IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エクソンモービル ケミカル パテンツ,インコーポレイティドの特許一覧 ▶ シェブロン オロナイト カンパニー リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特表2024-518830粘度調整剤としてのエチレン-プロピレン分岐コポリマー
<>
  • 特表-粘度調整剤としてのエチレン-プロピレン分岐コポリマー 図1
  • 特表-粘度調整剤としてのエチレン-プロピレン分岐コポリマー 図2
  • 特表-粘度調整剤としてのエチレン-プロピレン分岐コポリマー 図3
  • 特表-粘度調整剤としてのエチレン-プロピレン分岐コポリマー 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-07
(54)【発明の名称】粘度調整剤としてのエチレン-プロピレン分岐コポリマー
(51)【国際特許分類】
   C10M 143/00 20060101AFI20240425BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20240425BHJP
   C10M 105/36 20060101ALI20240425BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20240425BHJP
   C10M 105/10 20060101ALI20240425BHJP
   C10M 107/08 20060101ALI20240425BHJP
   C10M 105/06 20060101ALI20240425BHJP
   C10M 105/74 20060101ALI20240425BHJP
   C10M 105/76 20060101ALI20240425BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20240425BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20240425BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20240425BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240425BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20240425BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
C10M143/00
C10M107/02
C10M105/36
C10M107/34
C10M105/10
C10M107/08
C10M105/06
C10M105/74
C10M105/76
C08F210/16
C10N20:04
C10N20:00 Z
C10N40:25
C10N30:02
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570441
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022028735
(87)【国際公開番号】W WO2022240965
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/188,726
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505335740
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】522075531
【氏名又は名称】シェブロン オロナイト カンパニー リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジョ アン エム.カニチ
(72)【発明者】
【氏名】チンウェン チャン
(72)【発明者】
【氏名】サラ ユエ チャン
(72)【発明者】
【氏名】マーヤム セパー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール.ハガドーン
(72)【発明者】
【氏名】ペイチュン チアン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エル.モーガン
【テーマコード(参考)】
4H104
4J100
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB01A
4H104BB23A
4H104BB41A
4H104BH03A
4H104CA04A
4H104CA05C
4H104CB14A
4H104CJ02A
4H104EA01C
4H104EA03C
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104EB15
4H104LA01
4H104LA20
4H104PA41
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100FA04
4J100FA10
4J100JA15
(57)【要約】
本開示は、分岐コポリマーを含む潤滑剤組成物及びかかる組成物を製造する方法に関する。本開示の潤滑剤組成物は、油とエチレンコポリマーを含み、約5以下の高温高せん断(HTHS)粘度、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)、約1:2~約1:30の増粘効率対せん断安定性指数(30サイクル)の比、約3cSt~約30cStの100℃での動粘度、及び約1以上の増粘効率を有する。別のクラスの実施形態では、本開示は、第1及び第2のコポリマーを含み、第1のコポリマーが、第2のコポリマーよりも高いエチレン含量を有し、これらの2種のコポリマーのうちの少なくとも1つが長鎖分岐エチレンコポリマーである潤滑剤組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油と、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)及び約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有する長鎖分岐コポリマーとを含む潤滑剤組成物であって、前記コポリマーが、
約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI);
約20,000~約600,000g/モルのMw(LS);
約0.7~約0.98のg’vis;及び
約20wt%~約90wt%のエチレン含量;
を有し、
前記コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、
前記金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が、式:
Al(R’)3-v(R”)
で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である、潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記コポリマーが約30wt%~約80wt%のエチレン含量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コポリマーが約40wt%~約75wt%のエチレン含量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記コポリマーが約2.0~約5.0のMw(LS)/Mn(DRI)を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
100℃での前記動粘度が約6cSt~約28cStである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
100℃での前記動粘度が約7cSt~約25cStである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記コポリマーが、約3%以上のせん断安定性指数(30サイクル)を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記コポリマーが、約20%以上のせん断安定性指数(30サイクル)を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
前記コポリマーが、約30%以上のせん断安定性指数(30サイクル)を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
前記コポリマーが約1以上の増粘効率を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
前記コポリマーが約1.5以上の増粘効率を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が約0.01wt%~約20wt%の前記コポリマーを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が約0.01wt%~約5wt%の前記コポリマーを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項14】
前記油が、炭化水素、ポリアルファオレフィン、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコール、アルコール、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコーンオイル、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が約5以下の高温高せん断(HTHS)粘度を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項16】
分散剤、洗浄剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、摩耗調整剤、極圧添加剤、消泡剤、解乳化剤、又は腐食抑制剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、第1のコポリマーのエチレン含量よりも少ないエチレン含量を有する第2のコポリマーを有し、少なくとも1つのコポリマーが長鎖分岐コポリマーである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項18】
前記長鎖分岐エチレンコポリマーが、8*EXP(8E-06*w)より高いシアシニング比を有し、ここで、wは光散乱GPC-3DからのMw(LS)である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項19】
前記コポリマーが、2.2x-110未満の融解熱(J/g)を有し、ここで、xは、FTIRにより測定した場合のエチレンのwt%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項20】
前記コポリマーがエチレンプロピレンコポリマーである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項21】
前記コポリマーが、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤から製造されたものであり、前記金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が式:
Al(R’)3-v(R”)
で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C10ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C10ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項22】
前記コポリマーが、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、前記金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が式:
Al(R’)3-v(R”)
で表され、ここで、各R’は、独立に、Cヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC10ヒドロカルベニル基であり、vは1~3である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項23】
前記コポリマーが、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、前記金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が式:
Al(R’)3-v(R”)
で表され、ここで、各R’は、独立に、Cヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するCヒドロカルベニル基であり、vは1~3である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項24】
油と長鎖分岐コポリマーとをブレンドする工程を含む潤滑剤組成物の製造方法であって、前記組成物は、
約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル);及び
約3cSt~約30cStの100℃での動粘度;
を有し、
前記コポリマーが、
約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI);
約20,000~約600,000g/モルのMw(LS);
約0.7~約0.98のg’vis;及び
約20wt%~約90wt%のエチレン含量;
を有し、
前記コポリマーが、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、前記金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が、式:
Al(R’)3-v(R”)
で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である、方法
【請求項25】
エンジンを潤滑する方法であって、油と、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)及び約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有する長鎖分岐コポリマーとを含む潤滑剤組成物をエンジンに供給することを含み、前記コポリマーが、
約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI);
約20,000~約600,000g/モルのMw(LS);
約0.7~約0.98のg’vis;及び
約20wt%~約90wt%のエチレン含量;
を有し、
前記コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、前記金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が、式:
Al(R’)3-v(R”)
で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分岐コポリマーを含む潤滑剤組成物及びかかる組成物の製造方法に関する。
【0002】
潤滑流体は、摩擦を低減するために、動く面の間に適用され、それによって、効率を向上し、摩耗を低減する。潤滑流体は、多くの場合、互いに接触している動く面の間の摩擦によって発生する熱を放散するようにも機能する。潤滑流体の1つのタイプは、内燃機関用に用いられる石油系の潤滑油である。潤滑油は、エンジンの運転条件下で酸化、摩擦、摩耗及び粘度を制御することにより油の性能を向上させる添加剤を含む。一般的に、潤滑油及び流体の粘度は温度に対して逆の依存性を示す。潤滑流体の温度が上昇すると、粘度は一般的に減少し、温度が低下すると、粘度は一般的に増加する。
【背景技術】
【0003】
粘度調整剤は、その粘度指数(VI)と流動特性を改善するために、潤滑油に添加されると、温度によってその粘度が変化する傾向を低減する。VIの改善は、保護油膜を形成する潤滑油の流動特性を一定に保つのに役立つ。これは、エンジンの熱で温度が上昇したときにエンジン部品の損傷(腐食や摩耗など)を避けるのに十分な高い粘度と、潤滑油のコールドスタートやポンピングを容易にするのに十分な低温での低い粘度を意味する。
【0004】
粘度調整剤が費用効果の高いやり方で使用されるように、ポリマーの増粘効率は重要である。米国特許第8,105,992号明細書に記載されている増粘効率(TE)は、所定の基準油にポリマーを溶解させることにより、どれだけの粘度上昇が達成できるかを示す相対的な尺度である。TEの値が高いポリマーは、有力な増粘剤であることを示す。TEは、主にポリマーの分子構造と分子量の関数である。
【0005】
ポリマーのせん断安定性指数(SSI)は、せん断応力下での機械的劣化に対する耐性を評価するために使用される。繰り返し機械的な力を受けたときにポリマー分子が鎖切断を起こす傾向は、その分子量、分子量分布、エチレン含量、長鎖枝分かれの程度によって決まる。
ポリマーのせん断安定性指数(SSI)は、欧州のディーゼルインジェクター試験装置を使用したディーゼルインジェクター装置手順を使用して評価したときの、ポリマー含有流体の100℃での粘度低下百分率の1つの指標である。SSIが高いほど、ポリマーの安定性が低く、すなわちポリマーがより機械的劣化を受けやすいことを意味する。ポリマーのせん断安定性は、粘度調整剤としてのその適性を決める重要な基準の1つである。
【0006】
ポリマーを含む潤滑油は、エンジン運転条件下で一時的な粘度低下やシアシニング(せん断減粘)を起こすこともある。この効果の1つの指標は高温高せん断(HTHS)粘度である。HTHS粘度は、非常に高いせん断速度と高温(それぞれ10-1と150℃)で測定される。高分子量ポリマー鎖は、オイルに溶解すると非常に柔軟である。せん断速度を上げると、ポリマー鎖はオイルの粘性グリップによって徐々に変形し、配向される。コイルが伸びるにつれて、オイルの粘度へのその寄与は減少する。
【0007】
TE及びSSIを含む性能面に主に影響するOCPの特性は、エチレンとプロピレンの比、ポリマーの分子量、及びポリマーの分子量分布である。VMのエチレン-プロピレン比は、コールドクランキングシミュレータ(CCS、ASTM D5293)及び流動点(ASTM D97)性能を含む潤滑油の低温特性にも影響を与え得る。
【0008】
OCPの低温性能の改善として提案されているのは、潤滑油配合に非晶質のエチレン系コポリマーと半結晶質のエチレン系コポリマーのブレンドを使用することである。例えば、2種類のエチレン-プロピレンコポリマーの組み合わせにより、低温粘度性能を維持しながら増粘効率を高めることができる。例えば、米国特許第7,402,235号及び第5,391,617号明細書ならびに欧州特許第0 638,611号明細書を参照されたい。
【0009】
広範囲の温度及びせん断条件にわたって改善された潤滑剤流動特性を提供するVI向上剤として使用するのに適したOCP組成物が依然として必要とされている。潤滑油の性能基準がより厳しくなるにつれて、改善された燃費を提供する潤滑剤組成物が引き続き求められている。燃費の向上は、エンジンオイルの粘度に関係している。低粘度オイルは,様々な条件下で運転中のエンジンの摩擦損失を低減することができる。良好なせん断安定性と潤滑油の動粘度への高い寄与を実現しつつ、燃費を向上させることができる化学組成と構造を持つ粘度指数調整剤を選択することが望ましい。シアシニング挙動が可能な高度に分岐したエチレンコポリマーをベースとする粘度調整剤の必要性は依然として残っている。さらに、油や燃料中のポリマーの低温性能を改善する必要性も残っている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、長鎖分岐コポリマーを含む潤滑油組成物及びかかる組成物の製造方法に関する。本開示の潤滑剤組成物は、油と、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)及び約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有する長鎖分岐コポリマーとを含み、ここで、長鎖分岐コポリマーは、
約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI);
約20,000~約600,000g/モルのMw(LS)
約0.7~約0.98のg’vis
約20wt%~約90wt%のエチレン含量;
を有し、コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、下式で表される:
Al(R’)3-v(R”)
ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である。
【0011】
油と長鎖分岐コポリマーとをブレンドすることを含む潤滑剤組成物の製造方法も開示され、当該組成物は、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)及び約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有し、コポリマーは、
約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI);
約20,000~約600,000g/モルのMw(LS);
約0.7~約0.98のg’vis
約20wt%~約90wt%のエチレン含量;
を有し、コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、下式で表される:
Al(R’)3-v(R”)
ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり;各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり;vは0.1~3である。
【0012】
別のクラスの実施形態では、本開示は、第1及び第2のコポリマーを含む潤滑剤組成物であって、第1のコポリマーが第2のコポリマーよりも高いエチレン含量を有する、潤滑剤組成物を提供する。
【0013】
