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特表2024-518972光吸収リモートセンシング(PARS)イメージング法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】光吸収リモートセンシング(PARS)イメージング法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20240426BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240426BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20240426BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20240426BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G01N21/17 620
G01N33/48 M
G01N33/483 C
A61B10/00 E
A61B10/00 H
A61B5/1455
A61B5/026 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569983
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 IB2022054433
(87)【国際公開番号】W WO2022238956
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/187,789
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/055380
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(31)【優先権主張番号】17/394,919
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/241,170
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/315,215
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520277531
【氏名又は名称】イルミソニックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ILLUMISONICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハジ レザ、パーシン
(72)【発明者】
【氏名】ベル、ケヴァン
(72)【発明者】
【氏名】エクレストン、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ペカル、ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】ペッレグリーノ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】フィーグス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ、ジェームズ アレクサンダー タモン
(72)【発明者】
【氏名】トウィール、ジェームズ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045CB01
2G045FA11
2G045FA31
2G059AA03
2G059AA05
2G059AA06
2G059BB12
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE05
2G059EE07
2G059EE09
2G059EE16
2G059FF01
2G059FF02
2G059FF04
2G059GG01
2G059GG08
2G059HH03
2G059MM01
4C017AA11
4C017AC28
4C017EE01
4C017FF05
4C038KK01
4C038KL07
4C038KX02
(57)【要約】
試料内の詳細を視覚化する方法は、励起ビームを使用して、励起位置において試料内の放射信号および非放射信号を生成するステップと、試料の励起位置に向けられた調査ビームにより試料を調査するステップと、試料からの光を検出するステップとを含み得る。励起ビームは、試料の表面下に合焦され得る。調査ビームは、試料の表面の下に合焦され得る。検出光は、試料から戻る調査ビームの一部を含み得る。検出光は、生成放射信号および生成非放射信号を示し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料内の詳細を視覚化する方法であって、
前記試料の表面の下に合焦される励起ビームを使用して励起位置において前記試料内の放射信号および非放射信号を生成するステップと、
前記試料の前記励起位置に向けられ、前記試料の前記表面の下に合焦される調査ビームにより前記試料を調査するステップと、
前記試料からの光を検出するステップと、を含み、検出された光は、前記試料から戻る前記調査ビームの一部を含み、前記検出された光は、生成放射信号および生成非放射信号を示す、方法。
【請求項2】
戻りの前記調査ビームの一部は、前記生成非放射信号を示し、戻りの前記調査ビームの一部および前記励起ビームを除く前記検出された光の一部は、前記生成放射信号を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料からの局所的な光散乱を検出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光を検出するステップは、前記生成放射信号および前記生成非放射信号を経時的に検出することを含み、前記方法は、検出された前記生成放射信号および前記生成非放射信号の発展時間を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料内の放射信号および非放射信号を生成するステップは、前記試料内の複数の領域で発生し、前記方法は、決定された前記発展時間に基づいて前記複数の領域の中から細胞核に属する領域を識別するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
決定された前記発展時間に基づいて、
前記試料の熱拡散率、
前記試料の導電率、
前記試料内の音速、
前記試料の温度、
前記試料の密度、
前記試料の熱容量、
前記試料の音響インピーダンス、
前記試料の組織タイプ、または
前記試料の分子情報のうちの少なくとも1つを決定するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
平均励起前信号を決定するステップと、
経時的に検出された信号の所定の一部に基づいて平均励起後信号を決定するステップと、
決定された前記平均励起前信号と決定された前記平均励起後信号との間の差に基づいて振幅を決定するステップと、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
検出された生成放射PARS信号および生成非放射PARS信号に基づいて、関数を使用して値を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記値が、非放射PARS信号に対する前記検出された生成放射PARS信号の比である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
戻りの前記調査ビームの一部を再方向付けして、前記試料との相互作用を検出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記励起ビームの波長は、前記試料が2つ以上の光子を同時に吸収するように構成され、前記2つ以上の光子のエネルギーの合計は、所定のエネルギーまたは吸収に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記励起ビームの波長は、前記試料が2つ以上の光子を同時に吸収するように構成され、前記波長は、所定の波長の2倍に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の波長は、紫外線(UV)範囲内の波長である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の波長は、UVC範囲内の波長である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記試料の特徴を決定するために、クラスタリングアルゴリズムを使用して、形状に基づいて検出された生成放射信号および生成非放射信号をクラスタ化するステップと、
クラスタ化された信号に基づいてクラスタ重心を決定し、前記クラスタ化された信号に基づいて画像を決定するステップをさらに含み、画像を決定することは、前記クラスタ化された信号に基づいて1つまたは複数の色を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
調査ビームにより前記試料を調査するステップは、前記調査ビームを前記試料上で移動させて、複数の領域にわたって前記試料を経時的に調査することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記試料の空間的変動にわたる前記調査ビームの移動によって生じる非変調散乱を推定するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
生成された複数の信号のうちの1つの信号の複数のフィルタリングされたインスタンスを測定または保存するステップをさらに含み、前記複数のフィルタリングされたインスタンスは、前記信号のフィルタリングされていないインスタンスおよび前記信号のフィルタリングされたインスタンスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
検出された前記生成放射信号に基づいて第1の画像を決定し、検出された前記生成非放射信号に基づいて第2の画像を決定するステップと、前記第1の画像と前記第2の画像とを比較するステップと、前記比較に基づいて前記試料の最終画像に対する1つまたは複数の修正を決定するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記調査ビームがチャープパルスを含み、前記方法は、前記調査ビームの様々な波長成分を空間的に分離するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記試料からの光を検出するステップは、複数の検出器を使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記励起ビームは、検出ビームが合焦される領域よりも小さい領域に合焦される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、以下の用途であって、
血中酸素飽和度のイメージング、
腫瘍低酸素症のイメージング、
創傷治癒、熱傷診断または手術のイメージング、
微小循環のイメージング、
血液酸素化パラメータイメージング、
組織領域に流入および流出する血管内の血流の推定、
分子特異的ターゲットのイメージング、
前臨床腫瘍モデルの血管新生のイメージング、
微小循環および大循環ならびに色素細胞の臨床イメージング、
眼のイメージング、
蛍光眼底血管造影法の増強または代替、
皮膚病変のイメージング、
メラノーマのイメージング、
基底細胞癌のイメージング、
血管腫のイメージング、
乾癬のイメージング、
湿疹のイメージング、
皮膚炎のイメージング、
モース手術イメージング、
腫瘍縁切除を検証するためのイメージング、
末梢血管疾患のイメージング、
糖尿病性潰瘍および/または褥瘡のイメージング、
熱傷イメージング、
形成外科手術、
顕微手術、
循環腫瘍細胞のイメージング、
メラノーマ細胞のイメージング、
リンパ節血管新生のイメージング、
光力学療法に対する応答のイメージング、
血管破壊機構を有する光力学療法に対する応答のイメージング、
化学療法に対する応答のイメージング、
抗血管新生薬に対する応答のイメージング、
放射線療法に対する応答のイメージング、
多波長光音響励起を用いる酸素飽和度の推定、
パルスオキシメトリーが使用できない場合に静脈酸素飽和度の推定、
脳静脈酸素飽和度および/または中心静脈酸素飽和度の推定、
酸素流量および/または酸素消費の推定、
バレット食道および/または大腸がんにおける血管床および浸潤深さのイメージング、
脳手術中の機能的イメージング、
内出血および/または焼灼検証の評価、
臓器および/または臓器移植の灌流充足のイメージング、
膵島移植の周辺の血管新生のイメージング、
皮膚移植のイメージング、
血管新生および/または免疫拒絶を評価するための組織足場および/または生体材料のイメージング、
顕微手術を支援するイメージング、
血管および/または神経の切断を回避するためのガイダンス、
臨床応用または前臨床用途における造影剤のイメージング、
センチネルリンパ節の識別、
リンパ節における腫瘍の非侵襲または低侵襲の識別、
材料の非破壊検査、
前臨床もしくは臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色タンパク質、および/もしくは蛍光タンパク質を含む、遺伝的にコード化されたレポータのイメージング、
分子イメージングのために能動的または受動的にターゲットにされた光吸収ナノ粒子のイメージング、
血餅のイメージング、
血餅年齢の段階付け、
カテーテル処置の取り替え、
胃腸病学的用途、
全視野にわたる単一励起パルスイメージング、
組織のイメージング、
細胞のイメージング、
物体表面からの散乱光のイメージング、
散乱光の吸収誘発変化のイメージング、または
光吸収の非接触イメージングの用途のうちの1つまたは複数に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
試料内の特徴を視覚化する方法であって、
前記試料からの非放射信号および放射信号を含む信号を一定期間にわたって受信するステップと、
前記一定期間にわたる受信信号の発展に基づいて前記試料の特徴を決定するステップと、
決定された前記特徴に基づいて画像を決定するステップと、を含む方法。
【請求項25】
試料内の特徴を視覚化する方法であって、
信号を一定期間にわたって受信するステップと、受信信号は、前記試料における2つ以上の固有の吸収に基づく測定値を示しており、
前記一定期間にわたる前記受信信号の発展に基づいて前記試料の特徴を決定するステップと、
決定された前記特徴に基づいて画像を決定するステップと、を含む方法。
【請求項26】
試料内の特徴を視覚化する方法であって、
前記試料からの非放射信号および放射信号を含む信号を受信するステップと、
前記試料の特徴を決定するために、クラスタリングアルゴリズムを使用して、受信された1つまたは複数の信号をクラスタ化するステップと、
クラスタ化された信号に基づいて画像を決定するステップと、を含む方法。
【請求項27】
試料内の特徴をイメージングするための光吸収リモートセンシングシステムであって、
励起位置において前記試料内に複数の信号を生成するように構成された励起光源であって、前記励起光源は、前記試料の表面の下に合焦される、前記励起光源と、
前記試料を調査するように構成され、かつ前記試料の前記励起位置に向けられた調査光源であって、前記調査光源は、前記試料の前記表面の下に合焦され、前記試料から戻る少なくとも1つの調査光源の一部が、生成された前記複数の信号の少なくともいくつか示す、前記調査光源と、
生成された前記信号を時間の関数として分析して、前記試料内の特徴を示す画像を決定するように構成されたプロセッサと、を備える光吸収リモートセンシングシステム。
【請求項28】
試料内の特徴をイメージングするための光吸収リモートセンシングシステムであって、
励起位置において前記試料内に複数の信号を生成するように構成された励起光源であって、前記励起光源は、前記試料の表面の下に合焦される、前記励起光源と、
前記試料を調査するように構成され、かつ前記試料の前記励起位置に向けられる調査光源であって、前記調査光源は、前記試料の前記表面の下に合焦される、前記調査光源と、
前記試料からの光を検出するように構成された検出光源であって、前記試料から戻る前記調査光源の一部を検出するように構成され、戻りの前記調査光源の一部は、生成された前記複数の信号の少なくともいくつかを示す、前記検出光源と、
生成された前記信号を時間の関数として分析して、前記試料内の特徴を示す画像を決定するように構成されたプロセッサと、を備える光吸収リモートセンシングシステム。
【請求項29】
コンピュータが実施する試料内の特徴を視覚化する方法であって、
1つまたは複数の光吸収リモートセンシング(PARS)信号を受信するステップと、
前記試料の特徴を決定するために、クラスタリングアルゴリズムを使用して、受信された前記1つまたは複数のPARS信号をクラスタ化するステップと、
クラスタ化されたPARS信号に基づいて画像を決定するステップと、を含む方法。
【請求項30】
試料内の特徴をイメージングするための光吸収リモートセンシング(PARS)システムであって、
励起位置において前記試料内に複数の信号を生成するように構成された励起光源であって、前記励起光源は、前記試料の表面の下に合焦される、前記励起光源と、
前記試料を調査するように構成され、かつ前記試料の前記励起位置に向けられた調査光源であって、前記調査光源は、前記試料の前記表面の下に合焦され、前記試料から戻る少なくとも1つの調査光源の一部が、生成された前記複数の信号を示す、前記調査光源と、
クラスタリングアルゴリズムを実行して、生成された前記複数の信号をクラスタ化し、クラスタ化された生成された前記複数の信号に基づいて画像を決定するように構成されたプロセッサであって、前記画像が前記試料内の特徴を示す、前記プロセッサと、を備えるPARSシステム。
【請求項31】
コンピュータが実施する試料内の特徴を視覚化する方法であって、
1つまたは複数の信号を受信するステップと、
クラスタリングアルゴリズムを使用して、形状に基づいて受信信号をクラスタ化して、前記試料の時間領域の特徴を決定するステップと、
クラスタ化された信号および決定された前記時間領域の特徴に基づいて、画像内で使用される1つまたは複数の色を含む前記画像を決定するステップと、を含む方法。
【請求項32】
コンピュータが実施する試料内の特徴を視覚化する方法であって、
前記試料からの非放射信号および放射信号を含む信号を受信するステップと、
前記試料の特徴を決定するために、クラスタリングアルゴリズムを使用して、受信された1つまたは複数の信号をクラスタ化するステップと、
クラスタ化された信号に基づいて画像を決定するステップと、を含む方法。
【請求項33】
試料内の特徴を視覚化する方法であって、
1つまたは複数の信号を受信するステップと、
クラスタリングアルゴリズムを使用して、形状に基づいて受信信号をクラスタ化して、前記試料の特徴を決定するステップと、前記形状がベクトルに基づいており、
クラスタ化された信号および決定された前記特徴に基づいて、画像内で使用される1つまたは複数の色を含む画像を決定するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学イメージングの分野に関し、詳細には、生体内、生体外、または試験管内での工業材料または生物学的組織などの試料の非接触イメージングのための光吸収リモートセンシング(PARS:photoabsorption remote sensing)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光音響イメージングは、2つの主要なカテゴリに分けることができる。光音響トモグラフィ(PAT:photoacoustic tomography)では、再構築ベースの画像形成を使用し、光音響顕微鏡(PAM:photoacoustic microscopy)は、合焦ベースの画像形成を使用する。従来の光音響技法は、試料に物理的に結合する必要があるため、眼科イメージング、術中イメージング、創傷治癒のモニタリング、および多くの内視鏡処置等の多種多様な臨床用途には不向きである。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示される態様は、試料内の詳細を視覚化する方法を提供し得る。方法は、励起ビームを使用して、励起位置において試料内に放射信号および非放射信号を生成するステップと、試料の励起位置に向けられた調査ビーム(interrogation beam)により試料を調査するステップと、試料からの光を検出するステップとを含み得る。
