(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】船舶平衡水の処理システム
(51)【国際特許分類】
C25B 1/46 20060101AFI20240426BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240426BHJP
B63B 83/00 20200101ALI20240426BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240426BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20240426BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20240426BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240426BHJP
C25B 9/70 20210101ALI20240426BHJP
【FI】
C25B1/46
C02F1/461 Z
B63B83/00
C25B9/00 Z
C25B9/19
C25B13/02 301
C25B15/08 302
C25B9/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566430
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 KR2022004780
(87)【国際公開番号】W WO2023003132
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0097036
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523405292
【氏名又は名称】テックウィン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン シク
(72)【発明者】
【氏名】シン ヒョン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム テー ウー
【テーマコード(参考)】
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
4D061DA04
4D061DB10
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB12
4D061EB13
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB20
4D061EB33
4D061FA10
4D061FA20
4K021AA03
4K021AB01
4K021BA03
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4K021CA08
4K021CA09
4K021DB06
4K021DB31
4K021DC11
4K021DC15
(57)【要約】
本発明の一側面は、船舶の内部に設置された船舶平衡水の処理システムにおいて、固体原料が貯蔵された第1タンク、前記第1タンクに第1水ストリームを提供する水供給装置、および前記固体原料と前記第1水ストリームを混合して原料水溶液を生成する第1原料供給装置を含む第1フィード部;前記原料水溶液を反応させて第1陽極生成物を得る第1陽極室、水および前記第1陽極室から提供された陽イオンを反応させて第1陰極生成物を得る第1陰極室、および前記第1陽極室および前記第1陰極室を区画する第1隔膜を含む第1電気分解部;前記第1陽極生成物および前記第1陰極生成物を反応させて処理剤を得る反応部;および前記処理剤を平衡水に提供する注入部;を含む船舶平衡水の処理システムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の内部に設置された船舶平衡水の処理システムにおいて、
固体原料が貯蔵された第1タンク、前記第1タンクに第1水ストリームを提供する水供給装置、および前記固体原料と前記第1水ストリームを混合して原料水溶液を生成する第1原料供給装置を含む第1フィード部;
前記原料水溶液を反応させて第1陽極生成物を得る第1陽極室、水および前記第1陽極室から提供された陽イオンを反応させて第1陰極生成物を得る第1陰極室、および前記第1陽極室および前記第1陰極室を区画する第1隔膜を含む第1電気分解部;
前記第1陽極生成物および前記第1陰極生成物を反応させて処理剤を得る反応部;および
前記処理剤を平衡水に提供する注入部;を含む、船舶平衡水の処理システム。
【請求項2】
前記第1陰極室で前記水は前記第1陽極室に提供された前記原料水溶液のうち、溶媒である前記第1水ストリームのうち少なくとも一部が前記第1陽極室から前記第1隔膜を通過して前記第1陰極室に提供されるものである、請求項1に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項3】
前記第1隔膜は透水性多孔膜である、請求項2に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項4】
前記第1陽極室は予め設定された間隔で突出した2以上の陽極板を含み、
前記第1陰極室は前記陽極板の間の空間に予め設定された間隔で突出した2以上の陰極板を含み、
前記第1隔膜は前記陽極板および前記陰極板の間の空間に位置する、請求項3に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項5】
前記第1陰極室で前記水は、前記第1水ストリームから分岐された第2水ストリームのうち少なくとも一部が前記第1陰極室に提供されるものである、請求項1に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項6】
前記第1隔膜は陽イオン交換膜である、請求項5に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項7】
前記反応部および前記注入部の間に前記処理剤を貯蔵する貯蔵部をさらに含む、請求項1に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項8】
前記船舶平衡水の処理システムは前記貯蔵部に貯蔵された前記処理剤を利用して前記第1電気分解部を冷却する熱交換部をさらに含む、請求項7に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項9】
前記反応部で得た前記処理剤の濃度は0.01~50重量%である、請求項1に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項10】
前記第1フィード部は生成された前記原料水溶液に含まれた不純物を除去する原料水溶液処理装置をさらに含む、請求項1に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項11】
前記船舶平衡水の処理システムは、
分子内2以上の金属イオンを含む金属塩が貯蔵された第2タンク、および前記金属塩および第1水ストリームから分岐された第3水ストリームを混合して金属塩水溶液を提供する第2原料供給装置を含む第2フィード部;
前記金属塩水溶液を反応させて第2陽極生成物を得る第2陽極室、前記第1~第3水ストリームのうち少なくとも一つから分岐されるか前記第2陽極室から提供された第4水ストリームおよび前記第2陽極室から提供された金属イオンを反応させて第2陰極生成物を得る第2陰極室、および前記第2陽極室および前記第2陰極室を区画する第2隔膜を含む第2電気分解部;および
前記第2陰極生成物および前記第1陰極生成物を組み合わせて前記反応部に提供する連結部;を含む金属水酸化物生成部をさらに含む、請求項1に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項12】
