(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両の安全器具に関連付けられた、個人によって発せられる周期的生体信号を測定するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20240425BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240425BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A61B5/0245 C
A61B5/11 100
A61B5/02 310K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571490
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 FR2022050904
(87)【国際公開番号】W WO2022243625
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523091682
【氏名又は名称】ワームセンシング
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール ステュワート
(72)【発明者】
【氏名】カテリーヌ カデュー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ローン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA10
4C017AA14
4C017AB04
4C017AC04
4C038VA04
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
本発明は、個人と車両の安全器具との間に配置されるように、当該器具に取り付けられることを意図された、個人からの少なくとも1つの周期的な生体信号を測定するための装置に関し、装置は、-振動センサであって、*主平面と平行に延在し、圧電材料で作製された活性層と、活性層の少なくとも1つの面上に配置された2つの接触電極とを含む積層体と、*主平面と平行に延在し、2つの電気端子を備えるプリント回路を含み、支持層が個人上に配置されるように意図された可撓性支持層と、*積層体と支持層との間に配置され、各接触電極を電気端子に接続するための電気接続層と、を備える振動センサと、-安全器具と振動センサとの間に配置されるように意図された音響減衰部材であって、支持層と一体であり、積層体の上方に積層体から離間して配置される音響減衰部材と、を備える振動センサに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人と車両の安全器具(1)との間に配置されるように前記器具(1)に取り付けられることを意図された、前記個人からの少なくとも1つの周期的な生体信号を測定するための装置(200)であって、前記装置(200)が、
-振動センサ(100)であって、
*主平面(x、y)に平行に延在し、圧電材料から作製された活性層(11)と、前記活性層(11)の少なくとも1つの面上に配置された2つの接触電極(12、13)とを含む積層体(10)と、
*前記生体信号の各パルスで前記積層体(10)の前記活性層(11)に変形を伝達するように構成された可撓性支持層(30)であって、前記支持層(30)が、前記主平面(x、y)に対して平行に延在し、2つの電気端子(32、33)を備えるプリント回路(31)を含み、前記支持層(30)が前記個人に対して配置することを意図されている、可撓性支持層(30)と、
*前記積層体(10)と前記支持層(30)との間に配置され、各接触電極(12、13)を電気端子(32、33)に接続する、電気接続層(20)と、
を備える振動センサ(100)と、
-前記安全器具(1)と前記振動センサ(100)との間に配置されることを意図された音響減衰部材(110)であって、前記支持層(30)に堅固に接続され、前記積層体(10)の上方に前記積層体(10)から離間して配置された音響減衰部材(110)と、を備える、装置(200)。
【請求項2】
前記音響減衰部材が、10ショアОО~80ショアООの硬度を有する可撓性材料から構成され、その周縁部によって前記支持層(30)に堅固に接続されたカバーを備える、請求項1に記載の装置(200)。
【請求項3】
前記カバーが不均質であり、10ショアD~80ショアDの硬度を有する金属又はポリマーから選択された第2の剛性材料を含む、請求項2に記載の装置(200)。
【請求項4】
前記音響減衰部材(110)上に、又は前記音響減衰部材の中にその全体若しくは一部が一体化された機械的減衰部材(120)を備え、前記機械的減衰部材(120)が、前記安全器具(1)と直接的又は間接的に接触することを意図されている、請求項1~3のうちの一項に記載の装置(200)。
【請求項5】
前記機械的減衰部材(120)が、少なくとも1つのダンパーと、任意選択で質量を形成する本体とを備える、請求項4に記載の装置(200)。
【請求項6】
前記積層体(10)の前記活性層(11)が、20ミクロン以下の厚さ及び60GPa以上のヤング率を有する、請求項1~5のうちの一項に記載の装置(200)。
【請求項7】
5.10
5Pa・s/m~3.10
6Pa・s/mに含まれる音響インピーダンスを有し、前記電気接続層(20)と接触している面とは反対側の前記支持層(30)の面上に配置された、インピーダンス整合層(40)を備える、請求項1~6のうちの一項に記載の装置(200)。
【請求項8】
-前記接触電極(12、12a、13)が、前記活性層(11)の前記厚さの2倍未満の累積厚さを有し、
-前記支持層(30)が、自己支持型であり、500ミクロン以下の厚さを有し、
-前記インピーダンス整合層(40)が、10ミクロン以上の厚さを有する、請求項7に記載の装置(200)。
【請求項9】
前記支持層(30)が、前記電気接続層(20)と接触している面とは反対側の前記プリント回路(31)の面上に配置された膜(35)を含む、請求項1~8のうちの一項に記載の装置(200)。
【請求項10】
前記支持層(30)が、前記支持層(30)の周縁ゾーンに堅固に接続された補強構造(50)を備え、そして前記音響減衰部材(110)が、前記補強構造(50)に堅固に接続されている、請求項1~9のうちの一項に記載の装置(200)。
【請求項11】
-前記振動センサ(100)に接続され、生信号を分析及び解釈し、前記周期的な生体信号又は前記周期的な生体信号を表す出力パラメータを抽出する電子端末(150)と、を備える、請求項1~10のうちの一項に記載の装置(200)。
【請求項12】
前記電子端末(150)が、
-前記振動センサ(100)によって測定された前記生信号を調整するためのアナログステージと、
-前記調整ステージからくる信号のアナログ-デジタル変換ステージと、
