固体凝集生成物の温度をTからより低い温度区間まで下げる工程もさらに含まれる。温度降下速度を制御することにより、反応系の温度が急速に降下した場合でも、反応生成物が対応する変化を受ける時間がなくなり、それにより、T温度で生成される生成物の組成および形態が確実に保持されることができる。
【0123】
さらに、
【0124】
常圧下で、工程2に記載の反応系における、固体凝集生成物の温度を、Tからより低い温度区間まで低下させる。ここで、100℃≦T≦Tf溶液である。
【0125】
さらに、101℃-T-Tf溶液である。
【0126】
さらに、101℃≦T1≦Tf溶液である。
【0127】
さらに、105℃≦T1≦Tf溶液である。
【0128】
さらに、101℃≦Tf溶液-5℃≦T1≦Tf溶液である。
【0129】
さらに、101℃≦Tf溶液-2℃≦T1≦Tf溶液である。
【0130】
好ましくは、T=Tf溶液である。
【0131】
さらに、工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を、Tから50℃未満に低下させる。
【0132】
さらに、工程2に記載の反応系において、埋め込まれたAナノ粒子を含む固体凝集生成物の温度を、Tから45℃未満に低下させる。
【0133】
さらに、工程2に記載の反応系において、埋め込まれたAナノ粒子を含む固体凝集生成物の温度を、Tから40℃未満に低下させる。
【0134】
さらに、
【0135】
工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を低下させる冷却速度が、5K/sより大きい。
【0136】
工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を低下させる冷却速度が、10K/sより大きい。
【0137】
工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を低下させる冷却速度が、20K/sより大きい。
【0138】
工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を低下させる冷却速度が、50K/sより大きい。
【0139】
工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を低下させるのに所要時間が、20s未満である。
【0140】
工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を低下させるのに所要時間が、10s未満である。
【0141】
工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を低下させるのに所要時間が、5s未満である。
【0142】
工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を低下させるのに所要時間が、2s未満である。
【0143】
さらに、工程2に記載の反応系において、固体凝集生成物の温度を低下させる方法は、溶媒希釈、ろ過と冷却のうちの少なくとも1つを含む。
【0144】
常圧下、開放容器内で反応を行うため、反応系に冷溶媒(例えば水)を添加することで、工程2に記載の反応系内の固体凝集生成物の温度を急速に低下させ、同時に反応系内の塩基溶液の濃度を低下させることが容易である。また、別の方法として、熱塩基溶液を固体凝集生成物とともに急速に流出させ、同時にろ過分離することにより、反応系内の固体凝集生成物の温度を急速に低下させることも可能である。
【0145】
さらに、上記溶媒希釈に対応する溶媒が水を含む。
【0146】
さらに、上記溶媒希釈に対応する溶媒の温度が、室温である。
【0147】
さらに、上記溶媒希釈に対応する溶媒の温度が、0℃~30℃である。
【0148】
さらに、上記溶媒希釈に対応する溶媒の温度が、0℃~25℃である。
【0149】
さらに、上記溶媒希釈に対応する溶媒の温度が、0℃~20℃である。
【0150】
さらに、溶媒の添加による希釈を採用する場合、上記工程2に記載の反応系中の固体凝集生成物の温度を低下させ、同時に塩基溶液の温度も低下させる。さらに上記工程2に記載の反応系中の塩基溶液の濃度を低下させる。
【0151】
さらに、上記濃度を低下させた後の塩基溶液の濃度は元の濃度の0.25倍未満であり、同時に、温度を低下させた後の塩基溶液の温度は50℃未満である。
【0152】
好ましくは、上記濃度を低下させた後の塩基溶液の濃度は元の濃度の0.1倍未満であり、同時に、温度を低下させた後の塩基溶液の温度は45℃未満である。
【0153】
さらに、ろ過と冷却を採用する場合、具体的な手順は次のとおりである:常圧下、固体凝集生成物を含む塩基溶液をT温度で、冷却したフィルターに流し、フィルターを通して固体凝集生成物と塩基溶液を分離する。固体凝集生成物の熱が、環境およびフィルターを通して急速に伝導されることにより、固体凝集生成物の温度が低温区間まで急速に低下することができる。
【0154】
さらに、フィルターメッシュの温度は30℃以下である。
【0155】
さらに、フィルターメッシュの温度は20℃以下である。
【0156】
さらに、フィルターメッシュの温度は10℃以下である。
【0157】
さらに、フィルターメッシュの平面は、水平面に対して角度をなしているため、固体の凝集生成物を含む熱塩基溶液がフィルターメッシュに注がれた後、フィルターメッシュ上で流動し広がりながら十分にろ過され、冷却されることができる。
【0158】
さらに、フィルターメッシュの平面と水平面との間の角度は、15°~75°である。
【0159】
さらに、フィルターメッシュのメッシュ開口サイズの範囲は、5μm~1mmである。
【0160】
さらに、フィルターメッシュは、多層フィルターメッシュを含む。
【0161】
さらに、フィルターメッシュは少なくとも4層からなる。
【0162】
さらに、フィルターメッシュは多層のフィルターメッシュを備えており、各層のメッシュサイズは一定でない。
【0163】
固体凝集生成物は、一般に凝集して絡み合ってより大きな凝集体を形成するため、より大きな細孔サイズのメッシュフィルターを通じて一次分離できる。多層コールドフィルターメッシュを通じて、より大きなメッシュフィルターによる固形生成物の一次分離、中型メッシュフィルターによる固形凝集生成物の継続分離、および小型メッシュフィルターによる固形凝集生成物の最終分離が達成することができる。
【0164】
さらに、フィルターメッシュは熱伝導性に優れた金属フィルターメッシュを含む。
【0165】
コールドメッシュ濾過によって温度を冷却すると、固体凝集生成物の温度が急速に低下するだけでなく、元の反応平衡に対応する固液分離が起こり、希釈法に比べて分離副生成物溶液の体積が減少し、さらにT温度で生成された生成物の組成と形態が確実に維持されるという積極的な意義があることが分かる。
【0166】
さらに、最終的に得られるナノチタン酸塩フィルム材料の温度がTより低い温度である限り、あるいは、Tより低い温度で固液分離、洗浄、保存、使用を行う限り、中間工程におけるナノチタン酸塩フィルム材料の温度の履歴変化にかかわらず、工程3に記載の上記工程2に記載の反応系における固体凝集生成物の温度をTから低下させる操作の一部となる。
【0167】
さらに、固体凝集生成物を回収する工程は、固体凝集生成物の固液分離、洗浄、および乾燥を含む。
【0168】
さらに、固体凝集生成物を回収し、二次元ナノチタン酸塩フィルム材料を得る。
【0169】
さらに、固体凝集生成物を回収し、二次元ナノチタン酸塩フィルム粉末材料を得る。
【0170】
さらに、上記フィルム材料は、巨視的には粉末材料の形状をしており、微視的には多数の二次元のフィルムから構成されている。
【0171】
さらに、上記フィルム材料は、巨視的には粉末材料の形状をしており、微視的には多数の単一の二次元フィルムが分散または絡み合って構成されており、その構造は、従来の脱合金反応によって形成されるナノポーラス構造とは全く異なる。従来の脱合金反応によって得られたナノポーラス構造体は、三次元網目テザーが連結して全体を形成しており、その全体的な外観は基本的に脱合金反応前の初期合金の外観と同じである。
【0172】
さらに、上記二次元フィルム材料とは、材料の最小単位(例えば、単一の粉末粒子、モノリシックフィルム)の面積が大きく、その厚さ方向の寸法が面積方向の二次元寸法よりもはるかに小さく、厚さが10nm以下である材料を指す。
【0173】
さらに、上記ナノチタン酸塩フィルムの厚さが、0.25nm~4nmである。
【0174】
さらに、上記ナノチタン酸塩フィルムの厚さが、0.25nm~3nmである。
【0175】
好ましくは、上記ナノチタン酸塩フィルムの厚さが、0.25nm~2nmである。
【0176】
さらに、上記ナノチタン酸塩フィルムの平均面積が、500nmより大きい。
【0177】
好ましくは、上記ナノチタン酸塩フィルムの平均面積が、5000nmより大きい。
【0178】
さらに好ましくは、上記ナノチタン酸塩フィルムの平均面積が、20000nmより大きい。
【0179】
さらに、上記ナノチタン酸塩フィルムは、主として低結晶性チタン酸塩である。
【0180】
さらに、上記ナノチタン酸塩フィルム中のカチオン元素は、上記塩基中の対応するカチオン元素に由来する。
【0181】
さらに、上記ナノチタン酸塩フィルム材料の化学組成は、Ti、O、及び塩基中の対応するカチオン元素を含む。例えば、塩基がNaOHである場合、上記塩基中の対応するカチオン元素がNaであり、上記ナノチタン酸塩フィルム材料の化学組成には、Ti、O、およびNa元素が含まれる。
【0182】
さらに、上記最終固体生成物における、二次元ナノチタン酸塩フィルムの収率が、最終生成物におけるその重量%である。
【0183】
さらに、最終固体凝集生成物における二次元ナノチタン酸塩フィルムの収率が、95%~100%である。
【0184】
さらに、最終固体凝集生成物における二次元ナノチタン酸塩フィルムの収率が、99%~100%である。
【0185】
さらに、常圧下で、上記初期合金と塩基溶液との反応温度がTf溶液である場合、上記最終固体凝集生成物における二次元ナノチタン酸塩フィルムの収率が、99%~100%である。
【0186】
さらに、常圧下で、上記初期合金と塩基溶液との反応温度がTf溶液である場合、上記最終固体凝集生成物における二次元ナノチタン酸塩フィルムの収率が、99%~100%であり、かつ、生成物本体には三次元連続網目状のナノポーラス構造や多孔質骨格構造は含まれていない。
【0187】
第2の態様において、本発明はまた、ナノチタン酸フィルム材料の製造方法であって、第1の態様において製造された生成物、または上記第1の態様においてナノチタン酸塩フィルム材料を酸溶液と反応させ、固体生成物を回収し、それによってナノチタン酸フィルム材料を得ることを特徴とする方法に関する。
【0188】
酸溶液と反応させることにより、まずナノチタン酸塩フィルム材料の表面に吸着した残留塩基が中和され、次にナノチタン酸塩フィルム材料中のカチオンと酸溶液中の水素イオンとの間でイオン交換が起こり、その結果、ナノチタン酸フィルム材料が得られる。これに加えて、酸反応後の生成物は、その第1の態様に記載の生成物の主な特性と実質的に同じである。
【0189】
