(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】乳頭再建インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/12 20060101AFI20240426BHJP
A61L 27/00 20060101ALI20240426BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20240426BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20240426BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20240426BHJP
A61L 27/14 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61F2/12
A61L27/00
A61L27/58
A61L27/50
A61L27/52
A61L27/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569719
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022028313
(87)【国際公開番号】W WO2022240739
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512315555
【氏名又は名称】テファ, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523422554
【氏名又は名称】コーネル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リメム,スカンダー
(72)【発明者】
【氏名】サリブラヒモグル,ケマル
(72)【発明者】
【氏名】スコット,ジェフリー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,サイモン,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】スペクター,ジェイソン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB38
4C081BA16
4C081CA00
4C081DA12
4C081EA13
4C097AA19
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097DD01
4C097DD12
4C097EE17
4C097EE18
4C097EE19
4C097MM03
4C097MM04
(57)【要約】
吸収性3Dプリントインプラントを用いて、再生組織で乳頭を再建し、結果として美的満足感を向上させることができる。インプラントは、円筒形状を含むオープンセル構造のマクロ多孔質ネットワーク(130)を形成するように相互にずらして接合した平行面の細糸から形成される。マクロ多孔質ネットワーク(130)は、外殻(120)又は被覆によって封入するか、又は、少なくとも部分的にヒドロゲルを充填することができる。インプラントは、例えば乳房全切除術及び乳房再建の後に乳頭を再建するため、形成外科手術で使用するのに特に適している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記患者の前記皮膚の下に配置するための円筒形状を含むオープンセル構造のマクロ多孔質ネットワークを備える3Dプリント乳頭インプラントであって、
前記円筒形状は、それぞれが円形ベースを備える第1及び第2の端部と、前記2つの円形ベース間で測定される高さと、円周と、を有し、
前記マクロ多孔質ネットワークは、相互に接合された少なくとも2つの隣接する平行面の細糸を含む、3Dプリント乳頭インプラント。
【請求項2】
前記インプラントは更に、前記円筒形状の前記第2の端部に半球形状を備え、任意選択的に20kPa以下の剛性を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記マクロ多孔質ネットワークは、外殻又は被覆で封入されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記インプラントは更に、前記円筒形状の前記第1の端部で前記円形ベースから突出しているフランジコンポーネントを備える、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記細糸は、終点を有するコードとして配置されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記細糸は、連続していない、請求項1から5に記載のインプラント。
【請求項7】
細糸の面内の前記細糸の前記終点は、同じ細糸の面内にある別の細糸に接続されていない、請求項5に記載のインプラント。
【請求項8】
前記細糸は、前記円筒形状の前記円周上に終点を有し、前記円筒形状の前記円周上で弧を形成しない、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記マクロ多孔質ネットワークは、少なくとも部分的にヒドロゲルが充填されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記マクロ多孔質ネットワークは、吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
少なくとも2つの平行面の細糸は、隣接した面内又は隣接していない面内で同一の向きを有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
第1の平行面の細糸は、第1の幾何学的な向きに組織化され、
第2の平行面の細糸は、第2の幾何学的な向きに配置されて、前記インプラントが十字に交差した細糸のマクロ多孔質ネットワークを含むようになっている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項13】
前記インプラントは更に、第3の平行面の細糸を含み、
前記第1、第2、及び第3の平行面の前記細糸は、三角形状の細孔を形成する、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
前記平行面の前記細糸間の前記角度は、1~90度、又は18度、20度、30度、36度、45度、又は60度のうち1つから選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項15】
前記マクロ多孔質ネットワークは、複数のマクロ孔を含み、
前記マクロ孔は、75~2,000ミクロンの平均直径又は平均幅を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項16】
前記細糸は、以下の特性、すなわち、10μm~5mmの平均直径又は平均幅、0.1~200Nの破壊荷重、10~1,000%の破断点伸び、及び0.05~1,000MPaの弾性係数、のうち1つ以上を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
前記吸収性ポリマーは、以下の特性、すなわち、(i)100%より大きい破断点伸び、(ii)200%より大きい破断点伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張係数、及び、(viii)25MPaより高い引張強度、のうち1つ以上を有する、請求項10に記載のインプラント。
【請求項18】
前記マクロ多孔質ネットワークは、1%~60%又は5%~25%の細糸充填密度を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項19】
前記外殻は、同心円状に積層された細糸を含む、請求項3に記載のインプラント。
【請求項20】
前記インプラントは更に、自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、抗菌剤、抗生物質製剤、及び生物活性剤のうち1つ以上を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項21】
前記吸収性ポリマーは、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチラート、3-ヒドロキシヘキサン酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチラート、3-ヒドロキシオクタン酸、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、又はアジピン酸の群から選択された1つ以上のモノマーを含むか又はそれから調製され、あるいは、前記吸収性ポリマーは、ポリ-4-ヒドロキシブチラートもしくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンスクシネート)もしくはそのコポリマーを含む、請求項10に記載のインプラント。
【請求項22】
前記インプラントは、吸収性である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項23】
前記インプラントは、(i)前記平行面の細糸を3Dプリントすることで前記マクロ多孔質ネットワークを形成すること、(ii)溶融押出積層3Dプリントによって前記マクロ多孔質ネットワークを形成すること、及び、(iii)3Dプリントによって隣接する平行面内の前記細糸を接合すること、を含む群から選択されたプロセスによって製造される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項24】
前記インプラントは、5~15%ひずみで0.1kPa~10MPaの圧縮率を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項25】
前記第1の端部の前記ベースは、開放下部開口を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項26】
前記患者の前記皮膚の下に配置するための円筒形状を含むオープンセル構造の耐荷重マクロ多孔質ネットワークを備える乳頭インプラントを製造する方法であって、
前記円筒形状は、それぞれが円形ベースを備える第1及び第2の端部と、前記2つの円形ベース間で測定される高さと、円周と、を有し、
前記マクロ多孔質ネットワークは、相互に接合された少なくとも2つの隣接する平行面の細糸を含み、
前記方法は、
(i)前記細糸の3Dプリントによってポリマー組成物から少なくとも2つの平行面の細糸を形成することと、
(ii)溶融押出積層3Dプリントによってポリマー材料から少なくとも2つの平行面の細糸を形成することと、
のうち1つによって前記マクロ多孔質ネットワークを形成することを含む、方法。
【請求項27】
前記インプラントは更に、前記円筒形状の前記第2の端部に半球形状を備える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記マクロ多孔質ネットワークは、外殻で封入され、
前記外殻は、前記マクロ多孔質ネットワークを封入するように細糸を同心円状に3Dプリントすることで形成される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記インプラントは更に、前記円筒形状の前記第1の端部で前記円形ベースから突出しているフランジコンポーネントを備える、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記細糸は、前記円筒形状の前記円周上に位置する終点を有するコードとして3Dプリントされ、
細糸の面内の前記コードは、同じ細糸の面内の細糸によって相互に接続されないようにプリントされない、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記細糸は、前記円筒形状の前記円周上に弧を形成することなく前記円筒形状の前記円周上に終点を有するようにプリントされる、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記方法は更に、前記マクロ多孔質ネットワーク内にヒドロゲルをプリント、被覆、又は注入して、前記マクロ多孔質ネットワークを少なくとも部分的にヒドロゲルで充填することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも2つの平行面の細糸は、1~60度、又は18度、20度、30度、36度、45度、又は60度のうち1つから選択された前記平行面内の前記細糸間の角度でプリントされる、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記マクロ多孔質ネットワークは、1%~60%又は5%~25%の細糸充填密度でプリントされる、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記インプラントは、5~15%ひずみで0.1kPa~10MPaの圧縮率を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
請求項1から25に記載された乳頭インプラントを移植する方法であって、
(i)患者に切開を行って、乳頭インプラントを受容するように構成された組織封入部を生成することと、
(ii)前記組織封入部内に請求項1から25のいずれか一項に記載の乳頭インプラントを挿入することと、を含み、
前記組織封入部は、前記乳頭インプラントの周囲に適合するように構成されている、方法。
【請求項37】
前記切開は、対置できる縁部を有する組織フラップを生成するように構成され、
前記縁部を合わせた場合に、前記組織フラップは、前記組織フラップの前記内面が前記乳頭インプラントに接触するように前記乳頭インプラントを受容する空隙を形成するようになっている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記切開は、CV-flap切開経路、S-flap切開経路、又はstar-flap切開経路を有する、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
[0001] 2021年5月11日に出願された米国特許出願番号第63/187010号の米国特許法第119条(a)~(d)項又は米国特許法第365条(b)項のもとで外国優先権の利益が請求される。
【0002】
[0002] 本発明は、一般に外科手術によるインプラント(surgical implant)に関し、より具体的には、乳頭の再建に適した3Dプリント多孔質インプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 特定の乳房切除術の後の乳頭再建は、患者の美的及び心理社会的な利点を提供できるので、一部の患者にとって乳がん治療の重要要素になっている。
【0004】
[0004] 胸の乳頭の外見を作り直すため、いくつかの選択肢を利用することができる。これらの選択肢には、例えばシリコーンベースの材料から作製され、一時的に患者の皮膚に固定することができる人工乳頭が含まれる。しかしながら、これらの人工装具は、一時的な接着剤によって取り付けられた外部デバイスであり、時間と共に摩耗し、人工のものであると分かる。
【0005】
[0005] あるいは、乳頭は、患者自身の組織を用いて外科的に再建するか、又はインプラントを用いて再建することができる。
【0006】
[0006] 外科的に作成された乳頭は永久的であり、より自然な印象を有するが、通常、ドナー皮膚を必要とし、適切な組織を摘出するために2回目の手術を行わなければならない。また、外科医は、適切なサイズ、突起、及び形状を有する交換用乳頭を構築しなければならないが、これは、対側乳頭と一致する必要がある場合、困難である可能性がある。
【0007】
[0007] 患者から乳頭再建に適した組織を摘出する必要性を回避するため、いくつかの乳頭再建インプラントが開発されている。
【0008】
[0008] EdwardsのUS20210052774号は、無細胞組織マトリックス及び3次元生物学的足場(biologic scaffold)から得られた乳頭再建インプラントを開示している。
