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特表2024-518925車両で有料ルート区間を走行するための支払プロセスを処理するための通行料金システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】車両で有料ルート区間を走行するための支払プロセスを処理するための通行料金システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
G08G1/09 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567247
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022061168
(87)【国際公開番号】W WO2022233670
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021002374.9
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】エヒャート,ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】ケプラー,マーティン
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181DD10
5H181EE10
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
(57)【要約】
本発明は、車両(2)による有料ルート区間(1)の走行の支払プロセスを処理するための通行料金システムであって、車両(2)に割り当てられた移動ユニット(3)と有料ルート区間(1)の運営事業者に割り当てられた定置ユニット(4)とを備え、通行料金の課金額が少なくとも2つのコストパラメータ(5)に依存し、移動ユニット(3)が、少なくとも2つのコストパラメータ(5)を検知するように、及び支払プロセスを処理するために定置ユニット(4)と直接的又は間接的に通信するように設定される、通行料金システムに関する。本発明による通行料金システムは、移動ユニット(3)が、更に、最適かつ最安値のパラメータ構成(6)を見つけるために最適化ステップ(210)を実行するように設定されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)による有料ルート区間(1)の走行の支払プロセスを処理するための通行料金システムであって、前記車両(2)に割り当てられた移動ユニット(3)と前記有料ルート区間(1)の運営事業者に割り当てられた定置ユニット(4)とを備え、通行料金の課金額が少なくとも2つのコストパラメータ(5)に依存し、前記移動ユニット(3)が、前記少なくとも2つのコストパラメータ(5)を決定するように、及び支払プロセスを処理するために前記定置ユニット(4)と直接的又は間接的に通信するように設定される、通行料金システムにおいて、
前記移動ユニット(3)は、更に、最適かつ最安値のパラメータ構成(6)を見つけるために最適化ステップ(210)を実行するように設定されることを特徴とする、通行料金システム。
【請求項2】
前記移動ユニット(3)は、前記車両(2)に固定的に組み込まれるか、又は移動端末機器(7)によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の通行料金システム。
【請求項3】
前記移動ユニット(3)及び前記定置ユニット(4)に加えて、前記支払プロセスを処理するために前記移動ユニット(3)と前記定置ユニット(4)との間の間接的通信を実施するように設定された少なくとも1つのサービスユニット(8)が設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の通行料金システム。
【請求項4】
前記移動ユニット(3)及び前記定置ユニット(4)は、通行料金の課金額に3つより多いコストパラメータ(5)を考慮するように設定されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の通行料金システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の通行料金システムを用いて支払プロセスを処理する方法において、
少なくとも1つのコストパラメータ(5)が、
-車両固有パラメータ、
-走行戦略固有パラメータ、
-ルート区間固有パラメータ、及び/又は
-交通固有パラメータ、によって形成されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
-走行固有パラメータとして、前記車両(2)の原動機の種別、排ガス基準、車両寸法、車軸数、車両重量、許容総重量、排気量、又は燃料の種類が使用され、