【0004】
励起ビームは、試料の表面下に合焦され得る。調査ビームは、試料の表面の下に合焦され得る。検出光は、試料から戻る調査ビームの一部を含み得る。検出光は、生成放射信号および生成非放射信号を示し得る。
【0005】
戻りの調査ビームの一部は、生成非放射信号を示し得る。戻りの調査ビームの一部及び励起ビームを除く検出された光の一部は、生成放射信号を示し得る。
方法は、試料からの局所的な光散乱を検出するステップを含み得る。
【0006】
光を検出するステップは、生成放射信号および生成非放射信号を経時的に検出することを含み得る。方法は、検出された生成放射信号および生成非放射信号の発展時間(evolution time)を決定するステップを含み得る。
【0007】
試料内の放射信号および非放射信号を生成するステップは、試料内の複数の領域で発生し得る。方法は、決定された発展時間に基づいて、複数の領域の中から細胞核に属する領域を決定または識別するステップを含み得る。
【0008】
方法は、決定された発展時間に基づいて、試料の熱拡散率、試料の伝導率、試料内の音速、試料の温度、試料の密度、試料の熱容量、試料の音響インピーダンス、試料の組織タイプ、または試料の分子情報のうちの少なくとも1つを決定するステップを含み得る。
【0009】
方法は、平均励起前信号を決定するステップと、経時的に検出された信号の所定の一部に基づいて平均励起後信号を決定するステップと、決定された平均励起前信号と決定された平均励起後信号との間の差に基づいて振幅を決定するステップとを含み得る。
【0010】
方法は、検出された生成放射PARS信号および非放射PARS信号に基づいて、関数を使用して値を決定するステップを含み得る。値は、非放射PARS信号に対する検出された生成放射PARS信号の比であり得る。
【0011】
方法は、戻りの調査ビームの一部の再方向付けして、試料との相互作用を検出するステップとを含み得る。
励起ビームの波長は、試料が2つ以上の光子を同時に吸収するように構成され得る。2つ以上の光子のエネルギーの和は、所定のエネルギーまたは吸収に等しい。
【0012】
励起ビームの波長は、試料が2つ以上の光子を同時に吸収するように構成され得る。波長は、所定の波長の2倍に等しい。所定の波長は、紫外線(UV)範囲内の波長であり得る。所定の波長は、UVC範囲内の波長であり得る。
【0013】
方法は、試料の特徴を決定するために、クラスタリングアルゴリズムを使用して、形状に基づいて検出された生成放射信号および生成非放射信号をクラスタ化するステップを含み得る。方法は、クラスタ化された信号に基づいてクラスタ重心を決定し、クラスタ化された信号に基づいて画像を決定するステップを含み得る。方法は、クラスタ化された信号に基づいて1つまたは複数の色を決定するステップを含み得る。
【0014】
調査ビームにより試料を調査するステップは、調査ビームを試料上で移動させて、複数の領域にわたって試料を経時的に調査することを含み得る。
方法は、試料の空間的変動にわたる調査ビームの移動によって生じる非変調散乱を推定するステップを含み得る。
【0015】
方法は、生成された信号のうちの1つの信号の複数のフィルタリングされたインスタンスを測定または保存するステップを含み得る。複数のフィルタリングされたインスタンスは、信号のフィルタリングされていないインスタンスと、信号のフィルタリングされたインスタンスとを含み得る。
【0016】
方法は、検出された生成放射信号に基づいて第1の画像を決定し、検出された生成非放射信号に基づいて第2の画像を決定するステップと、第1の画像と第2の画像とを比較するステップと、比較に基づいて試料の最終画像に対する1つまたは複数の修正を決定するステップとを含み得る。
【0017】
調査ビームは、チャープパルスを含み得る。方法は、調査ビームの様々な波長成分を空間的に分離するステップを含み得る。
試料からの光を検出するステップは、複数の検出器を使用して実行され得る。複数の検出器のうちの少なくとも1つは、放射緩和に敏感であるか、または放射緩和を検出するように構成され得る。複数の検出器のうちの少なくとも1つは、蛍光または自己蛍光を検出するように構成され得、かつ/または蛍光または自己蛍光に敏感であり得る。
【0018】
励起ビームは、検出ビームが合焦され得る領域よりも小さい領域に合焦され得る。
方法は、以下の用途であって、血中酸素飽和度のイメージング、腫瘍低酸素のイメージング、創傷治癒、火傷診断もしくは手術のイメージング、微小循環のイメージング、血液酸素化パラメータのイメージング、組織の領域に流出入する血管中の血流の推定、分子特異的ターゲットのイメージング、前臨床腫瘍モデルの血管新生のイメージング、微小循環および大循環ならびに色素細胞の臨床イメージング、眼のイメージング、蛍光眼底血管造影法の補強もしくは代替、皮膚病変のイメージング、メラノーマのイメージング、基底細胞癌のイメージング、血管腫のイメージング、乾癬のイメージング、湿疹のイメージング、皮膚炎のイメージング、モース手術イメージング、腫瘍縁切除を検証するためのイメージング、末梢血管疾患のイメージング、糖尿病性潰瘍および/もしくは褥瘡のイメージング、火傷イメージング、形成外科、顕微手術、循環腫瘍細胞のイメージング、メラノーマ細胞のイメージング、リンパ節血管新生のイメージング、光力学的治療に対する応答のイメージング、血管破壊機構を持つ光力学的治療に対する応答のイメージング、化学療法に対する応答のイメージング、酸素代謝変化のイメージング、抗血管新生薬に対する応答のイメージング、放射線療法に対する応答のイメージング、多波長光音響励起を用いる酸素飽和度の推定、パルスオキシメトリーが使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、脳静脈酸素飽和度および/もしくは中心静脈酸素飽和度の推定、酸素フラックスおよび/もしくは酸素消費の推定、バレット食道および/もしくは大腸癌における血管床および浸潤深さのイメージング、脳手術中の機能的および構造的イメージング、脳手術中の機能的イメージング、内出血および/もしくは焼灼検証の評価のための使用、臓器および/もしくは臓器移植の灌流充足のイメージング、膵島移植の周囲の血管新生のイメージング、皮膚移植のイメージング、血管形成および/もしくは免疫拒絶を評価するための組織足場および/もしくは生体材料のイメージング、顕微手術を支援するイメージング、血管および/もしくは神経を切断しないようにするためのガイダンス、臨床応用もしくは前臨床応用における造影剤のイメージング、センチネルリンパ節の識別、リンパ節における腫瘍の非侵襲もしくは低侵襲の識別、材料の非破壊検査、前臨床もしくは臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色タンパク質、および/もしくは蛍光タンパク質を含み得る、遺伝的にコード化されたレポータのイメージング、分子イメージングのために能動的もしくは受動的にターゲットにされた光吸収ナノ粒子のイメージング、血栓のイメージング、血栓年齢の段階分け、カテーテル処置の取り替え、胃腸学的用途、全視野にわたる単一励起パルスイメージング、組織のイメージング、細胞のイメージング、物体表面からの散乱光のイメージング、散乱光の吸収誘発変化のイメージング、または光吸収の非接触イメージングの用途のうちの1つまたは複数において使用され得る。
【0019】
本明細書で開示される態様は、試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、一定期間にわたって信号を受信するステップと、一定期間にわたる受信信号の発展に基づいて試料の特徴を決定するステップと、決定された特徴に基づいて画像を決定するステップとを含み得る。信号は、試料からの非放射信号および放射信号を含み得る。
【0020】
方法は、受信された信号のうちの1つを2つ以上のインスタンスに分割するステップと、インスタンスのうちの1つをフィルタリングするステップと、2つ以上のチャネル上の2つ以上のインスタンスをそれぞれ保存するステップとを含み得る。
【0021】
方法は、第1の空間軸、第2の空間軸、および時間軸に沿って受信信号をプロットするステップと、プロットされた受信信号に基づいて体積を算出するステップとを含み得る。
方法は、決定された画像を表示するステップを含み得る。方法は、決定された画像を二次視覚化と組み合わせて表示するステップを含み得る。二次視覚化は、試料の明視野画像であり得る。二次視覚化は、決定された画像に対する背景として現れ得る。
【0022】
本明細書で開示される態様は、試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、一定期間にわたって信号を受信するステップと、一定期間にわたる受信信号の発展に基づいて試料の特徴を決定するステップと、決定された特徴に基づいて画像を決定するステップとを含み得る。受信された信号は、2つ以上の固有の吸収に基づく測定値を示し得る。2つ以上の固有の吸収に基づく測定値は、放射測定および非放射測定を含む。
【0023】
本明細書で開示される態様は、試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、信号を受信するステップと、クラスタリングアルゴリズムを使用して、受信された1つまたは複数の信号をクラスタ化して、試料の特徴を決定するステップと、クラスタ化された信号に基づいて画像を決定するステップとを含み得る。信号は、試料からの非放射信号および放射信号を含み得る。受信信号の少なくともいくつかは、励起ビームを使用して励起位置において試料内に信号を生成し、試料の励起位置に向けられた調査ビームにより試料を調査し、試料から戻る調査ビームの一部を検出することによって収集され得る。信号の少なくともいくつかは、試料からの光吸収および散乱を検出することによって収集され得る。
【0024】
方法は、クラスタ化された信号に基づいてクラスタ重心を決定し、決定されたクラスタ重心に基づいて特性時間領域信号を決定するステップを含み得る。
クラスタリングアルゴリズムは、実行時に、初期クラスタ重心として機能する所定数の信号を選択し、全ての信号のクラスタメンバーシップを更新し、平均残差および平均残差の変化を決定し、クラスタ重心および第1の主成分を決定し、収束条件が満たされるかどうかを決定するように構成され得る。クラスタメンバーシップを更新することは、各信号から各重心までの距離を決定すること、および最小距離の重心のクラスタにメンバーシップを割り当てることを含み得る。
【0025】
方法は、クラスタ化された信号および決定された特徴に基づいて、画像内で使用される1つまたは複数の色を決定するステップを含み得る。
本明細書に開示される態様は、試料内の特徴をイメージングするための光吸収リモートセンシングシステムを提供し得る。システムは、励起位置において試料内に信号を生成するように構成された励起光源と、試料を調査するように構成され、かつ試料の励起位置に向けられる調査光源と、生成された信号を時間の関数として分析して、画像を決定するように構成されたプロセッサとを含み得る。励起光源は、試料の表面の下に合焦され得る。調査光源は、試料の表面の下に合焦され得る。試料から戻る少なくとも1つの調査光源の一部は、生成された信号の少なくともいくつかを示し得る。画像は、試料内の特徴を示し得る。
【0026】
フィルタは、戻りの調査光源の一部を試料からの残りの光の一部から分離するように構成され得る。プロセッサは、戻りの試料の一部において示される信号および残りの光の一部において示される信号を分析するように構成され得る。
【0027】
プロセッサは、クラスタリングアルゴリズムを実行して、生成された信号をクラスタ化し、クラスタ化された生成された信号に基づいて画像を決定するように構成され得る。
少なくとも1つの励起光源は、第1の励起光源および第2の励起光源を含み得る。第1の励起光源は、第1の波長の光を提供するように構成され得、第2の励起光源は、第2の波長の光を提供するように構成され得る。
【0028】
本明細書に開示される態様は、試料内の特徴をイメージングするための光吸収リモートセンシングシステムを提供し得る。システムは、励起位置において試料内に信号を生成するように構成された励起光源と、試料を調査するように構成され、かつ試料の励起位置に向けられる調査光源と、試料からの光を検出するように構成された検出光源とを含み得る。
【0029】
検出光源は、試料から戻る調査光源の一部を検出するように構成され得、プロセッサは、生成された信号を時間の関数として分析して、画像を決定するように構成され得る。励起光源は、試料の表面の下に合焦され得る。調査光源は、試料の表面の下に合焦され得る。戻りの調査光源の一部は、生成された信号のうちの少なくともいくつかを示し得る。画像は、試料内の特徴を示し得る。
【0030】
検出光源は、複数の積分型光検出器を含み得、複数の積分型光検出器は、戻りの調査光源の一部が複数の積分型光検出器にわたって分散され得るように配置されている。
複数の積分型光検出器は、各光検出器の積分開始時間の間に調整可能な遅延が存在し得るように構成され得る。検出光源は、(i)1つまたは複数の機械的走査ステージ、および(ii)共振スキャナまたはポリゴンスキャナのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0031】
本明細書で開示される態様は、コンピュータが実施する試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、1つまたは複数の光吸収リモートセンシング(PARS)信号を受信するステップと、試料の特徴を決定するために、クラスタリングアルゴリズムを使用して、受信された1つまたは複数のPARS信号をクラスタ化するステップと、クラスタ化されたPARS信号に基づいて画像を決定するステップとを含み得る。
【0032】
PARS信号の少なくともいくつかは、励起ビームを使用して励起位置において試料内に信号を生成し、試料の励起位置に向けられた調査ビームにより試料を調査し、試料から戻る調査ビームの一部を検出することによって収集され得る。励起ビームは、試料の表面の下に合焦される。調査ビームは、試料の表面の下に合焦され得る。
【0033】
信号を生成することは、圧力信号、温度信号、および蛍光信号を生成することを含み得る。戻りの調査ビームの一部は、生成された圧力信号および温度信号を示し得る。PARS信号は、生成された圧力信号および温度信号を検出しながら、試料の励起位置からの蛍光信号を検出することによってさらに収集され得る。
【0034】
信号を生成することは、放射信号および非放射信号を生成することを含み得る。戻りの調査ビームの一部は、生成非放射信号を示し得る。PARS信号は、生成された非放射信号を同時に検出しながら、試料の励起位置からの放射信号を検出することによってさらに収集され得る。
【0035】
PARS信号は、戻りの調査ビームの一部を再方向付けして、試料との相互作用を検出することによってさらに収集され得る。
励起ビームの波長は、試料が2つ以上の光子を同時に吸収するように構成され得る。2つ以上の光子のエネルギーの合計は、所定のエネルギーに等しい。
【0036】
方法は、PARS信号を収集するステップを含み得る。受信されたPARS信号をクラスタ化することは、形状に基づき得る。
方法は、再構成されたグレースケール画像を解析して画像を決定することを含み得ない。受信されたPARS信号のクラスタリングは、スカラー振幅に基づき得ない。方法は、スカラー振幅をマッピング又は視覚化することを含み得ない。
【0037】
PARS信号は、試料の温度特性を示し得る。PARS信号は、試料内の音速を示し得る。PARS信号は、分子情報を示し得る。PARS信号は、合焦光ビームによって画定されるサイズを有する領域内の試料の特性を示し得る。
【0038】
PARS信号を受信することは、時間領域(TD)信号を受信することを含み得る。
方法は、クラスタ化されたPARS信号に基づいてクラスタ重心を決定するステップを含み得る。決定されたクラスタ重心は、特徴的な時間領域信号を含み得る。
【0039】
PARS信号を受信することは、後方散乱強度、放射信号、および非放射緩和時間領域信号を受信することを含み得る。
PARS信号を受信することは、放射PARS信号および非放射PARS信号を受信することを含み得る。方法はさらに、放射PARS信号と非放射PARS信号との比を決定するステップを含み得る。
【0040】
方法は、受信されたPARS信号に基づいて減衰時間を決定するステップを含み得る。画像を決定するステップは、クラスタリングに基づいて1つまたは複数の色を決定することを含み得る。
【0041】
方法は、以下の用途であって、血中酸素飽和度のイメージング、腫瘍低酸素のイメージング、創傷治癒、火傷診断もしくは手術のイメージング、微小循環のイメージング、血液酸素化パラメータのイメージング、組織の領域に流出入する血管中の血流の推定、分子特異的ターゲットのイメージング、前臨床腫瘍モデルの血管新生のイメージング、微小循環および大循環ならびに色素細胞の臨床イメージング、眼のイメージング、蛍光眼底血管造影法の補強もしくは代替、皮膚病変のイメージング、メラノーマのイメージング、基底細胞癌のイメージング、血管腫のイメージング、乾癬のイメージング、湿疹のイメージング、皮膚炎のイメージング、モース手術イメージング、腫瘍縁切除を検証するためのイメージング、末梢血管疾患のイメージング、糖尿病性潰瘍および/もしくは褥瘡のイメージング、火傷イメージング、形成外科、顕微手術、循環腫瘍細胞のイメージング、メラノーマ細胞のイメージング、リンパ節血管新生のイメージング、光力学的治療に対する応答のイメージング、血管破壊機構を持つ光力学的治療に対する応答のイメージング、化学療法に対する応答のイメージング、酸素代謝変化のイメージング、抗血管新生薬に対する応答のイメージング、放射線療法に対する応答のイメージング、多波長光音響励起を用いる酸素飽和度の推定、パルスオキシメトリーが使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、脳静脈酸素飽和度および/もしくは中心静脈酸素飽和度の推定、酸素フラックスおよび/もしくは酸素消費の推定、バレット食道および/もしくは大腸癌における血管床および浸潤深さのイメージング、脳手術中の機能的および構造的イメージング、脳手術中の機能的イメージング、内出血および/もしくは焼灼検証の評価のための使用、臓器および/もしくは臓器移植の灌流充足のイメージング、膵島移植の周囲の血管新生のイメージング、皮膚移植のイメージング、血管形成および/もしくは免疫拒絶を評価するための組織足場および/もしくは生体材料のイメージング、顕微手術を支援するイメージング、血管および/もしくは神経を切断しないようにするためのガイダンス、臨床応用もしくは前臨床応用における造影剤のイメージング、センチネルリンパ節の識別、リンパ節における腫瘍の非侵襲もしくは低侵襲の識別、材料の非破壊検査、前臨床もしくは臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色タンパク質、および/もしくは蛍光タンパク質を含み得る、遺伝的にコード化されたレポータのイメージング、分子イメージングのために能動的もしくは受動的にターゲットにされた光吸収ナノ粒子のイメージング、血栓のイメージング、血栓年齢の段階分け、カテーテル処置の取り替え、胃腸学的用途、全視野にわたる単一励起パルスイメージング、組織のイメージング、細胞のイメージング、物体表面からの散乱光のイメージング、散乱光の吸収誘発変化のイメージング、または光吸収の非接触イメージングの用途のうちの1つまたは複数において使用され得る。
【0042】
方法は、ディスプレイ上に画像を表示するステップを含み得る。
本明細書で開示される態様は、試料内の特徴をイメージングするための光吸収リモートセンシング(PARS)システムを提供し得る。システムは、励起位置において試料内に信号を生成するように構成された励起光源と、試料を調査するように構成され、かつ試料の励起位置に向けられる調査光源と、クラスタリングアルゴリズムを実行して、生成された信号をクラスタ化し、クラスタ化された生成信号に基づいて画像を決定するように構成されたプロセッサとを含み得る。励起光源は、試料の表面の下に合焦され得る。
【0043】
調査光源は、試料の表面の下に合焦され得る。少なくとも1つの調査光源の一部は、生成された信号を示し得る試料から戻り得る。画像は、試料内の特徴を示し得る。
方法は、決定された画像を表示するように構成されたディスプレイを含み得る。画像は、受信信号から直接形成され得る。
【0044】
プロセッサは、クラスタリングに基づいて1つまたは複数の色を決定するように構成され得る。決定された色は、画像がヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色画像に似るように構成され得るように、紫色、青色、およびピンク色を含む。