さらに別の態様において、本開示は、希釈油と約0.5wt%~約20wt%の粘度指数向上剤とを含み、粘度指数向上剤が、約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI)、約20,000~約600,000g/モルのMw(LS)、約0.7~約0.98のg’vis、及び約20wt%~約90wt%のエチレン含量を有する長鎖分岐コポリマーを含み、コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の一実施形態による粘度調整剤を含む潤滑油のせん断安定性指数対高温高せん断(HTHS)粘度のプロットである。
【0015】
図2図2は、市販の直鎖OCP対本発明のブランチ・オン・ブランチ(branch-on-branch)EPの190℃でのニートポリマーに対する動的周波数掃引である。
【0016】
図3図3は、ポリマーのMw(LS)対シアシニング比のプロットであり、ここで、シアシニング比は、周波数0.1rad/sでの複素粘度を周波数100rad/sでの複素粘度で割った値として定義される。
【0017】
図4図4は、FTIRからのエチレン(wt%)対DSCにより測定した場合のコポリマー融解ピークの融解熱(J/g)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、長鎖分岐コポリマーを含む潤滑剤組成物及びかかる組成物の製造方法に関する。本開示の潤滑剤組成物は、油と、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)及び約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有する長鎖分岐コポリマーとを含み、ここで、長鎖分岐コポリマーは、
約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI);
約20,000~約600,000g/モルのMw(LS);
約0.7~約0.98のg’vis
約20wt%~約90wt%のエチレン含量;
を有し、コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、下式で表される:
Al(R’)3-v(R”)
ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である。
【0019】
また、油と長鎖分岐コポリマーとをブレンドすることを含む潤滑剤組成物の製造方法が開示され、当該組成物は、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)及び約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有し、ここで、コポリマーは、
約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI);
約20,000~約600,000g/モルのMw(LS);
約0.7~約0.98のg’vis
約20wt%~約90wt%のエチレン含量;
を有し、コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、下式で表される:
Al(R’)3-v(R”)
ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である。
【0020】
長鎖分岐コポリマーは、キノリニルジアミド(QDA)又はピリジルジアミド(PDA)触媒及び添加されたアルミニウムビニル移動剤(AVTA)から合成することができ、油中で粘度調整剤として使用することができる。少なくとも1つの実施形態では、ここに開示される方法によって製造されるエチレン-プロピレンコポリマーなどのコポリマーは、約20kg/モルを超える、より典型的には約40kg/モル~約600kg/モル、さらに典型的には約40kg/モル~約550kg/モルのMw(LS)を有する。少なくとも1つの実施形態では、コポリマーは、約20wt%~約90wt%、より典型的には約85wt%未満、さらにより典型的には約65wt%未満、又は約55wt%未満、又は約45wt%未満のエチレン含量を有する。少なくとも1つの実施形態では、分岐コポリマーは、1.5~6、より典型的には2.0~5.0、さらに典型的には3~4.5の範囲のMw(LS)/Mn(DRI)値を有する。本開示の潤滑剤組成物は、約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有し、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)を有する分岐コポリマーを含む。
【0021】
本開示のエチレン系コポリマーは、粘度調整剤として使用することができ、せん断安定性指数(TE/SSI)バランスに対して向上した増粘効率を提供する。これらのコポリマーは、米国特許出願公開第2018/020698号明細書及び米国特許出願公開2015/013481号明細書に開示されているような適切な重合触媒及び添加されたアルミニウムビニル移動剤(AVTA)を使用して、配位連鎖移動重合(CCTP)を介して製造することができる。
【0022】
別のクラスの実施形態では、本開示は、第1及び第2のコポリマーを含み、第1のコポリマーが第2のコポリマーのエチレン含量よりも高いエチレン含量を有し、2つのコポリマーのうちの少なくとも1つが長鎖分岐エチレンコポリマーである、潤滑剤組成物を提供する。
【0023】
さらに別の態様において、本開示は、希釈油と、約0.5wt%~約20wt%の長鎖分岐コポリマーとを含む濃縮物であって、長鎖分岐コポリマーが、約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI)、約20,000~約600,000g/モルのMw(LS)、約0.7~約0.98のg’vis、及び約20wt%~約90wt%のエチレン含量を有し、コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、式:Al(R’)3-v(R”)により表され、ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である。
【0024】
本明細書では、CHEMICAL AND ENGINEERING NEWS, 63(5), pg. 27 (1985)に記載されているように、周期表グループの番号付けスキームを使用する。例えば、「第4族金属」は、周期表第4族の元素であり、例えば、Hf、Ti、又はZrである。
【0025】
本明細書で使用される場合、代わりに「アルケン」とも呼ばれる「オレフィン」は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素と水素の直鎖状、分岐状又は環状の化合物である。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、ポリマー又はコポリマーがオレフィンを含むと称される場合、そのようなポリマー又はコポリマー中に存在するオレフィンは、オレフィンの重合形態である。例えば、コポリマーが55wt%~65wt%の「エチレン」含量を有すると言われる場合、コポリマー中のモノマー(「マー(mer)」)単位は、重合反応においてエチレンから誘導され、前記誘導単位は、コポリマーの質量に基づいて55wt%~65wt%存在すると理解される。
【0026】
「ポリマー」は、2つ以上の同じ又は異なるモノマー(「mer」)単位を有する。ホモポリマー」は、同じであるマー単位を有するポリマーである。「コポリマー」は、互いに異なる2つ以上のマー単位を有するポリマーである。「ターポリマー」は、互いに異なる3つのマー単位を有するポリマーである。マー単位について使用される「異なる」は、マー単位が互いに少なくとも1つの原子異なるか、異性体的に異なることを示す。従って、本開示で使用されるコポリマーの定義には、ターポリマーも含まれる。
【0027】
本開示において、エチレンはα-オレフィンとみなされるものとする。
【0028】
「メルトフローレート」(MFR)は、ASTM D1238に従って、230℃及び2.16kg荷重で測定される。高荷重メルトフローレート(MFR HL)は、ASTM D1238に従って、230℃及び21.6kg荷重で測定される。
【0029】
本明細書で使用する場合、「置換された」という用語は、水素基がヘテロ原子又はヘテロ原子含有基で置換されたことを意味する。例えば、「置換されたヒドロカルビル」は、少なくとも1つの水素がヘテロ原子又はヘテロ原子含有基で置換された炭素と水素からなるラジカルである。
【0030】
本開示で使用される場合、Mnは数平均分子量であり、Mwは質量平均分子量であり、Mzはz平均分子量であり、wt%は質量百分率であり、mol%はモル百分率である。多分散性(PDI)とも呼ばれる分子量分布(MWD)は、MwをMnで割った値であると定義される。特に断らない限り、全ての分子量の単位(例えば、Mw、Mn、Mz)はg/モルである。
【0031】
ポリオレフィンのコポリマー(及びターポリマー)は、ポリエチレン骨格に組み込まれた1種以上のコモノマー、例えばプロピレンなどを有する。これらのコポリマー(及びターポリマー)は、ポリエチレン単独と比較して様々な物性を提供し、例えば、溶液重合プロセス、スラリー重合プロセス又は気相重合プロセスを使用して、低圧反応器で製造される。ポリオレフィンのコモノマー含量(例えば、ポリオレフィン骨格に組み込まれるコモノマーのwt%)は、ポリオレフィンの特性(及びコポリマーの組成)に影響を及ぼし、重合触媒の種類に依存する。
【0032】
「直鎖」とは、ポリマーが、長鎖分枝を持っていたとしても、長鎖分枝を少ししか持たず、約0.97以上、例えば約0.98以上のg’vis値を有することを意味する。
【0033】
用語「シクロペンタジエニル」(Cp)は、環内に非局在結合を有し、η-結合を介してMに結合しており、炭素が5員位置の大部分を占める5員環を指す。
【0034】
本開示で使用される場合、「触媒」は、単一の触媒、又は各触媒が立体配座異性体又は立体配置異性体である複数の触媒を含む。立体配座異性体としては、例えばコンフォーマー(conformers)及び回転異性体(rotamers)が挙げられる。立体配置異性体としては、例えば立体異性体が含まれる。
【0035】
用語「錯体」は、触媒前駆体、プレ触媒(precatalyst)、触媒、触媒化合物、遷移金属化合物、又は遷移金属錯体とも呼ばれることがある。これらの単語は互換的に使用される。活性化剤及び共触媒(cocatalyst)も互換的に使用される。
【0036】
特に断らない限り、用語「置換された」は、一般的に、置換される化学種の水素が異なる原子又は原子団で置き換えられたことを意味する。例えば、メチル-シクロペンタジエンは、メチル基で置換されたシクロペンタジエンである。同様に、ピクリン酸は、3つのニトロ基で置換されたフェノールとして、あるいは、1つのヒドロキシ基と3つのニトロ基で置換されたベンゼンとして説明することができる。
【0037】
本開示では、以下の略語を使用することがある:
dmeは1,2-ジメトキシエタンであり、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Etはエチルであり、Prはプロピルであり、iPrはイソプロピルであり、n-Prはノルマルプロピルであり、Buはブチルであり、cPRはシクロプロピルであり、iBuはイソブチルであり、tBuはtert-ブチルであり、p-tBuはパラ-tert-ブチルであり、nBuはノルマルブチルであり、sBuはsec-ブチルであり、TMSはトリメチルシリルであり、TIBALはトリイソブチルアルミニウムであり、TNOALはトリ(n-オクチル)アルミニウムであり、MAOはメチルアルモキサンであり、p-Meはパラ-メチルであり、Phはフェニルであり、Bnはベンジル(すなわち、CHPh)であり、THF(thfともいう)はテトラヒドロフランであり、RTは室温(特に断りのない限り23℃)であり、tolはトルエンであり、EtOAcは酢酸エチルであり、Cyはシクロヘキシルであり、AVTAはアルミニウムベースのビニル移動剤であり、LSは光散乱であり、MALLSは多角度光散乱法であり、DRIは示差屈折率であり、IRは赤外線であり、SPLMは標準リットル/分であり、psigはポンド力/平方インチであり、TEは増粘効率であり、SSIはせん断安定性指数であり、HTHSは高温高せん断であり、TLTMは低すぎて測定不能であり、THTMは高すぎて測定不能である。
【0038】
「アニオン性配位子」とは、金属イオンに1対以上の電子を供与する負に帯電した配位子である。「中性ドナー配位子」は、金属イオンに1対以上の電子を供与する中性電荷の配位子である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「触媒系」は、少なくとも1種の触媒化合物及び担体材料を含む。本開示の触媒系は、さらに、活性化剤及び任意の共活性化剤を含むことができる。本開示では、触媒が成分の中性安定形態を含むと記載される場合、当該成分のイオン形態が、モノマーと反応してポリマーを生成する形態であることは、当業者によく理解される。さらに、式で表される本開示の触媒は、化合物の中性安定形態に加えて、当該化合物のイオン形態を包含することが意図される。さらに、本開示の活性化剤は、イオン性又は中性形態に加えて、活性化剤のイオン性/反応生成物形態を包含することが意図される。
【0040】
捕捉剤は、不純物を捕捉することにより重合を促進するために反応器に添加できる化合物である。いくつかの捕捉剤は連鎖移動剤としても機能する。いくつかの捕捉剤は活性化剤としても機能し、共活性化剤と呼ばれることもある。活性触媒を形成するために、捕捉剤ではない共活性化剤を活性化剤と併用してもよい。少なくとも1つの実施形態では、共活性化剤は、アルキル化遷移金属化合物を形成するために遷移金属化合物と予め混合することができる。捕捉剤の例としては、トリアルキルアルミニウム、メチルアルモキサン、修飾メチルアルモキサン、MMAO-3A(Akzo Nobel)、ビス(ジイソブチルアルミニウム)オキシド(Akzo Nobel)、トリ(n-オクチル)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及び水素化ジイソブチルアルミニウムが挙げられる。
【0041】
本開示で使用される場合、「アルコキシド」は、アルキル基がC~C10ヒドロカルビルであるものを包含する。アルキル基は、直鎖、分岐状、又は環状であってよい。アルキル基は飽和又は不飽和であることができる。少なくとも1つの実施形態では、アルキル基は、少なくとも1つの芳香族基を含んでもよい。
【0042】
用語「ヒドロカルビルラジカル」、「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビル基」、「アルキルラジカル」、及び「アルキル」は、本明細書を通じて互換的に使用される。同様に、「基」、「ラジカル」、及び「置換基」という用語も本明細書において互換的に使用される。本開示において、「ヒドロカルビルラジカル」は、直鎖状、分岐状、又は環状であることができるC~C100ラジカルを指し、環状の場合、芳香族又は非芳香族である。かかるラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、及びこれらの置換類似体が挙げられる。置換ヒドロカルビルラジカルは、ヒドロカルビルラジカルの少なくとも1つの水素原子が、少なくとも1つのハロゲン(Br、Cl、F又はIなど)又は少なくとも1つの官能基、例えば、C(O)R、C(O)NR 、C(O)OR、NR 、OR、SeR、TeR、PR 、AsR 、SbR 、SR、BR 、SiR 、GeR 、SnR 及びPbR など(ここで、Rは、独立に、水素又はヒドロカルビルラジカルであり、2つ以上のRが結合して置換された又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族の環状又は多環式の環構造を形成していてもよい)で置換されたか、あるいは、少なくとも1つのヘテロ原子がヒドロカルビル環内に挿入されたラジカルである。
【0043】
用語「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を有する直鎖、分岐鎖、又は環状の炭化水素ラジカルを意味する。これらのアルケニルラジカルは、任意選択的に置換されていてもよい。好適なアルケニルラジカルの例としては、エテニル、プロペニル、アリル、1,4-ブタジエニルシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル(それらの置換類似体を含む)が挙げられる。
【0044】
用語「アルコキシ」又は「アルコキシド」は、アルキルエーテル又はアリールエーテルラジカルを意味し、ここで、アルキルという用語は上記で定義したとおりである。好適なアルキルエーテルラジカルの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、及びフェノキシルが挙げられる。
【0045】
用語「アリール」又は「アリール基」は、C-C20芳香族環、例えば炭素数6の芳香族環、及びフェニル、2-メチル-フェニル、キシリル、4-ブロモ-キシリルなどのそれらの置換変異体を包含する。同様に、ヘテロアリールは、1つの環炭素原子(又は2つ又は3つの環炭素原子)がヘテロ原子、例えばN、O、Sなどで置換されたアリール基を意味する。本開示で使用される場合、用語「芳香族」は、芳香族複素環配位子と類似の特性及び構造(ほぼ平面的)を有するが、定義上芳香族ではない複素環置換基である疑似芳香族複素環も指す。同様に、用語「芳香族」は、置換芳香族も指す。
【0046】
名称を挙げたアルキル基、アルケニル基、アルコキシド基又はアリール基の異性体が存在する場合(例えば、n-ブチル、iso-ブチル、iso-ブチル、及びtert-ブチル)、そのグループの1つのメンバー(例えば、n-ブチル)への言及は、そのファミリーにおける残りの異性体(例えば、iso-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル)を明示的に開示するものとする。同様に、特定の異性体(例えば、ブチル)を特定することなく、アルキル基、アルケニル基、アルコキシド基又はアリール基を参照することは、全ての異性体(例えば、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル)を明示的に開示する。
【0047】
ここに開示されるいかなる特定の化合物についても、提示される一般的又は具体的な構造は、特に断らない限り、置換基の特定の組から生じ得る全ての立体配座異性体、位置異性体及び立体異性体を包含する。同様に、特に断らない限り、一般構造又は具体的構造は、当業者に認識されるように、エナンチオマー又はラセミ体であるか否かにかかわらず、全てのエナンチオマー、ジアステレオマー、及び他の光学異性体、並びに立体異性体の混合物も包含する。
【0048】
用語「環原子」は、環状環構造の一部である原子を意味する。この定義によれば、ベンジル基は6個の環原子を有し、テトラヒドロフランは5個の環原子を有する。
【0049】
複素環は、環原子上の水素がヘテロ原子で置換されたヘテロ原子置換環とは対照的に、環構造中にヘテロ原子を有する環である。例えば、テトラヒドロフランは複素環式環であり、4-N,N-ジメチルアミノ-フェニルはヘテロ原子置換環である。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「芳香族」は、芳香族複素環配位子と類似の特性及び構造(ほぼ平面)を有するが、定義上芳香族ではない複素環置換基である擬芳香族複素環も指し、同様に、用語「芳香族」は置換芳香族も指す。
【0051】
本開示の「組成物」は、成分(例えば、油、ポリマーなど)及び/又は2つ以上の成分の反応生成物(1種以上)を含み得る。
【0052】
用語「油組成物」、「潤滑油組成物(lubricating oil composition)」、「潤滑油組成物(lubrication oil composition)」、及び潤滑剤組成物という用語は、互換的に使用され、エチレンプロピレンコポリマーなどのエチレン系コポリマーと油とを含む組成物を指す。
【0053】
「連続的」という用語は、中断又は停止することなく作動するシステム(又は系)を意味する。例えば、ポリマーを製造する連続プロセスは、重合プロセス中に反応物が1つ以上の反応器に連続的に導入され、ポリマー生成物が連続的に引き出されるものである。
【0054】
溶液重合とは、ポリマーが、液体重合媒体、例えば不活性溶媒もしくはモノマー又はそれらのブレンドなどに溶解される重合プロセスを意味する。溶液重合は均一なものであることができる。均一重合とは、ポリマー生成物が重合媒体に溶解されるものである。かかる系は、J. Vladimir Oliveira, C. Dariva and J. C. Pinto, Ind. Eng. Chem. Res., 2000, Vol. 29, p. 4627に記載されているように濁っていない。
【0055】
バルク重合とは、重合されるモノマー及び/又はコモノマーが、溶媒又は希釈剤として使用され、溶媒又は希釈剤として不活性溶媒をほとんど又は全く使用しない重合プロセスを意味する。不活性溶媒のごく一部は、触媒や捕捉剤のキャリアとして使用され得る。バルク重合系は、不活性溶媒又は希釈剤を約25wt%未満、例えば約10wt%未満、例えば約1wt%未満、例えば約0wt%含む。
【0056】
「触媒生産性」とは、Wgの触媒(cat)を含む重合触媒を使用して、T時間の期間にわたって、どれだけ多くのグラム数のポリマー(P)が製造されるかの1つの指標であり、次式:P/(T×W)で表すことができ、gP・gcat-1・h-1の単位で表される。「転化率」は、ポリマー生成物に転化されたモノマーの量であり、mol%として報告され、ポリマー収量と反応器に供給されたモノマーの量に基づいて計算される。「触媒活性」は、触媒の活性レベルの1つの指標であり、使用した触媒(cat)1モル(又はmmol)当たりに生成した生成物ポリマー(P)の質量(kgP/molcat又はgP/mmolCat)として報告され、触媒活性は、単位時間当たり、例えば、時間当たり(hr)で表すこともできる。「触媒効率」は、触媒がどの程度効率的であるかを示す1つの指標であり、使用した触媒(cat)の質量当たり生成した生成物ポリマー(P)の質量(gP/gcat)として報告される。触媒の質量は、活性化剤の質量を含まないプレ触媒の質量である。
【0057】
用語「キノリニルジアミド錯体(quinolinyldiamido complex)」もしくは「キノリニルジアミド錯体(quinolinyldiamide complex)」又は「キノリニルジアミド触媒(quinolinyldiamido catalyst)」もしくは「キノリニルジアミド触媒(quinolinyldiamide catalyst)」は、米国特許出願公開第2018/0002352A1号明細書に記載されている。用語「ピリジルジアミド錯体(pyridyldiamido complex)」又は「ピリジルジアミド錯体(pyridyldiamide complex)」は、米国特許第9,315,593号及び米国特許第7,973,116号明細書に記載されている配位錯体の部類を指す。キノリニルジアミド錯体及びピリジルジアミド錯体は両方とも、1個の中性のルイス塩基性ドナー原子(例えば、ピリジン基、キノリン基)と1対のアニオン性アミド又はホスフィド(すなわち、脱プロトン化アミン又はホスフィン)ドナーを介して金属中心に配位したジアニオン性三座配位子を特徴とする。これらの錯体では、キノリニルジアミド配位子又はピリジルジアミド配位子は、金属に配位して、1つの5員キレート環と1つの7員キレート環を形成している。活性化時の触媒機能に影響を与えずに、キノリニルジアミド配位子又はピリジルジアミド配位子のさらなる原子を金属に配位させることが可能であり、この例としては、金属中心にさらなる結合を形成するシクロメタル化置換アリール基が挙げられる。
