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特表2024-518822ローカルおよびリモートの生理学的グループ脳波同期のための方法
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  • 特表-ローカルおよびリモートの生理学的グループ脳波同期のための方法 図1
  • 特表-ローカルおよびリモートの生理学的グループ脳波同期のための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ローカルおよびリモートの生理学的グループ脳波同期のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/375 20210101AFI20240425BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240425BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20240425BHJP
【FI】
A61B5/375
A61B5/0245 100B
A61B5/0245 100D
A61B5/256 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568415
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2022054238
(87)【国際公開番号】W WO2022234542
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,245
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520461026
【氏名又は名称】センズ.エーアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SENS.AI INC.
【住所又は居所原語表記】2768 Coyote Place, Whistler, British Columbia, CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, パオラ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリーン, コーリー
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA10
4C017AA19
4C017AB06
4C017AC16
4C017AC28
4C017BB01
4C017BD01
4C017DD14
4C017EE01
4C017EE15
4C017FF05
4C017FF17
4C127AA03
4C127DD01
4C127DD02
4C127GG09
4C127GG15
(57)【要約】
ローカルおよび遠隔の生理学的グループ脳波同期のための方法が提供される。本発明の方法は、脳の電気的活動を測定するための脳波記録(EEG)デバイスに依存している。前記生体信号は、グループ内の位相同期のレベルを決定するために処理され、個人は、聴覚および視覚刺激を含むバイオフィードバック技術を用いて報酬を受ける。本発明の方法は、(1)脳波グループ位相同期、(2)遠隔および大規模グループ同期、(3)流動性、エンゲージメント、親和性、共感、社会的親密性、創造性、ブレインストーミング、コミュニケーション、和解、トラウマ解放にわたる範囲の応用を可能にする変形を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体センサを使用して少なくとも2人の個人の生体信号を測定することと、
前記測定された生体信号を処理して、前記少なくとも2人の個人の前記生体信号の位相同期のレベルを決定することと、
前記少なくとも2人の個人の前記生体信号の前記位相のシフトを誘導するために、前記少なくとも2人の個人にバイオフィードバック刺激を提供することと、
前記少なくとも2人の個人の前記生体信号の前記位相を、前記少なくとも2人の個人の前記生体信号の目標位相同期に向けてシフトさせるバイオフィードバックループを確立することと、
を含む、生理学的グループ脳波同期のための方法。
【請求項2】
