IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルマルテック・ソシエテ・アノニムの特許一覧

<>
  • 特表-抗菌性を有する包装材料 図1
  • 特表-抗菌性を有する包装材料 図2
  • 特表-抗菌性を有する包装材料 図3
  • 特表-抗菌性を有する包装材料 図4
  • 特表-抗菌性を有する包装材料 図5
  • 特表-抗菌性を有する包装材料 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】抗菌性を有する包装材料
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/42 20060101AFI20240426BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240426BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20240426BHJP
   A01N 65/24 20090101ALI20240426BHJP
   A01N 65/28 20090101ALI20240426BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20240426BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240426BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240426BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B65D65/42 C
A01P3/00
A01N59/16 A
A01N65/24
A01N65/28
A01N31/08
B32B27/18 F
B32B27/26
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568339
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022062242
(87)【国際公開番号】W WO2022234062
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】500140
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519176500
【氏名又は名称】ソルマルテック・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】SOREMARTEC S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ,イゴル
(72)【発明者】
【氏名】ヤネチェク,エマ-ローズ
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4H011
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD02
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA29
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB52
3E086BB55
3E086BB71
3E086BB90
3E086CA01
3E086DA08
4F100AB12B
4F100AB17B
4F100AB17H
4F100AB18B
4F100AB18H
4F100AB24B
4F100AB24H
4F100AB25B
4F100AB25H
4F100AH02B
4F100AH02H
4F100AJ02B
4F100AJ02H
4F100AJ04B
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK12A
4F100AK21B
4F100AK23B
4F100AK25B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK42B
4F100AK51B
4F100AK52B
4F100AK64A
4F100AK74A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA02B
4F100CA12B
4F100CA18B
4F100CA19B
4F100CB03B
4F100DG10A
4F100EH17
4F100EH17A
4F100EH202
4F100EH36
4F100EH36A
4F100EH46B
4F100GB15
4F100HB31B
4F100JC00
4F100JC00A
4F100JK17A
4F100JL013
4F100JL11B
4F100YY00B
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB03
4H011BB18
4H011BB22
4H011DA02
4H011DA12
(57)【要約】
基材とコーティングとを含む抗菌性を有する包装であって、前記コーティングが
-ポリアクリル酸樹脂、ポリビニルブチラールポリウレタン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、セルロース系ポリマーおよびそれらの混合物から成る群から選択される、第1ポリマー成分;
-ポリシロキサン、カルナウバワックス、レシチン、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、植物油、およびそれらの混合物から成る群から選択される、低粘着、スリップまたは剥離剤;
-抗菌剤および
任意選択で、
-消泡剤
-融合助剤
-湿潤剤
-架橋剤
-およびそれらの混合物
から成る群から選択される1つまたは複数の機能剤を含み、前記コーティングが以下を含む包装:
-50~99.49重量%の前記第1ポリマー成分;
-0.5~35重量%の前記低粘着、スリップまたは剥離剤、および
-0.01~15重量%の抗菌剤、
-0~10重量%の機能剤
-重量パーセンテージは、ドライコーティング100重量部を基準とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とコーティングとを含む抗菌性を有する包装であって、前記コーティングが
-ポリアクリル酸樹脂、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、セルロース系ポリマーおよびポリエステルから成る群から選択され、好ましくはポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートおよびポリ乳酸並びにそれらの混合物から成る群から選択される、第1ポリマー成分;