前記第2タンク、前記金属塩水溶液を前記第2陽極室に供給する配管、前記第2陽極室、および前記第2陽極生成物を前記第2タンクに供給する配管は閉ループ(closed loop)を構成する、請求項11に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項13】
前記閉ループは前記閉ループに沿って循環する物質の中に含まれたガスを排出するための排気口を含む、請求項12に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項14】
前記金属塩は下記の式による構造を有する、請求項11に記載の船舶平衡水の処理システム。
<式>
M
xA
y
前記式で、
Mは1価または2価の金属イオンであり、
xは2以上の整数のうち一つであり、
Aは金属イオンと結合可能な陰イオン性物質であり、
yは前記式を満足する整数のうち一つである。
【請求項15】
前記第2隔膜は透水性多孔膜である、請求項11に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項16】
前記第2隔膜は陽イオン交換膜である、請求項11に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項17】
前記第1および第2電気分解部は相互に並列連結されたものである、請求項11に記載の船舶平衡水の処理システム。
【請求項18】
前記船舶平衡水の処理システムは水素ガス処理部をさらに含む、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の船舶平衡水の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶平衡水の処理システムに関し、詳細には、船舶の内部に設置されて停泊した船舶だけでなく運航中の船舶においても船舶平衡水を円滑に処理できる船舶平衡水の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は上下水道、廃水処理、海水電解および船舶平衡水処理、農食品および食材殺菌消毒などの多様な分野に適用されている。
【0003】
最近、安定性、維持管理の便利性、経済性の側面を考慮して小規模の浄水場に適合な現場型次亜塩素酸ナトリウム製造装置が開発されている。このような現場型次亜塩素酸ナトリウム製造装置は塩水を電気分解して0.4~1.0%の低濃度の次亜塩素酸ナトリウムを製造することができるが、このような次亜塩素酸ナトリウム製造装置は副産物の除去が難しく、塩の転換率および電力効率が低く、次亜塩素酸ナトリウムの低い濃度のため大容量設備に適用するのに限界がある。
【0004】
韓国登録特許第10-1226640号、韓国公開特許第10-2012-0002074号などは、有隔膜方式で高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを製造できる装置および/または方法を開示しているが、陽極室に供給される塩水(NaCl水溶液)の精製手段が備えられていないため塩水に残留するカルシウム、マグネシウムなどのイオン性不純物が電気分解槽のイオン交換膜を汚染させて電力効率を減少させ、イオン交換膜の寿命を短縮させる問題があり、伝導度センサ、温度センサのみで陽極室に供給される塩水の物質バランスを調節し難い問題がある。
【0005】
また、このような有隔膜方式の電気分解槽は塩(NaCl)と水の電気化学的反応時に塩の消耗量が水の消耗量より多いので、陽極室に初期に供給された飽和塩水の濃度が次第に減少することになる。このような濃度の減少に対応するために、飽和塩水を注入して濃度を必要な範囲で維持できるが、陽極水の容量が増加するにつれてオーバーフロー現象が現れ得る。オーバーフローされた陽極水は別途の工程を通じて処理、再生されるが、このような工程に必要な設備、費用、規模が増加するだけでなく、塩酸(HCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、残留塩素中和剤などの化学薬品の使用による人的、物的負担が加重される問題がある。
【0006】
韓国登録特許第10-2074331号などは海水または人工塩水を利用して高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを現場で製造する装置を開示しているが、このような装置が設備または船舶に直接設置される場合、設備または船舶の使用者が負担しなければならない費用が増加し得る。特に、船舶の内部に設置された電気分解槽に海水を原料として供給して処理剤を製造する場合、海水内不純物によって電気分解槽をはじめとする設備に多量のスケールが発生し得、処理剤の濃度を容易に制御し難く、生産された消毒剤の分解が迅速に進行されて濃度を一定に維持することができない問題がある。
【0007】
また、船舶が航海する海域ごとに海水の濃度および品質が異なるのでこれから均一な品質の処理剤を生産することに限界があり、次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度は、船舶の国籍だけでなく停泊中であるか運航中である国の法律と国際条約などによる制約を受けるため、従来の現場型装置では多様な濃度の次亜塩素酸ナトリウムを製造してこのような制約を解消するのが難しく、淡水海域では原料の需給が根本的に不可能であるため処理剤を製造できない問題がある。
【0008】
韓国登録特許第10-2025559号は不純物が濾された海水などを電解質と混合して処理剤を製造するための原料で使う技術を開示しているが、海水から不純物を取り除くためのフィルタなどの高価の付帯装置が必要であり、このような付帯装置は処理剤製造装置の大きさを全体的に肥大化させて維持管理を難しくする要因となる。また、海水を原料にして製造された処理剤の濃度は約0.2重量%以下と制限的であり、このような低濃度処理剤は高濃度処理剤に比べて海水内の多様な成分によって任意に変質したり濃度が低下する可能性が高いため、これを長期間の間安定的に貯蔵し難い問題がある。ひいては、電気分解槽の陽極室および陰極室でそれぞれ次亜塩素酸(HOCl)および水酸化ナトリウム(NaOH)を生成してこれらをそれぞれ船舶平衡水の処理および排気ガスの処理に独立的に使う場合、それぞれ必要な物質の生産量を制御し貯蔵することが難しく、特に、生産されたHOClはpHが低いため腐食性が高い毒性物質である塩素ガス(Cl2)を生成して周辺環境と設備全般に悪影響を及ぼす問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前述した従来技術の問題点を解決するためのもので、本発明の目的は、船舶の内部に設置されて停泊した船舶だけでなく運航中の船舶においても船舶平衡水を円滑に処理でき、設備を全体的に簡素化、小型化してメンテナンス性、経済性、効率などを改善することができ、船舶の国籍だけでなく停泊中であるか運航中である国の法律と国際条約のような多様な変数と制約に簡便で円滑に対応できる船舶平衡水の処理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、船舶の内部に設置された船舶平衡水の処理システムにおいて、固体原料が貯蔵された第1タンク、前記第1タンクに第1水ストリームを提供する水供給装置、および前記固体原料と前記第1水ストリームを混合して原料水溶液を生成する第1原料供給装置を含む第1フィード部;前記原料水溶液を反応させて第1陽極生成物を得る第1陽極室、水および前記第1陽極室から提供された陽イオンを反応させて第1陰極生成物を得る第1陰極室、および前記第1陽極室および前記第1陰極室を区画する第1隔膜を含む第1電気分解部;前記第1陽極生成物および前記第1陰極生成物を反応させて処理剤を得る反応部;および前記処理剤を平衡水に提供する注入部;を含む船舶平衡水の処理システムを提供する。
【0011】
一実施例において、前記第1陰極室で前記水は前記第1陽極室に提供された前記原料水溶液のうち、溶媒である前記第1水ストリームのうち少なくとも一部が前記第1陽極室から前記第1隔膜を通過して前記第1陰極室に提供されるものであり得る。
