(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ回転度を増大させる方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20240426BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240426BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20240426BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240426BHJP
C08L 33/24 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G02C7/04
C08L83/04
C08L101/14
C08L33/04
C08L33/24
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023565991
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 GB2022051021
(87)【国際公開番号】W WO2022229605
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン ポール
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム バスカール
【テーマコード(参考)】
2H006
4J002
【Fターム(参考)】
2H006BC02
2H006BC07
4J002BG071
4J002BG131
4J002CP031
4J002GB01
4J002GP00
(57)【要約】
近視の進行又は増悪を抑え又は遅らせるのに用いられるコンタクトレンズ(101)、ならびにかかるレンズ(101)を製造する方法及びかかるレンズ(101)を使用する方法。レンズの光学ゾーン(102)は、ベース度数を提供する曲率を備えた中央領域(105)を有する。光学ゾーン(102)は、中央領域(105)を円周方向に包囲した環状領域(103)を有する。環状領域(103)は、トリートメントゾーン(107)を有し、このトリートメントゾーンは、中央領域(105)だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域(105)及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる特性を有する。コントラスト減少を引き起こす特性は、環状領域(103)回りの経線につれて変化する。環状領域(103)を包囲した周辺ゾーン(104)は、あらゆる経線に関して一定の厚さプロフィールを有し、又はレンズ(101)の回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の進行又は増悪を抑え又は遅らせる際に用いられるコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、光学ゾーン及び前記光学ゾーンを包囲した周辺ゾーンを有し、前記光学ゾーンは、
中央領域を有し、前記中央領域は、第1の光軸及びベース度数をもたらしかつ中心が前記第1の光軸上にある曲率中心に位置する曲率を有し、
環状領域を有し、前記環状領域は、前記中央領域を円周方向に包囲し、前記環状領域は、トリートメントゾーンを有し、前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる特性を有し、前記コントラスト減少を引き起こす前記特性は、前記環状領域周りの経線につれて変化し、
前記周辺ゾーンは、あらゆる経線に関して一定の厚さプロフィール又は前記レンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈する、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈し、前記周辺ゾーンの前記厚さプロフィールは、鏡面対称軸を備えていない、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈し、前記周辺ゾーンの前記厚さは、前記コンタクトレンズの一方の半部について一定であり、前記コンタクトレンズの他方の半部について変化している、請求項1又は2記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記コンタクトレンズの前記他方の半部の前記変化は、前記コンタクトレンズの他方の半部についてプリズムバラストを提供する、請求項3記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈し、前記周辺ゾーンの前記厚さは、前記コンタクトレンズ周りに周期的に変化している、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記周期的変化は、正弦波、三角波又はのこぎり波である、請求項5記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記環状領域は、前記中央領域を通して見た物体の像と比較して、前記環状領域を通して見た物体の像のコントラストを実質的に減少させることはない領域によって区分された複数のトリートメントゾーンを有する、請求項1~6のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記トリートメントゾーンは、前記環状領域の周囲に沿ってぐるりと一定間隔で配置されている、請求項7記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記トリートメントゾーンは、前記中央領域を通して見た物体の像と比較して、前記トリートメントゾーンを通して見た物体の像のコントラストを50%以上減少させる特性を備えた強いコントラスト減少領域を有し、前記強コントラスト減少領域の面積は、前記環状領域の面積の50%未満である、請求項1~8のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記トリートメントゾーンは、前記中央領域を通して見た物体の像と比較して、前記トリートメントゾーンを通して見た物体の像のコントラストを10%~50%減少させる特性を備えた弱いコントラスト減少領域をさらに有する、請求項8記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
トリートメントゾーンは、加入度数を提供する曲率を備えた加入度数領域を有する、請求項1~10のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記加入度数領域は、0.5D以上の加入度数を提供する曲率を有する、請求項11記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記加入度数領域は、少なくとも2.0Dの最大加入度数を提供する曲率を有し、前記トリートメントゾーンは、0D~1.5Dの低加入度数をもたらす曲率を備えた低加入度数領域をさらに有する、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記環状領域は、前記ベース度数を提供しかつ中心が前記中央領域の前記曲率中心上に位置する前記曲率を備えた少なくとも1つのベース度数領域を有するのがよい、請求項1~13のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記曲率は、前記コンタクトレンズの前方表面の曲率である、請求項11~14のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記トリートメントゾーンは、前記中央領域を通過した光と比較して、前記トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴を有する、請求項1~15のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記特徴は、前記環状領域の前方表面上に設けられている、請求項16記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記トリートメントゾーンは、前記トリートメントゾーンを通過した光の回折を生じさせる特性を備えている、請求項1~17のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
前記中央領域は、形状が実質的に円形であり、直径が2~7mmである、請求項1~18のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
前記環状領域は、前記中央領域の周囲から半径方向外方に0.5mm~1.5mm延びている、請求項1~19のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項21】
前記ベース度数は、0.5D~-15.0Dである、請求項1~20のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項22】
前記コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、シリコーンヒドロゲル材料、又はこれらの混合物から成る、請求項1~21のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項23】
前記コンタクトレンズは、レーシング(lathing)プロセスを用いて作られている、請求項1~22のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
【請求項24】
コンタクトレンズを製造する方法であって、前記方法は、
コンタクトレンズを形成するステップを含み、前記コンタクトレンズは、光学ゾーン及び前記光学ゾーンを包囲した周辺ゾーンを有し、前記光学ゾーンは、
中央領域を有し、前記中央領域は、第1の光軸及びベース度数をもたらしかつ中心が前記第1の光軸上にある曲率中心に位置する曲率を有し、
環状領域を有し、前記環状領域は、前記中央領域を円周方向に包囲し、前記環状領域は、トリートメントゾーンを有し、前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる特性を有し、前記コントラスト減少を引き起こす前記特性は、前記環状領域周りの経線につれて変化し、
前記周辺ゾーンは、あらゆる経線に関して一定の厚さプロフィール又は前記レンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈する、方法。
【請求項25】
近視の進行を軽減する方法であって、
