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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】フローセル及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240426BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240426BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240426BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
C08J7/04 Z
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563203
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022060972
(87)【国際公開番号】W WO2022229137
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/182,370
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ,ウェイン エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,アンドリュー エイ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4F006
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB20
4B029CC01
4B029GA03
4B029GB04
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR62
4B063QS40
4F006AA00
4F006AB24
4F006CA09
4F006DA04
(57)【要約】
フローセルの一例は、基材と、基材の表面の少なくとも一部分上の2つの異なるシランのパターンと、を含む。第1のポリマーは、2つの異なるシランのうちの第1のシランに付着され、第2のポリマーは、2つの異なるシランのうちの第2のシランに付着される。第1及び第2のポリマーはそれぞれ、官能基対の第1の官能基及び第2の官能基を含み、官能基対は、活性化エステル官能基及びアジド官能基と、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基と、テトラジン官能基及びアジド官能基とからなる群から選択される。第1のプライマーセットは、第1のポリマーにグラフト化され、第2のプライマーセットは、第2のポリマーにグラフト化される。第1及び第2のプライマーセットは異なる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローセルであって、
基材と、
前記基材の表面の少なくとも一部分上の2つの異なるシランのパターンと、
前記2つの異なるシランのうちの第1のシランに付着した第1のポリマーと、
前記2つの異なるシランのうちの第2のシランに付着した第2のポリマーであって、前記第1及び第2のポリマーがそれぞれ、官能基対の第1の官能基及び第2の官能基を含み、前記官能基対が、活性化エステル官能基及びアジド官能基と、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基と、テトラジン官能基及びアジド官能基とからなる群から選択される、第2のポリマーと、
前記第1のポリマーにグラフト化された第1のプライマーセットと、
前記第2のポリマーにグラフト化された第2のプライマーセットと、を含み、前記第1及び第2のプライマーセットが異なる、フローセル。
【請求項2】
前記第1のポリマーが、第1のホモポリマーであり、前記第1の官能基が、前記活性化エステル官能基であり、
前記第2のポリマーが、第2のホモポリマーであり、前記第2の官能基が、前記アジド官能基である、請求項1に記載のフローセル。
【請求項3】
前記第1のポリマーが、第1のホモポリマーであり、前記第1の官能基が、前記テトラジン官能基であり、
前記第2のポリマーが、第2のホモポリマーであり、前記第2の官能基が、前記活性化エステル官能基である、請求項1に記載のフローセル。
【請求項4】
前記第1のポリマーが、第1のホモポリマーであり、前記第1の官能基が、前記テトラジン官能基であり、
前記第2のポリマーが、第2のホモポリマーであり、前記第2の官能基が、前記アジド官能基である、請求項1に記載のフローセル。
【請求項5】
前記第1のポリマーが、第1のコポリマーであり、前記第1の官能基が、前記テトラジン官能基であり、前記第1のコポリマーが、アジドを含む追加の官能基を更に含み、
前記第2のポリマーが、第2のコポリマーであり、前記第2の官能基が、前記活性化エステル官能基であり、前記第2のコポリマーが、ヨウ化アリールを含む追加の官能基を更に含む、請求項1に記載のフローセル。
【請求項6】
前記第1のポリマーが、第1のコポリマーであり、前記第1の官能基が、前記アジド官能基であり、前記第1のコポリマーが、アクリルアミドを含む追加の官能基を更に含み、
前記第2のポリマーが、第2のコポリマーであり、前記第2の官能基が、前記活性化エステル官能基であり、前記第2のコポリマーが、アクリルアミドを含む追加の官能基を更に含む、請求項1に記載のフローセル。
【請求項7】
前記第1のポリマーが、第1のターポリマーであり、前記第1の官能基が、前記テトラジン官能基であり、前記第1のターポリマーが、アジドとアクリルアミドとを含む2つの追加の官能基を更に含み、
前記第2のポリマーが、第2のターポリマーであり、前記第2の官能基が、前記活性化エステル官能基であり、前記第2のターポリマーが、ヨウ化アリールとアクリルアミドとを含む2つの追加の官能基を含む、請求項1に記載のフローセル。
【請求項8】
前記2つの異なるシランが、アミノシラン及びアルキニルシランと、ノルボルネンシラン及びアミノシランと、ノルボルネンシラン及びアルキニルシランとからなる群から選択される、請求項1に記載のフローセル。
【請求項9】
方法であって、
基材の表面の少なくとも一部分上に2つの異なるシランのパターンを生成することと、
第1及び第2のポリマーを同時に堆積させることであって、それによって、前記第1のポリマーが、前記2つの異なるシランのうちの第1のシランに付着し、前記第2のポリマーが、前記2つの異なるシランのうちの第2のシランに付着する、堆積させることと、
第1のプライマーセットを前記第1のポリマーに、及び第2のプライマーセットを前記第2のポリマーに同時にグラフト化することと、を含み、前記第1及び第2のプライマーセットが異なる、方法。
【請求項10】
前記2つの異なるシランの前記パターンを生成することが、
前記基材の前記表面の前記少なくとも一部分の上に前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランを堆積させることと、
前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランの上にフォトレジストを塗布することと、
前記フォトレジストを現像して、前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランの曝露部分と、前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランの被覆部分とを含むパターンを画定することと、
前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランの前記曝露部分の官能基を変換して、前記2つの異なるシランのうちの前記第2のシランを形成することと、
前記フォトレジストを除去することと、を伴う、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記2つの異なるシランの前記パターンを生成することが、
前記基材の前記表面の前記少なくとも一部分の上に前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランを堆積させることと、
前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランの上にフォトレジストを塗布することと、
前記フォトレジストを現像して、前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランの曝露部分と、前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランの被覆部分とを含むパターンを画定することと、
前記2つの異なるシランのうちの前記第1のシランの前記曝露部分を除去して、対応する曝露基材部分を露呈させることと、
前記対応する曝露基材部分の上に前記2つの異なるシランのうちの前記第2のシランを堆積させることと、
前記フォトレジストを除去することと、を伴う、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2のポリマーがそれぞれ、官能基対の第1の官能基及び第2の官能基を含むように、前記第1及び第2のポリマーを合成することを更に含み、前記官能基対が、活性化エステル官能基及びアジド官能基と、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基と、テトラジン官能基及びアジド官能基とからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記合成が、可逆的付加開裂連鎖移動重合を伴う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記活性化エステル官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、前記第1のモノマーが、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレート、及びビニルジメチルアズラクトンからなる群から選択され、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記アジド官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、前記第2のモノマーが、構造I:
【化1】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【化2】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記第1のモノマーと、構造III:
【化3】
であって、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される、構造IIIを有する第1のアクリルアミドモノマーとの重合を伴い、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記第2のモノマーと、構造III’:
【化4】
であって、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される、構造III’を有する第2のアクリルアミドモノマーとの重合を伴い、
前記第1及び第2のアクリルアミドモノマーが、同じであるか、又は異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、前記第1のモノマーが、構造IV:
【化5】
であって、式中、RがH又はメチルである、構造IV、及び構造V:
【化6】
からなる群から選択され、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記活性化エステル官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、前記第2のモノマーが、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレート、及びビニルジメチルアズラクトンからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記第1のモノマーと、構造I:
【化7】
を有する第1の追加のモノマーとの重合を伴い、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【化8】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環であり、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記第2のモノマーと第2の追加のモノマーとの重合を伴い、前記第2の追加のモノマーが、ヨウ化アリールを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記第1のモノマーと、第1の追加のモノマーと、第2の追加のモノマーとの重合を伴い、前記第1の追加のモノマーが、構造I:
【化9】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【化10】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環であり、前記第2の追加のモノマーが、構造III:
【化11】
を有し、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択され、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記第2のモノマーと、第3の追加のモノマーと、第4の追加のモノマーとの重合を伴い、前記第3の追加のモノマーが、ヨウ化アリールを含み、前記第4の追加のモノマーが、構造III’:
【化12】
を有し、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択され、
前記第2の追加のモノマー及び前記第4の追加のモノマーが、同じであるか、又は異なる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、前記第1のモノマーが、構造IV:
【化13】
であって、式中、RがH又はメチルである、構造IV、及び構造V:
【化14】
からなる群から選択され、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記アジド官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、前記第2のモノマーが、構造I:
【化15】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【化16】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のポリマーの前記合成が、
活性化エステル又はアミン官能基を含む第1のモノマーを重合することと、
前記活性化エステル又は前記アミン官能基を前記テトラジン官能基で置換することと、を伴う、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
方法であって、
第1のプライマーセットを第1のポリマーにグラフト化して、第1の予めグラフト化したポリマーを生成することと、
第2のプライマーセットを第2のポリマーにグラフト化して、第2の予めグラフト化したポリマーを生成することであって、前記第1のプライマーセットが、前記第2のプライマーセットとは異なり、前記第1のポリマーが、前記第2のポリマーとは異なる、生成することと、
基材の表面の少なくとも一部分上に2つの異なるシランのパターンを生成することと、
前記第1及び第2の予めグラフト化したポリマーを堆積させることであって、それよって、前記第1の予めグラフト化したポリマーが、前記2つの異なるシランのうちの第1のシランに付着し、前記第2の予めグラフト化したポリマーが、前記2つの異なるシランのうちの第2のシランに付着する、堆積させることと、を含む、方法。
【請求項22】
前記第1及び第2の予めグラフト化したポリマーが、同時に堆積される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1及び第2の予めグラフト化したポリマーが、順次堆積される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1のプライマーセットをグラフト化する前及び前記第2のプライマーセットをグラフト化する前に、前記第1及び第2のポリマーがそれぞれ、官能基対の第1の官能基及び第2の官能基を含むように、前記第1及び第2のポリマーを合成することを更に含み、前記官能基対が、活性化エステル官能基及びアジド官能基と、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基と、テトラジン官能基及びアジド官能基とからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記合成が、可逆的付加開裂連鎖移動重合を伴う、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記活性化エステル官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、前記第1のモノマーが、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレート、及びビニルジメチルアズラクトンからなる群から選択され、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記アジド官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、前記第2のモノマーが、構造I:
【化17】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【化18】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記第1のモノマーと、構造III:
【化19】
であって、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される、構造IIIを有する第1のアクリルアミドモノマーとの重合を伴い、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記第2のモノマーと、構造III’:
【化20】
であって、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される、構造III’を有する第2のアクリルアミドモノマーとの重合を伴い、
前記第1及び第2のアクリルアミドモノマーが、同じであるか、又は異なる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、前記第1のモノマーが、構造IV:
【化21】
であって、式中、RがH又はメチルである、構造IV、及び構造V:
【化22】
からなる群から選択され、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記活性化エステル官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、前記第2のモノマーが、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレート、及びビニルジメチルアズラクトンからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記第1のモノマーと、構造I:
【化23】
を有する第1の追加のモノマーとの重合を伴い、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【化24】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環であり、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記第2のモノマーと第2の追加のモノマーとの重合を伴い、前記第2の追加のモノマーが、ヨウ化アリールを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記第1のモノマーと、第1の追加のモノマーと、第2の追加のモノマーとの重合を伴い、前記第1の追加のモノマーが、構造I:
【化25】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【化26】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環であり、前記第2の追加のモノマーが、構造III:
【化27】
を有し、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択され、
前記第2のポリマーの前記合成が、前記第2のモノマーと、第3の追加のモノマーと、第4の追加のモノマーとの重合を伴い、前記第3の追加のモノマーが、ヨウ化アリールを含み、前記第4の追加のモノマーが、構造III’:
【化28】
を有し、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択され、
前記第2の追加のモノマー及び前記第4の追加のモノマーが、同じであるか、又は異なる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のポリマーの前記合成が、前記テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、前記第1のモノマーが、構造IV:
【化29】
であって、式中、RがH又はメチルである、構造IV、及び構造V:
【化30】
からなる群から選択され、
前記第2のポリマーの前記合成が、構造I:
【化31】
を有する第2のモノマーの重合を伴い、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【化32】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びに前記鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記第1のポリマーの前記合成が、
活性化エステル又はアミン官能基を含む第1のモノマーを重合することと、
前記活性化エステル又は前記アミン官能基を前記テトラジン官能基で置換することと、を伴う、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月30日に出願された米国特許仮出願第63/182,370号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表の参照)
EFS-Webを介して提出された配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ファイルの名称はILI214BPCT_IP-2090-PCT_Sequence_Listing_ST25.txtであり、ファイルサイズは3,011バイトであり、ファイル作成日は2022年4月12日である。
【背景技術】
【0003】