さらに、上記酸溶液が、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、リン酸、シュウ酸、ピクリン酸、オレイン酸、過塩素酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0190】
本方法で製造した二次元ナノチタン酸塩フィルムまたは二次元ナノチタン酸フィルムが非常に薄いため、酸濃度が0.1mol/Lより高い場合、二次元ナノチタン酸フィルムの酸溶液へのさらなる溶解が明らかに発生する。したがって、ナノチタン酸フィルムの酸とのさらなる反応と溶解を防ぐために、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.1mol/L未満である。
【0191】
好ましくは、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.0001mol/L~0.09mol/Lである。
【0192】
好ましくは、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.0001mol/L~0.05mol/Lである。
【0193】
さらに好ましくは、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.0001mol/L~0.01mol/Lである。
【0194】
さらに、ナノチタン酸塩フィルム材料と酸溶液とを反応させる具体的な工程は、以下の通りである:ナノチタン酸塩フィルム材料を水に分散させ、攪拌状態で、上記酸溶液を徐々に添加し、混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~5に制御し、1min~5h後、分離、乾燥し、ナノチタン酸フィルム材料を得る。pH値が2~5の間に維持されるように制御され、すなわち、混合溶液中の対応する水素イオン濃度を0.00001mol/L~0.001mol/Lに保つと、全工程において、ナノチタン酸塩フィルム材料の表面に吸着した残留塩基が最初に中和され、次に、ナノチタン酸塩フィルム材料中のカチオンと酸溶液中の水素イオンの間でイオン交換が起こることが保証され、その後、酸溶液と明らかに反応しない二次元ナノチタン酸フィルム材料を得る。
【0195】
さらに、上記二次元ナノチタン酸フィルムの厚さが、0.25nm~4nmである。
【0196】
さらに、上記二次元ナノチタン酸フィルムの厚さが、0.25nm~3nmである。
【0197】
さらに、上記二次元ナノチタン酸フィルムの厚さが、0.25nm~2nmである。
【0198】
さらに、上記二次元ナノチタン酸フィルム材料の単一フィルムの平均面積が、500nmより大きい。
【0199】
好ましくは、上記二次元ナノチタン酸フィルム材料の単一フィルムの平均面積が、5000nmより大きい。
【0200】
さらに好ましくは、上記二次元ナノチタン酸フィルム材料の単一フィルムの平均面積が、20000nmより大きい。
【0201】
さらに、上記ナノチタン酸フィルムは、主として低結晶性チタン酸である。
【0202】
さらに、上記ナノチタン酸フィルム材料の化学組成が、H、Ti、およびO元素を含む。
【0203】
さらに、上記ナノチタン酸フィルム材料の化学組成が、HTiOを含む。
【0204】
第3の態様において、本発明はまた、ナノTiOシート粉末の製造方法であって、第2の態様において製造された生成物、または上記第2の態様に記載のナノチタン酸フィルム材料が熱処理によって製造されることを特徴とする方法に関する。
【0205】
さらに、上記熱処理時間が、1min~48hである。
【0206】
好ましくは、上記熱処理時間が、10min~3hである。
【0207】
さらに、上記熱処理の温度範囲が、400℃~1000℃である。
【0208】
上記温度範囲の低い値を選択した場合、ナノチタン酸フィルムがナノTiOシートに変化するのに長い時間が必要であり、上記温度範囲の高い値を選択した場合、ナノチタン酸フィルムがナノTiOシートに変化するのに短い時間が必要である。
【0209】
さらに、熱処理工程において、ナノチタン酸の形態が、フィルムからシートに変化し、厚みが大幅に増加すると同時に、チタン酸からナノTiOへの変化も起こる。
【0210】
さらに、上記結晶性ナノTiOシート粉末におけるナノTiO の相組成は、ブルッカイト型ナノTiO、ナノアナターゼ型ナノTiO、およびルチル型ナノTiOのうちの少なくとも1つを含む。
【0211】
変化過程において、特定の熱処理温度と時間に対応する生成物状態では、例えば、「ナノチタン酸フィルム材料」と「アナターゼ型ナノTiOシート」の共存、および「アナターゼ型ナノTiOシート」と「ルチル型ナノTiOシート」の共存である2つの結晶形態の共存が起こり得る。
【0212】
さらに、上記ナノTiOシートの形状が、板状シートである。
【0213】
さらに、上記ナノTiOシートの厚さが、1nm~30nmである。
【0214】
さらに、上記ナノTiOシートの厚さが、1nm~20nmである。
【0215】
さらに、上記ナノTiOシートの平均面積が、100nm以上である。
【0216】
さらに、上記ナノTiOシートの平均面積が、1000nm以上である。
【0217】
さらに、上記ナノTiOシートの平均面積が、4000nm以上である。
【0218】
第4の態様において、本発明はまた、チタン酸塩ナノチューブの製造方法に関し、以下の製造工程を含むことを特徴とする:
【0219】
その第1の態様に記載の生成物またはナノチタン酸塩フィルム、または(および)その第2の態様に記載の生成物またはナノチタン酸フィルムを含む固体物質を、塩基溶液とともに密閉容器に封入し、その後、Tf溶液の温度よりも高い温度Tで高温高圧処理を行う。ここで、Tf溶液は、常圧下で上記反応に関与する塩基溶液の沸点温度であり、かつ、100℃<T-Tf溶液<Tである。一定時間反応させた後、密閉容器の温度を下げ、圧力を常圧に戻し、最終固体生成物を回収し、チタン酸ナノチューブを得る。
【0220】
さらに、上記塩基溶液が、NaOH、KOH、LiOH、RbOH、Ba(OH)、Ca(OH)、およびSr(OH)溶液のうちの少なくとも1つを含む。
【0221】
さらに、上記塩基溶液の溶媒が、水を含み、好ましくは、上記塩基溶液の溶媒が、水である。
【0222】
さらに、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、5.1~25mol/Lであり、好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、5.1~15mol/Lである。
【0223】
好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、7~15mol/Lであり、さらに好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、10~15mol/Lである。
【0224】
さらに、上記塩基の濃度が、塩基中のOHの濃度を意味する。
【0225】
さらに、第1の態様に記載の生成物またはナノチタン酸塩フィルム、または/および第2の態様に記載の生成物またはナノチタン酸フィルムを含む固体状物質と混合される塩基溶液中の塩基は過剰量であり、塩基溶液の体積が、上記固体状物質の体積の5倍以上である。
【0226】
さらに、塩基溶液の体積が、上記固体状物質の体積の10倍以上である。さらに、塩基溶液の体積が、上記固体状物質の体積の20倍以上である。
【0227】
好ましい実施形態として、
【0228】
上記「第1の態様に記載の生成物またはナノチタン酸塩フィルム、または(および)第2の態様に記載の生成物またはナノチタン酸フィルムを含む固体状物質と塩基溶液」とは、第1の態様に記載の工程1及び工程2で得られた水素析出・脱T反応終了時の固体凝集生成物と、対応する塩基溶液である。
【0229】
即ち:第1の態様に記載の工程1及び工程2で得られた水素析出・脱T反応終了時の固体凝集生成物と、対応する塩基溶液を密閉容器に封入し、その後、Tf溶液の温度よりも高い温度Tで高温高圧処理を行う。ここで、Tf溶液は、常圧下で上記反応に関与する塩基溶液の沸点温度であり、かつ、100℃<T≦Tf溶液<Tである。一定時間反応させた後、密閉容器の温度を下げ、圧力を常圧に戻し、最終固体生成物を回収し、E成分元素がドープされたチタン酸塩ナノチューブを得る。
【0230】
この好ましい実施形態では、固体凝集生成物と対応する塩基溶液を分離し、次いで塩基と混合する必要がなく、また、塩基溶液を冷却した後、昇温する必要がなく(T<T)、かつ、塩基濃度も、この好ましい実施形態の高温高圧反応の要件を満たす。 したがって、これは最も経済的で簡単な実施形態である。
【0231】
さらに、上記高温高圧処理工程中に、フィルム状チタン酸塩または(および)フィルム状チタン酸が、チューブ状チタン酸塩に変化し、かつ、100℃<T≦Tf溶液<Tである。
【0232】
さらに、上記反応を密閉容器内で常圧よりも高い圧力で行うため、塩基溶液の温度を常圧下での沸点温度Tf溶液以上に加熱することができ、フィルム状チタン酸塩、または/およびフィルム状チタン酸を高温高圧でチューブ状チタン酸塩に変化することができる。
【0233】
さらに、密閉容器内では、塩基溶液の種類と濃度が決まると、特定の温度値が特定の圧力値に対応しなければならない。すなわち、圧力値は温度値の関数であり、温度が高いほど、圧力が高くなる。
【0234】
さらに、Tf溶液<T<300℃である。
【0235】
さらに、Tf溶液<T<250℃である。
【0236】
さらに、Tf溶液<T<200℃である。
【0237】
さらに、Tf溶液<120℃<T<200℃である。
【0238】
さらに、Tf溶液<140℃<T<200℃である。
【0239】
さらに、Tf溶液<150℃<T<180℃である。
【0240】
さらに、上記T温度での高温高圧処理時間が0.1h~10hである。さらに、上記T温度での高温高圧処理時間が0.1h~1hである。さらに、上記T温度での高温高圧処理時間が0.1h~0.5hである。さらに好ましくは、上記T温度での高温高圧処理時間が0.1h~0.2hである。
【0241】
反応が均衡した後も温度を維持し続けることで生成物が得られるため、上記保温時間にはより長い時間値を選択することもできる。
【0242】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブの外径が、2nm~20nmである。
【0243】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブの外径が、3nm~15nmである。
【0244】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブの平均長さが、その平均外径の5倍を超える。
【0245】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブは、主として低結晶性チタン酸塩である。
【0246】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブ中のカチオン元素は、上記塩基中の対応するカチオン元素に由来する。