【0012】
一実施例において、前記第1隔膜は透水性多孔膜であり得る。
【0013】
一実施例において、前記第1陽極室は予め設定された間隔で突出した2以上の陽極板を含み、前記第1陰極室は前記陽極板の間の空間に予め設定された間隔で突出した2以上の陰極板を含み、前記第1隔膜は前記陽極板および前記陰極板の間の空間に位置することができる。
【0014】
一実施例において、前記第1陰極室で前記水は、前記第1水ストリームから分岐された第2水ストリームのうち少なくとも一部が前記第1陰極室に提供されるものであり得る。
【0015】
一実施例において、前記第1隔膜は陽イオン交換膜であり得る。
【0016】
一実施例において、前記反応部および前記注入部の間に前記処理剤を貯蔵する貯蔵部をさらに含むことができる。
【0017】
一実施例において、前記船舶平衡水の処理システムは前記貯蔵部に貯蔵された前記処理剤を利用して前記第1電気分解部を冷却する熱交換部をさらに含むことができる。
【0018】
一実施例において、前記反応部で得た前記処理剤の濃度は0.01~50重量%であり得る。
【0019】
一実施例において、前記第1フィード部は生成された前記原料水溶液に含まれた不純物を除去する原料水溶液処理装置をさらに含むことができる。
【0020】
一実施例において、前記船舶平衡水の処理システムは、分子内2以上の金属イオンを含む金属塩が貯蔵された第2タンク、および前記金属塩および第1水ストリームから分岐された第3水ストリームを混合して金属塩水溶液を提供する第2原料供給装置を含む第2フィード部;前記金属塩水溶液を反応させて第2陽極生成物を得る第2陽極室、前記第1~第3水ストリームのうち少なくとも一つから分岐されるか前記第2陽極室から提供された第4水ストリームおよび前記第2陽極室から提供された金属イオンを反応させて第2陰極生成物を得る第2陰極室、および前記第2陽極室および前記第2陰極室を区画する第2隔膜を含む第2電気分解部;および前記第2陰極生成物および前記第1陰極生成物を組み合わせて前記反応部に提供する連結部;を含む金属水酸化物生成部をさらに含むことができる。
【0021】
一実施例において、前記第2タンク、前記金属塩水溶液を前記第2陽極室に供給する配管、前記第2陽極室、および前記第2陽極生成物を前記第2タンクに供給する配管は閉ループ(closed loop)を構成することができる。
【0022】
一実施例において、前記閉ループは前記閉ループに沿って循環する物質の中に含まれたガスを排出するための排気口を含むことができる。
【0023】
一実施例において、前記金属塩は下記の式による構造を有することができる。
<式>
MxAy
【0024】
前記式で、Mは1価または2価の金属イオンであり、xは2以上の整数のうち一つであり、Aは金属イオンと結合可能な陰イオン性物質であり、yは前記式を満足する整数のうち一つである。
【0025】
一実施例において、前記第2隔膜は透水性多孔膜であり得る。
【0026】
一実施例において、前記第2隔膜は陽イオン交換膜であり得る。
【0027】
一実施例において、前記第1および第2電気分解部は相互に並列連結されたものであり得る。
【0028】
一実施例において、前記船舶平衡水の処理システムは水素ガス処理部をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一側面に係る船舶平衡水の処理システムは、船舶の内部に設置されるものの、固体原料が貯蔵された第1タンク、前記第1タンクに第1水ストリームを提供する水供給装置、および前記固体原料と前記第1水ストリームを混合して原料水溶液を生成する第1原料供給装置を含む第1フィード部;前記原料水溶液を反応させて第1陽極生成物を得る第1陽極室、水および前記第1陽極室から提供された陽イオンを反応させて第1陰極生成物を得る第1陰極室、および前記第1陽極室および前記第1陰極室を区画する第1隔膜を含む第1電気分解部;前記第1陽極生成物および前記第1陰極生成物を反応させて処理剤を得る反応部;および前記処理剤を平衡水に提供する注入部;を含むことによって、停泊した船舶だけでなく運航中の船舶においても船舶平衡水を円滑に処理でき、設備を全体的に簡素化、小型化してメンテナンス性、経済性、効率などを改善することができ、船舶の国籍だけでなく停泊中であるか運航中である国の法律と国際条約のような多様な変数と制約に簡便で円滑に対応することができる。
【0030】
本発明の効果は前記の効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施例に係る船舶平衡水の処理システムを示す。
【
図2】本発明の一実施例に係る第1電気分解部を示す。
【
図3】本発明の他の一実施例に係る船舶平衡水の処理システムを示す。
【
図4】本発明の他の一実施例に係る船舶平衡水の処理システムを示す。
【
図5】本発明の他の一実施例に係る船舶平衡水の処理システムを示す。
【
図6】本発明の他の一実施例に係る船舶平衡水の処理システムを示す。
【
図7】本発明の一実施例に係る第1および第2電気分解部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、添付した図面を参照して本発明を説明することにする。しかし、本発明は多様な異なる形態で具現され得、したがってここで説明する実施例で限定されるものではない。そして図面で本発明を明確に説明するために、説明にかかわらない部分は省略し、明細書全体を通じて類似する部分に対しては類似する図面符号を付した。
【0033】
明細書全体で、或る部分が他の部分と「連結」されているとする時、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を挟んで「間接的に連結」されている場合も含む。また、或る部分が何らかの構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに具備できるということを意味する。
【0034】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明することにする。
【0035】
図1は、本発明の一実施例に係る船舶平衡水の処理システムを示す。
【0036】
図1を参照すると、本発明の一側面に係る船舶平衡水の処理システムは、船舶の内部に設置された船舶平衡水の処理システムにおいて、固体原料が貯蔵された第1タンク112、前記第1タンク112に第1水ストリームを提供する水供給装置111、および前記固体原料と前記第1水ストリームを混合して原料水溶液を生成する第1原料供給装置113を含む第1フィード部110;前記原料水溶液を反応させて第1陽極生成物を得る第1陽極室211、水および前記第1陽極室211から提供された陽イオンを反応させて第1陰極生成物を得る第1陰極室212、および前記第1陽極室211および前記第1陰極室212を区画する第1隔膜213を含む第1電気分解部210;前記第1陽極生成物および前記第1陰極生成物を反応させて処理剤を得る反応部300;および前記処理剤を平衡水に提供する注入部400;を含むことができる。
【0037】
従来船舶の外部で製造された処理剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウムを平衡水に直接提供したり、船舶の内部に設置されたタンクに貯蔵して必要に応じて平衡水に提供する技術が提案された。ただし、前者の場合、船舶が処理剤の製造および/または注入設備が備えられた特定の地点に停泊したり運航中である船舶に処理剤を提供するための別途の船舶や設備をドッキングした場合に限って適用され得、後者の場合、運航中である船舶で貯蔵された処理剤が枯渇した以後には平衡水を処理できない問題がある。
【0038】
