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特表2024-518964組み込まれた相変化材料を含む永久磁石
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】組み込まれた相変化材料を含む永久磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/02 20060101AFI20240426BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20240426BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20240426BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
H01F7/02
H02K1/276
H02K15/03 A
H01F41/02 G
H01F7/02 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569816
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 IB2022054752
(87)【国際公開番号】W WO2022243974
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/190,871
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595006223
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ラマール, ジャン‐ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム, マゲド
(72)【発明者】
【氏名】ベルニエ, ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ペルティエ, ロジャー
【テーマコード(参考)】
5E062
5H622
【Fターム(参考)】
5E062CC02
5E062CD04
5E062CE01
5E062CG01
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB05
5H622DD02
(57)【要約】
電気機械における使用のための永久磁石(PM)が、PMに組み込まれた相変化材料(PCM)を含む少なくとも1つの空洞を含み、PCMが約80℃~約200℃の間の相転移温度、及び、少なくとも50kJ/kgの潜熱をもつことが好ましく、PMにおいて、各空洞が、2つの次元で比較的短い寸法をもつPMの一方側から延びた行き止まりの長尺のチャンバーであり、各空洞の比較的長い寸法が、実質的に同じ方向に配向されており、PMが、硬磁性相と結合相とを含み、PMが、少なくとも150メガパスカル(MPa)の最大引張強度をもち、PMが、電気機械の回転子に搭載されており、コールドスプレー積層造形(CSAM)により形成される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械における使用のための永久磁石(PM)であって、前記PMが、前記PMに組み込まれた相変化材料(PCM)を含み、前記PCMが、約80℃~約200℃の間の相転移温度をもつ、PM。
【請求項2】
前記相転移温度が150℃~約250℃の間である、請求項2に記載のPM。
【請求項3】
前記PCMが少なくとも50kJ/kgの潜熱をもつ、請求項1又は2に記載のPM。
【請求項4】
前記PCMがパラフィン、エリトリトール、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のPM。
【請求項5】
前記PMが、前記PCMが組み込まれた複数の空洞を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のPM。
【請求項6】
前記PMが10個よりも少ない前記空洞を含む、請求項5に記載のPM。
【請求項7】
前記PMが5個よりも少ない前記空洞を含む、請求項5に記載のPM。
【請求項8】
各空洞が、2つのより短い寸法と1つのより長い寸法とをもつ、前記PMの一方側から延びた行き止まりの長尺のチャンバーであり、各空洞の前記より長い寸法が、実質的に同じ方向に配向された、請求項5~7のいずれか一項に記載のPM。
【請求項9】
各空洞が円柱又は平板形状を有することにより、前記空洞が、1つ又は複数の重なる孔を穿孔することによる製造に適合している、請求項8に記載のPM。
【請求項10】
前記PMが、硬磁性相と結合相とをもつ永久磁石材料を含み、前記PMが、少なくとも150MPaの最大引張強度をもつ、請求項1~9のいずれか一項に記載のPM。
【請求項11】
前記硬磁性材料が、実質的にAlNiCo合金、NdFeB合金、SmCo合金、SmFeCo合金、又はそれらの組み合わせからなる、請求項10に記載のPM。
【請求項12】
前記硬磁性材料が、実質的にNdFeB又はNdFeB合金からなる、請求項10に記載のPM。
【請求項13】
前記結合剤が、実質的にAl、Cu、Ti、Zn、Fe、Ni、Ag、Au、それらの合金、又はそれらの組み合わせからなる、請求項10~12のいずれか一項に記載のPM。
【請求項14】
前記結合剤が、Al、又はその合金である、請求項13に記載のPM。
【請求項15】
前記PMが、約34vol%~約85vol%の前記硬磁性相を含む、請求項10~14のいずれか一項に記載のPM。
【請求項16】
前記PMが、約50vol%~約75vol%の前記硬磁性相を含む、請求項10~14のいずれか一項に記載のPM。
【請求項17】
電気機械のための回転子に搭載された、請求項1~16のいずれか一項に記載のPM。
【請求項18】
各空洞の前記より長い寸法が前記回転子の回転軸線に平行に配向されており、2つ以上の孔が穿孔された場合、それらが前記回転軸線から半径方向外向きに配置されている、特に請求項8の特徴を含む請求項17に記載の回転子。
【請求項19】
前記PMと回転子との間の連結が、前記回転子における積層造形(AM)による前記PMの形成に適合していることにより、前記回転子に前記PMを接合することが前記PMの製造中に実現される、請求項17又は18に記載の回転子。
【請求項20】
前記連結が、コールドスプレー積層造形による形成に適合した、請求項19に記載の回転子。
【請求項21】
電気機械を生成するために車軸と固定子とに搭載された、請求項17~20のいずれか一項に記載の回転子。
【請求項22】
永久磁石(PM)を製造する方法であって、前記方法が、
永久磁石材料を準備し、前記永久磁石材料を使用して基材に直接、積層造形することにより前記PMを形成するステップと、
前記PMを仕上げ、相変化材料を保持するために前記PM内に空洞を生成する又は仕上げるステップと、
前記PMに前記相変化材料を組み込むステップと、
前記空洞を囲むステップと、
を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は概して、電気機械における使用のための永久磁石に関する。特に本開示は、永久磁石に組み込まれた相変化材料を含む電気機械における使用のための永久磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]Muhlbergerらのカナダ特許出願第2,118,539号は、永久磁石(PM)材料の近くにある回転子の絶縁リングに混ぜ込まれた相転移材料を幾つかの実施形態において含むAC発電機について教示している。回転子は、PMの交番リングとPCMのための筐体とを含む。出願人は「相転移材料」を相変化材料(本明細書のPCM)と同義語と捉えている。PMにPCMを直接混ぜ込む場合の課題は、Muhlbergerらによっては解決されておらず解決可能でもなく、結果として、実質的に比較的効果的ではない冷却がもたらされる。冷却のためには、放熱部材に対する広い表面積の直接的な接触のほうが、結合された離隔した接触に比べて非常に優れている。