-走行戦略固有パラメータとして、有料ルート区間(1)で走行される最高速度、平均速度、前記有料ルート区間(1)で走行される時間帯、走行時間、又は走行距離が使用され、
-ルート区間固有パラメータとして、前記有料ルート区間(1)における建築障害物の存在、前記有料ルート区間(1)の利用頻度、サブスクリプションの存在、又はクーポンの利用が使用され、
-交通固有パラメータとして、交通の渋滞又は停滞に基づく障害、又はラッシュアワーの存在が使用される、ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記移動ユニット(3)は、現在の前記課金額に関連するコストパラメータ(5)を記憶装置(9)から読み取る、及び/又は前記定置ユニット(4)又は前記サービスユニット(8)に照会することを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのコストパラメータ(5)のパラメータ値が記憶装置(9)から読み取られるか、センサにより決定されるか、又は手動入力により決定されることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記最適化ステップ(210)は、前記有料ルート区間(1)の走行後に実行されることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項2に記載の通行料金システムの移動ユニット(3)を特徴とする、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に詳しく定義されるような車両による有料ルート区間の走行の支払プロセスを処理するための通行料金システム、そのような通行料金システムを用いて支払プロセスを処理する方法、及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の建設と運営には比較的多額の費用がかかる。そのため道路網運営事業者は、高速道路区間、トンネル、都市の特定の道路網区間、環境ゾーンなどの有料ルート区間の走行に対して料金を収受し、対応するルート区間を車両が走行できるようにする。このような通行料金を用いて、騒音及び/又は排出ガスによる負荷を補償することもできる。
【0003】
通行料金の支払いには様々な方式がある。一部の国では、有料ルート区間を走行する車両のフロントガラスの後ろに目に見えるように高速道路通行証(Vignette)を貼り付けることが定められている。このような高速道路通行証は、例えば1週間、1か月、又は1年など、特定の期間有効である。対応する有料ルート区間は、例えば遮断機の形態の進入管理所を有することもでき、ドライバーが有料ルート区間から出るときにチケットが支払われなければならない。その場合に発生する費用の金額は、車両により有料ルート区間を進んだ距離に応じて決まる。自動システムもユーザの快適性を向上させることが知られている。車両運転者が特定の有料ルート区間を走行したい場合、有料ルート区間の対応する運営事業者のもとに精算情報と自車の登録番号を事前に保管することができ、それに基づいて、有料ルート区間に車両が近づくと、カメラシステムを用いて車両の登録番号が検出され、車両運転者に有料ルート区間の走行許可が与えられ、その際に発生する費用が自動的に引き落とされる。
【0004】
更に、相乗りを促す通行料金システムも知られている。これによって、交通量の多い道路がある都市で、特にラッシュアワー時の交通量を低減することができる。相乗りに参加する車両乗員は、いわゆるカープール車線を用いてより早く目的地に到着することが可能になる。つまり、複数人が乗車する車両のみに走行が許される特定のカープール車線が存在する。悪用を避けるために、カープール車線を利用する車両の乗員数を検出する必要がある。
【0005】
対応する方法が特許文献1から知られている。この場合、スマートフォンなどの移動端末機器を用いて、車両で移動する車両乗員の人数が音声認識によって認識される。それに加えて、又はそれに代えて、車内の人の写真撮影や動画撮影をすることも可能である。車両で移動する車両乗員の人数に応じて、有料ルート区間の走行に割引が適用される。車両で移動する人の数が増えれば増えるほど走行が安価になる。この方法は、発生する費用を便利に、かつ簡単に車両乗員間で分ける可能性も含む。車両が指定された車線を走行し、このことが位置監視によって自動的に確認されて直ちに、及び/又は車両が特定の限界速度を超えると直ちに通行料金収受が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0279437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車両運転者の有料ルート区間を走行する意欲を高めることができる、車両による有料ルート区間の走行の支払プロセスを処理するための通行料金システム、及び方法を提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題は、請求項1の特徴を有する車両による有料ルート区間の走行の支払プロセスを処理するための通行料金システム、請求項5の特徴を有するそのような通行料金システムを用いて支払プロセスを処理する方法、及び請求項10の特徴を有する車両によって解決される。有利な実施形態及び発展形態は、従属請求項から明らかである。
