(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-07
(54)【発明の名称】マグネシウムトラップ層を備えた熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体
(51)【国際特許分類】
G11B 5/738 20060101AFI20240425BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20240425BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G11B5/738
G11B5/84 Z
G11B5/02 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571315
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022027235
(87)【国際公開番号】W WO2023278008
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩並 賢
(72)【発明者】
【氏名】マツダ、コウジ
(72)【発明者】
【氏名】シュー、ジュングオ
(72)【発明者】
【氏名】田坂 健司
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ホアン コン
(72)【発明者】
【氏名】関 智孔
(72)【発明者】
【氏名】ドーシー、ポール クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】霜越 正義
【テーマコード(参考)】
5D112
【Fターム(参考)】
5D112AA03
5D112AA24
5D112BD02
(57)【要約】
マグネシウム(Mg)トラップ層を有する熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体を提供するための様々な装置、システム、方法、及び媒体が開示され、マグネシウムトラップ層は、近接場トランスデューサ(NFT)において使用される化合物と反応する解離したMgによって引き起こされるNFT損傷を防止するために、HAMR媒体におけるMg移動を軽減するように構成される。一実施例では、HAMR媒体は、基板と、基板上のシード層であってMgOを含むシード層と、シード層上の磁気記録層と、基板上のMgトラップ層であってシード層から磁気記録層の上方のHAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成されたMgトラップ層と、を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱アシスト磁気記録(HAMR)用に構成された媒体であって、前記HAMR媒体は、
基板と、
前記基板上に設けられ、MgOを含むシード層と、
前記シード層上の磁気記録層と、
前記基板上に設けられ、前記シード層から前記磁気記録層の上方の前記HAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成されたMgトラップ層と、を含み、
前記Mgトラップ層は、TiO、TiO2、SiO、BaO、HfO、ZrO、MgTiO、MgTiO2、MgSiO、MgBaO、MgHfO、MgZrO、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酸化物を含む、HAMR媒体。
【請求項2】
前記Mgトラップ層は、前記磁気記録層と前記シード層との間に配置される、請求項1に記載のHAMR媒体。
【請求項3】
前記Mgトラップ層と前記磁気記録層との間の格子不整合が所定の量未満である、請求項1に記載のHAMR媒体。
【請求項4】
前記Mgトラップ層は、前記シード層と前記基板との間に配置される、請求項1に記載のHAMR媒体。
【請求項5】
前記Mgトラップ層は、前記磁気記録層と前記HAMR媒体の前記表面との間に配置される、請求項1に記載のHAMR媒体。
【請求項6】
前記磁気記録層の上方にキャッピング層を更に備え、前記Mgトラップ層は、前記磁気記録層と前記キャッピング層との間に配置される、請求項5に記載のHAMR媒体。
【請求項7】
前記Mgトラップ層の原子スケール厚さは、1以上3以下である、請求項1に記載のHAMR媒体。
【請求項8】
前記Mgトラップ層の厚さは、5オングストローム(Å)以上20Å以下である、請求項1に記載のHAMR媒体。
【請求項9】
請求項1に記載のHAMR媒体を含むデータ記憶装置。
【請求項10】
熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体であって、前記HAMR媒体は、
基板と、
前記基板上に設けられ、MgOを含むシード層と、
前記シード層上の磁気記録層と、
前記基板上に設けられ、前記シード層から前記磁気記録層の上方の前記HAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成されたMgトラップ層と、を含み、
前記Mgトラップ層は、SiO2の第2の結合解離エネルギーよりも低い第1の結合解離エネルギーを有する第1の化合物を含み、
前記第1の化合物は、90原子パーセント未満のMgを含む、熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体。
【請求項11】
前記第1の結合解離エネルギーは、前記Mgトラップ層に含まれる酸化物の結合解離エネルギーに相当する、請求項10に記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
前記酸化物の結合解離エネルギーは、798kJ/mol未満である、請求項11に記載の磁気記録媒体。
【請求項13】
前記第1の化合物は、MgTiO、MgTiO2、MgSiO、MgBaO、MgHfO、MgZrO、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の磁気記録媒体。
【請求項14】
前記Mgトラップ層は、前記磁気記録層と前記シード層との間に配置される、請求項10に記載の磁気記録媒体。
【請求項15】
前記Mgトラップ層は、前記シード層と前記基板との間に配置される、請求項10に記載の磁気記録媒体。
【請求項16】
前記Mgトラップ層は、前記磁気記録層と前記HAMR媒体の前記表面との間に配置される、請求項10に記載の磁気記録媒体。
【請求項17】