【0003】
[0003]このセクションは本開示と関連していると考えられる当技術分野の様々な態様を紹介することを意図したものである。この説明は本開示の特定の態様のより深い理解に役立つと考えられる。したがって、このセクションはこの観点で読まれなければならないこと、及び、従来技術の自認として読まれてはならないことが理解されなければならない。
【0004】
[0004]電動モーターにおいて使用される例えばNdFeB永久磁石といった永久磁石の磁気性能は、動作温度が上昇するにつれて急速に低下することが知られている。出力需要が高まるのに伴ってモーターの動作温度が急速に上昇するので、これはモーターの出力を制限する。これは、例えば高速道路での加速中、又は航空機の離陸中といった、高いピーク出力が比較的短時間に必要とされる用途の場合に特に問題となる。
【0005】
[0005]-典型的にはより高い割合の重希土類元素(例えばDy又はTb)を含む-より高いグレードの磁石は、減磁を比較的もたらしにくく、したがって、より高い最大動作温度に耐えることがよく知られている。より高いグレードの磁石はより高価であり、より高いグレードの磁石の価格は不安定である。更に、最高グレードのNdFeB磁石でさえ約170℃の最大動作温度をもつ。したがって、電気機械では温度上昇制限(TRL)技法を使用することが望ましい。最大数千RPMの様々な速度で動作する回転子部品内に液体を送達することは実用的でないので、TRL技法は典型的には、電気機械の固定子における特徴に制限された熱流体循環(典型的には液体)により実現される冷却システムを含む。回転子部材のためのTRL技法は通常、回転子と冷却された固定子との間の自然な熱伝達に依存する。上述のように、PCMを使用して回転子の過熱を防ぐことが知られているが、PM内へのPCMの組み込みは知られていない。
【0006】
[0006]結果として、モーターの製造コストが磁石の材料コストに大きく影響される。設計可能性は製造技術により実現され得る磁石の形状及び配置により制限される。従来、PMは粉末の冶金学的な形成及び焼結により製造されるが、これらの方法は回転子における形成を可能にせず、したがって、回転子にPMを搭載する独立したステップが典型的には必要とされ、搭載することは典型的には接着剤、スロット形成、又はねじにより実現される。PMを取り扱うこと、位置合わせすること、接合すること、及び機械加工することは、それらの機械的性質により制限される。
【0007】
[0007]本目的に対する、粉末冶金により形成されたPM材料の主な短所は、本明細書においてもろさと呼ばれる、PM材料の低い最大引張強度、脆性、及び低い延性の組み合わせである。典型的な高グレードのPM材料のもろさは、低コストで高速で品質の保証された工程で回転子に搭載され得る設計及び形状サイズ及び形状に対して多くの実用上の、及びコスト的な制限をもたらす。したがって、製造コスト、機械加工制限、及び機械的一体性要件が、比較的単純で幾分太くて短いPM形状をもたらす。
【0008】
[0008]これらの形状制限は、PM部材の組立の方法にかかわらず、組み込まれたTRLシステムを設計することに対して、非常に問題となる。TRLは内在的に、及び不可避的に、PM内に温度勾配を局所的に生成し、温度勾配は熱応力を大きくし得る。(熱制御が最も必要とされる場合に)PCMにPM材料との最も密な接触をもたらす空洞及び窪みを設けることは、破損のリスクを高めるPM材料の薄いネックを形成し得る。
【0009】
[0009]PM部品を形成するための積層造形(AM)及び特にコールドスプレー積層造形(CSAM)の使用は多くの問題を解決し得る。CSAMは、数kg/時間の速度でPM粉末とともに例えばCu又はAlといった金属(又はそれらの合金)を一緒に積層し得る。材料内に混ぜ込まれた金属は、堆積効率を改善し、及び、改善された熱伝導率をもつPMを生成し、及び、もろさを大幅に低減する。CSAMは回転子に直接PM部品を構築することができ、高い接着強度及びその高い信頼性を実現することができる。回転子自体への堆積は、複雑な組立ステップを回避する。PMから回転子への熱伝達を制限し得る、又は、PCMの空洞に侵入し得る接着剤又は組立体に伴う全ての問題が回避される。PMの設計は、回転子からのPMの剥離又は分離のリスクを小さくしながら、PM材料のより計画的な配置を実現し得る。これらの比較的もろくなく、より信頼性高く接着したPMにより、組立リスクの多く、作業負荷の大部分、及び設計制限が回避され得る。応力に対してより高い回復力をもつPM材料の使用は、より効果的に配置されたPCMのPM内への混ぜ込み、及び高価なPM材料の使用の削減のために非常に望ましい。
【0010】
[0010]したがって、概してTRLに対する代替的なアプローチ、及び、電気機械における、特に回転要素におけるPMのより効果的な局所冷却の必要性が残されている。
【発明の概要】
【0011】
[0011]本開示の態様では、電気機械における使用のための永久磁石(PM)が提供され、PMはPM内に組み込まれた相変化材料(PCM)を含み、PCMは約80℃~約200℃の間の相転移温度をもつ。
【0012】
[0012]それぞれの実施形態において、PCMは、150℃~約250℃の間の相転移温度をもつこと、少なくとも50kJ/kgの潜熱をもつこと、又は、パラフィン、エリトリトール、又はそれらの組み合わせを含むことにより特徴付けられ得る。
【0013】
[0013]一実施形態において、永久磁石は、硬磁性相と結合相とをもつ硬磁性材料を含む。一実施形態において、硬磁性材料は、実質的にAlNiCo合金、NdFeB合金、SmCo合金、SmFeCo合金、又はそれらの組み合わせからなる。一実施形態において、硬磁性材料は、実質的にNdFeB、NdFeB合金、又はそれらの組み合わせからなる。一実施形態において、結合剤は、実質的にAl、Cu、Ti、Zn、Fe、Ni、Ag、Au、それらの合金、又はそれらの組み合わせからなり、結合剤は、どの他の元素よりも多くのAl、Cu、Zn、Ni又はFeを含むことが好ましい。一実施形態において、結合剤は、Al、又はその合金である。
【0014】
[0014]一実施形態において、永久磁石は少なくとも約34vol%の硬磁性相と少なくとも10vol%の結合剤とを含み、組成物の少なくとも70%が結合剤と硬磁性相とからなる。少なくとも51vol%の硬磁性相がほとんどの用途に必要であり、合理的に有効な工程において約75vol%が実証されているが、より高い、例えば85vol%ほど高い体積分率の硬磁性相が幾つかの堆積工程を使用すると可能である。当業者は、場合によっては金属結合剤によりもたらされる機械的性質を犠牲にして、磁石の残留磁気を改善するために硬磁性相の体積分率が高められ得ることを認識する。更に、より高い堆積効率を伴って、より高い硬磁性相の体積分率をもたらすための技術的改善が想定される。
【0015】
[0015]それぞれの実施形態において、PMは、例えば1対10、又は5対10の空洞といった、相変化材料が組み込まれた1つ又は複数の空洞を含む。
【0016】
[0016]一実施形態において、空洞の各々は、2つの次元でより短い寸法をもち1つの次元でより長い寸法をもった、PMの一方側から延びた行き止まりの長尺のチャンバーであり、各空洞のより長い寸法は実質的に相互に並列に配向されており、又は、各々がPMの表面に対して(+/-15°内で)局所的に垂直であってもよい。各空洞は、PMの穿孔による生成に適した円柱形状又は錐台形状をもってもよい。
【0017】
[0017]別の実施形態では、空洞が表面にあろうが表面下の空洞であろうが、空洞の各々はPMの表面から(例えば+/-15%で)実質的に一定の距離に延びている。
【0018】
[0018]一実施形態において、PMは電気機械のための回転子に搭載されている。空洞が長尺である限り、空洞は半径方向ではなく、回転子軸線に平行に、又は軸線の周囲で方位角的に(円周方向に)延びたものであってもよいことが好ましい。PMはAMによる形成に適し、CSAMを使用した形成に適し得ることが好ましい。回転子は電気機械を生成するために車軸に、及び固定子に搭載されてもよい。
