(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】生物起源黒色顔料、その製造の方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C09C 1/44 20060101AFI20240426BHJP
C01B 32/00 20170101ALI20240426BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240426BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C09C1/44
C01B32/00
C08L101/00
C08K3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568088
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022062166
(87)【国際公開番号】W WO2022234023
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244562
【氏名又は名称】サンコール・インダストリーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘールチェ・ダウツェンベルク
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ヴィットマン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・エツロット
(72)【発明者】
【氏名】マイケ・ロート
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
4J037
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB01
4G146AC02B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC25A
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4G146AD37
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4G146BC03
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4G146BC32B
4G146BC33A
4G146BC50
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4G146CB37
4J002AA001
4J002AB021
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
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4J002BB031
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4J002CP031
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4J002FD096
4J037AA01
4J037CB23
4J037DD05
4J037DD07
(57)【要約】
本発明は、0.20Bq/g炭素を超えかつ0.45Bq/g炭素未満の14C含有率、DIN 51720に従って求めて顔料の乾燥質量に対して20質量%~40質量%の揮発性成分の質量分率、DIN 51732に従って求めて顔料の乾燥質量に対して60質量%~95質量%の炭素の質量分率、顔料の乾燥質量に対して0.5質量%~7質量%の灰分含有率、顔料の乾燥質量に対して<10ppmの多環式芳香族炭化水素(PAH)の質量分率、顔料の乾燥質量に対して合計<100ppmの鉛、水銀、カドミウム及びクロムの質量分率、5m2/g~200m2/gのSTSA表面積、並びに≦100μmの粒径のQ3累積曲線分布のd99値を有する生物起源黒色顔料に関する。本発明は、生物起源黒色顔料を製造する方法、プラスチック、プラスチック部品、コーティング材料、印刷インク、インク、塗料、紙、厚紙、カートン及び鉱物材料の色消し及び色彩の明暗付けのための、並びにゴム状、熱可塑性、液晶及び磁気レオロジーエラストマーのための補強充填剤としての生物起源黒色顔料の使用;並びに生物起源黒色顔料を含有する材料及び物品にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.20Bq/g炭素を超えかつ0.45Bq/g炭素未満の
14C含有率、
DIN 51720に従って求めて、顔料の乾燥質量に対して20質量%~40質量%の揮発性成分の質量分率
DIN 51732に従って求めて、顔料の乾燥質量に対して60質量%~95質量%の炭素の質量分率
顔料の乾燥質量に対して0.5質量%~7質量%の灰分含有率、
顔料の乾燥質量に対して<10ppmの多環式芳香族炭化水素(PAH)の質量分率及び
顔料の乾燥質量に対して合計<100ppmの鉛、水銀、カドミウム及びクロムの質量分率
5m
2/g~200m
2/gのSTSA表面積
≦100μmの粒径のQ
3累積曲線分布のd99値
を有する生物起源黒色顔料。
【請求項2】
少なくとも1種の添加剤によって、好ましくはその表面に少なくとも部分的に、好ましくは前記乾燥質量に対して1.0質量%~10質量%の前記少なくとも1種の添加剤の質量分率を有するような方法で改質されることを特徴とする、請求項1に記載の生物起源黒色顔料。
【請求項3】
前記表面改質用の少なくとも1種の添加剤が、シラン、シロキサン、及び酸性基を有するコポリマーのアルキルアンモニウム塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の生物起源黒色顔料。
【請求項4】
10nm~1000nmの粒径のQ
3累積曲線分布のD50値を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の生物起源黒色顔料。
【請求項5】
DIN EN 13900-3、"Pigments and extenders - Methods of dispersion and assessment of dispersibility in plastics - Part 3:Determination of colouristic properties and ease of dispersion of black and colour pigments in polyethylene by two-roll milling"に従って二酸化チタンとの白色ミックス中でその色強度(color strength)を試験し、後続の比色測定をした後、前記黒色顔料が、Orion Engineered Carbon社からの基準製品Printex 30と比較して200以下の着色等価値(FAE)、0.7質量%の950℃での揮発性成分の質量分率、80m
2/gのBET表面積、及びフタル酸ジブチル(DBP)を用いて測定された105ml/100gの吸油量OANを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の生物起源黒色顔料。
【請求項6】
好ましくは1質量%の量のポリプロピレン中への組み入れの後、以下の測色値:
L
*(D65):23を超え、好ましくは24を超えかつ26未満、好ましくは25未満、
a
*(D65):-0.4を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満、
b
*(D65):-0.5を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満、
dL
*(D65):1.3を超えかつ1.4未満、
da
*(D65):0.03を超えかつ1.0未満、
db
*(D65):-0.7を超えかつ-0.5未満、及び/又は
dE