ポリマー又はヒドロゲルでコーティングされた基材は、多くの技術用途で使用されている。一例では、埋め込み可能な医療用デバイスを、生物学的に不活性なポリマーでコーティングすることができる。別の例では、創傷ドレッシング材を、薄いヒドロゲル層でコーティングしてもよい。更に別の例では、ポリマー又はヒドロゲルでコーティングされた基材を、生体分子の調製及び/又は分析に使用することができる。特定の核酸配列決定方法などのいくつかの分子分析は、核酸鎖をポリマー又はヒドロゲルでコーティングされた基材表面に付着させることを含む。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示されるのは、基材と、基材を横切るパターンの直交ポリマーと、を含むフローセルである。本明細書中で使用される場合、「直交ポリマー」という用語は、2つの異なるポリマーを指し、その各々は、基材への付着のため、及び異なるプライマーセットへの付着のための異なる官能基を有する。したがって、ポリマーは、直交官能基を有する。いくつかの例では、各ポリマーは、基材及びプライマーセットの両方の付着が可能な異なるタイプの官能基を有する。他の事例では、各ポリマーは、少なくとも2つの異なるタイプの官能基を有し、そのうちの1つは、基材付着が可能であり、別の1つは、プライマーセット付着が可能である。ポリマーの直交は、ポリマー合成中に制御することができ、したがって、特定のフローセル用途のためにポリマーを設計することが可能になる。その上、ポリマーの直交性により、異なるポリマーを同時に、かつ基材全体にわたって所望のパターンで塗布することが可能になる。同時塗布は、フローセル製造におけるより合理化されたワークフローをもたらし得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかになろう。図面において、同様の参照番号は、類似なものではあるが、おそらく同一ではない構成要素に対応している。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号又は特徴は、それらが現れる他の図面と関連させて記載されてもよく、記載されなくてもよい。
図1】直交ポリマー及び直交ポリマーにそれぞれ付着した異なるプライマーセットの一例の概略図であり、異なるプライマーセットは、2つの異なる鋳型鎖が増幅され、隣接する直交ポリマー上にクラスター化されることを可能にする。
図2A】直交ポリマーに付着した第1及び第2のプライマーセットの異なる例の概略図であり、異なるプライマーセットは、隣接する直交ポリマー上での順方向鎖及び逆方向鎖の生成を可能にする。
図2B】直交ポリマーに付着した第1及び第2のプライマーセットの異なる例の概略図であり、異なるプライマーセットは、隣接する直交ポリマー上での順方向鎖及び逆方向鎖の生成を可能にする。
図2C】直交ポリマーに付着した第1及び第2のプライマーセットの異なる例の概略図であり、異なるプライマーセットは、隣接する直交ポリマー上での順方向鎖及び逆方向鎖の生成を可能にする。
図2D】直交ポリマーに付着した第1及び第2のプライマーセットの異なる例の概略図であり、異なるプライマーセットは、隣接する直交ポリマー上での順方向鎖及び逆方向鎖の生成を可能にする。
図3A】フローセルの一例の上面図である。
図3B】フローセルのフローチャネル内の凹部と凹部内の直交ポリマーとの異なる例を描写する拡大上面図である。
図3C】フローセルのフローチャネル内の凹部と凹部内の直交ポリマーとの異なる例を描写する拡大上面図である。
図4】A~Hは、本明細書に開示されるフローセルの一例を作製するための方法の一例を一緒に図示する概略図である。
図5】A~Hは、本明細書に開示されるフローセルの一例を作製するための方法の別の例を一緒に図示する概略図である。
図6】本明細書で開示するフローセルの例を作製するための方法の別の例を図示するフロー図である。
図7】本明細書に開示される2つの例示的なポリマーを使用するCal Fluor Red(CFR)アッセイの結果を描写するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に開示されるフローセルの例は、基材表面上にパターン化された直交ポリマーを含む。直交ポリマーは、直交官能基、例えば、基材表面への付着のため、及び異なるプライマーセットへの付着のための異なる官能基を有する。異なる基材付着機構は、ポリマーが基材表面上に所望のパターンで同時に塗布され付着されることを可能にする。異なるプライマーセット付着機構は、異なるプライマーセットが基材表面にわたって異なる位置に付着されるので、フローセルの配列決定能力を拡張する。これにより、ペアエンド配列決定を同時に行うことができる。なお更に、各ポリマーの官能性は、その合成の間に制御可能であり、これは、最終ポリマーが、複数の標的化された官能性及びダイヤルインされた官能性を有することを可能にする。
【0007】
定義
本明細書で使用される用語は、別段の指定がない限り、関連する技術分野における通常の意味を取るものと理解されたい。本明細書で使用されるいくつかの用語及びそれらの意味は、以下に記載される。
【0008】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0009】
含む(comprising)、含む(including)、含有する(containing)という用語、及びこれらの用語の様々な形態は、互いに同義であり、等しく広義であることを意味する。
【0010】
フローセル及び/又はフローセルの様々な構成要素を説明するために、本明細書では、上(top)、下(bottom)、下方(lower)、上方(upper)、上(on)などの用語が使用される。これらの方向を示す用語は、特定の配向を示すことを意味するものではなく、構成要素間の相対的な配向を指定するために使用されることを理解されたい。方向を示す用語の使用は、本明細書に開示される例を任意の特定の配向に制限すると解釈されるものではない。
【0011】
第1、第2などの用語はまた、特定の配向又は順序を示すことを意味するものではなく、むしろ1つの構成要素を別の構成要素から区別するために使用される。
【0012】
本明細書に提供される範囲は、そのような値又は部分範囲が明示的に列挙されているかのように、示される範囲及びその示される範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことを理解されたい。例えば、約400nm~約1μm(1000nm)の範囲は、約400nm~約1μmの明示的に引用された制限を含むだけでなく、個別の値、例えば約708nm、約945.5nmなど、及び部分範囲、例えば約425nm~約825nm、約550nm~約940nmなどもまた含むと解釈されなければならない。更に、「約」及び/又は「実質的に」が値を説明するために使用される場合、これらは、記載した値の微小な変化(最大±10%)を包含することを意味する。
【0013】
「アクリルアミド」は、構造:
【0014】
【化1】
を有する官能基であり、式中、各Hは、代替的に、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体であってもよい。
【0015】
「活性化エステル」という用語は、求核攻撃に対して非常に感受性であるエステル官能基を指す。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合又は三重結合を含有しない)直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。例として、表記「C1~C6アルキル」は、アルキル鎖に1~6個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、及びヘキシルからなる群から選択されることを示す。
【0017】
本明細書に使用されるとき、「アルキルアミノ」は、水素原子のうちの1つ以上がアミノ基で置換されているアルキル基を指し、アミノ基は、-NR基を指し、R及びRは、それぞれ独立して、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C7炭素環、C6~C10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び5~10員複素環から選択される。
【0018】
本明細書に使用されるとき、「アルキルアミド」は、水素原子のうちの1つ以上が、C-アミド基又はN-アミド基で置換されているアルキル基を指す。「C-アミド」基は、「-C(=O)N(R)」基を指し、式中、R及びRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環(heteroalicycle)、アラルキル、又は(ヘテロ脂環式)アルキルからなる群から選択され得る。「N-アミド」基は、「RC(=O)N(R)-」基を指し、式中、R及びRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環(heteroalicycle)、アラルキル、又は(ヘテロ脂環式)アルキルからなる群から選択され得る。任意のアルキルアミドは、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。
【0019】
本明細書に使用されるとき、「アルキルチオ」は、RS-を指し、式中、Rは、アルキルである。アルキルチオは、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「アルケン」又は「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「アルキン」又は「アルキニル」は、1つ以上の三重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。
【0022】
本明細書に使用されるとき、「アラルキル」及び「アリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して置換基として結合されたアリール基を指す。アラルキルの低級アルキレン基及びアリール基は、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。例としては、ベンジル、2-フェニルアルキル、3-フェニルアルキル、及びナフチルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「アリール」という用語は、環骨格中に炭素のみを含有する芳香族環又は環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。アリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有し得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、及びアントラセニルが挙げられる。任意のアリールは、環骨格中に、少なくとも1つのヘテロ原子、すなわち、炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄など)を有するヘテロアリールであってもよい。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「付着した(attached)」という用語は、2つのものが、直接的又は間接的のいずれかで、互いに、接合、締結、接着、接続、又は結合されている状態を指す。例えば、核酸は、共有結合又は非共有結合によって官能化ポリマーに付着され得る。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる。非共有結合は、電子対の共有を伴わない物理結合であり、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用、及び疎水性相互作用を挙げることができる。
【0025】
「アジド(azide)」又は「アジド(azido)」官能基は、-Nを指す。
【0026】
「ブロックコポリマー」は、2つ以上のモノマーが一緒にクラスター化し、繰り返し単位のブロックを形成する場合に形成されるコポリマーである。各ブロックは、隣接するブロックには存在しない少なくとも1つの官能基を有し得る。ブロックコポリマーの具体的な例は、以下に更に説明される。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「炭素環」は、環系骨格に炭素原子のみを含有する非芳香族環式環又は環系を意味する。炭素環が環系である場合、2つ以上の環が、縮合、架橋、又はスピロ結合方式で一緒に接合され得る。炭素環は、環系内の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有し得る。したがって、炭素環には、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びシクロアルキニルが含まれる。炭素環基は、3~20個の炭素原子を有し得る。炭素環式環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、及びスピロ[4.4]ノナニルが挙げられる。炭素環のいずれかは、環骨格に少なくとも1つのヘテロ原子を有する複素環であってもよい。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」は、完全に飽和した(二重結合又は三重結合がない)単環式又は多環式炭化水素環系を指す。2つ以上の環から構成される場合、環は、縮合方式で一緒に接合され得る。シクロアルキル基は、環内に3~10個の原子を含有し得る。いくつかの例では、シクロアルキル基は、環(複数可)内に3~8個の原子を含有し得る。シクロアルキル基は、非置換であってもよく、又は置換されていてもよい。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルケニル」又は「シクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。例としては、シクロヘキセニル又はシクロヘキセン及びノルボルネニル又はノルボルネンが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキニル」又は「シクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。ある例は、シクロオクチンである。別の例は、ビクロノニンである。更に別の例は、ジベンゾシクロオクチン(dibenzocyclooctyne、DBCO)である。
【0031】
本明細書に使用されるとき、「樹状剤」は、多分岐ポリマーの中心を指す。樹状剤は、分岐を有する合成ポリマーであり、いくつかの場合には、木のような構造である。樹状剤は、2つのアーム(分岐)から30個のアームまでのいずれを有してもよい。樹状剤は、中心分子/化合物と、中心分子/化合物から延在するアーム(又は分岐)と、を含み、各アームは、各アーム内に開始剤を含む。例えば、樹状RAFT剤は、中心分子/化合物と、中心分子/化合物から延在するアーム(又は分岐)と、を含み、各アームは、その末端又はその近傍にチオカルボニルチオ基を含む。いくつかの例では、樹状RAFT剤は、2つのアーム(線状である)、3つのアーム、4つのアーム、6つのアーム、又は8つのアームを有する。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「堆積」という用語は、手作業であっても自動であってもよく、いくつかの場合では表面特性の改質をもたらす、任意の好適な適用技術を指す。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用して実行され得る。いくつかの特定の例としては、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、液滴分配(puddle dispensing)、フロースルーコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0033】
本明細書に使用されるとき、「凹部」という用語は、パターン化された基材又はパターン化された樹脂の間隙領域によって少なくとも部分的に包囲される表面開口部を有する、基材又はパターン化された樹脂における不連続の凹状の特徴を指す。凹部は、表面の開口部において、例として、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を有する)などの、様々な形状を取ることができる。表面と直交するように取られた凹部の断面は、湾曲形状、正方形、多角形、双曲線、円錐、角のある形状などであることができる。例として、凹部は、ウェル又は2つの相互接続されたウェルであり得る。凹部はまた、尾根、階段状の特徴など、より複雑な構造を有し得る。
【0034】
「各々」という用語は、項目の集合を参照して使用されるとき、集合内の個々の項目を識別することを意図しているが、必ずしも集合内の全ての項目を指すものではない。明示的な開示又は文脈がそうでないことを明確に指示する場合、例外が生じ得る。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「フローセル」という用語は、反応を行うことができるフローチャネル、試薬をフローチャネルに送達するための入口、及びフローチャネルから試薬(試薬)を除去するための出口を有する容器を意味することを意図する。いくつかの例では、フローセルは、チャンバ内で発生する反応の検出を可能にする。例えば、フローセルは、フローチャネル内でアレイ、光学的標識分子などの光学的検出を可能にする1つ以上の透明な表面を含み得る。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「フローチャネル」又は「チャネル」は、液体サンプルを選択的に受容することができる、2つの結合された構成要素間に画定される領域であり得る。いくつかの例では、フローチャネルは、パターン化された基材と蓋との間に画定されてもよく、したがって、パターン化された基材、又は例えば、パターン化された基材のパターン化された樹脂内に画定された1つ以上の凹部と流体連通してもよい。フローチャネルはまた、一緒に結合されている2つのパターン化された基材表面の間に画定されてもよい。
【0037】
「官能基対」は、構造及びそれらの化学官能性が異なる2つの官能基を指す。異なる官能基は、対が、異なるシラン及び/又は異なるプライマーセット(例えば、異なる末端基を有するプライマーセット)にそれぞれ付着することを可能にする。異なる官能基は、直交ポリマーが同時に塗布されることを部分的に可能にするので、対とみなされ得る。
【0038】
本明細書に使用されるとき、「ヘテロ脂環式」又は「ヘテロ脂環」は、3員、4員、5員、6員、7員、8員、9員、10員、最大18員の単環式、二環式、及び三環式環系を指し、炭素原子は、1~5個のヘテロ原子と一緒になってこの環系を構成する。ヘテロ脂環式環系は、しかしながら、完全に非局在化されたパイ電子系が全ての環全体にわたって起こらないような様式で位置する1つ以上の不飽和結合を、任意選択で含有してもよい。ヘテロ原子は、独立して、酸素、硫黄、及び窒素から選択される。ヘテロ脂環式環系は、その定義がラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、及び環状カルバメートなどのオキソ系及びチオ系を含めるように、1つ以上のカルボニル又はチオカルボニル官能基を更に含有してもよい。環は、縮合方式で一緒に接合されてもよい。更に、ヘテロ脂環式における任意の窒素を四級化してもよい。ヘテロ脂環又はヘテロ脂環式基は、非置換であってもよく、又は置換されていてもよい。このような「ヘテロ脂環式」又は「ヘテロ脂環」基の例としては、1,3-ジオキシン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,2-ジオキソラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,3-オキサチオラン、1,3-ジチオール、1,3-ジチオラン、1,4-オキサチアン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、モルホリン、オキシラン、ピペリジンN-オキシド、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、4-ピペリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、2-オキソピロリジン、テトラヒドロピラン、4H-ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルホリン、チアモルホリンスルホキシド、チアモルホリンスルホン、及びそれらのベンゾ縮合類似体(例えば、ベンズイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、3,4-メチレンジオキシフェニル)が挙げられる。
【0039】
「(ヘテロ脂環式)アルキル」は、低級アルキレン基を介して置換基として結合された複素環式又はヘテロ脂環式基を指す。(ヘテロ脂環式)アルキルの低級アルキレン及び複素環、又は複素環は、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。例としては、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル、(ピペリジン-4-イル)エチル、(ピペリジン-4-イル)プロピル、(テトラヒドロ-2H-チオピラン-4-イル)メチル、及び(1,3-チアジナン-4-イル)メチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0041】
「グリコール」という用語は、末端基-(CHOHを指し、式中、nは、2~10の範囲である。特定の例として、グリコールは、エチレングリコール末端基-CHCHOH、プロピレングリコール末端基-CHCHCHOH、又はブチレングリコール末端基-CHCHCHCHOHであり得る。
【0042】
本明細書に使用されるとき、「間隙領域」という用語は、凹部を分離する領域、例えば、パターン化された基材、パターン化された樹脂、又は他の支持体の領域を指す。例えば、間隙領域は、アレイの1つの凹部を、アレイの別の凹部から分離することができる。互いに分離された2つの凹部は、別個であってもよい、すなわち、互いとの物理的な接触が欠如していてもよい。多くの例では、間隙領域は、連続的であるが、凹部は、例えば、それ以外は連続的である表面に画定される複数の凹部の場合のように、不連続である。他の例では、間隙領域及び特徴部は、例えば、それぞれの間隙領域によって分離される複数のトレンチの場合のように、不連続である。間隙領域によって提供される分離は、部分的又は完全な分離であり得る。間隙領域は、表面に画定される凹部の表面材料とは異なる表面材料を有してもよい。例えば、凹部は、その中に直交ポリマー及び2つの異なるプライマーセットを有することができ、間隙領域は、直交ポリマー及びプライマーセットを含まないことができる。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「ネガティブフォトレジスト」は、特定の波長の光に曝露される部分が現像液に不溶性になる感光性材料を指す。これらの例では、不溶性のネガティブフォトレジストは、現像液中で5%未満の溶解度を有する。ネガティブフォトレジストでは、光曝露は、材料の曝露部分が現像液中で(非曝露部分よりも)溶解度が低くなるように化学構造を変化させる。不溶性ネガティブフォトレジストは、現像液に可溶性ではないが、現像液とは異なる除去剤中で少なくとも99%可溶であり得る。除去剤は、例えば、リフトオフプロセスにおいて使用される溶媒又は溶媒混合物であり得る。