前記生体センサがEEGセンサである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記EEGセンサが、脳の電界を読み取ることができる位置に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体センサが、EEGセンサ、PPGセンサおよびEKGセンサのうちの1以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PPGセンサまたはEKGセンサが心拍数および心拍変動を測定するように構成され、前記EEGセンサが脳の電界を読み取ることができる位置に配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオフィードバック刺激が、聴覚刺激、視覚刺激、触覚フィードバック、またはそれらの組み合わせの形態で提供され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオフィードバック刺激が、PBM LEDおよびVR、ARまたはMRディスプレイのうちの1以上の形態で提供され得る、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2人の個人が、前記生体センサ、前記バイオフィードバック刺激を提供するための1以上のモダリティ、制御ユニット、および各ヘッドマウントデバイスをマスターコントローラおよび1以上のモバイルデバイスと接続するための無線伝送手段を組み込んだヘッドマウントデバイスを装着される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2人の個人に装着された各ヘッドマウントデバイスの時刻ゼロを確立するステップをさらに含み、前記測定された生体信号が時間的に同期される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御ユニットが、所定の目標位相同期でプログラムされている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記目標位相同期が、リーダーの前記生体信号に基づく、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記目標位相同期が、前記少なくとも2人の個人の前記生体信号のリアルタイム測定に基づく、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
各ヘッドマウントデバイスの前記制御ユニットが、前記少なくとも2人の個人のそれぞれの生体測定指標を前記マスターコントローラに提供し、前記マスターコントローラが重み付けを用いて前記目標位相同期を計算し、前記マスターコントローラが、前記少なくとも2人の個人のそれぞれの前記目標位相同期のための指示を各ヘッドマウントデバイスの前記制御ユニットに提供する、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2人の個人が互いに離れた場所にいる、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
心臓の電気的活動を測定できる生体センサを用いて、少なくとも2人の個人の生体信号を測定することと、
前記測定された生体信号を処理して、前記少なくとも2人の個人の前記生体信号の位相同期のレベルを決定することと、
前記少なくとも2人の個人にバイオフィードバック刺激を与えて、前記少なくとも2人の個人の前記生体信号の前記位相のシフトを誘導することと、
前記少なくとも2人の個人の前記生体信号の位相を、前記少なくとも2人の個人の前記生体信号の目標位相同期に向けてシフトさせるバイオフィードバックループを確立することと、
を含み、
前記少なくとも2人の個人は、生体センサ、バイオフィードバック刺激を提供するための1以上のモダリティ、制御ユニット、および各ヘッドマウントデバイスをマスターコントローラおよび1以上のモバイルデバイスと接続するための無線伝送手段を組み込んだヘッドマウントデバイスを装着される、
生理的グループ心臓同期のための方法。
【請求項16】
前記生体センサが、PPGセンサ、EKGセンサ、またはそれらの組み合わせである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも2人の個人は、互いに離れた位置にいる、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行関連出願