*ab(D65):1.2を超えかつ1.5未満を特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の生物起源黒色顔料。
【請求項7】
0.20Bq/g炭素を超えかつ0.45Bq/g炭素未満の
14C含有率、
灰分を含まない乾燥物質に対して60質量%から80質量%の間の炭素含有率、及び
5m
2/g~200m
2/gのSTSA表面積
を有する少なくとも1種の生物起源微粒子炭素材料が、
出発製品として使用されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に規定の生物起源黒色顔料を製造する方法。
【請求項8】
前記生物起源微粒子炭素材料のBET表面積が、そのSTSA表面積と最大20%異なることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物起源微粒子炭素材料が250℃~600℃の温度T
熱分解で熱分解されることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
T
熱分解が1分から180分の間維持され、前記生物起源微粒子炭素材料を加熱する間、少なくとも150℃に到達するときに、また結果として得られる前記生物起源黒色顔料を少なくとも150℃に冷却する間、雰囲気の酸素含有率が<10体積%に調節されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
熱分解が、不活性ガス下のドラム炉、流動床乾燥機又は回転炉中で実行されることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記不活性ガスが、窒素及び/又は二酸化炭素、或いは<10体積%の酸素含有率を含む窒素及び/又は二酸化炭素からなることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
熱分解の後に結果として得られる前記生物起源黒色顔料が微粉砕にかけられることを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
表面改質用の少なくとも1種の添加剤が熱分解の後に添加されることを特徴とする、請求項7から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の添加剤が、シラン、シロキサン、及び酸性基を有するコポリマーのアルキルアンモニウム塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プラスチック、プラスチック部品、コーティング材料、印刷インク、インク、塗料、紙、厚紙、カートン及び鉱物材料の色消し及び色彩の明暗付けのための、並びにゴム状、熱可塑性、液晶、及び磁気レオロジーエラストマーのための補強充填剤としての、請求項1から6のいずれか一項に記載の生物起源黒色顔料の使用。
【請求項17】
請求項1から6のいずれか一項に記載の、少なくとも1種の生物起源黒色顔料を含有する材料及び物品。
【請求項18】
プラスチック、プラスチック顆粒、成型したプラスチック部品、コーティング材料及びコーティング、印刷インク及び印刷物、インク及び画像、及びこれらのインクを用いて作られた文書、塗料及びコーティング、紙、厚紙、カートン、鉱物材料及び成分、並びにゴム状、熱可塑性、液晶及び磁気レオロジーエラストマーで作製されたコンポーネントであることを特徴とする、請求項17に記載の材料及び物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物起源黒色顔料に関する。
【0002】
本発明はまた生物起源黒色顔料の製造の方法に関する。
【0003】
最後に重要なこととして、本発明は生物起源黒色顔料の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
炭素質の炭化した材料は、早くも石器時代に洞窟絵画のために使用された。そのような材料に対する技術的要求事項は低く、多かれ少なかれ黒色の色合いで十分だった。エジプトの壁画から知られているように、エジプト人は、色/塗料の製作用に炭素質の炭化した材料を微細に粉砕するために既にきめの粗い乳鉢を使用していた。しかし、色の明暗、殊に色強度の正確な再現は、この方法では可能ではなかった。
【0005】
インク及び墨汁用の黒色顔料としての煤煙又はカーボンブラックの製造は、人類の早期の高度文明にさかのぼる。中国人及びエジプト人の古代の高度文明の時代に、小さく微細な煤煙粒子に対する需要が絶えず増加していた結果、それらから大量のインク及び墨汁を製造することができた。この目的に必要になる煤煙は、特殊な炉又は浅い桶で、樹脂、植物油又はアスファルトの選択的燃焼によって得られた。
【0006】
中世において、煤煙の採取は、煙を多く出す樹脂質の木材、及びピッチの製造中に生成する残渣を山小屋で焼く煤焚き職人の仕事であった。煙と共に排出される煤煙は、換気フードの煤煙槽に沈殿し、そこで削り取ることができた。最高級の煤煙はランプ煤煙であり、空気供給量を減らした状態で、油脂、鯨油、ピッチ、タール油を太い綿の芯を使って「煤煙ランプ」で燃やした。この煤煙は、皮革染料、塗料、印刷インク、インク、馬車用グリースを作るのに必要だった。
【0007】
1470年頃にTegernsee修道院で作成された写本、Codex latinus Monacensis 4には、煤煙の製造指示書を見いだすことができる。特殊な用途向けの特に細かい煤煙を作るために、主に樹木の樹脂を限られた空気供給下で燃やした。16世紀までは、これがカーボンブラックに匹敵するであろう最小粒径の煤煙を製造する唯一の方法として知られていた。この方法は、現在でも火炎煤煙法という名で使われている。19世紀以降、煤煙は天然ガス及びコールタールから得られることが多くなった。
【0008】
「カーボンブラック」という用語は1870年代に広まり、天然ガスから作られた製品がその名前で売られるようになった。1882年、Godfrey Lowell Cabot社が産業用カーボンブラックの最初の生産工場を設立し、チャネルブラックプロセスを用いて「チャネルブラック」を製造した。このカーボンブラックの主な使用は、印刷インクの成分であった。ドイツでは天然ガスがわずかな量しか入手できなかったため、国産原料を使った代替品の研究が集中的に行なわれた。かなりの量のコールタールは、ガスプラントでガスが凝縮する際の残留物である。1889年、Otto Thalwitzerは、コールタールからのタール油を基に、いわゆるファーネスプロセスを開発した。「密閉反応器」が開発され、ファーネスプロセスの方がはるかに高い収率が得られたが、一次エネルギー源の不足のため、オイルファーネスプロセスは1943年まで受け入れられなかった。
【0009】
カーボンブラックの大量生産は、20世紀の前半に拡大するタイヤ産業の結果として始まった。1922年、オイルファーネスプロセスは特許が取られたが、後まで使用されなかった。
【0010】
ドイツでは、1934年に「ガスブラック」という名のタール油に基づくDegussaガスブラックプロセスが開発された。
【0011】
技術的には、「ファーネスカーボンブラック」の開発が4次にわたって進んだ。製品の第1世代は、主として一次粒子のサイズ、したがって比表面積が異なり、第2世代では、凝集挙動、すなわち、一次粒子又は「構造」の「相互成長の程度」は様々である。
【0012】
黒ワニス用のカーボンブラック顔料の製造は、独国特許第2846405号の下で1978年Degussa社によって登録された。1981年、Degussa社は、独国特許第3141 779号の下でファーネスブラックの製造プロセスを登録した。1987年、the Cabot Corporation社(Waltham, Mass., USA)は、独国特許第3703077号の下でカーボンブラックの表面特性を改質する方法を登録した。1988年、the Cabot Corporation社( Waltham, Mass, USA)は、広い凝集物粒度分布を有する「カーボンブラックの製造方法」を出願した。
【0013】
