(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】車道連結型の全輪駆動車を動作させるための制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240426BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240426BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20240426BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240426BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240426BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20240426BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60K6/48 ZHV
B60K6/52
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/00 900
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563000
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022059348
(87)【国際公開番号】W WO2022238059
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021112443.3
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュナッパウフ・フロリアン
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB53
3D202CC22
3D202DD05
3D202DD20
3D202DD24
3D202FF02
5H125AA01
5H125AB01
5H125BA05
5H125CA02
5H125CB02
5H125EE41
(57)【要約】
本発明は、少なくとも一つの電子制御ユニットを備え、一次車軸に対して設けられた一次原動機としての少なくとも一つの第一の駆動原動機を備え、さらに、二次車軸に対して設けられた二次原動機としての少なくとも一つの第二の駆動原動機を備えた、車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置に関する。本発明により、制御ユニットは、トルク勾配制限機能を実行する勾配制限モジュールであって、運転者リクエスト信号が定められることで、目標全輪駆動係数が変化する場合に、第一に、新たな目標全輪駆動係数が跳躍的に事前設定され、第二に、その後に続く全輪駆動係数調整の中で、運転者リクエスト信号の勾配が、一次原動機および/または二次原動機の回転トルクの最大限許容可能な調整のための勾配の限界をなす構成の勾配制限モジュールを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電子的な制御ユニット(3)を備え、一次車軸(PA)に対して設けられた一次原動機としての少なくとも一つの第一の駆動原動機(1)を備え、さらに、二次車軸(SA)に対して設けられた二次原動機としての少なくとも一つの第二の駆動原動機(2)を備えた、
車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置であって、
前記制御ユニット(3)は、トルク勾配制限機能を実行する勾配制限モジュール(6)であって、運転者リクエスト信号(M_FP_int)が定められることで、目標全輪駆動係数(AWD)が変化する場合に、第一に、新たな前記目標全輪駆動係数(AWD)が跳躍的に事前設定され、第二に、その後に続く全輪駆動係数調整の中で、前記運転者リクエスト信号(M_FP_int)の勾配が、前記一次原動機(1)および/または前記二次原動機(2)の回転トルク(M_soll_1,M_soll_2)の最大限許容可能な調整のための勾配の限界をなす構成の勾配制限モジュール(6)を備えている制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記一次原動機(1)の前記回転トルク(M_soll_1)は、前記一次原動機(1)の前記回転トルク(M_soll_1)を調整する勾配の傾向が、前記目標全輪駆動係数(AWD)の変更により、前記運転者リクエスト信号(M_FP_int)の勾配の傾向に逆らう形で推移しないように制御されることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置において、