【0247】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブの化学組成は、Ti、O、及び塩基中の対応するカチオン元素を含む。例えば、塩基がNaOHである場合、上記塩基中の対応するカチオン元素がNaであり、上記チタン酸塩ナノチューブの化学組成には、Ti、O、およびNa元素が含まれる。
【0248】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブは、主に、ナノチタン酸塩フィルムを高温高圧処理することにより製造されるため、高温高圧処理が不完全な場合には、得られる生成物にもナノチタン酸塩フィルムが含まれることになる。
【0249】
さらに、上記最終生成物におけるチタン酸塩ナノチューブの重量パーセント含有量が、50%を超える。
【0250】
さらに、上記最終生成物におけるチタン酸塩ナノチューブの重量パーセント含有量が、90%を超える。
【0251】
第5の態様において、本発明はまた、チタン酸ナノチューブの製造方法であって、第4の態様において製造された生成物、または上記第4の態様に記載のチタン酸塩ナノチューブを酸溶液と反応させ、固体生成物を回収することによって製造されることを特徴とする方法に関する。
【0252】
さらに、上記酸溶液が、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、リン酸、シュウ酸、ピクリン酸、オレイン酸、過塩素酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0253】
酸溶液と反応させることにより、まずチタン酸塩ナノチューブの表面に吸着した残留塩基が中和され、次にチタン酸塩ナノチューブ中のカチオンと酸溶液中の水素イオンとの間でイオン交換が起こり、その結果、チタン酸ナノチューブが得られる。
【0254】
チタン酸ナノチューブは、チタン酸フィルムよりも比表面積がわずかに小さいため、その第2の態様に記載の方法よりもわずかに高い濃度の酸を用いて反応を実施することができる。
【0255】
さらに、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.001mol/L~0.2mol/Lである。
【0256】
好ましくは、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.001mol/L~0.1mol/Lである。
【0257】
好ましくは、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.001mol/L~0.05mol/Lである。
【0258】
さらに、チタン酸塩ナノチューブ材料と酸溶液とを反応させる具体的な工程は、以下の通りである:チタン酸塩ナノチューブ材料を水に分散させ、攪拌状態で、上記酸溶液を徐々に添加し、混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~4の間に維持されるように制御し、1min~5h後、分離、洗浄、乾燥を行い、チタン酸ナノチューブ材料を得る。チタン酸塩ナノチューブは一定の厚みで巻き取られているため、pH値を2~4の間に維持されるように制御し、すなわち、混合溶液中の対応する水素イオン濃度を0.0001mol/L~0.01mol/Lとすると、全工程でチタン酸塩ナノチューブ材料の表面に吸着した残留塩基がまず中和され、次にチタン酸塩ナノチューブ中のカチオンと酸溶液中の水素イオンとの間でイオン交換が起こり、明らかに酸溶液と反応していないチタン酸ナノチューブ材料が得られることが確保される。
【0259】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの外径が、2nm~20nmである。
【0260】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの外径が、3nm~15nmである。
【0261】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの平均長さが、その平均外径の5倍を超える。
【0262】
さらに、上記チタン酸ナノチューブは、主として低結晶性チタン酸である。
【0263】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの化学組成が、H、Ti、およびO元素を含む。
【0264】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの化学組成が、HTiOを含む。
【0265】
第6の態様において、本発明はまた、TiOナノチューブ/ロッドの製造方法であって、第5の態様において製造された生成物、または上記第5の態様に記載のチタン酸ナノチューブが熱処理によって製造されることを特徴とする方法に関する。
【0266】
さらに、上記熱処理プロセス中にナノTiOが生成される。
【0267】
さらに、上記熱処理の時間が、1min~48hである。
【0268】
好ましくは、上記熱処理の時間が、10min~3hである。
【0269】
さらに、上記熱処理の温度が、400℃~1000℃である。
【0270】
さらに、上記熱処理プロセス中に、チタン酸ナノチューブのTiOナノチューブ/ロッドへの変化が発生する。
【0271】
上記温度範囲の低い値を選択した場合、チタン酸ナノチューブが結晶性TiOナノチューブ/ロッドに変化するのに長い時間が必要であり、上記温度範囲の高い値を選択した場合、チタン酸ナノチューブがTiOナノチューブ/ロッドに変化するのに短い時間が必要である。
【0272】
さらに、上記結晶性TiOナノチューブ/ロッドとは、結晶性TiOナノチューブ/ロッドの形状が、チューブおよびロッドのうちの少なくとも1つを含むことを指す。チューブの内径がゼロまで収縮すると、ロッドの形状になる。
【0273】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの相組成は、ブルッカイト型ナノTiO、アナターゼ型ナノTiO、およびルチル型ナノTiOのうちの少なくとも1つを含む。
【0274】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの平均長さが、その平均外径の3倍を超える。
【0275】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの外径が、3nm~25nmである。
【0276】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの外径が、4nm~20nmである。
【0277】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの主な化学組成が、Ti、Oを含む。
【0278】
第7の態様において、本発明はまた、チタン酸塩ナノチューブの別の製造方法に関し、以下の製造工程を含むことを特徴とする:
【0279】
工程1): 初期合金を提供し、上記初期合金は、T元素、およびTi元素を含み、T元素が、AlおよびZnのうちの少なくとも1つを含み、かつ、初期合金の相組成は、T-Ti金属間化合物を含む。
【0280】
工程2): 上記初期合金を、塩基溶液とともに密閉容器に封入し、その後、密閉反応系の温度をTまで加熱し、一定時間保温する。ここで、100℃<Tf溶液<Tであり、Tf溶液は、常圧下で上記反応に関与する塩基溶液の沸点温度であり、かつ、T温度における反応容器内の圧力は常圧よりも高い。
【0281】
工程3):密閉容器の温度を下げ、圧力を常圧に戻し、固体生成物を回収し、チタン酸塩ナノチューブを得る。
【0282】
上記工程1)および工程1)に関する詳細な説明は、第1の態様(ナノチタン酸塩フィルム材料の製造方法)に記載の工程1およびその詳細な説明と完全に一致する(上記の第1の態様に記載の工程1の部分を参照してください)。
【0283】
上記工程2)において、
【0284】
さらに、上記初期合金および塩基溶液を、常温常圧で密閉容器に封入し、その後、密閉反応系の温度をTまで加熱し、一定時間保温する。ここで、100℃<Tf溶液<Tである。
【0285】
さらに、上記塩基溶液が、NaOH、KOH、LiOH、RbOH、Ba(OH)、Ca(OH) 、およびSr(OH) 溶液のうちの少なくとも1つを含む。
【0286】
さらに、上記塩基溶液の溶媒が、水を含み、好ましくは、上記塩基溶液の溶媒が、水である。
【0287】
さらに、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、5.1~25mol/Lである。
【0288】
さらに、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、5.1~15mol/Lである。
【0289】
好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、7~15mol/Lであり、さらに好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、7~12mol/Lである。
【0290】
さらに好ましくは、上記塩基溶液中の塩基の濃度が、10~15mol/Lである。
【0291】
さらに、上記塩基の濃度が、塩基中のOHの濃度を意味する。
【0292】
さらに、初期合金と反応する塩基溶液中の塩基は過剰量であり、塩基溶液の体積は初期合金の体積の5倍以上であり、より高い塩基濃度で常時反応を進行させることができる。
【0293】
さらに、塩基溶液の体積が、初期合金の体積の10倍以上である。
【0294】
さらに、塩基溶液の体積が、初期合金の体積の20倍以上である。
【0295】
さらに、上記塩基溶液の温度が、初期合金と塩基溶液との反応温度である。
【0296】
初期合金と塩基溶液との反応は、常温常圧での反応準備段階および反応開始段階では非常に緩慢であり、初期合金と塩基溶液とを密閉容器に封入した後、初期合金中のT元素と塩基溶液との反応により発生した水素も密閉容器に封入されるため、密閉容器の圧力が上昇することが理解される。
【0297】
さらに、密閉反応系は、初期合金、塩基溶液、および密閉容器を含み、密閉反応系の温度は、初期合金、塩基溶液、および密閉容器に対応する温度である。
【0298】
さらに、密閉容器内の初期合金と塩基溶液の温度を常温からT温度まで加熱する加熱速度が、10℃/min以上である。
【0299】
さらに、密閉容器内の初期合金と塩基溶液の温度を常温からT温度まで加熱する時間が、30min未満である。
【0300】
さらに、100℃<Tf溶液<T<300℃である。
【0301】
さらに、100℃<Tf溶液<T<250℃である。
【0302】
さらに、100℃<Tf溶液<T<200℃である。
【0303】
さらに、100℃<Tf溶液<120℃<T<200℃である。
【0304】
さらに、100℃<Tf溶液<140℃<T<200℃である。
【0305】
さらに、100℃<Tf溶液<150℃<T<180℃である。
【0306】
さらに、密閉反応系のT温度での保温時間が、0.1h~20hである。好ましくは、0.1h~2hである。好ましくは、0.1h~1hである。好ましくは、0.1h~0.5hである。さらに好ましくは、0.2h~0.4hである。
【0307】
反応が平衡化した後も保温時間を継続することで生成物が得られるため、上記保温時間をより長い時間値として選択することもできる。
【0308】