これらの技術的プロセスはすべて、カーボンブラック顔料又は顔料のカーボンブラックが化石原料から得られるという不都合を有する。必要なエネルギー入力は、二酸化炭素の排出があるので非常に高い。
【0014】
別の不都合は、それらを加工できるようにするためには、酸化の後処理によって顔料カーボンブラックの酸性表面酸化物の含有率を増加させる以外にないということである。二酸化窒素、硝酸又はオゾンは酸化剤として働く。
【0015】
カーボン粉末も市場に供される。これらのカーボン粉末は、例えば熱分解されたオーク材、ココナッツ殻又は麻材料からなる。これらの材料は、粒径分布が大きく色強度が劣る。例えば、PVC-pの着色の際に、大きい粒子による明瞭なピンホールが生じる。粉末化ココナッツ木炭を別にすれば、これらの材料はすべて多かれ少なかれ褐色の色相のみを有するか、又は、オーク木炭、片状黒鉛、松木炭又はブドウ木炭のように青色又はねずみ色を帯びている(供給者:Werth-Metall社、Arnstadter Str. 21, 99096 Erfurt)。顔料としては、これらの材料は役に立たない。
【0016】
中国の製造業者Spec Chem lndustry lnc.社(Shilin lndustrial Park, No.10 Wanshou Road, Jiangbei New Area, Nanjing, PR. China) (www.specchemind.com)は、1,000℃の熱分解によって、竹、木材、ココナッツ殻、オーク材及び「食品等級」の植物から製造したカーボンブラック顔料を提示している。SpecKare(登録商標)BCP顔料の粒径は、2,500nm~5,000nm(2.5μm~5μm)の範囲である。顔料は、顔及び身体用のクレンジング製品、デンタルケア、マッドパック、ケーキ、クッキー及びアイスクリームに使用される。
【0017】
市販されている、強く着色するカーボンブラック顔料は20~100nmの間の粒径を有する。SpecKare(登録商標)BCPは色が非常に弱く、プラスチック材料の専門的な着色に適していない。
【0018】
Vanessa Hulseは、修士論文、"Biochar as a Substitute for Carbon Black in Lithographic Ink Production," RIT Scholar Works, Rochester Institute of Technology, 2019(https://scholarworks.rit.edu/theses)において、紙、リサイクルされた木材パルプ、及び箱用の再利用可能でない板紙から水熱炭化(HTC)を使用して、リソグラフィインク用の黒色顔料の製造を研究している。顔料の製造に関して、二酸化ケイ素、二酸化チタン及び酸化カルシウム等の無機成分が、複雑なプロセス中で炭化前に出発製品から分離されることが必須である。別の不都合は、顔料が褐色の色相を有し、黒色及び寒色の生成に適していないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】独国特許第2846405号
【特許文献2】独国特許第3141 779号
【特許文献3】独国特許第3703077号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】"Biochar as a Substitute for Carbon Black in Lithographic Ink Production," RIT Scholar Works, Rochester Institute of Technology, 2019(https://scholarworks.rit.edu/theses)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、深い黒色、高度の色強度、良好な分散性、低いPAH値及び低い重金属含有率を有する、再生長材料から生物起源黒色顔料を製造する目的に基づく。更に、生物起源黒色顔料は、プラスチック、プラスチック部品、コーティング材料、印刷インク、インク、塗料、紙、厚紙、カートン及び鉱物材料の色消し及び色の明暗付けのために、また、ゴム状、熱可塑性、液晶及び磁気レオロジーエラストマーのための補強充填剤として顕著に適切でなければならない。以下では、「再生長材料」はまた、再生長原料又はバイオマスとも称される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、本発明による生物起源黒色顔料は独立請求項1に見られる。本発明による生物起源黒色顔料の有利な実施形態は従属請求項2から6の主題である。
【0023】
更に、本発明による生物起源黒色顔料を製造するための本発明による方法は、独立方法請求項7に見られる。本発明による方法の有利な実施形態は、従属方法請求項8から15の主題である。
【0024】
更に、本発明による生物起源黒色顔料の使用は、独立使用請求項16に見られる。
【0025】
最後に重要なこととして、本発明による生物起源黒色顔料を含有する本発明の材料及び物品は、独立請求項17に見られる。従属請求項18は、本発明による特に有利な材料及び物品に関する。
【発明の効果】
【0026】
先行技術を考慮して、本発明の下に横たわる問題は、本発明による生物起源黒色顔料、本発明によるその製造の方法、本発明によるその使用、及び本発明による材料及び物品の助けによって解決されることは当業者にとって驚くべきことであり、予測可能ではなかった。
【0027】
本発明による生物起源黒色顔料が、濃い黒の色相、高度の色強度、良好な分散性、低いPAH値及び低い重金属含有率を示すことは特に驚きであった。更に、生物起源黒色顔料は、プラスチック、プラスチック部品、コーティング材料、印刷インク、インク、塗料、紙、厚紙、カートン及び鉱物材料の色消し及び色の明暗付け用に、また、ゴム状、熱可塑性、液晶及び磁気レオロジーエラストマー用の補強充填剤として顕著に適切であった。
【0028】
更に、本発明による生物起源黒色顔料は、多環式芳香族炭化水素(PAH)のその特に低い含有率及びその特に低い重金属含有率により無毒であり、それぞれ制限値未満であった。
【0029】
いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、本発明による生物起源黒色顔料、したがってまた、本発明によるその製造の方法の有利な性質は、炭素含有率<95質量%及び酸素含有率>5質量%を有するので、黒色顔料はわずかに極性であったという事実に帰することができよう。これによって、二酸化窒素又はオゾン等の毒ガスを用いる普通のよく知られている酸化の後処理の必要性をなくし、このことは特に注目すべき利点であった。
【0030】
更に、本発明による生物起源黒色顔料、したがってまた、本発明によるその製造の方法の有利な性質は、黒色顔料が、気相から得られるのではなく、沈殿、続いて熱分解によって生物起源原材料から得られたという事実に帰することができよう。
【0031】
出発製品として特殊な生物起源微粒子炭素材料から開始する本発明による方法は、高収率で顕著に再現可能な方式で所望の有利な最終生成物を届けた。特殊な生物起源微粒子炭素材料は、比較的低温で比較的短時間に本発明による方法中に熱分解が実行されることを可能にし、そのことが、本発明による方法が他の熱分解方法と比較して、特にエネルギー効率がなぜ良かったかの理由である。更に、特殊な生物起源微粒子炭素材料は、結果として得られた生物起源黒色顔料が、色消し及び色の明暗付けに優れて適合することを可能にする。
【0032】
別の利点は、本発明による方法の出発製品が、容易に製造でき、様々な方法で使用することができ、そのために十分な量が常に入手可能である、それ自体価値のある産生物であるということであった。これによって、本発明による方法、したがって本発明による生物起源黒色顔料が特に経済的になった。
【0033】
その特に有利な性質により、本発明による生物起源黒色顔料は、多様性において驚くべき多数の用途で用いることができよう。したがって、本発明による生物起源黒色顔料は、有利には、市販されている従来のカーボンブラック及び黒色顔料と異なっていた。
【0034】