前記一次原動機(1)の前記回転トルク(M_soll_1)の調整に対して前記勾配制限モジュール(6)の制限が働くときに、前記二次原動機(2)の前記回転トルクは一定に保たれることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の制御装置において、
運転者リクエスト信号(FP_int)が一定の場合、前記一次原動機(1)の前記回転トルク(M_soll_1)および/または前記二次原動機(2)の前記回転トルク(M_soll_2)は、前記運転者リクエスト信号(M_FP_int)の勾配よりも大きな勾配で調整できることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の制御装置において、
前記回転トルクが負の領域では、目標全輪駆動係数(AWD)が増加するとき、前記一次原動機(1)の前記回転トルク(M_soll_1)は、新たな前記目標全輪駆動係数(AWD)に達するように前記二次原動機(2)の負の前記回転トルクが引き上げられるまで一定に保たれることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の制御装置のためのコンピュータプログラム製品の形態の勾配制限モジュール(6)を備えた電子制御ユニット(3)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の制御装置の電子制御ユニット(3)のためのコンピュータプログラム製品(6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの電子制御ユニットを備え、一次車軸(例えばリアアクスル)に対して設けられた第一の駆動原動機(特に第一の電気駆動モータ)を備え、さらに、二次車軸(例えばフロントアクスル)に対して設けられた第二の駆動原動機(特に第二の電気駆動モータ)を備えた、車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1から、車軸ごとに異なる二つの駆動ユニットを備えた車道連結型のハイブリッド車両が公知である。異なる駆動ユニット、特に内燃機関および電気駆動モータは、異なる動的特性を備えている、つまり、個々の車軸における目標トルクを同じように速く設定することができない。特に、電気駆動モータによりトルクを増加させることは、内燃機関によりトルクを同じだけ増加させるよりもはるかに速くできる。特許文献1から公知の電子制御は、特に、これらの異なる駆動ユニットの問題に対処する。
【0003】
いわゆる車道連結型の全輪駆動車両では、一次原動機と二次原動機は、クラッチを介してではなく、専ら車輪を介して、車道により駆動的に連結されている。このような車道連結型の全輪駆動車両は、“アクスル・スプリット(Axle-Split)(車軸分離型)”車両とも呼ばれる。この種の全輪駆動車両は、通常、第一の動作モード(好ましくは効率が最適化された駆動モード)では、一次原動機単独で動作し(単軸運転)、二次原動機が自動的に起動および停止可能な第二の動作モード(好ましくは出力が最適化された駆動モード)では、全輪駆動車両として両方の駆動原動機で運転(二軸運転)することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102014200427号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、走行出力、効率並びに快適性の観点で上述の類の全輪駆動車両を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、独立特許請求項の主題により解決される。従属特許請求項は、本発明の有利な発展態様である。
【0007】