-デジタル信号を形成し、前記生体信号を表す出力パラメータを計算するための、デジタル信号処理ステージと、を備える、請求項11に記載の装置(200)。
【請求項13】
車両安全システムであって、
-シートに関連付けられ、少なくとも1つの直接的又は間接的接触点(2)で前記車両のシャーシに堅固に接続された安全器具(1)と、
-スライドファスナー(201)によって前記安全器具(1)に取り付けられた、請求項1~12のうちの一項に記載の個人の少なくとも1つの周期的な生体信号を測定するための装置(200)と、
-前記安全器具(1)を前記シャーシの機械的振動から絶縁するように、少なくとも1つの接触点(2)に配置された少なくとも1つの機械的エネルギー吸収体(210)と、を備える、車両安全システム。
【請求項14】
前記安全器具(1)が、少なくとも3つの接触点(2)によって前記シャーシに直接的に接続され、機械的エネルギー吸収体(210)が、前記接触点(2)のうちの少なくとも1つに一体化されている、請求項13に記載の車両用安全システム。
【請求項15】
前記安全器具(1)が、前記シートに接続され、前記シートが少なくとも1つの接触点(2)によって前記シャーシに堅固に接続され、機械的エネルギー吸収体(210)が前記接触点(2)に一体化されている、請求項13に記載の車両用安全システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの身体によって放出される周期的な生体信号、特に心拍又は呼吸数を収集する分野に関する。本発明は、特に、車両の安全器具(例えば、シートベルト)に関連付けられ、ユーザの心拍の測定を可能にする、振動センサを備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路事故は、先進国にとって大きな問題である。事故の主な原因には、運転中の疲労及び居眠りが含まれる。欧州連合(European Union、EU)内では、後者の原因が重大事故の20%~35%の原因であり、年間6,000人近くが死亡すると算定されている。EUでは、車載疲労検出器を車両に一体化することにより、毎年4,000人の命を救い、数万人の傷害を防ぐことが可能になると考えられている。
【0003】
これと並行して、自律走行車を中心とした研究開発が加速されている。実際に、自律運転が市場投入に運用可能な状態にはほど遠いとするならば、あらゆることは、運転者の責任能力の下での「部分的自律運転」の第一段階は、この数年のうちに一般的なものになることを示しているように見える。これに関連して、運転者が緊急状況において制御を再開しなければならない場合、運転者が自身の用心及び反応能力の全てを確実に有することが必要である。この点に関して、自動車及び機器の製造業者を含むいくつかの公的及び民間機関が、現在、車両における自動疲労検出のための実行可能な解決策を見つけようと試みている。
【0004】
接続された時計、ブレスレット又は衣服ベルトなど、いくつかの想定される解決策は、ユーザにとって侵襲的すぎるものであり、運転者がそれらを着用すること及び/またはそれらを接続することを考える場合にのみ運転者の生理学的変数の監視を確実にする。
【0005】
他の解決策は、車両のシートベルトで心拍数を測定するためのモジュールを運転者の胴体に一体化することを提案している。例えば、文献CN106725395は、シートベルトのポリエステルストラップを挟む2つの金属電極を備える、心拍数を測定するためのモジュールを提案している。心拍は、2つの金属電極間に配置された絶縁材料を収縮させ、2つの金属電極間の距離が変化し、したがって、静電容量値を修正し、運転者の心拍数に関する情報を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車両安全器具に関連する解決策にも関する。本発明は、特に、車両内の個人の周期的な生体信号を捕捉して分析することができる振動センサを備えた小型で高感度の装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、個人からの少なくとも1つの周期的な生体信号を測定するための装置であって、車両の安全器具に取り付けられ、個人と当該装置との間に配置されることを意図された装置に関する。装置は、振動センサを備え、振動センサは、
-主平面に平行に延在し、圧電材料で作製された活性層と、活性層の少なくとも1つの面上に配置された2つの接触電極とを含む積層体と、
-生体信号の各パルスで積層体の活性層に変形を伝達するように構成された可撓性支持層であって、当該支持層が、主平面に平行に延在し、2つの電気端子(electrical terminals)を備えるプリント回路を含み、個人に配置されることを意図されている、可撓性支持層と、
-積層体と支持層との間に配置され、各接触電極を電気端子に接続する、電気接続層と、
を備える振動センサ、を備える。
装置は、安全器具と振動センサとの間に配置されることを意図された音響減衰部材を更に備え、当該部材は、支持層に堅固に接続され、積層体の上方に、積層体から離間して配置されている。
【0008】
本発明のその他の有利な非限定的特徴によれば、単独で、又は技術的に実現可能な任意の組合せに従って、以下のようになる。
-音響減衰部材は、10ショアОО~80ショアOOの硬度を有する可撓性材料から構成され、その周縁部によって支持層に堅固に接続されたカバーを備え、
-カバーは、不均質であり、10ショアD~80ショアDの硬度を有する金属又はポリマーから選択される第2の剛性材料を含み、
-装置は、音響減衰部材上に、又は音響減衰部材の中に全体的に若しくは部分的に一体化された、機械的減衰部材を備え、当該機械的減衰部材は、安全器具と直接的又は間接的に接触することが意図されており、
-機械的減衰部材は、少なくとも1つのダンパーと、任意選択で質量を形成する本体とを備え、
-積層体の活性層は、20ミクロン以下の厚さ及び60GPa以上のヤング率を有し、
-装置は、5.105Pa・s/m~3.106Pa・s/mに含まれる音響インピーダンスを有し、電気接続層と接触している面とは反対側の支持層の面上に配置された、インピーダンス整合層(40)を備え、
-活性層の圧電材料は、単結晶、多結晶、又はコンポジット形態のセラミックから選択され、
-接触電極は、活性層の厚さの2倍未満の累積厚さを有し、
-支持層は、自己支持性であり、500ミクロン以下の厚さを有し、
-インピーダンス整合層は、10ミクロン以上の厚さを有し、
-電気接続層は、インタポーザ又は異方性導電フィルムによって形成され、
-支持層は、電気接続層と接触している面とは反対側のプリント回路の面上に配置された膜を含み、
-積層体及び支持層は、それぞれ、主平面において、第1の表面積及び第2の表面積を有し、第1の表面積は、第2の表面積の30%以下であり、
-支持層は、当該支持層の周縁ゾーンに堅固に接続された補強構造を備え、そして音減衰部材は、補強構造に堅固に接続されており、