-ポリシロキサン、カルナウバワックス、レシチン、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、植物油、およびそれらの混合物から成る群から選択される、低粘着、スリップまたは剥離剤;
-抗菌剤、および
任意選択で、
-消泡剤
-融合助剤
-湿潤剤
-架橋剤
-およびそれらの混合物
から成る群から選択される1つまたは複数の機能剤を含み、前記コーティングが
-50~99.49重量%の前記第1ポリマー成分;
-0.5~35重量%の前記低粘着、スリップまたは剥離剤、および
-0.01~15重量%の抗菌剤、
-0~10重量%の機能剤
-重量パーセンテージは、ドライコーティング100重量部を基準とする、
を含む包装。
【請求項2】
前記第1ポリマー成分がポリアクリル酸樹脂であり、前記低粘着、スリップまたは剥離剤がポリシロキサン、好ましくはジメチルポリシロキサンとシリコーンワックスの混合物である、請求項1に記載の包装。
【請求項3】
前記第1ポリマー成分がポリビニルブチラールであり、前記低粘着、スリップまたは剥離剤がポリシロキサン、好ましくはジメチルポリシロキサンとシリコーンワックスの混合物である、請求項1に記載の包装。
【請求項4】
前記ポリアクリル酸樹脂が、ポリアクリル酸、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートから選択される、請求項1または2に記載の包装。
【請求項5】
前記ポリシロキサンが、ジメチルポリシロキサン、シリコーンビニルポリマー、シリコーンエマルションおよびシリコーン油、シリコーンワックス並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1、2または3に記載の包装。
【請求項6】
前記ポリエステルが、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリビニルサクシネート、ポリ乳酸およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の包装。
【請求項7】
前記植物油が、大豆油、ヒマシ油、菜種油、ヤシ油、ヒマワリ油、およびココナツ油、並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1のいずれか一項に記載の包装。
【請求項8】
前記抗菌剤が、チタン、銀、金、銅、白金、および亜鉛から成る群から選択される金属、前記金属の酸化物または塩、合金、前記金属酸化物を含むガラスまたは粘土であり、
前記金属が、ナノ粒子の形態であってもよい、またはナノ-、マイクロ-、もしくはマクロ-シリカ、シリコーン、または粘土の担体に担持されていてもよい、請求項1~7のいずれか一項に記載の包装。
【請求項9】
前記抗菌剤が、抗菌ペプチド、シリコーンをベースとする抗菌剤および第4級アンモニアカチオン(Qua Ts)から成る群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の包装。
【請求項10】
前記抗菌剤が、過酸化物、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ドデカン酸、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、チモール、丁子油、桂皮油、グレープフルーツ種子抽出物、ユーカリ抽出物、抗菌性植物抽出物、塩素またはヨウ素の水、エタノール、イソプロパノールまたはそれらの混合物などの溶媒中溶液から成る群から選択される殺菌剤であり、前記殺菌剤が任意選択で熱、水分、または温度感受性ポリマー材料内に封入されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の包装。
【請求項11】
前記コーティングが、前記第1ポリマー成分、前記スリップまたは剥離剤、および前記抗菌剤、並びに水、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、メタノール、ヘキサデカン、ドデカン、およびそれらの混合物から成る群から選択される溶媒を含む溶液または分散液から得られる、請求項1~10のいずれか一項に記載の包装。
【請求項12】
前記コーティングにおいて、
前記第1ポリマー成分がポリエステルであり、
前記スリップまたは剥離剤が、ポリシロキサン、カルナウバワックス、脂肪酸、脂肪酸アミドおよびそれらの混合物から選択され、
前記抗菌剤が、塩化銀、チタン、リン酸銀、シリコーンがテザーされた第4級アミン、チモール、グレープフルーツ種子抽出物、丁子油、桂皮油、またはそれらの混合物から選択され、前記コーティングは任意選択でイソシアネート系架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の包装。
【請求項13】
前記基材が、紙、厚紙、ガラス、金属、または、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、およびバイオプラスチック、好ましくはポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートもしくはポリ乳酸から成る群から選択されるポリマー材料、並びに前記ポリマー材料の混合物から成る群から選択される材料で作られたまたはそれを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の包装。
【請求項14】
前記コーティングが、ドライコーティングを基準として0.01~20g/平方メートルのコーティング坪量を提供するように適用される、請求項1~13のいずれか一項に記載の包装。
【請求項15】
前記基材が、紙、厚紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートおよびバイオプラスチック、好ましくはポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートまたはポリ乳酸、並びに前記ポリマー材料の混合物を含むまたはから成る、単層もしくは多層フィルムまたはシートを含み、任意選択で金属化層を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の包装。
【請求項16】
前記コーティング層が可撓性基材に適用され、前記基材の該コーティング自体に対する、またはトレイもしくは箱などの他の表面に対する密封を可能にするように前記コーティングがヒートシール可能である、請求項1~15のいずれか一項に記載の包装。
【請求項17】
前記包装が、管状形態に密封され、前記コーティングが前記管状形態の内側にある、請求項16に記載の包装。
【請求項18】
前記コーティングが、紙、厚紙またはプラスチック基材に該基材が続いて熱成形される前に適用される、請求項1~17のいずれか一項に記載の包装。
【請求項19】
前記コーティングが、紙、厚紙またはプラスチック基材に該基材が剛性または半剛性の形態に折り畳まれる前に適用される、請求項1~18のいずれか一項に記載の包装。