前記磁気記録層の上方にキャッピング層を更に備え、前記Mgトラップ層は、前記磁気記録層と前記キャッピング層との間に配置される、請求項16に記載の磁気記録媒体。
【請求項18】
データ記憶デバイスであって、
請求項10に記載の前記HAMR媒体と、
前記HAMR媒体にデータを書き込むように構成され、近接場トランスデューサ(NFT)を備える書き込みヘッドと、を備え、
前記第1の結合解離エネルギーは、前記近接場トランスデューサ(NFT)に含まれるSiO2の前記第2の結合解離エネルギーよりも低い、データ記憶デバイス。
【請求項19】
熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体の製造方法であって、方法は、
基板を設けることと、
前記基板上にシード層を設けることであって、前記シード層はMgOを含む、シード層を設けることと、
前記シード層上に、磁気記録層を設けることと、
前記基板上にMgトラップ層を設けることと、を含み、前記Mgトラップ層は、前記シード層から前記磁気記録層の上方の前記HAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成され、
前記Mgトラップ層は、TiO、TiO2、SiO、BaO、HfO、ZrO、MgTiO、MgTiO2、MgSiO、MgBaO、MgHfO、MgZrO、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酸化物を含む、方法。
【請求項20】
前記Mgトラップ層を設けることは、
前記磁気記録層と前記シード層との間に前記Mgトラップ層を設けることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記Mgトラップ層を設けることは、
前記シード層と前記基板との間に前記Mgトラップ層を設けることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記Mgトラップ層を設けることは、
前記磁気記録層と前記HAMR媒体の前記表面との間に前記Mgトラップ層を設けることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記磁気記録層の上方にキャッピング層を設けることを更に含み、前記Mgトラップ層は、前記磁気記録層と前記キャッピング層との間に配置される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体の製造方法であって、方法は、
基板を設けることと、
前記基板上にシード層を設けることであって、前記シード層はMgOを含む、シード層を設けることと、
前記シード層上に、磁気記録層を設けることと、
前記基板上にMgトラップ層を設けることと、を含み、前記Mgトラップ層は、前記シード層から前記磁気記録層の上方の前記HAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成され、
前記Mgトラップ層は、SiO2の第2の結合解離エネルギーよりも低い第1の結合解離エネルギーを有する第1の化合物を含み、
前記第1の化合物は、90パーセント未満のMgを含む、方法。
【請求項25】
前記Mgトラップ層を設けることは、
前記磁気記録層と前記シード層との間に前記Mgトラップ層を設けることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記Mgトラップ層を設けることは、
前記シード層と前記基板との間に前記Mgトラップ層を設けることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記Mgトラップ層を設けることは、
前記磁気記録層と前記HAMR媒体の前記表面との間に前記Mgトラップ層を設けることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記磁気記録層の上方にキャッピング層を設けるステップを更に含み、前記Mgトラップ層は、前記磁気記録層と前記キャッピング層との間に配置される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月1日に出願された「マグネシウムトラップ層を備えた熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体」と題する米国非仮出願第17/365,863号の利益を主張し、その内容の全体はあらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、いくつかの態様では、熱アシスト磁気記録(Heat-Assisted Magnetic Recording、HAMR)とともに使用するための磁気記録媒体に関し、より詳細には、近くのスライダへのマグネシウム移動を低減するためのマグネシウムトラップ層を有するHAMR媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
序論
ハードディスクドライブ(hard disk drive、HDD)などの磁気記憶システムは、静止及びモバイルコンピューティング環境の両方における多種多様なデバイスにおいて利用される。磁気記憶システムを組み込むデバイスの例としては、デスクトップコンピュータ、携帯型ノートブックコンピュータ、携帯型ハードディスクドライブ、デジタル多目的ディスク(Digital Versatile Disc、DVD)プレーヤ、高精細度テレビ(High Definition TeleVision、HDTV)受信機、車両制御システム、セルラー若しくは携帯電話、テレビセットトップボックス、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ビデオゲームコンソール、及び携帯型メディアプレーヤが挙げられる。
【0004】
典型的なディスクドライブは、1つ以上のフラットディスクの形態の磁気記憶媒体を含む。ディスクは、一般に、2つの主要な実体、すなわち、それに構造及び剛性を与える基板材料と、磁気インパルス又はモーメントを保持する磁気媒体コーティングとを含み、この磁気インパルス又はモーメントは、コーティング内の記録層内のデータを表すものである。典型的なディスクドライブはまた、一般に、ディスクの記録層に記憶された磁場を感知及び/又は変更することができる磁気変換器の形態の読み取りヘッド及び書き込みヘッドを含む。
【0005】
エネルギー/熱アシスト磁気記録(EAMR/HAMR)システムは、様々な磁気媒体上に磁気的に記録される、情報の面密度を高めることができる。磁気記憶のためのより高い面密度を達成するために、より小さい磁性粒子サイズ(例えば、6nm未満)の媒体が必要になり得る。HAMRでは、小さな粒子への記録を容易にするために、書き込み中に媒体に高温が加えられる。しかしながら、これらの高温での使用は、媒体及びヘッド/スライダを含むHAMR構成要素における信頼性の問題など、動作上の課題及び望ましくない影響が生じ得る。
