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特表2024-518804間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/498 20060101AFI20240424BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
A61K31/498
A61P13/10
A61P25/04
A61P29/00
A61P25/00
A61P13/00
A61K45/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571825
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022030400
(87)【国際公開番号】W WO2022246298
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/191,536
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508150854
【氏名又は名称】パーデュー、ファーマ、リミテッド、パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトサイド,ガース
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA81
4C086ZB11
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置を必要とするヒト対象の間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩をヒト対象に投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、本方法は、式(IA)の化合物を投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置を必要とするヒト対象の前記間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法であって、式(I):
【化1】
を有する治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記ヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に伴う症状の処置を必要とするヒト対象の前記間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に伴う症状を処置するまたは軽快させる方法であって、式(I):
【化2】
を有する治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
前記症状が、内臓痛である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記症状が、尿意切迫感である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が、式(I’):
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
治療有効量の前記化合物の薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬学的に許容される塩が、p-トルエンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、または塩酸塩である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記薬学的に許容される塩が、p-トルエンスルホン酸塩である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、経口投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、頬側投与、または経皮投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、経口投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩が、約0.001mg~約30mgである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩が、約0.005mg~約25mgである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩が、約0.075mg~約12mgである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩が、約0.1mg~約10mgである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、1日1回投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、夜間に投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、前記ヒト対象の就寝時間前の夜間に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、1日2回投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
治療有効量の前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、約12時間ごとに投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1の治療有効量の前記化合物またはその薬学的に許容される塩を日中に投与し、かつ第2の治療有効量を前記ヒト対象の就寝時間前の夜間に投与することを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
毎回同じ治療有効量の前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
毎日投与中に、2つの異なる治療有効量の前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の治療有効量が、前記第1の治療有効量よりも約2倍多い、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の治療有効量が、前記第1の治療有効量よりも約5倍多い、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の治療有効量が、前記第1の治療有効量よりも約10倍多い、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の治療有効量が、前記第1の治療有効量よりも約25倍多い、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の治療有効量が、前記第1の治療有効量よりも約100倍多い、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩の投与が、前記ヒト対象における排尿の圧力閾値を約30%~80%増加させる、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記式(I)の化合物の投与が、前記ヒト対象の血圧に影響を及ぼさない、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、薬学的に許容される組成物で投与される、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
抗ムスカリン剤を前記ヒト対象に投与することを更に含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗ムスカリン剤が、オキシブチニン、トルテロジン、トロスピウム、ソリフェナシン、及びダリフェナシン、またはそれらの薬学的に許容される塩の群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
治療有効量の式(IA):
【化4】
の化合物を投与することを含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置を必要とするヒト対象の前記間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法であって、治療有効用量の式(I’):
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記ヒト対象に投与することを含み、前記ヒト対象が、睡眠障害に更に罹患している、前記方法。
【請求項35】
前記睡眠障害が、アルコール中止に伴う不眠症である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒト対象が、50歳以上の女性である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
不眠症の処置を必要とするヒト対象の前記不眠症を処置する方法であって、治療有効量の式(I’):
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記ヒト対象に投与することを含み、前記ヒト対象が、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に更に罹患している、前記方法。
【請求項38】
治療有効量の式(IA):
【化7】
の化合物を前記ヒト対象に投与することを含む、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群は、膀胱充満に関連する恥骨上部の疼痛を特徴とする衰弱性慢性疾患であり、日中及び夜間頻尿の増加、尿意切迫感、夜間多尿、ならびに骨盤不快感などの付加的な症状を伴う。Yoshimura et al.(2014),Int J Urol.2014,Apr;21 Suppl 1(01):18-25を参照されたい。間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に罹患している患者では、膀胱上皮を保護するグリコサミノグリカン層の破壊が生じており、これにより膀胱壁が刺激される。間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に罹患している患者は、中等度または重度の疼痛を経験する可能性がある。
【0002】
抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、及び抗痙攣薬などの薬物療法が間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置に使用されてきたが、成果は限られている。損傷したまたは漏出性の膀胱表面を回復するペントサンポリ硫酸ナトリウムという薬物が、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置用に承認されている。しかしながら、ほとんどの患者はこの薬物療法に効果的に応答しない。
【0003】
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を生じさせる正確な機序は完全には解明されていないが、膀胱求心路の鋭敏化とそれに続く脊髄における感覚処理の増加が、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を誘発する重要な機序として提唱されている。Yoshimura et al.(2014),Int J Urol.21(0 1):18-25。したがって、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置に対して、膀胱求心性活性を抑制する可能性があり得る薬理学的標的が研究されてきた。かかる処置としては、オピオイド、アデノシン受容体アゴニスト、及びGlyT阻害剤が挙げられる。
【0004】
本開示は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置に有用なある特定のORL-1受容体モジュレーターを提供する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置が必要であると同定されたヒト対象の間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法であって、式(I):
【化1】
を有する治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に投与する、方法を提供する。式(I)の化合物には、その全ての立体異性体(例えば、鏡像異性体)及びその多形体が含まれる。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置が必要であると同定されたヒト対象の間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法であって、式(I’):
