(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】成形繊維製品の成形方法、および成形繊維製品
(51)【国際特許分類】
B29C 44/12 20060101AFI20240426BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20240426BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240426BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20240426BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
B29C44/12
B29C39/10
B29C44/00 A
B29K105:04
B29K105:08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023562989
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 FI2022050257
(87)【国際公開番号】W WO2022223880
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523387105
【氏名又は名称】メッツァ スプリング オユ
【氏名又は名称原語表記】METSA SPRING OY
【住所又は居所原語表記】Revontulenpuisto 2 A,02100 ESPOO Finland
(71)【出願人】
【識別番号】523387116
【氏名又は名称】ヴァルメット テクノロジーズ オユ
【氏名又は名称原語表記】VALMET TECHNOLOGIES OY
【住所又は居所原語表記】Keilasatama 5,02150 ESPOO Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハーバンラミ,アルト
(72)【発明者】
【氏名】ツオミネン,ヤルコ
【テーマコード(参考)】
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD16
4F204AG20
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB11
4F204EF27
4F204EK24
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD16
4F214AG20
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB11
4F214UF27
4F214UK31
(57)【要約】
【構成】本発明は成形繊維製品の成形方法に関する。この方法では、一対(11)の成形型(12、13)によって繊維、水、空気および発泡剤を含む発泡体で層(10)を成形する。本発明方法ではさらに成形型(12、13)間に発泡体を供給し、成形型対(11)を開閉する。成形型対(11)を両側から封止した状態で、成形型(12、13)の一つを介して発泡体を供給する。本発明は成形繊維製品にも関する。
【選択図】
図1b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対(11)の成形型(12、13)によって、繊維、水、空気および発泡剤を有する発泡体から層(10)を形成する成形繊維製品を成形する成形方法であり、前記成形型(12、13)間に発泡体が供給され、且つ前記成形型の対(11)を開閉する成形繊維製品を成形する成形方法であって、
前記成形型の対(11)をその側部から封止した状態で、前記成形型(12、13)の一つを介して発泡体を供給することを特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記成形型の対(11)の開放の際、および/または前記成形型の対(11)の開放中に、および/または前記成形型の対(11)の閉鎖中に発泡体を供給する請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記成形型の対(11)を閉鎖後に開放しより多量の発泡体を供給して層(15)を追加形成し、そして前記成形型の対(11)を閉鎖する請求項1または2に記載の成形方法。
【請求項4】
発泡体を前の層のいずれかの側部に供給する請求項3に記載の成形方法。
【請求項5】
前記追加層(15)を形成する前に発泡体を交換する請求項4に記載の成形方法。
