(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置に使用するための構成要素およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240426BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240426BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240426BHJP
H01M 4/72 20060101ALI20240426BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20240426BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240426BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20240426BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20240426BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20240426BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20240426BHJP
H01G 11/46 20130101ALI20240426BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240426BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240426BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240426BHJP
H10N 10/851 20230101ALI20240426BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240426BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240426BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/505
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/66 A
H01M4/72 A
H01M4/74 C
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/86 U
H01M4/86 T
H01G11/26
H01G11/68
H01G11/70
H01G11/46
H01G11/86
H10N30/30
H10N30/853
H10N10/851
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560766
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 GB2022051115
(87)【国際公開番号】W WO2022229666
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515189520
【氏名又は名称】イリカ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ノーブル
(72)【発明者】
【氏名】キリアコス ジャグログロウ
(72)【発明者】
【氏名】ドナト エルコール コンテ
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H018
5H029
5H050
5H126
【Fターム(参考)】
5E078BA27
5E078BA53
5E078BB23
5E078BB32
5E078BB33
5E078FA04
5E078FA12
5E078FA25
5E078LA02
5E078ZA02
5H017AA04
5H017AS02
5H017CC01
5H017CC05
5H017DD01
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017HH00
5H017HH03
5H017HH07
5H017HH08
5H018AA06
5H018DD06
5H018DD08
5H018EE02
5H018EE10
5H018EE12
5H018HH03
5H018HH05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029DJ07
5H029DJ09
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5H029DJ15
5H029EJ01
5H029HJ00
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5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ14
5H029HJ15
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA08
5H050DA13
5H050EA11
5H050EA12
5H050FA09
5H050FA15
5H050FA16
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA15
5H126BB06
(57)【要約】
エネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置に使用するための構成要素は、第1の部分と第2の部分とを備える。前記第1の部分は、セラミック材料の粒子を含み、前記第2の部分は、複数の厚さ方向の開口部を有するシートによって提供される。前記第2の部分は、前記第1の部分に少なくとも部分的に埋め込まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置に使用するための構成要素であって、
前記構成要素は、第1の部分と第2の部分とを備え、
前記第1の部分は、セラミック材料の粒子を含み、前記第2の部分は、複数の厚さ方向の開口部を有するシートによって提供され、
前記第2の部分は、前記第1の部分に少なくとも部分的に埋め込まれている、
構成要素。
【請求項2】
前記セラミック材料は、
電極活物質、電解質、圧電材料、太陽光発電材料、熱電材料からなる群から選択される、
請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記第2の部分は、導電性材料のシートによって提供される、
請求項1または2に記載の構成要素。
【請求項4】