【0044】
不溶性のネガティブフォトレジストとは対照的に、光に曝露されないネガティブフォトレジストの任意の部分は、現像液に少なくとも95%の溶解度である。いくつかの例では、光に曝露されないネガティブフォトレジストの部分は、現像液中に少なくとも98%、例えば、99%、99.5%、100%の溶解度である。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基を含む。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位である。リボ核酸(ribonucleic acid、RNA)中の場合、糖はリボースであり、デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、DNA)において、糖は、デオキシリボース、すなわち、リボースの2’位に存在するヒドロキシル基が欠如している糖である。窒素含有複素環式塩基(すなわち、核酸塩基)は、プリン塩基であってもピリミジン塩基であってもよい。プリン塩基としては、アデニン(A)及びグアニン(G)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。ピリミジン塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1又はプリンのN-9に結合される。核酸類似体は、リン酸骨格、糖、又は核酸塩基のいずれかが変化していてもよい。核酸類似体の例としては、例えば、ペプチド核酸(peptide nucleic acid、PNA)などのユニバーサル塩基又はリン酸-糖骨格類似体が挙げられる。
【0046】
「パターン化された樹脂」は、中に画定された凹部を有し得る任意のポリマーを指す。樹脂及び樹脂にパターン化するための技術の具体的な例は、本明細書で更に説明されている。
【0047】
「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーを指す。いくつかの例では、ポリマーは、線状ポリマーであり、他の例では、ポリマーは。マルチアームポリマーである。線状ポリマーは、炭素-炭素結合の全てが単一の直線に存在する鎖である。マルチアームポリマーは、そこから延在するアーム/分岐を有する中心分子/化合物を含む。2アームマルチアームポリマーも線状である。上記のように、「直交」とは、2つの異なるポリマーを指し、その各々は、基材への付着のため、及び異なるプライマーセットへの付着のための異なる官能基を有する。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「ポジティブフォトレジスト」は、特定の波長の光に曝露される部分が現像液に可溶性になる感光性材料を指す。これらの例では、光に曝露されたポジティブフォトレジストの任意の部分は、現像液中に少なくとも95%の溶解度である。いくつかの例では、光に曝露されたポジティブフォトレジストの部分は、現像液中に少なくとも98%、例えば、99%、99.5%、100%の溶解度である。ポジティブフォトレジストでは、光曝露は、材料の曝露部分が現像液中で(非曝露部分よりも)溶解度が高くなるように化学構造を変化させる。
【0049】
可溶性のポジティブフォトレジストとは対照的に、光に曝露されないポジティブフォトレジストの任意の部分は、現像液に不溶性(5%未満の溶解度)である。不溶性ポジティブフォトレジストは、現像液に可溶性ではないが、現像液とは異なる除去剤中で少なくとも99%可溶であり得る。いくつかの例では、不溶性のポジティブフォトレジストは、除去剤に少なくとも98%、例えば、99%、99.5%、100%の溶解度である。除去剤は、リフトオフプロセスにおいて使用される溶媒又は溶媒混合物であり得る。
【0050】
本明細書で使用するとき、「プライマー」という用語は、一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNA)として定義される。いくつかのプライマーは、鋳型増幅及びクラスター生成の開始点として機能するプライマーセットの一部分である。本明細書において配列決定プライマーと称される他のプライマーは、DNA合成の開始点として機能する。プライマーセットの5’末端は、直交ポリマーのうちの1つの官能基でカップリング反応を可能にするように修飾されてもよい。プライマーの長さは、任意の数の塩基の長さであることができ、様々な天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。一例では、配列決定プライマーは、10~60塩基、又は20~40塩基の範囲の短鎖である。
【0051】
「プライマーセット」という用語は、鋳型核酸鎖の増幅を一緒に可能にする一対のプライマーを指す。鋳型鎖の対向する末端は、セット中のそれぞれのプライマーにハイブリダイズするアダプターを含む。
【0052】
「基材」という用語は、フローセルの様々な構成要素(例えば、直交ポリマー、プライマーなど)を上に追加し得る構造体を指す。基材は、ウェハ、パネル、長方形シート、ダイ、又は任意の他の好適な構成であってよい。基材は、概して剛性硬質であり、水性液体に不溶性である。基材は、凹部中に存在する化学物質に対して、不活性であり得る。例えば、基材は、配列決定反応などにおいて使用されるプライマーを付着するために使用される化学物質に対して不活性であり得る。基材は、単一層構造であってもよく、又は多層構造(例えば、支持体及び支持体上のパターン化された樹脂を含む)であってもよい。好適な基材の例は、本明細書で更に説明される。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「テトラジン」及び「テトラジニル」という用語は、4つの窒素原子を含む6員のヘテロアリール基を指す。テトラジンは、任意選択的に置換され得る。
【0054】
直交ポリマー
本明細書に開示される例では、2つのポリマーがフローセル基材上で一緒に使用され、これらのポリマーは直交である。これらの直交ポリマーは、本明細書において第1のポリマー及び第2のポリマーと称される。第1及び第2のポリマーは、基材表面上の2つの異なるシランに付着することができるそれぞれの官能基を含むという点で直交である。第1及び第2のポリマーはまた、それらが異なるプライマーセットに付着し得るそれぞれの官能基を含むという点で直交である。いくつかの例では、各ポリマーは、シラン付着及びプライマーセット付着の両方が可能な異なるタイプの官能基を有する。他の事例では、各ポリマーは、少なくとも2つの異なるタイプの官能基を有し、そのうちの1つは、シラン付着が可能であり、別の1つは、プライマーセット付着が可能である。
【0055】
一般に、第1及び第2のポリマーはそれぞれ、官能基対の第1の官能基及び第2の官能基を含む。したがって、第1の官能基は、第1のポリマーの一部分であり、第2の官能基は、第2のポリマーの一部分である。例として、官能基対は、活性化エステル官能基及びアジド官能基と、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基と、テトラジン官能基及びアジド官能基とからなる群から選択される。対のそれぞれの官能基に加えて、第1及び第2のポリマーの一方又は両方が、追加の官能基を有してもよい。これらの追加の官能基は、ポリマーに追加の官能性を導入するように選択されてもよい。例えば、官能基のうち1つは、シランと反応することができ、1つ以上の他の官能基は、プライマーセットをグラフト化することができる。
【0056】
本明細書に記載される直交ポリマーの各々は、可逆的付加開裂連鎖移動(reversible addition-fragmentation chain transfer、RAFT)重合を使用して合成され得る。RAFT重合が使用され得るが、他の重合プロセスもまた使用され得ることを理解すべきである。他の好適な重合プロセスとしては、原子移動ラジカル重合(atom transfer radical polymerization、ATRP)、RAFT若しくはATRPと組み合わせたニトロキシド媒介ラジカル(nitroxide mediated radical、NMP)重合、追加の架橋工程を有するNMP、コバルト媒介重合、基移動重合(group transfer polymerization、GTP)、開環重合(ring opening polymerization、ROP)、イオン重合、又は所望の直鎖若しくはマルチアームアーキテクチャを直接若しくは間接的にもたらす任意の他の重合プロセスが挙げられる。
【0057】
これらの重合プロセスのいずれかを使用して、線状ポリマー又はマルチアームポリマーを生成することができ、所望のモノマーは、それぞれ、直鎖に沿って、又は各アームの中に取り込まれる。2アームポリマーは、2アームが延在する中心分子を有することを除いて、線状であることが理解されるべきである。これは、反復モノマー単位を有し、かつ中心分子を有さない、他の線状ポリマーとは異なる。コポリマー又はターポリマーが合成される場合、モノマーは、使用される重合プロセスに依存して、統計的に、ランダムに、交互に、又は鎖に沿ってブロックで、又はアームで取り込まれ得る。
【0058】
1つ以上のモノマーのRAFT重合は、可逆的付加開裂連鎖移動剤(RAFT剤、その例は本明細書に提供される)を用いて開始される。使用されるモノマー(単数又は複数)は、合成されるポリマー(例えば、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなど)、及び所望の官能基が重合中又は重合後に取り込まれるか否かに依存する。
【0059】
いくつかの例では、第1及び第2のポリマーの各々は、異なるホモポリマーである。「ホモポリマー」とは、単一のモノマーが所望の重合プロセスにおいて使用されることを意味する。得られるポリマーは、線状ポリマー又はマルチアームポリマーであってよい。他の例では、第1及び第2のポリマーの各々は、異なるコポリマーである。「コポリマー」とは、2つの異なるモノマーが所望の重合プロセスにおいて使用されることを意味する。得られるコポリマーは、線状コポリマー又はマルチアームコポリマーであってよい。更に他の例では、第1及び第2のポリマーの各々は、異なるターポリマーである。「ターポリマー」とは、3つの異なるモノマーが所望の重合プロセスにおいて使用されることを意味する。得られるターポリマーは、線状コポリマー又はマルチアームコポリマーであってよい。
【0060】
直交ポリマー活性化エステル及びアジド官能基対
一例では、第1のポリマーは、第1のホモポリマーであり、第1の官能基は、活性化エステル官能基であり、第2のポリマーは、第2のホモポリマーであり、第2の官能基は、アジド官能基である。この例では、第1のホモポリマーは、活性化エステル官能基を含むモノマーから重合されてもよく、第2のホモポリマーは、アジド官能基を含むモノマーから重合されてもよい。
【0061】
この例では、(第1の直交ポリマーの)活性化エステル官能基は、アミン官能基を含むシランに結合することができ、アミン末端プライマーにも結合することができる。所望の重合プロセスによって重合することができ、かつこのタイプの活性化エステル官能基を含む任意のモノマーを使用することができる。(第2の直交ポリマーの)アジド官能基は、i)アルキン官能基を含むシランに結合することができ、アルキン末端プライマーにも結合することができるか、又はii)ノルボルネン官能基を含むシランに結合することができ、アルキン末端プライマーにも結合することができるかのいずれかである。所望の重合プロセスによって重合することができ、かつこのタイプのアジド官能基を含む任意のモノマーを使用することができる。
【0062】
第1のポリマーのこの例の合成は、活性化エステル官能基を含む第1のモノマーの重合を含み、第1のモノマーは、ペンタフルオロフェニルアクリレート
【0063】
【化2】
、ペンタフルオロフェニルメタクリレート
【0064】
【化3】
、及びビニルジメチルアズラクトン
【0065】
【化4】
からなる群から選択され、第2のポリマーのこの例の合成は、アジド官能基を含む第2のモノマーの重合を含み、第2のモノマーは、構造I:
【0066】
【化5】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【0067】
【化6】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環である。
【0068】
上記のように、R及びRは両方とも、水素原子であってよい。しかしながら、構造IにおけるR及び/又はRがアルキルである場合、炭素数は、1~6又は1~4の範囲であり得る。
【0069】
また構造Iにおいて、Eは、任意に置換されたC1~C4アルキレンであってもよく、それぞれの炭素は、例えば、C1~C4アルキル、-OH、-OC1~C4アルキル、又は=Oから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている。例として、Eは、非置換C1~C4アルキレン、例えばCH、(CH、(CH又は(CHであってもよい。他の例では、Eは、エーテル、エステル、又はアミドを含み得る。例えば、Eは、-CHCHOCH-、-COCNHCH-、又は-CHCOOCH-を含み得る。
【0070】
また構造Iにおいて、Lは、各々が-C1~C4アルキル、-OH、-OC1~C4アルキル、又は=Oからなる群から選択された1つ以上の置換基で任意に置換され得る、-C2~C20アルキレン-又は3~20個の原子の直鎖ヘテロアルキレンである線状鎖を含むリンカーであり得る。Lは、1つ以上の-C1~C4アルキル、-OH、-OC1~C4アルキル、又は=O置換基で任意に置換された、-C2~C6アルキレンである線状鎖を有するリンカーであってもよい。Lは、非置換-C2~C6アルキレン-(-(CH2~6-としても描かれている)であってもよく、例えば、Lは、非置換-C3~C4アルキレン-、例えば-(CH-又は-(CH-であってもよい。他の例では、Lは、-C1~C4アルキル、-OH、-OC1~C4アルキル、又は=Oからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意に置換され得る、3~20個の原子の直鎖ヘテロアルキレンである線状鎖を含むリンカーであってもよい。Lは、1つ以上のエチレングリコール単位を含んでもよい。Lは、-CHCH(OCHCH-OCHCH-であってよく、式中、xは、0~10である。一例では、xは、1、2、3、4、5、又は6である。Lは、1つ以上のアミド基を含んでもよい。例えば、Lは、-C2~C6アルキル-NHC(O)-C2~C6アルキル-であってもよく、又はLは、-(CH-NHC(O)-(CH-若しくは-(CH-NHC(O)-(CH-であってもよい。Lは、1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸を含んでもよく、例えば、Lは、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、リシン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、又はグルタミンからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含んでもよい。いくつかの例では、Lは、1つ、2つ、又は3つのアミノ酸単位を含み得る。
【0071】
また構造Iにおいて、N置換アミドAは、2つの可能な構成でL及びZに結合してもよく、例えば、Aのカルボニル炭素がLに結合してもよく、Aのアミド窒素がZに結合してもよい。代替的に、Aのカルボニル炭素がZに結合してもよく、Aのアミド窒素がLに結合してもよい。
【0072】
また構造Iにおいて、Zは、5~10個の環員(5~10個の原子)を有する窒素含有複素環、例えば、5~10員複素環式環を含み得、環員は、複素環式環の骨格を形成する原子である。Zは、単環式構造又は2つ以上の環系を含む縮合構造を含んでもよい。単環式構造の場合、Zは、5又は6個の環員を含んでもよく、例えば、Zは、5又は6員複素環式環であってもよい。縮合構造の場合、Zは、9又は10個の環員を含んでもよい。窒素含有複素環は、2つ以上のヘテロ原子、例えば、1つ以上の追加の窒素ヘテロ原子、又は1つ以上の酸素ヘテロ原子、又は1つ以上の硫黄ヘテロ原子、又はそのようなヘテロ原子の任意の好適な組み合わせを含み得る。窒素含有複素環は、芳香族、例えば、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、インドリル、キノリニル、キナゾリニルであってもよい。窒素含有複素環は、脂肪族、例えば、シクロアルキルであってもよい。脂肪族窒素含有複素環は、飽和していてもよく、又は芳香族ではないが1つ以上の二重結合を含んでもよい。一例では、脂肪族窒素含有複素環は、ピロリジニル、ピリジニル、又はピリミジニルであり得る。
【0073】
アジド官能基(Zを含まない)を含むモノマーの1つの具体例は、アジドアセトアミドペンチルアクリルアミド、具体的にはN-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミドである。N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミドのバリエーションもまた使用してもよく、例えば、アルキル鎖-(CH)-は、1~20の範囲であってもよく、及び/又は-(CH)-のそれぞれは、任意に置換されていてもよい。アジド官能基(Zを含む)を含むモノマーのいくつかの他の例は、
【0074】
【化7】
である。
【0075】
複数の活性化エステル官能基を含む第1のホモポリマーの例を以下に示す。
【0076】
【化8】
【0077】
この例では、第1のモノマーは、ペンタフルオロフェニルアクリレートであり、nは、1~50,000の範囲の整数である。複数のアジド官能基を含む第2のホモポリマーの例を以下に示す。
【0078】
【化9】
【0079】
この例では、第2のモノマーは、N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミドであり、nは、1~50,000の範囲の整数である。
【0080】
これらの例示的なホモポリマーは、RAFT剤として2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸を用いて生成される線状ポリマーである(以下で考察する)。RAFT剤の別の例は、線状ホモポリマーの異なる例を形成するために、活性化エステル官能基モノマー又はアジド官能基モノマーとともに使用され得る。代替的に、マルチアームホモポリマーの異なる例を形成するために、樹状RAFT剤を活性化エステル官能基モノマー又はアジド官能基モノマーとともに使用してもよい。マルチアームホモポリマーのいずれも、アームの各々に重合モノマーを含む。これらの例のいずれかにおいて、RAFT剤末端基は、切断され、ヒドロキシル、置換アミドなどの他の末端基で置換されてもよい。その上、本明細書に記載される他の重合プロセスのいずれかが、ホモポリマーを生成するために使用されてもよい。
【0081】
代替的に、アジド官能基を有するポリマーの合成は、重合後にアジド官能基で置換され得る官能基を含む第1のモノマーの重合を含んでもよい。一例では、ポリマーをNaNと反応させて、ポリマー中のハロゲンをアジドで置換することができるので、ハロゲン化モノマー(例えば、Nが臭素、塩化物、フッ素、又はヨウ素などのハロゲンで置換された構造I)を使用することができる。したがって、一例では、アジド官能基を有するポリマーの合成は、ハロゲン官能基を含む第1のモノマーを重合することと、ハロゲン官能基をアジド官能基で置換することと、を含む。
【0082】
活性化エステル官能基を含有するモノマー及びアジド官能基を含有するモノマーでそれぞれ合成することができる第1及び第2の直交ポリマーの他の例は、コポリマーであってもよい。
【0083】
これらの第1及び第2の直交コポリマーの一例を生成するために、第1のコポリマーの合成は、活性化エステル官能基を含む第1のモノマーと、構造III:
【0084】
【化10】
(式中、R及びRは、独立して、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される)を有する第1のアクリルアミドモノマーとの重合を含み、第2のコポリマーの合成は、アジド官能基を含む第2のモノマーと、構造III’:
【0085】
【化11】
(式中、R及びRは、独立して、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される)を有する第2のアクリルアミドモノマーとの重合を含む。描写されるように、構造III及びIII’は同じである。一例では、活性化エステル官能基及び第1のアクリルアミドモノマーを含む第1の直交コポリマー、並びにアジド官能基及び第2のアクリルアミドモノマーを含む第2の直交コポリマーが利用される場合、第1及び第2のアクリルアミドモノマーは、同じであっても異なっていてもよいことが理解されるべきである。
【0086】
第1及び第2の直交コポリマーのこれらの具体例では、(第1の直交コポリマーの)活性化エステル官能基は、アミン官能基を含むシランに結合することができ、アミン末端プライマーにも結合することができる。(第2の直交コポリマーの)アジド官能基は、ノルボルネン官能基を含むシランに結合することができ、アルキン末端プライマーにも結合することができる。
【0087】
第1のコポリマーの例を以下に示す。
【0088】
【化12】
【0089】
この例では、第1のモノマーは、ペンタフルオロフェニルメタクリレートであり、第1のアクリルアミドモノマーは、ジメチルアクリルアミドであり、nは、1~50,000(例えば、約1~5,000)の範囲の整数であり、mは、1~100,000(例えば、1~10,000)の範囲の整数である。第2のコポリマーの例を以下に示す。
【0090】
【化13】
【0091】
この例では、第2のモノマーは、N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミドであり、第1のアクリルアミドモノマーは、アクリルアミドであり、nは、1~50,000(例えば、1~5,000)の範囲の整数であり、mは、1~100,000(例えば、1~10,000)の範囲の整数である。
【0092】
これらの例示的なコポリマーは、RAFT剤として2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸を用いて生成される線状ポリマーである。RAFT剤の別の例は、線状コポリマーの異なる例を形成するために、活性化エステル官能基モノマー又はアジド官能基モノマーとともに使用され得る。代替的に、マルチアームコポリマーの異なる例を形成するために、樹状RAFT剤を活性化エステル官能基モノマー又はアジド官能基モノマーとともに使用してもよい。マルチアームコポリマーのいずれも、アームの各々に重合モノマーを含む。これらの例のいずれかにおいて、RAFT剤末端基は、切断され、ヒドロキシル、置換アミドなどの他の末端基で置換されてもよい。その上、本明細書に記載される他の重合プロセスのいずれかが、ホモポリマーを生成するために使用されてもよい。
【0093】