【請求項20】
前記基材が射出成形または押出成形された包装構造であり、以下を含むポリマーブレンドを射出成形または押出成形することによって得られる、請求項1に記載の包装:
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ABS、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートおよびバイオプラスチック、好ましくはポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートまたはポリ乳酸およびそれらの混合物から成る群から選択されるポリマー、
チタン、銀、金、銅、白金、亜鉛、前記金属の酸化物または塩、合金、前記金属酸化物を含むガラスまたは粘土、抗菌ペプチド、シリコーンをベースとする抗菌剤、第4級アンモニアカチオン(Qua Ts)、過酸化物、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ドデカン酸、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、チモール、丁子油、桂皮油、グレープフルーツ種子抽出物、ユーカリ抽出物、抗菌性植物抽出物、塩素またはヨウ素の溶媒中溶液から成る群から選択される殺菌剤であって、前記殺菌剤が任意選択で熱、水分、または温度感受性ポリマー材料内に封入されている殺菌剤から成る群から選択される抗菌剤、および
シリコーンビニルポリマー、シリコーンエマルション、ジメチルポリシロキサン、シリコーン油、シリコーンワックス、カルナウバワックス、レシチン、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、植物油、好ましくはダイズ油、ナタネ油、ヤシ油、ヒマワリ油、ココナツ油、ヒマシ油、およびそれらの混合物から成る群から選択される低粘着、スリップまたは剥離剤。
【請求項21】
前記基材が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ABS、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、およびバイオプラスチック、好ましくはポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートまたはポリ乳酸、およびこれらの混合物から成る群から選択されるポリマーと、以下を含むマスターバッチとを共に含むポリマーブレンドを射出成形または押出成形することによって得られる、射出成形または押出成形された包装構造である、請求項20に記載の包装:
-ポリウレタン、ポリアクリル酸樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ乳酸、セルロース系ポリマーおよびそれらの混合物から成る群から選択されるポリマー成分、
-シリコーンビニルポリマー、シリコーンエマルション、ジメチルポリシロキサン、シリコーン油、カルナウバワックス、レシチン、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、植物油、好ましくは大豆油、菜種油、ヤシ油、ヒマワリ油、ココナツ油、ヒマシ油、およびそれらの混合物から成る群から選択される低粘着、スリップまたは剥離剤;
-チタン、銀、金、銅、白金、亜鉛、前記金属の酸化物または塩、合金、前記金属酸化物を含むガラスまたは粘土、抗菌ペプチド、シリコーンをベースとする抗菌剤、第4級アンモニアカチオン(Qua Ts)、過酸化物、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ドデカン酸、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、チモール、丁子油、桂皮油、グレープフルーツ種子抽出物、ユーカリ抽出物、抗菌性植物抽出物、塩素またはヨウ素の溶媒中溶液から成る群から選択される殺菌剤であって、前記殺菌剤が、任意選択で、熱、水分、または温度感受性ポリマー材料内に封入されている殺菌剤から成る群から選択される抗菌剤。
【請求項22】
前記基材が押出成形された包装構造であり、前記コーティングが前記基材と共押出成形される、請求項20または21に記載の包装。
【請求項23】
前記コーティングが、剛性または半剛性の包装構造に、抗菌性を付与する前記包装構造が形成された後に適用される、請求項1~21のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項24】
前記基材と前記抗菌性コーティングとの間に配置された、粘土コーティング、印刷インクで印刷された印刷層、バリアコーティング、およびアクリルプライマーから成る群から選択される接着強化層を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の包装。
【請求項25】
-ポリアクリル酸樹脂、ポリビニルブチラールおよびそれらの混合物から成る群から選択される第1ポリマー成分、
-ポリシロキサン、好ましくはシリコーンビニルポリマー、シリコーンエマルション、ジメチルポリシロキサンシリコーン油およびシリコーンワックス、並びにそれらの混合物から成る群から選択される低粘着、スリップまたは剥離剤、および
-抗菌剤
を含む組成物。
【請求項26】
前記抗菌剤が、チタン、銀、金、銅、白金、亜鉛、前記金属の酸化物または塩、合金、前記金属酸化物を含むガラスまたは粘土、抗菌ペプチド、シリコーンをベースとする抗菌剤、第4級アンモニアカチオン(Qua Ts)、過酸化物、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ドデカン酸、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、チモール、丁子油、桂皮油、グレープフルーツ種子抽出物、ユーカリ抽出物、抗菌性植物抽出物、塩素またはヨウ素の溶媒中溶液から成る群から選択される殺菌剤から成る群から選択される抗菌剤であって、前記殺菌剤が、任意選択で、熱、水分、または温度感受性ポリマー材料内に封入されている殺菌剤から成る群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項25または26に記載の組成物を包装用可撓性基材または剛性基材に適用する工程を含む、抗菌性を有する包装の製造方法。
【請求項28】
請求項25または26に記載の組成物を熱可塑性ポリマー材料とブレンドする工程と、前記ブレンドを成形または熱成形して前記包装を提供する工程とを含む、抗菌性を有する包装の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性、特に抗ウイルス特性を有する包装材料に関する。
【0002】
特に本発明は、食品の包装に使用する包装材料に関する。
【背景技術】
