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特表2024-518980溶接前、後、並びに溶接中に最適の映像を獲得するための光量制御方法と、これを具現した小型化及び軽量化されたデジタル溶接ビジョンカメラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】溶接前、後、並びに溶接中に最適の映像を獲得するための光量制御方法と、これを具現した小型化及び軽量化されたデジタル溶接ビジョンカメラ
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/00 20210101AFI20240426BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240426BHJP
   B23K 9/095 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G03B11/00
B23K26/00 P
B23K9/095 515A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570080
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2021006344
(87)【国際公開番号】W WO2022239894
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0060958
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523426574
【氏名又は名称】ロニックス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RONIX, INC
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】キム,インギュン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,テグン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,スンイム
【テーマコード(参考)】
2H083
4E168
【Fターム(参考)】
2H083AA04
2H083AA05
2H083AA09
2H083AA26
2H083AA34
2H083AA51
4E168BA00
4E168CA06
4E168CB22
(57)【要約】
溶接中、溶接前、溶接後の最適な画像を取得する小型軽量のデジタル溶接ビジョンカメラを提供する。本発明は、ウインドウユニットと、フロントケースユニットの前面にウインドウユニットが取り付けられるフロントケースユニットと、前方ケースユニットの後方に接続され、短焦点距離レンズが組み込まれた後方ケースユニットと、を備えることを特徴とする。前方ケース部の前面には、第1開口部が形成されている。フロントケースユニットの内部には、フィルター切替モジュールが搭載され、第2開口部が第1開口部と同軸上に設けられ、できるだけ短焦点距離レンズの前方に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウ部と、
前記ウィンドウ部が前方に装着された前方ケース部と、
前記前方ケースの後方に連結されて、内部に単焦点レンズが設けられた後方ケース部と、を含み、
前記前方ケース部の前面には、第1の開口部が形成されて、
前記前方ケース部の内部には、フィルター切替モジュールが装着されて、前記第1の開口部と同軸上に第2の開口部が前記単焦点レンズの前方に近接配置されたことを特徴とする、デジタル溶接ビジョンカメラ。
【請求項2】
前記フィルター切換モジュールは、
前記単焦点レンズの光軸に直交した面を基準に所定の角度傾いた状態で固定設置されることを特徴とする、請求項1に記載のデジタル溶接ビジョンカメラ。
【請求項3】
前記第2の開口部は、前記単焦点レンズに流入される光量を減衰するように、前記第1の開口部より小さく形成され、光量の減衰と被写界深度を改善することを特徴とする、請求項1に記載のデジタル溶接ビジョンカメラ。
【請求項4】
前記フィルター切換モジュールは、
溶接前及び溶接後には、前記ローパスフィルターがフィルターウィンドウに露出するように移動され、前記ローパスフィルターを通過した光が撮像素子に流入して、
溶接中には、前記NDフィルターが前記フィルターウィンドウに露出するように移動され、前記NDフィルターを通過した光が撮像素子に流入するように動作することを特徴とする、請求項1に記載のデジタル溶接ビジョンカメラ。