【請求項6】
前記成形繊維製品は別に加熱することなく成形される請求項1~5のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項7】
前記発泡体の温度を15~45℃、有利には25~35℃に維持する請求項6に記載の成形方法。
【請求項8】
供給の前後に前記発泡体を循環させる請求項1~7のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項9】
脱水および脱気を真空によって促進する請求項1~8のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項10】
前記発泡体の発生部に循環して戻る少なくとも一種の化学製剤を発泡体に追加する請求項1~9のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項11】
前記追加層(15)を前記成形繊維製品のいずれかの側部に形成する請求項1~10のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項12】
前記追加層(15)の層数が1~10、有利には2~4である請求項1~11のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項13】
前記成形繊維製品が前記成形型の2つの対(11)からの積層部分製品を有する請求項1~12のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項14】
前記成形型の対(11)がいくつか複数の部分成形型(14)またはサブ成形型を有する請求項1~13のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項15】
前記成形型の対(11)を上部成形型(13)および下部成形型(12)で形成し、この下部成形型(12)が静止した状態で前記上部成形型(13)を移動させる請求項1~14のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項16】
発泡繊維から構成され、三次元形状を有する成形繊維製品であって、前記成形繊維製品の層数が少なくとも2層(10、15)であることを特徴とする成形繊維製品。
【請求項17】
前記層(10、15)の少なくとも一つが本体層であり、前記層(10、15)の少なくとも一つが表面層である請求項16に記載の成形繊維製品。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の成形方法によって得られる成形繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形繊維製品ないし成形繊維体(molded fiber product)の成形方法に関する。この方法では、一対の成形型よって繊維、水、空気および発泡剤(foaming chemical)を含有する発泡体(foam)を積層し、また、成形型間に発泡体を供給し、対である成形型を開閉する。本発明は成形繊維製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第1373620B1公報には、3次元繊維ウェブ製品の製造方法が開示されている。この方法の場合、発泡体は少なくとも水、空気及び繊維から製造される。そして、発泡体を成形型に供給し、空気と共に水をプレスによって除去する。成形後に、製品を加熱乾燥する。
【0003】
この公知技術では、発泡体はヘッドボックスを備えた深皿状成形型に付着する。成形工程およびプレス工程を個別に行うため、成形および脱水が遅く、発泡体が成形型に不均等に展開する(広がる)。この公知方法は主にフィルターや絶縁体などの嵩がある波形の製品に適する方法である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は従来よりも多様性があり、また高速で成形繊維製品を成形する新規方法を提供することにある。本発明に係る方法の特徴については、請求項1~15に記載する通りである。本発明方法は工程自体および製品自体を整えるためのいくつかの選択肢を包摂する。本発明方法は複数の成形/発泡ユニットを使用し、迅速なフェーズバッチ処理を行うことによってプロセスを改良する。本発明のもう一つの目的は、各種のパッケージ技術においてプラスチックおよびアルミニウムの代わりに使用できる新規な成形繊維製品を提供することにある。本発明に係る製品の特徴については、請求項16~18に記載する通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下、本発明のいくつかの実施態様を図示する添付図面を参照して本発明を詳述する。