本明細書に開示される例のいずれかにおいて、フローセル表面上で一緒に使用されるポリマーが直交であり、本明細書に定義される官能基対の例を含む限り、第1のポリマーについて記載される例は、第2のポリマーとして使用されてもよく、第2のポリマーについて記載される例は、第1のポリマーとして使用されてもよい。例えば、第1のポリマーは、アジド官能基を含むモノマー及びアクリルアミドモノマーで合成されたコポリマーであってもよく、第2のポリマーは、活性化エステル官能基を含むモノマー及び他のアクリルアミドモノマーで合成されたコポリマーであってもよい。第1のコポリマーのこの例では、第1の官能基は、アジド官能基であり、第1のコポリマーは、アクリルアミドを含む追加の官能基を更に含み、第2のコポリマーのこの例では、第2の官能基は、活性化エステル官能基であり、第2のコポリマーは、アクリルアミドを含む追加の官能基を更に含む。
【0094】
直交ポリマー-テトラジン及び活性化エステル官能基対
直交ポリマーのセットの第1及び第2のポリマーは、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基(本明細書で定義される官能基対の一例)をそれぞれ含むポリマーであってもよい。
【0095】
一例では、第1のポリマーは、第1のホモポリマーであり、第1の官能基は、テトラジン官能基であり、第2のポリマーは、第2のホモポリマーであり、第2の官能基は、活性化エステル官能基である。この例では、第1のホモポリマーは、テトラジン官能基を含むモノマーから重合されてもよく、第2のホモポリマーは、活性化エステル官能基を含むモノマーから重合されてもよい。代替的に、第1のホモポリマーは、テトラジン官能基を含まないモノマーから重合されてもよく、テトラジン官能基は、重合後にホモポリマーに導入されてもよい。
【0096】
この例では、(第1の直交ポリマーの)テトラジン官能基は、ノルボルネン官能基を含むシランに結合することができ、ビシクロ[6.1.0]ノニン(bicyclo[6.1.0]nonyne、BCN)末端プライマー又はノルボルネン末端プライマーにも結合することができる。所望の重合プロセスによって重合することができ、かつこのタイプのテトラジン官能基を含む任意のモノマーを使用することができる。また、この例では、活性化エステル官能基は、アミン官能基を含むシランに結合することができ、アミン末端プライマーにも結合することができる。活性化エステル官能基を含む本明細書に記載のモノマーのいずれかを使用することができる。
【0097】
一例では、第1のホモポリマーのこの例の合成は、テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を含み、第1のモノマーは、構造IV:
【0098】
【化14】
(式中、Rは、H又はメチルである)及び構造V:
【0099】
【化15】
からなる群から選択され、第2のポリマーの合成は、活性化エステル官能基を含む第2のモノマーの重合を含み、第2のモノマーは、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレート、及びビニルジメチルアズラクトンからなる群から選択される。
【0100】
別の例では、テトラジン官能基を有するポリマーのこの例の合成は、重合後にテトラジン官能基で置換され得る官能基を含む第1のモノマーの重合を含む。一例では、活性化エステルモノマーが使用され得る。なぜなら、そのポリマーは、広範囲の溶媒に可溶性であり、異なるモル当量でアミン(例えば、テトラジンアミン)、アルコール(例えば、テトラジン-PEG 3-アルコール)、又はチオール(例えば、チオール-PEG-テトラジン)で容易に置換され得るからである。別の例では、アミンは、テトラジン-PEG 4-NHSエステル、テトラジン-PEG 5-NHSエステルなどのN-ヒドロキシスクシンイミド(N-Hydroxysuccinimide、NHS)エステルで末端化された任意のテトラジンと容易に反応することができるので、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリドを使用することができる。したがって、一例では、テトラジン官能基を有するポリマーの合成は、活性化エステル又はアミン官能基を含む第1のモノマーを重合することと、活性化エステル又はアミン官能基をテトラジン官能基で置換することと、を伴う。
【0101】
テトラジン官能基を含有するモノマー及び活性化エステル官能基を含有するモノマーを用いてそれぞれ合成することができる第1及び第2の直交ポリマーの他の例は、コポリマーであってもよい。
【0102】
これらの第1及び第2の直交コポリマーの一例を生成するために、第1のコポリマーの合成は、テトラジン官能基を含む第1のモノマーと、構造I(本明細書に記載されるアジド官能基を有する)を有する第1の追加のモノマーとの重合を含み、第2のポリマーの合成は、活性化エステル官能基を含む第2のモノマーと、第2の追加のモノマーとの重合を含み、第2の追加のモノマーが、ヨウ化アリールを含む。ヨードベンゼン、アリール又はアルケニル基で置換されたヨードベンゼンなどを含む、任意のヨウ化アリールモノマーを使用することができる。
【0103】
第1及び第2の直交コポリマーのこれらの具体例では、(第1の直交コポリマーの)テトラジン官能基は、ノルボルネン官能基を含むシランに結合することができ、アジド官能基は、アルキン末端プライマーに結合することができる。(第2の直交コポリマーの)活性化エステル官能基は、アミン官能基を含むシランに結合することができ、ヨウ化アリール官能基は、ボロン酸末端プライマーに結合することができる。
【0104】
テトラジン官能基を含有するモノマー及び活性化エステル官能基を含有するモノマーを用いてそれぞれ合成することができる第1及び第2の直交ポリマーの更に他の例は、ターポリマーであってもよい。
【0105】
一例では、第1のポリマーは、第1のターポリマーであり、第1の官能基は、テトラジン官能基であり、第1のターポリマーは、アジド及びアクリルアミドを含む2つの追加の官能基を更に含み、第2のポリマーは、第2のターポリマーであり、第2の官能基は、活性化エステル官能基であり、第2のターポリマーは、ヨウ化アリール及びアクリルアミドを含む2つの追加の官能基を含む。これらの第1及び第2の直交ターポリマーのこれらの例を生成するために、第1のターポリマーの合成は、テトラジン官能基を含む第1のモノマーと、第1の追加のモノマーと、第2の追加のモノマーとの重合を含み、第1の追加のモノマーは、構造I(本明細書に記載のアジド官能基を有する)を有し、第2の追加のモノマーは、構造III(本明細書に記載のアクリルアミドモノマー)を有し、第2のポリマーの合成は、活性化エステル官能基を含む第2のモノマーと、第3の追加のモノマーと、第4の追加のモノマーとの重合を含み、第3の追加のモノマーは、ヨウ化アリールを含み、第4の追加のモノマーは、構造III’(本明細書に記載されるアクリルアミドモノマー)を有する。第1の直交ターポリマー(テトラジン、アジド、及びアクリルアミド官能基を含む)及び第2のターポリマー(活性化エステル、ヨウ化アリール、及びアクリルアミド官能基を含む)が利用される一例では、第2の追加のモノマー(構造III)及び第4の追加のモノマー(構造III’)は同じであっても異なっていてもよいことが理解されるべきである。
【0106】
第1及び第2の直交ターポリマーのこれらの具体例では、(第1の直交ターポリマーの)テトラジン官能基は、ノルボルネン官能基を含むシランに結合することができ、アジド官能基は、アルキン末端プライマーに結合することができる。(第2の直交ターポリマーの)活性化エステル官能基は、アミン官能基を含むシランに結合することができ、ヨウ化アリール官能基は、ボロン酸末端プライマーに結合することができる。
【0107】
薬剤(例えば、RAFT剤)又は樹状剤(例えば、樹状RAFT剤)のいずれかを使用して、テトラジン及び活性化エステル官能基対を含む線状ポリマー又はマルチアームポリマーを生成することができる。
【0108】
その上、本明細書に開示される例のいずれかにおいて、フローセル表面上で一緒に使用されるポリマーが直交であり、本明細書に定義される官能基対の例を含む限り、第1のポリマーについて記載される例は、第2のポリマーとして使用されてもよく、第2のポリマーについて記載される例は、第1のポリマーとして使用されてもよい。例えば、第1のポリマーは、活性化エステル官能基を含むモノマー及びアリール-ヨード官能基を含むモノマーで合成されたコポリマーであってもよく、第2のポリマーは、テトラジン官能基を含むモノマー及びアジド官能基を含むモノマーで合成されたコポリマーであってもよい。
【0109】
直交ポリマー-テトラジン及びアジド官能基対
直交ポリマーのセットの第1及び第2のポリマーは、テトラジン官能基及びアジド官能基(本明細書で定義される官能基対の一例)をそれぞれ含むポリマーであってもよい。
【0110】
一例では、第1のポリマーは、第1のホモポリマーであり、第1の官能基は、テトラジン官能基であり、第2のポリマーは、第2のホモポリマーであり、第2の官能基は、アジド官能基である。この例では、第1のホモポリマーは、テトラジン官能基を含むモノマーから重合されてもよく、第2のホモポリマーは、アジド官能基を含むモノマーから重合されてもよい。代替的に、第1のホモポリマーは、テトラジン官能基を含まないモノマーから重合されてもよく、テトラジン官能基は、重合後にホモポリマーに導入されてもよい。
【0111】
この例では、(第1の直交ポリマーの)テトラジン官能基は、ノルボルネン官能基を含むシランに結合することができ、ノルボルネン末端プライマーにも結合することができる。所望の重合プロセスによって重合することができ、かつこのタイプのテトラジン官能基を含む任意のモノマーを使用することができる。(第2の直交ポリマーの)アジド官能基は、アルキン官能基を含むシランに結合することができ、アルキン末端プライマーにも結合することができる。所望の重合プロセスによって重合することができ、かつこのタイプのアジド官能基を含む任意のモノマーを使用することができる。
【0112】
一例では、第1のホモポリマーのこの例の合成は、テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を含み、第1のモノマーは、構造IV(本明細書に記載されるテトラジン官能基を有する)及び構造V(本明細書に記載されるテトラジン官能基を有する)からなる群から選択される。第2のホモポリマーの合成は、アジド官能基を含む第2のモノマーと、構造I(本明細書に記載のアジド官能基を有する)を有する第2のモノマーとの重合を含む。
【0113】
別の例では、テトラジン官能基を有するホモポリマーのこの例の合成は、重合後にテトラジン官能基で置換され得る官能基を含む第1のモノマーの重合を含む。一例では、活性化エステルモノマーが使用され得る。なぜなら、そのポリマーは、広範囲の溶媒に可溶性であり、異なるモル当量でアミン(例えば、テトラジンアミン)、アルコール(例えば、テトラジン-PEG 3-アルコール)、又はチオール(例えば、チオール-PEG-テトラジン)で容易に置換され得るからである。別の例では、アミンは、テトラジン-PEG 4-NHSエステル、テトラジン-PEG 5-NHSエステルなどのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルで末端化された任意のテトラジンと容易に反応していることができるので、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリドを使用することができる。したがって、一例では、テトラジン官能基を有するポリマーの合成は、活性化エステル又はアミン官能基を含む第1のモノマーを重合することと、活性化エステル又はアミン官能基をテトラジン官能基で置換することと、を伴う。
【0114】
別の例では、アジド官能基を有するホモポリマーのこの例の合成は、重合後にアジド官能基で置換され得る官能基を含む第1のモノマーの重合を含む。一例では、ポリマー中のハロゲンをアジドで容易に置換することができるので、ハロゲン化モノマーを使用することができる。
【0115】
薬剤又は樹状剤のいずれかを使用して、テトラジン及びアジド官能基対を含む線状ポリマー又はマルチアームポリマーを生成することができる。
【0116】
その上、本明細書に開示される例のいずれかにおいて、フローセル表面上で一緒に使用されるポリマーが直交であり、本明細書に定義される官能基対の例を含む限り、第1のポリマーについて記載される例は、第2のポリマーとして使用されてもよく、第2のポリマーについて記載される例は、第1のポリマーとして使用されてもよい。例えば、第1のポリマーは、アジド官能基を含むモノマーで合成されたホモポリマーであってもよく、第2のポリマーは、テトラジン官能基を含むモノマーで合成されたホモポリマーであってもよい。
【0117】
本明細書に記載される例のいずれかにおいて、得られるポリマーは、約10,000g/モル~約2,000,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有し得る。同時ペアエンドリード塗布の場合、ポリマーは、約10,000g/モル~約75,000g/モルの範囲のより低い重量平均分子量を有し得る。他の例では、ポリマーは、約1,000,000~約2,000,000の範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0118】
ポリマー合成
任意の好適な重合技術を使用して、本明細書に記載のポリマーのいずれかを生成してもよい。
【0119】
例えば、本明細書に記載されるポリマーのいずれかは、RAFT重合を使用して生成され得る。上述したように、本明細書に開示されるポリマーの任意の例についてのモノマーのRAFT重合は、RAFT剤を用いて開始される。選択されたRAFT剤は、形成されるポリマー構造(例えば、直鎖、マルチアーム構造)を決定する。
【0120】
それぞれのRAFT剤は、重合反応動態及び構造制御度に影響を及ぼす置換基R及びZを有するチオカルボニルチオ基(S=C-S)を含む。例として、チオカルボニルチオ基は、ジチオベンゾエート:
【0121】
【化16】
、トリチオカーボネート:
【0122】
【化17】
、及びジチオカルバメート:
【0123】
【化18】
からなる群から選択され得る。RAFT剤におけるR基は、フリーラジカル脱離基であり、Z基は、C=S結合反応性を制御し、ラジカル付加及び開裂の速度に影響を及ぼす。
【0124】
(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドモノマー重合に好適なRAFT剤のいくつかの例としては、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボネート、及び4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸が挙げられる。2-シアノメチルドデシルトリチオカーボネートは、アクリレート及びアクリルアミドモノマーに好適なRAFT剤である。2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエートは、(メタ)アクリレート及びメタクリルアミドモノマー重合に好適なRAFT剤である。一例では、RAFT剤は、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸である。これらのRAFT剤のいずれも、線状ポリマーを生成するために使用することができる。
【0125】
樹状RAFT剤は、マルチアームポリマーを生成するために使用され得る。樹状RAFT剤は、中心分子/化合物と、中心分子/化合物から延在するアーム(又は分岐)と、を含む。樹状RAFT剤は、2~30個のアームを有してもよく、各アームは、各アームの末端若しくはその近傍、又は中心分子/化合物の近傍にチオカルボニルチオ基を含む。
【0126】
樹状RAFT剤の中心分子/化合物は、マクロサイクル(例えば、シクロデキストリン、ポルフィリンなど)、拡張π系(例えば、ペリレン、フラーレンなど)、金属-配位子錯体、ポリマーコアなどの、任意の多官能性分子であってもよい。樹状RAFT剤の中心分子/化合物のいくつかの具体的な例としては、フェニル基、安息香酸、ペントラエリトリトール(pentraerythritol)、ホスファゼン基などが挙げられる。
【0127】
本明細書に記載されるRAFT剤のいずれも、樹状RAFT剤の各アーム内に含有され得る。
【0128】
いくつかの例では、樹状RAFT剤は、R基構成を有し、中心分子は、連鎖移動プロセス中、脱離基である。R基のRAFT剤構成を有する樹状RAFT剤の2つの例は、以下の通りである:
【0129】
【化19】
(式中、Phは、フェニル基である)、及び
【0130】
【化20】
【0131】
他の例では、樹状RAFT剤は、Z基構成を有する。これらの例では、反応性ポリマーアームは、成長中に中心分子/化合物から分離され、連鎖移動を受け、中心分子/化合物で再び反応する。Z基のRAFT構成を有する樹状RAFT剤の1つの例は、以下の通りである:
【0132】
【化21】
【0133】
ある例では、樹状RAFT剤は、3,5-ビス(2-ドデシルチオカルボノチオイルチオ-1-オキソプロポキシ)安息香酸:
【0134】
【化22】
(2つのアームの樹状RAFT剤の例)、1,1,1-トリス[(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオネート]エタン:
【0135】
【化23】
(3つのアームの樹状RAFT剤の例)、及びペンタエリスリトールテトラキス[2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオネート]:
【0136】
【化24】
(4つのアームの樹状RAFT剤の例)からなる群から選択される。
【0137】
中心分子/化合物としてホスファゼン環を含む樹状RAFT剤の例は、
【0138】
【化25】
であり、式中、それぞれのRは、トリチオカルボニル基である。これは、30個のアームを含む樹状RAFT剤の一例である。
【0139】
本明細書に開示されるホモポリマーの任意の例を生成するために、所望のモノマーは、RAFT剤又は樹状RAFT剤の存在下で重合される。本明細書に開示されるコポリマー又はターポリマーの任意の例を生成するために、所望のモノマーの混合物は、RAFT剤又は樹状RAFT剤の存在下で重合される。
【0140】
テトラジン官能基を含むポリマーのいくつかの例を生成するために、活性化エステル又はアミン官能基を含む第1のモノマーが、RAFT剤又は樹状RAFT剤の存在下で重合され、次いで、活性化エステル又はアミン官能基が、テトラジン官能基で置換される。置換反応のために、テトラジン官能基を含む1~2当量のモノマーを、好適な溶媒及び触媒(例えば、テトラヒドロフラン/トリエチルアミン(THF/EtN))中の活性化エステル又はアミン官能基を含むポリマーに添加し、室温で約1時間~約6時間の範囲の時間反応させる。
【0141】
モノマー又はモノマーの混合物は、水及び共溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrollidone、NMP)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、アセトニトリル(acetonitrile、MeCN)、メタノール(methanol、MeOH)、エタノール(ethanol、EtOH)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、IPA)、ジオキサン、アセトン、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)など)などの液体に取り込んでもよい。モノマー又はモノマーの混合物を含有する液体はまた、pHの望ましくない変化を少なくとも実質的に防止するために、緩衝剤を含んでもよい。混合物のpHは、酸性であってもよい(7未満)。好適な緩衝剤の例としては、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はTRIZMA(登録商標))、ビス-トリスメタン緩衝剤、ADA緩衝剤(双性イオン性緩衝剤)、MES(2-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、又は別の酸性緩衝剤が挙げられる。
【0142】
重合反応は、約50℃~約80℃の範囲の温度で、約1時間~約48時間の範囲の時間にわたって行うことができる。アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile、AIBN)又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(1つの市販の例は、FujiFilmからのVA-044である)などのアゾ開始剤を含む開始剤もまた、モノマー又はモノマーの混合物を有する液体中に含まれてもよい。
【0143】
2つ以上のモノマーが使用される場合、プロセスは、直鎖に沿って、又はアームの各々に、ランダムにモノマーを取り込んでもよい。統計的、交互などの他のモノマー取り込みシナリオが可能である。統計的取り込みでは、モノマー単位の順次分布は、既知の統計法則に従う。交互取り込みでは、モノマー単位は、長さに沿って交互に取り込まれる。
【0144】
コポリマーが生成される場合、第1のモノマー対第2のモノマーのモル比は、約1:1~約1:49の範囲であり得る。一例として、コポリマーは、約2モル%~約50モル%のアジド含有モノマー及び約50モル%~約98モル%のアクリルアミド含有モノマーを含んでもよい。ターポリマーが生成される場合、第1のモノマー対第2のモノマー対第3のモノマーのモル比は、約1:1:48~約2:5:3の範囲であり得る。一例として、ターポリマーは、約2モル%~約20モル%のテトラジン含有モノマー、約2モル%~約50モル%のアジド含有モノマー、及び約30モル%~約96モル%のアクリルアミド含有モノマーを含んでもよい。
【0145】
コポリマー及びターポリマーの他の例では、モノマーは、直鎖に沿って、又は制御されたブロック中のアームの各々の中に取り込まれてもよい。この例では、ブロックコポリマーが、RAFT剤又は樹状RAFT剤の存在下で形成され得る。この方法の一例は、RAFT剤又は樹状RAFT剤の存在下で第1のブロックを第1のモノマーと重合させて、中間ポリマー(第1のブロックを含む)を形成することと、次いで、中間体ポリマーの存在下で第2のブロックを第2のモノマーと重合させて、ポリマー(これは、直鎖に沿って、又はアームの各々の中に両方のブロックを含む)の一例を形成することと、を含む。このプロセスは、第3のブロックが所望される場合、別のモノマーを用いて繰り返され得る。
【0146】
例えば、チオカルボニルチオ基を除去するために、末端基修飾を行うことが望ましい場合もある。好適な末端基修飾技術の例としては、末端基熱分解、ラジカル誘導還元、ヘテロ-ディールス-アルダー反応、及び求核剤との反応が挙げられる。一例では、過酸化水素によるチオカルボニルチオ基の切断により、ヒドロキシル末端基が導入された。別の例では、還元によるチオカルボニルチオ基の切断によってチオールが導入され、これが未使用のモノマーによって捕捉されて、モノマー構造(例えば、メタクリルアミド)に基づく末端基が導入され得る。
【0147】
RAFT重合を詳細に説明してきたが、他の重合プロセスが使用され得ることを理解すべきである。
【0148】
