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特表2024-518892車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置
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  • 特表-車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置 図1
  • 特表-車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置 図2
  • 特表-車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20240426BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240426BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20240426BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240426BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240426BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20240426BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60K6/48 ZHV
B60K6/52
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/00 900
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564504
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022059064
(87)【国際公開番号】W WO2022238052
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021112440.9
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュナッパウフ・フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】エバル・トーマス
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB53
3D202CC13
3D202CC22
3D202CC48
3D202DD05
3D202DD20
3D202DD22
3D202DD24
3D202FF02
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC11
5H125BA05
5H125CA02
5H125CA15
5H125DD16
5H125EE06
5H125EE42
(57)【要約】
本発明は、少なくとも一つの電子的な制御ユニットを備え、一次車軸に対して設けられた一次原動機としての少なくとも一つの第一の電気駆動モータを備え、さらに、二次車軸に対して設けられた二次原動機としての少なくとも一つの第二の電気駆動モータを備えた、車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置に関する。本発明により制御ユニットは、回転トルク制限機能を実行する回転トルク制限モジュールを備え、その回転トルク制限モジュールは、フィルタ処理された運転者リクエスト信号に先行する、定められた信号に基づいて、特に、単軸運転から二軸運転への移行をもたらし得る、予想される全輪駆動係数の変更が検知されると、個別の目標トルク自体が調整される前に、電気駆動モータの個別の目標トルクに対する回転トルク制限値が、予定される変更後の全輪駆動係数に応じて跳躍的に事前調整されるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電子的な制御ユニット(3)を備え、一次車軸(PA)に対して設けられた一次原動機としての少なくとも一つの第一の電気駆動モータ(1)を備え、さらに、二次車軸(SA)に対して設けられた二次原動機としての少なくとも一つの第二の電気駆動モータ(2)を備えた、
車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置であって、