請求項1~21のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズを、様々な近見距離に合わせて調節が可能な近視の人に提供するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示(本発明)は、コンタクトレンズの回転度を増大させることによって近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられるコンタクトレンズに関する。本開示はまた、かかるレンズを製造する方法及びかかるレンズを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近視(近眼)は、子供や大人を含むかなり多くの人々に影響を及ぼしている。近視眼は、遠くの物体からの到来光を網膜の前に位置する場所に合焦させる。その結果、光は、網膜の前に位置する平面に向かって収束し、そして網膜に向かって発散して網膜への到達時に焦点が合わなくなる。近視を矯正するための従来型レンズ(例えば、眼鏡レンズ又はコンタクトレンズ)は、遠くの物体からの到来光の収束具合を減少させ(コンタクトレンズに関して)、又は発散を生じさせ(眼鏡レンズに関して)、その後に、到来光は、眼に達し、その結果、焦点の位置は、網膜上にずらされるようになる。
【0003】
数十年前、子供又は若い人の近視の進行を遅らせ又は抑えるには、矯正不足にし、すなわち、焦点を網膜に近づけるが、完全には網膜上に移動させないようにすることが示唆された。しかしながら、このアプローチの必然的な結果として、近視を完全に矯正するレンズを用いて得られる遠見視力と比較して、遠見視力が低下する。さらに、矯正不足が増悪中の近視を制御する上で効果的であるということは、現在では疑わしいと考えられている。より最近のアプローチは、遠見視力の完全矯正を提供する領域と、矯正不足にし又は近視によるデフォーカスを意図的に引き起こす領域との両方を有するレンズを提供することである。レンズの完全矯正領域を通過した光と比較して、レンズのある特定の領域における光の散乱を増大させるレンズもまた提供される場合がある。これらのアプローチは、子供又は若い人の近視の増悪又は進行を抑え又は遅らせることができ、しかも良好な遠視野を提供できることが示唆されてきた。
【0004】
デフォーカスをもたらす領域を有するレンズの場合、遠見視力の完全矯正をもたらす領域は、ベース度数(ベースパワー)領域と通称され、矯正不足をもたらし又は近視によるデフォーカスを意図的に引き起こす領域は、加入度数領域又は近視デフォーカス領域と通称される(ジオプトリーで表される度数は、遠見視力領域の度数よりも幾分プラス(+)又は幾分マイナス(-)だからである)。加入度数領域の表面(典型的には、前方表面(anterior surface))は、遠用度数領域の曲率半径よりも小さな曲率半径を有し、したがって、眼に対して幾分プラスの又は幾分マイナスの度数を提供する。加入度数領域は、到来する平行光線(すなわち、遠くからの光)を眼内で網膜の前(すなわち、レンズの近くに位置する)に合焦させる設計されており、他方、遠用度数領域は、光を合焦させて網膜のところ(すなわち、レンズから遠くに位置したところ)に像を結ぶことができるよう設計されている。
【0005】
ある特定の領域で光の散乱を増大させるレンズの場合、散乱を増大させる特徴がレンズ表面に組み込まれる場合があり、又は、レンズを形成するために用いられる材料中に組み込まれる場合がある。例えば、散乱要素がレンズ中に焼き込まれる場合がある。
【0006】
近視の進行を軽減するコンタクトレンズの既知の一形式は、MISIGHT(クーパービジョン・インコーポレーテッド(CooperVision, Inc.))の名称で市販されている二重焦点コンタクトレンズである。この二重焦点レンズは、二重焦点レンズが、調節力のある人が遠くの物体と近くの物体の両方を見るために距離補正(すなわち、ベース度数)を用いることができるようにするある特定の光学寸法を備えているという点で、老視の視力を向上させるよう構成されたバイフォーカル又は多焦点コンタクトレンズとは異なっている。加入度数を有する二重焦点レンズのトリートメントゾーンはまた、遠見距離と近見距離の両方のところに近視的にデフォーカスされた像をもたらす。
【0007】
これらのレンズは、近視の増悪又は進行を抑え又は遅らせる上で有益であることが判明したが、環状加入度数領域は、望ましくない視覚的副作用を生じさせる場合がある。網膜の前で環状加入度数領域により合焦される光は、焦点から発散して、網膜のところにデフォーカス環状部を形成する。したがって、これらレンズの装用者は、特に小さな光る物体、例えば、街路灯や車のヘッドライトに対して網膜上に作られる像を包囲したリング又は「ハロ」を見る場合がある。また、理論上、近くの物体に焦点を合わせるために眼の生まれつきの調節力(すなわち、焦点距離を変える目の生まれつきの能力)を用いるのではなく、装用者は、近くの物体に焦点を合わせるための環状加入度数領域に起因して生じる網膜の前の追加の焦点を利用する場合があり、換言すると、装用者は、老視矯正レンズが用いられているのと同一のやり方でレンズを偶発的に用いる場合があり、これは、若い被験者にとって望ましくない。
【0008】
近視の治療の際に使用できる別のレンズが開発されたが、かかるレンズは、上述のMISIGHT(クーパービジョン・インコーポレーテッド)レンズ及び他の類似のレンズ内の合焦された遠方像の周囲に観察されるハロをなくすよう設計されている。これらレンズでは、環状領域は、網膜の前に単一の軸上像が生じないよう構成されており、それにより、かかる像が、眼が近くの標的を対応する必要を回避するために使用されないようにする。これとは異なり、遠くの点光源は、環状領域によって近くの加入度数焦点面のところにリング状の焦線に結像され、それにより遠方焦点面のところで網膜上の周囲の「ハロ」効果を生じさせないで、小さなスポットサイズの光を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
眼は、近視によるデフォーカスやレンズ内に組み込まれた光散乱特徴を補償するよう経時的に順応する場合があるという認識が得られた。これにより、近視の進行を遅くすることを目的とするレンズの有効性が低下する場合がある。本開示は、このことを解決しようとしており、しかも近視の悪化を抑え又は遅くする若い被検者において使用可能なレンズを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の観点によれば、近視の進行又は増悪を抑え又は遅らせる際に用いられるコンタクトレンズを提供する。コンタクトレンズは、光学ゾーン及び光学ゾーンを包囲した周辺ゾーンを有する。光学ゾーンは、中央領域を有し、中央領域は、第1の光軸及びベース度数をもたらしかつ中心が第1の光軸上にある曲率中心に位置する曲率を有する。光学ゾーンは、環状領域を有し、環状領域は、中央領域を円周方向に包囲し、環状領域は、トリートメントゾーンを有し、トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる特性を有する。コントラスト減少を引き起こす特性は、環状領域周りの経線につれて変化する。周辺ゾーンは、あらゆる経線に関して一定の厚さプロフィール又はレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈する。
【0011】
本発明は、第2の観点によれば、コンタクトレンズを製造する方法を提供する。本方法は、コンタクトレンズを形成するステップを含み、コンタクトレンズは、光学ゾーン及び光学ゾーンを包囲した周辺ゾーンを有する。光学ゾーンは、中央領域を有し、中央領域は、第1の光軸及びベース度数をもたらしかつ中心が第1の光軸上にある曲率中心に位置する曲率を有する。光学ゾーンは、環状領域を有し、環状領域は、中央領域を円周方向に包囲し、環状領域は、トリートメントゾーンを有し、トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる特性を有する。コントラスト減少を引き起こす特性は、環状領域周りの経線につれて変化する。周辺ゾーンは、あらゆる経線に関して一定の厚さプロフィール又はレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈する。
【0012】
本発明は、第3の観点によれば、近視の進行を軽減する方法を提供する。本方法は、第1の観点の多焦点オフサルミックレンズを、様々な近見距離に合わせて調節が可能な近視の人に提供するステップを含む。
【0013】
当然のことながら、本発明の1つの観点と関連して説明した特徴を本発明の他の観点に組み込むことができるということは理解されよう。例えば、本発明の方法は、本発明の装置と関連して説明した特徴を含むことができ、又はその逆の関係が成り立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】加入度数領域が設けられていない収差なしのレンズ及び環状加入度数領域を含むレンズに関し、空間周波数につれて生じる変調伝達関数(MTF)の減少を示す概略グラフ図である。
【
図2】四半部に分割された眼の視野を示す略図である。
【
図3】本発明の実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられる一定の周辺ゾーン厚さを備えたレンズの概略平面図である。
【
図4(a)】本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられる種子状バラストを有する周辺ゾーンを備えたレンズの概略平面図である。
【
図4(b)】
図4(a)の種子状バラストのうちの1つのY‐Y線矢視概略断面図である。
【
図5(a)】本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるプリズムバラストを有する周辺ゾーンを備えたレンズの概略平面図である。
【
図5(b)】
図5(a)のプリズムバラストのうちの1つのY‐Y線矢視概略断面図である。
【
図6(a)】本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられる漸変厚さプロフィールを提供する連続リングを有する周辺ゾーンを備えたレンズの概略平面図である。
【
図6(b)】周辺ゾーンの一部分周りの
図6(a)の連続リングの厚さの変化を示すグラフ図である。
【
図7(a)】本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられる半径方向に厚さが変化しているバラストを有する周辺ゾーンを備えたレンズの概略平面図である。
【
図7(b)】
図7(a)のバラストのうちの1つのX‐X線矢視概略断面図である。
【
図7(c)】
図7(a)のバラストのうちの1つのY‐Y線矢視概略断面図である。
【
図8(a)】本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられる複数の同心ゾーンを有する周辺ゾーンを備えたレンズの概略平面図であり、各同心ゾーンが種子状バラストを有する状態を示す図である。