【0045】
本明細書で開示される態様は、コンピュータが実施する試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、1つまたは複数の信号を受信するステップと、クラスタリングアルゴリズムを使用して、形状に基づいて受信信号をクラスタ化して、試料の時間領域の特徴を決定するステップと、画像を決定するステップとを含み得る。方法は、クラスタ化された信号および決定された時間領域の特徴に基づいて、画像内で使用される1つまたは複数の色を決定するステップを含み得る。
【0046】
方法は、受信された1つまたは複数の信号からベクトルの角度を決定するステップを含み得る。形状に基づいて受信信号をクラスタ化することは、ベクトルの角度に基づいて受信信号をクラスタ化することを含み得る。1つまたは複数の信号は、非放射信号または放射信号のうちの少なくとも1つを含む。
【0047】
1つまたは複数の信号は、非放射熱信号または非放射圧力信号のうちの少なくとも1つを含み得る。1つまたは複数の信号は、放射蛍光信号のうちの少なくとも1つを含み得る。放射蛍光信号は、放射自己蛍光信号であり得る。
【0048】
本明細書で開示される態様は、コンピュータが実施する試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、信号を受信するステップと、試料の特徴を決定するために、クラスタリングアルゴリズムを使用して、受信された1つまたは複数の信号をクラスタ化するステップと、クラスタ化された信号に基づいて画像を決定するステップとを含み得る。信号は、試料からの非放射信号および放射信号を含み得る。非放射信号は、熱信号および圧力信号を含み得、放射信号は、蛍光信号を含み得る。
【0049】
信号の少なくともいくつかは、励起ビームを使用して励起位置において試料内に信号を生成し、試料の励起位置に向けられた調査ビームにより試料を調査し、試料から戻る調査ビームの一部を検出することによって収集され得る。信号の少なくともいくつかは、試料からの光吸収および散乱を検出することによって収集され得る。光吸収および散乱は、試料の励起および検出から生じ得る。
【0050】
本明細書で開示される態様は、試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、1つまたは複数の信号を受信するステップと、クラスタリングアルゴリズムを使用して、形状に基づいて受信信号をクラスタ化して、試料の特徴を決定するステップと、画像を決定するステップとを含み得る。形状は、ベクトルに基づき得る。画像を決定することは、クラスタ化された信号および決定された特徴に基づいて、画像内で使用される1つまたは複数の色を決定するステップを含み得る。
【0051】
本明細書で開示される態様は、参照により本明細書に組み込まれる以下の米国特許出願で開示される光吸収または光音響リモートセンシングシステム、方法、または信号のいずれかとともに使用されてもよく、および/またはそれらから信号を受信もしくは収集し得る。2020年4月13日出願の米国特許出願第16/847,182号(光音響リモートセンシング(Photoacoustic Remote Sensing)(PARS))という発明の名称)、2020年11月6日出願の米国特許出願第17/091,856号(非干渉光音響リモートセンシング(Non-Interferometric Photoacoustic Remote Sensing)(NI-PARS))という発明の名称)、2020年3月10日出願の米国特許出願第16/814,538号(現在の米国特許第11022540号明細書)(カメラベースの光音響リモートセンシング(Camera-Based Photoacoustic Remote Sensing)(CG-PARS))という発明の名称)、2020年3月13日出願の米国特許出願第16/753,887号(コヒーレンスゲート型光音響リモートセンシング(Coherence Gated Photoacoustic Remote Sensing)(CG-PARS))という発明の名称)、2020年3月13日出願の米国特許出願第16/647,076号(単一光源光音響リモートセンシング(Single Source Photoacoustic Remote Sensing)(SS-PARS))という発明の名称)、2020年1月8日出願の米国特許出願第16/629,371号(光音響リモートセンシング(PARS)および関連する使用方法(Photoacoustic Remote Sensing(PARS),and Related Methods Of Use)という発明の名称)、2021年8月5日出願の米国特許出願第17/394,919号(PARSイメージング法(PARS Imaging Methods)という発明の名称)、および2021年9月7日出願の米国特許仮出願第63/241,170号(非線形PARS方法(Non-Linear PARS Methods)という発明の名称)。本明細書に開示される態様は、時間領域PARSもしくはTD-PARS、全吸収PARSもしくはTA-PARS、マルチパスPARSもしくはMP-PARS、多光子励起PARSもしくは多光子PARS、熱強化PARSもしくはTE-PARS、温度感知PARSもしくはTS-PARS、超解像PARSもしくはSRR-PARS、スペクトル強化PARSもしくはSE-PARS、スマート検出PARSもしくはSD-PARS、カメラベースPARSもしくはC-PARS、非干渉PARSもしくはNI-PARS、コヒーレンスゲートPARSもしくはCG-PARS、単一光源PARSもしくはSS-PARS、光学解像度PARSもしくはOR-PARS、光コヒーレンストモグラフィと組み合わせたデュアルモダリティPARS(PARS-OCT)、および/または光コヒーレンストモグラフィと組み合わせた内視鏡PARS(EPARS-OCT)などの、上述の用途に記載されるPARSシステムのいずれかを用いて使用され得る。
【0052】
新規の光吸収リモートセンシング(PARS)信号抽出アルゴリズムは、材料反射率、散乱、偏光、位相蓄積、非線形吸収、非線形散乱などの変調を含むがこれらに限定されない様々な吸収誘発変調効果を活用し得る。これらのアルゴリズムは、波長、パルス幅、電力、エネルギー、コヒーレンス長、繰り返し率、露光時間等の変化を含むが、それらに限定されない、種々の励起、検出ビーム、および信号増強ビーム特性を使用することによって、試料内から構成発色団を別個に識別および/または分離する(unmix)ための多重取得のために使用され得る。これらの特性は、タスクに適している任意の値をとり得る。一般的な範囲には、波長(ナノメートルからマイクロメートル(ミクロン))、パルス幅(アト秒からミリ秒)、電力(アトワットからワット)、パルスエネルギー(アトジュールからジュール)、コヒーレンス長(ナノメートルからキロメートル)、および繰り返し率(連続波からギガヘルツ)が含まれ得る。熱摂動を誘発することのみを必要とし得るため比較的長いパルス幅(ナノ秒以上)を使用して実施され得る信号増強ビームとは対照的に、励起ビームは、一般に、PARS信号インパルス応答を誘発するように意図されたより短いパルス幅(ナノ秒およびサブナノ秒)を使用して実施され得る。例えば、励起ビームのパルス幅は、1nsより大きいか、または1ns未満であってもよく、信号増強ビームのパルス幅は、より大きくてもよい。所与のシステムアーキテクチャにおいて、励起波長、検出波長、および信号増強波長は、個別の経路間の光学的差別化の手段を提供するように、異なる波長、パルス幅、時間遅延、または偏光状態を使用して実施され得る。
【0053】
他の新規のPARS信号抽出アルゴリズムは、収集された時間領域挙動の固有の特徴を活用して、信号忠実度を改善し、画像コントラストを向上させ、試料の形状、サイズ、および寸法に関する情報をリカバリし(recover)、または多重化/機能的イメージングを実行し得る。処理技術は、ロックイン増幅(ソフトウェア及びハードウェアベースの両方の実装)、機械学習法、広範な特徴抽出、多次元分解及び周波数コンテンツベースの特徴抽出及び信号処理法を含み得るが、これらに限定されない。
【0054】
PARSは、ターゲットの吸収、温度、偏光、周波数、位相、非線形吸収、構造、速度、蛍光、非線形散乱および散乱コンテンツに基づいて、複数のターゲットの組成を分離するために使用され得る。また、PARSは、ターゲットの吸収、温度、偏光、周波数、位相、非線形吸収、非線形散乱、および散乱コンテンツに基づいて、複数のターゲットのサイズ、形状、特徴、および寸法を分離するために使用され得る。PARS信号は、異なる波長、異なるパルス幅、異なるコヒーレンス長、繰り返し率、レーザ暴露時間、レーザフルエンスを利用することによって、ターゲットの吸収コンテンツ、散乱コンテンツ、蛍光、偏光コンテンツ、周波数コンテンツ、位相コンテンツを使用して、ターゲットを分離するために使用され得る。PARS信号は、発生した圧力によって支配され得、また、PARS信号の振幅/強度、周波数コンテンツ、偏光変化に関連するコンテンツ、蛍光、第2高調波発生、および位相変動に基づいて情報を提供するために分析され得る。PARS信号は、発生した温度によって支配され得、また、PARS信号の振幅/強度、蛍光、周波数コンテンツ、第2高調波発生、偏光変化に関連するコンテンツ、および位相変動に基づいて情報を提供するために分析され得る。PARSシステムは、試料内のいかなる光吸収誘発変動も捕捉するように構成され得る。そのような変動は、圧力信号、温度信号、超音波信号、自己蛍光信号、非線形散乱、および非線形蛍光などの非放射緩和および放射緩和全体を含み得る。
【0055】
試料からの調査、信号増強、励起または自己蛍光の一部は、画像を形成するために収集され得る。これらの信号は、試料のサイズ、形状、特徴、寸法、性質、および組成を分離するために使用され得る。所与のアーキテクチャでは、検出ビーム、励起ビーム、または熱増強ビームなど、試料から戻る光の任意の部分が収集され得る。戻り光は、圧力、温度、光放射を含むあらゆる吸収誘発信号を捕捉するために、波長、位相、偏光などに基づいて分析され得る。このようにして、PARSは、例えば、各検出、励起、および熱増強光源に起因する散乱、自己蛍光、および偏光コントラストを同時に捕捉し得る。さらに、PARSレーザ光源は、これらの別個のコントラスト機構を強調するように特に選択され得る。
【0056】
他の態様は、以下の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本明細書において、「含んでいる(comprising)」という単語は、その単語に続く項目が含まれるが、具体的に言及されていない項目が除外されないことを意味するために、その非限定的な意味で使用される。不定冠詞「a」による要素への言及は、要素のうちの1つおよび1つのみが存在することを必要としない。
【0058】
以下の特許請求の範囲は、上記の例および図面に記載された好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
図1】PARSシステムの概要を示す図である。
図2】PARS励起およびPARS検出を備えるPARSシステムの概要を示す図である。
図3】他のモダリティと組み合わされたPARSの実施形態を示す図である。
図4】PARS信号の信号処理経路を示す図である。
図5】全吸収(TA:total absorption)PARSのための例示的なアーキテクチャを示し、ここでは、自己蛍光検出システムが例として使用される図である。
図6】自己蛍光感受性全吸収PARS(TA-PARS)アーキテクチャによって生成された視覚化を示す図である。
図7】TA-PARS信号の例示的な信号発展を示す図である。
図8】放射信号および非放射信号の例を示す図である。
図9】2つの励起光源、1つの検出光源、および複数のフォトダイオードを使用する例示的なアーキテクチャを示す図である。
図10】TA-PARSシステムによって提供される非放射吸収(ビュー(a))、放射吸収(ビュー(b))、および散乱(ビュー(c))の比較を示す図である。
図11】TA-PARSイメージングの例を示す図である。
図12A-12B】量子効率比(QER)の例示的な適用を示す図である。
図13】QER取得プロセスを使用したTA-PARSイメージングの例を示す図である。
図14】QER取得プロセスを使用したイメージングと従来の染色との比較を示す図である。
図15】例示的なPARSの信号発展を示す図である。
図16】切除されたラットの脳組織における寿命PARS画像の例を示す図である。
図17】高速寿命抽出技術に関連する例示的なPARSの信号発展(signal evolution)を示す図である。
図18】マルチパス(MP)PARSシステムのための例示的アーキテクチャを示す図である。
図19】多光子PARSを正常なPARSと比較した図である。
図20A-20B】再構成されたグレースケールPARS画像および対応する染色を示す図である。
図21A-21B】時間領域TD-PARS信号の主成分および主成分に基づいて合成された染色を示す図である。
図22】TD-PARS信号を分析するための例示的アーキテクチャを示す図である。
図23】TD-PARS信号および重心のグラフを示す図である。
図24】クラスタリング法を用いた視覚化を示す図である。
図25】クラスタリング法を使用した脳組織の3つの異なる領域の視覚化を示す図である。
図26】TD-PARS信号を分析し、画像を決定するための例示的なクラスタリングアルゴリズムを示す図である。
図27】クラスタリングアルゴリズムを使用して画像を決定する方法を示す図である。
図28】非放射信号抽出を例示する図である。
図29】PARS信号の様々なフィルタリングされたインスタンスを例示する図である。
図30】隣接する点または信号間の予期される空間相関を例示する図である。
図31】機能的な抽出に関連して異なる寿命を有する2つの信号を例示する図である。
図32】元の画像とノイズ除去された画像との比較を示す図である。
図33】チャープパルス信号および取得を示す図である。
図34】信号を再構成するために遅延を課すことによる例示的なTD-PARS取得を示す図である。
図35】デジタル技術および/またはアナログ技術を使用したデータ圧縮を示す図である。
図36】例示的な高速取得手法を示す図である。
図37】カラー化画像の直接構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
次に、添付の図面に示される本開示の事例を詳細に参照する。可能な限り、同一または同様の部分を指し示すために、図面全体を通して同一の参照番号が使用される。以下の説明において、「約(about)」、「実質的に(substantially)」、「およそ(approximately)」などの相対的な用語は、記述された数値における可能性のある変動を示すために使用される。
【0060】
最近報告された光音響リモートセンシング(PARS)顕微鏡として知られる光音響技術(米国特許出願公開第2016/0113507号明細書および米国特許出願公開第2017/0215738号明細書)は、新規の検出機構によってこれらの感度の問題の多くを解決している。PARSは、音圧がそれらの発生源から離れて伝搬した後に音圧を外表面で検出するのではなく、励起された光音響領域を直接検出することを可能にする。これは、光音響励起と同時に起こる材料の光学特性の変化を監視することによって実現される。次いで、これらの変化は、いくつか例を挙げると、光吸収、ターゲットの物理的寸法、および構成発色団等の種々の顕著な材料特性をコード化する。
【0061】
PARSデバイスは、共焦点構成であり得る2つの光ビームのみを利用し得るため、イメージング技法の空間分解能は、ビームのうちのどちらが試料においてより密な焦点を提供するかに応じて、励起定義(ED:excitation-defined)または調査定義(ID:interrogation-defined)として定義され得る。この態様はまた、光学解像度デバイスの限界を超えて、より深いターゲットをイメージングしやすくし得る。このイメージングは、生体組織などの高散乱媒体内で、所与の励起(532nmまたは266nmなど)によって提供されるものに優る深さまでの空間分解能を提供し得る、短波赤外線(1310nm、1700nm、または10μmなど)などのように深く浸透する(長い輸送平均自由行程)検出波長を活用することによって実現され得る。システムが試料において2つより多い焦点から構成されるように2つより多いビームが使用される場合、これらの構成要素の明らかな拡張が予期される。例えば、ビームの焦点領域内の信号を増幅する付加的なビームが追加された場合、そのビームはまた、システムの期待される解像度を定義することに寄与し得る。
【0062】
強度変調PARS信号は、光吸収および入射励起フルエンスだけでなく、検出レーザ波長、フルエンス、および試料の温度についても依存性を保持する。PARS信号は、また散乱体(scatterer)位置変調および表面振動などの他の現象からも発生し得る。同様の類似物が、強度、偏光、周波数、位相、蛍光、非線形散乱、非線形吸収、などの他の変調光学特性を利用するPARSデバイスについても存在し得る。材料特性は周囲温度に依存するため、対応する温度依存性がPARS信号にはある。いくつかの強度レベルでは、付加的な飽和効果も活用され得る。
【0063】
上記の機構は、制約された励起体積を感知するためにプローブビームが合焦されたときに、容易に測定可能であり得る散乱位置変調または散乱断面変調の重要な原因を指摘する。しかしながら、これらの大きな局所信号は、PARS信号の唯一の潜在的な元信号ではない。試料の表面に伝搬する音響信号によってもまた、PARS信号の変化が生じ得る。これらの音響信号により、PARS信号の位相変調が生じる表面振動を生成することもできる。
【0064】
これらの生成された信号は、とりわけ、振動、温度、応力、表面粗さ、機械的曲げなどの二次的な物理的効果によって意図的に制御または影響され得る。例えば、温度が試料に導入されてもよく、これにより、この付加的な温度を導入せずに生成されたPARS信号と比較して、生成されるPARS信号が増大し得る。別の例としては、試料に機械的応力(曲げなど)を導入することを含み得、この応力は、試料の材料特性(例えば、密度、または局所的な光学特性(複屈折、屈折率、吸収係数、散乱挙動など))に影響を及ぼし、それによって、この機械的応力を導入せずに生成されたPARS信号と比較して、生成されるPARS信号が摂動し得る。生成されるPARS信号を増強するために、付加的な造影剤が試料に添加され得、造影剤には、色素、タンパク質、特別に設計された細胞、液体および光学剤または光学窓が含まれるが、これらに限定されない。ターゲットは、最適化された結果を提供するために光学的に変更され得る。
【0065】
いくつかの技法は、単に強度の後方反射を監視し得、これらの時間領域信号の振幅を抽出し得る。しかし、付加的な情報が信号の時間変化の態様から抽出され得る。例えば、PARS信号に伴う散乱、偏光、周波数、および位相コンテンツのいくつかは、その信号が生成された領域のサイズ、形状、特徴、および寸法に起因し得る。これにより、有用性を有する固有の/直交する付加的な情報を、いくつか例を挙げると、最終的な画像忠実度の向上、試料領域の分類、構成発色団のサイズ設定、および構成発色団の分類等に向けてコード化し得る。そのような技法は、同じ調査される領域に対して独立したデータセットを生成し得るため、それらのデータセットを互いに組み合わせるか、または比較し得る。例えば、周波数情報は、試料内の微視的構造を記述し得、この構造は、吸収性でありかつ特定のサイズである領域を強調するために散乱変調を使用する従来のPARSと組み合わされ得る。
【0066】
図1を参照すると、光音響リモートセンシング(PARS)顕微鏡は、全光学的非接触光吸収顕微鏡技術である。PARSは、共焦点励起レーザおよび検出レーザ対を使用して、種々の検体において光吸収コントラストを生成し、かつ検出し得る。PARSでは、励起レーザには、パルス励起レーザが含まれ得、パルス励起レーザは、光エネルギーを試料内に蓄積させるために使用され得る。光が発色団によって吸収されると、光子エネルギーが検体によって捕捉される。次いで、吸収されたエネルギーは、光放射(放射)または非放射緩和のいずれかにより放散され得る。非放射緩和の間、吸収された光エネルギーは熱に変換される。ある場合には、熱の発生は、光音響圧力を発生させる熱弾性膨張を引き起こし得る。放射緩和の間、吸収された光エネルギーは光子の放射により放出される。一般に、放射された光子は、吸収された光子と比較して異なるエネルギー準位を示す。
【0067】
