(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】マイクロ波信号が通過する媒体に関する異なる仮説を使用した、医療分野におけるマイクロ波レーダー画像の形態学的処理を行う方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/11 20170101AFI20240426BHJP
G01N 22/02 20060101ALI20240426BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20240426BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240426BHJP
【FI】
G06T7/11
G01N22/02 C
G01N22/00 S
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568148
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 FR2022050865
(87)【国際公開番号】W WO2022234235
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515337763
【氏名又は名称】エムブイジー インダストリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ファソウラ,アガチ
(72)【発明者】
【氏名】デュシェーヌ,リュック
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA09
5L096BA06
5L096DA01
5L096FA02
5L096GA51
(57)【要約】
本発明は、医用画像処理装置(1)によって、患者の体の領域、特に乳房のヒト組織の医用画像を処理する方法に関し、医用画像処理装置(1)は、互いに離隔したK>1プローブを含むマイクロ波プローブアレイを含み、該アレイは、領域の周囲の1つ又は複数の位置のための送信プローブ及び受信プローブを定めるP>1の異なる構成を含み、送信プローブは、体の領域を照射するようにマイクロ波信号を送信するように構成され、受信プローブは、領域における拡散及び反射後にマイクロ波信号を受信するように構成され、プローブは、相補的な様式で、同時に送信及び受信を行うように構成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像処理装置によって、患者の体の領域、特に乳房のヒト組織の医用画像を処理する方法であって、前記医用画像処理装置は、互いに離隔したK>1プローブを含む、マイクロ波範囲の電磁波を放射/受信するプローブのアレイを含み、該アレイは、前記領域の周囲の1つ又は複数の位置のための放射プローブ及び受信プローブを定めるP>1の異なる構成を含み、前記放射プローブは、体の領域を照射するようにマイクロ波信号を放射するように構成され、前記受信プローブは、前記領域への拡散及び反射後にマイクロ波信号を受信するように構成され、前記プローブは、相補的な様式で、同時に放射及び受信を行うように構成することができ、当該方法は、前記医用画像処理装置の処理ユニットにおいて実施される以下の:
- P>1構成のアンテナアレイで生成された前記信号を取得するステップ
を含み、
当該方法は、各構成に対して、
-
【数1】
の基本のマイクロ波レーダーの画像を得るように、前記信号が横切る前記ヒト組織のパラメータ(pcfib)特徴のAi>1の値のN>1セット(1≦i≦N)について取得した前記信号を処理するステップ、
- 基本のマイクロ波レーダー画像を、少なくとも1つの画像フォーカシング基準に従って、Nセットの各々において選択するステップであって、各選択された基本画像は、前記セットのパラメータ(pcfib)の値の1つに対応し、セットごとに1つの基本画像が、1つの構成に対して選択される、ステップ、
を含み、
当該方法は、各セットに対して、
- 選択された前記基本のレーダー画像から、セットごとに1つの3Dレーダー画像を再構成するように、患者の体の領域のレーダー画像の前記構成の各々を再構成するステップ、
- 病変を構成する可能性のある1つ又は複数の関心領域が存在する場合には、前記1つ又は複数の関心領域が特定される形態学的画像を得るように、各再構成されたレーダー画像の形態学的処理を行うステップ、