【
図1a】
図1aは本発明方法によって成形繊維製品を成形する成形装置を示す上面図(平面図)である。
【
図2a】
図2aは本発明方法によって成形繊維製品を成形する成形装置の排水システムを示す上面図(平面図)である。
【
図3a】
図3aは本発明における成形型を示す上面図(平面図)である。
【
図3b】
図3bは成形繊維製品とともに
図3aの成形型を示す側面図である。
【
図4a】
図4aは本発明における一対の成形型を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1aおよび
図1bに本発明方法を使用する生産ラインの開始点を示す。本方法は成形繊維製品を成形する方法である。なお本明細書において「成形」の語は「形成」の意味合いで用いることもある。この方法では、層ないし発泡体層10を発泡体(foam)で構成する(
図3b)。この層は最終製品の一部であり、生産ラインでさらに処理する。発泡体は繊維、水、空気および一種がそれ以上の発泡剤を有する。さらに、例えば、フィラーや、他の通常製紙の際に使用する添加剤、顔料、着色剤および結合剤などの化学製剤も使用できる。繊維としては化学的/機械的パルプ用繊維、リサイクル後の繊維、損紙、副生成物、マイクロまたはナノフィブリルカブリル化セルロースや再生後の繊維といったあらゆるタイプの繊維を使用でき、また、これらを併用してもよい。単体の発泡体層については、前記の原料を任意に混合したものを配合できる。相互に異なる層を配合できることは無論である。層は一対(11)の成形型(mold)12および13によって形成する。本明細書ではこの一対を「成形型対」ともいう。実際は、これら成形型は一種の製品を対象とした、あるいはカップなどのいくつかの小さい製品を対象としたいくつか複数の部分成形型で構成する。
図3aでは、24個の部分成形型14を成形型として併用する。原理的には、一方の成形型は雌型であり、他方の成形型は雄型である。このようにすると、成形時に層は形状が三次元になる。発泡体の水分および空気は除去する必要がある。これについては、主に成形型対を閉じることによって行う。換言すると、成形型間の距離が変化する。成形型を閉じる際には、成形型12と13との間に供給された発泡体から圧力によって空気および水を除去する。成形型の多孔性製品表面から、残りの繊維が層を形成している状態で、水および空気が排除される。成形型対を開いた後、層が次の工程段階に移行する。発泡体は一つかそれ以上の発泡体発生器(foam generator)で作成する。この発泡体発生器は成形に使用する発泡体を蓄える発泡体タンクとしても機能する。
【0008】
本発明では、成形型対11を側部で封止した状態で、成形型12または13の一つを介して発泡体を供給するため、成形型が離間状態でも、即ち、成形型対が開いた状態でも、発泡体を閉じ込めるキャビティが形成される。このため、発泡体の供給を迅速に実施でき、供給のタイミングを従来よりも自由に選択できる。成形型の非製品側表面は発泡体の供給口として使用できる。詳しく述べると、スルーホールが部分型の所定の縁部にあり、特に隣接する部分型間の対向表面間にある。両成形型を介して発泡体を供給することができるが、図示の実施態様では、成形型対11は上部型13および下部型12を有し、上部型13は下部型12の静止状態で移動する。換言すると、下部型12は静止し、これを介して発泡体が移動する。このように構成すると、下部型の接続したパイプラインおよび他の導管も静止状態を維持し、上部の可動型を軽量化できる。このため、成形工程の成形時間が短くなる。同時に、パイプラインおよび他の導管が静止状態を維持する。
【0009】
成形型が封止されるため、成形型対11を開く際及び/又は開いた状態で及び/又は閉じた状態で供給を実施でき、成形サイクルを短縮できる。例えば
図1bにおいて上部型13がまさに上昇移動しようとしていても、発泡体を右手の成形型対11に供給できる。他方、成形型対を開いてから、発泡体を供給することができる。以下に、本発明装置の構造および機能を詳述する。
【0010】
成形型を介して供給を行うことには別な作用効果もある。一つの層に加えて、複数の層を一層ずつ形成できる作用効果である。形成した層は形成後に成形型対から取り出すことができるが、本発明では、成形型対11を閉じた後に、即ち当該層の形成後に、成形型対を再び開き、より多くの発泡体を供給し、別な層15を形成してから、成形型対11を再度閉じる。ここでもまた、成形型対が開いている時でも発泡体を供給できる。実際には、1~10の、有利には2~4の層を追加形成する。成形/プレス後に、空気および結合していない水分を除去し、半製品を次の工程段に回す。この工程段でホットプレスを行い、繊維に結合した水分を除去する(
