(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ピロロピリミジン類化合物の結晶形およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20240424BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240424BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240424BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P43/00 111
A61P35/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569696
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2022092059
(87)【国際公開番号】W WO2022237808
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110518999.9
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522394580
【氏名又は名称】ジャージアン・ロングチャーム・バイオ-テック・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG LONGCHARM BIO-TECH PHARMA. Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】張 楊
(72)【発明者】
【氏名】伍 文韜
(72)【発明者】
【氏名】耿 開駿
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB04
4C050CC08
4C050EE03
4C050FF02
4C050GG04
4C050HH02
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、式(I)の化合物の結晶形およびその調製方法に関し、さらに、関連疾病を治療する薬物の調製における上記結晶形の使用を含むものである。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物の結晶形Aであって、
前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:16.16±0.20°、16.60±0.20°、22.02±0.20°、23.08±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、結晶形A。
【化1】
【請求項2】
前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51±0.20°、10.63±0.20°、15.06±0.20°、16.16±0.20°、16.60±0.20°、21.28±0.20°、22.02±0.20°、23.08±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項3】
前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51±0.20°、10.63±0.20°、12.00±0.20°、13.17±0.20°、15.06±0.20°、16.16±0.20°、16.60±0.20°、18.61±0.20°、21.28±0.20°、22.02±0.20°、22.49±0.20°、23.08±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、請求項2に記載の結晶形A。
【請求項4】
前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51°、9.45°、10.04°、10.63°、12.00°、13.17°、14.25°、15.06°、15.51°、16.16°、16.60°、17.31°、17.58°、18.61°、18.95°、19.53°、20.07°、20.60°、21.28°、21.78°、22.02°、22.49°、23.08°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、請求項3に記載の結晶形A。
【請求項5】
前記結晶は、
図1に示すX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、請求項4に記載の式(I)の化合物の結晶形A。
【請求項6】
前記結晶形Aの示差走査熱量曲線は、それぞれ、145.7℃±3.0℃、208.9℃±3.0℃、および218.7℃±3.0℃で吸熱ピークのオンセット値を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶形A。
【請求項7】
前記結晶形Aは、
図2に示すDSCパターンを有する、請求項6に記載の結晶形A。
【請求項8】
前記結晶形Aの熱重量分析曲線は、200.0℃±3.0℃で7.66%の重量減少を示す、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶形A。
【請求項9】
前記結晶形Aは、
図3に示すTGAパターンを有する、請求項8に記載の結晶形A。
【請求項10】
式(I)の化合物の結晶形Bであって、
前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47±0.20°、10.41±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°の2θ角において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、結晶形B。
【化2】
【請求項11】
前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47±0.20°、10.41±0.20°、15.23±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°、20.87±0.20°、21.46±0.20°、21.91±0.20°において特徴的な回折ピークを有する、請求項10に記載の結晶形B。
【請求項12】
前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47±0.20°、9.53±0.20°、10.41±0.20°、11.91±0.20°、13.91±0.20°、15.23±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°、18.82±0.20°、20.87±0.20°、21.46±0.20°、21.91±0.20°において特徴的な回折ピークを有する、請求項11に記載の結晶形B。
【請求項13】
前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47°、9.53°、9.78°、10.41°、11.45°、11.91°、12.40°、13.22°、13.91°、14.87°、15.23°、15.44°、16.04°、16.73°、17.33°、17.88°、18.82°、19.61°、19.88°、20.25°、20.87°、21.46°、21.91°において特徴的な回折ピークを有する、請求項12に記載の結晶形B。
【請求項14】
前記結晶は、