原子移動ラジカル重合(ATRP)は、別の好適な重合技術の一例である。線状ポリマーを生成するために使用できる好適なATRP単官能性開始剤の例としては、2-アジドエチル2-ブロモイソブチレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル2-ブロモイソブチレート(様々な分子量のもの)、2-(2-ブロモイソブチリルオキシ)エチルメタクリレート、ドデシル2-ブロモイソブチレート、2-ヒドロキシエチル2-ブロモイソブチレート、1-(フタルイミドメチル)2-ブロモイソブチレート、プロパルギル2-ブロモイソブチレートなどが挙げられる。これらの単官能性開始剤が、代替的に、本明細書に開示される中心分子/化合物の任意の例に付着されて、各々のアームに原子移動ラジカル重合(ATRP)開始剤を含む樹状ATRP剤が形成され得る。樹状ATRP剤は、各アームにATRP開始剤を含み得、2アーム~30アームを有し得る。更に他の例では、中心分子/化合物自体が、多官能性ATRP開始剤である。これらの樹状ATRP剤のいくつかの例は、ビス[2-(2’-ブロモイソブチリルオキシ)エチル]ジスルフィド、2-ブロモイソ酪酸無水物、エチレンビス(2-ブロモイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-ブロモイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-ブロモイソブチレート)、及び1,1,1-トリス(2-ブロモイソブチリルオキシメチル)エタンからなる群から選択され得る。
【0149】
ニトロキシド(アミノオキシル)媒介重合(nitroxide(aminooxyl)mediated polymerization、NMP)は、好適な重合技術の別の例である。線状ポリマーを生成するために使用され得る好適なNMP単官能性開始剤の例としては、
【0150】
【化26】
が挙げられる。任意のニトロキシド末端基、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(2,2,6,6-Tetramethylpiperidin-1-yl)oxyl、TEMPO):
【0151】
【化27】
(式中、Iは、単官能性開始剤である)、ジ-t-ブチルニトロキシド:
【0152】
【化28】
(式中、Iは、単官能性開始剤である)、1,1,3,3-テトラエチルイソインドリン-N-オキシルテトラエチルイソインドリンニトロキシド:
【0153】
【化29】
(式中、Iは、単官能性開始剤である)、2,2,5-トリメチル-4-フェニル-3-アザヘキサン-3-ニトロキシド(2,2,5-Trimethyl-4-phenyl-3-azahexane-3-nitroxide、TIPNO):
【0154】
【化30】
(式中、Iは、単官能性開始剤である)、N-tert-ブチル-N-[1-ジエチルホスホノ-(2,2-ジメチルプロピル)]ニトロキシド(N-tert-butyl-N-[1-diethylphosphono-(2,2-dimethylpropyl)]nitroxide、SG1):
【0155】
【化31】
(式中、Iは、単官能性開始剤である)が、NMP単官能性開始剤に付着され得ることを理解されたい。これらの単官能性開始剤が、代替的に、本明細書に開示される中心分子/化合物の任意の例に付着されて、各々のアームにNMP開始剤を含む樹状NMP剤が形成され得る。
【0156】
これらの単官能性開始剤のいずれかが、本明細書に開示される中心分子/化合物の任意の例に付着されて、それぞれのアームにNMP開始剤を含む樹状剤が形成され得る。この特定の樹状剤を、本明細書では樹状NMP剤と称する。樹状NMP剤は、各アームにNMP開始剤を含み、2アーム~30アームを有し得る。更に他の例では、中心分子/化合物自体が、多官能性NMP開始剤である。これらの樹状NMP剤(多官能性NMP開始剤)のいくつかの例は、以下であってもよい。
【0157】
【化32】
ニトロキシド末端基のいずれかが、これらの開始剤の各アームに付着していてもよい。これらの樹状NMP剤(多官能性NMP開始剤)の具体例としては、1,3,5-トリス((4-(1-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシ)エチル)ベンジル)オキシ)ベンゼン、
【0158】
【化33】
及び1,3,5-トリス((3,5-ビス((4-(1-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシ)エチル)ベンジル)オキシ)ベンジル)オキシ)ベンゼン:
【0159】
【化34】
が挙げられる。
【0160】
RAFT重合、ATRP、又はNMP重合が使用され得るが、他の重合プロセスもまた使用され得ることを理解すべきである。他の好適な重合プロセスとしては、RAFT若しくはATRPと組み合わせたNMP重合、追加の架橋工程を有するNMP、コバルト媒介重合、基移動重合(GTP)、開環重合(ROP)、イオン重合、又は所望の直鎖若しくはマルチアームアーキテクチャを直接若しくは間接的にもたらす任意の他の重合プロセスが挙げられる。
【0161】
プライマーセット
本明細書に記載の例では、フローセルは、ポリマーの1つに付着した1つのプライマーセットと、ポリマーの別のものに付着した異なるプライマーセットと、を含む。
【0162】
いくつかの例では、異なるプライマーセットは、2つの異なる鋳型鎖が増幅され、隣接する直交ポリマー上にクラスター化されることを可能にする。これらのプライマーセットの一例を図1に示す。直交ポリマーは、参照番号10A及び10Bで示され、一方のプライマーセット12は、第1の直交ポリマー10Aに付着して示され、他方のプライマーセット14は、第2の直交ポリマー10Bに付着して示される。本明細書に記載されるように、直交ポリマー10A、10Bは、それぞれのプライマーセット12、14と選択的に反応することができる異なる官能基を含む。
【0163】
この例では、第1のプライマーセット12は、順方向増幅プライマー及び逆方向増幅プライマーなどの2つの異なるプライマー16、18を含む。セット12のプライマー16、18は一緒に、2つの異なるプライマー16、18に相補的な末端アダプターを有するライブラリー鋳型の増幅を可能にする。第2のプライマーセット14はまた、2つの異なるプライマー20、22に相補的な末端アダプターを有する異なるライブラリー鋳型の増幅を可能にする2つの異なるプライマー20、22を含む。
【0164】
例として、第1のプライマーセット12は、P5及びP7プライマーを含み、第2のプライマーセット14は、本明細書に記載されるPAプライマー、PBプライマー、PCプライマー、及びPDプライマーの任意の組み合わせを含む。他の例では、P15及びP7は、第1のプライマーセット12において使用され得る。例として、第2のプライマーセット14は、任意の2つ(又は3つ)のPA、PB、PC、及びPDプライマー、又は1つのPAプライマーと1つのPB、PC、若しくはプライマーPDとの任意の組み合わせ、又は1つのPBプライマーと1つのPC若しくはプライマーPDとの任意の組み合わせ、又は1つのPCプライマーと1つのプライマーPDとの任意の組み合わせを含んでもよい。本明細書中に記載されるPXプライマーは、ライブラリー鋳型分子を播種するが、それ以外の他のプライマーの全てに対して直交であるため、増幅に関与しない捕捉プライマーとして使用され得る。プライマーセット12、14を使用する順次ペアエンド配列決定のために、異なるPXプライマーが、異なるライブラリー鋳型分子を捕捉するために、第1のプライマーセット12及び第2のプライマーセット14とともに含まれ得る。
【0165】
P5及びP7プライマーの例は、例えばHISEQ(商標)、HISEQX(商標)、MISEQ(商標)、MISEQDX(商標)、MINISEQ(商標)、NEXTSEQ(商標)、NEXTSEQDX(商標)、NOVASEQ(商標)、ISEQ(商標)、GENOME ANALYZER(商標)及び他の装置プラットフォーム上での配列決定のためにIllumina Inc.により販売されている市販のフローセルの表面上で使用される。P5プライマーは、以下の通りである。
P5:5’→3’
AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC(配列番号1)
P7プライマーは、以下のいずれかであり得る。
P7 #1:5’ → 3’
CAAGCAGAAGACGGCATACGAnAT(配列番号2)
P7 #2:5’ → 3’
CAAGCAGAAGACGGCATACnAGAT(配列番号3)
式中、「n」は、配列の各々においてウラシル又は8-オキソグアニンである。
P15プライマーは、以下の通りである。
P15:5’→3’
AATGATACGGCGACCACCGAGAnCTACAC (配列番号4)
式中、「n」はアリル-Tである。
上記の他のプライマー(PA-PD)には、以下のものが含まれる。
PA 5’ → 3’
GCTGGCACGTCCGAACGCTTCGTTAATCCGTTGAG(配列番号5)
cPA (PA’)5’ → 3’
CTCAACGGATTAACGAAGCGTTCGGACGTGCCAGC(配列番号6)
PB 5’ → 3’
CGTCGTCTGCCATGGCGCTTCGGTGGATATGAACT(配列番号7)
cPB (PB’)5’ → 3’
AGTTCATATCCACCGAAGCGCCATGGCAGACGACG(配列番号8)
PC 5’ → 3’
ACGGCCGCTAATATCAACGCGTCGAATCCGCAACT(配列番号9)
cPC (PC’)5’ → 3’
AGTTGCGGATTCGACGCGTTGATATTAGCGGCCGT(配列番号10)
PD 5’ → 3’
GCCGCGTTACGTTAGCCGGACTATTCGATGCAGC(配列番号11)
cPD (PD’)5’ → 3’
GCTGCATCGAATAGTCCGGCTAACGTAACGCGGC(配列番号12)
PA-PDについての例示的な配列には示されていないが、これらのプライマーのいずれも、鎖の任意の点に切断部位(例えば、ウラシル、8-オキソグアニン、アリル-Tなど)を含み得ることが理解されるべきである。
PX捕捉プライマーは、以下の通りであってもよい。
PX 5’ → 3’
AGGAGGAGGAGGAGGAGGAGGAGG(配列番号13)
cPX (PX’)5’ → 3’
CCTCCTCCTCCTCCTCCTCCTCCT(配列番号14)
【0166】
本明細書中に開示されるプライマーの各々はまた、プライマー配列の5’末端にポリT配列を含み得る。いくつかの例では、ポリT領域は、2個のT塩基~20個のT塩基を含む。具体例として、ポリT領域は、3、4、5、6、7、又は10個のT塩基を含み得る。
【0167】
各プライマーの5’末端はまた、リンカー(例えば、図2B及び図2Dを参照して記載される46、46’)を含み得る。直交ポリマー10A、10Bの表面官能基に付着することができる末端アルキン基又は別の好適な末端官能基を含む任意のリンカーを使用することができる。一例では、プライマーは、ヘキシニルで末端化する。
【0168】
他の例では、異なるプライマーセットは、一方のセットが切断不能な第1のプライマー及び切断可能な第2のプライマーを含み、他方のセットが切断可能な第1のプライマー及び切断不能な第2のプライマーを含むという点で関連している。これらのプライマーセットは、単一の鋳型鎖が増幅され、両方のプライマーセットにわたってクラスター化されることを可能にし、また、セットの反対のプライマー上に存在している切断基に起因して、隣接する直交ポリマー上の順方向鎖及び逆方向鎖の生成を可能にする。これらのプライマーセットの例は、図2A図2Dを参照して考察される。
【0169】
図2A図2Dは、直交ポリマー10A、10Bに付着したプライマーセット30A、32A、30B、32B、30C、32C、及び30D、32Dの異なる構成を図示する。
【0170】
第1のプライマーセット30A、30B、30C、及び30Dの各々は、切断不能な第1のプライマー34又は34’及び切断可能な第2のプライマー36又は36’を含み、第2のプライマーセット32A、32B、32C、及び32Dの各々は、切断可能な第1のプライマー38又は38’及び切断不能な第2のプライマー40又は40’を含む。
【0171】
切断不能な第1のプライマー34又は34’及び切断可能な第2のプライマー36又は36’は、例えば、切断不能な第1のプライマー34若しくは34’が順方向増幅プライマーであり、切断可能な第2のプライマー36若しくは36’が逆方向増幅プライマーであるか、又は切断可能な第2のプライマー36若しくは36’が順方向増幅プライマーであり、切断不能な第1のプライマー34若しくは34’が逆方向増幅プライマーである、オリゴヌクレオチド対である。第1のプライマーセット30A、30B、30C、及び30Dの各例では、切断可能な第2のプライマー36又は36’は切断部位42を含むが、切断不能な第1のプライマー34又は34’は切断部位42を含まない。
【0172】
切断可能な第1のプライマー38又は38’及び切断不能な第2のプライマー40又は40’はまた、例えば、切断可能な第1のプライマー38若しくは38’が順方向増幅プライマーであり、切断不能な第2のプライマー40若しくは40’が逆方向増幅プライマーであるか、又は切断不能な第2のプライマー40若しくは40’が順方向増幅プライマーであり、切断可能な第1のプライマー38若しくは38’が逆方向増幅プライマーである、オリゴヌクレオチド対である。第2のプライマーセット32A、32B、32C、及び32Dの各例では、切断可能な第1のプライマー38又は38’は切断部位42’又は44を含むが、切断不能な第2のプライマー40又は40’は切断部位42’又は44を含まない。
【0173】
切断可能な第1のプライマー38又は38’が、ヌクレオチド配列中に、又はヌクレオチド配列に付着したリンカー46’中に取り込まれた切断部位42’又は44を含むことを除いて、第1のプライマーセット30A、30B、30C、及び30Dの切断不能な第1のプライマー34又は34’並びに第2のプライマーセット32A、32B、32C、及び32Dの切断可能な第1のプライマー38又は38’は同じヌクレオチド配列を有する(例えば、両方が順方向増幅プライマーである)ことを理解すべきである。同様に、切断可能な第2のプライマー36又は36’が、ヌクレオチド配列中に、又はヌクレオチド配列に付着したリンカー46中に取り込まれた切断部位42を含むことを除いて、第1のプライマーセット30A、30B、30C、及び30Dの切断可能な第2のプライマー36又は36’並びに第2のプライマーセット32A、32B、32C、及び32Dの切断不能な第2のプライマー40又は40’は同じヌクレオチド配列を有する(例えば、両方が逆方向増幅プライマーである)。
【0174】
第1のプライマー34及び38又は34’及び38’が順方向増幅プライマーである場合、第2のプライマー36及び40、又は36’及び40’は逆方向プライマーであり、逆もまた同様であることを理解すべきである。
【0175】
切断不能なプライマー34、40又は34’、40’は、P5及びP7プライマー又はPA、PD、PC、PDプライマーの任意の組み合わせ(例えば、PA及びPB又はPA及びPDなど)などの捕捉及び/又は増幅目的のためのユニバーサル配列を有する任意のプライマーであってもよい。いくつかの例では、P5及びP7プライマーは切断部位42、42’、44を含まないため、P5及びP7プライマーは、切断不能なプライマー34、40又は34’、40’である。したがって、配列番号1におけるP5は、ウラシルを含まず、配列番号2又は配列番号3におけるP7は、8-オキソグアニンを含まないだろう。任意の好適なユニバーサル配列を、切断不能なプライマー34、40又は34’、40’として使用することができることを理解すべきである。
【0176】
切断可能なプライマー36、38又は36’、38’の例としては、それぞれの核酸配列に取り込まれたか(例えば、図2A及び図2C)、又はそれぞれの直交ポリマー10A、10Bに切断可能なプライマー36、38又は36’、38’を付着させるリンカー46’、46に取り込まれた(図2B及び図2D)、それぞれの切断部位42、42’、44を有するP5及びP7プライマー又は他のユニバーサル配列(例えば、PA、PB、PC、PDプライマー)が挙げられる。好適な切断部位42、42’、44の例としては、本明細書に記載されるように、酵素的に切断可能な核酸塩基若しくは化学的に切断可能な核酸塩基、修飾核酸塩基、又はリンカー(例えば、核酸塩基の間)が挙げられる。
【0177】
各プライマーセット30A及び32A、又は30B及び32B、又は30C及び32C、又は30D及び32Dを、それぞれの直交ポリマー10A、10Bに付着させる。本明細書に記載されるように、直交ポリマー10A、10Bは、それぞれのプライマー34、36、又は34’、36’、又は38、40、又は38’、40’と選択的に反応することができる異なる官能基を含む。
【0178】
図2A図2Dには示されていないが、プライマーセット30A、30B、30C、30D又は32A、32B、32C若しくは32Dの一方又は両方が、ライブラリー鋳型播種分子を捕捉するためのPXプライマーも含み得ることが理解されるべきである。一例として、PXは、プライマーセット30A、30B、30C、30Dとともに含まれ得るが、プライマーセット32A、32B、32C、又は32Dとともに含まれ得ない。別の例として、PXは、プライマーセット30A、30B、30C、30Dとともに、及びプライマーセット32A、32B、32C又は32Dとともに含まれ得る。PXモチーフの密度は、各凹部54内の多クローン性を最小化するために、比較的低くあるべきである。
【0179】
図2A図2Dは、直交ポリマー10A、10Bに付着したプライマーセット30A、32A、30B、32B、30C、32C、及び30D、32Dの異なる構成を図示する。より具体的には、図2A図2Dは、使用され得るプライマー34、36又は34’、36’、及び38、40又は38’、40’の異なる構成を図示する。
【0180】
図2Aに示される例では、プライマーセット30A及び32Aのプライマー34、36及び38、40は、例えば、リンカー46、46’なしで、直交ポリマー10A、10Bに直接付着される。直交ポリマー10Aは、プライマー34、36の5’末端で末端基を固定化することができる表面官能基を有する。同様に、直交ポリマー10Bは、プライマー38、40の5’末端で末端基を固定化することができる表面官能基を有する。記載されるように、直交ポリマー10Aとプライマー34、36との間の固定化化学、及び直交ポリマー10Bとプライマー38、40との間の固定化化学は異なり、その結果、プライマー34、36又は38、40は、望ましいポリマー10A、10Bに選択的に付着する。ポリマー10A、10Bは、本明細書に記載の官能基対の任意の例を含んでもよい。例えば、ポリマー10Aは、アミン末端プライマーをグラフト化することができる活性化エステルを含み得、ポリマー10Bは、アルキン末端プライマーをグラフト化することができるアジドを含み得る。別の例では、ポリマー10Aは、BCN又はノルボルネン末端プライマーをグラフト化することができるテトラジンを含み得、ポリマー10Bは、アミン末端プライマーをグラフト化することができる活性化エステルを含み得る。なお別の例では、ポリマー10Aは、アルキン末端プライマーをグラフト化することができるアジドを含むことができ、ポリマー10Bは、ボロン酸末端プライマーをグラフト化することができるヨウ化アリールを含むことができる。更に別の例では、ポリマー10Aは、ノルボルネン末端プライマーをグラフト化することができるテトラジンを含み得、ポリマー10Bは、アルキン末端プライマーをグラフト化することができるアジドを含み得る。これらの例のいずれにおいても、固定化は、それぞれのプライマー34及び36又は38及び40の5’末端での、それぞれの直交ポリマー10A、10Bへの単点共有付着によるものであり得る。
【0181】
また、図2Aに示される例では、切断可能なプライマー36、38の各々の切断部位42、42’は、プライマーの配列中に取り込まれている。この例では、同じタイプの切断部位42、42’が、それぞれのプライマーセット30A、32Aの切断可能なプライマー36、38に使用される。ある例として、切断部位42、42’はウラシル塩基であり、切断可能なプライマー36、38はP5U及びP7Uである。ウラシル塩基又は他の切断部位はまた、切断可能プライマー36、38を生成するために、PA、PB、PC、及びPDプライマーのいずれかの中に取り込まれ得る。この例では、オリゴヌクレオチド対34、36の切断不能なプライマー34はP7であり得、オリゴヌクレオチド対38、40の切断不能なプライマー40はP5であり得る。したがって、この例では、第1のプライマーセット30Aは、P7、P5Uを含み、第2のプライマーセット32Aは、P5、P7Uを含む。プライマーセット30A、32Aは、増幅、クラスター生成、及び線形化後に、順方向鋳型鎖を一方の直交ポリマー10A上に形成することを可能にし、逆方向鎖を他方の直交ポリマー10B上に形成することを可能にする、反対の線形化化学を有する。
【0182】
図2Bに示される例では、プライマーセット30B及び32Bのプライマー34’、36’及び38’、40’を、例えば、リンカー46、46’を介して、直交ポリマー10A、10Bに付着させる。直交ポリマー10A、10Bは、本明細書に開示される官能基対のそれぞれの官能基を含み、それぞれのリンカー46、46’の末端は、それぞれの官能基に共有付着することができる。したがって、直交ポリマー10Aは、プライマー34’、36’の5’末端でリンカー46を固定化することができる表面官能基を有し得る。同様に、直交ポリマー10Bは、プライマー38’、40’の5’末端でリンカー46’を固定化することができる表面官能基を有し得る。直交ポリマー10A及びリンカー46の固定化化学並びに直交ポリマー10B及びリンカー46’の固定化化学は異なり、その結果、プライマー34’、36’又は38’、40’は、望ましい直交ポリマー10A、10Bに選択的にグラフト化する。
【0183】
好適なリンカー46、46’の例としては、核酸リンカー(例えば、10ヌクレオチド以下)又は非核酸リンカー、例えば、ポリエチレングリコール鎖、アルキル基若しくは炭素鎖、ビシナルジオールを有する脂肪族リンカー、ペプチドリンカーなどを挙げることができる。核酸リンカーのある例は、ポリTスペーサーであるが、他のヌクレオチドも使用することができる。一例では、スペーサーは6T~10Tスペーサーである。以下は、末端アルキン基を有する非核酸リンカー(Bは核酸塩基であり、「オリゴ」はプライマーである)を含むヌクレオチドのいくつかの例である。
【0184】
【化35】
【0185】
図2Bに示される例では、プライマー34’、38’は、同じ配列(例えば、ウラシルを有しないP5)、及び同じ又は異なるリンカー46、46’を有する。プライマー34’は切断不能であるが、プライマー38’は、リンカー46’中に取り込まれた切断部位42’を含む。また、この例では、プライマー36’、40’は同じ配列(例えば、「n」を有しないP7)、及び同じ又は異なるリンカー46、46’を有する。プライマー40’は切断不能であり、プライマー36’は、リンカー46中に取り込まれた切断部位42を含む。同じタイプの切断部位42、42’は、切断可能なプライマー36’、38’の各々のリンカー46、46’に使用される。ある例として、切断部位42、42’は、核酸リンカー46、46’中に取り込まれているウラシル塩基であり得る。プライマーセット30B、32Bは、増幅、クラスター生成、及び線形化後に、順方向鋳型鎖を一方の直交ポリマー10A上に形成することを可能にし、逆方向鎖を他方の直交ポリマー10B上に形成することを可能にする、反対の線形化化学を有する。
