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特表2024-518839非化学量論的デラフォサイト型酸化銅を使用したオゾンセンサー
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  • 特表-非化学量論的デラフォサイト型酸化銅を使用したオゾンセンサー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-07
(54)【発明の名称】非化学量論的デラフォサイト型酸化銅を使用したオゾンセンサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
G01N27/12 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571481
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2022061921
(87)【国際公開番号】W WO2022243034
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】LU500174
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521408046
【氏名又は名称】ルクセンブルク インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー(リスト)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】アントゥネス アフォンソ,ジョアオ リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ルノーブル,ダミエン
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA07
2G046BA01
2G046BB01
2G046EA02
2G046EA04
2G046FB02
2G046FE10
2G046FE11
(57)【要約】
本発明は、基板(4)と;基板(4)上のデラフォサイト型酸化銅の層(6)と;第1の電極(8)および第2の電極(10)と、を備えるガスセンサー(2)に関し、ここで、第1および第2の電極(8、10)は、第1の電極及び第2の電極(8、10)に電圧を印加したときに、離れた位置で、両方の電極がデラフォサイト型酸化銅(6)に接触し、これにより、この位置の間で、電流がデラフォサイト型酸化銅(6)を流れることが可能になり;ここで、デラフォサイト型酸化銅は、Cu0.66Cr1.33である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンセンサーであるガスセンサー(2)であって、
-基板(4)と;
-前記基板(4)上のデラフォサイト型酸化銅(6)の層と;
-第1の電極(8)および第2の電極(10)と:を備え、前記第1の電極及び前記第2の電極(8、10)に電圧を印加したときに、離れた位置で、前記両方の電極が前記デラフォサイト型酸化銅(6)に接触し、これにより、前記位置の間で、電流が前記デラフォサイト型酸化銅(6)を流れることが可能になり;
前記デラフォサイト型酸化銅(6)が、Cu0.66Cr1.33であることを特徴とする、ガスセンサー(2)。
【請求項2】
前記デラフォサイト型酸化銅(6)が、オゾンと接触するときに、導電率が上昇することを特徴とする、請求項1に記載のガスセンサー(2)。
【請求項3】
前記ガスセンサー(2)が、25℃~150℃の一定温度で動作するように構成されている、請求項1または2に記載のガスセンサー(2)。
【請求項4】
前記デラフォサイト型酸化銅(6)が、少なくとも1nm、好ましくは少なくとも2nm、より好ましくは少なくとも5nmの外表面平均粗さを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)。
【請求項5】
前記デラフォサイト型酸化銅(6)が、層厚以下の外表面平均粗さを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)。
【請求項6】
前記デラフォサイト型酸化銅(6)の層が、少なくとも20nm、好ましくは30nmの平均厚さeを示す、請求項1~5のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)。
【請求項7】
前記デラフォサイト型酸化銅(6)の層が、200nm以下、好ましくは250nm下の平均厚さeを示す、請求項1~6のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)。
【請求項8】
前記デラフォサイト型酸化銅(6)が、アニール処理される、請求項1~7のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)。
【請求項9】