さらに、常温からT温度までの加熱段階で、密閉容器内で初期合金と塩基溶液との間で水素析出・脱T反応を起こし、主にナノ多孔質チタン酸塩中間生成物を生成する。
【0309】
さらに、密閉反応系のT温度での保温段階で、ナノ多孔質チタン酸塩中間生成物からチタン酸塩ナノチューブへの変化が起こる。
【0310】
さらに、密閉反応系の圧力は常圧より高い。
【0311】
さらに、密閉反応系の圧力は、T温度での密閉系溶液に対応する圧力と、T温度での水素析出反応により生成された水素ガスに対応する圧力とを重ね合わせたものである。
【0312】
密閉水素圧力の存在により、上記密閉反応系の圧力は、T温度における単純な密閉系溶液に対応する圧力よりも高いため、この高圧環境は、ナノ多孔質チタン酸塩中間生成物が、チタン酸塩ナノチューブに変化するための条件を作り出すことが理解される。
【0313】
上記工程3)において、
【0314】
さらに、密閉容器の温度を室温付近まで下げ、圧力を常圧に戻す。
【0315】
さらに、上記室温付近の温度とは60℃以下の温度を指す。
【0316】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブの外径が、2nm~20nmである。
【0317】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブの外径が、3nm~15nmである。
【0318】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブの平均長さが、その平均外径の5倍を超える。
【0319】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブは、主として低結晶性チタン酸塩である。
【0320】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブ中のカチオン元素は、上記塩基中の対応するカチオン元素に由来する。
【0321】
さらに、上記チタン酸塩ナノチューブの化学組成は、Ti、O、及び塩基中の対応するカチオン元素を含む。例えば、塩基がNaOHである場合、上記塩基中の対応するカチオン元素がNaであり、上記チタン酸塩ナノチューブの化学組成には、Ti、O、およびNa元素が含まれる。
【0322】
さらに、高温高圧処理が不完全な場合、得られる生成物にナノチタン酸フィルムも含まれる。
【0323】
さらに、上記最終生成物におけるチタン酸塩ナノチューブの重量パーセント含量が、50%以上である。
【0324】
さらに、上記最終生成物におけるチタン酸塩ナノチューブの重量パーセント含量が、90%以上である。
【0325】
第8の態様において、本発明はまた、チタン酸ナノチューブの別の製造方法であって、第7の態様において製造された生成物、または上記第7の態様に記載のチタン酸塩ナノチューブを酸溶液と反応させ、固体生成物を回収し、チタン酸ナノチューブを得ることを特徴とする方法に関する。
【0326】
さらに、上記酸溶液が、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、リン酸、シュウ酸、ピクリン酸、オレイン酸、過塩素酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0327】
酸溶液と反応させることにより、まずチタン酸塩ナノチューブの表面に吸着した残留塩基が中和され、次にチタン酸塩ナノチューブ中のカチオンと酸溶液中の水素イオンとの間でイオン交換が起こり、その結果、チタン酸ナノチューブが得られる。
【0328】
チタン酸ナノチューブは、チタン酸フィルムよりも比表面積がわずかに小さいため、酸の濃度をわずかに高くすることで反応を行うことができる。
【0329】
さらに、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.001mol/L~0.2mol/Lである。
【0330】
好ましくは、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.001mol/L~0.1mol/Lである。
【0331】
好ましくは、上記酸溶液中の水素イオン濃度が、0.001mol/L~0.05mol/Lである。
【0332】
さらに、チタン酸塩ナノチューブ材料と酸溶液とを反応させる具体的な工程は、以下の通りである:チタン酸塩ナノチューブ材料を水に分散させ、攪拌状態で、上記酸溶液を徐々に添加し、混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~4の間に維持されるように制御し、1min~5h後、分離、洗浄、乾燥を行い、チタン酸ナノチューブ材料を得る。チタン酸塩ナノチューブは一定の厚みで巻き取られているため、pH値を2~4の間に維持されるように制御し、すなわち、混合溶液中の対応する水素イオン濃度を0.0001mol/L~0.01mol/Lとすると、全工程でチタン酸塩ナノチューブ材料の表面に吸着した残留塩基がまず中和され、次にチタン酸塩ナノチューブ中のカチオンと酸溶液中の水素イオンとの間でイオン交換が起こり、明らかに酸溶液と反応していないチタン酸ナノチューブ材料が得られることが確保される。
【0333】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの外径が、2nm~20nmである。
【0334】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの外径が、3nm~15nmである。
【0335】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの平均長さが、その平均外径の5倍を超える。
【0336】
さらに、上記チタン酸ナノチューブは、主として低結晶性チタン酸である。
【0337】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの化学組成が、H、Ti、およびO元素を含む。
【0338】
さらに、上記チタン酸ナノチューブの化学組成が、HTiOを含む。
【0339】
第9の態様において、本発明はまた、TiOナノチューブの別の製造方法であって、第8の態様において製造された生成物、または上記第8の態様に記載のチタン酸ナノチューブが熱処理によって製造されることを特徴とする方法に関する。
【0340】
さらに、上記熱処理プロセス中にナノTiOが生成される。
【0341】
さらに、上記熱処理の時間が、1min~48hである。
【0342】
好ましくは、上記熱処理の時間が、10min~3hである。
【0343】
さらに、上記熱処理の温度が、400℃~1000℃である。
【0344】
さらに、上記熱処理プロセス中に、チタン酸ナノチューブのTiOナノチューブ/ロッドへの変化が発生する。
【0345】
上記温度範囲の低い値を選択した場合、チタン酸ナノチューブが結晶性TiOナノチューブ/ロッドに変化するのに長い時間が必要であり、上記温度範囲の高い値を選択した場合、チタン酸ナノチューブがTiOナノチューブ/ロッドに変化するのに短い時間が必要である。
【0346】
さらに、上記結晶性TiOナノチューブ/ロッドとは、結晶性TiOナノチューブ/ロッドの形状が、チューブおよびロッドのうちの少なくとも1つを含むことを指す。チューブの内径がゼロまで収縮すると、ロッドの形状になる。
【0347】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの相組成は、ブルッカイト型ナノTiO、アナターゼ型ナノTiO、およびルチル型ナノTiOのうちの少なくとも1つを含む。
【0348】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの平均長さが、その平均外径の3倍を超える。
【0349】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの外径が、3nm~25nmである。
【0350】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの外径が、4nm~20nmである。
【0351】
さらに、上記TiOナノチューブ/ロッドの主な化学組成が、Ti、Oを含む。
【0352】
第10の態様において、本発明はまた、上記第1から第9の態様のいずれか1つに記載の製造方法により製造される生成物材料のポリマー系ナノ複合材料、セラミック材料、光触媒材料、加水分解による水素製造、疎水性材料、廃水分解材料、殺菌コーティング、防食塗料、海洋塗料での応用に関する。ここで、上記海洋塗料には防汚塗料が含まれる。
【0353】
具体的に、本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0354】
第一、安価で入手しやすいTi-T金属間化合物をチタン源として用い、常圧下、塩基溶液の沸点温度付近で、Ti-T金属間化合物を塩基溶液と反応させることにより、ナノチタン酸塩フィルム材料の常圧・高効率製造を実現した。これに基づいて、ナノチタン酸フィルム材料とナノTiO2シート粉末の低コスト製造がさらに可能になった。また、その後の高温高圧反応と組み合わせることで、さらに、チタン酸塩ナノチューブ、チタン酸ナノチューブ、およびTiOナノチューブ/ロッドの効率的かつ低コストな製造が可能となった。
【0355】
強塩基水熱法は現在、ナノチタン酸塩、ナノチタン酸、およびナノTiOを製造する比較的成熟したプロセスであるが、その反応は高圧反応容器を使用する必要があり、一般にナノTiOと高濃度の強塩基(例えばNaOH水溶液)を原料として、高温条件下で長時間水熱合成反応を行い、ナノチタン酸塩(例えばナノチタン酸ナトリウム)を得、中和・酸洗浄後にチタン酸ナノチューブを得るのが一般的である。例えば、工業用アナターゼ型TiOと10mol/L水酸化ナトリウム水溶液を原料として、130℃の高圧反応容器で72時間水熱反応させ、生成物を中和洗浄することにより、管長数十~数百ナノメートル、内径5.3nmのチタン酸ナノチューブが得られることが2001年の文献に報告されている。チタン酸ナトリウムの製造方法として文献に報告されている他の方法としては、NaOH、TiOを化学量論的な関係に従って秤量し、ポリテトラフルオロエチレン製の高圧反応器に移し、混合して230℃の温度で48時間から96時間保持した後、室温まで冷却した後に取り出して洗浄し、乾燥してチタン酸ナトリウムナノチューブを得、さらに酸洗浄してチタン酸ナノチューブを得る方法もある。従来の強塩基水熱法の特徴は、1)チタン原料としてTiOを使用すること、2)高圧反応容器で行われるため、気密性と高圧条件が必要であること、3)高温で行われること、4)反応時間が非常に長く、数時間から数日単位で計測されること、5)得られる生成物は一般にチタン酸塩ナノチューブまたはチタン酸ナノチューブであること、であることがわかる。
【0356】
これとは異なり、本発明の第1~第3の態様では、フィルム状のチタン酸塩およびその後続生成物を製造するために、強塩基溶液も使用するが、従来の強塩基水熱法とは明確に異なる点:1)チタン源として、Ti-T金属間化合物が使用されること、2)反応は常圧下の開放容器中で実施され、高圧の密閉容器が不要であること、3)反応は、塩基溶液の沸点または沸点温度付近で行い、非常に高い温度で行う必要がなく、かつ、温度の上限は塩基溶液の沸点であり、正確な制御が非常に容易であること、4)反応は数分、あるいは数秒で完了することができること、5)得られる生成物は、ナノチタン酸塩フィルム材料であり、これに基づいて、ナノチタン酸フィルム材料およびナノTiOシート粉末などの材料を製造することができること、がある。