【
図8(b)】
図8(a)の種子状バラストのうちの1つの概略断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられる複数のトリートメントゾーンを有する環状領域を備えたレンズの概略平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられる散乱要素を含む複数のトリートメントゾーンを有する周辺ゾーンを備えたレンズの概略平面図である。
【
図11(a)】本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられる加入度数を提供する曲率を有する複数のトリートメントゾーンを含む周辺ゾーンを備えたレンズの概略平面図である。
【
図11(b)】A‐A線に沿って取った
図11(a)のレンズの光学ゾーンに関する概略光路図である。
【
図12(a)】本発明の一実施形態に従って加入度数を提供する曲率を有する複数のトリートメントゾーンを含む周辺ゾーンを備えたレンズの概略平面図であり、トリートメントゾーンの曲率中心が第1の光軸からオフセットしている状態を示す図である。
【
図12(b)】中央ゾーン及びトリートメントゾーンの曲率半径を示すB‐B線に沿って取った
図12(a)のレンズの光学ゾーンに関する概略部分光路図である。
【
図12(c)】B‐B線に沿って取った
図12(a)のレンズの光学ゾーンに関する別の概略光路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、第1の観点によれば、近視の進行又は増悪を抑え又は遅らせる際に用いられるコンタクトレンズを提供する。コンタクトレンズは、光学ゾーン及び光学ゾーンを包囲した周辺ゾーンを有する。光学ゾーンは、中央領域を有し、中央領域は、第1の光軸及びベース度数をもたらしかつ中心が第1の光軸上にある曲率中心に位置する曲率を有する。光学ゾーンは、環状領域を有し、環状領域は、中央領域を円周方向に包囲し、環状領域は、トリートメントゾーンを有し、トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる特性を有する。コントラスト減少を引き起こす特性は、環状領域周りの経線につれて変化する。周辺ゾーンは、あらゆる経線に関して一定の厚さプロフィール又はレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈する。
【0016】
本明細書で用いられるコンタクトレンズという用語は、眼の前方表面上に配置できるオフサルミックレンズを意味している。理解されるように、かかるコンタクトレンズは、臨床的に許容可能な眼球上運動をもたらし、人の片眼又は両眼に固着することはない。コンタクトレンズは、角膜レンズ(例えば、眼の角膜上に載るレンズ)の形態をしているのがよい。コンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズ、例えば、ヒドロゲルコンタクトレンズ又はシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであるのがよい。
【0017】
本発明のコンタクトレンズは、光学ゾーンを有する。光学ゾーンは、光学機能性を有するレンズの部分を包含する。光学ゾーンは、使用の際に眼の瞳孔の上に位置決めされるよう構成されている。本発明のコンタクトレンズに関し、光学ゾーンは、中央領域、及び中央領域を包囲しかつトリートメントゾーンを含む環状領域を有する。
【0018】
本開示との関連において、環状領域は、光学ゾーンを包囲した実質的に環状の領域である。この環状領域は、実質的に円形又は実質的に楕円形の形をしているのがよい。環状領域は、光学ゾーンを完全に包囲するのがよい。環状領域は、光学ゾーンを部分的に包囲してもよい。
【0019】
トリートメントゾーンは、レンズの中央領域だけを通過した光により作られる像と比較して、レンズを通過した光により作られる像のコントラストの減少を生じさせる特性を有する。換言すると、トリートメントゾーンは、トリートメントゾーンが設けられていない同一レンズを通過した光により作られる像と比較して、レンズを通過した光により作られる像のコントラストの減少をもたらす。トリートメントゾーンは、レンズの表面上に設けられたコントラスト減少特徴を有するのがよい。これら特徴は、環状領域の残りの部分及び中央領域を通過した光と比較して、光の追加の散乱を生じさせるのがよい。かかる特徴により、光を環状領域の残りの部分及び中央領域を通過した光と比較して、異なる状態に回折することができる。トリートメントゾーンは、光を環状領域の残りの部分及び中央領域とは異なる仕方で屈折させ、それによりレンズを通過した光により作られる像のコントラストの減少を生じさせる曲率を有するのがよい。
【0020】
トリートメントゾーンは、連続ゾーンであるのがよい。トリートメントゾーンは、環状領域の半分以下でもよい。トリートメントゾーンは、環状領域の1/4未満にわたって延びてもよい。環状領域は、複数のトリートメントゾーンから成っていてもよい。コントラスト減少は、レンズのトリートメントゾーン全体にわたって様々であってよい。トリートメントゾーンのうちの任意のものと環状領域の残りの部分との境界部は、シャープな境界部であってもよく、あるいは滑らかな境界部であってもよい。各トリートメントゾーンと環状領域の残りの部分との間の境界部のところに、混成ゾーンが設けられてもよい。混成ゾーンは、レンズの中央領域を通過した光により作られる像と比較して、レンズを通過した光により作られる像のコントラスト減少を生じさせる特性を有するのがよい。かかる特性は、様々であってよく、かかる特性は、トリートメントゾーンから環状領域に向かうにつれてそのコントラスト減少効果が消失してもよい。例えば、トリートメントゾーンが加入度数をもたらす曲率を有する場合、トリートメントゾーンと環状領域の残りの部分との間の混成ゾーンは、曲率の漸次変化を示してもよく、その結果、この領域全体にわたって加入度数の漸次減少が生じる場合がある。トリートメントゾーンが光の散乱を増大させる特徴を有する場合、トリートメントゾーンと環状領域の残りの部分との間の混成ゾーンは、散乱を増大させる特徴を有するのがよいが、これら特徴の密度は、混成ゾーン全体にわたってばらつきがあってもよい。
【0021】
中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラスト減少は、変調伝達関数(MTF)を用いて定量化できる。
【0022】
レンズは、レンズにより作られる物体の像における物体のコントラストを完全に再現することはない。所与のレンズの変調伝達関数(MTF)は、特定の解像度で、コントラストを物体からこの物体の像に伝達するレンズの能力を測定し、かかる変調伝達関数を点広がり関数又は線広がり関数のフーリエ変換から導き出すことができる。MTFを測定するには、黒色と白色の線対の試験用物体(撮像される物体)を用いるのがよい。試験用物体の線間隔が減少すると(すなわち、黒色線と白色線の対が互いに近づくと、すなわち、空間周波数が増大すると)、黒色線の線広がり関数は、互いにオーバーラップし始め、したがって、黒色線とこれらのバックグラウンドの差が像中で減少し、そしてMTFが減少する。
【0023】
本発明の実施形態としてのレンズに関し、トリートメントゾーンが設けられていることにより、中央領域だけを通過した光により作られる像と比較して、トリートメントゾーン及び中心ゾーンを通過した光により作られる像のMTF(及びそれゆえにコントラスト)が減少する。これは、
図1を参照すると良好に理解できる。曲線A(破線)で示すように、加入度数領域が設けられていない収差なしレンズに関し、MTFは、空間周波数の関数として減少する。加入度数を有する環状領域を含む光学ゾーンを有するレンズの場合、追加の変調が曲線Bで示すようにMTFに導入される。
【0024】
眼の視野は、
図2に示すように、四半部に分割でき、これら四半部はまた、眼上に位置決めされたコンタクトレンズの四半部を説明するために使用できる。眼/レンズの上半分は、上方半部1001であり、下半分は、下方半部1003である。鼻の最も近くに位置する視野は、鼻側半部1005であり、鼻から最も遠くに位置する視野は、側頭半部1007である。したがって、4つの四半部は、上方‐鼻側1009、上方‐側頭1011、下方‐鼻側1013、及び下方‐側頭1015として定義できる。以下の説明において、これら定義を用いて、レンズが通常の使用状態にあるとき及び装用者によって装用されているときの加入度数領域の位置及び周辺ゾーンの厚さの変化を説明する。
【0025】
光学ゾーンは、周辺ゾーンによって包囲されている。縁部ゾーンは、周辺ゾーンを包囲するのがよい。周辺ゾーンは、光学ゾーンの一部ではなく、レンズが装用されると光学ゾーンの外側にかつ虹彩の上方に位置し、この周辺ゾーンは、機械的機能、例えば、レンズのサイズを増大させる機能を発揮し、それによりレンズを取り扱いやすくするとともにレンズ装用者にとっての快適さを高める異形領域をもたらす。周辺ゾーンは、コンタクトレンズのエッジまで延びるのがよい。既知のコンタクトレンズは、例えばトーリックレンズでは、周辺ゾーンは、レンズが装用者によって装用されると光軸回りのレンズの回転を阻止するバラスト安定作用を提供することができる。本発明は、眼上で回転するよう設計されたコンタクトレンズに関し、本発明の諸実施形態では、周辺ゾーンは、一定の厚さプロフィールを呈するか、レンズの回転を促進するよう構成された厚さプロフィールを呈するかのいずれかである。周辺ゾーンがあらゆる経線に関して一定の厚さを有する実施形態では、周辺ゾーンは、バラスト安定作用効果をもたらすことはなく、かくして、レンズが装用者に装用されると、レンズは、回転力に応答して光軸回りに回転することになる。これらの実施形態では、厚さの変化は、あらゆる経線に関して同一である。厚さプロフィールは、経線に沿って変化するか、経線に沿って一定であるかのいずれかであるのがよい。周辺ゾーンがレンズの回転を促進するよう構成された厚さプロフィールを呈する実施形態では、周辺ゾーンの厚さは、経線に連れて変化するのがよい。厚さプロフィール変化は、周辺ゾーンの表面上に設けられた特徴に起因して生じるのがよい。特徴は、回転力に応答して光軸回りに一方向におけるレンズの回転を促進するよう設計されているのがよい。本発明の実施形態としてのコンタクトレンズが装用されているとき、回転力は、装用者のまばたきによって提供されるのがよい。レンズの回転はまた、レンズに作用する重力によって支援されるのがよい。
【0026】
本発明のレンズは、装用者によって装用されると眼上で回転するよう設計されているので、トリートメントゾーンは、レンズが装用されているときに眼に対して回転することになる。したがって、トリートメントゾーンは、レンズが装用されている間、互いに異なる時点で網膜の互いに異なる領域と一致することになる。これは、眼がトリートメントゾーンのコントラスト減少効果を補償する能力を軽減すると考えられる。
【0027】