【0058】
本開示では、「触媒」及び「触媒錯体」は、互換的に使用される。
【0059】
本開示は、潤滑剤の粘度調整用途に有用なエチレンコポリマー、より具体的にはエチレンプロピレン(EP)コポリマーに関する。
【0060】
本開示に従って使用されるエチレンコポリマーは、エチレン及び1種以上のC~C20α-オレフィンを、活性化剤と連鎖移動剤と式(I)(以下に示す)で表されるピリジルジアミド遷移金属錯体とを含む触媒系に接触させて、約20wt%~約90wt%のエチレン含量を有するコポリマーを得ることを含む方法によって製造することができる。コポリマーは、約20wt%~約90wt%のエチレン含量を有することができる。あるいは、コポリマーは、約30wt%~約80wt%のエチレン含量から本質的になることができる。あるいは、コポリマーは、約40wt%~約75wt%のエチレン含量からなることができる。
【0061】
使用できる触媒系は、式:Al(R’)3-v(R”)により表される金属ヒドロカルベニル移動剤を含み、ここで、各R’は、独立に、C~C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、ビニル鎖末端を有するC~C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3(例えば1又は2など)である。少なくとも1つの実施形態では、金属ヒドロカルベニル移動剤は、式:Al(R’)3-v(R)により表されるアルミニウムビニル移動剤(AVTA)であり、ここで、Rは、4~20個の炭素原子を含み、ビニル鎖末端を有することを特徴とするヒドロカルベニル基として定義され、R’は1~30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基として定義され、vは0.1~3(例えば1又は2など)として定義される。
【0062】
別の実施形態では、コポリマーは、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C10ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C10ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である。
【0063】
別の実施態様では、コポリマーは、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、Cヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC10ヒドロカルベニル基であり、vは1~3である。
【0064】
さらなる実施態様では、コポリマーは、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、Cヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するCヒドロカルベニル基であり、vは1~3である。
【0065】
触媒/活性化剤の組み合わせは、スラリー重合又は気相重合で使用するためにそれらを担持することによることなどの、任意の適切な方法で遷移金属錯体と活性化剤とを組み合わせることによって、形成される。触媒/活性化剤の組み合わせは、溶液重合又はバルク重合(モノマー中)に添加されても、又は生成されてもよい。金属ヒドロカルベニル移動剤(例えばアルミニウムビニル移動剤など)は、触媒複合体の活性化前、活性化中又は活性化後、あるいは重合前又は重合中に、触媒及び/又は活性化剤に添加することができる。少なくとも1つの実施形態では、金属ヒドロカルベニル移動剤(例えばアルミニウムビニル移動剤など)は、触媒/活性化剤対とは別に、例えば触媒/活性化剤対の前などに、重合反応に加えられる。
【0066】
1種以上の移動剤、例えばAVTAなどを2種以上の触媒とともに使用するアルケン重合及び共重合も使用可能である。このアプローチで得られる生成物は、分岐ブロック構造及び/又は高レベルの長鎖分岐を有するポリマーを含み得る。
【0067】
移動剤対触媒錯体の当量比は、1:100~500,000:1であることができる。少なくとも1つの実施形態では、触媒錯体に対する移動剤のモル比は1を超える。あるいは、触媒錯体に対する移動剤のモル比は30を超える。AVTA対触媒錯体の当量比は、1:100~500,000:1であることができる。少なくとも1つの実施形態では、触媒錯体に対するAVTAのモル比は1を超える。少なくとも1つの実施形態では、触媒錯体に対するAVTAのモル比は30を超える。
【0068】
捕捉剤として使用することができる他の適切な連鎖移動剤、例えばトリアルキルアルミニウム化合物(アルキル基は、C~C20アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、又はそれらの異性体などから選択される)などと組み合わせてAVTAを使用することもできる。ATVAは、トリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリ-n-オクチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムなどと組み合わせて使用することができる。
【0069】
移動剤は、酸素含有有機アルミニウム、例えばビス(ジイソブチルアルミニウム)オキシド、MMAO-3A、及び他のアルモキサンなどと組み合わせて使用することもできる。これらの酸素含有有機アルミナのいくつかは、トリメチルアルミニウムやトリ(n-オクチル)アルミニウムなどの有機アルミニウムよりもヒドロカルビル基の連鎖移動を起こす傾向がはるかに少ないまま、捕捉剤の役割を果たすことができる。
【0070】
この技術では、ジ末端官能化ポリマーの製造が可能である。AVTAの存在下で行われるアルケン重合からの、空気に暴露される前の1つの生成物は、アルミニウムでキャップされた化学種Al(R’)3-v(ポリマー-CH=CHであり、ここでvは0.1~3(あるいは1~3、あるいは1、2又は3)である。Al-炭素結合は、酸素、ハロゲン、二酸化炭素などの様々な求電子剤(及び他の試薬)と反応する。したがって、反応性ポリマー混合物を大気に暴露する前に求電子剤でクエンチすると、一般式:Z-(モノマー)-CH=CHのジ末端官能基化生成物が得られる。ここで、Zは求電子剤との反応に由来する基であり、nは整数、例えば1~1,000,000、あるいは2~50,000、あるいは10~25,000などである。例えば、酸素でクエンチすると、1つの末端がヒドロキシ基で官能化され、他端がビニル基で官能化されたポリマーが得られる。臭素でクエンチすると、1つの末端がBr基で官能化され、他端がビニル基で官能化されたポリマーが得られる。
【0071】
好適な金属ヒドロカルベニル移動剤(例えばアルミニウムビニル移動剤など)は、触媒錯体に対して10当量、もしくは20当量、もしくは50当量、又は100当量から、600当量、もしくは700当量、もしいくは800当量、又は1000当量までで存在することができる。あるいは、金属ヒドロカルベニル移動剤は、1:3000~10:1、あるいは1:2000~10:1、あるいは1:1000~10:1、あるいは1:500~1:1、あるいは1:300~1:1、あるいは1:200~1:1、あるいは1:100~1:1、あるいは1:50~1:1、あるいは1:10~1:1の触媒錯体対移動剤のモル比で存在することができる。
【0072】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、アルミニウムビニル移動剤は、約1:3000~10:1、あるいは1:2000~10:1、あるいは1:1000~10:1、あるいは1:500~1:1、あるいは1:300~1:1、あるいは1:200~1:1、あるいは1:100~1:1、あるいは1:50~1:1、あるいは1:10~1:1、あるいは1:1000から又はそれ以上の触媒錯体対アルミニウムビニル移動剤のモル比で存在する。
【0073】
遷移金属錯体
重合プロセスのための遷移金属錯体としては、添加されたアルミニウムビニル移動剤(AVTA)による可逆的なポリメリル基の連鎖移動を容易に起こし、またAVTAのビニル基の組み込みも可能で、長鎖分岐ポリマーを形成することができる任意のオレフィン重合触媒が挙げられる。好適な触媒成分としては、シクロペンタジエニルアニオン又は置換シクロペンタジエニルアニオンドナー(例えば、シクロペンタジエニル、フルオレニル、インデニル、メチルシクロペンタジエニル)を特徴としない遷移金属錯体であると定義される「非メタロセン錯体」を挙げることができる。好適であることができる非メタロセン錯体のファミリーの例としては、後期遷移金属ピリジルビスイミン(例えば米国特許第7,087,686号明細書)、第4族ピリジルジアミド(例えば米国特許第7,973,116号明細書)、キノリニルジアミド(例えば米国特許出願公開第2018/0002352号明細書(A1))、ピリジルアミド(例えば米国第7,087,690号明細書)、フェノキシイミン(例えばAccounts of Chemical Research 2009,42,1532-1544)、及び架橋二芳香族錯体(例えば米国公開第2018/0002352号明細書(A1))が挙げられ、これらの開示は参照により本明細書に援用される。
【0074】
非メタロセン錯体としては、三座ピリジルビスイミン配位子の鉄錯体、ピリジルアミド配位子のジルコニウム及びハフニウム錯体、三座ピリジルジアミド配位子のジルコニウム及びハフニウム錯体、三座キノリニルジアミド配位子のジルコニウム及びハフニウム錯体、二座フェノキシイミン配位子のジルコニウム及びハフニウム錯体、並びに架橋二芳香族配位子のジルコニウム及びハフニウム錯体が挙げられる。
【0075】
好適な非メタロセン錯体としては、ジルコニウム及びハフニウムの非メタロセン錯体が挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、本開示のための非メタロセン錯体としては、2つのアニオン性ドナー原子及び1つ又は2つの中性ドナー原子を含む第4族非メタロセン錯体が挙げられる。本開示に好適な非メタロセン錯体としては、アニオン性アミドドナーを含む第4族非メタロセン錯体が挙げられる。本開示に好適な非メタロセン錯体としては、アニオン性アリールオキシドドナー原子を含む第4族非メタロセン錯体が挙げられる。本開示に好適な非メタロセン錯体としては、2つのアニオン性アリールオキシドドナー原子及び2つのさらなる中性ドナー原子を含む第4族非メタロセン錯体が挙げられる。
【0076】
少なくとも1つの実施形態では、本開示に従って採用されるエチレンコポリマーは、エチレン及び1つ以上のC~C20α-オレフィンを、活性化剤と、連鎖移動剤(捕捉剤及び金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤(アルミニウムビニル移動剤、例えばイソブチルジ(dec-9-エン-1-イル)アルミニウム(AVTA-2/10)など)の両方として機能し得る材料であってもよい)と、式(I)で表される遷移金属錯体とを含む触媒系に接触させることによって形成される:
【化1】
ここで
Mは、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族又は第10族の金属であり(例えば、MはZr又はHfである);
Eは、C(R)又はC(R)(R3’)から選択され;
Xはアニオン性脱離基であり;
Lは、中性ルイス塩基であるか、又は2つのL基が一緒になって二座ルイス塩基を形成していてもよく(例えば、Lは、エーテル、アミン、ホスフィン、又はチオエーテルである);
及びR13は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、及びシリルから選択され;
は、1~10個の炭素原子を含む基であり、任意選択的にRと一緒になって芳香族環を形成していてもよく;
、R3’、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、各々独立に、水素、ヒドロカルビル、アルコキシ、シリル、アミノ、アリールオキシ、置換ヒドロカルビル、ハロゲン及びホスフィノから選択され;
Jは、ピリジン環とアミド窒素との間に3原子長の架橋を形成する2価の基であり
nは1又は2である;
mは0、1又は2である;
2つのX基が一緒になってジアニオン性基を形成していてもよい;
2つのL基が一緒になって二座ルイス塩基を形成していてもよい;
X基がL基に結合してモノアニオン性二座基を形成していてもよい;
、R3’、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12からの隣接する基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0077】
例示的な触媒は、米国特許出願公開第2018/0002352号明細書(A1)に記載されている(QDA-1)HfMeである。
【化2】
【0078】
連鎖移動剤(CTA)
「連鎖移動剤」は、重合プロセス中に配位重合触媒と連鎖移動剤の金属中心との間でヒドロカルビル基及び/又はポリメリル基の交換を起こすことができる任意の剤である。連鎖移動剤は、国際公開第2007/130306号に開示されているものなどの任意の望ましい化合物であってもよい。好ましくは、連鎖移動剤は、第2族、第12族又は第13族アルキル又はアリール化合物、例えば、亜鉛、マグネシウム又はアルミニウムアルキル又はアリールであり、例えば、アルキルが、C~C30アルキル、あるいはC~C20アルキル、あるいはC~C12アルキルであり、独立に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、又はこれらの異性体及び類似体であるものである。
【0079】
好適な連鎖移動剤は、アルキルアルモキサン、式AlR,ZnR(各Rは、独立に、C~C脂肪族ラジカル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、又はこれらの異性体である。)で表される化合物、又はこれらの組み合わせであり、例えば、ジエチル亜鉛、メチルアルモキサン、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、又はこれらの組み合わせである。
【0080】
使用できる好適な剤は、各アルキル基に1~8個の炭素を有するトリアルキルアルミニウム化合物及びジアルキル亜鉛化合物、例えば、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリ(i-プロピル)アルミニウム、トリ(i-ブチル)アルミニウム(TIBAL)、トリ(n-ヘキシル)アルミニウム、トリ(n-オクチル)アルミニウム(TNOAL)、ジエチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジ(n-プロピル)亜鉛、ジオクチル亜鉛などである。連鎖移動剤の混合物が使用されてもよい。好適な剤は、ジエチル亜鉛及びトリ(n-オクチル)アルミニウムである。
【0081】
少なくとも1つの実施形態では、CTAとして1種以上のトリアルキルアルミニウム化合物及び1種以上のジアルキル亜鉛化合物(アルキルは、好ましくはC~C40アルキル基、例えばC~C20アルキル基、例えばC~C12アルキル基、例えばC~C基、例えば、メチル、エチル、プロピル(イソプロピル及びn-プロピルを包含する)、ブチル(n-ブチル、sec-ブチル、及びイソブチルを包含する)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、及びこれらの異性体又は類似体であることができる)が使用される。好適な組み合わせとしては、TEAL、TIBAL及び/又はTNOALとEtZn、例えばTEALとEtZn、もしくはTIBALとEtZn、又はTNOALとEtZnが挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、トリアルキルアルミニウム化合物及びジアルキル亜鉛化合物は、反応において、1:1又はそれより高い、例えば2:1又はそれより高い、例えば5:1又はそれより高い、例えば10:1又はそれより高い、例えば15:1又はそれより高い、例えば1:1~10,000:1のAl対Znのモル比で存在する。
【0082】
さらなる適切な連鎖移動剤としては、トリアルキルアルミニウム化合物又はジアルキル亜鉛化合物、例えばトリ(C~C)アルキルアルミニウム化合物又はジ(C~C)アルキル亜鉛化合物を、化学量論量未満(ヒドロカルビル基の数に対して)の第2級アミン又はヒドロキシル化合物、特に、ビス(トリメチルシリル)アミン、t-ブチル(ジメチル)シロキサン、2-ヒドロキシメチルピリジン、ジ(n-ペンチル)アミン、2,6-ジ(t-ブチル)フェノール、エチル(1-ナフチル)アミン、ビス(2,3,6,7-ジベンゾ-1-アザシクロヘプタンアミン)、又は2,6-ジフェニルフェノールと組み合わせることによって形成される反応生成物又は混合物が挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、1つの金属原子あたり1つのヒドロカルビル基が残るように、充分なアミン又はヒドロキシル試薬を使用することができる。本開示において連鎖移動剤として有用な上記組み合わせの主な反応生成物としては、n-オクチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、i-プロピルアルミニウムビス(ジメチル(t-ブチル)シロキシド)、及びn-オクチルアルミニウムジ(ピリジニル-2-メトキシド)、i-ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t-ブチル)シロキサン)、i-ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n-オクチルアルミニウムジ(ピリジン-2-メトキシド)、i-ブチルアルミニウムビス(ジ(n-ペンチル)アミド)、n-オクチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノキシド)、n-オクチルアルミニウムジ(エチル(l-ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t-ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7-ジベンゾ-1-アザシクロヘプタンアミド)、n-オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7-ジベンゾ-1-アザシクロヘプタンアミド)、n-オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t-ブチル)シロキシド)、エチル亜鉛(2,6-ジフェニルフェノキシド)、及びエチル亜鉛(t-ブトキシド)が挙げられる。
【0083】
好適な連鎖移動剤は、典型的には、反応において、約5:1以上、例えば約10:1~2000:1、例えば約20:1~約1000:1、例えば約25:1~約800:1、例えば約50:1~約700:1、例えば約100:1~約600:1の連鎖移動剤の金属対遷移金属(キノリニルジアミドジアミド遷移金属錯体に由来)のモル比で存在することができる。
【0084】
少なくとも1つの実施形態では、CTAは、ジアルキル亜鉛であり、ここで、アルキルは、C~C20アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなどであり、例えば、CTAは、ジエチル亜鉛である。本開示の連鎖移動剤は、金属ヒドロカルベニル移動剤(これは、アリル鎖末端を有する少なくとも1つの移動可能な基を含む任意の第12族又は第13族の金属作用剤である)、例えば、AVTAとも呼ばれるアルミニウムビニル移動剤(これは、アリル鎖末端を有する少なくとも1つの移動可能な基を含む任意のアルミニウム剤である)であることができる。アリル鎖末端は式HC=CH-CH-で表される。「アリルビニル基」、「アリル鎖末端」、「ビニル鎖末端」、「ビニル末端」、「アリルビニル基」、「末端ビニル基」及び「ビニルを末端とする」は、本明細書において互換的に使用され、アリル鎖末端を指す。アリル鎖末端は、ビニリデン鎖末端又はビニレン鎖末端ではない。アリル鎖末端、ビニリデン鎖末端、ビニレン鎖末端、及び他の不飽和鎖末端の数は、少なくとも250MHzのNMR分光計で、重水素化テトラクロロエタンを溶媒として用い、120℃でH NMRを使用して決定される。
【0085】
アリル鎖末端を含む好適な移動可能な基は式CH=CH-CH-Rで表され、ここで、Rはヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基、例えばC~C20アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、又はそれらの異性体を表す。
【0086】
本開示に記載の触媒系において、触媒は、移動剤によるアルキル基移動を受け、これにより、1つ以上のアリル鎖末端を含むポリマー鎖の形成が可能になる。
【0087】
アリル鎖末端を含む例示的な移動可能な基としては、式:CH=CH-CH-R**により表されるものも挙げられ、ここで、R**は、ヒドロカルベネイル基又は置換ヒドロカルベネイル基、例えばC~C20のアルキレン、例えばメチレン(CH)、エチレン[(CH]、プロパンジイル[(CH]、ブタンジイル[(CH]、ペンタンジイル[(CH]、ヘキサンジイル[(CH])、ヘプタンジイル[(CH]、オクタンジイル[(CH]、ノナンジイル[(CH]、デカンジイル[(CH10]、ウンデカンジイル[(CH2011]、ドデカンジイル[(CH12]又はこれらの異性体を表す。好適な連鎖移動可能な基は非置換直鎖ヒドロカルベネイル基であることができる。少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのR**はC~C20のヒドロカルベニル基である。
【0088】
用語「ヒドロカルベネイル(hydrocarbeneyl)」とは、ヒドロカルブ-ジ-イル(hydrocarb-di-yl)二価基、例えばC~C20アルキレン(すなわち、メチレン(CH)、エチレン[(CH]、プロパンジイル[(CH]、ブタンジイル[(CH]、ペンタンジイル[(CH]、ヘキサンジイル[(CH])、ヘプタンジイル[(CH]、オクタンジイル[(CH]、ノナンジイル[(CH]、デカンジイル[(CH10]、ウンデカンジイル[(CH2011]、ドデカンジイル[(CH12]又はそれらの異性体)を指す