【0357】
なお、本発明の第4~第6の態様に記載のチタン酸塩ナノチューブおよびその後続生成物の製造にも、高温高圧反応が採用されるが、高圧反応容器に添加される反応物は、製造済みのナノチタン酸塩フィルム材料、および対応する反応塩基である。従って、最初に数時間かけてTi-O結合を切断し、さらに反応させてTiOナノチューブを得る従来の水熱反応のように、チタン源としてTiOを使用する必要はない。具体的には、初期合金が、数十μmの粉末やリボンであっても、沸点温度の塩基溶液中に存在する特殊な環境により、常圧かつ塩基溶液の沸点温度付近で数分から数秒反応させた後、ナノチタン酸塩フィルム材料が生成され、フィルム状チタン酸塩の製造時間が大幅に短縮される。得られたナノチタン酸塩フィルムの厚さが極薄であるため、ナノチタン酸塩フィルムをチタン酸塩ナノチューブに変化するためには、高温高圧処理を短時間行うだけでよく、製造時間が大幅に短縮される。したがって、フィルム状チタン酸塩を製造する場合でも、本発明に記載の製造プロセス全体の常圧反応時間と高圧反応時間の合計時間は、他の報告または開示された製造方法で必要とされる反応時間よりも依然としてはるかに短く、これは極めて明らかな積極的な意義を有する。
【0358】
この明らかな有益な効果、特に目的生成物の製造時間と温度の大幅な短縮が得られるのは、チタン源としてTi-T金属間化合物を使用することと、反応が沸点温度Tf溶液またはその付近で行われることとが密接に関係している。
【0359】
常圧下、塩基溶液の沸点温度Tf溶液で反応が起こる場合、反応系の溶液組成は明らかに特殊な変化を示し、それは具体的に次のように現れる:塩基溶液の沸点温度以下の温度区間では、溶媒は主に液体の水として存在するが、塩基溶液の沸点温度または沸点温度付近では、溶媒は液体の水と沸騰によって生成される気体の水に加えて、液体の水から気体の水への遷移が進行している臨界状態の水も含んでいる。さらに、この特殊な環境では、水中の溶存大気ガス(酸素、窒素)の含有量と状態も極めて特殊である(沸騰水蒸気、Tと塩基の反応で発生する大量の水素が、水中の溶存ガスの飽和分圧条件を変化させるため)。同時に、Ti-T金属間化合物と濃塩基溶液との反応は、合金中のTが除去される過程で大量の水素を発生させ、これらの短期間に発生した水素ガスによって引き起こされる激しい膨張効果が、反応を続けている初期合金に大きなダメージを与え、反応界面の初期合金を断片化させ続け、塩基溶液に溶解したT塩は反応溶液系の材料組成を変化させる。沸点温度における溶液のこれらの多くの特性は、反応に非常に特殊な反応環境を提供する。この特殊な反応環境下では、特殊な反応プロセスが発生し、初期合金が激しい水素析出・脱T反応によって効率的なナノ断片化を受け、一般に低温または室温での脱合金反応によって生成される三次元網目状の連続ナノ多孔質構造を安定化させることが困難になり、さらに形状・組成再構成により二次元ナノチタン酸塩フィルムを主成分とする固体凝集生成物を生成させ、目的生成物の製造時間を大幅に短縮するとともに、二次元ナノチタン酸塩フィルムの高い収率も達成される。特定の塩基溶液の沸点温度が一定であるため、温度制御を極めて正確に行うことができ、生成物の形態や組成の制御が極めて正確、かつ容易になる。
【0360】
なお、Ti-T金属間化合物をチタン源として使用する場合、チタン源がミクロンサイズの粉末やリボンサンプルであっても、強塩基を用いてTiOをチタン源として管状ナノチタン酸塩を製造する従来の水熱法と比較して、反応機メカニズムは明らかに異なる。 本発明で使用する濃塩基溶液は、主に次の2つの目的を果たす:1)脱合金反応によってTi-T金属間化合物中のTが除去され、Ti-T金属間化合物からTi原子を遊離させる。Ti-T金属間化合物が、特殊な反応環境下において、溶液の沸点温度またはその付近の温度で強塩基溶液と反応すると、まず、Tと強塩基溶液とが極めて急速に脱合金反応し、水に溶解したT塩が生成し、激しく水素ガスが発生する。TがT塩として溶液中に入ると、Ti-T金属間化合物中のTi原子が遊離し、TiはOなどの元素と容易に結合し、さらに特定の方法で素早く結合してチタン酸塩フィルムを生成することができ、この過程は最短で数秒で完了できる。2)塩基の存在によりTi原子が遊離し、塩基溶液の沸点温度付近の特殊な環境で、Ti原子が塩基溶液中の陽イオンや酸素元素などと結合してナノチタン酸塩フィルムを生成することができ、この過程も最短で数秒で完了できる。これに対して、従来の高圧水熱法は、非常に安定したTiOをTi源として使用し、TiOがナノスケールの粉末であっても、まずTiOのTi-O結合構造を破壊してTiを遊離させ、新しい特殊な方法でOや他の元素と再結合させてチタン酸塩を生成させるために、高圧、高温、数時間反応させる必要がる。本発明の実施形態で提供される一比較試験において、Ti源として粒径50nm~100nmのアナターゼ型ナノTiOを用い、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液の沸点温度で10分間反応させた後も、粒径50nm~100nmのアナターゼ型ナノTiOのまま(粒径の大きさはXRDピークの半値幅で変化なしと推定できる。)であり、反応物はほとんど変化しなかった。したがって、反応生成物の迅速かつ短時間での製造には、溶液の沸点温度によって生じる特殊な環境に加え、Ti-T金属間化合物のチタン源の選択も非常に重要である。
【0361】
第二、二次元ナノチタン酸塩フィルム材料および二次元ナノチタン酸フィルム材料の簡単な製造条件を創意工夫した。上記初期合金を100℃<T≦Tf溶液で塩基溶液と反応させることは、二次元フィルム状の微視的形態を備えた生成物の製造にとって非常に重要である。一比較実施形態において、常圧下で、TiAl金属間化合物の初期合金粉末を10mol/LのNaOH溶液と35℃で2時間反応させ、反応前後の元の初期合金粉末の形状はほぼ変化せず、角のある元の粉砕粉末粒子のままであり、かつ、その微細構造は、モノリシックな二次元フィルム状生成物を多数生成するのではなく、代わりに、ナノ多孔質または多孔質骨格構造の生成物を生成する。そして、このナノ多孔質構造は、三次元ネットワークリンクを通じて元の合金粉末の形状と一致した外観を形成する。したがって、室温付近のより低い温度で起こる初期合金と塩基溶液との反応は、100℃<T≦Tf溶液温度範囲における本発明の反応とは全く異なり、生成物の形態も全く異なる。本発明は、創造性にT-Ti金属間化合物を含む初期合金を介して、二次元ナノチタン酸塩フィルムおよび二次元ナノチタン酸フィルム材料を製造する方法を見出した。
【0362】
本発明は、高温の濃塩基溶液を用いて上記T-Ti金属間化合物の初期合金と反応させ、反応溶液温度が100℃以上である場合、得られる生成物の外観と形態が初期合金の形態に比べて激変し始め、たとえば、元の初期合~~金の外観が角のある粒状である場合、得られる生成物が二次元のナノフィルムの形状であり、肉眼で観察する固体凝集体であり、TEMで観察すると、元の固体粉末の粒状やリボンではなく、カーボンメッシュ上に多数の非常に薄い二次元ナノフィルムが敷設された凝集体である(実施例と図面を参照してください)。反応温度が100℃より高い場合、より高い収率の二次元ナノチタン酸塩フィルムが得られ、その収率が一般に95%~100%である。反応温度が常圧下での塩基溶液の沸点である場合、さらにより高い収率の二次元ナノチタン酸塩フィルムが得られ、収率が一般に99%~100%であることを見出した。
【0363】
第三、その第4及び第7の態様で製造されるチタン酸塩ナノチューブの製造プロセスは、前駆体としてナノTiOを使用する従来の製造方法と比較して、生成物の製造時間を大幅に短縮することができる。具体的には、その第4と第7の態様の違いは以下の通りである:その第4の態様では、まず、態様1または2に記載の製造方法に従ってナノチタン酸塩フィルムまたはナノチタン酸フィルムを製造し、次いで、そのフィルムを高温高圧で処理してチタン酸塩ナノチューブを製造する。一方、その第7の態様では、二次元ナノチタン酸塩フィルムまたはナノチタン酸フィルムを製造する工程を省略し、反応系の準備段階と昇温段階で、ナノ多孔質チタン酸塩を生成し、高温高圧に保持する段階でチタン酸塩ナノチューブを形成する。その第4の態様とその好ましい形態における水素析出・脱T反応は、100℃<T-Tf溶液で行われ、激しい水素析出・脱T反応を利用することにより、(その第1の態様に記載)二次元ナノチタン酸塩フィルムの製造が極めて短時間で達成されるため、その後、比較的短時間の高温高圧処理でチタン酸塩ナノチューブを製造することができる。一方、その第7の態様は、高温段階での反応がゆっくりで激しくないため、激しい水素析出・脱T反応を利用せず、その加熱段階で得られるのは主にナノ多孔質チタン酸塩構造である。この観点から見ると、高温高圧保持段階でのナノ多孔質チタン酸塩構造からチタン酸塩ナノチューブへの変化は、その第4の態様よりも難しく、より時間がかかるが、その第7の態様において、密閉容器には、反応する水素によって発生する追加の高圧が含まれており、同じT温度での圧力が、その第4の態様に対応する圧力よりも高く、この高圧は、チタン酸塩ナノチューブの形成に寄与する。従って、この観点から見ると、その第7の態様の高温高圧保持段階におけるチタン酸塩ナノチューブの形成の難易度は、その第4の態様の場合よりも、圧力の観点から再び低くなる。実際には、このプロセスは2つのシナリオの駆け引きの結果である。しかし、その第4の態様と第7の態様はいずれも、チタン酸塩ナノチューブの製造時間が大幅に短縮され、プロセスが簡素化され、これは積極的な意義がある。
【0364】
第四、反応条件を正確に制御することにより、生成物の組成と形態を正確に制御することができる。具体的には、溶液中の塩基濃度が決定されると、塩基溶液が常圧下で加熱できる沸点温度も決定され、反応条件における圧力と温度が正確に決定されることになる。塩基溶液の沸点温度では、塩基溶液に加えられた余分な熱は、塩基溶液の温度を上昇させることなく水の気化熱に変換されるため、連続加熱により塩基溶液の温度を沸点温度で一定に保つことが可能となる。また、反応過程でTi-T金属間化合物の脱合金過程で多量の反応潜熱が発生しても、反応する塩基溶液の温度を塩基溶液の沸点温度に確実に維持することができる。一方、従来の高圧水熱合成法は、高温高圧で生成物の合成を行う。反応を終了させる必要がある場合、徐々に圧力と温度を常温常圧に戻してから試料を取り出す必要があり、完了までにある程度の時間を要する。一般的に、化学反応では、その一定の温度と圧力の条件は、生成物の一定の組成および形態に対応する。塩基溶液の温度と圧力を速やかに常温常圧に変えることができず、時間内に試料を取り出す場合、元の温度と圧力での反応物の平衡が崩れ、他のより高い温度と圧力で組成および形態における一定の変化が生じる可能性がある。これに対して、本発明の第1の態様に記載の製造プロセスは、開放容器内で常圧下行われるため、反応を終了させる必要がある場合には、数秒以内に反応容器に冷水または室温の水を急速に加えるか、冷却フィルターを通して冷却するだけでよく、反応系の温度と濃度を、もはや反応が継続できない温度までほぼ瞬時に低下させることができ、元の反応を平衡化させ、生成物の組成と形態を維持することができる。このように、本発明が提供する技術的解決手段は、非常に安定した組成および形態を有するナノチタン酸塩フィルム材料を得ることができる。これに基づいて、安定した組成および形態を有するナノチタン酸フィルム材料、ならびにナノTiOシート粉末などの後続生成物をさらに製造することができる。生成物の組成と形態を安定的に制御することは、幅広く応用するための重要な要素の一つであり、積極的な意義がある。