【0009】
本発明によれば、冒頭で述べた種類の車両による有料ルート区間の走行の支払プロセスを処理するための料金システムにおいて、移動ユニットが、更に、最適かつ安価なパラメータ構成を見つけるための最適化ステップを実行するように設定されている。
【0010】
最適かつ安価なパラメータ構成を見つけることによって、本発明による通行料金システムは、車両の車両運転者が有料ルート区間、例えば通行有料高速道路、トンネル、低排出ガス地帯、市街地有料区域、駐車場などを特に安価に走行することを可能にする。いくつかのコストパラメータを考慮及び最適化することによって、動的価格設定が可能になり、そのことが有料ルート区間の走行に割引を提供することを可能にし、様々なコストパラメータを考慮することで、様々なシナリオに特に幅広く適応することが可能になる。これにより、車両運転者は、本発明による通行料金システムを用いて有料ルート区間を走行するために比較的低い通行料金課金(Mauttarif)を支払えばよいため、車両運転者の有料ルート区間を走行する意欲が高まる。全自動の料金収受により、車両運転者にとっての快適性が更に向上する。このことは、有料ルート区間の走行受容性の向上にも寄与する。
【0011】
最適化ステップにおいて、少なくとも2つのコストパラメータを考慮して、支払われるべき通行料金課金が可能な限り低くなるようなパラメータの組み合わせが選択される。このために、実績のある最適化手法が用いられる。
【0012】
相互に直接通信するために、移動ユニットと定置ユニットの両方が対応する通信インタフェースを有している。その場合、移動ユニットは、有料ルート区間の走行に対して発生する料金を車両に一意的に割り当てることができるようにするために、車両の一意的な識別を可能にする。例えば、移動無線、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線による通信が可能である。赤外線などの可視光又は不可視光を介したデータ伝送も考えられる。識別のために、車両は対応するトランスポンダを有することができるか、又はカメラ画像を評価することによって車両の識別特徴、例えば登録番号を定置ユニットの側で認識することができる。例えば、精算のため、車両運転者は、関連データを有料ルート区間の運営事業者のもとにオンラインで保管することができる。これには、例えば、住所、口座データ、車両運転者に割り当てられたプロファイルなどが含まれる。車両運転者は、例えば車両の登録番号を登録し、事前に通行料金を支払うことによって有料ルート区間を走行する意思を知らせることができ、又は車両運転者は、有料ルート区間への入口に到着したときにこれを済ませることができる。有料ルート区間から退出した直後に、及び/又は例えば月末などの支払い時に通行料金が支払われることも考えられる。
【0013】
通行有料システムの有利な実施形態は、移動ユニットが車両に固定的に組み込まれるか、又は移動端末機器によって形成されることを企図する。したがって、移動ユニットを車両の計算ユニット、及びそれに接続された、情報を出力するためのディスプレイや関連データを入力するための入力手段などのサブシステムによって形成することができる。その場合、計算ユニットは、別個の計算ユニットによって、或いは中央車載コンピュータ、テレマティクスユニット、又は車両サブシステムの制御装置によって形成することができる。移動ユニットとして、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップなどの移動端末機器が使用されることも考えられる。対応する計算ユニット上でソフトウェア若しくはアプリケーションを実行することができ、これを介して、車両運転者は、有料ルート区間を走行するために、自身に割り当てられたプロファイルを用いて有料ルート区間の運営事業者にログインする。プロファイルを用いて、典型的には有料ルート区間の走行に使われた時刻、及び有料ルート区間を走行する頻度などの広範なデータを記憶でき、特定の人に割り当てることができる。このような情報を通行料金課金(Tarife)の価格設定時に考慮することができる。その場合、移動端末機器が、車両に固定的に組み込まれた計算ユニットとデータ伝送接続していることも考えられる。例えば、車両の計算ユニットは、移動端末機器のワイヤレス通信インタフェースを介して、例えば移動無線を介して、特にインターネットを介してデータを交換することができる。同様に、移動端末機器は、例えば計画されたルート、登録番号、又は車台番号などの関連情報を車両の計算ユニットから読み取ることができる。
【0014】