したがって、本発明の生物起源黒色顔料を含有する材料及び物品は、また応用技術の観点で特定の利点を示した。
【0035】
さらなる利点は説明から明白になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明による生物起源黒色顔料は、0.20Bq/g炭素を超え、特に好ましくは0.23Bq/g炭素を超え、しかし0.45Bq/g炭素未満、好ましくは0.40Bq/g炭素未満の14C含有率を有する。14C含有率の測定は、DIN EN 16640:2017-08による放射性炭素方法によって実行される。
【0037】
本発明の意味において「生物起源」という用語は、本発明による黒色顔料が、再生長原料から入手可能であり、したがって明らかに化石原料から得られないことを意味する。
【0038】
本発明による生物起源黒色顔料は、DIN 51720に従って求めて顔料の乾燥質量に対して20質量%~40質量%の揮発性成分の割合を有する。好ましくは、これは少なくとも22.5質量%である。好ましくは、これは、最大35質量%、より好ましくは最大30質量%である。
【0039】
DIN規格又は他の規格が日付なしで指定される場合、引用は、常にその出願時の最新版を指す。例えば、DIN 51720の場合、これはDIN 51720:2001-03である。
【0040】
乾燥質量は、ここでは、DIN 51718に従って、試料の乾燥質量含有率が以下:乾燥質量の割合=100% - 試料の合計含水率によって求められる。したがって、本発明による黒色顔料の乾燥質量は無水顔料である。
【0041】
本発明による生物起源黒色顔料は、DIN EN 53552に従って求めて、顔料の乾燥質量に対して好ましくは20質量%~40質量%の揮発性成分の割合を有する。好ましくは、これは少なくとも25質量%である。好ましくは、これは、最大35質量%、より好ましくは最大30質量%である。本発明による黒色顔料の揮発性部分は、したがってDIN 51720及びDIN EN 53552両方に従って求めることができる。
【0042】
本発明による生物起源黒色顔料は好ましくは、顔料の乾燥質量に対して60質量%~80質量%の割合のいわゆる固定炭素を有する。好ましくは、これは、少なくとも65質量%、より好ましくは少なくとも65.5質量%である。好ましくは、これは、最大75質量%、更に好ましくは最大72.5質量%である。顔料の乾燥質量に対する固定炭素の割合は以下のように計算される:100質量% - DIN EN 53552に従って求められる顔料の乾燥質量に対する揮発性成分の割合 - ASTM D1506-15(550℃)に従って求められる顔料の乾燥質量に対する顔料の灰分含有率。
【0043】
本発明による生物起源黒色顔料は、DIN 51732に従って求めて、顔料の乾燥質量に対してそれぞれ60質量%を超え、好ましくは65質量%を超え、更に好ましくは70質量%を超え、特に好ましくは75質量%を超え、特に好ましくは77.5質量%を超える炭素の質量分率を有する。乾燥質量に対して炭素の質量分率は、好ましくは95質量%未満、より好ましくは94質量%未満、更により好ましくは93質量%未満、なおより好ましくは90質量%未満、特に好ましくは87.5質量%未満、なおその上に好ましくは85質量%未満である。
【0044】
本発明による生物起源黒色顔料は、好ましくは灰分を含まない乾燥質量に対して5質量%を超え、好ましくは7.5質量%を超え、更に好ましくは8質量%を超え、特に好ましくは9質量%を超え、特に好ましくは10質量%を超えるが、しかし、好ましくは20質量%未満、好ましくは17.5質量%未満、特に好ましくは15質量%未満、なおその上に好ましくは12.5質量%未満の酸素の質量分率を有する。灰分を含まない乾燥質量に対する酸素の質量分率は、以下:100質量% - 炭素含有率 - 水素含有率 - 窒素含有率 - 硫黄含有率のように計算され、ここで、炭素含有率、水素含有率及び窒素含有率はそれぞれ、DIN 51732に従って求められ、硫黄含有率はDIN 51724-3に従って求められる。値はすべて、それぞれ灰分を含まない乾燥質量に対する。灰分含有率はASTM D1506-15(550℃)に従って求められる。灰分を含まない乾燥質量は、DIN 51718に従って求められる乾燥質量と、ASTM D1506-15(550℃)に従って求められる灰分含有率の差から計算することができる。
【0045】
本発明による生物起源黒色顔料は、それぞれ顔料の乾燥質量に対して0.5質量%を超え、好ましくは1質量%を超え、7質量%未満、好ましくは6質量%未満、好ましくは5質量%未満、特に好ましくは4質量%未満の、ASTM D1506-15(550℃)に従って求められる灰分含有率を有する。
【0046】
本発明による生物起源黒色顔料は好ましくは、少なくとも1種の添加剤によって、好ましくはその表面が少なくとも部分的に改質されている。好ましくは、本発明による生物起源黒色顔料は更に、改質のための、特に顔料表面の部分的な無極性化のための、顔料の乾燥質量に対してそれぞれ1.0質量%~10質量%の少なくとも1種の添加剤の質量分率を有する。これは、改質が遂行された後の質量分率を意味する。ここで、使用される添加剤に応じて、アルコール等の脱離生成物が改質時に形成され得るが、その場合、前述の質量分率に寄与しないことは考慮に入れられるべきである。好ましくは、質量分率は8質量%未満、更に好ましくは6質量%未満である。好ましくは、表面改質用の少なくとも1種の添加剤は、シラン、シロキサン、及び酸性基を有するコポリマーのアルキルアンモニウム塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。コポリマーのアルキルアンモニウム塩に基づく適切な添加剤の一例は、Altana社からのBYK(登録商標)-9076である。有機官能性シランに基づく適切な添加剤の一例は3-アミノプロピルトリメトキシシラン(WACKER社からのGENIOSIL(登録商標)GF 96)である。
【0047】
本発明による生物起源黒色顔料は、顔料の乾燥質量に対して、10ppm未満の多環式芳香族炭化水素(PAH)の質量分率を有する。多環式の芳香族の分率は、MAS_PA036:2013-12及びMAS_PA017:2016-09に関連するFDA Method 63 under 21 CFR Sec 178.3297:1994-07によって求められた。好ましくはFDAによる22種のPAHの合計は、10ppm未満、更に好ましくは8ppm未満、特に好ましくは5ppm未満である。好ましくは7種のGS-PAHの合計は、10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、特に好ましくは2ppm未満である。好ましくは、18種のGS-PAHの合計は、10ppm未満、より好ましくは8ppm未満、特に好ましくは5ppm未満である。好ましくはベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]ピレン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン又はジベンゾ[a,h]アントラセンの質量分率は、それぞれ2.0ppm未満、更に好ましくは1.0ppm未満、より好ましくは0.5ppm未満、特に0.25ppm未満、一部の事例では0.2ppm未満である。
【0048】
本発明による生物起源黒色顔料は、DIN EN ISO11885に従って、乾燥質量に対して求めて、顔料の乾燥質量に対して、合計が100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは25ppm未満の鉛、水銀、カドミウム及びクロムの質量分率を有する。本発明による生物起源黒色顔料は好ましくは、DIN EN ISO11885に従って乾燥質量に対して求めて10ppmを超え100ppm未満の質量分率のマンガンを有する。
【0049】
本発明による生物起源黒色顔料は、5m2/g~200m2/g、好ましくは10m2/g~150m2/g、好ましくは15m2/g~150m2/g、特に好ましくは20m2/g~120m2/g、特に20~80m2/gのASTM規格D6556によるSTSAを有する。