【0009】
[0009] SpectorのWO2020081806号は、外部の生体適合性足場によって閉じ込められた軟骨切片又は軟骨皮(zested cartilage)を含む乳頭再建のための外科手術によるインプラントを開示している。
【0010】
[0010] ChoiのWO2020230997号は、円柱体と本体部とを備えた2輪複合体を含む乳頭乳輪(NAC:nipple areolar complex)再建のためのインプラントを開示している。
【0011】
[0011] DempseyのUS2013/0211519号は、哺乳類又は他の組織源からシート形態に分離され、圧延及び/又は成型によって整形インプラントを提供するように構成された細胞外マトリックスシート等、改造可能な細胞外マトリックス材料を含む改造可能インプラントを開示している。
【0012】
[0012] CollinsのUS2016/0243286号は、細胞と、足場と、任意選択的に他の材料、例えば栄養物及び成長因子と、を含む、乳頭再建のための組織工学によって作られた構築物を開示している。
【0013】
[0013] 上記のことにもかかわらず、移植された場合に特定の望ましい外見及び印象を有する新しい組織を生成することができる改良された乳頭再建インプラントが、今なお必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
[0014] 本明細書に記載されている乳頭インプラントは、外科医が、乳房全切除術及び乳房再建の後の乳頭乳輪(NAC)再建を行い、胸部の外見を向上させ、失われた組織を再建し、NACの組織構造を強化し、NACの軟組織の自然な感じを回復させ、NACの組織再生、修復、及び再建に役立つ生物学的材料及び合成材料を送達することを支援する。
【0015】
[0015] 実施形態において、乳頭インプラントは多孔質であり、組織内部成長のためのマクロ多孔質ネットワークを提供し、更に、コラーゲン、細胞、及び脂肪を含み得る。移植後、インプラントは、結合組織によって侵入されて充分に一体化するように設計されている。実施形態において、乳頭インプラントは円筒形状を含み、この円筒形状の各端部に同一の円周の第1及び第2の円形ベースを有する。
【0016】
[0016] 実施形態において、乳頭インプラントは更に、インプラントの円筒形状の第2の円形ベースに接続された半球形状又はドーム形状を含む。実施形態において、インプラントは、マクロ多孔質ネットワークを少なくとも部分的に取り囲む外殻を含む。外殻は、円筒形状の各端部に第1及び第2の円形ベースを有する円筒形状と、円筒形状の第2の円形ベースに接続された半球形状と、を含む。
【0017】
[0017] 実施形態において、インプラントは長手方向軸を有し、この軸は、軸の一端におけるインプラントの第1の端部と軸の反対端におけるインプラントの第2の端部との間で長手方向に測定される高さhを有する。
【0018】
[0018] 実施形態において、外殻は多孔質である。
【0019】
[0019] 実施形態において、外殻は、インプラントの第1の端部においてマクロ多孔質ネットワークを封入していない。
【0020】
[0020] 実施形態において、インプラントは更にフランジを備える。フランジは、インプラントの第1の端部に位置付けられている。フランジは、インプラントの円筒形状よりも大きい円周を有するので、円筒形状の円形ベースから突出している。実施形態において、フランジは多孔質である。実施形態において、フランジは吸収性である。フランジを有するインプラントが患者に移植された場合、フランジは、胸の膨らみの上に、インプラントの第2の端部よりも後方に配置されるよう設計されている。
【0021】
[0021] 実施形態において、インプラントは円筒形状を含み、円筒形状の各端部に第1及び第2の円形ベースを有する。インプラントは更に、円筒形状の第2の円形ベースに接続された半球形状と、マクロ多孔質ネットワークと、を含み、任意選択的に、第1の円形ベースに位置付けられたフランジも含む。
【0022】
[0022] 実施形態において、乳頭インプラントは、相互に接合された少なくとも2つの隣接する平行面の細糸から形成された開放細孔構造の耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含む。それぞれの層内の細糸は同一方向に延出し、相互に概ね平行である。マクロ多孔質ネットワークは、好ましくは3Dプリントされる。
【0023】
[0023] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、インプラントの外殻又は円筒形状を充填するような形状を有する。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは、一端で半球形状に接続された円筒形状を有する。
【0024】
[0024] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、第1の幾何学的な向きに組織化された第1の平行面の細糸と第2の幾何学的な向きに配置された第2の平行面の細糸を含んで、十字に交差した細糸の多孔質ネットワークを形成する。実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは更に、第1及び第2の幾何学的な向きとは異なる幾何学的な向きに配置された1つ以上の追加の平行面の細糸を含む。実施形態において、異なる平行面内の細糸間の角度は、0~135度であり、好ましくは、0度、18度、20度、30度、36度、45度、又は60度であり、より好ましくは、0度、30度、60度、120度、及び、0度、45度、90度、135度である。実施形態において、連続した面内の細糸は、三角形及び四角形の細孔を含む多角形の細孔形状を有するマクロ多孔質ネットワークを提供するような向きに配置されている。実施形態において、平行面の細糸は、マクロ多孔質ネットワーク内の隣接した面内又は隣接していない面内で同一の向きを有する。
【0025】
[0025] 実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは、各平行面の細糸が直前の面の細糸に対して18度ずれることで、10番目の層の細糸が第1の層の細糸と同一の向きを有するように形成される。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは、各平行面の細糸が直前の面の細糸に対して20度ずれることで、9番目の層の細糸が第1の層の細糸と同一の向きを有するように形成される。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは、各平行面の細糸が直前の面の細糸に対して30度ずれることで、6番目の層の細糸が第1の層の細糸と同一の向きを有するように形成される。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは、各平行面の細糸が直前の面の細糸に対して36度ずれることで、5番目の層の細糸が第1の層の細糸と同一の向きを有するように形成される。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは、各平行面の細糸が直前の面の細糸に対して45度ずれることで、4番目の層の細糸が第1の層の細糸と同一の向きを有するように形成される。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは、各平行面の細糸が直前の面の細糸に対して60度ずれることで、3番目の層の細糸が第1の層の細糸と同一の向きを有するように形成される。後者の場合、異なる面内の細糸間の角度は0度、60度、及び120度であり、細糸は、マクロ多孔質ネットワークにおいて三角形の細孔を形成するような向きに配置されている。
【0026】
[0026] 実施形態において、インプラントの細糸は、マクロ多孔質ネットワークの円筒形状の円周上に位置する終点を有するコード(chord)として配置されている。実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの細糸は連続していない。実施形態において、細糸の面内の細糸の終点は、同じ細糸の面内にある別の細糸に接続されていない。実施形態において、細糸は、マクロ多孔質ネットワークの円筒形状の円周上に終点を有し、円筒形状の円周上で弧を形成しない。
【0027】
[0027] 実施形態において、マクロ多孔質ネットワークの細孔は、75ミクロン~10mm、より好ましくは100ミクロン~2mm、更に好ましくは100ミクロン~300ミクロンの平均直径又は平均幅を有する。
【0028】
[0028] 実施形態において、インプラントの細糸は、以下の特性、すなわち、10ミクロン~5mmの平均直径又は平均幅、0.1~200Nの破壊荷重、10~1,000%の破断点伸び、及び0.05~1,000MPaの弾性係数、のうち1つ以上を有する。
【0029】
[0029] 実施形態において、インプラントの細糸は表面粗さ(Ra)を有するように形成されている。表面粗さは、インプラント上での細胞接着及び組織形成を促進する。また、表面粗さは、隣接組織に対するインプラントの接着を促進し、組織内部成長を促し、移植後のデバイスの移動防止に役立つ。実施形態において、インプラントは、0.02~75ミクロン、より好ましくは0.1~50又は0.5~30ミクロン、更に好ましくは5~30ミクロンの表面粗さを有する細糸を含む。実施形態において、インプラントの細糸は、これらの表面粗さ値で3Dプリントされる。
【0030】
[0030] 実施形態において、インプラントは、乳頭再建に使用するのに適した形状及びサイズを有する。実施形態において、インプラントの高さhは、0.1~2cm、より好ましくは0.5~1.5cm、更に好ましくは0.3~1cmである。実施形態において、インプラントの円筒形状の直径は、2~10mm、より好ましくは4~7mmである。
【0031】
[0031] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、1%~70%又は5%~25%の細糸充填密度を有する。
【0032】
[0032] 実施形態において、インプラントは、マクロ多孔質ネットワークを封入する外殻又は被覆を含む。実施形態において、外殻は、同心円状に積層された細糸を含む。実施形態において、外殻は、20%~100%、より好ましくは50%~100%の範囲の充填密度で3Dプリントすることができる。実施形態では、インプラントの充填密度を用いてインプラントの吸収速度を制御できる。実施形態では、高い充填外殻密度を用いて吸収速度の遅いインプラントを生成し、低い充填外殻密度を用いて吸収速度の速いインプラントを生成することができる。実施形態において、外殻又は被覆は、発泡体(foam)、連続気泡(open cell foam)、コラーゲン被覆、又は、ポリ-4-ヒドロキシブチラートもしくはそのコポリマー、もしくはポリ(ブチレンスクシネート)もしくはそのコポリマーを含む被覆を含む。
【0033】
[0033] 実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは吸収性ポリマーを含む。実施形態において、インプラント内に存在する面状の細糸は吸収性ポリマーから形成される。実施形態において、吸収性ポリマーは、以下の特性、すなわち、(i)100%より大きい破断点伸び、(ii)200%より大きい破断点伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張係数、及び(viii)25MPaより高い引張強度、のうち1つ以上を有する。実施形態において、吸収性ポリマーは、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチラート、3-ヒドロキシヘキサン酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチラート、3-ヒドロキシオクタン酸、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、及びアジピン酸の群から選択された1つ以上のモノマーを含むか又はそれから調製される。あるいは、吸収性ポリマーは、ポリ-4-ヒドロキシブチラート(P4HB)もしくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンスクシネート)(PBS)もしくはそのコポリマーを含む。実施形態において、インプラントは、P4HB及びそのコポリマー、又はPBS及びそのコポリマーを含み、架橋されていない。実施形態において、PBSポリマー及びコポリマーは更に、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤、及び反応混合剤のうち1つ以上を含み得る。PBS及びP4HBポリマー及びコポリマーは、同位体が濃縮されている場合がある。実施形態において、インプラントの調製に用いられるポリマーは、GPCによって求められるポリスチレンに対する重量平均分子量が、50~1,000kDa、より好ましくは90~600kDa、更に好ましくは200~450kDaである。
【0034】
[0034] 実施形態において、インプラントは吸収性である。インプラントは好ましくは、インビボで予測可能な分解率と予測可能な強度保持を有するポリマー材料を含む。インプラントが吸収性である場合、インプラントの分解は組織が更にインプラントに侵入することを可能とし、このプロセスはインプラントが完全に吸収されるまで継続し得る。
【0035】
[0035] 実施形態において、インプラントは更に、自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、抗菌剤、抗生物質製剤、及び生物活性剤のうち1つ以上を含む。
【0036】
[0036] 実施形態において、インプラントは異方特性を有し、これは、インプラントが異なる方向で異なる特性を有することを意味する。
【0037】
[0037] 実施形態において、インプラントは外殻なしであり、任意選択的に、インプラントの周縁部を処理して、例えばとげ状部分(barb)を除去してインプラントを全体的に平滑にする。縁部は、例えばトリミング又は熱処理によって処理すればよい。
【0038】
[0038] 実施形態において、インプラントは、インプラント移植後にインプラントが占める空間を新しい組織が充填し、これによって乳頭の形状を維持することができるように、充分な長さにわたって強度を保持する。インプラントは、乳頭を形成するように患者の組織のリモデリングを誘導する。インプラントは好ましくは、この移行期間中の乳頭のサポートを提供する。インプラント内への組織内部成長を誘導し、所望の乳頭形状を生成するため、乳頭インプラントの形状は長期にわたって維持される。
【0039】
[0039] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、少なくとも部分的に分解可能ポリマーが充填される。分解可能ポリマーは、好ましくはマクロ多孔質ネットワークよりも速く分解する。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークはヒドロゲルを含む。
【0040】
[0040] 実施形態において、インプラントは、1インプラント当たり20エンドトキシン単位未満のエンドトキシン含有量を有する。
【0041】
[0041] 実施形態において、インプラントは殺菌済みインプラントである。インプラントは、限定ではないが、エチレンオキシド、電子ビーム、又はガンマ線照射を含む様々な技法によって殺菌することができる。
【0042】
[0042] 実施形態において、インプラントは、平行面の細糸を3Dプリントすることでマクロ多孔質ネットワークを形成すること、溶融押出積層(melt extrusion deposition)プリントによってマクロ多孔質ネットワークを形成すること、及び、3Dプリントによって隣接する平行面内の細糸を接合することでマクロ多孔質ネットワークを形成することの群から選択されたプロセスを用いて形成される。
【0043】
