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特表2024-518801食感が改善され、後酸性化が低減された発酵乳製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】食感が改善され、後酸性化が低減された発酵乳製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/127 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
A23C9/127
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571717
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022062137
(87)【国際公開番号】W WO2022243052
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21174345.5
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ビクトーリア プレーブナ
(72)【発明者】
【氏名】ボジスラウ ボジノビク
(72)【発明者】
【氏名】マリーア エリーナ ソンベア
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC06
4B001AC25
4B001AC31
4B001BC03
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC13
4B001BC14
4B001BC99
4B001EC04
(57)【要約】
本発明は乳製品技術の分野に属する。それは、下記工程を含む発酵乳製品の製造方法に関し:a)DSM22935、DSM22585、DSM22586、DSM28910およびDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含むスターター培養物を提供する工程;b)スターター培養物を乳ベースに添加して、目標pHに達するまで前記乳ベースを発酵させる工程;及びc) 前記乳ベースにラクターゼを添加する工程;ここで発酵乳製品は、工程c)のラクターゼ又は工程a)のスターター培養物を添加せずに製造された発酵乳製品と比較して、食感が改善され、そして/又は後酸性化が低められる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵乳製品の製造方法であって、下記工程を含み:
a)DSM22935、DSM22585、DSM22586、DSM28910およびDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含むスターター培養物を提供する工程;
b)スターター培養物を乳ベースに添加して、目標pHに達するまで前記乳ベースを発酵させる工程;及び
c) 前記乳ベースにラクターゼを添加する工程;
ここで発酵乳製品は、工程c)のラクターゼ又は工程a)のスターター培養物を添加せずに製造された発酵乳製品と比較して、食感が改善され、そして/又は後酸性化が低められる、方法。
【請求項2】
前記スターター培養物が、DSM22935と、DSM 22585、DSM 22586、DSM28910、及びDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スターター培養物が、DSM22935+DSM22586;DSM22935+DSM33677; DSM22935+DSM28910;DSM22935 +DSM22585; DSM22586+DSM33677;DSM22586+ DSM28910;DSM22586+DSM22585;DSM33677+DSM28910;DSM33677+DSM22585;又はDSM28910+DSM22585を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スターター培養物が、DSM22935+DSM22586+DSM33677;DSM22935+DSM22586+DSM28910;DSM22935+ DSM22586+DSM22585;DSM22935+DSM33677+DSM28910; DSM22935+DSM33677+DSM22585; 又はDSM22935+DSM28910+DSM22585を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記乳ベースのタンパク質レベルが、1-10重量%; 2-8重量%; 2-6重量%; 3-5重量%; 好ましくは 3.5重量%; 4.0重量%; 又は4.5重量%の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
目標pH が、3.0-6.0;3.5-5.5;4.0-5.0;の範囲であり、例えば3.0、3.5、4.0、4.5、5.5又は6.0である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ラクターゼが、工程b) の発酵の開始時、発酵中、又は発酵終了時に添加される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ラクターゼが、中性ラクターゼ;酸性ラクターゼ; 低 pH 安定性ラクターゼからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
13℃で測定した食感(Pa単位の複素弾性率によるゲルの硬さ)が、発酵終了後、6℃で7日間又は28日間保存した場合、5-10%;10-15%;15-20%; 20-25%;25-30%;30-35%;35-40%;40-45%;45-50%;又は少なくとも 5%;10%;15%;20%;25%;30%;35%; 40%;45%;又は少なくとも 50%高められる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
発酵乳製品のpHが、発酵終了後、6℃又は25℃で7日間又は28日間保存した場合、0.30;0.25;0.20;0.15;0.10; 又は0.05pH単位の範囲内に維持される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法により得られる発酵乳製品。
【請求項12】
クターゼと、DSM 22935、DSM 22585、DSM 22586、DSM28910及びDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含むスターター培養物とを含む、食感が改善され、及び/又は後酸性化が低減された発酵乳製品。
【請求項13】
発酵乳製品の食感を改善し、及び/又は後酸性化を軽減するためへのラクターゼ(中性ラクターゼ;酸性ラクターゼ; 低 pH 安定性ラクターゼからなる群から選択される)及びスターター培養物の使用。
【請求項14】
前記スターター培養物が、DSM22935、DSM22585、DSM22586、DSM28910及びDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
ラクターゼと、DSM22935+DSM22586;DSM22935+DSM33677; DSM22935+DSM28910;DSM22935+DSM22585;DSM22586+DSM33677;DSM22586+DSM28910;DSM22586+DSM22585;DSM33677+DSM28910; DSM33677+DSM22585;又はDSM28910 DSM22585からなる群から選択される2つの乳酸菌株とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、発酵乳製品の製造方法に関する。 具体的には、本発明は、食感が改善された、及び/又は後酸性化が低減された発酵乳製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵乳製品は当技術分野で知られている。 食感は発酵乳製品の重要な品質パラメータである。 良好な口当たりとゲルの硬さを備えた滑らかな粘稠度は、多くの消費者によって望まれている。
【0003】
発酵用の質感付与乳酸菌株の使用、及び乳ベースへのタンパク質、通常は脱脂粉乳又はホエイベースのタンパク質の添加が、発酵乳製品の質感を改善するために記載されている。 増粘剤や加工デンプン、コーンスターチ、ペクチン、ゼラチン、寒天などのその他の質感付与剤も使用される。