本出願は、2021年5月6日に出願された先行出願の米国仮出願63/185,245の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、生理的グループ脳波同期の方法に関する。具体的には、本発明は、脳波記録(EEG)および心電図(EKG)およびその他の生物学的センサを使用して、同時に複数の個人の脳の電気的活動を測定および変更することに関する。特に、この協調的アプローチでは、個人の選択された脳波周波数の位相が、グループの他のメンバーとの位相同期がより近くなるようにシフトされる。この技術は、エンゲージメント、親和性、共感、社会的親密性、流動性、創造性、ブレインストーミング、コミュニケーション、和解、トラウマの解放など、グループ全体の状態を調整または改善するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
歴史的に、個人のグループ全体にわたって生物学的信号を同期させる方法は、瞑想の実践に根ざしてきた。最近では、心拍信号の同期に基づく技術的アプローチが開発されている。これらの方法は、心電図(ECGまたはEKG)センサを利用して心臓の電界を測定し、聴覚や視覚的な合図を使ってグループにフィードバックを提供する。今日まで、心拍数のグループ同期は、フェスティバル、会議、保養地などで、ほとんどの場合、手動で操作する特注の1回限りの装置を使用して実施されてきた。信号処理技術は、振幅や位相などを含む信号の構成要素とともに、信号に存在する周波数を決定するために使用され得る。位相同期は、所定の周波数における2つ以上の信号のタイミングを測定し、それらの信号がどのように時間的又は同期的であるかの尺度を提供する。脳波にこれらの測定を適用すると、脳波図(EEG)センサを使って脳の電気的活動を測定し、1つの脳の異なる位置における経時的な位相同期のレベルを決定することができる。さらに、複数の個人の脳の位相同期レベルを経時的に分析することもできる。位相同期のレベルは、0~1、または0%から100%までのスケールである。
【0004】
最近の研究では、グループ内の個人のパフォーマンスと、グループ内の個人間の脳波の同期レベルを比較して分析することが始まっている。論文Brain-to-Brain Synchrony Tracks Real-World Dynamic Group Interactions in the Classroom, Dikker et al., 2017で取り上げられているそのような研究の1つは、「生徒のグループ全体で同期した神経活動が、グループ親近感、共感、社会的親密性などの教室での取り組みや社会的ダイナミクスを予測する(そしておそらくそれを支える)」ことを見出した。
【0005】
身体からの生体信号に影響を与えることは、医学、療法、瞑想、呼吸法、バイオフィードバック、ニューロフィードバック、生体刺激など、多くの分野や方法にまたがる。神経刺激は、神経系の活動を意図的に変調する生体刺激のひとつである。フォトバイオモジュレーション(PBM)(Photobiomodulation)として知られる神経刺激のそのような方法のひとつは、近赤外光を変調させて神経系を刺激する。
【0006】
フォトバイオモジュレーションは赤外線療法の一種である。赤外線療法は、皮膚、代謝プロセス、神経系、免疫系に良い影響を与える。より健康的な肌のために、コラーゲン産生を増加させることが示されている。フォトバイオモジュレーション技術は、エネルギーの伝搬を通じて細胞内のミトコンドリアを刺激することができる。ミトコンドリア内では、シトクロム酸化酵素が、赤色光や近赤外光を吸収し、それをエネルギーであるアデノシン三リン酸(ADT)に変換する能力を有している。経頭蓋フォトバイオモジュレーションシステムは多くの場合、633~810ナノメートルの波長で光を照射するが、810ナノメートルは生体組織により深く浸透する能力があるため、理想的な波長である。
【0007】
さらに、経頭蓋フォトバイオモジュレーションは、脳の電気的活動の変化を通して見ることができる精神状態の知覚可能な変化を生成する、個人の脳活動を変調または変化させるために使用される神経技術である。脳波の状態は、一定期間における脳の集合的な電気的活動として定義されることができ、その後、疲労、集中、ストレス、創造性などの精神状態に分類され得る。
【0008】
本発明者らは、バイオフィードバックまたはバイオ刺激を通じてグループの脳波同期の状態を生成するための他の公表された方法を知らない。さらに、本発明者らは、バイオフィードバックまたはバイオ刺激を通じてグループ脳波同期が達成され得ることを示唆する刊行物を知らない。したがって、本発明者らは、グループの脳波同期を高めるために、個人のグループにわたって脳信号に影響を及ぼすための新規な方法として本発明を提供する。この方法を個人のグループに用いると、エンゲージメント、親和性、共感、社会的親密性、流動性、創造性、ブレインストーミング、コミュニケーション、和解、トラウマの解放などのグループ状態が改善される。