(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ウェアラブル褥瘡検知センサおよびそれを含む褥瘡検知システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240425BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20240425BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20240425BHJP
G01K 13/20 20210101ALI20240425BHJP
G01K 7/16 20060101ALI20240425BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240425BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20240425BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240425BHJP
A61B 5/0537 20210101ALI20240425BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A61B5/01 100
A61B5/00 101L
A61B5/00 102A
H01L29/84 Z
G01K13/20 341Z
G01K7/16 S
G01L5/00 Z
G01R27/02 A
A61B10/00 Q
A61B5/0537
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558687
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 KR2021019385
(87)【国際公開番号】W WO2022203164
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0038530
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523362124
【氏名又は名称】エイセン カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ASEN COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】パク ジン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム スン-ロク
(72)【発明者】
【氏名】キル ヘ-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジン―フン
(72)【発明者】
【氏名】イ ソヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジュ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】オ ジ-ホン
(72)【発明者】
【氏名】イ エイ-イン
【テーマコード(参考)】
2F051
2F056
2G028
4C117
4C127
4M112
【Fターム(参考)】
2F051AA17
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2F051BA07
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2G028BC07
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4M112CA27
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4M112FA20
(57)【要約】
本発明は、褥瘡検知センサに関し、本発明に係る褥瘡検知センサは、物理的な力によるキャパシタンスの変化に基づいて圧力を測定する圧力センサと、電子のホッピング(hopping)による電気伝導度の変化に基づいて温度を測定する温度センサと、互いに離間して皮膚と接触する2つの電極を含むインピーダンスセンサと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的な力によるキャパシタンスの変化に基づいて圧力を測定する圧力センサと、
電子のホッピング(hopping)による電気伝導度の変化に基づいて温度を測定する温度センサと、
互いに離間して皮膚と接触する2つの電極を含むインピーダンスセンサと、
を含むウェアラブル褥瘡検知センサ。
【請求項2】
前記圧力センサは高分子ゲル電解質キャパシタを含む、請求項1に記載のウェアラブル褥瘡検知センサ。