【0186】
図2Cに示される例は、異なるタイプの切断部位42、44が、それぞれのプライマーセット30C、32Cの切断可能なプライマー36、38に使用されることを除いて、図2Aに示される例と同様である。例として、2つの異なる酵素的切断部位を使用してもよく、2つの異なる化学的切断部位を使用してもよく、又は1つの酵素的切断部位及び1つの化学的切断部位を使用してもよい。それぞれの切断可能なプライマー36、38に使用され得る異なる切断部位42、44の例としては、ビシナルジオール、ウラシル、アリルエーテル、ジスルフィド、制限酵素部位、及び8-オキソグアニンの任意の組み合わせが挙げられる。
【0187】
図2Dに示される例は、異なるタイプの切断部位42、44が、それぞれのプライマーセット30D、32Dの切断可能なプライマー36’、38’に付着したリンカー46、46’に使用されることを除いて、図2Bに示される例と同様である。切断可能なプライマー36’、38’に付着したそれぞれのリンカー46、46’において使用され得る異なる切断部位42、44の例としては、ビシナルジオール、ウラシル、アリルエーテル、ジスルフィド、制限酵素部位、及び8-オキソグアニンの任意の組み合わせが挙げられる。
【0188】
図1及び図2A図2Dに示される例のいずれかでは、プライマー16、18及び20、22又は34、36及び38、40又は34’、36’及び38’、40’の直交ポリマー10A、10Bへの付着は、プライマー16、18及び20、22又は34、36及び38、40又は34’、36’及び38’、40’の鋳型特異的部分を自由なままに残し、プライマー伸長を自由にするために、その同系の鋳型及び3’ヒドロキシル基にアニールする。
【0189】
以下により詳細に記載されるように、プライマー16、18及び20、22、又は34、36及び38、40、又は34’、36’及び38’、40’は、フローセル基材への塗布の前に、それぞれの直交ポリマー10A、10Bに付着され得、したがって、直交ポリマー10A、10Bは、予めグラフト化され得る。他の例では、プライマー16、18及び20、22、又は34、36及び38、40、又は34’、36’及び38’、40’は、フローセル基材へのその塗布後に、それぞれの直交ポリマー10A、10Bに付着され得る。
【0190】
フローセルアーキテクチャ
直交ポリマー10A、10B及び異なるプライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dは、フローセル内の配列決定表面化学を定義するために使用され得る。
【0191】
本明細書に開示される例では、フローセルは、基材と、基材の表面の少なくとも一部分上の2つの異なるシランのパターンと、2つの異なるシランのうちの第1のシランに付着した第1のポリマー(例えば、直交ポリマー10A)と、2つの異なるシランのうちの第2のシランに付着した第2のポリマー(例えば、直交ポリマー10B)であって、第1及び第2のポリマー10A、10Bがそれぞれ、官能基対の第1の官能基及び第2の官能基を含み、官能基対が、活性化エステル官能基及びアジド官能基と、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基と、テトラジン官能基及びアジド官能基とからなる群から選択される、第2のポリマーと、第1のポリマーにグラフト化された第1のプライマーセット(例えば、12、30A、30B、30C、又は30D)と、第2のポリマーにグラフト化された第2のプライマーセット(例えば、14、32A、32B、32C、又は32D)であって、第1及び第2のプライマーセットが異なる、プライマーセットと、を含む。フローセル、及びフローセル内のアーキテクチャの例は、図3A図3Cを参照して説明される。
【0192】
フローセル50の一例を、上方から、図3Aに示す。フローセル50は、一緒に結合された2つのパターン化された構造、又は蓋に結合された1つのパターン化された構造を含み得る。2つのパターン化された構造の間、又は1つのパターン化された構造と蓋との間には、フローチャネル52がある。図3Aに示される例は、8つのフローチャネル52を含む。8つのフローチャネル52が示されているが、任意の数のフローチャネル52がフローセル50に含まれ得る(例えば、単一のフローチャネル52、4つのフローチャネル52など)ことを理解すべきである。各フローチャネル52は、あるフローチャネル52内に導入される流体が、隣接するフローチャネル52内に流入しないように、別のフローチャネル52から単離され得る。フローチャネル52内に導入される流体のうちのいくつかの例は、反応成分(例えば、DNAサンプル、ポリメラーゼ、配列決定プライマー、標識ヌクレオチドなど)、洗浄溶液、脱ブロッキング剤などを導入し得る。
【0193】
フローチャネル52は、パターン化された構造によって少なくとも部分的に画定される。パターン化された構造は、単一層ベース支持体又は多層構造などの基材を含むことができる。図3B及び図3Cは、基材53の上面図を描写し、したがって、単一層ベース支持体又は多層構造の上面を描写する。
【0194】
好適な単一層ベース支持体の例としては、エポキシシロキサン、ガラス、修飾又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(ChemoursのTEFLON(登録商標)など)、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(cyclic olefins/cyclo-olefin polymer、COP)(ZeonのZEONOR(登録商標)など)、ポリイミドなどを含む)、ナイロン(ポリアミド)、セラミック/酸化セラミック、シリカ、溶融シリカ、シリカベースの材料、ケイ酸アルミニウム、シリコン及び修飾シリコン(例えば、ホウ素ドープp+シリコン)、窒化シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、五酸化タンタル(Ta)又は他の酸化タンタル(TaO)、酸化ハフニウム(HfO)、炭素、金属、無機ガラスなどが挙げられる。
【0195】
多層構造の例は、ベース支持体及びベース支持体上の少なくとも1つの他の層を含む。多層構造のいくつかの例は、ベース支持体としてのガラス又はシリコンを含み、表面に、酸化タンタル(例えば、五酸化タンタル又は別の酸化タンタル(TaO))又は別のセラミック酸化物のコーティング層を有する。多層構造の他の例は、ベース支持体(例えば、ガラス、シリコン、五酸化タンタル、又は他のベース支持体材料のうちのいずれか)及び他の層としてのパターン化された樹脂を含む。凹部54(図3B及び図3Cを参照)及び間隙領域56を形成するために選択的に堆積、又は堆積及びパターン化され得る任意の材料が、パターン化された樹脂に使用され得ることを理解されたい。
【0196】
パターン化された樹脂の一例として、無機酸化物は、蒸着、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷を介してベース支持体に選択的に適用され得る。好適な無機酸化物の例としては、酸化タンタル(例えば、Ta)、酸化アルミニウム(例えば、Al)、酸化ケイ素(例えば、SiO)、酸化ハフニウム(例えば、HfO)などが挙げられる。
【0197】
パターン化された樹脂の別の例として、ポリマー樹脂は、ベース支持体に適用され、次いでパターン化され得る。好適な堆積技術としては、化学蒸着、ディップコーティング、ダンクコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷などを含む。好適なパターニング技術としては、フォトリソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィー(nanoimprint lithography、NIL)、スタンピング技術、エンボス技術、成形技術、マイクロエッチング技術などが挙げられる。好適な樹脂のいくつかの例としては、多面体オリゴマーシルセスキオキサン樹脂系樹脂、非多面体オリゴマーシルセスキオキサン系エポキシ樹脂、ポリ(エチレングリコール)樹脂、ポリエーテル樹脂(例えば、開環エポキシ)、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、アモルファスフルオロポリマー樹脂(例えば、BellexのCYTOP(登録商標))、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0198】
本明細書で使用される場合、「多面体オリゴマーシルセスキオキサン」(Hybrid PlasticsからPOSS(登録商標)として市販)という用語は、シリカ(SiO)とシリコーン(RSiO)とのハイブリッド中間体(例えば、RSiO1.5)である化学組成物を指す。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの一例は、Kehagias et al.,Microelectronic Engineering 86(2009),pp.776-778に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が組み込まれる。一例では、組成物は、化学式[RSiO3/2を有する有機シリコン化合物であり、R基は同じであっても異なってもよい。POSSの例示的なR基としては、エポキシ、アジド(azide)/アジド(azido)、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、テトラジン、アクリレート、及び/若しくはメタクリレート、又は更には、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、及び/若しくはハロアルキル基が挙げられる。
【0199】
ある例では、単一のベース支持体(単独で、又は多層構造の一部分として使用されるかにかかわらず)は、約2mm~約300mm、例えば、約200mm~約300mmの範囲の直径を有する円形シート、パネル、ウェハ、ダイなどであり得るか、又は最大約10フィート(約3メートル)の最大寸法を有する長方形シート、パネル、ウェハ、ダイなどであり得る。例えば、ダイは、約0.1mm~約10mmの範囲の幅を有し得る。例示的な寸法を提供しているが、任意の好適な寸法を有する単一のベース支持体を使用し得ることを理解すべきである。
【0200】
一例では、フローチャネル52は、実質的に長方形の構成を有する。フローチャネル52の長さ及び幅は、単一のベース支持体の一部分、又は多層構造の最外層がフローチャネル52を取り囲み、蓋(図示せず)又は別のパターン化された構造への付着に利用可能であるように選択され得る。
【0201】
フローチャネル52の深さは、マイクロコンタクト、エアロゾル、又はインクジェット印刷を使用してフローチャネル52壁部を画定する別個の材料を堆積させる場合、単層の厚さと同程度であり得る。他の例では、フローチャネル52の深さは、約1μm、約10μm、約50μm、約100μm、又はそれ以上であり得る。一例では、深さは、約10μm~約100μmの範囲であり得る。別の例では、深さは、約10μm~約30μmの範囲であり得る。更に別の例では、深さは、約5μm以下である。フローチャネル52の深さは、上で指定した値よりも大きくてもよく、それよりも小さくてもよく、又はそれらの間であってもよいことを理解すべきである。
【0202】
図3B及び図3Cは、フローチャネル52内のアーキテクチャの例を描写する。アーキテクチャの各々は、間隙領域56によって分離された凹部54と、凹部54の各々のうちの2つの異なるシランのパターンと、凹部54の各々のうちの2つの異なるシランにそれぞれ付着された直交ポリマー10A、10Bと、を含む。示されていないが、異なるプライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dがそれぞれ直交ポリマー10A、10Bに付着することが理解されるべきである。
【0203】
規則的、反復的、及び非規則的なパターンを含む、凹部54の多くの異なるレイアウトが想定され得る。一例では、凹部54は、密に充填して密度を向上させるために六角形の格子状に配置される。他のレイアウトは、例えば、長方形のレイアウト、三角形のレイアウトなどを含んでもよい。いくつかの例では、レイアウト又はパターンは、行及び列をなしているx-yフォーマットであり得る。いくつかの他の実施例では、レイアウト又はパターンは、凹部54及び間隙領域56の繰り返し配置とすることができる。更に他の例では、レイアウト又はパターンは、凹部54及び間隙領域56のランダムな配置とすることができる。
【0204】
レイアウト又はパターンは、画定された領域内の凹部54の密度(数)に関して特徴付けることができる。例えば、凹部54は、1mm当たり約200万の密度で存在してもよい。例えば、1mm当たり約100、1mm当たり約1,000、1mm当たり約10万、1mm当たり約100万、1mm当たり約200万、1mm当たり約500万、1mm当たり約1000万、1mm当たり約5000万、又はそれ以上若しくはそれ以下の密度を含む、異なる密度に調整され得る。密度は、上記の範囲から選択される、下限値のうちの1つと上限値のうちの1つとの間であり得、又は他の密度(所与の範囲外)が使用され得ることを更に理解すべきである。例として、高密度アレイは、約100nm未満で分離された凹部54を有するものとして特徴付けることができ、中密度アレイは、約400nm~約1μmで分離された凹部54を有するものとして特徴付けることができ、低密度アレイは、約1μm超で分離された凹部54を有するものとして特徴付けることができる。
【0205】
凹部54のレイアウト又はパターンは、平均ピッチ、又は1つの凹部54の中心から隣接する凹部54の中心までの間隔(中心間間隔)、又は1つの凹部54の右縁部から隣接する凹部54の左縁部までの間隔(縁部間間隔)に関して、更に又は代替的に特徴付けられてもよい。パターンは、平均ピッチ周辺の変動係数が小さくなるように規則的である場合もあれば、パターンが不規則である場合もあり、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、又は約100μmであってもよい。の特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択される、低い方の値のうちの1つと高い方の値のうちの1つとの間であり得る。一例では、凹部20は、約1.5μmのピッチ(中心間間隔)を有する。平均ピッチ値の例を提供してきたが、他の平均ピッチ値も使用され得ることを理解されたい。
【0206】
各凹部54のサイズは、その容積、開口面積、深さ、及び/又は直径によって特徴付けられ得る。例えば、容積は、約1×10-3μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約1×10-2μm、約0.1μm、約1μm、約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。別の例では、開口部面積は、約1×10-μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約1×10-2μm、約0.1μm、約1μm、少なくとも約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。更に別の例では、深さは、約0.1μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約0.5μm、約1μm、約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。更に別の例では、直径又は長さ及び幅は、約0.1μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約0.5μm、約1μm、約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。
【0207】
アーキテクチャの各々はまた、2つの異なるシラン(図示せず)を含む。シランの一方は、第1の直交ポリマー10A(第2の直交ポリマー10Bではない)に付着することができる官能基を含み、シランの他方は、第2の直交ポリマー10B(第1の直交ポリマー10Aではない)に付着することができる官能基を含む。一例では、2つの異なるシランは、アミノシラン及びアルキニルシランと、ノルボルネンシラン及びアミノシランと、ノルボルネンシラン及びアルキニルシランとからなる群から選択される。アミノシラン及びアルキニルシランはそれぞれ、それぞれの直交ポリマー10A、10Bの活性化エステル官能基及びアジド官能基に付着することができる。ノルボルネンシラン及びアミノシランはそれぞれ、それぞれの直交ポリマー10A、10Bのアジド官能基及び活性化エステル官能基に付着することができる。ノルボルネンシラン及びアミノシランはそれぞれ、それぞれの直交ポリマー10A、10Bのテトラジン官能基及び活性化エステル官能基に付着することができる。ノルボルネンシラン及びアルキニルシランは、それぞれの直交ポリマー10A、10Bのテトラジン官能基及びアジド官能基にそれぞれ付着することができる。
【0208】
アミノシランの例としては、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-aminopropyl)trimethoxysilane)、APTMS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-aminopropyl)triethoxysilane)、APTES)、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン(N-(6-aminohexyl)aminomethyltriethoxysilane、AHAMTES)、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン(N-(2-aminoethyl)-3-aminopropyltriethoxysilane、AEAPTES)、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(N-(2-aminoethyl)-3-aminopropyltrimethoxysilane、AEAPTMS)が挙げられ、これらの各々はGelestから入手可能である。
【0209】
アルキニルシランは、O-プロパルギル)-N-(トリエトキシシリルプロピル)カルバメート、シクロオクチン、シクロオクチン誘導体、又はビシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン若しくはその誘導体、ビシクロ[6.1.0]ノナ-2-イン、又はビシクロ[6.1.0]ノナ-3-イン)などのシクロアルキンの不飽和部分を含み得る。
【0210】
ノルボルネンシランは、ノルボルネン誘導体、例えば、炭素原子の1つの代わりに酸素又は窒素を含む(ヘテロ)ノルボルネンであってもよい。ノルボルネンシランの例としては、[(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エニル)エチル]トリメトキシシランが挙げられる。
【0211】
シランは、直交ポリマー10A、10B(それぞれのシランに選択的に結合する)が所望のパターンで塗布されるように、凹部54の各々内に所望のパターンで堆積されてもよい。シランのパターンは、基材53にわたって凹部54の各々において同じであってもよく、基材53にわたって凹部54の各々において異なっていてもよく、又は基材53にわたっていくつかの凹部54において同じであり、かつ基材53にわたって他の凹部54において異なっていてもよい。どのようにシランが所望のパターンで堆積されるかの例は、図4A図4H及び図5A図5Hを参照して以下に説明される。
【0212】
アーキテクチャの各々はまた、直交ポリマー10A、10Bを含む。本明細書に開示される直交ポリマーセットのいずれかが、凹部54の各々に含まれ得る。例として、ポリマー10Aは、活性化エステル官能基を含んでもよく、ポリマー10Bは、アジド官能基を含んでもよいか、又は、ポリマー10Aは、テトラジン官能基を含んでもよく、ポリマー10Bは、活性化エステル官能基を含んでもよいか、又は、ポリマー10Aは、テトラジン官能基を含んでもよく、ポリマー10Bは、アジド官能基を含んでもよい。ポリマー10A、10Bが直交である限り、本明細書に開示されるコポリマー又はターポリマーのいずれも使用することができる。
【0213】
凹部54内の直交ポリマー10A、10Bの位置は、各凹部54内のシランのパターンによって決定される。
【0214】
各凹部54内の直交ポリマー10A、10Bのパターンは、図3B及び図3Cに示されるように、基材53にわたって繰り返されてもよい。
【0215】
図3Bに示される例では、直交ポリマー10A、10Bのパターンは、各凹部54において同じである。図3Bに示される例では、ポリマー10Aは、各凹部54の左側にあり、ポリマー10Bは、各凹部54の右側にある。他の例では、ポリマー10Bは、各凹部54の左側にあってもよく、ポリマー10Aは、各凹部54の右側にあってもよいか、又は、ポリマー10Aは、各凹部54の上側にあってもよく、ポリマー10Bは、各凹部54の下側にあってもよいか、又は、ポリマー10Bは、各凹部54の上側にあってもよく、ポリマー10Aは、各凹部54の下側にあってもよい。
【0216】
図3Cに示される例では、異なる凹部54は、直交ポリマー10A、10Bの異なるパターンを有するが、パターンは、基材53にわたって規則的な様式で繰り返される。図3Cに示される例では、凹部54の行及び列は、凹部54の左側にポリマー10A及び凹部54の右側にポリマー10Bを有する1つの凹部54と、続いて凹部54の左側にポリマー10B及び凹部54の右側にポリマー10Aを有する凹部54と、続いて凹部54の左側にポリマー10A及び凹部54の右側にポリマー10Bを有する凹部54などと交互になっている。
【0217】
上記のように、各例では、ポリマー10A、10Bは、異なるプライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dがそれぞれ付着された異なる領域を表す。
【0218】
フローセルを作製するための方法
フローセル50内のアーキテクチャは、様々な方法によって得ることができる。この方法の2つの例が、図4A図4H及び図5A図5Hの概略フロー図に示されている。この方法の別の例を図6のフロー図に示す。
【0219】
図4A図4H及び図5A図5Hに示される方法は、概して、基材53の表面の少なくとも一部分上に2つの異なるシラン58A、58Bのパターンを生成することと、第1及び第2のポリマー10A、10Bを同時に堆積させることであって、それによって、第1のポリマー10Aが、2つの異なるシランのうちの第1のシラン58Aに付着し、第2のポリマー10Bが、2つの異なるシランのうちの第2のシラン58Bに付着する、堆積させることと、第1のプライマーセット12又は30A又は30B又は30C又は30Dを第1のポリマーに、及び第2のプライマーセット14又は32A又は32B又は32C又は32Dを第2のポリマー10Bに同時にグラフト化することであって、第1及び第2のプライマーセット12、14又は30A、32A又は30B、32B又は30C、32C又は30D、32Dが異なる、グラフト化することと、を含む。
【0220】