【化2】
を有する治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に投与する、方法を提供する。当業者には十分に理解されるように、式(I’)の化合物は、式(I)の化合物の立体異性体である。
【0007】
ある特定の実施形態では、式(I)または式(I’)の化合物は、トシレート塩として投与される。例えば、ある特定の実施形態では、本開示は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置を必要とするヒト対象の間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法であって、式(IA):
【化3】
を有する治療有効量の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0008】
一態様では、本開示は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に伴う症状の処置を必要とするヒト対象の間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に伴う症状を処置するまたは軽快させる方法であって、治療有効量の式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、方法を提供する。かかる一実施形態では、症状は、内臓痛である。別のかかる実施形態では、症状は、尿意切迫感である。別のかかる実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の投与により、夜間多尿の発生が低減する。
【0009】
特定の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の経口投与により、膀胱内の化合物の濃度が高くなる。
【0010】
ある特定の実施形態では、本開示は、睡眠障害及び間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に罹患している患者を同時に処置することができる方法を提供する。したがって、一態様では、本開示は、睡眠障害に罹患しているヒト対象の間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法であって、治療有効量の式(I)もしくは(I’)を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、不眠症に罹患している。いくつかの実施形態では、式(I)もしくは(I’)を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩は、夜間に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ビヒクル(生理食塩水)群、ビヒクル(CYP)群、イブプロフェン/CYP群、及び式(IA)の化合物群に対する基礎反応が同様であったことを示す。Aは、侵害受容閾値を示す。Bは、侵害受容スコアを示す。AUC 1~6。Cは、AUC 1~6gを示す。Dは、AUC 6~26gを示す。結果を±s.e.m.として表す。NSp>0.05、クラスカル-ウォリス検定、Sidakの事後検定を伴う一元配置ANOVAまたは二元配置RM ANOVA。
図2】両方のビヒクル群内にCYPまたは生理食塩水を注射した後の侵害受容閾値(g)の時間経過を示す。結果を±s.e.m.として表す。****p>0.0001、Sidakの事後検定を伴う二元配置RM ANOVA。
図3】両方のビヒクル群内にCYPを注射した後の2時間後(A)、3時間後(B)、4時間後(C)、及び24時間後(D)の侵害受容スコア(%)を示す。結果を±s.e.m.として表す。****p<0.0001、二元配置RM ANOVA。
図4】両方のビヒクル群内にCYPまたは生理食塩水を注射した後のAUC 1~6g(A)及び6~26g(B)の時間経過を示す。結果を±s.e.m.として表す。p<0.05及び****p<0.0001、Sidakの事後検定を伴う二元配置RM ANOVA。
図5】ビヒクル群及びイブプロフェン群におけるCYP注射後の侵害受容閾値(g)の時間経過を示す。結果を±s.e.m.として表す。****p<0.0001、Sidakの事後検定を伴う二元配置RM ANOVA。
図6】ビヒクル群及びイブプロフェン群内にCYPを注射した後の2時間後(A)、3時間後(B)、4時間後(C)、及び24時間後(D)の侵害受容スコア(%)を示す。結果を±s.e.m.として表す。****p<0.0001、二元配置RM ANOVA。
図7】ビヒクル群及びイブプロフェン群内の両方にCYPまたは生理食塩水を注射した後のAUC 1~6g(A)及び6~26g(B)の時間経過を示す。結果を±s.e.m.として表す。p<0.05及び****p<0.0001、Sidakの事後検定を伴う二元配置RM ANOVA。
図8】ビヒクル群及び式(IA)の化合物群におけるCYP注射後の侵害受容閾値(g)の時間経過を示す。結果を±s.e.m.として表す。NSp>0.05、**p<0.01、Sidakの事後検定を伴う二元配置RM ANOVA。
図9】ビヒクル群及び式(1A)の化合物群内にCYPを注射した後の2時間後(A)、3時間後(B)、4時間後(C)、及び24時間後(D)の侵害受容スコア(%)を示す。結果を±s.e.m.として表す。**p<0.01、***p<0.001 ****及びp<0.0001、二元配置RM ANOVA。
図10】ビヒクル群及び式(IA)の化合物群内の両方にCYPまたは生理食塩水を注射した後のAUC 1~6g(A)及び6~26g(B)の時間経過を示す。結果を±s.e.m.として表す。NSp>0.05、p<0.05、**p<0.01、**p<0.001、及び****p<0.0001、Sidakの事後検定を伴う二元配置RM ANOVA。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置が必要であると同定されたヒト対象の間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を処置する方法であって、ORL-1受容体とも称されるノシセプチンオピオイドペプチド受容体のアゴニストの投与を通じて対象に投与する、方法を提供する。
【0013】
中枢神経系の長く知られている3つの主要なオピオイド受容体クラス(ミュー、カッパ、及びデルタ)とは異なるORL-1受容体の同定は、これらのオピオイド受容体クラスでの実験によりもたらされた。ORL-1受容体は、古典的なミューオピオイド受容体と重複する薬理学的性質を示さなかったことから、ORL-1受容体は、アミノ酸配列相同性のみに基づいてオピオイド受容体として同定及び分類された。最初に、ミュー、カッパ、及びデルタオピオイド受容体に対して高い親和性を有する非選択的リガンドが、ORL-1受容体に対して低い親和性を有することが実証された。この特徴と内因性リガンドが未だ発見されていないという事実が相まって、「オーファン受容体」という用語が生じた。例えば、Henderson et al.,“The orphan opioid receptor and its endogenous ligand - nociceptin/orphanin FQ,” Trends Pharmacol.Sci.18(8):293-300(1997)を参照されたい。後続の調査により、オピオイドペプチドファミリーのメンバーに構造的に類似した17アミノ酸ペプチドであるORL-1受容体(すなわち、ノシセプチン;オルファニンFQまたはOFQとしても知られている)の内因性リガンドの単離及び構造がもたらされた。ORL-1受容体の一般的考察については、Calo’ et al.,“Pharmacology of nociceptin and its receptor:a novel therapeutic target,” Br.J.Pharmacol.129:1261-1283(2000)を参照されたい。
【0014】
ノシセプチンは、種々の動物モデルにおいて、ORL-1との相互作用を通じて排尿反射の阻害活性を生じる。求心性シグナル伝達の減少によると推定される、尿失禁を軽減する手段として、ノシセプチン及びノシセプチンのペプチド類似体の膀胱への直接投与が検討されている。しかしながら、経口投与が可能なORL-1受容体の非ペプチド性低分子モジュレーターに基づく間質性膀胱炎/膀胱痛などの下部尿路障害の効果的な処置が、依然として必要とされている。
【0015】
本発明者らは、意外にも、治療有効量の式(I):
【化4】
の化合物またはその薬学的に許容される塩の投与を通じて間質性膀胱炎/膀胱痛を緩和することができることを見出した。
【0016】
ある特定の実施形態は、以下に示す構造:
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を有する単一エナンチオマー(すなわち、式(I’)の化合物)としての式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、式(I’)の化合物の薬学的に許容される塩は、式(I’)の化合物のパラ-トルエンスルホン酸塩(すなわち、トシレート塩)(式(IA)の化合物と称される)であり、その構造は以下のように示される:
【化6】
【0017】
式(I)、(I’)、及び(IA)の化合物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,476,221号に記載されているように調製される。以下に言及されるように、本開示の化合物には、式(I)及び(I’)の化合物、またはそれらの立体異性体、薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)、多形体、溶媒和物、もしくは水和物が含まれる。
【0018】
ある特定の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の投与により、内臓痛及び尿意切迫感を含むがこれらに限定されない間質性膀胱炎/膀胱痛に伴う症状も改善される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「の処置」、「処置すること」という用語、及び関連用語は、有効量の式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の投与による、状態またはその症状の緩和、低減、減速、または休止を含む。いくつかの実施形態では、処置することは、抑制すること、例えば、1)状態(例えば、間質性膀胱炎/膀胱痛)のエピソードの全体的頻度;及び/または2)その状態の症状(例えば、内臓痛)を減少させること、あるいは状態もしくはその症状の重症度;及び/または3)状態もしくはその症状の持続時間を低減させることを含む。
【0020】
2019年12月に、米国食品医薬品局(FDA)は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の処置に関する業界向けガイダンスを示した。FDAのガイダンスによれば、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の診断には、頻尿、尿意切迫感、または夜間多尿などの下部尿路症状(複数可)を伴う慢性膀胱痛または不快感が必要であり、悪性腫瘍、子宮内膜症、慢性前立腺炎、及び膀胱出口閉塞などの他の障害は除外されることが必要である。FDAガイダンスは更に、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に罹患している一部の患者が持続的な膀胱痛/不快感を経験し得ることを示している。他の患者は、排尿時に間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を経験するか、または膀胱が尿で充満されるにつれて排尿と排尿との間の灼熱感として経験する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「の予防」、「予防すること」という用語、及び関連用語は、有効量の式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の投与による、状態もしくはその症状の発症の回避、または状態もしくはその症状の発生率もしくは頻度の低下を含む。
【0022】
「有効量」という用語は、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)を投与することによる間質性膀胱炎/膀胱痛を処置または予防するための方法に関連して使用される場合、動物に投与され、治療効果をもたらす化合物の量を指す。
【0023】