中央領域の第1の光軸は、レンズの中心線に沿って位置するのがよい。中央領域は、第1の光軸上の遠くの点物体からの光を遠方焦点面のところの第1の光軸上のスポットに合焦させることができる。本明細書で用いられる表面という用語は、物理的な表面を意味しておらず、遠くの物体からの光を合焦させる点を通って描かくことができる表面を意味している。かかる表面は、像面(たとえこれが湾曲した表面であってもよい)又は像シェルとも呼ばれる。眼は、湾曲した網膜上に光を合焦させ、完全に焦点が合っている眼では、像シェルの曲率は、網膜の曲率に合致する。したがって、眼は、光を平坦な数学的平面上に合焦させることはない。しかしながら、当該技術分野においては、網膜の湾曲した表面は、平面と通称されている。
【0028】
周辺ゾーンは、レンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈するのがよく、周辺ゾーンの厚さプロフィールは、鏡面対称軸を備えなくてもよい。周辺ゾーンの厚さ変化は、レンズの全て又は一部周りに非周期的な又は不規則な仕方で変化するのがよい。厚さの変化は、従来型球面コンタクトレンズと比較して、コンタクトレンズの快適さ又はレンズ使用感をそれほど減少させないで眼上におけるコンタクトレンズの所望の回転量を達成するよう選択されるのがよい。周辺ゾーンの種々の領域の厚さは、当業者に知られている慣例の方法を用いて選択されるのがよい。厚さ及び形態は、従来の従来型球面コンタクトレンズと比較して、球面コンタクトレンズと比較して、コンタクトレンズの快適さ又はレンズ使用感をそれほど減少させないで、眼上におけるコンタクトレンズの所望の回転量を達成するように選択されるのがよい。例えば、周辺ゾーンの設計に関し、コンタクトレンズは、特定の標的設計及び厚さを備えて製造されるのがよく、そして人の眼上で臨床的に試験されるのがよい。レンズの回転量は、スリットランプ又は他の従来型ツールを用いてアイケア専門家によって観察可能である。代表的には、互いに異なる厚さプロフィールを備えた複数のコンタクトレンズが製造され、そしてレンズの回転量とレンズの快適さを評価するために多くの人(例えば、20人以上)の眼上で試験される。レンズの回転量が不十分であり、あるいは、レンズの快適さが対照レンズと比較して著しく低い場合、周辺ゾーンに異なる厚さプロフィールを有するレンズが製造されて試験される。
【0029】
周辺ゾーンは、レンズの回転を促進するよう構成された厚さ変化を呈するのがよく、周辺ゾーンの厚さは、レンズの一方の半部に関して一定であり、レンズの他方の半部に関して変化する。レンズの半部は、不規則な又は非周期的な仕方で変化する周辺ゾーン厚さを有するのがよい。レンズの半部は、プリズムバラスト又はペリバラスト(periballast)を提供するのがよい。
【0030】
周辺ゾーンは、レンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈するのがよく、周辺ゾーンの厚さは、レンズ周りに周期的に変化する。周辺ゾーンは、周辺領域の厚さを変化させる複数の特徴を有するのがよい。これら特徴は、レンズ周りに一定の間隔を置いて配置されるのがよい。各特徴は、一方向におけるレンズの回転を促進する非対称プロフィールを有するのがよい。これら特徴は、まばたきに起因する非回転力を回転力に変換し、そしてレンズが一方向に回転するよう位置合わせされるのがよい。各特徴は、周辺ゾーンの表面上に設けられるのがよい。各特徴は、周辺ゾーンの前方表面上に設けられるのがよい。周期的変化は、正弦波、三角波、又はのこぎり波であるのがよい。周期的変化は、周辺ゾーンの周囲の一部分にわたってもよく、あるいは周辺ゾーンの周囲全体にわたってもよい。
【0031】
環状領域は、中央領域を通して見た物体の像と比較して、環状領域を通して見た物体の像のコントラストを実質的に減少させることはない領域によって区分された複数のトリートメントゾーンを有するのがよい。トリートメントゾーンは、処置ゾーンは、環状領域の周囲に沿って一定間隔で配置されるのがよい。変形例として、トリートメントゾーンは、環状領域の周囲に沿って不定間隔で配置されてもよい。各トリートメントゾーンは、周辺ゾーンの周囲の5%~10%にわたるのがよい。上述したように、レンズの周辺ゾーンにより、レンズは、回転することができ、かつ/あるいは回転が促進される。装用者によってレンズが装用されたときの眼に対して回転すると、トリートメントゾーンは、互いに異なる時点において眼の互いに異なる領域に合致するようになり、これにより、眼がトリートメントゾーンによって引き起こされる像コントラスト減少を補償する能力が低下する。
【0032】
トリートメントゾーンは、中央領域を通して見た物体の像と比較して、トリートメントゾーンを通して見た物体の像のコントラストを50%以上減少させる特性を備えた強いコントラスト減少領域を有するのがよく、強コントラスト減少領域の面積は、環状領域の面積の50%未満である。強コントラスト減少領域は、レンズにより作られる像のコントラストを75%以上減少させることができる。強コントラスト減少領域は、環状領域の25%未満にわたってもよい。強コントラスト減少領域は、連続領域であってもよい。複数の非結合強コントラスト減少領域が設けられてもよい。
【0033】
トリートメントゾーンは、中央領域を通して見た物体の像と比較して、トリートメントゾーンを通して見た物体の像のコントラストを10%~50%減少させる特性を備えた弱いコントラスト減少領域をさらに有するのがよい。トリートメントゾーンは、弱コントラスト減少ゾーンによって隔てられた強コントラスト減少ゾーンの周期的配列体を含むのがよい。環状領域は、複数のトリートメントゾーンを有するのがよく、これらのうち、強コントラスト減少領域もあれば、弱コントラスト減少領域もあるのがよい。
【0034】
トリートメントゾーンは、経線につれて変化する加入度数を提供する曲率を備えた加入度数領域を有するのがよい。トリートメントゾーンの前方表面は、中央領域及び環状領域の残りの部分の前方表面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有するのがよい。したがって、トリートメントゾーンは、中央領域及び環状領域の残りの部分のベース度数よりも大きな度数を有することができる。トリートメントゾーンの焦点は、近方焦点面上に位置するのがよく、中央領域及び環状領域の残りの部分についての焦点は、レンズの後方表面から遠くに位置する遠方焦点面上に位置するのがよい。トリートメントゾーンの焦点と中央領域の焦点は、共通の光軸を共有するのがよい。無限遠に位置する点光源の場合、中央領域及び環状領域によって合焦された光線は、遠方焦点面のところに合焦像を作る。中央領域によって合焦された光線もまた、近方焦点面のところに非合焦状態のぼやけたスポットを生じさせる。各レンズに関し、加入度数のうちの少なくとも何割かは、中心が第1の光軸から第1の距離を置いたところに位置する曲率中心上に位置する曲率によって提供されるのがよい。加入度数領域を通過する遠方の点光源からの光線は、第1の光軸から遠ざかって最大加入度数焦点面上に合焦されるのがよい。中央領域を通過した光線は、最大加入度数焦点面のところに軸上のぼやけた円を形成することができる。最大加入度数領域を通過した遠方点光源からの光線は、ぼやけた円又は楕円の外部に合焦されるのがよい。レンズの中央領域は、ベース度数を有する。トリートメントゾーンが加入度数領域を有する場合、トリートメントゾーンの正味の近見度数は、ベース度数と加入度数の合計である。加入度数領域の曲率中心は、第1の光軸から第1の距離を置いたところに位置するのがよい。
【0035】
環状領域のトリートメントゾーンは、幅を有し、トリートメントゾーンの幅の半分のところで取られたトリートメントゾーンの表面の垂線は、中央領域の表面の曲率中心のところで取られた垂線と交差するのがよい。それにより、トリートメントゾーンは、各遠方点物体からの光を合焦させて、近方焦点面のところに合焦円弧を作ることができ、円弧は、中央領域によって合焦された光により作られるぼやけた円の外部に位置しかつこのぼやけた円周りの方向に延びる。
【0036】
トリートメント部分は、トリートメント部分の帯状の任意の幾何学的形状を全体として再現するトリートメント部分の焦点面のところに光の分布を生じさせるよう構成されているのがよい。トリートメント部分の焦点面は、トリートメント部分を通過した光を合焦させた点を通過する平面によって定められる。例えば、環状部の一部分にわたるトリートメント部分に関し、合焦円弧はトリートメント部分の焦点面のところに作られるのがよい。トリートメントゾーン部分の曲率は、トリートメント部分焦点面のところに合焦される光を光軸からかつ光軸に垂直に約2マイクロメートル~約700マイクロメートル、好ましくは、約20マイクロメートル~約300マイクロメートルの距離のところに位置決めするよう選択されるのがよい。
【0037】
トリートメントゾーンの表面は、前方表面であるのがよい。中央領域の表面は、前方表面であるのがよい。トリートメントゾーンの表面は、加入度数をもたらす曲率を有する表面であるのがよい。中央領域の表面は、ベース度数をもたらす曲率を有する表面であるのがよい。
【0038】
レンズのベース度数は、プラスであるのがよく、トリートメントゾーンは、ベース度数よりもプラスの値が大きい度数を有するのがよい。この場合、最大加入度数の焦点面は、遠方焦点面よりもレンズの近くに位置する。軸上像は、トリートメントゾーンを通過した光によって作られることはない。したがって、レンズの装用者は、自分の目の生まれつきの調節力を用いて近くの物体に焦点を合わせる必要がある。おそらくは、トリートメントゾーンによって合焦された光線は、コンタクトレンズの第1の光軸と全く交差せず、あるいは、かかる光線が最大加入度数焦点面を通過した後になるまでは交差しない。
【0039】
レンズのベース度数は、マイナスであるのがよく、トリートメントゾーンは、ベース領域の度数よりもマイナスの度数が小さいのがよく、あるいは、トリートメントゾーンはプラスの度数を有してもよい。レンズが角膜上に位置決めされた状態を考えると、トリートメントゾーンの度数がベース度数よりもマイナスの度数が小さい場合、最大加入度数焦点面は、遠方焦点面よりも眼内のより前方に位置することになる。レンズが角膜上に位置決めされていない場合のレンズを考えると、トリートメントゾーンの度数がプラスである場合、最大加入度数焦点面は、遠方焦点面(これは、レンズの物体側上の仮想焦点面となる)よりもレンズの反対側(像側)上に位置することになり、トリートメントゾーンの度数がマイナスである場合(しかしながら、ベース度数よりもマイナスの値が小さい場合)、仮想加入度数焦点面は、仮想遠方焦点面よりもレンズから遠ざかって位置することになる。
【0040】