局所的な温度および圧力の変化は、試料の光学特性および材料特性にナノ秒スケールの摂動を生じさせる。励起スポットと共焦点化された検出レーザは、光学特性における吸収誘発摂動を散乱強度変調として捕捉し得る。検出レーザ散乱における摂動を測定することにより、PARSは異なる生体分子の非放射吸収コントラストを測定することができる。同時に、検出の非摂動後方反射および後方反射励起エネルギーを捕捉することによって、PARSは、励起光源および検出光源にそれぞれ起因する光散乱コントラストを捕捉し得る。
【0068】
図1は、光吸収リモートセンシング(PARS)システムの高レベル図を示す。このシステムは、PARSシステム(101)、光結合器(102)、およびイメージングヘッド(104)からなる。PARSシステムは、他のシステム(例えば、信号増強システム)をさらに含み得、光結合器は、PARSシステム(101)およびこれらの他のシステムからのビームを結合し得る。
【0069】
図2は、PARS励起(202)、PARS検出(204)、および光結合器(203)が描かれている高レベル図を示す。これらは、他のシステム(例えば、信号増強システム)およびイメージングヘッド(205)と組み合わされ得る。
【0070】
図3は、他のモダリティ(305)と組み合わされたPARSシステムの高レベルの実施形態を示す。PARSシステムは、PARSシステム(301)、光結合器(302)、およびイメージングヘッド(304)からなる。これらは、様々な他のモダリティ(305)、とりわけ、明視野顕微鏡、走査型レーザ検眼鏡検、超音波イメージング、誘導ラマン顕微鏡、蛍光顕微鏡、二光子・共焦点蛍光顕微鏡、コヒーレントアンチラマンストークス顕微鏡、ラマン顕微鏡、他のPARS、光音響および超音波システム等と組み合わせられることができる。
【0071】
図4は、信号処理経路を示す。この経路は、光検出器(401)、信号処理ユニット(402)、デジタイザ(403)、デジタル信号処理ユニット(404)、および信号抽出ユニット(405)からなる。
【0072】
TA-PARS
試料が光を吸収する場合、起こり得る相互作用の数は限られている。吸収されたエネルギーは、温度および圧力に変換されるか、または異なる波長の光に変換される。温度信号および圧力信号はPARS検出ビームによって捕捉されるが、光放射は、放射緩和に敏感であり得る全吸収(TA:total absorption)PARSシステムによって検出され得る。このようにして、組織による光の全てまたはほぼ全ての吸収(発生圧力、発生温度のような非放射信号、放射緩和(蛍光、多光子蛍光、または誘導ラマン散乱等)のいずれの形態であっても)、および/または局所散乱信号等の散乱信号が、PARSによって捕捉され得る。
【0073】
図5は、放射緩和感受性PARSの例示的なアーキテクチャを示す。一例として、放射緩和は蛍光または自己蛍光(autofluorescent)であり得るが、本明細書に開示される態様はこれに限定されない。例えば、放射緩和には、ラマン散乱、蛍光、自己蛍光、多光子蛍光などが含まれ得る。説明の便宜上、自己蛍光に感受性のあるTA-PARSシステムを、図5を参照して例として説明する。多波長ファイバ励起レーザ(5812)は、PARS信号を生成するために使用される。励起ビーム(5817)は、試料(5818)上のその焦点を調節するために多波長ユニット(5840)およびレンズ系(5842)を通過する。焦点を調節するために使用される光学サブシステムは、ビームエキスパンダ、調節可能ビームエキスパンダ、調節可能コリメータ、調節可能反射エキスパンダ、望遠鏡システム等を含むが、それらに限定されない、当業者に公知の構成要素によって構築され得る。
【0074】
信号シグネチャは、試料(5818)上の励起スポットと共焦点化され共整合化される、検出レーザ(5814)からの短いヒーレンス長または長コヒーレンス長のいずれかのプローブビーム(5816)を使用して調査される。調査ビーム/プローブビーム(5816)は、試料(5818)からの反射光(5820)をフォトダイオード(5846)に案内するためにレンズ系(5843)、偏光ビームスプリッタ(5844)、および4分の1波長板(5856)を通過する。しかしながら、このアーキテクチャは、偏光ビームスプリッタ(5844)および4分の1波長板(5856)を含むことに限定されない。前述の構成要素は、ファイバベースの同等の構成要素、例えば、非相反素子であるサーキュレータ、カプラ、ファラデー回転子、電気光学変調器、WDM、および/またはダブルクラッドファイバと置換され得る。そのような素子は、第1の経路から光を受光するが、その後、前記光を第2の経路に再方向付けし得る。
【0075】
調査ビーム(5816)は、ビーム結合器(5830)を使用して励起ビームと結合される。結合ビーム(5821)は、走査ユニット(5819)によって走査される。結合ビーム(5821)は、対物レンズ(5855)を通過して、試料(5818)上に合焦される。
【0076】
反射ビーム(5820)は同じ経路に沿って戻る。反射ビームは、ビーム結合器/スプリッタ(5831)でフィルタリングされて、検出ビーム(5816)と試料から戻ってきた自己蛍光とが分離される。自己蛍光(5890)は、レンズ系(5845)を通過して、その焦点が自己蛍光感知光検出器(5891)上に調節される。分離された検出ビーム(5820)は、ビームスプリッタ(5831)を介して信号収集/分析経路に向かって伝送される。ここで、戻り検出光は、偏光ビームスプリッタ(5844)によって再方向付けされる。検出経路は、フォトダイオード(5846)、増幅器(5858)、高速データ収集カード(5850)、およびコンピュータ(5852)からなる。自己蛍光感知光検出器は、カメラ、フォトダイオード、フォトダイオードアレイなどを含む任意のそのようなデバイスであり得る。自己蛍光検出経路は、特定の波長の光をさらに分離して検出するために、より多くのビームスプリッタおよび光検出器を含み得る。
【0077】
図6は、自己蛍光感受性TA-PARSによって場合により提供され得る例示的な視覚化を示す。検出ビームを除いて試料から戻る光の任意の部分が収集され、波長に基づいて分析され得る。試料からの発光の特定の波長を分離することによって、特定の関心分子を視覚化し得る。例えば、自己蛍光感受性PARSを組織のイメージングに適用し得る。ここでは、核の吸収コントラストを捕捉するためにPARSの励起を選択した。この場合には、UV励起を使用して、組織中の核に起因する圧力信号および温度信号を生成する。同時に、PARS励起によって発生した自己蛍光コントラストを捕捉する。この場合、組織の非核領域は高度に蛍光性になっている。このようにして、組織における核構造および非核構造の視覚化を同時に提供することができる。さらに、結果として得られる視覚化は、捕捉するために単一の(または1つのみの、または正確に1つの)励起波長のみを必要とし得る。前述したように、方法は、他の放射緩和感受性PARSとともに使用されてもよく、自己蛍光以外の放射緩和が発生されかつ捕捉され得る。
【0078】
例えば、PARS放射信号をPARS吸収分光器に実装して、試料による光の全ての吸収を正確に測定することができる。さらに、放射緩和(例えば、図5の自己蛍光)感受性PARSを使用して、熱および圧力または光にそれぞれ変換される吸収エネルギーの比率を測定し得る。これにより、広範囲の生物学的試料および非生物学的試料における高感度の量子効率測定が可能になり得る。
【0079】
TA-PARS信号はまた、図7で強調されているように、単一の(1つのみの、または正確に1つの)検出器上で収集され得る。TA-PARS信号の顕著な成分が互いに異なるように見えることを考えると、単一の検出器は、これらの成分を適切に特徴付け得る。例えば、初期信号レベル(散乱)は、散乱強度をコード化する調査位置において試料からの検出ビームの非摂動強度反射率を示し得る。次に、励起パルスによる励起(図7における100nsの時点)に続いて、非放射緩和(例えば、熱、温度)および放射緩和(例えば、蛍光または自己蛍光)に関連するPARS励起信号が、固有の重ね合わせ信号(図ではPAおよびAFと標識されている)として観察され得る。
【0080】
これらの励起信号が、(例えば、振幅または大きさおよび/または発展時間において)互いに測定可能に顕著に固有なものである場合、これらの励起信号は、複合信号から分解されて、それらの大きさがそれらの特徴的な寿命とともに抽出され得る。この多量の情報は、利用可能なコントラストを向上させ、さらなる多重化能力を提供し、構成発色団の特徴的な分子シグネチャを提供するのに有用であり得る。加えて、そのような手法は、単一の検出器および単一の(1つのみの、または正確に1つの)検出経路のみが必要とされ得、物理的ハードウェア複雑性およびコストを劇的に低減させるという点で、実用的な利点を提供し得る。経時的に信号を捕捉することは、TD-PARSのセクションにおいてより詳細に説明する。
【0081】
図8を参照すると、所与のPARS励起イベントでも、常に、放射緩和および非放射緩和のいくらかの部分が発生する。TA-PARSは、発色団の全吸収プロファイルの捕捉を可能にする。熱および圧力の摂動は、局所的な光学特性における対応する変調を発生させ得る。TA-PARS顕微鏡は、発色団の散乱および全吸収(放射緩和および非放射緩和)視覚化を単一の(1つのみの、または正確に1つの)励起イベントにおいて捕捉し得る。非放射緩和は、熱および圧力が誘発される変調をもたらし、この変調は次に、検出ビームにおける後方反射強度の変動を引き起こす。PARS信号は、反射率の変化に入射検出値(RIdet)を乗算したものとして示される。放射吸収経路は、誘導ラマン散乱、蛍光、多光子蛍光などの放射緩和に起因する光放射を捕捉する。発光は、ある波長およびエネルギーの光放射(hνem)として示される。局所散乱コントラストは、検出ビームの非変調後方散乱(励起前パルス)として捕捉される。散乱コントラストは、非摂動散乱プロファイルに入射検出パワー(σdet)を乗算したものとして示される。
【0082】
TA-PARSでは、非放射緩和誘発変調が、プローブビームによって励起された位置で検出される。PARSは、続いて、局所的な光学特性の変調を引き起こす熱または光音響圧力を視覚化し得る。同時に、TA-PARSは、(励起および検出を除く)試料からの波長、周波数、偏光等の特性に関係なく、非特異的な光放射を捕捉するために、付加的な検出経路を活用する。これらの放射は、誘導ラマン散乱、蛍光、および多光子蛍光などの放射緩和効果に起因し得る。
【0083】
この検出経路を使用することにより、あらゆる範囲の発色団に対する感度を高め得る。TA-PARSでは、放射吸収または非放射吸収のいくつかを独立して捕捉する従来のモダリティとは異なり、コントラストは、光熱変換効率または蛍光量子収率などの効率因子によって束縛され得ない。TA-PARSは、励起および検出の散乱に加えて、非放射吸収コントラストおよび放射吸収コントラストを捕捉することによって、吸収係数、散乱係数、量子効率、非線形相互作用係数等の発色団の全てまたはほぼ全ての光学特性を捕捉し得、大半の発色団に対して同時に感度を提供し得る。
【0084】
量子効率比(QER:Quantum Efficiency Ratio)およびラベルフリーH&E視覚化
放射吸収部分(radiative absorption fraction)および非放射吸収部分(non-radiative absorption fraction)の両方を捕捉することによって、追加の情報を得ることもできる。TA-PARSは、生体分子の比例放射および非放射吸収応答を視覚化する、量子効率比(QER)として提案される吸収指標をもたらし得る。TA-PARSは、組織の従来からある組織化学的染色に対する説得力のある類似を可能にする生体分子の範囲のラベルフリー視覚化を提供し得、ラベルフリーのヘマトキシリン・エオシン(H&E)様の視覚化を効果的に提供する。
【0085】
QERは、非放射PARS(Pnr)に対する放射PARS信号(P)の比として、(QER=P/Pnr;QER=(P-Pnr)/(P+Pnr)のように定義され得る。この比は、所与の発色団に固有である。例えば、コラーゲンのような生体分子は、高い放射コントラストおよび低い非放射コントラストを示し、高いQERを提供する。逆に、DNAは、低い放射コントラストおよび高い非放射コントラストを示し、高いQERを提供する。放射吸収および非放射吸収に加えてQERを計算することにより、発色団の組成、密度、および量などの特性を単一の(1つのみの、または正確に1つの)イベントにおいて抽出することが可能になり得る。これはまた、シングルショットの機能的イメージングを可能にし得る。
【0086】
例えば、ピコ秒スケールのパルス励起レーザは、試料に放射および非放射(熱および圧力)摂動を誘発し得る。熱及び圧力摂動は、局所的な光学特性において対応する変調を発生させる。励起と共焦点化された二次プローブビームは、非放射吸収によって誘発される局所的な光学特性に対する変調を、後方散乱強度の変化として捕捉し得る。
【0087】
これらの後方散乱変調は、局所的な非放射吸収コントラストに直接相関され得る。プローブアーキテクチャの性質上、非摂動後方散乱(励起前イベント)は、プローブビームによって見られるような散乱コントラストを捕捉する。従来の光音響法とは異なり、TA-PARSプローブは、圧力波が試料を通って伝搬してから音響トランスデューサによって検出することに依存するのではなく、励起された位置において誘発された変調を瞬時に検出し得る。従って、TA-PARSは、非接触操作を提供し、従来の接触ベースのPAM法でイメージングすることは不可能であった繊細で敏感な試料のイメージングを可能にする。
【0088】
TA-PARSは、熱およびその後の圧力の発生のみに依存してコントラストを提供し得るため、吸収機構は、非特異的であり、かつ相対的吸収におけるわずかな変化に対して非常に敏感である。これにより、振動吸収、誘導ラマン吸収、および電子吸収などの様々な吸収メカニズムをPARSで検出することが可能となる。これまでPARSは、ニワトリ胚モデル、切除組織検体、および生きたマウスモデルなどの検体において、ヘモグロビン、DNA、RNA、脂質、およびシトクロムのラベルフリー非放射吸収コントラストを実証してきた。TA-PARSでは、独自の二次検出経路が、非放射吸収に加えて、放射緩和コントラストを捕捉する。放射吸収経路を、励起および検出を除いて、全光放射を光のあらゆる波長で広く収集するように設計した。その結果、放射検出経路は、波長、周波数、偏光などの特性に関係なく、試料からの非特異的な光放射を捕捉する。
【0089】
図9を参照すると、TA-PARSの感度を向上させ、放射吸収コントラストの検出を促進にするために、TA-PARS900は、互いに異なる第1および第2の励起波長における励起(例えば、266nmおよび515nm励起)を含み得、DNA、ヘムタンパク質、NADPH、コラーゲン、エラスチン、アミノ酸、および種々の蛍光色素に対する感度を提供する。TA-PARSは、放射吸収コントラストを分離および検出するために、ダイクロイックフィルタおよびアバランシェフォトダイオードを有する特定の光路を含み得る。図9に例示されるように、TA-PARSシステムは、第1の励起光源920からの第1の励起波長における励起(例えば、515nmの可視励起等の可視光)と、第2の励起光源940からの第2の励起波長における励起(例えば、266nmのUV励起等のUV光)とを含み得る。第1の励起光源920は、50kHz~2.7MHzの2psパルスの1030nmファイバレーザ(例えば、YLPP-1-150-v-30、IPGフォトニクス社(IPG Photonics))などの第1の励起レーザ902を含み得るが、本明細書に開示される態様はこれに限定されない。第2高調波は、三ホウ酸リチウム結晶またはLBO922を用いて生成され得る。第1高調波(例えば、515nm)は、ダイクロイックミラー906を介して分離され、次いで、イメージングシステムにおける使用の前に、ピンホール908を用いて空間フィルタリングされ得る。第1の励起光源902は、LBO922と第1の励起レーザ902との間に設けられた半波長板またはHWP924、フィルタリングレンズ、および/またはレンズアセンブリ928などの1つまたは複数のレンズまたはプレートを含み得る。ピンホール908は、一例として、2つのレンズまたはレンズアセンブリ928の間に設けられ得る。
【0090】
第2の励起光源940は、50kHzの400psパルスのダイオードレーザ(例えば、ウェッジ(Wedge) XF 266、RPMC社)等の第2の励起レーザ904を含み得るが、本明細書に開示される態様はこれに限定されない。第2の励起レーザ904からの出力は、プリズム910を使用して残留励起(例えば、532nm励起)から分離され、次いで、イメージングシステムで使用する前に(例えば、可変ビームエキスパンダまたはVBE926を使用して)拡大され得る。
【0091】
TA-PARSシステムは、第1の励起光源920と第2の励起光源940との間で共有される検出システム950を含み得る。図9に例示されるように、TA-PARS検出システム950は、405nmのOBIS-LSレーザ(OBIS LS 405、コヒーレント社(Coherent))などの405nmのレーザダイオードを含み得るプローブビーム912を含み得る。ここで、検出は、サーキュレータ914を介してシステムにファイバ結合され、そこで、検出は、1つまたは複数のダイクロイックミラー916を介して励起と結合され得、かつ/またはミラー934を介してガイドされ得る。結合された励起および検出は、0.42NAのUV対物レンズ等のレンズ918を使用して、試料上に共焦点化され得る。試料からの後方反射検出は、順方向伝搬と同じ経路でサーキュレータ914に戻り得る。後方反射検出は、フォトダイオードで捕捉され得るPARSの非放射吸収コントラストをナノ秒スケールの強度変調として含む。また、検出システム950は、検出光をコリメートするためのコリメータおよび/またはコリメートアセンブリ936を含み得る。
【0092】
このプローブ波長により、散乱分解能が向上し、これにより、試料上のPARSの励起スポットと検出スポットとの間の共焦点オーバーラップが改善される。サーキュレータベースのプローブビーム経路とアバランシェ光検出器とを組み合わせることで、TA-PARSは、従来の実施と比較して向上した感度を提供する。また、可視波長プローブは、可視励起波長とUV励起波長との間の向上した適合性を提供する。
【0093】
第1および第2の励起(266nmおよび515nm励起)の各々からの放射緩和は、異なる(または第1および第2の)フォトダイオード930および932を用いて独立して捕捉され得る。第1の励起から誘発された放射緩和(515nm誘発の放射緩和)は、ダイクロイックミラー916で分離され、次いで、第1のフォトダイオード930を使用して捕捉され得る。第2の励起から誘発された放射緩和(266nm誘発の放射緩和)は、試料から戻された全光強度の一部(例えば、1%~50%)を光検出器および/または第2のフォトダイオード932に再方向付けすることによって分離され得る。次いで、この光は、測定前に残留励起および検出を除去するために、(例えば、レンズアセンブリ936により)スペクトル的にフィルタリングされ得る。
【0094】
画像を形成するために、機械的ステージを使用して、対物レンズ上で試料が走査され得る。励起光源920および940は、(例えば、50kHzで)連続的にパルス化され得、一方、ステージ速度は、所望のピクセルサイズ(調査イベント間の間隔)を実現するように調節され得る。励起レーザ902および/または904がパルス化される毎に、収集イベントがトリガされ得る。収集イベント中、高速デジタイザ(例えば、RZE-004-200 ゲージ・アプライド社(Gage Applied))を使用して、4つの入力信号から数百ナノ秒のセグメントが収集され得る。これらの信号は、レーザ入力基準測定値(励起および検出)、PARS散乱信号、PARS非放射緩和信号、PARS放射緩和信号、およびステージからの位置信号を含み得る。時間分解された散乱、吸収、および位置信号は、次いで、単一の特徴的な特徴に圧縮され得る。これは、収集中のデータ捕捉量を実質的に低減するのに役立つ。
【0095】
吸収画像および散乱画像を再構成するために、生データは、各調査における位置信号に基づいて直交座標の格子にフィッティングされ得る。次いで、生画像は、視覚化の前に、ガウスフィルタリングされ、かつヒストグラム分布に基づいて再スケーリングされ得る。
【0096】
TA-PARSの視覚化の忠実度は、従来のH&E染色画像に対する1対1の比較によって評価される。TA-PARSの全吸収およびQERのコントラスト機構は、一連の色素および組織試料においても検証される。その結果、様々な蛍光色素および組織において、放射緩和特性とTA-PARSで測定したQERとの間に高い相関があることが示される。これらのQER視覚化は、組織試料内のコラーゲン、エラスチン、および核などの特定の生体分子の領域を抽出するために使用される。これにより、汎用性の高い高分解能の吸収コントラスト顕微鏡システムを実現することが可能となる。TA-PARSは、種々の生物学的検体において前例のないラベルフリーのコントラストを提供し得、それ以外の方法ではアクセス不可能な視覚化を提供する。