通行有料システムの別の有利な実施形態によれば、移動ユニット及び定置ユニットに加えて、支払プロセスを処理するために移動ユニットと定置ユニットとの間の間接的通信を実施するように設定された少なくとも1つのサービスユニットが設けられる。サービスユニットは、インターネットサーバなどのサービスプロバイダのインフラストラクチャである。
【0015】
サービスプロバイダは移動ユニットと定置ユニットとの間を仲介し、例えば車両運転者の個人データを有料ルート区間の運営事業者に転送し、それに基づいて、サービスプロバイダは有料ルート区間の走行許可を移動ユニットに返送する。この許可は、例えば、有料ルート区間の走行許可があるという単純な情報、又は移動ユニットに記憶され、有料ルート区間への進入時に定置ユニットによって移動ユニットから読み取られる数値コードであり得る。
【0016】
その場合、サービスユニット若しくはサービスプロバイダも、通行料金課金の価格設定に含めることができる。例えば、その範囲と特別な価格設定により、サービスプロバイダは、車両運転者が有料ルート区間をより頻繁に走行する、及び/又はより多くの人又は車両が有料ルート区間を利用するようにすることができる。換言すれば、サービスプロバイダは、有料ルート区間の運営事業者のための顧客獲得を行うことができる。その場合、顧客にとっては、個人の通行料金を低減でき、かつ通行料金を支払うための支払プロセスが快適にサービスプロバイダによって管理され、このことは、異なる運営事業者によって運営される有料ルート区間を利用する場合の管理の手間を低減するというメリットがある。
【0017】
通行料金システムの別の有利な実施形態は、更に、移動ユニット及び定置ユニットが、通行料金の課金額(Tarifhoehe)に3つより多いコストパラメータを考慮するように設定されることを企図する。これによって、通行料金の価格設定を様々に異なるシナリオに更に柔軟に適応させることが可能である。このことは、最適化ステップにおいて、特に複雑な関係を認識すること、及びこの関係を最安値のパラメータ構成を検知するために利用することを可能にする。その場合、最適化ステップにおいて、関連するすべてのコストパラメータが考慮されることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、上記の通行料金システムを用いて支払プロセスを処理する方法において、少なくとも1つのコストパラメータが、
-車両固有パラメータ、
-走行戦略固有パラメータ、
-ルート区間固有パラメータ、及び/又は
-交通固有パラメータ、によって形成される。
【0019】
その場合、走行固有パラメータとして、車両の原動機の種別、排ガス基準、車両寸法、車軸数、車両重量、車両の許容総重量、車両の内燃機関の排気量、又は車両の燃料の種類が使用されることが好ましい。
【0020】
走行戦略固有パラメータとして、特に、有料ルート区間を走行する最高速度、平均速度、有料ルート区間を走行する時間帯、走行時間、又は走行経路が使用される。
【0021】
ルート区間固有パラメータとして、好ましくは、有料ルート区間における建築障害物の存在、有料ルート区間の利用頻度、サブスクリプションの存在、又はクーポンの利用が使用される。
【0022】
特に、交通固有パラメータとして、交通の渋滞又は停滞に基づく障害、又はラッシュアワーの存在が使用される。
【0023】
上記のパラメータのいくつかを考慮及び最適化することにより、有料ルート区間での交通量が均等化されるように、つまり様々な時間に可能な限り一定の車両数が有料ルート区間を利用するように、そして有料ルート区間を安価な課金の提供により、利用する人の快適性が向上するように通行料金課金を設定することができる。有料ルート区間において、例えばラッシュアワーなどに交通量が多いか、又は例えば工事現場があるために遅延が発生する場合、特に高い課金を請求することができ、それによって有料ルート区間の利用者を少なくすることができ、そのことが交通量の集中を解消する。しかしこの場合、同様に、有料ルート区間を利用する人の所要移動時間の増加を埋め合わせするために、特に安価な課金を提供することもできる。
【0024】
通行料金の課金額を車両型式ごとに異なるように設定することもできる。車両が例えば内燃機関を有する場合、この車両にはプラグインハイブリッド車や純粋なバッテリ電気駆動式車両よりも高い通行料金課金を請求することができる。これによって、価格形成に環境面を考慮することができる。同様に、特に大型車両又は重車両には特別に有料の通行料金課金を選択でき、小型軽量車両にはより安価な通行料金課金を選択できる。
【0025】
通行料金の課金額を運転戦略固有パラメータに関連付けることもできる。例えば、車両運転者が、特に高い車速で有料ルート区間を通過したい場合には、より高い通行料金課金を請求することができる。これによって、高速化に伴う事故の危険による高い安全上のリスクに対処できる。車速が低いほど事故の可能性が低いため、有料ルート区間の低い車速での走行に支払われる通行料金も少なくすることができる。このことは、より多くの人が有料ルート区間をゆっくりと走行することにつながる。これによって、ブレーキ操作が減る可能性があり、そのことも渋滞のリスクを軽減する。同様に、価格形成に時間帯を考慮することもできる。例えば、夜間には日中よりも安い課金を提供することができる。