- 前記関心領域の形態学的検証を行うために、得られた異なる形態学的画像上の各関心領域の持続性を評価するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記形態学的処理は、前記画像の1つ又は複数の画素領域の固体性を決定することに本質的な点があり、関連する固体性が閾値より大きい場合に、関心領域が特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号が横切る媒体の特徴パラメータ(pcfib)のAi>1の値の少なくともN=2セット、好ましくは少なくともN=3セット(1≦i≦N)が考慮される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記セットは、変動範囲の観点及び/又は値の観点から全体的又は部分的に重複する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記持続性の評価は、前記形態学的画像上の関心領域の存在の割合を決定することに本質的な点があり、関心領域は、閾値より大きい割合に対して検証される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プローブのアレイは、画像化されることになる領域の周囲に配置されるK>1プローブを含み、前記アレイは、前記画像化されることになる領域の周囲の垂直位置において移動可能であり、各構成は、各々がM>1プローブ(M<K)で構成されるプローブの角度セクタであり、各構成は、別の構成に対して少なくとも1つのプローブによって角度的にオフセットされ、各角度セクタに対して、前記プローブの各々は、前記構成に対して取得される信号を生成するように交互に放射状態であり、基本のレーダー画像が、特徴パラメータの値(pcfib)のセットごとに各角度セクタに対して決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法が少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに前記方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項1に記載の方法を実施するように構成された処理ユニットを含む、医用画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波周波数帯域の電磁波を使用した医用画像処理の分野に関し、より具体的には、電磁波を透過するヒトの組織又は臓器の分析のための医用画像処理に関係する。さらに、本発明は、特に乳房画像処理及び乳房病態の検出に適用される。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波画像処理技術は、電磁波を透過するヒト臓器の画像処理を可能にし、乳房画像処理及び乳がん等の病態検出の分野において有望な技術である。
【0003】
マイクロ波画像処理は、電磁波によって画像化されることになる臓器の全て又は一部を照射するように構成された放射プローブを使用する。放射波は、画像化されることになる領域を通過し、受信プローブによって受信される。プローブは、相補的な様式で、同時に放射及び受信を行うように構成することができる。受信波は、誘電コントラストの位置(例えば、健康な組織に位置するがん病変)で、遭遇した障害物における反射を経ることによって画像化されることになる領域を通過している。このようにして放射プローブと受信プローブとの間で測定された透過係数の全てが、マルチスタティック取得を形成する。これらのマルチスタティック取得は、レーダー画像処理モジュールへの入力として役立ち、さらに、臓器又は臓器の一部の2D又は3Dのレーダー画像を得ることを可能にしている。
【0004】
画像化されることになる領域を最も良く表す画像を得るためには、放射プローブ、画像化されることになる考慮される領域の各ポイント、及び受信プローブの間の電磁波が移動する異なる経路に沿った誘電性媒体を事前に知る必要がある。
【0005】
しかし、画像化されることになる臓器の誘電特性に関するこの事前知識は入手困難であり、横切られる媒体に関する仮定を行う必要があり、これは、低品質であり得る画像をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヒトの組織又は臓器の分析のためのレーダー画像の質を改善することを可能にしている。特に、本発明は、病変を構成する可能性のある物理的対象に対応する1つ又は複数の関心領域をレーダー画像において検出することを可能にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、第1の態様に従って、医用画像処理装置によって、患者の体の領域、特に乳房のヒト組織の医用画像を処理する方法を提案し、医用画像処理装置は、互いに離隔したK>1プローブを含む、マイクロ波範囲の電磁波を放射/受信するプローブのアレイを含み、該アレイは、領域の周囲の1つ又は複数の位置のための放射プローブ及び受信プローブを定めるP>1の異なる構成を含み、放射プローブは、体の領域を照射するようにマイクロ波信号を放射するように構成され、受信プローブは、領域への拡散及び反射後にマイクロ波信号を受信するように構成され、プローブは、相補的な様式で、同時に放射及び受信を行うように構成することができ、当該方法は、医用画像処理装置の処理ユニットにおいて実施される以下の:
- P>1構成のアンテナアレイで生成された信号を取得するステップ;
を含み、
当該方法は、各構成に対して:
-
【0008】
【数1】
の基本のマイクロ波レーダーの画像を得るように、信号が横切るヒト組織のパラメータ特徴のAi>1の値のN>1セット(1≦i≦N)について取得した信号を処理するステップ;
- 基本のマイクロ波レーダー画像を、少なくとも1つの画像フォーカシング基準に従って、Nセットの各々において選択するステップであって、各選択された基本画像は、セットのパラメータ(pcfib)の値の1つに対応し;セットごとに1つの基本画像が、1つの構成に対して選択される、ステップ;
を含み、
当該方法は、各セットに対して:
- 選択された基本のレーダー画像から、セットごとに1つの3Dレーダー画像を再構成するように、患者の体の領域のレーダー画像の構成の各々を再構成するステップ;
- 1つ又は複数の病変を構成する可能性のある1つ又は複数の関心領域が存在する場合には、その1つ又は複数の関心領域が特定される形態学的画像を得るように、各再構成されたレーダー画像の形態学的処理を行うステップ;
- 関心領域の形態学的検証を行うために、得られた異なる形態学的画像上の各関心領域の持続性を評価するステップ;
を含む。
【0009】
本発明は、有利に、個別に又はそれらのあり得る技術的組み合わせのいずれかにおいて採用される、以下の特徴によって補われる:
- 形態学的処理は、画像の1つ又は複数の画素領域の固体性(solidity)を決定することに本質的な点があり、関連する固体性が閾値より大きい場合に、関心領域が特定される、
- 信号が横切る媒体の特徴パラメータ(pcfib)のAi>1の値の少なくともN=2セット、好ましくは少なくともN=3セット(1≦i≦N)が考慮される、
- セットは、変動範囲の観点及び/又は値の観点から全体的又は部分的に重複する、
- 持続性の評価は、形態学的画像上の関心領域の存在の割合を決定することに本質的な点があり、関心領域は、閾値より大きい割合に対して検証される、
- プローブのアレイは、画像化されることになる領域の周囲に配置されるK>1プローブを含み、当該アレイは、画像化されることになる領域の周囲の垂直位置において移動可能であり、各構成は、各々がM>1プローブ(M<K)で構成されるプローブの角度セクタであり、各構成は、別の構成に対して少なくとも1つのプローブによって角度的にオフセットされ;各セクタに対して、プローブの各々は、構成に対して取得される信号を生成するように交互に放射状態であり、基本のレーダー画像が、特徴パラメータの値のセットごとに各角度セクタに対して決定される。
【0010】
本発明は、第2の態様に従って、本発明の第1の態様による方法が少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときにこの方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムプロダクトを提案する。
【0011】
本発明は、第3の態様に従って、本発明の第1の態様による方法を実施するように構成された処理ユニットを含む医用画像処理装置を提案する。
【0012】
いくつかの構成の組み合わせ、及び、仮定としての、横切られる媒体のいくつかの特徴の値の使用は、画像化されることになる領域の事前に知られていない誘電特性の不均一性を管理することを可能にしている。
【0013】
さらに、Nセットの中でも少なくともB>1セット(B/N≦1)について形態学的に特定された関心領域の持続性は、関心領域の検証、すなわち、それが、画像化された領域に存在する物理的対象/病変に対応する強い確率対アーチファクトを意味する。
【0014】
相補的な様式で、使用される固体性の基準は、関心領域の有利な形態学的特定を可能にする形状記述子である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の他の特徴、目的、及び利点が、以下の説明から明らかになり、この説明は、純粋に例示として与えられており、限定的なものではなく、添付の図面に関して読まれるべきである。
【0016】
図全てにおいて、類似の要素は同一の参照符号を有している。
【
図1】本発明の一実施形態によるマイクロ波医用画像処理システムを例示した概略図である。
【
図2】本発明によるマイクロ波レーダー画像の形態学的処理を行う方法のステップを例示した図である。
【
図3】本発明による方法の間に得られるマイクロ波レーダー画像を例示した図である。
【
図4】4a、4b、4c、4d、4eは、本発明によるマイクロ波レーダー画像の形態学的処理を行う方法によって得られる患者の乳房の形態学的画像を例示した図である。
【