式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、下部尿路の求心性神経/線維末端に発現されるORL-1受容体のモジュレーションを通じて有益な効果を発揮する。ORL-1受容体に関して本明細書で使用される「モジュレートする」、「モジュレートすること」という用語、及び関連用語は、(i)受容体を阻害もしくは活性化することにより、または(ii)受容体活性の正常な調節に直接的もしくは間接的に影響を及ぼすことにより、動物において薬力学的応答(例えば間質性膀胱炎/膀胱痛)を媒介することを意味する。受容体活性をモジュレートする化合物としては、アゴニスト、部分アゴニスト、バイアスアゴニスト、アンタゴニスト、混合アゴニスト/アンタゴニスト、混合部分アゴニスト/アンタゴニスト、及び受容体活性の調節に直接的または間接的に影響を及ぼす化合物が挙げられる。式(I)または(I’)の化合物、及びその薬学的に許容される塩は、部分アゴニストである。本明細書で使用される場合、受容体に結合し、かつアゴニストとして部分的にのみ有効な化合物が、「部分アゴニスト」と定義される。本開示の部分アゴニストは、完全アゴニストの投与に伴うことが多い副作用を併発することなく、所望の治療効果(例えば、間質性膀胱炎/膀胱痛の処置)を達成し得る。
【0024】
式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物の構成成分として投与され得る。投与経路としては、経口、膀胱内、皮内、筋肉内、腹腔内、非経口、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経粘膜、頬側、歯肉、舌下、眼内、脳内、膣内、経皮(例えば、パッチを介するもの)、直腸、吸入によるもの、または局所が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、投与経路としては、静脈内、膀胱内、経口、または吸入によるものが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、投与経路は、経口である。別の実施形態では、投与経路は、膀胱内である。別の実施形態では、投与経路は、静脈内である。別の実施形態では、投与経路は、吸入によるものである。更に別の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、制御放出系または徐放系で送達される。制御放出型または徐放型医薬組成物は、それらの非制御放出型または非徐放型対応物によって達成されるものよりも薬物療法を改善するという共通の目的を有し得る。例えば、制御放出型または徐放型医薬組成物は、それらの非制御放出型または非徐放型対応物と比較して、以下の利益:投与頻度の低減;効果の持続時間の増加;効果の程度の増加、例えば、作用部位(複数可)におけるCmaxの低下またはCaverageの増加によるもの;安全性/忍容性の改善;及び患者コンプライアンスの改善(投与頻度の低下、忍容性の向上)などのうちの1つ以上(但しこれらに限定されない)を達成し得る。
【0025】
一実施形態では、制御放出型または徐放型組成物は、間質性膀胱炎またはその症状を長期にわたり処置または予防するために、薬学的に許容される量の式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む。制御放出型または徐放型組成物の利点としては、薬物活性の延長、投与頻度の低減、及びコンプライアンスの上昇が挙げられる。式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の投与は、制御放出手段もしくは徐放手段、または当業者に公知の送達デバイスによるものであり得る。例としては、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、及び同第5,733,566号(これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。当業者に公知の他の多くの制御放出または徐放送達デバイス(例えば、Goodson,“Dental Applications,” in Medical Applications of Controlled Release,Vol.2,Applications and Evaluation,Langer and Wise,eds.,CRC Press,Chapter 6,pp.115-138(1984)(以下「Goodson」)を参照されたい)。Langer,Science 249:1527-1533(1990)による総説に論じられている他の制御放出系または徐放系が使用され得る。一実施形態では、ポンプが使用され得る(Langer,Science 249:1527-1533(1990);Sefton,“Implantable Pumps,” in CRC Crit.Rev.Biomed.Eng.14(3):201-240(1987);Buchwald et al.,“Long-term,Continuous Intravenous Heparin Administration by an Implantable Infusion Pump in Ambulatory Patients with Recurrent Venous Thrombosis,” Surgery 88:507-516(1980);及びSaudek et al.,“A Preliminary Trial of the Programmable Implantable Medication System for Insulin Delivery,” New Engl.J.Med.321:574-579(1989))。別の実施形態では、ポリマー材料が使用され得る(Goodson;Smolen et al.,“Drug Product Design and Performance,” Controlled Drug Bioavailability Vol.1,John Wiley and Sons,New York(1984);Langer et al.,“Chemical and Physical Structure of Polymers as Carriers for Controlled Release of Bioactive Agents:A Review,” J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.C23(1):61-126(1983);Levy et al.,“Inhibition of Calcification of Bioprosthetic Heart Valves by Local Controlled-Release Diphosphonate,” Science 228:190-192(1985);During et al.,“Controlled Release of Dopamine from a Polymeric Brain Implant: In Vivo Characterization,” Ann.Neurol.25:351-356(1989);及びHoward et al.,“Intracerebral drug delivery in rats with lesion-induced memory deficits,” J.Neurosurg.71:105-112(1989)を参照されたい)。
【0026】
好適な剤形を使用して、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透性系、多層コーティング、微粒子、多粒子、リポソーム、ミクロスフェア、またはそれらの組み合わせを使用して1つ以上の活性成分の制御放出または徐放をもたらし、所望の放出プロファイルを様々な割合で提供することができる。本明細書に記載されるものを含む、当業者に公知の好適な制御放出型または徐放型製剤は、本開示の活性成分との使用に容易に選択され得る。したがって、本開示は、制御放出または徐放に適合された経口投与に好適な単一単位剤形(限定されないが、錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤、及びカプレット剤など)を包含する。
【0027】
組成物は、動物(例えば、ヒト)に適切に投与するための形態を提供するために、好適な量の薬学的に許容される賦形剤を任意選択で(但し好ましくは)更に含み得る。かかる薬学的賦形剤は、希釈剤、懸濁剤、溶解剤、結合剤、崩壊剤、防腐剤、着色剤、滑沢剤などであり得る。薬学的賦形剤は、水または油(石油、動物、植物、もしくは合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む)などの液体であり得る。薬学的賦形剤は、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであり得る。加えて、助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤、及び着色剤が使用され得る。一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、動物に投与される場合に無菌である。水は、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が静脈内投与される場合に特に有用な賦形剤である。生理食塩水溶液ならびにデキストロース及びグリセロールの水溶液もまた、液体賦形剤(特に注射溶液用)として用いられ得る。好適な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなども含まれる。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。経口剤形を製剤化するために使用され得る薬学的に許容される担体及び賦形剤の具体例は、参照により本明細書に組み込まれるHandbook of Pharmaceutical Excipients,(Amer.Pharmaceutical Ass’n,Washington,DC,1986)に記載されている。好適な薬学的賦形剤の他の例は、参照により本明細書に組み込まれるRadebough et al.,“Preformulation,” pp.1447-1676 in Remington’s Pharmaceutical Sciences Vol.2(Gennaro,ed.,19th Ed.,Mack Publishing,Easton,PA,1995)により記載されている。
【0028】
一実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、日常的手順に従って、ヒトへの経口投与に適合した組成物として製剤化される。経口送達される式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、例えば、錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤、カプレット剤、トローチ剤、水性もしくは油性溶液、懸濁液、顆粒剤、微粒子、多粒子、散剤、エマルション、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であり得る。式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が経口錠剤中に組み込まれる場合、かかる錠剤は、圧縮型、粉薬錠剤、腸溶コーティング型、糖コーティング型、フィルムコーティング型、多重圧縮型、または多層型であり得る。固形経口剤形を作製するための技法及び組成物は、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(Lieberman et al.,eds.,2nd Ed.,Marcel Dekker,Inc.,1989 and 1990)に記載されている。錠剤(圧縮型及び成形型)、カプセル剤(硬質ゼラチン及び軟質ゼラチン)、ならびに丸剤を作製するための技法及び組成物はまた、King,“Tablets,Capsules,and Pills,”pp.1553-1593 in Remington’s Pharmaceutical Sciences(Osol,ed.,16th Ed.,Mack Publishing,Easton,PA,1980)により記載されている。
【0029】
液体経口剤形には、水性及び非水性溶液、エマルション、懸濁液、ならびに非発泡性顆粒剤から再構成された溶液及び/または懸濁液が含まれ、1つ以上の好適な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、着色剤、香味剤などが任意選択的に含有される。液体経口剤形を作製するための技法及び組成物は、Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems(Lieberman et al.,eds.,2nd Ed.,Marcel Dekker,Inc.,1996 and 1998)に記載されている。
【0030】