-プリント回路は、振動センサを電子端末(electronic terminal)に接続するためのワイヤ接続素子を備え、
-振動センサは、周縁封止部を備え、
-装置は、振動センサに接続され、生信号を分析及び解釈し、周期的な生体信号又は当該周期的な生体信号を表す出力パラメータを抽出する電子端末と、を更に備え、
-電子端末は、振動センサによって測定された生信号を調整するためのアナログステージと、調整ステージからくる信号のアナログ-デジタル変換ステージと、デジタル信号を形成し、当該生体信号を表す出力パラメータを計算するための、デジタル信号処理ステージと、を備え、
-電子端末は、外部システムとの通信ステージを備える。
【0009】
本発明はまた、車両の安全システムに関し、
-シートに関連付けられ、少なくとも1つの直接的又は間接的な接触点で車両のシャーシに堅固に接続された安全器具と、
-スライドファスナーによって安全器具に取り付けられた、上述のような、個人の少なくとも1つの周期的な生体信号を測定するための装置と、
-シャーシの機械的振動から安全器具を絶縁するように、少なくとも1つの接触点に配置された少なくとも1つの機械的エネルギー吸収体と、を備える。
【0010】
-安全器具は、少なくとも3つの接触点によってシャーシに直接的に接続することができ、機械的エネルギー吸収体が、接触点のうちの少なくとも1つに一体化されている。
安全器具はシートに接続することができ、シートは少なくとも1つの接触点によってシャーシに堅固に接続され、機械的エネルギー吸収体が当該接触点に一体化されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付の図面を参照した本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1】本発明による、車両内の個人の少なくとも1つの周期的な生体信号を測定するための装置を備える安全システムを示す。
【
図2a】本発明による装置の全て又は一部を、概略断面図で示す。
【
図2b】本発明による装置の全て又は一部を、斜視断面図で示す。
【
図3a】本発明による装置の全て又は一部を、概略断面図で示す。
【
図3b】本発明による装置の全て又は一部を、斜視断面図で示す。
【
図4】本発明による装置の振動センサの、異なる形状を平面図で示す。
【
図5】本発明による、周期的な生体信号を測定するための装置の様々な構成を示す。
【
図6a】本発明による装置のための音響減衰部材(i)(ii)の2つの例及び機械的減衰部材(iii)(iv)の2つの例を示す。
【
図6b】車両安全器具に関連付けられた本発明による装置を示す。
【
図7a】本発明による装置に含まれる振動センサ(単独)によって測定されたスペクトログラムAと、本発明による装置によって測定されたスペクトログラムBとを示す。
【
図7b】本発明による装置によって捕捉され処理された、スペクトログラムBと、スペクトログラムBから抽出されたスペクトログラムB’と、周波数フィルタを適用した後のスペクトログラムB’’と、波形としての生体信号B’’’と、を示す。
【0012】
図中の同じ参照番号は、同じ種類の要素に対して使用されてもよい。一部の図には、読み易さのために縮尺どおりでない概略図が含まれている。特に、z軸に沿った層の厚さは、x軸及びy軸に沿った横方向の寸法に対して縮尺が一致しておらず、また、それらの間の層の相対的な厚さは、必ずしも考慮されない。
異なる可能性(以下の説明において描写及び/又は詳述される変形形態及び実施形態)は、互いに排他的ではないものとして理解されなければならず、一緒に組み合わされてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、個人の少なくとも1つの周期的、規則的、又は不規則的な生体信号を測定するための装置200に関する。周期的な生体信号は、特に、心拍数又は呼吸数であってもよい。装置200は、当該装置200が個人と器具1との間に配置されるように、車両内の安全器具1に取り付けられることが意図されている(
図1)。「安全器具1」という用語は、ユーザを車両のシートに固定することを意図された任意の器具、特にシートベルト、1つまたは複数の安全バー、安全ハーネスなどを意味するものと理解される。車両は、広く理解することもでき、ローリング、飛行、滑走又は浮遊といった人にとっての任意の交通手段を含む。
【0014】
装置200は、好ましくは、スライドファスナー、すなわち、装置200を所与の位置に固定するために器具1にクリップ留めすることができ、各ユーザが自分のサイズ及び自分の肥満に応じて自分の胸部上の装置200の位置を調整することを可能にするために(クリップ留めされていないときに)スライドすることができるファスナーによって、安全器具1に取り付けられる。任意選択で、ファスナーシステムは、ユーザの快適さのために動作位置の周りの動きの自由範囲を可能にし得る。
【0015】
装置200は、振動センサ100及び音響減衰部材110を備える。
本発明による振動センサ100の様々な構成について、
図2a、
図2b、
図3a、及び
図3bに示し、次に説明する。
振動センサ100は、主平面(x、y)に平行に延在する積層体10を備える、すなわち、この積層体10の主面は、主平面(x、y)に実質的に平行であり、積層体10の厚さは、当該主平面に垂直な軸zに沿って測定される。本発明において、「層」という用語は、層(又は積層体)の厚さが、一般に、当該層の(主平面における)横方向寸法よりも著しく薄いことを意味する。
【0016】
積層体10には活性層11が含まれ、活性層11は圧電材料からなり、圧電材料は、好ましくは、単結晶、多結晶、又はコンポジット形態(マトリックス、一般に、ポリマー中の圧電セラミック粉末の分散体に対応する)の圧電セラミックから選択される。一例として、以下のセラミックが挙げられてもよい:ニオブ酸リチウム(LiNbOs)、タンタル酸リチウム(LiTaOs)、ニオブ酸カリウム(KNbOs)、(BaTiOs)、石英(SiO2)、ニオブ酸鉛マグネシウム-チタン酸鉛(PMN-PT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、カリウムナトリウムニオブリチウムアンチモン(KNN-LS)に基づく材料、又はチタン酸カルシウム(KNN-LS-CT)で改質された材料、カリウムナトリウムリチウムニオブタンタルアンチモン(KNNLNTS)に基づく材料、チタン酸ビスマスナトリウム(BNKLBT)等。
それ自体周知のように、圧電材料で作製された活性層11は、変形、特にここでは、周期的な生体信号の角周波数によって引き起こされる変形を受ける場合に、分極するであろう(したがって、測定可能な電気信号をもたらす電荷の流れを発生させる)。
【0017】
活性層11は、有利には、20ミクロン以下の厚さ及び60GPa以上のヤング率を有する。これらの物理的特性は、活性層11に高レベルの感度(活性層11の薄い厚さ、及びヤング率が高い場合、所与の変形に対して、測定される電圧がそれだけ大きくなるという事実に関連する)を与え、センサ100に高い信号対雑音比を与えて、対象の周期的な生体信号に関連する周波数の音波を検出する。活性層11の厚さが薄いことはまた、センサ100の小型化を容易にする。