前記制御ユニット(3)は、回転トルク制限機能を実行する回転トルク制限モジュール(6)であって、フィルタ処理された運転者リクエスト信号(FP_int)に先行する定められた信号(FP_roh)に基づいて、全輪駆動係数(FAWD_soll)の予想される変更が検知されると、個別の目標トルク(M_soll_1,M_soll_2)自体が調整される前に、前記電気駆動モータ(1,2)の個別の前記目標トルク(M_soll_1,M_soll_2)に対する回転トルク制限値(M_soll_1_grenz,M_soll_2_grenz)が、予定される変更後の前記全輪駆動係数(FAWD_soll)に応じて跳躍的に事前調整される構成の回転トルク制限モジュール(6)を備えている制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、フィルタ処理された前記運転者リクエスト信号(FP_int)に先行する信号としては、アクセルペダルセンサ(FP)のフィルタ処理されていない前記原信号(FP_roh)、または、スリップ状況の検知、前記一次原動機(1)のオーバーヒートであることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置において、運転者の定める動的な走行態様(“チップイン”)が検知される場合に、前記全輪駆動係数の変更があるために個別の前記目標トルク(M_soll_1,M_soll_2)に対する回転トルク制限が必要なときには、前記回転トルク制限機能が実行されることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の制御装置のためのコンピュータプログラム製品の形態の回転トルク制限モジュール(6)を備えた電子的な制御ユニット(3)。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の制御装置の電子的な制御ユニット(3)のためのコンピュータプログラム製品(6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの電子制御ユニットを備え、一次車軸(例えばリアアクスル)に対して設けられた第一の電気駆動モータを備え、さらに、二次車軸(例えばフロントアクスル)に対して設けられた第二の電気駆動モータを備えた、車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1から、車軸ごとに異なる二つの駆動ユニットを備えた車道連結型のハイブリッド車両が公知である。異なる駆動ユニット、特に内燃機関および電気駆動モータは、異なる動的特性を備えている、つまり、個々の車軸における目標トルクを同じように速く設定することができない。特に、電気駆動モータによりトルクを増加させることは、内燃機関によりトルクを同じだけ増加させるよりもはるかに速くできる。特許文献1から公知の電子制御は、特に、これらの異なる駆動ユニットの問題に対処する。
【0003】
いわゆる車道連結型の全輪駆動車両では、一次原動機と二次原動機は、クラッチを介してではなく、専ら車輪を介して、車道により駆動的に連結されている。このような車道連結型の全輪駆動車両は、“アクスル・スプリット(Axle-Split)(車軸分離型)”車両とも呼ばれる。この種の全輪駆動車両は、通常、第一の動作モード(好ましくは効率が最適化された駆動モード)では、一次原動機単独で動作し(単軸運転)、二次原動機が自動的に起動および停止可能な第二の動作モード(好ましくは出力が最適化された駆動モード)では、全輪駆動車両として両方の駆動原動機で運転(二軸運転)することもできる。
【0004】
以下では、“電気駆動モータ”を“電気モータ”とも略称し、“駆動回転トルク”を“トルク”とも略称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102014200427号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、走行出力、効率並びに快適性の観点で上述の類の全輪駆動車両を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明により、独立特許請求項の主題により解決される。従属特許請求項は、本発明の有利な発展態様である。
【0008】
本発明は、少なくとも一つの電子的な制御ユニットを備え、一次車軸に対して設けられた一次原動機としての少なくとも一つの第一の電気駆動モータを備え、二次車軸に対して設けられた二次原動機としての少なくとも一つの第二の電気駆動モータを備えた、車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置に関する。本発明によれば、この制御ユニットは、回転トルク制限モジュールを備えている。この回転トルク制限モジュールは、フィルタ処理された運転者リクエスト信号に先行する定められた信号に基づいて、全輪駆動係数の予想される変更が検知されると、個別の目標トルク自体が調整される前に、電気駆動モータの個別の目標トルクに対する回転トルク制限値が、予定される変更後の全輪駆動係数に応じて跳躍的に事前調整される構成とされている。
【0009】
