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特表2024-518826自己免疫障害および同種免疫障害の予防および/または治療のための免疫抑制性抗原特異的キメラ抗原受容体Treg細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-07
(54)【発明の名称】自己免疫障害および同種免疫障害の予防および/または治療のための免疫抑制性抗原特異的キメラ抗原受容体Treg細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240425BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240425BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240425BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240425BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240425BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240425BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240425BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K35/17
A61P3/10
C12N5/078
C12N5/0783
C07K14/705 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570380
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 US2022028454
(87)【国際公開番号】W WO2022240797
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】17/320,663
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502409721
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・トレド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ハウメ,フアン・セ
(72)【発明者】
【氏名】イマム,シャーナワズ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZC35
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
自己免疫疾患および固形臓器移植の拒絶反応に対する予防および治療の可能性のために有用な免疫応答性細胞が、本明細書において記述される。具体的には、本開示は、細胞においてグルタミン酸デカルボキシラーゼ65kDA(GAD65)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を含む、免疫応答性細胞;および有効量の免疫応答性細胞を対象に投与するステップを含む、I型糖尿病(T1D)を予防または治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答性細胞であって
該細胞においてグルタミン酸デカルボキシラーゼ65kDA(GAD65)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を含み;
CARは、
a)CD3ζポリペプチドの細胞内シグナル伝達ドメイン、およびCD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域の細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびに
b)配列番号7もしくは配列番号8のいずれかのアミノ酸配列、または配列番号7もしくは配列番号8のいずれかと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む細胞外ポリペプチド
を含む、免疫応答性細胞。
【請求項2】
CD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域の細胞内シグナル伝達ドメインと細胞外ポリペプチドとの間にスペーサーをさらに含む、請求項1に記載の免疫応答性細胞。
【請求項3】
スペーサーが、グリシン、セリンまたはスレオニンを含む、請求項2に記載の免疫応答性細胞。
【請求項4】
CD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域の細胞内シグナル伝達ドメインが、ペプチド結合によってスペーサーに連結されている、請求項2に記載の免疫応答性細胞。
【請求項5】
細胞外ポリペプチドが、ペプチド結合によってスペーサーに連結されている、請求項4に記載の免疫応答性細胞。
【請求項6】
CD3ζポリペプチドが、CD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域の細胞内シグナル伝達ドメインにペプチド結合で連結されている、請求項5に記載の免疫応答性細胞。
【請求項7】
細胞が、制御性T細胞である、請求項6に記載の免疫応答性細胞。
【請求項8】
免疫応答性細胞が、T細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の免疫応答性細胞。
【請求項9】
細胞が、少なくとも1つの細胞外ポリペプチドを発現し、Teff細胞に影響を及ぼすことができる膵ベータ細胞特異的キメラ抗原受容体(CAR)制御性T細胞(Treg)を含む、請求項1に記載の免疫応答性細胞。
【請求項10】
細胞外ポリペプチドが、配列番号7を含む、請求項1に記載の免疫応答性細胞。
【請求項11】
細胞外ポリペプチドが、配列番号8を含む、請求項1に記載の免疫応答性細胞。
【請求項12】
細胞外ポリペプチドが、配列番号7を含む、請求項7に記載の免疫応答性細胞。
【請求項13】
細胞外ポリペプチドが、配列番号8を含む、請求項7に記載の免疫応答性細胞。
【請求項14】
請求項1に記載の免疫応答性細胞の有効量と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
1型糖尿病(T1D)を有する対象の生存期間を延長する方法であって、
請求項1に記載の免疫応答性細胞の有効量を対象に投与し、それにより対象の生存期間を延長するステップ
を含む方法。
【請求項16】
対象がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
免疫応答性細胞が、T細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
1型糖尿病(T1D)を予防または治療する方法であって、
請求項1に記載の免疫応答性細胞の有効量を対象に投与し、それにより対象のT1Dを治療または予防するステップ
を含む方法。
【請求項19】
対象がヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
免疫応答性細胞が、T細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
発明者:Juan C.Jaume、Shahnawaz Imam
関連出願に対する相互参照
[0001]本出願は、2021年5月14日に35U.S.C.§111(a)に基づき出願された米国出願番号17/320,663の優先権を主張するものであり、その開示全体はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
[0002]本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年5月14日に作成されたASCIIコピーは、62708-US-NP_SL.txtと名付けられており、サイズは9,019バイトである。
【0003】
連邦政府によって後援された研究に関する声明
[0003]本発明は、政府の支援によってなされたものではない。政府は発明に対する権利を有さない。
【背景技術】
【0004】
[0004]自己免疫障害は、身体自身の組織に対して向けられた免疫応答の機能不全によって引き起こされ、臨床症状、経過、および転帰が異なる慢性的な多系統障害をもたらす。
[0005]自己免疫疾患の治療に対する制御性T細胞(Treg)の治療的な応用は、抗原特異的Tregの希少性により制限される。
【0005】
[0006]エフェクターT細胞に所望の抗原特異性を付与する1つのアプローチは、抗体型特異性を有するキメラT細胞抗原受容体を用いるものである。抗体型特異的キメラ抗原受容体(CAR)でリダイレクトされた細胞傷害性T細胞を用いた細胞療法は、血液悪性腫瘍の治療において有効性を示している。
【0006】
[0007]したがって、そのようなキメラ免疫受容体を用いてTregを自己免疫攻撃部位にリダイレクトすることは、制御不能な自己免疫応答が主要な役割を果たす広範な疾患を緩和するための有用な治療法となるであろう。
【0007】
[0008]抗原特異的Tregが所望の自己免疫標的に対してオンデマンドで生成されるようになれば、自己免疫疾患の抗原特異的免疫抑制が達成可能となるであろう。
[0009]したがって、免疫関連障害または欠損T細胞寛容媒介性免疫障害を治療するための組成物およびアプローチには、差し迫ったニーズがある。
【発明の概要】
【0008】
[0010]本開示は、T細胞の活性化を調節するための試薬、組成物および方法、ならびに1型糖尿病(T1D)、自己免疫寛容および移植寛容を含むがこれらに限定されない免疫応答を調節するための試薬、組成物および方法に関する。
【0009】
[0011]概して、T1Dに対する予防的および治療的能力を有する膵ベータ細胞特異的CAR-Tregの開発が、本明細書において記述される。
[0012]本開示は、自己免疫性糖尿病またはT1Dの発症を予防することができる、強力で、機能的で、安定な、GAD65抗原特異的CAR-Tregを生成するために、CAR技術を使用することを記述している。
【0010】
[0013]また、他の自己免疫疾患および固形臓器移植の拒絶反応の予防および治療のための抗原特異的CAR-Tregの開発も、本明細書において記述される。
[0014]具体的な実施形態では、対象は自己免疫疾患、宿主対移植片疾患(HVGD)に罹患しているか、または対象は臓器移植レシピエントである。
【0011】
[0015]本明細書において提供されるものは、細胞においてグルタミン酸デカルボキシラーゼ65kDA(GAD65)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫応答性細胞であって;CARは、a)CD3ζポリペプチドの細胞内シグナル伝達ドメインおよびCD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域の細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびにb)配列番号7もしくは配列番号8のいずれかのアミノ酸配列、または配列番号7もしくは配列番号8のいずれかと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む細胞外ポリペプチドを含む、免疫応答性細胞である。ある種の実施形態において、細胞外ポリペプチドは、配列番号7を含む。ある種の実施形態において、細胞外ポリペプチドは、配列番号8を含む。ある種の実施形態において、細胞外ポリペプチドは、配列番号7からなる。ある種の実施形態において、細胞外ポリペプチドは、配列番号8からなる。配列番号7は、MDMRVPAQLLGLLLLWLPGAKCDIQLTQSPTFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPNLLIYVASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNNYPLTFGGGTKVEIKRPPPPRPPPPRPPPPRQLQLQESGPGLLKPSETLSLTCSVSGGSIGSSSYSWGWIRQPPGKGLEYIGIIYHSGRTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAMYYCARQVPYQPLLDGGNWFDPWGQGTLVTVSSのアミノ酸配列を有する。配列番号8は、MAWTVLLLGLLSHCTGSVTSYVLTHPPSVSVAPGKTGTITCGGSNIGSKSVHWYQQKPGQAPKLVIYYDSDRPSGIPERFSGSTSGNTATLTISSVEAGDEADYYCQVWDSSGDHMVVFFGGTKLTVLPPPPRPPPPRPPPPRQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGLTFSHHGMHWVRQAPGKGLEWVAFISYDETKKYYVKSVMGRFTIARDNSKNTLYLHLKSLRPDDAAVYYCAKAFSTTIFGVVTYGMDVWGQGTTVIVSSのアミノ酸配列を有する。