[0043] 実施形態において、任意選択的に少なくとも部分的に外殻で取り囲まれた、オープンセル(open cell)構造のマクロ多孔質ネットワークを備える乳頭インプラントを製造する方法が提供される。インプラントは、同一の円周を有する第1及び第2の円形ベースを備える円筒形形状と、第2の円形ベースに接続された半球形状と、インプラントの第1の端部に位置付けられてインプラントの円筒形状を超えて延出するフランジと、第1の端部及び第2の端部を有する長手方向軸と、を含む。マクロ多孔質ネットワークは、相互に接合された少なくとも2つの隣接する平行面の細糸を含む。方法は、細糸の3Dプリントによってポリマー組成物から少なくとも2つの平行面の細糸を形成することと、溶融押出積層プリントによってポリマー組成物から少なくとも2つの平行面の細糸を形成することと、のうち1つによってマクロ多孔質ネットワークを形成することを含む。実施形態において、方法は、圧縮率が5~15%ひずみで0.1kPa~10MPa、より好ましくは5~15%ひずみで5~500kPa、更に好ましくは5~15%ひずみで10~200kPaであるインプラントを形成することを可能とする。
【0044】
[0044] 実施形態において、乳頭インプラントを製造する方法は、マクロ多孔質ネットワークを封入するように細糸を同心円状に3Dプリントすることによって、マクロ多孔質ネットワークを少なくとも部分的に外殻内に封入することを含む。実施形態において、乳頭インプラントを製造する方法は更に、マクロ多孔質ネットワークをポリマー組成物で被覆することによって、マクロ多孔質ネットワークを少なくとも部分的に外殻内に封入することを含む。
【0045】
[0045] 実施形態において、乳頭インプラントを製造する方法は、インプラントの円筒形状の第1の端部の円形ベースから突出している多孔質フランジを3Dプリントすることを含む。
【0046】
[0046] 実施形態において、乳頭インプラントを製造する方法は、少なくとも部分的にマクロ多孔質ネットワークを取り囲むように多孔質外殻を3Dプリントすることを含む。
【0047】
[0047] 実施形態において、製造方法は、マクロ多孔質ネットワークの細糸を、円筒形状の円周上に位置する終点を有するコードとして円筒形状に3Dプリントすることを含む。実施形態において、製造方法は、1つの細糸面内にある細糸が同じ細糸面内の細糸によって相互に接続されないように、コードとして細糸をプリントすることを含む。実施形態において、インプラントの製造方法は、細糸がマクロ多孔質ネットワークの円筒形状の円周上に弧を形成することなく、円筒形状の円周上に終点を有するように細糸を3Dプリントすることを含む。
【0048】
[0048] 実施形態において、製造方法は更に、マクロ多孔質ネットワークにおいてヒドロゲルをプリントすること、マクロ多孔質ネットワーク内にヒドロゲルを注入すること、又はマクロ多孔質ネットワーク上にヒドロゲルを被覆すること、によって、マクロ多孔質ネットワークに少なくとも部分的にヒドロゲルを充填することを含む。
【0049】
[0049] 実施形態において、インプラントを製造する方法は、1~90度、又は18度、20度、30度、36度、45度、60度、又は90度のうち1つから選択された平行面内の細糸間の角度で、少なくとも2つの平行面の細糸をプリントすることを含む。
【0050】
[0050] 実施形態において、インプラントを製造する方法は、1%~60%又は5%~25%の細糸充填密度でマクロ多孔質ネットワークを3Dプリントすることを含む。
【0051】
[0051] 実施形態において、インプラントを製造する方法は、以下のモノマー、すなわち、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチラート、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチラート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、及びアジピン酸、のうち1つ以上を含むか又はそれから調製されたポリマー又はコポリマーから選択されたポリマー組成物から3Dプリントすることによって、平行面の細糸を形成することを含む。あるいは、ポリマー組成物は、ポリ-4-ヒドロキシブチラートもしくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンスクシネート)もしくはそのコポリマーを含む。
【0052】
[0052] 実施形態において、インプラントを製造する方法は、以下の特性、すなわち、(i)100%より大きい破断点伸び、(ii)200%より大きい破断点伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張係数、及び(viii)25MPaより高い引張強度、のうち1つ以上を有するポリマーからマクロ多孔質ネットワークの細糸を形成することを含む。好適な実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、P4HB、PBS、P4HBコポリマー、又はPBSコポリマーから、3Dプリントによって作製される。実施形態において、インプラントを製造する方法は、以下の特性、すなわち、(i)100%より大きい破断点伸び、(ii)200%より大きい破断点伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張係数、及び(viii)25MPaより高い引張強度、のうち1つ以上を用いて、3Dプリントによってマクロ多孔質ネットワークの細糸を形成することを含む。
【0053】
[0053] 実施形態において、インプラントを製造する方法は、マクロ多孔質ネットワークを3Dプリントすることと、以下の成分、すなわち、自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、抗菌剤、抗生物質製剤、及び生物活性剤のうち1つ以上を追加することと、を含む。実施形態において、これらの成分は、被覆、スプレー、浸漬、又は注入によってマクロ多孔質ネットワークに追加される。
【0054】
[0054] 実施形態では、患者に切開を行って、乳頭インプラントを受容するように構成された組織封入部(enclosure)を生成することと、組織封入部内に乳頭インプラントを挿入することと、を含む方法によって、インプラントを移植する。組織封入部は、乳頭インプラントの周囲に適合するように構成されている。実施形態において、インプラントを移植する方法は、対置できる縁部を有する組織フラップを生成するように切開を構成することを含み、縁部を合わせた場合に、組織フラップは、組織フラップの内面が乳頭インプラントに接触するように乳頭インプラントを受容する空隙を形成するようになっている。実施形態において、インプラントを移植する方法は、CV-flap切開経路、S-flap切開経路、又はstar-flap切開経路の切開を行うことを含む。実施形態において、インプラントは、インプラントの円筒形状から突出しているフランジを含み、インプラントは、フランジを患者の胸の膨らみ上に円筒形状の第2の端部よりも後方に位置決めして、患者に移植される。実施形態において、インプラントは半球形状を含み、インプラントは、半球形状が患者の皮膚に隣接すると共にインプラントの残り部分よりも前方にあるように移植される。
【0055】
[0055] 実施形態において、インプラントは、細胞、肝細胞、分化した細胞、脂肪細胞、筋細胞、血小板、組織、脂肪吸引物、細胞外脂肪マトリックスタンパク質、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、生物活性剤、薬剤、抗生物質、及び他の材料を移植部位に送達するための手段を外科医に提供するように機能する。
【0056】
[0056] 実施形態では、インプラントを移植して、軟組織体積又は組織塊を置換及び/又は増大することができる。
【0057】
[0057] 本発明のこれらの利点並びに他の目的及び利点は、添付図面と共に以下の詳細な説明を参照することから明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1A】[0058] 乳頭インプラント100の正面図であり、乳頭インプラント100は、第1の端部116と、第2の端部117と、第1及び第2の端部間で測定された高さhと、第1の円形ベース111及び第2の円形ベース112を有し、これらの円形ベース間の距離113を有する円筒形状110と、第2の円形ベース112に接続された高さ141を有する半球形状又はドーム形状140と、細孔121を有し、外径114が外殻円周を規定する外殻120と、インプラントの第1の端部に接続された外径151及び厚さ152を有するフランジ150と、を含む。インプラントは長手方向軸115を有する。外殻の細孔121を通して部分的にマクロ多孔質ネットワーク130が見える。
【
図1B】[0059]
図1Aに示されている乳頭インプラント100の底面図であり、外殻内のマクロ多孔質ネットワーク130の円周153と、マクロ多孔質ネットワークの外径154と、フランジの外径151と、を示す。フランジ150は細孔155と共に示されている。
【
図1C】[0060]
図1Aに示されている乳頭インプラント100の等角図であり、円筒形状110と、外殻の細孔121と、フランジ150と、を示す。
【
図2A】[0061] 本発明の一実施形態に従った、
図1Aに示されているインプラント100の正面図である。
【
図2B】[0062] 本発明の一実施形態に従った、
図2Aに示されている乳頭インプラント100のラインA-Aで切った断面図である。乳頭インプラントは、外殻厚さ210及び外殻細孔121を有する外殻120と、フランジ150と、外殻内に細糸131で形成されたマクロ多孔質ネットワーク130と、共に示されている。
【
図2C】[0063]
図2Bに細部Cとして示されているマクロ多孔質ネットワーク130の拡大図であり、マクロ多孔質ネットワークを形成する細糸131を示す。
【
図2D】[0064]
図2Aに細部Bとして示されている外殻120の拡大図であり、外殻120の細孔121及び外殻内のマクロ多孔質ネットワーク130を示す。
【
図3A】[0065] 本発明の一実施形態に従った、
図1Aに示されている乳頭インプラント100の正面図である。
【
図3B】[0066]
図3Aに示されている乳頭インプラント100のラインF-Fで切った断面図であり、外殻120と、フランジ150と、平行な細糸の層131、132、133と、を示し、層131、132、及び133は、これらの平行な細糸の層が60度の角度に配置されて平行な細糸の積層層が十字に交差している。
【
図3C】[0067]
図3Aに示されている乳頭インプラント100のラインE-Eで切った断面図であり、外殻120と、フランジ150と、外殻の細孔121と、相互に60度の角度に配置された平行な細糸の層から形成された外殻内のマクロ多孔質ネットワーク130と、を示す。
【
図4】[0068] プリントされたP4HB細糸から作製された内部細糸構造を備え、フランジを備えず、100%充填の外殻を備える、3Dプリント乳頭インプラントの下面図の像である。
【
図5】[0069] プリントされたP4HB細糸から作製された内部細糸構造を備える、
図4に示されている3Dプリント乳頭インプラントの上面斜視図の像である。
【
図6A】[0070] 20%充填で外側外殻を含まない3Dプリント乳頭インプラントの像である。
【
図6B】[0070] 20%充填で外側外殻を含まない3Dプリント乳頭インプラントの像である。
【
図6C】[0070] 20%充填で外側外殻を含まない3Dプリント乳頭インプラントの像である。
【
図6D】[0070] 25%充填で外側外殻を含まない3Dプリント乳頭インプラントの像である。
【
図6E】[0070] 25%充填で外側外殻を含まない3Dプリント乳頭インプラントの像である。
【
図6F】[0070] 25%充填で外側外殻を含まない3Dプリント乳頭インプラントの像である。
【
図6G】[0070] 30%充填で外側外殻を含まない3Dプリント乳頭インプラントの像である。
【
図6H】[0070] 30%充填で外側外殻を含まない3Dプリント乳頭インプラントの像である。
【
図6I】[0070] 30%充填で外側外殻を含まない3Dプリント乳頭インプラントの像である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[0071] 本発明を詳細に説明する前に、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載される本発明に様々な変化又は変更を実施することができると共に、均等物(equivalent)で代用することができるので、本発明が本明細書に述べられる特定の変形に限定されないことを理解するべきである。当業者が本開示を読めば明らかとなるように、本明細書に記載及び例示されている個々の実施形態の各々が有する個別のコンポーネント及び特徴は、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離するか又はそういった特徴と組み合わせることができる。更に、多くの変更を実施することで、特定の状況、材料、組成物、プロセス、1もしくは複数のプロセス行為又はステップを、本発明の1もしくは複数の目的、精神、又は範囲に適合させることができる。全てのそのような変更は、本明細書で行われる特許請求の範囲内であることが意図される。
【0060】
[0072] 本明細書で列挙される方法は、イベントの列挙された順序だけでなく、列挙されたイベントの論理的に可能な任意の順序で実行され得る。更に、ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限と下限との間にある全ての値、及びその言及された範囲内の他の言及された値又はその範囲内にある他の値が、本発明内に包含されることは理解されよう。また、説明される本発明の変形の任意選択的な特徴は、本明細書に記載されている特徴のうちいずれか1つ以上とは別個に又はそれらと組み合わせて記載され得ると共に特許請求され得ることが想定される。
【0061】
[0073] 本明細書で言及される全ての既存の主題(例えば公報、特許、特許出願、及びハードウェア)は、その主題が本発明のものと抵触し得る場合(この場合、本明細書で提案されるものが優先する(prevail))を除いて、援用により全体が本願に含まれる。
【0062】
[0074] 単一の品目(item)に対する言及は、同じ品目が複数存在する可能性を含む。更に具体的には、本明細書で用いられる場合及び添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、「前記(said)」、及び「その(the)」は、文脈上明らかに他の意味を示す場合を除いて、複数の指示対象を含む。更に、特許請求の範囲はいかなる任意選択的な要素も除外するように立案され得ることに留意するべきである。従って、この記述は、特許請求要素の列挙に関連して「専ら(solely)」、「唯一の(only)」等の排他的用語の使用又は「否定的な(negative)」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0063】
[0075] 更に理解を助けるため、以下に定義を述べる。しかしながら、本明細書で他の定義が記載されている場合を除いて、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することは認められよう。
【0064】
[0076] I.定義
[0077] 本明細書で一般的に用いられる場合、「吸収性(absorbable)」は、材料が身体内で分解することを意味し、分解生成物は身体から排除又は排泄される。「吸収性」、「吸収性(resorbable)」、「分解可能」、及び「浸食可能」という用語は、接頭辞「bio(バイオ)」が付くものも付かないものも、本明細書では交換可能に用いられ、分解が主に加水分解によるか又は代謝過程で仲介されるかに関わらず、分解して徐々に身体によって吸収、排泄、又は排除される材料を記述することができる。
【0065】
[0078] 本明細書で一般的に用いられる場合、「生物活性剤」は、治療薬、予防薬、又は診断薬、好ましくは宿主組織の治癒及び再生を促進する薬剤を表し、また、感染を防止、阻害、又は排除する治療薬も表す。「薬剤」は、単一のそのような薬剤を含み、また、複数を含むことも意図される。
【0066】