好ましくは、運転者の定める動的(ダイナミック)な走行態様(運転スタイル)が(例えばアクセルペダルのフィルタ処理されていない原信号の勾配に基づいて)検知される場合に、全輪駆動係数の変更があるために個別の目標トルクに対する回転トルク制限が必要なときには、回転トルク制限機能が実行される。
【0010】
好ましくは、フィルタ処理された運転者リクエスト信号に先行する信号として、フィルタ処理されていないアクセルペダルセンサの原信号(特に、運転者の動的な走行態様)、または、スリップ状況の検知、または、一次原動機のオーバーヒートが定められている。
【0011】
回転トルク制限機能は、リミット(回転トルク制限値)を、全輪駆動係数が(二軸運転の方に或いはまた単軸運転の方に)変化し且つリミットが目標トルクから(まだ)必要とされないときに、常に計算し、いつでもリミットをデジタル式に変更する。つまり、トラクション運転についての情報が変化する場合の惰性走行または部分的に負荷がかかった運転においてであっても、或いは逆に、惰性走行についての情報が変化する場合のトラクション運転においてであってもである。主な適用場面は、好ましくは、(後の方でもっと詳しく定義するように、運転者の定める動的な走行態様の場合の)“チップイン”であり、目標トルク(若しくは個別の目標トルクそれぞれ)がリミットに近付いて行くとともに再配分が行われるときである。
【0012】
本発明は、以下の考察に基づいている:
【0013】
本発明は、単軸駆動運転から二軸(全輪)駆動運転への移行をもたらす(特に運転者リクエストの変更後の)駆動出力の配分に関し、その二軸駆動運転では、いわゆる全輪駆動係数(AWD)が、予め電気機械への目標トルクの配分の比率を車軸ごとに設定する。
【0014】
これは、電気的な二次原動機が、同じく電気的な一次原動機のある場合に、自動的に追加で起動されるやり方に関するものである一方、他方において、単軸運転から二軸運転への移行時に一次原動機の目標トルクを変更するやり方にも関する。従来技術ではこのとき、通常は、トラクションを高めるように車軸への駆動トルク配分を行う、走行安定指向の運転が重視される。しかしながら、本発明は主に、“ガクン”と感じられる瞬間的な揺れ(瞬間の急激な動き)(Ruck)をなくすことで快適性を向上させることに注力する。
【0015】
例えば、未公開の独国特許出願第102021105341号には、少なくとも一つの電子制御ユニットを備え、一次車軸に対して設けられた第一の電気駆動モータ(一次原動機)を備え、さらに、二次車軸に対して設けられた第二の電気駆動モータ(二次原動機)を備えた、車道連結型の全輪駆動車両を動作させるための制御装置が既に述べられている。この制御ユニットは、運転者の定める動的な走行態様が、運転者リクエスト勾配に基づいて検知されると、一次原動機が作動し且つ二次原動機が停止している(単軸の)動作態様の間、予め設定された時間枠で、新たな運転者リクエストにより予め設定される総目標トルクの推移が割り出される構成のダイナミック機能モジュールを内蔵している。これは、たとえ予め設定された総目標トルクの推移が一次原動機の最大限可能なトルクを下回る場合でも、同じく予め設定された車軸配分係数に応じて一次原動機の目標トルクを低下させるとともに二次原動機の目標トルクを起動し且つ増加させることにより調整される。
【0016】
ここで、二次原動機を起動する必要がある場合、二次原動機の磁場を落とした状態からスタートして励磁するのにかかる時間は、予め設定された遅延時間として前もって決められている。この遅延時間の間、一次原動機が単独で必要な総目標トルクをまかなう。その後ようやく、両方の電気駆動モータの目標トルクが、予め設定された全輪配分係数に応じて同期を取りながら調整される。
【0017】
運転者の定める動的な走行態様は、実際の運転者リクエスト勾配が、予め設定された閾値を超える場合に、運転者リクエスト勾配に基づいて検知されることが好ましい。
【0018】
予め設定される総目標トルクの推移は、運転者リクエスト勾配に応じて決定されるとともに、運転者リクエストにより予め設定された目標トルクと実際に使える一次原動機のトルクとの差に応じて決定されることが好ましい。
【0019】
この種の車道連結型の電気全輪駆動システムを改善するために、本発明は、例えば各走査タスクにおいて、新たな全輪駆動リクエストの配分(“全輪駆動係数”)が必要となりそうな場合に、それぞれが電気機械を備えた二つの車軸への、エネルギー源(例えばHV貯蔵装置)の駆動出力の的確な配分のための(“ガクン”とくる不快な揺れを防止する)出力調整に関する。
【0020】
車軸ごとにそれぞれ(少なくとも)一つの電気機械が組み込まれ、それら全体に、貯蔵源(例えば高電圧貯蔵装置)が供給できると思われるものを上回る出力が割り振られる可能性がありそうなら、車軸ごとの電気機械にはそれぞれ、制限された所定の出力が的確に割り振られる必要がある。
【0021】