【請求項5】
前記第2の開口部の前方には、前記フィルター切替モジュールが配置されることを特徴とする、請求項1に記載のデジタル溶接ビジョンカメラ。
【請求項6】
請求項4に記載のデジタル溶接ビジョンカメラの制御方法であって、
溶接作業の状況に対応し、溶接アークの存在を判定するアーク感知基準値と、アークが消滅したことを判定するアーク消滅基準値とを設定して、
前記撮像素子に流入する光量をモニターし、前記基準値と比較して、前記フィルター切換モジュールが自動に前記NDフィルターまたは前記ローパスフィルターを選択的に前記フィルターウィンドウに露出することを特徴とする、デジタル溶接ビジョンカメラの制御方法。
【請求項7】
デジタル溶接ビジョンカメラにおいて、最適の映像を獲得するための光量制御方法であって、
溶接光が通過する経路上で少なくとも一つの開口部を通過しつつ、前記溶接光の光量を減衰することと、
NDフィルターのND数値を調節して、前記溶接光の光の強度を減衰することと、を組み合わせることにより、
撮像素子に流入する光量を適正に調節することを特徴とする、溶接前、後、並びに溶接中に最適の映像を獲得するための光量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル溶接ビジョンカメラに関し、より詳細には、溶接前、後、並びに溶接中に最適の映像を獲得するための光量制御方法と、これを具現した小型化及び軽量化されたデジタル溶接ビジョンカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アーク(Arc)を熱源として用いた溶接法は、GTAW(Gas Tungsten Arc Welding;TIG溶接)、GMAW(Gas Metal Arc Welding;MIG溶接)とPAW(Plasma Arc Welding;プラズマアーク溶接)方式が産業現場で広く使用されている。近年では、高出力レーザーを活用したLBW(Laser Beam Welding;レーザー溶接)方式も活発に利用されている。
【0003】
一方、アーク溶接やレーザー溶接は、高熱と強い光が必然的に発生する。そして、溶接の種類によって、溶接ヒューム(Weld Fume、熱によって蒸発した金属酸化物など)とスパッタ(Spatter、溶接中、周囲に飛散する溶融金属の微細な粒子)が発生する。ここで、溶接光は、強い紫外線(Ultra Violet)と強い可視光線(Visible Light)と強い赤外線(Infrared)が含まれる。
【0004】
まず、本発明で使用される光に係わる用語をみると、光の強さ(Light Intensity)は、光源から発する光の明るさ程度を意味し、光量は、光束(光が進行する方向に垂直な単位面積を単位時間で通過する光の量)に時間を掛けた値で定義される。
【0005】
溶接作業中、映像を通じて溶接履行状況を効果的にモニタリングするためには、白黒映像のように単色で構成された映像よりは、肉眼で物体を識別するときのように、溶接部位の色をカラー映像で表出することが効果的である。このため、ローパスフィルター(Low Pass Filter)を撮像素子の前面に配置し、溶接光に含まれた紫外線と赤外線を遮断して、可視光線だけを利用することもある。
【0006】
しかし、溶接光は、可視光線だけを利用するとしても、撮像素子が撮像できる光の強さよりはるかに強い。そのため、流入光量を適切に減衰しないと、適切な明るさの映像を得ることができない。通常、流入光量を減衰するためには、撮像素子の前面に配置されたレンズの絞り(Iris)を絞ることによって、光量減衰の効果を得ることができる。しかし、絞りを内蔵したレンズは、小型化及び軽量化に適していない。
【0007】
一方、パイプを継ぎ接ぎ状にパイプの長さを延長する作業において、作業者が手動溶接をする場合は、作業者の溶接作業の姿勢や空間的な制約などにより、パイプの360°周りを均一な品質で溶接することが難しい。
【0008】
これを解消するために、従来は、固定されたパイプの円周(Orbit)に沿ってガイドリング(軌道)を設けておいて、溶接トーチがその上を走行しながら自動溶接されるようにしたオービタル溶接(Orbital Welding)を行っている。このようなオービタル溶接をすると、通常手動溶接に比べて、約1.5~3倍まで作業能率を高めることができるだけではなく、溶接品質も均一に確保することができる。
【0009】
また、溶接作業を映像でモニタリングするためには、溶接トーチをガイドリングの上で走行させる搬送装置(キャリッジ)の走行方向の前方と後方に、溶接カメラを装着している。ここで、走行方向の前方に設けられたカメラを先行カメラとし、後方に設置されたカメラを後行カメラとすると、先行カメラと後行カメラとは、溶接トーチを基準に向かい合う方向に設置される。