図4に示すX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、請求項13に記載の式(I)の化合物の結晶形B。
【請求項15】
前記結晶形Bの示差走査熱量曲線は、214.3℃±3.0℃で吸熱ピークのオンセット値を有する、請求項10~14のいずれか1項に記載の結晶形B。
【請求項16】
前記結晶形Bは、
図5に示すDSCパターンを有する、請求項15に記載の結晶形B。
【請求項17】
前記結晶形Bの熱重量分析曲線は、200.0℃±3.0℃で0.64%の重量減少を示す、請求項10~14のいずれか1項に記載の結晶形B。
【請求項18】
前記結晶形Bは、
図6に示すTGAパターンを有する、請求項17に記載の結晶形B。
【請求項19】
式(I)の化合物の結晶形Cであって、
前記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、20.56±0.20°、24.55±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、結晶形C。
【化3】
【請求項20】
前記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、11.00±0.20°、11.52±0.20°、15.72±0.20°、20.56±0.20°、21.84±0.20°、24.55±0.20°において特徴的な回折ピークを有する、請求項19に記載の結晶形C。
【請求項21】
前記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、11.00±0.20°、11.52±0.20°、15.72±0.20°、16.69±0.20°、17.16±0.20°、18.62±0.20°、19.76±0.20°、20.56±0.20°、21.84±0.20°、24.55±0.20°において特徴的な回折ピークを有する、請求項20に記載の結晶形C。
【請求項22】
前記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28°、8.58°、11.00°、11.52°、14.08°、15.08°、15.72°、16.69°、17.16°、18.62°、19.76°、20.56°、20.77°、21.84°、23.14°、23.89°、24.55°、25.40°、28.24°、29.21°、31.36°において特徴的な回折ピークを有する、請求項21に記載の結晶形C。
【請求項23】
前記結晶は、
図7に示すX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、請求項22に記載の式(I)の化合物の結晶形C。
【請求項24】
前記結晶形Cの示差走査熱量曲線は、218.8℃±3.0℃で吸熱ピークのオンセット値を有する、請求項19~23のいずれか1項に記載の結晶形C。
【請求項25】
前記結晶形Cは、
図8に示すDSCパターンを有する、請求項24に記載の結晶形C。
【請求項26】
前記結晶形Cの熱重量分析曲線は、200.0℃±3.0℃で1.45%の重量減少を示す、請求項19~23のいずれか1項に記載の結晶形C。
【請求項27】
前記結晶形Cは、
図9に示すTGAパターンを有する、請求項26に記載の結晶形C。
【請求項28】
BTKプロテインキナーゼに関連する疾患を治療するための薬物の調製における、請求項1~9のいずれか1項に記載の結晶形A、または請求項10~18のいずれか1項に記載の結晶形B、または請求項19~27のいずれか1項に記載の結晶形Cの使用。
【請求項29】
前記BTKプロテインキナーゼに関連する疾患は、血液腫瘍である、請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年5月12日に出願されたCN202110518999.9の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、式(I)の化合物の結晶形およびその調製方法、ならびに関連疾病を治療する薬物の調製におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
キナーゼは、リン酸基供与体(例えば、ATP)から特定の基質へのリン酸基の転移を制御するものである。プロテインキナーゼは、キナーゼの大きな部分集合であり、多くの細胞シグナルおよびプロセスの調節において中心的な機能を果たし、BTKはプロテインキナーゼの1つである。
【0004】
BTKは、TEC細胞質チロシンキナーゼファミリー(TEC family kinases,TFKs)のメンバーに属する。このファミリーは、BTKに加えて、ITK、TEC、BMXおよびTXKの5つのメンバーを有する。TFKsの進化の歴史は6億年を超え、主に造血系で機能する非常に古いキナーゼファミリーに属す。
【0005】
BTKは、主にBリンパ球における様々な細胞内および細胞外シグナルの伝達および増幅に関与しており、B細胞の成熟に必須である。XLA患者中のBTK機能の不活性化は、末梢B細胞および免疫グロブリンの欠損をもたらす。BTKの上流のシグナル伝達受容体には、増殖因子およびサイトカイン受容体、ケモカイン受容体などのGタンパク質共役受容体、抗原受容体(特にB細胞受容体[BCR])、およびインテグリンなどが含まれる。BTKは、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)-AKT経路、ホスホリパーゼ-C(PLC)、プロテインキナーゼC、および核内因子κB(NF-κB)などを含む多くの主な下流シグナル伝達経路を活性化する。BTKは、BCRシグナル伝達および細胞遊走における役割は十分に確立されており、これらの機能もBTK阻害剤の主要な標的であると思われる。BTK活性の増加は、B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)などの血液がん細胞において検出される。BTK機能の異常な活性化は、B細胞悪性腫瘍または自己免疫疾病を引き起こすことが多いため、BTKは、人気のある研究開発のターゲットとなっている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、式(I)で示される化合物の結晶形Aであって、上記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:16.16±0.20°、16.60±0.20°、22.02±0.20°、23.08±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする結晶形Aを提供する。
【化1】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物の結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角で表現された、7.51±0.20°、10.63±0.20°、15.06±0.20°、16.16±0.20°、16.60±0.20°、21.28±0.20°、22.02±0.20°、23.08±0.20°からなる群から選ばれる少なくとも5、6、7、または8個の回折ピークを含む。