図5】5a、5b、5c、5dは、本発明によるマイクロ波レーダー画像の形態学的処理を行う方法によって得られる患者の乳房の形態学的画像を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、患者12が横たわる診察台11を含むマイクロ波医用画像処理装置1を例示している。特に、患者12は腹臥位で横たわっている。診察台11は、好ましくは円形の開口部13を含み、生体適合性遷移液体(a biocompatible transition liquid)で満たされたタンク15に患者の乳房14が浸漬するのを可能にしており、生体適合性遷移液体の誘電特性は、乳房の内部への電磁波の透過を改善するために最適化されている。
【0018】
マイクロ波範囲の電磁波放射/受信プローブ161(以下、ダッシュによって与えられる)のアレイ16がタンク15の周囲に配置され、観察される媒体を放射状態で照射し、画像化されることになるその場から反射された信号を受信状態で受信することを可能にしている。プローブ161は、有利に、タンクの周囲に均一に分布され、好ましくは、
図1において例示されているようにタンクを取り囲むよう環状に分布される。有利に、プローブは、0.5~6GHz周波数帯域の信号を放射するように構成される。
【0019】
より一般的には、画像処理システムは、マルチスタティック様式で動作し、放射状態のいくつかのプローブ及び受信状態のいくつかのプローブを使用することによって、及び、画像化されることになる媒体の周囲の様々な構成で、画像化されることになる媒体を照射することを可能にしている。プローブは、相補的な様式で、同時に放射及び受信を行うように構成することができる。
【0020】
各マルチスタティック取得において、画像化されることになる媒体の全て又は一部が、放射状態で動作する予め選択されたプローブによって連続的に照射される。アレイのうち放射状態のプローブ及びその数は、画像化されることになる乳房の領域に従って選ばれる。放射するプローブごとに、信号が、受信状態で動作する予め選択されたプローブによって受信される。アレイのうち受信状態のプローブ及びその数は、画像化されることになる乳房の領域に従って選ばれる。次に、各マルチスタティック取得は、決定された構成におけるプローブによる一連の信号の放射/受信に対応すると考えられる。
【0021】
従って、構成とは、乳房の全て又は一部のマルチスタティック取得を行うことを可能にする放射プローブのセットを定めること及び受信プローブのセットを定めることを意味し、これらのプローブは、乳房の周囲の空間において特定の方法で配置されている。
【0022】
1つの構成から別の構成に切り替えるため、及び、様々なマルチスタティック取得を制御するために、当該システムは、監視及び処理ユニット18(例えば、プロセッサ及び/又は計算器)に接続されたプローブのアレイを制御するためのユニット17を含む。そのような監視及び処理ユニット18は、アレイを制御し、取得を実行し、取得したデータの格納を確実にし、レーダー画像処理動作を行い、さらに、以下に記載される形態学的画像処理方法を実施するように構成される。格納ユニット19は、取得したマルチスタティックデータの全てと、画像処理ステップに使用することができるか又は画像処理によって生成することができる特定の数のデータとを格納することを可能にしている。さらに、表示ユニット20が、得られた画像を表示及び可視化することを可能にしている。監視及び処理ユニット18、格納ユニット19、及び表示ユニット20は、画像処理装置に直接組み込むことができるか、又は、物理的に動かすことができる。画像処理動作は、事後に(オフラインで)実行することができる。
【0023】
理解されるように、乳房全体を画像化するために、放射プローブ及び受信プローブのいくつかの連続した構成が定められる。放射プローブ及び受信プローブのこれらの構成は、画像化されることになる乳房の様々な領域をカバーし、画像化されることになる乳房全体を究極的には包含するように選ばれる。
【0024】
各構成に対して、放射プローブと受信プローブとの間の透過係数のマルチスタティック取得は、レーダー画像処理後に、基本のレーダー画像を得ることを可能にしている。
【0025】
得られた基本画像の全てが、画像化される領域、ここでは乳房の2D又は3Dのレーダー画像を再構成することを可能にしている。2D又は3Dのレーダー画像の再構成を可能にするマルチスタティック放射/受信信号のレーダー処理については、例えば、以下の文献:
- A.J. Devaney, Time reversal imaging of obscured targets from multistatic data, IEEE Trans. Antennas Propag. (2005). doi:10.1109/TAP.2005.846723;
- Marengo, E.A.; Gruber, F.K.; Simonetti, F. Time-reversal MUSIC imaging of extended targets. IEEE Trans. Image Process. 2007, 16, 1967-1984. doi:10.1109/TIP.2007.899193;