[0079] 本明細書で一般的に用いられる場合、「生体適合性」は、材料又はインプラントに対する生物学的反応がインビボのインプラントの意図する用途に適していることを意味する。また、これらの材料のいかなる代謝産物も生体適合性でなければならない。
【0067】
[0080] 本明細書で一般的に用いられる場合、「混合物」は、2つ以上の異なるモノマーで形成されたコポリマーとは対照的に、様々なポリマーの物理的組み合わせを意味する。
【0068】
[0081] 本明細書で用いられる場合、「圧縮率」は、万能試験機を用いて20mm min-1のクロスヘッド速度で測定される。インプラントに前負荷を加えて負荷をかけ、インプラントの長手方向軸に沿って負荷を加えながら5~15%ひずみで圧縮させる。臨床的に関連する繰り返し荷重を10回繰り返し、標本のたるみ取り、及び位置合わせ又は設置で生じたアーチファクトのため、二次的繰り返し荷重に基づいて圧縮率を計算する。また、ASTM規格ASTM D1621-16又はASTM D695-15を用いて圧縮率を測定してもよい。
【0069】
[0082] 本明細書で一般的に用いられる場合、「ポリ-4-ヒドロキシブチラートのコポリマー」は、1つ以上の異なるヒドロキシ酸単位を有する4-ヒドロキシブチラートを含有する任意のポリマーを意味する。これらのコポリマーは同位体が濃縮されている場合がある。
【0070】
[0083] 本明細書で一般的に用いられる場合、「ポリ(ブチレンスクシネート)のコポリマー」は、1,4-ブタンジオール及びコハク酸単位、並びに1つ以上の異なるジオールもしくは二酸単位、又はヒドロキシ酸単位を含有する任意のポリマーを意味する。これらのコポリマーは、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤、及び反応混合剤のうち1つ以上を含み得る。コポリマーは同位体が濃縮されている場合がある。
【0071】
[0084] 本明細書で一般的に用いられる場合、「エンドトキシン含有量」は、インプラント又はサンプル内に存在するエンドトキシンの量を表し、カブトガニ血球抽出成分(LAL:limulus amebocyte lysate)アッセイによって求められる。
【0072】
[0085] 本明細書で用いられる場合、「充填密度」は、多孔質インプラント内のプリントされた材料が占める体積を、プリントされた材料及び細孔空間が占める全体積で除算した比を、百分率で表したものである。
【0073】
[0086] 本明細書で一般的に用いられる場合、「分子量」は、特に指定がない限り、数平均分子量(Mn)でなく重量平均分子量(Mw)を表し、ポリスチレンに対するGPCによって測定される。
【0074】
[0087] 「ポリ(ブチレンスクシネート)」は、1,4-ブタンジオール単位及びコハク酸単位を含有するポリマーを意味する。このポリマーは、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤、及び反応混合剤のうち1つ以上を含み得る。ポリマーは同位体が濃縮されている場合がある。
【0075】
[0088] 「ポリ(ブチレンスクシネート)及びコポリマー」は、鎖延長剤、結合剤、架橋剤、及び分岐剤のうち1つ以上によって調製されたポリマー及びコポリマーを含む。
【0076】
[0089] 本明細書で一般的に用いられる場合、「ポリ-4-ヒドロキシブチラート」は、4-ヒドロキシブチラート単位を含有するホモポリマーを意味する。これは本明細書において、P4HB又はTephaFLEX(登録商標)生体材料(マサチューセッツ州レキシントンのTepha,Inc.によって製造される)と称されることがある。ポリマーは同位体が濃縮されている場合がある。
【0077】
[0090] 本明細書で用いられる場合、「軟組織」は、硬化又は石灰化していない生体組織を意味する。軟組織は、骨及び歯のエナメル質等の硬い組織は除外する。
【0078】
[0091] 「強度保持」は、人間又は動物内への移植後に材料が特定の機械的特性を適正に維持する時間量を表す。例えば、吸収性繊維又は支柱の引張強度が動物内へ移植された場合に3か月で半分に低減したならば、その繊維又は支柱の3か月の強度保持は50%である。
【0079】
[0092] 本明細書で用いられる場合、「表面粗さ(Ra)」は、評価長内で記録された、平均線からのプロファイル高さ偏差の絶対値の算術平均である。
【0080】
[0093] II.インプラントを調製するための材料
[0094] 実施形態では、インプラントを用いて、損傷したかもしくは外科的に除去された乳頭の形成、乳頭の再整形、乳頭の再建、乳頭の変更、又は乳頭の交換を行うことができる。インプラントは、乳頭再建中のドナー部位の外科手術の必要性をなくすことができる。インプラントは生体適合性であり、好ましくは、インプラントが分解するにつれてインビボで患者の組織に置き換えられる。インプラントは、乳頭の再建に適した圧縮率を有する。任意選択的に、インプラントは、移植前、移植中、又は移植後に、ヒドロゲル、生物活性剤、自家組織、自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を被覆又は充填することができる。
【0081】
[0095] A.インプラントを調製するためのポリマー
[0096] 実施形態において、インプラントは、接合された少なくとも2つの平行な層の細糸から形成されたマクロ多孔質ネットワークを含む。実施形態において、第1の層内の細糸は第1の向きを有し、第2の層内の細糸は第1の向きとは異なる第2の向きを有する。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークの第1及び第2の層内の細糸は十字に交差している。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは、細糸の第1及び第2の向きとは異なる向きを有する追加層の細糸を含み得る。実施形態において、隣接する層の細糸は、十字に交差する複数のポイントで相互に接合されている。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークの細糸間には細孔が形成されている。細孔の寸法は、マクロ多孔質ネットワークの細糸の数と方向、細糸の間隔、並びに細糸のサイズ及び形状に依存する。マクロ多孔質ネットワークは、接合された2つ以上の平行な層の細糸を含み得るが、好ましくは、20、30、40、50、又はそれ以上の層の細糸を含む。
【0082】
[0097] インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、非分解性熱可塑性ポリマー等の永久材料を含むことができ、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ナイロン、ポリ(エチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリウレタン、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、及びポリ(エチレンオキシド)を含む、エチレン及びプロピレンのポリマー及びコポリマーを含む。しかしながら、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、好ましくは吸収性材料を含み、より好ましくは熱可塑性又はポリマー吸収性材料を含み、更に好ましくは、インプラント及びインプラントのマクロ多孔質ネットワークは全体的に吸収性材料から作製される。
【0083】
[0098] 好適な実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、1つ以上の吸収性ポリマー又はコポリマーから、好ましくは吸収性熱可塑性ポリマー及びコポリマーから、更に好ましくは吸収性熱可塑性ポリエステルから作製される。インプラントのマクロ多孔質ネットワークは例えば、限定ではないが、グリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチラート、3-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、ε-カプロラクトンから成るポリマーを含むポリマーから調製することができ、それらのポリマーは更に、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、グリコール酸及び乳酸のコポリマー、例えばVICRYL(登録商標)ポリマー、MAXON(登録商標)、及びMONOCRYL(登録商標)ポリマーを含み、また、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン);ポリ(オルトエステル);ポリ無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリヒドロキシアルカン酸;合成によって又は生物学的に調製されたポリエステル;ポリカーボネート;チロシンポリカーボネート;ポリアミド(合成及び天然のポリアミド、ポリペプチド、並びにポリ(アミノ酸)を含む);ポリエステルアミド;ポリ(アルキレンアルキレート);ポリエーテル(ポリエチレングリコールPEG、及びポリエチレンオキシドPEO等)、ポリビニルピロリドンすなわちPVP;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリアセタール、ポリケタール;ポリリン酸;(リン含有)ポリマー;ポリホスホエステル;ポリアルキレンオキサレート:ポリアルキレンスクシネート;ポリ(マレイン酸);シルク(組み換えシルク並びにシルク誘導体及び類似体を含む);キチン;キトサン;修飾キトサン;生体適合性多糖;親水性又は水溶性のポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)又はポリビニルピロリドン(PVP)、例えばポリ(ラクチド)、ポリ(ラクチド-コーグリコリド)、又はポリカプロラクトンのような他の生体適合性又は生分解性ポリマーのブロック、並びにそのランダムコポリマー及びブロックコポリマーを含むコポリマーを含む。
【0084】
[0099] 好ましくは、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、1~24か月の時間枠内で、より好ましくは3~18か月の時間枠内で移植後に実質的に吸収されると共に、少なくとも2週間~6か月にわたってある程度の残留強度を保持する吸収性ポリマー又はコポリマーから調製される。
【0085】
[00100] 好ましくは吸収性ポリマーであるポリマー及びコポリマーの混合物を用いて、インプラントのマクロ多孔質ネットワークを調製することができる。吸収性ポリマーの特に好ましい混合物は、限定ではないが、グリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチラート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、又はそれらのコポリマーから成るポリマーを含む吸収性ポリマーから調製される。
【0086】
[00101] 特に好適な実施形態では、ポリ-4-ヒドロキシブチラート(マサチューセッツ州レキシントンのTephaのP4HB(商標)ポリマー)又はそのコポリマーを用いて、インプラントのマクロ多孔質ネットワークを作製する。コポリマーは、3-ヒドロキシブチラートのような別のヒドロキシ酸を用いたP4HB、及び、グリコール酸又は乳酸モノマーを用いたP4HBを含む。ポリ-4-ヒドロキシブチラートは、生体適合性かつ吸収性である、強力で柔軟な熱可塑性ポリエステル(Williams等のポリ-4-ヒドロキシブチラート(P4HB))であり、すなわち、組織修復及び再生のための新世代の吸収性医療用具である(Biomed. Tech. 58(5) : 439-452(2013))。実施の際、P4HBはそのモノマーに加水分解し、モノマーはクレブス回路を介して二酸化炭素と水に代謝される。好適な実施形態において、P4HBホモポリマー及びそのコポリマーの重量平均分子量Mwは、50kDa~1,200kDa(ポリスチレンに対するGPCによる)、より好ましくは100kDa~600kDa、更に好ましくは200kDa~450kDaの範囲内である。処理特性及び機械的特性のためには、50kDa以上のポリマーの重量平均分子量が好ましい。
【0087】
[00102] 別の好適な実施形態では、少なくともジオール及び二酸を含むポリマーから、インプラントのマクロ多孔質ネットワークを調製する。特に好適な実施形態では、マクロ多孔質ネットワークの調製に用いられるポリマーは、ジオールが1,4-ブタンジオールであると共に二酸がコハク酸であるポリ(ブチレンスクシネート)(PBS)である。ポリ(ブチレンスクシネート)ポリマーは、他のジオール、他の二酸、又はそれらの組み合わせを用いたコポリマーとすることができる。例えばポリマーは、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、マロン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、及びシュウ酸のうち1つ以上を更に含むポリ(ブチレンスクシネート)コポリマーとすればよい。好適なコポリマーの例は、ポリ(ブチレンスクシネート-コ-アジペート)、ポリ(ブチレンスクシネート-コ-テレフタレート)、ポリ(ブチレンスクシネート-コ-ブチレンメチルコハク酸)、ポリ(ブチレンスクシネート-コ-ブチレンジメチルコハク酸)、ポリ(ブチレンスクシネート-コ-エチレンスクシネート)、及び、ポリ(ブチレンスクシネート-コ-プロピレンスクシネート)である。実施形態において、ポリマーは、ヒドロキシ酸を更に含むポリ(ブチレンスクシネート)コポリマーとすればよい。ヒドロキシ酸の例は、グリコール酸及び乳酸である。また、ポリ(ブチレンスクシネート)ポリマー又はコポリマーは、鎖延長剤、結合剤、架橋剤、及び分岐剤のうち1つ以上も含み得る。例えば、ポリ(ブチレンスクシネート)又はそのコポリマーは、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリメシン酸、クエン酸、グリセロールプロポキシレート、及び酒石酸のうち1つ以上を加えることによって分岐又は架橋させてもよい。ポリ(ブチレンスクシネート)ポリマー又はそのコポリマーを分岐又は架橋するため特に好適な薬剤は、ヒドロキシカルボン酸単位である。好ましくは、ヒドロキシカルボン酸単位は、2つのカルボン酸基と1つのヒドロキシル基、2つのヒドロキシル基と1つのカルボン酸基、3つのカルボン酸基と1つのヒドロキシル基、又は2つのヒドロキシル基と2つのカルボン酸基を有する。1つの好適な実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、分岐剤又は架橋剤としてリンゴ酸を含むポリ(ブチレンスクシネート)から調製される。このポリマーは、リンゴ酸を用いて架橋されたポリ(ブチレンスクシネート)、コハク酸-1,4-ブタンジオール-リンゴ酸コポリエステル、又はリンゴ酸を用いて架橋されたポリ(1,4-ブチレングリコール-コ-コハク酸)と称することができる。リンゴ酸及び他の架橋剤、結合剤、分岐剤、及び鎖延長剤に対する言及は、これらの薬剤を用いて調製された、処理中にこれらの薬剤が更に反応を起こすポリマーを含むことを理解するべきである。例えば、これらの薬剤は重合中に脱水を起こす可能性がある。このため、ポリ(ブチレンスクシネート)-リンゴ酸コポリマーは、コハク酸、1,4-ブタンジオール、及びリンゴ酸から調製されたコポリマーを表す。一実施形態において、ポリ(ブチレンスクシネート)-リンゴ酸コポリマーは更に、グリコール酸及び乳酸のような1つ以上のヒドロキシ酸を含み得る。別の好適な実施形態では、アジペートを用いたポリ(ブチレンスクシネート)のコポリマーを調製するためにリンゴ酸を分岐剤又は架橋剤として使用することができ、これは、リンゴ酸を用いて架橋されたポリ[(ブチレンスクシネート)-コーアジペート]と呼ぶことができる。本明細書において用いられる場合、「ポリ(ブチレンスクシネート)及びコポリマー」は、鎖延長剤、結合剤、架橋剤、及び分岐剤のうち1つ以上を用いて調製されたポリマー及びコポリマーを含む。特に好適な実施形態では、ポリ(ブチレンスクシネート)及びそのコポリマーは、コハク酸及び1,4-ブタンジオール単位を重量で少なくとも70%、より好ましくは80%、更に好ましくは90%含有する。ポリ(ブチレンスクシネート)及びそのコポリマー及び本明細書に記載されている他のものを含む、二酸及びジオールを含むポリマーは、好ましくは、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:gel permeation chromatography)に基づく重量平均分子量(Mw)が、10,000~400,000、より好ましくは50,000~300,000、更に好ましくは100,000~200,000である。特に好適な実施形態では、ポリマー及びコポリマーの重量平均分子量は、50,000~300,000、より好ましくは75,000~300,000である。1つの好適な実施形態では、ポリ(ブチレンスクシネート)又はそのコポリマーを用いて、以下の特性、すなわち、1.23~1.26g/cm3の密度、-31℃~-35℃のガラス転移温度、113℃~117℃の融点、190℃/2.16kgfで2~10g/10分のメルトフローレート(MFR:melt flow rate)、及び30~60MPaの引張強度、のうち1つ以上又は全てを有するマクロ多孔質ネットワークを作製する。