【0019】
[0019]一実施形態において、永久磁石は、例えばコールドスプレー積層造形といった積層造形により作られる。
【0020】
[0020]本開示の別の態様は、永久磁石を製造する方法であって、方法が、永久磁石材料を準備し、永久磁石材料を使用して基材に直接、積層造形することにより永久磁石を形成するステップと、PMを仕上げ、相変化材料を保持するためにPM内に空洞を生成する又は仕上げるステップと、永久磁石に相変化材料を組み込むステップと、空洞を囲むステップとを含む、方法である。
【0021】
[0021]本方法の一実施形態では、空洞を生成する又は仕上げるステップが、永久磁石に空洞を形成することを含む。一実施形態において、積層造形は、固体形態で相変化材料を堆積させること、又は、粉末形態で相変化材料を堆積させた後に粉末を硬化させること、液体形態で相変化材料を注いだ後に液体形態を固化させることを更に含む。本方法の一実施形態において、永久磁石を形成するステップは、永久磁石材料を使用して空洞を規定する永久磁石を順次的に構築することを含む。
【0022】
[0022]一実施形態において、空洞を囲むことは、機械加工された圧入キャップ又はねじ込みキャップを使用して空洞を閉じることを更に含む。
【0023】
[0023]本開示の他の態様及び特徴が、添付図面と併せた特定の実施形態の以下の説明の理解により当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[0024]本開示の実施形態が、添付図面を参照しながら単なる例示として以下で説明される。
図1a】本発明により構成され得る電動の乗り物のための永久磁石モーターの半分の2D概略表現を示す図であり、モーターは10個の回転子極と12個の巻線とを含む。
図1b】本発明により構成され得る電動の乗り物のための永久磁石モーターの半分の3Dモデルを示す図であり、モーターは10個の回転子極と12個の巻線とを含む。
図2a図1のモーターのトルク速度曲線及び異なる駆動状態に対応した異なるモーター動作点を示す図である。
図2b】動作点に対する異なるモーター損失成分を示す図である。
図3a】主要なモーター部品を含む本発明の実施形態によるモーター組立体の半分の概略図であり、概略図は異なる熱伝達の仮定を識別するためにラベル付けされており、空隙寸法が本発明の実施形態のシミュレーションにおいて使用されており、モーター組立体の3Dモデルである。
図3b】主要なモーター部品を含む本発明の実施形態によるモーター組立体の半分の概略図であり、概略図は異なる熱伝達の仮定を識別するためにラベル付けされており、空隙寸法が本発明の実施形態のシミュレーションにおいて使用されており、モーター組立体の平面図である。
図3c】主要なモーター部品を含む本発明の実施形態によるモーター組立体の半分の概略図であり、概略図は異なる熱伝達の仮定を識別するためにラベル付けされており、空隙寸法が本発明の実施形態のシミュレーションにおいて使用されており、モーター組立体の側面図である。
図4a】相変化材料に対する概略的な典型的な熱容量対温度曲線の図である。
図4b】幾つかの他のPM材料と比較した、コールドスプレーされた積層造形されたPM材料の最大引張強度を示す棒グラフである。
図5a】組み込まれたPCMを含む、及び含まない、上り坂運転シナリオ中の時間の関数としてのシミュレーションによる平均磁石側部温度上昇を示すグラフである。
図5b】高速道路での加速シナリオ中に観測された同じシミュレーションシステムの同じ特徴を示す図である。
図6】組み込まれたPCMを含む、及び含まない、上り坂運転シナリオの15秒後のシミュレーションによる磁石温度分布を示す図である。
図7】モーターが1時間にわっって定常状態で動作させられ、モーターが60秒間にわたってピーク需要で動作させられた後、更に1時間の持続期間にわたって再度定常状態で動作させられるシミュレーションによる電動の乗り物の動作シナリオにわたる磁石側部温度のグラフである。
図7a】PCMに伴う温度低下を明確に示すピーク需要に対応した期間にわたる拡大図を示す図7のグラフの拡大図である。
図8a図7に示されているモーター動作シナリオのもとでのシミュレーションによる平均及び最大磁石温度を示す図である。
図8b】ピーク需要に対応した期間にわたる拡大図である。
図8c】高出力需要期間中に(118Cより高い温度で)溶融された効果的な相変化材料のパーセンテージのグラフであり、このシナリオでは総PCM体積の10.5%のみが図9aのPCM構成において効果的であることを示す図である。
図9a】本発明の実施形態による、より良いTRLのための永久磁石のセグメント分けの例を示す図である。
図9b】本発明の実施形態による、より良いTRLのための永久磁石のセグメント分けの他の例を示す図である。
図9c】本発明の実施形態による、より良いTRLのための永久磁石のセグメント分けのさらに他の例を示す図である。
図10a】PCMを含まない永久磁石、及び図9a~図9cの3つのセグメント分けの例の熱過渡分析の複数のグラフである。
図10b図9a~図9cの3つのセグメント分けの例に対する150℃に達するための過渡時間を示すヒストグラムである。
図11図10aに示されているシミュレーションによる工程の90秒データ点における温度分布の図である。
図12】セグメント分けされたPM設計を本発明の一実施形態による組み込まれた空洞PM設計と比較したパネルの図であり、パネルは、2つのPM設計に対して並んだ、側面図、シナリオにおける対応する瞬間におけるシミュレーション中の温度分布、及び、シナリオにおける対応する瞬間における熱流束を示す熱流束ベクトルプロットを含む。
図13】TRL目的でのPMへのPCMの組み込みによってもたらされる小さい違いを示す図12の設計に対する温度対時間プロットの図である。
図14】丸みを帯びた上面を特徴とする組み込まれた空洞PM設計の変形例の側面図であり、一方の側が封止された反対を向く2つの側から穿孔された孔により空洞が形成される。
図14a】PMに埋設された縦空洞の構成を示す線AAで切断された図14のPM設計の断面図である。
図15a】各角度がPM部品の表面に垂直である異なるそれぞれの角度から先細ビットにより穿孔されたものとして各々が形成される2つの異なるサイズの5つの錐台空洞を特徴とするPM設計の第2の変形例を通る概略断面図である。
図15b図15aのPMの端面図である。
図16】一定の距離ぶん(示されている)上面から奥まった状態にある長尺空洞と、側部空洞が延び始めるそれぞれの側面からの距離に伴って非一定で単調減少する直径をもつ2つの側部空洞とを特徴とする第3の変形例のPM設計を示す概略断面図である。
図17】第4の変形例のPM設計を示す概略断面図であり、第4の変形例は、PMの(示されている)側部に固定の深さぶん延びた2つの表面隆起部、及び、PMの中央に翼状に延びた2つの低い高さのファン形窪みを特徴とする。
図18a】PMとそのローターとの間の接触熱抵抗の関数としてのシミュレートされた温度上昇を示すマルチグラフであり、接触熱抵抗は1/10mm、1/20mm、1/40mm、及び無ギャップのギャップの関数として示されている。
図18b】それぞれのギャップを有する図12に従ったPMデザインの温度分布モデルを示す。
【0025】
[0044]図が例示に過ぎないこと、及び、図面により本開示の範囲に対する如何なる限定も意図されていないことに留意されなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0045]本明細書において使用されるとき、「(1つ又は複数の)PM」、「(1つ又は複数の)磁石」、「(1つ又は複数の)硬磁石」、及び「(1つ又は複数の)永久磁石」という用語は、(1つ又は複数の)永久磁石を表すために交換可能に使用される。
【0027】