【0089】
理論に束縛されるわけではないが、AVTAは、触媒系の遷移金属(MTM)とAVTAの金属(MAVTA)との間で基の交換をもたらすことができるアルケニルアルミニウム作用剤である。ポリマー鎖が触媒系の遷移金属に逆に移動されるような逆反応が起きてもよい。この反応スキームは以下のように示される:
【化3】
ここで、MTMは活性な遷移金属触媒サイトであり、Pはポリマー鎖であり、MAVTAはAVTAの金属であり、Rはアリル鎖末端基を含有する移動可能な基、例えばアリル鎖末端基を含有するヒドロカルビル基であり、ヒドロカルベニル又はアルケニル基とも呼ばれる。
【0090】
少なくとも1つの実施形態では、使用可能な触媒系は、AVTAへの、又は他の連鎖移動剤がもし存在する場合には、他の連鎖移動剤への、例えばアルミニウムアルキルなどへの連鎖移動速度に対して、高いオレフィン成長速度を有し、ベータヒドリド脱離、ベータメチル脱離又はモノマーへの連鎖移動による連鎖停止速度が無視し得る程度であるか、又はこのような連鎖停止が全くないものである。非配位性活性剤、例えばジメチルアルミニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート及び/又はジメチルアルミニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレートで活性化されたキノリニルジアミド触媒錯体(2016年6月30日に出願された米国特許出願第62/357033号明細書参照)及び他の触媒化合物(米国特許第7,973,116号、第8,394,902号、第8,674,040号、第8,710,163号、第9,102,773号明細書、米国特許出願公開第2014/0256893号、米国特許出願公開第2014/0316089号及び米国特許出願公開第2015/0141601号明細書参照)が、使用することのできる触媒系で特に有用である。
【0091】
少なくとも1つの実施形態では、触媒系は、以下の式(A):
Al(R’)3-v(R)
によって表されるアルミニウムビニル移動剤を含む。ここで、Rは、アリル鎖末端基を有する4~20個の炭素原子を含むヒドロカルベニル基であり、R’は1~30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、vは0.1~3、あるいは1~3、あるいは1.1から3未満であり、あるいはvは0.5~2.9、1.1~2.9、あるいは1.5~2.7、あるいは1.5~2.5、あるいは1.8~2.2である。式:Al(R’)3-v(R)によって表される化合物は、典型的には中性の化学種であるが、例えば式(B):[Al(R’)4-w(R)(式中、wは0.1~4であり、Rはアリル鎖末端基を有する4~20個の炭素原子を含むヒドロカルベニル基であり、及びR’は1~30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)によって表されるものなどのアニオン性の組成のものが含まれてもよい。
【0092】
ここに記載した式A又はBなどの金属ヒドロカルベニル移動剤についての式の少なくとも1つの実施形態では、各R’は、C~C30のヒドロカルビル基(例えば、C~C20のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、又はそれらの異性体)から独立に選ばれ、Rは以下の式によって表される:
-(CHCH=CH
ここで、nは2~18の整数、例えば6~18など、例えば6~12など、例えば6~8などである。
【0093】
少なくとも1つの実施形態では、特に好適なAVTAとしては、トリ(ブタ-3-エン-1-イル)アルミニウム、トリ(ペンタ-4-エン-1-イル)アルミニウム、トリ(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、トリ(ノナ-8-エン-1-イル)アルミニウム、トリ(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウム、ジメチル(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、ジエチル(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、ジブチル(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、ジイソブチル(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、ジイソブチル(ノナ-8-エン-1-イル)アルミニウム、ジイソブチル(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウム、ジイソブチル(ドデカ-11-エン-1-イル)アルミニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、1種以上のAVTAの混合物を使用することもできる。本開示の少なくとも1つの実施形態では、好適なAVTAとしては、イソブチル-ジ(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、イソブチル-ジ(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウム、イソブチル-ジ(ノナ-8-エン-1-イル)アルミニウム、イソブチル-ジ(ヘプタ-6-エン-1-イル)アルミニウムが挙げられる。本開示の少なくとも1つの実施形態では、好適なAVTAはイソブチル-ジ(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウムである。
【0094】
特に好適な金属ヒドロカルベニル移動剤は、トリ(ブト-3-エン-1-イル)アルミニウム、トリ(ペンタ-4-エン-1-イル)アルミニウム、トリ(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、トリ(ノナ-8-エン-1-イル)アルミニウム、トリ(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウム、ジメチル(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、ジエチル(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、ジブチル(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、ジイソブチル(オクタ-7-エン-1-イル)アルミニウム、ジイソブチル(ノナ-8-エン-1-イル)アルミニウム、ジメチル(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウム、ジエチル(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウム、ジブチル(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウム、ジイソブチル(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウム、及びジイソブチル(ドデカ-11-エン-1-イル)アルミニウムのうちの1種以上を含む。
【0095】
好適なアルミニウムビニル移動剤としては、アルミニウム試薬(AlR )とアルキルジエンとの間の有機アルミニウム化合物反応生成物が挙げられる。好適なアルキルジエンとしては、炭素鎖の2つの末端に上記のような2つの「アルファオレフィン」を有するものが挙げられる。アルキルジエンは、直鎖又は分岐アルキル鎖であることができ、置換されていても置換されていなくてもよい。例示的なアルキルジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,11-ドデカジエン、1,12-トリデカジエン、1,13-テトラデカジエン、1,14-ペンタデカジエン、1,15-ヘキサデカジエン、1,16-ヘプタデカジエン、1,17-オクタデカジエン、1,18-ノナデカジエン、1,19-エイコサジエン、1,20-ヘンエイコサジエンなどが挙げられるが、これらに限定されない。典型的なアルミニウム試薬としては、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド及びアルミニウムヒドリド(AlH)が挙げられる。
【0096】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、R”はブテニル、ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル又はデセニルであり、例えばR”はオクテニル又はデセニルである。
【0097】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、各R’はメチル、エチル、プロピル、イソブチル又はブチルであり、例えばR”はイソブチルである。
【0098】
本開示に記載される少なくとも1つの実施形態では、vは、整数又は非整数であり、例えば、vは、0.1~3.0、あるいは約1~約3であり、例えば、約1.5~約2.7、約1.6~約2.4、約1.7~約2.4、約1.8~約2.2、約1.9~約2.1、及びそれらの間のすべての範囲である。
【0099】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、R’はイソブチルであり、各R”はオクテニル又はデセニルであり、例えば、R’はイソブチルであり、各R”はオクテニル又はデセニルであり、vは0.1~3.0、約1~約3、あるいは約1.5~約2.7、例えば、約1.6~約2.4、約1.7~約2.4、約1.8~約2.2、約1.9~約2.1である。
【0100】
v(アルミニウムアルケニル)の量は、式:(3-v)+v=3及びAl(R’)3-v(R”)を用いて記述される。ここで、R”はアリル鎖末端を有する4~20個の炭素原子を含むヒドロカルベニル基であり、R’は1~30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、vは0.1~3(例えば1.1~3)である。この式は、Al(R’)、Al(R’)(R”)、Al(R’)(R”)、及びAl(R”)のいずれかを含み得る混合物中に存在する有機アルミニウム種(H NMRによって決定される)の観測された平均値を表す。H NMR分光学的調査は、Bruker 400MHz NMRを使用して室温で行われる。10~20mgの化合物を1mLのCに溶解することにより調製したサンプルを用いてデータを収集した。次いで、サンプルは、データ収集のために5mmのNMRチューブに装填される。データは、45°の最大パルス幅、パルス間隔8秒、及び8又は16の過渡信号を平均化した信号を使用して記録した。スペクトルをC中のプロトン化テトラクロロエタンに対して正規化した。化学シフト(δ)は、7.15ppmの重水素化溶媒中の残留プロチウムを基準として報告する。
【0101】
さらに別の態様では、アルミニウムビニル移動剤は、AVTAの質量を基準として、50wt%未満、例えば40wt%未満、例えば30wt%未満、例えば20wt%未満、例えば15wt%未満、例えば10wt%未満、例えば5wt%未満、例えば2wt%未満、例えば1wt%未満、例えば0wt%で存在するダイマーを有する。あるいは、ダイマーは0.1~50wt%で、あるいは1~20wt%で、あるいは2~10wt%で存在する。ダイマーはAVTAの調製に使用されるアルキルジエンの二量体生成物である。ダイマーは、ある反応条件下で形成でき、AVTAのAl-R結合へのジエン分子の挿入と、その後のベータヒドリド脱離により形成される。例えば、使用されたアルキルジエンが1,7-オクタジエンである場合には、ダイマーは7-メチレンペンタデカ-1,14-ジエンである。同様に、アルキルジエンが1,9-デカジエンである場合には、ダイマーは9-メチレンノナデカ-1,18-ジエンである。
【0102】
少なくとも1個の第2級アルキル部分(例えば、トリイソブチルアルミニウム)及び/又は少なくとも1個のヒドリドを有するアルミニウム試薬(例えば、アルキルアルミニウム)、例えばジアルキルアルミニウムヒドリド、モノアルキルアルミニウムジヒドリド又はアルミニウムトリヒドリド(アルミニウムヒドリド、AlH)をアルキルジエンと組み合わせ、アルキレン副生成物の放出を引き起こす温度まで加熱することによって、好適な化合物を調製することができる。溶媒(1種以上)の使用は必要でない。しかし、無極性溶媒、例えばヘキサン、ペンタン、トルエン、ベンゼン、キシレン等又はこれらの組み合わせを使用することができる。
【0103】
少なくとも1つの実施形態では、AVTAは配位性極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン及びジエチルエーテルを含まない。
【0104】
反応が完了した後、溶媒が存在する場合には、溶媒を除去することができ、生成物をさらなる精製なしに直接使用することができる。
【0105】
AVTAと触媒錯体との当量比は約1:100~500,000:1であることができる。少なくとも1つの実施形態では、触媒錯体に対するAVTAのモル比は5超、あるいは10超、あるいは15超、あるいは20超、あるいは25超、あるいは30超である。本発明の別の実施形態では、金属ヒドロカルベニル移動剤は、AVTAの加水分解から形成されたアルモキサンである。あるいは、アルモキサンは、他のアルミニウムアルキル(1種以上)との組み合わせで、AVTAの加水分解から形成することができる。アルモキサン成分は、十分に特性評価されていないオリゴマー化合物ではあるが、環状化合物である一般式:(R-Al-O)によって表されることができ、あるいは、直鎖状化合物であるR’(R-Al-O)-AlR’であってもよく、ここで、R’は上で定義したとおりであり、少なくとも1つのR’はR(上に定義)と同じであり、mは約4~25であり、例えば13~25の範囲が好ましい。少なくとも1つの実施形態では、全てのR’がRである。アルモキサンは、一般的に、直鎖状化合物と環状化合物の両方の混合物である。
【0106】
活性化剤
用語「共触媒」及び「活性化剤」は、本開示において互換的に使用され、中性の触媒化合物を触媒的に活性な触媒化合物カチオンに変換することによって、上記の触媒化合物の1つ以上を活性化することができる化合物であると定義される。
【0107】
錯体を合成した後、触媒系は、スラリー重合又は気相重合で使用するためにそれらを担持することによるなどの任意の適切な方法で、錯体と活性化剤とを組み合わせることによって形成することができる。触媒系は、溶液重合又はバルク重合(モノマー中)で添加するか又は生成させることもできる。好適な触媒系は、上記のような錯体と、活性化剤、例えばアルモキサン又は非配位性アニオンなどを含むことができる。
【0108】
非限定的な活性化剤としては、例えば、アルモキサン、アルミニウムアルキル、中性又はイオン性であってよいイオン化活性化剤、及び従来型の共触媒が挙げられる。好適な活性化剤としては、アルモキサン化合物、修飾アルモキサン化合物や、金属錯体を陽イオン性にしている反応性のσ結合金属配位子を引き抜いて電荷平衡非配位性又は弱配位性アニオンを提供するイオン化アニオン前駆体化合物が挙げられる。
【0109】
アルモキサン活性化剤
少なくとも1つの実施形態では、触媒系の活性化剤としてアルモキサン活性化剤が用いられる。アルキルアルモキサンは、別の活性化剤と一緒に使用されてもよい。アルモキサンは、一般的に、-Al(R)-O-サブユニットを含むオリゴマー化合物であり、ここで、Rは、アルキル基である。アルモキサンの例としては、メチルアルモキサン(MAO)、修飾メチルアルモキサン(MMAO)、エチルアルモキサン、及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。特に、引き抜くことができる配位子がアルキル、ハライド、アルコキシド又はアミドである場合には、アルキルアルモキサン及び修飾アルキルアルモキサンが触媒活性化剤として適切である。異なるアルモキサン及び修飾アルモキサンの混合物が使用されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、視覚的に透明であるメチルアルモキサンを使用することができる。濁った又はゲル状のアルモキサンをろ過して透明溶液を生じさせることができ、あるいは、濁った溶液から透明なアルモキサンをデカントすることができる。好適なアルモキサンは、修飾メチルアルモキサン(MMAO)共触媒タイプ3A(Akzo Chemicals,Inc.よりModified Methylalumoxane type 3Aの商品名で市販、米国特許第5,041,584号で保護されている)である。
【0110】
別の好適なアルモキサンは、米国特許第9,340,630号明細書、米国特許第8,404,880号明細書及び米国特許第8,975,209号明細書に記載されているような固体ポリメチルアルミノキサンである。
【0111】
活性化剤がアルモキサン(修飾又は未修飾)である場合、いくつかの実施形態は、最大限の量の活性化剤、例えば、触媒化合物に対して最大約5000倍モル過剰(金属触媒サイトあたり)のAl/Mで活性化剤を含む。最低限の活性化剤対触媒化合物のモル比は約1:1である。別の好適な範囲としては、約1:1~約500:1、あるいは約1:1~約200:1、あるいは約1:1~約100:1、あるいは約1:1~約50:1が挙げられる。代替実施形態では、本開示に記載の重合プロセスにおいて、アルモキサンはほとんど又はまったく使用されない。少なくとも1つの実施形態では、アルモキサンは、約ゼロモル%で存在し、あるいは、アルモキサンは、約500未満:1、例えば約300未満:1、例えば約100未満:1、例えば約1未満:1のアルミニウム対触媒化合物遷移金属のモル比で存在する。
【0112】
非配位性アニオン活性化剤
非配位性アニオン(NCA)は、触媒金属カチオンに配位しないアニオン、又は金属カチオンに配位はするが、弱くしか配位しないアニオンを意味すると定義される。用語「NCA」はまた、酸性カチオン性基及び非配位性アニオンを含む多成分のNCA含有活性化剤、例えばN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを包含するとも定義される。用語「NCA」は、触媒と反応して、アニオン性基の引き抜きによって活性化された化学種を形成することができるトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの中性ルイス酸を包含するとも定義される。オレフィン性又はアセチレン性不飽和のモノマーなどの中性ルイス塩基が触媒中心からNCAと置き換わることができように、NCAは十分に弱く配位する。非配位性アニオンには、適合性の弱配位錯体を形成することができるいかなる好適な金属又はメタロイドが用いられても、あるいは含まれてもよい。好適な金属としては、アルミニウム、金、及び白金が挙げられる。好適なメタロイドとしては、ホウ素、アルミニウム、リン、及びケイ素が挙げられる。
【0113】
「適合性」非配位性アニオンは、初期に形成された錯体が分解しても中性に減成しないアニオンであることができ、アニオンは、アニオンから中性の遷移金属化合物及び中性の副生成物を形成することをもたらすようなアニオン性置換基又はフラグメントのカチオンへの移動を起こさない。本開示において有用である非配位性アニオンは、適合性であり、遷移金属カチオンをそのイオン性電荷を+1に釣り合わせるという意味で安定化するとともに、重合時の転移を可能にする充分な不安定性を維持するアニオンである。
【0114】
中性又はイオン性のイオン化活性化剤、例えばトリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリスペルフルオロフェニルホウ素メタロイド前駆体又はトリスペルフルオロナフチルホウ素メタロイド前駆体、ポリハロゲン化ヘテロボランアニオン(国際公開第98/43983号)、ホウ酸(米国特許第5,942,459号明細書)、又はこれらの組み合わせなどを使用できる。中性又はイオン性の活性化剤を、単独で、又はアルモキサン活性化剤もしくは修飾アルモキサン活性化剤と組み合わせて使用してもよい。
【0115】
触媒系は、少なくとも1種の非配位性アニオン(NCA)活性化剤を含むことができる。
【0116】
好ましい実施形態では、以下の式で表されるホウ素含有NCA活性化剤を使用できる:
(Ad-
式中、Zは(L-H)又は還元性ルイス酸であり、Lは中性ルイス塩基であり、Hは水素であり、(L-H)はブレンステッド酸であり、Ad-は非配位性アニオン、例えば電荷d-を有するホウ素含有非配位性アニオンであり、dは1、2又は3である。
【0117】
カチオン成分Z は、嵩高い配位子を含有する遷移金属触媒前駆体から、アルキル又はアリールなどの部分をプロトン化する又は引き抜いてカチオン性遷移金属種をもたらすことができる、ブレンステッド酸、例えばプロトンもしくはプロトン化ルイス塩基又は還元性ルイス酸などを含み得る。
【0118】
活性化カチオンZ は、銀、トロピリウム、カルボニウム、フェロセニウム、及び混合物などの部分であってもよく、例えばカルボニウム及びフェロセニウムであってもよく、例えば、Z はトリフェニルカルボニウムである。好適な還元性ルイス酸は、トリアリールカルボニウム(アリールは、置換されていても又は置換されていなくてもよい)、例えば、式(Ar)で表されるものなどであることができ、ここで、Arは、C~C40ヒドロカルビルで、もしくは置換C~C40ヒドロカルビルで置換されたアリール、あるいは、C~C40ヒドロカルビルで、もしくは置換C~C40ヒドロカルビルで置換されたヘテロアリールであり、例えば、「Z」における還元性ルイス酸は、式(PhC)で表されるものを含み、ここで、Phは、置換又は非置換のフェニルであり、例えば、C~C40ヒドロカルビルで、もしくは置換C~C40ヒドロカルビルで、例えば、C~C20アルキルもしくは芳香族で、又は置換されたC~C20アルキルもしくは芳香族で置換されたものであり、例えば、Zは、トリフェニルカルボニウムである。
【0119】
が、活性化カチオン(L-H) である場合、それは、遷移金属触媒前駆体にプロトンを供与して遷移金属カチオンとすることができるブレンステッド酸など、例えば、アンモニウム、オキソニウム、ホスホニウム、シリリウム、及びこれらの混合物、例えば、メチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、p-ニトロ-N,N-ジメチルアニリンのアンモニウム類、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン及びジフェニルホスフィンからのホスホニウム類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンなどのエーテルに由来するオキソニウム類、ジエチルチオエーテル、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテルに由来するスルホニウム類、並びにこれらの混合物などである。