【請求項3】
前記温度センサは、伝導性高分子マトリックス、および前記マトリックスに分散して組み込まれたカーボンナノ構造体を含む、請求項1に記載のウェアラブル褥瘡検知センサ。
【請求項4】
前記カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ、グラフェン、またはこれらの混合物を含む、請求項3に記載のウェアラブル褥瘡検知センサ。
【請求項5】
前記インピーダンスセンサの2つの電極は、それぞれ絶縁弾性体と伝導性ナノワイヤの複合体である、請求項1に記載のウェアラブル褥瘡検知センサ。
【請求項6】
一面に配線が形成されたファブリック基材をさらに含み、
前記ファブリック基材の一面に、前記圧力センサ、前記温度センサ、および前記インピーダンスセンサが離間して配列されている、請求項1に記載のウェアラブル褥瘡検知センサ。
【請求項7】
前記ファブリック基材の前記一面を覆う湿潤性高分子フォームをさらに含み、前記湿潤性高分子フォームは、圧力センサ、温度センサ、およびインピーダンスセンサが表面に露出するように形成された通孔を含む、請求項6に記載のウェアラブル褥瘡検知センサ。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のウェアラブル褥瘡検知センサと、
前記褥瘡検知センサと電気的に接続され、褥瘡検知センサの圧力センサ、温度センサ、およびインピーダンスセンサのセンシング値の入力を受け、褥瘡検知センサが付着されたユーザの身体に印加される圧力、皮膚温度値、および組織インピーダンス値を含む褥瘡指標を算出するマイクロプロセッシング部と、
無線通信を介して、前記マイクロプロセッシング部で算出された褥瘡指標を端末機器に送信する無線通信部と、を含むウェアラブル褥瘡検知システム。
【請求項9】
前記マイクロプロセッシング部および前記無線通信部は、フレキシブルプリント回路基板(PCB)上に備えられる、請求項8に記載のウェアラブル褥瘡検知システム。
【請求項10】
前記無線通信は、Wi-FiまたはBluetoothを含む近距離無線通信を含む、請求項8に記載のウェアラブル褥瘡検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブル褥瘡検知センサおよびそれを含む褥瘡検知システムに関し、詳細には、褥瘡発生の危険がある対象者に付着可能であり、リアルタイムで褥瘡発生の危険を測定することで、褥瘡を予め予防することができるウェアラブル褥瘡検知センサおよび検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
褥瘡は、身体の一部位に圧力が加え続けられると、その部位に血液循環障害が引き起こされることにより、酸素と栄養素の供給が不足することになって発生する虚血性皮膚潰瘍である。身近な疾病であるにもかかわらず、長い間、その病症の深刻性が大きく看過されてきた。進行段階が四段階に区分されるこの疾病は、一段階では、異常症状を医師が目視で識別したり、患者が感じることが難しく、この時に、治療時期を逃して二段階以上に進んでしまうと、皮膚と骨の広範囲な移植手術が必要となり、手術後にも、敗血症といった感染性疾患により死亡する確率が高い深刻な重度の疾患である。現在、褥瘡の予防法としては、通常、患者の体位を持続的に変更する介護者の労動力に依存しており、疾病を予防しにくく、一度発病すると、その進行速度が非常に速く、患者自身および保護者の肉体的、精神的苦痛の増加および医療費の急速な上昇が伴われるため、予防体系と治療法の開発が強く必要とされている疾病である。
【0003】
近年、モノのインターネット(Internet of Things)を利用した技術が急激に発達しているが、圧力センサを用いて、弾性フィルムが備えられたマットの圧力分布を収集したり、患者の動きが停止している時間に基づいて褥瘡発生の危険を知らせる水準に留まっていることが現状である。
【0004】
そこで、目視で褥瘡を確認しにくい初期状態や、褥瘡に進行する可能性のある異常状態で、危険部位(または、褥瘡病変部位)の状態をリアルタイムでモニタリングするとともに、褥瘡発生の危険や褥瘡進行の程度をリアルタイムで検出し、検出結果を、患者本人、介護者、保護者、医師などにリアルタイムで伝達することができる早期検出システムの開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許公開第2020-0135052号