レンズがユーザによって装用されると、レンズは、眼に対して光軸回りに回転するよう設計されているので、加入度数領域を有するトリートメントゾーンは、回転して眼の互いに異なる領域と一致することができる。これは、特にヒドロゲルレンズ及びシリコーンヒドロゲルレンズにとって有益であり、と言うのは、経時的に、眼が最大加入度数焦点面のところのぼやけに順応してしまい、それにより近視が悪化するのを防ぐ加入度数トリートメントゾーンの有効性を減じると考えられるからである。レンズを回転させ、それにより加入度数領域を光軸回りに回転させると、経時的にぼやけを補償する眼の機能又は能力が低下する。レンズが回転すると、網膜の別々の部分が互いに異なる量のデフォーカスの影響を受け、これは、一定の近視用デフォーカスを提供する単一のレンズを装用した場合よりも、近視の進行を遅くする上でより有効な場合がある。
【0041】
加入度数領域は、0.5D以上の加入度数を提供する曲率を有するのがよい。加入度数領域は、少なくとも2.0Dの最大加入度数を提供する曲率を有することができる。トリートメントゾーンは、0D~1.5Dの低加入度数を提供する曲率を備えた低加入度数領域をさらに有するのがよい。少なくとも1つの低加入度数領域を通過した遠方の点光源からの光線は、低加入度数焦点面のところに合焦されるのがよい。正のベース度数及びベース度数よりも大きい正の度数を備えた低加入度数領域を有するレンズに関し、低加入度数焦点面は、遠方焦点面よりもレンズの近くに位置するが、最大加入度数焦点面よりもレンズから遠くに位置する。軸上像もまた、低加入度数領域を通過した光によっては作られない。おそらくは、低加入度数領域によって合焦された光線は、コンタクトレンズの第1の光軸と全く交差せず、あるいは、かかる光線が低及び最大加入度数焦点面を通過した後になるまでは交差しない。レンズが角膜上に位置決めされた状態を考えると、レンズがマイナスのベース度数を有し、少なくとも1つの低加入度数領域のマイナスの度数がベース度数よりも小さい場合、低加入度数焦点面は、遠方焦点面よりもレンズの近くに位置するが、最大加入度数焦点面からは遠くに位置することになる。レンズが角膜上に位置決めされていない場合のレンズを考えると、レンズがマイナスのベース度数を有し、少なくとも1つの低加入度数領域のマイナスの度数がベース度数よりも小さい場合、仮想加入度数焦点面は、仮想遠方焦点面よりもレンズから遠くに位置する、仮想最大加入度数焦点面よりも近くに位置することになる。加入度数領域の曲率中心は、第1の光軸から第1の距離を置いたところに位置するのがよく、低加入度数領域の曲率中心は、第1の光軸から第2の距離を置いたところに位置するのがよい。
【0042】
環状領域は、少なくとも1つのベース度数領域を有するのがよく、このベース度数領域は、ベース度数を提供しかつ中心が中央領域の曲率中心上に位置する曲率を有する。
【0043】
ベース度数、最大加入度数、及び低加入度数のうちの任意のものを提供する曲率は、レンズの前方表面の曲率であるのがよい。ベース度数、最大加入度数、及び中間加入度数を提供する曲率は、レンズの後方表面の曲率であってもよい。ベース度数、最大加入度数、及び中間加入度数を提供する曲率は、レンズの前方表面及び後方表面の曲率であるのがよく、組み合わせ効果を提供する。
【0044】
トリートメントゾーンは、中央領域を通過した光と比較して、トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴を有するのがよい。この特徴は、環状領域の前方表面に設けられるのがよい。各レンズのトリートメントゾーンは、レンズの表面中に焼き込まれ又はレンズの表面にエッチングされた光学素子を有するのがよい。トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴は、中央領域だけを通過した光により作られる像と比較して、トリートメントゾーン及び中央領域を通過した光により作られる像のコントラストを減少させる。レンズが第1の光軸回りに眼に対して回転すると、トリートメントゾーン、したがって高散乱領域は、第1の光軸回りに回転することになる。これは、眼が散乱によって引き起こされるコントラストの減少を補償する能力を減少させる。
【0045】
トリートメントゾーンは、トリートメントゾーンを通過した光の回折を引き起こす特性を有するのがよい。
【0046】
コンタクトレンズは、形状が実質的に円形であり、直径が約4mm~約20mm、好ましくは約13.0mm~約15.0mmであるのがよい。本明細書において直径と記載した場合、これは、弦直径を意味している。レンズの中心厚さは、約50マイクロメートル~約300マイクロメートルであるのがよい。レンズの周辺ゾーンは、約50マイクロメートル~約450マイクロメートルの厚さを有するのがよい。レンズの厚さは、従来技術及び器械、例えばレーダ(Rehder)計器を用いて測定されるのがよい。中央領域は、形状が実質的に円形であるのがよく、また、約2mm~約9mm、好ましくは約2mm~7mm、より好ましくは約2mm~5mmの直径を有するのがよい。中央領域は、形状が実質的に楕円形であってもよい。ベース曲線は、約8.0mm~9.0mmの曲率半径を有するのがよい。環状領域は、中央領域の周囲から半径方向外方に約0.1~4mm、好ましくは約0.5~1.5mm延びるのがよい。例えば、環状領域の半径方向幅は、約0.1mm~約4mmであるのがよく、好ましくは約0.5~1.5mmであるのがよい。中央領域の周囲は、中央領域と環状領域との間に境界部を形成するのがよく、したがって、環状領域は、中央領域に隣接して位置するのがよい。
【0047】
各レンズの環状領域は、中央領域に当接するのがよい。混成ゾーンが中央領域と環状領域との間に設けられるのがよい。混成ゾーンは、中央領域及び環状領域により提供される光学的性質に実質的に影響を及ぼすべきではなく、混成ゾーンは、0.05mm以下の半径方向幅を有するのがよく、ただし、幾つかの実施形態では、混成ゾーンは、0.2mmという広い幅を有してもよく又は0.5mmという広い幅を有してもよい。
【0048】
環状領域は、周辺ゾーンに当接するよう半径方向外方に延びるのがよい。トリートメントゾーンは、環状領域の半径方向幅にわたるのがよい。
【0049】
中央領域は、ベース度数を有し、このベース度数は、本発明との関連において、中央領域の平均絶対屈折力と定義される。任意のベース度数経線はまた、ベース度数を有する。ベース度数は、コンタクトレンズの包装材上に設けられるコンタクトレンズの屈折力に対応する(ただし、実際には、これは、同一の値を有していない場合がある)。かくして、本明細書において与えられるレンズ度数は、公称度数である。これらの値は、レンズの直接測定により得られるレンズ度数値とは異なっている場合があり、これら値は、眼科治療で用いられるときに必要な処方度数を提供するために用いられるレンズ度数を反映している。
【0050】
近視の治療(トリートメント)の際に用いられるレンズに関し、ベース度数は、マイナス又はゼロに近く、中央領域は、遠見視力を矯正する。ベース度数は、0.5ディオプター(D)~-15.0Dであるのがよい。ベース度数は、-0.25D~-15.0Dであるのがよい。
【0051】
レンズは、少なくとも2つの同心環状領域を有するのがよく、環状領域の各々は、中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させるトリートメントゾーンを有し、コントラスト減少の度合いは、環状領域周りの経線につれて変化する。
【0052】
好ましくは、1つ又は複数のトリートメントゾーンは、レンズレット(すなわち、コンタクトレンズの光学ゾーンの直径よりも小さな直径を有するコンタクトレンズの表面上に設けられている小型レンズ)を含まず、あるいは、環状領域にはレンズレットはない。
【0053】
レンズの周辺ゾーンは、レンズ領域の回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈する少なくとも2つの同心領域を有するのがよい。各同心領域は、厚さの同一の変化を呈してもよく、あるいは厚さの異なる変化を呈してもよい。各同心領域は、厚さの周期的な変化を呈してもよく、この場合、隣り合う同心領域のバリエーションは、同相であってもよく、あるいは異相であってもよい。
【0054】
コンタクトレンズは、トーリックコンタクトレンズであるのがよい。例えば、トーリックコンタクトレンズは、人の乱視を補正するよう形作られた光学ゾーンを含むのがよい。
【0055】
コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、もしくはシリコーンヒドロゲル材料、又はこれらの混合物から成るのがよい。コンタクトレンズの分野で理解されているように、ヒドロゲルは、平衡状態では水を保持し、そしてシリコーン含有化学物質のない材料である。シリコーンヒドロゲルは、シリコーン含有化学物質を含むヒドロゲルである。本発明との関連で説明するヒドロゲル材料及びシリコーンヒドロゲル材料は、平衡含水率(EWC)が少なくとも10%~約90%(重量/重量)である。幾つかの実施形態では、ヒドロゲル材料又はシリコーンヒドロゲル材料のEWCは、約30%~約70%(重量/重量)である。比較例を説明すると、本発明との関連において説明するシリコーンエラストマー材料の含水率は、約0%~10%未満(重量/重量)である。代表的には、本発明の方法又は装置で用いられるシリコーンエラストマー材料の含水率は、0.1%~3%(重量/重量)である。適当なレンズ配合物の例としては、以下の米国一般名(USAN)を有する配合物が挙げられ、かかる米国一般名は、メタフィルコン(methafilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)A、オキュフィルコンB、オキュフィルコンC、オキュフィルコンD、オマフィルコン(omafilcon)A、オマフィルコンB、コンフィルコン(comfilcon)A、エンフィルコン(enfilcon)A、ステンフィルコン(stenfilcon)A、ファンフィルコン(fanfilcon)A、エタフィルコン(etafilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)A、セノフィルコンB、セノフィルコンC、ナラフィルコン(narafilcon)A、ナラフィルコンB、バラフィルコン(balafilcon)A、サムフィルコン(samfilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)A、ロトラフィルコンB、ソモフィルコン(somofilcon)A、リオフィルコン(riofilcon)A、デレフィルコン(delefilcon)A、ベロフィルコン(verofilcon)A、カリフィルコン(kalifilcon)Aなどである。
【0056】
変形例として、シリコーンエラストマー材料を含んでもよく、本質的にこれから成っていてもよく、又はこれから成っていてもよい。例えば、レンズは、ショアA硬度が3~50のシリコーンエラストマー材料を含んでもよく、本質的にこれから成っていてもよく、あるいはこれから成っていてもよい。ショアA硬度は、当業者には理解されるように、従来方法を用いて(例えば、方法DIN53505を用いて)決定できる。他のシリコーンエラストマー材料を、例えばヌシル・テクノロジー(NuSil Technology)社又はダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)社から得ることができる。