【0120】
アニオン成分Ad-としては、式[Mk+d-を有するものが挙げられ、ここで、kは1、2又は3であり、nは1、2、3、4、5又は6であり(例えば、1、2、3又は4であり)、n-k=dであり、Mは、元素の周期表の第13族から選択される元素、例えばホウ素又はアルミニウムであり、Qは、独立に、ヒドリド、架橋又は非架橋ジアルキルアミド、ハライド、アルコキシド、アリールオキシド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル及びハロ置換ヒドロカルビルラジカルであり、前記Qは、最大20個までの炭素原子を有するが、ただし、Qは1個以下でハライドである。少なくとも1つの実施形態では、各Qは、1~20個の炭素原子を有するフッ素化ヒドロカルビル基であり、例えば、各Qはフッ素化アリール基であり、例えば、各Qはペンタフルオリルアリール基である。好適なAd-の例としては、その全内容が参照により本開示に援用される米国特許第5,447,895号明細書に開示されているとおりの二ホウ素化合物も挙げられる。
【0121】
活性化共触媒として使用することができるホウ素化合物の例としては、参照により本明細書に援用される米国特許第8,658,556号明細書に活性化剤として記載されている化合物(特に具体的に列挙されている化合物)が挙げられる。
【0122】
嵩高い活性化剤も、本開示におけるNCAとして有用である。本明細書で用いられる場合、「嵩高い活性化剤」とは、以下の式で表されるアニオン性活性化剤を指す。
【化4】
式中、
各Rは、独立に、ハライド、例えばフルオリドなどであり、
Arは、置換又は非置換のアリール基(例えば置換又は非置換のフェニルなど)、例えばC~C40ヒドロカルビルで、例えばC~C20アルキル又は芳香族で置換されたものであり、
各Rは、独立に、ハライド、C~C20置換芳香族ヒドロカルビル基、又は式-O-Si-Rのシロキシ基であり、ここで、Rは、はC~C20ヒドロカルビル又はヒドロカルビルシリル基であり(例えば、Rは、フルオリド又はペルフルオロフェニル基などであり)、
各Rは、ハライド、C~C20置換芳香族ヒドロカルビル基、又は式-O-Si-Rのシロキシ基であり、ここで、Rは、はC~C20ヒドロカルビル又はヒドロカルビルシリル基であり(例えば、Rは、フルオリド又はCペルフルオロ芳香族ヒドロカルビル基などであり)、R及びRは、1又は複数の飽和又は不飽和、置換又は非置換の環を形成していてもよく(例えば、R及びRは、ペルフルオロフェニル環などを形成する)、
Lは中性ルイス塩基であり、(L-H)はブレンステッド酸であり、dは1、2又は3であり、
アニオンは、1020g/モル超の分子量を有し、及び
B原子上の置換基のうちの少なくとも3つは、各々、250立方オングストローム超、あるいは300立方オングストローム超、あるいは500立方オングストローム超の分子体積を有する。
【0123】
好ましくは、(ArC) は(PhC) であり、ここで、Phは、置換又は非置換フェニルであり、例えばC~C40ヒドロカルビル又は置換C~C40ヒドロカルビルで、例えばC~C20アルキルもしくは芳香族、又は置換C~C20アルキルもしくは芳香族で置換されたフェニルである。
【0124】
「分子体積」は、本開示において、溶液中の活性化剤分子の空間的な立体嵩高さの近似として用いられる。異なる分子体積の置換基を比較することによって、より小さい分子体積の置換基を、より大きい分子体積の置換基と比較して「嵩高さが小さい」と見なすことができる。逆に、より大きい分子体積の置換基は、より小さい分子体積の置換基よりも「嵩高さが大きい」と見なすことができる。
【0125】
分子体積は、“A Simple ‘Back of the Envelope’ Method for Estimating the Densities and Molecular Volumes of Liquids and Solids,” Journal of Chemical Education, Vol. 71, No. 11, November 1994, pp. 962-964に報告されているように算出することができる。立方オングストロームの単位での分子体積(MV)は、式MV=8.3Vを用いて算出され、ここで、Vはスケール体積(scaled volume)である。Vは、構成原子の相対的体積の合計であり、以下の相対的体積の表を用いて、置換基の分子式から算出される。縮合環の場合、Vは、縮合環1つあたり7.5%減少する。
【表1】
【0126】
特に有用な嵩高い活性化剤のリストについては、参照により本明細書に援用される米国特許第8,658,556号明細書に記載されている。
【0127】
少なくとも1つの実施形態では、NCA活性化剤の1又は複数が、米国特許第6,211,105号明細書に記載の活性化剤から選択される。
【0128】
好適な活性化剤としては、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、[Ph][B(C ]、[MeNH][B(C ]、1-(4-(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ピロリジニウム、4-(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)-2,3,5,6-テトラフルオロピリジンが挙げられる。
【0129】
少なくとも1つの実施形態では、活性化剤としては、トリアリールカルボニウム(例えばトリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートなど)が挙げられる。
【0130】
少なくとも1つの実施形態では、活性化剤は、トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリアルキルアンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリアルキルアンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N-ジアルキル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、ジ-(i-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ただし、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル又はt-ブチルである)のうちの1種以上を含む。
【0131】
少なくとも1つの実施形態では、イオン性活性化剤Z (Ad-)は、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペルフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリ(t-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、及びトロピリウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレートのうちの1種以上である。
【0132】
有用な嵩高い活性化剤としては、米国特許出願公開第2015/0025209号明細書の段落[0124]に記載のもの、及び米国特許第8,658,556号明細書の第7欄及び第20~21欄に記載のものが挙げられ、これらの記載は参照により援用する。好適なNCA活性化剤の具体例としては、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、[Ph][B(C ],[MeNH][B(C]、1-(4-(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ピロリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)-2,3,5,6-テトラフルオロピリジン、ビス(C-C20アルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(C-C20アルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、ビス(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチル-4-オクタデシルベンゼンアミニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N-メチル-N-オクタデシルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N-メチル-N-デシルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジデシル-4-メチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジデシル-4-ブチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N-メチル-4-ノナデシル-N-オクタデシルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N-エチル-4-ノナデシル-N-オクタデシルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、及びN,N-ジオクタデシル-N-メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレートが挙げられる。
【0133】
いくつかの実施形態では、テトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレートアニオン、例えば、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、ビス(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチル-4-オクタデシルベンゼンアミニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N-メチル-N-オクタデシルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、及びN-メチル-4-ノナデシル-N-オクタデシルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレートなどを含む活性化剤が好ましい。
【0134】
典型的な活性化剤対触媒の比、例えば、全NCA活性化剤対触媒の比は、約1:1のモル比である。別の好適な範囲としては、約0.1:1~約100:1、あるいは約0.5:1~約200:1、あるいは約1:1~約500:1、あるいは約1:1~約1000:1が挙げられる。特に有用な範囲は、約0.5:1~約10:1であり、例えば約1:1~約5:1である。
【0135】
触媒化合物は、アルモキサン及びNCAの組合せと組み合わせることができる(例えば、イオン化活性剤と組み合わせたアルモキサンの使用を論じている米国特許第5,153,157号明細書、米国特許第5,453,410号明細書、欧州特許第0573120号明細書(B1)、国際公開第94/07928号、及び国際公開第95/14044号を参照)。
【0136】
あるいは、共活性剤又は連鎖移動剤、例えば第1族、第2族又は第13族の有機金属種(例えば、トリ-n-オクチルアルミニウムのようなアルキルアルミニウム化合物)などを本開示の触媒系で使用してもよい。錯体対共活性剤のモル比は、1:100~100:1、1:75~75:1、1:50~50:1、1:25~25:1、1:15~15:1、1:10~10:1、1:5~5:1、1:2~2:1、1:100~1:1、1:75~1:1、1:50~1:1、1:25~1:1、1:15~1:1、1:10~1:1、1:5~1:1、1:2~1:1、1:10~2:1である。
【0137】
任意選択の捕捉剤又は共活性化剤
これらの活性化剤化合物に加えて、1種以上の捕捉剤又は共活性化剤を触媒系で使用してもよい。捕捉剤又は共活性化剤として使用できるアルミニウムアルキル又は有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、及びジエチル亜鉛が挙げられる。金属又はメタロイド中心に結合した嵩高い又はC~C20直鎖状ヒドロカルビル置換基を有する捕捉剤は、通常、活性触媒との有害な相互作用を最小限に抑える。例としては、トリエチルアルミニウム、例えば、嵩高い化合物、例えばトリイソブチルアルミニウム、トリイソプレニルアルミニウム、及び長鎖直鎖状アルキル置換アルミニウム化合物、例えばトリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム又はトリ-n-ドデシルアルミニウムなどが挙げられる。アルモキサンが活性化剤として使用される場合、活性化に必要とされるよりも過剰であれば、不純物が捕捉され、追加の捕捉剤が不要となる。アルモキサンを、他の活性化剤、例えば[MeHNPh][B(pfp)]-又はB(pfp)(ペルフルオロフェニル=pfp=C)などと共に、捕捉量で加えてもよい。
【0138】
共活性化剤として使用できる好適なアルミニウムアルキル又は有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、又はトリ-n-オクチルアルミニウムが挙げられる。一実施形態では、共活性化剤は、触媒系の質量に対して、約14wt%未満、もしくは約0.1~約10wt%、又は約0.5~約7wt%で存在する。あるいは、錯体対共活性化剤のモル比は、約1:100~約100:1、約1:75~約75:1、約1:50~約50:1、約1:25~約25:1、約1:15~約15:1、約1:10~約10:1、約1:5~約5:1、約1:2~約2:1、約1:100~約1:1、約1:75~約1:1、約1:50~約1:1、約1:25~約1:1、約1:15~約1:1、約1:10~約1:1、約1:5~約1:1、約1:2~約1:1、約1:10~約2:1である。
【0139】
重合プロセス
本開示の組成物で使用されるエチレンコポリマーは、エチレン、1又は複数のC~C20α-オレフィン、活性化剤及び遷移金属錯体を、連鎖移動剤を用いた重合条件下で接触させる上記プロセスにより製造することができる。少なくとも1つの実施形態では、重合は、2段階で行われ、連鎖移動剤は第1段階で導入される。2つの段階は、直列に接続された2つの連続撹拌槽反応器であってよく、あるいは、2つの段階は、管型反応器の異なるゾーンであってもよい。あるいは、2つの段階は、1つの撹拌反応器又は1つのバッチプロセスで行われる重合中の初期及び後の時間であってもよい。
【0140】
本開示に記載の触媒及び触媒系は、遷移金属触媒型溶液重合を起こすことが従来から知られている不飽和モノマーの重合に有用である。
【0141】
1つの反応器又は直列もしくは並列の複数の反応器が用いられてもよい。錯体、ヒドロカルベニル連鎖移動剤、活性化剤、及び、所望される場合、共活性化剤は、溶液又はスラリーとして、別々に反応器へ供給されてもよいし、反応器の直前でインラインで活性化されて供給されてもよいし、又は予め活性化されて、活性化された溶液もしくはスラリーとして反応器へポンプ輸送されてもよい。重合は、モノマー、コモノマー、触媒/活性化剤/共活性化剤、任意選択の捕捉剤、及び任意選択の調整剤が、単一の反応器に連続的に添加される、単一反応器での操作で行われるか、又は上記成分が直列に接続された2つ以上の反応器の各々に添加される、直列反応器での操作で行われる。触媒成分は、直列の第一の反応器に添加されてよい。触媒成分は、両方の反応器に添加されてもよく、1つの成分が第一の反応器に添加され、別の成分が他の反応器に添加される。少なくとも1つの実施形態では、錯体は、オレフィンの存在下で反応器中で活性化される。
【0142】
少なくとも1つの実施形態では、重合プロセスは、連続プロセスである。
【0143】
少なくとも1つの実施形態では、オレフィンを重合して少なくとも1つのポリオレフィン組成物を製造する方法が提供される。この方法は、少なくとも1種のオレフィンを、本開示の触媒系に接触させること、及びポリオレフィンを得ること、を含む。活性化剤(1種以上)が用いられる場合、触媒化合物及び活性化剤(1種以上)は、任意の順序で混合してもよく、モノマー(エチレンなど)との接触前に混合される。
【0144】
α-オレフィンモノマー
好適なモノマー及びコモノマーとしては、置換又は非置換のC~C40α-オレフィン、例えばC~C20α-オレフィン、例えばC~C12α-オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、及びこれらの異性体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本開示の少なくとも1つの実施形態では、モノマーとしては、プロピレンと、1種以上のC~C40オレフィン、例えばC~C20オレフィン、例えばC~C12オレフィンを含む任意選択のコモノマーとが挙げられる。C~C40オレフィンモノマーは、直鎖、分岐、又は環状であることができる。C~C40環状オレフィンは、歪みあり又は歪みなしの単環式又は多環式であることができる。少なくとも1つの実施形態では、モノマーは、エチレンであり、コモノマーはプロピレンである。
【0145】
少なくとも1つの実施形態では、本明細書で製造されるポリマー中に、組成物の総質量に基づいて最大約10wt%まで、例えば約0.00001~約1.0wt%、例えば約0.002~約0.5wt%、例えば約0.003~約0.2wt%で1種以上のジエンが存在する。少なくとも1つの実施形態では、約500ppm以下、例えば約400ppm以下、例えば約300ppm以下のジエンが、重合に加えられる。他の実施形態では、少なくとも約50ppm、もしくは約100ppm以上、又は約150ppm以上のジエンが重合に加えられる。好適なジオレフィンモノマーは、少なくとも2つの不飽和結合を有するC~C30であることができ、不飽和結合のうちの少なくとも2つは、立体特異的触媒又は非立体特異的触媒(1種以上)によってポリマー中に容易に組み込まれる。少なくとも1つの実施形態では、ジオレフィンモノマーは、α,ω-ジエンモノマー(すなわち、ジビニルモノマー)から選択できる。少なくとも1つの実施形態では、ジオレフィンモノマーは、直鎖ジビニルモノマーであり、例えば4~30個の炭素原子を含むものである。好適なジエンの例としては、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエン、ウンデカジエン、ドデカジエン、トリデカジエン、テトラデカジエン、ペンタデカジエン、ヘキサデカジエン、ヘプタデカジエン、オクタデカジエン、ノナデカジエン、イコサジエン、ヘンエイコサジエン、ドコサジエン、トリコサジエン、テトラコサジエン、ペンタコサジエン、ヘキサコサジエン、ヘプタコサジエン、オクタコサジエン、ノナコサジエン、トリアコンタジエンが挙げられ、特に好適なジエンとしては、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,11-ドデカジエン、1,12-トリデカジエン、1,13-テトラデカジエン、及び低分子量ポリブタジエン(1000g/モル未満のMw)が挙げられる。好適な環状ジエンとしては、様々な環位置に置換基を有する又は有しない、シクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、又はより多くの環を含むジオレフィンが挙げられる。
【0146】
上記重合プロセスは、当業界で知られている任意の適切な様式で実施できる。当業界で知られている懸濁重合、均一重合、バルク重合、溶液重合、スラリー重合、又は気相重合のいずれが用いられてもよい。そのようなプロセスは、バッチ、セミバッチ、又は連続モードで実施できる。少なくとも1つの実施形態では、均一重合プロセス及びスラリープロセスが使用される。均一重合プロセスは、生成物の少なくとも約90wt%が反応媒体中に可溶性であるプロセスであると定義される。少なくとも1つの実施形態では、好適なプロセスは、バルク均一プロセスである。バルクプロセスは、反応器へのすべてのフィード中のモノマー濃度が約70体積%以上であるプロセスであると定義される。あるいは、反応媒体に溶媒もしくは希釈剤は存在しないか、又は溶媒もしくは希釈剤は添加されない(ただし、触媒系もしくは他の添加剤のためのキャリアとして用いられる少量、又はモノマーと共に見出される量、例えばプロピレン中のプロパンは除く)。少なくとも1つの実施形態では、オレフィンを重合して少なくとも1つのポリオレフィン組成物を製造する方法は、少なくとも1種のオレフィンを本開示の触媒系と接触させること、及びポリオレフィンを得ることを含む。オレフィンを重合する方法は、本開示に記載のいずれかの触媒系を、スラリーとして反応器に導入することを含み得る。
【0147】
重合に好適な希釈剤/溶媒は、非配位性の不活性液体を含む。例としては、直鎖状及び分岐鎖状の炭化水素、例えば、イソブタン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、及びこれらの混合物;環式及び脂環式炭化水素、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及び市販品で見られるもの(Isopar(商標))のようなこれらの混合物;ペルハロゲン化炭化水素、例えば、ペルフルオロC~C10アルカン、クロロベンゼン、並びに芳香族及びアルキル置換芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、メシチレン、及びキシレンが挙げられる。好適な溶媒としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、及びこれらの混合物を含む、モノマー又はコモノマーとして作用し得る液体オレフィンも挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、イソブタン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、及びこれらの混合物などの脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及びこれらの混合物などの環式並びに脂環式炭化水素が溶媒として用いられる。少なくとも1つの実施形態では、溶媒は芳香族ではなく、例えば、芳香族は、溶媒中に、溶媒の質量に基づいて、約1wt%未満、例えば約0.5wt%未満、例えば約0wt%未満で存在する。
【0148】