【0004】
製造後の発酵乳製品は、エンドユーザーが消費するまで一定期間保管される。 保管中に酸性化プロセスが継続し、pH の低下が製品の品質に影響を与える可能性がある。 従って、そのような後酸性化は望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発酵乳製品の製造方法を提供する。 本発明者らは、驚くべきことには、発酵乳製品の製造方法において選択された乳酸菌株をラクターゼと組み合わせて使用することにより、食感の改善及び/又は後酸性化の軽減が可能であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の側面によれば、本発明は、発酵乳製品の製造方法に関し、ここで前記方法は、下記工程を含み:
a)DSM22935、DSM22585、DSM22586、DSM28910およびDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含むスターター培養物を提供する工程;
b)スターター培養物を乳ベースに添加して、目標pHに達するまで前記乳ベースを発酵させる工程;及び
c) 前記乳ベースにラクターゼを添加する工程;
ここで発酵乳製品は、工程c)のラクターゼ又は工程a)のスターター培養物を添加せずに製造された発酵乳製品と比較して、食感が改善され、そして/又は後酸性化が低められる。
【0007】
第2の側面によれば、本発明は、この方法によって得られる発酵乳製品に関する。
【0008】
第3の側面によれば、本発明は、発酵乳製品の食感を改善し、及び/又は発酵後の酸性化を軽減する方法に関し、に関し、ここで前記方法は、下記工程を含む:
a)DSM22935、DSM22585、DSM22586、DSM28910およびDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含むスターター培養物を提供する工程;
b)スターター培養物を乳ベースに添加して、目標pHに達するまで前記乳ベースを発酵させる工程;及び
c) 前記乳ベースにラクターゼを添加する工程。
【0009】
第4の側面によれば、本発明は、ラクターゼと、DSM22935+DSM22586;DSM22935+DSM33677; DSM22935+DSM28910;DSM22935+DSM22585;DSM22586+DSM33677;DSM22586+DSM28910;DSM22586+DSM22585;DSM33677+DSM28910; DSM33677+DSM22585;又はDSM28910 DSM22585からなる群から選択される2つの乳酸菌株とを含む組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
「乳酸菌」(「LAB」)という表現は、主に生成される酸として乳酸、酢酸及びプロピオン酸を含む酸を生成して糖を発酵させる、グラム陽性菌、微好気性又は嫌気性菌を指す。産業上最も有用な乳酸菌は「ラクトバチルス(Lactobacillales)目」に分類され、これらには、ラクトコッカス属(Lactococcus spp.)、レンサ球菌属(Streptococcus spp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus spp.)、ロイコノストック属(Leuconostoc spp.)、シュードロイコノストック属(Pseudoleuconostoc spp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus spp.)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium spp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus spp.)、及びプロピオニバクテリウム属(Propionibacterium spp.)が含まれる。これらは、単独で、又は他の乳酸菌と組み合わせて食用培養物としてよく使用される。
【0011】
ラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)及びラクトコッカス種(Lactococcus sp.)の細菌を含む乳酸菌は、通常、バルクスターター増殖用の凍結又は凍結乾燥培養物として、又はいわゆる「ダイレクトバットセット(Direct Vat Set)」(DVS(登録商標))培養物として乳業業界に供給されており、それらは発酵乳製品やチーズなどの乳製品を製造するための発酵容器又はバットへの直接接種を目的としている。このような乳酸菌培養物は、一般的に「スターター培養物」又は「スターター」と呼ばれる。 典型的には、ヨーグルトのスターター培養物は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバチルス・デルブリュッキー亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)を含み、そしてほとんどの国では、ヨーグルトは法律により、上記 2 つの菌株を含むスターター培養物を使用して生産される発酵乳製品として定義されている。
【0012】
「発酵」という用語は、微生物の作用による炭水化物のアルコール又は酸への変換を意味する。 好ましくは、本発明の方法における発酵は、ラクトースから乳酸への変換を含む。 乳製品の製造に使用される発酵プロセスは周知であり、当業者であれば、温度、酸素、微生物の量と特性、及びプロセス時間などの適切なプロセス条件を選択する方法を知っているであろう。 明らかに、発酵条件は、本発明の達成をサポートするように、すなわち、固体(チーズなど)又は液体(発酵乳製品など)の形態の乳製品が得られるように選択される。
【0013】
本発明の説明の文脈(特に特許請求の範囲の文脈)における「a」、「an」、「the」という用語、及び同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がある場合、または文脈と明らかに矛盾する場合を除き、単数形と複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」という用語は、特に断りのない限り、無制限の用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。 本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に別段の記載がない限り、その範囲内にあるそれぞれの個別の値を個別に参照する簡略的な方法として機能することを単に意図しており、個別の各値は、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。 本明細書で提供されるあらゆる例、又は例示的な表現(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をよりよく理解することを目的としており、別段の請求がない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。 本明細書のいかなる文言も、請求項に記載されていない要素を本発明の実施に必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0014】
本発明は、発酵乳製品及び前記製品の製造方法に関する。
【0015】
発酵乳製品の製造方法
1つの実施形態によれば、本発明は、発酵乳製品の製造方法に関し、ここで前記方法は、下記工程を含み:
a)DSM22935、DSM22585、DSM22586、DSM28910およびDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含むスターター培養物を提供する工程;
b)スターター培養物を乳ベースに添加して、目標pHに達するまで前記乳ベースを発酵させる工程;及び
c) 前記乳ベースにラクターゼを添加する工程;
ここで発酵乳製品は、工程c)のラクターゼ又は工程a)のスターター培養物を添加せずに製造された発酵乳製品と比較して、食感が改善され、そして/又は後酸性化が低められる。
【0016】
1つの実施形態によれば、本発明は、前記方法に関し、ここで前記スターター培養物は、DSM22935と、DSM 22585、DSM 22586、DSM28910、及びDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株とを含む。