【0097】
図10は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)のヒト脳組織の薄切片において、266nm励起を使用するTA-PARSシステムによって提供される3つの異なるコントラスト(ビュー(a)では非放射吸収、ビュー(b)では放射吸収、およびビュー(c)では散乱)の比較を示す。非放射緩和信号を、試料からの収集された後方散乱の405nmの検出ビームにおけるナノ秒スケールの圧力および温度誘発変調に基づいて捕捉した。放射吸収コントラストを、光学フィルタによって遮断された励起および検出波長を除いて、試料からの光放射として捕捉した。同時に、405nmのプローブの非摂動後方散乱は、試料からの局所的な光散乱を捕捉する。このコントラストで、大部分の顕著な組織構造を捕捉した。非放射吸収コントラストは、主に核構造を強調し、放射コントラストは、核外の特徴を捕捉する。光散乱コントラストは、薄い組織切片の形態を捕捉する。切除された組織では、この散乱コントラストは適用可能性が低いため、他の試料では調査しなかった。
【0098】
図11は、TA-PARSイメージングの例を示す。ビュー(a)において、TA-PARSは、切除されたヒト皮膚組織の縁にある上皮層を捕捉した。角質層を、放射及び非放射の視覚化において同時に捕捉した。放射視覚化は、非放射画像と比較して、これらの組織層をリカバリする際に改善されたコントラストを提供する。ビュー(b)における切除されたヒト皮膚組織の別の皮下領域では、TA-PARSは、核が粗で、フィブリン特徴が細長い結合組織を捕捉している。
【0099】
提案システムを、切除された未処理のラットの脳組織のイメージングにも適用した。ビュー(c)において、TA-PARS画像は、核構造の高密度領域を明らかにする脳内の灰白質層を強調している。非放射画像において、灰白質層の核は、放射画像と比較して、周囲組織に対してより高いコントラストで表示されている。核は、有意な放射コントラストを提供しないため、放射画像における核構造は、検体内のボイドまたは信号の欠如として現れる。いくつかの潜在的な核が観察され得るが、それらは、TA-PARSの非放射表現における核と比較して、有意な信頼度で同定されない場合がある。非放射画像の右上に沿って、有髄神経細胞に類似する構造が、その領域においてよりまばらに存在する核を取り囲むように同定することができる。
【0100】
ビュー(d)において、隣接領域におけるさらなる画像は、明らかな有髄神経細胞構造を強調している。これらの領域内では、樹状突起および軸索が交錯して重なり合い、かつ相互に連結していることを示す緻密な構造が見られ、組織内の空隙の周囲に神経細胞の突起が密に配置されていることが観察される。次いで、ビュー(e)において、より大きな近くのイメージングフィールドにズームアウトして、別個の組織の切片を非放射コントラストでリカバリした。フィールドの左側は、核密度が低下したより多くの有髄構造を含有する潜在的に白質である右側とは対照的に、より大きな核を有する潜在的に灰白質へのミエリン投射を示す高密度の束を含有する。
【0101】
図12を参照すると、QERまたは非放射吸収部分と放射吸収部分との比は、さらなる生体分子特異的情報を含むことが予期される。理想的には、局所的な吸収部分は、放射緩和特性と直接相関するはずである。相対的な放射信号強度および非放射信号強度がプロットされ得、QERが報告された量子効率(QE:quantum efficiency)値に対してプロットされ得る。
【0102】
一つの例では、TA-PARSを適用して、様々な量子効率を有する一連の蛍光色素を測定した。515nm励起を使用して、同時に捕捉された放射緩和信号および非放射緩和信号を生成した。
【0103】
図12A(ビュー(a))に示すように、相対的な放射信号強度および非放射信号強度の例をプロットした。次に、図12B(ビュー(b))に示すように、QERが試料に関して報告されたQE値に対してプロットされている。放射PARS信号(P)は、QE(P∝QE)とともに直線的に増加すると予期され、一方、非放射PARS信号(Pnr)は、QE(Pnr∝1-QE)とともに直線的に減少すると予期される。従って、非放射信号と放射信号との間の分数関係は、線形関数(QER=P/Pnr∝QE/(1-QE))の商によって表される。実証的な結果は、この予測モデル(R=0.988)によく適合する。
【0104】
図13は、FFPEヒト組織の薄切片のイメージングに適用されたQER取得プロセスからの画像を例示する。非放射信号および放射信号に基づいて、QERを各画像ピクセルについて計算して、QER画像を生成した。結果は、独立した吸収部分に加えて、発色団に特異的な属性をコード化したデータセットを表す。QER処理は、単に放射画像または非放射画像から、他の類似している組織タイプをさらに分離するのに役立つ。
【0105】
図13に示されるQER画像のカラー化されたバージョンは、様々な組織成分を強調する。低QER生体分子(DNA、RNAなど)は、第1の色(例えば、より低い波長を有する色または淡青色)として現れ、高QER生体分子(コラーゲン、エラスチンなど)は、第1の色とは異なる(例えば、より高い波長を有する)第2の色および/または第3の色(例えば、ピンク色および紫色)として現れ得る。QERイメージングセッション後に捕捉されたH&Eによる視覚化(図13、ビュー(c-ii))と比較して、線維性結合組織を構成するコラーゲンおよびエラスチン(第4の色または暗赤色として現れ得る)は、それらの低いQERに起因して、識別することが容易であり得る。逆に、核構造は、それらの高いQERに起因して、第1の色および/または第5の色(例えば、青色)において評価される。癌細胞を取り囲む結合組織はまた、H&E染色画像と比較して、QERによる視覚化において第6の色(例えば、紫色)で線維性結合組織と区別される。TA-PARSからQERを計算する際に、補完的なイメージングコントラストが提供されるため、放射モダリティまたは非放射モダリティで独立してアクセス可能とした場合よりも、発色団特異性を高めることが可能となる。第1の色、第2の色、第3の色、第4の色、第5の色、および第6の色という用語が使用されているが、本明細書で開示する態様は、6つなどの所定の色に限定されない。視覚化において現れる色は、QERに比例する波長を有し得る。例えば、より高いQERを有する構造は、より高い波長を有する色(例えば、赤色)として現れ、より低いQERを有する構造は、より低い波長を有する色(例えば、青色)として現れ得る。
【0106】
ここで提示されるQER法は、抽出された強度値に依存するが、寿命、立ち上がり時間、信号形状、周波数コンテンツなどの他の信号パラメータの同様のそのような比率を含む同様の類似態様が考えられ得る。
【0107】
ラベルフリーの組織学的イメージング
TA-PARS機構は、H&E染色などの従来の組織化学的染色コントラストを正確に模倣する機会を提供し得、TA-PARSは、ラベルフリーの組織学的イメージングを提供し得る。非放射TA-PARS信号コントラストは、ヘマトキシリン染色によって提供されるものに類似し得るが、放射TA-PARS信号コントラストは、エオシン染色によって提供されるものに類似し得る。TA-PARSは、脂肪細胞、フィブリン、結合組織、神経細胞構造、および細胞核などのラベルフリーの特徴を捕捉し得る。核内構造の視覚化は、個々の異型核を同定するのに十分な鮮明度およびコントラストで捕捉され得る。
【0108】
図14は、FFPEヒト脳組織に適用されたラベルフリーの組織学的イメージングの例を示す。図14を参照すると、非放射TA-PARS信号コントラストは、細胞核のヘマトキシリン染色によって提供されるものと類似している(図14、ビュー(a))。FFPEヒト脳組織の切片を非放射PARSにより画像化した(図14、ビュー(a-i))。次いで、ヘマトキシリン染色のコントラストを模倣するために、この非放射情報をカラー化した(図14、ビュー(a-ii))。次いで、直接の1対1比較を提供するために、同じ組織切片をヘマトキシリンのみで染色して、明視野顕微鏡下で画像化した(図14、ビュー(a-iii))。他の発色団もある程度寄与するであろうが、ヘマトキシリン染色およびTA-PARSの非放射部分の主なターゲットは核であるため、これらの視覚化は非常に類似していると予期される。
【0109】
同様の手法を、隣接切片におけるエオシン染色に適用した。隣接切片を放射PARSにより画像化した(図14、ビュー(b-i))。次いで、エオシン染色のコントラストを模倣するために、この放射情報をカラー化した(図14、ビュー(b-ii))。次いで、放射コントラストとエオシン染色との直接的な1対1の比較を提供するために、この切片をエオシンで染色した(図14、ビュー(b-iii))。TA-PARS画像およびエオシン染色画像の各々において、類似の微小血管系および赤血球を脳組織全体にわたって解像した。TA-PARSの放射部分の主なターゲットは、ヘムタンパク質、NADPH、フラビン類、コラーゲン、エラスチン、および細胞外マトリックスを含み、核外物質のエオシン染色によってターゲットとされる発色団を密接に反映するので、これらの視覚化が予期される。
【0110】
TA-PARSの別個のコントラスト機能は、H&E染色の視覚化を忠実に模倣しているため、提案システムは、単一の(1回のみの、または正確に1回の)取得において真のH&E様コントラストを提供し得る。TA-PARSは、エオシン様コントラストを推定するために散乱顕微鏡に依存していた以前のPARS模倣型H&Eシステムと比較して、大幅に改善された視覚化を提供し得る。散乱顕微鏡に基づく方法では、バルク切除されたヒト組織などの複雑な散乱試料において鮮明な画像を提供することができない。対照的に、TA-PARSは、放射コントラスト機構によって核外発色団を直接測定することができるため、検体形態に関係なく、H&Eと類似のコントラストを提供する。ここで、未染色組織内の従来のH&E染色の有効な表現を生成するために、線形色混合を使用して別個のTA-PARS視覚化を組み合わせた。
【0111】
切除されたFFPEヒト脳組織における例を、図14のビュー(c)に示す。広視野画像は、癌性脳組織と健常脳組織との境界を強調する。
TA-PARSを従来のH&E画像と定性的に比較するために、一連のヒト乳房組織切片をTA-PARSによりスキャンし(図14、ビュー(d-i)および図14、ビュー(e-i))、次いでH&E色素により染色し、明視野顕微鏡下で画像化した(図14、ビュー(d-ii)および図14(e-ii))。TA-PARSが模倣したH&E視覚化は、H&E検体と実質的に同一である。両方の画像において、転移性乳房リンパ節組織の臨床的に関連する特徴に等しくアクセス可能である。
【0112】
寿命イメージング
H&Eシミュレーションは、TD-PARSおよび特徴抽出イメージングを説明する以下のセクションでより詳細に説明される時間領域の特徴を抽出することによって向上され得る。PARS変調の全振幅は、励起の局所的な吸収を捕捉するが、圧力および温度が誘発する変調の発展もまた、局所的な材料特性を捕捉することになる。
【0113】
図15は、PARS信号の経時的な発展を例証する。各PARS励起イベントは、検出光源および励起光源の散乱、放射放出、およびPARSの非放射緩和時間領域信号を捕捉する。図15を参照すると、PARSの減衰時間または発展時間は、従来の光音響イメージングを支配する熱および圧力の閉じ込め時間等の指標と結び付けられる可能性が高い。これは、熱拡散率、伝導率、および音速などの特性が、PARSの緩和時間を決定し得ることを意味する。減衰時間または発展時間を測定することによって、PARSは、検体に関するさらなる発色団特異的情報を提供し得る。これは、単一の励起イベントからの発色団分離(例えば、構成種および/または亜種の検出、分離、またはそれ以外に離散化)またはシングルショット機能イメージングを可能にし得る。
【0114】
図16に、切除されたラットの脳組織における寿命PARS画像の例を示す。ここで、核(白色等の第1の色として現れ得る)は、周囲の灰白質(緑色等の第2の色として現れ得る)および絡み合った有髄神経細胞構造(橙色等の第3の色として現れ得る)から分離される。この分離は、PARS寿命信号に基づいて行われる。
【0115】
図17を参照すると、高速寿命抽出技法を使用して、PARSの収集コントラストを大幅に改善し得る。図17を参照すると、PARS振幅は、平均励起前信号と平均励起後信号との間の差として計算され得る。この取得は、別の抽出技術と比較してイメージングノイズの影響を受けにくい。従来、PARSは、PARS特異的信号を抽出するために、最小-最大取得信号手法を使用していた。信号の最小値から最大値を引いたものを捕捉することによって、PARSは、PARS変調の全振幅を強調し得る。しかしながら、これは、PARS信号における収集および測定ノイズの影響を非常に受けやすい。
【0116】
1つの可能性のある信号抽出方法は、平均励起前信号を決定することによって実行することができる。次に、平均励起後信号が寿命信号の初期部分から計算される。次に、PARS振幅が、2つの平均信号間の差として計算される。迅速な信号抽出のためのこの指標は、PARS信号を収集する際の信号対ノイズ比および感度の大幅な改善を提供する。この技術は平均信号に依存するため、PARS収集は取得ノイズの影響を大幅に受けにくい。
【0117】
その他の時間ベースのイメージング方法は、TD-PARS及び特徴抽出イメージングに関する以下のセクションでより詳細に説明する。まず、他の2つのPARSについて簡単に説明する。
【0118】
MP-PARS
図18を参照すると、マルチパスPARS(MP-PARS)では、後方散乱検出は、捕捉され、その後、試料に戻るように再方向付けされ、検出される前に再び試料と相互作用し得る。検出が試料と相互作用する毎に、PARS変調のさらなる情報をピックアップし得る。
【0119】
PARSでは、光学特性における非放射吸収誘発摂動は、二次共焦点検出レーザを使用して視覚化される。検出レーザは、励起スポットと共焦点化されるため、吸収誘発変調が検出レーザの後方散乱強度の変化として捕捉され得る。所与の検出強度Idetに関して、励起パルスが試料と相互作用する前に、信号は、関係PARSpre-ext∝Idet(R)に基づいて近似することができ、ここで、Rは、試料の非摂動反射率である。
【0120】
励起パルスが試料と相互作用すると、信号は、PARSpost-ext∝Idet(R+ΔR)のように近似され得る。ここで、圧力および温度によって誘発される反射率の変化は、ΔRによって表される。全PARS吸収コントラストは、PARSsig∝PARSpost-ext-PARSpre-extのように近似される。前の関係をPARSpre-extおよびPARSpost-extに代入すると、PARSsig∝Idet(R+ΔR)-Idet(R)が導かれる。
【0121】
励起パルスの前に、MP-PARSの後方散乱は、関係MPPARSpre-ext∝(Idet(R)nに基づいて近似される。ここで、Rは、試料の非摂動反射率であり、nは、励起が試料と相互作用する回数である。励起パルスが試料と相互作用すると、信号は、MPPARSpost-ext∝(Idet(R+ΔRn)のように近似され得る。ここで、圧力および温度によって誘発される反射率の変化は、ΔRによって表される。
【0122】
全MP-PARS吸収コントラストは、MPPARSsig∝MPPARSpost-ext-MPPARSpre-extのように近似される。前の関係をMPPARSpre-extおよびMPPARSpost-extに代入すると、MPPARSsig∝(Idet(R+ΔR)-(Idet(R))が導かれる。ここで、nは検出が試料と相互作用する回数である。PARS信号は、後方散乱検出と試料とのこれらの反復相互作用によって非線形に拡張され得る。次いで、検出は、任意の回数、試料と相互作用するように再方向付けされ得、その結果、非放射吸収コントラストにおける対応する程度の非線形拡張がもたらされる。
【0123】
図18に例示されるアーキテクチャ1800等のMP-PARSアーキテクチャは、経路が反射または透過イベントから構成されるように配向され得、反射または透過イベントは、試料に対して垂直入射で、またはいくつかの関連する透過もしくは反射角度で生じ得る。例えば、ターゲットが特に強いミー(Mie)散乱角を特徴とする場合、複数の経路をこの方向に沿って配向することが有利であり得る。複数の経路は、(垂直入射反射などの)単一の(1つのみの、または正確に1つの)経路に沿って発生するか、または垂直入射透過アーキテクチャなどの複数の経路に沿って発生するか、または付加的な空間非線形性を利用するための付加的な(2つ以上の)経路を有するアーキテクチャに沿って発生し得る。
【0124】
例えば、MP-PARSアーキテクチャ1800は、励起光源1802(例えば、266nmの励起光源またはレーザ)と、1つまたは複数の検出光源1804(例えば、405nmの検出光源またはレーザ)と、1つまたは複数のフォトダイオードまたは光検出器1806と、サーキュレータ1808と、コリメータ1810と、励起光および/または検出光を誘導するための1つまたは複数のミラー1810と、プリズム1816と、可変ビームエキスパンダ1818とを含み得る。さらに、MP-PARSアーキテクチャ1800は、励起光および/または検出光を位置合わせするための一対のアライメントミラー1820と、試料の異なる側に配置された1つまたは複数のスキャナまたは走査ヘッド1822、1824とを含み得る。1つまたは複数のスキャナは、励起光および検出光を試料に伝送するための第1のスキャナ1822と、ミラー1826とともに配置され、複数の経路を可能にする第2のスキャナ1824とを含み得る。コンピュータ1828を使用して、受信信号を分析し、かつ/または励起光源1802および検出光源1804を制御し得る。
【0125】
MP-PARSは、検出されたPARS信号のための光増幅器として機能することができる。MP-PARSは、測定された信号の感度をさらに向上させるために、レーザ共振器システムまたは光電子増倍管が実装されるのと同じように使用され得る。この結果、PARSのイメージング忠実度が大幅に向上し得る。PARSは、放射コントラスト、非放射コントラスト、または散乱コントラストのいずれかまたは全てに対して向上した感度で捕捉され得、より低いイメージング電力での取得を可能にする。これにより、より低濃度の発色団、光吸収がより低い発色団の取得が促進され得るか、または試料の露出が低減され得る。これらの非線形効果は、超解像イメージングを提供するために非線形の空間依存性を利用することによって、リカバリされるイメージング解像度を向上させるために活用され得る。
【0126】
多光子励起PARS
図19を参照すると、多光子PARSは、従来のPARS励起を上回るいくつかの利点を提供し得る。多光子励起では、多数の光子が、実質的に同じ瞬間および/または単一の(1回のみの、または正確に1回の)イベントにおいて、ターゲットによって吸収される。次いで、これらの光子のエネルギーは、吸収された光子が単一の(1つのみの、または正確に1つの)より高いエネルギーおよびより短い波長の光子に等しくなるように、共に加えられる。ここで、単一光子励起イベントの半分のエネルギーおよび2倍の波長を有する2つの光子は、類似の励起を提供する発色団によって吸収される。
【0127】
PARSでは、蛍光顕微鏡と同様に、非線形吸収機構が活用され得る。従来、PARSは、単一光子吸収効果、例えば、DNAの266nmのUV励起をターゲットとしていた。しかしながら、PARSは、多光子蛍光顕微鏡において使用されるもの等の多光子吸収特性をもターゲットとし得る。多光子顕微鏡では、多数の光子が実質的に同じ瞬間にターゲットによって吸収される。次いで、これらの光子のエネルギーは、吸収された光子が単一のより高いエネルギーおよびより短い波長の光子に等しくなるように、共に加えられる。
【0128】
2光子PARSの場合、励起波長は、従来の値の2倍として選択される。2つの光子が同時に吸収され、標準的な1光子励起と同等の励起イベントが生じる(図19)。上に挙げた例では、DNAをターゲットとするために266nmのUV励起を使用するのではなく、DNAの吸収をターゲットとするために532nmの励起を使用することができる。532nmの2光子吸収は、266nmの単一吸収に相当する。本明細書で開示される態様は、532nmの励起に限定されない。励起の波長は、所定の励起波長の2倍(例えば、UV波長の2倍(例えば、100~400nmの2倍)またはUVC波長(100~280nm)の2倍)となるように構成され得る。
【0129】