経口投与される式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩に、1つ以上の賦形剤、例えば、フルクトース、アスパルテーム、またはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、冬緑油、またはサクランボなどの香味剤;着色剤;及び保存剤を含めて、薬学的に口当たりのよい調製物を提供することができる。更に、錠剤または丸剤の形態の場合、組成物は、胃腸管での分解及び吸収を遅らせ、それにより長期間にわたり持続的作用をもたらすためにコーティングされ得る。浸透活性駆動化合物(osmotically active driving compound)を取り囲む選択的透過性膜もまた、経口投与組成物に好適である。これらの後者のプラットフォームでは、カプセル剤の周囲環境からの流体が駆動化合物によって吸収され、その化合物が膨張して、開口部を通じて薬剤または薬剤組成物を押し出す。これらの送達プラットフォームは、即時放出型製剤のスパイクプロファイル(spiked profile)とは対照的に、本質的にゼロ次の送達プロファイルを提供し得る。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの時間遅延材料も使用され得る。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、及び炭酸マグネシウムなどの標準的賦形剤を含み得る。一実施形態では、賦形剤は、医薬品グレードのものである。
【0031】
組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤(例えば、口腔内崩壊錠(ODT)もしくは舌下錠)、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、粉剤、徐放型製剤、坐剤、エマルション、エアロゾル剤、スプレー剤、懸濁液、微粒子、多粒子、急速溶解フィルムの形態、または経口もしくは粘膜投与用の他の形態、または使用に好適な他の任意の形態をとり得る。一実施形態では、組成物は、ODTの形態である(例えば、米国特許第7,749,533号及び同第9,241,910号を参照されたい)。別の実施形態では、組成物は、舌下錠の形態である(例えば、米国特許第6,572,891号及び同第9,308,175号を参照されたい)。別の実施形態では、組成物は、カプセル剤の形態である(例えば、米国特許第5,698,155号を参照されたい)。別の実施形態では、組成物は、頬側投与に好適な形態、例えば、従来の方法で製剤化された錠剤、トローチ剤、ゲル剤、パッチ、またはフィルムとしての形態である(例えば、Pather et al.,“Current status and the future of buccal drug delivery systems,”Expert Opin.Drug Deliv.5(5):531-542(2008)を参照されたい)。別の実施形態では、組成物は、Padula et al.,“In Vitro Evaluation of Mucoadhesive Films for Gingival Administration of Lidocaine,”AAPS PharmSciTech 14(4):1279-1283(2013)により開示されているように、歯肉投与に好適な形態、例えば、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリカルボフィル、ヒドロキシプロピルセルロース、またはEudragit S-100を含むポリマーフィルムとしての形態である。別の実施形態では、組成物は、眼内投与に好適な形態である。
【0032】
一実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、非経口投与用に製剤化される。式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、非経口的に注射される場合、例えば、等張滅菌溶液の形態であり得る。一実施形態では、非経口投与には、式(IA)の化合物が含まれる。
【0033】
式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)が非経口投与される場合、非経口投与用の製剤は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、エマルションの形態であり得る。かかる製剤は、1つ以上の安定化剤、懸濁剤、分散剤、緩衝液などの製薬上必要な添加剤を更に含み得る。式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容されるもの(例えば、式(IA)の化合物)はまた、注射用製剤として再構成するための粉末の形態であり得る。
【0034】
別の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容されるもの(例えば、式(IA)の化合物)は、静脈内投与用に製剤化され得る。ある特定の実施形態では、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張水性緩衝液を含む。必要な場合、組成物は、可溶化剤も含み得る。静脈内投与用の式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)は、任意選択的に、注射部位における疼痛を和らげるために、ベンゾカインまたはプリロカインなどの局所麻酔薬を含み得る。概して、成分は、単位剤形で、例えば、活性剤の量を示すアンプルもしくはサシェなどの気密封止容器内に、乾燥した凍結乾燥粉末もしくは水不含濃縮物として、別々にまたは一緒に混合されるかのいずれかで供給される。式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)は、点滴により投与される場合、例えば、滅菌の医薬品グレードの水または生理食塩水を含有する点滴ボトルで分注され得る。式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)が注射により投与される場合、投与前に成分が混合され得るように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0035】
式(I)または(I’)の化合物は、大部分が変化せずに主に尿から排泄される。実施例2を参照されたい。したがって、式(I)または(I’)の化合物は、投与後に膀胱内で高濃度を示す。例えば、経口投与される場合、尿中に排泄される式(I)または(I’)の化合物は、投与される用量に応じて、約30%~約95%の範囲である。更に、尿中の式(I)または(I’)の化合物の濃度は、ある特定の用量での経口投与の最大24時間後まで維持される。特定の実施形態では、経口投与の12時間後の式(I)または(I’)の化合物の濃度は、100nM超である。他の実施形態では、経口投与の12時間後の式(I)または(I’)の化合物の濃度は、500nM超である。他の実施形態では、経口投与の12時間後の式(I)または(I’)の化合物の濃度は、1,000nM超である。他の実施形態では、経口投与の12時間後の式(I)または(I’)の化合物の濃度は、5,000nM超である。他の実施形態では、経口投与の12時間後の式(I)または(I’)の化合物の濃度は、10,000nM超である。特定の実施形態では、経口投与の12時間後の式(I)または(I’)の化合物の濃度は、約100nM~約30,000nMの範囲であり得る。他の実施形態では、経口投与の12時間後の式(I)または(I’)の化合物の濃度は、約500nM~約15,000nMの範囲であり得る。他の実施形態では、経口投与の12時間後の式(I)または(I’)の化合物の濃度は、約1,000nM~約10,000nMの範囲であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、式(I)または(I’)の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与される。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、式(I)の化合物から調製され得る任意の薬学的に許容される塩である。例示的な塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルコロン酸塩(glucoronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)塩)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸塩、硫酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、またはフマル酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸塩または硫酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、硫酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、カリウム塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、フマル酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、パラ-トルエンスルホン酸塩(「トシレート塩」としても知られる)である。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、コリン塩である。
【0037】
別の実施形態では、薬学的に許容されるパラ-トルエンスルホン酸塩は、1当量の式(I)または(I’)の化合物及び約1.0当量のトルエンスルホン酸、例えば、一実施形態では約0.8~約1.2当量のパラ-トルエンスルホン酸、別の実施形態では約0.9~約1.1当量のパラ-トルエンスルホン酸、別の実施形態では約0.93~約1.07当量のパラ-トルエンスルホン酸、別の実施形態では約0.95~約1.05当量のパラ-トルエンスルホン酸、別の実施形態では約0.98~約1.02当量のパラ-トルエンスルホン酸、または別の実施形態では約0.99当量~約1.01当量のパラ-トルエンスルホン酸を含有する。別の実施形態では、薬学的に許容されるパラ-トルエンスルホン酸塩は、約1当量の式(I)または(I’)の化合物及び約1当量のパラ-トルエンスルホン酸を含有する(すなわち、モノトシレート塩である)。別の実施形態では、薬学的に許容されるパラ-トルエンスルホン酸塩は、1当量の式(I)または(I’)の化合物を含有する。別の実施形態では、薬学的に許容されるパラ-トルエンスルホン酸塩は、1当量の式(I’)の化合物、すなわち、式(I’)の化合物のモノトシレート塩(すなわち、以下の式(IA):
【化7】
の化合物)を含有する。
【0038】
本明細書で提供される本開示の方法は、式(I)、(I’)の化合物またはその薬学的に許容される塩の任意の溶媒和物の使用も包含する。「溶媒和物」は、当該技術分野で一般に知られており、本明細書では、式(I)、(I’)の化合物またはその薬学的に許容される塩の組み合わせ、物理的会合、及び/または溶媒和であると見なされる。この物理的会合には、水素結合を含む、様々な程度のイオン結合及び共有結合が含まれ得る。溶媒和物が化学量論型である場合、式(I)、(I’)の化合物またはその薬学的に許容される塩に対する溶媒分子の比は一定である。式(I)、(I’)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される溶媒、例えば、水、メタノール、エタノールなどとの溶媒和形態として存在し得る。
【0039】
本明細書で提供される本開示の方法は、式(I)、(I’)の化合物またはその薬学的に許容される塩の任意の結晶形態(または多形体)の使用も包含する。本明細書で使用される「結晶性」という用語及び関連用語は、物質、構成成分、または生成物を説明するために使用される場合、物質、構成成分、または生成物が、X線回折、顕微鏡法、偏光顕微鏡法、または当業者に公知である他の公知の分析手順で決定した場合に実質的に結晶性であることを意味する。本明細書で使用される場合、「多形」という用語は、多様な分子立体構造及び分子充填に由来する、結晶中に異なる単位格子構造を有する化合物の結晶構造を指す。単一化合物の多形は、互いに1つ以上の異なる化学的特性、物理的特性、機械的特性、電気的特性、熱力学的特性、及び/または生物学的特性を有し得る。多形によって示される物理的特性の相違は、保管安定性、圧縮性、密度(組成物及び生成物の製造において重要)、溶解速度(バイオアベイラビリティを決定する際に重要な因子)、溶解度、融点、化学的安定性、物理的安定性、粉末流動性、吸水性、圧密性、及び粒子形態などの薬学的パラメータに影響を及ぼし得る。安定性の相違は、化学的反応性の変化(例えば、ある多形から構成される場合に別の多形から構成される場合よりも剤形が迅速に変色するような差次的酸化(differential oxidation))、もしくは機械的変化(例えば、動力学的に有利な多形が熱力学的により安定した多形に変換するにつれ、結晶が保管時に変化する)、またはその両方(例えば、ある多形が他の多形よりも吸湿性が高い)に起因し得る。
【0040】