【0050】
好ましくは、本発明による生物起源黒色顔料は、好ましくはそのSTSAを少なくとも10%超えるASTM規格D6556によるBETを有する。好ましくは、BETは、少なくとも25m2/g、更に好ましくは少なくとも30m2/g、更に好ましくは少なくとも50m2/g、また好ましくは少なくとも100m2/g、なおその上に好ましくは少なくとも150m2/g、更により好ましくは少なくとも200m2/g、更に好ましくは少なくとも250m2/gである。BETは、最大500m2/g、好ましくは最大400m2/g、更により好ましくは最大350m2/g、特に最大300m2/gである。
【0051】
好ましくは、BETは、STSAより5m2/g、更に好ましくは10m2/g、なおその上に好ましくは20m2/g特に好ましくは50m2/g、特に100m2/g、なお好ましくは150m2/g、一部の実施形態では200m2/g多い。しかし、BETは、STSAより、好ましくは400m2/gを超えず、特に好ましくは300m2/gを超えない。
【0052】
生物起源黒色顔料の真密度は、好ましくは1.6g/cm3未満、特に好ましくは1.5g/cm3未満である。真密度はヘリウム比重びん法によって、例えば、20℃の温度でPorotec GmbH社のヘリウム比重びん(Pycnomatic ATC)で求められる。
【0053】
生物起源黒色顔料の粒径分布はDIN ISO13320:2020に従って求められる。試料調製は、Ultraturaxを用いて10分間生物起源黒色顔料を蒸留水中およそ1質量%に分散させることにより遂行される。更に、試料調製は、好ましくは6,000W又は12,000Wの規定エネルギー入力を用いて超音波の使用によって補うことができる。超音波を用いる処理は脱凝集をもたらす。試料調製が超音波処理を用いて、又は用いずに行なわれるかどうかには無関係に、粒径分布の測定は超音波の下で行なわれる。
【0054】
生物起源黒色顔料の超音波を用いる試料調製なしの、粒径分布のQ3累積曲線分布のD99値は、100μm未満である。好ましくは、それは、50μm未満、特に好ましくは20μm未満、特に好ましくは15μm未満、特に10μm未満、一部の実施形態では5μm未満である。好ましくは、それは0.5μmを超え、好ましくは1μmを超え、特に2μmを超える。上記に言及されるように、D99値はDIN ISO13320:2020に従って求められる。
【0055】
本発明による生物起源黒色顔料は、好ましくは10nm~5000nmの粒径分布のQ3累積曲線分布のD50値を有する。好ましくは、それは、100nmを超え、なおその上に好ましくは200nmを超え、特に好ましくは500nmを超え、特に750nmを超える。好ましくは、粒径分布のQ3累積曲線分布のD50値は、4000nm未満、更に好ましくは3000nm未満、特に2000nm未満、なおその上に好ましくは1000nm未満である。上記に言及されるように、D50値はDIN ISO13320:2020に従って求められる。
【0056】
好ましくは、6000Wのエネルギー入力を用いて超音波処理による試料調製の後に測定された粒径分布のQ3累積曲線分布のD99(又はD50)は、超音波処理なしの試料調製の後に測定された粒径分布のQ3累積曲線分布のD99(又はD50)の最大70%であり、更に好ましくは、最大60%である。
【0057】
好ましくは、6000Wのエネルギー入力を用いて超音波処理による試料調製の後に測定された粒径分布のQ3累積曲線分布のD99(又はD50)は、超音波処理なしの試料調製の後に測定された粒径分布のQ3累積曲線分布のD99(又はD50)の少なくとも10%であり、更に好ましくは、少なくとも20%である。
【0058】
DIN EN 13900-3、"Pigments and extenders - Methods of dispersion and assessment of dispersibility in plastics - Part 3:Determination of colouristic properties and ease of dispersion of black and colour pigments in polyethylene by two-roll milling"「顔料及び体質顔料-分散の方法及びプラスチック中の分散性の評価-第3部: 2本ロール摩砕によるポリエチレン中の黒色及び着色顔料の着色特性及び分散容易性の測定」に従って二酸化チタンとの白色ミックス中でその色強度を試験し、後続の比色測定をした後、黒色顔料は、Orion Engineered Carbon社からの基準製品Printex 30と比較して200以下の着色等価値(FAE)、0.7質量%の950℃での揮発性成分の質量分率、80m2/gのBET表面積、及びフタル酸ジブチル(DBP)を用いて測定された105ml/100gの吸油量OANを有する。
【0059】
本発明による黒色顔料は、好ましくは、少なくとも1%かつ最大5%、好ましくは最大4%、更に好ましくは最大3%の濃度で使用される。
【0060】
本発明による例示の生物起源黒色顔料は、PVC-p、又はポリプロピレン、好ましくはポリプロピレン中、好ましくは1又は2%、より好ましくは1%を使用する場合、以下の測色値:
- L*(D65):23を超え、好ましくは24を超えかつ26未満、好ましくは25未満
- a*(D65):-0.4を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満
- b*(D65):-0.5を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満
- dL*(D65):1.3を超えかつ1.4未満、
- da*(D65):0.03を超えかつ1.0未満、
- db*(D65):-0.7を超えかつ-0.5未満及び/又は
- dE*ab(D65):1.2を超えかつ1.5未満
を特徴とする。
【0061】
L*(D65)、a*(D65)、b*(D65)、dL*(D65)、da*(D65)、db*(D65)及びdE*ab(D65)等の色データ(また本明細書において測色値と称される)は、本発明の意味で特にCIE標準光源D65を用いて分光光度計によって求められる。正反射(SPIN[正反射を含む]又はRSIN[鏡面反射を含む)を用いて、拡散幾何形状(また球面幾何形状、拡散/8°、d/8°)がこれのために使用される。
【0062】
好ましくは、本発明による生物起源黒色顔料は、23を超え、好ましくは24を超え、26未満、好ましくは25未満のL*(D65)値を有する。好ましくは、本発明による生物起源黒色顔料は、-0.4を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満のa*(D65)値を有する。好ましくは、本発明による生物起源黒色顔料は、-0.5を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満のb*(D65)値を有する。好ましくは、本発明による生物起源黒色顔料は、1.3を超えかつ1.4未満のdL*(D65)値を有する。好ましくは、本発明による生物起源黒色顔料は、0.03を超えかつ1.0未満のda*(D65)値を有する。好ましくは、本発明による生物起源黒色顔料は、-0.7を超えかつ-0.5未満のdb*(D65)値を有する。好ましくは、本発明による生物起源黒色顔料は、1.2を超えかつ1.5未満のdE*ab(D65)値を有する。値は、好ましくはそれぞれPVC-p又はポリプロピレン、好ましくはポリプロピレン中、それぞれ好ましくは1又は2%、特に好ましくは1%の量の黒色顔料の使用を指す。ここで、%は好ましくは質量%を意味するものとする。
【0063】
とりわけ好ましくは、黒色顔料は、好ましくはPVC-p中で2%を使用する場合、以下の測色値によって区別される;
- L*(D65):25.62
- a*(D65):-0.09
- b*(D65):-0.31
- dL*(D65):-1.34
- da*(D65):0.06
- db*(D65):-0.84
- dE*ab(D65):1.38.