【0057】
第2の観点によれば、本発明は、コンタクトレンズを製造する方法を提供する。本方法は、コンタクトレンズを形成するステップを含み、コンタクトレンズは、ベース度数を備えた中央領域、及び環状領域を有し、環状領域は、中央領域を包囲している。環状領域は、トリートメントゾーンを有し、トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる特性を有する。コントラスト減少を引き起こす特性は、環状領域周りの経線につれて変化する。周辺ゾーンは、あらゆる経線に関して一定の厚さプロフィール又はレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈する。
【0058】
レンズは、上述の特徴のうちの任意のものを含むのがよい。
【0059】
製造方法は、凹レンズ形成面を備えた雌型金型部材、及び凸レンズ形成面を備えた雄型金型部材を形成するステップを含むのがよい。本方法は、雌型金型部材と雄型金型部材との間の隙間にバルクレンズ材料を充填するステップを含むのがよい。本方法は、バルクレンズ材料を硬化させてレンズを形成するステップをさらに含むのがよい。
【0060】
コンタクトレンズは、レーシング(lathing)プロセスを用いて形成されるのがよい。レンズは、注型プロセス、回転成形プロセス、もしくはレーシングプロセス、又はこれらの組み合わせによって形成されるのがよい。当業者には理解されるように、注型は、レンズ形成材料を、凹レンズ部材形成面を有する雌型金型部材と、凸レンズ部材形成面を有する雄型金型部材との間に配置することによるレンズの成形を意味している。
【0061】
本発明の第3の観点では、本明細書において説明するコンタクトレンズを使用する方法もまた提供される。本方法は、屈折異常の進行、例えば近視の進行を軽減する上で有効な場合がある。本方法は、眼軸長増悪を軽減する上で有効な場合がある。本発明のレンズを用いて近視の進行を低減させるために使用される場合、本方法は、コンタクトレンズを眼が様々な近見距離(例えば、約15cmから約40cmまでの範囲にある)に対応することができる人に提供するステップを含む。本方法の幾つかの実施形態は、オフサルミックレンズを年齢が約5歳~約25歳の人に提供するステップを含む。この提供ステップは、アイケア専門家、例えば眼鏡技師又は検眼士によって実施されるのがよい。変形例として、かかる提供ステップは、レンズ装用者へのオフサルミックレンズの配送を手配するレンズ販売業者によって実施されてもよい。
【0062】
図3は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ1の概略平面図である。レンズ1は、瞳孔をほぼ覆う光学ゾーン2、及び虹彩の上に位置する周辺ゾーン4を有する。周辺ゾーン4は、レンズのサイズを増大させ、それによりレンズ1を取り扱いやすくするとともにレンズ1の装用者の快適さを向上させる異形領域を提供する機能を含む機械的機能を提供する。周辺ゾーン4は、一定厚さのプロフィールを呈するので厚さの変化をなんら示さず、したがって、周辺ゾーン4は、バラスト安定作用をなんら提供せず、したがって、レンズ1は、回転力に応答してその光軸回りに回転することになる(矢印6によって指示された時計回りの方向に又は逆方向に)。光学ゾーン2は、レンズ1の光学的機能を提供し、光学ゾーンは、環状領域3及び中央領域5を有する。環状領域3は、トリートメントゾーン7を有し、トリートメントゾーン7は、中央領域5だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。このレンズ1は、プラスのベース度数を有し、トリートメントゾーン7の前方表面の曲率半径は、中央領域5の前方表面の曲率半径よりも小さい。したがって、トリートメントゾーン7は、中央領域5のベース度数よりも大きな度数を有する。レンズ1が装用者によって装用されると、レンズ1は、装用者がまばたきをしたときにレンズ1に及ぼされる回転力に応答して回転することになる。これにより、トリートメントゾーン7の回転が生じる。したがって、トリートメントゾーン7は、動いて眼の互いに異なる領域に一致する。これにより、眼がトリートメントゾーンのコントラスト減少効果を補償する能力が低下する場合がある。
【0063】
図4(a)は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ101の概略平面図である。レンズ101の光学ゾーン102は、
図1に示すレンズの光学ゾーンと類似しており、光学ゾーン102は、環状領域103によって包囲された中央領域105を有する。環状領域103は、トリートメントゾーン107を有し、トリートメントゾーン107は、中央領域105だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。周辺ゾーン104は、レンズ101の前方表面上に設けられかつレンズ101の周囲に沿って一定間隔で配置された複数の種子状バラスト109a,109b,109cを有する。バラスト109a,109b,109cは、レンズ101の回転を促進し、各バラストは、
図4(b)に示すように、厚い部分110及び薄い部分112、ならびに連続的に変化する厚さを生じさせる滑らかな湾曲上面を有する。これらは、矢印で示すように、レンズ101が第1の光軸回りに時計回りの方向に回転するようにするために周辺ゾーン104の周囲に沿って配置されている。レンズ101の装用者がまばたきをした場合、装用者のまぶたは、回転力をバラスト109a,109b,109cに与え、それによりレンズ101が回転する。
【0064】
図5(a)は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ201の概略平面図である。レンズ201の光学ゾーン202は、
図3及び
図4に示すレンズの光学ゾーンと類似しており、光学ゾーン202は、環状状領域203によって包囲された中央領域205を有する。環状領域203は、トリートメントゾーン207を有し、トリートメントゾーン207は、中央領域205だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。周辺ゾーン204は、レンズ201の前方表面上に設けられかつレンズ201の周囲に沿って一定間隔で配置された複数のプリズム状バラスト209a,209b,209cを有する。バラスト209a,209b,209cは、矢印206で示す方向におけるレンズ201の回転を促進する。各プリズム状バラスト209a,209b,209cは、
図5(b)に示すように、厚い部分210及び薄い部分212を有するが、
図4(a)及び
図4(b)の種子状バラスト109a,109b,109cとは対照的に、プリズム状バラスト209a,209b,209cは、レンズ201の制御された回転を助けることができる平坦で真っ直ぐな表面を有する。
【0065】
図6(a)は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ301の概略平面図である。レンズ301の光学ゾーン302は、
図1~
図3に示すレンズの光学ゾーンに類似しており、光学ゾーン302は、環状領域303によって包囲された中央領域305を有する。環状領域303は、トリートメントゾーン307を有し、トリートメントゾーン307は、中央領域305だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。周辺ゾーン304は、周期的に変化する厚さプロフィールを呈する連続バンド309を有する。周期的に変化する厚さプロフィールは、周辺領域304の周囲に沿って間隔を置いて配置された複数のピークを有する。レンズの周囲に沿う位置を角度θ(シータは、θは0゜~360゜(
図6(a)に示すように)である)によって定めることにより、連続バンド309は、
図6(b)に示すように、60゜ごとに厚さのピーク310を有する。矢印306で示す方向へのレンズの回転を促進するため、各ピーク310は、非対称プロフィールを有し、この非対称プロフィールは、
図6(b)の矢印313で示す方向へのレンズ301の回転を促進する。
【0066】
図7(a)は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ901の概略平面図である。レンズ901の光学ゾーン902は、
図3に示すレンズの光学ゾーンに類似しており、光学ゾーン902は、環状領域903によって包囲された中央領域905を有する。環状領域903は、トリートメントゾーン907を有し、トリートメントゾーン907は、中央領域905だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。周辺ゾーン904は、レンズ901の前方表面に設けられかつレンズ901の周囲に沿って一定間隔を置いて配置された複数のバラスト909a,909b,909cを有する。バラスト909a,909b,909cは、半径方向に細長い。
図4の種子状バラストと同様、各バラスト909a,909b,909cは、
図7(c)に示すようにY‐Y線に沿って連続して変化した厚さプロフィールを有し、厚い部分910及び薄い部分912を有し、バラスト909a,909b,909cは、矢印906の方向へのレンズ901の回転を促進するよう周辺ゾーン904の周囲に沿って配置されている。加うるに、各バラスト909a,909b,909cは、X‐X線に沿って(
図7(b)に示すように)漸変厚さプロフィールを有し、レンズ901の中心寄りに位置する厚い部分911を有し、周辺ゾーン904の外縁寄りに位置する薄い部分913を有する。
【0067】
図8(a)は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ401の概略平面図である。レンズ401の光学ゾーン402は、
図3~
図7に示すレンズの光学ゾーンに類似しており、光学ゾーン402は、環状領域403によって包囲された中央領域405を有する。環状領域403は、トリートメントゾーン407を有し、トリートメントゾーン407は、中央領域405だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。周辺ゾーン404は、2つの同心領域414,416を有し、各同心領域は、一定厚さのプロフィール415を有する領域によって隔てられた、周期的に変化する厚さプロフィールを有する。各同心領域414,416は、レンズ101の前方表面に設けられかつレンズ101の周囲に沿って一定間隔を置いて配置された複数の種子状バラスト409a,409b,409c,409a′,409b′,409c′を有する。これらバラスト409a,409b,409c,409a′,409b′,409c′は、レンズ401の回転を促進する。バラスト409a,409b,409c,409a′,409b′,409c′は各々、