【0017】
1つの実施形態によれば、本発明は、前記方法に関し、ここで前記スターター培養物は、DSM22935+DSM22586;DSM22935+DSM33677; DSM22935+DSM28910;DSM22935 +DSM22585; DSM22586+DSM33677;DSM22586+ DSM28910;DSM22586+DSM22585;DSM33677+DSM28910;DSM33677+DSM22585;又はDSM28910+DSM22585を含む。
【0018】
1つの実施形態によれば、本発明は、前記方法に関し、ここで前記スターター培養物は、DSM22935+DSM22586+DSM33677;DSM22935+DSM22586+DSM28910;DSM22935+ DSM22586+DSM22585;DSM22935+DSM33677+DSM28910; DSM22935+DSM33677+DSM22585; 又はDSM22935+DSM28910+DSM22585を含む。
【0019】
1つの実施形態によれば、本発明は、前記方法に関し、ここで前記乳酸菌は、1.0E04~1.0E12、1.0E04~1.0E11、1.0E04~1.0E10、1.0E04~1.0E09、1.0E05~1.0E08、1.0E05~1.0E07、1.0E05~1.0E06又は1.0E04、1.0E05、1.0E06、1.0E07、1.0E08、1.0E09、1.0E10、1.0E11又は 1.0E12CFU/gの濃度で乳ベースに添加される。
【0020】
ラクトバチルス属の菌株に関して、「CFU」という用語は、嫌気条件下、37℃で3日間インキュベートしたMRS寒天プレート上での増殖(コロニーの形成)によって決定されるコロニー形成単位を意味する。 MRS 寒天培地の組成は次の通りである (g/l):
バクトプロテオースペプトンNo.3:10.0
バクトビーフエキス:10.0
バクト酵母エキス:5.0
デキストロース:20.0
モノオレイン酸ソルビタン錯体:1.0
クエン酸アンモニウム:2.0
酢酸ナトリウム:5.0
硫酸マグネシウム:0.1
硫酸マンガン:0.05
リン酸二カリウム: 2.0
バクト寒天:15.0
Milli-Q水:1000ml。
【0021】
pH は 5.4 又は 6.5 に調整される。L.ラムノサス(L.rhamnosus)、L.カゼイ(L.casei) 及び L.パラカセイ(L.paracasei) の場合、pH は 6.5 に調整される。 他の全てのラクトバチルス種については、pH は 5.4 に調整される。 特に、L.デルブリュッキー亜種ブルガリクス(L.delbrueckii subsp. Bulgaricus) 、L. アシドフィルス(L.acidophilus )及びL. ヘルベティクス(L.helveticus)については、pH は 5.4 に調整される。 L. ラムノサス、L.カゼイ、及び L.パラカゼイの pH は 6.5 に調整される。
【0022】
S.サーモフィルス(S.thermophilus)に関して、「CFU」という用語は、37℃の好気条件で3日間インキュベートしたM17寒天プレート上での増殖(コロニーの形成)によって決定されるコロニー形成単位を意味する。 M17 寒天の組成 (g/l) は次の通りである:
トリプトン:2.5g
肉のペプティック消化物:2.5g
大豆粕パパイック消化物:5.0g
酵母エキス:2.5g
ミートエキス:5.0g
乳糖:5.0g
グリセロリン酸ナトリウム:19.0g
硫酸マグネシウム、7HO:0.25g
アスコルビン酸:0.5g
寒天:15.0g
Milli-Q水:1000ml。pHは最終pH 7.1±0.2(25℃)に調整される。
【0023】
1つの実施形態によれば、本発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法に関し、ここで前記目標 pH は3.0~6.0; 3.5~5.5; 4.0~5.0; 好ましくは4.00;4.10;4.20;4.30;4.40; 4.45;4.50;4.55;4.60;4.65;4.70;4.80;4.90; 又は5.00の範囲にある。
【0024】
「目標pH」という用語は、発酵工程が終了するpHを意味する。 プロセスのさまざまなパラメータに応じて、発酵工程は、1) スターター培養物の少なくとも 1 つの菌株を増殖不能にする発酵乳の酸性化、2) 冷却処理、及び 3) 発酵基質の枯渇からなる群から選択される方法によって終了される。
【0025】
驚くべきことに、スターター培養物をラクターゼと組み合わせて使用する本発明の方法により、質感が改善された発酵乳製品が得られることが判明した。 改善された質感は、例えば、粘度、柔らかさ、及び/又はゲルの硬さによって表現され得る。
【0026】
粘度(単位はPa・s)は、「剪断応力」(Pa)/剪断速度(1/s)として定義される。 発酵乳などの非ニュートン液体のレオロジー特性は、ある範囲の剪断速度で測定されたせん断応力値を表す、いわゆる流動曲線の形式で表すことができる。60/s の剪断速度で測定された剪断応力は、ヨーグルトを口に入れてテイスターの舌で動かしたときに感覚パネルが知覚する粘度とよく相関していることが示され得る。 同様に、300/sで測定されたせん断応力は、飲み込むときに口の奥と喉で感知される流れの抵抗とよく相関する。
【0027】
本発明に関連して、「剪断応力」は以下の方法で測定することができる:製造から7日後、発酵乳製品を13℃にし、均一性を確保するためにスプーンを用いて5回穏やかに円を描くようによく混合した 。 サンプルのレオロジー特性は、ボブカップを使用してレオメーター (ASC、自動サンプルチェンジャーを備えた Anton Paar Physica レオメーター、Anton Paar(登録商標)GmbH、オーストリア) で評価された。 測定中、レオメーターは 13 ℃の一定温度に設定された。 設定は以下の通りであった:
1. 物理的ストレスなしで 5 分間保持。
2. 振動工程 (弾性係数 G‘ と粘性係数 G’‘ をそれぞれ測定し、複素係数G*を計算する)。 一定の歪み=0.3%、周波数 (f) = [0.5・・・8] Hz。 60 秒間で 6 つの測定ポイント (10 秒ごとに 1 つ)。
3. 回転工程: 剪断速度を 0.3 から 300 /sまで徐々に増加させ、その後 300 から 0.3 /s まで徐々に減少させながら、剪断応力を測定する。 各工程には、210 秒間 (10 秒ごと) の 21 個の測定ポイントが含まれていた。
【0028】
本発明に関連して、「ゲルの硬さ」は、以下の方法によって測定することができる:複素弾性率G * は、Anton Paar社のASCレオメーターモデルDSR502を使用する振動測定によって評価した。 この方法は振動工程に基づいており、上部の形状 (ボブ) が移動し、下部のカップは静止したまま、サンプルが2つの表面の間で振動する。振動は一定の歪みで 0.5~8Hz で実行される。 これらの評価では、結果は 1.52Hzでの測定から抽出される。 サンプルは測定前に 13℃に1時間置かれる。 各サンプルをスプーンで下から上に 5回穏やかにかき混ぜて、サンプルを確実に均一にする。 レオロジーカップを線まで満たし、サンプルマガジンに置く。 サンプルは2つの別々のヨーグルト カップを使用して 2回測定される。 測定は +7日目と +28 日目に行われ、測定温度は 13℃ に設定される。 サンプルは測定当日まで 6℃で保存される。
【0029】
1つの実施形態によれば、本発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法に関し、13℃で測定したゲルの硬さを複素弾性率(Pa)で測定すると、発酵終了後6℃で7日又は28日間保存すると、5~10%; 10~15%; 15~20%; 20~25%; 25~30%; 30~35%; 35~40%; 40~45%; 45~50%;又は少なくとも5%;10%;15%;20%;25%;30%;35%;40%;45%;又は少なくとも50%増加する。
【0030】
驚くべきことに、スターター培養物をラクターゼと組み合わせて使用する本発明の方法により、後酸性化が低減された発酵乳製品が得られることが見出された。 1つの実施形態によれば、本発明は、前記方法に関し、ここで、発酵乳製品のpHは、発酵終了後、6℃又は25℃で7日間又は28日間保存した場合、0.30;0.25;0.20;0.15;0.10、又は0.05pH単位の範囲内に維持される。