- Hossain, M.D.; Mohan, A.S. Cancer Detection in Highly Dense Breasts Using Coherently Focused Time-Reversal Microwave Imaging. IEEE Trans. Comput. Imaging 2017, 3, 928-939. doi:10.1109/TCI.2017.2737947;
- A. Fasoula, B.M. Moloney, L. Duchesne, J.D.G. Cano, B.L. Oliveira, J. Bernard, M.J. Kerin, Super-resolution radar imaging for breast cancer detection with microwaves: the integrated information selection criteria, in: 41st Annu. Int. Conf. IEEE Eng. Med. Biol. Soc., 2019
を参照することが可能である。
【0026】
得られた2D又は3Dのレーダー画像は、有利に、以下に記載される処理方法の一部として使用される。
【0027】
導入部分で述べたように、各基本のレーダー画像の決定は、理論的には、各放射プローブと各受信プローブとの間を延びる経路に沿った乳房の誘電性媒体(すなわち、横切られる媒体)を事前に知ることを必要とする。しかし、これは入手困難である。
【0028】
記載されるように、本発明は、誘電率の観点から、乳房(又は、より一般的には、画像化される領域)において電磁波が横切る媒体の平均構成に関する仮定に対応するpcfibパラメータを使用する。このpcfibパラメータは、乳房の線維腺組織と脂肪組織との混合物の割合に対応している。例えば、pcfib=30%は、線維腺組織30%及び脂肪組織70%を有する媒体に対応する。次に、乳房組織の誘電特性は、線維腺組織及び脂肪組織の誘電特性の加重平均(pcfibによって重み付け)として定義される。乳房の線維腺組織及び脂肪組織の誘電率の値の例については、例えば、以下の文献:
- T. Sugitani, S.I. Kubota, S.I. Kuroki, K. Sogo, K. Arihiro, M. Okada, T. Kadoya, M. Hide, M. Oda, T. Kikkawa, Complex permittivities of breast tumor tissues obtained from cancer surgeries, Appl. Phys. Lett. (2014). doi:10.1063/1.4885087;
- M. Lazebnik, L. McCartney, D. Popovic, C.B. Watkins, M.J. Lindstrom, J. Harter, S. Sewall, A. Magliocco, J.H. Booske, M. Okoniewski, S.C. Hagness, A large-scale study of the ultrawideband microwave dielectric properties of normal breast tissue obtained from reduction surgeries, Phys. Med. Biol. (2007). doi:10.1088/0031-9155/52/10/001
を参照することが可能である。
【0029】
マイクロ波レーダー画像の形態学的処理を行う方法が、
図2に関連して以下に記載される。
【0030】
第一に、1つ又は複数のP>1構成のプローブのアレイ(ステップE0)が、画像化されることになる乳房全体を包含すること、及び、その後に乳房の3Dレーダー画像を再構成することができるように定められる。
【0031】
次に、各構成に対して、放射プローブと受信プローブとの間で測定される透過係数のマルチスタティック取得が実行される(ステップE1)。次に、複数のマルチスタティック取得がある(P>1のマルチスタティック取得)。
【0032】
次に、構成ごとに取得した信号を処理して、構成の各々に対する基本のマイクロ波レーダー画像が得られる(ステップE2)。
【0033】
特に、これらの信号を処理するためには、いくつかのセット(N>1セット)のpcfibパラメータのAi値(Ai>1の値、1≦i≦N)が考慮される。次に、構成ごとにpcfibパラメータの
【0034】
【数2】
の値がある。従って、各マルチスタティック取得の信号から、
【0035】
【数3】
の基本のマイクロ波レーダー画像が得られ、各々がpcfibパラメータの1つの値に対して得られている。ここでのアイデアは、電磁波が横切る媒体に関する様々な仮定に従って基本画像を得ることである。
【0036】
有利に、pcfibパラメータの値のセットは、変動の観点及び/又は値の観点から全体的又は部分的に重複する。
【0037】