音響波の検出感度を更に向上させるために、活性層11の厚さは10ミクロン以下、あるいは5ミクロン以下になり得る。活性層11の厚さは、変形中に、典型的には、500マイクロボルト超のバイアス電圧を生成するのに十分であることが保証されるであろう。
(主平面(x、y)における)活性層11の横方向寸法は、例えば、500ミクロン~50mmであるように選択されてもよく、振動センサ100の小型化の理由から、当然のことながら、小さい寸法が好ましい。
【0018】
積層体10はまた、活性層11の一方の面又は両方の面(すなわち、活性層11のいずれかの側)に配置された2つの接触電極12、13を含み、当該層11の分極(周期的な生体信号を表す)によって動かされる電荷の自由循環を可能にする。
好ましくは、接触電極12、13は、活性層11の厚さの2倍未満、あるいは活性層11の厚さ未満の累積厚さを有し、したがって、各電極12、13は、有利には、10ミクロン未満、あるいは5ミクロン未満の厚さを有する。
接触電極12、13は、純金属材料(例えば、Ag、Au、Pd、Pt、Cu、Ni、W、又はTi)、導電性合金、又は二次元(2D)導電性材料(例えば、グラフェン)から形成されてもよい。各電極12、13の導電性材料と活性層11との間には、拡散バリア(例えば、TiN、WN、又はTaNから作製される)、及び接着層(例えば、Cr、又はTiから作製される)が設けられていてもよい。
【0019】
有利には、積層体10は、活性層11及び2つの接触電極12、13のみからなる。
【0020】
振動センサ100はまた、主平面(x、y)に対して平行に延在し、2つの電気端子32、33を備えるプリント回路31を含む可撓性支持層30を備える。(振動センサ100の一部もまた形成する)電気接続層20は、積層体10と支持層30との間に配置され、各接触電極12、13を電気端子32、33に接続する。
【0021】
電気接続層20は、インタポーザ又は異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film、ACF)によって形成される。全ての場合において、目的は、積層体10の2つの接触電極12、13が、積層体10の1つの同じ面において到達され得ることであり、次に、この面(下面と呼ばれる)は、接続層20と関連付けられる。接触電極12、13が、それぞれ、活性層11の下面及び他方の面(上面と呼ばれる)に配置される場合、当該活性層11を貫通し、上面に配置された電極12を、下面に配置され、同じく下面に配置された他方の電極13から電気的に絶縁されたスタッド部12aに電気的に接続する導電性ビア14を設けることが有利である。
インタポーザは、熱可塑性(絶縁性)樹脂と、各接触電極12、13と電気端子32、33との間の接続を可能にする導電性材料(例えば、ニッケル)と、から構成されてもよい。
異方性導電フィルムは、従来、絶縁性ポリマーマトリックス中に分散された導電性ビーズから構成されており、積層体10/ACF20/支持層30に圧力又は熱圧着が加えられた場合、導電性ビーズを介して、(通常は余分な厚さで)電極12a、13と端子32、33との間に垂直方向の電気伝導が確立されるが、層間ゾーンは絶縁性のままである。
電気接続層20を形成するために使用され得る異方性導電接着剤(Anisotropic Conductive Adhesives、ACA)もある。これらの接着剤は、ポリマーマトリックスが、熱的に活性化されて(重合によって)最終ポリマーを形成することが可能な液体前駆体によって置換されることを除いて、前述の異方性導電フィルム(ACF)と同じ原理に基づき、最終結果は、ACF(絶縁マトリックス中に分散された導電性ビーズ)と同様のままであるが、適用が液相で行われるという事実を考慮すると、電気接続層20の厚さを大幅に低減することが可能である。
より基本的な解決策、すなわち、下面の各電極及びスタッドを関連する端子32、33に接続するための導電性ペーストと、電極12a、13を互いに電気的に絶縁し、端子32、33を互いに電気的に絶縁するための絶縁充填材料とを実装することも考えられ得る。
電気接続層20は、積層体10の主面のうちの1つとのみ接触しており、積層体10の縁部及び他方の主面は、接続層20と機械的に接触することなく、完全に自由である。
したがって、電気接続層20は、少なくとも部分的に導電性材料から構成され、例えば、任意選択で絶縁体で被覆されたケーブル又はワイヤによる接続とは逆に、電極と端子との間の直接垂直接続を提供する。ケーブルが存在しないことにより、振動センサ100の感度が改善され、関連するケーブル及び溶接部に関連する追加の剛性が構造に導入されることが回避される。
したがって、好ましくは、電気接続層20は、積層体10の主面全体に対して直接かつ均一に接触している。その他の面の側では、層20は、有利には、支持層30の面に対して直接かつ均一に接触している。
電気接続層20は、典型的には、50ミクロン未満の厚さ、特に、1ミクロン~10ミクロンの厚さを有する。
【0022】
支持層30は、有利には、500ミクロン以下の厚さを有する自己支持層である。これは、それに必要な可撓性を付与する。
一変形形態によれば、支持層30は、プリント回路31を形成する材料(例えば、ガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂の複合材)から本質的に構成されている。
別の変形形態によれば、支持層30は膜35もまた備え、次に、プリント回路31は膜35と電気接続層20との間に位置する(
図2a及び
図3a)。したがって、膜35の材料及びその厚さは、支持層30に目標とする可撓性を与えるように選択及び調整され得る。膜35は、例えば、金属、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、又はエポキシ及びガラス繊維で作製されてもよい。一例として、膜35(存在する場合)は、50~300ミクロンの厚さを有してもよく、プリント回路31は、30~200ミクロンの厚さを有してもよい。
典型的には、支持層30は、1150000N/m~6900000N/mの剛性を有する。支持層30の可撓性は、その厚さ及びその剛性に関連して、生体信号の各パルスで、変形を活性層11に効果的に伝達することを可能にする。
【0023】
有利には、積層体10及び支持層30は、それぞれ、主平面(x、y)において第1の表面積及び第2の表面積を有し、第1の表面積は、第2の表面積の30%以下である。積層体10は、特に組み立てを容易にするために、支持層30の中央部分に配置され得る、又は測定しようとする生体信号の周期的なパルス化によって変形が生じる当該支持層30の変形にできるだけ干渉しないように周縁に配置され得るが、全体的な目的は、振動センサ100の幾何学的形状に応じて、積層体10が受ける変形を最適化することである。正方形の形態で示されているが、振動センサ100の積層体10は、当然のことながら、任意の形状を有し得ることに留意すべきである。