【0031】
さらなる実施形態によれば、本発明は、発酵乳製品の食感を改善し、及び/又は発酵乳製品の後酸性化を低減するための方法に関し、ここで前記方法は、下記工程を含む:
a)DSM22935、DSM22585、DSM22586、DSM28910およびDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含むスターター培養物を提供する工程;
b)スターター培養物を乳ベースに添加して、目標pHに達するまで前記乳ベースを発酵させる工程;及び
c) 前記乳ベースにラクターゼを添加する工程。
【0032】
乳ベース
発酵乳製品は、乳ベースを発酵させることによって作られる。
【0033】
「乳」という用語は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、水牛又はラクダなどの任意の哺乳動物の搾乳によって得られる乳汁分泌物として理解されるべきである。 好ましい実施形態によれば、乳は牛乳である。 乳という用語には、乳糖を含むあらゆる溶液が含まれる。 このような溶液はまた、植物材料、例えば豆乳を含むタンパク質/脂肪溶液であってもよい。
【0034】
「乳ベース」という用語は、本発明の方法に従って発酵に供することができる任意の生乳材料及び/又は加工乳材料であってもよい。従って、有用な乳ベースには、全乳又は低脂肪乳、スキムミルク、バターミルク、還元粉乳、コンデンスミルク、ドライミルク、 ホエー、ホエーパーミエート、乳糖、 乳糖の母液結晶化、 ホエイプロテイン濃縮物、又はクリームなどのタンパク質を含む任意の乳又は乳様製品の溶液/懸濁液が含まれるが、これらに限定されない。明らかに、乳ベースは、例えば実質的に純粋な哺乳動物の乳、又は還元粉乳など、任意の哺乳動物に由来し得る。
【0035】
このような乳ベースのタンパク質含有量は、どの発酵乳製品が望まれるかに応じて変化し得る。 1つの実施形態によれば、本発明は、前記方法に関し、ここで乳ベースのタンパク質レベルは、1-10%;2-8%;2-6%;3-5%; 例えば3.0%; 3.5%;4.0%;4.5%;5.0%;5.5%;又は6.0重量%の範囲にある。
【0036】
発酵前に、当該技術分野で知られている方法に従って乳ベースを均質化し、低温殺菌してもよい。
【0037】
本明細書で使用される「均質化」とは、可溶性懸濁液又はエマルションを得るために集中的に混合することを意味する。 発酵前に均質化を行う場合、乳脂肪をより小さなサイズに砕き、乳から分離しないよう均質化を行うことができる。 これは、小さなオリフィスを通して乳を高圧で押し出すことによって達成され得る。
【0038】
本明細書で使用される「低温殺菌」とは、微生物などの生きた微生物の存在を減少又は除去するための乳ベースの処理を意味する。 好ましくは、低温殺菌は、特定の温度を特定の時間維持することによって達成される。 指定された温度は通常、加熱によって達成される。 温度及び持続時間は、有害な細菌などの特定の細菌を死滅又は不活化するために選択され得る。 急速冷却工程が続いてもよい。
【0039】
スターター培養物及び組成物
乳ベースを発酵させるために、スターター培養物が追加される。 本文脈で使用される「スターター」又は「スターター培養物」という用語は、乳ベースの発酵及び酸性化を担う、1つ又は複数の食品グレードの微生物、特に乳酸菌(LAB)を含む組成物又は培養物を指す。 スターター培養物は、ヨーグルトスターター培養物であってもよい。 スターター培養物は、新鮮なものでも、凍結したものでも、凍結乾燥したものでもよい。 スターター培養物及び使用する量を決定することは、通常の専門家の技術の範囲内である。
【0040】
微生物は、所望の発酵乳製品に応じて、好熱性又は中温性であり得る。
【0041】
本明細書における「好熱菌」という用語は、35℃を超える温度で最もよく増殖する微生物を指す。 産業上最も有用な好熱性細菌には、連鎖球菌属(Streptococcus spp.)とラクトバチルス属(Lactobacillus spp.)が含まれる。 本明細書における「好熱性発酵」という用語は、約35℃を超える温度、例えば35℃から45℃の間での発酵を指す。 「好熱性発酵乳製品」という用語は、好熱性スターター培養物の好熱性発酵によって調製される発酵乳製品を指し、セットヨーグルト、撹拌ヨーグルト及びドリンクヨーグルト、例えばヤクルトなどの発酵乳製品が含まれる。
【0042】
本明細書における「中温菌」という用語は、中程度の温度(15℃~35℃)で最もよく増殖する微生物を指す。 工業的に最も有用な中温菌には、ラクトコッカス属(Lactococcus spp.)及びロイコノストック属(Leuconostoc spp.)が含まれる。 本明細書において「中温発酵」という用語は、22℃から35℃の間の温度での発酵を指す。 「中温性発酵乳製品」という用語は、中温スターター培養物の中温性発酵によって調製された発酵乳製品を指し、そしてバターミルク、サワーミルク、発酵乳、スメタナ、サワークリーム、ケフィア、及びクワルク、トヴァログ、クリームチーズなどのフレッシュチーズなどの発酵乳製品が含む。
【0043】
1つの実施形態によれば、本発明は、1、2、3、4、又は5つの乳酸菌株を含むスターター培養物に関する。 1つの実施形態によれば、本発明は、DSM22935;DSM22586;DSM33677;DSM28910; 又はDSM22585から選択される1つの乳酸菌を含むスターター培養物に関する。1つの実施形態によれば、本発明は、以下から選択される2つの乳酸菌を含むスターター培養物に関する:DSM22935+DSM22586;DSM22935+DSM33677; DSM22935+DSM28910;DSM22935 +DSM22585; DSM22586+DSM33677;DSM22586+ DSM28910;DSM22586+DSM22585;DSM33677+DSM28910;DSM33677+DSM22585;又はDSM28910+DSM22585。1つの実施形態によれば、本発明は、以下から選択される3つの乳酸菌を含むスターター培養物に関する:DSM22935+DSM22586+DSM33677;DSM22935+DSM22586+DSM28910;DSM22935+ DSM22586+DSM22585;DSM22935+DSM33677+DSM28910; DSM22935+DSM33677+DSM22585; 又はDSM22935+DSM28910+DSM22585。好ましくは、スターター培養物は、以下から選択される3つの乳酸菌を含む:DSM22935+DSM22586+DSM33677又は DSM22935+DSM28910+DSM22585。1つの実施形態によれば、本発明は、以下から選択される4つの乳酸菌を含むスターター培養物に関する:DSM22935+DSM22586+DSM33677+DSM28910; DSM22935+DSM22586+DSM33677+DSM22585;DSM22935+DSM22586+DSM28910+DSM22585; 又はDSM22935+DSM22586+DSM22585+DSM33677。1つの実施形態によれば、本発明は、以下から選択される5つの乳酸菌を含むスターター培養物に関する:DSM22935+DSM22586+DSM33677+DSM28910+DSM22585。
【0044】
1つの実施形態によれば、本発明は、DSM22935と、DSM22586;DSM33677;DSM28910;及びDSM22585からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌とを含むスターター培養物に関する。1つの実施形態によれば、本発明は、DSM22586と、DSM22935;DSM33677;DSM28910;及びDSM22585からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌とを含むスターター培養物に関する。1つの実施形態によれば、本発明は、DSM33677と、DSM22935;DSM22586;DSM28910;及びDSM22585からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌とを含むスターター培養物に関する。1つの実施形態によれば、本発明は、DSM28910と、DSM22935;DSM22586;DSM33677;及びDSM22585からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌とを含むスターター培養物に関する。1つの実施形態によれば、本発明は、DSM22585と、DSM22935;DSM22586;DSM33677;及びDSM28910からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌とを含むスターター培養物に関する。
