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特表2024-518912組織染色品質管理のためのデバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】組織染色品質管理のためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/30 20060101AFI20240426BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G01N1/30
G01N33/48 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566931
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022061268
(87)【国際公開番号】W WO2022233684
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】2106487.8
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523408765
【氏名又は名称】フタムラ ケミカル ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コックロフト、マーティン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】キーティング、エリザベス
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045BB24
2G045CB01
2G045FA19
2G045FB20
2G052AD52
2G052DA07
2G052FA09
2G052HA19
2G052JA08
(57)【要約】
本発明は、2つ未満の可塑剤を含むセルロース・フィルムを含む組織病理学染色のための品質管理デバイスを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ未満の可塑剤を含むセルロース・フィルムを備える組織病理学染色のための品質管理デバイス。
【請求項2】
前記セルロース・フィルムは、可塑剤を含まない、請求項1に記載の品質管理デバイス。
【請求項3】
前記セルロース・フィルムが、1つ又は複数の参照品目を含む、請求項1又は請求項2に記載の品質管理デバイス。
【請求項4】
前記1つ又は複数の参照品目が、PMMA粒子、シリカ粒子、セルロース繊維、気泡及び/又はタンパク質を含む、請求項3に記載の品質管理デバイス。
【請求項5】
前記セルロース・フィルムが、キトサン、ケラチン及び/又はゼラチンを含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の品質管理デバイス。
【請求項6】
前記セルロース・フィルムが、その少なくとも1つの側にコーティングを備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載の品質管理デバイス。
【請求項7】
前記セルロース・フィルムが、10から50μmの厚さ、好ましくは20から30μmの厚さ、である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の品質管理デバイス。
【請求項8】
前記セルロース・フィルムが、保護シートに付着された、請求項1から7までのいずれか一項に記載の品質管理デバイス。
【請求項9】
その1つの側に接着剤をさらに含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の品質管理デバイス。
【請求項10】
前記接着剤を含む前記セルロース・フィルムの前記側にバリア・コーティングをさらに備える、請求項9に記載の品質管理デバイス。
【請求項11】
そこに付着された請求項1から10までのいずれか一項に記載の品質管理デバイスを備える表面。
【請求項12】
組織病理学染色のための品質管理デバイスに2つ未満の可塑剤を含むセルロース・フィルムの使用。
【請求項13】
病理学的染色及び撮像工程において画像変動を補正するための請求項1から10までのいずれか一項に記載の品質管理デバイスの使用。
【請求項14】
a.同じ条件下で請求項1から10までのいずれか一項に記載の品質管理デバイス及び組織サンプルを染色することと、
b.前記品質管理デバイスを撮像することと、
c.前記品質管理デバイス画像における染色及び撮像変動を定量化することと、
d.前記組織サンプルを撮像することと、
e.前記品質管理デバイス画像における前記染色及び撮像変動の前記定量化を使用して、前記組織サンプル画像を補正することと