【0024】
振動センサ100の第1の実施形態によれば、支持層30は、個人と接触することを意図されている。次に、支持層30は、生体信号の周期的なパルス化に起因して変形し、この変形を積層体10の活性層11に伝達する。
【0025】
第2の実施形態によれば、振動センサ100は、理想的には、5.105Pa・s/m~3.106Pa・s/mに含まれる音響インピーダンスを有するインピーダンス整合層40を更に備える。この音響インピーダンスは、支持層30への生体信号のパルスの伝達を容易にするように、筋肉及び脂肪の音響インピーダンス(1.3×106Pa・s/m~1.5×106Pa・s/mに含まれるインピーダンス)に近いように意図的に選択される。例えば、インピーダンス整合層40は、シリコーン(音響インピーダンス1.6×106Pa・s/m)から形成されてもよい、又はバイオプラスチック、例えば、ブランドEcoflex(登録商標)(音響インピーダンス1.053×106Pa・s/m)から形成されてもよい。
インピーダンス整合層40は、当該支持層30の、電気接続層20と接触している面とは反対側の面上に、支持層30に対して配置されている。インピーダンス整合層40は、典型的には、10ミクロン以上、例えば、50ミクロン~5mmの厚さを有する。支持層30が膜35を含む場合、その膜は、インピーダンス整合層40と接触している。
インピーダンス整合層40は、個人と接触することを意図されている。身体組織とのそのインピーダンス整合に起因するパルスを効果的に伝達することに加えて、この層40はまた、その可撓性で変形可能な材料が服の接着摩擦によって接触面に「接着」する傾向があるので、個人に対するセンサ100の保持を容易にする。したがって、センサ100の第2の実施形態におけるインピーダンス整合層40の存在は、生体信号が捕捉されるべき個人の周りの測定環境が騒々しい場合に、特に好ましい。
【0026】
説明される実施形態のいずれにおいても、振動センサ100が、
図3a及び
図3bに示されるように、少なくともインピーダンス整合層40(存在する場合)を取り囲む、又は支持層30(インピーダンス整合層40が存在しない場合)の全部若しくは一部を取り囲む周縁封止部60を備えることが、有利である場合がある。この封止部60は、センサ100が個人と接触して配置された場合に、局所的なトポロジーを収容することを可能にする。
【0027】
振動センサ100の支持層30はまた、支持層30の周縁ゾーンに堅固に接続された補強構造50を備えてもよい。補強構造50の機能は、支持層30及びインピーダンス整合層40(存在する場合)の周縁を不動化し、したがって、測定しようとする生体信号の周期的パルス化によって発生されるそれらの変形を強調することである。補強構造50は、例えば、以下のような様々な形状をとることができる。
-連続フレーム(
図4(a))、有利には(
図2bに示されるような)リングであるが、任意選択で長方形、三角形、若しくは別の多角形、又は
-2つの剛性領域(
図4(b))、3つの剛性領域(
図4(c))、あるいはそれ以上から構成される、不連続フレーム。
【0028】
補強構造は、有利には、PET(polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)、PMMA(polymethyl methacrylate、ポリメチルメタクリレート)、PU(polyurethane、ポリウレタン)、PVC(polyvinyl chloride、ポリ塩化ビニル)、PP(polypropylene、ポリプロピレン)等などの、30ショアD超の硬度を有する材料から形成される。
積層体10、接続層20、支持層30、及び潜在的にインピーダンス整合層40を備える組み立て体の低減された総厚を考慮すると、それは、センサ100の取り扱いを容易にし、その堅牢性を促進するシステムを提供することが賢明であり得、補強構造50は、このようなシステムに関与する。
【0029】
本発明による装置200は、上述した振動センサ100に加えて、安全器具1と振動センサ100との間に配置されることを意図された音響減衰部材110を備える。
この部材110は、振動センサ100の積層体10の上方に振動センサ100の積層体10から離間して配置され、支持層30に堅固に接続されている。それは、積層体10から(図中のz軸に沿って)ある距離に(したがって、積層体10と接触せずに)、典型的には約0.1mm~10mmの距離に配置されるので、支持層30に関連してその変形を妨げない。
音響減衰部材110は、有利には、カバー(
図6a(i)、(ii))の形態をとり、その周縁は、支持層30に、又は存在する場合には補強構造50に取り付けられる。一例として、積層体10の上方のカバーの厚さは、0.1mm~20mmの間で変化することができる。
音響減衰部材110は、音響センサ100(より具体的には、振動によって変形する支持層30、及び当該変形に敏感な活性層11)を、空気中を伝播する周囲の音響外乱、すなわち、エンジンの音、道路の音、本体上の空気の摩擦、車両内の乗客の声、ラジオなどから絶縁することを目的とする。それは、好ましくは、シリコーン、ソルボセイン又はゴムなどのエラストマータイプの可撓性材料から構成される。より一般的には、音響減衰部材110の可撓性材料は、そのショア硬度によって認定することができ、10ショアОО~80ショアООの硬度を有する。その音響減衰機能に加えて、部材110は、特に振動センサ100の活性層11を保護することによって、装置200の堅牢性に関与する。
【0030】
一変形形態によれば、音響減衰部材110は、いくつかのタイプの材料を含んでもよい。それがカバーの形態である場合、それは不均質カバーと呼ばれる。第2の材料は、金属又はポリマーの性質の剛性であるように選択される(例えば、アルミニウム、PVC)。第2の材料がポリマーである場合、その硬度は、好ましくは10ショアD~80ショアDの間で選択される。
不均質カバー110は、
図6a(ii)に示されるように、可撓性材料の少なくとも1つの第1の層110aと、剛性材料から作製された少なくとも1つの第2の層110bとの交互配置から形成される。不均質カバーはまた、例えばポリウレタンフォームなどの1つまたは複数の多孔質材料から構成されてもよい。
【0031】
有利には、装置200は、車両のエンジンによって、道路条件によって、及び/又はユーザの動きによって生成され、フレームを介して安全器具1に伝達される機械的振動から振動センサ100を絶縁する役割を有する機械的減衰部材120を更に備える。したがって、機械的減衰部材120は、安全器具1と(直接的又は間接的に)接触することを意図されている。この機械的減衰部材120は、音響減衰部材110上に配置され得るか、又はその中に全体的若しくは部分的に一体化され得る。
【0032】