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、生理的グループの脳波同期のための方法に関し、グループ内の各個人は、1以上の脳波(EEG)センサを含む生体センサを使用してリアルタイムで測定される生体信号を有する。前記生体信号は、グループとの位相同期のレベルを決定するために処理され、グループ内の個人は、聴覚および視覚刺激を含むバイオフィードバック技術を使用して報酬を与えられるかまたは刺激される。バイオフィードバックループは、個人の脳波の位相を共通の位相同期に向けてシフトし続ける。心臓の同期もまた、本発明の方法および装置を用いて達成可能であり、それに応じて実施形態が提供される。本発明は、国際10-20法配置システムに従って、Fz、Cz、Pzを含む位置から記録されたEEGを利用する。他の実施形態では、追加的または代替的なEEG電極配置が利用され得る。したがって、本発明は、デルタ波、シータ波、アルファ波、アルファシータ波、低ベータ波、中メタ波、高ベータ波、およびガンマ波を含む脳波帯域のグループの脳同期に使用され得る。この方法は、チームのパフォーマンスを向上させるようなグループフロー状態を誘導するために応用でき、これには、身体的パフォーマンスと精神的パフォーマンスの両方が含まれる。この方法のもうひとつの応用は、感情な開放、内省的なグループ状態を強化することである。さらに別の応用として、この方法はチームの創造的なブレインストーミングを向上させるために用いられ得る。
【0010】
本発明方法は、身体の電界の変化によって変化する生体信号を読み取り、増幅され、デジタル信号に変換され、ブルートゥース(登録商標)、WiFi、携帯電話、インターネットなどの有線または無線接続を介して、コンピュータ、電話、ウェアラブル、サーバ、および/またはその他のデバイスに送信し、そこで処理、保存、表示、および/または解釈することに依存する。
【0011】
さらに、生体信号のタイミングは本発明において重要な要素である。したがって、前記生体信号のタイミングが、無線信号伝送を含む電子機器および伝送の遅延を考慮して、マスター装置と同期化されている場合、本発明の方法は有益である。さらに、生体信号を読み取ってから報酬刺激を受け取るまでの合計時間は、500ms未満であることが望ましい。ローカルな実施形態では、グループ内のすべての参加者は、同じ一般的な物理的領域にいる。比較的低い伝送遅延により、システムは、各個人のフィードバックデバイスにフィードバックレベルを直接提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態によるウェアラブルヘッドセット、接続されたモバイルデバイスおよびコンピュータシステムを示す。
図2図2は、振幅が変化し、周波数が類似している3つの信号を示し、信号AとBは同位相を共有し、信号Cは信号AおよびBと位相がずれている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の各例は、本発明の具体的な説明に従って提供されるものであり、本発明を限定するものとして考慮されるべきではない。当業者には、本発明の装置、システム、および方法の範囲または精神の範囲内で、本発明に変更を加えることができることが理解される。
【0014】
さらに、本発明では、「人」、および「使用者」、および「装着者」、および「患者」、および「人間」、および「個人」、および「被験者」などの用語は、本発明を使用する人を指すために互換的に使用される。本明細書で使用される「治療」または「刺激」または「療法」または「訓練」または「セッション」は、生体信号の同期化を目的とした、人/使用者/装着者/患者/人間/個人における利益または意図された結果を得るための、1人以上の人による本発明の使用を包含する。
【0015】
ここで、本発明の実施形態に移り、添付図面を具体的に参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
一態様では、本発明は、図1に示されるヘッドホン2および6を備えたヘッドマウントデバイス1および8におけるEEGおよびPPGセンサを提供する。図1に示される実施形態では、本発明のヘッドホンは、EEG測定用のEEG(脳波)センサ3、4および5と、心拍数および心拍変動(HRV)測定用の光電式容積脈波(Phoplethysmography)PPGセンサ12とを、ヘッドホンを備えたウェアラブルヘッドマウントデバイスに組み合わせている。一実施形態では、PPGセンサ12は、精度を高めることを可能にする周囲ノイズを低減するオーバーイヤー型ヘッドホン設計の内部に組み込まれる。本発明は、ユーザから生理学的信号を収集する生体センサを組み込んだウェアラブルヘッドマウントヘッドホンセット1および8を提供する。