図4A図4Hに示される方法は、2つの異なるシラン58A、58Bのパターンを生成するための一例を描写する。この例示的な方法は、概して、基材53の表面の少なくとも一部分の上に2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aを堆積させることと(図4A)、2つの異なるシランのうちの第1のシランの上にフォトレジスト60を塗布することと(図4B)、フォトレジストを現像して(不溶性部分60’を生成する)、2つの異なるシランのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62と、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの被覆部分64と、を含むパターンを画定することと(図4C)、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62を除去して、対応する曝露基材部分66を露呈させることと(図4D)、対応する曝露基材部分66の上に2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第2のシラン58Bを堆積させることと(図4D)、フォトレジスト60’を除去することと(図4E)、を含む。
【0221】
図4A図4Hに示される基材53は、凹部54が中に画定された単一層ベース支持体の一例である。
【0222】
図4Aに示されるように、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aは、凹部54及び間隙領域56の上を含む基材53の表面の上に塗布される。好適なシラン塗布方法の例としては、蒸着(例えば、YES法)、スピンコーティング、又は本明細書に開示される他の堆積方法が挙げられる。
【0223】
次いで、図4Bに示されるように、フォトレジスト60は、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58A上に塗布される。フォトレジスト60を塗布するために、本明細書に記載の任意の好適な堆積方法を使用することができる。不溶性部分60’を生成するためのフォトレジスト60の現像は、使用されるフォトレジストのタイプに依存する。
【0224】
いくつかの例は、ネガ型フォトレジストを利用する。好適なネガティブフォトレジストの一例としては、NR(登録商標)シリーズのフォトレジスト(Futurrexから入手可能)が挙げられる。他の好適なネガティブフォトレジストとしては、SU-8シリーズ及びKMPR(登録商標)シリーズ(両方ともKayaku Advanced Materials,Inc.から入手可能)、又はUVN(商標)シリーズ(DuPontから入手可能)が挙げられる。ネガティブフォトレジストが使用される場合、それは、特定の波長の光に選択的に曝露されて、不溶性部分60’を形成し、現像液に曝露されて、可溶性部分(例えば、特定の波長の光に曝露されない部分)を除去する。ネガティブフォトレジストのための好適な現像液の例としては、希釈水酸化ナトリウム、希釈水酸化カリウム、又は金属イオンフリー有機TMAH(tetramethylammoniumhydroxide、テトラメチルアミノヒドロキシド)の水溶液などの水性アルカリ溶液が挙げられる。
【0225】
図4Cに示される例では、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62は、ネガ型フォトレジストが光に曝露されない領域で露呈され、現像液に可溶性であり、したがって、現像液によって除去される。対照的に、2つの異なるシランの第1のシラン58Aの被覆部分64は、ネガ型フォトレジストが光に曝露されて不溶性部分60’を形成する領域にあり、不溶性部分60’は現像液に可溶性ではなく、したがって現像液によって除去されない。
【0226】
他の例は、ポジ型フォトレジストを利用する。好適なポジティブフォトレジストの例としては、MICROPOSIT(登録商標)S1800シリーズ又はAZ(登録商標)1500シリーズが挙げられ、それらの両方が、Kayaku Advanced Materials,Inc.から入手可能である。好適なポジティブフォトレジストの別の例は、SPR(商標)-220(DuPont製)である。ポジティブフォトレジストが使用される場合、ある特定の波長の光への選択的曝露は、可溶性領域(例えば、現像液中に少なくとも95%の溶解度である)を形成し、現像液を使用して、可溶性部分を除去する。光に曝露されていないポジティブフォトレジストのこれらの部分は、現像液に不溶性になる。ポジティブフォトレジストのための好適な現像液の例としては、希釈水酸化ナトリウム、希釈水酸化カリウム、又は金属イオンフリー有機TMAH(テトラメチルアミノヒドロキシド)の水溶液などの水性アルカリ溶液が挙げられる。
【0227】
図4Cに示される例では、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62は、ポジ型フォトレジストが光に曝露される領域で露呈され、現像液に可溶性であり、したがって、現像液によって除去される。対照的に、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの被覆部分64は、ポジ型フォトレジストが光に曝露されずに、不溶性部分60’を形成する領域にあり、不溶性部分60’は現像液に可溶性ではなく、したがって現像液によって除去されない。
【0228】
図4Dは、i)対応する基材部分66を曝露させる、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62の除去、及びii)対応する曝露基材部分66の上への2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第2のシラン58Bの塗布を図示する。
【0229】
2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62を除去して、対応する曝露基材部分66を露呈させる(図4D)。2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62の除去は、化学エッチング、ドライエッチング、プラズマ処理などを含んでもよい。化学エッチングは、シラン58Aを除去することができるが、不溶性フォトレジスト60’を除去することができない溶媒を含む。不溶性フォトレジスト60’は、曝露部分62の除去中に、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの下にある部分64を保護する。
【0230】
曝露部分62を除去した後、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第2のシラン58Bが、対応する曝露基材部分66の上に堆積される。図4Dに描写されるように、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第2のシラン58Bも、不溶性フォトレジスト60’の上に堆積される。好適なシラン塗布方法の例としては、蒸着(例えば、YES法)、スピンコーティング、又は本明細書に開示される他の堆積方法が挙げられる。
【0231】
次いで、図4Eに描写されるように、不溶性フォトレジスト60’を除去する。不溶性フォトレジスト60’は、不溶性ネガティブフォトレジストのための、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、又はNMP(N-メチル-2-ピロリドン)ベースのストリッパなどの除去剤、又は不溶性ポジティブフォトレジストのための、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、若しくはNMP(N-メチル-2-ピロリドン)系剥離剤を用いてリフトオフされ得る。図4Eに示すように、リフトオフプロセスは、i)不溶性フォトレジスト60’の少なくとも99%、及びii)その上の2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第2のシラン58Bを除去する。2つの異なるシラン58A、58Bは、基材53の上に無傷のままに残る。このプロセスは、2つの異なるシラン58A、58Bの各々を曝露させる。
【0232】
図4A図4Eに示されるプロセスは、凹部54の各々において2つの異なるシラン58A、58Bのパターンを生成する。フォトレジスト60の現像は、凹部54の各々における2つの異なるシラン58A、58Bのパターンを制御することを可能にする。
【0233】
2つの異なるシラン58A、58Bのパターンが生成された後、直交ポリマー10A、10Bが同時に塗布される。直交ポリマー10A、10Bの同時堆積は、両方のポリマー10A、10Bを同時に塗布することができる任意の好適な堆積技術を含むことができる。2つの異なるシラン58A、58Bの官能性及び直交ポリマー10A、10Bの官能基対により、直交ポリマー10A、10Bは、それぞれのシラン58A、58Bに選択的に付着することができる。したがって、直交ポリマー10Aは、シラン58Aに付着し、直交ポリマー10Bは、シラン58Bに付着する。これを図4Fに示す。
【0234】
図4Gでは、間隙領域56の上でシラン58Aに付着している直交ポリマー10Aは、例えば、研磨プロセスを使用して除去される。研磨プロセスは、それらの領域56において、下にある基材53に悪影響を及ぼすことなく、直交ポリマー10A及びいくつかの事例ではシラン58Aを間隙領域56から除去することができる化学スラリー(例えば、研削剤、緩衝液、キレート剤、界面活性剤、及び/又は分散剤を含む)を用いて実行され得る。代替的に、研磨は、研磨剤粒子を含まない溶液により実行してもよい。
【0235】
化学的スラリーは、化学機械研磨システムで使用されて、間隙領域56の表面を研磨し得る。研磨ヘッド/パッド又は他の研磨ツールは、直交ポリマー10A、10Bを凹部54に少なくとも実質的に無傷のままに残しながら、間隙領域56の上に存在し得る直交ポリマー10Aを研磨することができる。一例として、研磨ヘッドは、Strasbaugh ViPRR II研磨ヘッドであってもよい。
【0236】
クリーン化及び乾燥プロセスは、研磨後に実行され得る。クリーン化プロセスは、水浴及び超音波処理を利用し得る。水浴は、約22℃~約30℃の範囲の、比較的低温にて維持されてもよい。乾燥プロセスは、スピン乾燥、又は別の好適な技術を介した乾燥を伴い得る。
【0237】
図4Hに示されるように、プライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dは、それぞれの直交ポリマー10A、10Bに同時にグラフト化される。プライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dの同時グラフト化は、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合された蓋を使用する)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、又は別の好適なグラフト化方法を含み得る。これらの例示的な技術の各々は、プライマー16、18、20、22、又は34、36、38、40、又は34’、36’、38’、40’、水、緩衝液、及び触媒を含み得るプライマー溶液又は混合物を利用し得る。いずれのグラフト化方法でも、プライマー16、18、又は34、36、又は34’、36’は、直交ポリマー10Aに付着し、直交ポリマー10B又は間隙領域56に対して親和性を有さず、プライマー20、22、又は38、40、又は38’、40’は、直交ポリマー10Bに付着し、直交ポリマー10A又は間隙領域56に対して親和性を有さない。選択的親和性は、2つの異なるプライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dの官能性、及び直交ポリマー10A、10Bの官能基対に起因する。
【0238】
図5A図5Gは、2つの異なるシラン58A、58Bのパターンを生成するための別の例を描写する。この例示的な方法は、概して、基材53の表面の少なくとも一部分の上に2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aを堆積させることと(図5A)、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの上にフォトレジスト60を塗布することと、フォトレジストを現像して(不溶性部分60’を生成する)、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62と、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの被覆部分64と、を含むパターンを画定することと(図5C)、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62の官能基を変換して、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第2のシラン58Bを形成することと(図5D)、フォトレジスト60’を除去することと(図5E)、を含む。
【0239】
図5A図5Hに示される基材53は、ベース支持体の上にある層(例えば、パターン化された樹脂)中に画定された凹部54を有する多層構造の例である。
【0240】
図5Aに示されるように、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aは、凹部54及び間隙領域56の上を含む基材53の表面の上に塗布される。好適なシラン塗布方法の例としては、蒸着(例えば、YES法)、スピンコーティング、又は本明細書に開示される他の堆積方法が挙げられる。
【0241】
次いで、図5Bに示されるように、フォトレジスト60は、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58A上に塗布される。フォトレジスト60を塗布するために、本明細書に記載の任意の好適な堆積方法を使用することができる。不溶性部分60’を生成するためのフォトレジスト60の現像は、図4Bを参照して説明したように、使用されるフォトレジストのタイプに依存する。
【0242】
図5Cに示される例では、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62は、ネガ型フォトレジストが光に曝露されない領域で露呈され、現像液に可溶性であり、したがって、現像液によって除去される。対照的に、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの被覆部分64は、ネガ型フォトレジストが光に曝露されて不溶性部分60’を形成する領域にあり、不溶性部分60’は現像液に可溶性ではなく、したがって現像液によって除去されない。
【0243】
代替的に、図4Cに示される例では、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62は、ポジ型フォトレジストが光に曝露される領域で露呈され、現像液に可溶性であり、したがって、現像液によって除去される。対照的に、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの被覆部分64は、ポジ型フォトレジストが光に曝露されずに、不溶性部分60’を形成する領域にあり、不溶性部分60’は現像液に可溶性ではなく、したがって現像液によって除去されない。
【0244】
図5Dは、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第2のシラン58Bを形成するための、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの曝露部分62の官能基の変換を図示する。シラン58Aの官能基を置換してシラン58Bを形成することができる無添加経路及び/又は任意の他の技術を使用することができる。例えば、APTMSでは、NHS/EDC化学が変換のための所望の選択肢であるだろう。不溶性フォトレジスト60’は、曝露部分62の官能基変換中に、2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第1のシラン58Aの下にある部分64を保護する。
【0245】
2つの異なるシラン58A、58Bのうちの第2のシラン58Bを生成するために、曝露部分62で官能基を変換した後、図5Eに描写されるように、次いで、不溶性フォトレジスト60’が除去される。不溶性フォトレジスト60’は、図4Eを参照して説明したように、除去剤でリフトオフされてもよい。図5Eに示すように、リフトオフプロセスは、不溶性フォトレジスト60’の少なくとも99%を除去する。2つの異なるシラン58A、58Bは、基材53の上に無傷のままに残る。このプロセスは、2つの異なるシラン58A、58Bの各々を曝露させる。
【0246】
図5A図5Eに示されるプロセスは、凹部54の各々において2つの異なるシラン58A、58Bのパターンを生成する。フォトレジスト60の現像は、凹部54の各々における2つの異なるシラン58A、58Bのパターンを制御することを可能にする。
【0247】
2つの異なるシラン58A、58Bのパターンが生成された後、直交ポリマー10A、10Bが同時に塗布される。直交ポリマー10A、10Bの同時堆積は、両方のポリマー10A、10Bを同時に塗布することができる任意の好適な堆積技術を含むことができる。2つの異なるシラン58A、58Bの官能性及び直交ポリマー10A、10Bの官能基対により、直交ポリマー10A、10Bは、それぞれのシラン58A、58Bに選択的に付着することができる。したがって、直交ポリマー10Aは、シラン58Aに付着し、直交ポリマー10Bは、シラン58Bに付着する。これを図5Fに示す。
【0248】
図5Gでは、間隙領域56の上でシラン58Aに付着している直交ポリマー10Aは、例えば、図4Gを参照して説明したように、研磨プロセスを使用して除去される。
【0249】
図5Hに示されるように、プライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dは、それぞれの直交ポリマー10A、10Bに同時にグラフト化される。プライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dの同時グラフト化は、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合された蓋を使用する)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、又は別の好適なグラフト化方法を含み得る。これらの例示的な技術の各々は、プライマー16、18、20、22、又は34、36、38、40、又は34’、36’、38’、40’、水、緩衝液、及び触媒を含み得るプライマー溶液又は混合物を利用し得る。いずれのグラフト化方法でも、プライマー16、18、又は34、36、又は34’、36’は、直交ポリマー10Aに付着し、直交ポリマー10B又は間隙領域56に対して親和性を有さず、プライマー20、22、又は38、40、又は38’、40’は、直交ポリマー10Bに付着し、直交ポリマー10A又は間隙領域56に対して親和性を有さない。選択的親和性は、2つの異なるプライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dの官能性、及び直交ポリマー10A、10Bの官能基対に起因する。
【0250】
ここで図6を参照すると、別の例示的な方法が描写されている。図6に示される方法100は、第1のプライマーセット12又は30A又は30B又は30C又は30Dを第1のポリマー10Aにグラフト化して、第1の予めグラフト化したポリマーを生成することと(参照番号102)、第2のプライマーセット14又は32A又は32B又は32C又は32Dを第2のポリマー10Bにグラフト化して、第2の予めグラフト化したポリマーを生成することであって、第1のプライマーセット12又は30A又は30B又は30C又は30Dが、第2のプライマーセット14又は32A又は32B又は32C又は32Dとは異なり、第1のポリマー10Aが、第2のポリマー10Bとは異なる、生成することと(参照番号104)、基材53の表面の少なくとも一部分上に2つの異なるシラン58A、58Bのパターンを生成することと(参照番号106)、第1及び第2の予めグラフト化したポリマーを堆積させることであって、それによって、第1の予めグラフト化したポリマーが、2つの異なるシランのうちの第1のシランに付着し、第2の予めグラフト化したポリマーが、2つの異なるシランのうちの第2のシランに付着する、堆積させることと(参照番号108)、を含む。
【0251】
これらの例における第1及び第2のポリマーは、本明細書に開示される直交ポリマー10A、10Bのいずれかであってもよい。ポリマー10A、10Bをプレグラフト化するために、それぞれのポリマー10A、10Bは、それぞれのプライマーセット12、14、又は30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dと混合され、例えば、アミン末端プライマーに結合する第1の直交ポリマー10Aの活性化エステル官能基、又はBCN若しくはノルボルネン末端プライマーに結合する第2の直交ポリマー10Bのテトラジン官能基などが起こる反応に好適なグラフト化条件に曝露され得る。
【0252】
基材53の表面の少なくとも一部分(例えば、各凹部54内)への2つの異なるシラン58A、58Bのパターンの生成は、図4A図4E又は図5A図5Eを参照して説明したように達成することができる。
【0253】
図6に示される方法の一例では、第1及び第2の予めグラフト化したポリマーは、基材53上に同時に堆積される(各凹部内に2つの異なるシラン58A、58Bのパターンを有する)。プレグラフト化直交ポリマーの同時堆積は、両方のポリマーを同時に塗布することができる任意の好適な堆積技術を含んでもよい。2つの異なるシラン58A、58Bの官能性及びプレグラフト化直交ポリマーの官能基対により、プレグラフト化直交ポリマーは、それぞれのシラン58A、58Bに選択的に付着することができる。
【0254】
図6に示される方法の別の例では、第1及び第2の予めグラフト化したポリマーが順次堆積される。2つの異なるシラン58A、58Bの官能性及びプレグラフト化直交ポリマーの官能基対により、第1の予めグラフト化したポリマーは、シラン58Bに対する親和性を有することなく、シラン58Aに選択的に付着することができ、第2の予めグラフト化したポリマーは、シラン58Aに対する親和性を有することなく、シラン58Bに選択的に付着することができる。
【0255】
フローセルの使用方法
直交ポリマー10A、10Bに付着したプライマーセット12、14を含む、本明細書に開示されるフローセル50の例は、順次ペアエンドリード配列決定方法において使用され得る。この方法では、各直交ポリマー10A、10B上に生成されたそれぞれの順方向鎖を配列決定して除去し、次いで、それぞれの逆方向鎖を配列決定して除去する。
【0256】
直交ポリマー10A、10Bに付着されたプライマーセット30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dを含む本明細書に開示されるフローセル50の例は、同時ペアエンドリード配列決定法において使用され得る。本明細書に記載されるように、プライマーセット30A、32A、又は30B、32B、又は30C、32C、又は30D、32Dは、切断(線形化)化学が異なるポリマー10A、10Bで直交するように制御される。これにより、基材53の1つの領域で(例えば、直交ポリマー10Aにおいて)順方向鎖のクラスターを生成することができ、基材53の別の領域で(例えば、直交ポリマー10Bにおいて)逆方向鎖のクラスターを生成することができる。一例では、これらの領域は、(図3B及び図3Cに示されるように)凹部54内で互いに直接隣接している。これにより、同時にペアエンドリードを得ることができる。