また、従来不純物が濾された海水などを電解質と混合して処理剤を製造するための原料として使う技術が提案されたが、海水から不純物を取り除くためのフィルタなどの高価な付帯装置が必要であり、このような付帯装置は処理剤製造装置の大きさを全体的に肥大化させて維持管理を難しくする要因となる。また、海水を原料にして製造された処理剤の濃度は約0.2重量%以下と制限的であり、このような低濃度処理剤は高濃度処理剤に比べて任意に変質する可能性が高いので、これを長期間の間安定的に貯蔵し難い問題がある。また、このような低濃度処理剤の使用時、海洋生物の死滅率を高めるためにフィルタを使わなければならないが、全体の設備のうちフィルタに所要される費用の比重が大きいため、経済性の側面で不利な問題がある。反面、高濃度処理剤を生産するためには、隔膜式電気分解設備が必要であるが、海水をそのまま使用することができず、海水を前処理するためには複雑な設備とそれによる過度な費用が所要される問題がある。
【0039】
これに対し、前記船舶平衡水の処理システムは船舶の内部に設置されるため、停泊した船舶だけでなく運航中である船舶においても平衡水を円滑に処理でき、必要に応じて船舶の内部に貯蔵された固体原料を利用して高濃度の処理剤を持続的に製造、生産、貯蔵して平衡水を処理できるため、フィルタのような補助設備を必要としない長所がある。
【0040】
前記第1フィード部110は固体原料、例えば、塩が貯蔵された第1タンク112、前記第1タンク112に第1水ストリームを提供する水供給装置111、および前記固体原料と前記第1水ストリームを混合して原料水溶液を生成する第1原料供給装置113を含むことができる。
【0041】
前記第1タンク112は外部から供給された固体原料、例えば、塩を貯蔵でき、前記第1原料供給装置113は前記固体原料と前記水供給装置111から提供された水道水、精製水(純粋以上)、および/または不純物が濾された海水からなる前記第1水ストリームを混合して予め設定された濃度の原料水溶液、好ましくは、塩水、さらに好ましくは、飽和塩水を生成して前記第1電気分解部210の前記第1陽極室211に提供することができる。
【0042】
前記水供給装置111から提供される前記第1水ストリームは水道水、精製水、および/または不純物が濾された海水からなり得る。このような水道水、精製水、および/または不純物が濾された海水は船舶の外部に位置した別途の設備で処理(濾過、殺菌など)されたものであって、前記水供給装置111の前端に備えられた水タンク(図示されず)に貯蔵され得、必要に応じて前記水供給装置111により前記第1タンク112に提供され得る。
【0043】
前記水供給装置111は船舶の内部に海水を流入させて濾過、精製する任意の手段、例えば、フィルタのような高価な付帯装置を含まないことができ、予め貯蔵された水道水、精製水、および/または不純物が濾された海水を前記第1タンク112に直接提供するため、船舶平衡水の処理システムを全体的に簡素化、小型化してメンテナンス性、経済性、効率などを改善することができる。
【0044】
前記第1原料供給装置113は予め貯蔵された水道水、精製水、および/または不純物が濾された海水からなる前記第1水ストリームと前記第1タンク112に貯蔵された前記固体原料を予め設定された割合で混合して前記原料水溶液を生成することができる。
【0045】
前記第1原料供給装置113で生成、提供される前記原料水溶液は、処理剤の原料となる電解質と水を含むものの、必要に応じて、原料水溶液処理装置(図示されず)により処理されて実質的に不純物を含まないので、このような不純物によって船舶平衡水の処理システムに生成される不要なスケールなどを効果的に防止でき、前記原料水溶液の量または印加される電流を調節することによって前記第1電気分解部210を通じて得られる処理剤水溶液の濃度を容易で精巧に制御することができる。
【0046】
前記第1原料供給装置113は原料水溶液処理装置(図示されず)を含むことができる。前記原料水溶液処理装置は前記第1原料供給装置113で生成された原料水溶液、例えば、飽和塩水に含まれたカルシウム、マグネシウムなどの残余不純物を除去することによって、前記第1電気分解部210の前記第1隔膜213の汚染を事前に防止して電気分解反応の効率を高めることができ、前記第1隔膜213の耐久性と寿命を延長させるのに寄与することができる。
【0047】
また、前記原料水溶液処理装置は予め設定された規格の水槽に、ヒーターが備えられた加熱部、pH調節部、および前記加熱部を経た原料水溶液のうち不純物を吸着、除去できるキレート樹脂が備えられた軟水装置(図示されず)を含むことができる。前記加熱部は精製されていない原料水溶液、例えば、飽和塩水の温度、pHなどを適切に維持して前記軟水装置の吸着効率を改善することができる。例えば、前記飽和塩水の適切な温度は50~80℃であり得、pHは9以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記第1電気分解部210は前記原料水溶液を反応させて第1陽極生成物を得る第1陽極室211、水および前記第1陽極室211から提供された陽イオン、好ましくは、金属イオンを反応させて第1陰極生成物を得る第1陰極室212、および前記第1陽極室211および前記第1陰極室212を区画する第1隔膜213を含むことができる。
【0049】
前記第1陽極室211は陽極を含むことができ、前記陽極での電気分解反応によって生成された陽極水と気体状物質を含む第1陽極生成物を担持することができる。また、前記第1陰極室212は陰極を含むことができ、前記陰極での電気分解反応によって生成された陰極水と気体状物質を含む第1陰極生成物を担持することができる。
【0050】
前記原料水溶液が塩水、好ましくは、飽和塩水である場合、前記第1電気分解部210に予め設定された電圧が印加されると、前記第1陽極室211および前記第1陰極室212では次のような物質が生成され得る。
【0051】
前記第1陽極室211では予め設定された濃度を有する飽和塩水が電気分解されてナトリウムイオン(Na+)、塩素ガス(Cl2)および塩素イオン(Cl-)が生成され得、前記第1陰極室212では水が電気分解されて水素ガス(H2)および水酸化イオン(OH-)が生成され得る。前記第1陽極室211で生成されたナトリウムイオンは前記第1隔膜213を通じて前記第1陰極室212に移動することができ、前記第1陰極室212で予め生成された水酸化イオンと反応して水酸化ナトリウムが生成され得る。
【0052】
前記第1陰極室212で生成された水酸化ナトリウムは単独でおよび/または後述する金属水酸化物生成部の第2陰極室222で得た金属水酸化物と共に、処理剤を生成するための原料および/または生成された処理剤のpHを調節して貯蔵安全性を高めるためのバッファとして使われ得る。
【0053】
図2は、本発明の一実施例に係る第1電気分解部210を示す。
【0054】
図2(a)を参照すると、前記第1陰極室212で前記水は前記第1陽極室211に提供された前記原料水溶液のうち、溶媒である前記第1水ストリームのうち少なくとも一部が前記第1陽極室211から前記第1隔膜213を通過して前記第1陰極室212に提供されるものであり得る。
【0055】
この場合、前記フィード部で前記水供給装置111は前記第1タンク112にのみ前記第1水ストリームを提供し、前記第1原料供給装置113により生成された前記原料水溶液が前記第1陽極室211に提供される。前記第1陰極室212で金属水酸化物を生成するのに必要な陽イオン、好ましくは、金属イオンは前記第1陽極室211から前記第1隔膜213を化学的および/または物理的に透過して前記第1陰極室212に提供され、水酸化イオンは前記第1陽極室211から前記第1隔膜213を化学的および/または物理的に透過して前記第1陰極室212に提供された水の電気分解反応によって生成され得る。本明細書に使われた用語、「化学的透過」は所定の電荷を有するイオン性物質がイオン交換反応のような化学的手段を通じて隔膜を透過することを意味し、「物理的透過」は物質が隔膜に備えられた気孔の大きさ、隔膜の厚さのような隔膜の物理的、構造的要素を克服して隔膜を透過することを意味する。
【0056】
このように、前記第1陰極室212で金属水酸化物を生成するのに必要な原料である陽イオンおよび水は、実質的に全量が前記第1陽極室211から前記第1隔膜213を通じて前記第1陰極室212に移動してきたものであり得る。