【0012】
[0016]ある種の実施形態において、免疫応答性細胞は、CD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域の細胞内シグナル伝達ドメインと細胞外ポリペプチドとの間にスペーサーをさらに含む。特定の実施形態において、スペーサーはグリシン、セリンまたはスレオニンを含む。特定の実施形態において、CD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域の細胞内シグナル伝達ドメインは、ペプチド結合によってスペーサーに連結されている。特定の実施形態において、細胞外ポリペプチドは、ペプチド結合によってスペーサーに連結されている。特定の実施形態において、CD3ζポリペプチドは、CD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域の細胞内シグナル伝達ドメインにペプチド結合で連結されている。特定の実施形態において、細胞外ポリペプチドは、配列番号7を含む。特定の実施形態において、細胞外ポリペプチドは、配列番号8を含む。特定の実施形態において、細胞外ポリペプチドは、配列番号7からなる。特定の実施形態において、細胞外ポリペプチドは、配列番号8からなる。
【0013】
[0017]ある種の実施形態では、免疫応答性細胞は、T細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある種の実施形態では、細胞は、少なくとも1つの細胞外ポリペプチドを発現し、Teff細胞に影響を及ぼすことができる膵ベータ細胞特異的キメラ抗原受容体(CAR)制御性T細胞(Treg)を含む。ある種の実施形態では、細胞外ポリペプチドは、標的細胞内の特異的な抗原に結合することにより、対象における免疫応答を増強する。特定の実施形態では、標的細胞は、自己免疫内分泌疾患、臓器特異的自己免疫疾患、または自己免疫移植不耐症に罹患している対象における細胞である。
【0014】
[0018]さらに提供されるものは、本明細書に記載の免疫応答性細胞の有効量と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。ある種の実施形態において、免疫応答性細胞はT細胞である。さらに提供されるものは、1型糖尿病(T1D)の予防または治療的処置のためのキットであって、a)本明細書に記載の医薬組成物、およびb)T1Dの治療的処置における使用のための指示書を含むキットである。
【0015】
[0019]さらに提供されるものは、1型糖尿病(T1D)を有する対象の生存期間を延長する方法であって、本明細書に記載の免疫応答性細胞の有効量を対象に投与し、それにより対象の生存期間を延長するステップを含む方法である。ある種の実施形態では、対象はヒトである。ある種の実施形態では、免疫応答性細胞は、T細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
[0020]さらに提供されるものは、1型糖尿病(T1D)を予防または治療する方法であって、本明細書に記載の免疫応答性細胞の有効量を対象に投与し、それにより対象のT1Dを治療または予防するステップを含む方法である。ある種の実施形態では、対象はヒトである。ある種の実施形態では、免疫応答性細胞は、T細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
[0021]また、本明細書において提供されるものは、細胞においてグルタミン酸デカルボキシラーゼ65kDA(GAD65)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を有する免疫応答性細胞である。
【0018】
[0022]CARは、a)CD3ζポリペプチドの細胞内シグナル伝達ドメインおよびCD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域の細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびにb)配列番号1~6を有するアミノ酸から選択されるアミノ酸配列の少なくとも一部;または、配列番号1~6を有するアミノ酸から選択される少なくとも1つの完全なアミノ酸配列を認識する細胞外ポリペプチドを含む。
【0019】
[0023]ある種の実施形態では、免疫応答性細胞は、T細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
[0024]ある種の実施形態では、細胞は、少なくとも1つの細胞外ポリペプチドを発現し、Teff細胞に影響を及ぼすことができる膵ベータ細胞特異的キメラ抗原受容体(CAR)制御性T細胞(Treg)を含む。
【0020】
[0025]ある種の実施形態では、細胞外ポリペプチドは、配列番号1~6を有するアミノ酸から選択されるアミノ酸配列の少なくとも一部;または、配列番号1~6を有するアミノ酸から選択される少なくとも1つの完全なアミノ酸配列を認識するGAD65 MAb抗原結合ドメインである。
【0021】
[0026]別の態様において、本明細書において提供されるものは、本明細書に記載の免疫応答性細胞の有効量と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
[0027]別の態様において、本明細書において提供されるものは、1型糖尿病(T1D)の予防または治療的処置のためのキットであって、a)本明細書に記載の医薬組成物;およびb)T1Dの治療的処置における使用のための指示書を含むキットである。
【0022】
[0028]別の態様において、本明細書において提供されるものは、1型糖尿病(T1D)を有する対象の生存期間を延長する方法であって、本明細書に記載の免疫応答性細胞の有効量を対象に投与し、それにより対象の生存期間を延長するステップを含む方法である。
【0023】
[0029]別の態様において、本明細書において提供されるものは、1型糖尿病(T1D)を予防または治療する方法であって、本明細書に記載の免疫応答性細胞の有効量を対象に投与し、それにより対象のT1Dを治療または予防するステップを含む方法である。
【0024】
[0030]ある種の実施形態では、対象はヒトである。
[0031]別の態様では、本明細書において提供されるものは、少なくとも1つの抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を有する、自己免疫性内分泌疾患を治療するための免疫応答性細胞である。CARは、a)細胞内シグナル伝達ドメイン、b)少なくとも1つの抗原のアミノ酸配列を認識する抗原結合領域MAbを含む細胞外ポリペプチドを含む。自己免疫性内分泌疾患および抗原は、本明細書に記載のようにして選択され得る。
【0025】
[0032]別の態様において、本明細書において提供されるものは、対象における自己免疫性内分泌疾患を治療または予防する方法であって、有効量の免疫応答性細胞を対象に投与し、それにより対象の自己免疫性内分泌疾患を治療または予防するステップを含む方法である。
【0026】
[0033]別の態様において、本明細書において提供されるものは、自己免疫性内分泌疾患を有する対象の生存期間を延長する方法であって、免疫応答性細胞の有効量を対象に投与し、それにより対象の生存期間を延長するステップを含む方法である。
【0027】
[0034]別の態様では、本明細書において提供されるものは、少なくとも1つの抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を有する、臓器特異的自己免疫疾患を治療するための免疫応答性細胞である。CARは、a)細胞内シグナル伝達ドメイン、b)少なくとも1つの抗原のアミノ酸配列を認識する抗原結合領域MAbを含む細胞外ポリペプチドを含む。臓器特異的自己免疫疾患および抗原は、本明細書に記載のようにして選択され得る。
【0028】
[0035]別の態様において、本明細書において提供されるものは、対象における臓器特異的自己免疫疾患を治療または予防する方法であって、有効量の免疫応答性細胞を対象に投与し、それにより対象の臓器特異的自己免疫疾患を治療または予防するステップを含む方法である。
【0029】
[0036]別の態様において、本明細書において提供されるものは、臓器特異的自己免疫疾患を有する対象の生存期間を延長する方法であって、有効量の免疫応答性細胞を対象に投与し、それにより対象の生存期間を延長するステップを含む方法である。
【0030】
[0037]別の態様では、本明細書において提供されるものは、少なくとも1つの抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を有する、同種免疫移植不耐症を治療するための免疫応答性細胞である。CARは、a)細胞内シグナル伝達ドメイン、b)少なくとも1つの抗原のアミノ酸配列を認識する抗原結合領域MAbを含む細胞外ポリペプチドを含む。同種免疫移植および抗原は、本明細書に記載のようにして選択され得る。
【0031】
[0038]別の態様において、本明細書において提供されるものは、対象における同種免疫移植不耐症を治療または予防する方法であって、有効量の免疫応答性細胞を対象に投与し、それにより対象における同種免疫移植不耐症を治療または予防するステップを含む方法である。
【0032】
[0039]別の態様において、本明細書において提供されるものは、同種免疫移植不耐症を有する対象の生存期間を延長する方法であって、有効量の免疫応答性細胞を対象に投与し、それにより対象の生存期間を延長するステップを含む方法である。
【0033】
[0040]ある種の実施形態では、CARのMAb可変領域は、標的細胞内の特異的な抗原に結合することにより、対象における免疫応答を増強する。
[0041]ある種の実施形態では、標的細胞は、自己免疫内分泌疾患、臓器特異的自己免疫疾患、または同種免疫移植不耐症に罹患している対象における細胞である。
【0034】
[0042]本開示の他のシステム、方法、特徴、および利点は、以下の図面および詳細な説明を検討することにより、当業者には明らかであるか、または明らかになるであろう。そのような追加のシステム、方法、特徴、および利点はすべて、この説明に含まれ、本開示の範囲内にあり、そして添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【0035】
[0043]本特許または出願のファイルは、カラーで制作される1つ以上の図面、および/または1つ以上の写真を含みうる。この特許または特許出願公開のカラー図面および/または写真付きの写しは、請求と必要な手数料の支払いに応じて特許庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】[0044]図1A:CAR-Treg設計スキーム。
図1B】[0045]図1B:Teffのダウンレギュレーションの模式図。
図2】[0046]図2:T1Dのヒト化マウスモデル - ヒトとマウスモデルの遺伝的素因と標的抗原の利用可能性の比較;ならびにヒト化T1Dマウスの膵臓凍結切片(8μm)の共焦点顕微鏡観察。赤=インスリン;青=GAD65;緑=HLA-DQ8。
図3-1】[0047]図3:血液、膵臓リンパ節(PLN)、膵臓(PN)および脾臓におけるGFP-GAD65 CAR-Treg細胞のフローサイトメトリー追跡。FITCチャネルでGFPを検出することで、単一の細胞をフローサイトメーター(BD FACSCANTO)を用いて取得した。自然発症のヒト化マウスモデルに500万個のGFP-GAD65 CAR-Treg細胞を注入した(緑色蛍光タンパク質(GFP)を共発現、屠殺の24時間前)。