【0008】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51±0.20°、10.63±0.20°、15.06±0.20°、16.16±0.20°、16.60±0.20°、21.28±0.20°、22.02±0.20°、23.08±0.20°において特徴的な回折ピークを有する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物の結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角で表現された、7.51±0.20°、10.63±0.20°、12.00±0.20°、13.17±0.20°、15.06±0.20°、16.16±0.20°、16.60±0.20°、18.61±0.20°、21.28±0.20°、22.02±0.20°、22.49±0.20°、23.08±0.20°からなる群から選ばれる少なくとも9、10、11、または12個の回折ピークを含む。
【0010】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51±0.20°、10.63±0.20°、12.00±0.20°、13.17±0.20°、15.06±0.20°、16.16±0.20°、16.60±0.20°、18.61±0.20°、21.28±0.20°、22.02±0.20°、22.49±0.20°、23.08±0.20°において特徴的な回折ピークを有する。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物の結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51±0.20°、10.04±0.20°、10.63±0.20°、12.00±0.20°、13.17±0.20°、14.25±0.20°、15.06±0.20°、15.51±0.20°、16.16±0.20°、16.60±0.20°、17.31±0.20°、18.61±0.20°、19.53±0.20°、20.07±0.20°、20.60±0.20°、21.28±0.20°、21.78±0.20°、22.49±0.20°、23.08±0.20°において回折ピークを有する。
【0012】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51°、9.45°、10.04°、10.63°、12.00°、13.17°、14.25°、15.06°、15.51°、16.16°、16.60°、17.31°、17.58°、18.61°、18.95°、19.53°、20.07°、20.60°、21.28°、21.78°、22.02°、22.49°、23.08°において特徴的な回折ピークを有する。
【0013】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Aは、
図1に示すXRPDパターンを有する。
【0014】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形AのXRPDパターンの解析データを表1に示す。
【0015】
【0016】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Aの示差走査熱量曲線はそれぞれ145.7℃±3.0℃、208.9℃±3.0℃、および218.7℃±3.0℃で吸熱ピークのオンセット値を有する。
【0017】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Aは、
図2に示すDSCパターンを有する。
【0018】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Aの熱重量分析曲線は、200.0℃±3.0℃で7.66%の重量減少を示す。
【0019】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Aは、
図3に示すTGAパターンを有する。
【0020】
本発明は、さらに式(I)の化合物の結晶形Bであって、上記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47±0.20°、10.41±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする結晶形Bを提供する。
【化2】
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物の結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角で表現された、7.47±0.20°、10.41±0.20°、15.23±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°、20.87±0.20°、21.46±0.20°、21.91±0.20°からなる群から選ばれる少なくとも5、6、7、または8個の回折ピークを含む。
【0022】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47±0.20°、10.41±0.20°、15.23±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°、20.87±0.20°、21.46±0.20°、21.91±0.20°において特徴的な回折ピークを有する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物の結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角で表現された、7.47±0.20°、9.53±0.20°、10.41±0.20°、11.91±0.20°、13.91±0.20°、15.23±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°、18.82±0.20°、20.87±0.20°、21.46±0.20°、21.91±0.20°からなる群から選ばれる少なくとも9、10、11、または12個の回折ピークを含む。
【0024】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47±0.20°、9.53±0.20°、10.41±0.20°、11.91±0.20°、13.91±0.20°、15.23±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°、18.82±0.20°、20.87±0.20°、21.46±0.20°、21.91±0.20°において特徴的な回折ピークを有する。
【0025】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47°、9.53°、9.78°、10.41°、11.45°、11.91°、12.40°、13.22°、13.91°、14.87°、15.23°、15.44°、16.04°、16.73°、17.33°、17.88°、18.82°、19.61°、19.88°、20.25°、20.87°、21.46°、21.91°において特徴的な回折ピークを有する。
【0026】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Bは、
図4に示すXRPDパターンを有する。
【0027】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形BのXRPDパターンの解析データを表2に示す。
【0028】
【0029】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Bの示差走査熱量曲線は214.3℃±3.0℃で吸熱ピークのオンセット値を有する。
【0030】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Bは、