【0057】
図1を再び参照すると、前記フィード部と前記第1電気分解部210は、前記フィード部と前記第1陽極室211を連結して前記第1陽極室211に予め設定された濃度の原料水溶液を提供するための配管によってのみ連結され、それ以外の前記水供給装置111から前記第1陰極室212に水酸化イオンの原料となる水を提供するための配管などの別途の設備が省略され得るため、船舶平衡水の処理システムを全体的に簡素化、小型化してメンテナンス性、経済性、効率などを改善することができる。
【0058】
前記第1隔膜213は透水性多孔膜であり得る。
【0059】
一般的に石綿のようなセラミック材質の透水性多孔膜は、水が透過、移動する経路である多数の通孔および/または気孔を含むことができる。ただし、このような透水性多孔膜は実質的に特定イオンを選択的に透過させることができるイオン交換能がないため、前記第1陽極室211で生成された塩素イオンのような陰イオンが水、陽イオンと共に前記第1陰極室212に移動して前記第1陰極室212での電気分解反応を阻害する副産物として作用し得る。
【0060】
また、前記通孔および/または気孔を通じての水の透過、移動は、一方向にのみなされるのではなく両方向からなされ得、これに伴い、前記第1陰極室212に提供された水と陽イオン、および前記第1陰極室212で生成された水酸化イオンが再び前記第1陽極室211に逆流する場合、前記第1陰極室212に原料が安定的に提供され得ないため金属水酸化物および処理剤、例えば、水酸化ナトリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムが円滑に製造され得ない問題がある。
【0061】
一方、高分子フィルムからなる軟質の陽イオン交換膜は、前記第1陽極室211で生成された陽イオンが陽イオン交換膜に備えられた作用基とイオン交換反応によって前記第1陰極室212に透過、移動するようにすることができ、場合により、水分子がカチオンと共に水和物を生成して陽イオン交換膜を通じて前記第1陰極室212に透過、移動することができる。ただし、膜に備えられた気孔の大きさがナノメートル(nm)単位と非常に小さいので、前記第1陽極室211から液体状の物質、例えば、水が前記第1陰極室212に円滑に移動することができず、前記第1陰極室212に水を十分に提供するための配管などの別途の設備が必要である。
【0062】
これに対し、前記第1隔膜213は透水性多孔膜で提供されるため、前記第1陽極室211から前記第1陰極室212に十分な量の水を透過させることができる。
【0063】
また、前記透水性多孔膜の表面および/またはその内部に提供される気孔の表面を化学的および/または物理的に処理して前記透水性多孔膜にイオン交換能を付与することができる。イオン交換能を有する前記透水性多孔膜は、膜が有する固有の電気化学的特性によって前記第1陽極室211で生成された陽イオンを前記第1陰極室212に選択的に透過させることができる。
【0064】
ただし、前記第1隔膜213が透水性多孔膜である場合にも前記第1隔膜213により区画された前記第1陽極室211および前記第1陰極室212の相対的な位置のような前記第1電気分解部210の構造的要因によって、前記第1陰極室212に提供された水と陽イオン、および前記第1陰極室212で生成された水酸化イオンが前記第1陽極室211に逆流し得、これに伴い、前記第1陰極室212に原料が安定的に提供され得ないため金属水酸化物および処理剤、例えば、水酸化ナトリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムが円滑に製造され得ない問題がある。
【0065】
図2(b)を参照すると、前記第1陽極室211は予め設定された間隔で下方突出した2以上の陽極板211’を含み、前記第1陰極室212は前記陽極板211’の間の空間に予め設定された間隔で上方突出した2以上の陰極板212’を含み、前記第1隔膜213は前記陽極板211’および前記陰極板212’の間の空間に位置することができる。また、前記第1隔膜213は前記第1陽極室211および前記第1陰極室212がそれぞれ前記第1電気分解部210の上部および下部に位置するように区画することができる。
【0066】
前記陽極板211’および前記陰極板212’は、それぞれ、隣接した2個の前記陰極板212’および隣接した2個の前記陽極板211’の間の空間に位置するものの、前記陽極板211’および前記陰極板212’は互いに予め設定された間隔で離隔して接触しないことができる。すなわち、前記陽極板211’および前記陰極板212’は非接触交差型櫛目構造をなすことができる。前記陽極板211’および前記陰極板212’がなす交差型櫛目構造は電気分解反応が遂行される電極の面積を増加させて反応効率と生産性を改善するのに寄与することができる。
【0067】
前記第1隔膜213は前記陽極板211’および前記陰極板212’の間の空間に位置して前記第1陽極室211および前記第1陰極室212がそれぞれ前記第1電気分解部210の上部および下部に位置するように区画することができる。前記第1電気分解部210内で物質の移動は前記第1陽極室211から前記第1陰極室212になされるのが好ましく、前記第1陰極室212から前記第1陽極室211に物質が移動する逆流現象は適切に抑制される必要がある。
【0068】
前記第1隔膜213は前記第1陽極室211および前記第1陰極室212がそれぞれ前記第1電気分解部210の上部および下部に位置するように両者を区画することによって、前記第1電気分解部210内でなされる物質の移動方向を前記第1陽極室211から前記第1陰極室212に物理的に強制することができる。具体的には、前記原料水溶液が塩水である場合、前記第1電気分解部210に電圧を印加すると、前記第1陽極室211でナトリウムイオン(Na+)、塩素ガス(Cl2)および塩素イオン(Cl-)が生成され得、前記第1陰極室212では水の電気分解による水素ガス(H2)と水酸化イオン(OH-)、前記第1陽極室211から提供されたナトリウムイオンと水酸化イオンの反応による水酸化ナトリウムが生成され得る。
【0069】
このように前記第1陽極室211および前記第2陰極室222が区画された、例えば、これらがそれぞれ上部および下部に区画された前記第1電気分解部210の構造を安定的に維持するために前記第1隔膜213、すなわち、前記透水性多孔膜は硬質素材を含むことができる。例えば、前記第1隔膜213は高分子のような有機物、金属、セラミックのような無機物、またはこれらの組み合わせからなり得る。
【0070】
密度差によって、前記第1陽極室211で塩素ガスは前記第1陽極室211の上部に移動し、ナトリウムイオンは水に溶解した状態で前記第1陽極室211の下部に移動、前記第1隔膜213を通過して前記第1陰極室212に移動することができる。また、前記第1陰極室212で水酸化ナトリウムは水溶液状態で前記第1陰極室212の下部に移動することができる。これに伴い、次亜塩素酸ナトリウムを生成するための反応物である塩素ガスおよび水酸化ナトリウム水溶液は、それぞれ前記第1陽極室211の上部および前記第1陰極室212の下部で得られ得る。
【0071】
図3は、本発明の他の一実施例に係る船舶平衡水の処理システムを示す。
【0072】
図3を参照すると、前記第1陰極室212で前記水は前記第1水ストリームから分岐された第2水ストリームのうち少なくとも一部が前記第1陰極室212に提供されるものであり得る。場合により、物理的、構造的要因によって前記第1陽極室211から前記第1陰極室212に提供された水の量は前記第1電気分解部を駆動させて必要な量の処理剤を製造するのに不足し得る。
【0073】
これに対し、前記船舶平衡水の処理システムは、前記第1フィード部110のうち前記水供給装置111から前記第1陰極室212に水酸化イオンの原料となる前記第2水ストリームを提供するための配管などの別途の設備をさらに含むことによって、前記第1陰極室212に提供される水の量を補充することができる。
【0074】