加熱プレート(16)をさらに備え、前記加熱プレート(16)は、前記デラフォサイト型酸化銅(6)の前記層とは反対側の前記基板(4)上に設けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)。
【請求項10】
前記基板(4)が、マイクロヒーターシステムの誘電体層である、請求項1~8のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)。
【請求項11】
前記ガスセンサー(2)が、10~100000ppbの濃度範囲のオゾンを検出するために構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)。
【請求項12】
オゾンの存在および/または濃度を測定する方法であって、前記方法が、基板(4)と、前記基板(4)上のデラフォサイト型酸化銅(6)の層と、離れた位置で、前記デラフォサイト型酸化銅(6)上の電極(8、10)と、を備えたガスセンサー(2)を使用することと;前記デラフォサイト型酸化銅(6)を前記オゾンと接触させることと、前記デラフォサイト型酸化銅(6)の抵抗変化を電気的に測定することと、を含み、前記ガスセンサー(2)が、請求項1~11のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)であることを特徴とする、方法。
【請求項13】
接触させ、測定している間、前記デラフォサイト型酸化銅(6)の前記層が、25℃~150℃の温度で維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記デラフォサイト型酸化銅(6)の抵抗変化の傾きを決定することと、前記傾きからオゾン濃度を引くことと、をさらに含む、請求項12または13に記載の方法(2)。
【請求項15】
前記デラフォサイト型酸化銅(6)の前記抵抗変化の前記傾きは、前記デラフォサイト型酸化銅(6)をオゾンと接触させてから20~200秒の期間にわたって測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ガスセンサー(2)を製造するための方法であって、前記方法が、
-基板(4)を提供するステップと、
-前記基板(4)上にデラフォサイト型酸化銅(6)の層を蒸着させるステップと;
-前記デラフォサイト型酸化銅(6)上に電極(8、10)を蒸着させるステップと、を含み、
前記ガスセンサー(2)が、請求項1~11のいずれか一項に記載のガスセンサー(2)であることを特徴とする、方法。
【請求項17】
前記基板(4)上に前記デラフォサイト型酸化銅(6)の前記層を蒸着後、前記デラフォサイト型酸化銅(6)の前記層をアニール処理するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アニール処理ステップが、800℃~1200℃の温度で実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アニール処理ステップが、レーザー走査によって実施される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス感知の分野、より具体的にはp型半導体を用いたガス感知、さらにより具体的にはデラフォサイト型酸化銅を用いたオゾン感知の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
Shu Zhou,Xiaodong Fang,Zanhong Deng,Da Li,Weiwei Dong,Ruhua Tao,Gang Meng,Tao Wang,Room temperature ozone sensing properties of p-type CuCrO2 nanocrystals,Sensors and Actuators B:Chemical,Volume 143,Issue 1,2009,Pages 119-123,ISSN 0925-4005,https://doi.org/10.1016/j.snb.2009.09.026では、水熱法およびゾルゲル法によって合成されたデラフォサイト型酸化銅CuCrOの層を含むオゾンセンサーが開示されている。このオゾンセンサーは、200℃を超える温度での動作が必要なn型半導体ガスセンサーとは対照的に、室温で動作する。しかし、そのオゾンセンサーは、ppm範囲、すなわち50ppmからのオゾンのみを検出可能である。しかし、実際には、多くの場合、より低い濃度、すなわちppb(10億分の1)範囲のオゾンを検出することが望ましい。
【0003】