【0064】
これらの測色値は、有利には市場で入手可能な普通で公知のカーボンブラック顔料の測色値と比較する。例えば、Orion Engineered Carbon社からのPrintex 30は基準顔料として適切である。
【0065】
本発明による生物起源黒色顔料は、好ましくは本発明による方法によって製造される。
【0066】
本発明による方法は、以下:
- 0.20Bq/g炭素を超え、特に好ましくは0.23Bq/g炭素を超えるが、しかし、0.45Bq/g炭素未満、好ましくは0.40Bq/g炭素未満の14C含有率、
- 灰分を含まない乾燥物質に対して60質量%から80質量%の間の炭素含有率、及び
- 5m2/gから200m2/gのSTSA表面積
を含む少なくとも1種の生物起源微粒子炭素材料から開始し反応させて生物起源微粒子黒色顔料が得られる。
【0067】
好ましくは、用いられる生物起源微粒子炭素材料は、それ自体では黒色顔料ではなく、特に黒色ではない。
【0068】
好ましくは、生物起源微粒子炭素材料のBET表面積は、そのSTSA表面積と最大20%異なる。
【0069】
好ましくは、蒸留水中の生物起源微粒子炭素材料の15%懸濁液は、<5mS/cmの電気伝導率を有する。
【0070】
ラマンスペクトルにおいて黒鉛炭素の割合の尺度として、生物起源微粒子炭素材料は、好ましくは0.2から9.0のD/G比を有する。
【0071】
好ましくは、生物起源微粒子炭素材料は、<30μmのQ3粒径分布のD90値を有する。
【0072】
褐色の生物起源微粒子炭素材料、その製造及びその使用は、独国特許出願公開102016201801A1号、段落[0038]から[0083]、及び実施例1から6、段落[0147]から[0158]に詳細に記載されている。
【0073】
好ましくは、リグニン含有バイオマス、特に、乾燥質量に対して80質量%を超えるKlasonリグニン含有率を含むリグニン含有バイオマスが、生物起源微粒子炭素材料を製造するために使用される(参照:独国特許出願公開102016201801A1号、段落[0040]; Science Direct: Klason Lignin - 概要|ScienceDirect Topics,2021年4月28日)。
【0074】
本明細書において、バイオマスは原則として、任意のバイオマスとして定義され、ここで、「バイオマス」という用語は、本明細書においていわゆる植物体量、すなわち植物を起源とするバイオマス、動物体量、すなわち動物を起源とするバイオマス、及び微生物のバイオマス、すなわち真菌類を含む微生物を起源とするバイオマスを含み、バイオマスは乾燥したバイオマス又は新鮮なバイオマスであり、それは死んだ有機体又は生きている有機体を起源とする。特に本明細書において好ましく、黒色顔料の製造のために用いられるバイオマスは、植物体量、好ましくは死んだ植物体量である。死んだ植物体量は、とりわけ、死んだ、はねた、又は切り離した植物及びそれらの部分を含む。これらは、例えば、壊れ、裂けた葉、穀物茎、側苗条、小枝及び分枝、落ち葉、倒木又は剪定された木、並びに種子、果物及びそれに由来する部分だけでなく、しかしまたおがくず、木材かんな屑/チップ及び木材加工に由来する他の産生物を含む。
【0075】
第1の方法ステップにおいて、上記の出発材料(生物起源、微粒子炭素材料)は、好ましくは250℃から600℃、好ましくは350℃から500℃の温度T熱分解で熱分解される。ここで、温度T熱分解を1分~180分間保持することが有利である。出発製品を熱する間に150℃に到達するときに、また本発明による結果として得られる生物起源黒色顔料を少なくとも150℃に冷却する間に、<10体積%、好ましくは5体積%未満、特に好ましくは2.5体積%未満、なおその上に好ましくは2体積%未満の雰囲気の酸素含有率を調節することが有利である。好ましくは、雰囲気の酸素含有率は0.5体積%を超える。
【0076】
本発明による方法の好ましい実施形態において、熱分解はドラム炉、流動床乾燥機、流動床反応器又は回転炉中で実行される。好ましくは、熱分解は、不活性ガスの下で流動床、ドラム炉又は回転炉中で行なわれる。好ましくは、不活性ガスは、窒素及び/又は二酸化炭素、又は<10体積%、好ましくは5体積%未満、より好ましくは2.5体積%未満、より好ましくは2体積%未満の酸素含有率を含む窒素及び/又は二酸化炭素からなる。好ましくは、不活性ガスの酸素含有率は、0.5体積%を超える。
【0077】
回転炉を使用する場合、回転炉中の不活性ガスは生成物流に逆方向に供給される。
【0078】
好ましくは出発材料(生物起源微粒子炭素材料)は、熱分解の前に、及び/又は好ましくは結果として得られる生物起源黒色顔料は、熱分解の後に、微粉砕にかけられる。この方法では、生物起源黒色顔料の粒径が、上記に示されたQ3累積曲線分布のD99値及びD50値の範囲に調節されるように微粉砕が行なわれる。好ましい乾式粉砕プロセスは、好ましくは粉砕気体として空気、窒素又は過熱蒸気を用いる分級機ミル中でのガスジェット粉砕である。別の好ましい粉砕プロセスは、リングチェンバーミル中に粉砕媒体を用いる粉砕である。好ましい湿式粉砕プロセスは、例えば揺動機ボールミル(磨砕機)中で粉砕媒体を用いる湿式粉砕である。
【0079】
好ましくは、ガラスビーズ又はセラミックビーズが、好ましくは2mmから10mmの直径を有する粉砕媒体として使用される。
【0080】
本発明によると、湿式粉砕中に上記の表面改質用に添加剤の少なくとも1種を添加することが有利である。
【0081】
好ましくは、湿式摩砕から得られる本発明による生物起源黒色顔料の懸濁液は5から11の間のpHを有する。
【0082】
7未満のpH値に到達するまで、ギ酸を懸濁液に添加することができる。ギ酸を用いる処理によって、重金属の含有率も更に低下させることができる。
【0083】
本発明による好ましい本発明による方法の実施形態において、本発明による生物起源黒色顔料は濾過され、濾液の伝導度が≦300μS/cmになるまで、濾過ケーキは水を用いて洗浄される。
【0084】
本発明による方法のさらなる進行中に、濾過ケーキは、好ましくは≦80℃で乾燥され、好ましくは、乾燥した生物起源黒色顔料は、続いてミル中で脱凝集される。
【0085】
本発明による別の好ましい実施形態では、本発明による生物起源黒色顔料の懸濁液は噴霧乾燥器で乾燥される。
【0086】
本発明による生物起源黒色顔料は、プラスチック、プラスチック部品、コーティング材料、印刷インク、インク、塗料、紙、厚紙、カートン及び鉱物材料の色消し及び色の明暗付けのために、並びにゴム状、熱可塑性、液晶及び磁気レオロジーエラストマーのための補強充填剤として顕著に適切である。
【0087】
本発明による材料及び物品、特に、プラスチック、プラスチック顆粒、成型したプラスチック部品、コーティング材料及びコーティング、印刷インク及び印刷物、インク及び画像、及びこれらのインクを用いて作られた文書、塗料及びコーティング、紙、厚紙、カートン、鉱物材料及び成分、並びに、ゴム状、熱可塑性、液晶及び磁気レオロジーエラストマーで作製されたコンポーネントは、そのすべてが本発明による少なくとも1種の生物起源黒色顔料を含有し、特に有利な適用特性、例えば、顕著な色強度、染色堅牢度、色調安定性、光堅牢度及び耐光性並びに補強充填剤としてのそれらの機能で、低い質量分率であっても顕著な補強効果を示す。