少なくとも1つの実施形態では、重合のためのモノマー及びコモノマーのフィード濃度は、フィード流の総体積に基づいて、約60体積%溶媒以下、例えば約40体積%以下、又は例えば約20体積%以下である。少なくとも1つの実施形態では、重合は、バルクプロセスで行われる。
【0149】
好適な重合は、所望されるエチレンポリマーを得るのに適するいかなる温度及び/又は圧力で行われてもよい。少なくとも1つの実施形態では、温度及び/又は圧力としては、約0℃~約300℃、例えば約30℃~約200℃、例えば約60℃~約195℃、例えば約75℃~約190℃、例えば約80℃~約100℃の範囲内の温度、及び約0.35MPa~約1500MPa、例えば約0.45MPa~約100MPa、例えば約0.5MPa~約50MPa、又は例えば約1.7MPa~約30MPaの範囲内の圧力が挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、重合反応の実施時間は、約300分間以下であり、例えば約0~約250分間の範囲内、例えば約0~約120分間、例えば約0~約30分間の範囲内、又は例えば約0~約10分間である。
【0150】
少なくとも1つの実施形態では、重合反応器中の水素は、約0.001~約50psig(約0.007~約345kPa)、例えば約0.01~約25psig(約0.07~約172kPa)、例えば約0.1~約10psig(約0.7~約70kPa)の分圧で存在する。
【0151】
少なくとも1つの実施形態では、ポリマーを製造するためのプロセスにおいて、アルモキサンはほとんど又はまったく用いられない。少なくとも1つの実施形態では、アルモキサンは、約ゼロモル%で存在し、あるいは、アルモキサンは、約500:1未満、例えば約300:1未満、例えば約100:1未満、例えば約1:1未満のアルミニウム対遷移金属のモル比で存在する。
【0152】
少なくとも1つの実施形態では、エチレンポリマーを製造するためのプロセスにおいて、捕捉剤はほとんど又はまったく用いられない。少なくとも1つの実施形態では、捕捉剤(トリアルキルアルミニウムなど)は、約ゼロモル%で存在し、あるいは、捕捉剤は、約100:1未満、例えば約50:1未満、例えば約15:1未満、例えば約10:1未満の捕捉剤金属対遷移金属のモル比で存在する。
【0153】
少なくとも1つの実施形態では、重合は、1)約0~約300℃(例えば約25~約150℃、例えば約80~約150℃、例えば約100~約140℃)の温度で行われ、2)大気圧~約50MPaの圧力で行われ、3)脂肪族炭化水素溶媒(例えばイソブタン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、及びこれらの混合物;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及びこれらの混合物などの環式及び脂環式炭化水素など;好ましくは、溶媒中に存在する芳香族が、溶媒の質量に基づいて、約1wt%未満、例えば約0.5wt%未満、例えば約0wt%である溶媒)中で行われ、4)重合に用いられる触媒系は、約0.5モル%未満、例えば約0モル%のアルモキサンを含み、あるいは、アルモキサンは、約500:1未満、例えば約300:1未満、例えば約100:1未満、例えば約1:1未満のアルミニウム対遷移金属のモル比で存在し、5)少なくとも1つの実施形態では、重合は、1つの反応ゾーンで行われる。少なくとも1つの実施形態では、重合は、単一の反応器を用いる。特に断らない限り、室温は約23℃である。
【0154】
重合には、所望により他の添加剤、例えば、1種以上の捕捉剤、促進剤、変性剤、連鎖移動剤(例えばジアルキル亜鉛、典型的にはジエチル亜鉛など)、還元剤、酸化剤、水素、アルミニウムアルキル、又はシランを使用してもよい。
【0155】
好適な連鎖移動剤は、式AlR及びZnR(ただし、各Rは、独立に、C~C脂肪族ラジカル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、又はこれらの異性体である)で表されるトリアルキルアルミニウム及びジアルキル亜鉛、又はこれらの組み合わせであり、例えば、ジエチル亜鉛、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0156】
少なくとも1つの実施形態では、キノリニルジアミド遷移金属錯体は(QDA-1)HfMe
【化5】
であり、活性化剤はN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(BF20)である。
【0157】
溶液重合
溶液重合は、ポリマーが、不活性溶媒又はモノマー又はこれらのブレンドなどの液体重合媒体中に溶解される重合プロセスである。溶液重合は均一である。均一重合は、ポリマー生成物が重合媒体中に溶解される重合である。そのような系は、J. Vladimir Oliveira, C. Dariva and J.C. Pinto, Ind. Eng, Chem. Res. 29, 2000, 4627に記載のように、濁っていない。一般的に、溶液重合は、連続反応器中での重合を含み、その反応器中で、濃度勾配を低減又は回避するために、形成されたポリマー並びに供給された原料モノマー及び触媒物質が撹拌され、また、モノマーが希釈剤もしくは溶媒として作用し、あるいは、炭化水素が希釈剤もしくは溶媒として用いられる。好適なプロセスは、約0℃~約250℃、例えば約10℃~約150℃の温度、及び約0.1MPa以上、例えば約2MPa以上の圧力で操作される。少なくとも1つの実施形態では、圧力の上限は、典型的には、約200MPa以下、例えば約120MPa以下である。反応器中の温度制御は、一般に、重合熱の平衡を保つこと、並びに反応器の内容物を冷却するための反応器ジャケットもしくは冷却コイルによる反応器の冷却、自動冷却、予め冷却したフィード、液体媒体(希釈剤、モノマー、又は溶媒)の蒸発、又は3つすべての組み合わせによって得ることができる。予め冷却したフィードによる断熱性反応器を用いることもできる。溶媒の純度、種類、及び量は、特定の種類の重合に対して最大の触媒生産性が得られるように最適化できる。溶媒は、触媒キャリアとして導入されてもよい。溶媒は、圧力及び温度に応じて、気相又は液相として導入することができる。有利には、溶媒を、液相に維持して、液体として導入することができる。溶媒は、重合反応器へのフィードとして導入することができる。
【0158】
ポリオレフィン製品及び潤滑剤組成物
本開示は、本開示に記載の方法によって製造される物質組成物にも関する。少なくとも1つの実施形態では、本開示に記載の触媒系及び方法はポリオレフィンを生じる。
【0159】
少なくとも1つの実施形態では、コポリマーは、約85wt%未満、例えば約70wt%未満、例えば約65wt%未満、例えば約55wt%未満、例えば約45wt%未満、例えば約20wt%~約90wt%、あるいは約30wt%~約80wt%、あるいは約40wt%~約75wt%のエチレン含量を有する。少なくとも1つの実施形態では、コポリマーは、約20,000g/モル~約600,000g/モル、例えば約40,000g/モル~約550,000g/モル、例えば約50,000~約525,000g/モル、例えば約52,000g/モル~約515,000g/モルのMw(LS);及び約1.5~約6、例えば約2.0~約5.0、例えば約3.0~約4.5のPDI(Mw(LS)/Mn(DRI))を有する。
【0160】
少なくとも1つの実施形態では、本開示に記載のコポリマーは、約10,000g/モル~約200,000g/モル、例えば約20,000g/モル~約150,000、例えば約35,000g/モル~約135,000g/モルのMn(LS)値;及び約20,000g/モル~約600,000g/モル、例えば約30,000g/モル~約500,000g/モル、例えば約35,000g/モル~約350,000g/モルのMw(LS);約100,000g/モル~約1,500,000g/モル、例えば約120,000g/モル~約1,250,000g/モル、例えば約150,000g/モル~約1,100,000g/モルのMz(LS);約10,000g/モル~約200,000g/モル、例えば約20,000g/モル~約150,000g/モル、例えば約30,000g/モル~約120,000g/モルのMn(DRI);約30,000g/モル~約350,000g/モル、例えば約40,000g/モル~約300,000g/モル、例えば約90,000g/モル~約250,000g/モルのMw(DRI);約50,000g/モル~約800,000g/モル、例えば約80,000g/モル~約700,000g/モル、例えば約100,000g/モル~約600,000g/モルのMz(DRI)を有する。
【0161】
少なくとも1つの実施形態では、コポリマーは、約0.1g/10分~約90g/10分、例えば約0.2g/10分~約85g/10分、例えば約0.3g/10分~約80g/10分のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238、条件L、230℃及び2.16kg);約0.0g/10分~約150g/10分、例えば約0.2g/10分~約120g/10分、例えば約0.3g/10分~約90g/10分のMFR HLを有する。
【0162】
少なくとも1つの実施形態では、コポリマーは、約0.70~約0.98、あるいは約0.75~約0.97、あるいは約0.80~約0.95、あるいは約0.79~約0.94、例えば約0.80~約0.92、例えば約0.81~約0.91のg’visを有する。いくつかの実施形態では、g’visは0.98未満、あるいは0.95未満、あるいは0.90未満、あるいは0.85未満である。
【0163】
少なくとも1つの実施形態では、長鎖分岐コポリマーは、8*EXP(8E-06*w)のシアシニング比を有し、ここで、wは光散乱GPC-3DからのMw(LS)である。
【0164】
ポリマー融解温度(Tm)を示す分岐エチレン-プロピレンコポリマーの場合、エチレン-プロピレンコポリマーの融解熱(J/g)は、ポリマー中のエチレン量に相関する。少なくとも1つの実施形態では、長鎖分岐コポリマーは、2.2x-110未満の融解熱(J/g)を有し、ここでxは、FTIR ASTM D3900により測定した場合のエチレンのwt%である。
【0165】
別の実施態様において、本発明のポリマーは、DSCにより測定した場合のエチレン-プロピレンコポリマーの融解熱が10J/g未満、あるいは8J/g未満、あるいは6J/g未満、あるいは4J/g未満、あるいは2J/g未満、あるいは1J/g未満、あるいは0J/gである低い結晶化度を有する。
【0166】
さらに別の態様において、本開示に記載の分岐エチレン-プロピレンコポリマーは、-70℃もしくは-60℃又は-50℃から-20℃もしくは-10℃又は0℃までの範囲内のガラス転移温度(Tg)を有する。いくつかの実施形態では、本開示に記載の分岐エチレンプロピレンコポリマーは、約-65から-35℃、あるいは約-60から-45℃のTgを有する。
【0167】
さらに別の態様において、本開示に記載の分岐エチレン-プロピレンコポリマーは、-40℃もしくは-30℃又は-20℃又は10℃から10℃もしくは20℃もしくは30℃又は40℃までの範囲内の融点(Tm)を有する。
【0168】
いくつかの実施形態におけるエチレンコポリマーは、1種以上のエチレンコポリマー(2種以上のエチレンコポリマーのブレンド)を含み、各エチレンコポリマーは、2種以上の異なるC~C12α-オレフィンから誘導された単位を含む。好ましくは、エチレンコポリマーのエチレン含量は異なる。より好ましくは、1つのエチレンコポリマーは40~55wt%のエチレン含量を有し、別のエチレンコポリマーは50~75wt%のエチレン含量を有する。一実施形態では、どちらのエチレンコポリマーも、g’visが0.50~0.97の範囲内である長鎖分岐構造を有する。あるいは、一方のエチレン系共重合体のみが分岐している。
【0169】
コポリマーが反応器ブレンドポリマーである実施形態では、コポリマーは、コポリマーの質量を基準にして、40~55wt%の第1のポリマー成分、5~40wt%の第2のポリマー成分を含むことができ、望ましい範囲は、任意の下限から任意の上限までの範囲を含み得る。コポリマーは、コポリマーの質量に基づいて、55~97wt%の第1のポリマー成分、60~95wt%の第1のポリマー成分、65~92.5wt%の第1ポリマー成分を含んでもよく、望ましい範囲は、任意の下限から任意の上限までの範囲を含み得る。一実施形態では、反応器ブレンドは、並列反応器を有するシステムで製造される。あるいは、反応器ブレンドは直列反応器で製造される。
【0170】
ポリマー組成物の一実施形態では、本発明ポリマー組成物中の少なくとも2つの重合性結合を有するジエンの含有量は、コポリマーに対して0.5wt%未満、好ましくは0.1wt%未満である。別の実施形態では、長鎖分岐エチレンコポリマーはジエンを含まない。
【0171】
少なくとも1つの実施形態では、油と長鎖分岐コポリマーとを含む潤滑剤組成物は、増粘効率(TE)とせん断安定性指数(SSI)(30サイクル)との比が約1:2~約1:30(例えば約1:5~約1:25、例えば約1:6~約1:20、例えば約1:7~約1:18、例えば約1:8~約1:16)である。少なくとも1つの実施形態では、コポリマーは、約2%~約80%、(例えば約2.5%~約75%、例えば約3%~約60%)の30サイクルでのせん断安定性指数を有する。
【0172】
少なくとも1つの実施形態では、潤滑剤組成物は、3%超、あるいは10%超、あるいは20%超、あるいは30%超の30サイクルでのせん断安定性指数を有する。
【0173】
少なくとも1つの実施形態では、油と長鎖分岐コポリマーとを含む潤滑剤組成物は、約5cP未満、例えば約1.5cP~約5cP、例えば約2cP~約4.5cPの高温高せん断(HTHS)粘度(cP)を有する。高温高せん断(HTHS)粘度は、通常150℃、10-1で測定される。HTHSは、高温、高せん断速度での潤滑油の性能を評価するために使用される。高温高せん断粘度は、ASTM D4683に従って測定することができる。
【0174】
少なくとも1つの実施形態では、本開示に記載の油と長鎖分岐コポリマーとを含む潤滑剤組成物は、ASTM D445により測定した場合、約3cSt~約30cSt、例えば約6cSt~約28cSt、例えば約7cSt~約25cSt、例えば約8cSt~約25cStの100℃での動粘度(KV100)を有する。
【0175】
少なくとも1つの実施形態では、本開示に記載の長鎖分岐コポリマーと油とを含む潤滑剤組成物は、ASTM D445により測定した場合、約30cSt~約200cSt、例えば約40cSt~約175cSt、例えば約60cSt~約120cStの40℃での動粘度(KV40)を有する。
【0176】
さらに、少なくとも1つの実施形態では、本開示に記載の油と長鎖分岐コポリマーとを含む潤滑剤組成物は、約1以上、例えば約1~約6、例えば約1~約5.5、例えば約1.0~約5、約1.5以上、例えば約2~約4の増粘効率を有する。
【0177】
少なくとも1つの実施形態では、潤滑剤組成物は、油と、本開示に記載の長鎖分岐コポリマーとを含む。
【0178】
別のクラスの実施形態では、本開示は、第1のコポリマーと第2のコポリマーとを含み、第1のコポリマーが第2のコポリマーよりも高いエチレン含量を有し、2つのコポリマーのうちの少なくとも1つが長鎖分岐コポリマーである、潤滑剤組成物を提供する。コポリマーは、好ましくはエチレンプロピレンコポリマーである。
【0179】
以下のさらなる実施形態は、本開示の範囲内として企図される。
【0180】
実施形態A - 2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)及び約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有する長鎖分岐コポリマーとを含む潤滑剤組成物であって、コポリマーが、約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI);約20,000~約600,000g/モルのMw(LS);約0.7~約0.98のg’vis;約20wt%~約90wt%のエチレン含量を有し、コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である、潤滑剤組成物。
【0181】
実施形態B - 上記コポリマーが約30wt%~約80wt%のエチレン含量を有する、実施形態Aの組成物。
【0182】
実施形態C - 上記コポリマーが約40wt%~約75wt%のエチレン含量を有する、実施形態A又はBの組成物。
【0183】
実施形態D - 上記コポリマーが約2.0~約5.0のMw(LS)/Mn(DRI)を有する、実施形態A~Cのいずれかの組成物。
【0184】
実施形態E - 100℃での動粘度が約6cSt~約28cStである、実施形態A~Dのいずれかの組成物。
【0185】
実施形態F - 100℃での動粘度が約7cSt~約25cStである、実施形態A~Eのいずれかの組成物。
【0186】
実施形態G - 上記コポリマーが、約3%以上のせん断安定性指数(30サイクル)を有する、実施形態A~Fのいずれかの組成物。
【0187】
実施形態H - 上記コポリマーが約20%以上のせん断安定性指数(30サイクル)を有する、実施形態A~Gのいずれかの組成物。
【0188】
実施形態I - 上記コポリマーが約30%以上のせん断安定性指数(30サイクル)を有する、実施形態A~Hのいずれかの組成物。
【0189】
実施形態J - 上記コポリマーが約1以上の増粘効率を有する、実施形態A~Iのいずれかの組成物。
【0190】
実施形態K - 上記コポリマーが約1.5以上の増粘効率を有する、実施形態A~Jのいずれかの組成物。
【0191】
実施形態L - 組成物が約0.01wt%~約20wt%の上記コポリマーを含む、実施形態A~Kのいずれかの組成物。
【0192】
実施形態M - 組成物が約0.01wt%~約5wt%の上記コポリマーを含む、実施形態A~Lのいずれかの組成物。
【0193】
実施形態N - 上記油が、炭化水素、ポリアルファオレフィン、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコール、アルコール、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコーンオイル、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態A~Mのいずれかの組成物。
【0194】
実施形態O - 組成物が約5以下の高温高せん断(HTHS)粘度を有する、実施形態A~Nのいずれかの組成物。
【0195】
実施形態P - 分散剤、洗浄剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、摩耗調整剤、極圧添加剤、消泡剤、解乳化剤、又は腐食抑制剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態A~Oのいずれかの潤滑剤組成物。
【0196】
実施形態Q - 組成物が、第1のコポリマーのエチレン含量よりも少ないエチレン含量を有する第2のコポリマーを有し、少なくとも1つのコポリマーが長鎖分岐コポリマーである、実施形態A~Pのいずれかの組成物。
【0197】
実施形態R - 長鎖分岐エチレンコポリマーが、8*EXP(8E-06*w)より高いシアシニング比を有し、ここで、wは光散乱GPC-3DからのMw(LS)である、実施形態A~Qのいずれかに記載の組成物。
【0198】
実施形態S - 上記コポリマーが、2.2x-110未満の融解熱(J/g)を有し、ここで、xは、FTIRにより測定した場合のエチレンのwt%である、実施形態A~Rのいずれかの組成物。
【0199】
実施形態T - 上記コポリマーがエチレンプロピレンコポリマーである、実施形態A~Sのいずれかの組成物。
【0200】
実施形態U - 上記コポリマーが、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤から製造されたものであり、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C10ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C10ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である、実施形態A~Tのいずれかの組成物。
【0201】
実施形態V - 上記コポリマーが、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤から製造されたものであり、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、Cヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC10ヒドロカルベニル基であり、vは1~3である、実施形態A~Tのいずれかの組成物。
【0202】
実施形態W - 上記コポリマーが、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、Cヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するCヒドロカルベニル基であり、vは1~3である、実施形態A~Tのいずれかの組成物。
【0203】
実施形態X - 油と長鎖分岐コポリマーとをブレンドする工程を含む潤滑剤組成物の製造方法であって、組成物は、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)及び約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有し、コポリマーは、約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI);約20,000~約600,000g/モルのMw(LS);約0.7~約0.98のg’vis;及び約20wt%~約90wt%のエチレン含量を有し、コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤から製造され、ここで、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤は、式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である、方法。
【0204】
実施形態X - エンジンを潤滑する方法であって、油と、約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)及び約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有する長鎖分岐コポリマーとを含む潤滑剤組成物をエンジンに供給することを含み、コポリマーが、Mw(LS)/Mn(DRI)が約1.5~約6;約20,000~約600,000g/モルのMw(LS);約0.7~約0.98のg’vis;約20wt%~約90wt%のエチレン含量を有し、コポリマーが金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤の残留物を含み、金属ヒドロカルベニル連鎖移動剤が式:Al(R’)3-v(R”)で表され、ここで、各R’は、独立に、C-C30ヒドロカルビル基であり、各R”は、独立に、末端ビニル基を有するC-C20ヒドロカルベニル基であり、vは0.1~3である、方法。