【特許文献2】韓国特許公開第2020-0048938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、外部刺激と内部(皮膚組織)の変化を同時に測定することができる双方向センシングが可能な褥瘡センサを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、褥瘡の発病が疑われる部位の状態をリアルタイムでモニタリングし、褥瘡の早期診断が可能な識別指標を提供することができる褥瘡センサを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、褥瘡の発病が疑われる部位に付着するだけで、褥瘡を引き起こす外部刺激の大きさと、皮膚組織の損傷による生体信号の変化をセンシングすることができる褥瘡センサを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、褥瘡発生の危険や褥瘡の発病が疑われる部位の状態を遠距離からリアルタイムでモニタリングすることができる褥瘡検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るウェアラブル褥瘡検知センサは、物理的な力によるキャパシタンスの変化に基づいて圧力を測定する圧力センサと、電子のホッピング(hopping)による電気伝導度の変化に基づいて温度を測定する温度センサと、互いに離間して皮膚と接触する2つの電極を含むインピーダンスセンサと、を含む。
【0011】
本発明の一実施形態に係るウェアラブル褥瘡検知センサにおいて、圧力センサは高分子ゲル電解質キャパシタを含んでよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係るウェアラブル褥瘡検知センサにおいて、前記温度センサは、伝導性高分子マトリックス、および前記マトリックスに分散して組み込まれたカーボンナノ構造体を含んでよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係るウェアラブル褥瘡検知センサにおいて、前記カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ、グラフェン、またはこれらの混合物を含んでよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係るウェアラブル褥瘡検知センサにおいて、前記インピーダンスセンサの2つの電極は、それぞれ絶縁弾性体と伝導性ナノワイヤの複合体であってよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係るウェアラブル褥瘡検知センサは、一面に配線が形成されたファブリック基材をさらに含んでよく、前記ファブリック基材の一面に、前記圧力センサ、前記温度センサ、および前記インピーダンスセンサが離間して配列されてよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係るウェアラブル褥瘡検知センサは、前記ファブリック基材の前記一面を覆う湿潤性高分子フォームをさらに含んでよく、前記湿潤性高分子フォームは、圧力センサ、温度センサ、およびインピーダンスセンサが表面に露出するように形成された通孔(through holes)を含んでよい。
【0017】
本発明は、上述のウェアラブル褥瘡検知センサを含むウェアラブル褥瘡検知システムを含む。
【0018】
本発明に係るウェアラブル褥瘡検知システムは、上述のウェアラブル褥瘡検知センサと、前記褥瘡検知センサと電気的に接続され、褥瘡検知センサの圧力センサ、温度センサ、およびインピーダンスセンサのセンシング値の入力を受け、褥瘡検知センサが付着されたユーザの身体に印加される圧力、皮膚温度値、および組織インピーダンス値を含む褥瘡指標を算出するマイクロプロセッシング部と、無線通信を介して、前記マイクロプロセッシング部で算出された褥瘡指標を端末機器に送信する無線通信部と、を含む。
【0019】
本発明の一実施形態に係る褥瘡検知システムにおいて、前記マイクロプロセッシング部および前記無線通信部はフレキシブルプリント回路基板(PCB)上に備えられてよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る褥瘡検知システムにおいて、前記無線通信は、Wi-Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)を含む近距離無線通信を含んでよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る褥瘡検知システムは、ウェアラブル特性が確保される圧力センサ、温度センサ、およびインピーダンスセンサを用いて、褥瘡の発病が疑われる部位に印加される圧力だけでなく、褥瘡の発病が疑われる部位の皮膚温度および内部組織のインピーダンスを提供することで、目視で褥瘡の発病を判別しにくい時点で、褥瘡発生有無や褥瘡発病の危険を予め検出することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る褥瘡検知センサの構成を示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る褥瘡検知システムの構成を示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る褥瘡検知システムにおいて、フレキシブルPCBに集積された無線通信部およびマイクロプロセッシング部の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明のウェアラブル褥瘡検知センサを詳細に説明する。