【0088】
[00103] 別の実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの調製に用いられる、P4HB及びそのコポリマー並びにPBS及びそのコポリマーを含む、本明細書に記載されているポリマー及びコポリマーは、水素、炭素、及び/又は酸素の既知の同位体が濃縮されているポリマー及びコポリマーを含む。水素は、1H(プロチウム)、2H(デューテリウム)、及び3H(トリチウム)を含む天然に存在する3つの同位体を有し、それらのうち最も一般的なのは1H同位体である。ポリマー又はコポリマーの同位体含有量は、例えば、ポリマー又はコポリマーが特定の1又は複数の同位体を天然よりも高い比で含有するように濃縮することができる。また、ポリマー又はコポリマーの炭素及び酸素の含有量も、限定ではないが、13C、17O、又は18Oを含む炭素及び酸素の同位体を天然よりも高い比で含有するように濃縮することができる。炭素、水素、及び酸素の他の同位体も、当業者に既知である。P4HBもしくはそのコポリマー又はPBSもしくはそのコポリマーで濃縮される好適な水素同位体はデューテリウムである、すなわち、重水素化P4HBもしくはそのコポリマー、又は重水素化PBSもしくはそのコポリマーである。重水素化率は、少なくとも1%から最大で5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%、又はそれ以上とすることができる。
【0089】
[00104] 好適な実施形態において、マクロ多孔質ネットワークの調製に用いられる、P4HB及びそのコポリマー並びにPBS及びそのコポリマーを含むポリマー及びコポリマーは、水分含有量が低い。これは、高い引張強度、長期的な強度保持、及び良好な保存期間でインプラントを確実に生成可能とするために好ましい。好適な実施形態において、インプラントの調製に用いられるポリマー及びコポリマーは、水分含有量が1,000ppm(0.1wt%)未満、500ppm(0.05wt%)未満、300ppm(0.03wt%)未満、より好ましくは100ppm(0.01wt%)未満、更に好ましくは50ppm(0.005wt%)未満である。
【0090】
[00105] インプラントの調製に用いられる組成物は、エンドトキシン含有量が低いことが望ましい。好適な実施形態では、ポリマー組成物から生成されるインプラントが、カブトガニ血球抽出成分(LAL)アッセイによって求められる1デバイス当たり20エンドトキシン単位未満のエンドトキシン含有量を有するように、エンドトキシン含有量は充分に低い。一実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの調製に用いられるポリマー組成物は、ポリマー又はコポリマーの<2.5EU/gのエンドトキシン含有量を有する。例えば、P4HBポリマーもしくはコポリマー、又はPBSポリマーもしくはコポリマーは、ポリマー又はコポリマーの<2.5EU/gのエンドトキシン含有量を有する。
【0091】
[00106] B.添加剤
[00107] インプラント内に、好ましくはマクロ多孔質ネットワークの作製に用いられるポリマー組成物に、特定の添加剤を組み込んでもよい。一実施形態において、これらの添加剤は、後に処理されてマクロ多孔質ネットワークを生成するペレットを生成するための配合プロセス中に、本明細書で記載されているポリマー又はコポリマーと組み合わされる。例えば、ペレットを押し出すか又はプリントしてマクロ多孔質ネットワークの細糸を形成することができる。別の実施形態では、ペレットをすりつぶして、例えば3Dプリントで更に処理するのに適した粉末を生成することができる。あるいは、例えば3Dプリントで更に処理するのに適した粉末は、添加剤とポリマー又はコポリマーを混合することによって直接形成してもよい。必要ならば、処理に用いられる粉末をふるいにかけて、最適な粒径範囲を選択することができる。別の実施形態では、溶液ベースのプロセスを用いて、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの調製に用いられるポリマー組成物内に添加剤を組み込んでもよい。
【0092】
[00108] 好適な実施形態において、添加剤は生体適合性であり、より好ましくは、添加剤は生体適合性かつ吸収性である。
【0093】
[00109] 一実施形態において、添加剤は核形成剤及び/又は可塑剤とすることができる。これらの添加剤は、所望の結果を生成するために充分な量で、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの調製に用いられるポリマー組成物に加えることができる。一般的に、これらの添加剤は重量で1%~20%の量で加えればよい。核形成剤は、ポリマー、コポリマー、又は混合物の結晶化速度を上昇させるために組み込むことができる。このような薬剤を用いて、例えば、マクロ多孔質ネットワークの製造を容易にすること及びマクロ多孔質ネットワークの機械的特性を向上させることができる。好適な核形成剤は、限定ではないが、クエン酸カルシウム等の有機酸の塩、PHAポリマー及びコポリマーのポリマー又はオリゴマー、PGA、タルク、微粉化雲母、炭酸カルシウム、塩化アンモニウム等の高融点ポリマー、並びにチロシン及びフェニルアラニン等の芳香族アミノ酸を含む。
【0094】
[00110] インプラントのマクロ多孔質ネットワークを調製するためのポリマー組成物内に組み込むことができる可塑剤は、限定ではないが、マレイン酸ジ-n-ブチル、ラウリン酸メチル、フマル酸ジブチル、ジ(2-エチルヘキシル)(ジオクチル)マレエート、パラフィン、ドデカノール、オリーブ油、大豆油、ポリテトラメチレングリコール、オレイン酸メチル、オレイン酸n-プロピル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、エポキシ化アマニ油、2-エチルヘキシルエポキシトレート、グリセロール三酢酸、リノール酸メチル、フマル酸ジブチル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルトリ(n-ブチル)クエン酸、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリ(n-ブチル)、クエン酸トリエチル、ダイマー酸ビス(2-ヒドロキシエチル)、リシノール酸ブチル、グリセリルトリ-(リシノール酸アセチル)、リシノール酸メチル、アセチルリシノール酸n-ブチル、リシノール酸プロピレングリコール、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アゼライン酸ジメチル、アゼライン酸ジ(n-ヘキシル)、リン酸トリブチル、及びそれらの混合物を含む。特に好適な可塑剤はクエン酸エステルである。
【0095】
[00111] C.生物活性剤、細胞、及び組織
[00112] インプラントは、生物活性剤を加えるか、充填するか、被覆するか、又は他の方法で組み合わせることができる。生物活性剤は、多様な理由からインプラントに含めることができる。例えば生物活性剤は、インプラント内への組織内部成長を向上させるため、組織の成熟を向上させるため、活性薬剤の送達を可能とするため、インプラントの湿潤性を向上させるため、感染を防止するため、及び細胞接着を向上させるために、含めることができる。また、生物活性剤は、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク内に組み込んでもよい。
【0096】
[00113] インプラントは、細胞内部成長を刺激するように設計された活性薬剤を含むことができ、これらには、成長因子、細胞接着ポリペプチドを含む細胞接着因子、細胞分化因子、細胞動員因子、細胞受容体、細胞結合因子、細胞シグナル伝達分子、例えばサイトカイン、並びに、細胞移動、細胞分裂、細胞増殖、及び細胞外マトリックス沈着を促進する分子が含まれる。このような活性薬剤は、線維芽細胞増殖因子(FGF:fibroblast growth factor)、形質転換成長因子(TGF:transforming growth factor)、血小板由来成長因子(PDGF:plateletderived growth factor)、上皮成長因子(EGF:epidermal growth factor)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF:granulocyte-macrophage colony stimulation factor)、血管内皮成長因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)、インスリン様成長因子(IGF:insulin-like growth factor)、肝細胞成長因子(HGF:hepatocyte growth factor)、インターロイキン-1-B(IL-1B)、インターロイキン-8(IL-8)、及び神経成長因子(NGF:nerve growth factor)、及びこれらの組み合わせを含む。本明細書で用いられる場合、「細胞接着ポリペプチド」という用語は、細胞表面分子を介して細胞を結合することができる、1分子当たり少なくとも2つのアミノ酸を有する化合物を表す。細胞接着ポリペプチドは、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、フィブリノゲン、I型、II型、及びV型コラーゲンを含む、細胞接着において機能することが知られている細胞外マトリックスのタンパク質、並びに同様の細胞接着特性を有する合成ペプチドのうちいずれかを含む。また、細胞接着ポリペプチドは、結合ドメインを含有する断片又は配列を含む、上述のたんぱく質のいずれかに由来するペプチドも含む。
【0097】
[00114] インプラントは、マクロ多孔質ネットワークの表面の湿潤性を向上させてインプラント表面に流体を容易に吸収させるように、また、細胞接着を促進する及び/又はインプラント表面の水接触角を変更するように設計された湿潤剤を組み込むことができる。湿潤剤の例は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのポリマーを含み、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はこれらのコポリマー、例えばPLURONICS(登録商標)である。他の適切な湿潤剤には、界面活性剤、乳化剤、及びゼラチン等のタンパク質が含まれる。
【0098】
[00115] インプラントは、湿潤特性を更に向上させるため、また、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク構造全体にわたる細胞成長を促進するため、ゲル、ヒドロゲル、又はリビングヒドロゲルハイブリッド(living hydrogel hybrid)を含有することができる。ヒドロゲルハイブリッドは、例えばゼラチン、メタクリル化ゼラチン(GelMa)、シルクゲル、及びヒアルロン酸(HA)ゲルのような生体適合性ヒドロゲルにカプセル化された生体細胞から成る。
【0099】
[00116] インプラントに組み込むことができる他の生物活性剤は、特に抗生物質のような抗菌剤、消毒剤、腫瘍薬剤、瘢痕防止剤、抗炎症剤、麻酔剤、低分子薬、抗接着剤、細胞増殖阻害剤、抗血管新生因子及び血管新生促進因子、免疫調節剤、及び血液凝固剤を含み得る。生物活性剤は、コラーゲン及び抗体等のタンパク質、ペプチド、キトサン等の多糖、アルギン酸塩、ヒアルロン酸及びその誘導体、核酸分子、ステロイド等の低分子量化合物、ヒドロキシアパタイト及びセラミック等の無機材料、又は多血小板血漿等の複雑な混合物とすればよい。適切な抗菌剤は、バシトラシン、ビグアニド、トリクロサン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、リファンピン、バンコマイシン、セファロスポリン、銅、亜鉛、銀、及び金を含む。核酸分子は、DNA、RNA、siRNA、miRNA、アンチセンス、又はアプタマーを含み得る。
【0100】
[00117] また、インプラントは、無細胞真皮マトリックス材料及び小腸粘膜下組織(SIS:small intestinal submucosa)を含む、同種移植材料及び異種移植材料を含み得る。
【0101】
[00118] 別の実施形態において、インプラントは、治療薬又は予防薬の放出制御のためのシステムを組み込むことができる。
【0102】
[00119] 一実施形態において、インプラントは、移植前、移植中、又は移植後、又はそれらの組み合わせにおいて、自家移植、同種移植、又は異種移植の組織が被覆される。自家移植組織及び細胞は、好ましくは、自家脂肪、脂肪吸引物、脂肪組織(fat tissue)、注入可能脂肪、脂肪細胞(adipose tissue)、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞のうち1つ以上である。本明細書で明らかになるように、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク構造は、乳頭インプラントの形状だけでなく、組織及び細胞を保持して組織内部成長を促進することができる大きい表面積を生成するように設計されている。
【0103】
[00120] III.インプラントを調製するための方法
[00121] インプラントを製造するため、多種多様な方法を用いることができる。
【0104】
[00122] 実施形態において、インプラントは、(i)構造的サポート、(ii)組織内部成長のためのマクロ多孔質ネットワーク足場、(iii)脂肪、脂肪吸引物、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含む、細胞、組織、コラーゲン、ヒアルロン酸、及び生物活性剤を送達するためのマクロ多孔質ネットワーク足場、(iv)機械的間隔を提供できる構造、(v)針を用いた注入によって、マクロ多孔質ネットワークの内側に、脂肪、脂肪吸引物、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含む、細胞、組織、コラーゲン、ヒアルロン酸、及び生物活性剤で被覆することができる構造、並びに(vi)圧縮率が、5~15%ひずみで0.1kPa~10MPa、より好ましくは5~15%ひずみで5~500kPaである構造、のうち1つ以上を提供できるように調製される。
【0105】
[00123] A.インプラントの形状
[00124] 実施形態において、インプラントは、製造された場合に3次元であるよう設計されている。実施形態において、インプラントは、NACの乳頭の再建のために使用されるよう設計されている。実施形態において、インプラントは、特定の形状、サイズ、及び突起を有する乳頭を生成するように設計されている。実施形態において、インプラントは、形状、突起、サイズ、及び位置に関して、対側乳頭と一致する乳頭を生成するように設計されている。
【0106】
[00125] インプラントの形状によって、外科医は、組織体積を増大させ、失われた組織又は組織構造を再建し、体に合わせて組織を形成し、組織を拡大し、乳頭機能を回復し、損傷した組織構造を修復し、既存の組織構造を増強し、乳頭の突起を変更することができる。好適な実施形態では、インプラントを用いて乳房切除後の乳頭を再建する。実施形態では、インプラントによって、永久インプラントを使用することなく、軟組織構造の形状を変更又は調整することができる。