Shamatuofu Bai,Sheng-Chi Chen,Song-Sheng Lin,Qian Shi,Ying-Bo Lu,Shu-Mei Song,Hui Sun,Review in optoelectronic properties of p-type CuCrO2 transparent conductive films,Surfaces and Interfaces,Volume 22,2021,100824,ISSN 2468-0230,https://doi.org/10.1016/j.surfin.2020.100824は、p型CuCrO透明導電膜の光電子特性の一般的な総説である。とりわけ、ガス感度について簡潔に論ずる。オゾン雰囲気下では、CuCrO2ナノ結晶/微結晶を含むオゾンセンサーの抵抗は低下するが、オゾンガスが除去されると、抵抗は、元の値にほぼ戻る。CuCrO2のオゾン感度は、オゾンガスが存在する表面の濃縮領域における余分な正孔濃度から生じる。上記の引用を参照すると、CuCrOは、水熱法およびゾルゲル法によって調製可能である。このフィルムは、室温でオゾンガスに対して良好な可逆応答を示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Shu Zhou,Xiaodong Fang,Zanhong Deng,Da Li,Weiwei Dong,Ruhua Tao,Gang Meng,Tao Wang,Room temperature ozone sensing properties of p-type CuCrO2 nanocrystals,Sensors and Actuators B:Chemical,Volume 143,Issue 1,2009,Pages 119-123,ISSN 0925-4005,https://doi.org/10.1016/j.snb.2009.09.026
【非特許文献2】Shamatuofu Bai,Sheng-Chi Chen,Song-Sheng Lin,Qian Shi,Ying-Bo Lu,Shu-Mei Song,Hui Sun,Review in optoelectronic properties of p-type CuCrO2 transparent conductive films,Surfaces and Interfaces,Volume 22,2021,100824,ISSN 2468-0230,https://doi.org/10.1016/j.surfin.2020.100824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明には、上記で引用した従来技術の欠点のうちの少なくとも1つを克服する技術的課題がある。より具体的には、本発明は、特にppb範囲でより高い感度、特に酸素(分子形態のO)に関して良好な選択性を示し、および/または室温もしくは制限された温度で動作するガスセンサー、例えばオゾンセンサーを提供する技術的課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、基板上のデラフォサイト型酸化銅の層と、第1の電極および第2の電極と、を備えるガスセンサーに関し、第1の電極及び第2の電極に電圧を印加したときに、離れた位置で、両方の電極がデラフォサイト型酸化銅に接触し、これにより、この位置の間で、電流がデラフォサイト型酸化銅を流れることが可能になり;ここで、デラフォサイト型酸化銅は、Cu0.66Cr1.33である。
【0007】
好ましい実施形態によれば、ガスセンサーは、オゾンセンサーである。
【0008】
好ましい実施形態によれば、デラフォサイト型酸化銅は、オゾンと接触するときに、導電率が上昇することを示す。
【0009】
好ましい実施形態によれば、ガスセンサーは、25℃~150℃の間の一定温度で動作するように構成される。
【0010】
好ましい実施形態によれば、デラフォサイト型酸化銅は、少なくとも1nm、好ましくは少なくとも2nm、より好ましくは少なくとも5nmの外表面平均粗さを示す。
【0011】
好ましい実施形態によれば、デラフォサイト型酸化銅は、層厚以下の外表面平均粗さを示す。
【0012】
有利には、デラフォサイト型酸化銅は、10nm以下の外表面平均粗さを示す。
【0013】
好ましい実施形態によれば、デラフォサイト型酸化銅の層は、少なくとも20nm、好ましくは30nmの平均厚さを示す。
【0014】
好ましい実施形態によれば、デラフォサイト型酸化銅の層は、200nm以下、好ましくは250nm下の平均厚さを示す。
【0015】
好ましい実施形態によれば、デラフォサイト型酸化銅は、好ましくは800℃~1200℃の温度でアニール処理される。
【0016】
好ましい実施形態によれば、ガスセンサーは、デラフォサイト型酸化銅の層の反対側の基板上に設けられたヒーターをさらに備える。
【0017】
好ましい実施形態によれば、基板は、マイクロヒーターシステムの誘電体層である。
【0018】
好ましい実施形態によれば、ガスセンサーは、10~100000ppbの濃度範囲のオゾンを検出するために構成される。
【0019】
本発明はまた、オゾンの存在および/または濃度を測定する方法にも関し、本方法は、基板と、基板上のデラフォサイト型酸化銅の層と、離れた位置でのデラフォサイト型酸化銅上の電極と、を備えたガスセンサーを使用することと、デラフォサイト型酸化銅をオゾンと接触させることと、デラフォサイト型酸化銅の抵抗変化を電気的に測定することと、を含み、ここで、ガスセンサーは、本発明によるものである。
【0020】
好ましい実施形態によれば、接触させ、測定している間、デラフォサイト型酸化銅の層は、25℃~150℃の一定温度で維持される。
【0021】
好ましい実施形態によれば、この方法は、デラフォサイト型酸化銅の抵抗変化の傾きを決定することと、この傾きからオゾン濃度を引くことと、をさらに含む。