図2b)。成形装置の後には、移送デバイス16が続き、次に第1ホットプレス17が続く。
図3bに最終的にホットプレスによって結合する3層構造の一つの製品を示す。驚くべきことに、追加層15を繊維製品の両側に形成できる。換言すると、製品に一つかそれ以上の層を形成する際に、発泡体を前の層の一方又は双方の側部に供給できる。例えば、本体層として内側層をまず形成してから、次に内側の両側に一つの層を表面層として形成できる。これで合計3層が得られる。
【0011】
積層製品は別な方法でも製造できる。本発明では、製品は2つの成形型対11から積層部分製品を形成する。図示の実施態様では、2つの平行な成形型対11を相互に接近配置する。次に、これら2つの成形型対11から成形した部分製品を結合し、単独製品としてホットプレスできる。例えば、1つの成形型は1つの下部層を持つ1つの内側層を形成する。もう一つの成形型対においても同時に、一つの上部層をもつ一つの内側層を形成する。これら層を結合すると、4層をもつ製品が形成する。
【0012】
一つの製品に素早くいくつか複数の層を成形することには大きな作用効果がある。なお、本発明では、追加層の形成前に発泡体を交換できる。換言すると、一つの製品を成形する際に異なる特性をもつ発泡体を使用できる。このようにすると、異なる複数の層を使用することができる。既述のように、この製品は例えば一種類の発泡体から形成した一つか2つの内側層を有することができる。この場合、少なくとも一つの外側層は別種の発泡体で構成できる。即ち、製品の横断面において発泡体が異なる。
【0013】
本発明の場合驚くべきことに、余分な加熱を行わずに繊維製品を成形できる。発泡体は水分が少なく、多量の空気を含むため、水分の除去効率が良く、製品形状を成形後にも維持できる。同時に、発泡体も形状を維持し、消費電力も小さく抑えることができる。正確には、発泡体の温度は15~45℃、好ましくは25~35℃に維持する。必要に応じて、発泡体発生器、発泡体タンクまたは発泡体モールドの温度を安定化するために冷却を行ってもよい。
【0014】
低温でも、製品の繊維は依然として若干の水分を有する。従って、ホットプレス時、熱によりこれが水および蒸気として放出し、表面を平滑にし、内部接着を補強し、固形の積層製品を形成する。
【0015】
発泡体はパイプフロー内の発泡体発生器の外部ではごく短時間例えば1分か最長でも2分間形状を維持する。本発明の場合、供給前後において発泡体は循環する。実際は、供給前に発生する発泡体は成形型付近に導かれる。発泡体が成形型に供給されない場合には、循環し、発泡体発生器に戻る。発泡体が成形型に導かれる場合には、成形型対が開くまで、再度循環し、発泡体発生器に戻る。成形型対がちょうど開いた時に、発泡体が成形型スペース内に供給される。再び成形型対が閉じると、供給が停止し、成形型対から排水が生じる。同時に、空気も除去される。プレスによって水分および空気の除去を行う場合には、これを真空によって補強できる。実際には、排水は回収し、発泡体発生器に戻す。異なる発泡体から発生する水は対応するタンクまたは単独のタンク内に区画を有するのが有利である。発泡体には少なくとも一種の化学製剤を補充し、この製剤も循環して、発泡体発生器に戻る。この場合戻ってきた水は当該化学製剤を含み、より多くの発泡体を発生する際に使用する。
【0016】
本発明方法によって単層製品も製造できるが、本方法は積層成形に有利である。発泡体は水、空気、繊維および発泡剤から形成する。発泡体は対象となる繊維の小さな部分/一部または粒子を含有する。また、発泡剤を使用して発泡体の発生および発泡体の形状維持を補助する。繊維については広範囲から選択でき、例えば木材繊維または野菜繊維(例えば藁、バガス、竹など)を使用することができるが、人工セルロース系繊維も使用可能である。適正な発泡体では、水、繊維、場合によっては添加剤を発泡体の泡壁に均等に分配する。換言すると、発泡体は非凝集性で不均質性の繊維原料であり、泡の空気を繊維やその他の原料を成形プロセスに移すものである。発泡体を使用する場合、繊維の保持率はきわめて高い。実際は、繊維の99%以上がキャリヤ媒体として厚みのある発泡体から形成した製品に残る。また目的に応じて添加剤の保持率を変更できる。実際は、添加剤は水に従ってプロセス内で循環するため、例えば発泡剤を節約できる。
【0017】