前記第2の部分は、金属または金属合金を含む、
請求項3に記載の構成要素。
【請求項5】
前記金属または金属合金が、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、および白金からなる群から選択される1つまたは複数の元素を含む、
請求項4に記載の構成要素。
【請求項6】
前記厚さ方向の開口部は、格子状に配置されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の構成要素
【請求項7】
前記第2の部分は、織られたメッシュによって提供される、
請求項6に記載の構成要素。
【請求項8】
前記織られたメッシュは、ストランドに垂直な方向で測定した場合に、1cm当たり5-500本のストランドを有する、
請求項7に記載の構成要素。
【請求項9】
前記織られたメッシュは、ストランドに垂直な方向で測定した場合に、1cm当たり30-250本のストランドを有する、
請求項8に記載の構成要素。
【請求項10】
前記織られたメッシュは、ストランドに垂直な方向で測定した場合に、1cm当たり30-100本のストランドを有する、
請求項9に記載の構成要素。
【請求項11】
前記開口部は、10-1000μmの範囲の幅を有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の構成要素。
【請求項12】
前記開口部は、10-200μmの範囲の幅を有する、
請求項11に記載の構成要素。
【請求項13】
前記開口部は、50-200μmの範囲の幅を有する、
請求項12に記載の構成要素。
【請求項14】
前記構成要素は、電池セル、特に、固体電池セル用の電極であり、前記セラミック材料は、電極活物質である、
請求項1から13のいずれか一項に記載の構成要素。
【請求項15】
前記電極活物質の粒子は、
リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi
xCo
yAl
zO
2、x>0、y>0、z>0およびx+y+z=1)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、リチウムマンガンニッケル酸化物(LiMn
1.5Ni
0.5O
4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO
4)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi
xCo
yMn
zO
2、x>0、y>0、z>0、x+y+z=1)、酸化バナジウム(V
2O
5)、LiVOPO
4、Li
3V
2(PO
4)
3、LiMPO
4(M=Ni、Mn)、酸化スズおよびチタン酸リチウム酸化物(Li
4Ti
5O
12またはLi
2TiO
3)、
からなる群から選択される少なくとも1つの電極活物質を含む、
請求項14に記載の構成要素。
【請求項16】
前記第1の部分は、前記電極活物質の粒子間に分布するイオン伝導性成分をさらに含む、
請求項14または15に記載の構成要素。
【請求項17】
前記電極の前記第1の部分中の電子伝導性成分の量は、前記電極活物質の総体積に対して10vоl%未満である、
請求項14から16のいずれか一項に記載の構成要素。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の構成要素を製造する方法であって、
複数の厚さ方向の開口部を有するシートを提供するステップと、
セラミック材料の粒子を液相と組み合わせてスラリーを形成するステップと、
前記複数の厚さ方向の開口部を有する前記シート上に前記スラリーを堆積させるステップと、
前記シート上に前記スラリーを堆積させた後、前記セラミック材料を部分的に可溶化するように構成された溶媒で前記セラミック材料の前記粒子を湿らせるステップと、
前記溶媒を蒸発させ、前記セラミック材料を圧縮するために、前記粒子に、圧力および熱を加えることによって、湿った前記セラミック材料の前記粒子を焼結するステップと、
を含み、
焼結温度は、前記溶媒の前記沸点より上の200℃以下である、
方法。
【請求項19】
前記セラミック材料の前記粒子を溶媒で湿らせるステップは、
噴霧プロセスによって前記溶媒を前記粒子に適用するステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記セラミック材料の前記粒子を溶媒で湿らせるステップは、
前記溶媒を、前記溶媒の蒸気の形態で前記粒子に適用するステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記液相は、ポリマー結合剤相を含み、
前記方法は、
前記スラリーを前記シート上に堆積させるステップの後であり、前記セラミック材料の前記粒子を前記溶媒で湿らせるステップの前に、前記スラリー中の前記ポリマー結合剤相の前記濃度を低減させるために前記スラリーを加熱するステップと、
さらに含む、
請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から17のいずれか一項に記載の電極を製造する方法であって、
複数の厚さ方向の開口部を有するシートを提供するステップと、
溶媒がセラミック材料を可溶化するように構成されており、前記セラミック材料の粒子を前記溶媒と組み合わせてスラリーを形成するステップと、
前記複数の厚さ方向の開口部を有するシート上に前記スラリーを堆積させるステップと、
前記溶媒を蒸発させ、前記セラミック材料を圧縮するために、前記スラリーに、圧力および熱を加えることによって、前記セラミック材料の前記粒子を焼結するステップと、
を含み、
焼結温度は、前記溶媒の前記沸点より上の200℃以下である、
方法。
【請求項23】
前記スラリーは、ポリマー結合剤をさらに含み、
前記セラミック材料を圧縮するために、前記スラリーを焼結するステップの後、圧縮した材料を、前記焼結温度より高い温度に加熱して、前記圧縮した材料中の前記ポリマー結合剤相の前記濃度を低減するステップと、
をさらに含む、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記焼結温度は、300℃以下である、
請求項18から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
加えられる前記圧力は、300MPa以下である、
請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒を蒸発させて前記セラミック材料を圧縮するために、圧力および熱を加えることによって、前記セラミック材料の前記粒子を焼結するステップは、60分以下の時間を要する、
請求項18から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記セラミック材料の前記粒子は、10nmから50μmの範囲のd50サイズを有する、