図5に示すDSCパターンを有する。
【0031】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Bの熱重量分析曲線は、200.0℃±3.0℃で0.64%の重量減少を示す。
【0032】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Bは、
図6に示すTGAパターンを有する。
【0033】
本発明は、さらに式(I)の化合物の結晶形Cであって、上記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、20.56±0.20°、24.55±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする結晶形Cを提供する。
【化3】
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物の結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ角で表現された、5.28±0.20°、8.58±0.20°、11.00±0.20°、11.52±0.20°、15.72±0.20°、20.56±0.20°、21.84±0.20°、24.55±0.20°からなる群から選ばれる少なくとも5、6、7、または8個の回折ピークを含む。
【0035】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、11.00±0.20°、11.52±0.20°、15.72±0.20°、20.56±0.20°、21.84±0.20°、24.55±0.20°において特徴的な回折ピークを有する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物の結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ角で表現された、5.28±0.20°、8.58±0.20°、11.00±0.20°、11.52±0.20°、15.72±020°、16.69±020°、17.16±020°、18.62±020°、19.76±020°、20.56±020°、21.84±020°、24.55±020°からなる群から選ばれる少なくとも9、10、11、または12個の回折ピークを含む。
【0037】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、11.00±0.20°、11.52±0.20°、15.72±0.20°、16.69±0.20°、17.16±0.20°、18.62±0.20°、19.76±0.20°、20.56±0.20°、21.84±0.20°、24.55±0.20°において特徴的な回折ピークを有する。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物の結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、11.00±0.20°、11.52±0.20°、14.08±0.20°、15.08±0.20°、15.72±0.20°、16.69±0.20°、17.16±0.20°、18.62±0.20°、19.76±0.20°、20.56±0.20°、21.84±0.20°、23.14±0.20°、23.89±0.20°、24.55±0.20°、25.40±0.20°、29.21±0.20°において回折ピークを有する。
【0039】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28°、8.58°、11.00°、11.52°、14.08°、15.08°、15.72°、16.69°、17.16°、18.62°、19.76°、20.56°、20.77°、21.84°、23.14°、23.89°、24.55°、25.40°、28.24°、29.21°、31.36°において特徴的な回折ピークを有する。
【0040】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Cは、
図7に示すXRPDパターンを有する。
【0041】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形CのXRPDパターンの解析データを表3に示す。
【0042】
【0043】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Cの示差走査熱量曲線は、218.8℃±3.0℃で吸熱ピークのオンセット値を有する。
【0044】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Cは、
図8に示すDSCパターンを有する。
【0045】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Cの熱重量分析曲線は、200.0℃±3.0℃で1.45%の重量減少を示す。
【0046】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形Cは、
図9に示すTGAパターンを有する。
【0047】
本発明はさらにBTKプロテインキナーゼに関連する疾患を治療するための薬物の調製における、上記結晶形A、または結晶形B、または結晶形Cの使用を提供する。
【0048】
本発明のいくつかの形態において、上記BTKプロテインキナーゼに関連する疾患は、血液腫瘍である。
【0049】
発明の効果
本発明の化合物の結晶形は、安定性がよく、薬になりやすく、顕著な腫瘍増殖抑制効果を有する。
【0050】
定義および説明
本明細書で使用される以下の用語及び語句は、特に明記しない限り、以下の意味を含むことを意図する。特定の語句または用語は、特に定義されていない場合、不確定または不明確であると見なされるべきではなく、一般的な意味に従って理解すべきである。商品名が本明細書に現れる場合、それは、その対応する商品またはその活性成分を指すことが意図される。
【0051】
本明細書全体を通して言及される「一実施形態」または「実施形態」または「別の実施形態では」または「ある実施形態では」は、少なくとも一つの実施形態において該実施形態に記載された関連の具体的な参照要素、構造又は特徴を含むことを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所に現れる「一実施形態では」または「実施形態では」または「別の実施形態では」または「ある実施形態では」という語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の要素、構造、または特徴は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0052】
明細書及び添付された特許請求の範囲で使用される冠詞「一」(英語「a」、「an」および「the」に対応する)は、文脈上明確に規定されない限り、複数の対象を含むことが理解されるべきである。したがって、例えば、「触媒」を含む反応への言及は、1種の触媒または2種以上の触媒を含む。「または」という用語は、一般に、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、「および/または」を含む意味で使用されることも理解されるべきである。
【0053】
本発明の中間体化合物は、以下に列挙される特定の実施形態、他の化学合成方法と組み合わせた実施形態、および当業者に周知の同等の等価方式を含む、当業者に公知の種々の合成方法によって調製され得、好ましい実施形態は、本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0054】