【0022】
好ましい実施形態によれば、デラフォサイト型酸化銅の抵抗変化の傾きは、デラフォサイト型酸化銅をオゾンと接触させてから20~200秒の期間にわたって測定する。
【0023】
本発明はまた、以下のステップを含むガスセンサーを製造するための方法にも関し、本方法は、デラフォサイト型酸化銅の層を基板上に蒸着させることと;デラフォサイト型酸化銅上に電極を蒸着させることと、を含み、ここで、ガスセンサーは、本発明によるものである。
【0024】
好ましい実施形態によれば、本方法は、基板上にデラフォサイト型酸化銅の層を蒸着させた後、デラフォサイト型酸化銅の層をアニール処理するさらなるステップを含む。
【0025】
好ましい実施形態によれば、アニール処理ステップは、800℃~1200℃の温度で実施される。
【0026】
好ましい実施形態によれば、アニール処理ステップは、レーザー走査によって実施される。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、低濃度のオゾンにおいて良好な感度および選択性を有し、150℃未満の温度、例えば、25℃の室温で動作するオゾンガスセンサーを提供するという点で特に興味深い。これにより、加熱ユニットが不要になるか、加熱ユニットが必要な場合でも、従来技術と同様に150℃を実質的に超える温度で動作するガスセンサーと比較して、公称電力、サイズ、コスト、および電力消費が減少するため、ガスセンサーの電力消費が大幅に減少する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明によるガスセンサーの概略断面図である。
図2】ガス検出に使用される様々な固体酸化物の動作温度範囲、および本発明による固体酸化物の動作温度範囲をグラフで示す図である。
図3】変化するオゾン濃度の存在下で、本発明のガスセンサーを流れる電流を経時的にグラフで示す図である。
図4】異なる一定のオゾン濃度の存在下で、本発明のガスセンサーを流れる電流を経時的にグラフで示す図である。
図5図4に基づいて、異なる一定のオゾン濃度の存在下で、短時間、本発明のガスセンサーを流れる電流をグラフで示す図である。
図6】連続的に異なるガスの存在下で、本発明のガスセンサーを流れる電流をグラフで示し、特に空気中に存在する分子状酸素に対するガスセンサーの選択性を示す図である。
図7】本発明のガスセンサーのデラフォサイト型酸化銅の層の走査型電子顕微鏡による上面図を示し、厚さは、140nmおよび32nmであり、蒸着され、900℃でアニール処理され、1050℃でアニール処理された。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明によるガスセンサーの概略断面図である。
【0030】
ガスセンサー2は、基板4と、基板4上に蒸着されたデラフォサイト型酸化銅6の層と、離れた位置で、デラフォサイト型酸化銅6の層上に設けられた少なくとも2つの電極8および電極10と、を本質的に備え、これにより電極8と電極10との間に、感知領域12が形成されるようになる。
【0031】
ガスセンサー2は、図1にも概略的に示されている測定回路14に電気的に接続することができ、電圧電源および電流計を本質的に備える。電極8と電極10との間のデラフォサイト型酸化銅6の層は、後述するように、オゾンOと接触すると変化する電気抵抗Rを有する。各電極8および電極10はまた、デラフォサイト型酸化銅6の層と接触した結果として本質的に生じる電気抵抗Rを特徴とし得る。電極8と電極10との間のデラフォサイト型酸化銅6の層に電圧、例えば直流電圧を印加することによって、電流計で測定される電流I=V/(R+2R)は、電気抵抗Rが変化するにつれて、変化することになる。換言すれば、単純な方法で上記に記載している測定回路14は、デラフォサイト型酸化銅6の層の感知領域12と接触するオゾンの存在またはその濃度の変化を検出し、かつ/または測定することが可能になる。
【0032】
デラフォサイト型酸化銅6は、具体的には、非化学量論的Cu-C-Oデラフォサイト、すなわちCu1-uCr1+u(0<u<1、有利にはu=0.33)である。デラフォサイト材料の中でも、価電子帯の最大値付近にある高密度の3dカチオンと、クロムイオンと酸素イオンとの共有結合による混合により、Cに注目されている。これら2つの特性により、より大きい正孔の移動度が促進され、導電性が向上する。しかしながら、実際には、Cは、低い導電率(10-4Scm-1)を示すため、導電率を少なくとも1Scm-1より大きくするにはドーピングが有用である。上述のような非化学量論比により、導電率がさらに上昇する。例えば、Cu0.66Cr1.33では、約10Scm-1の導電率を示す。
【0033】
非化学量論的Cu-C-Oデラフォサイトの電気的特性は、Lunca-Popa, P., Botsoa, J., Bahri, M. et al.Tuneable interplay between atomistic defects morphology and electrical properties of transparent p-type highly conductive off-stoichiometric Cu-Cr-O delafossite thin films.Sci Rep 10, 1416 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-58312-zで主に論じられ、分析されている。