を含む前記組織サンプルを前記染色及び撮像する工程から生じる画像変動を補正するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織病理学染色のための品質管理デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
組織病理学は、サンプル内の細胞及び組織の視覚化を可能にするために、様々な複雑な染色工程の使用に依拠する。しかしながら、使用される染料及び工程条件に応じて、そのような染色工程の既知の相違度が存在する。たとえば、染料時間、染料濃度及び組織の厚さは、すべて、結果として得られる染色された画像に影響を及ぼし得る。
【0003】
組織病理学におけるデジタル撮像は、医療界において益々重要になっているが、これらの画像をデジタル化することは、撮像工程における変動、たとえば、光強度又は使用されるカメラの色応答の変化、によりさらに複雑さを追加する。これらの変動は、デジタル病理学に与えられ得る信用を低下させる危険がある。
【0004】
染色及び撮像条件の変動により染色及び撮像工程中に生じる相違を定量化することができる場合、結果として得られる画像は、この相違を補償するように補正され得る。これは、結果として得られるデジタル処理された画像が最小可能程度の相違を含むことを確実にし、それによって、画像を較正し、それらの品質を改善する。
【0005】
したがって、病理学的染色工程及びその後の撮像工程中に生じる相違を定量化するための手段が求められている。これは、GB2522231において論じられているような、品質管理デバイスを使用して、達成され得る。この文書は、生物学的組織と類似している光学的に透過する材料から形成された基質を備える染料評価目標を開示する。この基質は、組織サンプルと類似の条件下で染色され、結果として得られる画像を比較するための較正デバイスを提供する。
【0006】
同様に、WO2013/186530は、染料が、個々の組織ブロックを含み得る、表面の領域に適用される、撮像較正デバイスを開示する。これらの染色された領域は、結果として得られる画像を較正するために使用され得る。
【0007】
任意のそのような品質管理デバイスは、それが、染色及び撮像工程における相違を定量化するための信頼できる比較を提供することができるように、低変動性で染料を吸収しなければならない。これについては、第1の基質の第1の領域及び第2の基質の第2の領域を有する撮像参照デバイスを開示する、GB2524227において論じられており、そこで、領域は、異なる組織染料で染色され、次いで、重ね合わされる。これは、組織サンプルのスペクトル特質と厳密に調和し得る、改良された参照デバイスを生み出す。しかしながら、これは、より複雑なシステムであり、別個のデバイスが各染色プロトコルについて作成されることを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】GB2522231
【特許文献2】WO2013/186530
【特許文献3】GB2524227
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、染料取り込みにおいて低変動性を示すが単純で使いやすい組織病理学染色のための品質管理デバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
セルロース・フィルムは、組織病理学染色及び撮像のための品質管理デバイスとして使用されるときに優れた染料取り込みを実現する、ということが発見された。セルロース・フィルムは、対象の組織サンプルと同時に同条件の下で染色され得、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E:haematoxylin and eosin)、又はジアミノベンジジン(DAB:diaminobenzidine)及びホースラディッシュ・ペルオキシド(hrp:horseradish peroxide)を含む様々な染料を使用して、組織サンプルに比例して染色される。
【0011】
したがって、セルロース・フィルムは、切片化、染色及び撮像中の色の変化の特徴付けを可能にする、内部色制御を提供する。これは、照明、撮像デバイス、及びスライドに適用される個々の染料の独立した測定を可能にし、それによって、図1に示すように、染色及び撮像工程から生じる変動が定量化される及び補正されることを可能にする。
【0012】
観察者間変動を減らす及び染色結果のデジタル化を可能にすることができる、組織染色工程及び任意のその後の撮像工程の定量的評価が、そのとき、可能である。この定量的評価は、デジタル処理された画像が任意の変動を補償するように補正されることを可能にし、それによって収集された画像の品質を改良する。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、2つ未満の(すなわち、1つの又はゼロの)可塑剤を含むセルロース・フィルムを備える組織病理学染色のための品質管理デバイスが提供される。
【0014】