【0003】
包装は、その内容物を含み、外部環境から保護するように設計されているので、バリアとして機能する。さらに、顧客へのコミュニケーションの面として重要な役割を果たす。従って、包装はバリアとコミュニケーションの面の両方として考える必要があり、安全性の観点から両方の側面が関連している。
【0004】
表面が管理された製造工程の外部の環境にさらされると、病気の原因となる微生物を含み得るデブリが蓄積される。これには、包装表面に落下し、しばらくの間残留する微生物、より具体的にはウイルスを含む液滴が含まれる可能性がある。表面の消毒を実施すると、微生物の不活性化によって病気感染のリスクを防ぐことができるが、生産施設の外部や、市場や家庭へのサプライチェーンでは、必ずしもこれが可能であるとは限らない。このため、微生物汚染に対抗できる活性表面は顧客にとって魅力的であり、価値を高める。
【0005】
包装表面は、流通チェーン全体を通じて環境にさらされ、ひとたび生産施設を出た後は除菌するのが困難であるため、抗菌活性包装表面が望ましく、人から表面へ、表面から人への疾病伝播のリスクを低減し、結果として、サプライチェーンと最終顧客を保護することになる。包装の寿命を通して包装表面の抗菌活性が持続的かつ強いことは、サプライチェーンに沿って倉庫や店頭を通じて顧客の家に向かって確実に保護するために不可欠である。
【0006】
さらに、包装表面に触れることで感染する可能性のある疾病に対する抗菌効果や活性効果を持続させるために、外部環境への抗菌剤の移行を排除するもしくは最小限に抑えることが望ましい。そのため、製造日から有効期限まで包装が活性を維持できるように特定の配合物を導入する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、包装表面との接触による疾病伝播のリスクを低減するのに適した、抗菌性が改善された包装および/または包装材料を提供することである。
【0008】
特に、本発明の目的は、非こびりつき、低粘着またはスリップ性により、デブリ、液滴がまたはどんな担体が包装表面に付着しても微生物およびウイルスが該表面に付着するのを防止または低減し、同時に、残存する付着微生物を不活性化すること(抗菌性)により微生物感染を抑制する包装を提供することである。本発明は、コールドチェーンを通じて流通される予定の包装にも適用される。なぜなら、冷蔵条件下での保存は、場合によっては病原菌の活性を長引かせる可能性があるからである。
【0009】
従って、本発明の目的は、添付の特許請求の範囲に定義される包装であり、これらは本開示に含まれるものとみなされる。
【0010】
本発明の主題は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、抗菌性、抗ウイルス特性を有し、さらに液滴およびデブリを滑り落とさせるまたは付着しにくくする能力を有する、基材とコーティングとを含む包装であって、前記コーティングが、抗菌性と低粘着性とを兼ね備えている包装である。コーティングの低粘着、スリップまたは剥離性は、包装表面への汚染の蓄積を低減するように作用し、抗菌性挙動は、残留汚染に存在する微生物を不活性化するように作用する。
【0011】
本明細書で使用される用語「包装 packaging(s)」は、可撓性基材を有する包装シートもしくはフィルム、および容器などの剛性基材もしくは自立性基材を有する包装に適用される。
【0012】
本発明は、押出成形および射出成形によって得られる包装、例えば保護トレイ、箱、および半剛性または剛性コンシステンシーと外観を有するものは何でもなど、どんな種類の包装にも適用できる広い分野の活性コーティング表面を提供する。そのうえ、本発明は、配合されたコーティングによるさらに発見された特定の特性の結果、包装フィルム表面や熱成形後の材料にもヒートシール適性を与えることができる。これにより、複合包装や剛性部分に可撓性要素が密封された箱を製造する可能性を開き、販売提案や顧客に向けてより広い分野の活性表面を提供できる。
【0013】
ヒートシール可能なコーティングに関する本発明のいくつかの実施形態では、コーティングを介した密封は、基材にもよるが、70~150℃の温度、25ミリ秒~20秒の時間で起こりうる。好ましくは100℃前後で0.5秒である。コーティングは適用可能な場合、プラスチック基材の密封温度を下げることができ、より低い温度での密封を可能にするまたは、完全な密封に必要な時間の短縮を可能にする。
【0014】
コーティングは、
-ポリアクリル酸樹脂、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(完全に加水分解された(DH>98)または部分的に加水分解された)、セルロース系ポリマー、ポリエステルから成る群から選択され、好ましくはポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートおよびポリ乳酸並びにそれらの混合物から成る群から選択される、第1ポリマー成分;
-ポリシロキサン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン、カルナウバワックス、レシチン、ポリアミド、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、植物油、パラフィンワックスおよびそれらの混合物から成る群から選択される、低粘着、スリップまたは剥離剤;および
-抗菌剤
を含む。
【0015】
配合物はさらに任意選択で以下の機能剤の1つまたは複数を含んでもよい。
-消泡剤
-融合助剤
-湿潤剤
-架橋剤
-およびそれらの混合物
【0016】
コーティング組成物において、第1ポリマー成分は一般に重量の点で主要成分であり、単独でまたは低粘着、スリップまたは剥離剤と組み合わせて、連続相またはマトリックスを形成し、その中に抗菌剤が分散または溶解している。
【0017】
第1ポリマー成分として使用するポリアクリル酸樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートが挙げられる。
【0018】
第1ポリマー成分として使用するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0019】
好ましいポリヒドロキシアルカノエートとしては、乳酸ポリエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシ-ブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-4-ヒドロキシブチレート、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
セルロース系ポリマーとしては、セルロース、ニトロセルロース、キトサン、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロース-2-ヒドロキシエチルメチルエーテル、セルロース-ヘキサデシル2-ヒドロキシエチルエーテル、セルロースアセテートブタノエート、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