請求項18から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記スラリーは、マスクを介して、前記複数の厚さ方向の開口部を有する前記シート上に堆積される、
請求項18から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記スラリーは、テープキャスティング法またはスクリーン印刷法によって、前記複数の厚さ方向の開口部を有する前記シート上に堆積される、
請求項18から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記溶媒は、水、酢酸、ポリカーボネート、ジメチルホルムアミド、およびベンジルアルコールからなる群から選択される、
請求項18から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記構成要素は、電池セル、特に固体電池セル用の電極であり、前記セラミック材料は、電極活物質である、
請求項18から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記スラリーは、イオン伝導性材料の粒子をさらに含む、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記スラリー中の固体電子伝導性成分の量は、電極活物質の前記粒子の総体積に対して10vоl%未満である、
請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
エネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置に使用するための構成要素であって、
請求項18から33のいずれか一項に記載の方法によって得られる、または得ることができる構成要素。
【請求項35】
請求項1から17および請求項34のいずれか一項に記載の構成要素を備える、
エネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置。
【請求項36】
前記装置は、電池(固体電池を含む)、キャパシタ、燃料電池(固体酸化物燃料電池および高分子電解質燃料電池を含む)、光起電力装置、圧電装置、および熱電変換器からなる群から選択される、
請求項35に記載のエネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置。
【請求項37】
請求項1から17および請求項34のいずれか一項に記載の構成要素を含む固体電池セルであって、
前記構成要素は、電極であり、
前記電池セルは、前記電極の面上に配置された電解質層をさらに含む、
固体電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置に使用するための構成要素に関し、特に、電池、キャパシタ、燃料電池(固体酸化物形燃料電池および高分子電解質形燃料電池を含む)、光起電力装置、圧電装置、または熱電変換器に使用するための構成要素、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池、キャパシタ、燃料電池(固体酸化物形燃料電池および高分子電解質形燃料電池を含む)、光起電力装置、圧電装置、または熱電変換器などのエネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置は、通常、セラミック粒子の焼結によって製造される構成要素で構成される。ただし、多くの場合、適切に焼結された構成要素を製造するには高温(例えば、1000℃を超える)が要求される。このような温度を適用すると、化学分解、有害な二次相を形成する異なる材料間の反応、および/または揮発性種の蒸発などの望ましくない副作用が生じることがよくある。さらに、これらの高温の使用は、焼結プロセス中に装置の他の構成要素の存在と両立しない可能性がある。
【0003】
セラミック構成要素を低温で焼結する既知の方法は、例えば、参照により本明細書に参照され組み込まれる国際公開第2017/058727号パンフレットに記載されているような冷間焼結である。冷間焼結は、粒子状の少なくとも1つの無機化合物を、無機化合物を部分的に可溶化できる溶媒で湿らせることによって、焼結材料を調製し、次いで、湿った無機化合物の粒子に、圧力および熱を加えて溶媒を蒸発させ、無機化合物を圧縮して焼結材料を形成するプロセスとして定義され得る。通常、湿った粒子は、大気圧での溶媒の沸点より上の200℃を超えない温度まで加熱される。場合によっては、湿った粒子は、絶対温度250℃以下まで加熱される。
【0004】
冷間焼結の使用を可能にするエネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置の構成要素の製造手順を開発することが望まれている。
【0005】
特に、固体リチウムイオン電池セルなどの電池セルの構成要素に対するそのような製造手順を開発することが望まれている。
【0006】
固体リチウムイオン電池セルは、充電可能な電池セルの一種で、リチウムイオン(Li+)が、放電中に負極(アノード)から正極(カソード)に移動し、充電時に元に戻る。電極は、それぞれリチウムイオンを可逆的に蓄えることができ、イオン輸送を可能にするバルク固体電解質によって分離されている。
【0007】
電流コレクタ、界面調整剤および/またはカプセル化または他の保護要素などの追加の構成要素も提供されてよい。場合によっては、負極は、セルの組み立て直後には電池セル内に存在せず、代わりに、電池セルの初期充電中に形成されるリチウムアノードとして提供される。
【0008】
固体電池セルは、液体電解質リチウムイオン電池セルに比べて、エネルギー密度の増加、出力密度の増加、低漏洩電流および/または可燃性の低減など、複数の利点を提供する可能性がある。したがって、固体電池セルは、例えば、電気自動車および家庭用電化製品での使用が検討されている。
【0009】
大型固体電池セル(電気自動車用など)の場合、電極などの構成要素は、通常、構成材料の粒子を焼結して製造される。一般に、エネルギー貯蔵装置およびエネルギー変換装置に関して、上述した理由により、さらにまたは代わりに、焼結中のLiの蒸発損失の低減を助けるために、焼結温度を下げることが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これまでの冷間焼結プロセスでは、無機化合物の粒子と溶媒との混合物を金型内に保持しながら、この混合物に圧力と熱を加える必要があった。しかしながら、エネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置の構成要素を製造する場合、この方法で金型を使用することは望ましくない。提供できる装置のサイズが制限される、および/または、装置の層の厚さの厳密な制御がより困難になると考えられるためである。その代わりに、金型の壁などの横方向の拘束が存在しない状態で、粒子と溶媒との混合物に一軸の圧力を加えることが好ましい。