以下で紹介される図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下で提示される図面に限定されず、他の形態で具体化されることもでき、以下で提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張されて図示されることがある。この際、用いられる技術用語および科学用語は、別に定義しない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において本発明の要旨を不明瞭にする可能性のある公知機能および構成についての説明は省略する。
【0024】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈において別に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、第1、第2などの用語は、限定的な意味ではなく、一つの構成要素を他の構成要素と区別する目的で用いられる。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書に記載の特徴、または構成要素が存在することを意味し、別に限定しない限り、一つ以上の他の特徴または構成要素の付加可能性を予め排除するのではない。
【0027】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、膜(層)、領域、構成要素などの部分が他の部分上にあるとしたときに、他の部分と接して直上にある場合だけでなく、その間に他の膜(層)、他の領域、他の構成要素などが介在されている場合も含む。
【0028】
本発明に係るウェアラブル褥瘡検知センサは、物理的な力によるキャパシタンスの変化に基づいて圧力を測定する圧力センサと、電子のホッピング(hopping)による電気伝導度の変化に基づいて温度を測定する温度センサと、互いに離間して皮膚と接触する2つの電極を含むインピーダンスセンサとを含む。
【0029】
本発明に係るウェアラブル褥瘡検知センサは、圧力センサ、温度センサ、およびインピーダンスセンサを含むことで、皮膚に印加される外部圧力を含む外部刺激だけでなく、皮膚組織の損傷(異常)により変化する温度とインピーダンスを含む生体信号の変化の同時検出が可能な、すなわち、外部刺激と生体内部変化の同時検出が可能な双方向センサであるという利点がある。
【0030】
また、本発明に係るウェアラブル褥瘡検知センサは、褥瘡の発病が疑われる部位(皮膚部位)の温度とインピーダンスの変化を検出することで、皮膚組織の損傷(異常)の程度を判別することができる指標を提供し、これとともに、褥瘡の発病が疑われる部位に加えられる圧力をセンシングして提供することで、ユーザ(褥瘡検知センサのユーザ)、保護者、または医療スタッフが、褥瘡が発生する前に、褥瘡発病の危険程度を認知および判断することができる利点がある。また、たとえ、ユーザが既に褥瘡が発病した状態である場合であっても、ユーザ、保護者、または医療スタッフが、褥瘡発病部位の病変進行(治療)の程度と進行(治療)速度を認知および判断することができる利点がある。
【0031】
また、本発明に係るウェアラブル褥瘡検知センサは、圧力センサが、物理的な力(外部から印加される圧力)によるキャパシタンスの変化に基づいて圧力を算出するため、極めて薄い薄膜の形態で圧力が測定可能であって、ウェアラブル特性を確保することができ、寝ている状態で人体の重さにより発生するレベルの圧力を高精度に測定することができるため、褥瘡の検知において非常に有利である。
【0032】
温度センサも電子のホッピング(hopping)による電気伝導度の変化に基づいて温度を測定するため、極めて薄い薄膜の形態で温度が測定可能であって、ウェアラブル特性を確保することができる。また、インピーダンスセンサも、離間して位置してユーザの皮膚に接する2つの電極により皮膚組織のインピーダンスを測定するため、薄膜化が可能な電極によりウェアラブル特性を確保することができる。
【0033】