【0205】
実施形態Y - 実施形態A~Wのいずれの潤滑剤組成物をエンジンに供給することを含む、エンジンを潤滑する方法。
【0206】
潤滑油組成物
本開示で製造される長鎖分岐コポリマー及び1種以上の基油(又はベースストック)を含む潤滑油組成物が提供される。ベースストックは、水素化分解、水素化、他の精製プロセス、非精製プロセス又は再精製プロセスのいずれに由来するものであっても、潤滑粘度の天然油又は合成油であってもよいし、あるいは潤滑粘度の天然油又は合成油を含んでいてもよい。ベースストックは、使用済み油であってもよいし、使用済み油を含んでもよい。天然油としては、動物油、植物油、鉱物油、及びそれらの混合物が挙げられる。合成油としては、炭化水素油、シリコン系油、リン含有酸の液体エステルが挙げられる。合成油は、他のガス液化油(gas-to-liquid oils)と同様に、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)ガス・ツー・リキッド合成法によって製造することができる。
【0207】
少なくとも1つの実施形態では、ベースストックは、PAO-2、PAO-4、PAO-5、PAO-6、PAO-7又はPAO-8(数値はASTM D445による100℃での動粘度に関連する)などのポリアルファオレフィン(PAO)であるか、又はそれを含む。少なくとも1つの実施形態では、ポリアルファオレフィンは、ドデセン及び/又はデセンから調製されたものであることができる。一般的に、潤滑粘度の油として好適なポリアルファオレフィンは、PAO-20又はPAO-30油の粘度よりも低い粘度を有する。少なくとも1つの実施形態では、ベースストックは、米国石油協会(API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)に規定されているように定義することができる。例えば、ベースストックは、APIグループI、II、III、IV及びVのオイル又はそれらの混合物であるか、あるいはAPIグループI、II、III、IV及びVのオイルを含むことができる。
【0208】
少なくとも1つの実施形態では、ベースストックは、クランクケース潤滑油として従来採用されている油又はそれらのブレンドを含むことができる。例えば、好適なベースストックは、例えば、自動車及びトラックのエンジン、船舶及び鉄道のディーゼルエンジンなどのスパーク点火式及び圧縮点火式内燃機関用のクランクケース潤滑油を含むことができる。好適なベースストックは、例えば、自動変速機液、トラクター液、ユニバーサルトラクター液及び油圧作動液、高耐久性油圧作動液、パワーステアリング液などのような、従来から動力伝達液に用いられている及び/又は動力伝達液としての使用に適する油を含んでいてもよい。好適なベースストックは、ギア潤滑剤、工業用オイル、ポンプオイル、及び他の潤滑油であってもよいし、又はこれらを含んでいてもよい。
【0209】
少なくとも1つの実施形態では、ベースストックは、石油由来の炭化水素油だけでなく、合成潤滑油、例えば、二塩基酸のエステル;一塩基酸、ポリグリコール、二塩基酸及びアルコールのエステル化によって製造される複合エステル;ポリオレフィン油なども含むことができる。従って、記載する潤滑油組成物は、ジカルボン酸、ポリグリコール及びアルコールのアルキルエステル;ポリアルファ-オレフィン;ポリブテン;アルキルベンゼン;リン酸の有機エステル;ポリシリコーン油などのような合成基油ベースストックに好適に組み込むことができる。
【0210】
本開示の潤滑油組成物は、任意選択的に、1種以上の従来の添加剤、例えば、流動点降下剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、他の粘度指数向上剤、分散剤、腐食抑制剤、消泡剤、洗浄剤、防錆剤、摩擦調整剤などを含むことができる。
【0211】
防錆剤としても知られる腐食抑制剤は、潤滑油組成物が接触する金属部品の劣化を低減する。例示的な腐食抑制剤としては、リン硫化炭化水素、及びリン硫化炭化水素とアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物との、好ましくはアルキル化フェノール又はアルキルフェノールチオエステルの存在下での、また好ましくは二酸化炭素の存在下での反応によって得られる生成物が挙げられる。リン硫化炭化水素は、例えばテルペンなどの好適な炭化水素、例えばポリイソブチレンなどのC~Cオレフィンポリマーの重質石油留分と、5~30wt%のリンの硫化物とを、66℃~316℃の範囲の温度で0.5~15時間反応させることによって調製される。リン硫化炭化水素の中和は、当業者に知られている方法で実施できる。
【0212】
酸化抑制剤又は酸化防止剤は、金属表面上のスラッジやワニス状堆積物などの酸化生成物や粘度上昇によって示されるように鉱物油が使用中に劣化する傾向を低減する。かかる酸化抑制剤としては、C~C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムノニルフェネートスルフィド、バリウムオクチルフェネートスルフィド、ジオクチルフェニルアミン、フェニルα-ナフチルアミン、リン硫化炭化水素又は硫化炭化水素などが挙げられる。本開示で有用な他の酸化抑制剤又は酸化防止剤としては、油溶性銅化合物、例えば米国特許第5,068,047号明細書に記載のものなどが挙げられる。
【0213】
摩擦調整剤は、自動変速機液などの潤滑油組成物に対して適切な摩擦特性を付与するように働く。適切な摩擦調整剤の代表的な例は、脂肪酸エステル及びアミドを開示する米国特許第3,933,659号明細書、ポリイソブテニル無水コハク酸-アミノアルカノールのモリブデン錯体を記載する米国特許第4,176,074号明細書、二量体化脂肪酸のグリセロールエステルを開示する米国特許第4,105,571号明細書、アルカンホスホン酸塩を開示する米国特許第3,779,928号明細書、ホスホネートとオレアミドとの反応生成物を開示する米国特許第3,778,375号明細書、S-カルボキシアルキレンヒドロカルビルスクシンイミド、S-カルボキシアルキレンヒドロカルビルスクシンアミド酸及びそれらの混合物を開示する米国特許第3,852,205号明細書、N-(ヒドロキシアルキル)アルケニル-スクシンアミド酸又はスクシンイミドを開示する米国特許第3,879,306号明細書、ジ(低級アルキル)ホスファイトとエポキシドとの反応生成物を開示する米国特許第3,932,290号明細書、並びにホスホ硫化N-(ヒドロキシアルキル)アルケニルスクシンイミドのアルキレンオキシド付加物を開示する米国特許第4,028,258号明細書に見出される。好ましい摩擦調整剤は、米国特許第4,344,853号明細書に記載されているものなどのヒドロカルビル置換コハク酸もしくは酸無水物とチオビス-アルカノールとのコハク酸エステル又はその金属塩である。
【0214】
分散剤は、使用中の酸化によって生じる油不溶物を液中に懸濁状態に維持し、かくして、スラッジの凝集や金属部品への沈殿又は堆積を防止する。好適な分散剤としては、高分子量のN-置換アルケニルコハク酸イミド、油溶性ポリイソブチレンコハク酸無水物とエチレンアミン、例えばテトラエチレンペンタミンなどとの反応生成物、及びそれらのホウ酸塩が挙げられる。高分子量エステル(オレフィン置換コハク酸と一価又は多価脂肪族アルコールとのエステル化から生じる)又は高分子量アルキル置換フェノール、又は高分子量アルキル化フェノール(高分子量アルキル置換フェノールと、アルキレンポリアミンと、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドなどとの縮合から生じる)からのマンニッヒ塩基も分散剤として有用である。
【0215】
潤滑油流動性向上剤とも知られている流動点降下剤(「PPD」)は、流体が流動する、又は流体を注ぐことができる温度を低下させる。当該技術分野で知られている任意の適切な流動点降下剤も使用することができる。例えば、好適な流動点降下剤としては、1つ以上のC~C18ジアルキルフマレート酢酸ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、アルキルメタクリレート及びワックスナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
発泡の制御は、任意の1種以上の消泡剤によって提供することができる。好適な消泡剤としては、ポリシロキサン、例えばシリコーンオイル及びポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0217】
摩耗防止剤は、金属部品の摩耗を減少させる。従来の摩耗防止剤の代表は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及びジアリールジチオ硫酸亜鉛であり、これらは酸化防止剤としても機能する。
【0218】
洗浄剤及び金属防錆剤としては、スルホン酸の金属塩、アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、アルキルサリチレート、ナフテネート、及び他の油溶性モノ-及びジカルボン酸が挙げられる。高塩基性(すなわち過塩基性)金属塩、例えば高塩基性アルカリ土類金属スルホネート(特にCa塩及びMg塩)は、洗浄剤として頻繁に使用される。
【0219】
潤滑油組成物が上述した1つ以上の成分を含む場合、添加剤(1種以上)はその意図する機能を果たすのに十分な量で組成物に配合される。本発明で有用なかかる添加剤の典型的な量を以下の表Aに示す
【表2】
【0220】
他の添加剤が使用される場合、必要ではないが、VI向上剤の濃縮溶液又は分散液(濃縮量)を、他の添加剤の1種以上と共に含む添加剤濃縮物を調製することが望ましい場合があり、このような濃縮物は「添加剤パッケージ」と呼ばれ、これにより複数の添加剤をベースストックに同時に添加して潤滑油組成物を形成することができる。添加剤濃縮物の潤滑油への溶解は、溶媒及び穏やかな加熱を伴う混合によって促進することができるが、これは必須ではない。添加剤パッケージは、添加剤パッケージを所定量の基油と組み合わせたときに、最終製剤で所望の濃度を提供するのに適切な量のVI向上剤及び任意の追加添加剤を含むように配合することができる。
【0221】
また、本開示の長鎖分岐コポリマーを濃縮物として貯蔵及び輸送することが望ましいであろう。濃縮物では、コポリマーは、典型的には希釈油と混合される。希釈油は、グループI、グループII、グループIII、グループIVもしくはグループVの油、又は上記油のブレンドを含み得る。希釈油は、グループIの油と、1つ以上のグループII、III、IV又はVの油とのブレンドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、濃縮物は0.5wt%~20wt%の長鎖分岐コポリマーを含むことができる。
【0222】
ベースストック油とのブレンド
AC-150(商標)のグループI基油とのブレンド溶液は、AC-150(商標)グループI基油を、高温、例えば130℃で加熱し、次いでポリマー及び任意選択の酸化防止剤を添加することにより得られる。ポリマーが完全に溶解するまで混合物を撹拌することができ、その後、混合物を室温まで冷却する。溶解挙動を室温で記録する。
【0223】
増粘効率(TE)は、油中のポリマーの増粘能力についての1つの相対的指標であり、TE=2/c×ln((kv(polymer+oil))/kvoil)/ln(2)として定義され、ここで、cはポリマーの濃度であり、kvはASTM D445による100℃での動粘度である。せん断安定性指数(SSI)は、エンジン中での永久的な機械的せん断劣化に対するポリマーの耐性の指数である。SSIは、ASTM D6278に記載の手順に従って、高せん断Boschディーゼルインジェクタに、ポリマー-油溶液を30サイクル通すことによって決定することができる。
【0224】
ポリマーは、約1より大きい、もしくは約1.5より大きい、もしくは約1.9より大きい、もしくは約2.2より大きい、もしくは約2.4より大きい、又は約2.6より大きい増粘効率を有することができる。ポリマーは、70%未満、例えば60%未満、例えば50%未満の剪断安定性指数を有することができる。ポリマーは、約10Pa・s未満、又は約6×10Pa・s未満の、約190℃及び0.01rad/sでの複素粘度を有することができる。本明細書で使用する場合、「複素粘度」という用語は、動的粘度と異相粘度との差に等しい、パスカル・秒の単位での、せん断応力の強制小振幅調和振動中に決定される周波数依存性粘度関数を意味する。
【0225】
本開示で製造されるコポリマーは、約2%~約80%、例えば約3%~約60%のせん断安定性指数(SSI)(ASTM D6278、30サイクルに従って決定される)を有する。
【0226】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、油と以下を有するコポリマーとを含む潤滑組成物を提供する:1)約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI)、2)約20,000~約600,000g/モルのMw(LS)、3)約0.7~約0.98のg’vis、4)約20wt%~約90wt%のエチレン含量。
【0227】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、油とコポリマーとを含む潤滑組成物であって、コポリマーが、約40wt%~約85wt%のエチレン含量、及び約3~約4.5のMw(LS)/Mn(DRI)を有する、潤滑組成物を提供する。
【0228】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、油とコポリマーとを含む潤滑組成物であって、コポリマーが、1)約2%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)、及び2)約7cSt~約25cStの100℃での動粘度を有する、潤滑組成物を提供する。
【0229】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、約7cSt~約25cStの100℃での動粘度、約3%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)、約1以上の増粘効率、及び約0.01rad/s以下のシアシニング開始点を有する潤滑組成物を提供する。
【0230】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、組成物が0.01wt%~12wt%の上記コポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0231】
少なくとも別の実施形態では、本開示は、組成物が0.01wt%~5wt%の上記コポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0232】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、油が、炭化水素、ポリアルファオレフィン、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコール、アルコール、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコーンオイル、又はそれらの組み合わせを含む潤滑組成物を提供する。
【0233】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、約5cP以下の高温高せん断(HTHS)粘度、約1:5~約1:20の増粘効率とせん断安定性指数(30サイクル)との比、及び約1.0以上の増粘効率を有する潤滑組成物を提供する。
【0234】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、以下を含む潤滑油組成物の製造方法を提供する:
1)油とコポリマーとをブレンドすること、ここで、コポリマーは、a)約1.5~約6のMw(LS)/Mn(DRI)、b)約20,000~約600,000g/モルのMw(LS)、c)約0.7~約0.98のg’vis、d)約20wt%~約90wt%のエチレン含量、e)約3%~約80%のせん断安定性指数(30サイクル)、及びf)約-70℃~約-20℃、例えば約-65℃~-35℃のガラス転移温度Tgを有し、得られるオイルが約3cSt~約30cStの100℃での動粘度を有する。
【0235】
少なくとも1つの実施形態では、潤滑油組成物は、ベースストック油を加熱し、次いでポリマー及び任意選択の添加剤を添加することによって調製することができる。この組成物は、典型的には約50℃~約150℃、より典型的には約50℃~約130℃、さらに典型的には約50℃~約100℃の温度に加熱される。
【0236】
次に、ポリマーが完全に溶解するまで混合物を撹拌し、次いで、混合物を室温まで冷却する。従来の添加剤としては、例えば、流動点降下剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、他の粘度指数向上剤、分散剤、腐食抑制剤、消泡剤、洗浄剤、防錆剤、摩擦調整剤などが挙げられる。
【0237】
代表的な量は、上記の表Aに開示されている。
【実施例1】
【0238】
実験
シェーカーオーブン中、165℃で約3時間かけて、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT、99%、Aldrichから)を含む1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB、99+%純度、Sigma-Aldrichから)にポリマーを溶解させることによって、ポリマー試料溶液を調製した。溶液中の好適なポリマー濃度は0.1mg/ml~0.9mg/mlであり、BHT濃度は、TCBジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL-H)1mlあたり1.25mgのBHTとし、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)はAkzo Nobel及び/又はSigma Aldrichから購入し、受け取ったままの状態で使用した。1,7-オクタジエン及び1,9-デカジエンはSigma Aldrichから購入し、使用前に窒素雰囲気下で金属ナトリウムから蒸留することにより精製した。有機アルミニウムや遷移金属などの酸素反応性化学種を使用する合成手順は、グローブボックスやシュレンクライン技術を用いて不活性雰囲気下で行った。NMR分光用溶液の調製に使用した溶媒は、使用前に3オングストロームのモレキュラーシーブ上で乾燥させ、窒素でスパージした。Bruker 400MHzスペクトロメーターを用いて、均質溶液(約0.01M)でH-NMRスペクトルデータを収集した。報告される化学シフトは、D-ベンゼンについての7.15に位置する残留プロチウムに対するものである。
【0239】
AVTAの合成
イソブチルジ(デカ-9-エン-1-イル)アルミニウム(AVTA-2/10)の調製:
1,9-デカジエン(500mL,2.71mol)を丸底フラスコに装入した。水素化ジイソブチルアルミニウム(30.2mL,0.170mol)を15分かけて滴下添加した。次に、、混合物を110℃に保った金属ブロック内に入れた。30分後、溶液は104℃の温度で安定した。混合物をこの温度にさらに135分間保ち、この135分間が経過した時点でのH-NMR分光学的データは、反応が所望の量まで進行したことを示していた。反応混合物を周囲温度まで冷却した。過剰の1,9-デカジエンを44℃/120mTorrで2.5時間かけて減圧蒸留により除去した。すべての1,9-デカジエンの完全な除去を確実にするため、生成物を50℃/120mTorrでさらに1時間蒸留した。単離された生成物は無色透明な油であった。H-NMRスペクトルのデータから、Al(i-Bu)0.9(デセニル)2.1の平均式が示され、さらに1,9-デカジエンのAl-デセニル結合への挿入と、その後のβ-ヒドリド脱離によって形成されたトリエンであると推定されるものが約0.2モル当量含まれていた。収量:70.9g。
【0240】
触媒錯体(QDA-1)HfMeの合成
理論に束縛されることなく、本開示の好適な遷移金属触媒は、AVTAへの、又はアルミニウムアルキルなどの他の連鎖移動剤(CTA)が存在する場合にはかかる他の連鎖移動剤(CTA)への連鎖移動の速度に対して、オレフィンの伝播速度が高く、βヒドリド脱離、βメチル脱離、又はモノマーへの連鎖移動による連鎖停止が無視できるか又は無いと考えられる。ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート及び/又はジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロナフチル)ボレートなどの非配位性活性剤で活性化されたピリジルジアミド及びキノリニルジアミドプレ触媒は、本開示に適した触媒である。好適な触媒化合物としては、(QDA-1)HfMeが挙げられる(以下の合成説明及び重合結果を参照)。キノリニルジアミン配位子2-(8-アニリノ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)キノリン-8-アミンは、米国特許出願2018/0002352 A1に記載されているように調製した。
【化6】
【0241】
(QDA-1)HfMeの調製
トルエン(80mL)を2-(8-アニリノ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)キノリン-8-アミン(QDA-1ジアミン、5.500g、10.46mmol)及びHf(NMe(3.865g、10.89mmol)に加え、数分間撹拌すると、透明なオレンジ色の溶液が形成された。混合物を金属ブロック上に置き、85℃に温めた。21時間後、溶液は透明で赤色を帯びていた。フラスコを周囲温度近くまで放冷し、AlMe(5.279g、73.23mmol)をすばやく加えた。混合物は濃赤色になった。7時間後、窒素気流で一晩蒸発させて揮発分を除去した。得られたオレンジ色の固形物をスパチュラで砕き、トルエン(5mL)を加えてスラリーとした。スラリーを30分間撹拌した後、ペンタン(60mL)を加えた。懸濁液を3時間撹拌した。固形物をフリット上に集め、冷ペンタン(2×30mL)で洗浄し、生成物をオレンジ色の固形物として得た。H-NMRスペクトルのデータから、許容できる純度の生成物(QDA-1)HfMeが示された。収量:6.93g,90.5%。
【0242】
GPC 3D手順