いくつか複数の層を有する繊維製品を成形することによって、製品の特性を多くの方法で特化できる。例えば、基本構造および表面特性を異なる発泡体組成で成形できる。実際、各層自体の工程を有するものとすることができる。例えば、剛体製品はより低価格の繊維から成形でき、表面層はより品質の高い原料から成形できる。水性の繊維スラリーを使用する従来プロセスと比較して、発泡体では繊維密度はきわめて高くなる。同時に、泡壁内を循環する水量もかなり減少し、形成時の水除去も容易になる。水容量の小さい発泡体を用いると、プロセスサイクルが高速化する。
【0018】
本発明方法を利用すると、製品の異なる層につき発泡体部分および発泡体種類を交換できる。同じ発泡体循環内でさらに成形型対を追加するのが好ましい。このようにすると、循環がほぼ中断なく継続する。同時に、発泡体が循環時に循環し続け、均質性を維持する。循環時には、発泡体は数メートル/秒の流速で循環する。特に真空の使用時には、成形型スペース内への発泡体の供給が迅速になる。
【0019】
発泡体が適切であると、泡は分離せず、繊維の分配が均等になる。形成時、発泡体は2つの成形型間の成形型スペース内に分散する。成形型スペースの容積については、例えば必要な層厚に従って設定する。
【0020】
成形型対を封止すると、成形プロセスを調節できる可能性が以前よりもはるかに大きくなる。例えば、次の層を前の層のいずれかの側に形成できる。また、成形型対の開放中に既に供給を開始できる。これは、開放時に過剰な空気を必要とすることなく成形型スペースを直ちに充填できるため有利である。
【0021】
本発明では、発泡体を成形型に供給する。
図3aに取り入れ口18を備えた成形型12を示す。より正確にいうと、各取り入れ口を横方向チャネル19に成形型12を介して接続し、戻り導管20を設ける。このようにすると、発泡体は成形型内に定常的に流れる。横方向チャネル19については、成形型表面にあるいくつかの開口21を介して製品間において、より正確にいうと成形型の製品エリア間のネックエリアに対して開放するのが有利である。このように構成すると、発泡体が成形型間において迅速かつ均等に展開する。なお、これら開口は製品間のネックエリアに設け、向きは上向きにする。同時に、対向する成形型は開口21の点にピン22を有する。これらのピンは2つの主要な役割を有する。まず各ピンが閉鎖時に成形型を案内する。このため、成形型対の形状を維持でき、製品を正確に維持できる。次に、各ピンが自身の開口を閉じる。従って、閉鎖時に成形型対が自動的に供給を遮断し、取り入れ口や横方向チャネルへの逆流を防止できる。逆も成立し、成形型対を開くと、横方向チャネルが開き、発泡体が成形型スペースを充填する。
【0022】
ここでも真空を利用できる。真空は水分除去および脱気に役立つ。真空は既に供給時に利用できるが、閉鎖開始時に利用してもよい。形成時、成形型スペースは減少するが、形成後の実際のプレス時程には小さくならない。成形型のストローク長については、機械式ストッパーを使用するか、あるいは成形型スペース内の圧力あるいは成形型の位置を測定することによって製品の目標厚みに従って調節する。さらに、目的の成形型の表面において製品を真空下に置き、前の層の所定側に追加層を形成することが可能になる。
【0023】
圧縮時、次層の発泡体が迅速なバルブ開放によって次の成形型開口に移り、ここに次層の発泡体を供給する。
【0024】
予期しないことに、加熱なしで成形を実施できるため、最適な発泡体構造を制御でき、製品を均質に成形できる。実際には、成形工程を一定のプロセス温度、有利には15~45℃の温度で実施できる。成形型対がある上に、この温度を発泡体システム全体にわたって維持でき、例えば製品品質にとって最適な泡サイズを得ることができ、発泡体の持続時間が長くなる。また、脱気は脱蒸気よりも簡単であり、層を無傷状態で維持でき、プロセスを安定化できる。実際には、発泡体の空気含有率は50%以上であり、有利には55~75%である。
【0025】
使用時繊維が存在するため、高品質化に最適な泡サイズを実現できる。一般に、成形時最適な発泡体の泡サイズは直径換算で約10~500μm、好ましくは50~150μmである。発泡体の鮮度および一貫した品質は発泡体タンクの発泡体発生器付近に供給される発泡体を連続的にリサイクルすることによって担保できる。実際は、発泡体発生器は内部に撹拌手段を備えたタンクである。
図1aおよび
図1bに示すように、各層の発泡体は成形型に循環し、固有のラインで発泡体タンクに戻る。さらに、成形型から吸引された水はその固有のラインで水タンクに戻る。
【0026】