【0026】
サブスクリプション、クーポン、又はボリュームディスカウントを提供することによって、有料ルート区間の走行に更に安い課金を提供することができる。有料ルート区間を10回、又はより頻繁に利用する場合に有料ルート区間を走行するための定額制が提供され、その総額が本来の通行料金を8回支払うよりも安くなるという場合、特定の人が有料ルート区間を、例えば8回利用すると、対応するメッセージを車両運転者に出力することができ、それに基づいて、車両運転者は、サブスクリプションを選択し、及び/又は有料ルート区間を更に頻繁に走行する。
【0027】
サービスユニット若しくはサービスプロバイダを支払プロセスの処理に組み込むことによって、車両運転者の広範なデータを価格設定に考慮することができる。このようにして、特定の車両運転者の典型的な移動挙動を検出及び評価することができ、その人に有料ルート区間を走行するための例えば特別に安価な時間枠及び安価な運転戦略が提案される。
【0028】
その場合、通行料金の課金額を決定するために、好ましくは少なくとも2つ、特に3つより多い、かつ特に好ましくはすべての関連コストパラメータが考慮される。例えば、車両運転者が、有料ルート区間をバッテリ電気駆動式車両で、かつ100km/hの最高速度で走行する場合、特に安価な通行料金課金を提供することができ、このために内燃機関車両が使用される場合は通行料金の額をより高くすることができる。それに加えて、最高速度が100km/h未満に制限されている場合は、更に割引くことができる。その場合、CO2の大幅な削減を達成できることから、内燃機関車両の割引額を大きくすることができる。
【0029】
この方法の別の有利な実施形態によれば、移動ユニットは、現在の課金額に関連するコストパラメータを記憶装置から読み取る、及び/又は定置ユニット又はサービスユニットにこれを照会する。その場合、記憶装置を移動ユニット又は車両に含むことができる。現在の課金額に関連するコストパラメータが記憶装置から読み取られる場合、移動ユニットは、関連コストパラメータに迅速にアクセスでき、それにより有料ルート区間を走行するために最適な、つまり最安値のパラメータ構成を車両運転者に提案することができる。移動ユニットは、通信インタフェースを用いて、現在対応するコストパラメータを照会することができ、それによって、古くなった課金情報が使用されるのを防ぐことができる。定置ユニット及び/又はサービスユニットは、新コストパラメータを導入することもできる。
【0030】
本方法の別の有利な実施形態は、少なくとも1つのコストパラメータのパラメータ値が記憶装置から読み取られるか、センサにより検知されるか、又は手動入力により検知されることを更に企図する。記憶装置に、例えば、変化しないコストパラメータのパラメータ値を記憶することができる。これには、例えば、車両の最大積載量、許容総重量、排気量、電動化、車両寸法などが含まれる。センサを用いて、変数若しくは動的パラメータ値を読み取ることができる。これには、例えば、現在車両速度、平均速度、走行中の走行ルート、走行距離、走行時間、車両乗員数、現在車両積載量などが含まれる。センサを用いてそのような関連パラメータ値を検知することができない場合、例えば車両に含まれる入力手段若しくは移動ユニットの入力手段に手動入力を行うこともできる。例えば、車両運転者は、車両で運ぶ荷物の種類をスマートフォンに入力することができ、或いは、スマートフォンは、GPSなどの位置情報及び現在時刻を読み取ることによって対応する情報を定置ユニットに伝送することができる。これには、例えば、車両が夜間に有料ルート区間の特定の区間を特定の速度で走行したという事実を含めることができる。
【0031】
この方法の別の有利な実施形態によれば、最適化ステップは、有料ルート区間の走行後に実行される。このことは、有料ルート区間の走行中に存在するコストパラメータとこれらのレベルとを、有料ルート区間からの退出後に評価し、対応する最適化された通行料金課金を決定することを可能にする。このことは、例えば、有料ルート区間の走行距離が有料ルート区間の運営事業者に事前に伝送されなかった場合に、この走行距離を考慮すること、或いは交通量が突然増加するか、又は電気駆動モードから内燃機関ベースの駆動モードに変更されるなど、突然変化する境界条件を考慮することを可能にする。
【0032】
本発明によれば、車両は、上述の通行料金システムの移動ユニットを含む。この車両は、乗用車、トラック、トランスポータ、バスなど、任意の車両であってよい。車両は、駆動装置として内燃機関及び/又は電気モータを有することができる。対応する車両は、マニュアルで、少なくとも一部自動で、又は完全に自動で制御することができる。例えば、貨物車については、特に危険物を輸送する場合、特に高い通行料金課金を選択することができ、この通行料金額を、危険物を輸送する貨物車が例えば自律運転される、比較的低い走行速度を選択する、及び他の交通参加者に対して特に大きい車間距離を維持する、及び/又は典型的には有料ルート区間の交通量が少ない時刻に有料ルート区間を走行する場合に低減することができる。