図3-2】図3の続き。
図4】[0048]図4:3D iDISCO。膵島の形態とCAR-Treg細胞の局在。上から下:膵島の拡大率(100倍)、(10倍)、(4倍)。A.緑=GFP、B.赤=インスリン、C.AとBの重ね合わせ、D.青=GAD65、E.A、BおよびDの重ね合わせ。
図5A】[0049]図5A~5E:フローサイトメトリー。異なるCAR-Tregと通常のTreg細胞で処置した動物の免疫細胞プロファイリング。
図5B図5A~5E:フローサイトメトリー。異なるCAR-Tregと通常のTreg細胞で処置した動物の免疫細胞プロファイリング。
図5C図5A~5E:フローサイトメトリー。異なるCAR-Tregと通常のTreg細胞で処置した動物の免疫細胞プロファイリング。
図5D図5A~5E:フローサイトメトリー。異なるCAR-Tregと通常のTreg細胞で処置した動物の免疫細胞プロファイリング。
図5E図5A~5E:フローサイトメトリー。異なるCAR-Tregと通常のTreg細胞で処置した動物の免疫細胞プロファイリング。
図6】[0050]図6:CAR-M Treg/CAR-N Treg/通常のTreg/非膵島特異的CAR-Treg(EPCAM)処置の1カ月後におけるグルコース負荷試験(GTT)の測定値。30日フォローアップのGTT。グルコース耐性は、GAD65特異的CAR Treg処置群において、通常のTregおよび非特異的EPCAM(対照CAR-Treg)群と比較して有意に改善した。通常のTregによる処置は、非膵島特異的EPCAM(対照CAR-Treg)群と比較して差がない。
図7A】[0051]図7A~7B:CAR-Treg(CD25+)およびTresp(CD4+CD25-)の抑制/増殖アッセイ(n=3~4):図7A=Tresp。(CD4+CD25);図7B=CAR-Treg(CD25+)。
図7B図7A~7B:CAR-Treg(CD25+)およびTresp(CD4+CD25-)の抑制/増殖アッセイ(n=3~4):図7A=Tresp。(CD4+CD25);図7B=CAR-Treg(CD25+)。
図7C】[0052]図7C:Tregの増殖の割合。
図7D】[0053]図7D:Trespの増殖の割合。
図7E】[0054]図7E:異なる比率のTrespおよびCAR-Tregにおけるin vitro抑制アッセイの要約データ、ならびに図7C~7Dからのそれらの増殖/複製指数の表。
図8A】[0055]図8A~8B:In vivo増殖アッセイの分析:EPCAM特異的CAR-Treg細胞(図8A)およびGAD65特異的CAR-Treg細胞(図8B)。
図8B図8A~8B:In vivo増殖アッセイの分析:EPCAM特異的CAR-Treg細胞(図8A)およびGAD65特異的CAR-Treg細胞(図8B)。
図8C】[0056]図8C~8D:In vitro増殖アッセイの分析:Treg細胞(図8C)およびCAR-Treg細胞(図8D)。
図8D図8C~8D:In vitro増殖アッセイの分析:Treg細胞(図8C)およびCAR-Treg細胞(図8D)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0057]本開示全体を通じて、様々な刊行物、特許、および公開特許明細書が、引用を明らかにすることによって参照される。これらの刊行物、特許、および公開特許明細書の開示は、本発明が属する技術の水準をより完全に記述するために、参照により本開示に組み込まれる。
【0038】
[0058]本発明の方法および組成物の記述の前に、本発明は、記述される特定の方法または組成物に限定されず、したがって当然変動しうることを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記述することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0039】
[0059]分子および細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(Sambrookら、CSH Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology、第4版(Ausubelら編、John Wiley & Sons 1999);Protein Methods(Bollagら、John Wiley & Sons 1996);Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagnerら編、Academic Press 1999);Viral Vectors(Kaplift & Loewy編、Academic Press 1995);Immunology Methods Manual(I. Lefkovits編、Academic Press 1997);およびCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle & Griffiths、John Wiley & Sons 1998)のような標準的な教科書に見出すことができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。本開示において言及される遺伝子操作のための試薬、クローニングベクターおよびキットは、商業ベンダーから入手可能である。
【0040】
[0060]定義
[0061]値の範囲が提供される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限の間に、下限の単位の10分の1までの介在するそれぞれの値もまた具体的に開示されていると理解される。記載された範囲内の任意の記載された値または介在する値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在する値との間の、より小さなそれぞれの範囲は、本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限と下限は独立して、その範囲に含められても除外されてもよく、より小さな範囲にどちらか、どちらも、または両方の限界値が含まれる各範囲もまた、本発明に包含されるが、記載された範囲において具体的に除外された限界値は留保される。記載された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、含まれる限界値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0041】
[0062]特に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的および科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で記述されるものと類似もしくは等価なあらゆる方法および材料が、本発明の実施もしくは試験のために使用されうるものの、いくつかの可能性のある、好ましい方法および材料がこれから記述される。本明細書で言及されるすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれ、関連して刊行物が引用される方法および/または材料が開示および記述される。本開示は、矛盾がある場合、組み込まれた刊行物の開示に優先することが理解される。
【0042】
[0063]本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形への参照を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「ペプチド」への言及は、当業者に公知の1つ以上のペプチドおよびその等価物、例えばポリペプチドなどへの言及を含む。
【0043】
[0064]本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、文脈上明らかにそうでないことが指し示されない限り、単数形は複数形の参照を含み、逆もまた同様である。「または」という用語は、例えば「どちらか」で修飾されない限り、包括的である。作業例以外では、または別段の指示がある場合を除き、本明細書で使用される成分または反応条件の量を表すすべての数字は、すべての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。数値に関する「約」という用語は、5%以内を意味する。
【0044】
[0065]本明細書で使用される場合、「投与する」または「投与」という用語は、所望の効果が生じるように、炎症部位または腫瘍部位などの所望の部位にそのような薬剤の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、対象への薬剤の配置を指す。
【0045】
[0066]本明細書で使用される場合、「調節する(modulating)」または「調節する(modulate)」とは、一般に、例えば、適切なin vitro、細胞、またはin vivoアッセイを使用して測定される際に、標的分子の発現および/または活性を低減または阻害するか、あるいは代わりに発現および/活性を増加させることを意味する。特に、「調節する(modulating)」または「調節する(modulate)」とは、適切なin vitro、細胞、またはin vivoアッセイ(たいていは関係する標的に依存する)を使用して測定される際に、同じ条件下であるが薬剤を含まない場合の同じアッセイにおける標的の活性と比較して、包括的に少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上、標的分子の発現および/または活性を低減または阻害すること、あるいは代わりに(関連する、または意図される)生物学的活性および/または発現を増加させることを意味しうる。したがって、本明細書で使用される場合、「調節している」という用語は、発現および/または活性を調節する薬剤で処置されていない対象と比較した発現および/または活性の増加または減少を指し得る。「増加」または「減少」は、それぞれ統計学的に有意な増加または減少を指す。疑義を避けるために言えば、増加または減少は、基準に対して少なくとも10%、例えば、包括的に少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、またはそれ以上であり、そして少なくとも100%またはそれ以上を含み、増加の場合には、例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、またはそれ以上である。
【0046】
[0067]本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、特定の成分を特定の量で含む生成物、ならびに特定の成分を特定の量で組み合わせることから直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図している。
【0047】
[0068]「~を含む」とは、記載された要素が、組成物/方法/キットにおいて必要であるが、請求の範囲内において、組成物/方法/キット等を形成するために他の要素が含まれていてもよいことを意味する。
【0048】
[0069]「~から本質的になる」とは、記述された組成物または方法の範囲が、対象発明の基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えない特定の材料またはステップに限定されることを意味する。
【0049】
[0070]「~からなる」とは、請求の範囲に規定されていない要素、ステップまたは成分が、組成物、方法またはキットから除外されることを意味する。
[0071]本明細書において、「治療」、「治療する」などの用語は、一般に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。その効果は、疾患もしくはその症状を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的であってもよく、ならびに/または、疾患および/もしくは疾患に起因する副作用を部分的または完全に治癒するという点で治療的であってもよい。本明細書で使用される場合、「治療」は、哺乳動物における疾患のあらゆる治療を包含し、以下を含む:(a)疾患の素因があるが、まだ疾患を有していると診断されていない対象に疾患が発生するのを防ぐこと;(b)疾患を抑制すること、すなわち、その発症を阻止すること;または(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすこと。治療剤は、疾患または傷害の発症前、発症中、または発症後に投与されうる。進行中の疾患の治療で、治療が患者の好ましくない臨床症状を安定化または低減させるものは、特に興味深い。そのような治療は、患部組織の機能が完全に失われる前に行われることが望ましい。対象の治療は、疾患の症候期中、場合によっては疾患の症候期後に投与されうる。