本発明の発明を実施するための形態に記載の化学反応は、本発明の化学変化ならびにそれに必要とされる試薬および材料に適した適切な溶媒中で行われる。本発明の化合物を得るために、当業者は、既存の実施形態に基づいて合成ステップまたは反応スキームを修正または選択する必要がある場合がある。
【0055】
本発明の化合物は、当業者に周知の従来の方法によって構造を確認することができ、本発明が化合物の絶対配置に関する場合、絶対配置は、当技術分野における従来の技術によって確認することができる。例えば、単結晶X線回折法(SXRD)は、培養された単結晶をBruker D8 venture回折計で回折強度データを収集し、光源はCuKα線であり、走査方式はφ/ω走査であり、関連データを収集した後、さらに直接法(Shelxs97)を用いて結晶構造を解析し、絶対配置を確認することができる。
【0056】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
本発明で使用した全ての溶媒は市販されており、さらに精製することなく使用する。
【0058】
化合物は手動またはChemDraw(登録商標)ソフトウェアで命名し、市販の化合物は供給業者のカタログ名を使用する。
【0059】
本発明の粉末X-線回折(X-ray powder diffractometer,XRPD)方法
機器の型番:PANalytical(パナリティカル)社X’pert3型X線回折計
測定方法:約10~20mgの試料をXRPD測定に用いる。
【0060】
詳細なXRPDパラメーターは以下の通りである。
管球:Cu,kα1,λ=1.54060Å,kα2,λ=1.54443Å
管電圧:45kV,管電流:40mA
発散スリット:0.60mm
検出器スリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
走査範囲:3-40deg
ステップサイズ:0.0263deg
走査時間(Scan Step Time):46.665s
試料パン回転速度:15rpm
【0061】
本発明の示差熱分析(Differential Scanning Calorimeter,DSC)方法
機器の型番:TA 2500示差走査熱量計
測定方法:試料(約1mg)をDSCアルミニウムパンに入れて蓋を閉めて測定し、N2条件下で、10℃/minの昇温速度で、試料を25℃から350℃まで加熱する。
【0062】
本発明の熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer,TGA)方法
機器の型番:TA 5500熱重量分析装置
測定方法:試料(2~5mg)をTGAアルミニウムパンに置いて蓋を開けて測定を行い、N2条件下で、10℃/minの昇温速度で、試料を室温から350℃まで加熱する。
【0063】
本発明の動的蒸気吸着分析(Dynamic Vapor Sorption,DVS)方法
機器の型番:SMS DVS Advantage動的蒸気吸着装置
測定条件:試料(10~15mg)をDVS試料パンに入れて測定する。
【0064】
詳細なDVSパラメーターは以下の通りである。
温度:25℃
平衡:dm/dt=0.01%/min(最短:10min,最長:180min)
乾燥:0%RHで120min乾燥
RH(%)の測定段階:10%
RH(%)の測定段階の範囲:0%~90%~0%
【0065】
吸湿性の評価分類は表4に示すとおりである。
【0066】
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】
図1は、式(I)の化合物の結晶形AのCu-Kα線のXRPDパターンである。
【
図2】
図2は、式(I)の化合物の結晶形AのDSCパターンである。
【
図3】
図3は、式(I)の化合物の結晶形AのTGAパターンである。
【
図4】
図4は、式(I)の化合物の結晶形BのCu-Kα線XRPDパターンである。
【
図5】
図5は、式(I)の化合物の結晶形BのDSCパターンである。
【
図6】
図6は、式(I)の化合物の結晶形BのTGAパターンである。
【
図7】
図7は、式(I)の化合物の結晶形CのCu-Kα線XRPDパターンである。
【
図8】
図8は、式(I)の化合物の結晶形CのDSCパターンである。
【
図9】
図9は、式(I)の化合物の結晶形CのTGAパターンである。
【
図10】
図10は、式(I)の化合物の結晶形CのDVSパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の内容をよりよく理解するために、以下では具体的な実施例を参照してさらに説明するが、具体的な実施形態は本発明の内容を限定するものではない。
【0069】
【0070】
参考例は、特許WO2017111787 Compound(I)に記載の方法に従って調製した。
【0071】
【0072】
【0073】
ステップ1:化合物A2の合成
フェノール(7.49g、79.54mmol、7.00mL、1.5eq)、化合物A1(10g、53.03mmol、1eq)、炭酸セシウム(25.92g、79.54mmol、1.5eq)をN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解し、80℃で3時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過し、水を加え、酢酸エチルで抽出し(100mL×3)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を回転蒸発により除去し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物A2を得た。LCMS:(ESI)m/z:263.1[M+1]+。
【0074】
ステップ2:化合物Aの合成
化合物B(6g、25.81mmol、1eq)をテトラヒドロフラン(180mL)に加え、-78℃まで降温し(懸濁液、一部溶解)、そしてn-ブチルリチウム(2.5M、21.68mL、2.1eq)を滴下し、滴下が完了した後、-78℃で1時間撹拌して反応させ、さらにその中に化合物A2(7.12g、27.10mmol、1.05eq)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を滴下し、1時間撹拌し続けて反応させた。反応が終了した後に飽和塩化アンモニウムで反応をクエンチし且つ5分間撹拌し、有機相を分離し、水相を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、濃縮して、粗中間体Aを得た。LCMS:(ESI)m/z:384.2[M+1]+。
【0075】
ステップ3:化合物1-2の合成
化合物1-1(10g、29.11mmol、1eq)をジクロロメタン(100mL)に溶解し、0℃でm-クロロ過安息香酸(7.53g、43.66mmol、1.5eq)を加え、そして20℃で15時間反応させた。反応液に飽和亜硫酸ナトリウム溶液を加えて反応をクエンチし、次に酢酸エチルで抽出し(50mL×3)、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物1-2を得た。LCMS:(ESI)m/z:304.2[M-tBu+1]。
【0076】
ステップ4:化合物1-3の合成