有利な一例において、圧力センサは高分子ゲル電解質キャパシタを含んでよい。高分子ゲル電解質キャパシタは、ユーザの皮膚に接触する第1電極と、高分子ゲル電解質と、高分子ゲル電解質を挟んで第1電極と対向する第2電極とを含んでよい。公知されているように、薄膜型キャパシタの電解質としては、液体電解質または無機電解質や高分子ベースの固体電解質が用いられる。液体電解質ベースのキャパシタは、褥瘡センサに統合(integration)されにくく、使用中における安定性に劣り、無機電解質ベースのフレキシブル特性に劣るため好適ではない。薄膜型キャパシタにおいて、高分子ベースの固体電解質は、固体高分子電解質とゲルタイプの高分子電解質、および多価電解質に大別され得る。中でも、ゲルタイプの高分子電解質は、液漏れがなく、固体電解質の中でも最も高いイオン伝導度が実現可能であるが、機械的物性が弱いという欠点がある。
【0034】
本発明の有利な一例に係る褥瘡検知センサは、このようなゲルタイプの高分子電解質ベースのキャパシタの欠点を利用したものであり、詳細には、ゲルタイプの高分子電解質によるフレキシブルな特性を確保するとともに、人体の重さにより引き起こされる圧力によって電解質の内部イオンポンプからイオンが通り抜けてキャパシタンスが変化することを利用して、褥瘡の発病が疑われる部位に印加される圧力を測定することができる。
【0035】
高分子ゲル電解質キャパシタを用いて圧力がセンシングされる場合、高分子ゲル電解質(ゲルタイプの高分子電解質)の弾性係数を調節することで、ベッドに寝た時に皮膚に加えられると知られている4~13kPa(30~100mmHg)の圧力範囲を含む広い圧力範囲で、高い敏感度を有する圧力センサが実現されることができる。実質的な一例として、4~13kPaの圧力範囲で、圧力に応じて敏感にキャパシタンスが変化するように、高分子ゲル電解質キャパシタの高分子ゲル電解質の弾性係数(常温基準、Elastic Modulus)は、0.01~1.00kPaの非常に低いレベルであってよい。
【0036】
公知であるように、高分子ゲル電解質は酸性電解質または塩基性電解質であってよく、PEO(poly(ethylene oxide))、PA(poly(acrylate))、PVA(poly(vinyl alcohol))、PAA(poly(acrylic acid)などの高分子、水酸化カリウムや硫酸、リン酸、過塩素酸などの塩、および水などの溶媒からなり、電解質の構成要素の含量や具体的な物質を変更することで、高分子ゲル電解質の弾性係数を適宜調節することができる。
【0037】
高分子ゲル電解質キャパシタの2つの電極(第1電極、第2電極)としては、固体キャパシタで通常用いられる電極であればよく、一例として、インジウムスズ酸化物などの透明伝導性酸化物、銀ナノワイヤなどのナノワイヤネットワーク、グラフェンなどの伝導性二次元炭素構造体、カーボンナノチューブなどの伝導性一次元炭素構造体、活性炭素、PEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate))などの伝導性高分子などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、高分子ゲル電解質キャパシタの具体的なディメンションは、褥瘡の発病が疑われる部位に印加される圧力を円滑に測定できる程度であればよく、実質的な一例として、1mm~5cmレベルの幅、1mm~5cmレベルの横幅、10~100μmレベルの高分子ゲル電解質の厚さなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
温度センサは、皮膚組織の異常や炎症などによる褥瘡の発病が疑われる部位の体温の変化をモニタリングすることができる。有利な一例において、温度センサは、伝導性高分子マトリックス、およびマトリックスに分散して組み込まれたカーボンナノ構造体を含んでよい。実質的に、温度センサは、伝導性高分子マトリックス、および伝導性高分子マトリックスに分散して組み込まれたカーボンナノ構造体を含む複合体の薄膜を含んでよい。
【0039】
伝導性高分子マトリックスの伝導性高分子は、ポリアセチレン(polyacethylene)系、ポリアニリン(Polyaniline)系、ポリピロール(Polypyrrole)系、およびポリチオフェン(Polythiophene)系などから選択される何れか1つまたは2つ以上であってよいが、これに制限されない。実質的な一例として、伝導性高分子は、ポリアセチレン(polyacetylene、PA)、ポリアニリン(polyaniline、PANI)、ポリピロール(polypyrrol PPy)、ポリチオフェン(polythiophen、PT)、ポリエチレンジオキシチオフェン(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)、PEDOT)、ポリイソチアナフテン(polyisothianaphthene、PITN)、ポリフェニレンビニレン(polyphenylene vinylene、PPV)、ポリフェニレン(polyphenylene、PPE)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide、PPS)、およびポリサルファニトリド(polysulfur nitride、PSN)などから選択される何れか1つまたは2つ以上などが挙げられる。