【0050】
[0072]「治療有効量」とは、対象に治療上の利益を与えるのに必要な活性薬剤の量を意味する。例えば、「治療有効量」とは、疾患に関連する病理学的症状、疾患の進行もしくは生理学的状態の改善を誘導、改善もしくはその他の方法で引き起こす量、または障害に対する耐性を改善する量である。
【0051】
[0073]「遺伝子修飾」という用語は、内因性のヌクレオチド配列に付加、欠失、改変を行うか、または破壊するあらゆるプロセスを意味し、ウイルス媒介遺伝子導入、リポソーム媒介導入、CRISPER CAS9媒介遺伝子形質転換、トランスフェクション、およびトランスダクションを含むが、これらに限定はされない。
【0052】
[0074]本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、完全な抗体分子だけでなく、免疫原結合能を保持する抗体分子の断片も意味する。そのような断片も当技術分野では周知であり、in vitroとin vivoの両方で常用されている。したがって、本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、完全な免疫グロブリン分子だけでなく、周知の活性断片であるF(ab’)、およびFabも意味する。F(ab’)、および完全な抗体のFe断片を欠くFab断片は、より迅速に循環から除去され、完全な抗体よりも少ない非特異的な組織結合を有しうる。抗体は、全体的に天然型の抗体、二重特異性抗体;キメラ抗体;Fab、Fab’、一本鎖V領域断片(scFv)、融合ポリペプチド、および非従来型の抗体であり得る。
【0053】
[0075]本明細書で使用される場合、「抗原認識受容体」という用語は、抗原結合に応答して免疫細胞(例えば、T細胞)を活性化することができる受容体を指す。例示的な抗原認識受容体は、天然もしくは内因性のT細胞受容体、または抗原結合ドメインが免疫細胞(例えば、T細胞)を活性化できる細胞内シグナル伝達ドメインに融合されているキメラ抗原受容体でありうる。
【0054】
[0076]本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、免疫細胞を活性化または刺激することができる細胞内シグナル伝達ドメインと融合されている抗原結合ドメインを指す。最も一般的には、CARの細胞外結合ドメインは、マウスまたはヒト化モノクローナル抗体の可変重鎖および軽鎖領域の融合に由来する単鎖可変断片(scFv)から構成されている。あるいは、(例えば、Fabライブラリーから得られる抗体に由来するのではなく)Fabに由来するscFvが使用されてもよい。様々な実施形態において、このscFvは膜貫通ドメインに融合され、次いで細胞内シグナル伝達ドメインに融合される。「第一世代」のCARは、抗原結合時にCD3ζシグナルのみを提供するものを含み、「第二世代」のCARは、共刺激(例えば、CD28またはCD137)と活性化(CD3ζ)の両方を提供するものを含む。「第三世代」のCARは、複数の共刺激(例えば、CD28またはCD137)と活性化(CD3)を提供するものを含む。様々な実施形態において、CARは抗原に対して高い親和性またはアビディティを有するように選択される。
【0055】
[0077]本明細書で使用される場合、「単鎖可変断片」または「scFv」という用語は、VH::VLヘテロ二量体を形成するように共有結合された免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)および軽鎖(VL)は直接結合されているか、またはペプチドをコードするリンカー(例えば10、15、20、25アミノ酸)によって結合されており、これは、VHのN末端とVLのC末端、またはVHのC末端とVLのN末端を連結する。リンカー/スペーサーは、柔軟性のためにはグリシン、同様に溶解性のためにはセリンまたはスレオニンであり得る。定常領域の除去とリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0056】
[0078]「実質的に同一」とは、基準のアミノ酸配列(例えば、本明細書に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載される核酸配列のいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すポリペプチドまたは核酸分子を意味する。好ましくは、そのような配列は、比較に用いられる配列とアミノ酸レベルまたは核酸レベルで少なくとも60%、より好ましくは80%もしくは85%、さらにより好ましくは90%、95%、さらには99%同一である。
【0057】
[0079]配列同一性は、典型的には、配列解析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,Wis.53705のSequence Analysis Software Package、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を用いて測定される。そのようなソフトウェアは、様々な置換、欠失、および/またはその他の修飾に相同性の程度を割り当てることによって、同一または類似の配列をマッチングする。保存的置換は典型的には、以下の群内の置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を決定するための例示的なアプローチでは、BLASTプログラムが使用されてもよく、e-3からe-100の間の確率スコアにより、密接に関連した配列が指し示される。
【0058】
[0080]「外因性」とは、細胞内に内因的に存在しないか、または過剰発現させた場合に得られる機能的効果を達成するのに十分なレベルで存在しない核酸分子またはポリペプチドを意味する。したがって、「外因性」という用語は、外来性、異種性、および過剰発現された核酸分子およびポリペプチドなど、細胞内で発現されるあらゆる組換え核酸分子またはポリペプチドを包含することになる。
【0059】
[0081]「異種性の核酸分子またはポリペプチド」とは、細胞または細胞から得られたサンプル中に通常は存在しない核酸分子(例えば、cDNA、DNAもしくはRNA分子)またはポリペプチドを意味する。この核酸は、別の生物由来のものであってもよいし、または例えば、細胞もしくはサンプル中で通常は発現されないmRNA分子であってもよい。
【0060】
[0082]「免疫応答性細胞」とは、免疫応答において機能する細胞、またはその前駆細胞もしくは子孫細胞を意味する。
[0083]「増加」とは、少なくとも5%プラスに変化させることを意味する。変動は5%、10%、25%、30%、50%、75%、さらには100%でもありうる。
【0061】
[0084]「単離された細胞」とは、天然にその細胞に付随する分子成分および/または細胞成分から分離された細胞を意味する。
[0085]「単離された」という用語は、その物質がその元の環境(例えば、天然に存在する場合は天然の環境)から取り除かれることを意味する。例えば、生きている動物の中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドを天然の系において共存する物質の一部または全部から分離したものは、単離されたものである。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であってもよく、および/または、そのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、組成物の一部でもあってもよいが、それでもなお、そのようなベクターもしくは組成物がその天然の環境の一部ではないという点で、単離されたものであり得る。
【0062】
[0086]「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」という用語は、その天然の状態で見出される通常それに付随する成分から、様々な程度で遊離した物質を指す。「単離する」とは、元の供給源または周囲の環境からの、ある程度の分離を示す。「精製する」とは、単離よりも高い程度の分離を示す。「精製された」または「生物学的に純粋な」タンパク質とは、エンドトキシンフリーのように、不純物がタンパク質の生物学的性質に重大な影響を与えたり、その他の有害な結果を引き起こしたりしないように、他の物質を十分に含まないものである。つまり、核酸またはペプチドは、組換えDNA技術によって生産された場合は細胞物質、ウイルス物質、または培養液が、化学合成された場合は化学前駆体またはその他の化学物質が、実質的に含まれていなければ、精製されたものである。純度および均質性は、典型的には分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを用いて決定される。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲル中で本質的に1つのバンドを生じることを示しうる。例えば、リン酸化またはグリコシル化といった修飾を受け得るタンパク質の場合、異なる修飾は、個別に精製され得る、異なる単離タンパク質を生じうる。
【0063】
[0087]本明細書で使用される場合、「リンカー」または「スペーサー」とは、2つ以上のポリペプチドまたは核酸を、それらが互いに連結されるように、共有結合で結びつける官能基(例えば、化学物質またはポリペプチド)を意味するものとする。本明細書で用いられる「ペプチドリンカー」とは、2つのタンパク質を一緒に結合させるために(例えば、VHドメインとVLドメインを結合させるために)用いられる1つ以上のアミノ酸を指す。
【0064】
[0088]「バリアント」とは、天然の配列のポリペプチドとある程度異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。通常、アミノ酸配列バリアントは、少なくとも約80%の配列同一性を有し、より好ましくは少なくとも約90%の配列相同性を有する。アミノ酸配列バリアントは、基準アミノ酸配列内の特定の位置に置換、欠失、および/または挿入を有しうる。
【0065】
[0089]本明細書で使用される目的タンパク質の「バリアント」とは、1つ以上のアミノ酸が変更されたアミノ酸配列を指す。バリアントは、置換アミノ酸が類似の構造的または化学的性質を有する「保存的」な変化を有していてもよい(例えば、ロイシンのイソロイシンによる置換)。より稀には、バリアントは「非保存的」な変化を有していてもよい(例えば、グリシンのトリプトファンによる置換)。また、同様なマイナーな変動は、アミノ酸の欠失もしくは挿入、またはその両方を含んでいてもよい。生物学的または免疫学的活性を失うことなく、どのアミノ酸残基が置換、挿入、または欠失されうるかを決定するための指針は、当技術分野で周知のコンピュータプログラム、例えばDNASTARソフトウェアを用いて見出されうる。
【0066】
[0090]本明細書で使用される場合、「移植片」という用語は、第1の哺乳動物(またはドナー)から得られ、第2の哺乳動物(レシピエント)、好ましくはヒトに移植され得る臓器および/または組織を指す。「移植片」という用語は、例えば、皮膚、心臓、肺、心肺(例えば、心臓と片肺、心臓と両肺)、肝臓、腎臓、膵臓(例えば、膵島細胞、β細胞)、副甲状腺、腸(例えば、結腸、小腸、十二指腸)などの臓器を包含する。移植片は、適当な哺乳動物(例えば、ヒト、ブタ、ヒヒ、チンパンジー)から得ることができ、ある種の状況下では、適当な哺乳動物から得られた細胞を培養することにより、移植片がin vitroで生成され得る。移植片は、好ましくはヒトから得られる。
【0067】
[0091]本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジおよび霊長類などの哺乳動物、特にヒトを示す。動物モデル、特に小型哺乳動物、例えばマウスが、実験的調査に使用され得る。好ましくは、対象はヒトである。
【0068】
[0092]「非免疫原性」とは、免疫応答が適応免疫応答および/または自然免疫応答を含む場合、免疫応答を開始、誘発または増強しない物質を指す。