【0034】
本発明の発明者らは、上記の非化学量論的Cu-C-Oデラフォサイトが、以下の式に示すように、オゾンを3つの単原子酸素に分解する強力な触媒活性を示すことを見い出した。
【0035】
【数1】
【0036】
これにより、非化学量論的Cu-C-Oデラフォサイト材料は、特に低濃度、すなわちppb範囲、および低温、すなわち150℃未満でのオゾンの可逆的測定を達成することができる。
【0037】
図1に示されるガスセンサー2は、加熱プレート16を備えることができ、本加熱プレートは、デラフォサイト型酸化銅6の層とは反対側の基板4の主面上に設けられる。加熱プレート16は、基板4、より具体的にはデラフォサイト型酸化銅6の層を一定温度、すなわち、定められた制限温度範囲内に維持するように動作させることができる。
【0038】
さらに図1を参照すると、デラフォサイト型酸化銅6の層は、有利には少なくとも30nmの平均厚さeを示す。感知領域は、少なくとも250nmおよび/または1000nm以下である電極8と電極10との間の長さLを示すことができる。
【0039】
図2は、様々な既知の材料の温度およびオゾン濃度の動作範囲をグラフおよび概略的方法で示している。例えば、[1]Utembe et al,2006 Sensors and Actuators B114で報告されているとおり、オゾン濃度が10~約100ppbの範囲の場合、WOは、550℃を超える温度で動作する。また、[2]SsBejaoui et al,2014 Sensors and Actuators B 190で報告されているとおり、Cは、オゾン濃度が約100ppbの場合、350~500℃の温度で動作する。さらに、[3]Korotcenkov et al, Journal of sensors 2016で報告されているとおり、Inは、約300℃の温度で動作する。さらに、[4] Baratto et al,2014 Sensors and Actuators B 20で報告されているとおり、CuAlO+CuO+CuAlは、約250℃の温度で動作する。同様に、[5]Guerin et al,2008 Sensors and Actuators B 128で報告されているとおり、WOは、250℃でも動作する。[6]Korotcenkov et al, 2007 Sensors and Actuators B120で報告されているとおり、SnO材料は、約1000ppbの濃度の場合、250~300℃で動作する。最後に、[7]Joshi et al.,2016 RSC Advances95で報告されているとおり、NiCoは、約200℃の温度で動作する。
【0040】
図1において明らかなように、デラフォサイト型酸化銅Cu0.66Cr1.33は、25℃~150℃の一定温度で動作し、すなわち、50~5000ppb(すなわち5ppm)オゾン濃度では、上記の材料よりも実質的に低く、動作する。
【0041】
図3図5は、本発明のガスセンサーの電気的挙動を示す。これらの図のグラフは、デラフォサイト型酸化銅Cu0.66Cr1.33の層が32nmの厚さeを示し、1050℃でアニール処理された、ガスセンサーを用いて、100℃で行われた実験測定の結果である。
【0042】
図3は、ガスセンサーが50ppb、100ppb、および350ppbのオゾン濃度に連続的に接触したときに、図1に示されるような本発明のガスセンサーを流れる電流を示すグラフである。オゾン濃度に応じて電流が異なる上昇プロファイルを示すことが観察できる。第1のオゾン濃度が50ppbの場合、電流は、約10ks後に約100pAから約170pAに上昇し、第2のオゾン濃度が100ppbの場合、電流は、ほぼ同じ10ks後に、約100pAから約200pAに上昇し、第3のオゾン濃度が350ppbの場合、電流は、ほぼ同じ10ksの期間後に、260pAまで上昇する。この挙動は、例えば50~350ppbの低い範囲内の様々なオゾン濃度に対するガスセンサーの感度を示す。
【0043】
しかし、図3は、10ks、すなわち約2時間47分の非常に長い時間を示し、特定の用途では、実用的ではない可能性がある。
【0044】
図4は、ガスセンサーが異なる濃度のオゾンと接触したときに、図1に示す本発明のガスセンサーを流れる電流を示すグラフである。図3とは対照的に、これらの異なる濃度は、図3のように連続様式で報告されるのではなく、同じ期間、例えば8000秒にわたって報告される。換言すれば、図4の時間スケールは、図3と同様に実質的に短く、異なるオゾン濃度での電流の挙動も並行して報告される。
【0045】
特定のオゾン濃度がガスセンサーに適用された瞬間から2000年代以降に電流挙動の飽和が発生すること、また、図3と同様に、異なるオゾン濃度の場合、飽和電流値が大きく異なることが観察できる。また、オゾン濃度をガスセンサーに適用したかなり初期における電流の傾きもかなり異なることも観察できる。