例えば、値10%、20%を含む1つのセットと、値5%、15%、25%を含む別のセットとを有することが可能である。この例では、値が10%から20%の間で変わる1つのセットと、値が5%から25%の間で変わる別のセットとがある。従って、これら2つのセットは、10%から20%の共通の変動範囲を有している。
【0038】
別の例では、値10%、20%を含む1つのセットと、値20%、25%、30%を含む別のセットとを有することが可能である。この例では、セットは、1つの値20%を共通に有している。
【0039】
さらに別の例では、値10%、20%、25%を含む1つのセットと、値5%、10%、30%を含む別のセットとを有することが可能である。この例では、これら2つのセットは、10%から25%の共通の変動範囲と、1つの共通の値10%とを有している。
【0040】
pcfibパラメータの値の少なくとも2つのセットが考慮され、そのうち1つのセットは、もう1つのセットの変動範囲よりも広いpcfibパラメータの値の変動範囲を有し得る。ここで、広い及び狭いという用語は、変動範囲を比較することによって理解される相対的な用語である。ここでのアイデアは、値のセット間に重複を有することである。
【0041】
様々なセットに対するpcfibパラメータの変動範囲の選択は、乳房の組成及び密度に関する既存の変動性に関連して行われる。
【0042】
有利に、広い変動範囲は、関心領域のより完全な表現を含む画像につながり、狭い変動範囲は、潜在的に、検出可能な病変の部分的な表現につながる。
【0043】
例えば、乳房の画像処理に関連して、N=5セットの変動を選ぶことができる:
- 変動範囲が狭い3つのセット:
- 10%から20%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:10%、15%、20%
- 30%から40%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:30%、35%、40%
- 50%から60%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:50%、55%、60%
- 変動範囲が広い2つのセット:
- 20%から50%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%
- 10%から60%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%。
【0044】
各構成に対して、基本のマイクロ波レーダー画像がセットごとに選択され(ステップE3)、セットのパラメータ(pcfib)の値の1つに対応し;従って、各構成に対して、セットごとに1つの基本画像が選択される。そのような選択された画像は、潜在的に病変である物理的対象に対応する関心領域を有している可能性があり:そのような選択された画像は、潜在的に病変である物理的対象に対応する関心領域を有している可能性がある。前の例では、構成ごとに5つの基本画像(セットごとに1つの基本画像)があり、これらは、再構成に使用されることになる。
【0045】
そのような選択は、特に、例えば以下の文献:
- S. Pertuz, D. Puig, M.A. Garcia, Analysis of focus measure operators for shape-from-focus, Pattern Recognit. (2013). Doi :10.1016/j.patcog.2012.11.011
- O’loughlin, D.; Krewer, F.; Glavin, M.; Jones, E.; O’halloran, M. Focal quality metrics for the objective evaluation of confocal microwave images. Int. J. Microw. Wirel. Technol. 2017, 9, 1365-1372. Doi :10.1017/S1759078717000642
において記載されている基準等、画像フォーカシング基準(画像フォーカシングメトリック)の少なくとも1つを使用する(いくつかの基準の組み合わせを使用することができる)ことに本質的な点がある。
【0046】
各選択された画像は、1つ又は複数の関心領域を有している場合があり、これらの選択は、少なくとも1つの画像フォーカシング基準に従って行われる。実際には、選択は、1つ又は複数のフォーカシング基準によって行われる。例えば、選ばれた基準に対して、これは、例えば、この基準に対する他のもの全ての中から最小メトリック値を与える画像を選択することを含む。
【0047】
ある構成から別の構成へ、同じ所与のセットに対する基本画像の選択は、このセットに属するpcfibパラメータの異なる値で行われ得ることに留意されたい。
【0048】
様々な構成に対して得られた基本画像から、画像化される領域の2D又は3Dのレーダー画像が、セットの各々に対して再構成される(ステップE4)。従って、pcfibの値のセットごとに1つの再構成されたレーダー画像がある。