【0045】
スターター培養物はさらにラクターゼを含んでもよい。 ラクターゼは、以下の「ラクターゼ」の項に記載のラクターゼであってもよい。
【0046】
1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼと、以下からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌とを含むスターター培養物に関する:DSM22935;DSM22586;DSM33677;DSM28910;及びDSM22585。乳酸菌株の具体的な組み合わせは、上記の組み合わせのいずれであってもよい。
【0047】
1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼ及び1、2、3、4、又は5つの乳酸菌株を含むスターター培養物に関する。1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼと、DSM22935;DSM22586;DSM33677;DSM28910; 又はDSM22585から選択される1つの乳酸菌とを含むスターター培養物に関する。1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼと、以下から選択される2つの乳酸菌とを含むスターター培養物に関する:DSM22935+DSM22586;DSM22935+DSM33677; DSM22935+DSM28910;DSM22935 +DSM22585; DSM22586+DSM33677;DSM22586+ DSM28910;DSM22586+DSM22585;DSM33677+DSM28910;DSM33677+DSM22585;又はDSM28910+DSM22585。1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼと、以下から選択される3つの乳酸菌とを含むスターター培養物に関する:DSM22935+DSM22586+DSM33677;DSM22935+DSM22586+DSM28910;DSM22935+ DSM22586+DSM22585;DSM22935+DSM33677+DSM28910; DSM22935+DSM33677+DSM22585; 又はDSM22935+DSM28910+DSM22585。好ましくは、スターター培養物は、ラクターゼと、以下から選択される3つの乳酸菌とを含む:DSM22935+DSM22586+DSM33677又は DSM22935+DSM28910+DSM22585。1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼと、以下から選択される4つの乳酸菌とを含むスターター培養物に関する:DSM22935+DSM22586+DSM33677+DSM28910; DSM22935+DSM22586+DSM33677+DSM22585;DSM22935+DSM22586+DSM28910+DSM22585; 又はDSM22935+DSM22586+DSM22585+DSM33677。1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼと、以下から選択される5つの乳酸菌とを含むスターター培養物に関する:DSM22935+DSM22586+DSM33677+DSM28910+DSM22585。
【0048】
本発明のスターター培養物は、いくつかの形態で提供され得る。 それは、凍結形態、乾燥形態、凍結乾燥形態、又は液体形態であってもよい。 従って、1つの実施形態によれば、スターター培養物は、凍結、乾燥、凍結乾燥、又は液体の形態である。
【0049】
本発明のスターター培養物はさらに、凍結防止剤、凍結保護剤、抗酸化剤、栄養素、増量剤、香味料又はそれらの混合物を含んでもよい。 スターター培養物は、好ましくは、凍結防止剤、凍結保護剤、抗酸化剤及び/又は栄養素のうちの1つ又は複数を含み、より好ましくは凍結防止剤、凍結保護剤及び/又は抗酸化剤、最も好ましくは凍結防止剤もしくは凍結保護剤、あるいはその両方を含む。凍結防止剤及び凍結保護剤などの保護剤の使用は、当業者に知られている。 適切な凍結防止剤又は凍結保護剤は以下を含む:単糖類、二糖類、三糖類、多糖類(グルコース、マンノース、キシロース、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、デンプン、アラビアゴム(アカシア)など)、ポリオール(エリスリトール、グリセロール、イノシトールなど) 、マンニトール、ソルビトール、トレイトール、キシリトールなど)、アミノ酸(プロリン、グルタミン酸など)、複雑な混合物(スキムミルク、ペプトン、ゼラチン、酵母エキスなど)、無機化合物(トリポリリン酸ナトリウムなど)。1つの実施形態によれば、本発明によるスターター培養物は、以下からなる群から選択される1つ又は複数の凍結保護剤を含んでよいイノシン-5‘-一リン酸(IMP)、アデノシン-5’-一リン酸(AMP)、グアノシン-5‘-一リン酸(GMP)、ウラノシン-5’-一リン酸(UMP)、シチジン-5‘-一リン酸(CMP)、 アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、ヒポキサンチン、キサンチン、ヒポキサンチン、オロチジン、チミジン、イノシン及びそのような化合物の誘導体。適切な抗酸化剤としては、アスコルビン酸、クエン酸およびその塩、没食子酸塩、システイン、ソルビトール、マンニトール、マルトースが挙げられる。 適切な栄養素には、糖、アミノ酸、脂肪酸、ミネラル、微量元素、ビタミン(ビタミン B ファミリー、ビタミン C など)が含まれる。 スターター培養物は、場合により、増量剤(乳糖、マルトデキストリンなど)及び/又は香味料を含むさらなる物質を含んでもよい。
【0050】
本発明の1つの実施形態によれば、凍結防止剤は、その凍結防止性に加えてブースター効果を有する薬剤又は薬剤の混合物である。「ブースター効果」という表現は、凍結防止剤が発酵又は変換される培地に接種されたときに、解凍又は再構成された培養物に代謝活性の増加(ブースター効果)を与える状況を説明するために使用される。 生存能力と代謝活動は同義の概念ではない。市販の凍結培養物又は凍結乾燥培養物は、代謝活性のかなりの部分が失われている可能性があるが、例えば培養物は、たとえ短期間であっても保存された場合、酸生成(酸性化)活性を失う可能性があるが、生存能力を保持している可能性がある。 従って、生存率とブースター効果はさまざまなアッセイで評価する必要がある。生存率はコロニー形成単位の測定などの生存率アッセイによって評価されるが、ブースター効果は、解凍又は再構成した培養物の関連代謝活性を培養物の生存率と比較して定量することによって評価される。「代謝活性」という用語は、培養物の酸素除去活性、その酸生成活性、すなわち、例えば、乳酸、酢酸、ギ酸及び/又はプロピオン酸の生成、又はアセトアルデヒド(α-アセト乳酸、アセトイン、ジアセチル及び2,3-ブチレングリコール( ブタンジオール))などの芳香化合物の生成などのその代謝産物生成活性を指す。
【0051】
1つの実施形態によれば、本発明のスターター培養物は、材料の%w/wとして測定して、0.2%~20%の凍結防止剤又は凍結防止剤の混合物を含有又は含む。しかしながら、凍結防止剤又は凍結防止剤の混合物を、0.2%~15%、0.2%~10%、0.5%~7%、及び1%~6%(重量%)の範囲の量で添加することが好ましく、凍結材料の重量%w/wとして測定される凍結防止剤又は凍結防止剤の混合物の2%~5%(重量%)の範囲内のものも含む。好ましい実施形態によれば、培養物は、材料の重量%w/wとして測定して、約3%の凍結防止剤又は凍結防止剤の混合物を含む。 凍結防止剤の約3%の量は、100mM 範囲の濃度に相当する。 本発明の実施形態の各態様について、範囲は記載された範囲の増分であってもよいことを認識されたい。
【0052】