【0040】
カーボンナノ構造体は伝導性カーボンナノ構造体であってよく、伝導性カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ、グラフェン(還元された酸化グラフェン(RGO)を含む)、またはこれらの混合物などを含んでよいが、これに制限されない。
【0041】
上述の複合体の薄膜(複合体薄膜)は、複合体の界面で電子のホッピングにより電荷伝達がなされ、温度が高くなるにつれて界面における電子の量が増え、抵抗が減少することになる。これにより、複合体の薄膜の電気的特性を測定することで、褥瘡の発病が疑われる部位の温度をセンシングすることができる。この際、電気的特性は電気伝導度や電気抵抗を含み得ることは言うまでもない。
【0042】
人体の正常温度と、可変可能な異常体温を考慮すると、35~45℃の範囲の温度が、温度センサが高精度に検出する有効温度範囲であることができる。このような有効温度範囲における温度センサのセンシング敏感度は、複合体での伝導性高分子とカーボンナノ構造体との界面の範囲(界面面積)を調節することで確保されることができる。
【0043】
有効温度範囲で、温度変化に応じて複合体薄膜の電気的特性が敏感に変化するように、複合体薄膜はカーボンナノ構造体としてカーボンナノチューブを含むことが好適であり、伝導性高分子マトリックスとカーボンナノチューブの重量比は1:0.3~0.5であることが好適である。しかし、このような範囲を外れても温度センシングが不可能であるわけではないため、本発明が複合体薄膜の具体的な組成や物質によって限定されるものではない。
【0044】
複合体薄膜の具体的なディメンションは、褥瘡の発病が疑われる部位の温度を円滑に測定できる程度であればよく、実質的な一例として、複合体薄膜の具体的なディメンションとしては、0.5mm~2.0mmレベルの幅、0.5mm~1.0mmレベルの横幅、100~300μmレベルの厚さなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
インピーダンスセンサは互いに離間した2つの電極を含んでよく、2つの電極のそれぞれは、絶縁性弾性体と伝導性ナノワイヤの複合体であってよい。具体的に、2つの電極は、それぞれ絶縁性弾性体の基材、および絶縁性弾性体の基材に分散結着されてネットワークを形成する伝導性ナノワイヤを含む複合体であってよい。この際、伝導性ナノワイヤのネットワークは、伝導性ナノワイヤ同士の結着や接触などにより連続的な電流移動経路が形成された構造を意味し得ることは言うまでもない。絶縁性弾性体は、柔軟性および弾性が高い硬化型樹脂であってよく、一例として、シロキサン系樹脂、オレフィン系弾性樹脂、またはポリウレタン系樹脂などが挙げられるが、これに限定されるものではない。伝導性ナノワイヤは金属ナノワイヤであってよく、金属ナノワイヤとしては、銀、金、銅、ニッケル、またはこれらの混合物のナノワイヤや、これらのコア-シェルナノワイヤなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0046】
従来のハイドロゲルベースの電極は、水分が蒸発しやすく、電極表面の汚染などによる付着力の減少により長期使用が困難であり、柔軟性や弾性が不足するため、長期間付着する必要があるウェアラブルセンサとしては限界がある。これに対し、一実施形態に係るインピーダンスセンサの電極は、絶縁性弾性体と伝導性ナノワイヤの複合体をベースとするため、非常に優れたフレキシブル特性を確保することができ、寝ている人体の重さにより、褥瘡の発病が疑われる部位に安定且つ強固に密着されることができ、金属ナノワイヤと皮膚との安定的な接触状態が長期間にわたって維持されることができる。
【0047】
インピーダンスセンサの2つの電極のそれぞれの具体的なディメンションは、褥瘡の発病が疑われる部位の皮膚組織のインピーダンスを円滑に測定できる程度であればよく、一例として、電極の幅と横幅はそれぞれ1mm~1cmレベルであり、2つの電極間の離間距離は0.5cm~5cmレベルであってよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
皮膚組織のインピーダンスは、健常な皮膚では数MΩレベルであり、損傷した皮膚では数十kΩレベルであって、損傷が激しいほど低いインピーダンスを示す。そのため、インピーダンスセンサにより皮膚組織のインピーダンスを測定することで、褥瘡の発病が疑われる部位の皮膚組織の損傷有無や損傷程度を検出することができる。この際、インピーダンスを測定するために2つの電極に印加される交流周波数の範囲は100~106Hzレベルであり、交流電圧の大きさは数mVレベル、具体的には2~10mVレベルであり、交流は正弦波(sine wave)の形態であってよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