ある特定の実施形態では、式(IA)の化合物は、WO2020/157691(その内容は参照により組み込まれる)に記載されているように、形態A、形態B、形態C、形態D、または形態Eと称される結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、式(IA)の化合物は、結晶形態Aのものである。他の実施形態では、式(IA)の化合物は、結晶形態Bのものである。他の実施形態では、式(IA)の化合物は、結晶形態Cのものである。他の実施形態では、式(IA)の化合物は、結晶形態Dのものである。他の実施形態では、式(IA)の化合物は、結晶形態Eのものである。
【0041】
本明細書で使用される場合、投与される「用量」、「投与量」、及び関連用語の重量による量は、式(I)または(I’)の化合物の遊離酸及び遊離塩基形態、すなわち非塩形態を指す。例えば、非塩形態の式(I)または(I’)の化合物の用量10.0mgは、10.0mgが実際に投与されることを意味する。但し、例として、10.0mgの用量の、例えば式(1)の化合物の一塩酸塩または1:1モル塩酸塩は、10.84mgの前記化合物が実際に投与されることを意味し、この10.84mgは、10.00mgの非塩形態の式(I)または(I’)の化合物(0.0229ミリモル)及び0.84mgの塩酸(0.0229ミリモル)をもたらす。同様に、10.00mgの用量の、例えば式(IA)の化合物のモノトシレート塩(1:1モルのパラ-トルエンスルホン酸塩)は、13.93mgの前記化合物が実際に投与されることを意味し、この13.93mgは、10.00mgの式(I’)の化合物の非塩形態(0.0229ミリモル)及び3.93mgのパラ-トルエンスルホン酸(0.0229ミリモル)をもたらす。
【0042】
ヒト対象における状態または症状を処置または予防するための方法に関して、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の好適な有効投与量は、一実施形態では、1日あたりヒト対象の体重の約0.00002mg/kg~約10mg/kg、別の実施形態では約0.00025mg/kg/日~約5mg/kg/日、別の実施形態では約1.5mg/kg/日~約3mg/kg/日、別の実施形態では約0.2mg/kg/日~約2mg/kg/日、別の実施形態では約2.5mg/kg/日~約10.0mg/kg/日、及び別の実施形態では約3.0mg/kg/日~約10mg/kg/日である。ある特定の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)の好適な有効投与量は、約0.00002mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約10mg/kg/日である。別の実施形態では、有効投与量は、約1.0mg/kg/日以下である。これらの投与量に関して、「日」という用語は、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の投与時から始まる24時間サイクルを意味することを理解されたい。一般に、動物とヒトとの間で好適な用量を外挿することが可能であると理解される(Nair et al.,J.Basic Clin.Pharm.,March-May 2016;7(2):27-31)。
【0043】
式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)が経口投与される実施形態では、単回用量としての化合物の好適な有効投与量は、約0.001mg~約300mg、約0.005mg~約250mg、約0.01mg~約200mg、約0.05mg~約150mg、約0.075mg~約50mg、約0.10mg~約10mgである。一実施形態では、本開示の化合物は、非制御放出型製剤または非徐放型製剤の単回用量として投与される。別の実施形態では、本開示の化合物の有効投与量は、非制御放出型製剤または非徐放型製剤の複数回用量として投与される。
【0044】
ある特定の実施形態では、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.100mg、約0.120mg、約0.125mg、約0.150mg、約0.175mg、約0.200mg、約0.225mg、約0.250mg、約0.275mg、約0.30mg、約0.35mg、約0.40mg、約0.45mg、約0.50mg、約0.55mg、約0.60mg、約0.65mg、約0.70mg、約0.75mg、約0.80mg、約0.85mg、約0.90mg、約0.95mg、約1.00mg、約1.25mg、約1.50mg、約1.75mg、約2.00mg、約2.25mg、約2.50mg、約2.75mg、約3.00mg、約3.25mg、約3.50mg、約3.75mg、約4.0mg、約4.5mg、約5.0mg、約5.5mg、約6.0mg、約6.5mg、約7.0mg、約7.5mg、約8.0mg、約9.0mg、または約10mgの式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)が、それを必要とするヒト対象に経口投与される。当業者に公知のように、ヒト動物の場合、1日1回用量(mg)は、mg用量を当該技術分野において認識されているヒト動物の平均質量である60kgで除することにより、mg/kg/日の投与量に変換することができる。例えば、ヒトの1日1回用量12mgは、約0.20mg/kg/日の投与量へとそのように変換される。
【0045】
ある特定の実施形態では、治療有効量の本開示の化合物を含む制御放出型組成物は、単回用量または複数回用量として投与される。制御放出型組成物は、非制御放出型製剤または非徐放型製剤に使用される式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、式(IA)の化合物)の最大100倍の投与量を含有し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、1日1回投与され得る。いくつかのかかる実施形態では、式(I)の化合物は、毎夜投与される。実施例2に示されるように、式(I)、(I’)、または(IA)の化合物の毎日投与により、化合物のin vitro活性を十分に上回る尿中濃度となる。
【0047】
間質性膀胱炎に伴う状態を処置するという有益な効果に加えて、式(I)、(I’)、または(IA)の化合物はまた、十分な用量レベルで投与された場合に、眠気を誘発し、睡眠障害を処置することができる。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2020/0345726号を参照されたい。間質性膀胱炎に伴う症状に罹患している患者は、睡眠の質の不良、不眠症、及び/または夜間多尿を患っていることが多い。いくつかの実施形態では、睡眠障害に罹患している患者は、50歳以上の女性である。他の実施形態では、睡眠障害に罹患している患者は、50歳以上の男性である。式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の毎夜投与により、睡眠の質と間質性膀胱炎に伴う症状との両方が改善される。特定の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、毎夜睡眠前に患者によって投与される。例えば、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、睡眠の約1分~約3時間前に投与され得る。いくつかの実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、睡眠の約5分~約60分前に投与され得る。他の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、睡眠の約10分~約30分前に投与され得る。
【0048】
一実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約60分前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約45分前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約30分前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約20分前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約20分前またはそれより前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約15分前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約15分前またはそれより前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約10分前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約10分前またはそれより前に投与される。別の実施形態では、有効用量または投与量は、ヒトの習慣的就寝時間の中央値の約5分前に投与される。
【0049】
他の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、1日に複数回投与され得る。例えば、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、1日2回または1日3回投与され得る。化合物が1日に複数回投与される実施形態では、各用量は、同量または異なる量で投与され得る。いくつかの実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の用量は、その日のより早い時点で提供された他の用量よりも多い用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、1日2回、約12時間ごとに投与される。他の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、1日3回、約8時間ごとに投与される。
【0050】
特定の実施形態では、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、1日2回投与され、その際、第2の用量(すなわち、第2の治療有効量)は、上述したように就寝時間前に投与される。いくつかのかかる実施形態では、第2の用量は、第1の用量(すなわち、第1の治療有効量)よりも多い量で投与される。例えば、第2の用量は、第1の用量よりも約1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、または1000倍多い量で投与され得る。いくつかの実施形態では、第2の用量は、第1の用量よりも約1.5倍~約10倍多い量で投与され得る。他の実施形態では、第2の用量は、第1の用量よりも約1.5倍~約100倍多い量で投与され得る。他の実施形態では、第2の用量は、第1の用量よりも約1.5倍~約1000倍多い量で投与され得る。他の実施形態では、第2の用量は、第1の用量よりも約3倍~約100倍多い量で投与され得る。他の実施形態では、第2の用量は、第1の用量よりも約3倍~約1000倍多い量で投与され得る。他の実施形態では、第2の用量は、第1の用量よりも約5倍~約100倍多い量で投与され得る。他の実施形態では、第2の用量は、第1の用量よりも約5倍~約1000倍多い量で投与され得る。かかる投与スケジュールにより、ヒト対象において、第1の用量が眠気を残さずに間質性膀胱炎及び間質性膀胱炎に伴う症状を処置するのに有効であるのに対して、第2の用量が間質性膀胱炎及び間質性膀胱炎に伴う症状を処置し、かつ眠気を生じさせるかまたは睡眠を誘発するのに有効であることが確実になる。ある特定の実施形態では、第1の用量及び第2の用量の両方が、(同じまたは異なる)非制御放出型製剤または非徐放型製剤を通じて投与される。他の実施形態では、第1の用量は、制御放出型製剤または非徐放型製剤を通じて投与され、第2の用量は、非制御放出型製剤または非徐放型製剤を通じて投与される。
【0051】
別の実施形態では、本開示の化合物を含む組成物は、間質性膀胱炎/膀胱痛及び特定の睡眠障害の両方に罹患しているヒト対象の処置における医薬として有用である。かかる睡眠障害としては、不眠状態、過眠状態、概日リズム睡眠-覚醒障害、アルコール誘発性睡眠障害、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の睡眠障害としては、アルコール誘発性睡眠障害(例えば、不眠型アルコール誘発性睡眠障害、日中の眠気型アルコール誘発性睡眠障害、睡眠時随伴症型アルコール誘発性睡眠障害、及び混合型アルコール誘発性睡眠障害);アルコール使用障害における不眠症、アルコール中止に伴う睡眠の乱れ(例えば、アルコール中止に伴う不眠症)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0052】