さらなる側面によれば、本発明のスターター培養物は、以下を含むか、又は含んでなる:細菌細胞、例えばS.サーモフィラス種に属する細胞、例えば、(実質的な)ウレアーゼ陰性の細菌細胞のための促進剤(例えば、成長促進剤又は酸性化促進剤)としてのアンモニウム塩(例えば、有機酸のアンモニウム塩(ギ酸アンモニウム及びクエン酸アンモニウムなど)又は無機酸のアンモニウム塩)。「アンモニウム塩」、「ギ酸アンモニウム」などの用語は、塩の供給源又はイオンの組み合わせとして理解されるべきである。例えば、「ギ酸アンモニウム」又は「アンモニウム塩」の「源」という用語は、細胞培養物に添加されるとギ酸アンモニウム又はアンモニウム塩を提供する化合物又は化合物の混合物を指す。 いくつかの実施形態によれば、アンモニウム源は増殖培地中にアンモニウムを放出するが、他の実施形態によれば、アンモニウム源は代謝されてアンモニウムを生成する。いくつかの好ましい実施形態によれば、アンモニウム源は外因性である。 いくつかの特に好ましい実施形態によれば、アンモニウムは乳基質によって提供されない。 もちろん、アンモニウム塩の代わりにアンモニアを加えてもよいことを理解されたい。 従って、アンモニウム塩という用語には、アンモニア(NH )、NHOH、NH などが含まれる。
【0053】
1つの実施形態によれば、本発明のスターター培養物は、ペクチン(例えば、HMペクチン、LMペクチン)、ゼラチン、CMC、大豆繊維/大豆ポリマー、デンプン、加工デンプン、カラギーナン、アルギン酸塩、及びグアーガムなどの増粘剤及び/又は安定剤を含んでもよい。
【0054】
微生物が、酸性化乳製品に高い/滑らかな質感を引き起こす多糖類(EPSなど)を生成する1つの実施形態によれば、酸性化乳製品は、ペクチン(例えば、HM ペクチン、LM ペクチン)、ゼラチン、CMC、大豆繊維/大豆ポリマー、デンプン、加工デンプン、カラギーナン、アルギン酸塩、及びグアーガムなどの増粘剤及び/又は安定剤を実質的に添加せず、又は完全に添加せずに製造される。実質的に含まないとは、製品が0%~20%(w/w)(例えば、0%~10%、0%~5%、又は0%~2%、又は0%~1%)の増粘剤及び/又は安定剤を含むことを理解すべきである。
【0055】
上述のスターター培養物及び組成物は、ラクターゼ及び1つ又は複数の乳酸菌を含むスターター培養物を含む混合物又はパーツのキットとして提供され得る。 乳酸菌は、上記のような任意の乳酸菌又は任意の乳酸菌の組み合わせであってもよい。
【0056】
ラクターゼ
本発明の文脈におけるラクターゼは、二糖ラクトースを構成成分のガラクトース及びグルコースモノマーに加水分解する能力を有するグリコシド加水分解酵素である。 本発明のラクターゼが属するラクターゼの群は、サブクラスEC3.2.1.108に割り当てられた酵素を含むが、これに限定されない。 例えばEC3.2.1.23などの他のサブクラスに割り当てられた酵素も、本発明の文脈ではラクターゼであり得る。 本発明の文脈におけるラクターゼは、ラクトース加水分解活性以外の他の活性、例えばトランスガラクトシル化活性を有し得る。 本発明の文脈において、ラクターゼのラクトース加水分解活性は、そのラクターゼ活性又はそのβ-ガラクトシダーゼ活性と呼ばれることがある。
【0057】
本発明の方法で使用されるラクターゼ活性を有する酵素は、動物由来、植物由来、又は微生物由来のものであり得る。 好ましいラクターゼは、微生物源、特に糸状菌もしくは酵母、または細菌から得られる。
【0058】
この酵素は、例えば、以下に由来するものであってもよい:アガリクス(Agaricus)、例えば A.ビスポラス(A. bisporus);アスコバギノスポラ(Ascovaginospora);アスペルギルス(Aspergillus)、例えば A.ニガー(A. niger)、A.アワモリ(A. awamori)、A.フェティダス(A. foetidus)、A.ジャポニカス(A. japonicus)、A.オリザエ(A. oryzae); カンジダ(Candida); チェトミウム(Chaetomium);チェトマスティア(Chaetotomastia); 細胞性粘菌(Dictyostelium)、例えば D.ディスコイデウム(D. discoideum); クルベロマイセス(Kluveromyces)、例えば K.フラジリス(K. fragilis)、K. ラクティス(K. lactis);ムコル(Mucor)、例えばM.ジャバニカス(M. javanicus)、M. ムシード(M. mucedo)、M.サブチリシマス(M. subtilissimus); アカパンカビ(Neurospora)、例えば N.クラサ(N. crassa);リゾムコール(Rhizomucor)、例えば R.プシラス(R. pusillus); リゾプス(Rhizopus)、例えばR. アリズス(R. arrhizus)、R. ジャポニカス(R. japonicus)、R.ストロニファー(R. stolonifer); 菌核(Sclerotinia)、例えばS.リベルティアナ(S. libertiana);トルラ(Torula); トルロプシス(Torulopsis);白癬菌(Trichophyton)、例えば T.ルブルム(T. rubrum); ウェッツェリニア(Whetzelinia)、例えば W. スクレロチオルム(W. sclerotiorum); バチルス(Bacillus,)、例えば B.コアギュランス(B. coagulans)、B.サーキュランス(B. circulans)、B.メガテリウム(B. megaterium)、B.ノヴァリス(B. novalis)、B.ズブチリス(B. subtilis,)、B.プミルス(B. pumilus)、B.ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)、B.チューリンギエンシス(B. thuringiensis);ビフィズス菌(Bifidobacterium)、例えば B. ロンガム(B. longum)、B.ビフィダム(B. bifidum)、B. アニマリス(B. animalis); クリセオバクテリウム(Chryseobacterium); シトロバクター(Citrobacter)、例えば C.フロインディ(C. freundii); クロストリジウム菌(Clostridium)、例えば ウェルシュ菌(C. perfringens);ディプロディア(Diplodia)、例えば D.ゴシピナ(D. gossypina); エンテロバクター(Enterobacter)、例えば E.エアロゲネス(E. Aerogenes)、E.クロアカエ・エドワードシエラ(E. cloacae Edwardsiella)、E.タルダ(E. Tarda);エルウィニア(Erwinia)、例えばE.ハービコラ(E. herbicola);エシェリヒア属(Escherichia)、例えば 大腸菌(E. coli); クレブシエラ(Klebsiella)、例えばK. ニューモニア(K. pneumoniae);ミリオコッカム(Miriococcum); ミロテシウム(Myrothesium); ムコル(Mucor); アカパンカビ(Neurospora)、例えばN.クラサ(N. crassa); プロテウス(Proteus)、例えばP.バルガリス(P. vulgaris); プロビデンス(Providencia)、例えばP.スチュアルティ(P. stuartii); ピクノポラス(Pycnoporus)、例えば ピクノポルス・シンナバリヌス(Pycnoporus cinnabarinus)、ピクノポルス・サンギネウス(Pycnoporus sanguineus);ルミノコッカス(Ruminococcus)、例えば R. トルク(R. torques);サルモネラ(Salmonella,)、例えば ネズミチフス菌(S. typhimurium); セラチア(Serratia)、例えば S.リクファシエンス(S. liquefasciens)、S.マルセッセンス(S. liquefasciens); シゲラ(Shigella)、例えば S.フレクスネリ(S. flexneri);ストレプトミセス(Streptomyces)、例えば抗生物質耐性菌 (S.antibioticus)、S.カスタネオグロビスポルス(S.castaneoglobisporus)、S.バイオレセオルバー(S.violeceoruber); トラメテス(Trametes); トリコデルマ(Trichoderma)、例えば T.リーゼイ(T. reesei)、T.ビリデ(T. viride);エルシニア(Yersinia)、例えば Y.エンテロコリチカ(Y. enterocolitica)。
【0059】