【0033】
本発明による通行料金システム及び方法の他の有利な実施形態は、以下に図を参照しながら詳しく説明する実施例からも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】有料ルート区間に進入する車両の概略図である。
図2】本発明による方法の実施形態による支払プロセスの原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、有料ルート区間1に向かって車道10を走行する車両2を示す。有料ルート区間1へのアクセスは、定置ユニット4を用いて有料ルート区間1の運営事業者によって許可される。これは、例えば遮断機11のある通行料金所である。このような通行料金所を有料ルート区間1の出口にも設けることができる。
【0036】
車両2は、ここでは車両2に固定的に組み込まれた移動ユニット3の形態の、及び移動端末機器7の形態の、ここではスマートフォンの形態の移動ユニット3を含む。移動ユニット3は、通信接続を介して定置ユニット4と直接的又は間接的にデータ交換している。移動ユニット3は、図2に示される少なくとも2つのコストパラメータ5を定置ユニット4から受信する。有料ルート区間1の走行に対して発生する通行料金の課金額は、コストパラメータ5に依存する。図2にも示される最適化ステップ210において、移動ユニット3は、定置ユニット4から移動ユニット3に伝送されるコストパラメータ5から、最適かつ最も安価なパラメータ構成6(図2も参照)を決定する。
【0037】
一実施形態によれば、本発明による通行料金システムは、移動ユニット3及び定置ユニット4に加えてサービスユニット8も含む。これは、例えば、サービスプロバイダのバックエンドである。その場合、サービスユニット8を介して移動ユニット3と定置ユニット4との間の通信を行うことができる。このことは、車両2の車両運転者が、例えばサービスユニット8上でサービスプロバイダでの中央プロファイルを提供することによって、異なる運営事業者により運営される有料ルート区間1を快適に利用できるようにする。したがって、車両運転者が有料ルート区間1の運営事業者に毎回新たに知らせなければならないという必要はない。
【0038】
有料ルート区間1の運営事業者では車両2若しくは車両運転者を識別するために、車両2は、自動車登録番号12又は例えばトランスポンダ13などの識別特徴を含む。識別特徴を認識する、若しくは読み取るために、定置ユニット4は、例えばカメラ14又は無線モジュール15を含む。更に、定置ユニット4は、例えば遮断機11に認証モジュール16を有することができる。これは、例えば、ユーザ名やパスワードなどの一意の識別子を入力するための入力手段、現金を投入するかクレジットカードを挿入するための支払手段、又は移動端末機器7が車両2若しくは車両運転者の対応する識別子を定置ユニット4に伝送することができるNFCインタフェースなどである。車両2及び/又は車両運転者の認証が行われた後に遮断機11が開き、車両2は有料ルート区間1に進入できる。同様に、有料ルート区間1から退出するときにも認証を行うことができる。
【0039】
更に、移動ユニット3は記憶装置9を含む。記憶装置9は、移動端末機器7や車両2に含まれていてもよい。記憶装置9には、例えば車両2の寸法などの、変化し得ないコストパラメータ5のパラメータ値が記憶されている。
【0040】
図2は、車両2が有料ルート区間1に進入できるようにするため、及び/又は車両2が有料ルート区間1に進入又はここから退出した後の支払プロセスの原理図を示す。
【0041】
方法ステップ200において、移動ユニット3は定置ユニット4と接触する。次に、定置ユニット4と移動ユニット3はコストパラメータ5を交換する。最適化ステップ210において、移動ユニット3は、最適な、すなわち最安値のパラメータ構成6を決定し、これを用いて支払うべき通行料金について特に低い課金額を選択することができる。次に、最適かつ最安値のパラメータ構成6が定置ユニット4に伝送される。次いで、方法ステップ220において、最適かつ最安値のパラメータ構成6に従って有料ルート区間1の走行の精算が行われる。
【0042】
本発明による通行料金システム、及びそのような通行料金システムで支払プロセスを処理する本発明による方法を用いて、車両2の車両運転者にとって特に安価な課金を提供することができ、それに加えて有料ルート区間1での交通量を的確に制御することができる。これによって、車両運転者の有料ルート区間1の走行意欲が高められる。これにより、車両運転者にとって支払プロセスの処理が特に便利になり、それに加えて、安価な課金により有料ルート区間1の走行を促し、若しくはラッシュアワーでの有料ルート区間1の交通量が低減され、そのことが渋滞を最小限に抑える。
図1
図2
【国際調査報告】