【0049】
このようにして再構成される画像化される領域の各マイクロ波レーダー画像では、関心領域が存在する場合は、それらを検出するように形態学的処理が適用される(ステップE5)。得られた結果は、ゼロの又は1つ以上の特定された関心領域を有する、マイクロ波の形態学的画像と呼ばれる画像である。そのような形態学的処理は、特に、閾値処理法を使用することによって画像において関係する対象を特定すること、及び、形態学的特徴のセット、特に、関係する対象の体積サイズ、関係する対象の固体性のレベル、関係する対象の内側の強度レベル、関係する対象の内側の強度と、同じ画像において潜在的に特定された他の関係する対象の内側の強度との間のコントラストレベル等に対応する関係する対象を関心領域として保持することに本質的な点がある。この段階では、いくつかの乳房の形態学的画像があり、各形態学的画像は、pcfibの値のセットごとに得られ;各形態学的画像は、ゼロの又は1つ以上の特定された関心領域を有している。
【0050】
好ましくは、形態学的処理は、固体性基準に基づく。固体性は、対象の体積と対象の凸包の体積との間の比として計算される。一般に、関心領域の固体性が増加するほど、この対象領域はより「充填」され(穴のない関心領域)、明確で凸状の輪郭をより有するようになり、従って、腫瘤に対応しなければならない確率が有意に高くなる。乳房画像処理の場合、この固体性の基準は、乳房腫瘤と局所的非対称性(明確な凸状の外縁のない正常な乳房組織の「島」)との間の差別化を支持することを意図している可能性がある。固体の乳房腫瘤の明確で凸状の輪郭のこの概念は、例えば、以下の文献:
- T.F. de Brito Silva, A.C. de Paiva, A.C. Silva, G. Braz Junior, J.D.S. de Almeida, Classification of breast masses in mammograms using geometric and topological feature maps and shape distribution, Res. Biomed. Eng. (2020). doi:10.1007/s42600-020-00063-x
- N. Safdarian, M. Hedyezadeh, Detection and Classification of Breast Cancer in Mammography Images Using Pattern Recognition Methods, Multidiscip. Cancer Investig. (2019). doi:10.30699/acadpub.mci.3.4.13
において説明されている。
【0051】
実際には、関心領域の固体性は、この関心領域が所与のセットの形態学的画像において特定され得るように、所与のレベルを超えなければならない。
【0052】
次に、以前に特定された各関心領域の持続性が、様々な形態学的画像において評価される。目的は、電磁波が横切る媒体にわたるいくつかの仮定に対して持続する関心領域を形態学的に検証することである(ステップE6)。持続性を評価することは、いくつかの形態学的画像にわたって、同じ領域内に3Dで位置する関心領域が存在するということを意味する。ここで、形態学的処理によって特定された関心領域が、同じ領域においていくつかの画像にわたって存在するかどうかが評価されることになる。そのような評価は、特に、例えば、空間クラスタリング等の基準を使用して、検出された関心領域を共に関連付けることに本質的な点がある。
【0053】
従って、持続性は、関心領域を形態学的に検証することを可能にし、すなわち、関心領域が、決定された形態学的画像の数の割合で存在する場合、物理的対象とのそれらの関連付けを検証することを可能にしている。
【0054】
示されているように、有利に、少なくとも2つのセットのpcfib値、好ましくは少なくとも3つのセットのpcfib値が考慮される。これは、持続性評価ステップを実施するために重要である。実際に、関心領域は、いくつかの形態学的画像にわたって持続する場合に有効であるとして考慮されることになる。2つのセットの場合、関心領域が有効であるためには、両方の画像に存在しなければならない。3つのセットの場合、関心領域が有効であるためには、3つの画像のうち2つの画像又は3つの画像のうち3つの画像に存在しなければならない。
【0055】
一般的に言えば、関心領域は、少なくとも、求められる領域のタイプに従って定められなければならない形態学的画像の割合で存在する場合に、持続性であると考慮されることになる。
【0056】
このように、持続性によって検証されたこれらの関心領域は、例えばアーチファクトではなく、本物の病変又は腫瘍に対応する確率が高い。この持続性は、検出レベルにおける信頼度と関連付けることができる。
【0057】