【0088】
少なくとも1%かつ最大5%、好ましくは最大4%、更に好ましくは最大3%の濃度の、以下の測色値:
- L*(D65):23を超え、好ましくは24を超えかつ26未満、好ましくは25未満
- a*(D65):-0.4を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満
- b*(D65):-0.5を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満
- dL*(D65):1.3を超えかつ1.4未満、
- da*(D65):0.03を超えかつ1.0未満、
- db*(D65):-0.7を超えかつ-0.5未満、及び/又は
- dE*ab(D65):1.2を超えかつ1.5未満
を有する、本発明による生物起源黒色顔料を含有する材料もまた本発明による。
【0089】
本発明の生物起源黒色顔料を含有する、好ましい材料は、以下のリストから選択されるマトリックス材料を含むか又はそれからなる:ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルカルボナート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリラート、ポリスチレン、スチレンマレイン酸無水物、ポリカプロラクトン、ポリブチレンテレフタラート、ポリエポキシド;酢酸セルロース又は硝酸セルロース等のセルロース生成物、加硫繊維、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノアート、キチン、カゼイン、ゼラチン;メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のホルムアルデヒド樹脂、メラミンフェノール樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂;シリコーンポリマー、天然ゴム、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエンコポリマー、クロロプレン、フッ素ゴム又はアクリルゴム、及びそれらの混合物。
【0090】
本発明による生物起源黒色顔料を含有する材料の好ましい使用は、子ども用玩具、車内ライニング、押出プロセス又は食品包装用のプラスチック顆粒の製造である。
【0091】
また、本発明によると、少なくとも1%かつ最大5%、好ましくは最大4%、更に好ましくは最大3%の濃度の、本発明の生物起源黒色顔料を含有し、少なくとも4つの高さ及び少なくとも1つのへこみを有し、少なくとも1つのへこみは、別のクランプブロックの少なくとも1つの高さを収容することができ、それによって2つのクランプブロックの間にクランプ接続を形成することができるように設計され、以下の比色値を有するクランプブロックである:
- L*(D65):23を超え、好ましくは24を超えかつ26未満、好ましくは25未満
- a*(D65):-0.4を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満
- b*(D65):-0.5を超え、好ましくは-0.2を超え、特に好ましくは-0.1を超えかつ0.2未満
- dL*(D65):1.3を超えかつ1.4未満、
- da*(D65):0.03を超えかつ1.0未満、
- db*(D65):-0.7を超えかつ-0.5未満、及び/又は
- dE*ab(D65):1.2を超えかつ1.5未満。
【0092】
本発明は、ここで、とりわけ以下の実施例に関して説明される。実施例は限定するのではなく、本発明の性質及び目的を例示するように意図される。当業者は、専門に基づくさらなる実施例を、彼自身創造的になることなく容易に与えることができる。
【実施例】
【0093】
製造実施例1
本発明による方法のための出発製品としての、2種の微細分割した生物起源炭素材料ES-A及びES-Bの製造。
独国特許出願公開102016201801A1号に記載されるように、微細分割した褐色の生物起源微粒子炭素材料が、次工程ステップによるクラフト紙リグニンから製造される:
(I) LignoBoostプロセスと類似した黒液からのリグニン分離:
- CO2の導入による軟材からのクラフト紙黒液からのクラフト紙リグニンの沈殿。-
- 沈殿したクラフト紙リグニンの濾過による分離。-
- 分離したクラフト紙リグニンの水及び硫酸を用いる懸濁、及び-
- 懸濁したクラフト紙リグニンの濾過による分離。-
(II) 微細分割した褐色の生物起源微粒子炭素材料の、水熱処理による製造:
- 分離したクラフト紙リグニンの、水及びNaOH中の溶液。-
- リグニン溶液の水熱処理。-
- 濾過及び洗浄による、液体からの、微細分割した材料の分離。-
- 微細分割した材料の乾燥及び-
- 微細分割した材料を粉砕し出発製品を得ること。-
【0094】
結果として得られた2種の微細分割した生物起源微粒子炭素材料は、Table 1(表1)に示される特性を有していた。
【0095】
【0096】
(実施例1~4)
本発明による生物起源黒色顔料PD-1からPD-4の製造
本発明による黒色顔料の製造に関して、長さ73cm及び直径10cmを有するガラス製内側管を用いてNaberTherm社からの実験室用回転炉で出発製品を熱分解した。熱分解条件はTable 2(表2)に見ることができる。
【0097】
【0098】
本発明に従って得られた生物起源黒色顔料の材料組成及び物理的性質は、Table 3(表3)に見ることができる。
【0099】
【0100】
PAH含有率は特に低かった。
【0101】
仕上げとしてBYK(登録商標)90761を用いて黒色顔料PD-4を処理し、ポリプロピレン(Daplen(登録商標)3007)に組み込み、比較のための比色測定にかけた。黒色顔料、Printex(登録商標)30及びLampBlack(カラーインデックス顔料、ブラック6(77266);粒径90から120nm)を比較顔料として用いた。使用した出発材料ES-Bに対して、更に比較を行った。比色測定の結果はTable 4(表4)に見ることができる。各事例で、1質量%の顔料/出発材料を組み込んだ。
【0102】
【0103】
本発明による生物起源黒色顔料PD-4は、ポリプロピレンに非常に容易に均質に組み込むことができる。染めたポリプロピレンは、優れた測色値を示し、特に、出発材料ES-Bについて求めたものよりはるかに良好であった。
【0104】
(実施例5)
本発明による生物起源黒色顔料5の製造
15.38gの微細に分割した褐色の微粒子の生物起源炭素材料ES-Aを、100mlの容積を有する磁製坩堝になみなみと満たし、アルミ箔を用いて気密充填した。次いで、500℃で30分間マッフル窯中で坩堝をアニールし、この後、煙発生は終了した。冷却した後、坩堝を開いた。本発明の生物起源黒色顔料の収量は9.54gで、62.03%の炭化後の収率に対応した。
【0105】
1.5lのボールミル中で48時間黒色顔料を、180gの水、4.5gのBYK(登録商標)9076及び500gの10mm直径の磁器球と共に粉砕した。次いで、ふるいを介して磁器球から顔料懸濁液を分離し、ブフナー漏斗で特殊な濾紙(Macherey-Nagel社、MN 85/70)を介して真空を用いて濾別し、乾燥箱中60℃で乾燥し、次いで、4分間粉砕インパクトミル中で粉砕した。