【0107】
[00126] 実施形態において、
図1Aを参照すると、乳頭インプラント100は、第1の端部116と、第2の端部117と、第1及び第2の端部間で測定された高さhと、第1の円形ベース111及び第2の円形ベース112を有し、これらの円形ベース間の距離113を有する円筒形状110と、第2の円形ベース112に接続された高さ141を有する半球形状又はドーム形状140と、細孔121を有し、外径141が外殻及びインプラント円周を規定する外殻120と、インプラントの第1の端部に接続された外径151及び厚さ152を有するフランジ150と、を含む。インプラント100は、長手方向軸115及びマクロ多孔質ネットワーク130を含む。マクロ多孔質ネットワーク130は、
図1Aではインプラントの外殻の細孔121を通して部分的に見える。
【0108】
[00127]
図1Bは、
図1Aに示されているインプラント100の底面図である。フランジ150が規定する開口を通して、インプラントの外殻内にマクロ多孔質ネットワーク130が見える。マクロ多孔質ネットワーク130は、円周153及び直径154を有する。また、フランジ150は、細孔155及び外径151と共に示されている。
【0109】
[00128]
図1Cは、
図1Aに示されている乳頭インプラント100の等角図であり、インプラントの円筒形状110、インプラントの外殻の細孔121、及びフランジ150を示す。
【0110】
[00129] 乳頭インプラントの円筒形状及び半球形状は、乳頭に直径及び突起を与えるような形状である。インプラントの「突起」とは、インプラントの第1の端部116と第2の端部117との間の最大距離hを意味する。
【0111】
[00130] 実施形態において、インプラントは、弾丸形状、フランジシリンダ形状、又はシルクハット形状を有する。他の実施形態において、インプラントは、円筒形状の第2の端部の半球形状を含まない。実施形態において、インプラントは、円筒形状又は一端にフランジを含む円筒形状を有する。
【0112】
[00131] 実施形態において、インプラントは、円筒形状の第1の端部で円形ベースから突出するフランジコンポーネントを含まない。実施形態において、フランジコンポーネントは多孔質である。実施形態において、フランジは多孔質ではない。
【0113】
[00132] 実施形態において、インプラントは外殻を含まない。実施形態において、外殻はマクロ多孔質ネットワークを完全に取り囲む。実施形態において、外殻はマクロ多孔質ネットワークを部分的に囲む。実施形態において、外殻はインプラントの第1の端部116を内部に封入しない。
【0114】
[00133] インプラントは、乳頭インプラントとして使用するのに適した任意のサイズを有するように組み立てるか又はプリントすることができる。
【0115】
[00134] 実施形態において、インプラントの寸法は、形状、突起、及びサイズに関して、対側乳頭と一致する乳頭を生成するような形状及びサイズを有することができる。好ましくは、インプラントは、対側乳頭と一致するように、再建された乳頭のサイズ、形状、及び位置の対称性を提供する。
【0116】
[00135] 実施形態において、乳頭インプラントは、乳頭の低い突起、中程度の突起、又は高い突起を与えるようなサイズ及び形状を有することができる。実施形態において、インプラントの第1及び第2の端部間で測定される高さhは、0.1~2cm、より好ましくは0.5~1.5cm、更に好ましくは0.3~1cmである。また、乳頭の突起は、インプラントの円筒形状の直径を選択することによっても制御できる。実施形態において、インプラントの円筒形状の第1及び第2のベースの直径は、2~10mm、より好ましくは4~7mmである。
【0117】
[00136] B.インプラントの構築
[00137] 実施形態において、乳頭インプラントは、開放細孔構造を備えた耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含む。マクロ多孔質ネットワークは細糸を含む。
図2Bは、本発明の一実施形態に従った、
図2Aに示されている乳頭インプラント100のラインA-Aで切った断面図であり、インプラントの外殻120内のインプラントのマクロ多孔質ネットワーク130を示す。マクロ多孔質ネットワークは細糸131を含む。外殻は、外殻厚さ210及び外殻細孔121と共に示されている。インプラントはフランジ150と共に示されている。
図2Cには、マクロ多孔質ネットワーク130の拡大図が細部Cとして示され、マクロ多孔質ネットワークの細糸131を示している。
図2Dは、
図2Aの細部Bの拡大図を示し、これは、外殻120、外殻の細孔121、及び外殻内のマクロ多孔質ネットワーク130を含む。
【0118】
[00138] 実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは、相互に接合された少なくとも2つの隣接する平行面の細糸から形成される。各層内の細糸は同一方向に延出し、相互に概ね平行である。
【0119】
[00139] 実施形態において、マクロ多孔質ネットワークは3Dプリントされる。
【0120】
[00140] 実施形態において、マクロ多孔質ネットワークの細糸は、別々のすなわち個別の層で付与又はプリントされる(例えば、一度に1つずつ層が相互に重ねられる、すなわち積層される)。第1の方向又は角度に向けられた第1の層の細糸の上に、第2の方向又は角度に向けられた細糸を有する第2の層の細糸が付与される。追加の層の細糸を加えることで、複数層の細糸を含む多孔質構造を構築する。このように、異なる向きを有する複数層の細糸を付与することにより、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの上方又は下方から見た場合に、十字交差形、三角形、方形、四辺形、平行四辺形、又は他の多角形のような形状である開放細孔構造を生成する。
【0121】
[00141] 異なる向き又はプリンタ角度(インプラントが3Dプリントされる場合)を有する層の数は、様々に変動し得る。実施形態においては、2~3の異なるタイプの層の向きが使用される。しかしながら、他の実施形態では、3~5、又はそれ以上の異なるタイプの層の向き又はプリント角度が提供される。
【0122】
[00142] マクロ多孔質ネットワークの単一層の細糸内で、各細糸は同一の向き又は方向を有することができる。例えば、各層の細糸は同一方向に延出することができ、相互に概ね平行である。
【0123】
[00143] 実施形態において、連続する層の平行な細糸間の角度は0~179度の範囲とすればよいが、より好ましくは0~90度、更に好ましくは0~60度である。
【0124】
[00144]
図3Bは、
図3Aに示されている乳頭インプラント100のラインF-Fで切った断面図であり、一実施形態における、平行な細糸の層間の角度が60度に配置された平行な細糸の層131、132、及び133を示す。細糸131、132、及び133の配置は、積層された平行な細糸の層の十字交差構造を提供する。また、
図3Bは、インプラントのフランジ150及び外殻120も示す。
図3Cには、
図3Aに示されている乳頭インプラント100のラインE-Eで切ったインプラントの断面図が示され、インプラントの外殻120内のマクロ多孔質ネットワーク130を示している。また、
図3Cは、フランジ150及びインプラントの外殻の細孔121も示す。
【0125】
[00145] 実施形態において、インプラントは細糸の層を用いて構築され、層内の細糸はコードとして配置されている。この実施形態では、例えば、連続した細糸をプリントして層内の細糸を形成するのではなく、別個の細糸をコードとしてプリントすることによって、層を形成する。従ってこの実施形態では、ある層内の細糸は、その層内で相互に接続されず、円筒形状の円周上で弧を形成しない。細糸は、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの円筒形状の円周上に終点を有する。細糸のコードを用いてインプラントのマクロ多孔質ネットワークを形成すると、インプラント又はマクロ多孔質ネットワークの円周上に弧を形成する細糸によってマクロ多孔質ネットワークを形成するよりも多孔質のインプラント構造が得られる。より多孔質のネットワークは、インプラント内の組織内部成長を促進するのに有利である。
【0126】
[00146] 実施形態では、連続する層の平行な細糸間の角度を変動させることにより、様々な圧縮率値を有するインプラントを構築できる。例えば、この角度を変動させて、5~15%ひずみで0.1kPa~10MPa、より好ましくは5~15%ひずみで1~10MPa、更に好ましくは5~15%ひずみで1~5MPaの範囲の圧縮率値を有するインプラントを形成することができる。
【0127】
[00147] 実施形態において、インプラントは、少なくとも1つの層の平行な細糸が別の層の平行な細糸に対して1~60度の角度を有する複数層の平行な細糸を含む。実施形態において、インプラントは複数層の細糸を含み、第1の層の平行な細糸は隣接する層の細糸に対して角度(α)を有し、αは0~60度の間の2、3、又は5の倍数である。実施形態において、角度αは、別の隣接する層の平行な細糸に対して18度、20度、24度、30度、36度、45度、又は60度である。
【0128】
[00148] 実施形態において、1つの層内の細糸間の距離は等しい。しかしながら、他の実施形態(図示せず)では、単一層内の細糸間の距離は等しくなく、その層内で変動するか、又は異なる層間で変動する場合がある。
【0129】
[00149] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、相互に接合された少なくとも2つの層の細糸を含む。他の実施形態において、マクロ多孔質ネットワークの全ての層の細糸は、少なくとも1つの他の層の細糸に接合されている。
【0130】
[00150] 実施形態において、相互に接合された少なくとも2つの隣接する平行面の細糸を含むインプラントマクロ多孔質ネットワークは、隣接した面又は隣接していない面の細糸が相互に同じ向き又は異なる向きを有するように調製できる。相互に同じ向きを有する隣接層の細糸を含むマクロ多孔質ネットワークの形成を用いて、インプラントの多孔性を増大すること又はインプラントの圧縮率を変更することができる。
【0131】
[00151] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの3次元アーキテクチャは、平行な細糸の層間にずれ又は角度が存在しない2つ以上の隣接する層の平行な細糸を含み得る。これらの実施形態では、マクロ多孔質ネットワークの隣接する層内の細糸は、それらの間に角度が存在しないように、また、それらが十字交差構造を形成しないように相互に重ねられる。各層内の細糸が同じ向きを有する隣接層の部分を組み込むことで、より大きい細孔サイズを有するインプラントを生成できる。例えば、まず、連続した層の平行な細糸を前の層に対して60度の角度に配置し、次の部分では隣接する層に角度を付けず、次いで連続した層を再び前の層に対して60度の角度に配置することで、インプラントを形成すればよい。
【0132】
[00152] インプラントのマクロ多孔質ネットワークを調製するため用いられるアーキテクチャは、インプラントの所望の特性に基づいて選択すればよい。例えば、各層内の細糸を、相互に0度、60度、及び120度の角度にプリントして、
図3Bに示されているような三角形の開放細孔構造を形成することができる。
【0133】
[00153] また、複数層のプリントを反復した後にプリント角度を変えることによって、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの圧縮率を変更することができる。例えば、2つの細糸層を0度の角度でプリントし、次いでプリント角度を変えて2つの細糸層を60度の角度でプリントし、その後、例えば120度の角度のような別の角度で2つの細糸層をプリントすればよい。次いでこのプロセスを繰り返して、多孔性構造を所望の寸法まで構築すればよい。更に大きい細孔サイズを生成するには、複数(例えば3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上)の層を同じ角度でプリント(すなわち反復)した後、プリント角度を変えればよい。本発明によれば、これらの角度を変動させることで、2つ以上の細糸層を同じ角度でプリントした後にプリント角度を変えて様々な形状の開放細孔構造を形成できることは理解されよう。
【0134】
[00154] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、幅又は直径が75μm~10mm、より好ましくは100μm~2mmである細孔を有する。実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの細孔サイズは同一である。実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークでは複数の細孔サイズが混在している。
【0135】
[00155] 好ましくは、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、マクロ多孔質ネットワークに細胞が定着し組織が侵入するのに適した大きい表面積及び大きい空隙容量を提供するアーキテクチャを有する。
【0136】
[00156] 実施形態において、細糸の平均直径は、50~800μm、より好ましくは100~600μm、更に好ましくは150~550μmである。実施形態において、インプラントの細糸間の距離は、50μm~1mm、より好ましくは100μm~1mm、更に好ましくは200μm~1mmである。細糸の平均直径及び細糸間の距離は、圧縮率、多孔性、及び充填密度を含む、望ましいインプラントのマクロ多孔質ネットワークの特性に応じて選択すればよい。充填密度は、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの細糸材料が占める体積をマクロ多孔質ネットワークの全体積で除算した比を百分率で表したものとして規定される。実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの充填密度は、1~60%、より好ましくは5~25%である。
【0137】
[00157] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークのアーキテクチャは好ましくは、マクロ多孔質ネットワークの内部を、同種移植又は異種移植細胞、好ましくは自家細胞で被覆することを可能とする充分な多孔性を提供する。自家細胞は、限定ではないが、自家脂肪、脂肪吸引物、脂肪充填、注入可能脂肪、線維芽細胞、及び幹細胞を含む。また、インプラントのマクロ多孔質ネットワークのアーキテクチャは好ましくは、マクロ多孔質ネットワークの内面を、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸又はその誘導体で被覆できるように設計されている。
【0138】
[00158] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの細孔の寸法は、注入によって生物活性剤、細胞、脂肪、及び他の組成物を送達するため、マクロ多孔質ネットワークの細孔内に針を挿入できるほど充分な大きさである。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークのアーキテクチャは、12~21ゲージの針をマクロ多孔質ネットワーク内に挿入できるように設計されている。この特性により、シリンジを用いて、マクロ多孔質ネットワークを損傷することなく、マクロ多孔質ネットワークに、脂肪を含めて、細胞、コラーゲン、生物活性剤、及び添加剤を加えることができる。好ましくは、マクロ多孔質ネットワークは、外径が0.5~3mmの針を開放細孔構造内に挿入することを可能とする。
【0139】
[00159] インプラントのマクロ多孔質ネットワークの細孔の多孔性及び形状は、各層の細糸間のずれ又は角度を変更することによって調整できる。
【0140】