驚くべきことに、本発明の発泡体プロセスは同時に、従来の水性スラリー成形よりも高い整合性およびすぐれた成形性を実現するものである。従来の水系プロセスの場合、高熱およびより長い脱水時間を必要とするだけでなく、整合性もかなり低く、凝集が発生するため成形性もかなり低い。発泡プロセスで使用する水の量が少なくなると、より小さな開口からの水の取り出しが簡単になる。成形型の表面については、微小な毛細孔を通ってくるガスに対して、あるいは従来の水性スラリープロセスには透水性が十分ではない細孔からくるガスに対して透過性をもつのが好ましい。これによれば、細孔にマーキングが発生することが減少するか、あるいはこれを製品表面から完全に除去でき、製品の品質が向上する。積層製品の層は上下に位置する。この場合、成形型に対し、前の層か、あるいはその真下にある層のいずれかを介してプレスを行い、脱水を行うため、最後のホットプレスで層構造が結合する。積層製品の層順は適宜決定できる。換言すると、層形成は中間層から開始してもよく、あるは表面層の一つから開始してもよい。
【0027】
高速積層はサーボ制御式弁によって実施する。この場合、発泡体供給弁、空気弁および脱水弁は迅速かつ正確に同期した状態で動作できる。また動作を迅速に実施するために、真空システムを成形型の直近に設ける。成形時に層界面を介して脱水に行うことによって層の相互結合を行う。結合は次のホットプレス時も継続する。このホットプレス時には、製品に発生する熱及び蒸気並びに境界層を介して発生する蒸気によっても層の相互結合が強化する。積層は同じ繊維を使用して実施できるが、異なる層には異なる添加剤を使用できる。本発明方法では、いくつかの製品を含む製品ブランクを形成し、このブランクはさらに別なプロセスに回すために均質であるのが好ましい。製品ブランクはホットプレスのためであり、これからさらに処理するためのコンベヤを設ける。製品ブランクを移した後に、成形型に水を噴霧し清浄化してから成形を行うのが好ましい。次のプロセスで、次の成形製品の表面特性などの特性を各ステージでさらに処理する。任意の製品特性が各ステージで如何に向上したかを説明する。
【0028】
第1ホットプレスによって製品から水として、そして部分的に蒸気として水分を除去する。高温平滑な成形型が製品の第2表面を平滑化する第2平滑表面になる。対向面が脱水方向に真空を有する。第2ホットプレスによって製品から対向面に加えられた水分の残りの部分が蒸発し、製品表面が平滑になる。ここでは、異なる最終用途の条件を満足するために製品の積層および表面を処理するか改変するツールを使用する。乾燥手段を使用すると、製品の処理面が非接触でかつ迅速に乾燥する。この場合、高熱空気か、あるいは輻射加熱を利用するのが好ましい。スタンピングかカッティングによって実際の製品を製品ブランクから取り出し、自動包装する。品質の高い製品はいくつかの層を有する。これら製品は製造時間が長いが、得られる作用効果はこれを上回る。
【0029】
添付図面に成形繊維製品の成形方法を示す。この方法は繊維、水、空気および発泡剤から発泡体を形成する発泡体発生器23を使用する。発泡体の特性は既述のようにして変更することができる。さらに、本方法は距離が可変な成形型12および13の対11を使用する。換言すると、成形型の距離は可変である。発泡体の供給後、成形型をともにプレスして脱水および脱気を行い、製品を成形する。
【0030】
加えて、本発明方法では成形型12と13との間に発泡体を供給し、層10を形成する手段24を使用する。単層でも製品を成形することができるが、製品はいくつか複数の層を有することが好ましく、かかる製品も本発明方法によって成形可能である。本発明の場合、手段24の一部として、成形型12または13の一つにいくつか複数の横方向チャネル19を成形型12と13との間で開放するように設ける。このようにすると、発泡体を迅速かつ均等に供給できる。また、成形型対11は両側部から封止される。この場合、成形型の離間時でも、また成形型の移動時でも発泡体を供給できる。このため、プロセスサイクルが短縮し、プロセスおよび製品の調整時の選択肢が増える。
【0031】
封止の目的から、成形型対11は、成形型12および13が離間していても成形型対11を封止するように、外側スリーブ25を有する。このようにすると、成形型スペースが密封され、多量の発泡体をこのスペース、例えば密封キャビティに供給できる。外側スリーブ25については成形型対11に対して調節可能であることが有利である。このため、製品を取り出し、ホットプレスに回す場合に、スリーブがスライドし、製品を受け取る余地が発生する。一つの共通スリーブを設けてもよく、あるいは両成形型に対応するスリーブを設けてもよい。
【0032】
発泡体発生器23は成形型対11に近接配置する。この場合、成形型スペースに達するまで、発泡体の形状を維持できる。実際には、タンクを備えた発泡体発生器は成形型対から距離が20m以下、あるいは10m以下であるのが有利である。さらに、発泡体発生器23はマニホールド26を介して取り入れ口18によって横方向チャネル19に接続する。