【0046】
図5は、図4に基づき、異なるオゾン濃度で本発明のガスセンサーを流れる電流を示すが、ガスセンサーに異なるオゾン濃度を適用したかなり初期から200秒という短い時間である。時間の経過に伴う電流の変化は、ほぼ直線であり、一次関数に近似できることが観察され得る。これらの線形関数は、異なるオゾン濃度において、異なる傾きを示すことも観察できる。
【0047】
50ppb、100ppb、350ppb、2500ppb(すなわち2.5ppm)の4つのオゾン濃度の場合の電流の傾き(時間の経過、pA/sで示す)は、主グラフに埋め込まれたサブグラフ中で報告されている。オゾン濃度に対する電流の傾きが一次関数に近似できることが観察できる。
【0048】
上述の図3図5は、本発明のガスセンサーの電気的挙動、すなわち、限られた期間における測定中の電流の傾きを決定し、その傾きからオゾン濃度を引くことにより、オゾン濃度の感度および反応性の観点における利点を示す。
【0049】
図6は、異なるガス、例えば窒素(N)、空気、40%のOと60%のNの混合物、オゾン(O)と連続的に接触したときの、本発明のガスセンサーを流れる電流を経時的に示すさらなるグラフである。この図は、デラフォサイト型酸化銅Cu0.66Cr1.33の層が32nmの厚さeを示し、1050℃でアニール処理された、ガスセンサーを用いて、100℃で行われた実験測定の結果である。
【0050】
このことが明らかなように、ガスセンサーが最初に窒素ガスと接触している間、例えば約1900秒の間、電流は、約234pAから約231pAに低下する。その後、ガスセンサーは、約250秒間、空気と接触するが、電流は、それによる大きな変化を示さない。次に、ガスセンサーを40%Oと60%Nとの混合物に約1900秒間接触させると、電流は、1pA未満のごくわずかのみ上昇する。次に、ガスセンサーを、50ppbの濃度、すなわち低濃度のオゾンと接触させる。この場合、電流は、他のガスと接触したときのこれまでの変化と比較して、即座に劇的に上昇する。これは、オゾン濃度が低い場合、例えば10ppbであっても、ガスセンサーのオゾン選択性が高いことを示している。
【0051】
上述のデラフォサイト型酸化銅の層は、銅およびクロム前駆体および酸素流を使用する化学蒸着(CVD)によって蒸着させることができる。この蒸着は、典型的には、300℃~500℃の温度で行われる。蒸着は、P.Lunca Popa,J.Crepelliere,R.Leturcq,D.Lenoble,Electrical and optical properties of Cu-Cr-O thin films fabricated by chemical vapour deposition,Thin Solid Films,Volume 612,2016,Pages 194-201,ISSN 0040-6090,https://doi.org/10.1016/j.tsf.2016.05.052に詳述のとおりであり得る。
【0052】
デラフォサイト型酸化銅の層を蒸着させる前に、基板上にマスクを形成することができ、これにより、層が蒸着される基板の領域(複数可)を制御できるようになる。蒸着後、このマスクを除去することができる。このようなマスクの適用および除去は、それ自体当業者にはよく知られている。
【0053】
基板は、マイクロヒーターシステムの誘電体層であってもよい。
【0054】
上述のデラフォサイト型酸化銅の層は、基板上に蒸着された後、800℃~1200℃の温度でアニール処理されることが有利である。アニール処理は、蒸着中と同じガス状態で、反応器内で実施され得る。アニール処理は、Cu0.66Cr1.33層の導電率を低下させる一方で、表面粗さを増加させ、それによって表面積を増加させるという点で興味深い。後者は、デラフォサイト型酸化銅層の感度を向上させ、それによってガスセンサーの感度も向上する。
【0055】
次の表1は、厚さ32nmの層について、アニール処理によって生じた導電率、平均粗さ、表面被覆率および表面積差(原子間力顕微鏡によって得られた)の変化を示す。
【0056】
【表1】
【0057】
次の表2は、厚さ140nmの層の、アニール処理によって生じた導電率、平均粗さ、表面被覆率、および表面積の差の変化を示す。
【0058】
【表2】
【0059】
したがって、アニール処理は、ガスセンサーの感度を上昇させるには、特に重要である。1050℃でのアニール処理は、900℃でのアニール処理と比較して、実質的に有利である。
【0060】
レーザーアニーリングは、デラフォサイト型酸化銅の層を局所的にアニール処理するために使用でき、それによって正孔キャリア濃度を局所的に調節することができる。
【0061】
図7は、上記の表1および2で考慮された2つのサンプルの上面図を含む。32nmおよび140nmの厚さごとに、表面の形態の変化を観察でき、表面単位あたりの亀裂の数は、アニール処理およびアニール処理温度と共に増加し、その結果、粗さの増加、表面被覆率の減少、表面積の差の増大が生じる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】