【0011】
しかし、この結果として、焼結プロセス中に圧力下に置かれると混合物は横方向に膨張する傾向があり、これに続いて圧力が除去されると焼結した構成要素が緩和する傾向がある。その結果、圧力が除去されると、焼結した構成要素が下にある基板から剥離する可能性がある。これにより、例えば、電池セルの電極を電池セルの集電体の上で直接焼結するようなワンステップ手順の使用が妨げられる可能性がある。
【0012】
驚くべきことに、粒子と溶媒との混合物をメッシュ上、より一般的には複数の厚さ方向の開口部を有する基板上に配置することによって、これらの問題が軽減される可能性があることが判明した。この配置により、粒子と溶媒との混合物が圧力下に置かれて焼結されるときに、粒子が基板の開口部に浸透できると考えられる。結果として、得られる焼結した構成要素は、圧力が除去された後も基板に付着したままになる。焼結した構成要素に、基板を部分的または全体的に埋め込むステップも、構成要素の強化に役立つ可能性があると考えられている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、エネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置で使用するための構成要素を提供することができ、この構成要素は、第1の部分と第2の部分とを備え、第1の部分は、セラミック材料の粒子を含み、第2の部分は、複数の厚さ方向の開口部を有するシートによって提供される。第2の部分は、第1の部分に少なくとも部分的に埋め込まれている。
【0014】
第2の部分は、第1の部分に部分的または全体的に埋め込まれていてもよい。
【0015】
例えば、第2の部分は、5~200μmの範囲の深さまで埋め込まれていてもよい。この場合、5~200μmの範囲は、第2の部分と第1の部分の隣接する面との間にある第1の部分の部分の厚さを表す。場合によっては、第2の部分は、5~100μmの範囲の深さまで埋め込まれていてもよい。場合によっては、第2の部分は、5~50μmの範囲の深さまで埋め込まれていてもよい。
【0016】
典型的には、構成要素は、複数の厚さ方向の開口部を有するシートが部分的または全体的に埋め込まれた焼結セラミック含有体を含む。
【0017】
セラミックという用語は、無機の非金属材料を指す。セラミック材料は、電極活物質、電解質、圧電材料、太陽光発電材料、および熱電材料からなる群から選択されてよい。誤解を避けるために言うと、他の材料、例えば、さらなるセラミック材料の粒子も、構成要素の第1の部分に存在してもよい。
【0018】
通常、構成要素は、電極である。
【0019】
場合によっては、構成要素は、固体電池セルなどの電池セル用の電極であってよい。このような場合、電極は、70~1000μmの範囲の厚さを有していてよい。
【0020】
場合によっては、構成要素は、液体電解質を含む電池セル用の電極であってよい。このような場合、電池セルの電極は、多孔質高分子膜などのセパレーターによって分離されて保持される場合がある。一方、液体電解質は、電極間、場合によっては電極内でのイオン輸送を可能にするイオン伝導媒体を提供する。構成要素の第1の部分が焼結セラミック含有物体である場合、これにより、通常、電極として使用するときに、液体電解質が構成要素に浸透するのに十分な多孔性が得られ、電池内のイオン輸送が強化され、内部抵抗が減少する。
【0021】
場合によっては、構成要素は、電池セル用の電極であってよく、セラミック材料は電極活物質であってよい。電極活物質は、正極活物質であっても負極活物質であってもよい。
【0022】
正極活物質は、リチウム含有物質、ナトリウム含有物質、またはマグネシウム含有物質であってよい。一般に、正極活物質はリチウム含有材料である。
【0023】
正極活物質の粒子は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNixCoyAlzO2、x>0、y>0、z>0およびx+y+z=1)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リチウムマンガンニッケル酸化物(LiMn1.5Ni0.5O4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNixCoyMnzO2、x>0、y>0、z>0、x+y+z=1)、酸化バナジウム(V2O5)、LiVOPO4、Li3V2(PO4)3、LiMPO4(M=Ni、Mn)からなる群から選択される少なくとも1つの正極活物質を含んでよい。
【0024】
負極活物質の粒子は、チタン酸リチウム酸化物(Li4Ti5O12またはLi2TiO3)、酸化スズからなる群から選択される少なくとも1つの負極活物質を含んでよい。
【0025】
場合によっては、電極活物質の粒子は、第2の電極活物質によって被覆された第1の電極活物質を含んでいてよい。
【0026】
場合によっては、構成要素の第2の部分は、導電性材料のシートによって提供される。
【0027】
例えば、第2の部分は、金属または金属合金を含んでよい。金属または金属合金は、鉄、鋼(ステンレス鋼、すなわち、少なくとも10wt%以上のクロムを含む鋼を含む)、ニッケル、少なくとも50wt%以上のニッケルを含むニッケルベースの合金、銅、少なくとも50wt%以上の銅を含む銅ベースの合金、アルミニウム、少なくとも50wt%のアルミニウムを含むアルミニウムベースの合金、白金、および少なくとも50wt%の白金を含む白金ベースの合金、からなる群から選択されてよい。したがって、第2の部分は、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、および白金からなる群から選択される1つまたは複数の原子元素を含む金属または金属合金を含んでよい。
【0028】
構成要素が電池セルの電極である場合、構成要素の第2の部分に導電性材料のシートを使用すると、第2の部分が電池セルの集電体として機能してよい。複数の厚さ方向の開口部を有する集電体を提供することによって、集電体の重量が軽減されてよい。したがって、電池セルのエネルギー密度は、増加してよい。さらに、シートは、構成要素の第1の部分に部分的または全体的に埋め込まれているため、電極活物質とシートとの間の界面接触面積は、集電体が電極との平面界面を有する別個の層として設けられる構成と比較して増大してよい。これにより、電池セルの内部抵抗が低減されてよい。
【0029】
他の場合には、構成要素の第2の部分は、ポリマー材料を含んでよい。このようなシートの存在は、構成要素の強化に役立つ可能性がある。
【0030】
場合によっては、構成要素の第2の部分は、0.005~0.1g/cm2の範囲の単位面積当たりの重量を有する。場合によっては、第2の部分は、0.01~0.05g/cm2の範囲の単位面積当たりの重量を有する。典型的には、第2の部分は、0.1g/cm2未満、好ましくは、0.05g/cm2未満、より好ましくは0.04g/cm2未満の単位面積当たりの重量を有する。