【0257】
本開示を更に説明するために、実施例を本明細書に提供する。この実施例は例示目的のために提供され、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。
【0258】
非限定的な実施例
2つの異なる活性化エステルポリマーを合成した。
【0259】
第1の活性化エステルポリマーは、以下のモノマー:ペンタフルオロフェニルアクリレート及び4-アクリロイルモルホリンを25:75の比で用いて形成されたマルチアームコポリマーであった。RAFT重合は、樹状RAFT剤(中心分子としてペンタエリスリトールを含み、4つのアームの各々に2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸を含む)の存在下で行った。アルゴンブランケット及び75℃を含む典型的なRAFT重合条件下で、AIBNをラジカル開始剤として使用し、ジオキサンを溶媒として使用した。NMRの結果(ここでは再現せず)は、モノマーの重合が16時間後に60%の変換率に達したことを示す。
【0260】
第2の活性化エステルポリマーは、ペンタフルオロフェニルアクリレート及びポリジメチルアクリルアミドメチルプロピオン酸ドデシルトリチオカーボネート(すなわち、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、DDMAT末端、ジメチルアクリルアミドを含む)をRAFT剤として用いて形成された線状コポリマーであった。70℃で3時間を含む典型的なRAFT重合条件下で、AIBNをラジカル開始剤として使用し、ジオキサンを溶媒として使用した。NMRの結果(ここでは再現せず)は、2つのモノマーの重合が3時間後に35%の変換率に達したことを示す。
【0261】
第1(マルチアーム)及び第2(線状)のポリマーを、表面にAPTMSを有する別個の非パターン化HISEQ(商標)フローセル上にコーティングした。2つのポリマーの各々の中の活性化エステルは、フローセルの表面のアミノ基に付着することができた。
【0262】
ポリマーコーティングフローセルに、アミン末端P5及びP7オリゴヌクレオチドプライマーをグラフト化した。クラスター化及び配列決定の生化学条件を模倣するストレス条件を、グラフト化ポリマーコーティングフローセルに適用した。
【0263】
ストレス条件の適用後、CFRアッセイを実行して、プライマーのグラフティングが成功したかどうか、及びグラフト化プライマーが強固であるかどうかを決定した。CFRアッセイの間、プライマーグラフト化表面を、緩衝溶液中の蛍光タグ化(CAL FLUOR(登録商標)Red(CFR)色素)相補的オリゴヌクレオチドに曝露した。これらの蛍光タグ化相補的オリゴヌクレオチドのいくつかは、表面結合プライマーに結合し、過剰なCFRタグ化相補的オリゴヌクレオチドを洗い流した。次いで、表面を蛍光検出器で走査して、表面上のCFR強度を測定し、表面上のプライマーの濃度及び健康状態の定量的測定を提供した。
【0264】
CFRアッセイ結果、すなわち、グラフト化ポリマーコーティングフローセルからの平均測定強度を図7に示す。両方の材料は、蛍光タグ化相補的オリゴヌクレオチドを十分にグラフト化し、アミン末端P5及びP7オリゴヌクレオチドプライマーが、線状ポリマー及びマルチアームポリマーコーティングフローセルの各々に付着したことを示した。
【0265】
追記事項
以下により詳細に考察される、前述の概念及び更なる概念の全ての組み合わせが、(かかる概念が相互に矛盾しなければ)本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図されることを理解されたい。具体的には、本開示の終わりに現れる特許請求される主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図される。本明細書で明示的に用いられ、また参照により組み込まれる任意の開示においても出現し得る用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解すべきである。
【0266】
「一例(one example)」、「別の例(another example)」、「一例(an example)」などへの本明細書全体を通じての言及は、例に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの例に含まれており、他の例に存在していても、存在していなくてもよいことを意味している。加えて、文脈上明確に別段の指示がない限り、任意の例に関する記載の要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせられ得ることを理解すべきである。
【0267】
代表的な特徴
代表的な特徴は、以下の番号を付けた条項に記載されており、単独であってもよく、又は任意の組み合わせで、本明細書の本文及び/又は図面に開示される1つ以上の特徴と組み合わされてもよい。
【0268】
いくつかの実施例を詳細に説明してきたが、開示された例は修正され得ることを理解すべきである。したがって、これまでの説明は非限定的なものであると考えるべきである。
【0269】
1.フローセルであって、
基材と、
基材の表面の少なくとも一部分上の2つの異なるシランのパターンと、
2つの異なるシランのうちの第1のシランに付着した第1のポリマーと、
2つの異なるシランのうちの第2のシランに付着した第2のポリマーであって、第1及び第2のポリマーがそれぞれ、官能基対の第1の官能基及び第2の官能基を含み、官能基対が、活性化エステル官能基及びアジド官能基と、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基と、テトラジン官能基及びアジド官能基とからなる群から選択される、第2のポリマーと、
第1のポリマーにグラフト化された第1のプライマーセットと、
第2のポリマーにグラフト化された第2のプライマーセットと、を含み、第1及び第2のプライマーセットが異なる、フローセル。
2.
第1のポリマーが、第1のホモポリマーであり、第1の官能基が、活性化エステル官能基であり、
第2のポリマーが、第2のホモポリマーであり、第2の官能基が、アジド官能基である、条項1に記載のフローセル。
3.
第1のポリマーが、第1のホモポリマーであり、第1の官能基が、テトラジン官能基であり、
第2のポリマーが、第2のホモポリマーであり、第2の官能基が、活性化エステル官能基である、条項1又は2に記載のフローセル。
4.
第1のポリマーが、第1のホモポリマーであり、第1の官能基が、テトラジン官能基であり、
第2のポリマーが、第2のホモポリマーであり、第2の官能基が、アジド官能基である、条項1~3のいずれか一項に記載のフローセル。
5.
第1のポリマーが、第1のコポリマーであり、第1の官能基が、テトラジン官能基であり、第1のコポリマーが、アジドを含む追加の官能基を更に含み、
第2のポリマーが、第2のコポリマーであり、第2の官能基が、活性化エステル官能基であり、第2のコポリマーが、ヨウ化アリールを含む追加の官能基を更に含む、条項1~4のいずれか一項に記載のフローセル。
6.
第1のポリマーが、第1のコポリマーであり、第1の官能基が、アジド官能基であり、第1のコポリマーが、アクリルアミドを含む追加の官能基を更に含み、
第2のポリマーが、第2のコポリマーであり、第2の官能基が、活性化エステル官能基であり、第2のコポリマーが、アクリルアミドを含む追加の官能基を更に含む、条項1~5のいずれか一項に記載のフローセル。
7.
第1のポリマーが、第1のターポリマーであり、第1の官能基が、テトラジン官能基であり、第1のターポリマーが、アジド及びアクリルアミドを含む2つの追加の官能基を更に含み、
第2のポリマーが、第2のターポリマーであり、第2の官能基が、活性化エステル官能基であり、第2のターポリマーが、ヨウ化アリール及びアクリルアミドを含む2つの追加の官能基を含む、条項1~6のいずれか一項に記載のフローセル。
8.2つの異なるシランが、アミノシラン及びアルキニルシランと、ノルボルネンシラン及びアミノシランと、ノルボルネンシラン及びアルキニルシランとからなる群から選択される、条項1~7のいずれか一項に記載のフローセル。
9.方法であって、
基材の表面の少なくとも一部分上に2つの異なるシランのパターンを生成することと、
第1及び第2のポリマーを同時に堆積させることであって、それによって、第1のポリマーが、2つの異なるシランのうちの第1のシランに付着し、第2のポリマーが、2つの異なるシランのうちの第2のシランに付着する、堆積させることと、
第1のプライマーセットを第1のポリマーに、及び第2のプライマーセットを第2のポリマーに同時にグラフト化することと、を含み、第1及び第2のプライマーセットが異なる、方法。
10.2つの異なるシランのパターンを生成することが、
基材の表面の少なくとも一部分の上に2つの異なるシランのうちの第1のシランを堆積させることと、
2つの異なるシランのうちの第1のシランの上にフォトレジストを塗布することと、
フォトレジストを現像して、2つの異なるシランのうちの第1のシランの曝露部分と、2つの異なるシランのうちの第1のシランの被覆部分と、を含むパターンを画定することと、
2つの異なるシランのうちの第1のシランの曝露部分の官能基を変換して、2つの異なるシランのうちの第2のシランを形成することと、
フォトレジストを除去することと、を伴う、条項9に記載の方法。
11.2つの異なるシランのパターンを生成することが、
基材の表面の少なくとも一部分の上に2つの異なるシランのうちの第1のシランを堆積させることと、
2つの異なるシランのうちの第1のシランの上にフォトレジストを塗布することと、
フォトレジストを現像して、2つの異なるシランのうちの第1のシランの曝露部分と、2つの異なるシランのうちの第1のシランの被覆部分と、を含むパターンを画定することと、
2つの異なるシランのうちの第1のシランの曝露部分を除去して、対応する曝露基材部分を露呈させることと、
対応する曝露基材部分の上に2つの異なるシランのうちの第2のシランを堆積させることと、
フォトレジストを除去することと、を伴う、条項9又は10に記載の方法。
12.第1及び第2のポリマーがそれぞれ官能基対の第1の官能基及び第2の官能基を含むように第1及び第2のポリマーを合成することを更に含み、官能基対は、活性化エステル官能基及びアジド官能基と、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基と、テトラジン官能基及びアジド官能基とからなる群から選択される、条項9~11のいずれか一項に記載の方法。
13.合成が、可逆的付加開裂連鎖移動重合を伴う、条項12に記載の方法。
14.
第1のポリマーの合成が、活性化エステル官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、第1のモノマーが、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレート、及びビニルジメチルアズラクトンからなる群から選択され、
第2のポリマーの合成が、アジド官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、第2のモノマーが、構造I:
【0270】
【化36】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【0271】
【化37】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環である、条項12又は13に記載の方法。
15.
第1のポリマーの合成が、第1のモノマーと構造III:
【0272】
【化38】
であって、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される、構造IIIを有する第1のアクリルアミドモノマーとの重合を伴い、
第2のポリマーの合成が、第2のモノマーと構造III’:
【0273】
【化39】
であって、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される、構造III’を有する第2のアクリルアミドモノマーとの重合を伴い、
第1及び第2のアクリルアミドモノマーが、同じであるか、又は異なる、条項14に記載の方法。
16.
第1のポリマーの合成が、テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、第1のモノマーが、構造IV:
【0274】
【化40】
であって、式中、RがH又はメチルである、構造IV、及び構造V:
【0275】
【化41】
からなる群から選択され、
第2のポリマーの合成が、活性化エステル官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、第2のモノマーが、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレート、及びビニルジメチルアズラクトンからなる群から選択される、条項12~15のいずれか一項に記載の方法。
17.
第1のポリマーの合成が、第1のモノマーと、構造I:
【0276】
【化42】
を有する第1の追加のモノマーとの重合を伴い、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【0277】
【化43】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環であり、
第2のポリマーの合成が、第2のモノマーと第2の追加のモノマーとの重合を伴い、第2の追加のモノマーが、ヨウ化アリールを含む、条項16に記載の方法。
18.
第1のポリマーの合成が、第1のモノマーと、第1の追加のモノマーと、第2の追加のモノマーとの重合を伴い、第1の追加のモノマーが、構造I:
【0278】
【化44】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【0279】
【化45】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環であり、第2の追加のモノマーが、構造III:
【0280】
【化46】
を有し、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択され、
第2のポリマーの合成が、第2のモノマーと、第3の追加のモノマーと、第4の追加のモノマーとの重合を伴い、第3の追加のモノマーが、ヨウ化アリールを含み、第4の追加のモノマーが、構造III’:
【0281】
【化47】
を有し、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択され、
第2の追加のモノマー及び第4の追加のモノマーが、同じであるか、又は異なる、条項16又は17に記載の方法。
19.
第1のポリマーの合成が、テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、第1のモノマーが、構造IV:
【0282】
【化48】
であって、式中、RがH又はメチルである、構造IV、及び構造V:
【0283】
【化49】
からなる群から選択され、
第2のポリマーの合成が、アジド官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、第2のモノマーが、構造I:
【0284】
【化50】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【0285】
【化51】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環である、条項12~18のいずれか一項に記載の方法。
20.第1のポリマーの合成が、
活性化エステル又はアミン官能基を含む第1のモノマーを重合することと、
活性化エステル又はアミン官能基をテトラジン官能基で置換することと、を伴う、条項12~19のいずれか一項に記載の方法。
21.方法であって、
第1のプライマーセットを第1のポリマーにグラフト化して、第1の予めグラフト化したポリマーを生成することと、
第2のプライマーセットを第2のポリマーにグラフト化して、第2の予めグラフト化したポリマーを生成することであって、第1のプライマーセットが、第2のプライマーセットとは異なり、第1のポリマーが、第2のポリマーとは異なる、生成することと、
基材の表面の少なくとも一部分上に2つの異なるシランのパターンを生成することと、
第1及び第2の予めグラフト化したポリマーを堆積させることであって、それによって、第1の予めグラフト化したポリマーが、2つの異なるシランのうちの第1のシランに付着し、第2の予めグラフト化したポリマーが、2つの異なるシランのうちの第2のシランに付着する、堆積させることと、を含む、方法。
22.第1及び第2の予めグラフト化したポリマーが、同時に堆積される、条項21に記載の方法。
23.第1及び第2の予めグラフト化したポリマーが、順次堆積される、条項21に記載の方法。
24.第1のプライマーセットをグラフト化する前及び第2のプライマーセットをグラフト化する前に、第1及び第2のポリマーがそれぞれ、官能基対の第1の官能基及び第2の官能基を含むように、第1及び第2のポリマーを合成することを更に含み、官能基対が、活性化エステル官能基及びアジド官能基と、テトラジン官能基及び活性化エステル官能基と、テトラジン官能基及びアジド官能基とからなる群から選択される、条項21~23のいずれか一項に記載の方法。
25.合成が、可逆的付加開裂連鎖移動重合を伴う、条項24に記載の方法。
26.
第1のポリマーの合成が、活性化エステル官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、第1のモノマーが、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレート、及びビニルジメチルアズラクトンからなる群から選択され、
第2のポリマーの合成が、アジド官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、第2のモノマーが、構造I:
【0286】
【化52】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【0287】
【化53】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環である、条項24又は25に記載の方法。
27.
第1のポリマーの合成が、第1のモノマーと構造III:
【0288】
【化54】
であって、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される、構造IIIを有する第1のアクリルアミドモノマーとの重合を伴い、
第2のポリマーの合成が、第2のモノマーと構造III’:
【0289】
【化55】
であって、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択される、構造III’を有する第2のアクリルアミドモノマーとの重合を伴い、
第1及び第2のアクリルアミドモノマーが、同じであるか、又は異なる、条項26に記載の方法。
28.
第1のポリマーの合成が、テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、第1のモノマーが、構造IV:
【0290】
【化56】
であって、式中、RがH又はメチルである、構造IV、及び構造V:
【0291】
【化57】
からなる群から選択され、
第2のポリマーの合成が、活性化エステル官能基を含む第2のモノマーの重合を伴い、第2のモノマーが、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ペンタフルオロフェニルメタクリレート、及びビニルジメチルアズラクトンからなる群から選択される、条項24~27のいずれか一項に記載の方法。
29.
第1のポリマーの合成が、第1のモノマーと、構造I:
【0292】
【化58】
を有する第1の追加のモノマーとの重合を伴い、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【0293】
【化59】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環であり、
第2のポリマーの合成が、第2のモノマーと第2の追加のモノマーとの重合を伴い、第2の追加のモノマーが、ヨウ化アリールを含む、条項28に記載の方法。
30.
第1のポリマーの合成が、第1のモノマーと、第1の追加のモノマーと、第2の追加のモノマーとの重合を伴い、第1の追加のモノマーが、構造I:
【0294】
【化60】
を有し、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【0295】
【化61】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環であり、第2の追加のモノマーが、構造III:
【0296】
【化62】
を有し、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択され、
第2のポリマーの合成が、第2のモノマーと、第3の追加のモノマーと、第4の追加のモノマーとの重合を伴い、第3の追加のモノマーが、ヨウ化アリールを含み、第4の追加のモノマーが、構造III’:
【0297】
【化63】
を有し、式中、R及びRが、独立して、水素、アルキル、アルキルアミノ、アルキルアミド、アルキルチオ、アリール、グリコール、及びそれらの任意選択で置換された変異体からなる群から選択され、
第2の追加のモノマー及び第4の追加のモノマーが、同じであるか、又は異なる、条項28又は29に記載の方法。
31.
第1のポリマーの合成が、テトラジン官能基を含む第1のモノマーの重合を伴い、第1のモノマーが、構造IV:
【0298】
【化64】
であって、式中、RがH又はメチルである、構造IV、及び構造V:
【0299】
【化65】
からなる群から選択され、
第2のポリマーの合成が、構造I:
【0300】
【化66】
を有する第2のモノマーの重合を伴い、式中、Rが、水素又はアルキルであり、Rが、水素又はアルキルであり、Lが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基を含む、リンカーであり、Aが、構造II:
【0301】
【化67】
であって、式中、Rが、水素又はアルキルである、構造IIを有するN置換アミドであり、Eが、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子の線状鎖、並びにその鎖内の炭素原子及び任意の窒素原子上の任意選択の置換基であり、Zが、任意選択の窒素含有複素環である、条項24~30のいずれか一項に記載の方法。
32.第1のポリマーの合成が、
活性化エステル又はアミン官能基を含む第1のモノマーを重合することと、
活性化エステル又はアミン官能基をテトラジン官能基で置換することと、を伴う、条項24~31のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】