多光子PARSと従来の単一光子PARSアーキテクチャとの間の1つの主な違いは、高い瞬時光エネルギー密度が要件となることである。試料の露光レベルを実用的なレベルにまで最小化するためには、このアーキテクチャでは、1ピコ秒以下の程度の非常に短い光励起パルスの使用を必要とし得る。このような要件は、多光子PARSに固有であり得る。
【0130】
多光子PARSは、従来のPARS励起を上回るいくつかの利点を提供し得る。第1に、多光子励起は、より長い波長の光子を使用するため、より低いエネルギーであり、かつより深く浸透する。第2に、より長い波長に移行することで、組織損傷を回避するさらなる生物学的適合性を提供し得る。PARSのUV励起が体内深部のイメージングに適合しない場合があるため、これは、インサイチュ(in-situ)組織構造の場合に特に顕著である。また、インサイチュ用途に使用されるPARSシステムの安全性を向上させることができる。
【0131】
TD-PARSおよび特徴抽出イメージング
PARSは、光音響圧力によって発生するナノ秒スケールの光摂動を捕捉することによって動作する。これらの時間領域(TD)変調は、通常、吸収の大きさを決定するために振幅によって推定される。各点における全吸収の大きさを視覚化するために、単一の特性強度値が各TD信号から抽出され得る。例えば、TD信号の最大値と最小値との間の差として計算されるTD振幅は、吸収の大きさを表すために一般に使用される。
【0132】
しかしながら、ターゲットの材料特性に関する重要な情報がTD信号内に含まれている。PARS信号の時間発展は、密度、熱容量、および音響インピーダンスなどの材料特性によって決定され得る。H&E様視覚化は、PARSの画像再構成ステップを回避するAIアルゴリズムを適用することによって、PARSの時間領域データから直接生成され得る。この手法は、PARSからH&Eへの画像間の直接変換と比較して、画像内の異なる組織タイプをより良く区別するのに役立つ付加的な貴重な情報を提供するのに有益である。
【0133】
図20Aおよび図20Bを参照すると、H&E様表現は、条件付き生成敵対ネットワーク(cGAN:conditional generative adversarial networks)に基づくAI画像間変換アルゴリズムの適用によって行われ得る。これらの方法は、ソース表現および基準表現の対になった試料または対になっていない試料から色変換マッピングを学習する。このようにして、再構成されたグレースケールのPARS画像(20A)をカラーのH&Eデータ(20B)にマッピングすることができる。
【0134】
イメージングモダリティは、ピクセル毎に走査し、各ピクセルにおいて経時的に信号を捕捉し得る。経時的な走査は連続的であり得るが、現実的には、信号は、画像取得システムを使用して周期的または離散的に記録される。各信号から特性値が抽出され、この抽出は、ヒルベルト(Hilbert)変換を使用して信号の包絡線を見つけ、そこから最大値と最小値との間の差を算出することによって、または生の信号自体の最大値と最小値との間の差を直接算出することによって、達成され得る。
【0135】
図21Aおよび図21Bを参照すると、本明細書に開示される方法および技法は、捕捉された光吸収信号の振幅を抽出することによって、またはそれらの値を経時的に平均化することによって画像が再構成される画像再構成段階を回避し得る。本明細書で開示される方法および技法は、再構成される画像のピクセルの代わりに、信号表現をAIカラー化アルゴリズムへの入力として直接使用し得る。このようにして、H&E様仮想画像を作成するために、下層組織に関する付加的な貴重な情報が含まれるようにすることができる。
【0136】
カラー化アルゴリズムを計算上より効率的にするために、時間領域信号のいくつかの圧縮表現を使用することができる。これらは、例えば、信号の主要な線形成分、他の信号分解方法の係数、顕著な信号点などを含み得るが、これらに限定されない。Pix2Pixアルゴリズムを適用することによってH&E様視覚化を作成する例を図21に示す。図21Aは、時間領域信号の3つの主成分を示し、図21Bは、対応する合成H&E画像を示す。図20A図20B図21A図21Bとの間の相違は、白黒では容易に明らかではないが、カラー形態でより良好に評価され得る点である。例えば、図21Aは、何らかのカラー化を示し得る一方で、図20Aは、白黒および/またはグレースケールであり得る。加えて、図21Bは、図20Bよりも粗さが低く、かつ/又はより多くの色を示し得る。
【0137】
インテリジェントなクラスタリング法
教師なしクラスタリング法を使用して、グレースケール画像を再構成する必要性なしに、カラー化された合成H&E画像を形成し得る。クラスタリング法は、基礎となる生体分子特性に関連するTD特徴を学習し得る。この技術は、構成生体分子に関連する特徴を識別し、単一取得の仮想組織ラベリングを可能にする。特定の組織成分を強調表示する組織のカラー化された視覚化が生成される。クラスタリングは、PARS放射チャネル、非放射チャネル、および散乱チャネルのいずれかまたは全てに対して実行され得る。
【0138】
一定の材料特性を有する所与の生体分子に関しては、PARS TD信号は特定の形状を有し得る。しかしながら、所与のターゲットからの信号は、(例えば、濃度に基づいて)振幅が変動することがあり得るとともに、ノイズを被ることがあり得る。信号を形状によってクラスタ化し、各クラスタに対して関連付けられたプロトタイプを学習することを使用して、TD信号内に存在するノイズおよび振幅変動に関係なく、下層組織ターゲットの物質特異的情報を捕捉する構成時間領域の特徴が決定され得る。
【0139】
一つの例として、修正K平均クラスタリング法が使用され得る。測定信号はベクトルとして扱われ、ベクトルの角度は信号の形状に類似している。TD信号間の距離または差は、範囲を定められた角度の正弦であり、直交信号が最大距離を有し、スケーリングされるか、または反転された信号は0距離を有するようになる。次に、クラスタ重心は、各クラスタの集合セット(union set)およびその負のセットの第1の主成分として算出され、学習された重心はノイズに対してロバストである。TD特徴(重心)が学習されると、時間領域から特徴領域への基底変換を実行することによって、対応する特徴振幅が抽出される。
【0140】
例示的なアーキテクチャ2200を示す図22を参照すると、広範に吸収されたUV励起(例えば、266nm)は、単一の(1つのみの、または正確に1つの)励起によりコラーゲン、エラスチン、ミエリン、DNA、およびRNA等のいくつかの生体分子をターゲット化し得る。その後、クラスタリング手法を使用して、強調された吸収コントラスト視覚化を作成し、TD信号から生体分子特異的特徴を抽出し得る。UV励起は、50kHzの266nmのレーザ(例えば、WEDGE XF 266、ブライト・ソリューションズ社(Bright Solutions))等の励起光源2202によって提供され得る。励起は、プリズム2204によってスペクトル的にフィルタリングされ得、次いで、検出ビームと結合される前に(例えば、可変ビーム拡大器またはVBE2206により)拡大され得る。励起光は、1つまたは複数のミラー2208を介して誘導され得る。
【0141】
検出光は、連続波405nmのOBIS LSレーザ等の検出光源2212によって提供され得る。検出は、サーキュレータ2214を通してファイバ結合され、コリメートされ(例えば、コリメータ2216を使用して)、次いで、ダイクロイックミラー2210を介して励起ビームと結合され得る。検出光は、1つまたは複数のミラー2218を介して誘導され得る。
【0142】
結合された励起および検出は、一対のアライメントミラー2200を通過し、UV透過窓を通して検体上に共焦点化され得る。試料からの後方反射光は、順方向伝搬と同じ経路でコリメータ2216およびサーキュレータ2214に戻り得る。サーキュレータ2214は、後方散乱光をフォトダイオード2222に再方向付けし、フォトダイオード2222は、ナノ秒スケールの強度変調を捕捉する。画像取得中、ステージ2226は、励起パルスが連続的に印加されている間に、対物レンズ上で検体をラスタ走査し得る。アナログフォトダイオード出力は、高速デジタイザを使用して各励起イベント毎に捕捉され、PARS TD信号が形成され得る。ステージ位置信号を使用して、各PARS TDは、次いで、電子ディスプレイおよび/またはコンピュータ2228上に出力され得る最終画像内のピクセルにマッピングされ得る。
【0143】
図23図24を参照すると、TD信号振幅によってピクセル値を定義する代わりに、提案されたK平均法は、抽出されたクラスタの数に応じてTD特徴を活用し得る。単一の特徴のみが要求される場合(K=1)、クラスタリングアルゴリズムは、全ての組織成分に類似するTD形状を含む特徴を生成する。次に、この特徴をマッチドフィルタリングの基礎として使用することができ、マッチドフィルタリングの技術は、加法ノイズを有する既知の信号形状の振幅を最適に抽出するように設計されている。これにより、吸収振幅またはピクセルの「輝度(brightness)」を決定するためのノイズ耐性のあるロバストな方法が提供される。この抽出が組織に適用されると、図24のビュー(a)に示すように、従来のTD振幅射影と比較して、構造的画像品質およびノイズ抑制において非常に大幅な改善が見られる。
【0144】
追加のクラスタが要求される場合(K>1)、組織特有の時間領域の特徴が学習される。この場合、各ピクセルにおける特徴振幅は、時間領域から特徴領域への基底変換を実行することによって抽出される。特徴を学習する際の有効性を視覚的に示すために、時間領域信号をK=2の要求された特徴についてクラスタ化した。高次元の時間領域データを学習された特徴を含む2次元平面上に射影することによって、TD信号(点)を特定された特徴(矢印)に対して視覚化することが可能である。視覚化において、各点は、構成特徴に起因する信号コンテンツに比例してカラー化される。
【0145】
切除されたマウス脳組織について、3つの特徴(K=3)を使用してさらなる視覚化が生成される。抽出された特徴振幅は、独立した赤、緑および青(R、G、B)のカラーチャネルにマッピングされて、カラー化された視覚化が形成される。従って、ピクセルの色は、時間領域信号に対する各特徴の寄与の比例混合を表し、強度は、吸収されたエネルギーの合計の大きさを表す。図24のビュー(c)を参照すると、K=3のカラー化は、生体分子特異的情報をリカバリする際の提案技術の可能性を実証している。脳幹からの単一の有髄神経細胞(白質)の構造がピンク色で示されており、脳内に延びている。同時に、無髄神経細胞(灰白質)がフレームの右側に緑色で示されている。最後に、脳組織全体に散在する核構造が白色で現れている。
【0146】
図25を参照して、脳組織の3つの異なる領域(ビュー(a))、灰白質(ビュー(c))、および白質と灰白質との間の遷移または境界(ビュー(b))を巨視的検査に基づいて選択した。各固有領域をPARS顕微鏡でイメージングした後、同じK=3モデルを用いてカラー化した。選択された領域の各々において、TDカラー化は、最初のカラー化画像において特定されたものと同一の生体分子特異的構造を強調している(図24のビュー(c))。
【0147】
TD信号は、振幅によってではなく、形状によってクラスタ化され得る。所与のピクセル(およびその対応するTD信号)は、1つまたは複数のターゲットの特徴的な信号形状および残差項に関連して表され得る。具体的には、所与の信号sおよび学習された特性信号形状(特徴){f}に対して、信号は、s=Σαとして表され得、重み{α}は、各特性信号形状の割合を指定し、残差項rは、モデル化または測定ノイズの結果として任意の誤差をカプセル化するために含まれる。
【0148】
TD信号は空間Rn内のベクトルであり得、ここで、空間の次元nは、単に離散TDサンプルの数である。TD信号は直交座標(Cartesian)ベクトルとして扱われるため、信号形状はベクトルの角度に類似している。所与のクラスタの非ノイズ部分の方向を指す単位ベクトルは、重心を定義し得る。集合セットは、クラスタおよびその否定点から構築され得、重心は、より高い振幅の信号が最大の影響を与えることが可能な最大分散の方向(サンプルの共分散からの主成分)として見つけ出され得る。
【0149】
クラスタリングアルゴリズムは図26に反映されており、対応する方法2700は図27に反映されている。クラスタ重心の計算は、16行目に示されており、特異値分解(SVD:Singular Value Decomposition)を使用して第1の主成分を抽出し得る。入力として、クラスタリングアルゴリズムは、PARS TD信号のセットS={s(t)}および要求されたクラスタの数K(学習された特徴数と同一)を受け取る。さらに、収束条件は、最小移動回数基準と平均残差の差異基準によって指定される。これらは、収束を保証するために必要とされる。
【0150】
アルゴリズムは数回実行されてもよく、(最小平均残差に関して)最適な解のみが返され得る。アルゴリズムは、1~3行目およびステップ2702に示されるように、初期クラスタ重心として機能するK個のTD信号をランダムに選択することによって初期化される。次は、7~12行目およびステップ2704、2706に示される「メンバーシップ更新」ステップであり、ここでは、ステップ2704において各点から各重心までの距離を評価し、ステップ2706において最小距離の重心に関連するクラスタにメンバーシップを割り当てることによって、全ての点(PARS TD信号)のクラスタメンバーシップが更新される。移動する点の数(クラスタメンバーシップが変更された点の数)が記録される(9~11行目)。次に、ステップ2708において、平均残差が評価され(13行目)、同様に、前の反復からの平均残差の変化が評価される(14行目)。最初の反復の場合には、ゼロから開始される。次は、16~21行目およびステップ2710に示される「重心更新」ステップであり、重心が、更新されるとともに、各クラスタの集合セットおよびその負のセットの第1の主成分として算出される。実際には、これは、19行目に示されている特異値分解(SVD)によって計算される。ステップ2712において、重心が、単位大きさになるように正規化される。最後に、ステップ2714において、収束条件がチェックされる。アルゴリズムが収束していない場合(図27の「否」)、収束条件が満たされるまで(図27の「是」)、「メンバーシップ更新」ステップと、それに続く「重心更新」ステップが繰り返される。アルゴリズムは、ステップ2716において、各PARS TD信号がどのクラスタに関連するかを示す1組のクラスタラベルと、学習された時間領域の特徴である1組のK個のクラスタ重心とを出力として返す。
【0151】
PARS TD信号は、クラスタ化されたTD特徴に基づいて生体分子を同定するのに十分な情報を含み得る。そのような特性は、異なる組織検体の画像間で転送可能であり得る。特徴の識別は、初期検体に対して実行され、次いで、他の検体に転送されて、同様に説得力のある結果が生成され得る。さらに、この技法は、クラスタ化手法がクラスタの数を除いて事前情報を必要としないため、独自の利点を提供する。トレーニングは、対象の検体内で捕捉された信号に対して盲目的に実行され得る。これは、本明細書で展開された切除された脳組織などの複雑な検体において特に有益である。課題は、予め選択された数の特徴に対して盲目的にクラスタリングを行っても、単一の生体分子/組織タイプが特徴ごとに分離される保証がないことである。各クラスタは、単に、PARSD信号の固有の特性をターゲットとしており、これは、別個の組織成分を強調するために使用され得る。
【0152】
生体分子は、そのPARS TD特性に基づいて視覚化され得る。方法により、複数の生体分子の光吸収を同時にターゲットとしながら、単一の(1つのみの、または正確に1つの)広く吸収される励起光源が、そうでなければアクセス不可能な物質特異性を提供することを可能にし得る。これにより、類似の多波長手法と比較して、わずかな時間で取得される、強化された吸収コントラスト視覚化を可能にし得る。これにより、吸収コントラストに新たな次元を加えることによって、ラベルフリーPARS顕微鏡のためのいくつかの新しい道が開かれ、生体分子特異性の可能性が大きく拡大される。
【0153】
付加的な方法
図28を参照すると、優れたPARSの非放射信号抽出を提供することを目的とする、信号を抽出する付加的な方法も考案されている。図17を参照して前述したように、変調の直前および直後の両方の領域の平均が、ノイズ低減の方法として使用され得る。しかしながら、この概念のさらなる拡張によって、より困難な状況において改善された性能が提供され得る。特に、調査点が試料の表面を急速に横切って移動する場合、試料に関する空間的変動に起因する非PARSベースのさらなる変調を受ける可能性がある。このような場合、非変調散乱を推定するために追加のステップが必要とされ得る。図17に関して説明される方法が「ステップ」処理と称され得る場合、類似の「角度付きステップ」処理が想定され得る。ここで、非変調散乱は、PARS振幅および時間領域の情報を抽出し得る変調前領域および変調後領域の両方の平均を使用することによって近似し得る。特定の変調前および変調後の部分的な曲線当てはめなどのより洗練された手法も、同じ最終目標で想定することができる。
【0154】
図29を参照すると、単一の(1つのみの、または正確に1つの)PARS信号の様々なアナログフィルタリングされたインスタンスを記録することによって、追加情報も提供され得る。例えば、光検出器からの元のアナログ信号を分割し、それを2つの別個のチャネル上に記録することによって、比較的フィルタリングされていない信号が、高度に帯域通過された信号とともに取得され得る。これらから、前述のK平均手法などのインテリジェントな方法が、別々の記録およびフィルタリングされた反復に対して独立して利用され得る。これらはそれぞれ、高度に独立した信号測定値を表すため、さらなる信号忠実度をそのようなプロセスから抽出することができ、感度の向上が可能となる。
【0155】
図30を参照すると、隣接する点間の予期される空間相関を利用することによって、追加情報を提供することもできる。例えば、データボリュームは、従来の2つの横方向の画像軸と、各個別の時間領域を含む第3の軸とで再構成され得る。これにより、時間領域の信号抽出の前の横方向の処理動作が可能となり得る。ここで、横軸および時間軸に沿った相互に依存する依存性および相互に独立した依存性は、大幅に低ノイズの中心信号を近似するために活用され得る。同様の非インテリジェント手法が、PARSの放射チャネル、非放射チャネル、および散乱チャネルのいずれかまたは全てに対して実行され得る。
【0156】
機能的な抽出(放射、非放射および散乱からの)
QERに関して先に説明したように、熱拡散率、伝導率、および音速などの特性は、PARS緩和時間を決定し得る。温度、音速、および分子情報に関連するような特徴は、時間領域信号から抽出され得る。一例として、2つのターゲットは、同じかまたは同様の光吸収を有し得るが、異なる音速などのわずかに異なる他の特性を有し得、この結果、信号の異なる減衰、発展、および/または形状が生じ得る。信号の減衰、発展、および/または形状は、PARS画像に新規の分子情報を決定または追加するために使用され得る。
【0157】
様々な光学的特性および機械的特性が、信号形状におけるこれらの差異を引き起こし得る。例えば、信号がバックグラウンド散乱レベルに戻る速度は、局所的な熱拡散率によって決定され得る。結果として、例えば、より高い熱拡散率を有する領域は、より低い熱拡散率を有する領域とは対照的に、より短い信号長を特徴とし得る。これは、細胞核と同様の光吸収を有する周囲領域とを区別するために使用され得る。同様に、信号寿命もまた、局所的な音速によって影響され得る。1つの例として、2つの異なる金属を区別する際に使用され得る。アルミニウムおよび銅は、異なる熱拡散率および音速を特徴としているため、単に信号寿命を測定することによって多重化が可能となる。図31は、異なる寿命を有する2つの信号を例示する。
【0158】
イメージング後補正
図32を参照すると、2つ(またはそれ以上)の固有の吸収に基づく測定値(放射および非放射)を取得することによって、これらの取得における局所的な変動を使用して、励起パルスエネルギー変動を補償し得る。例えば、間隔が近解像度またはサブ解像度である類似の局所的な(ピクセルレベルの)変動に関して、2つの取得を比較し得る。システムがそのようなレベルの空間的識別を提供し得ることは予想されないので、急速な局所的変動は、試料における空間的変動の結果として生じる可能性は低い。従って、同様の変動は、2つの視覚化の間の同様の再構成誤差として解釈され得る。次いで、この解釈を使用して、さらなる定性的なリカバリを提供するイメージング後強度補正を提供することができる。図32は、自己蛍光ベースの補償の例を示すが、本明細書で開示される態様は、自己蛍光に限定されず、他の吸収ベースの測定を使用し得る。
【0159】
チャープパルスPARS取得