【0010】
先行カメラは、トーチに向かって撮影しながら、溶加材の供給状態、溶加材の先端が溶融して液体金属になる溶融金属移行(または溶滴移行、Transfer of Molten metal)及び溶加材と母材が溶融地で溶解される現象を観察することができる。また、溶接電極の摩耗や毀損及び汚染などを溶接作業中に直ちに把握することができる。後行カメラは、トーチに向かって撮像しながら、前方カメラの撮像できない、溶接トーチの背面の溶融地を観察して、溶接によって生じた溶接ビードを観察する。これにより、溶接作業中に異常現象が発生すると速やかに対応措置を行うことができ、溶接品質を均一に維持することができる。
【0011】
しかし、上記のように、搬送装置(キャリッジ)に追加に装着できる付加装置の大きさと重量が非常に制限的であるため、溶接カメラの小型化と軽量化が不可欠である。このような理由から、溶接カメラを小型化及び軽量化するためには、小型のレンズを採用することが重要である。通常、小型レンズには、焦点距離が単一焦点距離である単焦点レンズを適用しているが、このような単焦点レンズは、流入光量を調節する絞り(Iris)が備えられていない。
【0012】
これによって、単焦点レンズの適用された溶接カメラは、強い溶接光がレンズで集光され、非常に大きな光量の光が撮像素子にそのまま流入する。このように流入した大きい光量の光は、撮像素子でシャッター速度(光電変換時間)を最も速く(光電変換時間を最も短く)しても、撮像された映像が飽和(露出過多)され、適切な明るさの映像を得ることができない。したがって、強い溶接光が撮像素子に到達する前に光量を適切に低減できる手段を備えなければならない。
【0013】
一般に、光量を低減する手段としては、所定の媒体を透過する際、光エネルギーが全波長帯で減衰され、光の強さを所定量だけ減衰させるND(Neutral Density)フィルターが使用される。
【0014】
溶接カメラが強い溶接アーク光に対応し、適切な明るさの映像を撮像することは、十分高い数値のNDフィルターを使用するだけでも、目的を達成することができる。
【0015】
しかし、単焦点レンズは、被写界深度(Depth of Field)が浅いため、被写体のごく一部の領域のみ焦点の合った映像が撮像され、画面に均等に焦点の合った鮮明な映像(深度の深い映像)を得ることができないという問題点がある。
【0016】
従って、溶接映像を、全体の画面で焦点の合った鮮明な映像と適度な明るさの映像に撮像するためには、深い被写界深度が確保されて、適切な光量に減衰された光が撮像素子に入射しなければならない。
【0017】
即ち、NDフィルターによって光エネルギーが全波長帯で減衰され、光の強度が減少する光量減衰手段と、溶接光がレンズに流入される経路上にレンズに最大限近接して配置され、前方に光軸を中心とする所定の大きさを有する一つ以上の円形開口部を介在して、光が流入される面積をレンズの外部で減少させる(光束を減少させる)ことにより光量を減衰させる手段を検討することができる。
【0018】
光学においてF値は、基本的にレンズの焦点距離を入射瞳径で割った値で計算される。入射瞳孔は、光が流入される面積をいう。同一な焦点距離に対して面積の直径が大きくなると、F値は小さくなり、光が流入される量は多くなる(即ち、明るくなる)。一方、面積の直径が小さくなると、F値は大きくなり、光が流入される量は少なくなる(即ち、暗くなる)。
【0019】
一般に、同一な焦点距離のレンズにおいて、F値が小さくなると、被写界深度は浅くなり、被写体の前、後に、ごく狭い領域のみ焦点が鮮明に合った映像が撮像されて、F値が大きくなると、被写界深度が深くなり、画面全体で被写体の焦点が鮮明に合った映像を撮像することができる。
【0020】
カメラを小型化するために採用された単焦点レンズは、焦点距離とF値がレンズの特性によって特定された固定値であるため、本発明は、上述のように、レンズの前方に光軸を中心とする所定の大きさを有する一つ以上の円形開口部を介在して、光が流入される面積をレンズの外部で減少させるものであって、F値を高くして、画面全体で被写体の焦点が鮮明な映像を撮像することができる。
【0021】
一方、既存の溶接作業では、母材の厚さが厚いほど、V字状の溝(V Groove、改善)を形成して初層(Root pass)溶接をする。その後、初層溶接のビード(Bead)上に多層(Multi pass)に溶接をする。
【0022】