[00160] 実施形態において、インプラントの外殻は、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの周辺部において連続した層の平行な細糸を封入している同心円状に積層された細糸から調製することができる。
【0141】
[00161] 実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、外部外殻(例えば外殻120)又は被覆を含む。実施形態において、外殻は、外面と、この外殻の内部体積を取り囲む内面と、を有する。外部外殻又は被覆は、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの細糸を部分的に又は全体的に収容することができる。実施形態において、外殻又は被覆の厚さは、10μm~5mm、より好ましくは100μm~1mmである。実施形態において、外殻は、積層された層の平行な細糸の周辺部における同心円状に積層された細糸から形成される。外殻は3Dプリントすることができる。実施形態において、外殻の厚さは、2、3、4、5、又はそれ以上の並置した細糸を含む。実施形態において、外殻は3Dプリントされ、充填密度は20%~100%、より好ましくは50%~100%である。実施形態では、インプラントの充填密度を用いてインプラントの吸収速度を制御することができる。実施形態では、高い充填外殻密度を用いて吸収速度の遅いインプラントを生成し、低い充填外殻密度を用いて吸収速度の速いインプラントを生成することができる。実施形態において、マクロ多孔質ネットワークはポリマー組成物で被覆されている。
【0142】
[00162] 実施形態において、外殻又は被覆は針を通すことができる。
【0143】
[00163] 実施形態において、外殻は相互接続された細孔を有する発泡体を含む。実施形態において、外殻は連続気泡であり、より好ましくは、ポリ-4-ヒドロキシブチラートもしくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンスクシネート)もしくはそのコポリマーを含む連続気泡である。
【0144】
[00164] 実施形態において、外殻はコラーゲンを含み、より好ましくはI型コラーゲンを含む。実施形態において、外殻はコラーゲンを含み、厚さが0.1~5mmであり、より好ましくは0.5~3mmである。
【0145】
[00165] 実施形態において、インプラントは複数の層の平行な細糸を含み、少なくとも1つの層の平行な細糸は別の層の平行な細糸に対して1~60度の角度を有し、インプラントは更に、複数の層の平行な細糸を取り囲む外殻を含む。実施形態において、インプラントは複数の層の平行な細糸を含み、各層の平行な細糸は別の隣接する層の平行な細糸に対して1~60度の角度を有し、より好ましくは18度、20度、30度、36度、45度、又は60度の角度を有し、インプラントは更に、複数の層の平行な細糸を取り囲む外殻を含む。
【0146】
[00166] 実施形態において、インプラントは外殻を含み、この外殻は、外面の粗さを最小限に抑えるように熱処理されている。
【0147】
[00167] 実施形態において、インプラントは、3Dプリントによって形成された円筒形状の第2の端部に半球形状を含む。半球形状は細糸から形成することができる。実施形態において、半球形状及び円筒形状はマクロ多孔質ネットワークを封入し、マクロ多孔質ネットワークは円筒形状内で半球形状内へ延出している。実施形態において、円筒形状の内部を占めるマクロ多孔質ネットワークのプリントパターンは、半球形状の内部を占めるマクロ多孔質ネットワークのプリントパターンと同一である。
【0148】
[00168] 実施形態において、インプラントは、3Dプリントによって形成された円筒形状の第1の円形ベースから突出しているフランジを含む。フランジコンポーネントは、好ましくは細糸の多孔質ネットワークから形成される。
【0149】
[00169] 一実施形態において、インプラントは、インプラントのマクロ多孔質ネットワークを構築するため3Dプリントを用いて調製される。マクロ多孔質ネットワークの3Dプリントは、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの形状の精密な制御を可能とするので、極めて望ましい。3Dプリントに適した方法には、熱溶解(fused)細糸製造、熱溶解ペレット積層、溶融押出積層、選択的レーザ溶融、凝固浴槽を用いたスラリ及び溶液のプリント、並びに、結合溶液及び粉末顆粒を用いたプリントが含まれる。好ましくは、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは溶融押出積層によって調製される。
【0150】
[00170]
図1Aから
図1C、
図2Aから
図2D、及び
図3Aから
図3Cに示されている乳頭インプラントは、溶融押出積層によって製造できる。インプラントは、様々な充填密度及び細糸間の様々な角度でプリントすることができる。上述のように、実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの充填密度は、1~60%、より好ましくは5~25%であり、細糸の平均直径は、50~800μm、より好ましくは100~600μm、更に好ましくは150~550μmであり、インプラントの細糸間の距離は、50μm~1mm、より好ましくは100μm~1mm、更に好ましくは200μm~1mmであり、隣接する層の細糸間の角度は、0~179度の範囲とすればよいが、より好ましくは0~90度、更に好ましくは0~60度である。これらのパラメータは、圧縮率及び多孔性を含めて、マクロ多孔質ネットワーク又はインプラントに望ましい特性に応じて選択すればよい。例えば、細糸のサイズ、細糸間の間隔、及びプリントパターンが一定のままである場合、充填密度を低下させることによってマクロ多孔質ネットワークの多孔性を低下させることができる。細糸のサイズ、細糸間の間隔、及びプリントパターンが一定のままである場合、充填密度が低下すると圧縮率も低下する。インプラントの本体の例示的な充填範囲は、1~50であり、より好ましくは5~20%である。インプラントの外殻の例示的な充填範囲は、50%~100%であり、より好ましくは80~100%である。
【0151】
[00171] 典型的な手順において、インプラントは、吸収性ポリマー又はその混合物を含む組成物の溶融押出積層によって調製される。
【0152】
[00172] 吸収性ポリマー又は混合物は好ましくは、固有粘度の大きな低下を回避するため、プリント前に乾燥させる。好ましくは、ポリマー又は混合物は、重量測定法で測定されるプリント対象の組成物の水分含有量が0.5wt.%以下であるように、より好ましくは0.05wt.%以下であるように乾燥させる。ポリマー又は混合物は、真空内で乾燥させることができる。特に好適な方法において、ポリマー又は混合物は、少なくとも10mbar、より好ましくは少なくとも0.8mbarの真空下で真空チャンバ内で乾燥させて、重量で0.03%未満の水分含有量にする。また、乾燥プロセスでは、ポリマーの融点未満の高温を用いてもよい。あるいは、溶媒内への抽出及びポリマーの再沈殿によって、又は乾燥剤の使用によって、ポリマーを乾燥させてもよい。ポリマー又は混合物の水分含有量は、Arizona InstrumentsのVaporPro Moisture Analyzer又は同様の機器を用いて求めることができる。
【0153】
[00173] 実施形態において、インプラントは、ポリ-4-ヒドロキシブチラート(P4HB)の溶融押出積層によって形成される。P4HBポリマー(Mwは100~600kDa)は、溶融押出積層の前にペレット化され、好ましくは上述のように乾燥させる。インプラントのマクロ多孔質ネットワークのプリントに適した3Dプリンタは、Arburg Freeformer 3Dプリンタである。例えば表1に示されているプリントパラメータ、Arburg Freeformer 3Dプリンタ、及びインプラントのための3D CAM(コンピュータ支援設計モデル)を用いて、P4HBペレットを3Dプリントすることで、マクロ多孔質ネットワーク(例えば130)(
図1から
図3の例に示されている)を備えた乳頭インプラント(例えば100)を形成できる。P4HBポリマーからプリントされる3D細糸の平均直径は、インプラントの圧縮率、多孔性、又は充填密度(すなわち、3Dプリントされるデバイスの輪郭間で1mm当たり3Dプリントされる細糸の数)を含む、望ましいインプラントの特性に基づいて選択される。好ましくは、平均細糸直径又は幅は、50~800μm、より好ましくは100~600μm、更に好ましくは150~550μmである。
[00174]
【0154】
【0155】
[00175] 別の実施形態では、表2に示されているパラメータを用いて、ポリ(ブチレンスクシネート)又はそのコポリマーを含む組成物を用いたインプラントを3Dプリントすることができる。
[00176]
【0156】
【0157】
[00177] C.インプラントの特性
[00178] 実施形態において、マクロ多孔質ネットワーク及び任意選択的な外殻の機械的特性は、移植後3~6か月で低下する初期圧縮率を有するインプラントを提供するように設計されている。
【0158】
[00179] 一実施形態において、インプラントの圧縮率は、5~15%ひずみで0.1kPa~10MPa、より好ましくは5~15%ひずみで1MPa~10MPa、更に好ましくは5~15%ひずみで1MPa~5Mpaである。
【0159】
[00180] 実施形態において、乳頭インプラントのマクロ多孔質ネットワークに存在する面状の細糸は、ポリマー組成物から形成される。ポリマー組成物は好ましくは、以下の特性、すなわち、(i)100%より大きい破断点伸び、(ii)200%より大きい破断点伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張係数、及び(viii)25MPaより高い引張強度、のうち1つ以上を有する。
【0160】
[00181] 実施形態において、乳頭インプラントのマクロ多孔質ネットワークに存在する面状の細糸は、以下の特性、すなわち、(i)0.1~200N、1~100N、又は2~50Nの破壊荷重、(ii)10%~1,000%、より好ましくは25%~500%、更に好ましくは100%又は200%より大きい破断点伸び、及び(iii)0.05~1,000MPa、より好ましくは0.1~200MPaの弾性係数、のうち1つ以上を有する。
【0161】
[00182] インプラントのマクロ多孔質ネットワーク内での組織内部成長を可能とするため、マクロ多孔質ネットワークは、細胞がインプラントのマクロ多孔質ネットワークに侵入すること及び増殖することを可能とするほど長い強度保持を持たなければならない。実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、2週間で少なくとも25%、より好ましくは2週間で少なくとも50%、更に好ましくは4週間で少なくとも50%の強度保持を有する。他の実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、インプラントに作用する機械的な力を支持するように、また、マクロ多孔質ネットワークから再生宿主組織への機械的な力の安定した移行を可能とするように設計されている。特に、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、インプラントに作用する機械的な力を支持するように、また、新しい宿主組織への機械的な力の安定した移行を可能とするように設計されている。
【0162】
[00183] D.インプラントの他の特徴
[00184] インプラント又はインプラントのマクロ多孔質ネットワークは、所望のインプラント又はマクロ多孔質ネットワークの形状を与えるため、はさみ、刃物、又は鋭い切断器具、又は熱ナイフ(thermal knife)を用いてトリミング又は切断することができる。また、インプラント又はマクロ多孔質ネットワークは、レーザ切断技法を用いて所望の形状に切断できる。この技法は用途が広く、重要なことに、鋭いエッジの無い整形インプラント及びマクロ多孔質ネットワークを提供できるので、細糸ベースのインプラントを整形する際には特に有利であり得る。
【0163】
[00185] インプラントは、縫合糸を用いることなく身体に固定できるように、かぎ部(barb)又はびょう(tack)等の保持具を含み得る。インプラントは好ましくは、インプラントの第1の円形ベースの円周上又はフランジ上に保持具を含む。実施形態において、保持具は好ましくはインプラント上に配置されて、インプラントを胸部に固定することを可能とする。
【0164】
[00186] インプラントは、例えば縫合糸及び/又はステープルを用いてインプラントを身体に固定できるように、縫合タブを含み得る。タブの数は様々に変動し得る。実施形態において、インプラントは、1、2、3、4、又はそれ以上のタブを含む。インプラントに取り付けられたタブは、機械的負荷に耐えるように、また、移植後のインプラントの移動を防止するためインプラント内で充分な組織の内部成長を可能とするように、インビボで充分な強度保持を持たなければならない。好適な実施形態において、インプラントに取り付けられたタブの縫合引き抜き強さは10Nより大きく、より好ましくは20Nより大きい。
【0165】
[00187] E.インプラントの被覆及び充填
[00188] インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、インプラント内での組織内部成長を促進すると共に可能にする連続的な経路が全体に存在するネットワークを含む。また、連続的な経路によって、脂肪及び脂肪細胞を含めて、生物活性剤、コラーゲン、ヒアルロン酸又はその誘導体、添加剤、及び細胞のうち1つ以上で、マクロ多孔質ネットワーク全体を被覆することができる。
【0166】
[00189] 例えば60%未満、又は5~25%の低い充填密度を有するマクロ多孔質ネットワークが好ましい。その理由は、これにより大きい空隙が提供されて、例えば、脂肪、脂肪吸引物、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含む、細胞、コラーゲン、及び生物活性剤でその空隙を占めることができるからである。一実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの空隙の25%~100%、より好ましくは75%~100%が、脂肪、脂肪吸引物、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含む、細胞、コラーゲン、及び生物活性剤のうち1つ以上で充填される。
【0167】
[00190] 細胞及び他の組成物、例えばコラーゲン、ヒアルロン酸又はその誘導体、及び他の生物活性剤等は、移植前、移植後、又は移植の前と後の双方、マクロ多孔質ネットワーク上に被覆することができる。
【0168】
[00191] 実施形態において、インプラントは被覆を用いて製造され、及び/又は、マクロ多孔質ネットワークの一部もしくは全体は担体として用いられる。例えばマクロ多孔質ネットワークは、マクロ多孔質ネットワークの空隙の一部又は全体に、自家移植、同種移植、及び異種移植細胞を含む細胞のうち1つ以上を配置する(populate)ことによって製造され得る。インプラントのマクロ多孔質ネットワークの空隙内へ挿入し、マクロ多孔質ネットワークの表面上に被覆することができる細胞の例は、線維芽細胞及び幹細胞を含む。好適な実施形態では、自家脂肪、脂肪吸引物、又は注入可能脂肪が、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク上に被覆されるか又はインプラントのマクロ多孔質ネットワークの空隙内へ挿入される。更に別の実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークを、1つ以上の生物活性剤で被覆するか、又は部分的にもしくは全体的に充填することができる。インプラントのマクロ多孔質ネットワーク上に被覆するか又はインプラントのマクロ多孔質ネットワークを部分的にもしくは全体的に充填するために使用できる特に好適な生物活性剤は、コラーゲン及びヒアルロン酸又はその誘導体を含む。他の実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークを1つ以上の抗生物質で被覆してもよい。