第1の選択肢によれば、機械的減衰部材120は、質量を形成する本体120aと、少なくとも1つのダンパー120bとから構成される(
図6a(iii))。本体120aは、音響減衰部材110に対して配置され、ダンパーは、安全器具1の側部に配置される。
【0033】
ダンパー120bは、0(摩擦のみ)~7N/mmに含まれる剛性kによって、および0(剛性のみ)~0.6に含まれる摩擦係数fによって定義される。各ダンパー120bは、例えば、金属バネ、樹脂、ゴム又はシリコーン柱、あるいは単純な混合(ゴム/金属)又は油圧ダンパー要素によって形成されてもよい。
本体120aは、1g~1kgの質量mを有する。機械的減衰部材120は、ハイパス機械的フィルタとして作用する「質量-ばね-ピストン」システムを形成する。質量m、剛性k及び摩擦係数fを調整することによって、機械的フィルタの特性を変化させること、特に安全器具1に伝達される機械的振動を減衰させることが可能である。
音響減衰部材110の質量及び振動センサ100の質量が考慮されなければならず、所望の機械的フィルタ特性に到達するために本体120aの質量に加えられなければならないことに留意する必要がある。
機械的フィルタは、関心領域に位置する寄生周波数と交差/減衰することを目標とする。
したがって、理想的な場合には、シャーシ(機械的振動)から生じる全ての漂遊周波数をカットするために、フィルタのカットオフ周波数
【0034】
【0035】
は、およそ150Hzであることが望ましく、その減衰率
【0036】
【0037】
は、可能な限り最良の減衰を有するように、1に最も近くなるようにすることが望ましい。実際には、当然のことながら、この理想的な場合と装置200の設計制約との間で妥協がなされる。
【0038】
第2の選択肢によれば、機械的減衰部材120は、音響減衰部材110に部分的に一体化され、すなわち、本体120aは当該音響減衰部材110を構成する剛性材料110bの層からなる(例えば、
図6aに示されるような不均質カバーの形態で)。次に、機械的減衰部材120の減衰部分120bは、音響減衰部材110に取り付けられ、第1の選択肢に記載された異なる要素によって形成され得る。
【0039】
第3の選択肢によれば、機械的減衰部材120は、音響減衰部材110に完全に一体化される。このために、機械的減衰部材120(音響減衰部材110に含まれる)は、粘弾性特性を有する複合材料から形成され得る。
【0040】
本発明による装置200は、主平面(x、y)において、一般に円形、正方形、長方形、又は多角形の形状を有してもよい。
図6bに示すように、それは、安全器具1と車両に着座した個人との間に配置されることを意図されている。振動センサ100の支持層30の側(及びインピーダンス整合層40が存在する場合にはインピーダンス整合層40の側)に位置する装置200の面は、個人の胸部に対して、好ましくは心拍又は呼吸数が触知できる領域に配置される。音響減衰部材110(及び機械的減衰部材120(存在する場合))の側に位置する装置200の他方の面は、安全器具1に対して保持される。装置200と器具1との間の接触は、好ましくは、スライドファスナー201(
図6b)によって実行され、特に、装置200の面は、カプラ201の支持要素201aに堅固に接続され(接着結合されるか、又は機械的に取り付けられ)、この要素は、スライドクリップ201bによって安全器具1に取り付けられる。
【0041】
本発明による装置200は、測定される周波数の範囲(心拍数及び呼吸リズムについて典型的には0.2Hz~500Hzの周波数の範囲、又は70Hz以下の周波数)の外側の周波数を大幅に減衰させ、目的の周波数範囲内に位置する寄生周波数も減衰させる利点を有する。特に、音声及び他の周囲音が測定信号を汚染しないことが観察されている。したがって、測定が行われる時の個人の音環境は、静かで無音である必要はない。これは、振動センサ100の特定の構造に起因して、及び音響減衰部材110の存在に起因して可能である。
加えて、機械的減衰部材120の存在(又は、本発明の対象である安全システムを参照して以下に説明されるように、少なくとも1つの機械的エネルギー吸収体210の存在)は、動作中のモータによって生成される機械的振動、及び任意選択で道路の凹凸、車両のシャーシを介して安全器具1に伝達される振動を大幅に減衰させる。これらの寄生機械的振動を中和することは、振動センサ100による個人の生体信号の信頼できる再現可能な捕捉を可能にする。
【0042】
有利には、装置200は、ユーザの快適さを改善するために、織物130及び発泡体140と関連付けられる(
図6b)。織物130は、例えば、支持層30と、インピーダンス整合層40が存在する場合にはインピーダンス整合層40を縁取り得、それは、一般に、振動センサ100の全部又は一部を縁取り、したがって、個人との滑らかで均一な接触面を提供することができ、これにより、ユーザの形態、衣服のタイプ、及び/又は安全器具1の調整のばらつきに対応することが可能になる。発泡体140は、典型的には、織物130とファスナー201との間のリンクを形成し、それは、可撓性かつ変形可能であり、機械的減衰部材120によって画定される機械的フィルタを変更しないか、又は非常にわずかしか変更しない。
織物130は、綿、ナイロン、又はポリエチレンから形成されてもよく、発泡体140は、ポリウレタン、ポリエチレン又はポリスチレンから形成され得る。
【0043】
車両内の安全器具1に関連付けられた装置200は、車両内に座った個人の周期的な生体信号を表す少なくとも1つの生信号の測定を可能にする。
生信号を分析及び解釈し、次いで周期的な生体信号又はこの生体信号に関する情報を抽出するために、装置200は、振動センサ100に電気的に接続された電子端末150を更に備える。装置200は、振動センサ100(
図5(a)、(b))、又は電子端末150に接続された複数(2つ以上)のセンサ100(
図5(c))を備えてもよいことに、留意すべきである。いくつかのセンサ100がある場合、個人の同じ信号又は異なる生体信号(心拍数及び呼吸)を測定し得る。
【0044】
振動センサ100と電子端末150とを接続するために、振動センサ100のプリント回路31は、ワイヤ接続素子31b、例えば、
図2a、
図2b、
図3a、
図3b及び
図5(a)で示すようにウェブの形態のストリップを含んでもよい。ワイヤ接続素子31bの端部片は、プリント回路31の電気端子32、33に接続された電気接触コネクタを備えるが、これは、電子端末150に接続され得る。
電子端末150は、センサ100に取り付けることができ、又はセンサ100から離間して、特に安全器具1又は車両の別の部分に取り付けるための取付モジュール上に配置することができる。電子端末150は、固定された、又は任意選択で移動可能なモニタなどの、より複雑な外部システムに接続又は一体化され得る。