セルロース・フィルムは、一般に、複数の異なる可塑剤を含む複雑な可塑剤パッケージを有する。これは、結果として得られるフィルムの特性が異なる適用の技術的要件に適合されることを可能にし、商業的意味合い、たとえば、費用又は供給の高下の平衡を保つこと、もまた有する。たとえば、可塑剤は、一般に、従来のセルロース・フィルムの脆性を低減するために必須であると考えられる。
【0015】
単一の可塑剤を有する又は可塑剤を有さない(すなわち、2つ未満の異なる可塑剤を有する)セルロース・フィルムは、染料取り込みにおける変動性の低下を示し、それにより、より一貫した製品を生み出す、ということが驚いたことに発見された。理論によって縛られることを望まずに、複数の可塑剤を有するセルロース・フィルムは、染色における増加した変動源を有する、と考えられる。染料取り込みの予測性は、再現性のある比較測定を提供するために、品質管理デバイスにおいて重要である。
【0016】
品質管理参照材料としてセルロース・フィルムを使用することの付加的課題のうちの1つは、それが無傷で、平坦で、撮像に適したままであるように、スライド準備の過程を通じてスライド表面上の適所にそれを保持することである。これは、セルロース・フィルムの寸法は、異なる水和状態において変化するからであり、フィルムが取り付けられたスライド又は別の表面からの分離を引き起こすのに十分に強い様々な寸法変化をセルロース・フィルムは受けることができるということを意味する。
【0017】
より単純な可塑剤パッケージ(すなわち、1つの可塑剤を含む)又は可塑剤の欠如は、フィルムが付着された、スライドなどの表面からのセルロース・フィルムの持ち上げを減らすのに役立った、ということが驚いたことに分かった。理論に縛られることを望まずに、可塑剤は、セルロース・フィルムから及びフィルムと表面との間の接着剤に浸出し、それによって、その完全性を破壊し、フィルムの後ろへの液体進入を許す、と考えられる。この浸出はさらに、染色及び撮像工程中に生じる画像変動性を増やし得る。
【0018】
結果として得られるセルロース・フィルムの脆性の増加は、特に表面に取り付けられるとき又は保護シートを備えるとき、そのようなデバイスの低ストレス・プロフィールにより本発明の品質管理デバイスにおいては問題ではなかった、ということもまた分かった。
【0019】
染料取り込みの変動性は、セルロース・フィルムに存在する異なる可塑剤の数の増加とともに増加した。最も予測可能な染料取り込みは、可塑剤が使われていないセルロース・フィルムで見られた。
【0020】
可塑剤は、セルロース・フィルムにおける使用でよく知られており、任意の従来の可塑剤が、本発明のセルロース・フィルムにおいて使用され得る。適切な可塑剤は、グリセリン、ポリエチレン・グリコール、モノプロピレン・グリコール、トリエチレン・グリコール及び尿素を含む。
【0021】
セルロース・フィルムは、1つ又は複数の参照品目を含み得る。参照品目は、染色工程の後にフィルム内で可視であり、それによって、サイズ比較が組織サンプルにおいて見つかる品目で行われることを可能にし、画像のより容易な焦点調節を可能にする、粒子である。参照品目はまた、病理学者がサンプルを見る際に役立つように、組織自体を視覚的に表すために使用され得る。
【0022】
参照品目は、好ましくは、セルロース・フィルム内の知られているサイズ、向き及び/又は濃度である。参照品目は、好ましくは、セルロース・フィルム内に埋め込まれる。参照品目は、その製造中にフィルムに埋め込まれてあってもよい。
【0023】
参照品目は、不活性粒子、たとえば、PMMA又はシリカ粒子、を含み得る。不活性粒子は、知られている粒子サイズでもよい。不活性粒子は、知られている範囲のサイズを有する変化する粒子サイズでもよい。不活性粒子は、セルロース・フィルム内で知られている濃度でもよい。
【0024】
参照品目は、セルロース繊維を含み得る。セルロース繊維は、知られている繊維長及び/又は直径でもよい。セルロース繊維は、セルロース・フィルム内で知られている向き及び/又は知られている濃度でもよい。
【0025】
参照品目は、気泡を含み得る。気泡は、制御された及び/又は知られているサイズでもよい。気泡は、セルロース・フィルム内で知られている濃度でもよい。
【0026】
参照品目は、タンパク質を含み得る。タンパク質は、対象の組織サンプルにおいて見つけられるもの、たとえば、her-2及びエストロゲン受容体タンパク質、でもよい。セルロース・フィルムにおけるタンパク質の濃度は、対象の組織サンプルにおいて予期されるタンパク質の濃度に対応し得る。タンパク質は、セルロース・フィルム内で知られているサイズ及び/又は知られている濃度でもよい。
【0027】
セルロース・フィルムは、異なる参照品目の組合せを含み得る。参照品目は、対象の組織サンプルの1つ又は複数の特質を複製するために使用され得る。
【0028】
したがって、参照品目は、組織サンプル内の対象の粒子と類似の特性、たとえば、サイズ及び/又は染色を有し得る。特定のプロパティ、たとえば、サイズ又は染色、の様々な値を有する様々な参照粒子が、撮像するときに高速参照を提供するために、フィルムに含まれ得る。