【発明の概要】
【0006】
以下で、本開示のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、そのような態様の簡略化された概要を提示する。この概要は、本開示の全ての企図される特徴の広範な概観ではなく、本開示の全ての態様の鍵となる要素又は重要な要素を識別することも、本開示のいずれか又は全ての態様の範囲を定めることも意図していない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、本開示のいくつかの態様の様々な概念を、簡略化された形態で提示することである。
【0007】
一実施形態では、熱アシスト磁気記録(HAMR)用に構成された媒体は、基板と、基板上に設けられMgOを含むシード層と、シード層上にある磁気記録層と、基板上にあるMgトラップ層とを含む。Mgトラップ層は、シード層から磁気記録層の上方のHAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成される。Mgトラップ層は、TiO、TiO2、SiO、BaO、HfO、ZrO、MgTiO、MgTiO2、MgSiO、MgBaO、MgHfO、MgZrO、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酸化物を含む。
【0008】
一実施形態では、熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体は、基板と、基板上のシード層であってMgOを含むシード層と、シード層上の磁気記録層と、基板上のMgトラップ層とを含む。Mgトラップ層は、シード層から磁気記録層の上方のHAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成される。Mgトラップ層は、SiO2の第2の結合解離エネルギーよりも低い第1の結合解離エネルギーを有する第1の化合物を含み、第1の化合物は、90原子パーセント未満のMgを含む。
【0009】
一実施形態では、熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体の製造方法が開示される。本方法は、基板を設けることと、基板上にシード層を設けることであって、シード層はMgOを含む、シード層を設けることと、シード層上に磁気記録層を設けることと、基板上にMgトラップ層を設けることと、を含み、Mgトラップ層は、シード層から磁気記録層の上方のHAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成される、方法。Mgトラップ層は、TiO、TiO2、SiO、BaO、HfO、ZrO、MgTiO、MgTiO2、MgSiO、MgBaO、MgHfO、MgZrO、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酸化物を含む。
【0010】
一実施形態では、熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体の製造方法が開示される。本方法は、基板を設けることと、基板上にシード層を設けることであって、シード層はMgOを含む、シード層を設けることと、シード層上に磁気記録層を設けることと、基板上にMgトラップ層を設けることと、を含み、Mgトラップ層は、シード層から磁気記録層の上方のHAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成される、方法。Mgトラップ層は、SiO2の第2の結合解離エネルギーよりも低い第1の結合解離エネルギーを有する第1の化合物を含み、第1の化合物は、90パーセント未満のMgを含む。
【0011】
本開示のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明を検討することにより、より完全に理解されるであろう。本開示の他の態様、特徴及び実装形態は、添付の図面とともに、本開示の特定の実装形態の以下の説明を検討すると、当業者には明らかになるであろう。本開示の特徴は、以下の特定の実装形態及び図に関して論じられ得るが、本開示の全ての実装形態は、本明細書で論じられる有利な特徴のうちの1つ以上を含むことができる。言い換えれば、1つ以上の実装形態は、特定の有利な特徴を有するものとして論じられ得るが、そのような特徴のうちの1つ以上はまた、本明細書で論じられる本開示の様々な実装形態に従って使用され得る。同様に、特定の実装形態が、デバイス、システム又は方法の実装形態として以下で論じられ得るが、そのような実装形態は、様々なデバイス、システム、及び方法において実装され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面に示される特定の態様を参照して、以下により詳しい説明を含める。これらの図面は本開示のある態様のみを示し、したがってその範囲を限定するものとして見なされるべきではないと理解した上で、以下の添付図面を使用して、付加的な特殊性及び詳細を伴って本開示を記述し説明する。
【
図1】本開示の一態様による、スライダと、マグネシウム(Mg)トラップ層を有する熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体とを含む、HAMR用に構成されたディスクドライブの上面概略図である。
【
図2】本開示の一態様による、Mgトラップ層を備えた
図1のスライダ及びHAMR媒体の側面概略図である。
【
図3】本開示の一態様による、Mg移動を低減するためのMgトラップ層を有する第1のHAMR媒体の側面概略図である。
【
図4】本開示の一態様による、Mg移動を低減するためのMgトラップ層を有する第2のHAMR媒体の側面概略図である。
【
図5】本開示の一態様による、Mg移動を低減するためのMgトラップ層を有する第3のHAMR媒体の側面概略図である。
【
図6】本開示のいくつかの態様による、Mg移動を軽減するためのMgトラップ層を有するHAMR媒体を製造するプロセスのフローチャートである。
【
図7】本開示の一態様による、磁気記録層とシード層との間に位置するMgトラップ層の格子構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明では、その一部をなす添付図面を参照する。上述した例示的な態様、態様及び特徴に加えて、更なる態様、態様及び特徴を、図面及び以下の詳細な説明を参照することにより明らかにする。各図における要素の説明は、先の図の要素を参照し得る。同様の番号は、図において同様の要素を参照する場合があり、それは同様の要素の代替の態様を含む。