[0093]「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAのセグメントを意味する;それは、コード領域に先行および後続する領域である「リーダーおよびトレーラー」、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含む。イントロンの全部または一部を欠く遺伝子が、開発されてもよい。いくつかのリーダー配列は、核酸からポリペプチドへの翻訳を促進しうる。
【0069】
[0094]「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、および適切な場合にはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを指す。本用語はまた、等価物として、ヌクレオチドアナログから作られるRNAもしくはDNAのいずれかのアナログ、ならびに記載の実施形態に適用可能なように、一本鎖(センスもしくはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドも含むと理解されるべきである。
【0070】
[0095]「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。「予防する」という用語は、当技術分野で認識されており、病態に関連して使用される場合、当技術分野で十分に理解されており、病態の発症前に組成物を投与しない対象に比べて、対象における病態の頻度を低減させるか、重症度を低減させるか、または症状の発症を遅延させる組成物を投与することを含む。
【0071】
[0096]本明細書で使用される場合、「1型糖尿病」は、1型糖尿病、インスリン依存性糖尿病、特発性糖尿病、若年性1型糖尿病、成人における潜在性自己免疫性糖尿病のうちの1つ以上を含む。1型糖尿病に関連する状態は、多発性神経炎、単神経炎、末梢神経炎、自律神経炎を含む神経障害;眼合併症:緑内障、白内障、および/または網膜症;腎合併症:糖尿病性腎症を含む。
【0072】
[0097]感染症の予防は、例えば、未治療/対照集団に対する治療集団における感染症の診断数を低減させること、および/または未治療対照集団に対する治療集団における感染症の症状の発現を遅延させることを含む。
【0073】
[0098]一般的な説明
[0099]一般に、免疫応答性細胞は、認識ドメインのエピトープを認識する細胞外ポリペプチドを有するキメラ抗原受容体(CAR)を含む。細胞外ポリペプチドは、MAb(モノクローナル抗体)可変領域である。
【0074】
[00100]1つの実施形態において、細胞外ペプチドGAD65 MAbは、配列番号1~6のうちの1つのアミノ酸配列(エピトープ)の少なくとも一部を認識するCARの一部である。「細胞外」という用語は、本明細書では、細胞内(図1Aに示されているCD3ζおよびCD28)と区別するために用いられる。このCARにおいて、GAD65 MAb可変領域は、免疫応答性(Treg)細胞によって発現される細胞外組換えポリペプチドである。
【0075】
[00101]例えば、細胞外ポリペプチド(CARのGAD65 MAb可変領域)は、配列番号1~6のうちの1つから選択される1つのアミノ酸配列の少なくとも一部を認識するGAD65抗原結合ドメインである。
【0076】
[00102]いくつかの実施形態では、細胞外ポリペプチドは、MDMRVPAQLLGLLLLWLPGAKCDIQLTQSPTFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPNLLIYVASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNNYPLTFGGGTKVEIKRPPPPRPPPPRPPPPRQLQLQESGPGLLKPSETLSLTCSVSGGSIGSSSYSWGWIRQPPGKGLEYIGIIYHSGRTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAMYYCARQVPYQPLLDGGNWFDPWGQGTLVTVSS(配列番号7)の配列を有する。そのような実施形態では、CAR-TregはCAR-Nと呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、細胞外ポリペプチドは、MAWTVLLLGLLSHCTGSVTSYVLTHPPSVSVAPGKTGTITCGGSNIGSKSVHWYQQKPGQAPKLVIYYDSDRPSGIPERFSGSTSGNTATLTISSVEAGDEADYYCQVWDSSGDHMVVFFGGTKLTVLPPPPRPPPPRPPPPRQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGLTFSHHGMHWVRQAPGKGLEWVAFISYDETKKYYVKSVMGRFTIARDNSKNTLYLHLKSLRPDDAAVYYCAKAFSTTIFGVVTYGMDVWGQGTTVIVSS(配列番号8)の配列を有する。そのような実施形態では、CAR-TregはCAR-Mと呼ばれることがある。
【0077】
[00103]免疫応答性細胞のCAR(GAD65 CARを含む)のMAb可変領域は、特異的抗原(GAD65または他の自己免疫疾患および固形臓器移植拒絶反応のための所望の抗原のいずれか)と結合することによって活性化される(免疫応答が増強される)。
【0078】
[00104]よって、1つの実施形態では、GAD65 CAR-Treg細胞は、基本的に、Treg細胞(例えば、対象の末梢血から単離される)と、MAb可変領域を介して特定の抗原を認識する構築物(CAR)から作られる。
【0079】
[00105](CAR-Treg細胞によって発現される)CAR成分は、図1Aに示されているように、細胞内成分(CD3ζおよびCD28)、スペーサー、および細胞外成分(MAb可変領域)を含む。CARの発現は、任意の細胞タンパク質の発現経路(DNA->RNA->タンパク質)に従う。異なる成分(ポリペプチドであるCD3ζ、CD8、スペーサー、およびMAb可変領域)は、ペプチド結合によって一緒に連結される。
【0080】
[00106]例えば、GAD65エピトープ(それに対する抗体をT1Dのヒトが作る)を認識するMAb可変領域が、他の成分(CD3ζ、CD8、スペーサー)と一緒に組み立てられる。
【0081】
[00107]他の例では、自己免疫疾患および固形臓器移植拒絶反応を治療するために、選択された自己抗原を用いてCAR-Tregが作製される。そのような抗原(それに対する抗体をヒトが作る)の非限定的な例が、以下の表1~3に列挙されている。エピトープ特異的CAR-Tregを作製するために、これらの抗原のエピトープが(GAD65のように)選択される。
【0082】
[00108]少なくともいくつかの実施形態によれば、T1Dを含む免疫関連障害の治療に適合した、単離された可溶性パラトープポリペプチド、またはその断片もしくはバリアントもしくはホモログ、またはそれらを含む融合タンパク質もしくはコンジュゲート、あるいは配列番号1~6に結合するアミノ酸のいずれか1つの細胞外ドメインを含むポリペプチド、またはその断片もしくはバリアントもしくはホモログ、またはそれらを含む融合タンパク質もしくはコンジュゲート、あるいは前述のいずれかを含む医薬組成物の使用が提供される。
【0083】
[00109]場合により、パラトープポリペプチドは、配列番号1~6のいずれかに結合するアミノ酸残基と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸残基の配列、または治療に適合するその断片、もしくはバリアント、もしくはホモログを含む。場合により、ポリペプチドは、検出可能な部位または治療部位に結合されている。いくつかの実施形態では、パラトープポリペプチドは、MDMRVPAQLLGLLLLWLPGAKCDIQLTQSPTFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPNLLIYVASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNNYPLTFGGGTKVEIKRPPPPRPPPPRPPPPRQLQLQESGPGLLKPSETLSLTCSVSGGSIGSSSYSWGWIRQPPGKGLEYIGIIYHSGRTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAMYYCARQVPYQPLLDGGNWFDPWGQGTLVTVSS(配列番号7)の配列、またはそれに対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。他の実施形態では、パラトープポリペプチドは、MAWTVLLLGLLSHCTGSVTSYVLTHPPSVSVAPGKTGTITCGGSNIGSKSVHWYQQKPGQAPKLVIYYDSDRPSGIPERFSGSTSGNTATLTISSVEAGDEADYYCQVWDSSGDHMVVFFGGTKLTVLPPPPRPPPPRPPPPRQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGLTFSHHGMHWVRQAPGKGLEWVAFISYDETKKYYVKSVMGRFTIARDNSKNTLYLHLKSLRPDDAAVYYCAKAFSTTIFGVVTYGMDVWGQGTTVIVSS(配列番号8)の配列、またはそれに対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0084】
[00110]少なくともいくつかの実施形態によれば、免疫関連障害を予防および/または治療するための方法であって、治療が対象における免疫系の全体的な免疫抑制を引き起こさず、配列番号1~6のいずれかに示されるアミノ酸残基を結合するパラトープポリペプチド、またはその断片もしくはバリアントもしくはホモログを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法が提供され、場合により、その医薬組成物として提供される。
【0085】
[00111]少なくともいくつかの実施形態によれば、免疫関連障害を予防および/または治療するための方法であって、治療が対象における免疫系の全体的な免疫抑制を引き起こさず、配列番号7もしくは配列番号8のいずれかのアミノ酸配列を有するパラトープポリペプチド、またはその断片もしくはバリアントもしくはホモログを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法が提供され、場合により、その医薬組成物として提供される。
【0086】
[00112]場合により、治療することは、上記の疾患の有害な影響を治癒、管理、逆転、減衰、緩和、最小化、抑制、管理、または停止することのうちの1つ以上を含む。
[00113]一般的な方法
[00114]一般に、所望の構築物で修飾されたTregは、選択的な条件下で培養され、構築物を有するものとして選択された細胞が増殖され、例えば、宿主細胞における構築物の存在を決定するためのポリメラーゼ連鎖反応/ウェスタンブロットを使用して、さらに分析されうる。修飾された宿主細胞が同定された後には、それは計画された通りに使用でき、例えば、培養で増殖させたり、または宿主生物に導入したりされうる。
【0087】
[00115]細胞の性質に応じて、細胞は宿主生物、例えばヒトを含む哺乳動物に多種多様な方法で導入されうる。例えば、細胞は炎症性病変部位に導入されうる。
[00116]実施例
[00117]本発明のある種の実施形態は、本明細書の実施例において定義される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を指し示すものではあるが、例示のためにのみ与えられているものであることを理解されたい。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特性を確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更および修正を行い、様々な用途および条件に適合させることができる。
【0088】
[00118]より具体的には、本実施形態の様々な態様は、免疫関連疾患または障害の治療および/または治療モニタリングのための方法および組成物を提供する。