本デバイスは、本デバイス1および2を、グラフィックタッチスクリーンディスプレイ10を備えたスマートフォンまたはモバイルデバイス9であり得る制御ユニットに接続するために使用され得るブルートゥース(無線)音声およびデータ伝送13を含み、前記制御ユニット9は、コンピュータ11であり得る遠隔に配置されたマスター制御ユニットと無線wi-fi接続を有する。デバイス1および8はまた、充電式バッテリー、スピーカ、マイクを含むことができる。デバイス1および8は、さらに、複数のデバイスを一緒に接続することを可能にする着脱可能なワイヤ7を含むことができる。一実施形態では、本発明は、ヘッドマウントデバイス1および8に埋め込まれた1以上のフォトバイオモジュレーション(PBM)LED14を含む。
【0017】
別の実施形態では、前記制御ユニットとウェアラブルデバイスは、単一のウェアラブルデバイスに組み合わされてもよい。
【0018】
さらに別の実施形態では、前記制御ユニット上の前記グラフィックタッチスクリーンディスプレイは、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、または複合現実(MR)ディスプレイであってもよい。
【0019】
本発明は、2人以上のグループに適用することができ、グループ内の各人が前記生体センサ付きヘッドマウントデバイスを装着する。好ましい実施形態では、グループの各メンバーは、ウェアラブルデバイスを制御し、無線接続を介して生体信号データを収集するモバイルデバイスも利用する。代替の実施形態では、制御ユニットはウェアラブルデバイスに有線で接続されてもよい。
【0020】
グループ同期セッションを開始する場合、グループの1人のメンバーがホストとして指定される。ホストは制御ユニットを使用してグループセッションを開始し、他の参加者をグループに招待する。すべての参加者は、無線接続を確立することによって、自分らの制御ユニットを自分らのウェアラブルデバイスに接続する。
【0021】
本発明では、参加者、デバイス、センサにわたって位相同期演算をサポートするのに十分な精度のセンサタイミング同期を必要とする。この精度要件は、同期用に選択される周波数に左右される。例えば、10Hzの信号は、100ミリ秒の周期を有する。完全に同位相である2つの10Hz正弦波をとって、1つを50ミリ秒シフトすると、2つの波の位相は完全にずれる。プラスマイナス5ミリ秒のタイミング精度では、信号の位相が10ミリ秒ずれ、位相同期を演算する場合に最大15%の精度を損なう可能性がある。したがって、本発明は、1ミリ秒以内の精度で参加者、デバイス、およびセンサにわたってタイミングを同期させるための技術を含む。
【0022】
一実施形態では、ホスト制御ユニットはホストデバイスにコマンドを送信し、ホストデバイスは、コマンドを受信すると、時刻を時刻ゼロとしてマークする。さらに、ホストデバイスは、生体信号データをホスト制御ユニットに送信する際に、時刻ゼロに対するタイムスタンプを含む。本発明は、制御ユニットにメッセージを表示し、デバイス自体にインジケータライトを有することにより、デバイスが時刻ゼロを確立したことをホストに示すことができる。
【0023】
ホストデバイスが時刻ゼロを確立すると、グループ内の他のすべてのウェアラブルデバイスは、同一の時刻ゼロマークに同期されなければならない。本発明の一実施形態では、時刻ゼロを持つデバイスが、時刻ゼロを持たないデバイスに接続され得る。時刻ゼロを持つデバイスは、時刻ゼロからの継続時間を示すデータを定期的に送信する。時刻ゼロを持たないデバイスは、時刻ゼロをマークするためにデータ送信をリッスンする。
【0024】
当業者は、グループ全体にわたって全信号データのタイミングを同期させるために、異なるデータプロトコルまたは技術が使用され得ることを理解するであろう。一実施形態では、データ同期は、赤外線通信、近距離無線通信、WiFi、またはブルートゥースを含むがこれらに限定されない無線通信を使用して確立され得る。各通信方法は、センサおよびウェアラブルデバイス間で共通のタイミングを確立するために、1以上の技術を利用し得る。
【0025】