【0014】
本開示は、いくつかの態様では、熱アシスト磁気記録(HAMR)ディスクドライブのスライダにおいて使用される近接場トランスデューサ(near field transducer、NFT)の信頼性を向上させることができるHAMR媒体を提供するための様々な装置、システム、方法、及び媒体に関する。HAMRディスクドライブでは、レーザ源と、NFT(典型的にはスライダ上又はスライダ内に実装される)を有する光導波路とが使用されて、書込み要素又は書込み装置が媒体にデータを書き込む間に媒体内に局所的な加熱を生成する。
【0015】
いくつかの態様では、多くの場合MgOの形態のマグネシウム(Mg)が、HAMR媒体又はディスクのシード層に使用され得る。しかし、Mg原子又はイオンはシード層から解離してディスク表面に移動し、更にディスク表面のすぐ上に配置されたスライダ/ヘッドに移動する可能性がある。ディスク表面上及びスライダ上の移動したMgは、ディスクの真上に配置されたスライダ内にあるNFTに損傷(例えば、深刻な損傷)を引き起こし得る。ディスク表面又はスライダ上のMgは、NFTのクラッドを形成するSi又はSi化合物(例えば、SiO2(石英))と反応して、NFTに悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、移動したMgは、NFTのSiと反応してSiMgO化合物を形成することができる。SiMgO化合物は、SiやSi化合物(例えば、石英)よりも熱伝導率が低い。新しい化合物はより低い熱伝導率を有するので、熱応力がNFT上に蓄積する可能性があり、過剰な熱応力(例えば、熱)がNFT構造を損傷する可能性がある。更に、SiMgO化合物(例えば、タルク)は、層状鉱物構造を有することができる。したがって、NFT上のこの層状SiMgO物質は、HDD動作中にNFTから容易に離脱し、HAMRディスクの故障を引き起こす可能性がある。したがって、NFTの信頼性を向上させることにより、HAMRディスクドライブの寿命を向上させることができる。
【0016】
図1は、スライダ108と、本開示の1つ以上の態様によるMg移動が低減された磁気記録媒体102とを含む、熱アシスト磁気記録(HAMR)のために構成されたデータ記憶デバイス100(例えば、ディスクドライブ又は磁気記録デバイス)の上面概略図である。レーザ(
図1では見えていないが、
図2の114を参照)は、ヘッド/スライダ108によって位置決めされる。ディスクドライブ100は、データを記憶するための1つ以上のディスク/媒体102を含み得る。ディスク/媒体102は、ドライブハウジング106に取り付けられているスピンドルアセンブリ104上に存在する。データは、ディスク102の磁気記録層内のトラックに沿って記憶され得る。データの読み取り及び書き込みは、読み取り及び書き込み要素(108a及び108b)の両方を有し得るヘッド108(スライダ)によって達成される。書き込み要素108aは、ディスク102の磁気記録層の特性を変更し、それによって、そこに情報を書き込むために使用される。一態様では、ヘッド108は、読み取り用のトンネル磁気抵抗(tunnel magneto-resistive、TMR)要素などの磁気抵抗(magneto-resistive、MR)ベースの要素と、書き込み用に通電され得るコイルを有する書き込み極と、を有し得る。動作中、スピンドルモータ(図示せず)は、スピンドルアセンブリ104を回転させ、それによってディスク102を回転させて、所望のディスクトラック107に沿った特定の場所にヘッド108を位置決めする。ディスク102に対するヘッド108の位置は、制御回路110(例えば、マイクロコントローラ)によって制御され得る。例示的なHAMRシステムが示されているが、記載された様々な実施形態は、垂直磁気記録(perpendicular magnetic recording、PMR)ディスクドライブ又は磁気テープドライブを含む他のEAMR又は非EAMR磁気データ記録システムにおいて使用され得ることに留意されたい。
【0017】
図2は、
図1のスライダ108及び磁気記録媒体102の側面概略図である。磁気記録媒体102は、本開示の1つ以上の態様に従って、Mg移動を低減するために1つ以上のMgトラップ層(
図3~5)を有してもよい。スライダ108は、スライダ108の上面に取り付けられたサブマウント112を含み得る。レーザ114は、サブマウント112に、及び場合によってはスライダ108に取り付けられ得る。スライダ108は、それぞれ媒体102に情報を書き込み、かつ媒体102から情報を読み取るために、スライダの空気ベアリング表面(air bearing surface、ABS)108cに沿って位置決めされた書き込み要素(例えば、ライタ)108a及び読み取り要素(例えば、リーダ)108bを含む。他の態様では、スライダはまた、Si又はSiクラッド120の層も含み得る。
【0018】
動作中、レーザ114は、スライダ108の空気ベアリング表面(例えば、底面)108cの近くの近接場トランスデューサ(NFT)122に光を方向付けるスライダ内の導波管に(例えば、破線に沿って)光エネルギーを発生させかつ方向付けるように構成されている。導波管を介してレーザ114から光を受信すると、NFT122は、書き込み要素108a内又は近くの、及び読み取り要素108bの近くの媒体102の一部分を加熱する局所的な熱エネルギーを生成する。予想される記録温度は、約350℃~400℃の範囲内である。°
図2に示す態様では、レーザ指向光は、ライタ108a内に、かつスライダの後縁の近くに配置されている。他の態様では、レーザ指向光は、代わりに、ライタ108aとリーダ108bとの間に位置決めされ得る。
図1及び
図2は、HAMRシステムの具体的一例を示す。他の実施例では、本開示の態様によるMg移動を低減する磁気記録媒体102は、他の好適なHAMRシステム(例えば、HAMR用に構成された他のスライダを有するもの)において使用することができる。
【0019】
いくつかの態様では、HAMR媒体は、1つ以上の磁気記録層(例えば、FePt磁気記録層)を成長させるための下地層(例えば、MgOシード層)を含むことができる。しかしながら、上述したように、Mgは、シード層から移動(解離)し、ディスクドライブ動作中にHAMR媒体の表面から漏出する可能性がある。漏出したMgは、HAMR HDDにおいて悪影響及び予期せぬ影響を有し得る。例えば、解離したMgは、MgがNFT上のSi化合物(例えば、SiO2)と反応すると、ヘッドディスク界面(例えば、スライダ内のNFT)に悪影響を及ぼす可能性がある。HAMR媒体から漏出したMgは、NFTにおいてSiO2中のSi-O結合を破壊することができ、NFTから剥離することができるMgO又はSiMgOを形成する。