間質性膀胱炎/膀胱痛の処置または予防を必要とする患者においてそれを処置または予防するための方法は、式(I)もしくは(I’)の化合物、またはその薬学的に許容される塩と、第2の治療剤を患者に同時投与することを更に含み得る。一実施形態では、第2の治療剤もまた、その所望の治療効果を達成するのに有効な量で投与される。一実施形態では、第2の治療剤は、抗ムスカリン剤である。いくつかのかかる実施形態では、抗ムスカリン剤は、オキシブチニンである。他のかかる実施形態では、抗ムスカリン剤は、トルテロジンである。他のかかる実施形態では、抗ムスカリン剤は、トロスピウムである。他のかかる実施形態では、抗ムスカリン剤は、ソリフェナシンである。他のかかる実施形態では、抗ムスカリン剤は、ダリフェナシンである。他のかかる実施形態では、抗ムスカリン剤は、フラボキサートである。
【実施例
【0053】
実施例1:間質性膀胱炎/膀胱痛症候群のシクロホスファミド誘発性内臓痛モード1
シクロホスファミド(CYP)誘発性炎症性内臓痛は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の十分に確立された実験モデルである。CYPの腹腔内(i.p.)注射により、排尿頻度の増加、排尿あたりの尿量の減少、及び内臓痛などのヒトにおける間質性膀胱炎/膀胱痛症候群の特徴の大半を再現することが可能であった(Takagi-Matsumoto et al.,2004;Boucher et al.,2000;Smaldone et al.,2009)。したがって、CYP誘発性膀胱炎モデルは、候補化合物の評価用にラットで広く使用されている(Juszczak et al.,2007)。CYPは、リンパ腫及び白血病などの悪性腫瘍の処置に広く使用されている抗腫瘍剤である。腹膜に投与されたCYPは、腎臓で毒性代謝物であるアクロレインに変換され、アクロレインは膀胱内に蓄積し、尿路を損傷させる(Cox,1979)。
【0054】
雌Sprague-Dawleyラットにおいて、CYPの単回のi.p.注射により膀胱の炎症及び内臓痛に伴う行動が誘発され、これがCYP注射の直後にピークに達し、最大24時間持続することが示された(Lluel et al.,2010及びAuge et al.,2011 and 2013)。CYP誘発性内臓痛は、機械的関連痛覚過敏(疼痛に対する感受性の増加)及びアロディニア(通常は無害である刺激により引き起こされる侵害受容反応)の両方を特徴とする(Auge et al.,2013)。
【0055】
本試験の目的は、雌Sprague-DawleyラットのCYP誘発性急性膀胱炎モデルにおいて式(IA)の化合物の30mg/kgでの単回経口投与が内臓痛に及ぼす効果を評価することであった。イブプロフェン(300mg/kg、p.o.)を陽性物質として使用した。内臓痛をvon Frey試験により盲検化して評価した。
【0056】
1.1 試験デザイン
1.1.1 プロトコルデザイン
膀胱炎誘発の前日である1日目(「D1」)に、新たな環境によるストレスのレベルを減少させるために、ラットを個々のPlexiglasボックス(最小30分間)とvon Freyフィラメントの適用とに順応させた。順応は、疼痛評価と厳密に同じ実験条件下で実施した(詳細については§2.4.1を参照されたい)。
・0日目(「D0」)に、まず、侵害受容行動の基礎値を得るためにvon Frey試験を実施した。
・D0の膀胱炎誘発の直前に、§2.4.2に記載したように薬理学的処置を実施した。
・D0に、CYP注射により急性膀胱炎を誘発した。対照ラットには生理食塩水を投与した(詳細については§2.4.3を参照されたい)(D0、T=0)。
【0057】
D0及びD1に、試験物質及び陽性物質がCYP誘発性内臓痛に及ぼす効果を分析するために、膀胱炎誘発の2時間後、3時間後、4時間後、及び24時間後にvon Frey試験を実施した(D0、T=+2時間、T=+3時間、T=+4時間、及びD1、T=+24時間)。最後のvon Frey試験の直後にラットを安楽死させた。
【数1】
【0058】
1.1.2 実験群
4つの実験群を以下の表に記載したように含めた。
【表1】
【0059】
1.2 動物
全ての実験は、欧州共同体評議会指令(European Community Council Directive)2010/63/UE及び仏国農業・農業食品・林業省省令(French Ministry for Agriculture,Agrifood and Forestry Decree)2013-118に従って行った。実験プロトコルは、科学目的に使用される動物の保護に関する倫理委員会(CEEA-122)により審査され、仏国国民教育・高等教育・研究省によりAPAFIS#21140-2019062010159601 v2の番号で承認された。
【0060】
雌Sprague-Dawleyラットを、実験開始前に少なくとも3日間、実験室条件に順応させた。動物を、木材チップ(Souralit,Girona,Spain)床敷のポリスルホン型Sealsafeプラス1291Hケージ(Tecniplast,Lyon,France)内に3匹ずつの群で収容し、食物(Safe社のRodent Maintenance Diet A04/10)及び水(0.2μm濾過水)を自由に摂取させた。種に適切な環境エンリッチメント(Aspen brick,Plexx,Uden,Netherlands)をケージに加えた。動物飼育室を、22±2℃で制御した周囲温度及び55±10%で維持した相対湿度で、午前7:00~午後7:00の人工照明(12時間)下に維持した。
【0061】
1.3 物質
1.3.1 検査物質及びビヒクル
1.3.1.1 製剤の調製
式(IA)の化合物の製剤を、室温にて最終濃度6mg/mL(遊離塩基形態に基づく)で調製した。式(IA)の化合物の適切な質量を秤量し、ビヒクルを磁製乳鉢にゆっくりと加えた。懸濁液が得られるまで、粉末を乳棒ですりつぶした。懸濁液のアリコートを作製し(1アリコート/投与)、+4℃で最大3日間維持した。各実験日に、投与前に懸濁液を少なくとも30分間室温に平衡させた。
【0062】
1.3.1.2 ビヒクル
ビヒクルは、粘度400cPの0.5%メチルセルロース(MC)であった。これを注射用水(WFI)中で調製し、4℃で1週間維持した。MC(バッチ番号SLBR8963V)は、Sigma-Aldrich(Saint-Quentin Fallavier,France)から購入した。
【0063】
1.3.2 陽性物質
イブプロフェンを、各投与日に最終濃度60mg/mL(遊離塩基形態)で新たに調製した。適切な質量のイブプロフェンを秤量し、室温でビヒクルに溶解させた。この溶液を15~30秒間ボルテックスにかけ、次いで1分間超音波処理し、次いで更に15~30秒間ボルテックスにかけた。イブプロフェンはSigma-Aldrichから購入した(バッチ番号BCBR4459V)。
【0064】
1.3.3 麻酔物質/安楽死物質
Dolethal(登録商標)を、Centravet(Lapalisse,France,バッチ番号9C2800C)を介してVetoquinolから購入した。
【0065】
1.3.4 更なる物質
CYPをSigma-Aldrichから購入した(バッチ番号MKCG5464)。生理食塩水をCentravetを介してB-Braunから購入した(バッチ番号18465450)。WFIをCooper(Melun,France;バッチ番号19MD16GA)から入手した。
【0066】
1.4 試験プロトコル
1.4.1 von Freyフィラメントを使用した内臓痛の評価
行動に基づく疼痛試験の変動を最小限に抑えるために、全ての動物の単一実験者試験を含む標準化条件を適用した。
【0067】
膀胱付近の下腹部に、5秒の刺激間隔で力が漸増する(1、2、4、6、8、10、15、及び26g)8つの較正済みvon Freyフィラメントのセットを適用することにより、内臓痛を盲検的に評価した。試験前に、各動物の機械的刺激のために設計した腹部領域を剃毛した。動物を、個々の透明Plexiglasボックス下の高く上げたワイヤメッシュ床上に置き、少なくとも30分間順応させてからvon Frey試験を開始した。次いで、フィラメントがわずかに屈曲するのに十分な強度で、フィラメントをメッシュ床を通じて1~2秒間適用した。各フィラメントを3回試験した。脱感作を回避するため、膀胱付近の下腹部域の異なる領域を刺激するように注意を払った。
【0068】
各動物及び各フィラメントについて、侵害受容行動を以下のようにスコア付けした。
【表2】
【0069】
1.4.2 薬理学的処置
実験前に、ブロック法を使用して動物を処置群に無作為に割り当てた。ブロック法は、同じブロック内で処置または対照あたり少なくとも1匹の動物を分配することからなる。
【0070】
式(IA)の化合物(30mg/kg)、イブプロフェン(300mg/kg)、及びビヒクルを、CYPまたは生理食塩水の注射の直前に1回経口(p.o.)投与した。各実験日の朝、ラットを秤量し、5mL/kgの容積で投与した。
【0071】
1.4.3 急性膀胱炎の誘発
急性膀胱炎を誘発するために、CYPを最終容積5mL/kg(生理食塩水中)の150mg/kgの用量で単回i.p.注射した。対照ラットには、CYPと同じ実験条件下で生理食塩水を投与した。
【0072】
1.5 実験室装置
異なる力のvon Freyフィラメントを使用して機械的刺激を実施した(参照:Bio-VF-M;BioSeb ID Tech,Vitrolles,France)。フィラメントを購入し、事前較正した。LS620C天秤(PRECISA,Dietikon,Switzerland)を使用して動物を秤量した。
【0073】
1.6 結果の表記及び分析
全ての生データを、データ分析前に2名で生データと比較した。結果を、平均値±平均の標準誤差(s.e.m.)として表す。
1.6.1 内臓痛
【表3】
【0074】
1.7 統計分析
統計分析及びグラフ化を、GraphPad Prism(登録商標)(GraphPad Software Inc.,La Jolla,CA,USA)を使用して実施した。p値<0.05を統計学的に有意として許容した。
【0075】
二元配置分析が適用された場合を除き、何らかの統計学的検定を行う前に、データを正規分布に関して検定し(シャピロ-ウィルク正規性検定)、それらの分散を評価した(それぞれ2つ以上の群に対するF検定またはバートレット検定)。結果として、適切な統計学的検定が適用された。
【0076】
1.7.1 基礎侵害受容反応の比較
全ての群が同様の基礎値を有していることを立証するために、全ての群間で群比較、続いて事後検定を行った。群間で潜在的差異が発生した箇所を分析するために、事後検定を行った。グラフを見やすくするために、p>0.05の場合、事後検定の結果を示さなかった。
- クラスカル-ウォリス検定を、ダンの多重比較を伴うノンパラメトリック分散分析(ANOVA)として使用した。
- 一元配置ANOVA検定を、Holm-Sidakの多重比較を伴うパラメトリックANOVAとして使用した。
- 反復測定(RM)二元配置ANOVAと、それに続くHolm Sidakの多重比較を侵害受容スコアに使用した。
【0077】
1.7.2 CYPの影響の時間経過分析
CYPの影響を分析するために、ビヒクル/生理食塩水群とビヒクル/CYP群との間で個々のペアワイズ比較を行った。
【0078】
Sidakの事後検定を伴う二元配置RM ANOVAを適用した。二元配置RM ANOVAは、両群間に全体的な差異があったか否かを示すのに対し、Sidakの事後検定は各時点での平均を比較するものである(+2、3、4、及び24時間)。
【0079】
1.7.3 イブプロフェンまたは式(IA)の化合物の効果の時間経過分析
CYP誘発性急性膀胱炎に対する物質の効果を分析するために、イブプロフェン/CYP群または式(IA)の化合物/CYP群と、ビヒクル/CYPと群の間で個々のペアワイズ比較を行った。
【0080】
Sidakの事後検定を伴う二元配置RM ANOVAを使用した。二元配置RM ANOVAは、両群間に全体的な差異があったか否かを示すのに対し、Sidakの事後検定は各時点での平均を比較するものである(+2、3、4、及び24時間)。
【0081】
個々のペアワイズ比較を行った場合、統計学的有意性を記号「」で示し、非有意性を「ns」で示したことに留意されたい。群比較の場合、統計学的非有意性を記号「NS」で示した。
【0082】
1.8 結果
1.8.1 基礎反応は種々の実験群内で同様であった
基礎(CYPまたは生理食塩水の注射前)の侵害受容反応は、全ての実験群間で同様であった。実際、CYPまたは生理食塩水の注射前には、全ての実験群間で侵害受容パラメータの有意差は一切認められなかった(p>0.05、図1A~D)。
【0083】
1.8.2 CYP(150mg/kg i.p.)は注射後最大24時間、内臓痛を誘発した
CYP誘発性内臓痛を確認するために、ビヒクル群内の生理食塩水注射ラットまたはCYP注射ラット間における侵害受容反応の比較を実施した。
【0084】
評価した全ての時点(すなわち、2時間~24時間)で、CYPが生理食塩水と比較して侵害受容閾値の有意な低下を誘発することが認められた(p<0.0001、図2)。時間経過曲線の形状から、CYPの影響の程度は2時間時点では比較的低いが、+3~+24時間は同程度で維持されることが示された。
【0085】