この際、所定の高い数値のNDフィルターをレンズの前面に配置すると、溶接が行われる間、強い溶接光の強度を適切に低減することができるため、撮像素子が適切な明るさの映像を撮像することができる。
【0023】
しかし、適切な明るさの溶接映像を撮像するために導入されたNDフィルターは、光の強度を大きく減衰させるため、溶接が完了し、溶接アークがオフになると、日常の作業照明だけでは、ほとんど暗黒のような映像が撮像されて、溶接トーチや母材の形状を確認することができない。したがって、引き続きの溶接の条件を設定(Setting)するために、トーチの位置と高さを調節して、溶加材の先端を合わせるような、溶接前の事前設定を行うことができないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、上記のような問題点を解消するために創案されたものであって、被写界深度と適正な光量を両方確保し、溶接前、後並びに溶接中に最適の映像を獲得することができて、また、小型化及び軽量化が可能なデジタル溶接ビジョンカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記のような目的を達成するための本発明の一実施形態によると、ウィンドウ部と、前記ウィンドウ部が前方に装着された前方ケース部と、前記前方ケースの後方に連結されて、内部に単焦点レンズが設けられた後方ケース部とを含み、前記前方ケース部の前面には、第1の開口部が形成されて、前記前方ケース部の内部には、フィルター切替モジュールが装着されて、前記第1の開口部と同軸上に形成された第2の開口部が前記単焦点レンズの前方に最大限近接して配置されたデジタル溶接ビジョンカメラが提供される。
【0026】
前記フィルター切換モジュールは、一定面積のフィルターウィンドウが形成されたフィルターフレームと、前記フィルターフレームの内部に横方向に移動可能に設けられ、駆動部材によって駆動されて、前記フィルターウィンドウに選択的に露出されるNDフィルター及びローパスフィルターとからなる。
【0027】
前記フィルター切換モジュールホルダーは、一定面積の開口窓が形成された第1のホルダー部材と、前記第2の開口部が形成された第2のホルダー部材とを含み、前記第1のホルダー部材と前記第2のホルダー部材の向き合う内側面には、前記フィルター切換モジュールが光軸に直交した面(直角面)と所定角度傾いて固定されるようにする傾斜溝が形成される。
【0028】
前記フィルター切換モジュールは、溶接前及び溶接後に、前記ローパスフィルターがフィルターウィンドウに露出するように移動され、前記ローパスフィルターを通過した光が撮像素子に流入して、溶接中には、前記NDフィルターが前記フィルターウィンドウに露出するように移動され、前記NDフィルターを通過した光が撮像素子に流入するように動作することが好ましい。
【0029】
また本発明は、溶接作業の状況に対応し、カメラの映像処理部(図示せず)に溶接アークの存在を判定するアーク感知基準値と、アークが消滅したことを判定するアーク消滅基準値とを設定して、前記撮像素子に流入する光量をモニターし、前記基準値と比較して、前記フィルター切換モジュールが自動にNDフィルターまたはローパスフィルターを選択的に前記フィルターウィンドウに露出する、デジタル溶接ビジョンカメラの制御方法を提供する。
【0030】
また本発明は、デジタル溶接ビジョンカメラにおいて、最適の映像を獲得するための光量制御方法であって、溶接光が通過する経路上で少なくとも一つの開口部を通過しつつ、前記溶接光の光量を減衰する手段と、NDフィルターのND数値を調節して、前記溶接光の光の強度を減衰する手段と、を組み合わせることにより、撮像素子に流入する適正光量を確保する、溶接前、後、並びに溶接中に最適の映像を獲得するための光量制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、被写界深度と適正な光量とを両方確保し、溶接前、後、並びに溶接中に最適の映像を獲得することができると共に、カメラの小型化及び軽量化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態によるデジタル溶接ビジョンカメラの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態によるデジタル溶接ビジョンカメラの側面図である。
図3】本発明の一実施形態によるデジタル溶接ビジョンカメラの分解斜視図である。