【0020】
本開示のいくつかの態様は、NFTのSiO2と反応するために利用可能な解離したMgの量を減少させるように、Mg移動を低減するように構成されたHAMR媒体を提供する。そのために、HAMR媒体は、シード層からのMg移動を低減するためにMgトラップ層を含んでもよい。いくつかの態様では、Mgトラップ層は、解離したMgと反応することができる物質又は材料(例えば、酸化物化合物)を含む。Mgトラップ物質又は材料は、NFTのSiO2中のSi-O結合のものよりも低い結合解離エネルギーを有するように選択されてもよく、したがって、解離したMgは、HAMR媒体から漏出してNFTのSiO2と反応し得る前に、Mgトラップ物質と反応する。SiO2中のSi-O結合の結合解離エネルギーは、約798kJ/molである。したがって、選択されたMgトラップ物質又は材料は、798kJ/mol未満の結合解離エネルギーを有する。すなわち、Mgトラップ層はMg吸収剤として機能することができる。(例えば、書き込みのために)HAMR媒体の一部のレーザ照射中に、MgはMgOシード層から拡散し得る。拡散されたMgイオン又は原子は、MgOシード層の上及び下に進むことができる。一部のMgはディスク表面に移動することができる。Mgトラップ層は、解離したMgがディスク表面に到達し漏出する前に、解離したMgをトラップ又は吸収することができる。適切なMgトラップ化合物又は材料のいくつかの例は、TiO、TiO2、SiO、BaO、HfO、ZrO、MgTiO、MgTiO2、MgSiO、MgBaO、MgHfO、及びMgZrOである。いくつかの例示的な酸化物の結合解離エネルギーを以下の表1に示す。
【0021】
【0022】
図3は、本開示の一態様による、Mg移動を低減するためのMgトラップ層を有する第1のHAMR媒体300の側面概略図である。HAMR媒体300は、底部/基層における基板302と、基板302上のヒートシンク層304と、ヒートシンク層304上のMgOシード層306と、シード層306上のMgトラップ層308と、Mgトラップ層308上の磁気記録層(MRL)310と、MRL310上のキャッピング層312と、キャッピング層312上のオーバーコート層314と、オーバーコート層314上の潤滑剤層316とを有する積層構造を有する。いくつかの実施例では、MRL310は、1つ以上の磁気記録層を含み得る。
【0023】
いくつかの態様では、基板302は、Al合金、NiPめっきAl、ガラス、ガラスセラミック、及び/又はそれらの組み合わせなどの、1つ以上の材料で作製され得る。いくつかの態様では、ヒートシンク層304は、例えばAg、Al、Au、Cu、Cr、Mo、Ru、W、CuZr、MoCu、AgPd、CrRu、CrV、CrW、CrMo、CrNd、NiAl、NiTa、それらの組み合わせ、及び/又は当該技術分野で知られている他の好適な材料などの、1つ以上の材料から作製されることができる。いくつかの態様では、MgOシード層306は、MgO及び/又は当該技術分野で知られている他の好適な材料から作製され得る。一実施形態では、MgOシード層306は、MgOシード層306上に成長/堆積される層(例えば、Mgトラップ層308)の格子構造を決定又は制限する特定の格子構造を有する。
【0024】
いくつかの態様では、Mgトラップ層308は、Mgトラップ化合物、例えば、TiO、TiO2、SiO、BaO、HfO、ZrO、MgTiO、MgTiO2、MgSiO、MgBaO、MgHfO、MgZrO、又はそれらの組み合わせから作製され得る。Mgトラップ化合物は、MgOシード層306から解離したMgイオン又は原子と反応することができる。Mgトラップ化合物は、NFTのSiO2中のSi-O結合の結合解離エネルギーよりも低い結合解離エネルギーを有するように選択され得、したがって、解離したMgは、HAMR媒体から漏出してNFTのSiO2と反応し得る前に、Mgトラップ化合物と反応し得る。一実施形態では、Mgトラップ化合物は、約798kJ/mol未満の結合解離エネルギーを有する。いくつかの態様では、Mgトラップ層308は、MgOシード層306と実質的に整合する格子構造を有するコヒーレント成長を容易にすることができる厚さを有することができる。したがって、MRL310をMgトラップ層308上に成長させるとき、MRL310とMgOシード層との間の格子不整合を低減又は最小化することができる。例えば、MgOシード層306は、4.2オングストロームの格子定数を有することができる。
【0025】
一実施形態では、Mgトラップ層308は、90原子パーセント未満(例えば、約90原子パーセント未満)のMgを含有するMg化合物(例えば、MgTiO、MgTiO2、MgSiO、MgBaO、MgHfO、MgZrO)を含み得る。例えば、Mg化合物は、Mg(x)A(100-x)O及び/又はMg(x)A(100-x)O2を含んでもよく、ここで、Aは、Ti、Si、Ba、Hf、及び/又はZrであってもよく、Xは、0%≦X<90%の範囲の原子パーセントである。一態様では、MgNiOは、その中に含有されるMgの濃度に応じて、好適なMgトラップ化合物であり得る。具体的一例では、90原子パーセント以上のMg濃度を有するMgNiOは、MgNiOが約798kJ/mol未満の結合解離エネルギーを有し得る場合であっても、Mgトラップ層308において使用するのに適したMgトラップ化合物ではない場合がある。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、このMgNiOに含まれる高濃度のMg(例えば、90パーセントより高い)は、少なくとも適切なMgトラップ層化合物であるとして上で開示された他の材料と比較して、MgNiO層がMgをトラップするのに効果的でない(又は非常に効果的でない)ようにすると考えられる。おそらく、MgNiO中の高濃度のMgは、解離したMgイオン/原子がMgNiO化合物内のNiOと結合することを防止又は阻害する。
【0026】