前記第1隔膜21は陽イオン交換膜であり得る。前記陽イオン交換膜は高分子フィルムからなる軟質の陽イオン交換膜であり得る。前記陽イオン交換膜は前記第1陽極室211で生成された陽イオン、例えば、ナトリウムイオンが前記陽イオン交換膜に備えられた作用基とイオン交換反応によって前記第1陰極室212に透過、移動するようにすることができるが、膜に備えられた気孔の大きさがナノメートル(nm)単位と非常に小さいので前記第1陽極室211から液体状の物質、例えば、水が前記第1陰極室212で円滑に移動することを妨げ得る。
【0075】
また、前記陽イオン交換膜は前記第1陰極室212で生成された水酸化イオンが前記第1陽極室211に透過、移動することを防止できる追加の層および/または作用基を含むことができる。
【0076】
前記反応部300は前記第1電気分解部210の前記第1陽極室211で生成された前記第1陽極生成物、例えば、塩素ガスと、前記第1陰極室212で生成された前記第1陰極生成物、例えば、水酸化ナトリウムを反応させて処理剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウムを生成することができる。前記反応部300は前端の前記第1電気分解部210および後端の前記注入部400と配管等を通じて連結された独立的な装置乃至設備であるか、図示されてはいないが、前端の前記第1電気分解部210と別途の配管なしに一体に備えられたものであり得る。
【0077】
後者の場合、前記第1電気分解部210の内部のうち一部を前記第1陽極生成物および前記第1陰極生成物が収集される空間として提供し、前記空間で前記第1陽極生成物および前記第1陰極生成物を反応させて処理剤を生成することができる。また、前記反応部300および前記第1電気分解部210が一体に提供される場合、従来隔膜式電気分解部に必須的に備えられる陽極生成物および/または陰極生成物のうち少なくとも一部をそれぞれ陽極室および/または陰極室に循環させるための装置乃至設備を省略できるので、船舶平衡水の処理システムを全体的に簡素化、小型化してメンテナンス性、経済性、効率などを改善することができる。
【0078】
前記反応部300で得た処理剤の濃度、具体的には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度は0.01~50重量%、好ましくは、0.1~20重量%、さらに好ましくは、0.2~15重量%であり得る。
【0079】
図4および
図5は、本発明の他の一実施例に係る船舶平衡水の処理システムを示す。
【0080】
図4を参照すると、前記船舶平衡水の処理システムは前記反応部300および前記注入部400の間に、前記反応部300で生成された前記処理剤を貯蔵する貯蔵部500をさらに含むことができる。
【0081】
前記貯蔵部500は前記第1電気分解部210で生成された処理剤の量が平衡水を処理するのに必要な量を超過する場合、過剰生成された処理剤を安定的に貯蔵することができ、前記第1電気分解部210で生成された処理剤の量が不足したり、前記第1電気分解部210が故障したりこれをメンテナンスするために前記第1電気分解部210の駆動が中断される場合、貯蔵された処理剤を前記注入部400を通じて平衡水に提供することによって、船舶が運航中であるか停泊した状態で平衡水が持続的に円滑に処理されるようにすることができる。また、前記第1電気分解部210の駆動が長期間の間中断される場合、船舶の外部で製造された処理剤を前記貯蔵部500に注入、貯蔵して必要に応じて平衡水を処理するのに使うことができる。
【0082】
前記貯蔵部500は温度、湿度、圧力、処理剤の濃度およびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された一つが制御された密閉された装置乃至設備であり得る。例えば、前記貯蔵部500は処理剤の安定性を確保するための温度センサ、温度調節装置、圧力センサ、圧力調節装置、湿度センサ、湿度調節装置、濃度センサ、濃度調節装置、外気遮断装置、漏出防止装置、貯蔵中に発生したガスを排出させる排気装置などをさらに含むことができる。前記漏出防止装置は、例えば、漏洩警報器、放流段、漏洩した処理剤を無害化する触媒反応器および/または中和器、吸収および/または吸着を通じて拡散を防止する装置などを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記貯蔵部500と前記注入部400は一体に提供され得、前記貯蔵部500は処理剤の注入量と状態を確認、制御できる装置乃至設備をさらに含むことができる。
【0084】
図5を参照すると、前記船舶平衡水の処理システムは前記貯蔵部500に貯蔵された前記処理剤を利用して前記第1電気分解部210を冷却する熱交換部600をさらに含むことができる。
【0085】
前記熱交換部600は、前記第1電気分解部210の前記第1陽極室211および前記第1陰極室212の一面に溶接などによって結合された冷却ジャケット、および前記冷却ジャケットと前記貯蔵部500を連結する配管を含むことができる。前記貯蔵部500に貯蔵された処理剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のうち一部は前記配管を通じて前記冷却ジャケットの内部を貫通して前記第1電気分解部210で反応によって発生した熱を吸収する冷媒として作用することができる。この場合、従来電気分解部での発熱を制御するために陽極生成物および/または陰極生成物の循環設備および/またはこのような循環設備に備えられた別途の熱交換器を省略できるので、船舶平衡水の処理システムを全体的に簡素化、小型化してメンテナンス性、経済性、効率などを改善することができる。
【0086】
図6は、本発明の他の一実施例に係る船舶平衡水の処理システムを示す。
【0087】
図6を参照すると、前記船舶平衡水の処理システムは、分子内2以上、具体的には、2モル以上の金属イオンを含む金属塩が貯蔵された第2タンク122、および前記金属塩および第1水ストリームから分岐された第3水ストリームを混合して金属塩水溶液を提供する第2原料供給装置123を含む第2フィード部120;前記金属塩水溶液を反応させて第2陽極生成物を得る第2陽極室221、前記第1~第3水ストリームのうち少なくとも一つから分岐されるか前記第2陽極室221から提供された第4水ストリームおよび前記第2陽極室221から提供された金属イオンを反応させて第2陰極生成物を得る第2陰極室222、および前記第2陽極室221および前記第2陰極室222を区画する第2隔膜223を含む第2電気分解部220;および前記第2陰極生成物および前記第1陰極生成物を組み合わせて前記反応部300に提供する連結部700;を含む金属水酸化物生成部をさらに含むことができる。
【0088】
前記第2タンク122は分子内2モル以上の金属イオンを含む金属塩を貯蔵することができる。前記分子内2以上の金属イオンを含む金属塩は、前記水供給装置111により提供された前記第1水ストリームから分岐された第3水ストリームに溶解して水溶液状態で前記第2電気分解部220の前記第2陽極室221に提供され得る。
【0089】
前記第2タンク122は外部で供給された固体状の金属塩を貯蔵でき、前記水供給装置111から水道水、精製水、および/または不純物が濾された海水などの提供を受けて前記第2原料供給装置123で前記金属塩水溶液、好ましくは、金属塩飽和水溶液を生成して前記第2電気分解部220の前記第2陽極室221に提供することができる。
【0090】
前記第2タンク122は外部で前記金属塩が固体状に流入する金属塩供給部(図示されず)、前記水供給装置111から第3水ストリームが提供される流入管路、前記第2陽極室221から前記第2陽極生成物が提供される流入管路、前記飽和水溶液を排出する金属塩飽和水溶液排出管路、前記第2タンク122の内部で発生したガスを排出できる排気管路を含むことができる。
【0091】
前記金属塩は下記の式による構造を有することができる。
<式>
MxAy
【0092】