[00119]いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物は、1型糖尿病(T1D)の治療および/または治療モニタリングに向けられている。
【0089】
[00120]他の実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物は、自己免疫疾患および/または移植拒絶反応の治療および/または治療モニタリングに向けられている。
[00121]1つの具体的な実施形態では、対象は同種移植のレシピエントである。移植は、膵臓、腎臓、心臓、肺、肝臓、腸、骨、軟骨または皮膚を含むが、これらに限定されない任意の臓器または組織の移植であり得る。本明細書で用られる場合、移植寛容とは、レシピエントの免疫系によるドナー臓器の拒絶反応がないことを指す。さらに、この薬剤は、組織または細胞移植の拒絶反応を予防するか、または拒絶反応に苦しめられる可能性を低減するために使用され得る。
【0090】
[00122]以下の表1は、特異的な自己免疫内分泌異常症に有用な抗原の非限定的な例を提供している。
【0091】
【表1】
【0092】
[00123]以下の表2は、種々の臓器特異的自己免疫疾患に有用な抗原の非限定的な例を提供している。
【0093】
【表2】
【0094】
[00124]以下の表3は、種々の同種移植臓器に有用な抗原の非限定的な例を提供している。
【0095】
【表3】
【0096】
[00125]以下の表4は、有用なGAD65エピトープのアミノ酸配列の非限定的な例を提供している。
【0097】
【表4】
【0098】
[00126]以下の表5は、本明細書に記載のCAR-Tregの細胞外ポリペプチドに有用なGAD65エピトープ認識パラトープのアミノ酸配列の非限定的な例を提供している。
【0099】
【表5】
【0100】
[00127]場合により、CAR GAD65エピトープを認識するパラトープの1つ以上が、ベクター中に含まれていてもよく、これは同じベクター(バイシストロン)でも、または別個のベクターであってもよい。CAR GAD65パラトープをコードするアミノ酸は各々、同一または異なるプロモーターでありうるプロモーターに作動可能に連結されうる。場合により、1つ以上がベクターに含まれていてもよく、これは同じベクター(バイシストロン)でも、または別個のベクターであってもよい。CAR GAD65パラトープは各々、同一または異なるプロモーターでありうるプロモーターに作動可能に連結されうる。
【実施例1】
【0101】
[00128]実施例1 - 1型糖尿病
[00129]方法:
[00130]T細胞受容体(CD28ヒンジ-膜貫通-細胞内領域およびCD3ζ細胞内ドメイン)の組み立てのために、N末端領域(CAR-N)および中間領域(CAR-M)の2つの免疫優性領域と相互作用する2つのGAD65 B細胞エピトープを選択した。CAR-Nは、MDMRVPAQLLGLLLLWLPGAKCDIQLTQSPTFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPNLLIYVASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNNYPLTFGGGTKVEIKRPPPPRPPPPRPPPPRQLQLQESGPGLLKPSETLSLTCSVSGGSIGSSSYSWGWIRQPPGKGLEYIGIIYHSGRTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAMYYCARQVPYQPLLDGGNWFDPWGQGTLVTVSS(配列番号7)の細胞外ポリペプチド配列を含んでおり、CAR-Mは、MAWTVLLLGLLSHCTGSVTSYVLTHPPSVSVAPGKTGTITCGGSNIGSKSVHWYQQKPGQAPKLVIYYDSDRPSGIPERFSGSTSGNTATLTISSVEAGDEADYYCQVWDSSGDHMVVFFGGTKLTVLPPPPRPPPPRPPPPRQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGLTFSHHGMHWVRQAPGKGLEWVAFISYDETKKYYVKSVMGRFTIARDNSKNTLYLHLKSLRPDDAAVYYCAKAFSTTIFGVVTYGMDVWGQGTTVIVSS(配列番号8)の細胞外ポリペプチド配列を含んでいる。
【0102】
[00131]これらのGAD65 CAR-Tregを用いて、T1Dのヒト化マウスモデルにおける糖尿病を予防/治療した。
[00132]結果:
[00133]共焦点画像は、静脈内免疫の24時間後にCAR-Tregが島周辺領域にホーミングすることを示した。30日後のフォローアップにおいて、GAD65特異的CAR Treg治療群では、空腹時血糖値およびGTT/インスリン分泌試験が、通常のTregおよび非特異的EPCAM(対照CAR-Treg)群と比較して有意に改善した。GAD65 CAR-Tregの膵島局在は、30日後にもまだ実証された。フローサイトメトリーにより、CD8+ Tエフェクター(Teff)細胞の退縮とGAD65 CAR-Tregの増殖が確認された。
【0103】
[00134]図1Aは、CAR Tregの設計スキームを提供している。
[00135]図1Bは、Teffをダウンレギュレートするためには、抗原特異的制御性T細胞(CAR-Treg)が豊富に存在し、ベータ細胞に近接している必要があることを概略的に示している。CAR-TregがGAD65に対して活性化されると、CAR-Tregは近くのTeff細胞を沈静化し、膵島ベータ細胞を救済する。
【0104】
[00136]図2は、T1Dのヒト化マウスモデルの特性を示している。図2の上のパネルは、ヒトとマウスモデルの遺伝的素因と標的抗原の有無の比較である。図2の下のパネルは、ヒト化T1Dマウスの膵臓凍結切片(8μm)の共焦点顕微鏡写真である。赤=インスリン;青=GAD65;緑=HLA-DQ8。左の写真は、膵島を示している。GAD65は島領域およびその周囲に存在するが、APC(HLA-DQ8)とも密接に接触している。左側中央の写真では、GAD65(青)がマクロファージ(緑 20.4μm)によって認識され、取り込まれている;ベータ細胞は、インスリン(赤)で染色された。右側の写真は、T1Dマウスの膵島周囲領域を(右から左へ)拡大率を徐々に高めて示している。白い矢印は、GAD65(ベータ細胞)とAPC HLA-DQ8の相互作用を指し示している。
【0105】
[00137]図3は、血液、膵臓リンパ節(PLN)、膵臓(PN)および脾臓におけるGFP-GAD65 CAR-Treg細胞のフローサイトメトリー追跡を示している。FITCチャネルでGFPを検出することで、単一の細胞をフローサイトメーター(BD FACSCANTO)を用いて取得した。自然発症のヒト化マウスモデルに500万個のGFP-GAD65 CAR-Treg細胞を注入した(緑色蛍光タンパク質(GFP)を共発現、屠殺の24時間前)。
【0106】
[00138]図4は、3D iDISCO、膵島の形態およびGFP-GAD65 CAR-Treg細胞の局在を示している。ヒト化マウス(T1Dモデル)にCAR-Treg細胞(緑色蛍光タンパク質、GFPを発現)を注射し、24時間後に安楽死させた。
【0107】
[00139]図4、上から下(100倍、10倍、4倍の3つの異なる拡大率の膵臓):3つの異なる位置で膵島を個別に記録した(下のパネル、4倍の拡大率)。
[00140]図4、左から右(染色):
A列:緑のフィルターは、GFPを発現するCAR-Treg細胞を示している。
B列:赤のフィルターは、インスリン発現膵島細胞を示している。
C列:AとBの重ね合わせ。
D列:青のフィルターは、GAD65発現膵島細胞を示している。
E列:A、B、およびDの重ね合わせ。
【0108】
[00141]図5A~5Eは、免疫細胞のフローサイトメトリーを示す一連のグラフを含んでいる。異なるCAR-Tregおよび対照細胞処置動物の免疫細胞プロファイリング:自家Tregを脾臓から単離し、IL-2(2000ng/ml)を用いてin vitroで増幅させた。その後、自家増幅TregにCAR-MおよびCAR-N Treg構築物を形質導入した。CAR-M/N構築物のTreg発現は、PCRおよびウェスタンブロットで確認した。ヒト化マウス(T1Dモデル)に、500万個のGAD65特異的CAR-M Treg/CAR-N Treg細胞、通常のTreg細胞、およびEPCAM(対照CAR-Treg細胞)を投与した。処置の30日後にマウスを安楽死させた。膵臓(PN)、膵臓リンパ節(PLN)および脾臓を処理して、単一細胞懸濁液とした。
【0109】
[00142]図5Aは、通常のTreg、EPCAM(対照CAR-Treg)、またはGAD65 CAR-MもしくはCAR-N Treg細胞のいずれかによる処置から30日後の膵臓リンパ節(PLN)、膵臓(PN)、および脾臓におけるTreg細胞集団を示している。統計学的有意性(および**)はP<0.05で判定した。
【0110】
[00143]図5Bは、膵臓リンパ節(PLN)、膵臓(PN)、および脾臓における注入30日後のTヘルパー(Th1)細胞集団を示している。統計学的有意性(および**)はP<0.05で判定した。
【0111】
[00144]図5Cは、膵臓リンパ節(PLN)、膵臓(PN)、および脾臓における注入30日後のTヘルパー(Th17)細胞集団を示している。統計学的有意性(および**)はP<0.05で判定した。
【0112】
[00145]図5Dは、膵臓リンパ節(PLN)、膵臓(PN)、および脾臓における注入30日後のインターフェロンガンマ(IFNg)産生T細胞(CD3)細胞集団を示している。統計学的有意性(および**)はP<0.05で判定した。
【0113】
[00146]図5Eは、膵臓リンパ節(PLN)、膵臓(PN)、および脾臓における注入30日後のインターフェロンガンマ(IFNg)産生CD8 T細胞(CTL)集団を示している。統計学的有意性(および**)はP<0.05で判定した。
【0114】
[00147]図6は、CAR-M Treg/CAR-N Treg/通常のTreg/EPCAM(対照CAR-Treg)処置の1カ月後におけるグルコース負荷試験(GTT)の測定値を示している。30日フォローアップのGTT:グルコース耐性は、GAD65特異的CAR Treg処置群において、通常のTregおよび非特異的EPCAM(対照CAR-Treg)群と比較して有意に改善した。通常のTregによる処置は、EPCAM(対照CAR-Treg)と比較して差がない。
【0115】
[00148]図7A~7Bは、CAR-Treg(CD25)およびTresp(CD4CD25)の抑制/増殖アッセイを示している(n=3~4)。図7A=Treg(CD4CD25);図7B=CAR-Treg(CD25)。In vitro抑制アッセイのフローサイトメトリー解析:レスポンダーT細胞として使用したナイーブCD4 T細胞(Tresp CD4CD25)およびGAD65 CAR-Treg細胞(CD25)を組換えhGAD65抗原(4μg/ml)と共に異なる比率(図7Cの表)で共培養した。5日後、細胞をCD4抗体とCD25抗体で免疫蛍光染色した。リンパ球をFSCとSSCに従ってゲーティングした。CD4 T細胞はCD4(y軸)とFSC(x軸)に従ってゲーティングした。CAR-Treg細胞(CD25)はCD25(y軸)に従ってCD4CD25 Tresp細胞と区別した。両細胞集団をCellTrace(CFSE-FITC、x軸)中でインキュベートした。ヒストグラムプロットは、増殖アッセイソフトウェアFLOW JO_V10を用いて解析した増殖指数/複製指数を示している。
【0116】
[00149]図7Cは、in vitro抑制アッセイの要約データである。Tresp細胞(CD4CD25、CD4 T Cell Isolation Kitを用いてマウス脾臓から単離)とGAD65特異的CAR-Treg細胞(CD25)を組換えhGAD65抗原(4μg/ml)の存在下で5日間共培養した。細胞の抑制/増殖能は、異なる共培養比率でGAD65 CAR-Treg細胞とTresp細胞の増殖を分析することにより決定した。
【0117】
[00150]図7Dは、図7A~7Bに示されているように、異なる比率のTrespおよびCAR-Tregにおけるin vitro抑制/増殖アッセイの増殖/複製指数の要約データの表を示している。
【0118】