いくつかの態様では、MRL310は、FePt、又はFePtXから選択される合金から作製され得、ここで、Xは、Cu、Ni、及びそれらの組み合わせから選択される材料である。いくつかの態様では、MRL310は、CoPt合金から作製され得る。いくつかの態様では、キャッピング層312は、Co、Pt、又はPdから作製され得る。一実施例では、キャッピング層312は、Coを含む上層と、Pt又はPdを含む底層と、を有する、二層構造とすることができる。上層及び底層のCo/Pt及びCo/Pdの組み合わせに加えて、上層材料及び底層材料の特定の組み合わせは、例えば、Co/Au、Co/Ag、Co/Al、Co/Cu、Co/Ir、Co/Mo、Co/Ni、Co/Os、Co/Ru、Co/Ti、Co/V、Fe/Ag、Fe/Au、Fe/Cu、Fe/Mo、Fe/Pd、Ni/Au、Ni/Cu、Ni/Mo、Ni/Pd、Ni/Reなどを含み得る。追加の実施例では、上層材料及び底層材料は、Pt及びPdの任意の組み合わせ(例えば、合金)、又は、以下の元素:Au、Ag、Al、Cu、Ir、Mo、Ni、Os、Ru、Ti、V、Fe、Reなどの単独若しくは組み合わせのいずれかを含む。いくつかの態様では、オーバーコート層314は、炭素から作製され得る。一態様では、潤滑剤層316は、ポリマー系潤滑剤から作製される。
【0027】
図4は、本開示の一態様による、Mg移動を低減するためのMgトラップ層を有する第2のHAMR媒体400の側面概略図である。HAMR媒体400は、第1のHAMR媒体300と同様の積層構造を有する。例えば、HAMR媒体400は、底部/基層における基板402と、基板402上のヒートシンク層404と、ヒートシンク層404上のMgトラップ層406と、Mgトラップ層406上のMgOシード層408と、MgOシード層408上のMRL410と、MRL410上のキャッピング層412と、キャッピング層412上のオーバーコート層414と、オーバーコート層414上の潤滑剤層416とを有する。いくつかの実施例では、MRL410は、1つ以上の磁気記録層を含み得る。HAMR媒体400の様々な層に使用される材料は、HAMR媒体300に関連して上述したものと同じ又は同様であってもよい。HAMRにおいて、HAMR媒体400のレーザ又は光照射は、MgOシード層408からのMg原子又はイオンをMgOシード層の周り(すなわち、上及び下)にランダムに拡散させることができる。拡散又は移動するMgイオン又は原子の一部がMgOシード層の下に進むと、Mgトラップ層中の材料が移動するMg原子又はイオンと反応し、それによって移動するMg原子又はイオンを吸収することができる。加えて、MgOシード層408の下にMgトラップ層406を配置することは、例えば、MgOシード層408に整合する格子構造を用いて、MgOシード層408上に直接MRL410を成長させることを容易にすることができる。逆に、潜在的な格子不整合に関連する理由から、
図3に示す例では、MRL310をMgトラップ層308上に直接成長させることがより困難な場合がある。
【0028】
いくつかの態様では、HAMR媒体300/400のMgOシード層及びMgトラップ層は、単一層として組み合わせられるか又は製造され得る。
【0029】
図5は、本開示の一態様による、Mg移動を低減するためのMgトラップ層を有する第3のHAMR媒体500の側面概略図である。HAMR媒体500は、底部/基層における基板502(例えば、ガラス基板)と、基板502上のヒートシンク層504と、ヒートシンク層504上のMgOシード層506と、MgOシード層506上のMRL508と、MRL508上のMgトラップ層510と、Mgトラップ層510上のキャッピング層512と、キャッピング層512上のオーバーコート層514と、オーバーコート層414上の潤滑剤層516とを有する積層構造を有する。いくつかの例では、MRL510は、1つ以上の磁気記録層を含み得る。第3のHAMR媒体500の様々な層に使用される材料は、第1及び/又は第2のHAMR媒体300/400に関連して上述したものと同じ又は同様であってもよい。
【0030】
この実施例では、Mgトラップ層510をMRL508上に配置することにより、MRL508の格子構造をMgOシード層506の格子構造と一致させることがより容易になるように、MRL508をMgOシード層506上に直接形成することが可能になる。これは、Mgトラップ層308がMgOシード層306とMRL310との間に配置されている
図3のHAMR媒体300とは対照的である。
図4に示すHAMR媒体400では、MRL410はMgOシード層408上に直接形成することができ、Mgトラップ層406はMgOシード層408の下に形成される。しかしながら、この構成はいくらかのMgトラップを提供するが、Mgトラップ層は、HAMR媒体の表面に向かって移動するMgイオン又は原子を捕捉又は吸収するために(
図3及び
図5に示されるように)MgOシード層の上方に配置されるとき、より効果的であり得る。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「上方」、「下方」、「上」、及び「間」という用語は、他の層に対する1つの層の相対位置を指す。したがって、別の層の上、上方又は下方に堆積又は配置された1つの層は、他の層と直接接触し得、又は1つ以上の介在層を有し得る。更に、層の間に堆積又は配置された1つの層は、それらの層と直接接触し得、又は1つ以上の介在層を有し得る。
【0032】
図6は、本開示のいくつかの態様による、Mg移動を軽減するためのMgトラップ層を有するHAMR媒体を製造するプロセス600のフローチャートである。一態様では、プロセス600は、
図3~
図5に関連して上述したHAMR媒体のいずれかを製造するために使用又は修正され得る。ブロック602では、プロセスは基板を設ける。いくつかの態様では、基板は、Al合金、NiPめっきAl、ガラス、ガラスセラミック、及び/又はそれらの組み合わせなどの、1つ以上の材料で作製することができる。ブロック604では、プロセスは、基板上に、シード層を設ける。一実施例では、シード層は、MgOシード層を含み得る。いくつかの態様では、シード層は、基板上にあるヒートシンク層上にあってもよい。ブロック606では、プロセスは、シード層上に磁気記録層を設ける。一実施例では、磁気記録層は、データを磁気的に記憶するための1つ以上の磁気記録層を含み得る。ブロック608では、プロセスは、基板上に、Mgトラップ層を設ける。Mgトラップ層は、シード層から磁気記録層の上方のHAMR媒体の表面へのMg移動を軽減するように構成される。一実施例では、Mgトラップ層は、MRLとシード層との間にある。一実施例では、Mgトラップ層は、シード層及び基板又は基板上のヒートシンク層である。一実施例では、Mgトラップ層は、MRL層とキャッピング層との間にある。
【0033】