図4】本発明の一実施形態によるデジタル溶接ビジョンカメラのフィルター切換モジュールと、第1及び2のホルダー部材の分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態によるデジタル溶接ビジョンカメラのフィルター切換モジュールの動作状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。これに先立ち、本明細書及び請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的あるいは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈すべきである。また、本発明で使用される技術用語及び科学用語は、特に定義しない以上、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が通常的に理解している意味を有する。下記の説明及び添付図面において、本発明の要旨を不要に曖昧にするような公知の機能及び構成に対する説明は省く。添付の図面は、当業者に本発明の思想が十分伝達できるようにするために、例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に提示する図面に限定されず、他の形態で具体化されることもできる。また、明細書全般にわたって、同一な参照番号は、同一な構成要素を示す。図面の中、同一な構成要素は、可能な限り、どこでも同一な符号で示している。
【0034】
<構成及び連結関係に対する説明>
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるデジタル溶接ビジョンカメラは、ウィンドウ部10は、前方ケース部20、後方ケース部30、及びマウント部40を含む。
【0035】
具体的に、図2及び3を参照すると、前方保護ケース21の前方には、保護ウィンドウ11がウィンドウカバーリング12を介して装着される。ここで、前方保護ケース21の中央には、第1の開口部21hが形成される。
【0036】
また、前方保護ケース21の内側後方には、フィルター切換モジュール50がフィルター切換モジュールホルダー51に横方向に挿入された状態で設けられる。ここで、前方保護ケース21は、ボルトB2により後方保護ケース31に装着される。また、フィルター切換モジュールホルダー51には、第1の開口部21hと同軸上に位置する第2の開口部22hが形成される。ここで、第2の開口部22hは、単焦点レンズ60の前方に最大限近接するように配置されることが好ましい。これは、第2の開口部22hが単焦点レンズ60から離れるほど、獲得される映像の周辺部に光量低下(Vignetting)または光遮蔽(Shade)現象が発生する可能性が高いからである。
【0037】
単焦点レンズ60は、レンズホルダー61に結合された状態で、後方保護ケース31の内部に装着される。また、単焦点レンズ60の後方には、メインローパスフィルター70、撮像面80、撮像素子81、及び回路基板(PCB)が順に配置される。
【0038】
また、後方保護ケース31の上部側には、カメラマウントパッド41が装着される。後方保護ケース31の末端には、ケーブルの引き出しのためのケーブルガイド43及び密閉のためのケーブル密閉部材42が備えられる。ここで、レンズホルダー61には、単焦点レンズ60を固定するためのレンズストッパーネジB3が装着される。
【0039】
図4を参照すると、フィルター切替モジュールホルダー51は、開口窓51hの形成された第1のホルダー部材51aと、第2の開口部22hの形成された第2のホルダー部材51bとが複数の結合ネジB5によって結合されてなる。ここで、第2の開口部22hは、第1の開口部21hより小さい直径を有するように形成される。また、第1のホルダー部材51aと第2のホルダー部材51bの互いに向き合う側面には、垂直方向から一側に所定の角度傾いた形態の傾斜溝53がそれぞれ形成される。これにより、第1のホルダー部材51aと第2のホルダー部材51bとの間に介在されたフィルター切換モジュール50は、光軸に直交した面と斜めに傾いた状態で固設される。
【0040】
図5を参照すると、フィルター切替モジュール50は、外部にフィルターウィンドウ50hが形成されて、内部には、長さ方向に移動可能にフィルターフレーム56aが装着される。ここで、フィルターフレーム56aは、駆動部材58に連結された駆動レバー57によって、フィルター切替モジュール50の本体50aの内部で長さ方向に移動可能になる。また、フィルターフレーム56aには、NDフィルター55とローパスフィルター56とが並んで配置される。これにより、駆動部材58の駆動力によってフィルターフレーム56aが長さ方向に移動すると、フィルターウィンドウ50hに選択的にNDフィルター55とローパスフィルター56が位置する。これは、溶接中や溶接前、後に応じて、フィルターの配置を変えるための構成であって、これについては、後述する作用の説明でより具体的に説明する。