[0046]本明細書において使用されるとき、「NdFeB」はPM部品の、又はPM部品を形成するための硬磁性材料を表し、別様に「FeNdB」と表されてもよく、又は、任意の他の順序(又は割合)の元素Nd、Fe、及びBで表されてもよい。幾つかの実施形態では、他の元素が、例えば高い温度安定性といった特定の特性を制御するために硬磁性粉末のNdFeBに追加されてもよい。
【0028】
[0047]本明細書において使用されるとき、「PCM」は相変化材料を表す。
【0029】
[0048]本明細書において使用されるとき、「TRL」は温度上昇制限を表し、特に高トルク負荷、又はオーバーバースト、又は短い期間の高熱出力といった動作中にPM過熱の傾向を減らすシステム、技法、又は構造を修飾する形容詞である。
【0030】
[0049]概して、本開示は、組み込まれた相変化材料を含むPMを提供する。相変化材料は、動作中にPMの温度上昇を制限することができる。PMは、例えば電気機械及び特に電動モーターといった用途において使用され得る。電動モーターは、(人間の搬送される者又は乗っている人又はオペレーターであるか否かにかかわらず、及び、重航空機(固定翼又は回転翼航空機)であるか軽航空機又はそれらのハイブリッド)であるかにかかわらず、有人のもの、遠隔操縦されるもの、自律したもの、又はそれらの任意のハイブリッドなものを含む)電動の地上の乗り物において、又は航空機において使用されることができる。PCMはPMの構造物に組み込まれ、及び電動モーターの回転子に組み込まれることが有益である。
【0031】
[0050]本発明者らは、PCMがPM内に一体的に保持された、又はPMに組み込まれたとき、PCMがPMの温度上昇を抑えることを見出した。「~に組み込まれた」というとき、出願人は、PCMの表面積の少なくとも80%がPMに隣り合っているという点で、PCMがPMの壁により囲まれていることを意図している。PCMはPMにより少なくとも4つの側部を囲まれていることが好ましく、5つの側部を囲まれていることがより好ましい。
【0032】
[0051]PCMは、PCMの任意の部分が相転移温度に到達したときに吸収される多量のエネルギーを蓄積し得る(図4a参照)高い潜熱をもつ材料である。本発明によると、その温度は、ピーク動作状態のもとでの電気機械のTRLに対して選択される。現在のPM材料において有用であるように、相転移温度は200℃未満(例えば最高グレードのNdFeBに対して約170℃)である。
【0033】
[0052]理論的に縛られるわけではないが、組み込まれたPCMは特にピーク出力がモーターから要求される短い相中にエネルギー貯蔵バッファとして機能することにより、PMの最大温度を下げると考えられる。モーターの動作は、ピーク出力イベント後に蓄積された熱が放散することを可能にする。
【0034】
[0053]組み込まれたPCMを含む本開示のPMは、幾つかのモーターパフォーマンスの改善又はコスト削減を実現するために、異なるモード及び構成において使用され得る。例えば、最大温度の低下は、モーターのコストを下げるために、より高い動作温度でより安定しないより低いコストの磁石グレードの使用を有益に可能にし得る。組み込まれたPCMを含むPMは、最大磁石温度を一定に維持しながら、モーターピークパワー出力を改善するために、より大きいコイル電流と組み合わせて更に有益に使用され得る。モーターの特徴がPCMを使用して更に調整され得、このことが異なる構成によるPCMの配置を可能にし得る。金属結合剤と硬磁性粉末とを含むPM材料の高い最大引張強度が与えられたとき、PMに対する形状制限が緩和され得る。PMに組み込まれたPCMは、PM温度の急上昇を防ぐためにモーター内蔵安全機能として使用され得る。
【0035】
[0054]図4bは、コールドスプレー積層造形された(が熱処理されておらず、及び別様に最適化されていない)PM材料が、焼結された、(射出モールド成形又は結合剤を使用した圧縮成形により)接合された、又は大面積の積層造形より高い最大引張強度(UTS)をもち得る程度を示す棒グラフである。これらの製造方法のうちの全てが結合剤を入れる余地があるが、形成される部品が常に基材(又は回転子)に結合されて形成されるわけではなく、全ての結合剤が全ての工程とともに取り扱うことができるわけではなく、例示されているように、CSAMがコールドスプレー工程の堆積効率を改善する金属結合剤を提供するとともに、優れた強度210MPa及び355+/-7MPaの抗折力を材料にもたらす。材料は弾性変形を示すが、断裂前に限られた塑性変形をする。したがって、金属結合剤を含む種々のPM材料は、現在のPMに伴うTRLの課題を軽減することによく適した機械的性質を与えられることが期待されるとともに、より少ない結合剤投入量による更なる改善、及び延性の更に大幅な改善が現在実現可能であり、及び特許の存続期間にわたって更に発展させられることが期待される。磁石のCSAM製造のための存在の好ましい手法は、90%のNdFeBに対して10%のAlという予め定められた重量比を使用した、磁性粉末(すなわちNdFeB)と結合剤粉末(すなわちAl)との事前混合を伴う。この比率は、産業用途に対する十分な堆積効率を維持しながら硬磁性相の体積分率を最大化するように選択される。混合された粉末は、600℃~800℃の温度及び4.9MPaの圧力において、加圧された気体とともにCSAM機器において処理される。当業者は、市販され得る粉末モルフォロジー、サイズ、及び組成の異なる選択により、及び、例えばノズル詰まり及び最大システム圧力といった工程上の制約により規定されるスプレーパラメータにより、最適な重量比が大幅に変更され得ることを認識する。
【0036】
[0055]本発明者らは、圧密により製造された従来の磁石にPCMを組み込むことは困難であることを見出した。実際、PCMは相転移中に液体になり、PCMは回転子に加わる向心力による影響を受けるので、保持構造物が必要とされる。従来の焼結された磁石はもろく、機械加工することが困難であり、従来の焼結された磁石の形状は、PCMを収容することに適した構造物の製造を実用的でないものにするような単純な形状に制限される。それに対し、複雑な中空構造物は、積層造形により製造された、又は別様に実質的に金属結合剤と硬磁性粉末とからなるPMに内蔵され、又はPM内に機械加工されることができ、設計者がPCMをより効果的に配置すること、及び、PCMを含めることを可能にする。
【0037】
[0056]本発明は、組み込まれたPCMを含むPMを製造する方法を更に提供する。本方法は、例えばコールドスプレーといった積層造形を通してPMを製造することを含む。PMは、更なる組立を必要とせずに基材に直接製造されることが有益である。PCMは次に磁石に組み込まれる。
【0038】
[0057]積層造形を通して作られたPMにPCMを組み込む幾つかの手法が存在する。
【0039】
[0058]例えば、PMは、PCMが挿入される空洞を伴う積層造形を使用して直接製造されることができる。PCMがその融点温度に到達したとき、PCMは液体になることができる。したがって、PCMはPMの空洞に留まり、その相変化にわたってエネルギーを吸収し、したがってピーク温度を制限することとなる。当技術分野において現在利用可能な方法とは対照的に、PCMはPMにおける循環を一切必要としない材料であり、したがって、回転子構造物に材料を案内すること、接続部材を接続すること、及びより重要なことには可変の遠心環境において動作し得る圧送装置を不要とすることが有益である。結果として得られる構造物は、更なる可動部品を含まなくてもよく、更なる電力又は制御システムの使用を必要とせず、したがって、回転子の重量を改善し、概して障害及び漏れを引き起こしにくく、PMがその予め定められた動作温度範囲内に留まるのであれば、保守をせずに多くのサイクルのために使用されることができる。
【0040】