本発明は、少なくとも一つの電子制御ユニットを備え、少なくとも一つの一次車軸に対して設けられた一次原動機としての第一の駆動原動機(好ましくは電気駆動モータ)を備え、さらに、少なくとも一つの二次車軸に対して設けられた二次原動機としての第二の駆動原動機(好ましくは電気駆動モータ)を備えた、車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置に関する。本発明によれば、制御ユニットは、トルク勾配制限機能を実行する勾配制限モジュールを備えている。この勾配制限モジュールは、運転者リクエスト信号(=総計運転者リクエスト若しくは総目標回転トルク)が定められることで、目標全輪駆動係数が変化する場合に、第一に、新たな目標全輪駆動係数が跳躍的に事前設定され、第二に、その後に続く全輪駆動係数調整の中で、運転者リクエスト信号の勾配が、一次原動機および/または二次原動機の回転トルクの最大限許容可能な調整のための勾配の限界(勾配制限)をなす構成とされている。
【0008】
勾配制限モジュールは、一次原動機の回転トルクを調整する勾配の傾向が、目標全輪駆動係数の変更により、運転者リクエスト信号の勾配の傾向に逆らう形で推移するのも防ぐことが好ましい。言い換えれば、一次原動機の回転トルクは、運転者リクエスト勾配が上向きのときに減少してはならず、一定に保たれる一方、二次原動機の回転トルクは、目標全輪駆動係数に達するまで増加させられる。同様に、一次原動機の回転トルクは、運転者リクエスト勾配が下向きのときに増加させられてはならず、やはり一定に保たれる一方、二次原動機の回転トルクは、目標全輪駆動係数に達するまで低減される。
【0009】
一次原動機の回転トルクの調整に対して勾配制限モジュールの制限が働くときに、特に、二次原動機の回転トルクが一定に保たれる。
【0010】
本発明の発展態様において、運転者リクエスト信号が一定の場合(すなわち、勾配がゼロの場合)、一次原動機の回転トルクおよび/または二次原動機の回転トルクは、例外的に、運転者リクエスト信号の勾配よりも大きな勾配(例えば、+/-20Nm/dt(dtは、例えばプログラムステップ時間単位または“タスク”である。)で調整できる。
【0011】
特に、本発明により、回転トルクが負の領域では、目標全輪駆動係数が増加するときに、一次原動機の回転トルクは、新たな目標全輪駆動係数に達するよう二次原動機の負の回転トルクが引き上げられるまで一定に保たれる。
【0012】
本発明は、以下の考察に基づいている:
【0013】
本発明は、二つの電気駆動モータを備えた車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための内部試験済みの制御装置に基づいており、この制御装置では、総計運転者リクエスト(すなわち、通常はフィルタ処理されたアクセルペダル操作信号に基づく総目標回転トルク)の形態の運転者リクエスト信号が計算され、総目標回転トルクは、“フェーダ”(すなわち、目標全輪駆動係数を変更するときのフェード機能)を用いて、個々の回転トルクを目標全輪駆動係数に従って調整することにより、両方の車軸若しくは両方の車軸の電気駆動モータに配分される。これは、上述したように(例えば、トランスファーケースのない)車道連結型の全輪駆動車が、全輪駆動係数の変更時に、適した全輪駆動フェード機能を必要とするためである。
【0014】
この内部試験済みの(
図2に関連して、後からより詳しく説明する)フェード機能は、例えば、いわゆる“チップイン(Tip-in)”のとき若しくは動的(ダイナミック)な高回転トルクを要求するときに、“ガクン”とくる不快な揺れを引き起こす。
【0015】
例:全輪駆動係数が100%である(すなわち、要求される回転トルクの100%が一次原動機からもたらされなければならない)場合であって且ついわゆる“チップイン(Tip-in)”または“パンチ(Punch)”(=例えば、惰性走行から定められる動的回転トルク要求)により、50%の目標全輪駆動係数に切り替える場合には、できるだけ速く新たな目標全輪駆動係数(リクエスト配分)に達するように、一次車軸(例えばリアアクスル)における一次原動機の目標トルクは、二次原動機を追加的に動かすことによる総回転トルクの“立ち上がり”の間に“下に向かって行く”ことが必要となるだろう。
【0016】
フェーダは、いつも同じ時間に働いている。フェードは、最後に回転トルクベースで行われる。入力トルクが大きいと、フェード時の勾配は、フェーダ速度が同じままの場合には大きくなる。
【0017】
加えて、負荷が高まるにつれて、車軸が短時間で“下に”向かって行かなければならないこともあり得る。これは、内燃機関で駆動される車軸については特に制御が困難である。というのも、内燃機関では空気振動を補償する必要があるためである。
【0018】
内部試験済みのこのフェード機能は、その欠点を再び図的に明らかにするために、
図2において再び別の言い方で説明する。
【0019】