相補的な様式で、画像処理システムは、誘電性材料で作られた円筒の周囲に配置されたK>1測定プローブの水平の円形アレイを含むと考えられる。円形アレイは、垂直軸に沿って動く可能性がある。検査中の臓器(乳房)は円筒内に配置され、従って、このアレイによって取り囲まれる。乳房が配置される円筒内に含まれる誘電転移媒体は、乳房の内側のプローブによって放射される電磁波の透過を最適化することを可能にしている。アレイの垂直位置は既定されており、各位置の間に一定又は可変の距離間隔があり、乳房の垂直範囲をカバーしている。
【0058】
プローブのアレイの垂直位置の各々に対して、マルチスタティック測定が実行される。
【0059】
取得ステップの実施の一例として、それぞれがM>1プローブのプローブのアレイ(M<K)で構成されるL>1角度セクタが考慮される。例えば、M=6プローブのL=18角度セクタで、この場合、各セクタは、K=18プローブのアレイの周辺に沿ってR=1プローブによって互いに相対的に角度的にオフセットされる。
【0060】
M=6プローブの角度セクタの各々に対して、プローブの各々が交互に放射状態であり、放射プローブごとに、角度セクタの他のプローブが、特に乳房において遭遇した障害物からのエコーに対応する信号を連続的に受信する。考慮される角度セクタの放射プローブと受信プローブとの間で測定された透過係数全てが、マルチスタティック取得を形成する。このマルチスタティック取得は、M=6プローブのL=18角度セクタのセットに対して繰り返される。次に、垂直アレイが、垂直軸に沿ってある間隔で動かされ、マルチスタティック測定が、異なる角度セクタに対して再度繰り返される。
【0061】
次に、アレイの構成は、所与の垂直位置における角度セクタに対応する。角度セクタごとの取得は、各垂直位置で各角度セクタにおいてpcfib値についていくつかの仮定を行うことによって、乳房の周囲を回ることを可能にしている。これは、異なる観察位置に従って変化し得る誘電特性に関して乳房の可変の不均一な構造を最適に考慮すること、及び、均一ではない乳房病変の角度応答を明らかにすることを可能にしている。
【0062】
このように、pcfibパラメータに関する異なる仮定と組み合わせて、画像化されることになる領域のセクタ化が利用されて、関心領域の検出が改善される。
【0063】
本発明により得られる画像のタイプ
図3は、10%≦pcfib≦60%等のpcfib値のセットに対する再構成されたマイクロ波レーダー画像を例示している。このレーダー画像は、乳房の冠状面で表されている。このレーダー画像では、いくつかの画素領域が、強度の観点から現れている。
【0064】
形態学的処理の目的は、疑わしい領域に対応する可能性のある関心領域を特定するために、このタイプのレーダー画像を処理することである。
【0065】
図4a、4b、4c、4d、及び4eは、5つのセットのpcfibパラメータの値に対する再構成されたマイクロ波レーダー画像の形態学的処理後に得られた、患者の乳房のいくつかの形態学的画像を例示している。これらの形態学的画像は、乳房の冠状面で表されている。この例では、形態学的画像は、以下の5つのセットのpcfibパラメータの値:
-
図4a: 10%≦pcfib≦60%
-
図4b: 20%≦pcfib≦50%
-
図4c: 10%≦pcfib≦20%
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図4d: 30%≦pcfib≦40%
-
図4e: 50%≦pcfib≦60%
に対応している。
【0066】
図3におけるレーダー画像に照らして、形態学的処理は、1つの関心領域のみを特定することを可能にしている。この関心領域は、5つの形態学的画像にわたって持続しており、従って、有効である。
【0067】
各形態学的画像では、特定された関心領域が異なる輪郭を有していることが観察され、これは、検出された対象のマイクロ波レーダー特性が、考慮されたpcfib値のセットに応じて変わるということを確かめている。
【0068】
図5a、5b、5c、及び5dは、ここでも5つセットのpcfibパラメータの値に対する再構成されたマイクロ波レーダー画像の形態学的処理後に得られた別の患者の乳房の形態学的画像を例示している。これら5つのセットの値は、前の図(前の患者)の場合に考慮された値と同一である。この例では、形態学的処理は、5つの形態学的画像のうち4つにわたって持続する単一の関心領域を特定することを可能にした。従って、この関心領域は有効である。10%≦pcfib≦20%の値のセットに対応する第5の形態学的画像は、持続的な関心領域がそこに特定されていないため、示されていない。前の例とは異なり、特定された関心領域は、一群の形をしているが、これは、同じままであり、以前に適用された処理動作に従った唯一の関係する対象である。これは、検出された対象のマイクロ波レーダー特性が、考慮されたpcfib値のセットに応じて非常に大きく変わるということを例示している。関心領域は、分布した非常に不均一な形状及び非常に不均一なテクスチャを有した病変に対応している。
【国際調査報告】