[0059]本開示は、PM、回転子、又はPMを備える電気機械、及びPMを製造する方法を更に説明している。積層造形は、例えば金属-NdFeB複合体のコールドスプレーにより、複雑な形状をもつPMの設計及び製造を可能にすることができる。本明細書において説明されているように、例えばコールドスプレーといった積層造形は、PCMがPMに組み込まれること、又はPMに埋設されることを可能にする。PCMは、PM内に構築された後にPCMにより充填された空洞を通して組み込まれることができることが有益である。加えて、本明細書において説明されている方法は、磁石が例えば電動モーターの回転子といった表面に直接製造されることを実現し、したがって、断熱性の空気又は接着剤界面を無くす。これはアルミニウム結合剤含有物より更に高く熱伝導率を改善するために本明細書において以下で例示される。
【0041】
[0060]一実施形態において、PM材料を準備することと、基材に直接、積層造形することによりPMと空洞とを形成することとを含む、PMを製造する方法が存在する。次にPCMが空洞内に挿入される、又は注がれる。空洞は、例えば機械加工された圧入キャップ又はねじ込みキャップ、又は任意の適切なカバーを使用して閉じられ得る。
【0042】
[0061]PMを製造する方法は、PMを繰り返し形成すること、すなわち、永久磁石材料を使用して空洞を規定するPMを順次的に構築することを含むことができる。次にPCMが空洞内に挿入され、又は注がれ得る。
【0043】
[0062]別の実施形態では、基材が金属基材である、PMを製造する方法が提供される。別の実施形態では、金属基材が、アルミニウムベースの基材、鉄ベースの基材、銅ベースの基材、又はそれらの組み合わせである。
【0044】
[0063]別の実施形態では、硬磁性相と金属結合剤とを含む粉末組成物から作られたPMが存在する。硬磁性相は、AlNiCo合金、NdFeB合金、SmCo合金、SmFeCo合金、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。硬磁性粉末は、NdFeB、NdFeB合金、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、結合剤は、実質的にAl、Cu、Ti、Zn、Fe、Ni、Ag、Au、又はそれらの組み合わせの純金属又は合金からなり、結合剤はどの他の元素よりも多くのAl、Cu、Zn、Ni又はFeを含むことがより好ましい。一実施形態において、結合剤Al、又はその合金である。PM粉末組成物は、約34vol%~約85vol%の硬磁性相を含むことが好ましい。出願人は、CSAM PMが約75vol%の硬磁性相を含むことを実証した。結合剤及び硬磁性相は、少なくとも70vol%のPMを含むことが好ましい。
【0045】
[0064]別の実施形態では、PMを製造する方法はPMを構築するためにCSAMを使用する。
【0046】
[0065]一実施形態において、PCMは、少なくとも50kJ/kgの潜熱をもってもよい。PCMは、パラフィン、エリシルトール、又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。下記の表1は、これらの2つの例示的なPCMの特性を示す。
【表1】
【0047】
[0066]別の実施形態では、本明細書において説明されている方法により形成されたPMが提供される。別の実施形態では、電気機械を製造するための本明細書において説明されているPMの使用が提供される。
【0048】
[0067]別の実施形態では、電気機械を動作させるための本明細書において説明されているPMの使用が提供される。別の実施形態では、電気機械が例えば電動の乗り物又は航空機のように電動モーター又は電動エンジンを含む、本明細書において説明されているPMの使用が提供される。
【0049】
コールドスプレー積層造形
[0068]コールドスプレーは、基材に高速で衝突する粒子の変形及び接合により材料が基材に構築される工程である。概して、粒子は典型的にはドラバル構成を使用したノズルを通して供給される、例えば窒素といった加熱された高圧気体を使用して加速される。気体温度は摂氏何百度にも加熱されることがあるが、実際の粒子温度ははるかに低温に留まる。1秒当たり数百メートルの粒子速度が実現されることができ、これは、非常に高密度で(典型的には<1%の有孔率で)材料を構築する傾向を示し、ほとんどの任意の他の技術を使用して実現され得る値より概して高い接着値を示し、押圧及び焼結技術により実現され得るものより高密度になる。
【0050】
[0069]密度も、例えばUTS>120MPaである、又は150MPaより高い、又は更には200MPaより高い、高い最大引張強度の材料の生成のために本質的である。出願人は、焼結されたPM複合体が典型的にはUTS<80MPaを示すことを見出した(図4b参照)。積層造形のための他の技術、又は、NdFeBとの(又は推定ではAlNiCo、SmCo、又はSmFeCoとの)金属粉末の高温の、低温の、又は温かい圧密が、均一に制限されたUTSをもつPMを製造すると考えられる。
【0051】
[0070]一実施形態において、コールドスプレー工程は、約400℃~約800℃又は約600℃~約700℃の主気体温度で、及び、約5MPa、又は約3MPa~約5MPaの最大圧力でPlasma Giken 800ガンを使用して実行されることができる。別の実施形態では、表面まで約80mmのスプレー距離が使用されてもよい。別の実施形態では、永久磁石粉末組成物をコールドスプレーする方法は、例えばロボット及びロボットプログラミングを使用して完全に自動化されてもよい。このような実施形態では、ロボットの通過速度及びステップは、製造されているPMの形状に依存してもよい。当業者により理解されるように、設定温度、圧力、スプレー距離などは、磁性粉末組成物に依存する。
【0052】
[0071]一実施形態において、永久磁石粉末組成物は硬磁性粉末と結合剤とを含む。別の実施形態では、硬磁性粉末はNdFeBを含んでもよい。別の実施形態では、結合剤は、上述のように、より高い配置効率、良好な熱伝導率、及び腐食/酸化保護を実現するために金属Mであることができる。別の実施形態では、結合剤又は金属Mは、例えばアルミニウム粉末といったアルミニウムベースの合金であってもよい。
【0053】
[0072]一実施形態において、永久磁石粉末(原料)組成物は、最小で約34vol%の硬磁性粉末を含んでもよい。別の実施形態では、永久磁石粉末組成物は、約34vol%の硬磁性粉末、又は約51vol%の硬磁性粉末、又は最大で約99vol%の硬磁性粉末を含んでもよい。別の実施形態では、永久磁石粉末組成物は、最大で約1vol%の結合剤、又は、最大で約25vol%の結合剤、又は、最大で約49vol%の結合剤、又は、最大で約66vol%の結合剤を含んでもよい。更なる一実施形態において、永久磁石粉末組成物はM-NdFeB複合体のPMを形成してもよい。
【0054】
[0073]一実施形態において、スプレー工程中、酸化及び磁気的な性質の劣化を抑制するために、磁性粉末の温度上昇を最小化するために注意が払われる。別の実施形態では、スプレー工程は、低コーティング有孔率及び良好な堆積効率を維持することを目的として実行される。
【0055】
[0074]一実施形態において、市販のNdFeBベースの粉末が使用されてもよい。別の実施形態では、例えば純アルミニウム粉末といった市販の結合剤が使用されてもよい。アルミニウム粉末の粉末サイズ分布は様々であってもよい。適切なNdFeB磁性粉末は、Magnequench MQP-S-11-9、MQFP-B、MQFP-14-12、MQP-AA4-15-12、MQA-38-14、及びMQA-36-18を包含するがこれらに限定されない。
PCMが堆積させられる空洞を備えるPM
【0056】
[0075]例えばコールドスプレー積層造形を使用して、空洞を備えるPMを製造する方法が本明細書において説明されている。PCMを含有した空洞を含むPMを備えるPMデバイス(例えばPMモーター)が更に説明されている。幾つかの例では、PMはPCMが堆積させられる空洞を規定している。
【0057】