【0041】
<作用及び効果に対する説明>
以下、各構成要素の機能について簡単に説明する。ウィンドウ部10は、前方保護ケース21の先端突出部の外周径に設けられたねじ山にねじ結合で締結される。ここで、保護ウィンドウ11を前方保護ケース21の先端面に密着して密閉構造を形成し、粉塵やスパッタ等により汚染された保護ウィンドウ11を容易に交換することもできる。ここで、保護ウィンドウ11は、透明度が高く、耐熱特性の良い材質として、外部の粉塵やスパッタがカメラの内部に流入されないようにする。
【0042】
前方保護ケース21は、カメラ内部の構成品を保護する外部ケースとして機能する。ここで、第1の開口部21hは、強い溶接光が流入される面積を低減させる(光束を減少させる)ことにより、1次的に光量を減衰させるだけではなく、保護ウィンドウ11において、第1の開口部21hの口径より外側に付着した汚染物質から散乱された光が流入されることを制限する。
【0043】
フィルター切替モジュール50は、内部にローパスフィルター56とNDフィルター55とからなる2種類のフィルター部材が備えられて、溶接アークが存在しない(溶接前及び完了後)ときは、ローパスフィルター56をフィルターウィンドウ50hに一致するように移動させる。一方、溶接アークが存在(溶接中)するときは、NDフィルター55をフィルターウィンドウ50hに一致するように移動させる機能をする。
【0044】
フィルター切換モジュールホルダー51は、フィルター切換モジュール50を保護ウィンドウ11及び単焦点レンズ60の光軸に直交した面と斜めに傾けて装着するためのホルダー部材としての機能を提供する。
【0045】
第2の開口部22hは、強い溶接光が流入される面積をレンズの外部からさらに減少させ、撮像素子81に流入される光量を適度に調節して、被写界深度を深くする機能をする。
【0046】
単焦点レンズ60は、光量調節絞りが備えられていない単一焦点を有する小型レンズである。
【0047】
レンズホルダー61は、撮像素子81のイメージの中心にレンズ(単焦点レンズ;60)の光軸を一致させて装着するための構成要素であって、その内周面は、レンズ鏡筒とねじ結合されて、外周面は、後方保護ケース31にねじ結合され、レンズと撮像素子との間の距離設定を変えることにより、被写体との観測距離を別々に設定することができる。
【0048】
メインローパスフィルター70は、溶接中に発生する強い紫外線と赤外線を遮断し、可視光線だけを撮像素子に通過させる構成要素である。
【0049】
以下、本発明の作用及び効果について具体的に説明する。
【0050】
本発明は、単焦点レンズ60の前方レンズ面に最大限近接してレンズの光軸と同軸に形成された第1及び2の開口部21h、22hを形成することにより、レンズの絞りのような作用で光量を減衰させるだけではなく、被写界深度を深く改善することができる。
【0051】
また、NDフィルター55とローパスフィルター56とを電気駆動によって切り換えるフィルター切換モジュール50を備え、溶接アーク光の有無に対応したフィルターをそれぞれ介在することにより、溶接前、後、並びに溶接中に最適の明るさの映像を撮像することができる。
【0052】
このように、最適の明るさの映像を撮像するための溶接光に対する光量の減衰は、開口部22hの大きさとNDフィルター55の数値との組み合わせにより、最適の減衰量を設定することができる。即ち、例えば第2の開口部22hを大きくすると、被写界深度が浅くなって、焦点の合った範囲が狭くなるだけではなく、撮像素子81に流入される光量が増加する。したがって、ND数値のより高いNDフィルター55を組み合わせて、流入光量を最適の光量に設定することができる。一方、開口部22hを小さくすると、被写界深度が深くなって、焦点の合った範囲が広くなり、撮像素子に流入される光量が減少するため、ND数値のより低いNDフィルター55を組み合わせて、前記組み合わせによる流入光量を最適に設定することができる。
【0053】
一方、フィルター切換モジュール50は、ローパスフィルター56とNDフィルター55の2種類のフィルター部材を備えている。
【0054】
これによって、溶接前及び後には、ローパスフィルター56を通過した光が撮像素子81に流入し、溶接中には、NDフィルター55を通過した光が撮像素子81に流入されるようにする。即ち、溶接作業状況に応じ、手動操作または自動にフィルターを切換えることによって、カメラのフィルターの選択を決定することができる。
【0055】