前記式で、Mは1価または2価の金属イオンであり、xは2以上の整数のうち一つであり、Aは金属イオン(M)と結合可能な陰イオン性物質であり、yは前記式を満足する整数のうち一つであり得る。
【0093】
前記金属イオンはナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、リチウムイオン(Li+)のようなアルカリ金属イオン、および/またはベリリウムイオン(Be2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、バリウムイオン(Ba2+)、ラジウムイオン(Ra2+)のようなアルカリ土類金属イオンであり得、好ましくは、アルカリ金属イオン、さらに好ましくは、ナトリウムイオンであり得るが、これに限定されるものではない。特に、前記金属イオンは前記第1陽極室211から前記第1隔膜213を通じて前記第1陰極室212に提供される前記陽イオンと同一のもの、すなわち、同種のものであり得る。
【0094】
前記陰イオン性物質は炭酸イオン(CO3
2-)、硫酸イオン(SO4
2-)、過硫酸イオン((S2O8)2-))、燐酸イオン(PO4
3-)、燐酸水素イオン(HPO4
2-)およびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された一つであり得、好ましくは、炭酸イオンであり得るが、これに限定されるものではない。また、前記ナトリウムイオンと前記陰イオン性物質が結合して生成された前記ナトリウム塩は炭酸ナトリウム(Na2CO3)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、過硫酸ナトリウム(Na2S2O8)、第3燐酸ナトリウム(Na3PO4)、第2燐酸ナトリウム(Na2HPO4)およびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された一つであり得、好ましくは、炭酸ナトリウムであり得るが、これに限定されるものではない。
【0095】
前記第2電気分解部220は前記金属塩水溶液を反応させて第2陽極生成物を得る第2陽極室221、前記第1~第3水ストリームのうち少なくとも一つから分岐されるか前記第2陽極室221から提供された第4水ストリームおよび前記第2陽極室221から提供された金属イオンを反応させて第2陰極生成物を得る第2陰極室222、および前記第2陽極室221および前記第2陰極室222を区画する第2隔膜223を含むことができる。前記第4水ストリームが前記第2陽極室221に提供された前記金属塩水溶液のうち溶媒である前記第3水ストリームのうち少なくとも一部が前記第2陽極室221から前記第2隔膜223を通過して前記第2陰極室222に提供されるものである場合、前記第1~第3水ストリームのうち少なくとも一つから分岐された別途の前記第4水ストリームは適切に省略され得る。
【0096】
前記第2陽極室221は陽極を具備でき、前記陽極での電気分解反応によって生成された物質を含む陽極水と気体状物質を担持することができる。また、前記第2陰極室222は陰極を具備でき、前記陰極での電気分解反応によって生成された物質を含む陰極水と気体状物質を担持することができる。
【0097】
例えば、前記金属塩が炭酸ナトリウム(Na2CO3)の場合、前記第2電気分解部220に予め設定された電圧が印加されると、前記第2陽極室221および前記第2陰極室222では次のような物質が生成され得る。
【0098】
前記第2陽極室221ではナトリウム塩水溶液が電気分解されてナトリウムイオン(Na+)、二酸化炭素ガス(CO2)および酸素ガス(O2)が生成され得、前記第2陰極室222では前記第4水ストリームが電気分解されて水素ガス(H2)および水酸化イオン(OH-)が生成され得る。前記第2陽極室221で生成されたナトリウムイオンは前記第2隔膜223を通じて前記第2陰極室222に移動することができ、前記第2陰極室222で予め生成された水酸化イオンと反応して水酸化ナトリウムが生成され得る。
【0099】
前記第1および第2原料供給装置によって提供される原料物質がそれぞれ塩水および炭酸ナトリウム水溶液である場合、前記第2電気分解部220の前記第2陰極室222で生成された水酸化ナトリウム、および前記第1電気分解部210の前記第1陰極室212で生成された水酸化ナトリウムは前記連結部700に移動して相互に組み合わせられて次亜塩素酸ナトリウムを生成するための原料として前記反応部300に提供され得、必要に応じて、前記反応部300で生成された次亜塩素酸ナトリウムのpHを調節して貯蔵安全性を高めるためのバッファとして使われ得る。
【0100】
また、前記第2電気分解部220の前記第2陰極室222および前記連結部700の間には前記第2陰極室222で生成された前記金属水酸化物、好ましくは、水酸化ナトリウム、さらに好ましくは、水酸化ナトリウム水溶液を貯蔵する貯蔵部(図示されず)をさらに含むことができる。この時、前記反応部300で生成された前記処理剤を貯蔵する前記貯蔵部500を第1貯蔵部と指称し、前記水酸化ナトリウム水溶液を貯蔵する貯蔵部(図示されず)を第2貯蔵部と指称し得る。
【0101】
一方、前記第2電気分解部220が点検、メンテナンスなどによって運転が中断されたり、前記船舶平衡水の処理システムから一時的に脱去されるなど、前記船舶平衡水の処理システムが実質的に前記第2電気分解部220を含まない場合、前記金属水酸化物は船舶の外部から前記反応部300に直接注入されたり、前記第2貯蔵部に注入、貯蔵された後に必要に応じて前記反応部300に注入され得る。
【0102】
前記第2タンク122、前記金属塩水溶液を前記第2陽極室221に供給する配管、前記第2陽極室221、および前記第2陽極生成物を前記第2タンク122に供給する配管は閉ループ(closed loop)を構成することができる。本明細書に使われた用語、「閉ループ」は前記第2タンク122、前記金属塩水溶液を前記第2陽極室221に供給する配管、前記第2陽極室221、および前記第2陽極生成物を前記第2タンク122に供給する配管を通じての物質の移送、循環などにおいて、任意の物質が外部から流入したり外部に流出されないように制御されたことを意味する。必要に応じて、前記閉ループは前記閉ループに沿って循環する物質の中に含まれたガス、例えば、二酸化炭素ガス(CO2)および/または酸素ガス(O2)を排出するための排気口を含むことができる。
【0103】
特に、前記第2タンク122で生成された金属塩水溶液を前記第2陽極室221に供給する配管および前記第2陽極室221で生成された物質を前記第2タンク122に供給する配管は、任意の物質が外部から流入したり外部に流出され得るチャネルを含まないことができる。ただし、前記第2タンク122に貯蔵された前記金属塩が予め設定された範囲で消耗する場合、前記第2タンク122に必要な量の金属塩を補充して前記第2陽極室221に必要な濃度の金属塩水溶液が持続的に供給されるようにすることができる。
【0104】
前記閉ループは前記第2電気分解部220の前記第2陰極室222で金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムが持続的、安定的に生成されるようにすることができ、生成された金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムは処理剤である次亜塩素酸ナトリウムを生成するための第1電気分解部210の前記第1陰極室212で生成された金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムと共に処理剤である次亜塩素酸ナトリウムを生成するための原料として使われ得、必要に応じて、生成された次亜塩素酸ナトリウムのpHを調節して貯蔵安全性を高めるためのバッファとして使われ得る。
【0105】