図3aの場合と同様に、各横方向チャネル19は対応する取り入れ口18を有する。ここでもいくつか複数の取り入れ口18を使用する。取り入れ口を両側に配置すると、取り入れ口およびこれら接続に対して十分なスペースが得られる。このマニホールドによって発泡体がすべての横方向チャネルに対して均等に分配される。
【0033】
マニホールド26の手前に、発泡体発生器23に戻る短い循環路27を設ける。このようにすると、発泡体は高い品質を維持する。フィードバルブ28を開けることによってマニホールド26に発泡体を供給できる。このために時間がかかるが、発泡体は短い循環路に流れることはない。本発明の場合、各横方向チャネル19は成形型12上に延在し、発泡体発生器23に接続した戻り導管20に接続する。このようにすると、新たな発泡体の供給を安定化でき、成形型に一定して循環できる。実際の供給については後述する。いずれにせよ、供給に要する時間はわずか数秒である。
【0034】
図示のように、本発明方法では、同じマニホールド26に独立して接続した一つかそれ以上の発泡体発生器29を追加接続する。このようにすると、異なる発泡体を使用して、積層製品(複数層の製品)を成形できる。同時に、一つの発泡体を別の発泡体に迅速に変更でき、すべての発泡体発生器が発泡体成形の準備を整える。このため、各発泡体発生器23はマニホールド26の手前に発泡体用の短い循環路を有する。供給時、短い循環路27をバルブ30で締め、供給バルブを開ける。また、戻り導管20は、各発泡体発生器に戻る接続管を有する戻りマニホールド31に接続される。
【0035】
図1bは本発明に係る成形装置を後から見た図である。本発明方法の場合、同じ発泡体発生器23に接続するが異なる段階で作動するように構成した2つの平行な成形型対11を使用すると有利である。さらに別な発泡体発生器も使用できる。このように構成した本発明方法はコンパクトかつ高速である。
図1bにおいて、左手側対は閉じ、右手側対は開放している。従って、異なる発泡体を自在に利用でき、ホットプレスによって両成形装置から交替的に製品を得ることができる。他方、一つの大型の発泡体発生器がいくつか複数の成形装置に発泡体を供給できる。
【0036】
成形型対11は上部成形型13および下部成形型12を有するのが有利である。さらに、上部成形型13は移動可能であり、横方向チャネル19を有する下部成形型12は静止状態である。このように構成すると、移動量を最小限に抑えることができ、取り入れ口も静止状態におくことができる。
【0037】
成形型スペースを閉じるため、成形時に成形型を離間できる。これを制御パラメータとして使用できる。また、開いた成形対は発泡体を受け取るスペースを発生する。実際には、成形型対12および13間の距離は10~100mm、好ましくは20~60mmである。一般に層が厚くなる程、距離は広がる。さらに、取り入れ口18の直径は40~120mm、好ましくは60~100mmである。このように構成すると、発泡体の流速を中程度に維持できる。実際の流速は1~3m/秒である。
【0038】
既述のように、成形型対11はいくつか複数の部分成形型14またはサブ成形型を有する。
図3bの場合、下部成形型12として24個の部分成形型を併用する。ここでは、24枚のプレートを一度に成形する。
図3bには製品ブランク32も示す。図示の製品のブランクは3層であり、個々の製品についてはプロセスの後段で分離する。成形型はフレームを有し、このフレーム内で異なる部分成形型またはサブ成形型を使用できる。従って、一回の方法で、多種類の製品を成形できる。
【0039】
本発明の場合、横方向チャネル19は部分成形型14またはサブ成形型の間に設け、これらは成形型表面に開口21を有する。このように構成すると、各部分成形型または各サブ成形型に発泡体が均一に充填する。従って、製品は均質であり、またプロセスも迅速である。次の特性も速度に影響する。本発明の場合、成形型対11は可動ピン22を有し、各ピンが対応する開口21を閉じるため、発泡体の流れを制御できる。実際は、発泡体は成形型内を循環する。上部成形型を持ち上げると、ピンが開口から外れ、発泡体が成形型スペースに流入する。充填が迅速に生じ、成形型対を再度閉じると、ピンが開口を閉じる。このバルブ作用はマニホールドの前にあるか、独立したバルブによって得ることができる。開口が閉じると、発泡体を変更できる。各発泡体はこれに対応する発泡体発生器に戻る。バルブが迅速動作するため、異なる発泡体の混合は発生せず、あるいは発生しても少なくとも最小限に抑えることができる。
【0040】