これらの欠点は、本発明による制御装置により解決される。
【0020】
本発明により、全輪駆動係数は、フェーダなしで跳躍的に(いわば、1か0かの値による“デジタル式に”)変更される。
【0021】
つまり、この値は、総運転者リクエスト(すなわち、通常はフィルタ処理されたアクセルペダル操作信号に基づいて割り出される運転者リクエスト信号に基づく総目標回転トルクとしての総計運転者リクエスト)を“デジタル式に”因子に分ける。これにより、個々の車軸に対して、全輪駆動係数の変更時に、一次原動機および/または二次原動機の個々の回転トルクを変化させる値が生成される。個々の回転トルクは、“レート制限器(リミッタ)(Rate-Limiter)”(トルク勾配制限機能を実行する勾配制限モジュール)を介して連続的に達成される。レート制限器は、運転者リクエスト勾配に依存する特性ラインにより限界が定められている。この特性ラインは、運転者リクエスト勾配が上向きのときに、一次車軸若しくは一次原動機の回転トルクが“下に向かって行く”ことが禁じられるように事前校正されているが、そのためには、本発明により、二次原動機が“回転数を上げる”とともに、一次原動機が“そのままでいる”ようにしなければならない。さらに、運転者リクエスト勾配が下向きのときに、一次車軸若しくは一次原動機の回転トルクは、“上に向かって行く”ことが禁じられる。そのためには、本発明により、二次原動機が“回転数を下げる”とともに、一次原動機が“そのままでいる”ようにしなければならない。
【0022】
加えて、各車軸は、運転者リクエストフィルタ処理の総計した負荷変化ショックよりも決して多くを担ってはならない。すなわち、一次原動機および/または二次原動機の個々の回転トルク調整時の勾配は、通常は、運転者リクエストの勾配よりも大きくなってはならない。恒常運転(運転者リクエスト勾配が一定)の領域においてのみ、より大きな(例えば+/-20RadNm/タスクの)勾配の方にシフトさせることが許されている。
【0023】
要約すると、本発明により以下の効果が得られるようにする:
1.運転者リクエストの勾配よりも急な(特に、一次原動機の個別回転トルク調整を行なう中での)(個別の)回転トルク勾配を回避。
2.運転者リクエスト勾配が正である場合に、一次原動機の個別回転トルク調整を行なう中で勾配が負となることを回避。
3.坂道形に全輪駆動係数を調整するフェーダに代わる本発明による目標全輪駆動係数の跳躍的な(“デジタル式の”)変更により、回転トルク調整の大きさに依存するフェード機能の一環で勾配が不定となることを回避。
【0024】
例えば、未公開の独国特許出願第102021105341号には、少なくとも一つの電子制御ユニットを備え、一次車軸に対して設けられた第一の電気駆動モータ(一次原動機)を備え、さらに、二次車軸に対して設けられた第二の電気駆動モータ(二次原動機)を備えた、車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置が既に述べられている。この制御ユニットは、運転者の定める動的(ダイナミック)な走行態様(運転スタイル)が、運転者リクエスト勾配に基づいて検知されると、一次原動機が作動し且つ二次原動機が停止している(単軸の)動作態様の間、予め設定された時間枠で、新たな運転者リクエストにより予め設定される総目標トルクの推移が割り出される構成のダイナミック機能モジュールを内蔵している。これは、たとえ予め設定された総目標トルクの推移が一次原動機の最大限可能なトルクを下回る場合でも、同じく予め設定された車軸配分係数に従って、一次原動機の目標トルクを低下させるとともに、二次原動機の目標トルクを起動し且つ増加させることにより調整される。
【0025】
運転者の定める動的な走行態様は、実際の運転者リクエスト勾配が、予め設定された閾値を超える場合に、運転者リクエスト勾配に基づいて検知されることが好ましい。
【0026】
効率の理由から、電動全輪駆動車両の場合には、できるだけ長く単軸運転(後輪駆動または前輪駆動)で走行することが合理的なこともある。好ましくも単軸運転において駆動される車軸は、一次車軸と呼ばれる。
【0027】
動的(ダイナミック)な(“非定常的な”)走行態様(運転スタイル)の場合には、車両のスポーティな出力(パフォーマンス)応答(“レスポンス(Response)”または“パンチ(Punch)”とも呼ばれる。)を生み出すために、出力の理由で、第二の車軸(二次車軸)を追加で起動することが合理的である。動的な走行態様は、特に、(“チップイン”とも呼ばれる)急勾配のアクセルペダル操作に基づいて検知される。