前記船舶平衡水の処理システムは前記第1電気分解部210および前記反応部300での物質バランス制御、および/または生成された処理剤の安定した貯蔵などに必要な金属水酸化物を外部で別に注入せず、前記金属水酸化物生成部と結合して前記金属水酸化物生成部によって得た金属水酸化物を実質的にインサイチュ(in-situ)方式で使うので、従来処理剤を製造するための装置乃至設備に必須的に備えられた外部から前記反応部300に金属水酸化物を注入するための別途の設備(金属水酸化物の貯蔵、注入などに必要な設備)が省略され得、これに伴い、金属水酸化物の運送、貯蔵、取り扱い、使用による負担を大幅に軽減させることができる。
【0106】
前記第2隔膜223は透水性多孔膜であり得、前記透水性多孔膜の種類、作用効果などについては前記第1隔膜213について説明したのと同じである。
【0107】
前記第2隔膜223は陽イオン交換膜であり得る。前記陽イオン交換膜は高分子フィルムからなる軟質の陽イオン交換膜であり得る。前記陽イオン交換膜は前記第2陽極室221で生成された金属イオンが前記陽イオン交換膜に備えられた作用基とイオン交換反応によって前記第2陰極室222に透過、移動するようにすることができ、場合により、水分子が金属イオンと共に水和物を生成して前記陽イオン交換膜を通じて前記第2陰極室222に透過、移動することができる。
【0108】
ただし、膜に備えられた気孔の大きさがナノメートル(nm)単位と非常に小さいので、前記第2陽極室221から液体状の物質、例えば、水が前記第2陰極室222で円滑に移動することができず、このような物理的、構造的要因によって前記第2陽極室221から前記第2陰極室222に提供された水の量は前記第2電気分解部を駆動させて必要な量の金属水酸化物を製造するのに不足し得る。
【0109】
これに対し、前記船舶平衡水の処理システムは、前記第1フィード部110のうち前記水供給装置111から前記第2陰極室222に水酸化イオンの原料となる前記第4水ストリームを提供するための配管などの別途の設備をさらに含むことによって、前記第2陰極室222に提供される水の量を補充することができる。
【0110】
また、前記陽イオン交換膜は前記第2陰極室222で生成された水酸化イオンが前記第2陽極室221に透過、移動することを防止できる追加の層および/または作用基を含むことができる。
【0111】
図7は、本発明の一実施例に係る第1および第2電気分解部を示す。
【0112】
図7を参照すると、前記第1および第2電気分解部220は相互に並列連結されたものであり得る。本明細書に使われた用語、「並列連結」は前記第1電気分解部210の生成物が前記第2電気分解部220に原料として注入されたり、反対に、前記第2電気分解部220の生成物が前記第1電気分解部210に原料として注入されるなどの前記第1および第2電気分解部220の間に任意の物質移動および/または交換がなされず、前記第1および第2電気分解部220それぞれに対する原料の注入および生成物の排出が独立的になされるように連結された状態を意味する。ただし、必要に応じて、同じ物質の注入、排出、移送のための配管は単一のものに統合され得る。
【0113】
図7は単一の第2電気分解部220および複数の第1電気分解部210が順次的、連続的に配置された状態を例示的に示すが、これに限定されるものではなく、前記船舶平衡水の処理システムで前記第2電気分解部220が複数のもので備えられ得/得たり、前記第1および第2電気分解部220が相互に交互に配置され得/得たり、連続的に配置された複数の第1電気分解部210の間に第2電気分解部220が配置され得る。
【0114】
前記第2電気分解部220で金属塩飽和水溶液は前記第2陽極室221および前記第2タンク122を循環し、前記第2陰極室222は前記水供給装置111から提供された水を金属水酸化物に転換させて前記第2電気分解部220の外部に排出することができる。
【0115】
前記第1電気分解部210で前記第1陽極室211は前記第1タンク112から提供された前記原料水溶液、例えば、飽和塩水を塩素ガスに転換させて前記第1電気分解部210の外部に排出し、前記第1陰極室212は前記水供給装置111から提供された水を金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムに転換させて前記第1電気分解部210の外部に排出することができる。
【0116】
前記第1および第2陰極室222に水を供給するための配管、および複数の前記第1陽極室211に前記原料水溶液、例えば、飽和塩水を供給するための配管は、それぞれ単一の配管から分岐されたものであり得る。また、前記第1および第2陰極室222で生成された金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、および複数の前記第1陽極室211で生成された塩素ガスを前記反応部300に移送するための配管は単一のものに統合され得る。
【0117】
前記反応部300で生成された処理剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHにより、前記第1および第2電気分解部220のうち少なくとも一つは自動制御され得る。
【0118】
例えば、前記反応部300で得た次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHが予め設定された範囲より低い場合、前記第2電気分解部220をさらに活性化させて塩素ガス対比過量の水酸化ナトリウムを生成するようにすることができ、反対に、前記反応部300で得た次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHが予め設定された範囲より高い場合、前記第2電気分解部220での反応を遅延させたり反応効率を低くして水酸化ナトリウムの生成量を減少させることができる。前記反応部300で得た次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHによる水酸化ナトリウムの生成量は相互に電気的に連結されたセンサ類、コントローラ類、バルブ類、ポンプ類などによって自動で制御され得る。
【0119】
前記船舶平衡水の処理システムは水素ガス処理部(図示されず)をさらに含むことができる。前記水素ガス処理部は前記第1および第2陰極室212、222のうち少なくとも一つで実際に発生したか理論的に発生可能な水素ガスを貯蔵して燃料電池を駆動するための原料として使ったり、水素酸化触媒と接触させて水に転換させた後に前記水供給装置111で循環させたり、適切に希釈して外部に排出させることができる。前記水素ガス処理部は前記第1および第2陰極室212、222のうち少なくとも一つの内部および/または周辺に備えられ得る。前記水素ガス処理部は、例えば、漏洩警報器、放流段、漏洩した水素ガスを無害化する触媒反応器および/または中和器、吸収および/または吸着を通じて拡散を防止する装置などを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0120】
前述した本発明の説明は例示のためのもので、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解できるであろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり限定的ではないものと理解されるべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施され得る。
【0121】
本発明の範囲は後述する請求の範囲によって示され、請求の範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態も本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0122】
110:第1フィード部 111:水供給装置
112:第1タンク 113:第1原料供給装置
120:第2フィード部 122:第2タンク
123:第2原料供給装置
210:第1電気分解部 211:第1陽極室
211’:陽極板 212:第1陰極室
212’:陰極板 213:第1隔膜
220:第2電気分解部 221:第2陽極室
222:第2陰極室 223:第2隔膜
300:反応部 400:注入部
500:貯蔵部 600:熱交換部
700:連結部
【国際調査報告】