代替的に、電子端末150は、音響減衰部材110上に配置することができ、機械的減衰部材120の本体120aの全部又は一部を形成することができる。この構成は、装置200の非常な小型化を保証する。この場合、振動センサ100と端末150とを電気的に接続するためのワイヤ接続要素31bを想定することが可能であるが、接触プラグ82、83は、例えば、補強構造50を介して、センサ100のプリント回路31から音響減衰部材110の表面まで垂直に立ち上がる(
図5(b))。
【0045】
端末150は、振動センサ100によって測定された生信号を分析及び解釈することを可能にする、様々な電子ステージを含み得る。振動センサ100によって測定された生信号を調整するためのアナログステージは、まず、センサ100から受信した電気信号を増幅し、フィルタリングする。このステージは、典型的には、抵抗比がセンサ100から受信した電気信号の増幅利得を設定する電荷増幅タイプの第1のブロックと、目標生体信号の音響スペクトルを超える周波数をフィルタリングすることを可能にするSallen&Keyフィルタタイプの第2のブロックと、から構成される。次に、電子端末150は、調整ステージからくる信号のアナログ-デジタル変換のステージを含む。次に、マイクロコントローラから構成されるデジタル信号の処理ステージは、シャノンエネルギー包絡関数(Shannon energy envelope function)を計算することによって、信号の形成を実行する。最後に、形成された信号から、上記の生体信号を表す目的の出力パラメータを計算し得る。
【0046】
生体信号又は目的の出力パラメータに関連する収集されたデータは、リアルタイムで解釈され、装置200に含まれるか又は外部にある二次システムの応答をトリガすることができる。応答は、例えば、情報フィードバック(視覚的、聴覚的、機械的、振動的等)及び/又は、以下の1つまたは複数の動作のトリガであり得る。
-機械的(複数可):システムの開放/閉鎖。
-電気的(複数可):システムのオン/オフ/変更、油圧、空気圧、熱等。
全ての場合において、二次システムの応答は、検出された生体信号から居眠り又は他の異常な状況のリスクがあることが明らかになった場合に、個人(典型的には車両の運転者)に通知すること、又は個人に警告することを目的とする。
【0047】
可能な外部システムへの目的の出力パラメータの送信を許可するために、電子端末150は通信ステージを含んでもよい。例えば、周知の接続プロトコル(CAN(Controller Area Network、コントローラ・エリア・ネットワーク)、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter、汎用非同期送受信機)、USB(Universal Serial Bus、ユニバーサル・シリアル・バス))又は無線データ伝送(Wi-Fi、Bluetooth等)が使用されてもよい。
装置200を自律的にするために、前述の振動センサ100及び/又は電子端末150の異なるステージにエネルギーが供給されることを可能にする、好ましくは再充電可能な電池を提供することも可能である。端末150が車両のダッシュボードの領域から離れている場合、車両の電池によって電力供給されることが可能である。
【0048】
上述したように、装置200は、以下の様々な構成へと分解され得る:
-任意の車両安全器具1上に配置することができる携帯型自律装置と、
-端末150がワイヤによってセンサ100に接続されるか、又は固定されたより複雑な外部システム(車両のダッシュボードに取り付けられるか、又は当該ダッシュボードと一体化されたシステム)に一体化される、固定装置。
【0049】
本発明はまた、少なくとも1つの接触点2(
図1)において車両のシャーシに(直接的又は間接的に)堅固に接続された安全器具1を備える車両用安全システムに関する。安全器具1は、通常、例えばシートベルトのための少なくとも3つの接触点2を介してシャーシに直接的に接続することができる。あるいは、安全器具1が車両のシートに堅固に接続され、シートが1つまたは複数の接触点2においてシャーシに堅固に接続される場合、当該安全器具1はシャーシに間接的に接続することができる。
【0050】
安全システムは、スライドファスナー201によって安全器具1に取り付けられた、個人(例えば、車両の運転者)の少なくとも1つの周期的な生体信号を測定するための前述の装置200を備える。
装置200は、機械的減衰部材120を備える場合、以下の適用実施例で示されるように、シャーシによって安全器具1に伝達されるエンジンの機械的振動から振動センサ100を絶縁するので、動作中の車両内で個人の生体信号の収集及び効率的な分析を可能にする。
【0051】
本発明による装置200は、機械的減衰部材120なしで、安全システム内に実装することもできる。この場合、安全システムは、振動センサ100の上流でシャーシの振動から安全器具1を絶縁するように、少なくとも1つの接触点2に配置された少なくとも1つの機械的エネルギー吸収体210を備える。
安全器具1が3つ(又は任意選択で4つ)の接触点2においてシャーシに接続される場合、少なくとも1つの接触点2に、又は実に接触点2の各々に、機械的エネルギー吸収体210を配置することが有利である。安全器具1がシートに接続される場合、機械的エネルギー吸収体210は、シートと車両シャーシとの間の接触点2(複数可)に優先的に配置される。
【0052】
当然のことながら、安全器具1がシャーシに直接的に接続される場合に、シートとシャーシとの間の接触点2(複数可)に機械的エネルギー吸収体2を配置することも可能である。
機械的エネルギー吸収体210は、機械的フィルタを形成し、したがって、機械的減衰部材120を参照して説明したように、本体(質量)及びダンパー(剛性、摩擦係数)を備える。
【0053】
最後に、機械的減衰部材120を備えた装置200と、安全器具1とシャーシとの間の直接的又は間接的接触点2の全部又は一部にわたってオフセットされた機械的エネルギー吸収体210との両方を実装することが考えられる。そのような構成は、エンジンの動作及び車両の動きに関連する寄生ノイズ及び振動を大幅に制限することによって、振動センサ100によって測定される生信号の品質の改善を更に可能にする。
【0054】
代表的実施形態:
次に、振動センサ100及び装置200の製造実施例について説明する。当然のことながら、本発明による装置200を製造するために実施することができる、異なるタイプの層を積層し組み立てる他の方法があるので、本実施例は限定するものではない。
振動センサ100の積層体10を製造するために、特に、刊行物「Flexible PZT thin film transferred on polymer substrate」(Surface and Coatings Technology、Elsevier、2018年、343、148~152頁)においてT Dufayらによって説明されているものに近い転写方法を使用することが可能である。