【0365】
第五、ナノチタン酸塩フィルム、ナノチタン酸フィルム、ナノTiOシート粉末、チタン酸塩ナノチューブ、チタン酸ナノチューブ、TiOナノチューブの大規模な工業生産が可能になった。
【0366】
この一連の発明の第1の態様における重要な工程の反応圧力は常圧であり、高圧密閉容器を必要とせず、反応温度は、溶液の沸点温度または溶液の沸点温度付近の温度(溶液中の塩基の濃度にもよるが、温度はおおよそ105℃~180℃であり、比較的温和である)である。必要なチタン源は、Ti-T金属間化合物であり、「合金溶解+鋳造+粉砕」または「合金溶解+溶融ストリッピング」などの方法で大規模に製造でき、必要な溶解原料は通常のTi、Tなどの原料である。特に重要なのは、重要な反応時間が数秒から数分と短く、極めて効率的であること、反応温度と圧力などの条件を正確に制御でき、所望の生成物を得るために反応を速やかに終了できることである。これらの特徴により、製造工程が大幅に素化され、生産効率が向上し、製造コストが削減され、対応する製品を低コスト、高効率で大規模的に製造することが可能になった。
【0367】
従って、本発明の製造方法は、単純なプロセス、簡単な操作、高効率、低コストの特徴を有し、ナノフィルム、ナノチューブおよび他の形態を含む、多様なナノチタン酸塩、ナノチタン酸、およびナノTiO材料の製造を実現し、ポリマー系ナノ複合材料、セラミック材料、光触媒材料、加水分解による水素製造、疎水性材料、廃水分解材料、殺菌コーティング、防食塗料、海洋塗料などの分野において良好な応用の見通しがある。
【図面の簡単な説明】
【0368】
図1】本発明の実施例1で製造された、ナノチタン酸ナトリウムフィルムのTEM低倍率および高倍率写真である。
図2】本発明の実施例1で製造された、ナノチタン酸フィルムのTEM低倍率および高倍率写真である。
図3】本発明の実施例1で製造された、アナターゼ型ナノTiOシート粉末のTEM形態写真および回折スペクトルである。
図4】本発明の実施例2で製造された、ナノチタン酸フィルムのTEM写真である。
図5】本発明の実施例2で製造された、アナターゼ型ナノTiOシート粉末のTEM低倍率および高倍率写真である。
図6】本発明の実施例2で製造されたアナターゼ型ナノTiOシート粉末のXRDパターンである。
図7】本発明の比較例1で製造された生成物のXRDパターンである。
図8】本発明の比較例1におけるアナターゼ型TiO粉末のXRDパターンである。
図9】本発明の比較例2の反応生成物のSEM低倍率および高倍率写真である。
【発明を実施するための形態】
【0369】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。
【0370】
実施例1。本実施例は、ナノチタン酸ナトリウムフィルム材料、ナノチタン酸フィルム材料、およびナノTiOシート粉末の製造方法、及び、その用途を提供し、以下の工程を含む。
【0371】
金属TiおよびAl原料をTi25Al75(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi25Al75の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物を銅ローラストリップキャスト法によって厚さが~35μmのリボン状のTiAl金属間化合物を主成分とする初期合金に製造した。
【0372】
常圧下、上記で製造したTi25Al75初期合金リボン0.25gを、濃度10mol/L、沸点温度(約119℃)のNaOH水溶液50mlに撹拌しながら添加し、Ti25Al75初期合金リボンは、濃塩基溶液との反応中、激しい水素析出・脱Al反応によってナノ断片化され、同時に形状と組成が再構成され、塩基溶液中に拡散分布した固体凝集生成物を生成した。
【0373】
水素析出・脱Al反応は15s以内に終了し、反応を完全に終了させるために保持時間を2分間継続した後、室温の水450mlを攪拌下で反応系に一度に急速注加し、溶液中の塩基の濃度を2s以内に1mol/Lまで低下させ、温度を45℃以下まで低下させた。
【0374】
上記固体凝集生成物を塩基溶液から分離し、洗浄し、乾燥させ、単一フィルムの厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、フィルムの平均面積が1000nm以上であるナノチタン酸ナトリウムフィルム材料を得た。得られたフィルムは明らかな二次元材料の特徴を示した。そのTEM形態は図1の低倍率-高倍率写真に示されている。チタン酸ナトリウムナノフィルムは凝集しているが、その構造はナノ多孔質構造や多孔質骨格構造を含んでいない。図1の低倍率写真における凝集体の観察から、TEMの電子線透過性と相まって、凝集体の厚みが極めて薄いことがわかった。このことは、凝集体が構造的に安定な球形に近い物体ではなく、TEM試料作製時にTEMカーボンメッシュ上に均一に平坦化された多数のフィルムの平坦な凝集体であることを示唆している。
【0375】
塩基溶液から分離した上記固体凝集生成物を水に分散させ、次に0.025mol/LのHCl溶液をそれに徐々に添加して混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~5の間に制御した。10min後、固液分離、洗浄、乾燥を行い、ナノチタン酸フィルム材料が得られ、その単一膜の厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、単一フィルムの平均面積が1000nm以上であった。そのTEM形態は図2の低倍率-高倍率写真に示されている。
【0376】
上記ナノチタン酸フィルム材料を475℃で2時間熱処理して、アナターゼ型ナノTiOシート粉末を得た。得られたアナターゼ型ナノTiOシートの厚さ範囲が0.5nm~7nmであり、平均面積が200nm以上であった。そのTEM低倍率-高倍率の形態と回折スペクトルを図3に示している。
【0377】
上記ナノチタン酸フィルム材料を900℃で2時間熱処理して、ルチル型ナノTiOシート粉末を得た。得られたルチル型ナノTiOシートの厚さ範囲が1nm~15nmであり、平均面積が150nm以上であった。
【0378】
上記ナノチタン酸ナトリウムフィルム材料、ナノチタン酸フィルム材料、およびナノTiOシート粉末は、高分子系ナノ複合材料、セラミック材料、光触媒材料、疎水性材料、廃水分解材料、殺菌コーティング、防食塗料、海洋塗料などの分野に応用される。
【0379】
実施例2。本実施例は、ナノチタン酸ナトリウムフィルム材料、ナノチタン酸フィルム材料、およびナノTiO2シート粉末の製造方法、及び、その用途を提供し、以下の工程を含む。
【0380】
金属TiおよびAl原料をTi33.3Al66.7(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi33.3Al66.7の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物をインゴットに凝固させ、次にインゴットを粉砕して粒径が100μm以下のTiAl金属間化合物を主成分とする初期合金粉末を製造した。
【0381】
常圧下、上記で製造したTi33.3Al66.7初期合金粉末0.5gを、濃度10mol/L、沸点温度(約119℃)のNaOH水溶液50mlに撹拌しながら添加し、Ti33.3Al66.7初期合金粉末は、濃塩基溶液との反応中、激しい水素析出・脱Al反応によってナノ断片化され、同時に形状と組成が再構成され、塩基溶液中に拡散分布した固体凝集生成物を生成した。
【0382】
水素析出・脱Al反応は30s以内に終了し、その後、保持時間を2h継続し、水素析出・脱Al反応の終了を確認した後、さらに保持時間を延長し続けても対応する生成物を得ることができた。保持時間中に蒸発した水を補充することで、溶液の体積を50mlに維持した。
【0383】
2時間後、固体凝集生成物を含む熱濃縮塩基溶液を、水平面に対して45度の角度で、孔径がそれぞれ200μm、20μm、5μm、5μm、5μmの五層銅メッシュ上に流し込み、固体凝集生成物を五層銅メッシュ上に保持させ、塩基溶液を濾過除去すると同時に、固体凝集生成物の温度を20s以内に45℃以下まで低下させた。
【0384】
上記固体凝集生成物を洗浄し、乾燥させ、単一フィルムの厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、フィルムの平均面積が1000nm以上である、ナノチタン酸ナトリウムフィルム材料を得た。
【0385】
上記で得られた固体凝集生成物を水に分散させ、次に0.025mol/LのHCl溶液をそれに徐々に添加して混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~5の間に制御した。10min後、固液分離、洗浄、乾燥を行い、ナノチタン酸フィルム材料が得られ、その単一膜の厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、平均面積が1000nm以上であった。そのTEM形態を図4に示している。水素析出・脱Al反応終了後、2hの保温時間を継続しても、その後の酸溶液反応と組み合わせることで、目的生成物であるナノチタン酸フィルムが得られることがわかった。
【0386】
上記ナノチタン酸フィルム材料を550℃で2時間熱処理して、アナターゼ型ナノTiOシート粉末を得た。得られたアナターゼ型ナノTiOシートの厚さ範囲が0.5nm~10nmであり、平均面積が200nm以上であった。そのTEM低倍率-高倍率の形態を図5に示している。そのXRDパターンを図6に示している。
【0387】
上記ナノチタン酸フィルム材料を700℃で1時間熱処理して、アナターゼ型ナノTiOシート粉末とルチル型ナノTiOシート粉末の混合粉末材料を得た。得られた混合粉末中のナノTiOシートの厚さ範囲が1nm~12nmであり、平均面積が150nm以上であった。
【0388】
上記ナノチタン酸フィルム材料を900℃で2時間熱処理して、ルチル型ナノTiOシート粉末材料を得た。得られたルチル型ナノTiOシートの厚さ範囲が1nm~15nmであり、平均面積が100nm以上であった。
【0389】
実施例3。本実施例は、ナノチタン酸カリウムフィルム材料およびナノチタン酸フィルム材料の製造方法を提供し、以下の工程を含む。
【0390】
金属TiおよびAl原料をTi40Al60(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi40Al60の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物を銅ローラストリップキャスト法によって厚さが~1mmのリボン状の主にTiAl金属間化合物とTiAl金属間化合物から構成される初期合金に製造した。