[00151]図8A~8Bは、in vivo増殖アッセイの分析を示している:緑色蛍光タンパク質(GFP)を共発現するEPCAM特異的CAR-Treg細胞とGAD65特異的CAR-Treg細胞をヒト化T1Dマウスに注入した。マウスを48時間後に屠殺した。CAR-Treg(EPCAMおよびGAD65)をGFPの共発現に基づいて単離した。両細胞集団を(細胞増殖色素eFluor 670)中でインキュベートした。これらの細胞をBD Cantoフローサイトメトリーで解析し、リンパ球をFSCとSSCに従ってゲーティングした。CAR-Treg細胞をさらに、CD25 +ve細胞(y軸)と細胞増殖色素eFluor 670(x軸)に基づいてゲーティングした。
【0119】
[00152]増殖細胞の頻度は、FLOW JO増殖アッセイを用いて分析した。ヒストグラムプロットを用いて、増殖指数/複製指数を決定した。GAD65特異的CAR-Treg細胞のin vivo増殖は、非糖尿病CAR-Treg(EPCAM)に比べて倍増していた。これはGAD65 CAR Tregの特異性と抗原特異的な増殖能力を示している。
【0120】
[00153]図8C~8Dはin vitro増殖アッセイの分析を示している:通常のTreg細胞(図8C)およびGAD65 CAR-Treg細胞(図8D)は、高濃度のIL-2(2000ng/ml)および組換えhGAD65(4μg/ml)の下で増殖した。リンパ球をFSCとSSCに従ってゲーティングした。Treg細胞(CD25 +ve)はCD25 -ve細胞と区別された(y軸)。両細胞集団をCellTrace(CFSE-FITC、x軸)中でインキュベートした。
【0121】
[00154]増殖細胞の頻度は、FLOW JO増殖アッセイを用いて分析した。ヒストグラムプロットを用いて、増殖指数/複製指数を決定した。CAR-TregはGAD65抗原に特異的であり、その増殖率は通常のTreg細胞の約3倍であった。
【0122】
[00155]よって、抗原特異的CAR-Tregを用いた抗原特異的Tregのリダイレクションおよび増殖と、その結果生じるTeffのダウンレギュレーションは、ベータ細胞の回復と再構成を可能にし、ヒトにおいても同様な挙動を示すであろう。
【0123】
[00156]TeffはCD4、Tヘルパー1、Tヘルパー17、CD8、および細胞傷害性リンパ球(CTL)を含むことを理解されたい。
【0124】
[00157]T1Dの予防および/または治療の例
[00158]いくつかの実施形態では、対象は、T1DもしくはIDDM、またはプレIDDMもしくはプレT1Dと診断されている。当業者は、顕性糖尿病の発症を低減または予防する治療薬から潜在的に恩恵を受けるであろう患者を決定することができる。当業者であれば、局所効果、薬力学、吸収、代謝、送達方法、年齢、体重、疾患の重症度、および治療に対する反応などのいくつかの考慮事項に基づいて、対象に投与される組成物の治療有効量を決定することができる。
【0125】
[00159]糖尿病パラメータの改善は、任意の観察可能または測定可能な改善でありうる。したがって、当業者は、治療が患者または対象の状態を改善することはあっても、疾患の完全な治癒には至らない可能性があることを認識している。ある種の態様では、組成物は、宿主の組織および/またはドナーの臓器拒絶反応に対する免疫応答のレベルを減少、低減、阻害、または消失させるのに有効な量で投与される。
【0126】
[00160]有効性は、治療中の患者において、例えば体重をモニターすることによって、モニタリングすることができ、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%またはそれ以上の体重増加が、治療の成功を指し示し得る。インスリンの測定は、有効性をモニタリングするための別の関連マーカーであり、治療が成功した場合の値の増加は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、または少なくとも約50%以上でありうる。
【0127】
[00161]本開示の1つの実施形態において、改変Treg組成物は、炎症および毒性を減少、低減、阻害、または消失させるのに有効な量で投与される。
[00162]治療レジメンも様々でありうるが、患者の健康状態および年齢にしばしば依存する。ある種の疾患では、より積極的な治療が必要とされるが、同時に、ある種の患者は、より毒性の強いレジメンには耐えられない。臨床医は、治療用製剤の公知の有効性および毒性(もしあれば)に基づいて、そのような決定を下すのに最も適している。
【0128】
[00163]特定の実施形態では、組成物は、単回投与または複数回投与で投与される。単回投与は、毎日、または1日に複数回、または1週間に複数回、または毎月、または1カ月に複数回、または1カ月/年に1回投与されうる。一連の投与は、毎日、または1日に複数回、毎週、または1週間に複数回、または毎月、または1カ月に複数回投与されうる。
【0129】
[00164]改善とは、任意の観察可能または測定可能な改善である。したがって、当業者は、治療が患者または対象の状態を改善することはあっても、疾患の完全な治癒には至らない可能性があることを認識している。ある種の態様では、組成物は、レシピエントの免疫応答のレベルを減少、低減、阻害、または消失させるのに有効な量で投与される。
【0130】
[00165]本発明の組成物は、数分から数週間の範囲の間隔で、他の薬剤に先行してもよく、並行してもよく、および/または追随してもよい。本組成物と他の薬剤が細胞、組織または生物に別々に適用される実施形態では、一般に、本組成物と薬剤が、細胞、組織または生物に対して有利に組み合わされた効果を依然として発揮することができるように、それぞれの送達時間の間に有意な期間が経過しないようにされるであろう。
【0131】
[00166]本組成物と1つ以上の薬剤との様々な併用レジメンが採用されうる。当業者は、本開示の組成物と薬剤は、任意の順序または組み合わせで投与され得ることを認識している。
【0132】
[00167]投与
[00168]本明細書に記載の遺伝子修飾免疫応答性細胞を含む組成物は、自己免疫障害または疾患の治療のために対象に全身的または直接的に提供され得る。1つの実施形態では、そのような細胞は、目的の臓器(例えば、移植された臓器、自己免疫障害に冒された臓器など)に直接的に注入される。
【0133】
[00169]あるいは、遺伝子修飾免疫応答性細胞を含む組成物は、例えば循環系(例えば、血管系)への投与によって、目的の臓器に間接的に供給される。細胞の投与前、投与中、または投与後に、in vitroまたはin vivoにおける細胞の生成を増加させるために、増殖剤および分化剤が提供され得る。
【0134】
[00170]改変された細胞は、生理学的に許容される任意のビヒクル中で、通常は血管内に投与され得るが、骨中に導入されてもよく、または細胞が再生および分化に適切な部位(例えば、胸腺)を見つけることができる他の好都合な部位に導入されてもよい。
【0135】
[00171]例えば、少なくとも1×10個の細胞が投与され、最終的には1×1010個以上に達する。遺伝子修飾免疫応答性細胞は、精製された細胞集団を含み得る。当業者であれば、蛍光活性化細胞選別(FACS)などの様々な周知の方法を用いて、集団中の遺伝子修飾免疫応答性細胞の割合を容易に測定することができる。遺伝子修飾免疫応答性細胞を含む集団の純度の好ましい範囲は、約50%から約55%、約55%から約60%、および約65%から約70%である。より好ましくは、純度は約70%から約75%、約75%から約80%、約80%から約85%であり;さらにより好ましくは、純度は約85%から約90%、約90%から約95%、および約95%から約100%である。
【0136】
[00172]投与量は、当業者により容易に調整され得る(例えば、純度の減少は、投与量の増加を必要としうる)。細胞は、注射、カテーテルなどにより導入され得る。所望により、インターロイキン、例えば、IL-2、IL-3、IL-6、IL-10、IL12、IL13、IL21、IL1S、ならびに他のインターロイキン、コロニー刺激因子、例えば、G-CSF、M-CSFおよびGM-CSF、インターフェロン、例えば、γ-インターフェロンおよびエリスロポエチンを含むが、これらに限定されない因子も含められ得る。
【0137】
[00173]本開示の組成物は、遺伝子修飾免疫応答性細胞またはその前駆細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を含む。投与は、自家投与または異種投与であり得る。例えば、免疫応答性細胞または前駆細胞は、ある対象から得て、同じ対象または異なる適合する対象に投与され得る。本開示の末梢血由来免疫応答性細胞またはその子孫細胞(例えば、in vivo、ex vivo、またはin vitro由来)は、カテーテル投与を含む局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を介して投与され得る。治療用組成物(例えば、遺伝子修飾免疫応答性細胞を含む医薬組成物)を投与する際、一般には単位用量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、乳剤)で製剤化される。
【0138】
[00174]医薬組成物
[00175]本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に溶解または分散された本明細書に開示の化合物、および/または追加の薬剤の有効量を含む。「医薬」または「薬理学的に許容される」という語句は、例えばヒトなどの動物に投与した場合に、有害反応、アレルギー反応、その他の好ましくない反応を生成しない分子実体および組成物を指す。少なくとも1つの化合物または追加の活性成分を含む医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、2003に例示されているように、本開示に照らして当業者には公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与については、調製物は、FDA生物学的製剤基準室により要求される無菌性、発熱原性、一般的安全性、および純度の基準を満たすべきであることが理解される。
【0139】
[00176]本明細書に開示の組成物は、固体、液体またはエアロゾルの形態で投与されるかどうか、および注射のような投与経路のために無菌性である必要があるかどうかに応じて、異なるタイプの担体を含みうる。本明細書に開示の組成物は、静脈内、皮内、経皮、髄腔内、動脈内、腹腔内、経鼻、膣内、直腸内、骨内、骨周囲、局所、筋肉内、皮下、粘膜内、骨内、骨周囲、子宮内、経口、局所、局在投与によって、吸入を介して(例えば、エアロゾル吸入)、注射によって、注入によって、持続注入によって、局所灌流浴による標的細胞への直接投与によって、カテーテルを介して、洗浄を介して、クリーム中、脂質組成物中において(例えば、リポソーム)、または当業者に公知であろう他の方法もしくは上記の任意の組み合わせによって、投与され得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、2003を参照)。
【0140】
[00177]動物またはヒトの患者に投与される本明細書に開示の組成物の実際の投与量は、体重、状態の重症度、治療される疾患のタイプ、以前のまたは同時の治療介入、患者の特発症、および投与経路などの物理的および生理学的因子によって決定され得る。投与量および投与経路に応じて、好ましい投与量および/または有効量の投与回数は、対象の反応に応じて変化しうる。いずれにせよ、投与を担当する医師が、組成物中の活性成分の濃度および個々の対象に対する適切な用量を決定する。
【0141】
[00178]ある種の実施形態において、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物(例えば、細胞混合物)を含みうる。他の実施形態では、活性化合物は、ユニットの重量の約2%から約75%、または例えば、約25%から約60%、およびそこから導出可能な任意の範囲を含みうる。当然のことながら、治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、化合物の任意の単位用量において適切な投与量が得られるように調製されうる。溶解度、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品の貯蔵寿命、ならびに他の薬理学的考慮事項などの因子は、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、したがって、種々の投与量および治療レジメンが所望されうる。