図33を参照すると、PARS取得が通常、単一光検出器要素を使用して時間変化する試料応答を捕捉することによって行われると仮定すると、そのようなデバイスにおける現実的な帯域幅およびノイズ制限は、高速化に対する有意な障壁となり得る。これに対する1つの潜在的な解決策は、PARS信号のストリーク(streak)検出であり得る。ストリーク検出は、ライン走査カメラまたは標準カメラにおける検出器などのいくつかの検出器にわたって様々な時間成分を空間的に分離することを含み、これは、いくつかの方法で達成され得る。
【0160】
例えば、チャープパルス(パルスの長さに沿って波長が変化するパルス)を検出に使用し、時間情報をコード化し得る様々な波長成分が、プリズムまたは格子などの1つまたは複数の回折素子または分散素子を使用して空間的に分離され得る。このプロセスは、相当数の検出器にわたって検出を拡散することによって高い信号忠実度を維持しながら、時間分解能力を大幅に向上させ得る。そのようなアーキテクチャは、検出がカメラなどの大きなアレイ上で行われるライン走査アーキテクチャと組み合わせるなどの明確な用途があり、ここで、カメラの2つの空間座標は、試料からの1つの空間次元および1つの時間次元をコード化する。センサアレイを横切って時間軸をストリーキングする他の方法として、高速光学スキャナの使用なども想定することができる。
【0161】
積分型光検出器ユニットからの時間領域PARS取得
多くのイメージングセンサは、最小積分時間を有し、これは、PARS信号発展におけるナノ秒スケール変調を捕捉することができない可能性がある。これは、PARS信号において提供される潜在的に豊富な時間領域情報に対して制限要因となり得る。そこで、これらの光センサの積分時間内に変調を捕捉するローリングシャッタ/トリガシーケンス/遅延ビニングを活用する一般的な手法を提案する。
【0162】
このPARS取得レジームでは、PARS変調を搬送する後方散乱検出光は、積分型光検出ユニットの配列全体に分散され得る。取得の開始時に、調整可能な遅延が、各光検出ユニットの積分開始時間の間に導入され得る(例えば、ローリングシャッタ、所定のトリガシーケンス、遅延ビニング、および/またはリカバリされた信号の異なるタイミングのセクションを捕捉することを使用することによって)。遅延時間が光検出ユニットの積分時間よりも短い場合、課された遅延によって定義される時間分解能で信号を再構成することが可能である。例えば、PARS時間領域情報は、これらの時間間隔の積分ウィンドウの導関数を取ることによって、および/またはプロットされたときにそれらの共通領域を分析することによって抽出することができる。図34に、この取得方法の視覚的描写を示す。例えば、高サンプルレート光検出器の代わりに、CCD/CMOSカメラセンサを活用して時間領域信号を分解することが可能である。この場合、CCD/CMOSカメラの行は、ローリングシャッタ方式で信号を捕捉する光検出ユニットである。個々の光検出器ライン間に課された遅延により、PARSの時間領域信号は、単一の積分センサよりも大きい時間分解能で構成することができる。
【0163】
データ圧縮
図35を参照すると、データは、デジタル技法および/またはアナログ技法を使用して圧縮され得る。例えば、K平均手法を用いて、生の時間領域信号は、個別のK平均重みによって適切に表され得る。例えば、3つのそのようなプロトタイプが、特定のデータセット上で使用されていた場合、全時間領域(約200+サンプル)を保存するのではなく、時間軸は、単に3つの値または浮動小数点数(floats)に十分に圧縮され得る。同様のそのような抽出された特徴は、システムRAM使用量の低減、データ帯域幅要件の低減、システムストレージの負荷の低減などの目的のために、完全な非圧縮時間領域の代わりに使用され得る。
【0164】
高速取得手法
より高い調査レートで取得することは、より精巧な取得プロセスを必要とし得る。様々な問題が、試料についての調査スポットのロジスティック移動およびより高い周波数の光散乱信号を含む、より高い取得レートで試料を調査する間に生じ得る。試料についての調査スポットの高速横方向運動は、共振スキャナ及びポリゴンスキャナなどの高速光学的走査方法と、機械的走査ステージなどのバルク走査手法とを組み合わせたハイブリッド走査手法によって実行され得る。他の光学顕微鏡手法におけるそのような方法は、数十MHzの調査速度を可能にし、PARSモダリティに類似の利益を提供し得る。
【0165】
しかしながら、試料についての調査スポットのそのような速い動きはまた、収集されたPARS信号の時間領域信号処理を混乱させ得るさらなる不所望の散乱周波数コンテンツを誘発し得る。従って、図36に示されるように、励起スポットに対してより大きいサイズで試料上の検出焦点スポットを動作させて、励起スポットが、比較的静止した、またはより遅く移動する検出スポットについて走査され、検出の高速光学的走査の影響を低減させ得るようにすることが有益であり得る。
【0166】
データのカラー化
図37を参照すると、本明細書に開示される技法および方法は、グレースケールまたはスカラー振幅ベースの再構成を回避して、カラー化されたH&Eシミュレーション画像の直接構築を可能にし得る。使用される色は、ピンク色、紫色、および/または青色の様々な色合いなど、H&E染色において従来から使用される色を模倣し得る。しかしながら、本明細書で開示される態様は、ピンク色、紫色、および/または青色に限定されず、システムおよびプロセッサは、他の色を使用するように構成され得る。例えば、3つの抽出されたK平均プロトタイプを表すために、赤色、緑色、および青色のカラーチャネルが使用され得る。
【0167】
拡張現実インタフェース
データ視覚化または画像の処理を完了すると、これらの視覚化は、ユーザインタフェース画面上の他の視覚化と組み合わせて、および/または重ね合わせて表示され得る。例えば、試料の低解像度明視野画像は、提示されたPARS視覚化の背景を形成し得る。そのような拡張は、必要とされる視覚化と元の試料との間の向きを維持するのを補助するように使用され得る。
【0168】
適用
本明細書に開示される態様は、試料内の非放射(熱および圧力)信号および放射(蛍光が可能性のある信号の1つである)信号を含み得る。本明細書に開示される態様は、光吸収による放射緩和および非放射緩和、ならびに励起および検出の両方からの散乱を収集することを含み得る。収集された信号および/または生データは、試料を染色することなく、H&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)組織構造画像等の試料の画像を直接形成およびカラー化するために使用され得る。H&E組織構造画像は、本明細書に開示される方法(例えば、非放射信号と放射信号との比較、QER、信号の寿命もしくは発展、および/またはクラスタリングアルゴリズムに基づく)を使用することによって、および生のPARS信号における特徴を使用することによって、直接形成およびカラー化され得る。本明細書に開示される態様は、光吸収リモートセンシングシステムまたはPARSを使用して、試料の音速および/または温度特性などの機械的特性を決定または測定するために使用され得る。これらの特徴または特性を測定するために、試料の小さな領域または特定の領域(例えば、合焦されるレーザビームまたは光ビームのサイズ)が使用され得る。本明細書で開示される態様は、試料内の信号の振幅またはスカラー振幅以上のものを抽出し得る。例えば、2つのターゲットは、同じまたは同様の光吸収を有し得るが、異なる音速などのわずかに異なる他の特性を有し得、この結果、信号の異なる発展および/または形状が生じ得る。本明細書に開示される態様は、PARS画像に新規の分子情報を決定または追加するために使用され得る。
【0169】
他の例が、異なるファイバベースまたは自由空間の構成要素を用いて、同様の結果が達成されるように設計され得ることは明らかであろう。他の代替例は、様々なコヒーレンス長の光源、平衡光検出器の使用、調査ビーム変調、戻り信号経路への光増幅器の組み込みなどを含み得る。
【0170】
生体内イメージング実験中、薬剤または超音波カップリング媒体は必要とされない。しかしながら、ターゲットは、非接触イメージングセッションの前に、水または油等の任意の液体を用いて調製されることができる。同様に、場合によっては、カバースリップまたはガラス窓等の中間窓が、イメージングシステムと試料との間に配置され得る。
【0171】
本明細書に開示される態様は、PARSデバイスと光コヒーレンストモグラフィ(OCT:optical coherence tomography)との組み合わせを使用し得る。OCTは、PARSデバイスに対する相補的なイメージングモダリティである。OCT測定は、米国特許出願公開第2010/0265511号明細書および米国特許出願公開第2014/0125952号明細書に記載されているように、時間領域光コヒーレンストモグラフィ(TD-OCT)または周波数領域光コヒーレンストモグラフィ(FD-OCT)のいずれかにおいて、様々な手法を使用して実行することができる。OCTシステムでは、複数のAスキャンが通常取得され、試料ビームが組織表面を横方向に走査され、通常Bスキャンと呼ばれる反射率対深さおよび横方向範囲の2次元マップが構築される。Bスキャンの横方向分解能は、試料アーム光学系の共焦点分解能によって近似され、共焦点分解能は、通常、組織内の合焦光スポットのサイズによって与えられる。
【0172】
PARS励起、PARS検出、PARS信号増強、およびOCT光源を含むが、それらに限定されない全ての光源は、連続ビーム、変調連続ビーム、またはパルス幅が数アト秒から数ミリ秒の範囲であり得る短パルスレーザとして実施され得る。これらの光源は、散乱および吸収などの試料の光学的(または他の電磁的)特性を利用するのに適している任意の波長に設定され得る。波長はまた、異なる吸収体からの検出光子または励起光子を意図的に増強または抑制するように選択され得る。波長は、ナノメートルからマイクロメートル(ミクロン)のスケールの範囲であり得る。連続波ビーム電力は、アトワットからワットまでのような任意の適切な電力範囲に設定され得る。パルス光源は、数アトジュールから数ジュールの範囲内など、試験される特定の試料に適しているパルスエネルギーを使用し得る。様々なコヒーレンス長が、干渉効果を利用するために実施され得る。これらのコヒーレンス長は、数ナノメートルから数キロメートルの範囲であり得る。同様に、パルス光源は、連続波からギガヘルツ領域までなど、試験される試料に適切であると考えられる任意の繰り返し率を使用し得る。光源は、調整可能、単色または多色のものであり得る。
【0173】
TA-PARS、MP-PARS、多光子励起PARS、QER、寿命PARS、およびTD-PARSサブシステムは、マイケルソン干渉計、フィゾー干渉計、ラムジー干渉計、ファブリーペロー干渉計、マッハツェンダー干渉計、または光直交検出などの干渉計を含み得る。干渉計は、自由空間またはファイバベースまたはいくつかの組み合わせであり得る。基本原理は、プロービング受信機ビームにおける位相および振幅の変動が、干渉法を使用して検出され、様々な検出器を使用してAC、RFまたは超音波の周波数で検出され得ることである。
【0174】
TA-PARS、MP-PARS、多光子励起PARS、QER、寿命PARS、およびTD-PARSサブシステムは、非干渉検出設計を使用および実装して、信号中の振幅変調を検出し得る。非干渉検出システムは、自由空間またはファイバベースまたはそれらのいくつかの組合せであり得る。
【0175】
TA-PARS、MP-PARS、多光子励起PARS、QER、寿命PARS、およびTD-PARSサブシステムは、フォトニック結晶ファイバ、イメージガイドファイバ、ダブルクラッドファイバなどの様々な光ファイバを使用し得る。
【0176】
PARSサブシステムは、従来の光音響リモートセンシングシステム、非干渉光音響リモートセンシング(NI-PARS)、カメラベース光音響リモートセンシング(C-PARS)、コヒーレンスゲート光音響リモートセンシング(CG-PARS)、単一光源光音響リモートセンシング(SS-PARS)、またはそれらの拡張部分として実施され得る。
【0177】
1つの例では、全てのビームが結合されて走査され得る。このようにして、PARS励起は、それらが生成される領域と同じ、かつそれらが最大である領域において検知され得る。また、OCT検出は、位置合わせを補助するために、PARSと同じ位置で行われ得る。1つまたは複数のビームを固定したまま他のビームを走査すること、またはその逆を含めて、他の構成を使用することもできる。光学的走査は、ガルバノミラー、MEMSミラー、ポリゴンスキャナ、ステッパ/DCモータなどによって実行され得る。試料の機械的走査は、ステッパステージ、DCモータステージ、リニア駆動ステージ、ピエゾ駆動ステージ、ピエゾステージなどによって行われ得る。
【0178】
光学的走査および機械的走査の両方の手法が、試料についての一次元、二次元、または三次元の走査を生成するために活用され得る。TAGレンズおよび変形可能ミラーなどの適応型光学部品が、試料内で軸方向走査を実行するために使用され得る。光学的走査と機械的走査の両方を組み合わせて、ハイブリッドスキャナを形成し得る。このハイブリッドスキャナは、1軸または2軸の光学的走査を使用して、短時間で広い領域またはストリップを捕捉し得る。ミラーは、速度および品質に関して走査効率を向上させるためのカスタマイズされた走査パターンが得られるように、カスタム制御ハードウェアを使用して制御されることが潜在的に可能である。例えば、1つの光軸を使用して高速に走査することができ、また同時に1つの機械軸を使用して試料を移動させることができる。これにより、傾斜路様の走査パターンが描画され、これはその後補間され得る別の例では、カスタム制御ハードウェアを使用して、高速軸の移動が移動を終了したときのみ機械ステージをステップさせて、補間が不要となり得る直交座標のような格子を生じさせ得る。
【0179】
PARSは、ビームの光学的走査もしくは機械的走査によって、または試料もしくはイメージングヘッドの機械的走査によって、またはビーム、光学部品、および試料の機械的走査および光学的走査の組み合わせによって、3Dイメージングを提供し得る。これにより、高速の構造および機能のen-faceイメージングまたは3Dイメージングが可能になり得る。
【0180】
ビームを光学的または機械的に走査するとき、または試料もしくはイメージングヘッドを機械的に走査するとき、またはビーム、光学部品、および試料を機械的走査および光学的走査の組み合わせのときに、1つまたは複数のピンホールが、焦点外れの光を除去するために使用され得る。これらのピンホールは、結果として得られる画像の信号対ノイズ比を改善し得る。
【0181】
ビーム結合器は、ダイクロイックミラー、プリズム、ビームスプリッタ、偏光ビームスプリッタ、WDMなどを使用して実施され得る。
ビーム経路は、異なる光学経路を使用して、試料上に合焦され得る。単一または複数のPARS励起、検出、信号増強などの経路およびOCT経路の各々が、試料上への個別の合焦要素を使用し得るか、または全てが単一の(1つのみの、または正確に1つの)経路もしくは任意の組合せを共有し得る。ビーム経路は、試料上に合焦するために使用される光路とは異なる特有の光路を使用して、試料から戻り得る。これらの特有の光路は、垂直入射で試料と相互作用し得るか、または中心ビーム軸が試料表面と5度~90度の範囲の角度を形成するある角度で試料と相互作用し得る。
【0182】
眼科イメージングなどのいくつかの用途では、イメージングヘッドは、光を試料上に密に合焦させるための対物レンズなどの、いかなる一次合焦要素を実装し得ない。その代わりに、ビームは、試料に向けられている間、コリメートされるか、または(光学回折限界よりもはるかに大きいスポットサイズを形成するように)緩く合焦され得る。例えば、眼科イメージングデバイスは、コリメートされたビームを眼に向けて、眼の水晶体がビームを網膜上に合焦させることを可能にする。
【0183】
イメージングヘッドは、ビームを試料内に少なくとも50nmの深さに合焦させることができる。イメージングヘッドは、ビームを試料内に最大で10mmの深さに合焦させることができる。以前のPARSに対して増加した深さは、上述したように深く浸透する検出波長を新規に使用することにより生じる。
【0184】
光は、試料と相互作用する前に、または検出の前に、光増幅器によって増幅され得る。光は、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電管、光電子増倍管、CMOSカメラ、CCDカメラ(EM-CCD、増感CCD、裏面薄膜冷却CCDを含む)、分光器などによって収集され得る。検出された信号は、RF増幅器、ロックイン増幅器、トランスインピーダンス増幅器、またはその他の増幅器構成によって増幅され得る。
【0185】
モダリティは、生体内、生体外、またはファントム研究様のAスキャン、Bスキャン、またはCスキャンの画像を得るために使用され得る。TA-PARS、MP-PARS、多光子励起PARS、QER、寿命PARS、およびTD-PARSサブシステムは、顕微鏡および生体のイメージング技法に共通の任意の実施形態の形態をとり得る。これらのうちのいくつかは、卓上顕微鏡、倒立顕微鏡、手持ち式顕微鏡、手術用顕微鏡、内視鏡、または眼科用デバイス等として実施されるデバイスを含み得るが、これらに限定されない。これらは、当技術分野で知られている原理に基づいて構築され得る。
【0186】
TA-PARS、MP-PARS、多光子励起PARS、QER、寿命PARS、およびTD-PARSサブシステムは、2Dイメージングおよび3Dイメージングの焦点深度を改善するための多焦点設計を利用するために最適化され得る。コリメートレンズおよび対物レンズの対における色収差は、各波長がわずかに異なる深さ位置に合焦されるように、ファイバからの光を対象物に再合焦させるために利用され得る。これらの色収差は、深さ情報を、リカバリされるPARS信号にコード化するために使用され得、深さ情報は、波長固有の分析手法を使用して後でリカバリされ得る。これらの波長を同時に使用することは、PARS画像の被写界深度および信号対ノイズ比(SNR)を向上させるためにも使用され得る。イメージング中に、波長調整による深度走査が行われ得る。
【0187】
PARS法では、いくつかのピンホールを使用する等により検出領域を空間的にコード化することによって、または広帯域ビームのスペクトルコンテンツによって、試料上の横方向または軸方向の識別を行い得る。
【0188】
TA-PARS、MP-PARS、多光子励起PARS、QER、寿命PARS、およびTD-PARSサブシステムは、誘導ラマン顕微鏡、蛍光顕微鏡、二光子および共焦点蛍光顕微鏡、コヒーレントアンチラマンストークス顕微鏡、ラマン顕微鏡、他の光音響システムおよび超音波システム等の他のイメージングモダリティと組み合わせられ得る。この組み合わせにより、実施が困難であるが潜在的に重要なタスクである、微小循環のイメージング、血液酸素化パラメータイメージング、および他の分子特異的ターゲットのイメージングを同時に可能にすることができる。また、多波長可視レーザ光源が、機能的イメージングまたは構造的イメージング用の光吸収信号を生成するようにも実施され得る。
【0189】
偏光アナライザが、検出された光を個別の偏光状態に分解するために使用され得る。各偏光状態で検出された光により、試料に関する情報が得られ得る。位相アナライザが、検出された光を位相成分に分解するために使用され得る。これにより、試料に関する情報が得られる。
【0190】
TA-PARS、MP-PARS、多光子励起PARS、QER、寿命PARS、およびTD-PARSサブシステムは、試料から戻る検出ビーム(単数または複数)における生成された信号を検出し得る。これらの摂動は、強度、偏光、周波数、位相、吸収、非線形散乱、および非線形吸収の変化を、これらに限定されないが含み得るとともに、圧力、熱効果などの様々な要因によって生じ得る。
【0191】
アナログベースの信号抽出が、電気信号経路に沿って行われ得る。このようなアナログデバイスのいくつかの例には、ロックイン増幅器、ピーク検出回路などが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0192】
PARSサブシステムは、後方反射された検出ビームにコード化されている時間情報を検出し得る。この情報を用いて、発色団を識別し、コントラストを増強し、信号抽出を改善するなどのことが可能である。この時間情報は、アナログ処理およびデジタル処理の技法を使用して抽出され得る。これらの技法には、いくつか例を挙げると、ロックイン増幅器、フーリエ変換、ウェーブレット変換、インテリジェントアルゴリズム抽出の使用を含み得るが、これらに限定されない。1つの例では、ロックイン検出を利用して、DNA、シトクロム、赤血球などの特定の発色団を抽出するための既知の期待信号と類似しているPARS信号を抽出し得る。
【0193】