少なくとも1つの実施形態では、本開示で製造されるポリマーは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により決定した場合に単峰性又は多峰性の分子量分布を有する。「単峰性」とは、GPCトレースが1つのピーク又は変曲点を有することを意味する。「多峰性」とは、GPCトレースが少なくとも2つのピーク又は変曲点を有することを意味する。変曲点とは、曲線の二次導関数の符号が変化する点(例えば、負から正へ、又はその逆)である。
【0243】
3台の検出器を用いたゲル透過クロマトグラフィー(GPC-3D):
3台のインライン検出器、すなわち示差屈折率検出器(DRI)、光散乱(LS)検出器及び粘度計を装備した高温ゲル透過クロマトグラフィー(Agilent PL-220)を使用することによって、M、M及びM/Mを決定した。検出器の較正を含めた実験の詳細は、T. Sun, P. Brant, R. R. Chance and W. W. Graessley, Macromolecules, Volume 34, Number 19, pp. 6812-6820, 2001及びその中の参考文献に記載されている。3本のAgilent PLgel 10ミクロン Mixed-B LSカラムを使用した。公称流量は0.5mL/分であり、公称注入容量は300μLである。145℃に維持したオーブン内に各種移送ライン、カラム、粘度計及び示差屈折計(DRI検出器)を収容した。4リットルのAldrich試薬グレードの1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)に酸化防止剤として6グラムのブチル化ヒドロキシトルエンを溶かすことによって実験用の溶媒を調製した。次に、0.1μmのテフロン(登録商標)フィルターを通してTCB混合物を濾過した。次に、TCBを、GPC-3Dに入る前にオンライン脱ガス装置で脱気した。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望量のTCBを添加し、連続的に振盪しながら混合物を160℃で約2時間加熱することによって、ポリマー溶液を調製した。全ての量は質量測定法により測定した。質量/体積単位でポリマー濃度を表すために用いるTCB密度は、室温で1.463g/mlであり、145℃で1.284g/mlである。注入濃度は0.5~2.0mg/mlであり、サンプルの分子量がより大きいほど、より低い濃度が使用する。各サンプルを流す前にDRI検出器及び粘度計をパージした。次に装置における流量を0.5ml/分に増加させ、最初のサンプルを注入する前にDRIを8時間安定化させた。サンプルを流す前にLSレーザーを少なくとも1~1.5時間オンにする。クロマトグラムの各点での濃度cは、ベースラインを差し引いたDRI信号IDRIから、下記方程式を用いて計算される。
【数1】
ここで、KDRIは、DRIを較正することによって決まる定数であり、(dn/dc)は、この系の屈折率増加分である。145℃及びλ=690nmでのTCBの屈折率nは1.500である。この記述を通じたパラメーターに関する単位はg/cmで表し、分子量はg/モルで表し、固有粘度はdL/gで表す。
【0244】
LS検出器は、Wyatt Technology High Temperature DAWN HELEOSである。静的光散乱に関するZimmモデルを用いてLS出力を解析することによってクロマトグラムの各点の分子量Mを決定する(M.B. Huglin, Light Scattering from Polymer Solutions, Academic Press, 1971)。
【数2】
【0245】
ここで、ΔR(θ)は散乱角θで測定した過剰レイリー散乱強度であり、cはDIR分析から決定されたポリマー濃度であり、Aは第二ビリアル係数であり、P(θ)は単分散ランダムコイルについての形状因子であり、Kは系の光学定数である。
【数3】
ここで、Nはアボガドロ数であり、(dn/dc)は系の屈折率増加分であり、これはDRI法から得られた値と同じ値をとる。屈折率は、TCBの場合、145℃及びλ=665nmで、n=1.500である。
【0246】
比粘度を測定するために、2つの圧力トランスデューサとともにホイートストンブリッジ構成で配列された4つのキャピラリーを有する高温Viscotek Corporation粘度計を使用した。一方のトランスデューサは、検出器全体の全圧力低下を測定し、他方は、ブリッジの両側の間に位置して、差圧を測定する。粘度計を通って流れる溶液の比粘度ηは、これらの出力から算出される。クロマトグラムの各点における固有粘度[η]は、式:
【数4】
から算出され、ここで、cは濃度であり、これは、DRI出力から決定した。
【0247】
分岐指数(g’vis)は、以下のように、GPC-DRI-LS-VIS法の出力を用いて算出される。サンプルの平均固有粘度[η]avgは、
【数5】
により算出され、ここで、総和は、積分限界間のクロマトグラフィ部分i全体に対するものである。
分岐指数g’visは、
【数6】
として定義され、ここで、MvはLS分析によって決定された分子量に基づく粘度平均分子量であり、α及びKは、文献(T. Sun, P. Brant, R.R. Chance, and W.W. Graessley, Macromolecules, 2001, Vol. 34, Number 19, pp. 6812-6820 (2001))に記載されているように計算される。ただし、本発明及び特許請求の範囲では、エチレン-プロピレンコポリマー及びエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーの場合に、α=0.695+(0.01*(プロピレンの質量分率))及びK=0.000579-(0.0003502*(プロピレンの質量分率))であり、エチレンポリマーの場合に、α=0.695及びK=0.000579であり、プロピレンポリマーの場合に、α=0.705及びK=0.0002288であり、ブテンポリマーの場合に、α=0.695及びK=0.000181であり、エチレン-ブテンコポリマーの場合に、αは0.695であり、Kは0.000579*(1-0.0087*w2b+0.000018*(w2b))であり、ここで、w2bはブテンコモノマーのバルク質量百分率であり、エチレン-ヘキセンコポリマーの場合に、αは0.695であり、Kは0.000579*(1-0.0075*w2b)であり、ここで、w2bはヘキセンコモノマーのバルク質量百分率であり、エチレン-オクテンコポリマーの場合に、αは0.695であり、Kは0.000579*(1-0.0077*w2b)であり、ここで、w2bはオクテンコモノマーのバルク質量百分率である。特に記載がない限り、濃度はg/cmで表され、分子量はg/モルで表され、固有粘度(Mark-Houwink式におけるK)はdL/gで表される。
【0248】
全ての分子量は、特に記載のない限り、質量平均である。全ての分子量は、特に記載のない限り、g/モルで報告される。
【0249】
示差走査熱量測定法(DSC)
ピーク融点Tm(融点ともいう)、ピーク結晶化温度Tc(結晶化温度ともいう)、ガラス転移温度(Tg)、融解熱(ΔH又はH)、及び結晶化度(%)を、ASTM D3418-03に従って以下のDSC手順を使用して測定した。示差走査熱量測定(DSC)データは、TA InstrumentsモデルQ200装置を使用して得た。約5~10mgのサンプルをアルミニウム密閉サンプル皿に密封した。DSCデータは、まずサンプルを10℃/分の速度で200℃まで徐々に加熱して記録した。サンプルを200℃に2分間保った後、10℃/分の速度で-90℃まで冷却し、その後、2分間等温に保ち、10℃/分で200℃まで加熱した。1サイクル目と2サイクル目の両方の熱事象を記録した。吸熱ピーク下の面積を求め、融解熱と結晶化度の百分率を決定するために使用した。結晶化度(%)は、[融解ピーク下の面積(ジュール/グラム)/B(ジュール/グラム)]*100の式を使用して計算され、ここで、Bは主要モノマー成分の100%結晶性ホモポリマーの融解熱である。Bについてのこれらの値は、Polymer Handbook, Fourth Edition, published by John Wiley and Sons, New York 1999から得られる。ただし、100%結晶性ポリプロピレンの融解熱としては207J/gの値(B)が使用され、100%結晶性ポリエチレンの融解熱としては290J/gの値が使用される。ここで報告した融解温度と結晶化温度は、特に断らない限り、2回目の加熱/冷却サイクルで得られたものである。
【0250】
複数の吸熱及び発熱ピークを示すポリマーについては、ピーク結晶化温度とピーク融解温度を全て報告した。各吸熱ピークの融解熱は個別に計算した。結晶化度(%)は、全ての吸熱ピークからの融解熱の和を用いて計算した。製造されたポリマーブレンドのうちのいくつかは、主ピークと重なる二次融解/冷却ピークを示し、これらのピークはまとめて単一の融解/冷却ピークとみなされる。これらのピークのうち最も高いピークをピーク融解温度/結晶化点とみなす。比較的低いレベルの結晶化度を有する非晶性ポリマーの場合、融解温度は、典型的には、最初の加熱サイクルの間に測定され、報告される。DSC測定に先立ち、結晶化度を最大限に高めるため、サンプルをエージング(通常、周囲温度で2日間保持)又はアニール処理した。
【0251】
メルトフローレート
全てのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238を使用して、2.16kg及び230℃で決定した。高負荷メルトフローレート(HLMFR)は、ASTM D1238を使用して、21.6kg及び230℃で決定した。測定は、以下に示す添加剤を含むエチレン-プロピレンコポリマーを使用して行った。
【0252】
小振幅振動せん断(SAOS):
動的せん断融解物レオロジーデータは、窒素雰囲気下、動的モードで平行プレート(直径=25mm)を使用して、Advanced Rheometrics Expansion System(ARES)を用いて測定した。全ての実験について、樹脂(ポリマー組成物)の圧縮成形サンプルを平行プレート上に挿入する前に、レオメーターは、190℃で少なくとも30分間熱安定であった。サンプルの粘弾性挙動を求めるために、190℃の温度で10%の一定歪みの下で、0.01~385rad/秒の範囲の周波数掃引を行った。実験の間の連鎖伸長又は架橋を最低限に抑えるために、窒素流をサンプルオーブン中を循環した。正弦関数のせん断歪みを材料に適用した。歪み振幅が十分に小さいと、材料は直線的に挙動する。当業者が承知するように、得られる定常状態応力も同じ周波数で正弦関数的に振動するが、歪み波に対して位相角δ分シフトする。応力は歪みよりδ分先行する。純粋に弾性の材料の場合、δ=0°であり(応力は歪みと同位相である)、また純粋に粘性の材料の場合、δ=90°である(応力は歪み速度と同位相であるが、応力は歪みに90°分先行する)。粘弾性材料の場合、0<δ<90である。周波数の関数としての複素粘度、損失弾性率(G”)及び貯蔵弾性率(G’)は、小振幅振動せん断試験によって得られる。動的粘度は、複素粘度又は動的せん断粘度とも呼ばれる。位相又は損失角δは、G”(せん断損失弾性率)とG’(せん断貯蔵弾性率)との比の逆正接である。
【0253】
シアシニング比:
シアシニング(又はせん断減粘性)は、ポリマー融解物のレオロジー的応答であり、流れに対する抵抗(粘度)がせん断速度の増加とともに減少する。複素せん断粘度は、一般的に、低いせん断速度(ニュートン領域)では一定であり、せん断速度が増加するとともに減少する。低せん断速度領域では、粘度はゼロせん断粘度と称され、これは多分散及び/又はLCBポリマー融解物の場合には測定するのがしばしば困難である。より高いせん断速度では、ポリマー鎖はせん断方向に配向され、これにより、ポリマー鎖の未変形状態に比べて鎖の絡み合いの数が減少する。鎖の絡み合いのこの減少は、より低い粘度をもたらす。せん断減粘性は、正弦関数的に適用されたせん断の周波数の増加にともなって複素動的粘度が減少することによって特徴付けられる。せん断減粘性比は、0.1ラジアン/秒の周波数での複素せん断粘度と100ラジアン/秒の周波数での複素せん断粘度との比として定義される。シアシニングの開始は、複素粘度がニュートン領域から外れ始める周波数として定義される(複素粘度はせん断速度に依存しない)。いくつかの長鎖分岐エチレンコポリマーでは、試験周波数範囲においてニュートン流動領域が観察されない。この場合、せん断減粘の開始は0.01rad/sec(試験周波数の下限)未満である。
【0254】
エチレンのwt%はASTM D3900に従ってFTIRを使用して決定した。
【0255】
重合
以下に、実施例に使用した一般的な重合手順を記載する。重合は連続撹拌タンク反応器システムで行った。1リットルのオートクレーブ反応器に、撹拌機と、圧力制御器と、温度制御器を備えた水冷/スチーム加熱要素とを装備した。反応物混合物の泡立ち点圧力を超える反応器圧力で液体充填状態で反応器を運転し、反応物を液相状態に保った。イソヘキサンとプロピレンはPulsaフィードポンプで反応器に送り込んだ。液体の流量は全てコリオリ式マスフローコントローラー(Brooks製のQuantimシリーズ)を用いて制御した。エチレン及びHを、Brooksフローコントローラーにより、それ自体の圧力下で気体として流した。モノマー(例えば、エチレン及びプロピレン)及びHフィードを組み合わせて1つの流れにし、次いで、少なくとも0℃に冷却された予備冷却イソヘキサン流れと混合した。次いで、混合物を単一ラインを通して反応器に供給した。触媒毒をさらに減少させるために、溶媒とモノマーを組み合わせた流れが反応器に入る直前に、溶媒とモノマーを組み合わせた流れに捕捉剤溶液(使用する場合)も加えた。同様に、ISCOシリンジポンプを使用して、別のラインを通して反応器に触媒溶液を供給した。連鎖移動剤(例えばAVTA 2/10)の溶液を、計量ポンプを使用して別のラインを通じて反応器に供給した。
【0256】
イソヘキサン(溶媒として使用)とモノマー(例えば、エチレンとプロピレン)を、アルミナ床及びモレキュラーシーブ床で精製した。触媒溶液を調製するためのトルエンを、同じ手法で精製した。
【0257】
捕捉剤溶液として、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)のイソヘキサン溶液(ヘキサン中25wt%、Sigma Aldrich)を使用した。(QDA-1)HfMe触媒を、900mlのトルエン中約1:1のモル比で、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートにより活性化した。連鎖移動剤もトルエンで希釈した。
【0258】
反応器内で生成したポリマーは、圧力を大気圧まで下げる背圧制御バルブを通って排出された。これにより、溶液中の未変換モノマーが蒸気相にフラッシュし、気液分離器の上部から排出された。主にポリマーと溶媒を含む液相を、ポリマー回収のために回収した。回収したサンプルを、まずフード内で風乾して溶媒の大部分を蒸発させ、次いで、真空オーブン内で約90℃の温度で約12時間乾燥させた。真空オーブンで乾燥させたサンプルを秤量して収量を求めた。
【0259】
サンプル1~15の詳細な重合プロセス条件及びいくつかの特徴的性質を表1に示す。触媒効率を最適化するために捕捉剤供給速度(使用する場合)を調整し、供給速度は0(捕捉剤なし)から15μmol/分まで変化させた。触媒の供給速度は、システム内の不純物のレベルに応じて調整し、記載した目標転化率を達成することもできる。全ての反応は、特に断らない限り、約2.4MPaの圧力で行った。サンプルC1~C8は異なるプロセスで製造された比較用の直鎖OCPである。
【表3】
【0260】
【表4】
【0261】
【表5】
【0262】
【表6】
【0263】
【表7】
【0264】
【表8】
【0265】
【表9】
【0266】
【表10】
【0267】
選択したエチレン-プロピレン共重合体の特性評価結果を表1に示す。直鎖状エチレンコポリマーを比較配合例としてCF-1及びCF-2の配合に使用した。ここでC1及びC2はそれぞれ市販の直鎖状EPコポリマーである。比較サンプルのデータを表2に示す。AVTAの使用により、分岐レベルが高い高分子量のEPコポリマーの形成がもたらされる。プロセス中に使用するAVTAの量を増やすと、分岐が増加すると考えられる。本発明例1~34における長鎖分枝の証拠は、分岐指数(g’vis)とシアシニング比の両方に見られる。比較用の直鎖状OCPサンプルC1及びC2の分岐指数はほぼ1であるのに対し、本発明例1~34の分岐指数は著しく低い。また、本発明例のシアシニング比は、比較のための直鎖の例のシアシニング比よりも著しく高い。
【0268】
表1の例を、潤滑油中の粘度調整剤として配合し、試験した。ポリマーサンプルを、約15cStの粘度をもたらす濃度にグループI希釈油中にブレンドした。試験結果を表2に示す。
【0269】
せん断安定性指数(SSI)は、ASTM D6278に従って、Kurt Orbahnディーゼル噴射装置を用いて30サイクルで決定した。
【0270】
高温高せん断(HTHS)は、テーパードベアリングシミュレーターで、ASTM D4683に従って、150℃及び10 1/sで測定した。
【0271】
増粘効率(TE)は、
油の粘度を増加させるポリマーの1つの相対的指標であり、TE=2/c×ln((ポリマー+油のKV)/油のKV100)/ln(2)として定義され、ここで、cはポリマーの濃度である。定義によれば、オイル中1.0wt%の濃度で、100℃で、基準オイル粘度の2倍になる理論的基準コポリマーはTE=2.0有する。
【0272】
KVはASTM D445により決定した場合の動粘度である(KV40は40℃で求められ、KV100は100℃で求められる)。
【0273】
一時的なせん断減粘(シアシニング)に対する長鎖枝分かれの利点は、長鎖分岐AVTA EPコポリマーと比較基準としての直鎖OCPのSSIの範囲にわたるHTHS粘度として図1に示されている。HTHSは、油中でのポリマーのシアシニング挙動を示す1つの指標である。同じ低せん断粘度(KV100)を示す潤滑油の場合、測定されたHTHS粘度が低いことは、油が、運転中のエンジンにおける摩擦損失の減少をもたらし、燃費の向上をもたらすことができることを示している(例えば、W. van Dam, T. Miller, G. Parsons:Optimizing Low Viscosity Lubricants for Improved Fuel Economy in Heavy Duty Diesel Engines. SAE Paper 2011-011-1206参照)。本発明の長鎖分岐EPサンプルを用いて調製された潤滑油は、直鎖OCPを用いて調製されたものと比較して、より低いHTHSを示す。
【表11】
【0274】
同様のTE及びSSI(表2参照)において、本発明例は、処方例C-1及び/又はC-2と比較してより低いHTHSを示した。
【0275】
全体として、長鎖分枝を有するポリ(エチレン-プロピレン)コポリマーは、制御されたレベルの長鎖分枝を導入するために、アルミニウムビニル移動剤(AVTA)の存在下で配位連鎖移動重合(CCTP)を介して製造された。分岐AVTA EP生成物は、GPC-3Dとレオロジーから示唆されるように、分枝の存在を示した。分岐AVTA EPは、既存の直鎖オレフィンコポリマー(OCP)グレードと比較して、高い高温高せん断(HTHS)粘度を示した。増粘効率と機械的せん断安定性は、既存の直鎖状OCP製品に匹敵する。本開示の分岐OCPは、市販品よりも改善された燃費の利点を提供することができ、将来の仕様を満たすポテンシャルを有する。
【0276】
特に断らない限り、「本質的に~からなる(consists essentially of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という表現は、本明細書で具体的に言及されているか否かにかかわらず、そのようなステップ、要素、又は材料が本開示の基本的かつ新規な特性に影響を与えない限り、他のステップ、要素、又は材料の存在を排除するものではなく、さらに、使用される要素及び材料に通常関連する不純物及び差異を排除するものではない。
【0277】
同様に、「含む(comprising)」という用語は、米国法上、「含む(including)」という用語と同義とみなされる。同様に、組成物、要素、又は要素群の前に移行句「含む(comprising)」がある場合は、常に、組成物、要素、又は要素群の引用の前に移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」がある同じ組成物又は要素群も想定していると理解されるべきであり、その逆もまた同様である。
【0278】
本開示において、「a」及び「the」は、単数に加えて複数も包含すると理解されたい。
【0279】
特に断らない限り、室温は約23℃である。
【0280】
簡略化のため、本明細書では特定の範囲のみを明示的に開示する。しかしながら、任意の下限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を記述することができ、同様に、任意の下限値からの範囲を他の任意の下限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を記述することができ、同様に、任意の上限値からの範囲を他の任意の上限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を記述することができる。さらに、1つの範囲内には、明示的に記述されていなくても、その端点間の全ての点又は個々の値が含まれる。したがって、全ての点又は個々の値は、他の点又は個々の値、あるいは他の下限値又は上限値と組み合わされて、それ自体の下限値又は上限値として機能し、明示的に記述されていない範囲を記述することができる。
【0281】
様々な用語が上記で定義されている。特許請求の範囲で使用される用語が上記で定義されていない範囲では、少なくとも1つの印刷刊行物又は発行済み特許に反映されているように、関連技術分野の人がその用語に与えている最も広い定義が与えられるべきである。さらに、本出願で引用された全ての特許、試験方法、及びその他の文書は、そのような開示が本出願と矛盾しない範囲において、またそのような援用が許可されている全ての法域において、参照により完全に援用される。
【0282】
前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかなように、本開示の形態が図示及び説明されているが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。従って、本開示がそれによって限定されることは意図されない。
【0283】
本開示を多数の実施形態及び例に関して説明してきたが、本開示の利益を有する当業者は、本開示の範囲及び精神から逸脱しない他の実施形態を考案できることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】