図8(b)に示すように、厚い部分410及び薄い部分412、ならびに連続的に変化する厚さを生じさせる滑らかな湾曲した外面を有する。同心領域414,416の各々に関し、バラスト409a,409b,409c,409a′,409b′,409c′は、周辺ゾーン404回りに一定間隔を置いて配置されているが、第1の領域414のバラスト409a,409b,409cは、第2の領域416のバラスト409a′,409b′,409c′とは位相が異なっている。バラスト409a,409b,409c,409a′,409b′,409c′は、レンズ401を矢印406で示すように第1の光軸回りに時計回りの方向に回転させる。レンズ401の装用者がまばたきをした場合、装用者のまぶたは、回転力をバラスト409a,409b,409c,409a′,409b′,409c′に与え、それによりレンズ401が回転する。
【0068】
本発明の他の実施形態では、周辺ゾーンの同心領域上に設けられたバラストは、同心領域の各々について同相であるのがよい。
【0069】
図9は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ501の概略平面図である。光学ゾーン502は、環状領域503によって包囲された中央領域505を有する。環状領域503は、複数のトリートメントゾーン507a,507b,507c,507dを有し、トリートメントゾーン507a,507b,507c,507dは、中央領域505だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。トリートメントゾーン507a,507b,507c,507d相互間には、レンズ501を通過した光により作られる像のコントラストを著しくは減少させない領域が設けられている。周辺ゾーン504は、レンズ501の前方表面上に設けられかつレンズ501の周囲に沿って一定間隔で配置された複数の種子状バラスト509a,509b,509cを有する。これらバラスト509a,509b,509cは、矢印506で示すように、時計回りの方向における第1の光軸回りのレンズ501の回転を促進する。レンズ501の装用者がまばたきをした場合、装用者のまぶたは、回転力をバラスト509a,509b,509cに与え、それによりレンズ501が回転する。レンズ501が回転力に応答して第1の光軸回りに回転すると、トリートメントゾーン507a,507b,507c,507dは、動いて眼の互いに異なる領域に一致する。これにより、眼がトリートメントゾーン507a,507b,507c,507dにより生じるコントラスト減少効果を補償する能力が低下する場合がある。
【0070】
図10は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ601の概略平面図である。光学ゾーン602は、環状領域603によって包囲された中央領域605を有する。環状領域603は、複数のトリートメントゾーン607a,607b,607c,607dを有し、トリートメントゾーン607a,607b,607c,607dは、トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させ、それにより中央領域605だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。各トリートメントゾーン607a,607b,607c,607dは、周辺ゾーン604の前方表面に焼き込まれた複数の散乱素子608a,608b,608cを有する。トリートメントゾーン607a,607b,607c,607d相互間には、レンズ601を通過した光により作られる像のコントラストを著しくは減少させない領域が設けられている。周辺ゾーン604は、レンズ601の前方表面上に設けられかつレンズ601の周囲に沿って一定間隔で配置された複数の種子状バラスト609a,609b,609cを有する。これらバラスト609a,609b,609cは、矢印606で示すように、時計回りの方向における第1の光軸回りのレンズ1の回転を促進する。レンズ601の装用者がまばたきをした場合、装用者のまぶたは、回転力をバラスト609a,609b,609cに与え、それによりレンズ601が回転する。レンズ601が回転力に応答して第1の光軸回りに回転すると、トリートメントゾーン607a,607b,607c,607dは、動いて眼の互いに異なる領域に一致する。これにより、眼がトリートメントゾーン607a,607b,607c,607dにより生じる光の散乱の増加を補償する能力が低下する場合がある。
【0071】
図11(a)は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ701の概略平面図である。光学ゾーン702は、環状領域703によって包囲された中央領域705を有する。中央領域705は、ベース度数を提供しかつ中心が第1の光軸718上にある曲率中心上に位置する曲率を有する。これは、
図11(b)に示されており、
図11(b)は、レンズの光学ゾーンのA‐A線矢視概略断面図である。
【0072】
環状領域703は、複数のトリートメントゾーン707a,707b,707c,707dを有する。各トリートメントゾーン707a,707b,707c,707dは、加入度数を提供する曲率を有する。トリートメントゾーン707a,707b,707c,707dの前方表面の曲率半径は、中央領域705の前方表面の曲率半径よりも小さい。したがって、トリートメントゾーン707a,707b,707c,707dは、中央領域705のベース度数よりも大きな度数を有する。
図11(b)に示すように、トリートメントゾーン707b,707dの焦点725は、近方焦点面722上に位置し、中央領域705の焦点726は、レンズ701の後方表面から遠くに位置する遠方焦点面724上に位置する。トリートメントゾーン707b,707dの焦点725及び中央領域705の焦点724は、共通の光軸718を共有している。無限遠に位置する点光源の場合、中央領域705によって合焦された光線は、遠方焦点面724のところに合焦像を作る。中央領域705によって合焦された光線もまた、近方焦点面722のところに焦点の合っていないぼやけたスポットを生じさせる。トリートメントゾーン707b,707dにより合焦された光線は、近方焦点面722のところに合焦像を作る。トリートメントゾーン707b,707dによって合焦された光線は、近方焦点面722後に発散する。
【0073】
加入度数トリートメントゾーン707a,707b,707c,707dは、中央領域705だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。トリートメントゾーン707a,707b,707c,707d相互間には、レンズ701を通過した光により作られる像のコントラストを著しくは減少させない領域が設けられている。周辺ゾーン704は、レンズ701の前方表面上に設けられかつレンズ701の周囲に沿って一定間隔で配置された複数の種子状バラスト709a,709b,709cを有する。これらバラスト709a,709b,709cは、矢印706で示すように、時計回りの方向における第1の光軸回りのレンズ701の回転を促進する。レンズ701の装用者がまばたきをした場合、装用者のまぶたは、回転力をバラスト709a,709b,709cに与え、それによりレンズ701が回転する。レンズ701が回転力に応答して第1の光軸回りに回転すると、トリートメントゾーン707a,707b,707c,707dは、動いて眼の互いに異なる領域に一致する。これにより、眼がトリートメントゾーン707a,707b,707c,707dにより生じる焦点ぼけ効果を補償する能力が低下する場合がある。
【0074】
図12(a)は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅らせる(例えば、近視の制御を行う)際に用いられるレンズ801の概略平面図である。光学ゾーン802は、環状領域803によって包囲された中央領域805を有する。中央領域805は、ベース度数を提供しかつ中心が第1の光軸818上にある曲率中心上に位置する曲率を有する。これは、
図12(b)に示されており、
図12(b)は、レンズのB‐B線矢視概略断面図である。
【0075】
環状領域803は、複数のトリートメントゾーン807a,807b,807c,807dを有する。各トリートメントゾーン807a,807b,807c,807dは、加入度数を提供する曲率を有する。トリートメントゾーン807a,807b,807c,807dの前方表面(破線の円で示されている)の曲率半径は、中央領域805の前方表面の曲率半径よりも小さい。したがって、トリートメントゾーン807a,807b,807c,807dは、中央領域805のベース度数よりも大きな度数を有する。
図12(b)に示すように、中央領域805の前方表面は、半径828の球(一点鎖線の円で示されている)の表面の一部分を構成する。トリートメントゾーン807b,807dの前方表面は、曲率半径829を有する湾曲した環状面を構成する。
【0076】
図12(b)及び
図12(c)に示すように、中央領域805を通過した光線が遠方焦点面824のところに合焦されている。単一の像は、近方焦点面822のところには形成されない。無限遠のところに位置する点光源に関し、中央領域805を通過した光線は、近方焦点面822のところにぼやけた円を生じさせる。しかしながら、トリートメントゾーン807b,807dを通過した遠方の点光源からの光線は、ぼやけた円を取り囲む合焦状態の円弧を生じさせる。
【0077】
加入度数トリートメントゾーン807a,807b,807c,807dは、中央領域805だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。トリートメントゾーン807a,807b,807c,807d相互間には、レンズ801を通過した光により作られる像のコントラストを著しくは減少させない領域が設けられている。周辺ゾーン804は、レンズ801の前方表面上に設けられかつレンズ801の周囲に沿って一定間隔で配置された複数の種子状バラスト809a,809b,809cを有する。これらバラスト809a,809b,809cは、矢印806で示すように、時計回りの方向における第1の光軸回りのレンズ801の回転を促進する。レンズ801の装用者がまばたきをした場合、装用者のまぶたは、回転力をバラスト809a,809b,809cに与え、それによりレンズ801が回転する。レンズ801が回転力に応答して第1の光軸回りに回転すると、トリートメントゾーン807a,807b,807c,807dは、動いて眼の互いに異なる領域に一致する。これにより、眼がトリートメントゾーン807a,807b,807c,807dにより生じる焦点ぼけ効果を補償する能力が低下する場合がある。
【0078】
例示の実施形態(図示せず)では、レンズは、複数の同心環状領域を有するのがよく、各環状領域は、少なくとも1つのトリートメントゾーンを有する。同心環状領域は、中央領域のベース度数を有する領域によって隔てられるのがよい。
【0079】