[0076]PM(例えばNdFeB)は従来、例えば圧密及び焼結といった技術を使用して製造される。その後に、PMが公差を満たすように機械加工され、必要に応じて部品(例えば、電動モーター固定子であり、回転子であることがより好ましい)に設置される、及び取り付けられる。このような方法は、磁石の実現可能な構成を制限する。例えばコールドスプレーといった積層造形工程の使用は、コスト及び/又は製造時間の増加がほとんどないか、全くない状態で、複雑な形状をもつ磁石の3D構築を可能にする。このような更なる柔軟性は、本手法によらなければ製造することが技術的に困難な、又は不可能な、又は単に法外なコストのかかる形状の実現を可能にする。
【0058】
[0077](より一般的には温度管理として知られた)TRLは、例えば電動モーターといった例えば電気機械においてよく知られた問題である。運動をもたらすために電流が必要であるが、望ましくない渦電流が金属部品に流れ得る。これらの両方が発熱に寄与する。このような電気機械において使用されるとき、希土類元素のPMのパフォーマンスは、100℃より高い温度で動作するとき急速に低下し、及び磁石の減磁及び機械の故障を最終的にもたらし得る。この効果を最小化するために、全体的なパフォーマンスを犠牲にして磁石の高温特性を安定させるために、重希土類元素(例えばジスプロシウム)が磁石組成物に追加される。
【0059】
[0078]本明細書において説明されているように、PCMが挿入される空洞を備えるPMを製造するために積層造形が使用され、空洞の形状(例えば形状、サイズなど)は磁石の形状及びその意図される用途に依存する。コールドスプレー、又は別の製造技術、例えばレーザー焼結、レーザークラッディング、ダイレクトライト、押し出し、結合剤噴射、熱溶融積層法などが、磁石の3D形状を構築するために使用されてもよい。例えば以下の方法のうちの任意の1つ又は組み合わせにより空洞が形成される。
【0060】
[0079](I)積層造形技術を使用して空洞を直接形成することを含む空洞の直接形成。コールドスプレーに関連して、直接形成は、磁石内に規定された空洞のための所望の構造を実現するために様々な堆積角度を使用した材料の構築を含む適切なツール経路の使用を必要とする。PMの外面に、又はPMの外面付近に、又はPMと回転子との間の界面に直接形成された空洞が特に好ましく形成される。
【0061】
[0080](II)磁石内へのカスタム形状の管経路部の設置を含む、空洞を形成するためのカスタム管の埋め込み。管は正しい形状に連結され、及び形作られ、予め製造されているがまだ不完全な3D磁性構造物に設置される。構造物は管内への直接的なPCMの追加により完成となる。管は損失又は磁束の方向転換を回避するために電界及び磁場に実質的に応答しないで堆積させられているPMと連携するようにPMを含むか、又は、PMのパフォーマンスに対する影響を最小化すために積層造形後に取り外し可能であることが好ましい。
【0062】
[0081](III)空洞を形成するための犠牲材料の使用。カスタム管の設置と同様に、犠牲材料は正しい形状に形作られるが、磁石の製造後に除去される。犠牲材料は、例えばコールドスプレーといった積層造形を含む異なる技術により付加されてもよい。犠牲材料は融解されることにより除去され、その後に重力又は印加された圧力の影響のもとで除去されてもよい。ここで出願人は参照により、犠牲材料を使用した部品のAMのための特定の工程を教示する出願人の米国特許第11,313,041号の教示を組み込むが、出願人は犠牲材料をこれらの軟質金属に限定することは望まない。出願人は、積層造形中にPMに一体的な塩から形成されたボディを埋設すること、及び製造後に塩を溶解することは当業者の能力の範囲に十分に入ると考える。
【0063】
[0082](IV)十分高いUTSをもつPMを形成し、PMの表面を通してPM内に空洞を機械加工する。
【0064】
[0083]空洞を備えるPMが基材に構築されることが有益である。このような基材は犠牲的であっても、犠牲的でなくてもよい。概して、任意の金属基材が、空洞を備えるPMを製造することにおける使用に適するが、セラミックス又はポリマー基材が使用されてもよい。最も一般的に使用されるものの中でも、鉄ベースの、及びアルミニウムベースの基材が挙げられる。(i)アルミニウムベースの基材がその高熱伝導率に起因して排熱を増やすので、及び、(ii)アルミニウムベースの基材は良好な機械的性質のために良好な変形を実現し得るので、及び、(iii)アルミニウムベースの基材は比較的安価であるので、及び、(iv)アルミニウムベースの基材は酸化耐性があるので、及び、(v)アルミニウムベースの基材は軽量であるので任意の最終組立体の重量を減らすことに寄与するので、例えばアルミニウムベースの基材が空洞を備えるPMの製造に使用されてもよい。鉄ベースの基材は磁束経路に対して良好な磁気飽和を実現するので、及び安価であるので、例えば軟磁性複合体又は積層構造物といった鉄ベースの基材も空洞を備えるPMの製造に使用されてもよい。銅ベースの基材は熱伝導率が良いので、他の例では、空洞を備えるPMの製造に銅ベースの基材が使用されてもよい。
【0065】
[0084]幾つかの例では、組み込まれたPCMを含むPMは、例えば回転子、固定子などのモーター部品の一部を形成してもよい。一例において、組み込まれたPCMを含むPMはモーター部品の表面に結合されてもよく、PCMは少なくとも磁石の内部温度制御を実現する。代替的に、組み込まれたPCMを含むPMは、モーター部品の表面に結合されてもよい。組み込まれたPCMを含むPMは、モーターの回転子部品に結合されることが有益である。
【0066】
[0085]組み込まれたPCMを含むPMは、少なくとも以下の理由により高い温度管理能力を実現し得る。
【0067】
[0086](I)PCMが温度制御を必要とする構造物(すなわち磁石)内部に直接配置され得ることによる高い熱伝達。生成された密な接触は、直接的な伝導による排熱に有利に働き、したがって、実効伝熱係数を大きくする。
【0068】
[0087](II)PCMは磁石の形状に適合した形状及び所望の温度プロファイルをもつように設計され得るという理由による、より良好な温度均一性及び制御。それは、従来の温度制御技法を使用して制御することが困難である磁石領域の温度を制御するために使用され得る。それは、より良好な温度均一性を実現して、ひいてはホットスポット劣化から保護する手法により形状を構成するために更に使用され得る。
【0069】
[0088](III)コールドスプレー積層造形を使用して製造されたPMが、機械的性質を改善しながら実効複合体熱伝導率を改善する金属結合剤(すなわち金属M)を含むという理由による、高い熱伝導率及び機械的性質。
【0070】
(実施例)
モーター構成
[0089]例示を目的として、高密度固定子巻線を含むラジアルフラックスモーターが分析のために選択されたが、当業者はアキシャルフラックスモーター及び発電機への適用を容易に考える。歯に巻き付けられた高密度巻線は、高い銅充填因子及び短い端部巻線を達成し得(17が図3aのみで視認可能である)、高出力及びトルク密度をもたらす。また一方では、その高い電機子高調波は回転子損失を高める傾向を示し、動作時に迅速な磁石温度上昇をもたらす。したがって、それは本発明に対する適切な候補である。
【0071】
[0090]図1a、図1bはそれぞれ、本発明の一実施形態による電動の乗り物のためのラジアルPMモーターの半分の2Dモデル及び3Dモデルを示す。図1bは、シミュレーションのために使用される3Dモデルである。PMモーターは2つの主な部品、すなわち、12個のコイル固定子10及び10極回転子20を備える。示されている半分の固定子10は、それぞれの場生成コイル14を支持するための6つの磁気固定子コア12(そのうちの2つのみが引き出し線により特定されている)を含む。コイル14がコア12を覆っているので、コア12は図1bでは十分に見えず、コア12をより明確に示すためにコイル14は図1aに示されていない。固定子コア12は、コイル14により生成された磁束を案内する。回転子20は、回転子20に搭載された5つのPM25を含む。本発明によると、PM25のうちの少なくとも1つ、及び典型的にはPM25の全てが、組み込まれたPCMを備える。この構成がシミュレーションのために、及び本発明を示すために使用されたが、他の電気機械設計も同様に使用され得る。
トルク速度曲線及びモーター損失分布のシミュレーション