【0391】
常圧下、上記で製造したTi40Al60初期合金リボン0.25gを、濃度10mol/L、沸点温度(約150℃)のKOH水溶液50mlに撹拌しながら添加し、Ti40Al60初期合金リボンは、濃塩基溶液との反応中、激しい水素析出・脱Al反応によってナノ断片化され、同時に形状と組成が再構成され、塩基溶液中に拡散分布した固体凝集生成物を生成した。
【0392】
水素析出・脱Al反応は4min以内に終了し、反応を完全に終了させるために保持時間を1分間継続した後、室温の水700mlを攪拌下で反応系に一度に急速注加し、溶液中の塩基の濃度を2s以内に1mol/Lまで低下させ、温度を45℃以下まで低下させた。
【0393】
上記固体凝集生成物を塩基溶液から分離し、洗浄し、乾燥させ、単一フィルムの厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、フィルムの平均面積が1000nm以上であるナノチタン酸カリウムフィルム材料を得た。得られたフィルムは明らかな二次元材料の特徴を示した。
【0394】
上記得られた固体凝集生成物を水に分散させ、次に0.025mol/LのHCl溶液をそれに徐々に添加して混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~5の間に制御した。5min後、固液分離、洗浄、乾燥を行い、ナノチタン酸フィルム材料が得られ、その単一膜の厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、平均面積が1000nm以上であった。
【0395】
実施例4。本実施例は、チタン酸ナトリウムナノチューブ、チタン酸ナノチューブ、およびTiOナノチューブ/ロッドの製造方法を提供し、以下の工程を含む。
【0396】
金属TiおよびAl原料をTi33.3Al66.7(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi33.3Al66.7の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物を銅ローラストリップキャスト法によって厚さが~30μmのリボン状の主にTiAl金属間化合物から構成される初期合金に製造した。
【0397】
常圧下、上記で製造したTi33.3Al66.7初期合金リボン0.5gを、濃度10mol/L、沸点温度(約119℃)のNaOH水溶液50mlに撹拌しながら添加し、Ti33.3Al66.7初期合金リボンは、濃塩基溶液との反応中、激しい水素析出・脱Al反応によってナノ断片化され、同時に形状と組成が再構成され、塩基溶液中に拡散分布した固体凝集生成物を生成した。
【0398】
水素析出・脱Al反応は15s以内に終了し、その後、上記固体凝集体を含むNaOH水溶液をPTFEでライニングした反応釜に密閉し、密閉した反応釜とその中の初期合金およびNaOH水溶液の温度を10min以内に直ちに250℃まで昇温し、その後20分間保温した。この時、反応器内の圧力は常圧よりも高かった。
【0399】
20min後、反応釜を冷水中に入れて急冷した。反応釜を室温まで冷却した後、釜内の圧力を常圧に戻し、反応釜内の固形物を塩基溶液から分離し、洗浄し、乾燥させ、チューブの外径が3nm~12nmであり、チューブの長さがチューブの外径の5倍以上であるチタン酸ナトリウムナノチューブを得た。
【0400】
上記反応釜内の塩基溶液から分離した固形物を水に分散させ、次に0.025mol/LのHCl溶液をそれに徐々に添加して混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~5の間に制御した。10min後、固液分離、洗浄、乾燥を行い、チタン酸ナノチューブが得られ、そのチューブの外径が3nm~12nmであり、チューブの長さがチューブの外径の5倍以上であった。
【0401】
上記チタン酸ナノチューブを550℃で2時間熱処理して、アナターゼ型TiOナノチューブを得た。得られたアナターゼ型TiOナノチューブの外径が3nm~15nmであり、チューブの長さがチューブの外径の5倍以上であった。
【0402】
上記チタン酸ナノチューブを900℃で2時間熱処理して、ルチル型TiOナノチューブ/ロッドを得た。得られたルチル型TiOナノチューブ/ロッドの外径が4nm~20nmであり、チューブ/ロッドの長さがチューブ/ロッドの外径の3倍以上であった。
【0403】
実施例5。本実施例は、ナノチタン酸カリウムフィルム材料、ナノチタン酸フィルム材料、およびナノTiOシート粉末の製造方法を提供し、以下の工程を含む。
【0404】
金属TiおよびZn原料をTi25Zn75(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi25Zn75の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物を銅ローラストリップキャスト法によって厚さが~30μmのリボン状の主にTiZn金属間化合物から構成される初期合金に製造した。
【0405】
常圧下、上記で製造したTi25Zn75初期合金リボン0.5gを、濃度10mol/L、温度105℃~115℃のKOH水溶液50mlに撹拌しながら添加し、Ti25Zn75初期合金リボンは、濃塩基溶液との反応中、激しい水素析出・脱Zn反応によってナノ断片化され、同時に形状と組成が再構成され、塩基溶液中に拡散分布した固体凝集生成物を生成した。
【0406】
水素析出・脱Zn反応は15s以内に終了し、反応を完全に終了させるために保持時間を2分間継続した後、室温の水700mlを攪拌下で反応系に一度に急速注加し、溶液中の塩基の濃度を2s以内に1mol/Lまで低下させ、温度を45℃以下まで低下させた。
【0407】
上記固体凝集生成物を塩基溶液から分離し、洗浄し、乾燥させ、単一フィルムの厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、フィルムの平均面積が1000nm以上であるナノチタン酸カリウムフィルム材料を得た。
【0408】
上記塩基溶液から分離した固形物を水に分散させ、次に0.025mol/LのHCl溶液をそれに徐々に添加して混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~5の間に制御した。10min後、固液分離、洗浄、乾燥を行い、ナノチタン酸フィルム材料が得られ、その単一膜の厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、平均面積が1000nm以上であった。
【0409】
上記ナノチタン酸フィルム材料を500℃で2時間熱処理して、アナターゼ型ナノTiOシート粉末を得た。得られたアナターゼ型ナノTiOシートの厚さ範囲が0.5nm~7nmであり、平均面積が200nm以上であった。
【0410】
上記ナノチタン酸フィルム材料を900℃で2時間熱処理して、ルチル型ナノTiOシート粉末材料を得た。得られたルチル型ナノTiOシートの厚さ範囲が1nm~15nmであり、平均面積が100nm以上であった。
【0411】
実施例6。本実施例は、ナノチタン酸ナトリウム(リチウム)フィルム材料、ナノチタン酸フィルム材料、およびナノTiOシート粉末の製造方法を提供し、以下の工程を含む。
【0412】
金属TiおよびAl原料をTi25Al75(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi25Al75の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物を銅ローラストリップキャスト法によって厚さが~200μmのリボン状の主にTiAl金属間化合物から構成される初期合金に製造した。
【0413】
6mol/LのLiOH 溶液と14mol/LのNaOH 溶液を別々に調製し、2つの溶液を混合して、OH濃度が10mol/LのLiOHとNaOHの混合溶液を得た。
【0414】
常圧下、上記で製造したTi25Al75初期合金リボン0.5gを、濃度10mol/L、沸点温度の上記混合溶液50mlに撹拌しながら添加し、Ti25Al75初期合金リボンは、濃塩基溶液との反応中、激しい水素析出・脱Al反応によってナノ断片化され、同時に形状と組成が再構成され、塩基溶液中に拡散分布した固体凝集生成物を生成した。
【0415】
水素析出・脱Al反応は2min以内に終了し、反応を完全に終了させるために保持時間を2分間継続した後、室温の水450mlを攪拌下で反応系に一度に急速注加し、溶液中の塩基の濃度を2s以内に1mol/Lまで低下させ、温度を45℃以下まで低下させた。
【0416】
上記固体凝集生成物を塩基溶液から分離し、洗浄し、乾燥させ、単一フィルムの厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、フィルムの平均面積が1000nm以上であるナノチタン酸ナトリウム(リチウム)フィルム材料を得た。
【0417】
上記塩基溶液から分離した固形物を水に分散させ、次に0.025mol/LのHCl溶液をそれに徐々に添加して混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~5の間に制御した。10min後、固液分離、洗浄、乾燥を行い、ナノチタン酸フィルム材料が得られ、その単一膜の厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、平均面積が1000nm以上であった。
【0418】
上記ナノチタン酸フィルム材料を500℃で2時間熱処理して、アナターゼ型ナノTiOシート粉末を得た。得られたアナターゼ型ナノTiOシートの厚さ範囲が0.5nm~7nmであり、平均面積が200nm以上であった。
【0419】
上記ナノチタン酸フィルム材料を900℃で2時間熱処理して、ルチル型ナノTiOシート粉末材料を得た。得られたルチル型ナノTiOシートの厚さ範囲が1nm~15nmであり、平均面積が100nm以上であった。
【0420】
実施例7。本実施例は、チタン酸ナトリウムナノチューブ、チタン酸ナノチューブ、およびTiOナノチューブ/ロッドの製造方法を提供し、以下の工程を含む。
【0421】
金属TiおよびAl原料をTi29Al71(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi29Al71の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物を銅ローラストリップキャスト法によって厚さが~25μmのリボン状の主にTiAl金属間化合物とTiAl金属間化合物から構成される初期合金に製造した。
【0422】
大気雰囲気下、上記で製造した初期合金リボン0.5gを、濃度10mol/L、沸点温度105℃~115℃のNaOH水溶液50mlに撹拌しながら添加し、Ti29Al71初期合金リボンは、濃塩基溶液との反応中、激しい水素析出・脱Al反応によってナノ断片化され、同時に形状と組成が再構成され、塩基溶液中に拡散分布した固体凝集生成物を生成した。
【0423】
水素析出・脱Al反応は15s以内に終了し、その後、上記固体凝集体を含むNaOH水溶液をPTFEでライニングした反応釜に密閉し、密閉した反応釜とその中の初期合金およびNaOH水溶液の温度を10min以内に直ちに275℃まで昇温し、その後20分間保温した。この時、反応器内の圧力は常圧よりも高かった。