【0169】
[00192] 細胞、生物活性剤、及び他の添加剤でインプラントのマクロ多孔質ネットワークを被覆し、その空隙を充填するために、任意の適切な方法を用いることができる。実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、注入、スプレー、又はディップ被覆によって、細胞、生物活性剤、及び他の添加剤が充填又は被覆される。コラーゲンは、被覆及び凍結乾燥によってインプラントのマクロ多孔質ネットワークに塗布することができる。特に好適な実施形態では、好ましくはマクロ多孔質ネットワークを損傷することなくインプラントのマクロ多孔質ネットワーク内へ挿入できる針を用いた注入によって、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、細胞、生物活性剤、及び/又は他の添加剤が被覆されるか、又は部分的にもしくは完全に充填され得る。一実施形態において、細胞、脂肪、脂肪吸引物、生物活性剤、コラーゲン、ヒアルロン酸又はその誘導体、及び他の添加剤の注入に使用される針は、0.5mm~5mmの外径を有する。
【0170】
[00193] IV.インプラントを移植するための方法
[00194] 実施形態において、インプラントは身体内に移植される。好ましくは、インプラントは、再建、リモデリング、修復、及び/又は再生の部位内に移植される。実施形態において、インプラントは、乳頭を形成し、乳頭を再整形し、乳頭を再建し、乳頭を変更し、又は、損傷したかもしくは外科的に除去された組織を置換するため、患者に移植される。
【0171】
[00195] 好適な実施形態において、インプラントは、患者の胸の膨らみ上の組織封入部内に移植される。実施形態では、移植後に、結合組織及び/又は血管系がインプラントのマクロ多孔質ネットワーク内に侵入する。特に好適な実施形態において、インプラントは吸収性材料を含み、この吸収性材料が分解した空間内にも結合組織及び/又は血管系が侵入する。移植前に、又は、より好ましくは移植後に、マクロ多孔質ネットワークの細孔に細胞が定着することができ、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの細孔に、組織、血管、又はそれらの組み合わせが侵入することができる。
【0172】
[00196] インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、移植前又は移植後に、移植細胞、肝細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、及び/又は組織で被覆又は充填することができる。実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、移植の前又は後に、分化した細胞で被覆又は充填される。分化した細胞は、特定の形態及び機能を有する。一例は脂肪細胞である。実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、移植の前又は後に注入によって、より好ましくは、インプラントのマクロ多孔質ネットワークを損傷しない針を用いて、細胞が配置される。また、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、移植前に、血小板、細胞外脂肪マトリックスタンパク質、ゲル、ヒドロゲル、及び生物活性剤で被覆又は充填することができる。一実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、例えば抗生物質の溶液にインプラントを浸すことによって、移植前に抗生物質で被覆できる。
【0173】
[00197] インプラントを用いて、患者に自家細胞及び組織を送達することができる。自家組織は好ましくは、自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び肝細胞のうち1つ以上である。
【0174】
[00198] インプラントを用いて、患者に脂肪組織を送達することができる。特に好適な実施形態では、インプラントの移植の前又は後に自家脂肪組織を調製し、インプラントの移植の前又は後にインプラントのマクロ多孔質ネットワークに注入するか又は他の方法で挿入又は被覆する。自家脂肪組織は好ましくは、患者の身体上のドナー部位での脂肪吸引によって調製される。遠心分離の後、血液成分から脂肪細胞を含む脂質相を分離し、移植前にインプラントのマクロ多孔質ネットワークに結合させるか、又は、移植後にインプラントのマクロ多孔質ネットワークに注入するかもしくは他の方法で挿入する。一実施形態において、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、マクロ多孔質ネットワークの全体積の1%~50%、より好ましくはマクロ多孔質ネットワークの全体積の1%~20%である体積の脂肪吸引物が注入又は充填される。
【0175】
[00199] 別の実施形態において、患者から取得された脂肪吸引脂肪組織は、この脂肪吸引物をインプラントのマクロ多孔質ネットワークに加える前に、極めて小さい繊維又は粒子等の生体又は合成マトリックスと混合することができる。この実施形態において、加えたマトリックスは、脂肪の微小球を保持又は結合するように、また、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク内でそれらを分散及び維持するように機能する。
【0176】
[00200] 一実施形態において、インプラントは胸部の組織の膨らみ上に移植される。一実施形態において、インプラントは患者の両胸の組織の膨らみ上に移植される。
【0177】
[00201] 特に好適な実施形態において、インプラントは、乳房切除を受けた患者に移植される。
【0178】
[00202] 一実施形態において、インプラントは、乳頭再建の部位に形成された組織封入部に挿入される。
【0179】
[00203] 好適な実施形態では、患者に切開を行って、乳頭インプラントを受容するように構成された組織封入部を生成することと、組織封入部内に乳頭インプラントを挿入することと、を含む方法によって、インプラントを移植する。組織封入部は、乳頭インプラントの周囲に適合するように構成されている。実施形態において、インプラントを移植する方法は、対置できる縁部を有する組織フラップを生成するように切開を構成することを含み、縁部を合わせた場合に、組織フラップは、組織フラップの内面が乳頭インプラントに接触するように乳頭インプラントを受容する空隙を形成するようになっている。実施形態において、インプラントを移植する方法は、CV-flap切開経路、S-flap切開経路、又はstar-flap切開経路の切開を行うことを含む。
【0180】
[00204] 一実施形態では、(i)再建された患者の胸の膨らみに1以上の切開を行って自由に動く皮膚フラップを生成することと、(ii)皮膚フラップを操作及び固定して突出した組織封入部を生成することと、(iii)組織封入部内に乳頭インプラントを挿入することと、(iv)乳頭インプラントの外面に対して患者の組織を対向させることと、(v)組織封入部を固定して組織封入部内にインプラントを封入することと、を含む方法によって、インプラントを移植する。一実施形態において、方法は更に、皮膚フラップを縫合して突出した組織封入部を形成することを含む。一実施形態において、方法は更に、組織封入部を縫合して組織封入部内にインプラントを封入することを含む。実施形態において、組織封入部は、インプラントと患者の組織との間にデッドスペースが存在するとしても極めてわずかしか存在しないようなサイズを有する。実施形態において、組織封入部は、インプラントの体積に適合するようなサイズを有する。
【0181】
[00205] 実施形態において、移植の方法は、インプラントの円筒形状の第2の端部よりも後方にインプラントの円筒形状の第1の端部を移植することを含む。特に好適な実施形態において、移植の方法は、インプラントの第2の端部よりも後方にインプラントの円筒形状の第1の端部を移植することを含む。実施形態において、インプラントの半球形状は患者の皮膚の下方に移植され、インプラントの円筒形状の第1の端部は患者の胸の膨らみ上に移植される。
【0182】
[00206] 実施形態において、インプラントは、インプラントの円筒形状の第1の端部上にフランジを含み、移植の方法は、胸の膨らみ上でインプラントの円筒形状の第2の端部よりも後方にインプラントのフランジを移植することを含む。
【0183】
[00207] インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、移植の前又は後に細胞及び組織で被覆又は充填することができ、また、サイトカイン、血小板、及び細胞外脂肪マトリックスタンパク質で被覆又は充填することができる。また、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、患者の病気の治療用の遺伝子を含むように遺伝子組み換えされた肝細胞のような他の組織細胞で被覆又は充填してもよい。
【0184】
[00208] 一実施形態において、インプラントは、小切開を介した低侵襲手段による送達を可能とする特性を有する。インプラントは例えば、小切開を介した送達を可能とするように丸めるか、折り畳むか、又は圧縮することができるように設計され得る。一実施形態において、インプラントは3次元形状を有し、切開を介して組織封入部内へ送達された後に自力で元の3次元形状に戻ることができる形状記憶特性を有する。例えばインプラントは、小さい直径の円筒形状に丸めることで一時的に変形させ、挿入具を用いて送達し、次いでインビボで元の3次元形状を自力で回復させることができる。
【0185】
[00209] 実施例
[00210] 本発明の実施形態は、以下の非限定的な実施例を参照することで更に理解されるであろう。
【0186】
[00211] 実施例1:プリントされたP4HB細糸から作製された内部細糸構造を備え、フランジを備えず、100%充填及び円形細孔の外殻を備える3Dプリント乳頭インプラント
【0187】
[00212] 垂直プランジャが装着された垂直押し出し機に送り込まれる水平押し出し機と可動ステージとを含む溶融押出積層(MED:melt extrusion deposition)ベースの3Dプリンタのホッパーに、ポリ-4-ヒドロキシブチラートすなわちP4HB(Tepha,Inc.、Mwは300kDa)のペレットを投入した。可動ステージ及びプリンタヘッドは構築チャンバ内に収容した。ペレットは、平均直径が3.5mm、水分含有量が100ppm未満であり、シリカベッドを介して乾燥させた空気パージを用いてホッパー内で乾燥状態に保った。水平押し出し機の温度プロファイルは、構築チャンバで10℃、第1のバレルゾーンで100℃、第2のバレルゾーンで135℃、押し出しゾーンで185℃(プリントヘッド温度)に設定した。背圧は50bar(5MPa)に設定し、溶融スクリュー速度は4m/分に設定した。回復ストロークは6mm、デコ速度は2mm/秒であった。デコストロークは4mmであり、液滴アスペクト比は1.13であった。押し出し機(プリントヘッド)のノズル開口の直径は0.2mmであった。3DプリンタにSTLファイルをロードして、
図4及び
図5に示されているインプラントの開放多孔質足場構造をプリントした。プリントされた乳頭インプラントの高さは12mmで、ベース円筒形の直径は11.2mmであった。インプラント外殻を50液滴/秒及び20%充填でプリントした。外殻は100%充填で0.7mm厚さであり、4mmの等しい間隔に分散した3mm直径の円形細孔を形成した。インプラントの内側を240液滴/秒及び10%充填密度でプリントした。
【0188】
[00213] 実施例2:プリントされたP4HB細糸から作製された内部細糸構造及び多孔質フランジを備える3Dプリント乳頭インプラント
【0189】
[00214] 外径13.2mm、高さ3mm、100%充填密度、及び3mmマクロ孔で、同じプリント設定を用いて多孔質フランジをプリントしたことを除いて、実施例1で記載したように3Dプリント乳頭インプラントを調製した。
【0190】
[00215] 実施例3:プリントされたP4HB細糸から作製された内部細糸構造を備え、フランジを備えず、60%充填の外殻を備える3Dプリント乳頭インプラント
【0191】
[00216] 外殻が100%でなく60%の充填を有すると共に外殻が円形細孔を持たないことを除いて、
図4に示されている同じ構造で実施例1で記載したように3Dプリント乳頭インプラントを調製した。
【0192】
[00217] 実施例4:プリントされたポリ(ブチレンスクシネート)すなわちPBSの細糸から作製された内部細糸構造を備え、フランジを備えず、100%充填の外殻を備える3Dプリント乳頭インプラント
【0193】
[00218] P4HBペレットでなくポリブチレンスクシネート(PBS)ペレットを用いたことを除いて、実施例1で記載したのと同じ構造で3Dプリント乳頭インプラントを調製した。同じ3Dプリント機器及びSTLファイルを用いたが、以下のプリント設定を用いた。すなわち、水平押し出し機の温度プロファイルは、構築チャンバで80℃、第1のバレルゾーンで110℃、第2のバレルゾーンで150℃、押し出しゾーンで200℃(プリントヘッド温度)に設定した。背圧は50bar(5MPa)に設定し、溶融スクリュー速度は4m/分に設定した。回復ストロークは6mm、デコ速度は2mm/秒であった。デコストロークは4mmであり、液滴アスペクト比は1.64であった。
【0194】
[00219] 実施例5:プリントされたP4HB細糸から作製された内部細糸構造、20%、25%、及び30%充填、多孔質フランジを備え、外殻を備えない3Dプリント乳頭インプラント
【0195】
[00220] 垂直プランジャが装着された垂直押し出し機内に送り込まれる水平押し出し機と可動ステージとを含む溶融押出積層(MED)ベースの3Dプリンタのホッパーに、ポリ-4-ヒドロキシブチラートすなわちP4HB(Tepha,Inc.、Mwは300kDa)のペレットを投入した。可動ステージ及びプリンタヘッドは構築チャンバ内に収容した。ペレットは、平均直径が3.5mm、水分含有量が100ppm未満であり、シリカベッドを介して乾燥させた空気パージを用いてホッパー内で乾燥状態に保った。水平押し出し機の温度プロファイルは、構築チャンバで12~14℃、第1のバレルゾーンで100℃、第2のバレルゾーンで135℃、押し出しゾーンで185℃(プリントヘッド温度)に設定した。背圧は50bar(5MPa)に設定し、溶融スクリュー速度は4m/分に設定した。回復ストロークは6mm、デコ速度は2mm/秒であった。デコストロークは4mmであり、液滴アスペクト比は1.13であった。押し出し機(プリントヘッド)のノズル開口の直径は0.2mmであった。3DプリンタにSTLファイルをロードして、
図6Aから
図6Iに示されているインプラントの3つの開放多孔質足場構造をプリントした。プリントされた乳頭インプラントの高さは12mmで、ベース円筒形の直径は10.2mmであった。各インプラントを多孔質フランジと共にプリントした。各インプラントを平行な細糸の層と共にプリントした。各層の細糸は、隣接する層の細糸に対して45度(45°)の角度に配置した。プリントした細糸の平均直径は200ミクロンであった。充填物は240液滴/秒でプリントし、各インプラントの充填量はそれぞれ異なった。すなわち、
図6A(上面図)、
図6B(下面図)、及び
図6C(側面図)に20%充填が示され、
図6D(上面図)、
図6E(下面図)、及び
図6F(側面図)に25%充填が示され、
図6G(上面図)、
図6H(下面図)、及び
図6I(側面図)に30%充填が示されている。表3に、半径方向(x方向)に繰り返し圧縮を行った場合の各インプラントの機械的特性を報告する。インプラントの充填が20%から30%に増大すると、17%ひずみの圧縮荷重は22.407Nから53.275Nに増大し、4~10%ひずみの剛性は1.19から2.009N/mmに増大し、14~17%ひずみの剛性は1.762から5.867N/mmに増大した。各インプラントについて、インプラントの体積当たりの表面積を求めた。20%、25%、及び30%充填のインプラントの体積当たりの表面積は、それぞれ、3.2、3.9、及び4.3mm2/mm3であった。
[00221]
【0196】
【国際調査報告】