【0031】
好ましくは、第2の部分は、50~300μmの範囲の最大の厚さを有する。第2の部分が織られたメッシュである場合、最大の厚さは、メッシュの2つのストランドが交差する点であってよい。
【0032】
通常、第2の部分における複数の厚さ方向の開口部は、規則的な配列で配置される。例えば、複数の厚さ方向の開口部は、格子状に配置されてよい。
【0033】
誤解を避けるために言うと、「厚さ方向の開口部」という用語は、シートの第1の面からシートの対向する第2の面まで、シートの横方向に直接延びる開口部として定義されてよい。
【0034】
場合によっては、複数の厚さ方向の開口部を有するシートは、格子などの複数の厚さ方向の穿孔を有するシートによって提供されてよい。
【0035】
しかしながら、一般に、第2の部分は織られたメッシュによって提供される。一般に、金属または金属合金のストランドを含む織られたメッシュは、さまざまな種類で市販されており、ストランドに垂直な方向で測定された単位距離当たりのストランド数が異なる。メッシュの単位距離あたりのストランド数が少ない場合、個々のストランドの厚さが厚くなる傾向があり、これにより、単位面積あたりのメッシュ重量が大きくなる傾向がある。したがって、一般に、メッシュの単位距離あたりのストランド数が非常に少ないものを避けることが好ましい。逆に、メッシュの単位距離あたりのストランド数が多い場合、ストランド間の隙間が小さい場合があり、第2の部分が第1の部分にしっかりと埋め込まれた構成要素を提供するのが難しい場合がある。
【0036】
典型的には、織られたメッシュは、ストランドに垂直な方向で測定した場合、1cm当たり5-500本のストランドを有する。場合によっては、織られたメッシュは、ストランドに垂直な方向で測定した場合、1cm当たり30-250本のストランドを有する。他の場合には、織られたメッシュは、ストランドに垂直な方向で測定した場合、1cmあたり30-100本のストランドを有する。
【0037】
一般に、第2の部分の複数の厚さ方向の開口部は、電極の製造中にセラミック材料の粒子が貫通できるサイズを有することが望ましい。
【0038】
通常、セラミック材料の粒子は、ISO 13320:2020に従って、粒子の分散液のレーザー回折を使用して測定した場合、10nmから50μmの範囲のd50サイズを有する。例えば、セラミック材料の粒子は、100nmから40μmの範囲のd50サイズを有してよい。場合によっては、セラミック材料の粒子は、1-40μmの範囲のd50サイズを有してよい。場合によっては、セラミック材料の粒子は、2-20μmの範囲のd50サイズを有してよい。
【0039】
したがって、第2の部分における複数の厚さ方向の開口部は、通常、10~1000μmの範囲の幅を有する。例えば、複数の開口部は、10~200μmの範囲の幅を有していてよい。
【0040】
複数の開口部が小さいほど、より薄く、したがってより軽いシートを第2の部分として提供することができる。したがって、場合によっては、複数の開口部は、50-200μmの範囲の幅を有する。
【0041】
開口部の幅は、第2の部分を提供するシートの平面内の開口部の小さい方の寸法である。典型的には、複数の開口部は、正方形の形状を有する。このような場合、開口部の幅は、正方形の一辺の長さに相当する。場合によっては、複数の開口部は、円形であってよい。このような場合、開口部の幅は、円の直径に相当する。場合によっては、複数の開口部は、長方形の形状を有していてよい。このような場合、開口部の幅は、長方形の短辺の長さに相当する。
【0042】
一般に、構成要素が電池セル用の電極であり、セラミック材料が電極活物質である場合、第1の部分は、電極活物質の粒子間に分布するイオン伝導性成分をさらに含む。イオン伝導性成分は、リチウム含有材料、ナトリウム含有材料、またはマグネシウム含有材料であってよい。一般に、イオン伝導性成分は、リチウム含有材料である。
【0043】
イオン伝導性成分は、LAGP(Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3);LATP(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3);NASICON(Na1+xZr2SixP3ーxO12、0<x<3);LISICON(Li2+2xZn1ーxGeO4、0<x<1);リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス(株式会社オハラ)(LICGCTM);リチウムを詰めたガーネットからなる群から選択される1つ以上の化合物を含んでよい。式LiALaBMCZrDOEを有する化合物を含み、式中、4<A<8.5、1.5<B<4、0≦C≦2、0≦D<2、10<E<13およびM=Al、Mo、W、Nb、Sb、Ca、Ba、Sr、Ce、Hf、Rb、またはTaである。
【0044】
イオン伝導性成分は、少なくとも1つの電解質塩、例えば、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド);LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)および過塩素酸リチウムからなる群から選択される1つ以上の塩をさらに含んでよい。
【0045】
典型的には、イオン伝導性成分は、25℃でインピーダンス分光法によって測定した場合、少なくとも10-8Scm-1のイオン伝導率を有する。特定の実施形態では、イオン伝導性成分のイオン伝導度は、少なくとも10-6Scm-1であってよい。特定の実施形態では、イオン伝導性成分のイオン伝導度は、少なくとも10-5Scm-1であってよい。特定の実施形態では、イオン伝導性成分のイオン伝導度は、少なくとも10-4Scm-1であってよい。
【0046】
典型的には、イオン伝導性成分は、電極活物質の粒子の総体積に対して10~50vоl%の量で第1の部分に存在する。特定の場合には、イオン伝導性成分は、電極活物質の粒子の総体積に対して20~40vоl%の量で第1の部分に存在する。
【0047】
第2の部分が導電性材料のシートによって提供され、その構成要素が電池セル用の電極であり、セラミック材料が電極活物質である場合、電極内にそのようなシートが存在すると、第1部分の電極活物質の粒子間に分配される追加の電子伝導性成分の必要性が軽減されるか、さらには排除される可能性があると考えられる。したがって、電極のエネルギー密度は、増加されてよい。例えば、電極活物質の粒子間に分布する追加の電子伝導性成分の量は、電極活物質の粒子の総体積に対して10vоl%未満であってよい。好ましくは、電極活物質の粒子間に分配される追加の電子伝導性成分の量は、電極活物質の粒子の総体積に対して5vоl%未満であってよい。より好ましくは、電極活物質の粒子間に分配される追加の電子伝導性成分の量は、電極活物質の粒子の総体積に対して2vоl%未満であってよい。さらにより好ましくは、電極活物質の粒子間に分配される追加の電子伝導性成分の量は、電極活物質の粒子の総体積に対して1体積%未満であってよい。