化合物1-2(5g、13.91mmol、1eq)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、-20℃で水素化アルミニウムリチウム(2.5M、8.34mL、1.5eq)を加え、添加が完了した後に20℃で3時間反応させた。反応終了後に反応液に水酸化ナトリウム溶液を加えて反応をクエンチし、濾過し、濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄し、濾液を合わせ、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1)で精製し、化合物1-3を得た。LCMS:(ESI)m/z:306.1[M-tBu+1]。
【0077】
ステップ5:化合物1-4の合成
化合物1-3(0.117g、323.61μmol、1eq)をアセトニトリル(2mL)に溶解した。窒素ガス雰囲気下で、20℃で酸化銀(224.97mg、970.83μmol、3eq)とヨードメタン(459.33mg、3.24mmol、201.46μL、10eq)を順に添加した。その後80℃まで加熱して12時間反応させた。冷却後、反応液を濾過し、濾液を回転蒸発により除去し、化合物1-4を得た。化合物1-4を精製せずに次のステップに直接投入した。LCMS:(ESI)m/z:319.85[M-tBu+H]。
【0078】
ステップ6:化合物1-5の合成
化合物1-4(121.54mg、323.61μmol、1eq)をジクロロメタン(2mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(30.80mg、270.12μmol、0.02mL、0.84eq)を添加し、添加した後に20℃で1時間反応させた。反応液を直接的に回転蒸発させて化合物1-5を得た。化合物1-5を精製せず、次の反応に直接使用した。LCMS:(ESI)m/z:276.20[M+H]+。
【0079】
ステップ7:式(I)の化合物の合成
化合物A(99.47mg、258.89μmol、0.8eq)および化合物1-5(89.14mg、323.61μmol、1eq)をイソプロパノール(2mL)に溶解し、さらにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(104.56mg、809.03μmol、140.91μL、2.5eq)を添加した。次いで、130℃で1時間マイクロ波反応した。反応液を回転蒸発により除去して粗生成物を得た。粗生成物を分取クロマトグラフィー(カラム:Phenomenex Gemini-NX 80mm*40mm*3μm;移動相:[水(0.05%NH3H2O+10mM NH4HCO3)-アセトニトリル];B(アセトニトリル)%:37%~57%,8min)により精製して、式(I)の化合物を得た。LCMS:(ESI)m/z:508.9[M]。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ9.25(d,J=8.3Hz,1H),8.35(s,1H),7.50-7.39(m,3H),7.39-7.32(m,1H),7.28-7.22(m,1H),7.14-7.08(m,3H),6.98(dd,J=2.3,8.3Hz,1H),4.57(br d,J=5.5Hz,1H),4.08(dd,J=5.4,10.2Hz,1H),3.93-3.82(m,2H),3.81-3.69(m,2H),3.64-3.53(m,4H),2.03(br d,J=13.1Hz,1H),1.70(br s,1H)。
【0080】
実施例2:式(I)の化合物の結晶形Aの調製
化合物A(3.01g、7.81mmol、1.0eq)および化合物1-5(1.62g、8.20mmol、1.05eq)をイソプロパノール(15mL)に溶解し、さらにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.03g、23.4mmol、3.0eq)を加え、90℃で20時間反応させ、LCMSで反応が完了したことを検出し、水50mLを加え、酢酸エチル100mLで抽出し、有機相を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、有機溶媒を減圧留去し、酢酸エチルで室温でスラリー化して固体生成物、即ち式(I)の化合物の結晶形Aを得た。
【0081】
実施例3:式(I)の化合物の結晶形Bの調製
約100mgの結晶形Aの化合物をそれぞれ異なる2.0mLのガラスバイアルに入れ、それぞれ1mLの溶媒または溶媒混合物を加え、懸濁液を得て、懸濁液試料をホットマグネットスターラーに入れ、25℃で16時間撹拌し、懸濁液を遠心分離し、40℃で重量が変わらなくなるまで60時間真空乾燥して式(I)の化合物の結晶形B(表5に示す)を得た。
【0082】
【0083】
実施例4:式(I)の化合物の結晶形Cの調製
結晶形Aの化合物1.2gをメチルtert-ブチルエーテル12mLに分散させて懸濁液を形成し、系を25℃、40℃、または60℃で16時間撹拌し、濾過し、濾過ケーキを40℃で重量が変わらなくなるまで60時間真空乾燥させて式(I)の化合物の結晶形Cを得た。
【0084】
【0085】
実施例5:結晶形Bおよび結晶形Cの競合実験
30mgの結晶形Bおよび30mgの結晶形Cの化合物をそれぞれ3つのグループに取り、それぞれ異なる2.0mLのガラスバイアルに加え、それぞれメチルtert-ブチルエーテル0.6mLを加え、懸濁液を得た。懸濁液試料をホットマグネットスターラーに入れ、20℃、40℃、および60℃で16時間撹拌し、懸濁液を遠心分離し、白色固体を得て、重量が変わらなくなるまで真空乾燥して式(I)の化合物の結晶形Cを得た。
【0086】
【0087】
結論:結晶形Cは結晶形Bより安定であった。
【0088】
実施例6 式(I)の化合物の結晶形Cの吸湿性の研究
実験材料:
SMS DVS Advantage動的蒸気吸着装置
実験方法:
式(I)の化合物の結晶形C10~15mgをDVS試料パンに入れて測定した。
【0089】
実験結果:
式(I)の化合物の結晶形CのDVSパターンは
図10に示し、ΔW=0.262%であった。
【0090】
実験結論:
25℃および80%RHでの式(I)の化合物の結晶形Cの吸湿重量増加は0.262%であり、わずかに吸湿性であった。
【0091】
実施例7:式(I)の化合物の結晶形Cの固体安定性試験
「原薬及び製剤安定性試験ガイドライン」(中国薬局方2015版四部通則9001)に従って、式(I)の化合物の結晶形Cが、高温(60℃、開放)、高湿(a.室温/相対湿度92.5%、開放;b.40℃/相対湿度75%、開放;c.60℃/相対湿度75%、開放)及び強光照射(50001x,密閉)条件下での安定性を考察した。
【0092】
式(I)の化合物の結晶形C(15mg)を秤量し、ガラス試料瓶の底部に置き、薄い層に広げた。高温および高湿の条件で放置された試料は、アルミ箔紙で瓶口を封止し、且つ試料が周囲の空気と十分に接触できるようにアルミ箔紙に複数の小さな穴を開けた。強光条件下で放置された試料はスクリューキャップで密閉された。異なる条件下で放置された試料を5日目、10日目、1ヶ月後にサンプリングして検出し(XRPD)、検出結果を0日目の最初の検出結果と比較し、試験結果は以下の表8に示すとおりであった。
【0093】
【0094】
結論:式(I)の化合物の結晶形Cは、高温、高湿、強光の条件下で良好な安定性を有した。
【0095】
生物学的測定データ:
実験例1:BTK酵素活性測定
BTK酵素活性測定の具体的な実験過程は以下のとおりであった。
【0096】