【0142】
[00179]他の非限定的な例(例えば、重量ベースの活性化合物)において、用量はまた、1回の投与あたり約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から、約1000mg/kg/体重またはそれ以上、およびそこから導出可能な任意の範囲も含みうる。本明細書において列挙されている数値から導出可能な範囲の非限定的な例では、上記の数値に基づいて、約5mg/kg/体重から約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重から約500ミリグラム/kg/体重などの範囲が投与され得る。
【0143】
[00180]ある種の実施形態では、本明細書中の組成物および/または追加の薬剤は、消化経路を介して投与されるように製剤化される。消化管経路は、組成物が消化管と直接接触する可能性のあるすべての投与経路を含む。具体的には、本明細書に開示の医薬組成物は、経口、口内、直腸、または舌下に投与されうる。よって、これらの組成物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に製剤化されてもよいし、ハードシェルまたはソフトシェルのゼラチンカプセル中に封入されてもよいし、錠剤中に圧縮されてもよいし、または食事療法の食品に直接組み込まれていてもよい。
【0144】
[00181]さらなる実施形態では、本明細書に記載の組成物は、非経口経路を介して投与されうる。本明細書で使用される場合、「非経口的」という用語は、消化管を迂回する経路を含む。具体的には、本明細書に開示の医薬組成物は、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下、または腹腔内に投与されうるが、これらに限定はされない(米国特許第6,753,514号、同第6,613,308号、同第5,466,468号、同第5,543,158号、同第5,641,515号、および同第5,399,363号はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。
【0145】
[00182]本明細書に開示の組成物の溶液(例えば、細胞混合物)は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中で調製されうる。分散液もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中で調製されうる。通常の保管および使用の条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含んでいてもよい。注射可能な使用に適した医薬形態は、無菌の水溶液または分散液、および無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための無菌の粉末を含む(米国特許第5,466,468号、参照によりその全体が具体的に本明細書に組み込まれる)。ほとんどの場合、形態は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動性がなければならない。それは製造および保管の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されているべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子径の維持によって、および/または界面活性剤の使用によって維持されうる。微生物の作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど、様々な抗菌および抗真菌剤によってもたらされ得るが、これらに限定はされない。多くの場合、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射可能な組成物の長期にわたる吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の組成物中における使用によってもたらされ得る。
【0146】
[00183]例えば、水溶液での非経口投与の場合、必要に応じて溶液を適切に緩衝すべきであり、まずは細胞混合物のために液体希釈剤を十分な生理食塩水またはグルコースで等張にしなければならない。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、採用可能な無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者には公知である。例えば、1回の投与量を1mLの等張NaCl溶液に溶解させて、1000mLの皮下点滴液に添加するか、または注入予定部位に注射してもよい(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”第15版、1035~1038ページおよび1570~1580ページを参照)。治療を受ける対象の状態に応じて、投与量のいくらかの変動が必然的に生じる。いずれにせよ、投与を担当する者が、個々の対象に対する適切な投与量を決定する。さらに、ヒトへの投与の場合、調製物は、FDA生物学的製剤基準室により要求される無菌性、発熱原性、一般的安全性、および純度の基準を満たすべきである。
【0147】
[00184]無菌の注射可能な溶液は、組成物を適切な溶媒中に必要な量だけ、必要に応じて上に列挙した様々な他の成分と共に組み込み、次いで濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌組成物を、基本的な分散媒と上記に列挙したものの中から必要とされる他の成分とを含む無菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製のいくつかの方法は、事前に滅菌濾過した溶液から任意の追加の所望の成分を加えた活性成分の粉末をもたらす真空乾燥および凍結乾燥技術である。粉末組成物は、安定化剤の有無にかかわらず、例えば、水または生理食塩水などの液体担体と組み合わされる。
【0148】
[00185]他の実施形態では、組成物は、様々な種々の経路、例えば、局所(すなわち、経皮)投与、粘膜投与(経鼻、膣など)および/または吸入を介した投与のために製剤化されうる。
【0149】
[00186]局所投与用の医薬組成物は、軟膏、ペースト、クリーム、または粉末など、薬の塗布のために製剤化された組成物を含みうる。軟膏は油脂性、吸着性、乳化性、水溶性ベースの局所塗布用の組成物をすべて含む一方、クリームおよびローションは乳化性の基剤のみを含む組成物である。局所投与される薬物は、皮膚を通した活性成分の吸着を促進するための浸透促進剤を含んでいてもよい。適切な浸透促進剤は、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン、およびルアロカプラムを含む。局所塗布のための組成物の考えられる基剤は、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリームおよびペトロラタム、ならびに他の適切な吸収基剤、乳化基剤または水溶性軟膏基剤を含む。局所調製物はまた、組成物を保存し、均質な混合物を提供するために必要に応じて、乳化剤、ゲル化剤、および抗菌防腐剤も含みうる。組成物の経皮投与は、「パッチ」の使用も含みうる。例えば、パッチは、1つ以上の組成物を所定の速度で、固定された期間にわたって連続的に供給しうる。
【0150】
[00187]ある種の実施形態では、組成物は、点眼、鼻腔内スプレー、吸入、および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達されうる。鼻エアロゾルスプレーを介して組成物を肺に直接的に送達する方法は、米国特許第5,756,353号および同第5,804,212号に記載されている(それぞれ、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。同様に、経鼻微粒子樹脂(Takenagaら、1998)およびリゾホスファチジル-グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)を用いた薬物の送達もまた、製薬技術において周知であり、本明細書に記載の組成物を送達するために採用され得る。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリクスの形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号に記載されており(参照によりその全体が具体的に本明細書に組み込まれる)、本明細書に記載の組成物を送達するために採用され得る。
【0151】
[00188]本明細書に開示の組成物は、エアロゾルを介して送達されうることがさらに想定される。エアロゾルという用語は、液化または加圧ガス噴霧剤中に分散された、細かく分割された固体または液体粒子のコロイド系を指す。典型的な吸入用エアロゾルは、液体噴霧剤中の活性成分の懸濁液、または液体噴霧剤と適切な溶媒との混合液からなる。適切な噴霧剤は、炭化水素および炭化水素エーテルを含む。適切な容器は、噴霧剤の圧力要件に応じて異なる。エアロゾルの投与は、対象の年齢、体重、ならびに症状の重症度および反応に応じて異なる。
【0152】
[00189]キット
[00190]本明細書に開示のCAR-Treg細胞は、単一または別々の容器を含むキットの形態で包装され得ることがさらに意図されている。そのようなキットの多くの実施形態が可能である。例えば、キットは2つの容器を収容することができ、第1の容器は本明細書に記載のCAR-Treg細胞を含み、第2の容器は薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、またはアジュバントを含んでいる。そのようなキットの他の多くのバリエーションおよび実施形態が想定される。キットは典型的には、対象の方法を実施するためにキットの成分を使用するための指示書をさらに含む。対象の方法を実施するための指示書は、一般に適切な記録媒体に記録される。例えば、指示書は、キット中に添付文書として存在するか、またはキットもしくはその成分の容器のラベル中に存在しうる。他の実施形態では、指示書は、フラッシュドライブまたはCD-ROMなどの適切なコンピュータ可読記憶媒体上に存在する電子記憶データファイルとして存在する。他の実施形態では、実際の指示書はキット中に存在しないが、インターネット経由など、遠隔の供給源から指示書を入手するための手段が提供される。この実施形態の例は、指示書が閲覧され得るウェブアドレスおよび/または指示書がダウンロードされ得るウェブアドレスを含むキットである。指示書と同様に、この指示書を入手するための手段は、適切な基板上に記録される。
【0153】
[00191]本発明を様々な好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を等価物で置換できることを当業者は理解すべきである。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために多くの修飾が加えられうる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される本明細書に開示の特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、特許請求の範囲に属するすべての実施形態を含むことが意図されている。
【0154】
[00192]本発明を明らかにするため、または本発明の実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で使用される刊行物および他の資料は、参照により本明細書に組み込まれるが、便宜のため、以下の参考文献一覧に記載される。
【0155】
[00193]本明細書中に記載されているいずれかの文献の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることを認めることを意図したものではない。これらの文献の日付または内容に関する表現に関するすべての記述は、出願人に入手可能な情報に基づいており、これらの文献の日付または内容の正確性に関する自認を一切構成するものではない。
図1A
図1B
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
【配列表】
2024518826000001.app
【国際調査報告】