【0048】
追加の電子伝導性成分が存在する場合、典型的には、25℃でのDC減衰測定によって測定される少なくとも10-4Scm-1の電子伝導性を有する。特定の実施形態では、追加の電子伝導性成分の電子伝導度は、少なくとも10-3Scm-1であってよい。特定の実施形態では、追加の電子伝導性成分の電子伝導度は、少なくとも10-2Scm-1であってよい。特定の実施形態では、追加の電子伝導性成分の電子伝導度は、少なくとも10-1Scm-1であってよい。特定の実施形態では、追加の電子伝導性成分の電子伝導率は、少なくとも1Scm-1であってよい。特定の実施形態では、追加の電子伝導性成分の電子伝導率は、少なくとも10Scm-1であってよい。
【0049】
電子伝導性成分が存在する場合、典型的には、カーボンブラック、アセチレンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、およびそれらの混合物からなる群から選択できるカーボン材料によって提供されてよい。あるいは、電子伝導性成分は、金属材料によって提供されてよい。
【0050】
一般に、構成要素が電池セルの電極であり、セラミック材料が電極活物質である場合、
電極活物質の粒子は、第1の部分の体積に対して少なくとも50vоl%の量で第1の部分中に存在する。一般に、電池セルの容量を増加させるために、第1の部分が多量の電極活物質を含むことが好ましい。したがって、場合によっては、電極活物質の粒子は、第1の部分の体積に対して少なくとも60vоl%の量で第1の部分に存在する。場合によっては、電極活物質の粒子は、第1の部分の体積に対して少なくとも70vоl%の量で第1の部分に存在する。場合によっては、電極活物質の粒子は、第1の部分の体積に対して少なくとも80vоl%の量で第1の部分に存在する。したがって、例えば、電極活物質の粒子は、第1の部分の体積に対して50~80vоl%の量で第1の部分に存在してよい。
【0051】
誤解を避けるために言うと、第1の部分の材料の体積百分率は、第2の部分が埋め込まれていない第1の部分の一部について引用されている。
【0052】
一般に、構成要素は、シートより厚い。通常、構成要素の厚さは、シートの厚さより少なくとも30%厚くなる。場合によっては、構成要素の厚さは、シートの厚さより少なくとも、50%大きい。さらに別の場合には、構成要素の厚さは、シートの厚さより少なくとも、80%大きい。誤解を避けるために言うと、構成要素の厚さは、シートの厚さと同じ方向に測定される。
【0053】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係る構成要素を製造する方法を提供することができ、この方法は、以下のステップを含む。複数の厚さ方向の開口部を有するシートを提供するステップと、セラミック材料の粒子を液相と組み合わせてスラリーを形成するステップと、複数の厚さ方向の開口部を有するシート上にスラリーを堆積させるステップと、シート上にスラリーを堆積させた後、セラミック材料を部分的に可溶化するように構成された溶媒でセラミック材料の粒子を湿らせるステップと、溶媒を蒸発させ、セラミック材料を圧縮するために、粒子に、圧力および熱を加えることによって、湿ったセラミック材料の粒子を焼結するステップと、を含む。焼結温度は、溶媒の沸点より上の200℃以下である。
【0054】
誤解を避けるために言うと、湿らせた粒子に圧力および熱を同時に加えて溶媒を蒸発させ、セラミック材料を圧縮する。さらに、セラミック材料を部分的に可溶化するように構成された溶媒でセラミック材料の粒子を湿らせるステップは、セラミック材料を部分的に可溶化する溶媒でセラミック材料の粒子を湿らせるステップに効果的に対応してよい。
【0055】
一般に、セラミック材料の粒子を溶媒で湿らせるステップは、溶媒を、溶媒の蒸気の形態で粒子に適用し、または、噴霧プロセスによって溶媒を粒子に適用するステップを含む。
【0056】
一般に、液相はポリマー結合剤相を含み、この方法はさらに、スラリーをシート上に堆積させるステップの後であり、セラミック材料の粒子を溶媒で濡らすステップの前に、
スラリー中のポリマー結合剤相の濃度を低減させるためにスラリーを加熱するステップを含む。このステップは、典型的には、180~260℃の範囲の温度で約20分以下の時間、スラリーを保持することを含む。
【0057】
典型的には、液相は、ポリカーボネートなどの有機媒体に溶解するポリマー結合剤相を含む。一般に、有機媒体は、非水性である。
【0058】
通常、焼結温度は、溶媒の沸点より上の150℃以下である。場合によっては、焼結温度は、溶媒の沸点より上の100℃以下である。溶媒の沸点は、大気圧における沸点を指す。
【0059】
通常、焼結温度は、300℃以下である。場合によっては、焼結温度は、250℃以下である。場合によっては、焼結温度は、225℃以下である。場合によっては、焼結温度は、200℃以下である。場合によっては、焼結温度は、175℃以下である。場合によっては、焼結温度は、150℃以下である。
【0060】
一般に、焼結温度は、少なくとも50℃である。場合によっては、焼結温度は、少なくとも100℃である。したがって、焼結温度は、50~300℃の範囲、例えば、50~250℃、50~225℃、50~200℃、50~175℃、または50~150℃の範囲であってよい。あるいは、焼結温度は、100~250℃の範囲、例えば、100~225℃、100~200℃、100~175℃、または100~150℃の範囲であってよい。誤解を避けるために言うと、焼結温度は、焼結ステップ中に到達する最高温度である。
【0061】
通常、加えられる圧力は、300MPa以下である。場合によっては、加えられる圧力は、200MPa以下である。場合によっては、加えられる圧力は、150MPa以下である。場合によっては、加えられる圧力は、100MPa以下である。場合によっては、加えられる圧力は、50MPa以下である。
【0062】
一般に、加えられる圧力は、少なくとも10MPaである。場合によっては、加えられる圧力は、少なくとも20MPaである。したがって、加えられる圧力は、10~300MPaの範囲、例えば、10~200MPa、10~150MPa、10~100MPa、または10~50MPaの範囲であってよい。あるいは、加えられる圧力は、20~300MPaの範囲、例えば、20~200MPa、20~150MPa、20~100MPa、または20~50MPaの範囲であってよい。
【0063】
一般に、セラミック材料の粒子に、圧力および熱を加えて溶媒を蒸発させ、セラミック材料を圧縮することによって、セラミック材料の粒子を焼結するステップは、60分より長くはかからない。場合によっては、このステップに、30分もかからない場合がある。場合によっては、このステップに、20分もかからない場合がある。
【0064】