システムのイメージングヘッドは、波面および収差補正のための波面センサ、変形可能ミラー、TAGレンズ等をこれらだけには限らないが含む、クローズドループまたはオープンループの適応型光学構成要素を含み得る。収差には、デフォーカス、非点収差、コマ収差、歪曲収差、3次効果などが含まれ得る。また、信号増強ビームは、光退色などの飽和効果を意図的に誘発することによって、不所望の発色団からの信号を抑制するために使用され得る。
【0194】
様々なタイプの光学部品が、それぞれの利点を活用するために利用され得る。例えば、アキシコンを主対物レンズとして使用して、標準的なガウスビーム光学部品によって利用可能なものと比較してより大きな焦点深度を有するベッセルビームを生成し得る。このような光学部品は、適切であると見なされるビーム経路内の他の場所で使用され得る。標準的な複合対物レンズではなく、反射対物レンズを使用するなど、反射光学素子が、個別の屈折素子に代わってもよい。
【0195】
光路には、波長生成および波長シフトなどの様々な関連する目的のための非線形光学素子が含まれ得る。ビーム焦点同士は、試料において重複し得るが、適切な場合には、互いに横方向および軸方向に少量だけオフセットされ得る。
【0196】
TA-PARS、MP-PARS、多光子励起PARS、QER、寿命PARS、およびTD-PARSサブシステムは、試料分析用の分光器として使用され得る。
構造に固有の他の利点は、当業者には明らかであろう。本明細書に記載される実施形態は例示的なものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではなく、特許請求の範囲は明細書全体に照らして解釈されるべきである。
【0197】
適用
本明細書に記載のシステムは、従来技術で説明した目的など、様々に使用することができ、また上記の態様を利用するために別様に使用することもできることが理解されよう。用途の非網羅的なリストを以下に説明する。
【0198】
システムは、様々な前臨床腫瘍モデルの血管新生をイメージングするために使用され得る。
システムは、異なる波長、異なるパルス幅、異なるコヒーレンス長、繰り返し率、露出時間、信号の異なる発展もしくは寿命、量子効率比、ならびに/または非放射信号および放射信号の他の比較等を利用することによって、ターゲットの吸収、散乱、または周波数コンテンツに基づいて、ターゲットを分離する(例えば、構成種および/または亜種を検出、分離、または別様に離散化する)ために使用され得る。
【0199】
このシステムは、回折限界までの、さらにそれを超える分解能でイメージングするために使用され得る。
システムは、外生的および内生的ターゲットおよびバイオマーカを含む、光を吸収するいかなるものをイメージングするために使用され得る。
【0200】
システムには、外科手術のいくつかの用途として、脳手術中の機能的および構造的イメージング、内出血および焼灼検証の評価のための使用、臓器および臓器移植の灌流充足のイメージング、膵島移植の周囲の血管新生のイメージング、皮膚移植のイメージング、血管形成および免疫拒絶を評価するための組織足場および生体材料のイメージング、顕微手術を支援するイメージング、重要な血管および神経を切断しないようにするためのガイダンス、などがあり得る。
【0201】
システムには、バレット食道および大腸癌における血管床および浸潤の深さのイメージングなどの、いくつかの胃腸学的用途もあり得る。浸潤の深さは、少なくともいくつかの実施形態においては、予後および代謝可能性の鍵になる。この深さは、仮想生検、クローン病、IBSのモニタリング、頸動脈の検査などに使用することができる。胃腸学的用途では、臨床内視鏡と組み合わされてもピギーバックオフされてもよく、小型化されたPARSシステムは、スタンドアロン内視鏡として設計すること、または臨床内視鏡のアクセサリチャンネル内に収めることができる。
【0202】
システムはまた、微小循環、大循環、および色素細胞の臨床イメージングに使用されてもよく、その用途として、(1)眼、蛍光眼底血管造影法を場合によって補強または代替すること、(2)メラノーマ、基底細胞癌、血管腫、乾癬、湿疹、皮膚炎などの皮膚病変のイメージング、モース手術のイメージング、腫瘍縁切除を検証するためのイメージング、(3)末梢血管疾患、(4)糖尿病性潰瘍および褥瘡、(5)火傷イメージング、(6)形成外科および顕微手術、(7)循環腫瘍細胞、特にメラノーマ細胞のイメージング、(8)リンパ節血管新生のイメージング、(9)血管破壊機構を持つものを含む光力学的治療に対する応答のイメージング、(10)抗血管形成薬を含む化学療法に対する応答のイメージング、(11)放射線療法に対する応答のイメージング、などでの使用が見出され得る。
【0203】
システムはまた、凍結病理学、組織試料からのH&E様画像の作成、仮想生検などの、いくつかの病理組織学イメージング用途に使用されてもよい。システムは、ホルマリン固定パラフィン包埋の組織ブロック、ホルマリン固定パラフィン包埋の組織スライド、凍結病理切片、切除されたばかりの検体などの、様々な組織検体に使用されてもよい。これらの試料内では、DNA、RNA、シトクロム、脂質、タンパク質などの高分子の視覚化が実施され得る。
【0204】
システムは、多波長PARS励起を用いて酸素飽和度を推定するのに、(1)脳静脈酸素飽和度および中心静脈酸素飽和度の推定を含めてパルスオキシメトリーが使用できない場合に静脈酸素飽和度を推定すること、を含む用途で有用であり得る。このシステムは、特に小さな子供および乳児では危険を伴うおそれがあるカテーテル処置の代わりになり得る可能性がある。
【0205】
酸素フラックスおよび酸素消費もまた、PARSイメージングを使用して酸素飽和度を推定すること、および、ある組織の領域に流出入する血管中の血流を推定することによって、推定することができる。
【0206】
システムは、細胞核および周囲の細胞質などの顕著な組織学的発色団を、それぞれの吸収スペクトルを活用することによって分離するのに有用であり得る。
システムは、異なる波長、異なるパルス幅、異なるコヒーレンス長、繰り返し率、フルエンス、露出時間などを利用することによって、ターゲットの吸収コンテンツ、散乱、位相、偏光または周波数コンテンツを用いてターゲットを分離するために使用されてもよい。
【0207】
他の用途の例としては、臨床応用または前臨床応用における造影剤のイメージングと、センチネルリンパ節の識別と、リンパ節における腫瘍の非侵襲または低侵襲の識別と、材料の非破壊検査と、前臨床または臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色タンパク質、蛍光タンパク質などの、遺伝的にコード化されたレポータのイメージングと、分子イメージングのために能動的または受動的にターゲットにされた光吸収ナノ粒子のイメージングと、血栓のイメージング、および場合により血栓年齢の段階分けとを挙げることができる。
【0208】
他の用途の例としては、臨床および前臨床眼科の用途があり、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症および緑内障などの疾患における酸素飽和度測定および網膜代謝率、辺縁血管系および幹細胞のイメージング、角膜神経および新脈管のイメージング、緑内障患者のシュレム管変化の評価、脈絡膜新脈管のイメージング、前後セグメント血流のイメージングおよび血流状態を挙げることができる。
【0209】
システムは、PARSとOCTの両方の能力を活用して生体試料内の代謝を測定および推定するために使用されてもよい。この例では、OCTは、関心領域内の体積血流を推定するために使用されてもよく、PARSシステムは、関心血管内の酸素飽和度を測定するために使用され得る。この場合、これらの測定値を組み合わせることにより、その領域内の代謝の推定値が得られ得る。
【0210】
システムは、頭頸部癌タイプおよび皮膚癌タイプと、機能的脳活動と、血栓の位置を特定する助けにするための脳卒中患者の血管系の検査と、腸内細菌構成、動脈硬化性プラークの変化の結果としての神経機能および脳の機能/発達の変化のモニタリングと、フラップ再建後の酸素充足、形成手術または美容整形後の満足度のモニタリングと、美容注射剤のイメージングとのために使用されてもよい。
【0211】
システムは、表面変形のトポロジー追跡のために使用されてもよい。例えば、OCTは、試料表面の位置を追跡するために使用されてもよい。その後補正が、密に合焦されたPARSデバイスに対して、適応型光学部品などの機構を用いて適用されて、その表面とのアライメントが、走査が続行するときに維持され得る。
【0212】
システムは、卓上顕微鏡、倒立顕微鏡、手持ち式顕微鏡、手術用顕微鏡、眼科用顕微鏡、内視鏡などの用途に適している様々な異なるフォーム・ファクタで実施することができる。
【0213】
本明細書に開示された態様は、以下の用途であって、組織学的試料のイメージング、細胞核のイメージング、タンパク質のイメージング、DNAのイメージング、RNAのイメージング、脂質のイメージング、血中酸素飽和度のイメージング、腫瘍低酸素のイメージング、創傷治癒、火傷診断もしくは手術のイメージング、微小循環のイメージング、血液酸素化パラメータのイメージング、組織の領域に流出入する血管中の血流の推定、分子特異的ターゲットのイメージング、前臨床腫瘍モデルの血管新生のイメージング、微小循環および大循環ならびに色素細胞の臨床イメージング、眼のイメージング、蛍光眼底血管造影法の補強もしくは代替、皮膚病変のイメージング、メラノーマのイメージング、基底細胞癌のイメージング、血管腫のイメージング、乾癬のイメージング、湿疹のイメージング、皮膚炎のイメージング、モース手術イメージング、腫瘍縁切除を検証するためのイメージング、末梢血管疾患のイメージング、糖尿病性潰瘍および/もしくは褥瘡のイメージング、火傷イメージング、形成外科、顕微手術、循環腫瘍細胞のイメージング、メラノーマ細胞のイメージング、リンパ節血管新生のイメージング、光力学的治療に対する応答のイメージング、血管破壊機構を持つ光力学的治療に対する応答のイメージング、化学療法に対する応答のイメージング、凍結病理試料のイメージング、パラフィン包埋組織のイメージング、H&E様画像のイメージング、酸素代謝変化のイメージング、抗血管新生薬に対する応答のイメージング、放射線療法に対する応答のイメージング、多波長PARS励起を用いる酸素飽和度の推定、パルスオキシメトリーが使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、脳静脈酸素飽和度および/もしくは中心静脈酸素飽和度の推定、酸素フラックスおよび/もしくは酸素消費の推定、バレット食道および/もしくは大腸癌における血管床および浸潤深さのイメージング、脳手術中の機能的および構造的イメージング、脳手術中の機能的および構造的イメージング、内出血および/もしくは焼灼検証の評価のための使用、臓器および/もしくは臓器移植の灌流充足のイメージング、膵島移植の周囲の血管新生のイメージング、皮膚移植のイメージング、血管形成および/もしくは免疫拒絶を評価するための組織足場および/もしくは生体材料のイメージング、顕微手術を支援するイメージング、血管および/もしくは神経を切断しないようにするためのガイダンス、臨床応用もしくは前臨床応用における造影剤のイメージング、センチネルリンパ節の識別、リンパ節における腫瘍の非侵襲もしくは低侵襲の識別、材料の非破壊検査、前臨床もしくは臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色タンパク質、および/もしくは蛍光タンパク質を含む、遺伝的にコード化されたレポータのイメージング、分子イメージングのために能動的もしくは受動的にターゲットにされた光吸収ナノ粒子のイメージング、血栓のイメージング、血栓年齢の段階分け、内因性グルコース吸収ピークを検出することによるグルコース濃度の遠隔または非侵襲性の腫瘍内評価、オルガノイド成長の評価、発達中の胚のモニタリング、バイオフィルム組成の評価、虫歯の評価、非生物構造の評価、真正性を非侵襲的に確認するための絵画の配合物の評価、考古学的遺物の評価、製造品質管理、製造品質保証、カテーテル処置の取り替え、胃腸学的用途、全視野にわたる単一励起パルスイメージング、組織のイメージング、細胞のイメージング、物体表面からの散乱光のイメージング、散乱光の吸収誘発変化のイメージング、または光吸収の非接触イメージングの用途に使用し得る。
【0214】
本明細書で開示される態様は、コンピュータが実施する試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、1つまたは複数の光吸収リモートセンシングまたはシステム(PARS)信号を受信するステップと、試料の特徴を決定するために、クラスタリングアルゴリズムを使用して、受信された1つまたは複数のPARS信号をクラスタ化するテップと、クラスタ化されたPARS信号に基づいて画像を決定するステップとを含み得る。代替的、または付加的に、方法は、放射信号に対する非放射信号の比を決定するステップと、非放射信号および放射信号の関数である値を決定するステップと、および/または非放射信号、放射信号、および/または散乱信号を比較するステップと、決定された比、値、および/または比較に基づいて、色を含む画像を決定するステップとを含み得る。
【0215】
PARS信号は、試料の表面の下に合焦される励起ビームを使用して励起位置において試料内に信号を生成すること、試料の励起位置に向かって指向され、試料の表面の下に合焦される調査ビームにより試料を調査すること、試料から戻る調査ビームの一部を検出することによって収集され得る。信号を生成することは、圧力、温度、および蛍光(および/または他の放射信号および/または非放射信号)を生成することを含み得る。戻りの調査ビームの一部は、生成された圧力信号および温度信号を示し得る。PARS信号は、生成された圧力信号および温度信号を検出しながら、試料の励起位置からの蛍光信号を検出することによってさらに収集される。PARS信号は、戻りの調査ビームの一部を再方向付けして、試料との相互作用を検出することによってさらに収集され得る。
【0216】
励起ビームの波長は、試料が2つ以上の光子を同時に吸収するように構成され得、2つ以上の光子のエネルギーの合計は、所定のエネルギーに等しい。方法は、PARS信号を収集するステップを含み得る。
【0217】
受信されたPARS信号をクラスタ化することは、形状に基づき得る。方法は、再構成されたグレースケール画像を解析して画像を決定することを含み得ない。受信されたPARS信号のクラスタリングは、スカラー振幅に基づき得ない。方法は、スカラー振幅をマッピング又は視覚化することを含み得ない。PARS信号は、試料の温度特性を示し得る。PARS信号は、試料内の音速を示し得る。PARS信号は、分子情報を示し得る。PARS信号は、合焦光ビームによって画定されるサイズを有する領域内の試料の特性を示し得る。PARS信号を受信することは、時間領域(TD)信号を受信することを含み得る。
【0218】
方法は、クラスタ化されたPARS信号に基づいてクラスタ重心を決定するステップを含み得る。決定されたクラスタ重心は、特徴的な時間領域信号を含み得る。PARS信号を受信することは、後方散乱強度、放射信号、および非放射緩和時間領域信号を受信することを含み得る。
【0219】
PARS信号を受信することは、放射PARS信号および非放射PARS信号を受信することを含み得る。方法は、放射PARS信号および非放射PARS信号に基づいて比および/または値を決定するステップをさらに含み得る。比および/または値は、量子効率(QE)値に対してプロットされ得る。方法は、比率および/または値に基づいて、画像および/または生体分子情報を判定するステップを含み得る。
【0220】
方法は、受信されたPARS信号に基づいて減衰時間または発展時間を決定するステップを含み得る。画像を決定するステップは、クラスタリングに基づいて1つまたは複数の色を決定することを含み得る。方法は、ディスプレイ上に画像を表示するステップを含み得る。
【0221】
本明細書に開示されるシステムおよび技法は、試料内の特徴をイメージングするための光吸収リモートセンシング(PARS)システムを提供し得る。システムは、励起位置で試料内に信号を生成するように構成された励起光源であって、試料の表面の下に合焦される励起光源と、試料を調査し、かつ試料の励起位置に向けられるように構成された調査光源であって、試料の表面の下に合焦され、少なくとも1つの調査光源の一部が、生成された信号を示す試料から戻る調査光源と、クラスタリングアルゴリズムを実行して、生成された信号をクラスタ化し、クラスタ化された生成された信号に基づいて、試料内の特徴を示す画像を決定するように構成されたプロセッサとを含み得る。システムは、決定された画像を表示するように構成されたディスプレイを含み得る。画像は、受信信号から直接形成され得る。
【0222】
プロセッサは、クラスタリングに基づいて1つまたは複数の色を決定するように構成され得る。決定された色は、画像がヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色画像に似るように構成されるように、紫色、青色、およびピンク色を含み得る。
【0223】
本明細書に開示されるシステムおよび技法は、コンピュータが実施する試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、1つまたは複数の信号を受信するステップと、クラスタリングアルゴリズムを使用して、形状に基づいて受信信号をクラスタ化して、試料の時間領域の特徴を決定するステップと、クラスタ化された信号および決定された時間領域の特徴に基づいて、画像内で使用される1つまたは複数の色を含む画像を決定するステップとを含み得る。
【0224】
方法は、受信された1つまたは複数の信号からベクトルの角度を決定するステップを含み得る。形状に基づいて受信信号をクラスタ化するステップは、ベクトルの角度に基づいて受信信号をクラスタ化することを含み得る。1つまたは複数の信号は、非放射信号または放射信号のうちの少なくとも1つを含み得る。1つまたは複数の信号は、非放射熱信号または非放射圧力信号のうちの少なくとも1つを含み得る。1つまたは複数の信号は、放射蛍光信号を含み得る。放射蛍光信号は、放射自己蛍光信号であり得る。非放射信号および放射信号は、圧力信号、温度信号、超音波信号、自己蛍光信号、非線形散乱、および/または非線形蛍光信号を含み得る。
【0225】
本明細書で開示される態様は、コンピュータが実施する試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、試料からの非放射信号および放射信号を含む信号を受信するステップと、試料の特徴を決定するために、クラスタリングアルゴリズムを使用して、受信された1つまたは複数の信号をクラスタ化するステップと、クラスタ化された信号に基づいて画像を決定するステップとを含み得る。非放射信号は、熱信号および圧力信号を含み得、放射信号は、蛍光信号を含み得る。圧力信号、温度信号、超音波信号、自己蛍光信号、非線形散乱、および非線形蛍光などの非放射緩和および放射緩和全体が受信され得る。
【0226】
複数の信号の少なくともいくつかは、励起ビームを使用して励起位置において試料内に信号を生成し、試料の励起位置に向けられた調査ビームにより試料を調査し、試料から戻る調査ビームの一部を検出することによって収集される。複数の信号の少なくともいくつかは、試料からの光吸収および散乱を検出することによって収集され得る。光吸収および散乱は、試料の励起および検出から生じ得る。
【0227】
本明細書で開示される態様は、試料内の特徴を視覚化する方法を提供し得る。方法は、1つまたは複数の信号を受信するステップと、クラスタリングアルゴリズムを使用して、ベクトルに基づく形状に基づいて受信信号をクラスタ化して、試料の特徴を決定するステップと、クラスタ化された信号および決定された特徴に基づいて、画像内で使用される1つまたは複数の色を含む画像を決定するステップとを含み得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A-12B】
図13
図14
図15
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図17
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図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22
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図25
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図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
【国際調査報告】