第1ポリマー成分が疎水性または親水性であるのに対し、低粘着、スリップまたは剥離剤は一般に疎水性もしくは超疎水性の材料もしくは物質、または両親媒性様の材料もしくは物質である。
【0022】
用語「疎水性」および「超疎水性」は、本明細書で使用する場合、撥水性を意味し、化学およびポリマー技術における通常の意味を有する。特に、材料に関して本明細書で使用する場合、用語「疎水性」は、材料が少なくとも90度の水との接触角を有することを意味する。用語「超疎水性」は、150度以上の接触角を有することを意味する。
【0023】
用語両親媒性は、本明細書で使用する場合、疎水性部分と親水性部分の両方を有する物質を意味し、化学およびポリマー技術における通常の意味を有する。
【0024】
好ましいポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、シリコーンビニルポリマー、シリコーンエマルションおよびシリコーン油およびアルキル化シロキサンポリマー(またはシリコーンワックス)並びにそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいのは、ジメチルポリシロキサンおよびシリコーンワックス並びにそれらの混合物である。
【0025】
好ましい植物油としては、大豆油、ヒマシ油、菜種油、ヤシ油、ヒマワリ油、およびココナツ油並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本発明に従う使用に適した抗菌剤には、金属(例えばチタン、銀、金、銅、白金、亜鉛など)、合金、前記金属の酸化物または塩、前記金属酸化物または塩を含むガラスまたは粘土が挙げられる。前記金属は、ナノ粒子の形態であってもよいし、ナノ-、マイクロ-もしくはマクロ-シリカまたはシリコーンをベースとするまたは粘土をベースとする担体に担持されていてもよい。抗菌剤としては、抗菌ペプチド、シリコーンをベースとする抗菌剤および第4級アンモニアカチオン(Qua Ts)も挙げられる。
【0027】
さらに、抗菌剤は殺菌剤の形態をとることもあり、任意選択で熱、水分または温度感受性ポリマー内に封入される。殺菌剤としては、過酸化物、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ドデカン酸、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、チモール、丁子油、桂皮油、グレープフルーツ抽出物、ユーカリ抽出物、抗菌性植物抽出物、塩素またはヨウ素の水、エタノール、イソプロパノール、またはそれらの混合物などの溶媒中溶液を挙げることができる。
【0028】
好ましい抗菌剤は、塩化銀などの銀イオン物質、チタン、リン酸銀、酸化亜鉛、シリコーンがテザーされた第4級アミン、チモール、丁子油、桂皮油、グレープフルーツ種子抽出物、ユーカリ抽出物、または前述のものの混合物を含む。
【0029】
すべての実施形態において、銀イオンは好ましい抗菌剤である。
【0030】
コーティングは、第1ポリマー成分、低粘着成分、抗菌剤、および適切な場合溶剤を含む、溶液、分散液、懸濁液、または融液として配合される。適当な溶媒としては、水、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、メタノール、ヘキサデカン、ドデカン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
コーティング溶液、分散液またはスラリーは、0.5~70重量%の乾燥含量を有していてもよく、10~25重量%、より好ましくは約15重量%の乾燥含量が好ましい。
【0032】
コーティング溶液または分散液中の抗菌成分の添加量は、最終配合物の乾燥含量の0.001%~60重量%、好ましく0.01~15重量%であり得る。
【0033】
コーティングおよび乾燥プロセスの後、残余コーティングの溶媒保持率は、使用する溶剤と基材の組み合わせに関係なく、好ましくは15g/平方メートル未満である必要がある。
【0034】
本発明の適当なコーティング方法としては、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、デジタル印刷、および押し出しコーティングがある。第1ポリマー成分、抗菌剤、低粘着、スリップまたは剥離成分を組み合わせて押し出すおよび/または射出することもできる。
【0035】
輪転グラビア印刷の場合、シリンダーは、以下の範囲のコーティング重量(乾燥坪量)が達成されるように彫刻しておく必要がある:
0.1~20グラム/平方メートル。
【0036】
輪転グラビア印刷用シリンダーは、ヘリオ彫刻、電気彫刻、レーザーなどのような、あらゆる種類の技術で彫刻できる。
【0037】
フレキソ印刷の場合、アニロックス彫刻は、フレキソ印刷中の途切れを防ぐために、連続的な係合技術を考慮して活用される。
【0038】
抗菌性を提供するコーティングは、1パスで適用することも、数回のパスで適用することもできる。
【0039】
本発明のコーティングは、包装材料基材の表面に直接適用してもよく、またはインク、耐湿度用もしくは耐酸化用バリアコーティング、シーリングラッカー、剥離ラッカー、低粘着もしくは食品接触ラッカーの上に、またはそれらと組み合わせて適用でき、特性とさまざまな包装層序の組み合わせが可能になる。
【0040】
好ましい実施形態では、包装は、基材と抗菌性コーティングとの間に配置された1つまたは複数の接着強化層を含む。接着強化層は、コーティングを受ける表面を整え、機能性の向上をもたらす。これらの接着強化層はコーティングの基材に対する密着性を向上させることによって作用し、コーティングを表面にとどめ、層間剥離、摩耗または基材への吸収によってコーティングが除去されるのを防ぐ。コーティングを表面に維持する効果によってコーティング特性が包装のサプライチェーンに沿ってより長い時間維持されるため、機能性の向上につながる。さらに、包装の表面にはより多くのコーティングが利用できるため、より少ない量のコーティングでも同じ性能を達成できる。
【0041】
接着強化層としては、印刷インクで印刷された印刷層、粘土コーティング、バリアコーティング、プライマー層もしくはコーティングが挙げられる。
【0042】
インクやプライマーは基材の表面エネルギーを変化させ、コーティング密着性を高めることができる。粘土やその他のバリアコーティングも基材の表面エネルギーを変化させ、さらに基材の空隙率を低下させることができるため、適用量を増やすことなく包装材の表面でのコーティングの利用可能性を高めることができる。
【0043】