一態様では、Mgトラップ層は、TiO、TiO2、SiO、BaO、HfO、ZrO、MgTiO、MgTiO2、MgSiO、MgBaO、MgHfO、MgZrO、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される酸化物を含むことができる。一態様では、Mgトラップ層は、HAMR媒体にデータを書き込むためのスライダのNFT(例えば、SiO2)に含まれる化合物の第2の結合解離エネルギーよりも低い第1の結合解離エネルギーを有する第1の化合物を含み得る。例えば、第1の化合物は、798kJ/mol未満の結合解離エネルギーを有してもよい。一態様では、第1の化合物は、90原子パーセント未満のMgを含むことができる。
【0034】
図7は、本開示の一態様による、磁気記録層702とシード層704との間に位置する例示的なMgトラップ層700の格子構造を示す図である。この実施例(いくつかの態様において、Mgトラップ層がシード層上にある
図3の例と同様である)では、Mgトラップ層700は、シード層704(例えば、MgOシード層)の格子構造に一致する格子構造を有することができる。Mgトラップ層700及びシード層704の格子構造を整合させることにより、HAMR媒体の製造中にMgトラップ層700上に記録層702を成長させることを容易にすることができる。更に、記録層702の格子構造及び/又はMgトラップ層700の格子構造は、これらの層間の格子不整合を最小限にするように制御され得る。記録層702と、Mgトラップ層700又はシード層704のいずれかとの間の格子不整合を低減することは、全体的な媒体性能、及び場合によってはHAMR媒体におけるこれらの異なる層の製造を容易にすることができる。一態様では、Mgトラップ層700及びシード層704の格子構造は、Mgトラップ層700に適した材料及び/又は厚さを選択することによって整合される。例えば、Mgトラップ層700とシード層704との間の格子不整合は、約10%未満である。
【0035】
一態様では、プロセスは、アクションのシーケンスを異なる順序で実行することができる。別の態様では、プロセスは、アクションのうちの1つ以上をスキップすることができる。更に他の態様では、アクションのうちの1つ以上が同時に実行される。いくつかの態様では、追加のアクションを実行することができる。
【0036】
いくつかの態様では、そのような層の堆積は、様々な堆積サブプロセスを使用して行うことができ、例えば、物理蒸着(physical vapor deposition、PVD)、スパッタ堆積、及びイオンビーム堆積、並びに、例えば、プラズマ強化化学蒸着(plasma enhanced chemical vapor deposition、PECVD)、低圧化学蒸着(low pressure chemical vapor deposition、LPCVD)、及び原子層化学蒸着(atomic layer chemical vapor deposition、ALCVD)などの、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)が挙げられるが、それらに限定されない。他の態様では、当該技術分野で既知の他の好適な堆積技法も使用され得る。
【0037】
追加の態様
本明細書に記載される実施例は、本開示の特定の概念を例示するために提供される。上記で示された装置、デバイス又は構成要素は、本明細書に記載の方法、特徴又は工程のうちの1つ以上を実行するように構成され得る。当業者は、これらが本質的に単なる例示であり、他の実施例が、本開示及び添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれ得ることを理解するであろう。本明細書の教示に基づいて、当業者には、本明細書で開示される態様が、任意の他の態様から独立して実装され得ること、及び、これらの態様のうちの2つ以上が、様々な方法で組み合わせられ得ることを理解されたい。例えば、本明細書に記載される任意の数の態様を使用して、装置が実装され得るか、又は方法が実施され得る。加えて、本明細書に記載される態様のうちの1つ以上に加えて、又はそれら以外に、他の構造、機能、又は構造及び機能を使用して、そのような装置が実装され得るか、又はそのような方法が実施され得る。
【0038】
本開示の態様は、本開示の態様に従って、方法、装置、システム、及びコンピュータプログラムプロダクトの概略的なフローチャート図及び/又は概略的なブロック図を参照して上述されている。概略的なフローチャート図及び/又は概略的なブロック図の各ブロック、並びに概略的なフローチャート図及び/又は概略的なブロック図におけるブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実装することができると理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供されて、プロセッサ又は他のプログラマブルデータ処理装置を介して実行する命令が、概略的なフローチャート図及び/又は概略的なブロック図のブロックで指定された機能及び/又は作用を実装するための手段を作成するように、マシンを生成してもよい。
【0039】
本明細書に記載の主題は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実装され得る。したがって、本明細書で使用される「機能」、「モジュール」などの用語は、説明されている特徴を実装するための、ハードウェアを指すが、ソフトウェア及び/又はファームウェア構成要素も含み得る。例示的な一実装形態では、本明細書に記載の主題は、コンピュータ(例えば、プロセッサ)によって実行されたときに、本明細書に記載の機能を実行するようにコンピュータを制御する、コンピュータ実行可能命令を記憶したコンピュータ可読媒体を使用して、実装され得る。本明細書に記載の主題を実装するのに適したコンピュータ可読媒体の例としては、ディスクメモリデバイス、チップメモリデバイス、プログラマブル論理デバイス及び特定用途向け集積回路などの、非一時的コンピュータ可読媒体が挙げられる。加えて、明細書に記載の主題を実装するコンピュータ可読媒体は、単一のデバイス若しくはコンピューティングプラットフォーム上に位置してもよく、又は、複数のデバイス若しくはコンピューティングプラットフォームにわたって分散されてもよい。
【0040】
また、いくつかの代替の実装形態では、ブロック内で示された機能は、図において示された順序とは異なって生じてもよいことに留意されたい。例えば、連続して示す2つのブロックが実質的に並行して実行されてもよいか、又はそれらのブロックが、関連する機能に応じて逆の順序で実行される場合があってもよい。他の工程及び方法として、機能、論理、又は効果の点で、示された図の1つ以上のブロック、又はその部分と同等なものを着想してもよい。様々な矢印の種類及び線の種類がフローチャート及び/又はブロック図で採用され得るが、それらは対応する態様の範囲を限定しないものとして理解される。例えば、矢印は、図示された態様の列挙された工程間の不特定の継続時間の待ち又は監視期間を示してもよい。