【0029】
参照品目は、フィルム内でランダム分布を有し得る。したがって、参照品目のパターンが、それの歴史を通してデバイスのトレーサビリティを可能にする、各品質管理デバイスの一意の「デジタル指紋」を生成するために使用され得る。
【0030】
セルロース・フィルムは、キトサンを含み得る。キトサンは、真菌キトサンでもよい。これは、染料取り込み変動性を低減することができる。染色の変動性は、フィルムにおけるキトサン・レベルの増加で、減少する。フィルムは、1から10%、好ましくは3から10%及び最も好ましくは5から10%、でキトサンを含み得る。
【0031】
セルロース・フィルムは、セルロース・フィルムの染料取り込みに役立つドーパントを含み得る。異なる組織は、特にエオシン及びヘマトキシリンなどの染料では、異なる程度の染料取り込みを有する。これらのドーパントは、セルロース・フィルムの染料取り込みが対象の組織サンプルの染料取り込みに一致するような量で含まれ得る。したがって、セルロース・フィルムは、対象の組織サンプルに適合され得る。
【0032】
ケラチンとゼラチンの両方が、セルロース・フィルムにおける染料取り込みを増やすことが分かった。キトサンもまた、セルロース・フィルムの染料取り込みを増やす。したがって、セルロース・フィルムは、対象の組織サンプルの染色を反映するようにセルロース・フィルムの染料取り込みを適合させるために、キトサン、ケラチン及びゼラチンのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0033】
セルロース・フィルムは、10から50μmの厚さでもよい。セルロース・フィルムは、20から30μmの厚さでもよい。この厚さは、スライドなどの表面からのフィルムの持ち上げを減らすことができる、異なる水和状態によるフィルムの寸法の変化を減らすのに役立ち、それによって、染料取り込み変動を低減する。
【0034】
これが、セルロース・フィルムの染料取り込みにおける変動性をさらに減らすのに役立つため、セルロース・フィルム厚さにおける変動の程度は、好ましくは低い。厚さ変動は、それの目標値の3%未満、好ましくは2%未満、でもよい。
【0035】
品質管理デバイスは、あらかじめ着色された赤色の、青色の及び緑色の領域を含み得る。これは、デバイスにおいて色標準を提供することによって、染色及び撮像工程から結果として得られる変動を定量化するとき、精度を改善することができる。
【0036】
セルロース・フィルムは、その少なくとも1つの側に接着剤を有し得る。セルロース・フィルムは、その両側に接着剤を有し得る。
【0037】
セルロース・フィルムは、保護シートに付着され得る。セルロース・フィルムは、保護シートに層状に張り合わされ得る。これは、異なる水和状態によるフィルムの寸法の変化を低減することができ、それによって、染料取り込み変動を低減する。保護シートはまた、品質管理デバイスとして使用する間のダメージからセルロース・フィルムを保護することができる。
【0038】
保護シートは、ポリマを含み得る。保護シートは、フィルムでもよい。
【0039】
品質管理デバイスはさらに、保護シートに対してセルロース・フィルムの反対側に接着剤を含み得る。これは、品質管理デバイスが組織と同じ表面に取り付けられて染色されることを可能にし、それによって、組織及び品質管理デバイスが同じ染色条件に従うということを確実にする。表面は、顕微鏡スライドでもよい。
【0040】
セルロース・フィルムは、それの少なくとも1つの側にコーティングを備え得る。セルロース・フィルムはまた、セルロース・フィルムとコーティングとの間にプライマ層を含み得る。セルロース・フィルムは、コーティング及び/又はプライマ層がなくてもよい。存在する場合、コーティングは、染料がセルロース・フィルムに到達するのを阻まれないように、好ましくは、(存在する場合)保護シートの反対の、表面に隣接するフィルムの側にある。接着剤は、セルロース・フィルムを表面に付着させるために、コーティングの上に適用され得る。
【0041】
コーティングは、バリア・コーティングでもよい。これは、可塑剤が接着剤に浸出し、それによって、それの完全性を破壊し、フィルムと表面との間の粘着力を減らすことを防ぐことができる。コーティングはまた、接着剤とセルロース・フィルム自体との間の粘着力を増やし得る。コーティングは、エチレン・アクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、アクリル又は任意の他のバリア・コーティング材料を含み得る。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、そこに付着された前述の品質管理デバイスを備える表面が提供される。表面は、顕微鏡スライドの表面でもよい。
【0043】