印刷プロセスの間、1つの層が完全に乾燥および/または硬化しないうちに次の層が重ねられることがよくある。つまり、構造が完全に組み立てられると、この構造の層間のさまざまな化学的および物理的相互作用と共に、さらなる乾燥/硬化が起こる。この硬化は一時的な状態であり、使用されるプライマー、インク、ワニスによって24時間~72時間で完了すると考えることができる。この硬化と上記相互作用は、ひとたびシステムが組み立てられると、上述の接着性の向上に加えて、コーティング層の活性をさらに高めることがわかった。
【0044】
適当なプライマーとしては、好ましくはイソシアネートを添加し場合によっては印刷インクで印刷した層と組み合わせる、アクリルワニスが挙げられる。
【0045】
コーティング組成物において、硬化および/または乾燥後、第1ポリマー成分、低粘着、スリップまたは剥離剤および抗菌剤の重量は、好ましくは疎水性表面を得るような量である。第1ポリマー成分自体が疎水性でない場合、低粘着、スリップまたは剥離剤は、疎水性表面を提供するために、コーティングの表面に十分に高い濃度で存在しなければならない。典型的には、低粘着、スリップまたは剥離剤によって達成され、これは乾燥または硬化の過程で塗膜の表面に移行するため、コーティングバルクと比較してこの物質の濃度が高められ、疎水性の表面になる。従って、疎水性表面を提供するには、微量成分の低粘着、スリップまたは剥離剤で十分である。
【0046】
一般に、乾燥時、硬化後および転換プロセス後のコーティングは
-50~99.49重量%の第1ポリマー成分、好ましくは70~99.49重量%
-0.5~35重量%の低粘着、スリップまたは剥離成分、好ましくは1%から10%;および
-0.01~15重量%の抗菌剤、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.01~2重量%
を含み、これらの重量パーセンテージはドライコーティング100重量部を基準とし、パーセンテージの合計は100%になる。
【0047】
適当な基材材料は、紙、厚紙、ガラス、金属および、特にポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック材料、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリ乳酸(PLA)などのバイオプラスチックを含む。
【0048】
一実施形態では、基材は、上記の材料でできた、または上記の材料を含むフィルムまたはシートを含み、こうしたフィルムまたはシートは金属コーティングを有する。包装基材には、上記のフィルムやシートの多層ラミネートや、紙にラミネート加工を施したまたはコーティングを施したポリマー層を含むラミネートも含まれる。前記フィルムまたはシートは、複数の環境において堆肥化可能および/または生分解可能であってもなくてもよい。
【0049】
フィルムまたはシートの形態の基材は、ヒートシール可能なコーティングを有していてもよい。ヒートシール可能なコーティングを有する可撓性基材の場合、コーティングが施された基材は、トレイまたは箱などの他の表面に対して密封されてもよく、または、例えば管状に折り畳まれて、その外側または内部に抗菌性コーティングを有する包装を得ることができる。
フィルムまたはシートの形態の前記基材は、熱成形可能であってもよく、抗菌性コーティングを熱成形前に基材に適用して成形された包装構造を得ることができる。
【0050】
前に述べたように、本明細書で使用される用語「包装」には、基材がガラス、金属、プラスチック、紙もしくは厚紙の剛性または半剛性容器、箱またはカートンなどの成形構造である包装も含まれる。こうした材料は、射出成形、熱成形、折り畳み、または他の適当な成形技術によって形成できる。
【0051】
熱成形されたおよび折り畳まれた硬質または半硬質基材の場合、平坦な間にコーティングを基材に印刷または噴霧できる。コーティングの抗菌活性は、その後折り畳み加工もしくは熱成形加工中も維持される、またはこのプロセスによって活性化されるので、剛性または半剛性構造に抗菌活性を付与する。このプロセスに適した基材としては、紙および厚紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ABS、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエートがある。
【0052】
下記のように、第1ポリマー成分、抗菌剤、および低粘着性、スリップまたは剥離成分を含むコーティング組成物は、押出す、共押出しする、および射出することもでき、熱処理後に抗菌性が維持され、剛性または半剛性の抗菌包装が得られる。
【0053】
前記第1ポリマー成分、抗菌成分および低粘着、スリップまたは剥離剤を含むコーティング組成物と組み合わせて射出成形するのに適したポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ABS、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエートが挙げられる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、包装は、
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ABS、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートおよびバイオプラスチック、好ましくはポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートまたはポリ乳酸、およびそれらの混合物から成る群から選択されるポリマー、並びに先に定義したとおり抗菌剤および低粘着、スリップまたは剥離剤、並びに先に定義したとおり任意選択で前記第1ポリマー成分を含むコーティング組成物の成分を含むポリマーブレンドを射出成形または押出成形することによって得られる射出成形または押出成形された包装構造である基材を含む。
【0055】
抗菌剤、低粘着、スリップまたは剥離剤、および任意選択で前記第1ポリマー成分を含むコーティング組成物の成分は、前述の段落で言及した射出成形用の適当なポリマーと混ぜ合わせて直接押出すもしくは射出することができる、またはそれらをキャリア樹脂と混ぜ合わせてマスターバッチを形成し、後でこれを前記適当なポリマーと射出するもしくは押出すことができる。
【0056】
好ましい実施形態では、マスターバッチは射出成形ポリマー中に0.1~10重量%で添加する必要があり、このマスターバッチは以下を含む:
-45~97重量%のキャリアポリマー(射出成形樹脂);好ましくは80~97%
-1~30重量%の第1ポリマー成分
-1~5重量%の低粘着、スリップまたは剥離剤、好ましくは1~3%;および
-1~20重量%の抗菌剤、好ましくは1~10%
【0057】
配合物はさらに
-核剤並びに
-界面活性剤および安定剤
を含むことができる。
【0058】
マスターバッチを使用せずに材料を混ぜ合わせる場合、以下が好ましい一実施形態である:
-73重量%~99.399重量%の射出成形ポリマー、
-0.5重量%~20重量%の前記第1ポリマー成分、