【0072】
[0091]図1のモーターはモータートルク速度曲線特徴を抽出するために有限要素解析(FEA)を使用してモデル化された。A-上り坂運転(高トルク、低速)、B-高速道路定常状態(低トルク高速)、及びC-高速道路での加速(中程度のトルク、高速)という、3つの異なるモーター動作点に対応した3つの典型的な駆動シナリオが図2aにおいて特定されている。対応するモーター損失がシミュレーションされており、図2bに示されている。総モーター損失が動作点Aにおいて高く、Cにおいて中程度に高いことが見られ得る。全てのモーター損失がモーターの温度上昇に寄与する。特に、回転子及び磁石におけるモーター損失が磁石の温度上昇に直接寄与し、巻線14における銅損はPMから若干離れており、典型的には局所的に冷却される。したがって、磁石損失の各々が最も大きいが、累積された鉄損以下であることが観測される。
【0073】
[0092]図3(すなわち、図3aは、モデル化のために使用される3Dによるモーター構造物の半分を示し、図3b、図3cは、モーター構造物の半分の上面及び側面図を示す)は、完全なモーター構造物の部材を示す。図3aは、この電気機械を調べるために使用される熱FEAモデルにおいて使用される境界条件を示すためにラベル付けされている。特に図3aは、図1a、図1bのモーターのシミュレーションのためのモデルを示し、温度感度の領域の識別子と重ね合わされている。
【0074】
[0093]モデルは前述のように回転子20と固定子10とを含み、固定子は、固定子10を冷却するために埋設された冷却剤経路部21を含む筐体15に収容されている。回転子は、ベアリング19により筐体15に結合された車軸又はシャフト22に締まりばめされている。車軸22及びコイル14は、画像の見えにくさを防ぐために(示されているように)上面で切断されている。磁石を収容するために回転子にポケットが機械加工されている。従来のように、ポケットはPMに対して大きくされている。それらは、典型的には挿入後にPMの周囲に延びたその2つの端部26を使用して保持するように設計されている。モデリングは、PCMがここに挿入され得ることを仮定する。
【0075】
[0094]熱FEAモデリングに対して、筐体15はアルミニウムの特徴をもつと仮定され、コイル14は銅と同等であり(損失仮定27a)、固定子(27b)及び回転子(27c)コア損失がモデル化され、断熱隔壁16(幾つかの位置しか示されていない)が、銅コイル(損失仮定27e)及び(PCMが埋設された、及び埋設されていない)永久磁石(27d)のものを囲むようにモデル化されている。更に、空気(27f)に対する筐体の対流冷却、及び冷却剤(27g)に対する筐体の対流冷却がモデル化された。筐体と固定子積層(27h)との間の接触熱抵抗は0.037mmのギャップをもつと仮定された。磁石は0.1mmの界面ギャップ(27i)をもつと仮定されており、シャフトはそれが回転子22に連結する所に0.037mmの界面ギャップ(27j)をもつと仮定された。最後に、シャフト対ベアリング及びベアリング対筐体は、0.3mmの界面ギャップ(損失仮定27k)に関連した。
【0076】
磁石温度シミュレーション
[0095]組み込まれたエリトリトールPCMが回転子ポケット端部26を充填している、及び充填していない状態で、磁石温度分布がシミュレーションされた。伝熱係数に対する仮定及びモーターにおける空隙測定結果が図3aに示されている。モーター構成が図1a及び図1b並びに図3a~図3cに示されている。エリトリトールPCMが幾つかのシミュレーションに対して磁石の端部に位置するポケット端部26においてシミュレーションされた(拡大のために図9aを参照されたい)。
【0077】
[0096]図5a及び図5bは、上り坂運転及び高速道路での加速中の平均磁石側部温度を示すプロットである。過渡時間は、磁石温度が所与の固定の動作状態のもとで特定の値に到達するために必要な時間として規定される。例示のために、150℃の温度に対するデータが、下記の表1及び表2に示されている。PCMは上り坂運転状態に対して最大81%、及び高速道路での加速状態に対して最大83%、過渡時間を長くするので、PCMの効果が非常に大きいことに留意されたい。
【表2】

【表3】
【0078】
[0097]図6は、上り坂運転の15秒後に、周辺のポケットにおけるPCMがPMの温度を大幅に下げることを示している。
PCM温度シミュレーション
【0079】
[0098]図7は、モーターがより軽い需要状態のもとで1時間にわたって使用された後、短期間(60s)にわたって電動モーターの高いピーク出力(50kW)が要望される駆動シナリオに対するシミュレーション結果を示す。その後、モーターは、このシナリオに従って軽い負荷に戻された。図7は、時間の関数としての磁石側部温度のグラフである。図7aは、1分のピーク需要の近傍におけるグラフの拡大図を示す。PCMは22℃に届きそうな程の最大温度の低下を可能にし、これは磁石に対する大幅な保護となる。それは、例えば、より低いグレードの磁石を使用してモーターの総コストを下げる設計を可能にし得る。
【0080】
[0100]図8a及びその拡大図の図8bは、図7における駆動シナリオ中に観測される最大及び平均PCM温度を示している。平均温度と最大温度との間のずれは、磁石側部におけるPCM濃度に起因した磁石温度分布の非一様さを示す。図8cはその融解温度の118℃を上回った有効なPCM材料のパーセンテージを示す。結果は、PCM体積の10.5%のみがTRLに寄与していることを示す。PCM体積の大部分はこの構成では利用されていない。図8cは、ピーク温度に到達した80秒後にPCMが再度固化することを更に示し、PCMを別の過渡動作に対して準備完了状態にする。
磁石セグメント分け
【0081】
[0101]磁石をより良く保護するために、及びPCMを十分に使用するために、PMの3つのセグメント分け設計がシミュレーションされた。図9a~図9cの各々が回転子20の(半分)を示しており、5つのPM25が回転子20に搭載されており、2つのポケット26がそれぞれのPMの各々の側面にある。図9aは、PCMが側面にあるポケット26に制限される、いわゆる1磁石セグメント分けを示す。図9bは、概念的にはPCMにより充填され得る更なる2つのギャップ29を形成する3磁石セグメント分け設計を示す。図9cは、6磁石セグメント分けを示し、したがって、10個のポケット26とともに5×5=25個のギャップ29を形成する。
【0082】
[0102]図9a、図9b、及び図9cにおける3つの回転子設計が、モーターパフォーマンスを評価するために電磁FEAを使用してシミュレーションされた。次に、完全なモーター構造物の熱FEA分析が、シミュレーションによるエリトリトールPCMが回転子ギャップを充填した状態で実施される。
【0083】
[0103]公平な比較のために、以下の設計制約が図9a~図9cにおける3つの回転子設計に対して適用された。
磁石面積=189.5mm
PCM面積=75.5mm(±2%)
20A/mmの電流密度における出力トルク=186Nm(±3%)
【0084】
[0104]3つの設計の全てが、PCMの有効性を評価するために一様な分布で同じ損失密度をもつと仮定された。
【0085】
磁石セグメント分け-熱分析
[0105]図10aは、図9a~図9cのセグメント分け設計の熱過渡分析を示す。図10bは、PCMが存在するときの、又は磁石間のギャップが空気により充填されており、すなわちPCMが存在しないときの、図9a~図9cのセグメント分け設計に対する150℃に達するまでの過渡時間の間の差を示す。PCMと磁石との間のより広い界面面積がPCMの相変化期間中、磁石において生成された熱の吸収を大きくするので、PCMがより多くの磁石セグメントとともに使用されたとき、PCMが過渡期間を延ばすことにおいてより効果的になることが図10a及び図10bから確認され得る。図11は、図10aの90秒データ点におけるPCMを含まない磁石及び図9a~図9cの3つのセグメント分け設計の温度分布を示す。1~3と比較したとき3~6までは得られる効果が小さくなるが、より多くのPCMセグメントが存在するほど、90秒において磁石がより冷たくなる。PCMの融点に到達する前は全ての曲線が同様であることに留意されたい。