更に、CYPは、評価した全ての時点で生理食塩水と比較して侵害受容スコアの有意な増加を引き起こすことが認められた(p<0.0001、図3A~D)。
【0086】
CYPが侵害受容スコアに及ぼす影響と並行して、AUC 1~6gが全体的に有意に増加した(p<0.0001、図4A)。上記の結果と一致して、CYPの影響は、生理食塩水注射ラットと比較して、+2時間時点では比較的低い程度であり、+3時間~+24時間は同程度で維持された(+2時間及び+3時間~+24時間でそれぞれp<0.05及びp<0.0001、図4A)。最後に、ビヒクル群内では、CYP注射ラットは、全ての時点でAUC 6~26gの有意な増加を示した(p<0.0001、図4B)。
【0087】
1.8.3 イブプロフェン(300mg/kg、p.o.)はCYP誘発性内臓痛を軽減した
CYP注射後、イブプロフェン処置ラットでは、ビヒクルと比較して侵害受容閾値の有意な全体的増加が示された(p<0.0001、図5)。各時点での平均の事後統計分析により、イブプロフェン効果の軽微かつ漸進的な減少が経時的に認められたが、有意性のレベルは評価した全ての時点で最大であることが示された(p<0.0001、図5)。
【0088】
加えて、イブプロフェンは全観察期間にわたって侵害受容スコアを有意に減少させた(p<0.0001、図6A~D)。
【0089】
イブプロフェン処置により、対応するAUC 1~6gが全体的に減少した(p<0.0001、図7A)。平均を各時点で統計学的に比較した場合(すなわち、事後検定)、+2時間での有意性のレベルが、他の時点と比較して低かった(+2時間及び+3~+24時間のそれぞれでp<0.05対p<0.0001、図7A)ものの、値自体は同じ範囲にあった(+2時間及び+3時間でそれぞれ5.5±5.5及び6.6±4.4)ことが認められた。このことは、ビヒクル群内で+2時間時点で比較的低い程度であったCYPの影響から説明することができる(図4A)。
【0090】
図7Bにより、イブプロフェンがビヒクルと比較してAUC 6~26gの有意な全体的減少を引き起こしたことが示された(p<0.0001、図7B)。イブプロフェン効果は経時的に軽微かつ漸進的に減少したが、有意性は全ての時点で最高レベルに達した(p<0.0001、図7B)。
【0091】
1.8.4 式(IA)の化合物(30mg/kg、p.o.)はCYP誘発性内臓痛を軽減し、反転させた
CYP注射ラットにおいて、ビヒクルと比較した場合に侵害受容閾値に対する式(IA)の化合物の全体的阻害効果が認められた(p>0.01、図8)。特定時点での比較(すなわち、事後分析)により、+3時間時点でのみ統計学的有意レベルに達したことが示された(p>0.01、図8)。しかしながら、+2時間及び+3時間で式(IA)の化合物の値が同様の範囲にあった(+2時間及び+3時間でそれぞれ6.6±0.8対6.3±1.2)ことに注目すべきである。したがって、+2時間での有意性の欠如は、+2時間でのCYPの影響が最も低い程度であることから説明することが可能であった(§4.2を参照されたい)。+3時間以降、式(IA)の化合物の効果は経時的に漸減した(+4時間及び+24時間でそれぞれ4.8±0.8及び3.7±0.8)。
【0092】
ビヒクルと比較して、CYP注射後2時間から始まり24時間まで、式(IA)の化合物群において侵害受容スコアの有意な減少が認められた(p<0.01、図9)。最高レベルの有意性は、+3時間で得られた(p<0.001、図9B)。
【0093】
式(IA)の化合物での処置による侵害受容スコアの減少には、AUC 1~6gの全体的減少が伴った(p<0.001、図10A)。侵害受容性閾値の結果と一致して、+3時間で最も高いレベルの有意性に達した(p<0.01、図10A)が、値自体は+2時間及び+3時間で同様の範囲にあった(+2時間及び+3時間でそれぞれ19.8±6.9及び19.3±6.3)。3時間後、式(IA)の化合物の効率は経時的に軽微かつ漸進的に減少した(+4時間及び+24時間でそれぞれ34.1±7.9及び61.8±15.7)。
【0094】
最後に、式(IA)の化合物は、CYP誘発性AUC 6~26gの増加に対する有意な全体的阻害効果を引き起こした(p<0.0001、図10B)。全ての時点で統計学的有意性が達成され、レベルは早期の時点でより高かった(+2時間及び+3時間ではp<0.001、+4時間及び+24時間ではp,0.01、図10B)。
【0095】
実施例2:式(IA)の化合物に関する薬物動態試験
メチルセルロース懸濁液の形態の式(IA)の化合物の単回経口投与後48時間まで、尿中濃度をヒトで(合計9名)評価した。式(IA)の化合物の濃度を決定するための尿試料(排尿された全尿をプールした連続試料)を、以下の時間間隔:投与後0~8時間、8~16時間、16~24時間、24~32時間、及び40~48時間で個々の被験者について収集した。個々の被験者ならびに処置及び時間間隔別の式(IA)の化合物の尿中濃度の概要を、以下の表4に示す。
【表4】
【0096】
表4のデータは、式(IA)の化合物の特定の用量(0.2mg、0.6mg、2mg、及び10mg)の投与後の、特定の時間間隔での式(IA)の化合物の平均尿中濃度レベル及び標準偏差を示す。表4は、最低用量(0.2mg)の式(IA)の化合物であっても、Ki及びEC50により測定した式(IA)の化合物のin vitro活性よりも尿中濃度が数桁大きいことを示している。
【0097】
実施例3:間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を有する女性ヒト被験者における式(IA)の化合物の効果を調査するための第1b相盲検プラセボ対照クロスオーバー試験。
主要評価:
IC/BPSと診断された被験者における1日の平均膀胱痛/不快症状スコアの変化に対する式(IA)の化合物の効果を、プラセボと比較して評価すること。各被験者は、スクリーニング時に自身の最も煩わしい膀胱痛/不快症状を特定する必要がある。無作為化に適格であるためには、被験者は、この特定の症状を2週間の単一盲検プラセボ導入期間の間に十分な重症度(プロトコルに規定した強度または頻度)で経験していることを報告しなければならない。
【0098】
1日の平均膀胱痛/不快症状スコアを、11段階の数値評定尺度(NRS)に基づいて、電子日誌を使用して1日2回(朝及び夕方)評価する。11段階のNRSは、0=「膀胱痛/不快感なし」から10=「想像し得る最悪の疼痛/不快感」までの範囲である。被験者が最も煩わしいと見なす症状は、スクリーニング中(及び電子日誌中)にプロトコルに規定したIC/BPS関連症状評価手順において行われた、被験者と主任治験責任医師(primary investigator)との間の合意による決定に基づく。
【0099】
副次的評価:
IC/BPSと診断された被験者における24時間あたりの平均排尿数の変化に対する式(IA)の化合物の効果を、プラセボと比較して評価すること。治験実施施設への予定された各クリニック来院前の7日間にわたって、全ての排尿エピソード(放尿行為)を電子日誌に記録するように被験者に依頼する。被験者は、7日間全ての各排尿エピソードの時間、タイプ、及び尿意切迫感を記録し、更に2日間の週末にわたって尿量を記録する必要がある。
・エピソードのタイプは、放尿(トイレでの排尿)または失禁(不随意の尿放出)に分類される。
・エピソードの尿意切迫感(先延ばしが困難な突然の抗しがたい尿意の感覚)を、各エピソードに対して11段階のNRSで評定する。NRSは0=「尿意切迫感なし」から10=「想像し得る最悪の尿意切迫感」までの範囲である。
・エピソードの量は、記録された単一のエピソード中の排尿あたりの総尿量である。
【0100】
他の評価:
他の膀胱痛/不快感構成要素及び更なる下部尿路構成要素の変化に対する式(IA)の化合物の効果を評価すること。
【0101】
以下の測定は、自宅で被験者により電子日誌上で行われる。
- 1日2回(朝及び夕方)に得られる1日の平均及び1日で最大の(最悪な)膀胱痛/不快症状スコア。
- 治験実施施設への予定された各クリニック来院前の1週間(7日間)の間に発生した全ての排尿エピソード(放尿行為)。各エピソードの時間、タイプ、強度、及び量を、各日の24時間の期間にわたって収集する。
【0102】
クリニック来院時に以下の測定を実施する。
- 膀胱痛/間質性膀胱炎症状スコア(BPIC-SS)。BPIC-SSには、過去7日間にわたる膀胱痛に関する8つの質問が含まれる。質問1~5では、被験者が疼痛に起因して放尿した頻度、前回の放尿直後に放尿する必要があった頻度、疼痛を回避するために放尿した頻度、膀胱に圧力がかかった頻度、及び膀胱に疼痛があった頻度を評価し、0=「全くない」から4=「非常に多い」までの5段階尺度で評定する。質問6及び7では、日中及び夜間の頻尿に被験者がどの程度煩わされていたかを評価し、0=「全くない」から4=「非常に多い」までの5段階尺度で評定する。質問8では、0=「膀胱痛なし」から10=「起こり得る最悪の膀胱痛」までの範囲の11段階のNRSで評定した、過去7日間の被験者の最悪の膀胱痛を評価する。BPIC-SS合計スコアは、個々の質問スコアの和であり、0~38の範囲に及び、スコアが高いほど状況が悪いことを示しており、19以上のスコアは中等度/重度の疾患活動性を表し得る。合計スコア及び最悪の膀胱痛(Q8)を評価すべきである。
- O’Leary-Sant間質性膀胱炎症状スコア(ICSI)。ICSIには、尿意切迫感及び頻尿、夜間放尿、ならびに疼痛または灼熱感を測定する4つの質問が含まれる。各質問を、0=症状/問題なしから5=最悪の症状/問題までの範囲である6段階尺度を使用して評定する。合計スコアは0~20の範囲である。1週間の想起期間が使用される。
- O’Leary-Sant間質性膀胱炎問題スコア(ICPI)。ICPIには、症状の重症度(頻度、夜間多尿、尿意切迫感、不快感)及び症状が患者に与える問題の大きさを評価する4つの質問が含まれる。各質問を、0=「問題なし」から4=「大きな問題」までの範囲の5段階尺度を使用して評定する。合計スコアは0~16の範囲である。1週間の想起期間が使用される。
- 被験者の治療効果に対する自己評価(Subject Global Response Assessment)(SGRA)。SGRAは、ベースラインと比較した被験者の臨床状態の自己評価型の均衡の取れた指標である。これには、a)「試験開始時と比較して、間質性膀胱炎/膀胱痛の症状の全体を現在どのように評定するか」という1つの質問がある。7段階の評定尺度:1=「著しく悪化」、2=「中程度に悪化」、3=「わずかに悪化」、4=「変化なし」、5=「わずかに改善」、6=「中程度に改善」、または7=「著しく改善」を使用する。
- 被験者の治療効果に対する自己評価(SGRA)-煩わしい症状。SGRAは、最も煩わしい症状に関するベースラインと比較した被験者の臨床状態を評価するために使用され、2つの質問:a)「試験開始時と比較して、最も煩わしい膀胱痛/不快症状を現在どのように評定するか」及びb)「試験開始時と比較して、最も煩わしい下部尿路症状を現在どのように評定するか」が含まれる。両方の質問に対して、7段階の評定尺度:1=「著しく悪化」、2=「中程度に悪化」、3=「わずかに悪化」、4=「変化なし」、5=「わずかに改善」、6=「中程度に改善」、または7=「著しく改善」を使用する。
- 夜間多尿睡眠品質尺度(Nocturia Sleep Quality Scale)(NSQS)。NSQSは、夜間覚醒の回数、睡眠量、及び睡眠の質に関する仮定されたドメインを評価する6つの項目からなる。NSQSでは、患者が夜間多尿が睡眠に及ぼす影響を経時的に評価できるように、「就寝目的で就寝した時間から起床して1日が始まるまで」の短い想起期間を用いる。
【0103】
安全性評価:
有害事象(AE)、化学的結果、血液学的結果、尿検査(顕微鏡検査を含む)結果、心電図(ECG)、身体検査、バイタルサイン、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)、病院不安抑うつ尺度(HADS)、カロリンスカ眠気尺度(KSS)、及び数字符号置換検査(DSST)により測定した式(IA)の化合物の安全性及び忍容性を評価すること。
【0104】
診断及び主要組み入れ基準:
以下の組み入れ/除外基準を、導入相への参加の適格性を決定するために、スクリーニング来院1で使用する。二重盲検無作為化処置期間への登録基準も以下に示す。
組み入れ:
1.非妊娠(尿妊娠検査により確認)・非授乳中女性、18~64歳、単独で排尿可能。
2.スクリーニングの少なくとも6ヶ月前に被験者の医療記録に記録された、米国泌尿器科学会(AUA)ガイドラインに準拠した間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)の診断を有する。
3.医療提供者により評価された、以下の基準を満たす下部尿路症状を伴う膀胱痛/不快感をスクリーニング時に有する。
a.被験者は、他の下部尿路症状を6ヶ月間以上伴う膀胱痛/膀胱圧迫/膀胱不快感の愁訴を6ヶ月間以上有している
b.被験者の膀胱痛/間質性膀胱炎症状尺度(BPIC-SS)の合計スコアが19以上である
c.0(疼痛なし)~10(最悪の疼痛)の範囲の11段階の数値評定尺度を使用して被験者が評定した、過去1週間での被験者の最も煩わしい膀胱痛の1日平均が4以上かつ8以下である