-0.1重量%~2重量%の低粘着、スリップまたは剥離剤、好ましくは1.5重量%未満;および
-0.001重量%~5重量%の抗菌剤、好ましくは0.1%~1%。
【0059】
基材の選択次第で、前述したように、コーティングは未処理の包装表面に直接、または例えばコロナ処理、プライマー、インクなどにより前もって処理された表面に適用できる。コーティングの適用後、存在する場合コーティングから溶媒を除去し、物理的または化学的な架橋を可能にする硬化が生じる必要がある。コーティングの挙動を安定させるために、長時間の高温での硬化が必要な場合がある。
【0060】
本発明によれば、上記の低粘着、スリップまたは剥離成分を含むコーティングを使用することにより、水滴やその他のデブリの付着が減少した包装表面が得られ、ひいては微生物の蓄積や滞留時間が減少する。これはコーティングの抗菌性と共に作用し、抗菌性の向上と抗菌剤の添加量の減少につながる。抗菌性と剥離またはスリップ性が組み合わさった有益性によって、コーティングが施されたリールの巻き戻しをさらに容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】付属図面は、例として、本発明の包装の好ましい層状構造を示す。
図2】付属図面は、例として、本発明の包装の好ましい層状構造を示す。
図3】付属図面は、例として、本発明の包装の好ましい層状構造を示す。
図4】付属図面は、例として、本発明の包装の好ましい層状構造を示す。
図5】付属図面は、例として、本発明の包装の好ましい層状構造を示す。
図6】付属図面は、例として、本発明の包装の好ましい層状構造を示す。
【0062】
活性コーティング層2は、包装構造の最外層として、任意選択でインク層もしくは印刷層6、またはバリアコーティング層8を介在させて基材4上に適用される。ヒートシール性を提供するのに適したシーラント層またはラッカー層10を、活性コーティング層の向かい側の包装の反対側に適用してもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、活性コーティング層がヒートシール可能であってもよい。金属化層12は、活性コーティング層の向かい側の包装の外表面に適用してもよい。包装は、1つまたは複数の基材層4Aおよび4Bを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
上文で提供されるコーティング層の成分の開示は、列挙されたポリマー成分の各々と、列挙されたスリップまたは剥離剤の各々および/または列挙された抗菌剤の各々との特定の組み合わせの開示として解釈される。
【0064】
輪転グラビア印刷に適したコーティング層を提供し、次いでコーティングが施された表面をヒートシールする好ましい実施形態では、ポリマー成分は好ましくはアクリル、ポリウレタンまたはセルロース系ポリマーである。
【0065】
この実施形態において、好ましい低粘着、スリップまたは剥離剤は、シリコーンビニルポリマーなどのポリシロキサン、シリコーンエマルション、ジメチルポリシロキサン、シリコーン油およびアルキル化シリコーンポリマー(またはシリコーンワックス)、ポリエチレングリコール、ポリエチレン、カルナウバワックス、レシチン、ポリアミド、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、大豆油、菜種油、ヤシ油、ヒマワリ油、ココナツ油およびヒマシ油などの植物油、パラフィンワックス、並びにこれらの混合物から成る群から選択される。
【0066】
本明細書中で先に言及した抗菌剤のいずれかを、上記各ポリマー成分および/またはスリップもしくは剥離剤と組み合わせることができるが、抗菌剤は、好ましくは、塩化銀、チタン、リン酸銀、シリコーンがテザーされた第4級アミン、酸化亜鉛、抗菌性植物抽出物またはそれらの混合物から選択される。これらの実施形態において、コーティング組成物は好ましくは水性溶媒中に配合される。
【0067】
上文で開示されたコーティング組成物の成分の重量の範囲は、続く好ましい実施形態の成分にも適用される。
【0068】
好ましい実施形態はまた、コーティングを有する以下の包装である
A)第1ポリマー成分がアクリルポリマーまたはポリビニルブチラールであり、スリップまたは剥離剤が、以下から選択される:パラフィンワックス、シリコーン含有ポリマー、カルナウバワックスまたは植物由来の油である。抗菌剤が銀イオンであり、好ましくは水性溶媒に配合される。
B)第1ポリマー成分がアクリルまたはポリウレタンポリマーであり、スリップまたは剥離剤が、パラフィンワックス、シリコーン含有ポリマー、カルナウバワックスまたは植物油から選択され、抗菌剤がリン酸銀ガラスであり、該コーティングは好ましくは水性溶媒に配合される。
C)第1ポリマー成分が、アクリルまたはポリウレタンポリマーであり、スリップまたは剥離剤が、パラフィンワックスまたはシリコーン含有ポリマーから選択され、抗菌剤がリン酸銀セラミックであり、好ましくは水性溶媒に配合される。
D)第1ポリマー成分がセルロース系ポリマーであり、スリップまたは剥離剤が、パラフィンワックスもしくはシリコーン含有ポリマー、ココナツ油、カルナウバワックスもしくは植物油、好ましくはココナツ油から選択され、抗菌剤がリン酸銀セラミックであり、好ましくは水性溶媒に配合される。
E)第1ポリマー成分がセルロース系ポリマーであり、スリップまたは剥離剤が、パラフィンワックスもしくはシリコーン含有ポリマー、カルナウバワックス、植物油、好ましくはココナツ油から選択され、抗菌剤がチモール、桂皮油、丁子油またはそれらの混合物であり、好ましくは水性溶媒に配合される。
【0069】
コーティング層が輪転グラビアで印刷するのには適しているが、化学架橋が存在するためにヒートシールには適さないさらに好ましい実施形態は、コーティングの第1ポリマー成分がポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリウレタンまたはセルロース系ポリマーである包装であり、特にコーティングにおいて以下のとおりの包装である:
F)第1ポリマー成分が、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリウレタンまたはセルロース系ポリマーであり、
スリップまたは剥離剤が、パラフィンワックス、シリコーン含有ポリマー、カルナウバワックス、ポリアミドおよびそれらの混合物から選択され、
抗菌剤が、塩化銀、チタン、リン酸銀、シリコーンがテザーされた第4級アミンまたはそれらの混合物から選択され、該コーティング組成物は、好ましくはイソシアネートまたはアルデヒド誘導体をベースとする架橋剤を含む。これらのコーティングは、好ましくは溶媒として酢酸エチルと配合される。
G)第1ポリマー成分がポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリウレタンまたはセルロース系ポリマーであり、
スリップまたは剥離剤がパラフィンワックス、カルナウバワックス、ココナツ油、ポリアミドおよびそれらの混合物から選択され、