理解されるように、装用者に、右眼に装用可能なレンズ及び、左眼に装用可能なレンズを提供することができる。所与の1日に装用可能な一対のレンズ(右眼レンズ及び左眼レンズ)を考えると、両方のレンズは、環状領域の同一の半分又は四半部にわたるトリートメントゾーンを有するのがよい。例えば、両方のレンズは、レンズの側頭半部に及んで、鼻側の網膜を標的とするトリートメントゾーンを有するのがよい。右眼レンズのトリートメントゾーンは、右眼の左網膜に強力なコントラスト減少効果をもたらす。左眼レンズのトリートメントゾーンは、左眼の右網膜に強力なコントラスト減少効果をもたらす。これに対応して、右眼レンズは、右眼の右網膜のところに弱いコントラスト減少効果をもたらし、左眼レンズは、左眼の左網膜のところに弱いコントラスト減少効果をもたらす。脳は、両方の眼及び網膜の両方の領域から信号を受け取るが、コントラストを弱く減少させた像は、大脳皮質内の両眼神経像の主要な部分を占める。したがって、知覚レベルでは、像劣化は、通常の両眼視中、回避できる。
【0080】
上記
図3~
図8に示す実施形態は、レンズの回転に影響を及ぼしかつ本発明の範囲に含まれる例示の特徴を示している。
図9~
図12に示す実施形態は、本発明の範囲に属する例示の環状領域を示している。当業者には理解されるように、これら例示の実施形態の特徴を本発明の範囲に属する他の実施形態において組み合わせることができる。
【0081】
上述の説明において、既知の明らかな又は予測可能な均等例を有する整数又は要素に言及したが、かかる均等例については、これらが個々に記載されているかのごとく本明細書に記載されているものとする。任意のかかる均等例を含むものとみなされるべき本発明の真の範囲を定める特許請求の範囲を参照すべきである。また、読者には理解されるように、有利であり、好都合であるなどと説明された本開示の整数又は特徴は、オプションであり、独立形式の請求項の範囲を限定するものではない。さらに、理解されるべきこととして、本発明の幾つかの実施形態では利益があると考えられるが、かかるオプションとしての整数又は特徴は、望ましいものではない場合があり、したがって、他の実施形態では記載されていない場合がある。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の進行又は増悪を抑え又は遅らせる際に用いられるコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、光学ゾーン及び前記光学ゾーンを包囲した周辺ゾーンを有し、前記光学ゾーンは、
中央領域を有し、前記中央領域は、第1の光軸及びベース度数をもたらしかつ中心が前記第1の光軸上にある曲率中心に位置する曲率を有し、
環状領域を有し、前記環状領域は、前記中央領域を円周方向に包囲し、前記環状領域は、トリートメントゾーンを有し、前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる特性を有する、コンタクトレンズにおいて、
前記コントラスト減少を引き起こす前記特性は、前記環状領域周りの経線につれて変化し、
前記周辺ゾーンは、あらゆる経線に関して一定の厚さプロフィール又は前記レンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈し、
前記トリートメントゾーンは、
a)前記中央領域を通過した光と比較して、前記トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴、
b)前記トリートメントゾーンを通過した光の回折を引き起こす特性、及び
c)加入度数を提供する曲率を備えた加入度数領域のうちの少なくとも1つを有し、前記トリートメントゾーンは、幅及び前記トリートメントゾーンの前記幅の半分のところで取られた前記トリートメントゾーンの表面の垂線を有し、該垂線は、前記中央領域の表面の曲率半径の中心で取られた垂線と交差し、各遠方点物体からの光は、それにより、前記トリートメントゾーンによって合焦されて近方焦点面のところに合焦円弧を形成し、該円弧は、前記中央領域によって合焦された前記光により作られるぼやけた円の外側に位置し、かつ該ぼやけた円周りの方向に延びる、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈し、前記周辺ゾーンの前記厚さプロフィールは、鏡面対称軸を備えていない、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈し、前記周辺ゾーンの前記厚さは、前記コンタクトレンズの一方の半部について一定であり、前記コンタクトレンズの他方の半部について変化している、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記コンタクトレンズの前記他方の半部の前記変化は、前記コンタクトレンズの他方の半部についてプリズムバラストを提供する、請求項3記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈し、前記周辺ゾーンの前記厚さは、前記コンタクトレンズ周りに周期的に変化している、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記周期的変化は、正弦波、三角波又はのこぎり波である、請求項5記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記環状領域は、前記中央領域を通して見た物体の像と比較して、前記環状領域を通して見た物体の像のコントラストを実質的に減少させることはない領域によって区分された複数のトリートメントゾーンを有する、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記トリートメントゾーンは、前記環状領域の周囲に沿ってぐるりと一定間隔で配置されている、請求項7記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記トリートメントゾーンは、前記中央領域を通して見た物体の像と比較して、前記トリートメントゾーンを通して見た物体の像のコントラストを50%以上減少させる特性を備えた強いコントラスト減少領域を有し、前記強コントラスト減少領域の面積は、前記環状領域の面積の50%未満である、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記トリートメントゾーンは、前記中央領域を通して見た物体の像と比較して、前記トリートメントゾーンを通して見た物体の像のコントラストを10%~50%減少させる特性を備えた弱いコントラスト減少領域をさらに有する、請求項8記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記加入度数領域は、0.5D以上の加入度数を提供する曲率を有する、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記加入度数領域は、少なくとも2.0Dの最大加入度数を提供する曲率を有し、前記トリートメントゾーンは、0D~1.5Dの低加入度数をもたらす曲率を備えた低加入度数領域をさらに有する、請求項11記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記環状領域は、前記ベース度数を提供しかつ中心が前記中央領域の前記曲率中心上に位置する前記曲率を備えた少なくとも1つのベース度数領域を有するのがよい、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記曲率は、前記コンタクトレンズの前方表面の曲率である、請求項11記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴は、前記環状領域の前方表面上に設けられている、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記中央領域は、形状が実質的に円形であり、直径が2~7mmである、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記環状領域は、前記中央領域の周囲から半径方向外方に0.5mm~1.5mm延びている、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記ベース度数は、0.5D~-15.0Dである、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
前記コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、シリコーンヒドロゲル材料、又はこれらの混合物から成る、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
前記コンタクトレンズは、レーシング(lathing)プロセスを用いて作られている、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項21】
コンタクトレンズを製造する方法であって、前記方法は、
コンタクトレンズを形成するステップを含み、前記コンタクトレンズは、光学ゾーン及び前記光学ゾーンを包囲した周辺ゾーンを有し、前記光学ゾーンは、
中央領域を有し、前記中央領域は、第1の光軸及びベース度数をもたらしかつ中心が前記第1の光軸上にある曲率中心に位置する曲率を有し、
環状領域を有し、前記環状領域は、前記中央領域を円周方向に包囲し、前記環状領域は、トリートメントゾーンを有し、前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる特性を有する、方法において、
前記コントラスト減少を引き起こす前記特性は、前記環状領域周りの経線につれて変化し、
前記周辺ゾーンは、あらゆる経線に関して一定の厚さプロフィール又は前記レンズの回転を促進するよう構成された厚さの変化を呈し、
前記トリートメントゾーンは、
a)前記中央領域を通過した光と比較して、前記トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴、
b)前記トリートメントゾーンを通過した光の回折を引き起こす特性、及び
c)加入度数を提供する曲率を備えた加入度数領域のうちの少なくとも1つを有し、前記トリートメントゾーンは、幅及び前記トリートメントゾーンの前記幅の半分のところで取られた前記トリートメントゾーンの表面の垂線を有し、該垂線は、前記中央領域の表面の曲率半径の中心で取られた垂線と交差し、各遠方点物体からの光は、それにより、前記トリートメントゾーンによって合焦されて近方焦点面のところに合焦円弧を形成し、該円弧は、前記中央領域によって合焦された前記光により作られるぼやけた円の外側に位置し、かつ該ぼやけた円周りの方向に延びる、方法。
【請求項22】
近視の進行を軽減する方法であって、
請求項1~20のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズを、様々な近見距離に合わせて調節が可能な近視の人に提供するステップを含む、方法。
【国際調査報告】