【0028】
特に、チップイン検知後、予め設定された車軸配分係数を用いて、総目標トルクが、両方の電気モータにより両方の車軸に設定される。このとき、一次原動機の目標トルクは、引き下げられ、二次原動機の目標トルクは引き上げられる。
【0029】
本発明により、今や、総トルクの設定だけが最優先事項に含まれるのではなく、効率、出力および快適性に関して車軸トルクの最適な配分も考慮される。
【0030】
以下の実施例において図面に基づいて本発明の詳細を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による回転トルク制限機能にとって本質的な構成要素を備えた本発明による車道連結型の電気全輪駆動車の概略図である。
【
図2】本発明による制御装置を用いない場合の“フェーダ(Fader)”の技術的問題のグラフを表す図である。
【
図3】“フェーダ”を用いない場合の
図2に示された問題の本発明による可能な解決手段のグラフを表す図である。
【
図4】回転トルク制限モジュールの機能の仕方を数学的に概略的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1には、単軸運転において、例えば一次車軸としてのリアアクスルPAに駆動原動機として作用する一次原動機としての第一の電気モータ1を備え、二軸運転において、二次車軸としてのフロントアクスルSAに駆動原動機として作用する二次原動機としての第二の電気モータ2を備えた、いわゆる車道連結型の全輪駆動車両が示されている。電気モータ1,2は、電気的機械または電気機械とも称する。両方の電気機械の総出力若しくは総回転トルク(M_soll_ges=M_soll_1+M_soll_2)は、フィルタ処理された運転者リクエスト信号FP_intにより予め設定され、高電圧貯蔵装置HVの最大可能出力により制限される:M_HV=M_soll_ges_grenz。
【0033】
一次原動機1は、メカトロニクス的につながった専用のサブ制御ユニット4を備えていてもよく、二次原動機2は、メカトロニクス的につながった専用のサブ制御ユニット5を備えていてもよい。両方のサブ制御ユニット4,5は、中央電子制御ユニット3に接続されている。
【0034】
電気全輪駆動車両の動作を制御する方法は、中央電子制御ユニット3により実行され、中央電子制御ユニット3は、プラグラム可能な相応の機能モジュール6並びに必要なセンサ、アクチュエータへの接続部および/またはオプションのサブ制御ユニット4,5への接続部を備えている。本発明により、制御ユニット3には、例えば、ソフトウェア・プログラム(コンピュータプログラム製品)の形態の勾配制限機能モジュール6が内蔵されており、その設計および機能の仕方については、特に、
図3,4についての記述において詳細に説明する。
【0035】
図2(
図3に代わるものでもある)は、x軸に時間tが、y軸にトルクM(回転トルク)がプロットされたグラフを示している。細い実線は、フィルタ処理された総計目標トルクM_FP_intの形態の運転者リクエスト信号の考えられ得る推移の一例を示している。
【0036】
時刻t1では、“パンチ(Punch)”が最大の、素早い“チップイン(Tip-in)”の形での運転者リクエスト信号FP_intが-つまり、アクセルペダルFPを介した運転者リクエストにより予め設定される勾配の大きい動的な総目標回転トルクの増加が、記されている。従って、時刻t1において、総計目標トルクM_FP_intの急勾配により、動的な運転者リクエスト(チップイン状況)が検知される。
【0037】
このように定められた動的な運転者リクエストは、好ましくは単軸運転で、すなわち100%の全輪駆動係数AWDで、一次原動機1の回転トルクM_soll_1単独で実行されなければならない。時刻t2では、比較的ゆっくりした“チップアウト(Tip-Out)”が行われるとともに、時刻t2では、比較的ゆっくりした“チップイン”が行なわれる。
【0038】
領域B1,B2,B3では、単軸運転から、全輪駆動係数AWDが50%に予め設定された二軸運転へと移行するときに、それぞれフェード機能Fが働く。
【0039】