【0041】
上述した様々な特徴及びプロセスは、互いに独立して使用されてもよく、又は様々な方法で組み合わされてもよい。全ての可能な組み合わせ及び副次的組み合わせは、本開示の範囲内に含むことを意図している。加えて、いくつかの実装形態では、特定の方法、イベント、状態、又はプロセスブロックが省略され得る。本明細書に記載の方法及びプロセスはまた、任意の特定の順序に限定されず、それに関連するブロック又は状態は、適切な他の順序で行うことができる。例えば、記載されるタスク又はイベントは、具体的に開示されたもの以外の順序で実行されてもよく、又は、複数のものが単一のブロック又は状態に組み合わされてもよい。例示的なタスク又はイベントは、直列に、並列に、又は何らかの他の好適な方式で実行され得る。タスク又はイベントは、開示された例示的な態様に追加されてもよく、又は、開示された例示的な態様から除去されてもよい。本明細書に記載の例示的なシステム及び構成要素は、記載されるものとは異なるように構成されてもよい。例えば、開示された例示的な態様と比較して、要素が追加され、除去され、又は再配置され得る。
【0042】
情報及び信号は、様々な異なる技術及び技法のいずれかを使用して表され得ることが、当業者には理解されよう。例えば、上記の説明全体を通して言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、記号及びチップは、電圧、電流、電磁波、磁場若しくは磁性粒子、光学場若しくは光学粒子、又はそれらの任意の組み合わせによって表され得る。
【0043】
「例示的な」という語は、本明細書では、「例、事例、又は例示として機能すること」を意味するために使用される。本明細書において「例示的な」として記載されたいかなる態様も、他の態様よりも必ずしも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。同様に、「態様」という用語は、全ての態様が、論じられる特徴、利点、又は動作モードを含むことを要求しない。
【0044】
上記の説明は、本発明の多くの特定の態様を含むが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、その特定の態様の例として解釈されるべきである。したがって、本発明の範囲は、例示された態様によってではなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって決定されるべきである。更に、本明細書の全体を通して、「一態様(one aspect)」、「一態様(an aspect)」、又はそれに類似した言葉への言及は、本態様に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が、本開示の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通して、「一態様では(in one aspect)」、「一態様では(in an aspect)」、及びそれに類似した言葉の語句の出現は、必ずしも全て同一の態様を指すのではなく、特に明示しない限り、「1つ以上ではあるが全てではない態様」を意味し得る。
【0045】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形(すなわち、1つ以上)も含むことが意図される。列挙された項目の一覧は、特に明示しない限り、それらの項目のいずれか又は全てを相互に排他する及び/又は相互に含めることを暗に意味するものではない。「備える/含む(comprises)」、「備えている/含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの変形は、本明細書で使用される場合、明示的に別段の定めがない限り、「含むが、それに限定されない」ことを意味するということが更に理解されるであろう。すなわち、これらの用語は、記載された特徴、整数、工程、動作、要素又は構成要素の存在を指定し得るが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、「又は」という語は、ブール演算子「OR」と同じ意味を有する、すなわち、「いずれか」及び「両方」の可能性を包含し、特に明記しない限り、「排他的論理和」(「XOR」)に限定されないということを理解されたい。2つの隣接する単語の間の記号「/」は、特に明記しない限り、「又は」と同じ意味を有することも理解されたい。更に、「~に接続された」、「~に結合された」、又は「~と通信している」などの句は、別段に明記されていない限り、直接的な接続に限定されない。
【0046】
「第1」、「第2」などの指定を使用する本明細書における要素へのいかなる言及も、一般に、それらの要素の数量又は順序を限定しない。むしろ、これらの指定は、本明細書において、2つ以上の要素、又は要素の事例を区別する便利な方法として使用され得る。したがって、第1の要素及び第2の要素への言及は、2つの要素のみがそこで使用され得ること、又は、第1の要素が、何らかの方式で第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。また、特に明記しない限り、要素のセットは、1つ以上の要素を含み得る。加えて、説明又は請求項で使用される「a、b、又はcのうちの少なくとも1つ」、又は「a、b、c、又はそれらの任意の組み合わせ」という形式の用語は、「a又はb又はc又はこれらの要素の任意の組み合わせ」を意味する。例えば、この用語は、a、又はb、又はc、又はa及びb、又はa及びc、又はa及びb及びc、又は2a、又は2b、又は2c、又は2a及びbなどを含み得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「決定すること」という用語は、多種多様なアクションを包含する。例えば、「決定すること」は、計算すること、算出すること、処理すること、導出すること、調査すること、ルックアップすること(例えば、テーブル、データベース、又は別のデータ構造をルックアップすること)、確認することなどを含み得る。また、「決定すること」は、受信すること(例えば、情報を受信すること)、アクセスすること(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)などを含み得る。また、「決定すること」は、解決すること、選択すること、選ぶこと、確立することなどを含み得る。
【国際調査報告】