通常、この手順には、少なくとも5分かかる。したがって、このステップに必要とされる時間は、5~60分の範囲、例えば、5~30分または5~20分の範囲であってよい。
【0065】
典型的には、スラリーは、マスクを通して複数の厚さ方向の開口部を有するシート上に堆積される。
【0066】
場合によっては、スラリーは、シート間プロセスによって複数の厚さ方向の開口部を有するシート上に堆積される。シート間プロセスは、通常、断続的なプロセスであり、テープキャスティング法、スクリーン印刷法などのプロセスを含む場合がある。他の場合には、堆積プロセスは、ロール間プロセスであってよい。ロール間プロセスは、典型的には、連続プロセスであり、コンマバー法、Kバー法、ドクターブレード法、スロットダイ法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、および平版印刷コーティング法などのプロセスを含んでよい。これらのプロセスの詳細な説明および要件は、「The Printing Ink Manual」R.H. Leach and R.J. Pierce eds. 5thed 1993 (ISBN 0 9448905 81 6)に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
場合によっては、複数の厚さ方向の開口部を有するシートは、導電性材料のシートである。
【0068】
場合によっては、溶媒は、水性溶媒であってよい。場合によっては、溶媒は、有機溶媒であってよい。一般に、溶媒は、水、酢酸、ポリカーボネート、ジメチルホルムアミドおよびベンジルアルコールからなる群から選択される。
【0069】
場合によっては、構成要素は、電池セルの電極であり、セラミック材料は、電極活物質である。このような場合、スラリーは、LAGP(Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3);LATP(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3);NASICON(Na1+xZr2SixP3-xO12、0<x<3);LISICON(Li2+2xZn1-xGeO4、0<x<1);リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス(株式会社オハラ)(LICGCTM);リチウムを詰めたガーネットなどのイオン伝導性材料の粒子をさらに含んでよい。式LiALaBMCZrDOEを有する化合物を含み、式中、4<A<8.5、1.5<B<4、0≦C≦2、0≦D<2、10<E<13およびM=Al、Mo、W、Nb、Sb、Ca、Ba、Sr、Ce、Hf、Rb、またはTaである。一般に、イオン伝導性材料は、リチウム含有材料、ナトリウム含有材料、またはマグネシウム含有材料であってよい。典型的には、イオン伝導性材料は、リチウム含有材料である。
【0070】
場合によっては(特に、構成要素が電池セル用の電極であり、セラミック材料が電極活物質である場合)、スラリーは、1つ以上の電解質塩、例えば、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)および過塩素酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の塩を含んでよい。あるいは、1つ以上の電解質塩は、セラミック材料の粒子を湿らせるために使用される溶媒に溶解されてよい。
【0071】
場合によっては(特に、構成要素が電池セル用の電極であり、セラミック材料が電極活物質である場合)、スラリーは固体電子伝導性成分を含んでよい。しかしながら、スラリーが堆積されるシートが導電性材料のシートである場合には、スラリー中の固体導電性成分の量が減少する可能性があると考えられる。例えば、固体電子伝導性成分の量は、セラミック材料(電極活物質であってよい)の粒子の総体積に対して10vоl%未満であってよい。好ましくは、固体電子伝導性成分の量は、セラミック材料(電極活物質であってよい)の粒子の総体積に対して5vоl%未満であってよい。好ましくは、固体電子伝導性成分の量は、セラミック材料(電極活物質であってよい)の粒子の総体積に対して2vоl%未満であってよい。好ましくは、固体電子伝導性成分の量は、セラミック材料(電極活物質であってよい)の粒子の総体積に対して1vоl%未満であってよい。
【0072】
スラリーがその上に堆積されるシートは、本発明の第1の態様に係る構成要素の第2の部分の特徴のうちの1つ以上を有してよい。
【0073】
セラミック材料の粒子は、本発明の第1の態様に係る電極中に存在するセラミック材料の粒子の特徴の1つまたは複数を有し得る。誤解を避けるために言うと、他の材料、例えば、さらなるセラミック材料の粒子が、スラリー中に存在してもよい。
【0074】
通常、セラミック材料の粒子は、ISO 13320:2020に従って、粒子の分散液のレーザー回折を使用して測定した場合、2~50μmの範囲のd50サイズを有する。例えば、セラミック材料の粒子は、2~40μmの範囲のd50サイズを有してよい。場合によっては、セラミック材料の粒子は、5~40μmの範囲のd50サイズを有してよい。場合によっては、セラミック材料の粒子は、5~20μmの範囲のd50サイズを有してよい。
【0075】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係る構成要素を製造する方法を提供することができ、この方法は、以下のステップを含む。複数の厚さ方向の開口部を有するシートを提供するステップと、溶媒がセラミック材料を可溶化するように構成されており、セラミック材料の粒子を溶媒と組み合わせてスラリーを形成するステップと、複数の厚さ方向の開口部を有するシート上にスラリーを堆積させるステップと、溶媒を蒸発させ、セラミック材料を圧縮するために、スラリーに、圧力および熱を加えることによって、セラミック材料の粒子を焼結するステップと、を含む。焼結温度は、溶媒の沸点より上の200℃以下である。
【0076】
誤解を避けるために言うと、セラミック材料の粒子とスラリー中に存在する溶媒との混合物に、圧力および熱を同時に加える。
【0077】
一般に、スラリーはポリマー結合剤をさらに含み、方法は、セラミック材料を圧縮するために、スラリーを焼結するステップの後、圧縮した材料を、焼結温度より高い温度に加熱して、圧縮した材料中のポリマー結合剤相の濃度を低減するステップと、をさらに含む。このステップは、典型的には、180~260℃の範囲の温度で約20分以下の時間、圧縮した材料を保持することを含む。
【0078】
本発明の第3の態様に係る方法は、本発明の第2の態様に係る方法と比較して、1つの溶媒のみが必要であるという利点を有し得るのに対して、第2の態様による方法は、別々のステップで提供される液相および溶媒が必要である。しかしながら、存在するポリマー結合相の濃度を低下させるために熱を加える任意のステップは、このステップがセラミック材料の圧縮化後に実行される場合には、より注意が必要になる可能性があると考えられる。