この制限付きの出力の割り振りは、本発明により、基本的に、制御ユニットの適切なプログラミングによって回転トルク制限値に変換される。“ガクン”とくる揺れをなくすために、この回転トルク制限値は、坂道形に“変更され始められる”ようにしてもよい。ただしこれは、出力シフトにより一時的に望ましくない全輪駆動配分をもたらす可能性がある。
【0022】
運転者の出力リクエストは、基本的に、フィルタ処理されたアクセルペダルセンサ信号から総計目標トルクとして検出される。フィルタ処理されたこの総計目標トルクに応じて全輪駆動係数が決定され、この係数から、車軸若しくは電気機械の個別の目標トルクが得られ、これらのトルクが次に、例えば“フェーダ”を用いて電気機械により高い利便性で設定される。フェーダとは、全輪駆動係数の変更時の適切な全輪駆動フェード機能のことである。
【0023】
総計目標トルクの急な変更時(例えば、“パンチ(Punch)”或いは“チップイン(TipIn)”とも呼ばれる惰性走行からの突然の全負荷要求時)に、“ガクン”とくる揺れが生じる場合がある。これは、比較的ゆっくりとした全輪駆動フェード機能が二軸運転のための新たな回転トルク制限値を決める前に、先ず一次車軸の電気機械が単軸運転から出発してオーバーシュートするためである。
【0024】
従って、本発明により、フィルタ処理された総計目標トルク(フィルタ処理された目標(トルク)軌道(目標パス)(Soll-Pfad))よりも素早く、来るべき急な全輪駆動係数の変更を推定させる定められた信号(フィルタ処理されていない目標軌道)に基づいて、来るべき全輪駆動係数に対する回転トルク制限値が、デジタル式に(つまり、跳躍的に且つ非坂道形に)事前設定され、つまり、来るべき全輪駆動係数に関して電気機械の個別の目標トルクが実際に調整される前に事前設定される。
【0025】
つまり、別の言い方をすると、フィルタ処理された比較的遅い目標軌道によってまだ操作が加えられ始めていない出力は、フィルタ処理されていない比較的速やかな目標軌道により、デジタル式に、所望の全輪駆動係数比で、電気機械ごとにそれぞれの最大出力特性ラインを考慮して分けておくことができる。その後、フィルタ処理された目標軌道が、分けられた出力を操作し始めると、その出力は、事前に調整された回転トルク制限値により、すでに適正に配分されたものになっている。
【0026】
フィルタ処理されていない目標軌道は、好ましくはアクセルペダルセンサの原信号とすることができる。しかしそれは、一次車軸の電気機械のオーバーヒートまたはスリップ状況の検知であってもよい。
【0027】
特に単軸運転から二軸運転への移行における再配分の準備としてフィルタ処理されていない目標軌道を用いることは、フィルタ処理された目標軌道に先んじて行われ、これにより、新たな全輪駆動係数は、フィルタ処理された目標軌道に応じて出力が実際に変更され始める前に、出力調整部に送信することができる。
【0028】
本発明は、特に、一次車軸上の第一の電気(駆動)モータおよび二次車軸のための第二の電気(駆動)モータの二つの電気駆動モータを備えた電動車両のための、過渡的なプロセスにおける全輪駆動の仕方に関する。
【0029】
効率の理由から、電動全輪駆動車両の場合には、できるだけ長く単軸運転(後輪駆動または前輪駆動)で走行することが合理的なこともある。好ましくも単軸運転において駆動される車軸は、一次車軸と呼ばれる。
【0030】
動的(ダイナミック)な(“非定常的な”)走行態様(運転スタイル)の場合には、車両のスポーティな出力(パフォーマンス)応答(“レスポンス(Response)”または“パンチ(Punch)”とも呼ばれる。)を生み出すために、出力の理由で、第二の車軸(二次車軸)を追加で起動することが合理的である。動的な走行態様は、特に、(“チップイン”とも呼ばれる)急勾配のアクセルペダル操作に基づいて検知される。
【0031】
特に、“チップイン”検知後、予め設定された車軸配分係数を用いて、総目標トルクが、両方の電気モータにより両方の車軸に設定される。このとき、一次原動機の目標トルクは、引き下げられ、二次原動機の目標トルクは引き上げられる。
【0032】
本発明により、今や、総トルクの設定だけが最優先事項に含まれるのではなく、効率、出力および快適性に関して車軸トルクの最適な配分も考慮される。
【0033】
以下の実施例において図面に基づいて本発明の詳細を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による回転トルク制限機能にとって本質的な構成要素を備えた本発明による車道連結型の電気全輪駆動車両の概略図である。
図2】本発明による制御装置を用いない場合の技術的問題のグラフを表す図である。