緩衝液:20mMのヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(Hepes)(pH7.5)、10mMの塩化マグネシウム、1mMのエチレングリコールビスアミノエチルエーテル四酢酸(EGTA)、0.02%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(Brij35)、0.02mg/mLのBSA、0.1mMのバナジン酸ナトリウム(Na3VO4)、2mMのジチオトレイトール(DTT)、1%DMSO、200μMのアデノシン三リン酸(ATP)。
【0097】
1.新たに調製した反応緩衝液中に基質を配置した。
2.必要な補因子を上記の基質溶液に添加した。
3.キナーゼBTKC481Sを上記基質溶液に加えて均一に混合した。
4.DMSOに溶解した化合物を、Echo550(Acoustic technology;nanoliter range)を介してキナーゼ反応混合物に添加し、室温で20分間インキュベートした。
5.33P-ATP(比放射能10μCi/μL)を反応混合物に添加して反応を開始させた。
6.室温で2時間インキュベートした。
7.濾過-結合法で放射性を検出した。
8.キナーゼ活性データは、溶媒(ジメチルスルホキシド)反応と比較した測定試料中の残存キナーゼ活性のパーセンテージを表した。IC50値およびフィッティング曲線は、Prism(GraphPadソフトウェア)を用いて得られ、結果を表9に示した。
【0098】
【0099】
結論:式(I)の化合物は、BTKC481S変異に対して強い阻害効果を有した。
【0100】
実験例2:マウスにおける式(I)の化合物の薬物動態学的評価
2.1実験目的:CD-1マウスにおける化合物のインビボ薬物動態(静脈内)を測定した。
【0101】
式(I)の化合物および参考例と、溶媒とを0.10mg/mL in 10%NMP/60%PEG400/30%H2Oで混合し、ボルテックスして超音波処理し、0.1mg/mLの透明な溶液を調製した。7~10週齢のCD-1雄マウスを選択し、候補化合物の溶液を0.21mg/kgの用量で静脈内投与した。
【0102】
一定時間の全血を収集し、血漿を調製し、LC-MS/MS方法で薬物の濃度を分析し、Phoenix WinNonlinソフトウェア(米国Pharsight社)で薬物パラメーターを計算し、結果は表10に示すとおりであった。
【0103】
【0104】
結論:式(I)の化合物は、マウス血漿中の遊離型薬物濃度が参考例よりも高い。
【0105】
2.2実験目的:CD-1マウスにおける化合物のインビボ薬物動態(経口)を測定した。
【0106】
式(I)の化合物および参考例を、溶媒である10%NMP/60%PEG400/30%H2Oと混合し、ボルテックスして超音波処理し、0.6mg/mLの透明な溶液を調製した。7~10週齢のCD-1雄マウスを選択し、候補化合物の溶液を3.1mg/kgの用量で強制経口投与した。一定時間の全血を収集し、血漿を調製し、LC-MS/MS方法で薬物濃度を分析し、Phoenix WinNonlinソフトウェア(米国Pharsight社)で薬物パラメーターを計算し、結果は表11に示すとおりであった。
【0107】
【0108】
結論:式(I)の化合物は、マウス血漿中の遊離型薬物濃度が参考例よりも高い。
【0109】
実験例3:ラットにおける化合物の薬物動態学的評価
3.1実験目的:SDラットにおける化合物のインビボ薬物動態(静脈内)を測定した。
【0110】
式(I)の化合物および参考例と、溶媒とを0.10mg/mL in 10%NMP/60%PEG400/30%H2Oで混合し、ボルテックスして超音波処理し、0.5mg/mLの透明な溶液を調製した。7~10週齢のSDラットを選択し、候補化合物の溶液を静脈内注射した。一定時間の全血を収集し、血漿を調製し、LC-MS/MS方法で薬物濃度を分析し、Phoenix WinNonlinソフトウェア(米国Pharsight社)で薬物パラメーターを計算し、結果は表12に示すとおりであった。
【0111】
【0112】
結論:式(I)の化合物は、ラット血漿中の遊離型薬物濃度が参考例よりも高い。
【0113】
3.2実験目的:SDラットにおける化合物のインビボ薬物動態(経口)を測定した。
【0114】
式(I)の化合物および参考例を、溶媒である10%NMP/60%PEG400/30%H2Oと混合し、ボルテックスして超音波処理し、2mg/mLの透明な溶液を調製した。7~10週齢のSDラットを選択し、候補化合物溶液を強制経口投与した。
【0115】
一定時間の全血を収集し、血漿を調製し、LC-MS/MS方法で薬物濃度を分析し、Phoenix WinNonlinソフトウェア(米国Pharsight社)で薬物パラメーターを計算し、結果は表13に示すとおりであった。
【0116】
【0117】
結論:式(I)の化合物は、ラット血漿中の遊離型薬物濃度が参考例よりも高い。
【0118】
実験例4:インビボ研究
OCI-LY10 SCIDマウス異種移植腫瘍モデル
実験方法:ヒトB細胞リンパ腫マウス皮下移植腫瘍モデルを作製し、対数増殖期の腫瘍細胞を収集し、IMDM基礎培地に再懸濁し、1:1でMatrigelを加え、細胞濃度を4×107/mLに調整した。無菌条件下で、0.1mLの細胞懸濁液を、4×106/0.1mL/マウスの濃度で、SCIDマウスの右側背部の皮下に接種した。動物の腫瘍が131.55~227.87mm3程度に達した時に、腫瘍体積の大きさに応じて担癌マウスをランダムに5群に分け、各群8匹であった。実験当日に動物に群別に対応する薬物を投与した。
【0119】
【0120】
実験期間中、動物の体重および腫瘍サイズを週に3回測定し、同時に動物の臨床症状を毎日観察および記録した。各投与については、最後に秤量した動物の体重を参照した。
【0121】
腫瘍の測定はデジタルノギスで長さ(a)及び幅(b)を測定し、腫瘤体積(Tumor volume,TV)の計算式はTV=a×b2/2であった。
【0122】
実験結果:
ヒトB細胞リンパ腫OCI-LY10細胞皮下異種移植腫瘍モデルにおける被験物の抗腫瘍効果評価は表15に示すとおりであった。
【0123】
薬物作用下での腫瘍体積増殖曲線は
図11に示すとおりであった。
【0124】
【0125】
平均腫瘍体積は、各測定時の動物の腫瘍体積に基づいて計算された。データ点は群内の平均腫瘍体積変化を意味し、エラーバーは標準誤差(SEM)を意味した。
【0126】
結論:ヒトB細胞リンパ腫OCI-LY10細胞皮下異種移植腫瘍モデルのインビボ効果に関し、結晶形Cは腫瘍増殖を顕著に抑制することができ、且つ腫瘍阻害効果は用量と正の相関を示した。同じ用量で、結晶形Cの腫瘍に対する阻害効果は参考例より著しく優れた。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物の結晶形Aであって、
前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:16.16±0.20°、16.60±0.20°、22.02±0.20°、23.08±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、結晶形A。
【化1】
【請求項2】
前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51±0.20°、10.63±0.20°、15.06±0.20°、16.16±0.20°、16.60±0.20°、21.28±0.20°、22.02±0.20°、23.08±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項3】