さらに、インピーダンスセンサの2つの電極に交流電圧を印加することにより、褥瘡の発病が疑われる部位(皮膚組織)のインピーダンスが測定されることができ、これと同時に、褥瘡の発病が疑われる部位に微細電気刺激を印加することができる。
【0050】
一実施形態に係る褥瘡検知センサは、一面に配線が形成されたファブリック基材をさらに含んでよい。配線が形成されたファブリック基材は、上述の圧力センサ、温度センサ、およびインピーダンスセンサが統合されるプラットホームの役割を果たすことができる。
【0051】
また、一実施形態に係る褥瘡検知センサは、ファブリック基材の一面を覆う湿潤性高分子フォームをさらに含んでよく、湿潤性高分子フォームは、圧力センサ、温度センサ、およびインピーダンスセンサが表面に露出するように形成された通孔を含んでよい。
【0052】
図1は本発明の一実施形態に係る褥瘡検知センサの一構成図の例である。
【0053】
図1に示した一例のように、褥瘡検知センサは、配線110が形成されたファブリック基材100と、圧力センサ200と、温度センサ300と、インピーダンスセンサ410~460と、通孔510が形成された湿潤性高分子フォーム500とを含んでよい。ファブリック基材100は、フレキシブル特性、および湿気、埃、化学物質などからセンサを保護するコンフォーマル(conformal)特性を有し、通気性に優れたプラットホームを提供することができる。ファブリック基材100には、伝導性インクなどを用いて形成された配線110が備えられており、かかる配線を介して、圧力センサ200、温度センサ300、およびインピーダンスセンサ410~460のそれぞれがファブリック基材100の外部と電気的に接続することができる。
【0054】
湿潤性高分子フォーム500は、汗や体液などを吸収できるため、統合 された各センサ(圧力センサ200、温度センサ300、およびインピーダンスセンサ410~460)の敏感度が安定して維持されることができる。湿潤性高分子フォーム500は水分を含有してよく、生体安全性を有する物質を含有していればよい。一例として、湿潤性高分子フォームは、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリウレタンなどの親水性高分子のフォーム、または親水性高分子と、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエステルやセルロースエーテル系物質との混合物のフォームなどであってよいが、これに限定されるものではない。
【0055】
湿潤性高分子フォーム500は、ファブリック基材100に対応する形状とサイズを有してよく、ファブリック基材100に統合された圧力センサ200、温度センサ300、およびインピーダンスセンサ410~460が表面に露出するように形成された通孔510を含んでよい。これにより、ファブリック基材100に統合された各センサ200、300、410~460は、湿潤性高分子フォーム500の通孔を介して露出し、ユーザの皮膚に直接的に接触することができる。これにより、褥瘡検知センサを実使用時に、湿潤性高分子フォーム500が人体に接する側であり、ファブリック基材100が皮膚を覆う層である。
【0056】
また、
図1に示した一例のように、インピーダンスセンサは、ファブリック基材100に形成された配線110を介して伝達される電圧が印加される2つの電極(410-420、または430-440、または450-460)をインピーダンス測定のための一単位体として、2つ以上の単位体が備えられてよい。
図1の一例は、3個の単位体が備えられた例である。インピーダンスセンサが2つ以上の単位体を含む場合、広い褥瘡の発病が疑われる部位でも皮膚組織の異常を効果的に検出することができる。褥瘡の発病が疑われる部位の具体的な面積と形状などを考慮して、備えられる単位体の数、各単位体の位置、および各単位体での2つの電極間の隔離距離が、適宜調節され得ることは言うまでもない。
【0057】
本発明は、上述のウェアラブル褥瘡検知センサを含むウェアラブル褥瘡検知システムを含む。
【0058】
本発明に係るウェアラブル褥瘡検知システムは、上述のウェアラブル褥瘡検知センサと、褥瘡検知センサと電気的に連結され、褥瘡検知センサの圧力センサ、温度センサ、およびインピーダンスセンサのセンシング値の入力を受け、褥瘡検知センサが付着されたユーザの身体に印加される圧力、皮膚温度値、および組織インピーダンス値を含む褥瘡指標を算出するマイクロプロセッシング部と、無線通信を介して、前記マイクロプロセッシング部で算出された褥瘡指標を端末機器に送信する無線通信部と、を含んでよい。
【0059】