【0106】
本発明による実施例5の生物起源黒色顔料の性質は、応用技術の観点で優れていた。
【0107】
(実施例6)
本発明による生物起源黒色顔料6の製造
250gの微細分割した微粒子の生物起源炭素材料ES-Bは、長さ73cm及び直径10cmを有するガラス製内側管を含むNaberTherm社実験室回転炉中で炭化した。材料は二酸化炭素雰囲気下で10分で20℃から200℃に加熱し、次いで、更に2時間で480℃に加熱した。プロセス中で、1時間当たり200lの二酸化炭素をガラス製内側管に通した。480℃での炭化の継続時間は1時間であり、次いで、室温に材料を冷却した。本発明の生物起源黒色顔料の収量は155gであり、これは62%の炭化の後の収率に対応した。得られた黒色顔料は、空気中で自然発火する傾向はない。
【0108】
(実施例7)
本発明による生物起源黒色顔料7の製造
容積250ml、内径62mm及び内側高さ75mmのねじ蓋付きジャー中で実施例6の黒色顔料を粉砕した。直径2.8~3.4mmのガラスビーズ150g、90mlの水、及び10.0gの黒色顔料6をねじ蓋付きジャーへそれぞれ満たした。添加剤として0.5gのByk(登録商標)9076を添加した。これらの満たしたねじ蓋付きジャーの4つを保持具中に入れ、Olbrich Know-How社からのカラーディスペンサー中で2度各10分間粉砕を遂行した。次いで、ふるいを介してガラスビーズから顔料懸濁液を分離し、ブフナー漏斗で特殊な濾紙(Macherey-Nagel社、MN 85/70)を介して真空を用いて濾別し、乾燥箱中60℃で乾燥し、次いで、4分間粉砕インパクトミル中で粉砕した。結果として得られた本発明による生物起源黒色顔料7はまた、応用技術の観点で優れた性質を示した。
【0109】
(実施例8)
本発明による生物起源黒色顔料8の製造
容積250ml、内径62mm及び内側高さ75mmのねじ蓋付きジャー中で実施例6の黒色顔料を粉砕した。直径2.8~3.4mmのガラスビーズ150g、90mlの水、及び10.0gの黒色顔料6を、ねじ蓋付きジャーへそれぞれ満たした。添加剤として0.5gのGeniosil GF 96を添加した。これらの満たしたねじ蓋付きジャーの4つを保持具中に入れ、Olbrich Know-How社からのカラーディスペンサー中で2度各10分間粉砕を遂行した。次いで、ふるいを介してガラスビーズから顔料懸濁液を分離し、ガラスビーズは、水を用いてなお付着する黒色顔料を洗浄した。顔料懸濁液のpHは9.4であった。次いで、顔料懸濁液をブフナー漏斗で特殊な濾紙(Macherey-Nagel社、MN 85/70)を介して真空を用いて濾別し、乾燥箱中80℃で乾燥し、次いで、4分間粉砕インパクトミル中で粉砕した。本発明によるこの生物起源黒色顔料8はまた、応用技術の観点で優れた性質を示した。
【0110】
(実施例9)
本発明による生物起源黒色顔料9の製造
容積250ml、内径62mm及び内側高さ75mmのねじ蓋付きジャー中で実施例6の黒色顔料を粉砕した。直径2.8~3.4mmのガラスビーズ150g、90mlの水、及び10.0gの黒色顔料6を、ねじ蓋付きジャーへそれぞれ満たした。添加剤として0.5gのGeniosil GF 96を添加した。これらの満たしたねじ蓋付きジャーの4つを保持具中に入れ、Olbrich Know-How社からのカラーディスペンサー中で2度各10分間粉砕を遂行した。次いで、ふるいを介してガラスビーズから顔料懸濁液を分離し、ガラスビーズは水を用いてなお付着する黒色顔料を洗浄した。顔料懸濁液のpHは9.9であった
【0111】
実施例10において顔料懸濁液の1つの分画を更に加工した。残りの分画を以下のように更に加工した。
【0112】
続いて、顔料懸濁液を、ブフナー漏斗で特殊な濾紙(Macherey-Nagel社、MN 85/70)を介して真空を用いて濾別し、乾燥箱中80℃で乾燥し、次いで、粉砕インパクトミル中で4分間粉砕した。
【0113】
Table 5(表5)に分析で求めた重金属含有率を列挙する。DIN EN ISO11885、2009-09版に従って分析を遂行した。
【0114】
(実施例10)
本発明による生物起源黒色顔料10の製造
応用技術の観点の性質を改善し重金属含有率を低下させるために、実施例9からの顔料懸濁液は、まずギ酸を用いてpH<6に調節した。
【0115】
次いで、結果として得られた顔料懸濁液を、ブフナー漏斗で特殊な濾紙(Macherey-Nagel社、MN 85/70)を介して真空を用いて濾別した。伝導度、したがって黒色顔料10の塩分を低下させるために顔料濾過ケーキを洗浄し、洗浄水の伝導度<300μS/cmにした。得られた黒色顔料10を乾乾燥箱中80℃で乾燥し粉砕インパクトミル中で4分間粉砕した。Table 5(表5)に分析で求めた重金属含有率を列挙する。DIN EN ISO11885、2009-09版に従って分析を遂行した。
【0116】
【0117】
実施例10に従って黒色顔料9をギ酸で処理することによって、重金属含有率の大幅な低下を達成した。
【0118】
(実施例11)
比色定量の性質の測定
顔料の必須の性質の中には、色相及び色強度等の比色定量の性質がある。ポリマー材料中に着色し、基準顔料と比較してのみこれらの性質を求めることができる。DIN EN 14469-1及びDIN EN 14469-2と同様に製造したPVC-p中、又はポリエチレン中で実施例1から10の本発明による黒色顔料を試験した。DIN EN 13900-2"Pigments and extenders - Methods of dispersion and assessment of dispersibility in plastics - Part 2:Determination of colouristic properties and ease of dispersion in plasticized polyvinyl chloride (PVC-p) forming masses"、「顔料及び体質顔料-分散の方法及びプラスチック中の分散性の評価-第2部:可塑化ポリ塩化ビニル(PVC-p)形成塊中の着色特性及び分散容易性の測定」及びDIN EN 13900-3、"Pigments and extenders - Methods of dispersion and assessment of dispersibility in plastics - Part 3:Determination of colouristic properties and ease of dispersion of black and colour pigments in polyethylene by two-roll milling"に従って着色を実行した。比較顔料としてOrion Engineered Carbon社からのPrintex(登録商標)30を使用した。Minolta CM-5比色計を用いて比色定量のデータを測定した。顔料の線量は各事例で2質量%であった。
【0119】
従来の黒色顔料と比較して、本発明による実施例1から10の生物起源黒色顔料は、優れた色濃淡及び色強度を示した。
【国際調査報告】