PZT(チタン酸ジルコン酸鉛、lead zirconate titanate)前駆体の溶液は、犠牲基板(例えば、アルミニウム)上にスピンコーティングによって堆積されて、粘性層を形成する。電気経路の通過を可能にするために、上記の層を貫通して開口部が形成される。次に、650℃の熱処理を適用してPZTを結晶化させ、厚さ5ミクロンの圧電材料から作製される活性層11を形成する。
厚さ400nmの白金接触電極12が、PZTで作製された活性層11の上部(自由)面上に化学蒸着技術(例えば、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition、プラズマ励起化学気相成膜法))によって堆積され、次に、ポリウレタン接着層で覆われる。電気経路を通すために、電極/接着剤層の積層体を貫通して、開口部もまた形成される。活性層11の取り扱いを容易にするために、厚さ200ミクロンのポリマー(例えば、PET)で作製された一時層が、熱圧縮ポリウレタン接着剤層に取り付けられる。一時層は、電気経路の通過を可能にするために開放され、導電性接着剤で充填され、導電性接着剤は、接触電極12と電気的に接触する導電性ビア14を形成する。次に、PZTから作製される活性層11の下面が露出するまで犠牲基板を化学エッチングする。ビア14と電気的に接触するその他の接触電極13及びスタッド部12aは、PZTの下面上にアルミニウム堆積(約400nm)によって形成される。
【0055】
本製造方法は、大きな横方向寸法を有するPZT膜の作成を可能にし得、これは、その後、本発明による振動センサ100へのその集積化に望ましい横方向寸法を有する活性層11を画定するように、切断される。説明した実施例では、活性層11は、5mm×15mmの(主平面(x、y)に沿った)横方向寸法を有する。
【0056】
次に、100ミクロンの厚さを有し、横方向寸法が活性層11の横方向寸法と実質的に同一であり、2つの電気端子32、33を備えるプリント回路基板(Printed Circuit Board、PCB)31が選択される。プリント回路31上には、異方性導電フィルム(ACF)20が積層されている。(「ピックアンドプレイス」型の)ハンドリングマシンを使用して、活性層11を接続層20に対向して配置し、(活性層11の下面上の)各電極12a、13がプリント回路31の電気端子32、33と整列するようにし、次に、熱圧着による組み立てが実行される。
次に、一時的ポリマー層を除去し得る。
次に、プリント回路31を、厚さ300ミクロン、横寸法(又は直径)50mmのPVC膜35に接合して、支持層30の形成を完成させる。厚さ3mmのシリコーンで作製されたインピーダンス整合層40は、膜35に対して積層、スクリーン印刷、又は成形によって、組み立てられ得る。ポリプロピレン補強構造50及びシリコーン周縁封止部60は、嵌合(fitting)によって膜35の周縁に取り付けられる。
活性層11の上方で、及び活性層11から距離を置いて、音響減衰部材110を形成するシリコーンカバーが、補強構造50上に成形され、次いで接着される。これは2mmの厚さを有する。
機械的減衰部材120も形成することができ、これは、厚さ5mmの鋼本体120aに接合されたゴム柱120bから構成される。本体120aは、音響減衰部材110に対して接着される。柱120bは、その自由端の側で、車両の安全器具1(この例ではシートベルト1)に関連付けることができるファスナー201の支持要素201aに接着される。ファスナー201は、例えばポリオキシメチレンから形成されてもよい。
ユーザの快適さのために、組み立て体は、測定領域の周縁において、織物130及び/又は発泡体140で覆われ得る。
【0057】
本実施例では、プリント回路31は、電気コンタクトプラグを介して、プリント回路31の電気端子32、33を電子端末150に接続することを可能にする、ワイヤ素子31b(ウェブ)を備える。端末150は、一般的な説明で述べられる電子ステージを備える。それは、例えばユーザのシートの下に配置される。
【0058】
このように形成された装置200を用いた、運転者の心拍数の測定への適用実施例が
図7a及び
図7bに示されている。心拍数を測定するために、装置200は、シートベルト1に沿って高さが調整され、個人の胸部の実質的に左側に配置され、振動センサ100のインピーダンス整合層40は、個人の衣服と接触して配置され、機械的減衰部材120は、スライドクリップ201を介してシートベルト1と接触している。
【0059】
図7aは、前述のように振動センサ100によって、0~150Hzの範囲の周波数スケールで取得された、2つの生スペクトログラムA、Bを示す(取得周波数は128kHz)。スペクトログラムAの場合、測定装置は、音響減衰部材110も機械的減衰部材120も備えておらず、安全システムはまた、機械的エネルギー吸収体210を備えていない。スペクトログラムBの場合、上述の実施例による装置200は、音響減衰部材110及び機械的減衰部材120を備える。
車両が停止しているとき、両方のスペクトログラムA、Bは規則的なピークを示し、これらは、処理後に、運転者の心拍数に関する信頼できる情報を提供し、この情報は、車両内の周囲音レベルにかかわらず信頼できる。逆に、車両が動作するとすぐに、エンジンの振動は、スペクトログラムAを使用不能にする莫大な寄生ノイズ及び振動を生成する。本発明による装置200は、音響減衰部材110及び機械的減衰部材120の存在により、はるかに雑音の少ないスペクトログラムBを得ることを可能にする。車両安全システムが、シートベルト1とシャーシとの間の直接的又は間接的な接触点2(複数可)に少なくとも1つの機械的エネルギー吸収体210を備える場合、機械的減衰部材120のない装置200でも同様の結果が得られることに留意する必要がある。
【0060】
図7bは、車両が動作している期間内のスペクトログラムBの約15秒の抽出物B’を示す。運転者の心拍数を表す規則的なピークは、更に明確に区別される。
スペクトログラムB’’は、40Hz~70Hzの間でフィルタを適用し、信号を正規化することによって得られる。スペクトログラムB’’上に示されるピークは、波形で視覚化することができる。これは信号B’’’であり、運転者の心拍数を表すピークを明らかにする。したがって、信号B’’’から、個人の心拍数を表す周期信号及び/又は出力パラメータを、優れたレベルの精度で抽出することが可能である。
したがって、運転者が居眠りをしていること、または他の危険な状況を知らせる可能性の高い心拍数(又は同様に呼吸数)の変化を確実に検出することができる。そのような場合、装置200は、前述したようなアクション(例えば、音又は光信号)をトリガすることができる。
前述したように、一般的に、本発明による周期的な生体信号を測定するための非侵入型装置200は、停止時又は動作時の車両内の音環境にかかわらず、運転者の生体信号に関する信頼できる情報を提供する。
【0061】
当然のことながら、本発明は、説明された実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変形実施形態をそれに提供し得る。
【国際調査報告】