有利に、マイクロプロセッシング部および無線通信部はフレキシブルプリント回路基板(PCB)上に備えられ、上述のウェアラブル褥瘡検知センサと電気的に接続されてよい。
【0060】
従来のウェアラブルセンサは、データ処理および送受信のために外部の機器と配線を介して接続されることが通常であり、これにより、ウェアラブルセンサの装用感が低下し、起動性が制限されるという問題がある。
【0061】
しかし、本発明に係るウェアラブル褥瘡検知システムは、
図2に示した一例のように、フレキシブルPCB上に、データ処理のためのマイクロプロセッシング部と無線通信のための無線通信部が統合され、褥瘡検知センサ1000とフレキシブルな配線を介して接続されているため、人体(ユーザ)の周辺に、マイクロプロセッシング部と無線通信部が統合(integration)されたフレキシブルPCB2000が位置することができることから、使用時の異物感を防止することができ、起動性を損なわない。
【0062】
図3はマイクロプロセッシング部と無線通信部が統合されたフレキシブルPCBの一構成図を示した例である。
【0063】
図3に示した一例のように、マイクロプロセッシング部は、インピーダンスの変化を検知するためのマイクロインピーダンスアナライザ(micro-impedance analyzer)740と、シグナルフィルタリングをするローパスフィルタ(low-pass filter)720と、温度、圧力の変化を検知するためのACチップ(chip)750と、が備えられてよく、これらの出力は、マイクロ-コントローラ(micro-controller)730を経てデジタル信号に変換されることができる。センサは連結部位710を介して電力が供給され、センシングされた値が出力される。詳細に、温度センサは、伝導性高分子マトリックス、およびマトリックスに分散して組み込まれたカーボンナノ構造体を含む複合体薄膜の抵抗変化に基づいて温度変化を検知するため、ON Semiconductor社のNCT75 controllerなどのデジタル温度センサモジュールコントローラを用いて制御および測定することができる。圧力センサは、キャパシタンスの変化に基づいて圧力を検知するため、MICROCHIP社のCAP1203 controllerなどの静電式タッチスクリーンコントローラにより制御および測定することができる。最終的に測定された信号はマイクロ-コントローラ730に伝達され、最終信号への算出およびデジタル信号への転換が行われることができる。
【0064】
そのため、マイクロ-コントローラ730でデジタル出力される信号は、褥瘡の発病が疑われる部位に印加される圧力、褥瘡の発病が疑われる部位の皮膚温度、および褥瘡の発病が疑われる部位の内部皮膚組織のインピーダンス値を含んでよい。身体に印加される圧力、皮膚温度値、および組織インピーダンス値は、褥瘡発生の危険や褥瘡進行の程度を医学的に判別することができる指標(褥瘡指標)であり、かかる褥瘡指標は、無線通信部を介して医師、褥瘡検知センサのユーザ、保護者などの関連者の端末機器に送信されてよい。
【0065】
無線通信部は、送信機(Transmitter)770または送受信機(Transreceiver)770、および一定周波数の電磁波を送信または送受信するアンテナ780を含んでよい。無線通信は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信であってよい。低電力Bluetoothは10m以上でも無線通信が可能であり、また、メッシュBluetooth方式を利用する場合、一つの機器で数百個以上のBluetooth(登録商標)を一度に接続可能であって、褥瘡指標を多様な関連者の端末機器に送信することができる。
【0066】
この際、無線通信部が送受信機を含む場合、医師、褥瘡検知センサのユーザ、保護者などの端末機器から送信された信号を受信し、受信された信号に基づいて、褥瘡検出センサのオン/オフ、褥瘡指標の送信間隔、多様な褥瘡指標のうち特定指標のみの選択的送信などが制御可能であることは言うまでもなく、フレキシブルPCB600上には、マイクロプロセッシング部、無線通信部、および褥瘡検知センサに電力を供給する電力源、一例として、電池760が備えられてよいことは言うまでもない。
【0067】
以上、本発明では、特定の事項と限定された実施形態および図面により説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施形態によって限定されず、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0068】
したがって、本発明の思想は説明された実施形態に限定して決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この請求範囲と均等または等価的変形のある全てのものなどは本発明の思想の範疇に属するといえる。
【国際調査報告】