d.被験者の排尿頻度が、先週、24時間あたり11回以上かつ30回以下の排尿と推定される。
4.膀胱鏡検査所見をスクリーニング時に有するか、またはスクリーニングの6ヶ月以内に得られ、その所見が膀胱痛不快感を生じさせる他の状態(例えば、膀胱の移行上皮癌、膀胱の子宮内膜症)を除外するものである。
5.過去30日間にIC/BPSに対する薬理学的処置を受けていない、または過去30日間に安定用量/レジメンで間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に対する経口薬理学的処置を受け、治験責任医師の判断で、試験全体を通して同じ安定用量/レジメンが維持されることが予想される。
6.a)定時排尿法及び行動変容療法、b)食事制限、c)ストレス低減のうちの1つ以上を含み得る保存的処置を含む過去または継続中の処置の既往にもかかわらず、ならびに以下の薬物:抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗ムスカリン剤、及び抗コリン剤、アルファアドレナリン遮断薬、鎮痛薬、及びペントサンポリサルフェートのいずれかによる経口療法にもかかわらず、試験組み入れ基準を満たす。
7.臨床施設の治験責任医師の見解により、病歴、身体検査、12誘導心電図、及び臨床検査プロファイルの結果に基づいて概して健康であると見なされる
8.英語を話し、読み、書き、理解することができ、同意書を理解することができ、かつ試験スタッフと効果的にコミュニケーションをとることができる。
9.書面によるインフォームドコンセントを自発的に提供し、毎日の膀胱日誌(疼痛及び排尿の評価)を含む全ての試験手順を完了する意思があり、かつ完了することができる
除外:
1.骨盤底痛を有する(11段階のNRS疼痛尺度で10点中5点を超えるスコア)
2.過去30日間に、任意の適応症に対する任意のオピオイド療法を受けている
3.過去30日以内に、IC/BPSの疼痛を管理するために週に70ミリグラムの経口モルヒネ当量を超えるオピオイドを使用したことがある、または試験中にこのレベルのオピオイド疼痛管理が必要であることが予想される。
4.過去30日以内に細菌性膀胱炎を含む尿路感染症(UTI)を有していたか、または過去6ヶ月間に3回以上のエピソードと定義される再発性UTIの既往を有する。備考:感染した被験者を30日間で再スクリーニングすることができる。
5.顕微鏡検査による血尿。備考:微小血尿を有する被験者は、試験医療モニターによる検討及び承認の後に登録を承認することができる。
6.膀胱機能に影響を及ぼす外科的措置(例えば、膀胱拡大術、膀胱切除術、膀胱除神経術(cystolysis)、神経切除術、下腹部神経叢焼灼術)を任意の時点で受けた、または過去9ヶ月以内にボツリヌス毒素の膀胱注射を受けた。
7.過去30日以内に膀胱内療法または膀胱水圧拡張術(液体または薬物送達デバイス、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、リドカイン、ステロイド、ヘパリン、コンドロイチン、及び任意の組み合わせまたは追加の製剤を含む注入)を受けた。
8.過去6ヶ月以内に、仙骨部及び/または陰部神経のニューロモジュレーションデバイス(例えば、Interstim)を使用した(6ヶ月より前にデバイスを開始し、過去3ヶ月にわたり被験者が安定した状況にある場合は除外されない)。
9.過去90日以内に経皮的脛骨神経刺激(PTNS)処置を受けた
10.過去5年以内に、非侵襲的皮膚癌を除く併発悪性腫瘍またはがんの既往がある(備考:がんの既往を有する患者が、治療を受け、少なくとも5年間無疾患であると見なされた場合は適格である)。
11.任意の時点で膀胱腫瘍(良性または悪性)を有していた。
12.活動性性器ヘルペスまたは膣炎を有する
13.尿道憩室を有する
14.シクロホスファミド膀胱炎もしくは化学膀胱炎、もしくは結核を有していたか、または骨盤照射を受けた
15.コントロール不良の糖尿病を有する
16.現在妊娠中もしくは授乳中であるか、または試験の経過中に妊娠する計画がある
17.Child-Pugh分類BまたはCと定義される中等度から重度の肝障害を有する。
18.他の医学的状態(例えば、心臓、呼吸器、胃腸管、腎臓、基底細胞癌以外の悪性腫瘍)、神経学的状態、または精神医学的状態の任意の既往及び/または現在のエビデンスを有しており、治験責任医師の見解により、それらが被験者の安全性に影響を及ぼす、または試験評価に干渉する可能性がある。
19.病院不安抑うつ尺度(HADS)の11以上のスコアに基づく臨床的に重大な抑うつ、過去1年間における実際の企図及び方法もしくは計画を伴う自殺念慮(コロンビア自殺重症度評価尺度[C-SSRS]の項目4もしくは5に「はい」と回答)、過去5年間の自殺行動のこれまでの既往(C-SSRSの自殺行動のいずれかの項目に「はい」と回答)、または重篤なもしくは再発性自殺行動の生涯の任意の既往を有する。非自殺的な自傷行動は、臨床施設の治験責任医師の判断によって示されない限り、リスク評価の誘因ではない
20.薬物の吸収、分布、代謝、または排泄に干渉する可能性のある既往または何らかの現在の状態(体重減少に対する何らかの外科的介入を含む)を有する。
21.スクリーニング時に、物質使用障害を有するか、あるいは違法薬物(テトラヒドロカンナビノール[THC]を含む)、非処方規制物質(オピオイドもしくは非オピオイド)、またはアルコールのUDTが陽性であるか、あるいは何らかの理由でオピオイドを過剰摂取したことがある。
22.20kg/m未満または35kg/m超のボディマス指数を有する
23.血液尿素窒素及びクレアチニン値の異常ならびに60mL/分/1.73m未満の推算糸球体濾過量(eGFR)によりスクリーニングの際に証明される、腎機能異常を有する。
24.スクリーニング時に、基準範囲の上限の3倍以上の血清グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ/アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼもしくは血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ、または2mg/dL超の血清クレアチニンを含む、臨床化学、血液学、または尿検査における臨床的に重大な異常を有する。
25.反復ECGで確認されたコントロール不良の高血圧(収縮期140mmHg超/拡張期90mmHg超)もしくは450msec超のQTcF(男性)及び470msec超のQTcF(女性)、または臨床的に重大なECG異常を含む、異常な心臓状態を有する。
26.300mg/日以上の過剰なカフェイン摂取(例えば、概算で6オンスカップのカフェイン含有コーヒー3杯、または12オンスのカフェイン含有ソーダ水3杯、または8オンスのカフェイン含有茶飲料3杯)を有する。
27.本試験で分配された試験薬の初回用量の前の30日間(または治験薬処置の5半減期のいずれか長い方)に臨床薬試験で投与された。
28.式(IA)の化合物に既に曝露されていた。
29.試験中に外科手術を予定している。
【0105】
無作為化基準(二重盲検相):
被験者は、毎日の膀胱日誌の記入後に、二重盲検無作為処置相への無作為化について以下の基準を満たさなければならない。
a)1日の平均膀胱痛スコアが、導入相のうちの少なくとも9日間で5以上である
b)排尿エピソードの平均が、少なくとも3日間の各24時間の期間において10以上かつ30未満である
c)膀胱痛/間質性膀胱炎症状尺度(BPIC-SS)のスコアが19以上である
d)新たに行われるIC/BPS療法が安定用量/レジームであり、試験中にそれが維持されることが予想された
e)治験責任医師の指示に従って、被験者が適切に日誌を記入した。
【0106】
試験デザイン:
IC/BPSを有する女性被験者において式(IA)の化合物の1mg/日の経口投与の効果をプラセボと比較して評価する、第1b相盲検プラセボ対照クロスオーバー試験。
【0107】
本試験は、2つの相、すなわち、スクリーニング期間(最大4週間)及び単一盲検プラセボ導入期間(2週間)からなる前無作為化相、ならびに二重盲検処置期間(9週間)及び追跡調査期間(最大1週間)からなる無作為化処置相からなる。
【表5】
【0108】
スクリーニング/ウォッシュアウト期間(-42~-15日目):各被験者からインフォームドコンセントを得た後で、被験者を本試験で実施されるあらゆる試験手順に供する。スクリーニング来院時に試験適格基準の評価を開始し、これには病歴、身体検査、バイタルサイン、臨床検査結果、尿培養、妊娠検査、及び薬物スクリーニングが含まれる。禁止薬(付録A)のウォッシュアウトが必要である場合、このウォッシュアウトは、スクリーニングの間(-42日目~-15日目)に完了すべきである。被験者は、スクリーニングの少なくとも6ヶ月前に被験者の医療記録に記録された、米国泌尿器科学会(AUA)ガイドラインに準拠した間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)の診断を有していなければならない。過去6ヶ月以内に得られない場合、他の状態を除外しかつハンナ病変の有無を記録するために、被験者はスクリーニング時に膀胱鏡検査を受けなければならない。被験者は、過去30日間にIC/BPSに対する薬理学的処置を受けていないか、または過去30日間に安定用量/レジメンでIC/BPSに対する経口薬理学的処置を受け、治験責任医師の判断で、試験全体を通して同じ安定用量/レジメンが維持されることが予想されるかのいずれかであるべきである。過去30日間に何らかの理由でオピオイドを使用した被験者、または膀胱痛もしくは任意の適応症に対してオピオイド療法が必要であると予想される被験者を、試験への登録から除外する。被験者は、自身の最も煩わしい膀胱痛/不快症状及びIC/BPSに関連する自身の最も煩わしい下部尿路症状を特定する。
【0109】
単一盲検プラセボ導入期間(-14日目~-1日目):被験者がスクリーニング来院を成功裏に完了したら、被験者は、プラセボ導入期間に入り、毎晩就寝前30分に試験薬1錠を経口摂取する。毎晩、服薬を電子日誌に記入する。被験者は、朝及び夜の1日2回、1日の平均及び1日で最悪な膀胱痛/不快感スコアを記録する。被験者は、来院2の前週の24時間の期間にわたる全ての排尿エピソードを記録する(それぞれの時間、タイプ、強度、及び量を含む)。二重盲検処置期間への登録に適格であるためには、被験者は以下の基準を満たさなければならない。
a)1日の平均膀胱痛/不快感スコアが、導入相のうちの少なくとも9日間で5以上である
b)排尿エピソードの平均が、少なくとも3日間の各24時間の期間において10以上かつ30未満である
c)膀胱痛/間質性膀胱炎症状尺度(BPIC-SS)のスコアが19以上である
d)新たに行われるIC/BPS療法が安定用量/レジームであり、試験中にそれが維持されることが予想された
e)治験責任医師の指示に従って、被験者が適切に日誌を記入した。
【0110】
被験者が登録基準を満たし、全ての評価を完了した場合、被験者を無作為化する。
【0111】
処置期間(1~63日目)
全ての被験者を、式(IA)の化合物及びプラセボの同じクロスオーバー処置レジメンに割り当てる。被験者を2週間ごとにクリニックに来院させ、クリニック来院の予定がない週の間にバーチャルコール/電話を行う。
【0112】
被験者は1日2回、膀胱痛スコアの記録を継続する。また、被験者は、治験実施施設への予定された各クリニック来院前の7日間に、24時間の期間にわたる全ての排尿エピソードを記録する。クリニック来院時、被験者は、有効性評価(BPIC-SS、ICSI、ICPI、NSQS、GRA、及びSGRAB)ならびに安全性/他の評価を完了する。
【0113】
試験終了(EOS)(63日目/早期中止[ET]):
被験者に、二重盲検処置の終了時または試験を早期中断した際のいずれかにEOS手順を行う。EOS時に必要とされる評価を試験完了の同日またはEDと同日に実施し、これらの評価後に試験薬を投与しなかった場合、これらの評価を繰り返す必要はない。
【0114】
追跡調査期間(64~70日目)
前回来院以降の有害事象及び併用薬/療法の使用をモニタリングするために、追跡調査の電話を試験薬の最終投与後7~10日に完了させる。
【0115】
例示的な実施形態及び実施例を参照して本開示の主題を説明してきたが、この説明は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。したがって、例示的な実施形態の種々の改変及び本発明の他の実施形態は、本説明を参照することで当業者には明らかになるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、任意のかかる改変または実施形態を網羅することが企図される。
【0116】
本明細書で言及される全ての出版物、特許、及び特許出願は、各個別の出版物、特許、または特許出願が、その全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照によりその全体が組み込まれる。
【0117】
参照文献
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【国際調査報告】