【0079】
本発明の第3の態様による方法は、本発明の第2の態様に係る方法の任意の特徴のうちの1つ以上、例えば、焼結温度、加えられる圧力、焼結時間、シート上にスラリーを堆積させる方法、および使用される材料の量および種類に関連する特徴を含んでよい。
【0080】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係る構成要素を製造する方法を提供することができ、この方法は、以下のステップを含む。複数の厚さ方向の開口部を有するシートを提供するステップと、溶媒がセラミック材料を部分的に可溶化するように、セラミック材料の粒子を溶媒と組み合わせてスラリーを形成するステップと、複数の厚さ方向の開口部を有するシート上にスラリーを堆積させるステップと、溶媒を蒸発させ、セラミック材料を圧縮するために、スラリーに、圧力および熱を同時に加えることによって、セラミック材料の粒子を焼結するステップと、を含む。焼結温度は、溶媒の沸点より上の200℃以下である。
【0081】
誤解を避けるために言うと、セラミック材料の粒子とスラリー中に存在する溶媒との混合物に、圧力および熱を同時に加える。
【0082】
一般に、スラリーは、ポリマー結合剤をさらに含み、方法は、セラミック材料を圧縮するために、スラリーを焼結するステップの後、圧縮した材料を、焼結温度より高い温度に加熱して、圧縮した材料中のポリマー結合剤相の濃度を低減するステップをさらに含む。このステップは、典型的には、180~260℃の範囲の温度で約20分以下の時間、圧縮した材料を保持することを含む。
【0083】
本発明の第4の態様に係る方法は、本発明の第2の態様に係る方法の任意の特徴のうちの1つ以上、例えば、焼結温度、加えられる圧力、焼結時間、シート上にスラリーを堆積させる方法、および使用される材料の量および種類に関連する特徴を含んでよい。
【0084】
第5の態様では、本発明は、エネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置で使用するための構成要素を提供することができ、この構成要素は、本発明の第2、第3、または第4の態様による方法を通じて取得される、または取得可能である。
【0085】
構成要素は、電池セルの電極であってよい。
【0086】
第6の態様では、本発明は、本発明の第1または第5の態様に係る構成要素を含むエネルギー貯蔵装置またはエネルギー変換装置を提供してよい。装置は、電池、キャパシタ、燃料電池(固体酸化物燃料電池および高分子電解質燃料電池を含む)、光起電力装置、圧電装置、および熱電変換器からなる群から選択されてよい。
【0087】
場合によっては、装置は、本発明の第1または第5の態様に係る構成要素によって提供される電極を含む電池セルであってよく、電池セルは、電極の面上に配置された電解質層をさらに含んでよい。
【0088】
典型的には、電解質層は、第2の部分から遠位側の電極の面上に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
次に、以下の図を参照して本発明を例として説明する。
【
図1】
図1a~
図1fは、それぞれ、実施例1、実施例2、実施例3、実施例8、実施例4、および実施例5の断面図を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例3のカソードを含む電池セルのサイクル数に対する正規化された容量を示すグラフである。
【
図3】実施例3のカソードを含む電池セルの時間と圧力との関係を示すグラフである。
【
図4】メッシュサイズに対する単位面積あたりのメッシュ重量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0090】
[陰極の準備]
表1に記載の成分からスラリーを調製した。まず、バインダーおよび電解質塩を溶媒に溶解し、次に溶媒を残りの成分と混合した。混合プロセスは、遊星ボールミキサー内で、最初は1000rpmで10分間、続いて800rpmで5分間実施した。
【表1】
【0091】
2つのNMCグレードを使用し、それらの特性を表2に示す。粒子サイズの分析は、ISO 13320:2020に従って、粒子の分散液のレーザー回折を使用して実行された。
【表2】
【0092】
実施例1~12は、厚さ500μmおよび直径30~35mmの開口部を有するマスクを通して金属の織られたメッシュ上に、スラリーをスクリーン印刷することによって調製した。
【0093】
比較例1~4は、厚さ500μmおよび直径30~35mmの開口部を有するマスクを通して金属箔上に、スラリーをスクリーン印刷することによって調製した。
【0094】
次に、マスクを取り外し、サンプルを0.5℃/分の速度で250℃まで加熱し、この温度で6分間保持して、有機結合剤相を除去した。
【0095】
次に、電極活物質の粒子を湿らせて、部分的に可溶化するために、スクリーン印刷されたサンプルの表面に水を噴霧した。
【0096】
次に、サンプルを、加熱した一軸プレスに置き、30.59MPaの圧力で130℃で10分間保持して焼結した。
【0097】
焼結ステップが完了したら、サンプルをプレスから取り出し、焼結材料のメッシュまたはフォイル基板への接着の品質を評価するために検査した。接着の品質は、次のカテゴリに従って定義された。
・弱い接着性:焼結材料は、基板に全く接着しなかった。
・適度な接着性:焼結材料は、最初は基板に接着したが、例えば、サンプルを厚さ方向に切断しようとすると、簡単に剥がれてしまった。
・良好な接着性:サンプルを切断しようとした場合でも、焼結材料は、基板に接着したままだった。
【表3】
【表4】
【0098】
実施例1、実施例2、実施例3、実施例8、実施例4、および実施例5の断面図をそれぞれ
図1a~
図1fに示す。
【0099】
[電池セル]
実施例3の電極、LAGP/ポリマー電解質、リチウムアノードおよび銅集電体を使用して電池セルを製造した。電池を形成した後、次の手順を使用して、電気化学テストを実行した。
・充電=電圧4.2Vまでの定電流で充電し、その後、電池をこの電圧で60分間維持
・放電=電圧2.7Vまでの定電流で放電
結果を、
図2および
図3に示す。これは、成形段階後に高効率でサイクルが成功裏に達成されたことを示している。
【0100】
[メッシュの重量]
図4は、ステンレス鋼、アルミニウム、およびニッケルメッシュのメッシュサイズに対する単位面積あたりのメッシュ重量のグラフであり、さらに、典型的な厚さ50μmのステンレス鋼箔の単位面積あたりの重量を示すバンドを含む。このことから、細かいメッシュ(例えば、メッシュサイズ120のアルミニウムメッシュ、メッシュサイズ200および500のステンレスメッシュ)は、厚さ50μmのステンレス鋼箔よりも単位面積あたりの重量が小さいことがわかる。これは、本発明に係る電極を含む電池の単位重量当たりのエネルギー密度を増加させるのに役立つ可能性がある。
【国際調査報告】