好ましい実施形態によれば、ラクターゼは細菌、例えばビフィドバクテリウム科(family Bifidobacteriaceae)、例えばビフィドバクテリウム属(genus Bifidobacterium)、例えばB.ビフィダム(B. bifidum)、B.アニマリス(B. animalis)又はB.ロンガム(B. longum)の菌株に由来する。 より好ましい実施形態によれば、ラクターゼはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来する。
【0060】
別の好ましい実施形態によれば、ラクターゼは、真菌、例えばサッカロミセタ科(family Saccharomycetaceae)、例えばクルイベロミセス属(genus Kluyveromyces)、例えばK.フラジリス(K. fragilis)又はK.ラクティス(K. lactis)の菌株に由来する。 より好ましい実施形態によれば、ラクターゼはK.ラクチス(K. lactis)に由来する。
【0061】
1つの実施形態によれば、本発明は、工程b)の発酵の開始時、発酵中、又は発酵終了時にラクターゼを添加する方法に関する。
【0062】
「発酵工程の開始時」という用語は、スターター培養物を乳ベースに添加する直前、添加と同時、又は添加直後を意味する。 ここで「短時間」とは30分未満を意味する。 「発酵工程中」とは、発酵開始後から発酵終了までの発酵中の任意の時点を意味する。 「発酵工程の終了時」という用語は、目標pHに到達する直前、到達と同時に、又は到達直後を意味する。 ここで「短時間」とは30分未満を意味する。
【0063】
1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼが中性ラクターゼ、酸性ラクターゼ、及び低pH安定性ラクターゼからなる群から選択される方法に関する。
【0064】
「中性ラクターゼ」という用語は、典型的には6.0~8.0のpH範囲にある中性pH付近の至適pHを有するラクターゼを意味する。 中性ラクターゼの例は、Ha-lactase(登録商標)(Chr. Hansen A/S)、Bonlacta (Dupont)、Godo-YNL2 (Dupont)、Maxilact(登録商標)(DSM) である。
【0065】
「酸性ラクターゼ」という用語は、典型的には3.5~5.5のpH範囲の酸性pHに至適pHを有するラクターゼを意味する。 酸性ラクターゼの例は、Maxilact(登録商標)A4及び国際公開第2020/079116号に開示されているものである。
【0066】
本明細書において「低pH安定性ラクターゼ」という用語は、pH5.0及び温度37℃において、ラクターゼの至適pHにおける活性と比較して少なくとも5%のレベルでその活性を保持するラクターゼを指す。 「至適pHにおける活性」という用語は、ラクターゼがその最適活性を有するpHにおけるラクターゼ活性を意味する。 低 pH 安定性ラクターゼの例は、NOLA(登録商標)Fit (Chr. Hansen A/S)、Saphera(登録商標) (Novozymes A/S) である。
【0067】
他の適切なラクターゼは、Nola Fiber (Chr. Hansen A/S)、Saphera Fiber (Novozyme A/S)、Nurica (Dupont) である。
【0068】
1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼが、以下の体積活性で乳ベースに添加される方法に関する:500~50,000NLU/L;1000~40.000; 1500~30.000;2000~20.000;3000~10.000;4000~9000;5000~8000;又は6000~7000NLU/L。
【0069】
1つの実施形態によれば、本発明は、ラクターゼが、以下の体積活性で乳ベースに添加される方法に関する:500~50,000BLU/L;1000~40.000; 1500~30.000;2000~20.000;3000~10.000;4000~9000;5000~8000; 又は6000~7000BLU/L。
【0070】
特定のラクターゼの活性は、ラクトースから放出されるグルコースを直接測定することによって決定できる。 当業者は、そのような活性を決定する方法を知っているであろう。 あるいは、活性は、以下又は本出願の実施例1に記載されるラクターゼ活性アッセイを使用することによって決定され得る。
【0071】
Ha-ラクターゼなどの中性ラクターゼに対するラクターゼ活性は以下のように測定された。 ラクターゼ活性は、FCC(第 4 版、1996 年 7 月、p801-802: ラクターゼ (中性) β-ガラクトシダーゼ活性) に記載されている手順に従って、基質として o-ニトロフェニル-β―D-ガラクトピラノシド (ONPG) を使用して中性ラクターゼ ユニット (NLU) として測定された。
【0072】
NOLA(登録商標)Fit 製品などの低pH 安定性ラクターゼのラクターゼ活性は、ONPG (o-ニトロフェニル β-D-ガラクトピラノシド) の β-D-ガラクトースと ONP (o-ニトロフェノール) への加水分解に基づいていた。 ONP は黄色で、分光光度計を使用して 405nm での吸光度を測定することで定量できる。 NOLA(登録商標)Fit活性はラクターゼ酵素標準と比較して決定され、活性単位は製品 1 グラムあたりのビフィド ラクターゼ単位として定義され、BLU/gと略される。BLU活性が既知のラクターゼ サンプルは、Chr. Hansen A/S,Denmarkから入手できる。
【0073】
標準酵素と試験酵素の両方をMES緩衝液pH 6.5(50mM、1mM MgSO及び0.045% Brijを含む)で希釈した。 基質ONPG(1.46mg/ml)をMES緩衝液に溶解した(上記の通り)。 反応は、予熱した標準サンプル又は試験サンプル (30℃)0.5mlと予熱した基質溶液 3.5 ml を混合することによって開始した。 反応混合物を30℃で10分間インキュベートした。10分間のインキュベーション後、1mlの停止溶液(1MのNaCO)を添加することによって反応を停止させた。 溶液の吸光度を405nmで測定した。
【0074】
現在の状況では、1 BLU は、ラクトース濃度 4.75% w/v、pH 6.5、37℃の M 緩衝液中で 1 分当たり 1 マイクロモルのグルコースを放出する酵素の量として定義される。 M-緩衝液は、3.98gのCNa-2HO、8.31gのクエン酸、0.9gのKSO、2.6gのKHPO、7.35gのKHPO、5.45gのKOH、4.15gのMgCl-6HO、3.75gのCaCl-2HO 及び 1.4gのNaHCOを水4リットル溶解し、12.5mlの4NのNaOHを加え、HClを使用してpH6.5に調整し、そして総量が5リットルになるまで水を加えることによって調製される。
【0075】
発酵乳製品
本発明はさらに、本発明の方法により得られる発酵乳製品に関する。
【0076】
1つの実施形態によれば、本発明は、食感が改善された、及び/又は後酸性化が低減された発酵乳製品に関し、この製品は、ラクターゼと、以下からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含むスターター培養物とを含む:DSM22935、DSM22585、DSM22586、DSM28910、及びDSM33677。
【0077】
「発酵乳製品」という用語は、乳ベースを乳酸菌又はスターター培養物で発酵させて製造する製品を意味する。 本明細書で使用される「発酵乳製品」には、好熱性発酵乳製品、例えばヨーグルト、中温性発酵乳製品、例えばサワークリーム及びバターミルク、並びに発酵ホエーなどの製品が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
本発明の1つの実施形態によれば、発酵乳製品は、ストレプトコッカス・サーモフィラス及び/又はラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリクスから選択される乳酸菌株を含む製品である。
【0079】
1つの実施形態によれば、発酵乳製品は、以下からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌を含む:DSM22935; DSM22586; DSM33677; DSM28910; 及び DSM22585。 発酵乳製品は、上記の「スターター培養物および組成物」の段落に詳細に記載されているように、DSM22935;DSM22586; DSM33677; DSM28910; 及びDSM22585株の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0080】