図3図2に示された問題の本発明による可能な解決手段のグラフを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1には、単軸運転において、例えば一次車軸としてのリアアクスルPAに駆動原動機として作用する一次原動機としての第一の電気モータ1を備え、二軸運転において、二次車軸としてのフロントアクスルSAに駆動原動機として作用する二次原動機としての第二の電気モータ2を備えた、いわゆる車道連結型の全輪駆動車両が示されている。電気モータ1,2は、電気的機械または電気機械とも称する。両方の電気機械の総出力若しくは総回転トルク(M_soll_ges=M_soll_1+M_soll_2)は、フィルタ処理された運転者リクエスト信号FP_intにより予め設定され、高電圧貯蔵装置HVの最大可能出力により制限される:M_HV=M_soll_ges_grenz。
【0036】
一次原動機1は、メカトロニクス的につながった専用のサブ制御ユニット4を備えていてもよく、二次原動機2は、メカトロニクス的につながった専用のサブ制御ユニット5を備えていてもよい。両方のサブ制御ユニット4,5は、中央電子制御ユニット3に接続されている。
【0037】
電気全輪駆動車両の動作を制御する方法は、中央電子制御ユニット3により実行され、中央電子制御ユニット3は、プラグラム可能な相応の機能モジュール6並びに必要なセンサ、アクチュエータへの接続部および/またはオプションのサブ制御ユニット4,5への接続部を備えている。本発明により、制御ユニット3には、例えば、ソフトウェア・プログラム(コンピュータプログラム製品)の形態の回転トルク制限機能モジュール6が内蔵されており、その設計および機能の仕方については、特に、図2,3についての記述において詳細に説明する。
【0038】
図2図3に代わるものでもある)は、x軸に時間tが、y軸にトルクM(回転トルク)がプロットされたグラフを示している。太い実線は、貯蔵装置出力を、最大可能出力M_HVとして示している。細い実線により、ここではゼロまたは惰性走行から全負荷(“パンチ(Punch)”または“チップイン(TipIn))への移行時のアクセルペダル位置に基づいた、フィルタ処理された総計目標トルクFP_intの形態の運転者リクエストが示されている。この運転者リクエストFP_intは、割り出された総目標トルクの推移M_soll_gesに対応する。ここに示される“パンチ”状況または“チップイン”状況を通して、時刻t1において、予め全輪駆動係数FAWD_soll(例えば50:50)が設定された二軸運転への、単軸運転からの移行が行われる。
【0039】
図2に示されているように、本発明によるデジタル式の回転トルク制限機能モジュール6がなければ、予め設定された、一次原動機1に対する回転トルク制限M_soll_1_grenzは、坂道形に減少するので、一次原動機1の目標回転トルクM_soll_1は、先ず比較的“急激に(ガクンと)”上がり、そしてそれからゆっくりと、二次原動機2が立ち上がるのに伴い(快適性の観点では重要でないため、ここでは詳細に示されていない。)減少することになろう。フェード時間Δtが経過してようやく、予め設定された全輪駆動係数FAWD_soll(例えば50:50)が後から達成される。
【0040】
一次原動機1の目標トルクM_soll_1が二点鎖線で表されている。一次原動機1によって設定可能な最大トルクは、M_soll_1_grenzが付されている。
【0041】
図2のグラフは、最初、全輪駆動配分係数FAWD_soll=100:0の惰性走行を示している。二次原動機2は最初は停止状態にあるので、トルクM_soll_2はゼロである。
【0042】
時刻t1において、アクセルペダル位置FP_intの急勾配により、動的な運転者リクエスト(チップイン状況)が検知される。
【0043】
図3において、本発明に本質的な回転トルク制限機能モジュール6をより詳しく説明する。
【0044】
回転トルク制限モジュール6を適切に設計若しくはプログラムすることにより、回転トルク制限機能を実施することができる。この場合、時刻t1の直前である時刻t0において、定められた信号、つまり、フィルタ処理された運転者リクエスト信号FP_intに先行するフィルタ処理されていないアクセルペダルセンサの原信号FP_rohに基づいて、全輪駆動係数FAWD_sollの(ここでは、100:0から50:50への)予想される変更が検知されると、個別の目標トルクM_soll_1およびM_soll_2自体が調整される前に、電気駆動モータ1,2の個別の目標トルクM_soll_1およびM_soll_2に対する回転トルク制限値M_soll_1_grenzおよびM_soll_2_grenzが、予定される変更後の全輪駆動係数FAWD_soll50:50に応じて跳躍的に事前調整される。
【0045】
例えば、本発明による回転トルク制限機能は、特に、単軸運転中、運転者の定める動的な走行態様が、アクセルペダルセンサのフィルタ処理されていない原信号FP_rohの勾配に基づいて検知される際、単軸運転から二軸運転へ移行するという意味での全輪駆動係数FAWD_sollの変更が検知されるときにだけ実行することができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】