成形型スペース発泡体で充填した後、プレスによって水および空気を除去する。型表面が多孔性であるため、水および空気が型表面を通過し、繊維が型面に堆積する。換言すると、下部成形型12が多孔性であり、その下に回収装置33が位置する。このように構成すると、水が自然落下する。ところが、回収装置33が発泡体発生器23に接続した圧力下に水リザーバ34を有するため、まず回収装置33にも空気が回収され、次に成形型を次の成形に備えて完全に空にする。空気によって水が効率よく流れる。ここで、水を真ん中に導管を備えた成形型の下から除去する。さらに、真空システムの成形型端部にあるブリードエアバルブを介して対向成形型および/または交換空気からの過剰圧力があると、除水がさらに容易になる。ここでも同様に、発泡体毎に、水リザーバに対応する部分がある。このように構成すると、除去した水を対象とする発泡体発生器に再度使用できる。このために、2台のポンプ35内蔵する。
図2aにおいて、点線は接続部36を介して封止した水リザーバに導かれる圧力下にある状態を示し、破線は型対から来る水を示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対(11)の成形型(12、13)により繊維から層(10)を形成する成形繊維製品の成形方法であり、前記成形型(12、13)間に繊維が供給され、且つ前記成形型の対(11)が開閉する成形方法であって、繊維、水、空気および発泡剤を有する発泡体が形成され、前記成形型の対(11)をその側部から封止した状態で、前記成形型(12、13)の間を開くように配されたいくつかの横方向チャネル(19)を有する前記成形型(12、13)の一つを介して発泡体を供給し、発泡体が、供給される前及び後に前記成形型(12、13)の付近で循環することを特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記成形型の対(11)の開放の際、および/または前記成形型の対(11)の開放中に、および/または前記成形型の対(11)の閉鎖中に発泡体を供給する請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記成形型の対(11)を閉鎖後に開放しより多量の発泡体を供給して層(15)を追加形成し、そして前記成形型の対(11)を閉鎖する請求項1または2に記載の成形方法。
【請求項4】
発泡体を前の層のいずれかの側部に供給する請求項3に記載の成形方法。
【請求項5】
前記追加層(15)を形成する前に発泡体を交換する請求項4に記載の成形方法。
【請求項6】
前記成形繊維製品は別に加熱することなく成形される請求項1~5のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項7】
前記発泡体の温度を15~45℃、有利には25~35℃に維持する請求項6に記載の成形方法。
【請求項8】
供給の前後に前記発泡体を循環させる請求項1~7のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項9】
脱水および脱気を真空によって促進する請求項1~8のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項10】
前記発泡体の発生部に循環して戻る少なくとも一種の化学製剤を発泡体に追加する請求項1~9のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項11】
前記追加層(15)を前記成形繊維製品のいずれかの側部に形成する請求項1~10のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項12】
前記追加層(15)の層数が1~10、有利には2~4である請求項1~11のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項13】
前記成形繊維製品が前記成形型の2つの対(11)からの積層部分製品を有する請求項1~12のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項14】
前記成形型の対(11)がいくつか複数の部分成形型(14)またはサブ成形型を有する請求項1~13のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項15】
前記成形型の対(11)を上部成形型(13)および下部成形型(12)で形成し、この下部成形型(12)が静止した状態で前記上部成形型(13)を移動させる請求項1~14のいずれか一項に記載の成形方法。
【国際調査報告】