図2に示されているように、本発明によるデジタル式の勾配制限機能モジュール6がなければ、先に示した欠点が顕わになると考えられる。例えば、一次原動機1の回転トルクM_soll_1の勾配は、領域B1では、フェード機能Fによる全輪駆動係数AWDの増加と、運転者リクエスト信号FP_intが増えることによる総目標回転トルクM_FP_int(“総計運転者リクエスト”)の増加に伴い、運転者リクエスト信号の勾配よりもさらに急になるであろう。同様に、一次原動機1の回転トルクM_soll_1の勾配は、領域B2では、フェード機能Fによる全輪駆動係数AWDの減少と、運転者リクエスト信号FP_intが下がることによる総目標回転トルクM_FP_int(“総計運転者リクエスト”)の減少に伴い、運転者リクエスト信号の勾配よりもさらに急になるであろう。さらに、一次原動機1の回転トルクM_soll_1の勾配は、領域B3では、フェード機能Fによる全輪駆動係数AWDの増加と、総目標回転トルクM_FP_int(“総計運転者リクエスト”)の増加に伴い、負の回転トルクにおいて、運転者リクエスト信号の勾配若しくは推移に対して逆らう形になるだろう。最後に、領域B1,B2,B3におけるフェード機能Fの継続時間は、異なるか或いは未定の長さとなるため、運転者を苛立たせることになるかもしれない。
【0040】
図3において、本発明に本質的な勾配制限モジュール6をより詳しく説明する。
【0041】
本発明により勾配制限モジュール6を適切に設計若しくはプログラムすることにより、トルク勾配制限機能は、以下のように実施することができる。
【0042】
例えば“チップイン”検知の際など、運転者リクエスト信号FP_int若しくは総計運転者リクエストM_FP_intが定められることで、目標全輪駆動係数AWDが変化する場合に、第一に、新たな目標全輪駆動係数AWDが跳躍的に(フェーダFなしに)事前設定される。第二に、その後に続く全輪駆動係数調整の中で、運転者リクエスト信号FP_int若しくは総計運転者リクエストM_FP_intの勾配が、一次原動機1の回転トルクM_soll_1の最大限許容可能な調整のための勾配の限界(勾配制限)をなす。一次原動機1について、M_soll_1_rohにより、また、二次原動機2について、M_soll_2_rohにより示されているような、無制限の個別の回転トルクのジャンプは、防止されることになる。
【0043】
一次原動機1の回転トルクM_soll_1は、一次原動機1の回転トルクM_soll_1を調整する勾配の傾向が、目標全輪駆動係数AWDの変更により運転者リクエスト信号FP_int若しくは総計運転者リクエストM_FP_intの勾配の傾向に逆らう形で推移しないように制御される。
【0044】
一次原動機1の回転トルクM_soll_1の調整に対して勾配制限モジュール6の制限が働くときに、二次原動機2の回転トルクM_soll_2は一定に保たれる。
【0045】
運転者リクエスト信号FP_intが一定の場合、一次原動機1の回転トルクM_soll_1および/または二次原動機2の回転トルクM_soll_2は、運転者リクエスト信号FP_intの勾配よりも大きな勾配で調整できる。
【0046】
回転トルクが負の領域では、目標全輪駆動係数AWDが増加するとき、一次原動機1の回転トルクM_soll_1は、新たな目標全輪駆動係数AWDに達するように二次原動機2の負の回転トルクが引き上げられるまで一定に保たれる。
【0047】
図4に基づいて、モジュール6の機能の仕方をもう一度数学的に説明するが、項目立てて再び言い換えながら本発明の一般的な例を挙げる。このとき、目標全輪駆動係数は、略して“AWD係数”と、一次原動機の回転トルクは、略して“一次軸”と、二次原動機の回転トルクは、略して“二次軸”と呼ぶことにする。
【0048】
ケース1:運転者リクエスト勾配M_FP_int/dt=0(恒常運転),AWD係数が1から0.5に変化。
=>AWD係数に従った配分が達成されるまで、一次軸は、-20RadNm/タスクで下に、二次軸は、それに対応して+20RadNm/タスクで上に向かう。
【0049】
ケース2:運転者リクエスト勾配M_FP_int/dt>20RadNm(チップイン)AWD係数が1から0.5に変化。
=>一次軸は、勾配として0RadNm/タスクで一定に留まる。
=>二次軸は、運転者リクエスト勾配で立ち上がる。
=>AWD係数に従った配分が達成されたら、両軸は、因子に分けられた運転者リクエスト勾配で、AWD係数が掛け合わされて変化し続ける。
【0050】
ケース3:運転者リクエスト勾配M_FP_int/dt<-20RadNm/タスクおよびAWD係数が0.5から1に変化。
=>一次軸は、勾配が負の場合、上に行かなければならないかもしれないので、一次軸はそのままでいる。
=>二次軸は、運転者リクエスト勾配により、二次軸が0Nmになる(配分=1を達成する)までトルクを解消する。
=>その後、一次軸は、100%総運転者リクエストに従う。
【国際調査報告】