本発明の1つの実施形態によれば、発酵乳製品は、以下からなる群から選択される:ヨーグルト、フレッシュチーズ、クリームチーズ、トヴァローグ、クワルク、サワーミルク、サワークリーム、バターミルク、クレームフレッシュ、フロマージュフレ、スカイル、発酵ホエイ、発酵乳、スメタナ、ケフィア、飲むヨーグルト、ヤクルト。 ヨーグルトは、セットヨーグルト、撹拌ヨーグルト、飲むヨーグルトから選ばれることが好ましい。 好ましくは、チーズは、クワルク、トヴァログ及びクリームチーズから選択される。
【0081】
本発明の1つの実施形態によれば、発酵乳製品は、果実飲料、発酵又は未発酵のシリアル製品、化学的に酸性化又は非酸性のシリアル製品、豆乳製品、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択されるさらなる食品を含む。 本発明の発酵乳製品は、バニラ、コーヒー、スクロース、又は人工甘味料を含んでもよい。
【0082】
発酵乳製品は、典型的には、2.0重量%~3.5重量%の間の量のタンパク質を含む。 発酵乳製品はまた、タンパク質レベルが1.0重量%~2.0重量%の間の低タンパク質製品であってもよい。 あるいは、発酵乳製品は、タンパク質レベルが3.5重量%を超える高タンパク質製品であってもよい。
【0083】
さらなる実施形態によれば、本発明は、発酵乳製品の食感を改善し、及び/又は後酸性化を低減するためのラクターゼ及びスターター培養物の使用に関し、ここで、ラクターゼは、中性ラクターゼ、酸性ラクターゼ及び低pH 安定性のラクターゼからなる群から選択される。 1つの実施形態によれば、本発明は、スターター培養物が、DSM22935、DSM22585、DSM22586、DSM28910及びDSM33677からなる群から選択される1つ又は複数の乳酸菌株を含む使用に関する。 適切な菌株の具体的な組み合わせは、「スターター培養と組成物」のセクションに記載されている。
【0084】
分類学
ラクトバチルス属の分類法が2020年に更新されたことが理解される。新しい分類法は、 Zheng et al.2020 (Zheng et al.、Int. J. Syst.Evol.Microbiol. DOI 10.1099/ijsem.0.004107) に開示されており、そして特に指示がない限り、本明細書に一貫して記載される。本発明の目的のために、以下の表は、本発明に関連するいくつかのラクトバチルス種の新しい名前と古い名前のリストを示す。
【0085】
【表1】
【0086】
寄託及び専門家の解決法
出願人は、特許が付与される日まで、ブダペスト条約締約国の工業所有権局が管理する利用可能な規定に従って、以下の表に記載されている寄託微生物のサンプルを専門家のみが利用できるようにすることを要求している。
【0087】
【表2】
【0088】
以下の菌株が寄託されており、そして示された公開特許出願に記載されている。 ストレプトコッカス・サーモフィラス株:DSM22935(国際公開第2011/092300号);DSM22586 (国際公開第2011/000879号);DSM22585 (国際公開第2010/023178号)。ラクトバチルス・デルブルッキー亜種 ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. Bulgaricus)株:DSM28910(国際公開第2015/193459号)。
【実施例
【0089】
材料及び方法
乳ベース:
所望の最終組成物を重量で達成するために、低温殺菌牛乳、脱脂粉乳、及び水を適切な比率で混合することによって、異なる牛乳組成物を調製した。
【0090】
【表3】
【0091】
スターター培養物及びラクターゼ:
培養物 1 には、DSM22586、DSM22935、及び DSM33677 株が含まれる。
培養物 2 には、DSM22585、DSM22935、及びDSM 28910 株が含まれる。
培養物3 には、DSM22586株と DSM22935株が含まれる。
培養物4 には DSM22935株が含まれる。
低 pH 安定ラクターゼ: NOLA(登録商標)Fit 5500/6X1L (Chr. Hansen A/S)
中性ラクターゼ: Ha-ラクターゼ5200/6X1Kg (Chr. Hansen A/S)
【0092】
発酵条件と後処理:
接種された牛乳サンプルは、水浴を使用して設定温度でインキュベートされ、pH が継続的に監視された。 目標の pH4.55に達するとすぐに、サンプルを水浴から取り出し、平滑にし、6℃の保管温度まで冷却した。
【0093】
【表4】
【0094】
アッセイ:
酸性化後の状態は、6℃で保存したサンプルのpH を7又は28日間にわたって pH メーターで測定した。
【0095】
ゲルの硬さは、Anton Paar社の ASC レオメーター モデル DSR502 を使用した振動測定によって評価された複素弾性率 G によって測定された。 この方法は振動工程に基づいており、上部の形状 (ボブ) が移動し、下部のカップは静止したまま、サンプルが 2つの表面の間で振動する。 振動は一定のひずみで0.5~8Hzで実行される。 これらの評価では、結果は1.52Hzでの測定から抽出される。 サンプルは測定前に 13℃ に 1時間置かれる。 各サンプルをスプーンで下から上に5回穏やかにかき混ぜて、サンプルを確実に均一にする。レオロジーカップを線まで満たし、サンプルマガジンに置く。 サンプルは 2つの別々のヨーグルト カップを使用して2回測定される。 測定は +7 日目と +28 日目に行われ、測定温度は 13℃ に設定される。 サンプルは測定当日まで 6℃で保存される。
【0096】
食感特性及び酸性化後の保存期間についてラクターゼが開始培養物に及ぼす影響を評価するために、開始培養物、ラクターゼ、及び乳ベースを以下の表に記載されているように組み合わせて、いくつかのヨーグルト製造を実施した。 ゲルの硬さ及び後酸性化に関する発酵の結果を実施例1及び2に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
実施例1-食感を改善した発酵乳
ゲルの硬さは、上述したように、1.52Hzの振動周波数における複素弾性率G として測定した。 以下の表に示す結果は、2つの異なるラクターゼのいずれかを添加すると、乳ベースのタンパク質含有量と試験した培養物に関係なく、+7日目と+28日目に測定したゲルの硬さが増加することを示している。
【0099】
【表6】
【0100】
実施例2-後酸性化を軽減した発酵乳
酸性化後の状態を6℃と25℃で7日間及び28日間にわたって測定した。 以下の表に示す結果は、2つの異なるラクターゼのいずれかを添加すると、テストした培養物と異なる乳ベースの両方について、異なるタンパク質含有量で保存期間にわたって後酸性化が安定化及び/又は減少することを示している。
【0101】
【表7】
【0102】
実施例3-ゲルの硬さがより優れた発酵乳
タンパク質 4.4%、及び低脂肪 (0.11%) の乳ベースは、脱脂粉乳と水を 13:100 の比率で 2 時間混合し、続いて 80℃ で 20 分間バッチ殺菌することによって製造された。 牛乳を 43℃に加熱し、サプライヤーが提供する製品情報シートの推奨に従って、さまざまな培養物を 0.2U/Lで接種した。 牛乳は、pH 4.55に達するまで43℃でインキュベートされた。 この時点で、カードを手で撹拌して砕き、平滑化バルブ、温度を20℃に下げた熱交換器、及び充填ノズルを介してポンプで送り出すことにより、当技術分野で知られている標準的な手順を使用して発酵乳を処理した。 ヨーグルトサンプルは標準的なヨーグルトカップに収集され、レオロジー分析まで 6℃で 7 日間保管された。
【0103】
サンプルのレオロジー特性は、レオメーター (Anton Paar Modular Compact Rheometer MCR 302、Anton Paar(登録商標) GmbH、オーストリア) で評価された。 測定中、レオメーターは 13℃の一定温度に設定された。 Stirred_oscillation+Up_DownFlow プログラムを使用した。
【0104】
ゲルの硬さは1.52Hzで評価された (1.52 での複素弾性率 G)。 解析には 3001/s の剪断応力が選択された。これは、口の中の質感 (口当たり、第一印象) 及び凝集性 (発酵乳製品を飲み込んだとき) に相関するためである。
【0105】
【表8】
【国際調査報告】