各デバイスが同じ時刻ゼロを確立した後、デバイスは、時刻ゼロに対するタイムスタンプを含む生体信号データをそれぞれの制御ユニットに送信し始める。前記生体信号データは、各人の脳上の1以上の位置からのEEG信号データを含む。一実施形態では、この信号データは各制御ユニットによって処理される。信号処理は、ノイズフィルター(すなわち、ローパス、ハイパスなど)および解析技術(すなわち、フーリエ変換、ウェーブレット解析など)を含む、当業者に公知の様々な技術を含み得る。各制御ユニットはさらに、センサ位置と同期周波数の各組み合わせターゲットについて、信号を狭帯域信号にフィルタリングする。例えば、グループがPZで10Hzの同期を試みている場合、10Hzを中心とする1Hz幅の信号が狭帯域信号として使用され得る。そして、各制御ユニットは、各狭帯域信号の位相角を計算する。次に各制御ユニットは、信号の位相角と時刻ゼロからの継続時間を含む処理済みデータを送信する。別の実施形態では、各制御ユニットは、生または部分的に処理された信号データをマスター制御ユニットに中継してもよい。この実施形態では、マスター制御ユニットは、グループの近くに配置されてもよいし、遠隔に配置されたサーバであってもよい。この実施形態では、マスター制御ユニットは、信号処理の一部または全部を実行することができる。別の実施形態では、参加者の制御ユニットの1つが、グループのマスター制御ユニットとして機能してもよい。
【0026】
本発明のマスター制御ユニットmは、各制御ユニットから位相角を含む信号データを受信すると、グループの目標位相タイミングを決定する。目標位相を決定するために様々な演算が使用されてもよく、ある方法はより小さなグループサイズに適しており、他の方法はより大きなグループに働く。
【0027】
一実施形態では、マスター制御ユニットは、グループの1以上の目標脳波周波数に対する目標位相を決定し、前記目標位相は、時間の経過とともに、全体的な同期レベルを最適化するように適合される:
1.最初の目標位相は、グループ全体の中央位相から導出される。
2.マスター制御ユニットは、グループ内の個人のうち、目標位相に最も近いグループ内の個人の所定のパーセンテージを選択し、このサブグループを使用して目標位相を再計算し、最小グループサイズが使用され得る。
3.時刻ゼロに対する目標位相は、各制御ユニットに戻される。
4.マスター制御ユニットは、グループの位相同期を最大化するために、グループの新しい目標位相を定期的に計算する。
a.マスター制御ユニットは、ステップ2から位相幅を計算する。ここで、位相幅は、目標位相と比較したサブグループ内の個人の位相同期の最大レベルである。マスター制御ユニットは、最小および最大位相幅を利用することができる。
b.次に、マスター制御ユニットは、位相幅内の個人数を最大化するために、目標位相をシフトすることによって、目標位相を時間の経過とともに適応させる。
c.定期的に、マスター制御ユニットは、ステップ2に戻り得る。
5.時刻ゼロに対する目標位相を各制御部に戻す。本実施形態では、目標位相の変化を最大変化率に制限してもよい。さらに、目標位相を再計算するタイミングは、予め決められていてもよいし、グループによって設定されていてもよいし、マスター制御ユニットによって経時的に調整されていてもよい。
【0028】
本発明の別の実施形態では、マスター制御ユニットは、平均値または中央値計算を使用してグループの目標位相を決定する。
【0029】
さらに別の実施形態では、マスター制御ユニットは、どの個人が目標位相計算に含まれるかを決定する際に、追加の信号指標を使用することができる。一実施形態では、グループ内の個人は、目標周波数に対する最小平均振幅レベルに達した場合にのみ、目標位相計算に含まれる。
【0030】
さらに別の実施形態では、各個別制御ユニットは、時刻ゼロに対する所定の目標位相を利用する。この実施形態では、マスター制御ユニットは必要なく、制御ユニットは互いに通信する必要はない。
【0031】
別の実施形態では、グループ内の1人以上の個人は、システムによって優先度が高いと分類されてもよい。これらの参加者は、どのような理由で選択されてもよい。優先度の高い参加者として考えられ得る例には、リーダー、教師、指導者、または、専門家などが含まれる。この実施形態の1つのバージョンでは、優先度の高い個人(複数可)が目標位相を設定するために使用される。この実施形態の別のバージョンでは、優先度の高い個人(複数可)は、目標位相を計算する際により高い重み付けが与えられる。
【0032】
別の実施形態では、グループ内のすべての個人は、心拍変動(HRV)、心拍数(HR)、心臓コヒーレンス、EEG帯域パワー、EEG帯域振幅、EEG帯域位相同期を含む1以上の生体指標に基づく重み付けを受ける。ここで、目標位相の計算は、各個人の重み付けに従って重み付けされる。
【0033】
本発明の制御ユニットおよびウェアラブルデバイスは、グループ内の個人に影響を与え、生体信号の位相を目標位相に向けてシフトさせるために、グループの目標位相およびバイオフィードバック技術を利用する。制御ユニットは、個人が目標位相と同期しているパーセンテージを計算し、報酬として聴覚、視覚、または他の刺激を提供することができる。一実施形態では、制御ユニットはまた、以下の計算の1以上に基づいて、個人にバイオフィードバックを提供することができる:
1.目標周波数に基づく個人の全体的な周波数パワーまたは振幅。
2.1以上の目標脳波周波数に対するグループ全体の位相同期レベル。
3.目標位相の1以上の目標脳波周波数の所定のパーセンテージ以内の個人で構成されるグループのサブセットの位相同期のレベル。
4.グループの目標位相と比較した、1以上の目標脳波周波数に対する個人の位相同期のレベル。
5.心拍変動(HRV)、心臓コヒーレンス、個人の脳同期、呼吸数を含むが、これらに限定されないその他の生体指標。
【0034】
遠隔の実施形態では、参加者は物理的に離れた場所にいてもよく、マスター制御ユニットデバイスとして中央サーバに依存してもよい。この実施形態では、追加のデータタイミング同期方法が利用されなければならない。マスター制御ユニットとグループの分散制御ユニットとの間の遅延時間に対処するために、ネットワークタイムプロトコル(NTP)(Network Time Protocol)などの既知の方法が提供され得るか、またはプレシジョンタイムプロトコル(PTP)(Precision Time Protocol)が使用され得る。マスター制御ユニットは、次いで、時刻ゼロとして実世界の時間を確立することができる。制御ユニットは依然として、ウェアラブルデバイスやセンサに同期される必要がある。そのような実施形態の1つでは、制御ユニットは、ウェアラブルデバイスに有線で直接接続されてもよい。別のそのような実施形態では、制御ユニットは、時刻ゼロからの継続時間を送信するために、ウェアラブルデバイスに一時的に接続してもよい。さらに別の実施形態では、制御ユニットとデバイスは、無線時間同期プロトコルを実装してもよい。前記プロトコルがブルートゥース上で実装される場合、現在、標準的な時間同期プロトコルは存在しない。しかし、サブミリ秒精度を実証する(Asgarian & Najafi 2001)などの様々な技術がある。さらに別の実施形態では、本方法は生体刺激または神経刺激のための技術を含む。前記刺激技術は、電気刺激、超音波、パルス電磁場(PEMP)または光刺激(フォトバイオモジュレーション)を含むことができる。バイオフィードバックとは別に、またはバイオフィードバックと組み合わせて、本システムは、個人の1以上の目標脳波周波数の位相を目標位相に向けてシフトさせるために刺激を使用することができる。
【0035】
一実施形態では、ウェアラブルデバイスは、1以上のフォトバイオモジュレーション(PBM)LEDを含む。ここで、デバイスはフォトバイオモジュレーションを利用して、各個人の脳に追加のエネルギーを供給することができる。フォトバイオモジュレーション技術は、グループ同期セッションの前、セッション中、またはセッションの後に適用され得る。
【0036】
一実施形態では、バイオフィードバック、HRVトレーニング、呼吸法を通じてグループ同調を誘導するために、心臓の生体信号が使用され得る。制御ユニットは、グループ内の個人の心拍数の位相を決定することを含む前記生体信号データを処理する。この実施形態は、本発明の遠隔タイミング同期技術を用いて実施することができる。先行技術では、グループの心拍信号を同期させる試みがなされてきた。これらの先行技術の試みは、すべてのセンサを接続する単一のデバイスと、すべての参加者が物理的に同じ場所にいること、すなわち互いに離れた場所に位置していないことに依存している。本発明では、複数のデバイスを使用すること、参加者が遠隔に位置すること、グループ同期フィードバックセッション中または開始前に遠隔位置に移動することが可能である。
【0037】
一実施形態では、本方法は、すべてのセンサ、信号処理、およびフィードバック技術を組み込んだ単一の装置を利用することができる。別の実施形態では、グループ内の各個人は、センサおよびフィードバック機構を含むデバイスを保持し、各デバイスは、センサデータをマスターデバイスに送信し、マスターデバイスでグループ信号が処理され、結果が個々のデバイスに返される。さらに別の実施形態では、マスターデバイスはリモートサーバであり、各自のデバイスを装着している個人は、マスターサーバとは異なる物理的位置にいてもよい。
【0038】
当業者は、本開示の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書で提供される本発明の実施形態の変形が可能であることを理解するであろう。単なる例として、当業者は、開示されたヘッドセットおよび方法におけるセンサおよびLEDの代替配置が、依然として、請求された本発明の範囲内にありながら可能であることを理解するであろう。
図1
図2
【国際調査報告】