品質管理デバイスは、表面全体を覆わなくてもよい。組織サンプルは、次いで、表面に位置付けられ、品質管理デバイスと同時に染色され得、それによって、組織サンプル及び品質管理デバイスが同一の染色条件に従うことを確実にする。
【0044】
本発明の第3の態様によれば、組織病理学染色のための品質管理デバイスに2つ未満の可塑剤を含むセルロース・フィルムの使用が提供される。
【0045】
前述のように、1つの又はゼロの可塑剤の存在は、セルロース・フィルムにおける染料取り込み変動性を低減し、それによって、組織病理学染色のためのより一貫した品質管理デバイスを生み出す。
【0046】
本発明の第4の態様によれば、病理学的染色及び撮像工程において画像変動を補正するための本明細書で論じられる品質管理デバイスの使用が提供される。
【0047】
これは、染色及び撮像工程から生じる変動を定量化するために使用され得る信頼できる色制御を生み出し、それによって、結果として得られる画像における当該変動の補正を可能にする、本発明のセルロース・フィルムの予測可能な及び線形の染料取り込みにより、可能である。
【0048】
本発明の第5の態様によれば、以下を含む組織サンプルを染色及び撮像する工程から生じる画像変動を補正する方法が、提供される:
a.同じ条件下で前述の品質管理デバイス及び組織サンプルを染色することと、
b.品質管理デバイスを撮像することと、
c.品質管理デバイス画像における染色及び撮像変動を定量化することと、
d.組織サンプルを撮像することと、
e.品質管理デバイス画像における染色及び撮像変動の定量化を使用して、組織サンプル画像を補正すること。
【0049】
品質管理デバイス及び組織サンプルは、同じ時間に同じ染色条件下で、同時に染色され得る。好ましくは、品質管理デバイス及び組織サンプルは、同じ表面、たとえば、顕微鏡スライド、に取り付けられ、それらが同じ染色条件に従うということをこれが確実にするように、共に染色される。
【0050】
本方法のステップは、前述で概説されたものとは異なる順番で行うことができる。たとえば、組織サンプルを撮像することは、品質管理デバイス画像における染色及び撮像変動が定量化される前に生じてもよい。
【0051】
発明は、ここで、以下の実例及び図を参照して、より具体的に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の一実施例による品質管理デバイスを使用する染色された組織サンプルの画像を補正する工程を示す図である。
図2】本発明の一実施例によるゼロ可塑剤セルロース・フィルム(zero-plasticiser cellulose film)における染料取り込みの直線性を示す図である。
図3】本発明の一実施例による単一可塑剤セルロース・フィルム(single-plasticiser cellulose film)における染料取り込みの直線性を示す図である。
図4】異なるキトサン投与量を有する本発明の実施例による単一可塑剤セルロース・フィルムのエオシン取り込みを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
[実例1]
増加する染料時間を有する染料強度の変化が、1つの可塑剤を含むコーティングされていないセルロース・フィルム及び可塑剤を有さないコーティングされていないセルロース・フィルムを使用して、調査された。
【0054】
図2は、ゼロ可塑剤セルロース・フィルムの増加する染料時間に伴う染料強度の増加を示し、一方、図3は、単一可塑剤セルロース・フィルムの増加する染料時間に伴う染料強度の増加を示す。
【0055】
可塑剤を有さないセルロース・フィルムのR値は、0.9915であり、一方、単一可塑剤のセルロース・フィルムのR値は、0.9905まで下がる。これらのグラフは、可塑剤の追加が発明のセルロース・フィルムの染料取り込みにおける変動性の増加を引き起こすということを示す。しかしながら、この変動性は、検査された両方のセルロース・フィルムにおいて統計的に許容可能である。
【0056】
[実例2]
図4は、高投与量のキトサン(フィルムの重さによって5%)を含むセルロース・フィルムでの及び2分のヘマトキシリン及び2分のエオシンでの染色後の低投与量のキトサン(フィルムの重さによって2.5%)を含むセルロース・フィルムでのRGB値の変動性を示す。
【0057】
フィルムは、同じAT2スキャナにおいてスキャンされ、フィルムのRGB及びL値を測定することによってQuPathに関して分析された。
【0058】
図4に示すように、セルロース・フィルムにおける高投与量のキトサンは、低投与量のキトサンを含むセルロース・フィルムと比較してRGB値の変動性を低減する。高投与量キトサン・フィルムはまた、より低い投与量のフィルムと比較してエオシンの優先的な取り込みを示すように見えた。したがって、フィルムにおけるキトサンのレベルを増やすことは、撮像工程の変動性を低減する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】