【0086】
組み込まれた空洞
[0106]図9b、図9cのいずれかに示されるように回転子を保持すること、及び組立てることは困難である場合があるが、TRLの観点から明らかに望ましい。図12は、組み込まれたPCMを含むPMの別の構成を示すパネルである。組み込まれたPCMは、PMを通して少なくとも途中まで延びた空洞又は窪み30を使用して形成され、したがって、広い表面積がPCMとPMとの間の接触をもたらす。幾つかの形成手段は、この界面に残存するレイヤー又はコーティングを常に生成することがあるが、その熱抵抗は小さいので、接触の直接さ、及びPCMの体積に対する接触の面積は、PCM TRL効果をより良く利用するために有用である。
【0087】
[0107]図12の上部は、側面図(左側)に図9cのセグメント分けされたPMを示し、及び、PM、及び、ポケット内の、及びギャップ29内のPCMの熱モデルが示されている。この設計を使用してTRLがどれほど効果的かを示すために温度スケールが示されている。PCMの上部における暗い帯は比較的非常に低温(~105℃)である。
【0088】
[0108]パネル12の右側において、上部は、長尺の菱形の貫通孔又は空洞30をもつPMに対する設計を示す。熱モデリングは、温度がそのモデルにおいてより一様であるという点で、左側のセグメント分けされたモデルに比べて、動作状態に対するこのPMのより良く適したTRLを示す。熱モデルから、表面に見えているピーク温度が、セグメント分けされたPMに組み込まれた空洞を含むPMとの両方に対して132℃より十分に低いことが確認され得る。熱分布(中央)及び熱流束(底部)におけるモデルは斜視図に示されている。熱流束分布は、組み込まれた空洞を含むPMとは対照的に、セグメント分けされたPMにおけるPCMの縁部における冷却速度の大幅な違いを示している。
【0089】
[0109]図13は、これらの2つのPMに対する平均温度のグラフである。両方の構成に対する温度上昇は、所与のシナリオにおいて同等である。しかし、組み込まれた空洞を含む構成は非常に大きい実用的利点をもつ。実際、その構成を使用して、PCM材料を囲み得、したがって、PCM材料の溶融した、又は部分的に溶融したまとまりを伴って、遠心分離状態で動作中の漏れを防止する。
【表4】
【0090】
[0110]図14は、異なる構成の空洞30を含むPM25の変形例の側面図である。5つの空洞30が示されている、3つが視野内の面から延びており、及び2つが破線で示されている。図14aは、視認線AAに沿って取得された断面図を示す。空洞30は長尺で同様であり、PM25の反対を向いた2つの側面のうちの1つから各々が平行に延びている。空洞30がそれぞれの側面に到達する付近の各空洞30の端部において、空洞30のうちの1つに搭載されていることが示されているキャップ32のピンねじ山に係合するようにボックスねじ山33がタッピング形成されている。
【0091】
[0111]図14に示されている表面に到達している3つの空洞30は、PM内にPCMをより良く分散させるために、及び空洞30間の距離を短くするために、反対側の面に到達している2つの空洞より低い。この設計は、上述のように列記されたI-IVの方法のうちの任意のものを使用して製造され得る。
【0092】
[0112]図15a、図15bは本発明によるPM25の第2の変形例の断面図及び側面図を示す。この実施形態も5つの空洞を示しており、空洞のうちの2つは他の3つのものよりも小さい。空洞は錐台であり、丸みを帯びた遠位面をもつ。十分なUTSをもつPMに機械加工され得る種々の形状が存在する。この設計は、図15bに示されている面に加熱が蓄積される場合に、図15bに示されている面(第1の面)を冷やすことに適したものであってもよい。PMのより狭い部分にあるより小さい穴と、より厚い部分にあるより大きい穴とを設けることが、PM内の応力集中を避けるために理論にかなっている。第2の変形例に示されている空洞30の軸線は平行ではないが、軸線は同一平面上にあってもよい。各軸線は局所的に第1の面に実質的に直交しており、この面は少なくとも1つの方向に湾曲している。この設計も、上述のように列記されたI-IVの方法のうちの任意のものを使用して製造され得る。
【0093】
[0113]図16は、本発明によるPM25の第3の変形例の断面図を示す。第3の変形例PM25の(示されている)上面に実質的に沿うように延びた表面下に延びた空洞を含む。第3の変形例は不連続な形状をもつ2つの対称に対置された空洞を更に含み、形状は実質的に、錐形の先端を含む円筒穴からなる。犠牲材料又は管が設計において使用される場合、この設計は積層造形により製造され得る。
【0094】
[0114]図17は、本発明によるPM25の第4の変形例の断面図を示す。第4の変形例の空洞は両側の側縁部に沿った2つの長尺溝、及び、PM25の中心に向かって侵入した狭いファンスリット構造物である。各ファンスリット構造物はそのそれぞれの溝に接続されており、したがって、厳密には2つの空洞のみが存在する。この構造物をカバーすることは、前述の変形例の場合ほど単純なことではない。
プロトタイプ
【0095】
[0115]出願人は本発明によるPMの例を作成した。PMは、Al 6061のクーポン36.7×28.8×14.5mm上に堆積させられた。NdFeB磁石サンプルが、Magnequench製のMQFP-B NdFeB粉末及び、Valimet製のH5アルミニウム粉末を使用してコールドスプレー積層造形により準備された。サンプルは600℃の温度及び4.9MPaのガス圧を使用して処理された。磁石製造工程及びそれらの磁気的な性質に関する更なる詳細は、Lamarre、J.-M.、Bernier、F.、Permanent Magnets Produced by Cold Spray Additive Manufacturing for Electric Engines、(2019)、Journal of Thermal Spray Technology、28(7)、pp.1709-1717において見ることができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
[0116]サンプル表面が最終寸法まで機械加工されるとともに、エリトリトールと熱電対とを挿入するための穴が実演目的で従来の機械加工を使用して穿孔された。3つの主空洞が全部で2.32gの液体エリトリトールにより完全に充填された。
【0097】
[0117]PM材料のサービス状態を検査するために検査リグが使用された。3kWのCOレーザー(50W、163パルス持続期間、直径25mmのレーザースポット)により熱が供給され、温度測定結果が熱電対、光学高温計、及び温度カメラにより得られた。シミュレーションによる熱分布とシミュレーションにより予測されたものとの間の優れた一致が、上述のように得られたシミュレーションによる結果に非常に高い信頼性をもたらす。PMCもスロットも含まないPMが180℃まで加熱された条件下で、PMCを含むPMは、160℃未満であることが確認された。
【0098】
[0118]したがって、PM及び製造方法が開示されている。実行可能な製造手段、及びPMの温度調節の十分に裏付けられた改善を実現するために、PCMを保持するための空洞を形成するためのPMにおける穴の形成が例示されている。PMは回転子基材に直接的にAMにより生成され得ることが有益であり、CSAMにより生成され得ることが好ましく有益であるが、種々の設計を、電気機械の回転子における配備により適したものにする他の手段により、同じ強度のPMが製造され得る。

図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図7a
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図14a
図15a
図15b
図16
図17
図18a
図18b
【国際調査報告】