抗菌剤が、シリコーンがテザーされた第4級アミン、または塩化銀、チタン、リン酸銀、シリコーンがテザーされた第4級アミン、抗菌性植物抽出物の混合物であり、該コーティング組成物は、好ましくは、イソシアネートまたはアルデヒド誘導体をベースとする架橋剤を含む。これらのコーティングは、好ましくは溶媒として酢酸エチルと配合される。
【実施例
【0070】
以下の実施例では、特に断りのない限りパーセンテージは重量%である。
【0071】
[実施例1]
以下を含むコ-ティングを調製した:
ニトロセルロースをベースとするポリマー(乾燥物質を基準として85%)
シリコーン含有ポリマー(乾燥物質を基準として7%)
銀イオン(乾燥物質を基準として1%)
機能剤(乾燥物質を基準として7%)
酢酸エチル(上記乾燥成分の合計を基準として85%)を使用。
このコーティングをポリプロピレンまたはポリエチレンを基材とするフィルムに輪転グラビア印刷で適用した。コーティング重量は0.5~3g/平方メートル、ライン速度は250m/分で、その後周囲温度で24時間硬化させた。ISO21702:2019に準じて、A型インフルエンザウイルスおよびNL63ヒトコロナウイルスに対して24時間の接触時間で試験したところ、R値が1を超える殺ウイルス活性を示した。
【0072】
[実施例2]
以下を含むコーティングを調製した:
ポリエステル(乾燥物質を基準として91%)
ポリジメチルシロキサン7%、
シリコーンがテザーされた4級アミン0.02%~2%(乾燥含量)
イソシアネート系架橋剤を使用および
溶媒として酢酸エチル(上記乾燥成分の合計に対して40%)を使用。
このコーティングをポリプロピレンまたはポリエチレンを基材とするフィルムに輪転グラビア印刷技術で適用した。コーティング重量は0.5~2.5g/平方メートルで、ライン速度は200m/分であった。イソシアネート架橋後、周囲温度で72時間硬化させた。ISO21702:2019に準じて、NL63ヒトコロナウイルスに対して24時間の接触時間で試験したところ、R値が1を超える殺ウイルス活性を示した。
【0073】
[実施例3]
以下を含むコーティングを調製した:
ポリウレタン(乾燥物質を基準として92%)
カルナウバワックス7%
銀イオン1%
水性溶媒(上記乾燥成分の合計に対して85%)を使用。
このコーティングをポリプロピレンフィルムに輪転グラビア印刷で、1~3g/平方メートルのコーティング重量で適用した。ISO21702:2019に準じて24時間の接触時間でネコカリシウイルスに対して試験したところ、R値が2を超える殺ウイルス活性を示した。
【0074】
[実施例4]
以下を含むコーティングを調製した:
アクリルポリマー(乾燥物質を基準として90~92.9%)
植物油(乾燥物質を基準として7%)
銀イオン(乾燥物質を基準として0.1~3%)
水性溶媒(上記乾燥成分の合計に対して85%)を使用。
このコーティングをポリプロピレンフィルムにグラビア印刷技術を用いて1~2g/平方メートルのコーティング重量で適用した。ISO22196に準じて24時間の接触時間で大腸菌および黄色ブドウ球菌に対して試験したところ、3ログを超える減少を示した。
【0075】
[実施例5]
以下を含むコーティングを調製した:
キトサン(乾燥物質を基準として90~92.9%)
ココナツ油(乾燥物質を基準として7%)
丁子、桂皮およびチモール油の混合物(乾燥物質を基準として0.1~3%)
水性溶媒(上記乾燥成分の合計に対して85%)を使用。
このコーティングをポリプロピレンフィルムに手作業で1~4g/平方メートルのコーティング重量で適用したところ、カビの成育が遅れた。
【0076】
[実施例6]
紙基材(重量60g/m)に粘土コーティングを適用し、該粘土コーティングを次に連続輪転グラビア印刷で1~9色印刷し、その後印刷層上に以下の抗菌性コーティングを適用した:
アクリルポリマー(乾燥物質を基準として90%)
ポリシロキサン(乾燥物質を基準として4%)
無機担体上の銀イオン(乾燥物質を基準として1.4%)
機能剤(乾燥物質を基準として4.6%)
水性溶媒(上記乾燥成分の合計を基準として70%)を使用。
このコーティングを輪転グラビア印刷技術にて1.4~2g/mで適用し、ISO22196に準じて大腸菌と黄色ブドウ球菌に対して24時間の接触時間で試験したところ、2ログを超える細菌の減少を示した。
【0077】
[実施例6a]
基材としてポリプロピレンフィルムを用いて実施例6の手順を繰り返した。抗菌活性に関して、ISO 22196に準ずる実質的に同じ結果が得られた。
【0078】
[実施例7]
アルミニウムフィルムから成る基材を輪転グラビア印刷で7色印刷し、以下の抗菌性コーティングを適用した:
ポリビニルブチラール(乾燥物質を基準として92%)
ポリシロキサン(乾燥物質を基準として4%)
無機担体上の銀イオン(乾燥物質を基準として0.8%)
機能剤(乾燥物質を基準として3.2%)
酢酸エチル溶媒(上記乾燥成分の合計を基準として75%)および架橋剤(上記のコーティング配合物に対して15%)を使用。
このコーティングを輪転グラビア印刷技術にて1.4~2g/mで180m/分で適用し、ISO22196に準じて24時間の接触時間で大腸菌と黄色ブドウ球菌に対して試験したところ、細菌が4ログを超える減少を示し、ISO21702に準ずる24時間の接触時間では、ウイルス価が1ログを超える減少を示した。
【0079】
[実施例8]
ポリプロピレンフィルムから成る基材に、イソシアネートを添加したアクリルワニスから成るプライマー層を0.2~1.5g/mで印刷し、印刷インクを含む印刷層を図のニーズに応じてプライマー層上に適用した。その後以下の抗菌コーティング印刷層上に適用した:
アクリルポリマー(乾燥物質を基準として90%)
脂肪酸(乾燥物質を基準として4%)
固体担体上の銀イオン(乾燥物質を基準として1%)
機能剤(乾燥物質を基準として5%)
水性溶媒(上記乾燥成分の合計に対して70%)を使用。
プライマー層とインクの上に適用したコーティングの硬化はコーティング自体の抗菌活性を高めるように作用することがわかった。
【0080】
[実施例9]
以下を含むコーティングを調製した:
アクリレートポリマー(乾燥物質を基準として90%)
ポリシロキサン/シリコーンワックス(乾燥物質を基準として4%)
無機担体上の銀イオン(乾燥物質を基準として1.4%)
機能剤(乾燥物質を基準として4.6%)
水性溶媒(上記乾燥成分の合計を基準として70%)を使用。
【0081】
[実施例10]
以下を含むコーティングを調製した:
ポリビニルブチラール(乾燥物質を基準として92%)
ポリシロキサン/シリコーンワックス(乾燥物質を基準として4%)
無機担体上の銀イオン(乾燥物質を基準として0.8%)
機能剤(乾燥物質を基準として3.2%)
酢酸エチル溶媒(上記乾燥成分の合計を基準として75%)および架橋剤(上記のコーティング配合物の合計に対して15%)を使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】