前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51±0.20°、10.63±0.20°、12.00±0.20°、13.17±0.20°、15.06±0.20°、16.16±0.20°、16.60±0.20°、18.61±0.20°、21.28±0.20°、22.02±0.20°、22.49±0.20°、23.08±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、請求項2に記載の結晶形A。
【請求項4】
前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.51°、9.45°、10.04°、10.63°、12.00°、13.17°、14.25°、15.06°、15.51°、16.16°、16.60°、17.31°、17.58°、18.61°、18.95°、19.53°、20.07°、20.60°、21.28°、21.78°、22.02°、22.49°、23.08°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、請求項3に記載の結晶形A。
【請求項5】
前記
結晶形Aは、
図1に示すX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、請求項4に記載
の結晶形A。
【請求項6】
前記結晶形Aの示差走査熱量曲線は、それぞれ、145.7℃±3.0℃、208.9℃±3.0℃、および218.7℃±3.0℃で吸熱ピークのオンセット値を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶形A。
【請求項7】
前記結晶形Aは、
図2に示すDSCパターンを有する、請求項6に記載の結晶形A。
【請求項8】
前記結晶形Aの熱重量分析曲線は、200.0℃±3.0℃で7.66%の重量減少を示す、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶形A。
【請求項9】
前記結晶形Aは、
図3に示すTGAパターンを有する、請求項8に記載の結晶形A。
【請求項10】
式(I)の化合物の結晶形Bであって、
前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47±0.20°、10.41±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°の2θ角において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、結晶形B。
【化2】
【請求項11】
前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47±0.20°、10.41±0.20°、15.23±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°、20.87±0.20°、21.46±0.20°、21.91±0.20°において特徴的な回折ピークを有する、請求項10に記載の結晶形B。
【請求項12】
前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47±0.20°、9.53±0.20°、10.41±0.20°、11.91±0.20°、13.91±0.20°、15.23±0.20°、16.04±0.20°、16.73±0.20°、18.82±0.20°、20.87±0.20°、21.46±0.20°、21.91±0.20°において特徴的な回折ピークを有する、請求項11に記載の結晶形B。
【請求項13】
前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:7.47°、9.53°、9.78°、10.41°、11.45°、11.91°、12.40°、13.22°、13.91°、14.87°、15.23°、15.44°、16.04°、16.73°、17.33°、17.88°、18.82°、19.61°、19.88°、20.25°、20.87°、21.46°、21.91°において特徴的な回折ピークを有する、請求項12に記載の結晶形B。
【請求項14】
前記
結晶形Bは、
図4に示すX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、請求項13に記載
の結晶形B。
【請求項15】
前記結晶形Bの示差走査熱量曲線は、214.3℃±3.0℃で吸熱ピークのオンセット値を有する、請求項10~14のいずれか1項に記載の結晶形B。
【請求項16】
前記結晶形Bは、
図5に示すDSCパターンを有する、請求項15に記載の結晶形B。
【請求項17】
前記結晶形Bの熱重量分析曲線は、200.0℃±3.0℃で0.64%の重量減少を示す、請求項10~14のいずれか1項に記載の結晶形B。
【請求項18】
前記結晶形Bは、
図6に示すTGAパターンを有する、請求項17に記載の結晶形B。
【請求項19】
式(I)の化合物の結晶形Cであって、
前記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、20.56±0.20°、24.55±0.20°において特徴的な回折ピークを有することを特徴とする、結晶形C。
【化3】
【請求項20】
前記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、11.00±0.20°、11.52±0.20°、15.72±0.20°、20.56±0.20°、21.84±0.20°、24.55±0.20°において特徴的な回折ピークを有する、請求項19に記載の結晶形C。
【請求項21】
前記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28±0.20°、8.58±0.20°、11.00±0.20°、11.52±0.20°、15.72±0.20°、16.69±0.20°、17.16±0.20°、18.62±0.20°、19.76±0.20°、20.56±0.20°、21.84±0.20°、24.55±0.20°において特徴的な回折ピークを有する、請求項20に記載の結晶形C。
【請求項22】
前記結晶形CのX線粉末回折パターンは、以下の2θ角:5.28°、8.58°、11.00°、11.52°、14.08°、15.08°、15.72°、16.69°、17.16°、18.62°、19.76°、20.56°、20.77°、21.84°、23.14°、23.89°、24.55°、25.40°、28.24°、29.21°、31.36°において特徴的な回折ピークを有する、請求項21に記載の結晶形C。
【請求項23】
前記
結晶形Cは、
図7に示すX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、請求項22に記載
の結晶形C。
【請求項24】
前記結晶形Cの示差走査熱量曲線は、218.8℃±3.0℃で吸熱ピークのオンセット値を有する、請求項19~23のいずれか1項に記載の結晶形C。
【請求項25】
前記結晶形Cは、
図8に示すDSCパターンを有する、請求項24に記載の結晶形C。
【請求項26】
前記結晶形Cの熱重量分析曲線は、200.0℃±3.0℃で1.45%の重量減少を示す、請求項19~23のいずれか1項に記載の結晶形C。
【請求項27】
前記結晶形Cは、
図9に示すTGAパターンを有する、請求項26に記載の結晶形C。
【請求項28】
BTKプロテインキナーゼに関連する疾患を治療するための薬物の調製における、請求項1~
5のいずれか1項に記載の結晶形A、または請求項10~
14のいずれか1項に記載の結晶形B、または請求項19~
23のいずれか1項に記載の結晶形Cの使用。
【請求項29】
前記BTKプロテインキナーゼに関連する疾患は、血液腫瘍である、請求項28に記載の使用。
【国際調査報告】