さらに、溶接作業状況に対応し、映像処理部で溶接アークの存在を判定する‘アーク感知基準値’と、アークが消滅したことを判定する‘アーク消滅基準値’を設定し、撮像素子に流入される光量をモニターして、前記基準値と比較することにより、カメラが自動にフィルターを切り換えて、溶接アークの有無によるフィルターの選択を決定することができる。
【0056】
即ち、カメラの映像処理部で、撮像素子に流入される光量に対して光電変換されたデジタル映像データ数値を実時間でモニターし、映像データ数値がアーク感知基準値を超えたことが感知されると、溶接アークが発生したと判定する。そして、フィルター切換モジュール50でNDフィルター55がフィルターウィンドウ50hに一致するように配置する。
【0057】
一方、映像データ数値がアーク消滅基準値未満として感知されると、溶接アークが消滅したと判定し、フィルター切換モジュール50でローパスフィルター56がフィルターウィンドウ50hに一致するように配置する。
【0058】
本発明は、ウィンドウ部10によって、粉塵やスパッタ(Spatter)からカメラの光学部と回路部を保護し、長時間の使用後に汚染されると、工具を使用することなく、ウィンドウを簡単に取り替えることができるように工夫された。
【0059】
一方、カメラの最先端から撮像素子81までの構成品の配置を見ると、本発明は、保護ウィンドウ11、第1の開口部21h、フィルター切換モジュール50、第2の開口部22h、単焦点レンズ60、メインローパスフィルター70、及び撮像素子81の順に配置される。
【0060】
このような構成により、強い溶接光が撮像素子81まで伝達される経路において、光量の減衰が起こる過程を見ると、溶接時に溶接アークから発生した強い光は、保護ウィンドウ11を通過して、1次的に第1の開口部21hで光量減衰が起こる。
【0061】
次に、フィルター切換モジュール50内に介在されたNDフィルター55がフィルターウィンドウ50hと一致するように移動配置され、2次的にNDフィルター55が光の強度を減衰させる。次いで、3次的に第2の開口部22hで最終的に光量減衰が起こる。この際、第2の開口部22hは、被写界深度を深く改善する役割もする。
【0062】
一方、強い溶接光は、複数の構成品を通過する過程で、各構成品の表面で反射されることがある。これにより、ゴースト(Ghost、多重の反射光による虚像)が発生するようになる。
【0063】
参考に、下記の説明において、各構成品の表面に対して‘外側’は、溶接光源に向かう面を指し、‘内側’は、撮像素子81に向かう面を指す。
【0064】
再び反射光による虚像の説明に戻ると、レンズの光軸に対して若干の入射角で流入される強い溶接光は、保護ウィンドウ11を通過した後、フィルター切換モジュール50内のNDフィルター55の外側と保護ウィンドウ11の内側で、レンズ(単焦点レンズ;60)の外側とNDフィルター55の内側で、多重の反射が起こることがある。
【0065】
このような例示は、構成品の間で反射が起こる可能性を例示したもので、一つ以上の反射が起こる場合、反射された光は、本来の流入光から離れた位置に流入され、撮像された映像においてゴースト(虚像)イメージとして表れる。これにより、映像に二重像が生じるか、ゴーストが重要撮像部位の映像に重なるようになって、映像の品質を落とす要因になる。
【0066】
これを解消するために本発明では、図2に示すように、フィルター切換モジュール50を、保護ウィンドウ11と平行にならないように所定の角度傾けて配置することにより、反射された光が光軸の中心軸から遠ざかるようにして、撮像しようとする目標被写体から遠く離れるように構成した。
【0067】
一方、溶接状況を観測する条件に応じて、溶接トーチからカメラの観測距離(離隔距離)を変える必要がある。単焦点レンズ60は、レンズと撮像素子81との間の距離が離れると、近距離の被写体に焦点が合うようになる。その反面、レンズと撮像素子81との間の距離が近づくと、遠距離の被写体に焦点が合うようになる。
【0068】
ここで、レンズホルダー61の内周面には、単焦点レンズ60がネジ結合で取り付けられる。また、レンズホルダー61の外周面にねじ山が設けられ、後方保護ケース31の先端内側に設けられたねじ山結合部と結合される。ここで、観測距離は、レンズホルダー61の内外周面のネジ結合部の結合位置を調節することにより、観測距離を別々に設定することができる。
【0069】
以上、本発明を、特定の実施例について図示して説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を有するものであれば、以下の請求の範囲に記載された本発明の技術的思想の要旨から外れない範囲でいくらでも多様に変更して実施することができるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】