【0424】
10分間保温した後、反応釜を冷水中に入れて急冷した。反応釜を室温まで冷却した後、釜内の圧力を常圧に戻し、反応釜内の固形物を塩基溶液から分離し、洗浄し、乾燥させ、チューブの外径が3nm~12nmであり、チューブの長さがチューブの外径の5倍以上であるチタン酸ナトリウムナノチューブを得た。
【0425】
上記反応釜内の塩基溶液から分離した固形物を水に分散させ、次に0.025mol/LのHCl溶液をそれに徐々に添加して混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~5の間に制御した。5min後、固液分離、洗浄、乾燥を行い、チタン酸ナノチューブが得られ、そのチューブの外径が3nm~12nmであり、チューブの長さがチューブの外径の5倍以上であった。
【0426】
上記チタン酸ナノチューブを500℃で3時間熱処理して、アナターゼ型TiOナノチューブを得た。得られたアナターゼ型TiOナノチューブの外径が3nm~15nmであり、チューブの長さがチューブの外径の5倍以上であった。
【0427】
上記チタン酸ナノチューブを900℃で2時間熱処理して、ルチル型TiOナノチューブ/ロッドを得た。得られたルチル型TiOナノチューブ/ロッドの外径が4nm~20nmであり、チューブ/ロッドの長さがチューブ/ロッドの外径の3倍以上であった。
【0428】
実施例8。本実施例は、チタン酸ナトリウムナノチューブ、チタン酸ナノチューブ、およびTiOナノチューブ/ロッドの製造方法を提供し、以下の工程を含む。
【0429】
金属TiおよびAl原料をTi25Al75(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi25Al75の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物を銅ローラストリップキャスト法によって厚さが~25μmのリボン状の主にTiAl金属間化合物から構成される初期合金に製造した。
【0430】
常温常圧下、上記で製造した初期合金リボン0.5gと、濃度10mol/LのNaOH水溶液50mlをPTFEでライニングした反応釜に密閉し、密閉した反応釜とその中の初期合金およびNaOH水溶液の温度を10min以内に直ちに250℃まで昇温し、その後20分間保温した。この時、反応器内の圧力は常圧よりも高かった。
【0431】
20min後、反応釜を冷水中に入れて急冷した。反応釜を室温まで冷却した後、釜内の圧力を常圧に戻し、反応釜内の固形物を塩基溶液から分離し、洗浄し、乾燥させ、チューブの外径が3nm~12nmであり、チューブの長さがチューブの外径の5倍以上であるチタン酸ナトリウムナノチューブを得た。
【0432】
上記チタン酸ナノチューブを550℃で1時間熱処理して、アナターゼ型TiOナノチューブを得た。得られたアナターゼ型TiOナノチューブの外径が3nm~15nmであり、チューブの長さがチューブの外径の5倍以上であった。
【0433】
上記チタン酸ナノチューブを900℃で2時間熱処理して、ルチル型TiOナノチューブ/ロッドを得た。得られたルチル型TiOナノチューブ/ロッドの外径が4nm~20nmであり、チューブ/ロッドの長さがチューブ/ロッドの外径の3倍以上であった。
【0434】
実施例9。本実施例は、ナノチタン酸ナトリウムフィルム材料、ナノチタン酸フィルム材料、およびナノTiOシート粉末の製造方法を提供し、以下の工程を含む。
【0435】
金属TiおよびZn原料をTi25Zn75(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi25Zn75の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物を銅ローラストリップキャスト法によって厚さが~100μmのリボン状の主にTiZn金属間化合物から構成される初期合金に製造した。
【0436】
常圧下、上記で製造したTi25Zn75初期合金リボン0.5gを、濃度10mol/L、沸点温度(約119℃)のNaOH水溶液50mlに撹拌しながら添加し、Ti25Zn75初期合金リボンは、濃塩基溶液との反応中、激しい水素析出・脱Zn反応によってナノ断片化され、同時に形状と組成が再構成され、塩基溶液中に拡散分布した固体凝集生成物を生成した。
【0437】
水素析出・脱Zn反応は1min以内に終了し、反応を完全に終了させるために保持時間を2分間継続した後、室温の水450mlを攪拌下で反応系に一度に急速注加し、溶液中の塩基の濃度を2s以内に1mol/Lまで低下させ、温度を45℃以下まで低下させた。
【0438】
上記固体凝集生成物を塩基溶液から分離し、洗浄し、乾燥させ、単一フィルムの厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、フィルムの平均面積が1000nm以上であるナノチタン酸カリウムフィルム材料を得た。得られたフィルムは明らかな二次元材料の特徴を示した。
【0439】
上記塩基溶液から分離した固形物を水に分散させ、次に0.025mol/LのHCl溶液をそれに徐々に添加して混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を2~5の間に制御した。10min後、固液分離、洗浄、乾燥を行い、ナノチタン酸フィルムが得られ、その単一膜の厚さ範囲が0.25nm~3nmであり、平均面積が1000nm以上であった。
【0440】
上記ナノチタン酸フィルム材料を500℃で2時間熱処理して、アナターゼ型ナノTiOシート粉末を得た。得られたアナターゼ型ナノTiOシートの厚さ範囲が0.5nm~7nmであり、平均面積が200nm以上であった。
【0441】
上記ナノチタン酸フィルム材料を900℃で2時間熱処理して、ルチル型ナノTiOシート粉末材料を得た。得られたルチル型ナノTiOシートの厚さ範囲が1nm~15nmであり、平均面積が100nm以上であった。
【0442】
実施例10。本実施例は、ナノチタン酸ナトリウムフィルム粉末材料、ナノチタン酸フィルム粉末材料の製造方法を提供し、以下の工程を含む。
【0443】
金属TiおよびAl原料をTi25Al75(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi25Al75の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物を銅ローラストリップキャスト法によって厚さが~100μmのリボン状の主にTiAl金属間化合物から構成される初期合金に製造した。
【0444】
常圧下、上記で製造したTi25Al75初期合金リボン0.5gを、濃度10mol/LのNaOH水溶液50mlとともに密閉容器に入れた。最初、初期合金リボンは塩基溶液と接触していなかった。
【0445】
密閉容器内の温度および初期合金リボンと塩基溶液の温度を150℃まで上昇させ、このとき密閉容器内は高圧状態となり、密閉容器内のTi25Al75初期合金リボンとこの温度の塩基溶液を混合し、激しい水素析出・脱T反応させ、Ti25Al75初期合金リボンは、高温高圧反応過程で激しい水素析出・脱Al反応によってナノ断片化され、同時に形状と組成が再構成され、固体凝集生成物を生成した。
【0446】
水素析出・脱Al反応は30s以内に終了し、30s後、密閉容器と反応系を冷却水に入れて室温付近まで急速に冷却させ、密閉容器内の圧力を常圧まで減圧させた。
【0447】
反応系の温度を常温常圧まで下げた後、固体凝集生成物を塩基溶液から分離し、洗浄し、乾燥させ、単一フィルムの厚さ範囲が0.25nm~5nmであり、フィルムの平均面積が1000nm以上であるナノチタン酸ナトリウムフィルム粉末材料を得た。得られたフィルムは明らかな二次元材料の特徴を示した。
【0448】
上記得られた塩基溶液から分離した後の固体凝集生成物を水に分散させ、次に0.025mol/LのHCl溶液をそれに徐々に添加して混合溶液のpH値を連続的に低下させ、最終的に混合溶液のpH値を3~5の間に制御した。固液分離、洗浄、乾燥を行い、ナノチタン酸フィルム粉末材料が得られ、その単一膜の厚さ範囲が0.25nm~5nmであり、平均面積が1000nm以上であった。
【0449】
比較例1。常圧下、粒径範囲が50nm~100nm のアナターゼ型TiO粉末0.5gを、濃度10mol/L、沸点温度(約119℃)のNaOH水溶液50mlに撹拌しながら加えた。
【0450】
10min後、室温の水450mlを攪拌しながら反応系に急速に注ぎ、溶液中の塩基の濃度を1mol/Lまで低下させ、温度を40℃以下まで低下させた。
【0451】
溶液中の固形物を溶液から分離し、洗浄、乾燥した後、図7に示すように、生成物のXRDパターンが得られた。
【0452】
図8のこの反応前のアナターゼ型TiO粉末のXRDパターンと組み合わせると、10分間の反応後、生成物はほとんど全く変化しなかったことが分析できる。 XRDピークの幅からも、TiOの粒径は大きく変化していなかったと判断できる。この比較例は、Ti源がTiO粉末である場合、大気環境における塩基水溶液の沸点温度により、Ti-O結合を短時間で破壊することが困難であることを示している。
【0453】
比較例2。金属TiおよびAl原料をTi25Al75(原子百分率)の比率に従って秤量し、溶融してTi25Al75の組成を有する合金溶融物を得た。得られた合金溶融物をインゴットに凝固させ、次にインゴットを粉砕して粒径が30μm以下のTiAl金属間化合物を主成分とする合金粉末を製造した。
【0454】
常圧下、上記初期合金粉末を10mol/LのNaOH溶液と35℃で2時間反応させ、得られた生成物を図9に示している。この反応条件下では、反応前後の元の初期合金粉末の形状はほとんど変化せず、図9に示すような角張った形態の、元の粉砕された角張った粉末粒子のままであり、かつ、その微細構造は、モノリシックな二次元フィルム状生成物を多数生成するのではなく、代わりに、ナノ多孔質構造からなる元の角張った粉末粒子であることがわかる。従って、低温で起こる初期合金と塩基溶液の反応平衡と、本発明の塩基溶液の沸点温度付近で起こる反応平衡とは全く異なり、生成物の形態も全く異なる。
【0455】
以上に説明した実施例の各技術的特徴は、任意に組み合わせてもよい。説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせを説明しなかったが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、本明細書に記載される範囲と見なされるべきである。
【0456】
以上に説明した実施例は、本発明の幾つかの実施形態を示しているに過ぎず、その説明が比較的具体的及び詳細的であるが、これをもって発明の保護範囲を制限するものであると理解されるべきではない。なお、当業者にとって、本発明の構想を逸脱しない限り、幾つかの変形及び改進を行うことができ、これらは、いずれも本発明の保護範囲に属する。従って、本発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲に準ずるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】